(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017827
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】転写シートの製造方法、及び転写シートの製造方法に用いる水性接着液
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20240201BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240201BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B44C1/17 A
B41M5/00 100
B41M5/00 112
B41M5/00 134
B32B27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120733
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祥史
【テーマコード(参考)】
2H186
3B005
4F100
【Fターム(参考)】
2H186AB10
2H186AB12
2H186AB16
2H186AB23
2H186AB39
2H186AB45
2H186AB47
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3B005EB03
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3B005FB23
3B005FB25
3B005FB37
3B005FC09Z
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3B005GA05
3B005GB01
4F100AK01C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100BA03
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4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】転写物において転写シートから転写された画像の堅牢性に優れる転写シートの製造方法を提供する。
【解決手段】剥離性支持体に水性インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成すること、及び画像に少なくとも部分的に重なるように水性接着液をインクジェット方式で吐出することを含み、水性接着液は、樹脂Aと、前記樹脂Aに対しガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含む、転写シートの製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離性支持体に水性インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成すること、及び
前記画像に少なくとも部分的に重なるように水性接着液をインクジェット方式で吐出することを含み、
前記水性接着液は、樹脂Aと、前記樹脂Aに対しガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含む、転写シートの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂Aのガラス転移温度が0℃未満であり、又は前記樹脂Bのガラス転移温度が95℃超過である、請求項1に記載の転写シートの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂Aのガラス転移温度が0℃未満であり、かつ前記樹脂Bのガラス転移温度が95℃超過である、請求項1に記載の転写シートの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂A及び前記樹脂Bは、それぞれ独立的にウレタン系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂である、請求項1に記載の転写シートの製造方法。
【請求項5】
質量比で、前記樹脂A:前記樹脂B=50:50~90:10を満たす、請求項1記載の転写シートの製造方法。
【請求項6】
剥離性支持体に水性インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成し、前記画像に少なくとも部分的に重なるようにインクジェット方式で水性接着液を付与し、転写シートを製造する方法に用いられる水性接着液であって、
樹脂Aと、前記樹脂Aよりもガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含む、水性接着液。
【請求項7】
剥離性支持体、及び
前記剥離性支持体の上に形成され、画像層と接着層とを含む積層体を備え、
前記接着層は、樹脂Aと、前記樹脂Aよりもガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含む、転写シート。
【請求項8】
前記剥離性支持体は、基材と、前記基材の上に剥離可能に形成される保護層とを備え、前記保護層の上に前記積層体が形成される、請求項7に記載の転写シート。
【請求項9】
被転写物、及び
請求項7に記載の転写シートを用いて、前記転写シートから前記被転写物に転写された画像を備える、転写物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シートの製造方法、及び転写シートの製造方法に用いる水性接着液に関する。
【背景技術】
【0002】
剥離性支持体の上に画像層が形成された転写シートを用いて、転写シートを被転写物に重ね合わせ、加熱処理等を施して画像を被転写物に転写する方法が知られている。詳しくは、剥離性支持体上に画像層を形成し、画像層の上に接着剤を塗布することで、被転写物への転写の際に、画像層が接着剤によって被転写物に密着し、剥離性支持体から画像が剥離されて被転写物に転写される。
【0003】
ところで、こうした剥離性支持体に、画像形成領域以外の場所にも接着剤が塗布されると、剥離性支持体から被転写物に画像を転写する際に、被転写物における転写された画像形成領域以外の場所にも接着剤が付着することになり、当該場所では被転写物がべたついてしまうという不具合、及び外観を損なうという不具合がある。
【0004】
こうした不具合の発生を低減するために、剥離性支持体に形成される画像の上のみに接着剤を塗布する方法がある。特許文献1及び2には、インクジェット方式によってインクをシート上に付着させてパターンを形成し、次いでインクジェット方式によって接着剤を当該パターンの上のみに塗布する方法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-126025号公報
【特許文献2】特開2013-59974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2には、転写性、接着性、耐ブロッキング性に関する開示はあるが、堅牢性については開示されておらず、性能が十分ではない。
【0007】
本発明の一目的としては、転写物において転写された画像の堅牢性に優れる転写シートの製造方法及びその製造方法に用いる水性接着液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態を以下に示す。
(1)剥離性支持体に水性インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成すること、及び前記画像に少なくとも部分的に重なるように水性接着液をインクジェット方式で吐出することを含み、前記水性接着液は、樹脂Aと、前記樹脂Aに対しガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含む、転写シートの製造方法。
【0009】
(2)前記樹脂Aのガラス転移温度が0℃未満であり、又は前記樹脂Bのガラス転移温度が95℃超過である、(1)に記載の転写シートの製造方法。
(3)前記樹脂Aのガラス転移温度が0℃未満であり、かつ前記樹脂Bのガラス転移温度が95℃超過である、(1)に記載の転写シートの製造方法。
(4)前記樹脂A及び前記樹脂Bは、それぞれ独立的にウレタン系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂である、(1)から(3)のいずれかに記載の転写シートの製造方法。
(5)質量比で、前記樹脂A:前記樹脂B=50:50~90:10を満たす、(1)から(4)のいずれか記載の転写シートの製造方法。
【0010】
(6)剥離性支持体に水性インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成し、前記画像に少なくとも部分的に重なるようにインクジェット方式で水性接着液を付与し、転写シートを製造する方法に用いられる水性接着液であって、樹脂Aと、前記樹脂Aよりもガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含む、水性接着液。
【0011】
(7)剥離性支持体、及び前記剥離性支持体の上に形成され、画像層と接着層とを含む積層体を備え、前記接着層は、樹脂Aと、前記樹脂Aよりもガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含む、転写シート。
(8)前記剥離性支持体は、基材と、前記基材の上に剥離可能に形成される保護層とを備え、前記保護層の上に前記積層体が形成される、(7)に記載の転写シート。
(9)被転写物、及び(7)又は(8)に記載の転写シートを用いて、前記転写シートから前記被転写物に転写された画像を備える、転写物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、転写物において転写シートから転写された画像の堅牢性に優れる転写シートの製造方法及びその製造方法に用いる水性接着液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、各製造方法の段階において一実施形態による転写シート及び転写物を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を一実施形態を用いて説明する。本発明は以下の実施形態における例示によって限定されるものではない。
【0015】
一実施形態による転写シートの製造方法は、剥離性支持体に水性インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成すること、及び画像に少なくとも部分的に重なるように水性接着液をインクジェット方式で吐出することを含み、水性接着液は、樹脂Aと、樹脂Aに対しガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含むことを特徴とする。この製造方法によれば、転写物において転写シートから転写された画像の堅牢性に優れる転写シートの製造方法を提供することができる。
【0016】
ガラス転移温度(Tg)が低い樹脂Aと、ガラス転移温度が高い樹脂Bを含み、樹脂Aのガラス転移温度と樹脂Bのガラス転移温度の差が80℃以上であることで、被転写物に対する接着性と、転写物において接着層の強度を適度にバランスよく備えることができる。詳しくは、水性接着液にガラス転移温度が低い樹脂Aが含まれることで、得られる転写シートにおいて被転写物に対する密着性を向上することができる。また、水性接着液にガラス転移温度が高い樹脂Bが併用して含まれることで、得られる転写シートから画像が転写された転写物において接着層の強度を向上することができる。これによって、布のように伸縮性を有し軟質な被転写物から、木材、金属、ガラス、プラスチック、陶器等の硬質の被転写物まで、各種材料の被転写物対して優れた転写性と堅牢性を有する転写物を得ることできる。
【0017】
上記の作用効果について、ガラス転移温度が低い樹脂Aは、被転写物の表面の凹凸形状に上手くフィットしクサビ効果を働かせるため、密着性を向上する効果が得られると考えられる。また、転写シートに水性接着液が付与された状態で、ガラス転移温度が高い樹脂Bは、樹脂Aのマトリックスに島状に存在して、外力が加わった際に塑性変形してエネルギーを吸収する働きを有し、接着層の凝集破壊を抑制する効果が得られると考えられる。ここで、ガラス転移温度が高い樹脂Bが塑性変形するまで、ガラス転移温度が低い樹脂Aのマトリックスと界面剥離を起こさないように界面強度を設計することが重要となる。
【0018】
好ましい実施形態において、樹脂Aとしてガラス転移温度が0℃未満である樹脂はより優れた密着効果を有することができる。また、樹脂Bとしてガラス転移温度が95℃超過である樹脂はより優れた接着層の強度を有することができる。より好ましい実施形態において、ガラス転移温度が0℃未満である樹脂Aのマトリックスに対し、ガラス転移温度が95℃超過である樹脂Bを併用して用いると界面強度が高く維持され、転写物において接着層の靭性が高まるとともに、接着強度が高まる効果を得ることができる。
【0019】
「転写シート」
転写シートの一実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、各製造方法の段階において一実施形態による転写シート及び転写物を模式的に示す断面図である。
図1において、10は転写シートであり、20は転写物であり、1は剥離性支持体であり、2は剥離性支持体上に形成される画像層であり、3は画像層上に形成される接着層であり、4は転写シートから画像が転写される被転写体である。剥離性支持体1は、基材1aと基材1a上に形成される保護層1bとを備える。
【0020】
図1に示す例において、転写シート10の製造方法は、剥離性支持体1を用意すること(a)、及び剥離性支持体1の上に画像層2及び接着層3を形成すること(b)を含む。また、
図1に示す例において、転写物20の製造方法は、被転写物4の表面に転写シートを貼り付けること(d)、及び剥離性支持体1を剥がし取ること(d)を含む。
【0021】
「水性接着液」
一実施形態では、剥離性支持体に水性インク及び水性接着液をそれぞれインクジェット方式で吐出する方法において、水性接着液が樹脂Aと、樹脂Aに対しガラス転移温度(Tg)が80℃以上高い樹脂Bとを含むものである。水性接着液において、樹脂Aと樹脂Bとのガラス転移温度の差「(樹脂Bのガラス転移温度)-(樹脂Aのガラス転移温度)」が80℃以上であることで、転写シートから被転写物への画像の転写性を改善し、さらに画像が転写された転写物において画像の堅牢性を改善することができる。この樹脂Aと樹脂Bとのガラス転移温度の差は、90℃以上、100℃以上、110℃以上、又は120℃以上がより好ましい。
【0022】
水性接着液において、樹脂Aと樹脂Bとのガラス転移温度の差は、特に限定されないが、転写シートにおいて樹脂のベタツキ低減及び接着性の観点から、200℃以下、150℃以下、又は130℃以下が好ましい。
【0023】
水性接着液において、樹脂Aのガラス転移温度は0℃未満が好ましく、-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下、又は-20℃以下であってよい。これらの範囲で、転写シートの被転写物への密着性をより向上することができる。水性接着液において、樹脂Bのガラス転移温度は95℃超過が好ましく、98℃以上、又は100℃以上であってよい。これらの範囲で、転写シートから画像が転写された転写物において接着層の強度をより向上することができる。
【0024】
水性接着液において、樹脂Aのガラス転移温度が0℃未満、又は樹脂Bのガラス転移温度が95℃超過であることが好ましい。より好ましくは、水性接着液において、樹脂Aのガラス転移温度が0℃未満、かつ樹脂Bのガラス転移温度が95℃超過であることが好ましい。これによって、上記説明した通り、転写物において接着層の靭性が高まるとともに、接着強度が高まる効果をより得ることができる。
【0025】
本明細書において、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される。より詳しくは、以下に示す方法により測定できる。示差走査熱量測定(DSC)には、株式会社リガク製熱分析装置(ThermoplusEVO2DSC8231)等を用いることができる。測定条件は、室温から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで-50℃まで冷却して測定用サンプルを調製する。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0026】
また、示差走査熱量測定(DSC)でガラス転移温度の測定が難しい樹脂の場合は、動的粘弾性測定で測定したガラス転移温度を用いてもよい。動的粘弾性測定には、株式会社ユービーエム製動的粘弾性測定装置(Rheogel-E4000)等を用いることができる。測定条件は、周波数10Hz、昇温速度毎分2℃であり、動的粘弾性における損失弾性率(E’’)が極大となった時の温度をガラス転移温度とする。
【0027】
水性接着液に含まれる樹脂は、樹脂A及び樹脂Bからなる2種の樹脂であってよく、樹脂A及び樹脂Bを含みさらに追加的な樹脂を1種又は2種以上含む3種以上の樹脂であってもよい。例えば、水性接着液に3種の樹脂が含まれる場合は、樹脂のうちガラス転移温度が1番低い樹脂を樹脂Aとし、樹脂Aに対してガラス転移温度が80℃以上高い樹脂を樹脂Bとする場合に、3種目の樹脂のガラス転移温度は、樹脂Aと樹脂Bのガラス転移温度の間の範囲にあってもよく、樹脂Bのガラス転移温度より高い範囲にあってもよく、あるいは樹脂A又は樹脂Bとガラス転移温度が同じであってもよい。
【0028】
ベタツキ低減はガラス転移温度が一番高い樹脂に依存し、接着性はガラス転移温度が一番低い樹脂に依存する。したがって、ガラス転移温度が1番目に低い樹脂のガラス転移温度は0℃未満が好ましく、-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下、又は-20℃以下であってよい。これらの範囲で、転写シートの被転写物への密着性をより向上することができる。ガラス転移温度が1番目に高い樹脂のガラス転移温度は95℃超過が好ましく、98℃以上、又は100℃以上であってよい。これらの範囲で、転写シートから画像が転写された転写物において接着層の強度をより向上することができる。
【0029】
水性接着液において、樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ接着性樹脂であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂であることが好ましい。樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ水分散性樹脂及び水溶性樹脂のいずれであってもよいが、水性接着液において低粘度で貯蔵安定性が良好であり、接着性にも優れることから水分散性樹脂であることが好ましい。樹脂A及び樹脂Bは、それぞれアニオン性樹脂、カチオン性樹脂、両性樹脂、及びノニオン性樹脂のいずれであってもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ剥離性支持体上で透明の塗膜を形成する樹脂であることが好ましい。これによって、転写シートから画像が転写された転写物において水性インクの発色への影響を低減することができる。
【0030】
水分散性樹脂は、水性接着液中で樹脂粒子の形態で分散可能であり、水性接着液に樹脂エマルションの形態で投入可能であるものが好ましい。水分散性樹脂は、水に安定に分散させるために親水性基及び/又は親水性セグメントが導入された自己乳化型のものでもよいし、外部乳化剤の使用により水分散性となるものでもよい。
【0031】
水分散性樹脂が水性接着液中において樹脂粒子を形成する場合、樹脂粒子の平均粒子径は、インクジェット吐出性の観点から、500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、150nm以下がより好ましい。例えば、樹脂粒子の平均粒子径は、10nm~500nmの範囲とするとよい。また、水性接着液に投入する樹脂エマルションにおいて樹脂粒子の平均粒子径がこれらの範囲を満たすことが好ましい。本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、動的光散乱法によって測定した数値である。
【0032】
水分散性樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ウレタン系樹脂;メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂;あるいはこれらの各種樹脂の、カルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂に親水性の官能基を導入するか、又は、分散剤等で表面処理することで、水中油型樹脂エマルションを形成し、これを水性接着液に投入してもよい。
【0033】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸中和物、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0034】
水分散性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、3,000~1,000,000が好ましく、5,000~500,000がより好ましく、10,000~300,000が更に好ましい。ただし、分子内に架橋構造を有する場合、測定が困難な場合があり、上限については特に限定されない。本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーション(GPC)法で、ポリスチレン換算による値である。
【0035】
樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ水性接着液の塗工性及び接着性の観点から、ウレタン系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。さらに、ウレタン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂はそれぞれ、転写シートから画像が転写された転写物において画像層と接着層の積層体として塗膜強度及び柔軟性をより改善することができる。また、樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ塗工性及び接着性の観点から、水分散性樹脂であることが好ましい。また、水分散性樹脂は水性接着液において粘度上昇を抑制し貯蔵安定性をより改善することができる。なかでも、樹脂A及び樹脂Bは、それぞれ水分散性ウレタン系樹脂又は水分散性(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0036】
ウレタン系樹脂は、ウレタン骨格を有する樹脂であり、ウレタン骨格以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン系樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン系樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン系樹脂、主鎖にエステル結合及びエーテル結合を含むポリエステル・エーテル型ウレタン系樹脂等であることが好ましい。
【0037】
ウレタン系樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物を用いることができる。反応は常法に従って行うことができる。なお、ウレタン系樹脂は、それぞれ1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。 上記ポリイソシアネートとしては、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。
【0038】
ポリイソシアネートには、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等が含まれる。ポリイソシアネートは、それぞれ1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、ポリイソシアネートとして、上記ポリイソシアネートの2量体や3量体、反応生成物、変成物又は重合物等も用いることができる。
【0039】
上記ポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール;ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール等の長鎖ポリオール等が挙げられる。低分子量ポリオール、長鎖ポリオールは、それぞれ1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0040】
また、上記ウレタン系樹脂は、鎖伸長剤や反応停止剤を併用することができる。鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、ポリオールやポリアミンを用いることができる。また、反応停止剤としては、モノアルコールやモノアミンを用いることができる。
【0041】
ウレタン系樹脂の一例として、(メタ)アクリルウレタン系樹脂を用いてもよい。本明細書において、(メタ)アクリルウレタン系樹脂は(メタ)アクリル系樹脂ではなくウレタン系樹脂に分類される。
【0042】
(メタ)アクリルウレタン系樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂とウレタン系樹脂との共重合体を挙げることができる。一例では、ウレタンプレポリマーと(メタ)アクリレートとを重合させて、ウレタン骨格に(メタ)アクリレート単位又はポリ(メタ)アクリル構造の側鎖が導入された共重合体が挙げられる。ウレタンプレポリマーとしては、例えば、上記したポリイソシアネート及びポリオール等を用いて合成したものが挙げられる。(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述する(メタ)アクリル系樹脂で説明するものが挙げられる。他の例では、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系樹脂に、ポリオール及びポリイソシアネートを反応させて、(メタ)アクリレート系樹脂にポリウレタン骨格が導入された共重合体が挙げられる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、後述する(メタ)アクリル系樹脂で説明するものが挙げられる。ポリオール及びポリイソシアネートとしては、例えば、上記したポリイソシアネート及びポリオールが挙げられる。
【0043】
ウレタン系樹脂として、エマルション型ウレタン系樹脂を用いることが好ましい。エマルション型ウレタン系樹脂としては、界面活性剤を乳化剤として用いる強制乳化型ウレタン系樹脂、樹脂中に親水性基を導入した自己乳化型ウレタン系樹脂のいずれであってもよい。中でも、エマルション型ウレタン系樹脂としては、自己乳化型ウレタン系樹脂が特に好ましい。自己乳化型ウレタン系樹脂の有する親水性基として、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ポリエチレンオキシ基、アミノ基、モノ又はジ置換アミノ基等が挙げられる。これらの中でも、上記親水性基として、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ポリエチレンオキシ基が好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル単位及び/またはアクリル単位を有する単独重合体又は共重合体の他、メタクリル単位及び/またはアクリル単位とともにその他の単位を有する共重合体(エチレン性不飽和単量体)を用いることができる。(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル単量体を用いる重合によって得ることができる。重合は常法に従って行うことができる。
【0045】
(メタ)アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、及びヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル、並びにそれら以外の他の(メタ)アクリル酸エステルとして、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ハロゲン原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体、スルホン酸基を有する(メタ)アクリレート、リン酸基を有する(メタ)アクリレート、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、複素環を有する(メタ)アクリレート、アルキル基又はアリール基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、(メタ)アクリル系樹脂の合成において、それぞれ1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
また、(メタ)アクリル単量体以外の単量体(以下、その他の単量体という。)を併用できる。その他の単量体は、(メタ)アクリル単量体と共重合可能であればよく特に制限はないが、例えば、不飽和カルボン酸系単量体、スチレン系単量体、窒素原子を有する不飽和単量体、ビニル系単量体、不飽和アルコール、ビニルエーテル系単量体、ビニルエステル系単量体、エポキシ基を有する不飽和単量体、及びスルホン酸基を有する不飽和単量体、アルコキシシリル基含有エチレン性不飽和単量体等を挙げることができる。さらに、重合性二重結合を2以上有する単量体(多官能モノマー)を用いることも可能である。これらは、(メタ)アクリル系樹脂の合成において、それぞれ1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0047】
(メタ)アクリル系樹脂の一例として、スチレン(メタ)アクリル系樹脂を用いてもよい。スチレン(メタ)アクリル系樹脂として、スチレンと(メタ)アクリレートとの共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリレートとしては、上記説明したもののなから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(メタ)アクリル系樹脂は、水分散性(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましく、水中油型樹脂エマルションの形態で水性接着液に投入されることが好ましい。
【0049】
ガラス転移温度(Tg)が0℃未満である樹脂の市販品を以下に例示する。ウレタン系樹脂として、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス300(アニオン性、Tg:-42℃)、スーパーフレックス420(アニオン性、Tg:-10℃)、スーパーフレックス420NS(アニオン性、Tg:-10℃)、スーパーフレックス460(アニオン性、Tg:-21℃)、スーパーフレックス460S(アニオン性、Tg:-28℃)、スーパーフレックス470(アニオン性、Tg:-31℃)、スーパーフレックス500M(ノニオン性、Tg:-39℃)、スーパーフレックス650(カチオン性、Tg:-17℃)、スーパーフレックス740(アニオン性、Tg:-34℃)、スーパーフレックスE-2000(ノニオン性、Tg:-38℃)、スーパーフレックスE-4800(ノニオン性、Tg:-65℃)」、三井化学株式会社製の「タケラックW-6110(アニオン性、Tg:-20℃)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0050】
(メタ)アクリル系樹脂として、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「モビニール702(アニオン性、Tg:-19℃)、モビニール7525(アニオン性、Tg:-16℃)、モビニールLDM7522(アニオン性、Tg:-15℃)、モビニールLDM7010(アニオン性、Tg:-22℃)、モビニール461(アニオン性、Tg:-48℃)、モビニール462(アニオン性、Tg:-48℃)、モビニール490(アニオン性、Tg:-53℃)、モビニール987B(アニオン性、Tg:-2℃)、モビニールS-71(アニオン性、Tg:-53℃)、モビニール718A(アニオン性、Tg:-6℃)、モビニール730L(ノニオン性、Tg:-13℃)、モビニール7320(アニオン性、Tg:-20℃)、モビニール7400(アニオン性、Tg:-41℃)、モビニール7420(アニオン性、Tg:-26℃)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0051】
スチレンアクリル系樹脂として、DSM社製の「NeoCryl A-1120(アニオン性、Tg:-9℃)」、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「モビニール6730(アニオン性、Tg:-2℃)、モビニール7502(アニオン性、Tg:-35℃)、モビニールVDM7410(アニオン性、Tg:-4℃)、モビニール6960(アニオン性、Tg:-23℃)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0052】
ガラス転移温度(Tg)が95℃超過である樹脂の市販品を以下に例示する。ウレタン系樹脂として、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス130(アニオン性、Tg:101℃)」、三井化学株式会社製の「タケラックW-405(アニオン性、Tg:135℃)、タケラックW-605(アニオン性、Tg:100℃)、タケラックWS-4000(アニオン性、Tg:136℃)、タケラックWS-4022(アニオン性、Tg:115℃)、タケラックWS-5100(アニオン性、Tg:120℃)」、Daicelallnex社製の「DAOTANTW6493(アニオン性、Tg:100℃)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0053】
(メタ)アクリル系樹脂として、DSM社製の「NeoCryl XK-52(アニオン性、Tg:108℃)」等が挙げられる(商品名)。スチレンアクリル系樹脂として、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「モビニール972(アニオン性、Tg:101℃)」等が挙げられる(商品名)。
【0054】
ガラス転移温度(Tg)が0℃以上95℃以下の樹脂の市販品を以下に例示する。ウレタン系樹脂として、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス126(アニオン性、Tg:72℃)、スーパーフレックス150(アニオン性、Tg:40℃)、スーパーフレックス150HS(アニオン性、Tg:32℃)、スーパーフレックス170(アニオン性、Tg:75℃)、スーパーフレックス210(アニオン性、Tg:41℃)、スーパーフレックス620(アニオン性、Tg:43℃)、スーパーフレックス820(アニオン性、Tg:46℃)、スーパーフレックス830HS(アニオン性、Tg:68℃)、スーパーフレックス860(アニオン性、Tg:36℃)、スーパーフレックス870(アニオン性、Tg:78℃)」、三井化学株式会社製の「タケラックW-5030(アニオン性、Tg:85℃)、タケラックW-5661(アニオン性、Tg:70℃)、タケラックW-6010(アニオン性、Tg:90℃)、タケラックW-6020(アニオン性、Tg:90℃)、タケラックW-6061(アニオン性、Tg:25℃)、タケラックW-635(アニオン性、Tg:70℃)、タケラックWS-5984(アニオン性、Tg:70℃)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0055】
(メタ)アクリル系樹脂として、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「モビニール727(アニオン性、Tg:5℃)、モビニール742A(アニオン性、Tg:45℃)、モビニール743N(アニオン性、Tg:37℃)、モビニール745(アニオン性、Tg:21℃)、モビニール1711(アニオン性、Tg:30℃)、モビニール6520(アニオン性、Tg:41℃)、モビニール6530(アニオン性、Tg:30℃)、モビニール7180(アニオン性、Tg:53℃)、モビニール7470(ノニオン性、Tg:42℃)、モビニール7720(ノニオン性、Tg:4℃)、モビニール7820(カチオン性、Tg:4℃)、モビニールDM772(アニオン性、Tg:6℃)、モビニールDM774(アニオン性、Tg:13℃)、モビニールLDM7156(アニオン性、Tg:37℃)、モビニールLDM7520(アニオン性、Tg:4℃)、モビニール7980(アニオン性、Tg:55℃)、モビニール735(アニオン性、Tg:14℃)、モビニール742A(ノニオン性、Tg:39℃)、モビニール747(ノニオン性、Tg:42℃)、モビニールLDM7582(ノニオン性、Tg:26℃)、モビニール710A(アニオン性、Tg:9℃)、モビニール731A(ノニオン性、Tg:0℃)」、DSM社製の「NeoCryl A1105(アニオン性、Tg:93℃)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0056】
スチレンアクリル系樹脂として、ジャパンコーティングレジン株式会社製の「モビニール749E(アニオン性、Tg:25℃)、モビニール752(アニオン性、Tg:15℃)、モビニール880(アニオン性、Tg:3℃)、モビニール940(アニオン性、Tg:3℃)、モビニール1752(アニオン性、Tg:16℃)、モビニール1760(アニオン性、Tg:7℃)、モビニール6720(アニオン性、Tg:34℃)、モビニールDM60(アニオン性、Tg:3℃)、モビニール975N(アニオン性、Tg:27℃)」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0057】
水分散性(メタ)アクリルウレタン系樹脂の市販品としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製「DAOTAN TW6462」、「DAOTANVTW6463」、「DAOTANVTW6464」、「DAOTANVTW6471」、「DAOTANVTW6473」、「DAOTANVTW6474」、「DAOTANVTW1262」、「DAOTANVTW1265」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0058】
さらに、水中油型樹脂エマルションとして水性接着液に投入可能な樹脂の市販品を以下に例示する。エチレン-酢酸ビニル共重合体しては、例えば、住友化学工業株式会社製スミカフレックスシリーズ(「201HQ、305HQ、355HQ、400HQ、401HQ、408HQ、410HQ、450HQ、455HQ、456HQ、460HQ、465HQ、467HQ、470HQ、510HQ、520HQ、752、755」)等、日信化学工業株式会社製ビニブランシリーズ(「3483Y、4018、4495L、4495H」)等、昭和電工株式会社製ポリゾールシリーズ(「EVA AD-2、EVA AD-10、EVA AD-13、EVA AD-17、EVA AD-70、EVA AD-96、EVA EL-851」)等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0059】
水分散性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ユニチカ株式会社製アローベースシリーズ(「SB-1010、SE-1010、DC1010」等)、東洋紡株式会社製ハードレンシリーズ(「NZ1004、EW5250、EH801J」等)、ビックケミー株式会社製AQUACERシリーズ(「272、497、515、531、537」等)等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0060】
樹脂A及び樹脂Bは、ガラス転移温度の差が80℃以上になるように各種樹脂を組み合わせて用いることができ、例えば、上記例示した樹脂の中から組み合わせて用いることができる。樹脂A及び樹脂Bのうちいずれか一方が、ウレタン系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。また、樹脂A及び樹脂Bは、それぞれウレタン系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。樹脂A及び樹脂Bは互いに同じ種類の樹脂であってもよいが、異なる種類の樹脂であってもよい。例えば、樹脂A及び樹脂Bの両方がウレタン系樹脂であるか、又は樹脂A及び樹脂Bの両方が(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0061】
水性接着液において、樹脂Aと樹脂Bは、質量比で、50:50~90:10であることが好ましく、55:45~80~20がより好ましく、60:40~70:30がさらに好ましい。これらの範囲で樹脂Aが多く含まれることで、布に代表される軟質基材を用いた転写物において堅牢性をより高めることができる。一方、これらの範囲で樹脂Bが多く含まれることで、プラスチックに代表される硬質基材を用いた転写物において堅牢性をより高めることができる。
【0062】
各種材料を用いた転写物において堅牢性をより高め、さらにインクジェット吐出性を改善する観点から、水性接着液の全質量に対し、樹脂Aは1~20質量%が好ましく、5~15質量%より好ましく、8~10質量%がより好ましい。各種材料を用いた転写物において堅牢性をより高め、さらにインクジェット吐出性を改善する観点から、水性接着液の全質量に対し、樹脂Bは0.5~10質量%が好ましく、1~8質量%がより好ましく、4~6質量%がさらに好ましい。
【0063】
水性接着液に含まれる全種類の樹脂の合計量は、水性接着液の全質量に対し、1.5~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましい。これらの範囲でインクジェット吐出性をより改善することができ、さらに転写シートの接着性をより改善することができる。
【0064】
水性接着液は、水を含む水性組成物であることが好ましく、主溶媒が水であってもよい。水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、純粋、超純水等を用いるとよい。水は、粘度調節及び極性調節の観点から、水性接着液の全質量に対して20~90質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましく、50~70質量%であることがさらに好ましい。
【0065】
水性接着液は、水に加えて、又は水の代わりに水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤としては、濡れ性及び保湿性の観点から、室温(25℃)で液体であり、水に溶解又は混和可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0066】
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、また、単一の相を形成する限り、2種以上混合して用いてもよい。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0067】
水溶性有機溶剤は、濡れ性、保湿効果、粘度調節等の観点から、水性接着液の全質量に対し、1~80質量%で含ませることができ、5~50質量%であることがより好ましく、10~20質量%がさらに好ましい。2種以上の水溶性有機溶剤を用いる場合は、2種以上の水溶性有機溶剤の合計量がこれらの範囲内であることが好ましい。水溶性有機溶剤及び水の合計量は、水性接着液の全質量に対し、水性接着液の全質量に対して20~90質量%、40~80質量%、又は60~75質量%の範囲であることが好ましい。
【0068】
水性接着液は、界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれを用いてもよいが、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤及び高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
【0069】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型界面活性剤;アセチレン系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を好ましく用いることができ、より好ましくはアセチレン系界面活性剤である。
【0070】
アセチレン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレン基を有する界面活性剤等を挙げることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、アセチレン基を有するグリコールであって、好ましくはアセチレン基が中央に位置して左右対称の構造を備えるグリコールであり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造を備えてもよい。
【0071】
アセチレン系界面活性剤の市販品としては、例えば、エボニックインダストリーズ社製サーフィノールシリーズ「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール485」等、日信化学工業株式会社製オルフィンシリーズ「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
【0072】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シルフェイスSAG002」、「シルフェイス503A」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0073】
また、その他の非イオン性界面活性剤として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲン102KG」、「エマルゲン103」、「エマルゲン104P」、「エマルゲン105」、「エマルゲン106」、「エマルゲン108」、「エマルゲン120」、「エマルゲン147」、「エマルゲン150」、「エマルゲン220」、「エマルゲン350」、「エマルゲン404」、「エマルゲン420」、「エマルゲン705」、「エマルゲン707」、「エマルゲン709」、「エマルゲン1108」、「エマルゲン4085」、「エマルゲン2025G」等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0074】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製エマールシリーズ「エマール0」、「エマール10」、「エマール2F」、「エマール40」、「エマール20C」等、ネオペレックスシリーズ「ネオペレックスGS」、「ネオペレックスG-15」、「ネオペレックスG-25」、「ネオペレックスG-65」等、ペレックスシリーズ「ペレックスOT-P」、「ペレックスTR」、「ペレックスCS」、「ペレックスTA」、「ペレックスSS-L」、「ペレックスSS-H」等、デモールシリーズ「デモールN、デモールNL」、「デモールRN」、「デモールMS」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0075】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アセタミンシリーズ「アセタミン24」、「アセタミン86」等、コータミンシリーズ「コータミン24P」、コータミン86P」、「コータミン60W」、「コータミン86W」等、サニゾールシリーズ「サニゾールC」、「サニゾールB-50」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0076】
両性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アンヒトールシリーズ「アンヒトール20BS」、「アンヒトール24B」、「アンヒトール86B」、「アンヒトール20YB」、「アンヒトール20N」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0077】
界面活性剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の含有量は、水性接着液の全質量に対し、0.1~5質量%が好ましく、0.2~2質量%がより好ましい。
【0078】
水性接着液には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記した各成分に加え、任意的に、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、UV吸収剤、赤外線吸収剤、架橋剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)、定着剤等の各種添加剤が含まれてもよい。水性接着液の全質量に対し、各種添加剤は、その合計量で、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0079】
水性接着液の粘度は、インクジェット方式に適した吐出性を得るために、23℃において1~30mPa・sであることが好ましく、2~20mPa・sであることがより好ましく、3~15mPa・sであることがさらに好ましい。本明細書において、水性接着液の粘度は、回転式粘度計を用いて23℃において測定した数値である。粘度測定装置には、例えば、株式会社アントンパール・ジャパン製「レオメーターMCR302」を用いることができる。
【0080】
水性接着液の表面張力は、23℃において20mN/m~40mN/mが好ましい。本明細書において、水性接着液の表面張力は、バブルプレッシャー法(最大泡圧法)に従って求めることができる。例えば、SITA Process Solutions社製「SITA Messtechnik GmbH science line t60」を用いて表面張力を測定することができる。
【0081】
水性接着液の製造方法は特に限定されず、各成分を適宜混合することで所望の水性接着液を得ることができる。得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0082】
「水性インク」
次に、転写シートの製造方法に用いるための水性インクについて説明する。水性インクは、色材を含む水性組成物である。
【0083】
色材としては、顔料、染料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。転写シートに画像が形成された状態で、さらには転写物に画像が転写された状態で、画像の耐候性及び耐水性の点から、顔料を好ましく用いることができる。
【0084】
顔料は、顔料分散体としてインクに好ましく配合することができる。顔料分散体としては、顔料が溶媒中に分散可能なものであって、インク中で顔料が分散状態となるものであればよい。例えば、顔料を顔料分散剤で水中に分散させたもの、自己分散性顔料を水中に分散させたもの、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を水中で分散させたもの等を用いることができる。
【0085】
顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0086】
顔料の平均粒子径は10~500nmであることが好ましく、10~200nmであることがより好ましい。これらの顔料の平均粒子径は、発色性の観点から10nm以上であることが好ましく、分散安定性の観点から500nm以下であることが好ましい。インクジェットインクの場合は吐出性の観点から500nm以下が好ましい。本明細書において、顔料の平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、動的光散乱法によって測定した数値である。
【0087】
インク中に顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤や界面活性剤に代表される顔料分散剤を好ましく用いることができる。高分子分散剤の市販品として、例えば、エボニックジャパン株式会社製のTEGOディスパースシリーズ「TEGOディスパース740W、750W、755W、760W」、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ「ソルスパース20000、27000、41000、43000、44000、46000」、BASFジャパン株式会社製のジョンクリルシリーズ「ジョンクリル57J、60J、63J」、ビックケミー・ジャパン株式会社製の「DISPERBYK-102、185、190、193、199」、「BYKJET-9152」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0088】
界面活性剤型分散剤には、インク中の顔料の分散安定性を考慮して、非イオン性界面活性剤を用いることができる。界面活性剤型分散剤の市販品として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲンA-60、A-90、A-500、420」等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0089】
顔料分散剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料分散剤を用いる場合では、顔料分散剤の含有量はその種類によって異なり特に限定はされない。例えば、顔料分散剤の含有量は、有効成分の質量比で、顔料1に対し、0.005~2.0が好ましく、0.01~1.0がより好ましく、0.1~0.5がさらに好ましい。
【0090】
顔料として自己分散性顔料を用いてもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基としては、イオン性を有するものが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基等が好ましい。
【0091】
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理等が挙げられる。
【0092】
自己分散性顔料としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ「CAB-O-JET200」、「CAB-O-JET300」、「CAB-O-JET250C」、「CAB-O-JET260M」、「CAB-O-JET270」、「CAB-O-JET450C」等、オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW-1」、「BONJET BLACK CW-2」、「BONJET BLACK CW-3」、「BONJET BLACK CW-4」等を好ましく使用することができる(いずれも商品名)。
【0093】
顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、例えば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ等が挙げられる(いずれも商品名)。また、顔料として、顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を用いてもよい。
【0094】
色材として染料を配合してもよい。染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等が挙げられる。これらのうち、水溶性のもの及び還元等により水溶性となるものを好ましく用いることができる。より具体的には、アゾ染料、ローダミン染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料、メチレンブルー等が挙げられる。
【0095】
色材は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。色材は、インク全量に対し、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~5質量%がさらに好ましい。水性インクとして白色顔料を用いてベースカラー層を形成する場合には、転写物において被転写物の隠蔽性を高めるために、白色顔料は、インク全量に対し、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましい。
【0096】
水性インクは、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤は、剥離性支持体へのインクの浸透性又は濡れ性をより高め、インクの塗工性をより改善することができる。
【0097】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤を含むことがより好ましい。界面活性剤としては、上記した水性接着液で説明したものから1種、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。界面活性剤は、有効成分量で、水性インクの全質量に対し、0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~2質量%であることがより好ましい。
【0098】
水性インクは、バインダー樹脂をさらに含んでもよい。バインダー樹脂は、水分散性樹脂、水溶性樹脂等、これらの組み合わせを挙げることができる。バインダー樹脂を含む水性インクを用いることで、剥離性支持体に樹脂塗膜を形成し画像の定着性及び塗膜強度をより高めることができる。このように画像が形成された転写シートを用いる場合、被転写物へ画像が転写された状態においても、転写物の画像の定着性及び塗膜強度がより高まり、堅牢性をより改善することができる。
【0099】
水分散性樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;ウレタン系樹脂;メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂に親水性の官能基を導入するか、又は、分散剤等で表面処理することで、水中油型樹脂エマルションを形成し、これを水性接着液に投入してもよい。水分散性樹脂の平均粒子径は、インクジェット吐出性の観点から、10~300nm、好ましくは50~150nmの範囲とするとよい。また、水性インクに投入する樹脂エマルションにおいて樹脂粒子の平均粒子径がこれらの範囲を満たすことが好ましい。
【0100】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸中和物、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/スルホン酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0101】
バインダー樹脂は、水性インクの全質量に対し、1~20質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。水性インクとして白色顔料を用いてベースカラー層を形成する場合には、転写物において被転写物の隠蔽性を高めるために、白色顔料の含有量を多くした方がよいが、白色顔料の含有量に合わせてバインダー樹脂の含有量も多くした方がよい。この観点から、白色顔料を含む水性インクの場合は、バインダー樹脂は、水性インクの全質量に対し、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましい。
【0102】
水性インクは、水を含むことが好ましく、主溶媒が水であってもよい。水の詳細については上記した水性接着液で説明した通りである。水は、粘度調節の観点から、インク全量に対して20~90質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましく、40~80質量%であることがさらに好ましい。
【0103】
水性インクは、水に加えて、又は水に代えて水溶性有機溶剤をさらに含むことができる。水溶性有機溶剤としては、上記した水性接着液で説明したものから1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。水溶性有機溶剤は、濡れ性、保湿効果、粘度調節等の観点から、インク全量に対し、1~80質量%で含ませることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%がより好ましい。水溶性有機溶剤及び水の合計量は、水性接着液の全質量に対し、水性接着液の全質量に対して50~98質量%、60~95質量%、又は70~95質量%の範囲であることが好ましい。
【0104】
水性インクには、上記した各成分に加え、任意的に、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、UV吸収剤、赤外線吸収剤、架橋剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤(保湿剤)、表面張力調整剤(浸透剤)、定着剤等の各種添加剤が含まれてもよい。水性インクの全質量に対し、各種添加剤は、その合計量で、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0105】
水性インクの粘度は、インクジェットインクに適した吐出性を得るために、23℃において1~40mPa・sであることが好ましく、4~20mPa・sであることがより好ましく、3~15mPa・sであることがさらに好ましい。水性インクの粘度は上記した水性接着液の粘度の測定方法に準拠して測定することができる。
【0106】
水性インクの表面張力は、23℃において20~40mN/mが好ましい。水性インクの表面張力は上記した水性接着液の粘度の測定方法に準拠して測定することができる。
【0107】
水性インクの作製方法は、特に限定されないが、各成分を適宜混合することで所望のインクを得ることができる。例えば、顔料の分散性を高めるためにビーズミル等の分散機を用いてもよい。また、得られた組成物をフィルター等を用いてろ過してもよい。また、各種添加剤を適宜添加してもよい。
【0108】
「剥離性支持体」
次に、転写シートの製造方法に用いるための剥離性支持体について説明する。剥離性支持体は、その表面に画像層及び接着層を含む積層体を形成した後に、剥離性支持体から積層体を剥離可能な状態となるものである。剥離性支持体は、その表面が剥離性表面であり、例えば、その表面に凹凸形状を有する構成、その表面が剥離性を備える構成等、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0109】
剥離性支持体の一形態は、基材と、基材の上に剥離可能に形成される保護層とを備える。基材は、保護層に対して剥離可能であれば特に限定はなく、不透明、半透明、又は透明の基材を用いることができる。また、基材は、剛性基材及び柔軟性基材のいずれであってもよいが、被転写物の表面形状に追従可能であるように柔軟性基材が好ましい。基材としては、離型性基材、例えば、離型処理紙、離型処理したプラスチックフィルム等が好ましく用いられる。プラスチックフィルムとしては、特に限定はないが、機械的強度、耐熱性、作業性などの点からポリエステル類等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。離型性は、慣用の方法、例えば、離型剤で基材を処理することにより付与できる。離型剤としては、ワックス、高級脂肪酸塩、脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等が挙げられる。保護層は、基材から剥離可能であり、転写物に転写された状態で画像を保護するとともに、画像品質を大きく妨げない限り、種々の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー等を用いることができる。
【0110】
剥離性支持体の他の形態は、基材と、基材の上に剥離可能に形成される保護層と、保護層の上に形成されるインク受容層とを備える。インク受容層は、インクを吸収保持可能な材料を用いることができ、無機粒子、カチオン性重合体、親水性重合体、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子、エラストマー等で構成することができる。
【0111】
剥離性支持体の市販品としては、例えば、Eastman Kodak社(米国)、McLaud Technology社(米国)、ecofreen社(韓国)等から入手可能である転写フィルムが挙げられる。
【0112】
「転写シートの製造方法」
以下、水性インク及び水性接着液を用いて転写シートを作製する方法について説明する。
【0113】
まず、剥離性支持体に水性インクをインクジェット方式で吐出して画像を形成することについて説明する。
【0114】
インクジェット方式は、基材に非接触で、オンデマンドで簡便かつ自在に画像形成をすることができる印刷方式である。インクジェット方式は、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式等のいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから水性インクを吐出させ、吐出された水性インクの液滴を基材に付着させるようにすることが好ましい。
【0115】
水性インクは、単色インクであってもよく、多色インクであってもよい。多色インクの場合は、剥離性支持体に複数のインクを順次に付与してカラー画像を形成し、その後に水性接着液を付与するとよい。多色インクにおいて複数のインクはそれぞれ水性インクであることが好ましい。
【0116】
水性インクは、被転写物の表面の隠蔽性を得る観点から、剥離性支持体に水性インクにて画像を形成した後に、画像の上に白色顔料インク等の隠蔽性の高い色調のインクを用いてベースカラー層を形成してもよい。ベースカラー層を形成する場合は、剥離性支持体に画像を形成し、画像の上にベースカラー層を形成し、その後に水性接着液を付与するとよい。画像及びベースカラー層を形成するインクはそれぞれ水性インクであることが好ましい。
【0117】
次に、画像に少なくとも部分的に重なるように水性接着液をインクジェット方式で吐出することについて説明する。
【0118】
インクジェット方式としては特に限定されず、上記した水性インクで説明した通りである。水性インク及び水性接着液は、同じインクジェット印刷装置を用いてインラインで印刷されてもよいし、又は、別々のインクジェット印刷装置を用いて印刷されてもよい。
【0119】
画像が形成された剥離性支持体において、画像が形成された領域に少なくとも部分的に重なるように水性接着液を付与する。転写シートから選択的に画像を被転写物に転写するために、画像の形状に重なるように水性接着液を付与することが好ましい。すなわち、剥離性支持体において、水性接着液は画像が形成された領域に付与され、画像が形成されない領域に付与されないことが好ましい。これによって、被転写物に転写された状態において、接着層が形成される領域の上には画像層が形成されることで、転写物の表面において接着層の露出が防止され、接着剤によるベタツキをより防止することができる。なお、画像の輪郭部において画像の外側に水性接着液が多少付与されることまで排除されない。
【0120】
画像が形成された剥離性支持体に、水性接着液は1回で付与してもよく、又は2回以上付与してもよい。水性接着液は1回で付与されて、画像が形成された剥離性支持体に1層の接着層が形成されても十分に転写性及び堅牢性を得ることができる。水性接着液を2回以上付与する場合は、水性接着液は同じであっても異なってもよいが、少なくとも1回分の水性接着液に樹脂A及び樹脂Bが含まれることが好ましい。
【0121】
剥離性支持体に水性インク及び水性接着液が付与された後に、剥離性支持体から水分を除去する処理をさらに設けてもよい。例えば、剥離性支持体を熱処理、送風処理、除湿処理等で乾燥する方法がある。熱処理では、水性接着液の接着性に影響しない範囲で行うとよく、例えば40℃~140℃、1分~1時間で行うことが好ましい。
【0122】
なお、剥離性支持体に水性インクを付与した後から、水性接着液を付与する前までに、水性インクが付与された剥離性支持体から水分を除去する処理をさらに設けてもよい。これによって水性インクのドットの広がりを抑制して、画像の滲みをより防止することができる。なお、剥離性支持体の上で、水性インクと水性接着液とを混和させて、被転写物への画像の接着性をより高める観点から、剥離性支持体に水性インク及び水性接着液を付与する間に乾燥工程を設けなくてよい。すなわち、水性インクが付与された剥離性支持体に、ウェットオンウェットで水性接着液を付与するとよい。
【0123】
「転写シート用水性接着液及び作製キット」
一実施形態による転写シート用水性接着液は、剥離性支持体にインクジェット方式で画像を形成し、及び画像に少なくとも部分的に重なるようにインクジェット方式で水性接着液を付与し、転写シートを製造する方法に用いられる水性接着液であって、樹脂Aと、樹脂Aよりもガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含むものである。水性接着液の詳細については上記した通りである。
【0124】
一実施形態によれば、転写シートの作製キットとして、上記した実施形態による水性インク及び水性接着液の組み合わせを提供することができる。他の実施形態によれば、転写シートの作製キットとして、上記した実施形態による水性インク、水性接着液、及び剥離性支持体の組み合わせを提供することができる。
【0125】
「転写シート」
一実施形態による転写シートは、剥離性支持体、及び剥離性支持体の上に形成され、画像層と接着層とを含む積層体を備え、接着層は、樹脂Aと、樹脂Aよりもガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含むものである。この転写シートは、上記した実施形態による水性インク、水性接着液及び剥離性支持体を用いて、上記した製造方法にしたがって得ることができる。
【0126】
接着層が樹脂Aと、樹脂Aよりもガラス転移温度が80℃以上高い樹脂Bとを含むことで、転写シートから被転写物への画像層と接着層とを含む積層体の転写性を改善し、この積層体が転写された転写物の堅牢性を改善することができる。なお、転写シートにおいて、画像層と接着層はそれぞれ区別できる積層体であってもよいが、剥離性支持体において画像層と接着層が混和して互いの成分が傾斜した積層体であってもよく、さらに画像層と接着層が混和して互いに成分が分散した状態の積層体であってもよい。
【0127】
剥離性支持体の詳細については上記説明した通りであり、例えば、基材と基材の上に形成される保護層とを備え、保護層の上に積層体が形成される。さらに、剥離性支持体の画像が形成される面にインク受容層が形成されてもよい。
【0128】
「転写物の製造方法」
一実施形態による転写物は、被転写物、及び転写シートから被転写物に転写された画像を備えるものである。この転写物は、上記した実施形態による転写シートを用いて得ることができる。
【0129】
一実施形態による転写シートを用いて得られる転写物は、転写シートから、画像層と接着層とを含む積層体が転写されたものであって、接着層が、上記した実施形態による樹脂A及び樹脂Bを含むものであることが好ましい。これによって、転写物に転写された画像の堅牢性を改善することができる。
【0130】
以下、転写物を製造する方法について説明する。転写物を製造する方法は特に限定されず、通常の方法に従って行うことができる。例えば、被転写物の表面に転写シートを添付し、必要に応じて加熱処理をし、転写シートから剥離性支持体を剥がし取ることで、被転写物の表面に転写シートから画像が転写された転写物を得ることができる。
【0131】
被転写物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、チタン、錫、クロム、カドミウム、合金(例えばステンレス、スチール等)等の金属基材;ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス等のガラス基材;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PE)、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の樹脂基材;アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化ケイ素、陶器等のセラミック基材等が挙げられる。これらの基材の形状は特に限定されず、フィルム状、シート状、板状、成形体、構造物等であってよい。これらの基材は、メッキ層、金属酸化物層、樹脂層等が形成されていてもよく、又はコロナ処理等を用いて表面処理されていてもよい。
【0132】
さらに、被転写物としては、例えば、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙;織布、編物、不織布等の布又は布製製品;調湿用、吸音用、断熱用等の多孔質建材;木材、コンクリート、多孔質材等が挙げられる。ここで、普通紙は、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙、又はいわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。
【0133】
布を構成する繊維としては、例えば、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維および鉱サイ繊維等の無機繊維;セルロース系、たんぱく質系等の再生繊維;セルロース系等の半合成繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフッ化エチレン等の合成繊維;綿、麻、絹、毛等の天然繊維等の各種の繊維から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0134】
被転写物としては、軟質基材及び硬質基材のいずれであってもよい。一実施形態による転写シートを用いることで、布のように伸縮し軟質な基材に対しても画像の転写性及び堅牢性を十分に得ることができる。また、一実施形態による転写シートを用いることで、プラスチック等の硬質な基材に対しても、転写物において画像の転写性及び堅牢性を十分に得ることができる。
【0135】
転写温度としては、50~200℃が好ましい。転写に用いる加熱装置としては、熱エネルギーと同時に圧力を印加する方法による加熱装置が好ましく、例えば、ヒートローラー装置やヒートプレス装置等が挙げられる。
【実施例0136】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。
【0137】
「水性インクの作製」
表1に水性インク処方を示す。表中に示す処方に従い、顔料、分散剤、水20gをポリプロピレン(PP)ボトルに入れ、撹拌分散機としてロッキングミルRM-05(株式会社セイワ技研製)で分散し、分散体を得た。ロッキングミルの条件は、φ0.5mmジルコニアビーズ、60Hz、3時間とした。#120メッシュでビーズを濾別後、樹脂、水溶性溶剤、界面活性剤、残りの水を添加し、ミックスロータで100rpm、20分間撹拌した後、3μmフィルターで濾過して水性インクを得た。表中に示す各成分の含有量は、有効成分量で示す。
【0138】
「水性接着液の作製」
表2に水性接着液処方を示す。表中に示す処方に従い原材料を混合し、ミックスロータで100rpm、20分間撹拌し、3μmフィルターで濾過して水性接着液を得た。表中に示す各成分の含有量は、有効成分量で示す。
【0139】
「樹脂のガラス転移温度の測定方法」
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した。詳しくは、示差走査熱量測定(DSC)を株式会社リガク製熱分析装置(ThermoplusEVO2DSC8231)を用いて行った。測定条件は、室温から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで-50℃まで冷却して測定用サンプルを調製した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0140】
また、示差走査熱量測定(DSC)でガラス転移温度の測定が難しい樹脂の場合は、動的粘弾性測定で測定したガラス転移温度を用いた。詳しくは、動的粘弾性測定を株式会社ユービーエム製動的粘弾性測定装置(Rheogel-E4000)を用いて行った。測定条件は、周波数10Hz、昇温速度毎分2℃であり、動的粘弾性における損失弾性率(E’’)が極大となった時の温度をガラス転移温度とする。
【0141】
用いた成分は以下の通りである。
カラー顔料:カーボンブラック「MOGUL L」(商品名)、キャボットコーポレーション製。
カラー顔料:シアン顔料「ブルーNo.4」、大日精化工業株式会社製。
ホワイト顔料:酸化チタン「CR-80」(商品名)、石原産業株式会社製。
分散剤「DISPERBYK-190」(商品名):有効成分量40%、ビッグケミージャパン株式会社製。
水溶性溶剤:グリセリン、b.p.=290℃。
水溶性溶剤:プロピレングリコール、b.p.=188℃。
界面活性剤:アセチレングリコール系界面活性剤「サーフィノール485」(商品名)、有効成分量100%、日信化学工業株式会社製。
【0142】
用いた成分は以下の通りである。
(樹脂)
ウレタン系樹脂(スーパーフレックス460)(商品名):第一工業製薬株式会社製。
アクリル系樹脂(モビニール702)(商品名):ジャパンコーティングレジン株式会社製。
ウレタン系樹脂(スーパーフレックス420)(商品名):第一工業製薬株式会社製。
エチレン-酢酸ビニル共重合体(ポリゾールEVA AD-18)(商品名):昭和電工株式会社製。
スチレンアクリル系樹脂(NeoCryl A-1120)(商品名):楠本化成株式会社製。
アクリル系樹脂(モビニール727)(商品名):ジャパンコーティングレジン株式会社製。
スチレンアクリル系樹脂(モビニール1760)(商品名):ジャパンコーティングレジン株式会社製。
ウレタン系樹脂(スーパーフレックス870)(商品名):第一工業製薬株式会社製。
ウレタン系樹脂(タケラックW-6020)(商品名):三井化学株式会社製。
ウレタンアクリル系樹脂(DAOTAN TW6462)(商品名):
アクリル系樹脂(NeoCryl A1105)(商品名):ダイセル・オルネクス株式会社製。
ウレタン系樹脂(タケラックW-605)(商品名):三井化学株式会社製。
ウレタン系樹脂(タケラックWS-4022)(商品名):三井化学株式会社製。
アクリル系樹脂(NeoCryl XK-52)(商品名):楠本化成株式会社製。
スチレンアクリル系樹脂(モビニール972)(商品名):ジャパンコーティングレジン株式会社製。
【0143】
得られた水性インク及び水性接着液を表3に示す組み合わせで用いて次の手順で転写シートを作製した。マスターマインド社フラットベッドプリンター「MMP8130」に、表3に示す組み合わせで水性インク及び水性接着液を導入した。転写フィルム(Kodak社製;DTF Kodak Transfer Film A3+ 13’’ x 19’’ COLD Peel)に水性インクを吐出して画像パターンを印刷し、続いて画像パターン上に水性接着液を吐出した。水性インクと水性接着液との画像パターンを同一形状にし転写フィルム上の同一の位置に印刷し、水性インクと水性接着液の塗布領域が重なるように印刷した。得られた印刷物を、140℃、10分間でオーブンで熱処理を行った。
【0144】
乾燥した転写シートをカットし、被転写物に重ねて、ヒートプレス機にて160℃、30秒間で熱処理を行い、被転写物に画像パターンを転写し、転写フィルムの剥離性支持体を剥がし取り転写物を得た。被転写物は、綿布帛(JISL0803準拠、試験用添付白布、綿(カナキン3号))とポリカーボネート板(AGC株式会社製「カーボグラスC110C」)を用いた。
【0145】
実施例12では、水性インクNo.1、水性インクNo.3、及び水性接着液No.4をこの順で吐出し、得られた印刷物をオーブンで熱処理した以外は、上記と同様にして転写物を用意した。
【0146】
「転写性」
各被転写物への転写シートからの画像の転写性を以下の基準で評価した。印刷した文字はフォント:MSゴシック、全角ひらがなである。
A:5ポイント以下の文字を完全に転写することができた。
B:5ポイント以下の文字の転写が不完全であった。6ポイントの文字を完全に転写することができた。
C:6ポイントの文字の転写が不完全であった。
【0147】
「堅牢性」
転写シートから画像が転写された各転写物について、乾摩擦の堅牢性を次の基準で評価した。乾摩擦の堅牢性はJIS L0849に規定される乾燥試験に従い、I型試験機を用いて試験を行って、汚染グレースケールを用いて評価した。
A:4級以上
B:3級~3-4級
C:2級~2-3級
D:1-2級以下
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
表中に示す通り、各実施例の水性インク及び水性接着液の組み合わせでは、各種基材に対し堅牢性が優れた結果が得られた。さらに、各種基材に対し転写性も優れた結果であった。
【0152】
実施例1~15は水性接着液に各種樹脂を組み合わせて用いている例であり、いずれも結果が良好であった。実施例1~6、9~12は、水性接着液において一方の樹脂AのTgが0℃未満であるか、又は他方の樹脂BのTgが95℃超過であり、結果がより良好であった。実施例1~6、11は、水性接着液において一方の樹脂AのTgが0℃未満であり、かつ他方の樹脂BのTgが95℃超過であり、結果がさらに良好であった。実施例1~3より、水性接着液においてTgが低い樹脂Aの、Tgが高い樹脂Bに対する割合が大きい場合は軟質基材の堅牢性がより向上し、この割合が小さい場合は硬質基材の堅牢性がより向上する傾向がわかる。
【0153】
実施例11のホワイトインクの印刷、実施例12のブラックインクとホワイトインクの重ね印刷、実施例13のシアンインクの印刷においても良好な結果が得られた。実施例15の樹脂が含まれない水性インクを用いた場合も結果が良好であった。
【0154】
比較例1~3は、水性接着液に含まれる樹脂が1種であるか、水性接着液に含まれる2種の樹脂のTgの差が小さい例であり、堅牢性が低下した。