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特開2024-178289水素媒介塩類似水素化物開始アニオン連鎖移動重合のための方法及び炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒ならびにそれから製造されるポリマー分布組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178289
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】水素媒介塩類似水素化物開始アニオン連鎖移動重合のための方法及び炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒ならびにそれから製造されるポリマー分布組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20241217BHJP
   C08F 2/38 20060101ALI20241217BHJP
   C08F 4/48 20060101ALI20241217BHJP
   C08F 12/08 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08F2/00 A
C08F2/38
C08F4/48
C08F12/08
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024161895
(22)【出願日】2024-09-19
(62)【分割の表示】P 2022064292の分割
【原出願日】2017-04-04
(31)【優先権主張番号】62/318,258
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/320,003
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイマン,ジュニア,ウイリアム・ジェイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規な重合条件による、水素媒介塩類似水素化物開始アニオン性ポリマー分布の形成方法を提供する。
【解決手段】分子水素が連鎖移動剤であり、リチウムアミノアルコキシド錯化塩類似水素化物(LOXSH)が、アニオン重合性炭化水素モノマーに塩類似水素化物を付加することによってアニオン性ポリマー連鎖開始種を形成する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素媒介塩類似水素化物開始重合を実施する方法であって、1つ以上のアニオン重合可能な炭化水素モノマーを、可溶性塩類似水素化物触媒を含む反応媒体に、分子水素を含む雰囲気下で供給することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
水素媒介塩類似水素化物開始重合を実施する方法であって、1つ以上のアニオン重合可能な炭化水素モノマーを、(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/または塩類似金属アミド、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から
、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、ならびに(vii)H2よりpKaが高い、前記芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒から形成される可溶性塩類似水素化物LOXSH触媒を含む反応媒体に供給することを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
前記アニオン重合可能な炭化水素モノマーがビニル芳香族モノマーである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アニオン重合可能な炭化水素モノマーが、スチレン、メチルスチレンのo-、m-、及びp-異性体、p-イソプロピルスチレン、2,4-ジエチルスチレン、o-エチルスチレン、3,5-ジイソブチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2-エチル-4-メチルスチレンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記アニオン重合可能な炭化水素モノマーが、1)ビニル芳香族モノマー及びスチレン系モノマー、もしくは2)スチレン系モノマー及びスチレン、または3)スチレンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記反応媒体が、pKaがH2のものより高い炭化水素溶媒である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
分子水素の分圧が、約0.5バールから約19.0バールの間の圧力で維持される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記方法の温度が約20℃から約130℃の範囲に維持される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
モノマーの装填の合計対最初に形成される可溶性塩類似水素化物触媒のモル比が約10:1から約1000:1である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記塩類似水素化物触媒がLOXSH触媒である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマーがスチレンであり、前記塩類似水素化物LOXSH触媒が、分子水素、有機リチウム化合物、任意にTMEDA、N,N-ジメチルエタノールアミンから、エチルベンゼン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンのうちの1種以上を含む炭化水素溶媒の反応媒体中で形成されるLOXLiH触媒であり、前記重合温度が約20℃から約100℃未満の間に維持され、分子水素の分圧が約0.5バールから約6.0バールの間に維持され、モノマーの装填の合計対最初に形成される可溶性塩類似水素化物触媒のモル
比が約10:1から約600:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記LOXLIH触媒が化学式[DMEA-xLiyzを有し、前記触媒が:(i)約y当量の有機リチウム化合物、(ii)任意にTMEDA化合物、(iii)約x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼン、(v)H2よりpKaが高い、前記芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、ならびに(vi)分子水素を接触させる工程から生成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、前記式はさらに、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子錯体、すなわち、[DMEA-xLiyz XTMEDAを、触媒[DMEA-xLiyz1モル当たりXモルのTMEDAのモル比で含むことができ、X=0.0001から約8.0である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モノマーがスチレンであり、前記塩類似水素化物LOXSH触媒が、分子水素、有機リチウム化合物、及び有機マグネシウム化合物、任意にTMEDA、N,N-ジメチルエタノールアミンから、エチルベンゼン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサンのうちの1種以上を含む炭化水素溶媒の反応媒体中で形成される二金属LOXMgH2触媒
であり、前記重合温度が20℃から90℃の間に維持され、分子水素の分圧が約0.5バールから約6.0バールの間に維持され、モノマーの装填の合計対最初に形成される可溶性塩類似水素化物触媒のモル比が約10:1から約600:1である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記可溶性LOXSH触媒がポリ3級アミン(PTA)促進剤を含み、アルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/または塩類似金属アミドを用いて形成され、前記PTA対LOXSH触媒の形成において装填されるアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計のモル比が、1:10,000から約8:1である、請求項2、11、または13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機リチウム化合物が、添加されてもインサイチュで生成されてもよいn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、アリルリチウム、ビニルリチウム、フェニルリチウム、1-ヘキシル-1-フェニルリチウム、1-ヘキシル-1,1-ジフェニルリチウム、シクロヘキシルリチウム、またはポリ(スチリル)リチウム化合物である、請求項2、11、または13に記載の方法。
【請求項16】
前記有機マグネシウム化合物が、添加されてもインサイチュで生成されてもよいブチルエチルマグネシウム(BEM)、ジ-n-ブチルマグネシウム(DBM)、n-ブチル-n-オクチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム、ジシクロヘキシルマグネシウム、またはポリ(スチリル)マグネシウム化合物である、請求項2または13に記載の方法。
【請求項17】
前記極性錯化剤が、構造:
【化1】
のうちの少なくとも1つであり、Rは、独立して、1つ以上の3級アミン及び1つのヒドロキシルと結合を形成することが可能な有機基であり、R1は、独立して、他の3級アミ
ンでさらに置換されてもよい有機基であり、Σは:i)I、II、III、IV、V、及びVIについてはOまたはNR1を含むことができ、ii)ならびにVIIはOもしくは
NR1またはCH2を含むことができ、指標値nは、独立して、0または0より大きい整数である、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記極性錯化剤が、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、N-メチルジエタノールアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、または1-メチル-2-ピロリジンメタノールから選択される少なくとも1つのアミノアルコールである、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記PTA促進剤が、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計対PTAのモル比約10,000対1.0から約1.0対約8.0で含まれる、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記PTA促進剤が、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、スパルテイン、イソスパルテイン、及び1,4-メチルピペラジンのうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記芳香族炭化水素が、ベンゼン、トルエン、メシチレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、アミルベンゼン、1.2-ダリールエタン(1.2-darylethane)、1,3-ジアリールプロパン、クメン、t-ブチルベンゼン、1-アルキルナフタレン、2-アルキルナフタレン、スチレン二量体、または低分子量スチレンオリゴマー分布のうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記触媒が、実験化学式:a)[PCA-4Li62、b)[PCA-4Li84、c)[PCA-2Li64、d)[PCA-4Li128、e)[PCA-5Li1510
f)[PCA-5Li127、g)[PCA-2Li53、h)[PCA-4Li4MgH2、i)[PCA-4Li4Mg24、j)[PCA-2Li4MgH4、k)[PCA-4Li6Mg38、l)[PCA-5Li9Mg310、m)[PCA-5Li6Mg37、n
)[PCA-2Li3MgH3、o)[PCA-4Li5KH2、p)[PCA-4Li7
4、及びq)[PCA-2Li5KH4を有し、式中、[PCA-]は、独立して、より塩基性の種に1つのプロトンを引き渡した対応する極性錯化剤試薬のアルコールのアルコキシドを示しており、前記実験化学式は、任意にさらに、PTA配位子錯体を、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計対PTAのモル比約10,000対約1.0から約1.0対約8.0で含むことができる、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
[PCA-]が、独立して、[DMEA-]、「DMAEOE-]、または[MEOE-]である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(i)有機リチウム化合物及び任意に有機マグネシウム化合物、(ii)任意にポリ3級アミン促進剤化合物、(iii)3級アミノアルコール、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(iv)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族
炭化水素、(v)任意に固体アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水素化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ金属合金、またはアルカリもしくはアルカリ土類アミド、(vi)H2よりpKaが高い、前記芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、ならびに(vii)分子水素から形成される、炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項25】
前記極性錯化剤が、構造:
【化2】
のうちの少なくとも1つであり、Rは、1つ以上の3級アミン及び1つのヒドロキシルと結合を形成することが可能な有機基であり、R1は、独立して、他の3級アミンでさらに
置換されてもよい有機基であり、Σは:i)I、II、III、IV、V、及びVIについてはOまたはNR1、ならびにii)VIIについてはOもしくはNR1またはCH2
含むことができ、指標値nは、独立して、0または0より大きい整数である、請求項24に記載の炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項26】
固体アルカリ水素化物、アルカリ金属及び/またはアルカリ金属合金、及び/または塩類似金属アミドを含む試薬から形成される、請求項24に記載の炭化水素可溶性触媒または試薬組成物であって、極性錯化剤対アルカリ金属の合計の比が、約1:1.05から約1:6の範囲の範囲であり、有機リチウム化合物対アルカリ金属のモル比が、10,000:1から1:2である、前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項27】
前記触媒が単金属水素化リチウムLOXLiH触媒である請求項24に記載の炭化水素可溶性触媒または試薬組成物であって、極性錯化剤対リチウムの比が、1:1.05から約1:6の範囲である、前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項28】
炭化水素可溶性触媒または試薬組成物であって、前記触媒が、化学式[DMEA-xLiyzを有する単金属水素化リチウムLOXLiH触媒であり、式中、z=y-xであり、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、任意に前記式は、さらにN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子錯体をリチウムの合計対TMEDAのモル比約10,000対1.0から約1.0対約8.0で含むことができる、前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項29】
下記化学式のうちの1つ以上を有する請求項28に記載の水素化リチウムLOXLiH触媒:
[DMEA-]Li2H、[DMEA-2Li3H、[DMEA-]Li32、[DMEA-
]Li43、[DMEA-2Li42、[DMEA-3Li4H、[DMEA-]Li54、[DMEA-2Li53、[DMEA-3Li52、[DMEA-4Li5H、[DM
EA-]Li65、[DMEA-2Li64、[DMEA-3Li63、[DMEA-4
Li62、[DMEA-5Li6H、[DMEA-]Li76、[DMEA-2Li75、[DMEA-3Li74、[DMEA-4Li73、[DMEA-5Li72、[DMEA-6Li7H、[DMEA-]Li87、[DMEA-2Li86、[DMEA-3Li85、[DMEA-4Li84、[DMEA-5Li83、[DMEA-6Li82、[DMEA-7Li8H、[DMEA-]Li98、[DMEA-2Li97、[DMEA-
3Li96、[DMEA-4Li95、[DMEA-5Li9H4、[DMEA-6Li93、[DMEA-7Li92、[DMEA-8Li9H、[DMEA-]Li109、[DMEA-2Li108、[DMEA-3Li107、[DMEA-4Li106、[DME
-5Li10H5、[DMEA-6Li104、[DMEA-7Li103、[DMEA-8Li102、[DMEA-9Li10H、[DMEA-]Li1110、[DMEA-2Li119、[DMEA-3Li118、[DMEA-4Li117、[DMEA-5Li116
、[DMEA-6Li115、[DMEA-7Li114、[DMEA-8Li113、[
DMEA-9Li112、[DMEA-9Li11H、[DMEA-]Li1211、[DMEA-2Li1210、[DMEA-3Li129、[DMEA-4Li128、[DMEA-
5Li12H7、[DMEA-6Li126、[DMEA-7Li125、[DMEA-8Li124、[DMEA-9Li123、[DMEA-10Li122、[DMEA-11Li12H、[DMEA-]Li1312、[DMEA-2Li1311、[DMEA-3Li1310、[DMEA-4Li139、[DMEA-5Li13H7、[DMEA-6Li137、[
DMEA-7Li136、[DMEA-8Li135、[DMEA-9Li134、[DM
EA-10Li133、[DMEA-11Li132、[DMEA-12Li13H、[DME
-]Li1413、[DMEA-2Li1412、[DMEA-3Li1411、[DMEA-4Li1410、[DMEA-5Li14H9、[DMEA-6Li148、[DMEA-7
Li147、[DMEA-8Li146、[DMEA-9Li145、[DMEA-10Li144、[DMEA-11Li143、[DMEA-12Li142、[DMEA-13Li14H、[DMEA-]Li1514、[DMEA-2Li1513、[DMEA-3Li1512
、DMEA-4Li1511、[DMEA-5Li1510、[DMEA-6Li159、[
DMEA-7Li158、[DMEA-8Li157、[DMEA-9Li156、[DM
EA-10Li155、[DMEA-11Li154、[DMEA-12Li153、[DMEA-13Li152、[DMEA-14Li15H。
【請求項30】
化学式[DMEA-xLiyzを有する請求項28に記載の水素化リチウムLOXLiH触媒であって、前記触媒は:(i)y当量の有機リチウム化合物、(ii)任意の量の
TMEDA、(iii)x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼンを、(v)H2よりpKaが高い炭化水素溶媒であるとともに、エチルベンゼンでも別のものでもよい芳香族炭化水素、及び(vi)分子水素中で接触させる工程から形成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、z、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数である、前記触媒。
【請求項31】
化学式[DMEA-xLiyzを有する請求項28に記載の単金属水素化リチウムLOXLiH触媒であって:
a)不活性雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた約y当量の(i)、任意に(ii)、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成して前駆体である「アート」錯体を形成し、これをその後前記不活性雰囲気を水素と交換もしくはさもなければ水素で置換することで[DMEA-xLiyzに変換する工程、または
b)外部の反応器内で、(vi)中、十分に混合し反応させた、約x当量の(i)の一部と任意に(ii)、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、前記溶液を水素下で水素化物形成用反応器に移送し、その後約zもしくはy-x当量の(i)の残部を装填する工程、または
c)水素雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後y当量の(i)をすべて一度に、もしくは大部分徐々に供給する工程、または
d)水素雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて約y当量の(i)を連続して、もしくは徐々に供給する工程、または
e)水素雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて約y当量の(i)を連続して、もしくは徐々に供給し、続いて所望の量の(ii)を添加する工程、または
f)水素雰囲気下、(v)の一部の中で、十分に混合し反応させた、x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後予めさらに(iv)及び/または(v)の一部で希釈した約y当量の(i)を約3分間より多い時間をかけて連続して、もしくは徐々に供給し、続いて所望の量の(ii)を添加する工程、または
g)水素雰囲気下、(v)の一部の中で、十分に混合し反応させた、約x当量の(i)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後、予めさらに(iv)及び/または(v)の一部で希釈した約x当量の(iii)をすべて一度に、もしくは連続して、または徐々に、(iii)のすべての装填が完了するまでの時間で供給し、その後約zもしくはy-x当量の(i)を供給し、続いて所望の量の(ii)を加える工程、または
h)(a)約3当量の(i)を、エチルベンゼンを含む溶媒に、2.0Mの(i)溶液の重量の1から10倍にさらに溶解し、(b)(a)を約15から25分かけて、16から21PSIGの水素雰囲気下、約35℃から約40℃にて、凝縮相への水素の物質移動にとってほぼちょうど十分に攪拌された(ii)を含まない24から28重量部の(iv)及び/または(v)に溶解した約2当量の(iii)に供給し、(c)任意に(ii)を加え、(d)前記水素の圧力を約40から約50PSIGに上げ、その後前記混合をより十分な水素の物質移動用に上げ、(e)(b)で形成された溶液を約65から約85℃に加温し、(f)さらに前記水素圧力を約75PSIGに上げ、(g)前記触媒を約1時間から約5時間超の時間熟成させることを含む、十分に混合し反応させた溶液を形成する工程から形成される、前記触媒。
【請求項32】
前記触媒が二金属リチウムマグネシウム水素化物LOXMgH2触媒である請求項24
に記載の炭化水素可溶性触媒または試薬組成物であって、極性錯化剤の、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する合計金属当量に対する比が、1:1.05から約1:6の範囲である、前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項33】
前記触媒が、実験式:a)[PCA-4Li62、b)[PCA-4Li84、c)[PCA-2Li64、d)[PCA-4Li128、e)[PCA-5Li1510、f)
[PCA-5Li127、g)[PCA-2Li53、h)[PCA-4Li4MgH2
i)[PCA-4Li4Mg24、j)[PCA-2Li4MgH4、k)[PCA-4
6Mg38、l)[PCA-5Li9Mg310、m)[PCA-5Li6Mg37、n)[PCA-2Li3MgH3、o)[PCA-4Li5KH2、p)[PCA-4Li7KH4、及びq)[PCA-2Li5KH4を有し、式中、[PCA-]は、独立して、より塩基
性の種に1つのプロトンを引き渡した対応する極性錯化剤試薬のアルコールのアルコキシドを示しており、前記実験式は、任意にさらに、PTA配位子錯体を、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計対PTAのモル比約10,000対1.0から約1.0対約8.0で含むことができる、請求項24に記載の炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項34】
[PCA-]が、独立して、[DMEA-]、「DMAEOE-]、または[MEOE-]である、請求項33に記載の炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項35】
さらに固体アルカリ水素化物、アルカリ金属及び/またはアルカリ金属合金、及び/または塩類似金属アミドを含む試薬から形成される、請求項24に記載の炭化水素可溶性触媒または試薬組成物であって、極性錯化剤対アルカリ金属の合計の比が、約1:1.05から約1:6の範囲の範囲であり、有機リチウム化合物対アルカリ金属のモル比が、10,000:1から1:2である、前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物。
【請求項36】
分子水素及び以下のいずれかから形成される、請求項24に記載の炭化水素可溶性単金属触媒または試薬組成物:
a)極性錯化剤対アルカリ金属の合計のモル比が約1:1.05から約1:6の範囲である、リチウムアルコキシドを形成するように反応させた極性錯化剤及び有機リチウム化合物、もしくは
b)極性錯化剤対リチウムのモル比が約1:1.05から約1:6の範囲である極性錯化剤及び有機リチウム化合物、または
c)極性錯化剤対リチウムの合計のモル比が約1:1.05から約1:6の範囲の範囲である極性錯化剤、少なくとも1つの固体水素化リチウム及び/またはリチウム金属及び/またはリチウムアミド、ならびに有機リチウム化合物。
【請求項37】
分子水素及び以下のいずれかから形成される、請求項24に記載の炭化水素可溶性二金属触媒または試薬組成物であって、前記触媒組成物におけるリチウム対マグネシウムのモル比が、10,000:1から1:6である、前記炭化水素可溶性二金属触媒または試薬組成物:
a)少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属アルコキシドを形成するように反応させた極性錯化剤ならびに有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物であって、極性錯化剤対アルカリ金属の合計のモル比は約1:1.05から約1:6の範囲である、または
b)リチウム及び/またはマグネシウムアルコキシドを形成するように反応させた極性錯化剤、有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物であって、極性錯化剤対合計金属当量のモル比は約1:1.05から約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する、または、
c)極性錯化剤、有機リチウム化合物、及び有機マグネシウム化合物であって、極性錯化剤対合計金属当量のモル比は約1:1.05から約1:6の範囲であり、リチウムが1当
量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する、または
d)極性錯化剤、少なくとも1つの固体水素化リチウム、金属リチウム、固体水素化マグネシウム、リチウムアミド、マグネシウムジアミド、少なくとも1つの有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物であって、極性錯化剤対合計金属当量のモル比は約1:1.05から約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する、または、
e)極性錯化剤、少なくとも1つの固体水素化マグネシウム及び/または金属リチウム、ならびに有機リチウム化合物であって、極性錯化剤対合計金属当量のモル比は約1:1.05から約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する、または、
f)極性錯化剤、固体水素化マグネシウム、及び有機リチウム化合物であって、極性錯化剤対合計金属当量のモル比は約1:1.05から約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する。
【請求項38】
請求項24に記載のLOXSH触媒の形成方法であって、(i)有機マグネシウム化合物を伴うまたは伴わない有機リチウム化合物、(ii)任意にポリ3級アミン促進剤化合物、(iii)3級アミノアルコール、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(iv)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から
、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(v)任意に固体アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水素化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ金属合金、またはアルカリもしくはアルカリ土類アミド、(vi)H2よりpKaが高い、前記芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、及び(vii)分子水素を接触またはさもなければ混合させる、前記方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、(i)、(ii)、(iii)、任意に(iv)、任意に(v)及び(vi)が:
a)不活性雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた(i)、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後:1)このようにして形成された「アート」錯体にモノマーの一部を供給し、その後2)前記不活性雰囲気をH2と交換もしくはさもなければH2で置換することでLOXSHに変換することにより、または
b)不活性雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた(i)、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成して前駆体である「アート」錯体を生成し、これをその後前記不活性雰囲気を水素と交換もしくはさもなければ水素で置換することでLOXSHに変換することにより、または
c)外部の反応器内で、(vi)中、十分に混合し反応させた、(i)の一部と任意に(ii)、(iii)、所望の量の(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、前記溶液を水素下で重合反応器に移送し、その後(i)の残部を装填することにより、または
d)水素雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、モノマーの一部を供給し、その後(i)を一度に加えることにより、または
e)水素雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて(i)を供給し、その後任意にもしくは必要であればモノマーを供給することにより、または
f)水素雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて(i)を供給し、続いて所望の量の(ii)を添加し、その後任意にもしくは
必要であればモノマーを供給することにより、接触またはさもなければ混合される、前記方法。
【請求項40】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38に記載の方法であって、前記触媒の形成において使用される水素分圧が、約0.1バールから約300バールの範囲である、前記方法。
【請求項41】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38に記載の方法であって、前記触媒の形成において使用される温度が、約-96℃から約130℃の範囲である、前記方法。
【請求項42】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38に記載の方法であって、前記触媒の形成において使用される前記極性錯化剤対前記有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウムのモル当量の装填比が、約1:1.05から約1:6モルの範囲にある金属アルキル当量1モル当たりの極性錯化剤であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する、前記方法。
【請求項43】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38に記載の方法であって、前記PTA対金属の合計のモル比が、約10,000対1.0から約1.0対約8.0である、前記方法。
【請求項44】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38に記載の方法であって:
a)前記極性錯化剤を最初にアルカリアルコキシド形成性試薬と接触させ、それにより反応混合物を形成し、ここで、極性錯化剤対アルコキシド形成性試薬の化学量論的モル当量比は、約1:1から1:1未満であり、
b)前記アルコキシド形成性試薬は、a)固体アルカリ水素化物、b)アルカリ金属、c)アルカリ金属合金、d)及びアルカリアミド、e)マグネシウムアミド、f)有機リチウム化合物、g)有機マグネシウム化合物のうちの少なくとも1つであり、
c)前記有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物をさらに加え、
d)極性錯化剤対アルカリ金属の合計の比は、約1:1.05から約1:6の範囲であり、
e)リチウム対非リチウムアルカリ金属のモル比は、1:2から約10,000:1の範囲の範囲であるか、または前記触媒組成物の前記アルカリ金属はリチウムのみであり、
f)形成される反応生成物をさらに水素で還元し、前記炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒または試薬を形成する、前記方法。
【請求項45】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38に記載の方法であって:
a)前記極性錯化剤を最初に以下の少なくとも1つのアルコキシド形成性試薬:a)固体水素化リチウム、b)リチウム金属、c)水素化マグネシウム、d)リチウムアミド、e)マグネシウムアミド、f)有機リチウム化合物、g)有機マグネシウム化合物と接触させ、それにより反応混合物を形成し、ここで、極性錯化剤対アルコキシド形成性試薬の化学量論的モル当量比は、約1:1から1:1未満であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供し、
b)前記有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物をさらに加え、
c)極性錯化剤対金属当量の合計の比は、約1:1.05から約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供し、
d)リチウム対マグネシウムのモル比は、約10,000:1から約1.0:6.0であるか、または前記触媒はリチウム金属のみからなり、
e)形成される反応生成物をさらに水素で還元し、前記炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒または試薬を形成する、前記方法。
【請求項46】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38、42、44、または45のいずれかに記載の方法であって、前記方法がさらに、スチレン系モノマーを供給してポリ(スチリル)マグネシウム及び/またはポリ(スチリル)リチウム及び/またはアニオン性ポリ(スチリル)化合物を形成し、その後分子水素と接触させることにより還元し、前記可溶性塩類似水素化物を形成することを含み、スチレン系モノマー対金属の合計のモル比が、約1:10から約20:1である、前記方法。
【請求項47】
前記炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための請求項38、42、44、または45のいずれかに記載の方法であって、前記方法がさらに、スチレン系モノマーを供給して過渡的な1-フェニルヘキシルマグネシウム化合物及び/またはポリ(スチリル)マグネシウム化合物を形成し、これをさらに分子水素で還元し、前記可溶性塩類似水素化物を形成することを含み、スチレン系モノマー対マグネシウムのモル比が、約1:5から約20:1である、前記方法。
【請求項48】
前記スチレン系モノマーがスチレンである、請求項46または47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
塩類似水素化物触媒で開始され、以下のポリマー構造:
【化3】
に示される、97wt%を超えるヘッドトゥーテール微細構造のポリマー微細構造を有するアニオン連鎖移動ポリスチレン分布組成物であって、前記ポリスチレン組成物が、a)連鎖異性化及びb)開裂重合工程から生じる副生物分布(複数可)としての連鎖長分布(複数可)を、3%未満から検出限界未満の量有し、前記連鎖長分布の前記微細構造及び純度は、以下、上記ポリマー構造のn=0からn=4の前記水素媒介塩類似水素化物開始ポリスチレ分布から得られる最も低い分子量の連鎖のガスクロマトグラフィー分析で決定される、前記組成物。
【請求項50】
請求項49に記載のアニオン連鎖移動ポリスチレン分布組成物であって、前記連鎖長分布の分子量分布は、Mnが約315から約934ダルトンの範囲であり、Mwが約392から約1705ダルトンの範囲であり、Mzが約512から約2930ダルトンの範囲であ
り、PDnが約1.24から約1.82の範囲であるとともに、標準偏差が約156から
約849ダルトンの範囲であり、非対称性が約1.40から約3.00の範囲であることを特徴とする、前記組成物。
【請求項51】
スチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)ポリスチレンであって、99wt%を超える下記ポリマー構造:
【化4】
に示されるヘッドトゥーテール微細構造のポリマー微細構造を有し、前記ポリマー微細構造中、1.0%未満の前記ポリマー鎖が1つ以上の4級炭素を有するポリマー連鎖長分布を有し、開裂重合工程から生じる副生物分布(複数可)としての前記連鎖長分布(複数可)を、1.0%未満から検出限界未満の量含み、前記連鎖長分布の前記微細構造及び純度は、以下、n=0からn=2の前記HMAPS分布から得られる最も低い分子量の連鎖のガスクロマトグラフィー分析で決定される、前記ポリスチレン。
【請求項52】
請求項51に記載のHMAPSポリマーであって、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析によって測定される前記HMAPS組成物の前記分子量分布が、Mnが約400
から約800ダルトンの範囲であり、Mwが約600から約1200ダルトンの範囲であ
り、PDnが約1.35から約1.75の範囲であり、標準偏差が約270から約550
ダルトンの範囲であり、Mw10%高が約3300ダルトン未満であることを特徴とする
、前記ポリマー。
【請求項53】
請求項51に記載のHMAPSポリマーであって、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析によって測定される前記HMAPS組成物の前記分子量分布が、Mnが約400
から約800ダルトンの範囲であり、Mwが約600から約1200ダルトンの範囲であ
り、Mzが約750から約1500ダルトンの範囲であり、PDnが約1.35から約1.75の範囲であり、標準偏差が約270から約550ダルトンの範囲であり、非対称性が約1.60から約2.2の範囲であり、Mw10%高が約2400ダルトン未満であるこ
とを特徴とする、前記ポリマー。
【請求項54】
(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内
にある芳香族炭化水素、(vii)ビニル芳香族モノマーから、(viii)H2よりp
aが高い、前記芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒中で形成さ
れる、触媒または試薬組成物。
【請求項55】
形成される請求項24もしくは54に記載の触媒または試薬組成物であって、前記分子水素が、a)重水素、またはb)三重水素で同位体濃縮され、重水素化物または三重水素化物を形成する、前記触媒または試薬組成物。
【請求項56】
形成される前記水素化物、重水素化物、または三重水素化物が、ポリ水素化物、ポリ重水素化物、またはポリ三重水素化物である、請求項55に記載の触媒または試薬組成物。
【請求項57】
(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素
化物及び/または塩類似金属アミド、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素から、(vii)H2よりpKaが高
い、前記芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒中で形成される可溶性塩類似水素化物LOXSH触媒を含む反応媒体にスチレンを供給することを特徴とする、水素媒介塩類似水素化物開始重合を実施し、前記重合反応混合物をクエンチし、洗浄して触媒成分を除去し、溶媒及び二量体を除去し、その後臭素化することによる、ポリスチレンのみから形成されるポリスチレン組成物の芳香族求電子臭素化を伴う工程によって形成される、臭素化ポリスチレン組成物の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な重合条件による、水素媒介塩類似水素化物開始アニオン性ポリマー分布の形成方法に関し、該条件では、分子水素が連鎖移動剤であり、リチウムアミノアルコキシド錯化塩類似水素化物(LOXSH)が、アニオン重合性炭化水素モノマーに塩類似水素化物を付加することによってアニオン性ポリマー連鎖開始種を形成する。これらのすべては、速度論的連鎖長分布が水素によって媒介されるか、さもなければ、モノマーに対する水素の相対的供給量によって規定される、非常に効率的から高度に効率的な触媒回路で生じる。本発明はさらに、副生物のポリマー鎖分布を含まない、大幅に改善された微細構造を有するポリスチレン組成物に関する。本発明はまた、本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合を実施する上で有用な新規な炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒及び試薬組成物に関する。本発明はさらに、ジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミンとしても知られる)、アルキルリチウム試薬、及び分子水素から形成される炭化水素可溶性水素化リチウム触媒及び試薬組成物に関し、これはまた、該触媒の形成方法、スチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)における該触媒の使用、ならびに得られる低非対称及び高「ヘッドトゥーテール」微細構造の低分子量ポリスチレン分布にも関する。
【背景技術】
【0002】
低分子量、すなわち、Mw<<4000ダルトンのポリスチレン組成物は、ポリマース
リップ剤(EPO 741147参照)等の最終用途またはさらなる合成誘導体化用の基材前駆体としての両方における様々な用途に有用である。
【0003】
かかる合成誘導体化は、芳香族求電子置換反応を伴う(US 8217120B2“Functionalized styrene oligomers and polymers”参照)。ポリスチレンのアニオン連鎖移動重合は、低分子量ポリスチレン組成物を形成する場合、連鎖移動開始剤及び触媒の形成で使用される有機リチウム試薬ならびに他のアルカリ土類金属試薬の量を実質的に低減し、アニオン連鎖移動触媒を費用効率良く有効利用するため、経済的に有益である。従って、メチルベンゼン化合物(トルエン)、ポリメチルベンゼン化合物(キシレン、メシチレン、ジュレン等)は、さらなる合成加工に適した低分子量ポリスチレン組成物の生成に対して優れた連鎖移動剤である。かかるメチルベンゼン連鎖移動剤の有効性は、一部には、それらの最も酸性の炭素水素結合のpKaが、ポリ(スチリル)アニオンの共役酸のものより少なくとも一桁小さい(すなわち
、より酸性が高い)という化学的事実による。より複雑なアルキル置換ベンゼン有機連鎖移動剤、特に最も簡単なエチルベンゼン(EB)は、カリウムt-ブトキシド、sec-ブチルリチウム、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)から生成した触媒を用いる場合、アニオン連鎖移動スチレン分布を生成するのに適した有機連鎖移動剤であることが報告(EPO 741147)または少なくとも示唆されている。
【0004】
アルキル置換芳香族炭化水素連鎖移動剤は、一般に、低分子量組成物用の当該アニオン連鎖移動組成物の分子量の比較的大きな割合を構成する。例えば、トルエン及びスチレンから生成される重量平均でMw=716を有するアニオン連鎖移動組成物に関しては、当
該組成物は12.8%のトルエンからなる。同様に、エチルベンゼン及びスチレンから生成される重量平均でMw=730を有するアニオン連鎖移動組成物に関しては、当該組成
物は14.5%のエチルベンゼンからなる。かかる有機連鎖移動剤を本質的に含まない(組成物の2wt%未満を含む)低分子量ポリスチレン組成物を生成することが望ましい場合がある。さらに、有機・無機にかかわらず、アニオン連鎖移動剤の量も同様に、得られ
るポリスチレン組成物の2wt%未満を構成することが望ましい場合がある。アニオン連鎖移動工程では、ありとあらゆる鎖は、重合されるモノマー(複数可)に付加された厳密に1つの有機連鎖移動開始剤モノマーを組み込む。アルキル置換芳香族炭化水素は、≧92.14ダルトン、すなわち、トルエンの式量以上の分子量を有する。従って、≧2wt%のトルエンからなるアニオン連鎖移動分布の最も小さいMwは、Mw≧92.14±0.02=4607ダルトンで与えられるということは純然たる数学的事実である。より高分子量のアルキル置換芳香族連鎖移動剤(例えば、エチルベンゼンまたはキシレン)から生成されるアニオン連鎖移動組成物はすべて、4607ダルトンを超える最小Mwを有さざ
るを得ない。
【0005】
理論上、エチルベンゼン及びスチレンから生成されるアニオン連鎖移動組成物は、スチレンモノマーのみから生成されるアニオン重合スチレン組成物と全く同じ構造を有する。しかしながら、全く反対に、エチルベンゼンが先行技術の条件下、例えば、EP O 741 147で連鎖移動剤として使用された場合に、かかる工程条件は、さらなる不純物及び不純物分布を有する不均一な微細構造のポリスチレン組成物を与えることが分かっている(図12参照)。かかる好ましくない不純物及び不純物分布は、連鎖異性化及び開裂工程から生じる(図1及び2参照)。その結果として、例えばEP O 741 147の実施例の組成物の連鎖長分布は、全体として、異性体ポリマーの微細構造、すなわち、芳香族求電子置換反応にとってあまり好ましくない微細構造の好ましくない集団を含む分布である。かかる不純物及び不純物分布は、かかるアニオン連鎖移動組成物のさらなる誘導体化において問題になる可能性がある。任意の個別の不純物の高濃度、すなわち、1000ppm以上の量は、市場用製品の生産の観点から好ましくない。従って、スチレンを重合して、好ましくないポリマー微細構造の特徴もしくは不純物断片が大幅に低減された、または本質的にこれを有さない低分子量ポリスチレン組成物を生成することが望まれるとともに、当該組成物は、重合されたスチレンモノマーのみからなる(/98wt%)ことが望ましい。
【0006】
EP O 741 147のアニオン連鎖移動スチレン系反応分布のwt%エチルベンゼンを計算し(wt%EB=106/Mw*100%)、下記表Iに示した。表Iに示す
実験の詳細から、EP 0 741 147の実施例2~7の比較によって、実施例4のみが、限られた幅(標準偏差)及び小さい多分散性を有する高分子アニオン連鎖移動スチレン系反応分布(ACTSR分布)を製造したことが分かる。相対的供給量もしくは装填量または両者同時のわずかな変化が、報告されている通り、極めて大きな標準偏差を有し、かつ大幅に、場合によっては天文学的に増加する多分散性を有するACTSR分布をもたらした(例えば、EP O 741 147の実施例2、3、及び7)。従って、かかる実験の詳細から、幅の狭い、すなわち、標準偏差(σn)の小さい分布を製造するため
に、極めて狭い限られた工程範囲が提供されることが分かる。
【0007】
下記表Iに示すように、EP 0 741 147 A1の実験の詳細から、EP 0
741 147の実施例2~7及びDの比較によって、実施例4のみが、限られた幅(標準偏差)及び小さい多分散性を有するアニオン連鎖移動スチレン系反応分布(ACTSR分布)を製造したことが分かる。報告されている相対的供給量もしくは試薬装填量、または両者同時のわずかな変化が、極めて大きな標準偏差を有し、かつ大幅に、いくつかの実施例では天文学的に増加する多分散性を有するACTSR分布をもたらした。従って、かかる実験の詳細から、幅の狭い、すなわち、標準偏差σnの小さい分布を製造するため
に、極めて狭い限られた工程範囲が提供されることが分かる。本先行技術の研究は、この工程技術が、当該炭化水素反応媒体への溶解性が低い、またはこれが限定された触媒組成物の好ましくない生成に見舞われていることを表している。大幅に改善された炭化水素可溶性を有し、利用性または有効性が改善され、完全には均一でないにしてもより均一なポリマー連鎖長分布の微細構造を有する低分子量スチレン系分布を製造する触媒系を有する
ことが望ましい。
【表1】
【0008】
上記表IのEP 0 741 147実施例Dに示す通り、単金属リチウム系の触媒系は、エチルベンゼンを用いたスチレンのアニオン連鎖移動重合の触媒作用において無効であるか、良くても極めて非効率的である。さらには、単金属TMEDAブチルリチウム触媒形成性試薬は、エチルベンゼンの金属化に関して位置選択性が乏しいことが十分に立証されている。Broaddusによって著された文献(Broaddus,C.D.,J.Org.Chem.1970, 35, 10.)では、エチルベンゼンのα位の水素は、ベンジル型リチウムを38%しか生成せず、オルトリチオ化が9%程度生じ、メタリチオ化が36%程度生じ、パラリチオ化が17%程度生じることが報告されている。従って、本先行文献は、エチルベンゼンをリチオ化する単金属リチウム触媒形成性試薬が、該開始エチルベンゼン部分に関して位置異性体連鎖長分布である多くの異なるポリマー微細構造を製造することを教示している。従って、エチルベンゼン(エチルベンゼンが添加されるかインサイチュで生成されるかにかかわらず)の金属化を含むアニオン連鎖移動段階を伴う経路が、除去されないまでも減少され、なお所望のアニオン連鎖移動分布連鎖長の微細構造を生成するスチレンの高効率連鎖移動重合方法があることが望ましい。かつて実現されたかかる方法は、スチレンもしくは他のスチレン系モノマーまたは他のビニル芳香族モノマーへの直接的な一段階のヒドリド付加(例えば、一段階ヒドロリチオ化反応)を伴う。かかるヒドロリチオ化モノマーは、より多くのモノマーの重合を分子水素からのそれに続く連鎖移動で効率的に開始することが可能であるべきである。かかる方法は、一貫して繰り返し該水素化物触媒を活性型で再生成することが必要である。従って、かかる水素媒介塩類似水素化物開始重合方法は、二量体以上を多く生じるべきであり、触媒量が2
00%~10,000%低減される触媒効率を特徴とする。
【0009】
本先行技術の研究(WO2010065468A1の比較例46~48に関連して)は、この工程技術が、当該炭化水素反応媒体への溶解性が低い、またはこれが限定された触媒組成物の好ましくない生成に悩まされていることを表している。従って、反応の装填のわずかな変化が、触媒の利用可能性の低下から生じる生成物分布の劇的な変化をもたらす可能性がある。EP O 741 147の方法は、長い供給時間(6~18時間)にわたって実施された極めて遅い相対的供給速度に依存し、リビングポリマー及びデッドポリマーの連鎖の平衡化を試みている。エチルベンゼンの連鎖移動剤としての主な問題は、エチルベンゼンのpKaが、ポリ(スチリル)アニオンの共役酸のものの近似値と等しくな
いまでも同桁のものであるということである。次の利点:1)Mn<930、さらに<7
00ダルトンの低分子量ポリスチレン分布、2)より経済的な試薬の利用、及び3)重合反応器のより効率的な使用及び生産性による時間の短縮を次々にもたらすように、可溶性の触媒組成物を提供することができる新たな触媒ならびにアニオン連鎖移動重合条件があることが望ましい。本発明の水素媒介塩類似水素化物開始工程の技術は、実際にかかる利点をもたらす。
【0010】
水素雰囲気下でのスチレンの重合は、スチレンのチーグラー・ナッタ重合で知られている(Murahashi,S.、Nozakura,S.、and Utsuhara Y.“Polymerization of Styrene with the Ziegler-Natta Catalysts in the Presence of
Molecular Hydrogen.”Bulletin of the Chemical Society of Japan 1960 33 431)。さらに、水素雰囲気下でのスチレンのメタロセン重合に関して少なくとも1つの報告がある(Ref.14:Tomotsu,N.,Kuramoto,M.,Takeuchi,M.,&Maezawa,H.(1996).Metallocenes 1996, 96,
211.(i)Chien,JC W.、in Tomotsu,N.,et al.“Syndiospecific Polymerization of Styrene.”Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 1998 128.1 167.)。両方の重合化学において、スチレンの水素化生成物であるエチルベンゼンの生成が言及されている。従って、Utsuharaらは、低分子量のイソタクチックポリスチレンは水素の存在下で得ることができるが、これに加えて、該重合反応に競合する別の反応、すなわち、スチレンのエチルベンゼンへの水素化が見出されたことを報告した。スチレン重合の水素媒介に対する両方の方法、すなわちチーグラー・ナッタ及びメタロセン触媒作用において、エチルベンゼンは速度論的に不活性であり、回復不能な収率の損失を示す。
【0011】
Deffieuxらは、ポリ(スチリル)リチウム分布の水素化分解(50℃で1気圧のH2)が、かなり非効率的なスチレンのアニオン重合の100℃での再開始が可能な水
素化リチウムのインサイチュでの生成につながることを報告している(Menoret,
S.,Deffieux,A.,&Desbois,P.“Initiation of
retarded styrene anionic polymerization
using complexes of lithium hydride with
organometallic compounds.”Macromolecules,(2003)36, 5988)。Deffieuxはさらに:「しかしながら、LiHをスチレンに連鎖成長反応に対して低速で加えることが不完全な開始につながる」ことを報告している。Deffieuxは、さらなる有機金属ルイス酸試薬(n,sec-Bu2Mg、もしくはBuMgOBTまたはi-Bu3Al)の添加で、LiHの溶解性及び再開始効率は改善されるが、その触媒効率は50~150%に過ぎないことを報告している。さらに、生成された二金属錯体は、連鎖停止反応速度を減少させ、活性型またはリ
ビングポリ(スチリル)リチウム種の半減期は、50℃にてシクロヘキサン及び1.1気圧のH2中、錯体を形成していないポリ(スチリル)リチウムでの40分から、二金属錯
化ポリ(スチリル)リチウムでの34時間まで、大幅に増加する。実際には、彼らは、該リビングポリ(スチリル)リチウム種の半減期を50分に回復するのに50気圧(約50バール)のH2が必要であることを報告している。Deffieuxらは、可溶性の水素
化リチウムは、スチレン重合の潜在的開始剤であることを教示している:
「水素化リチウムは、それが可溶性である限り、少なくとも100℃では非極性溶媒中でさえスチレンのアニオン重合の潜在的開始剤である。この開始剤の効率は、有機金属誘導体との錯体形成によって改善され、これは第一にその溶解性を確保し、次いでスチレンの連鎖成長反応速度を低下させる。添加剤としてn,sec-Bu2Mgが使用された場合
、Li-H結合は実際の開始部位ではなく、重合は、該2つの金属原子間の配位子交換後に進む。」
「高温では、H2がスチレンのアニオン重合において連鎖移動剤として作用する。しかし
ながら、効率のため、媒体中でのその濃度は、金属水素化物の生成の側に平衡を移動させるために高くするべきである。これは水素の高い作動圧力を要する。」
しかしながら、Deffieuxらは、LiHを可溶化するために、LiHとルイス酸、例えば、ジアルキルマグネシウム試薬、アルミニウムアルキル、及び/またはアルキルアルミニウム水素化物との錯体形成を必要としている。そのようにして生成されたかかるルイス酸錯化LiH試薬は、一度スチレン重合の開始に使用されると効率的に還元されない。その結果として、かかるルイス酸錯化ポリ(スチリル)リチウム連鎖は、効率的に還元されず、それらの還元は効率的に高活性型または超活性型のLiH開始剤を再生もしない。
【0012】
文献には、ルイス酸錯化剤を含まない高可溶性第1族金属水素化物が2つだけ知られて
いることが示されている(Stasch,A.and Fohlmeister,L.Aust.J.Chem.2015, 68, 1190-1201.、及びLiptrot,D.J.,Springer Thesis:Group 2 Mediated Dehydrocoupling,Chapter 2.Group 1-Group 2 Bimetallic Alkyls and Hydrides,Springer International Publishing, 2016, pp. 41-61参照)。これらは:(1)ブチルリチウム・リチウムt-ブトキシド混合物の「超凝集体」[(t-BuOLi)16(LiH)17]生成光分解(Thomas,D.et.al.,J.Am.Chem Soc.1997, 119, 11998、及びThomas, D. et.al., Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 1537)、ならびに(2)フェニルシランの反応性金属前駆体への適用により製造されたStashの炭化水素可溶性LiH錯体、[(DipNPPh24Li84](Dip、2,6-iPr263)(Stasch, A. Angew.
Chem. Int. Ed. 2012, 51, 1930)である。しかしながら、この炭化水素可溶性LiH試薬は、極めて活性な種であるジフェニルアセチレンまたは1,1-ジフェニルエチレンをヒドロリチオ化するのに十分反応性でも利用可能でもない。従って、当業者には、[(DipNPPh24Li84]がさらに活性の低いスチレン系または他の活性の低いビニル芳香族モノマーをヒドロリチオ化しないであろうということ及びその結果として、かかるモノマーの重合を開始しないであろうことが理解されよう。Stashはまた、コロイド状LiHの生成に起因して乳白色に変わる可能性が高いLiH/Li(pz)(pz=3,5-ジ-tert-ブチル-1H-ピラゾール)の「最初に透明な溶液」の生成も報告している。かかる「最初に透明な溶液」は、3,5-ジ-tert-ブチル-1H-ピラゾール(pzH)を1当量より多いn-ブチルリチウムと芳香族または脂肪族溶媒中で反応させ、その後フェニルシランまたはジフェニルシランを加えることで過剰なアルキルリチウム基を水素化物に転換させることによって調製される。Stashは、LiH/Li(pz)の方法と同じ合成戦略によって、さらに立体的に
嵩高いピラゾレート配位子(pz)を用い、[Na(pz)]、[Na(nBu)]、及びジフェニルシランを芳香族溶媒中で反応させることにより最初の可溶性NaH錯体[(pz)6Na7H]を調製している。[(pz)6Na7H]を製造するために使用されたものと同じ合成戦略を、KH水素化物類似体を生成するために適用することで、結晶性高分子[K(pz)]の生成及び分離のみをもたらした。従って、分子水素、すなわちH2
ら直接生成される安定な脂肪族及び/または脂環式及び/または芳香族炭化水素可溶性の単金属、二金属、または多金属アルカリ(第1族)金属水素化物は、これまで知られていない。
【0013】
彼らの刊行物(Stasch,A.and Fohlmeister,L.Aust.J.Chem.2015, 68, 1190-1201)では、以下の追加の強調を教示している:
「明確に定義された純粋に第1族金属の水素化物錯体は、極めてまれであり、実際、これまでにリチウム及びナトリウムでのみ知られている...アルカリ金属及びヒドリド性水素中心を含むほとんどの単離された化合物は、混合元素系であり、ヒドリド配位子の最も強い相互作用が非アルカリ金属中心またはメタロイドとである「アート」型錯体として表すのが最も良い...これが、これらの「アート」錯体の大部分を共有結合型ヒドリド錯体にする。この化合物クラスにおける最も顕著な例は、恐らくLiAlH4、NaBH4、及び他の関連する市販の誘導体、例えば、L-selectride(登録商標)、N-selectride(登録商標)、及びK-selectride(登録商標)(リチウム、ナトリウム、カリウムトリ-sec-ブチル(ヒドリド)ボレート)、または立体的に嵩高い配位子による誘導体である。」
従って、先行技術のルイス酸錯化水素化リチウム、水素化ナトリウム、及び水素化カリウム開始剤(例えば、Deffieuxらによって彼らのスチレンの遅延型アニオン重合で使用されたもの)は、共有結合型水素化物であり、本発明の塩類似水素化物触媒ではない。
【0014】
共有結合型水素化物とは対照的に、塩類似水素化物(イオン結合型水素化物を意味する)は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と組み合わせた、負の電荷を帯びたイオンとしての水素、すなわち、H-の存在によって定義される。ルイス酸の錯化がない塩類似水
素化物の同時重合によるスチレンへの付加に関して、Deffieuxらは、以下の背景を示している(同上):
「我々の知る限り、金属水素化物によって開始されるビニル系モノマーのアニオン重合を扱う論文はほとんどない。Williamsは、ヘキサン中で25℃にてNaHによって開始される1つのスチレン重合実験を簡潔に述べた。しかしながら、その開始効率は極めて低く、重合率は3日後に90%に達しただけであった。」
【0015】
Liaoらは、ナノメータ(≒20nm)の粒径分布を有する高活性型のアルカリ金属水素化物の形態を報告した(Liao,S.、et.al. Journal of Molecular Catalysis,1993, 84, 211)。この論文でLiaoは、対応するアルカリ金属及び水素(1気圧)から、THF中(40℃)、TiCl4及びナフタレンによって触媒される高活性型の塩類似水素化物(HASH)の生成を
報告した。塩類似水素化物への完全な変換は、LiH*では2時間、NaH*では4時間、及びKH*では28時間を要した(*は、高活性型または超活性型水素化物を示す)。これらのナノメータの塩類似水素化物は、ある特定のハロゲン化アリールの脱塩素及び脱臭素にある程度有用であることが分かった。それらはまた、ある特定の遷移金属錯体に使用された場合、1-ヘキセン等のオレフィンの水素化用の助触媒として活性であることが報告された。遷移周波数は0.003~45.3s-1に及ぶことが報告された。従って、遷移金属触媒(1mol)と組み合わせて使用された場合、高活性型のアルカリ金属水素化物(50~300mol)は、オレフィンを還元するだけであり、オレフィンの重合も、二
量化さえも開示されていない。
【0016】
ナノメータサイズのアルカリ金属水素化物の他の用途は、後にLiaoらによって報告された(Liao,S.、et.al. Synth. Comm.1997, 27 3977)。かかる用途には、ベンズアルデヒド、安息香酸メチル、アクロレイン、ならびにアクリル酸のメチルエステル及びn-ブチルエステルのアルデヒド及び/またはアルコールへのカルボニル炭素の還元が含まれる。これらの反応は、還流THF中、化学量論的に過剰な高活性型の塩類似水素化物、すなわち、NaH*またはKaH*のいずれかを用い、反応時間0.25~15時間で実施された。特に重要なのは、NaH*によるアクロ
レイン(0.3時間)及びアクリル酸メチル(0.25時間)の還元でアリルアルコールがそれぞれ97%及び96%の収率で得られることである。別の刊行物において、Liaoらは、熱処理されたナノメータのLiH、NaH、及びKHとCp2TiCl2の錯体、すなわち、CP2TiCl2-MH(M=Li、Na、またはK)が、スチレン(M=LiもしくはNa)またはオクテン(M=K)のいずれかを水素化するための触媒として使用することができるということを報告している。ナノメータのKHとCP2TiCl2では、1気圧のH2下でスチレンを水素化しない代わりに、重合を開始し、広範囲の融点T=1
60~180℃の極高分子量(MW)ポリスチレン(Mw=200,000)を生成した
。さらに、ナノメータのKH単独でスチレンを重合することが分かり、当業者には、かかる高MWアニオン性ポリスチレン(APS)組成物が非効率的な開始の結果生じるものであり、それ故、残りの不溶性のナノメータKHを消費して急速にスチレンモノマーを組み込むリビングポリマー連鎖をごくわずかしか生成しないことが理解されよう。
【0017】
Zhangらは、スチレン(2ml)をトルエン(9ml)中、水素雰囲気下で-17℃~42℃にて水素化するための高活性型触媒を報告している(Zhang,M.、et.al. Catal Lett 2008, 124, 146)。これらの高活性型触媒は、ナノメータサイズの水素化ナトリウム(20mg、8.7×10-4)及び12種の異なるルイス塩基フリーのチタノセン錯体(4×10-4mol/Lを0.5mL、すなわち、2×10-7mol)、すなわち、NaH*/Ti=4350)から生成された。水
素の取り込みは、チタノセン錯体が配位酸素(エーテル)または窒素(3級アミン)種を含む他の2例では認められなかった。チタノセン触媒に対して大過剰のNaH*にもかか
わらず、スチレン重合の、まして連鎖移動化学のいかなる形の報告もそれに対する言及もなされていない。
【0018】
超活性型、すなわち、極めて微粉化された形態のリチウム、ナトリウム、及びカリウムの水素化物の調製がSchleyerらによって報告された(Schleyer,P.v.R.、et.al. J.Org.Chem.1987. 52, 4299、及びSchleyer,P.v.R.、et.al. Angew Chem Int.Ed.Engl.1986 25 465)。これらの超活性型塩類似水素化物(SASH)の微細懸濁液としての調製は、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の存在下、ヘキサン中で、対応するアルカリ金属アルキルの水素化を必要とした。超活性型LiH*の生成は、30°~35℃の間で行われ、超活性型NaH*は、極低温条件(-10℃~-15℃)下で調製され、超活性型KH*は、-20℃~-25℃で生
成されることが報告された。これらの水素化物の有機合成への応用は、Schleyerによって探求され、上記に引用した公開文献論文に報告された。これらの合成反応(金属化、付加、及び還元)のほとんどは、-90℃の低さでの極低温条件下で行われ、少数の反応が室温から50℃の間で実施された。また、Schleyerにおいて、スチレン系またはビニル重合用に、ましてかかる重合工程の水素媒介用にこれら水素化物を使用することの開示はなかった。
【0019】
Harderらは、スチレンが、フェニルシランから最初に形成された2.5モル%の
有機カルシウム触媒[DIPPnacnacCaH・THF]2によって触媒的に水素化
され得ることを報告している(20℃、20気圧のH2、ベンゼン中15時間)(Har
der,S.,Speilman,J.,Buch,F.Angew. Chem. 2008, 120, 9576参照。Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 9434にも公開されている)。この水素化で、エチルベンゼンが収率85%で製造され、主成分がスチレン二量体であり、少量のスチレン三量体及び四量体からなるオリゴマーが収率15%で製造された。Harderはさらに、1,1-ジフェニルエテンが低転化率で還元されて、5モル%のブチルリチウム/TMEDA錯体から生成される触媒中、20℃、20気圧のH2にて、ベンゼン中15時間で14%のPh2CHCH3及び7%の二量体が得られることを報告している。この反応に関して、著者らは次
のように述べている:
「市販のnBuLi/TMEDAによって触媒されたこの反応は、低転化率でしか進行しなかった...これは、H2圧力が低い時には、より重いアルカリ土類金属錯体がより効
率的な触媒であるということを示唆している。」
【0020】
テトラヒドロフラン可溶形態の水素化マグネシウムは、Ashbyらによって、オルト置換(2,6-ジメチル及び2,6-ジイソプロピルフェノキシド)アリールオキシマグネシウム試薬ならびに活性型の固体水素化マグネシウムから製造された。テトラヒドロフラン不溶形態の水素化マグネシウムは、アルコキシマグネシウム試薬及び固体水素化マグネシウム試薬から得られた(Ashbey,E.C.,Goel,A.B.,Lin,J.J. Tetrahedron Letters, 1977, 3133参照)。Ashbyはまた、一連の嵩高いジアルキル及び嵩高いアルキル置換シクロアルキル第二級アミンから、活性型の固体水素化マグネシウムとの反応によって、テトラヒドロフラン可溶性ジアルキルアミノマグネシウム水素化物の生成を報告した。当該活性型の水素化マグネシウムは、ジエチルエーテル中、LiAlH4によるジメチルマグネシウムの還元によ
って調製された。従って、これらの嵩高いジアルキル及び嵩高いアルキル置換シクロアルキル第二級アミンは、ジメチルマグネシウムと反応し、ビス(ジアルキルマグネシウム)マグネシウム化合物を生成し、これが次にTHF中で活性型の水素化マグネシウムと反応した(Ashbey,E.C.,Goel,A.B.,Lin,J.J.J. Or.Chem.,1978, 43, 1564参照。かかる水素化アミノマグネシウムは、重合を開始することができる場合、モノマーにアミドを付加することによってある程度重合を開始し、得られるポリマー分布に好ましくないアミン官能基を組み込む可能性がある。
【0021】
Michalczykは、エーテルまたは炭化水素溶媒中、「適切な配位子」の存在下で、沈殿型の水素化マグネシウムであるMgH2xの生成を報告している。かかる適切な配位子には、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びTMEDAが含まれる。使用された還元剤は、フェニルシランであった(Michalczyk,M.J. Organometallics,1992, 11, 2307参照)。「Molecular Early Main Group Metal Hydrides:Synthetic Challenge,Structures and Applications」と題した最近の総説において、Harderは、明確に定義された第1族及び第2族の金属水素化物の制御合成の最先端を概説している。一般に、かかる水素化物は、上記の方法によって調製されており、該方法には:光分解、「アート錯体」、例えば、Ashbyによって報告されたアリールオキシマグネシウム水素化物及びジアルキルアミノマグネシウム水素化物を生成するための活性型水素化物の反応、フェニルシランから最初に生成されたHarderの[DIPPnacnacCaH・THF]2、及
びフェニルシランから生成されたStaschの可溶性水素化リチウム錯体が含まれる。さらにHarderは、マグネサイト錯体[(iPr2N)3Mg-]M+(M+=Na+、K+)の熱分解から生成される多くの水素化物を概説している。可溶性塩類似水素化物組成
物を生成するためのすべての方法の共通の特徴は、嵩高い(通常はイソプロピル化配位子
)を使用して溶解性を達成することである。[DIPPnacnacCaH・THF]2
(これはやはり最初にフェニルシランから生成された)を用いた例等のスチレンのエチルベンゼンへの水素化(収率85%)の過程で生成される触媒作用の乏しい種を除くすべての場合で、塩類似水素化物錯体は、分子水素以外のいくつかの他の試薬から生成された。Scheyerの不溶形態の超活性型塩類似水素化物(SASH)のみが、最初の還元剤としての分子水素から直接生成される。
【0022】
従って、先行技術では、スチレン系モノマー等のビニル芳香族モノマーのアニオン連鎖移動重合用のリチウムアミノアルコキシド錯化塩類似水素化物(LOXSH)種の使用を開示していない。実際、先行技術は、特に炭化水素可溶性種として、具体的には、簡単な嵩高くない配位子、ましてH2から直接生成する場合にLOXSH触媒の生成を予測さえ
していない。本発明者は、これらの水素化物だけでなく、これらの新規な水素化物を使用することで、水素媒介塩類似水素化物開始重合工程を触媒することができるという驚くべき事実を発見した。従って、本発明は、水素が主要なまたは唯一の連鎖移動剤である温和な温度(例えば、約20℃~100℃未満)下でのビニル芳香族モノマーの効率的なアニオン連鎖移動重合方法を提供する。当該方法は、比較的低い水素分圧~極低水素分圧で行うことができる。さらに、本発明者は、本発明の新規重合触媒が、固有の、均一で有益な「ヘッドトゥーテール」の微細構造のスチレンのみからなる(/98wt%スチレン)、完全にではないにしても本質的に当該ポリマー微細構造に4級炭素を含まない低分子量アニオン重合スチレン分布を提供することを発見した。従って、かかるポリスチレン分布は、ポリマー連鎖の骨格に4級炭素を含むポリスチレンのポリマー連鎖が3.0wt%未満、好ましくは2.0wt%未満、より好ましくは1.0wt%未満である。従って、かかる組成物は全体として、1000ppm未満、さらには200ppm未満、さらには20ppm未満の4級炭素を含む。同様に、本発明のポリスチレン組成物は、所望のアニオン連鎖移動ポリスチレン分布の開裂から生じるポリマー連鎖分布または不純物が1.0%未満、好ましくは0.5%未満、最も好ましくは0.1%未満である。
【0023】
化学的略語及び数値の定義
PTAは、促進剤として使用されるポリ3級アミンの一般的クラスに対する略語であり、「・XPTA」の使用において、Xは正の数であり、触媒組成物に錯化されたPTAのモルの整数または分数を示す。
【0024】
TMEDAは、PTAであるN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンの略語であり、「・XTMEDA」の使用において、Xは正の数であり、触媒組成物に用いられた及び/または錯化されたTMEDAのモルの整数または分数を示す。
【0025】
PCAHは、本発明の触媒を形成するために用いられる極性錯化剤の一般的なクラスの略語であり、該極性錯化剤を中性アルコールとして表している。[PCA-]の使用は、
より塩基性の化学種に1つのプロトンを引き渡したアルコキシドとして該極性錯化剤を示している。以下、[PCA-]の使用は、従って、便宜上、アルコキシドがPCAHから
生成されたことを示す。[PCA-xyz等の式における使用は、中性触媒錯体または凝集体として解釈されるものとし、yの金属原子の電荷は、xの[PCA-]アニオンの
電荷とzのヒドリドイオンの組み合わせによって相殺される。[PCA-xyzの使用は、触媒の式全体のためのものであり、任意の潜在的な「アート」錯体、例えば:
[[PCA-xyz-nn+[[PCA-xyz+nn-を含むことを理解されたい。
【0026】
DMEAHは、中性アミノアルコールとしてのN,N-ジメチルエタノールアミン(同義語:N,N-ジメチル-2-ヒドロキシエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン)の略語であり、[DMEA-]の使用は、より塩基性の種に1つのプロトンを引き
渡したアルコキシドとしてのN,N-ジメチルエタノールアミンを表している。
【0027】
DMAEOEHは、中性アミノエーテルアルコールとしての2-N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール(N(CH32CH2CH2O-CH2CH2OH)の略語であり、[DMAEOE-]の使用は、より塩基性の種に1つのプロトンを引き渡したアルコキシド
としてのN,N-ジメチルアミノエトキシエタノールを表している。
【0028】
MEOEHは、中性エーテルアルコールとしての2-メトキシエタノールの略語であり、[MEOE-]の使用は、より塩基性の種に1つのプロトンを引き渡したアルコキシド
としての2-メトキシエタノールを表している。
【0029】
アニオン連鎖移動工程の効率(EffCT)は、式:
EffCT.=Mn Th/Mn exp
によって与えられ、式中、Mn Thは理論数平均分子量であり、用語Mn expは実際の実験
または工程で得られた数平均分子量である。パーセント効率は、この効率に100%を掛けることで得られる。
【0030】
分子量分布及びそれらを定義する式を表すために使用されるパラメータの大要を下記表IIに示す(A.Rudin, The Elements of Polymer Science and Engineering,Academic Press,Orlando,1982,pp.54-58)。数平均DP(DPn)は、Mnを100%ポリスチレン組成物として用いて計算する。
【表2】
【発明の概要】
【0031】
本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合(HMSHIP)工程は:a)可溶性塩類似水素化物種がビニル芳香族モノマーに迅速に付加し、開始種を生成する新規な能力、b)該塩類似水素化物種のモノマーへの付加が起こり、ひいては、再開始段階間を連鎖成長反応段階と競合させ、活性型の過渡的リビングポリ(スチリル)アニオン鎖を成長させ、ひいては定数またはほぼ定数の活性型の成長鎖を維持する新規な高効率、及びc)温和かつ新規な工程条件下での水素からの連鎖移動がかかるリビングポリ(スチリル)アニオン性種を停止させ、該塩類似水素化物を、重合工程を効率的かつ効果的に再開することが可能な形態で再生する能力を特徴とする。従って、本発明は、水素媒介塩類似水素化物開始重合を実施する方法に関し、これは、1つ以上のアニオン重合可能な炭化水素モノマーを、可溶性塩類似水素化物触媒を含む反応媒体に、分子水素を含む雰囲気下で供給することを特徴とする。かかる特徴がなければ、該化学的方法は、一方では主として還元されたモノ
マー、他方では高分子量ポリマーのいずれかを製造する。本発明のいくつかの実施形態では、前述の特徴は協調してかつバランスよく競合して機能し、高収率、高効率、及びポリマー連鎖長の微細構造の非常に優れた制御を伴うアニオン連鎖移動ポリマー分布をもたらす。
【0032】
本発明はまた、アニオン連鎖移動重合方法に関し、これは、ビニル芳香族モノマー及び/または好ましくはスチレン系モノマーを、反応混合物に、反応容器中で分子水素を含む雰囲気下で供給することを含み、当該反応混合物は、(i)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(ii)任意にポリ3級アミン化合物、(iii)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(iv)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/または塩類似金属アミド、(v)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位
上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(vi)任意にビニル芳香族モノマーから、(vii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、(viii)任意に分子水素中で生成されたとともに、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0033】
本発明はまた、アニオン連鎖移動重合方法に関し、これは、ビニル芳香族モノマー及び/または好ましくはスチレン系モノマーを、反応混合物に、式[DMEA-xLiyzの水素媒介連鎖移動重合触媒を有する反応容器中で分子水素を含む雰囲気下で供給することを含み、当該触媒は:(i)約y当量の有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(ii)任意にTMEDA化合物、(iii)約x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼン、(v)H2よりpKaが高い、芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、ならびに(vi)分子水素を接触させる工程から生成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、当該式はさらに、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子錯体、すなわち、[DMEA-xLiyz・XTMEDAを、TMEDAのモルの触媒[DMEA-xLiyzのモル当たりのモル比Xで含むことができ、X=0.0001~約8.0である。
【0034】
従って、本発明はまた、アニオン連鎖移動重合方法に関し、これは:反応容器中、分子水素を含む雰囲気下で、(a)反応混合物にスチレンモノマーを供給すること及び/または(b)反応混合物とともにスチレンモノマー供給することを含み、当該反応混合物は最初に、(i)約y当量の有機リチウム化合物、(ii)任意にTMEDA化合物、(iii)約x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼン、及び(v)H2よりpKaが高い、芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、(vi)任意に分子水素から生成されたとともに、式[DMEA-xLiyzの炭化水素可溶性水素化リチウムが生成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、当該触媒または試薬を構成する水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0035】
本発明はまた、高度に炭化水素可溶性の二金属3級アミノアルコキシド及び/または3級アミノエーテルアルコキシド及び/またはエーテルアルコキシド錯化水素化リチウム及び/または水素化マグネシウム触媒及び/または試薬に関し、これは:(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v
)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/または塩類似金属アミド、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエン
のpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(vii)任意にビニル芳香族モノマー、ならびに(viii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒を含む反応媒体から生成され、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0036】
本発明はまた、高度に炭化水素可溶性の単金属3級アミノアルコキシド及び/または3級アミノエーテルアルコキシド及び/またはエーテルアルコキシド錯化水素化リチウムもしくはポリ水素化リチウム(LiHn、n=1+2x、xは正の整数)錯体及び/または
凝集体に関し、これは:(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v)任意にリチウム金属もしくはリチウム合金及び/または固体水素化リチウム及び/またはリチウムアミド、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがト
ルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(vii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭
化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒を含む反応媒体から生成され、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0037】
本発明はまた、高度に炭化水素可溶性であり式[DMEA-xLiyzを有するリチウム3級アミノアルコキシド錯化水素化リチウム(LiH)もしくはポリ水素化リチウム(LiHn、n=1+2x、xは正の整数)の水素媒介連鎖移動重合触媒に関し、当該触媒
は:(i)約y当量の有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(ii)任意にTMEDA化合物、(iii)約x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼン、(v)H2よりpKaが高い、芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、ならびに(vi)分子水素を接触させる工程から生成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、当該式はさらに、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子錯体、すなわち、[DMEA-xLiyz・XTMEDAを、TMEDAのモルの触媒[DMEA-xLiyzのモル当たりのモル比Xで含むことができ、X=0.0001~約8.0である。
【0038】
本発明はまた、高度に炭化水素可溶性の3級アミノアルコキシド及び/または3級アミノエーテルアルコキシド及び/またはエーテルアルコキシド錯化重水素化リチウム(Li2H)、もしくは三重水素化リチウム(Li3H)、またははポリ重水素化リチウム(Li2n、n=1+2x、xは正の整数)、もしくはポリ三重水素化リチウム(Li3n、n=1+2x、xは正の整数)錯体に関し、及び/または、これは:(i)同位体が濃縮された分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/または塩類似金属アミド、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(vii)任意にビニル芳香族モノマ
ー、ならびに(viii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒を含む反応媒体から生成され、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0039】
本発明はさらに、高度に炭化水素可溶性のリチウム3級アミノアルコキシド錯化水素化リチウム(LiH)もしくはポリ水素化リチウム(LiHn、n=1+2j、jはゼロを
含めた正の整数)錯体及び/または凝集体に関し、これは:(i)分子水素、(ii)約y当量の有機リチウム化合物、(iii)任意にTMEDA、(iv)約x当量のジメチルアミノエタノール、(vi)任意にエチルベンゼン、ならびに(vii)H2よりpKaが高い、該エチルベンゼンと同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒を含む反応媒体から生成され、式[DMEA-xLiynの炭化水素可溶性水素化リチウムが生成され、式中、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数であり、n=z+2jであり、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0040】
本発明はまた、スチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)工程に関し、これは:a)可溶性水素化リチウムが迅速にスチレンを重合する新規な能力、b)該水素化リチウム種のスチレンモノマーへの付加が起こり、ひいては、再開始段階を連鎖成長反応段階と競合させ、活性型の過渡的リビングポリ(スチリル)リチウムアニオン鎖を成長させ、ひいては定数またはほぼ定数の活性型の成長鎖を維持する新規な高効率、c)温和かつ新規な工程条件下での水素からの連鎖移動がかかるリビングポリ(スチリル)リチウムアニオン性種を停止させ、該可溶性水素化リチウムを、重合工程を効率的に再開することが可能な形態で再生する能力、d)該アニオン性ポリスチレンポリマー連鎖において好ましくない4級炭素の生成につながる分子内連鎖移動段階を排除またはほぼ排除すること、ならびにf)MWDの制御が、高い相対的モノマー対触媒供給量、触媒濃度、及び水素活量によって達成されることを特徴とする。
【0041】
従って、本発明はまた、アニオン連鎖移動重合用のHMAPS工程に関し、これは、スチレンモノマーを、反応混合物に、反応容器中でH2を含む雰囲気下で供給することを含
み、当該反応混合物は、化学式[DMEA-xLiyzを有する触媒を含み、当該触媒は:(i)約y当量の有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(ii)任意にTMEDA化合物、(iii)約x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼン、(v)H2よりpKaが高い、芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、ならびに(vi)任意に分子水素を接触させる工程から生成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0042】
本発明はまた、塩類似水素化物開始アニオン性ポリスチレン及びアニオン連鎖移動ポリスチレン分布に関し、個々のまたは個別のポリマー鎖の構成成分のポリスチレン連鎖長分布は、一般式:
【化1】
を有し、式中、nは、開始スチレンモノマーと停止スチレンモノマー間で共有結合された繰り返しスチレンモノマー単位の数であり、上記一般式の連鎖長分布は、該ポリスチレン組成物の全重量の少なくとも約97.0wt.%、好ましくは少なくとも約98.0wt.%、より好ましくは少なくとも約99.0%、最も好ましくは少なくとも約99.2w
t%を構成し、該連鎖長分布の残部は、3.0wt.%以下、もしくは、より好ましくは2.0wt.%以下、より好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.8wt%以下を構成し、かつ:1)1の異性体であるポリマー鎖の分布、及び/または2)連鎖の開裂工程段階から生成される分布からなり、従って、それにより、式:
【数1】
で与えられる構造式量(FWi)の個別の連鎖長組成物を本質的に含まない。
【0043】
本発明はさらに、水素化リチウム開始アニオン性ポリスチレン及びアニオン連鎖移動ポリスチレン分布に関し、個々のまたは個別のポリマー鎖の構成成分のポリスチレン連鎖長分布は、一般式1:を有し、式中、nは、開始スチレンモノマーと停止スチレンモノマー間で共有結合された繰り返しスチレンモノマー単位の数であり、上記一般式の連鎖長分布は、該ポリスチレン組成物の全重量の少なくとも約99.0%を構成し、及び好ましくは少なくとも約99.2wt%を構成し、該連鎖長分布の残部は、1.0wt.%以下、またはより好ましくは0.8wt%以下を構成し、かつ:1)式1の異性体であるポリマー鎖の分布からなり、及び2)連鎖の開裂工程段階から生成される連鎖長分布を本質的に含まず、従って、個別の連鎖長の構造式量(FWi)、すなわち、
【数2】
が、GCオリゴマー試験による検出限界である約0.02%未満である。
【発明の詳細な説明】
【0044】
用語集
特許請求の範囲を含めた本明細書の任意の箇所で使用される「ポリマー」という用語は、「ポリマー」のOECDの定義の中で定められた用語「ポリマー」を指し、これは以下の通りであることを理解及び認識されたい:
「1種類以上のモノマー単位の連続を特徴とする分子からなる化学物質であり、少なくとも1つの他のモノマー単位または他の反応物質と共有結合している少なくとも3つのモノマー単位を含む単純重量過半数の分子を含み、かつ同じ分子量の単純重量過半数に満たない分子からなる。かかる分子は、その分子量の差が、主にモノマー単位の数の差に帰せられる分子量の範囲にわたって分布していなければならない。」
【0045】
塩類似水素化物(イオン結合型水素化物を意味する)は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と組み合わせた、負の電荷を帯びたイオンとしての水素、すなわち、H-の存在
によって定義される。当該アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムが挙げられ、当該アルカリ土類金属としては、マグネシウム及びカルシウムが挙げられる。
【0046】
塩類似金属アミドは、アンモニア及び/または1級アミン及び/または2級アミンから生成される金属アミドまたはジアミドであり、該金属イオンはアミドとの組み合わせでは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムから選択されるアルカリ金属であり、ジアミドとの組み合わせでは、アルカリ土類であり、マグネシウム及びカルシウムが含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「ポリマー微細構造」は、個別のポリマー鎖(またはかかる鎖の連鎖長分布)の、その組成、配列分布、立体配置、幾何異性、及び置換異性における配置
を指す。
【0048】
用語「ヘッドトゥーテール」のポリマー微細構造とは、上記のスチレンポリマー構造(1)が表す微細構造の説明である。ヘッドトゥーテールの微細構造は、各スチレン系モノマー単位のヘッド(フェニル置換基を有するビニル炭素から生成される)が、ただ1つの他のスチレン系モノマー単位のテール(ビニリデン炭素から生成される)に共有結合される場合に存在する。
【0049】
用語「テールトゥーテール」の微細構造は、スチレン系モノマー単位のテールが別のスチレン系モノマー単位のテールに共有結合される場合に存在する。かかるテールトゥーテールの微細構造は、電子伝達機構によって開始されるスチレン系モノマーのアニオン重合の微細構造の一部として一般的である。
【0050】
用語「テールトゥーヘッドトゥーテール」の微細構造は、1つのスチレン系モノマーのヘッドが、2つの他のスチレン系モノマーのテールに共有結合されているポリマーの主鎖の結合を意味する。この微細構造は、当該ポリマーの主鎖に不規則性をもたらし、該ポリマー鎖に好ましくない化学的に不安定な(ある特定の反応条件下で容易に切断される)4級炭素を組み込む。
【0051】
用語「有機リチウム(活性型)アルキル」、「活性型」リチウム、及び「活性型有機リチウムアルキル」(Li活性型と略される)ならびに用語「有機マグネシウム(活性型)アルキル」及び「活性型有機マグネシウムアルキル」は、これらの有機金属化合物のいずれかの合計量が、任意のプロトン性試薬ならびに任意のプロトン性不純物種、例えば、水、及び/またはアルコール及び/または1級もしくは2級アミンを滴定するのに必要な有機リチウム及び/または有機マグネシウム化合物の量を超えて電荷を帯びた金属アルキルという意味である。理論に拘束されることを望むものではないが、活性型有機リチウムのモル量は、1:1で生成された塩類似水素化物のモル量に等しいと考えられる。また、1モル当量の活性型有機マグネシウム化合物は、2当量モル以下の塩類似水素化物を生成すると考えられる。このために、「活性型金属アルキル」は、リチウム及び/またはマグネシウムが共有結合したアルキルラジカルを表し、該結合したアルキルラジカルは、脂肪族、脂環式、芳香族、アリル系、ベンジル系、またはビニル系炭化水素ラジカルであり得る。
【0052】
プロトン性とは、用語の種、または試薬、または溶媒、または不純物と組み合わせる場合、本発明の化学的方法の条件下で、H2のものより低いpKaの共有結合されたプロトン(H+)を有する化学種を意味する(Buncel,E.,Menon,B J.Am.
Chem.Soc.,1977, 99, 4457:“Carbanion mechanisms.6. Metalation of Arylmethanes by Potassium Hydride/18-Crown-6 Ether in Tetrahydrofuran and the Acidity of Hydrogen”参照)。
【0053】
「LOXSH」は、リチウムアミノアルコキシドもしくはリチウムアミンエーテルアルコキシドまたはリチウムエーテルアルコキシド錯化塩類似水素化物を意味し、これは:(i)分子水素、(ii)有機マグネシウム化合物を伴うまたは伴わない有機リチウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール及び/または3級アミノエーテルアルコール及び/またはエーテルアルコール、(v)任意に固体アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水素化物またはアルカリ金属もしくはアルカリ金属合金、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内
にある芳香族炭化水素から、(vii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒中で形成される(Daasbjerg,K, Acta Chemica Scandinavica,1995, 49, 878:“Estimation of the pKa for some Hydrocarbon
s and Aldehydes and Solvantion Energies of the Corresponding Anions”参照)。
【0054】
LOXLiHは、LOXSHの単金属形態を示す用語であり、当該触媒/試薬は、唯一の金属試薬としてリチウム試薬を用いて生成される。LOXKHは、リチウム及びカリウムからなる二金属触媒を示す用語であり、該活性型塩類似水素化物の一部は水素化カリウムである。LOXMgH2は、リチウム及びマグネシウムからなる二金属触媒を示す用語
であり、該活性型塩類似水素化物の一部は水素化マグネシウムである。
【0055】
[DMEA-]xLiyHzは、炭化水素可溶性リチウムアミノアルコキシド錯化水素
化リチウムの触媒または試薬成分組成物の化学式を表し、これは:(i)分子水素、(ii)約y当量の有機リチウム化合物、(iii)任意にTMEDA、(iv)約x当量のジメチルアミノエタノール、(v)任意にエチルベンゼンから、(vii)H2よりpKaが高く、エチルベンゼンでも別のものでもよい炭化水素溶媒中で形成され(Daasbjerg,K, Acta Chemica Scandinavica,1995, 49, 878:“Estimation of the pKa for some H
ydrocarbons and Aldehydes and Solvantion
Energies of the Corresponding Anions”参照)、指標値x、y、及びzは、正の実数であり、生成されたヒドリドの当量はzであり、z=y-xであり、化学量論比x:y:zに関して、a)yは約2~約6の範囲にあり、b)xは約1~約5の範囲にあり、従ってzは約5~約1の範囲にある。[DMEA-
xLiyHzの好ましい組成物は、化学量論比x:y:zが、2:3:1の[DMEA-
2Li3Hの触媒組成物であるか、[DMEA-4Li62もしくは[DMEA-6Li93、または任意のより大きなx=2、y=3、及びz=1の倍数の触媒組成物である。
【0056】
用語「分子水素」は、12としてのH2を意味するが、水素の同位体22または32
該同位体の混合物として、または特定の同位体が濃縮されているかのいずれかでも含むことができ、蒸気空間において気体状態であるか、凝縮相に溶解されているかを問わない。
【0057】
用語「アルカリ金属合金」は、少なくとも2種の金属の金属合金を意味し、その少なくとも一方がアルカリ金属であるが、かかるアルカリ金属合金は、NaKやNaK2等の2
種のアルカリ金属からなる可能性もあり、また、かかるアルカリ金属は溶解されていても、該合金との何らかの物理的な組み合わせの状態でもよい。
【0058】
用語「及び/または」は、単数または組み合わせを意味する。例えば、「A及び/またはB」は、「A」単独、「B」単独、またはAとBの組み合わせを意味する。
【0059】
用語「~を伴うまたは伴わない(with or without)」は、単数または組み合わせを意味する。例えば、Bを伴うまたは伴わないAとは、「A」単独またはAとBの組み合わせを意味する。
【0060】
用語「約x当量」、「約y当量」、「約z当量」等は、化学量論的当量の±50%、±30%、±20%、、±10%、または±5%を意味し、量xは常に活性型y(すなわち、「活性型有機リチウム試薬、別名活性型リチウム)の総量より小さく、それによって量zはゼロより大きくかつゼロでない正の実数であるという条件付きである。
【0061】
用語「有機リチウム化合物」は、リチウム原子に結合した有機基を意味する。有機基の非限定的な例は、脂肪族(例えば、アルキル基)、脂環式(例えば、シクロアルキル)、ビニル基、アリル基、ベンジル基、芳香族基(例えば、フェニル)、またはポリ(スチリル)リチウムでよい。
【0062】
用語「有機マグネシウム化合物」は、マグネシウム原子に結合した有機基を意味する。有機基の非限定的な例は、脂肪族(例えば、アルキル基)、脂環式(例えば、シクロアルキル)、ビニル基、アリル基、ベンジル基、芳香族基(例えば、フェニル)、またはポリ(スチリル)マグネシウムでよい。好ましい有機マグネシウム化合物は、2つの有機基を有する有機マグネシウム化合物である。
【0063】
用語「ポリ3級アミン(PTA)促進剤」は、少なくとも2つの3級アミン基を含む化合物を意味し、これはHMSHIP工程の間に水素化物触媒の生成を促進または活性化する。非限定的な一般式には:
【化2】
が含まれ、式中、R’及びR’’は、独立して、2つ以上のアミンと結合を形成することが可能な有機基であり、R1、R2、R3、R4、及びR5は、独立して、さらに他の3級ア
ミンで置換されてもよい有機基であり、指標値nは、独立して、0または0より大きい整数(すなわち、n=0、1、2、3...)である。n=0の場合、カッコ内の基は存在せず、該構造は、当該化学結合が該カッコの両側を横切る2つの基の間にあることを意味することを意図していることを理解されたい。従って、ポリ3級アミン構造2は、n=0の場合構造4になる。
【0064】
用語「極性錯化剤」は、本発明の触媒を生成するために使用される天然アルコール、例えば、3級アミノアルコール、3級アミノエーテルアルコール、またはエーテルアルコールのための一般用語である。
【0065】
用語「アルカリまたはアルカリ土類アミノアルコキシド」、「アルカリまたはアルカリ土類アミノエーテルアルコキシド」、及び「アルカリまたはアルカリ土類エーテルアルコキシド」は、それぞれ、3級アミノアルコール、もしくは3級アミノエーテルアルコール、またはエーテルアルコール、ならびにアルカリ金属、及び/またはアルカリもしくはアルカリ土類金属水素化物、及び/またはアルカリもしくはアルカリ土類金属アミド、及び/またはアルカリもしくはアルカリ土類金属アルキルから生成されるアルコキシドである。該3級アミノアルコール、もしくは3級アミノエーテルアルコール、またはエーテルアルコールは、これらに限定されないが、以下の一般構造:
【化3】
で表すことができ、Rは、1つ以上の3級アミン及び1つのヒドロキシルと結合を形成することが可能な有機基であり、R1は、独立して、他の3級アミンでさらに置換されても
よい有機基であり、Σは:i)5、6、7、8、9、及び10についてはOまたはNR1
、及びii)11についてはOもしくはNR1またはCH2を含むことができ、指標値nは、独立して、0または0より大きい整数(すなわち、n=0、1、2、3...)である。n=0の場合、カッコ内の基は存在せず、該構造は、当該化学結合が該カッコの両側を相互に連結させる2つの基または原子の間にあることを意味することを意図していることを理解されたい。好ましいアミノアルコールには、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-メチル-2-ピロリジンメタノール等が含まれる。
【0066】
該3級アミノアルコール、もしくは3級アミノエーテルアルコール、またはエーテルアルコールは、該アルコキシドを生成する反応以外のさらなる金属化反応を起こさないことが好ましい。従って、すべての3級アミノアルコール、もしくは3級アミノエーテルアルコール、またはエーテルアルコールがある触媒組成物、特に、過剰量のある特定の有機リチウム化合物によって、特定のアルキルリチウム試薬中で生成される組成物の生成に用いるのに適しているわけではない。過剰量とは、当該触媒を生成するために使用される3級アミノアルコール、もしくは3級アミノエーテルアルコール、またはエーテルアルコールのアルコール部分のモル量より大きなモル量を意味する。さらに、該3級アミノアルコキシド、もしくは3級アミノエーテルアルコキシド、またはエーテルアルコキシドは、可溶化傍観配位子としての機能を果たすべきである。これは、当該触媒組成物の塩類似水素化物に溶解性を賦与し、HMSHIP工程の間に塩類似水素化物の活性化及び生成に寄与する活性化極性錯化剤として機能すること以外のことを意味する。従って、該極性配位子は、他の点では不活性であり、重合過程に関与せず、触媒の分解反応にも関与しない。かかる配位子の該3級アミノアルコール、もしくは3級アミノエーテルアルコール、またはエーテルアルコールの分解産物を該ポリマー構造または生成物分布中に組み込むことは好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】好ましくない4級「テールトゥーヘッドトゥーテール」の微細構造を生成するリビング(イオン化を意味する)アニオン性スチレン三量体もしくはスチレン三量体同等物(すなわち、2つのスチレンモノマーと結合したエチルベンゼン)の異性化及びさらなる重合をもたらす化学反応経路を説明する図である。
図2】異性化されたリビング(イオン化の意味、またはポリ(スチリル)アニオンもしくはアルキルとして)アニオン性スチレン三量体またはスチレン三量体同等物の開裂と、それに続く重合で、式:FWi=[i(104)+2-14]ダルトンで与えられる式量を有するポリマー鎖及びFWi=[i(104)+2+14]ダルトンの個別のオリゴマーを生成することを伴う化学反応経路を説明する図である。
図3】本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合方法を使用して、本発明のLOXLiH触媒から生成される本発明のポリスチレン組成物から得られる所望の高純度「ヘッドトゥーテール」スチレンオリゴマーの構造帰属のガスクロマトグラムである。
図4】本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合方法を使用して、本発明の別のLOXLiH触媒から生成される本発明のポリスチレン組成物から得られるスチレンオリゴマーのガスクロマトグラムである。
図5】本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合方法を使用して、HASH触媒から生成されるポリスチレン組成物から得られるスチレンオリゴマーの構造帰属のガスクロマトグラムである。
図6】本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合方法を使用して、LOXKH触媒から生成されるポリスチレン組成物から得られるスチレンオリゴマーの構造帰属のガスクロマトグラムである。
図7】本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合方法を使用して、SASH触媒から生成されるポリスチレン組成物から得られるスチレンオリゴマーの構造帰属のガスクロマトグラムである。
図8】未還元ブチルマグネシウムで開始される微量の「ヘッドトゥーテール」スチレンオリゴマー、及び本発明の水素媒介塩類似水素化物開始重合方法を使用して、本発明のLOXMgH2触媒から生成される本発明のポリスチレン組成物から得られる高純度「ヘッドトゥーテール」スチレンオリゴマーの構造帰属のガスクロマトグラムである。
図9】比較基準として与えられる窒素雰囲気下でのn-プロピルベンゼン及びスチレンから生成されるWO2008154453の比較ACTVAP組成物の構造帰属のガスクロマトグラムである。
図10】好ましくない開裂重合工程から生じるFWi=[i(104)+2-14](i=2~6)ダルトンを特定するための比較基準として与えられる窒素雰囲気下でのトルエン及びスチレンから生成されるWO2008154453の比較ACTSP組成物の構造帰属のガスクロマトグラムである。
図11】α-メチルスチレンの導入後にインサイチュで生じる好ましくない開裂重合工程から生じるFWi=[i(104)+2+14](i=2)ダルトンを特定するための比較基準として与えられるα-メチルスチレンのエチルベンゼンへの比較モノ付加物の構造帰属のガスクロマトグラムである。
図12】EPO 741147のスチレンのエチルベンゼン連鎖移動重合の工程技術から得られるオリゴマーのガスクロマトグラムであり、この技術の触媒及び工程に特徴的な異性化ならびに開裂重合反応から生じる好ましくないレベルのポリマー微細構造を示している。
図13】WO2008154453のスチレン(1モル部)のエチルベンゼン(2モル部)連鎖移動重合の工程技術から得られるオリゴマーのガスクロマトグラムであり、エチルベンゼンが連鎖移動剤である場合のこの技術の触媒及び工程に特徴的な異性化ならびに開裂重合反応から生じる好ましくないレベルのポリマー微細構造を示している。
図14】WO2008154453のスチレン(2モル部)のエチルベンゼン(1モル部)連鎖移動重合の工程技術から得られるオリゴマーのガスクロマトグラムであり、エチルベンゼンが連鎖移動剤である場合のこの技術の触媒及び工程に特徴的な異性化ならびに開裂重合反応から生じる好ましくないレベルのポリマー微細構造を示している。
図15】約80℃で行われる本発明のスチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)工程を使用する本発明の別のLOXLiH触媒[DMEA-]xLiyHz・2TMEDA(x:y:zは約3:2:1である)から生成される本発明のポリスチレン組成物から得られるスチレンオリゴマーのガスクロマトグラムであり、99.94%のヘッドトゥーテール微細構造を示している。
図16】約80℃で行われる本発明のスチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)工程を使用する本発明の別のLOXLiH触媒[DMEA-]xLiyHz(x:y:zは約3:2:1である)から生成される本発明のポリスチレン組成物から得られるスチレンオリゴマーのガスクロマトグラムであり、99.97%のヘッドトゥーテール微細構造を示している。
図17】約90℃で行われる本発明のスチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)工程を使用する本発明の別のLOXLiH触媒[DMEA-]xLiyHz(x:y:zは約3:2:1である)から生成される本発明のポリスチレン組成物から得られるスチレンオリゴマーのガスクロマトグラムであり、99.93%のヘッドトゥーテール微細構造を示している。
【0068】
説明
本発明は、アニオン重合性炭化水素モノマーの水素媒介塩類似水素化物開始重合(HMSHIP)を行う方法、かかる方法を行うための触媒組成物、ならびに、ある特定の好ましい条件下での極めて純度の高い「ヘッドトゥーテール」の微細構造を有する新規かつ有益な低分子量アニオン連鎖移動ポリマー分布の形成に関する。該方法は、少なくとも1つのアニオン重合性炭化水素モノマーを、活性型で一般に可溶性の塩類似水素化物触媒を含む適切な溶媒に対し、分子水素を含む雰囲気下で供給することを特徴とし、ここでは、分子水素からの連鎖移動が速度論的連鎖長(ν)分布、よって得られる生成物分布の数平均分子量(Mn)を決定する機構の重要な構成要素である。
本発明の1つの実施形態は、炭化水素可溶性LOXSH触媒を用いたスチレン系モノマー、例えばスチレン等のビニル芳香族モノマーの水素媒介アニオン重合方法に関する。該炭化水素可溶性LOXSH触媒は、(i)有機マグネシウム化合物を伴うまたは伴わない有機リチウム化合物、(ii)任意にポリ3級アミン促進剤化合物、(iii)3級アミノアルコール、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(iv)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(v)任意に固体アルカリ金属
もしくはアルカリ土類金属水素化物、またはアルカリ金属もしくはアルカリ金属合金、またはアルカリもしくはアルカリ土類アミド、(vi)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、及び(vii)分子水素を含む反応媒体から生成される。該モノマーがスチレンのみであるかかる方法から生成される生成物分布は、以下LOXSH PS分布と呼ぶ。より具体的には、該触媒が金属としてリチウムのみからなる単金属触媒の場合、その触媒をLOXLiHと呼び、得られるアニオン連鎖移動スチレンポリマー分布はLOXLiH PSである。しかしながら、該触媒がリチウム及びカリウムからなる二金属触媒である場合、その触媒はLOXKHと呼ばれ、得られるアニオン連鎖移動スチレンポリマー分布はLOXKH PSである。同様に、該触媒がリチウム及びマグネシウムからなる二金属触媒である場合、その触媒はLOXMgH2
呼ばれ、得られるアニオン連鎖移動スチレンポリマー分布はLOXMgH2 PSである
【0069】
本発明の実施において、該LOXSH触媒は、これらに限定されないが、以下を含む様々な方法で任意に形成することができる:
A.不活性雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた(i)、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後:1)このようにして形成された「アート」錯体にモノマーの一部を供給し、その後2)該不活性雰囲気をH2と交換もしくはさもなければH2で置換することでLOXSH
に変換する方法、または
B.不活性雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた(i)、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成して前駆体である「アート」錯体を生成し、これをその後該不活性雰囲気を水素と交換もしくはさもなければ水素で置換することでLOXSHに変換する方法、または
C.外部の反応器内で、(vi)中、十分に混合し反応させた、(i)の一部と任意に(ii)、(iii)、所望の量の(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、当該溶液を水素下で重合反応器に移送し、その後(i)の残部を装填する方法、または
D.水素雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、モノマーの一部を供給し、その後(i)を一度に供給する方法、または
E.水素雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて(i)を供給し、その後任意にもしくは必要であればモノマーを供給する方法、または
F.水素雰囲気下、(vi)中で、十分に混合し反応させた、(iii)、任意に(iv)、及び任意に(v)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて(i)を供給し、続いて所望の量の(ii)を添加し、その後任意にもしくは必要であればモノマーを供給する方法。
【0070】
LOXLiH及びLOXMgH2触媒/試薬は、1.0~2.0気圧のH2圧の水素雰囲気下、方法E及びFに従って、極めて活性が高く可溶性の形態で都合よく調製されることが分かっているが、より高いまたは低いH2圧を用いることができる。しかしながら、L
OXMgH2触媒は、モノマーのスチレンが導入されるまで水素によって水素化物に還元
されなかったか、または少なくとも完全には水素化物まで還元されなかった。スチレンの導入でポリ(スチリル)マグネシウム試薬が形成され、これは、水素媒介連鎖移動重合の過程で水素化物に完全に還元される。従って、LOXMgH2にとって、触媒を十分に形
成するためにはビニル芳香族モノマーの存在が必要である可能性があり、かかる場合には、モノマーの供給が必要であり、任意ではない。
【0071】
以下の実施例に記載の通り、本発明のLOXLiH及びLOXMgH2触媒及びまたは
試薬の形成において初期温度約-5℃~約40℃が使用されている。特にアミノアルコキシドを使用する場合により低いまたは高い初期温度を用いて該触媒を形成することができる。従って、該有機リチウム(n-ブチルリチウム)及びまたは該有機マグネシウム(ジ-n-ブチルマグネシウム)化合物(i)をその後、計量ニードル弁を通る適切な背圧を用いて、溶解されたH2、(ii)、(iii)を、(vi)中に含む十分に攪拌した反
応混合物に徐々に供給する。該有機リチウム及び/または有機マグネシウム化合物がブタン等の軽質炭化水素を触媒形成の過程で生じる場合、最初にヒートキックが起こり、反応器の圧力が上昇する。それに続いて、温度は上昇し続けることが認められているが、反応器の圧力は、一般に該触媒生成過程で水素が消費されるにつれて初期圧力より低くなるか、または一定のままである。該初期圧力が0PSIGの場合、負圧もしくはわずかな減圧が該反応器中で作り出されるか、または作り出され得る。ほとんどの場合、実施例に記載の条件下では、H2圧力は通常、有機リチウム試薬の供給中に低下する。しかしながら、
いくつかの実施例において、温度が15℃未満の場合、及びまたは有機マグネシウム試薬が用いられた場合、反応器の圧力は、該有機金属試薬の導入中に低下するようには見えない。その代わりに、該反応混合物を所望の反応温度に加温中に、水素化物への還元が起こる。LOXMgH2触媒の場合、70℃以上の反応温度でモノマーのスチレンが導入され
るまで、水素の取り込みは顕著ではないようであった。LOXMgH2実験から得られた
最も低分子量のオリゴマーの質量分析で、ブチル基で開始されたオリゴマーが痕跡程度存
在することが実証された。このことは、マグネシウムを含まないいかなる他の触媒系でも観察されていない。触媒反応混合物を形成する際のLOXSH触媒の還元を容易にするため、該反応混合物が所望の初期重合反応温度に加温された後、該反応器の圧力が40~70PSIGになるように水素がさらに反応器に装填されるが、より高い圧力を使用することができ、また使用されている。
【0072】
本発明の触媒組成物:LOXSH、LOXLiH、LOXMgH2、または本発明によ
り製造可能な試薬の形成において、0.1バール~300バール超の水素圧力を用いることができる。好ましいH2圧力は、0.25バール~10.00バールの範囲であり、よ
り好ましい範囲は0.5バール~7.0バールであり、最も好ましい範囲は0.75バール~約5.0バールである。100Gパスカルの高さの圧力が理論上可能であり、恐らく実際に本発明の触媒及び試薬からポリ水素化物組成物を製造することができるということを我々は見落としておらず、よって、かかる圧力の適用及びかかる生成物の形成は、本発明の範囲内である。
【0073】
市販の有機マグネシウム化合物は、約0.12~0.25wt%のトリエチルアルミニウム(TEA)を通常ヘプタン中に供給される該試薬に対する添加剤として含むことがある。かかる有機アルミニウム試薬は、アニオン重合反応に対して遅延効果を有する可能性があるため、リチウム金属対アルミニウム金属の比は、50.0:1.0より大きいこと、好ましくは101.0:1.0より大きいことが望ましい。図8に示す通り、行われたLOXMgH2の実験のHMSHIP工程においてTEAによる開始またはTEAの関与
の証拠はなかった。従って、類推によって、他の有機金属試薬、例えば、有機アルミニウム、及びまたは有機ベリリウム、及びまたは有機ホウ素剤は、該添加試薬が該HMSHIP工程を遅延させない限り、モノマーへの水素化物の付加が阻害されるに至るまで、及び/または成長するポリマー鎖への水素連鎖移動が停止され、さもなければ好ましくない分子量パラメータの分布によって実質的に妨げられ、その結果として好ましくない分子量パラメータの分布を形成するに至るまでは該反応混合物に存在することができる。
【0074】
LOXSH触媒を形成するのに適した有機リチウム化合物の非限定的な好ましい例は、添加されてもインサイチュで生成されてもよいn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、アリルリチウム、ビニルリチウム、フェニルリチウム、1-ヘキシル-1-フェニルリチウム、1-ヘキシル-1,1-ジフェニルリチウム、シクロヘキシルリチウム、及びポリ(スチリル)リチウム化合物である。
【0075】
LOXMgH2触媒を形成するのに適した有機マグネシウム化合物の非限定的な好まし
い例は、ブチルエチルマグネシウム(BEM)、ジ-n-ブチルマグネシウム(DBM)、n-ブチル-n-オクチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム、ジシクロヘキシルマグネシウム、及びポリ(スチリル)マグネシウム化合物である。潜在的な有機マグネシウム化合物の総覧は、米国特許第3,817,955号に示されている。
【0076】
LOXMgH2触媒の形成において、化学量論R3MgLiまたはR4MgLi2を有し、基Rが独立してアルキル、ビニル、シクロアルキル、ポリ(スチリル)、フェニルであり、上記有機リチウムと有機マグネシウムの任意の組み合わせから選択されるがこれらに限定されない「アート」錯体を予め形成することが可能である。
【0077】
LOXSH触媒の形成工程で形成される非限定的なアルカリまたはアルカリ土類アミノアルコキシド、アルカリまたはアルカリ土類アミノエーテルアルコキシド、及びアルカリまたはアルカリ土類エーテルアルコキシド(アルカリ及びアルカリ土類アルコキシドについてそれぞれ、[PCA-]M+または[PCA-22+と示す)は、上記の適切な極性錯化剤[PCAH]の一般構造から形成される。形成される[PCA-]M+及び/または[
PCA-22+は、LOXSH触媒を形成する場合にインサイチュで形成することができ、及び/またはそれらを予め十分に形成し、該アルカリまたはアルカリ土類アミノアルコキシド、アルカリまたはアルカリ土類アミノエーテルアルコキシド、及びアルカリまたはアルカリ土類エーテルアルコキシドとして触媒形成用の反応器に装填することができることは明らかであるはずである。従って、PCAH及び/または[PCA-]前駆体(例え
ば、適切に還元された適切なN,N-ジアルキルアミノ酸)から[PCA-]M+及び/または[PCA-22+のいずれかを形成することが可能な任意のアルカリまたはアルカリ土類試薬を、本発明を実施する上で使用することができ、結果的にこれは本発明の範囲内である。実施例25~27によって明らかにされるように、触媒組成物の[PCA-]成
分は、予め形成し、その後触媒形成反応の過程で装填することができる。従って、固体アルカリ及びアルカリ金属水素化物、アルカリ金属及びアルカリ金属合金、アルカリ金属アルキル及びアルカリ土類アルキル、アルカリ金属アミド及び/またはアルカリ土類アミド(塩類似金属アミド)を、本発明を実施する上で使用してPCAH及び/または[PCA-]前駆体と反応させ、本発明の触媒及び試薬を含む[PCA-]を形成することができる。[PCA-]M+及び/または[PCA-22+の当該形成は、(a)触媒形成用の反応器内で、インサイチュで十分に、触媒形成の前及び/または触媒形成中に、及び/または(b)該触媒形成用の反応器と関連したまたは該触媒形成用の反応器とは完全に分離した外部反応器内のいずれかで行うことができる。しかしながら、塩類似金属アミドの使用で、本発明のポリマー組成物にアミン官能基の導入をもたらす可能性があり、いくつかの用途において望ましくないことに留意すべきである。さらに、[PCA-]Li+を形成するためのLiAH4等の錯化金属水素化物の使用で、かかる反応のアルミニウム副生物から
形成される該[PCA-]Li+の分離が必要な場合がある。
【0078】
以下の実施例28及び29は、当該アミノエーテルアルコキシドがある特定の条件下で、生成時またはLOXLiHで触媒されるHMSHIP工程の間に劣化または分解する可能性があることを実証している。実施例30は、ある特定の工程条件下で、2-メトキシエタノール及び有機リチウム化合物から生じるエーテルアルコキシドから形成されるLOXLiH触媒は、水素連鎖移動工程を十分に活性化しないことを実証している。従って、特にLOXLiH工程用の好ましい極性錯化剤は、アミノアルコキシドである。しかしながら、アミノエーテルアルコキシドは、LiH活性が低いLOXSH二金属触媒には十分に適している場合があることが理解されるべきである。同様に、2-メトキシエタノールから生じるLOXLiH触媒がより適切もしくはより活性が高い場合の条件または工程は、本発明の実施を通じて見出される可能性がある。
【0079】
キラルアミノ酸の還元及びさらなる合成加工によって合成することができる利用可能な多くのキラル3級アミノアルコールがあり、例としてそうした適切なアミノアルコールのリストは無限であり得る。かかるキラル3級アミノアルコールの使用が、選択性、タクティシティー、または立体規則性の観点からもたらし得る任意の利点は、十分本発明の範囲内である。それでもなお、アミンと、エチレンオキシドや他のエポキシド等の反応性環状エーテルの単純反応によって調製され得るあまり複雑でない3級アミノアルコールが好ましい。容易に入手可能なかかる3級アミノアルコールの非限定的な例としては:ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、N-メチルジエタノールアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-メチル-2-ピロリジンメタノール等が挙げられる。
【0080】
LOXSH触媒に有用なポリ(3級アミン)促進剤の非限定的な例としては、プロピレンジアミンから得られるジ(3級アミン)配位子、エチレンジアミンまたはポリエチレンイミンから得られるジ(3級アミン)配位子が挙げられる。好ましい例としては、N,N
,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、スパルテイン、イソスパルテイン、及び1,4-メチルピペラジンが挙げられるが、TMEDAが最も好ましい。最も好ましいポリ(3級アミン)促進剤配位子は、最も揮発性が高く、及び/または最も水溶性及び/または酸可溶性が高い化合物であり、それ故TMEDAが好ましい。ポリ3級アミン促進剤化合物の存在が、LOXSH触媒/試薬の形成を容易にすると思われる。LOXSH工程は、該ポリ3級アミン促進剤の非存在下で行うことができるが、いくつかの実施例において、該ポリ3級アミン促進剤の存在が、より低い非対称性のLOXSH PS分布を低モノマー供給量及び低水素圧力において高収率で与えた。
【0081】
使用され得る好ましい芳香族炭化水素は、pKaがトルエンに対して±2.75pKa単位である任意の芳香族炭化水素であるが、pKaがトルエンより4.32単位低いジフェ
ニルメタン等の芳香族炭化水素は:1)ポリマー微細構造中にジフェニルメタン部分を組み込むことが最終的な最終用途に影響を与えない限り、及び/または2)かかる炭化水素のpKaが、当該反応条件下でH2のものより十分に高く、水素媒介連鎖移動機構を妨害しない限り、使用することができると考えられる。使用され得る芳香族炭化水素の非限定的な例は、ベンゼン、トルエン、メシチレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、アミルベンゼン、1,2-ジアリールエタン、1,3-ジアリールプロパン、クメン、t-ブチルベンゼン、1-アルキルナフタレン、2-アリルナフタレン(2-alylnaphthalene)、またはスチレン二量体、もしくは低分子量オリゴマー分布(スチレン二量体、三量体、四量体、及び五量体)である。かかる芳香族炭化水素の使用は任意であるものの、それらの存在が、該有機リチウム、より具体的にはアルキルリチウム試薬の該ポリ3級アミン促進剤に対する好ましくない攻撃を弱め、もしくは回避し、またはさもなければ軽減すると考えられるため、それらの使用が好ましい。LOXSH触媒は、当該触媒を構成するアルカリまたはアルカリ土類アミノアルコキシド、アルカリまたはアルカリ土類アミノエーテルアルコキシド、及び「アルカリまたはアルカリ土類エーテルアルコキシドに対する該有機リチウム試薬の攻撃を軽減または阻害することができる。当該生成物分布から蒸留によって、またはポリマーの沈殿によって容易に除去される炭化水素が好ましい。スチレンを使用するHMSHIP工程にとって最も好ましい芳香族炭化水素はエチルベンゼンである。
【0082】
使用され得る炭化水素溶媒は、当該反応条件下で分子水素(H2)より高いpKaを有する任意の炭化水素である。かかる好ましい溶媒の非限定的な例は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及び上記芳香族炭化水素である。他の炭化水素溶媒は、それらの使用が当該塩類似水素化物触媒、反応性中間体、過渡的リビングポリマー鎖、及び当該ポリマー鎖分布の生成物の溶解性に影響を与えない限り使用することができる。
【0083】
該芳香族炭化水素及び該芳香族溶媒は同じでも異なっていてもよい。このことは、該芳香族炭化水素が該芳香族炭化水素及び該溶媒の両方の機能を果たすことができることを意味している。例えば、エチルベンゼンはスチレンの重合において好ましい成分であり、該芳香族炭化水素及び該溶媒の両方として使用することができる。この場合、LOXSH工程に関して、成分(iv)及び(vi)は1つの成分(または制約)に統合され、同じになる。同様に、それらは異なっていてもよい。例えば、該芳香族炭化水素はエチルベンゼンでよく、該炭化水素はシクロヘキサンでよい。従って、成分(iv)及び(vi)は異なる。さらに、成分(iv)は、芳香族炭化水素が使用されない場合には任意でよく、例えば、シクロヘキサンが成分(vi)として使用される。
【0084】
上記LOXSH触媒の形成工程における水素分圧は、約0.001~約10.0バール、約0.3~約6.8バール、約0.5~約5.2バール、または約1.0~約4.2バールの間の圧力で維持される。
【0085】
3級アミノアルコール及び有機リチウム化合物からの単金属LOXLiH触媒の形成において、3級アミノアルコール対有機リチウムの比は大きな幅があってよい。しかしながら、水素化リチウム種を形成するために、リチウム-炭素結合が該水素化リチウム種への還元に利用可能であるように、3級アミノアルコールのモル当量よりモル過剰の該有機リチウム化合物を使用する必要があることを理解されたい。41モルの有機リチウム試薬当たり40モルの3級アミノアルコールの装填比を使用することが考えられるが、かかる装填比は高価な試薬の浪費である。好ましい装填比(3級アミノアルコール:有機リチウム)は、(1.00:1.05)~約(1:6)の範囲であり、より好ましい範囲は(1.00:1.10)~約(1:5)であり、さらにより好ましい範囲は(1.0:1.2)~約(1:4)であり、最も好ましい範囲は(1.00:1.40)~約(1:3)である。
【0086】
理論に拘束されることを望むものではないが、以下の実施例33及び34に記載の結果は、N,N-ジメチルアミノエタノール(DMEAH)対n-ブチルリチウムの装填比(1:1.5)、すなわち(2:3)と同時のまたはそれに続く水素化物を形成するための水素での還元で、式[DMEA-4Li62のジヒドリド触媒が得られ、これら2つのヒドリドのうちの1つのみがシクロヘキサン雰囲気下でスチレンの重合を開始することを示している。同様に、実施例35及び36は、1:2の比のDMEAH対n-ブチルリチウムで、式[DMEA-4Li84のテトラヒドリド触媒が得られ、これら4つのヒドリドのうちの1つのみが水素雰囲気下でスチレンの重合を開始することを示している。同様に、実施例37)で使用された(1:3)の装填比で、式[DMEA-2Li64の可溶性水素化物触媒が生じ、9個のヒドリドのうち約1個のみがシクロヘキサン雰囲気下でスチレンの重合を開始した。従って、この理論上好ましい触媒組成物は、実験式[DMEA-
4Li128と[DMEA-5Li1510の組み合わせを有する凝集体の混合物を含み、両方の触媒の1つのみのヒドリドがさらなる分子水素の非存在下でのスチレン重合の開始に利用可能である。最も好ましい触媒組成物は、全体的な実験式:(a)[DMEA-5Li127、及び/または(b)[DMEA-2Li53を有する触媒凝集体からなり、
この場合、(3級アミノアルコール:有機リチウム)の比は(1:2.4)~(1:2.5)の範囲にある。これと同じ好ましい範囲が可溶性水素化リチウム錯体、触媒、及び試薬の3級アミノエーテルアルコール及び/またはエーテルアルコールからの形成において適用される。
【0087】
LOXLiH触媒は、水素下で形成された場合、凝集体として存在し、これはある特定の化学量論の下では所定の分子量の明確に定義された種として存在する一方、他の化学量論または装填比では、明確に定義されていないが不均一な凝集体の混合物として存在する触媒が得られると考えられることに留意されたい。さらに、ポリ3級アミン促進剤の存在が、ある特定の凝集体をさらに安定化することができるか、または、より大きな凝集体のあまり均一でない混合物をより小さくより活性の高い凝集体に分散させることを促進することができるかのいずれかであると考えられる。従って、触媒系の活性にはかなり差があり得るが、全体として、この種類の触媒は、リビングアニオン重合の開始が比較的苦手である。すなわち、H2を含まない雰囲気下での開始剤としての該LOXLiH試薬は、該
ヒドリドの開始への利用可能性に関して比較的非効率的である(EffCT<1.0かつEffCT=0.1~EffCT=0.67の範囲である)。従って、これらの同じ触媒が、本発明の水素媒介アニオン連鎖移動重合をそれほど効率的に開始及び触媒し、該%EffCT=1000%~16000%で、低い方の値、すなわち、1000%に近い値は、モノマーの意図的な限定使用から生じるのみであることは、依然として非常に驚くべきことである。
【0088】
該炭化水素可溶性LOXSH触媒は、以下の実験化学式:a)[PCA-4Li62
b)[PCA-4Li84、c)[PCA-2Li64、d)[PCA-4Li128
e)[PCA-5Li1510、f)[PCA-5Li127、g)[PCA-2Li53
、h)[PCA-4Li4MgH2、i)[PCA-4Li4Mg24、j)[PCA-2
Li4MgH4、k)[PCA-4Li6Mg38、l)[PCA-5Li9Mg310、m
)[PCA-5Li6Mg37、n)[PCA-2Li3MgH3、o)[PCA-4Li5KH2、p)[PCA-4Li7KH4、及びq)[PCA-2Li5KH4を有し得るとと
もに、当該実験式は、任意にさらに、PTA促進剤配位子錯体を、アルカリ金属とアルカリ土類金属の合計対PTAのモル比約10,000対1.0から約1.0対約8.0で含むことができる。好ましい[PCA-]は、[DMEA-]、[DMAEOE-]、または
[MEOE-]である。
【0089】
該二金属第I族アルカリ金属LOXSH触媒の形成において、3級アミノアルコール対アルカリ金属の合計の比(3級アミノアルコール:アルカリ)は、(1.00:1.05)~約(1:6)の範囲の範囲であり、より好ましい範囲は(1.00:1.10)~約(1:5)であり、さらにより好ましい範囲は(1.0:1.2)~約(1:4)であり、最も好ましい範囲は(1.00:1.40)~約(1:3)である。また、リチウム対リチウム以外のアルカリ金属の比(Li:Na及び/またはLi:K及び/またはLi:Cs等)は、(10,000:1)~(1:2)であり、好ましい比は、(34:1)~(2:1)の範囲であり、最も好ましいのは、(17:1)~(3:1)である。これに関連して、装填比(10,000:1)は、当該アルカリ金属が意図的に装填された前の実験から当該反応器もしくは装填ラインまたはタンクに残された量に起因する微量のアルカリ金属、特にカリウムの意図しない存在を表す場合がある。カリウム及び他のアルカリ金属系の二金属リチウム触媒は、反応器壁に痕跡程度の触媒または触媒の副生物を沈着する傾向があり、かかる痕跡は、スチレンの水素媒介塩類似水素化物開始重合の過程で、さもなければ純粋なLOXLiH触媒系によってもたらされる高選択性の微細構造に悪影響を与えることが見出されている。
【0090】
ナトリウム及び/またはカリウム及び/またはセシウムとの二金属リチウム二金属錯体LOXSH触媒で実験化学式:a)[DMEA-4Na4Li44、b)[DMEA-6
Na4Li42)、c)[DMEA-6Na4Li64、d)[DMEA-44Li44
、e)[DMEA-64Li42)、f)[DMEA-64Li64、g)[DMEA-4Cs4Li44、h)[DMEA-6Cs4Li42)、及びi)[DMEA-6Cs4Li64を有するものが本発明から製造可能である。さらに、かかる二金属LOXSH
触媒配合物と上記単金属LOXLiH触媒配合物の組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0091】
該水素化マグネシウム系二金属第II族アルカリ土類リチウム錯体、すなわちLOXMgH2触媒の形成において、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供す
る(3級アミノアルコール:合計金属当量)の比は、(1.00:1.05)~約(1:6)の範囲であり、より好ましい範囲は(1.00:1.10)~約(1:5)であり、さらにより好ましい範囲は(1.0:1.2)~約(1:4)であり、最も好ましい範囲は(1.00:1.40)~約(1:3)である。従って、実験式[DMEA-4Li4
MgH2の触媒組成物(4モルのDMEAH対合計5モルの金属は従って、(4:6また
は1.0:1.5DMEAH:合計金属当量であり)、好ましい。同様に、実験式:a)[DMEA-4Li4Mg24(1:2 DMEAH:合計金属当量)、b)[DMEA-6Li4Mg22(1.00:1.33 DMEAH:合計金属当量)、及びc)[DMEA-6Li4Mg34(1.00:1.67 DMEAH:合計金属当量)の触媒単独
、または上記からのLOXLiHもしくはLOXSH触媒配合物との組み合わせは本発明の範囲内である。これと同じ好ましい範囲が可溶性二金属リチウムマグネシウム水素化物錯体、触媒、及び試薬の3級アミノエーテルアルコール及び/またはエーテルアルコール
からの形成において使用され得る。これと同じ好ましい範囲が可溶性二金属リチウムカルシウム水素化物錯体、触媒、及び試薬の3級アミノアルコール及び/または3級アミノエーテルアルコール及び/またはエーテルアルコールからの形成に適用され得る。
【0092】
本発明はさらに、固体アルカリ水素化物、アルカリ金属及び/またはアルカリ金属合金を含む試薬から形成される炭化水素可溶性触媒または試薬組成物に関し、この場合、極性錯化剤対アルカリ金属の合計の比は、約1:1.05~約1:6の範囲の範囲であり、有機リチウム化合物対アルカリ金属のモル比は、10,000~1:2である。
【0093】
別の実施形態は、炭化水素可溶性単金属LOXLiH触媒または試薬組成物であり、分子水素及び以下のいずれかから形成される:
a.リチウムアルコキシド及び有機リチウム化合物と反応した極性錯化剤であり、極性錯化剤対アルカリ金属の合計のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲であるか、
b.極性錯化剤及び有機リチウム化合物であり、極性錯化剤対アルカリ金属の合計のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲であるか、または
c.極性錯化剤、少なくとも1つの固体水素化リチウム及び/またはリチウム金属、ならびに有機リチウム化合物であり、極性錯化剤対リチウムの合計のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲の範囲である。
【0094】
別の実施形態は、水素化マグネシウムのアルカリ土類金属LOXMgH2触媒もしくは
試薬を含む炭化水素可溶性触媒または試薬組成物であり、分子水素及び以下のいずれかから形成される:
a.リチウム及び/またはマグネシウムアルコキシドを形成するように反応させた極性錯化剤、有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物であり、極性錯化剤対合計金属当量のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を供給するものであるか、
b.極性錯化剤、有機リチウム化合物、及び有機マグネシウム化合物であり、極性錯化剤対合計金属当量のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を供給するものであるか、
c.極性錯化剤、少なくとも1つの固体水素化リチウム、金属リチウム、固体水素化マグネシウム、少なくとも1つの有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物であり、極性錯化剤対合計金属当量のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を供給するものであるか、
d.極性錯化剤、少なくとも1つの固体水素化リチウム及び/または金属リチウム、ならびに有機マグネシウム化合物であり、極性錯化剤対合計金属当量のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を供給するものであるか、
e.極性錯化剤、固体水素化マグネシウム、及び有機リチウム化合物であり、極性錯化剤対合計金属当量のモル比が、約1:1.05~約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を供給するものである。
f.また、当該触媒組成物におけるリチウム対マグネシウムのモル比は、10,000:1~1:6の範囲である。
【0095】
別の実施形態は、(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/またはアルカリアミド、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエ
ンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素から、(vii)H
2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒中で形成される、炭化水素可溶性触媒または試薬組成物の形成方法である。
【0096】
上記の方法において、該触媒または試薬の形成に使用される水素分圧は、約0.1バール~約300バールの範囲である。さらに、該触媒または試薬の形成に使用される温度は、約-96℃~約130℃の範囲である。さらに、該極性錯化剤対該有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウムのモル当量の装填比は、約1:1.05~約1:6モルの範囲にある1モルの金属アルキル当量当たりの極性錯化剤であり、この場合、リチウムは1当量を提供し、マグネシウムは2当量を提供する。PTAが該触媒または試薬の形成に使用される場合、PTA対合計金属(マグネシウム及びリチウム)のモル比は、約10,000:1.0~約1:8である。
【0097】
該炭化水素可溶性触媒または試薬組成物の形成に関する1つの実施形態は、以下のステップを含む:
A.該極性錯化剤を最初に以下の少なくとも1つのアルコキシド形成性試薬:a)固体水素化リチウム、b)リチウム金属、c)水素化マグネシウム、d)リチウムアミド、e)マグネシウムアミド、f)有機リチウム化合物、g)有機マグネシウム化合物と接触させ、それにより反応混合物を形成する。この場合、極性錯化剤対アルコキシド形成性試薬の化学量論的モル当量比は、約1:1~1:1未満であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する。
B.該有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物をさらに加える。
C.極性錯化剤対合計金属当量比は、約1:1.05~約1:6の範囲であり、リチウムが1当量を提供し、マグネシウムが2当量を提供する。
D.リチウム対マグネシウムのモル比は、約10,000:1~約1.0:6.0の範囲である。
E.形成される反応生成物をさらに水素で還元し、該炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒または試薬を形成する。
【0098】
該炭化水素可溶性触媒または試薬組成物の形成に関する別の実施形態は、以下のステップを含む:
A.該極性錯化剤を最初にアルカリアルコキシド形成性試薬と接触させ、それにより反応混合物を形成する。この場合、極性錯化剤対アルコキシド形成性試薬の化学量論的モル当量比は、約1:1~1:1未満である。
B.当該アルコキシド形成性試薬は、a)固体水素化アルカリ、b)アルカリ金属、c)アルカリ金属合金、d)アルカリアミド、e)マグネシウムアミド、f)有機リチウム化合物、g)有機マグネシウム化合物のうちの少なくとも1つである。
C.該有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物をさらに加える。
D.極性錯化剤対合計アルカリ金属の比は、約1:1.05~約1:6の範囲である。
E.リチウム対非リチウムアルカリ金属のモル比のいずれかは、1:2~約10,000:1の範囲の範囲であるか、または該触媒組成物のアルカリ金属はリチウムのみである。F.形成される反応生成物をさらに水素で還元し、該炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒または試薬を形成する。
【0099】
該炭化水素可溶性触媒または試薬組成物を形成するための上記方法及びステップにおいて、該方法はさらに、スチレン系モノマーを供給することを含んでポリ(スチリル)マグネシウム及び/またはポリ(スチリル)リチウム化合物を形成し、その後分子水素と接触させることにより還元し、該可溶性塩類似水素化物を形成してもよく、この場合、スチレン系モノマー対合計金属のモル比は、約1:10~約20:1である。別の実施形態では、該方法はさらに、スチレン系モノマーを供給することを含んで過渡的な1-フェニルヘキシルマグネシウム化合物及び/またはポリ(スチリル)マグネシウム化合物を形成し、
これをさらに分子水素で還元し、該可溶性塩類似水素化物を形成してもよく、この場合、スチレン系モノマー対マグネシウムのモル比は、約1:5~約20:1である。好ましいスチレン系モノマーはスチレンである。
【0100】
本発明の別の実施形態では、炭化水素可溶性触媒または試薬組成物は:(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(v)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/またはアルカリアミド、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエン
のpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(vii)ビニル芳香族モノマーから、(viii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒中で形成され、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0101】
本発明の別の実施形態は:(i)分子水素、(ii)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(iii)任意にポリ3級アミン化合物、(iv)3級アミノアルコール化合物及び/または3級アミノエーテルアルコール及び/またはエーテルアルコール、(v)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物、(vi)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンのpKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある
芳香族炭化水素から、(vii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒中で形成される触媒または試薬組成物である。
【0102】
最も望ましいLOXSH触媒は、該3級アミノアルコールがN,N-ジメチルアミノアルコール(DMEAH)の場合に形成される二金属LOXMgH2触媒組成物または凝集
体であり、該試薬の装填比に応じて、実験式及び/または分子式を明確に定義された組成または溶液中での触媒混合物の平均組成として有することができる:a)[DMEA-4Li4MgH2、b)[DMEA-4Li4Mg24、c)[DMEA-2Li4MgH4
d)[DMEA-4Li6Mg38、e)[DMEA-5Li9Mg310、(f)[DM
EA-5Li6Mg37、及び(b)[DMEA-2Li3MgH3
【0103】
特に望ましいLOXSH触媒は、該3級アミノアルコールがN,N-ジメチルアミノアルコール(DMEAH)の場合に形成される単金属LOXLiH触媒組成物または凝集体であり、該試薬の装填比に応じて、実験式及び/または分子式を明確に定義された組成または溶液中での触媒混合物の平均組成として有することができる:a)[DMEA-4Li62、b)[DMEA-4Li84、c)[DMEA-2Li64、d)[DMEA-
4Li128、e)[DMEA-5Li1510、(f)[DMEA-5Li127、及び
(g)[DMEA-2Li53
【0104】
従って、好ましい炭化水素可溶性LOXLIH触媒は、化学式[DMEA-xLiyzを有し、この場合、z=y-xであり、x、y、及びzは、ゼロより大きくかつゼロではない正の実数の整数または分数であり、当該式は、任意にさらにTMEDA配位子錯体をリチウムの合計対TMEDAのモル比約10,000対1.0から約1.0対約8.0で含むことができる。
【0105】
従って、本発明はまた、水素、有機リチウム化合物、及びジメチルアミノエタノールを含む試薬から形成される炭化水素可溶性触媒または試薬組成物に関し、該試薬の装填比に応じて、以下の1つ以上の実験式及び/または分子式を、I)溶液中での1)~105)
の明確に定義されたLiH凝集体組成として、II)溶液中で任意の割合での1)~105)の任意の2つ以上の平均LiH凝集体組成として、もしくはIII)溶液中での1つ以上の明確に定義されたLiH凝集体組成または平均組成と、溶液外の1)~105)のいくらかの不溶性LiH凝集体組成との組み合わせとして:
【表3-1】
【表3-2】
またはIV)I)、II)、もしくはIII)のいずれかとして有することができ、触媒凝集体の合計組成は、[DMEA-xLiyzとして表すことができる。従って、本発明の炭化水素可溶性[DMEA-xLiyz触媒は:(i)y当量の有機リチウム化合物、(ii)任意の量のTMEDA、(iii)x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼンから、(v)H2よりpKaが高い、芳香族炭化水素がエチルベンゼンでも別のものでもよい炭化水素溶媒及び(vi)分子水素中で形成されるとともに、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きくゼロではない正の実数の整数または分数である。
【0106】
本発明の実施において、該[DMEA-xLiyz触媒は、これらに限定されないが、以下を含む様々な方法で任意に形成することができる:
a)不活性雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた約y当量の(i)、任意に(ii)、約x当量の(iii)、任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後:1)このようにして形成された「アート」錯体にスチレンの一部を供給し、その後2)該不活性雰囲気をH2と交換もしくはさもなければH2で置換することで[DMEA-xLiyzに変換する方法、または
b)不活性雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた約y当量の(i)、任意に(ii)、約x当量の(iii)、任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成して前駆体である「アート」錯体を形成し、これをその後該不活性雰囲気を水素と交換もしくはさもなければ水素で置換することで[DMEA-xLiyzに変換する方法、または
c)外部の反応器内で、(vi)中で、十分に混合し反応させた、約x当量の(i)の一部と任意に(ii)、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、当該溶液を水素下で水素化物形成用反応器に移送し、その後約zもしくはy-x当量の(i)の残部を装填する方法、または
d)水素雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後y当量の(i)をすべて一度に、もしくは大部分徐々に供給する方法、または
e)水素雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた、任意に(ii)、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて約y当量の(i)を連続して、もしくは徐々に供給する方法、または
f)水素雰囲気下、(v)中で、十分に混合し反応させた、約x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後約3分間より多い時間をかけて約y当量の(i)を連続して、もしくは徐々に供給し、続いて所望の量の(ii)を添加する方法、
g)水素雰囲気下、(v)の一部の中で、十分に混合し反応させた、x当量の(iii)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後予めさらに(iv)及び/または(v)の一部で希釈した約y当量の(i)を約3分間より多い時間をかけて連続して、もしくは徐々に供給し、続いて所望の量の(ii)を添加する方法、
h)水素雰囲気下、(v)の一部の中で、十分に混合し反応させた、約x当量の(i)、及び任意に(iv)からなる溶液もしくは懸濁液を形成し、その後、予めさらに(iv)及び/または(v)の一部で希釈した約x当量の(iii)をすべて一度に、もしくは連続して、または徐々に、(iii)のすべての装填が完了するまでの時間で供給し、その後約zもしくはy-x当量の(i)を供給し、続いて所望の量の(ii)を加える方法。
【0107】
該[DMEA-xLiyz触媒/試薬は、1.0~3.0気圧のH2圧力の初期水素雰
囲気下、方法e)、f)、及びg)に従って、極めて活性が高く可溶性の形態で都合よく調製されることが分かっているが、より高いまたは低いH2圧力を用いることができる。
【0108】
(iv)及び(v)の融点ならびに当該反応条件下での(i)、(ii)、及び(iii)の溶解性ならびに安定性に応じて、-96℃~100℃超の初期温度が本発明の[DMEA-xLiyz触媒及びまたは試薬の形成に使用され得る。実施例に記載の通り、該[DMEA-xLiyz触媒は、35℃~40℃の範囲の温度で都合よく調製された。
【0109】
従って、[DMEA-2Li3H触媒を形成する場合、最も典型的には、約3当量(y
≒3)の有機リチウム化合物(シクロヘキサン中16.5wt%n-ブチルリチウム)(i)をさらにシクロヘキサン及びまたはメチルシクロヘキサン(v)及び/またはエチルベンゼン(iv)で希釈したものをその後徐々に(15~25分の時間をかけ、計量ニードル弁を通る適切な背圧(該弁を通る20~30PSIGの背圧降下)を用いて、十分に攪拌された(本明細書で以下に記載の傾斜羽根または任意の他の適切なガス分散混合装置を用いる場合、約50~約2000RPM、好ましくは約200~約1500RPM、最も好ましくは約500~約1200RPM)、35℃~40℃の溶存H2(15~22P
SIGのH2)、約2当量(x≒2)のジメチルアミノエタノール(ii)を、エチルベ
ンゼン(iv)を伴うもしくは伴わないシクロヘキサン及びまたはメチルシクロヘキサン(v)中に含む反応混合物に供給する。最初に、(i)の供給の最初の1/3~約2/3の間、かろうじて認められるヒートキックが起こり、生成されるブタンが原因で、すなわち、(i)がブチルリチウム試薬の場合、反応器の圧力が2~3PSIG上昇する。反応器の圧力の上昇はまた、一部には、特に(i)がさらに大量の(iv)及び/または(v)で希釈される場合、導入される供給の体積による上部空間の蒸気及び気体の圧縮が原因である。(i)の供給の最後の約1/3の間、温度は上昇し(実施例に記載の反応器中で1.0°~3.0℃)、該[DMEA-xLiyz触媒の形成に使用される条件に応じて圧力は安定化または1~3PSIG低下するかのいずれかである。
【0110】
触媒反応混合物の形成の際、該[DMEA-xLiyz触媒の完全な還元を容易にするため、該反応混合物が所望の初期重合反応温度に加温された後、該反応器の圧力が60~80PSIGになるように水素をさらに該反応容器に装填する。活性型触媒を形成するために必須ではないものの、最も活性が高い形態の[DMEA-xLiyz触媒は、高圧になるまでのこのさらなる水素の装填が使用された場合に調製されることが分かった。また、最も活性が高く最も再現性の良い触媒は、該[DMEA-xLiyz触媒が所望の、またはほぼ該水素媒介アニオン重合の反応温度(約68℃~約82℃)に、約1時間超、好ましくは約2時間超~約5時間の間維持された場合に形成され、その後、重合用に望ましいH2圧力まで放出することができることも分かっている。本発明を実施する上でかかる
触媒の熟成手順を行うことは必須ではないが、実験間の再現性にはこの手順が都合よく働く。理論に拘束されることを望むものではないが、該触媒熟成工程は、高濃度の利用可能なヒドリドを(i):(iii)の装填比に応じて2、もしくは3または4つのLiH部分を個別の凝集体内に有する明確に定義された触媒組成物の形態で提供し得る。該触媒熟成工程は、凝集体当たり4LiHを超える部分または当量を有する最初に生じる高次凝集体の平衡もしくは再分配、及びまたはあまり望ましくない比のx:y:zの凝集体組成物の、所望の比のx:y:zの触媒凝集体を高濃度で形成するための再分配と見なされる。
【0111】
従って、最も活性の高い触媒は:(a)約3当量の(i)(シクロヘキサン1重量部中2.0M)をさらにエチルベンゼン8~10重量部に溶解し、(b)(a)を約15~25分の時間をかけて、16~21PSIGの水素雰囲気下、約35~40℃にて、約500RPMで攪拌された(ii)を含まない24~28重量部の(iv)及び/または(v
)に溶解した約2当量の(iii)に供給し、(c)任意に(ii)を加え、(d)該水素圧力を50PSIGに、及び該混合RPMを900~約1200RPMに上げ、(e)(b)で形成された溶液を約65℃~約85℃に加温し、(f)さらに該水素圧力を約75PSIGに上げ、(g)該触媒を約1時間~約5時間超の時間熟成させた場合に形成されている。該熟成時間の後、該水素圧力を当該反応器から本発明のスチレンの水素媒介アニオン重合方法の実施にとって望ましい圧力まで慎重に排気する。水素から直接形成されたいかなる共有結合されたルイス酸基も含まない炭化水素可溶性水素化リチウム組成物は、これまで知られていない。従って、この高温における水素下での平衡化または触媒熟成工程もまた、本発明の特徴である。この特徴は、隣接リチウムアミノアルコキシド凝集体及びリチウムアミノアルコキシド錯化有機リチウム試薬の形成に関する公開された文献の報告から根拠がないわけではない。従って、キラル隣接リチウムアミノアルコキシドから調製されるある特定の有機リチウム試薬は、以下のある特定の装填プロトコル及び当該ケトンの導入に先立つ極低温条件下での該試薬成分の熟成により、ケトンへの該有機リチウム試薬の付加に関してよりエナンチオ選択性になることが報告されている。これに関しては:Collumn,D.B.、et.al.“Highly Enantioselective 1,2 Addition of Lithium Acetylide-Ephedrate Complexes:Spectroscopic Evidence for Reaction Proceeding via 2:2 Tetramer, and X-ray Characterization of Related Complexes”, J. Am. Chem. Soc. 2000, 122. 11212を参照されたい。
【0112】
該LOXSH触媒を形成するのに適切な有機リチウム化合物の非限定的な好ましい例は、添加されてもインサイチュで生成されてもよいn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、アリルリチウム、ビニルリチウム、フェニルリチウム、1-ヘキシル-1-フェニルリチウム、1-ヘキシル-1,1-ジフェニルリチウム、シクロヘキシルリチウム、及びポリ(スチリル)リチウム化合物である。
【0113】
ジメチルアミノエタノール及び有機リチウム化合物からの[DMEA-xLiyz触媒の形成において、ジメチルアミノエタノール対有機リチウムの比は大きな幅があってよい。しかしながら、水素化リチウム種を形成するために、リチウム-炭素結合が該水素化リチウム種への還元に利用可能であるように、ジメチルアミノエタノールのモル当量よりモル過剰の該有機リチウム化合物を使用する必要があることを理解されたい。41モルの有機リチウム試薬当たり40モルのジメチルアミノエタノールの装填比を使用することが考えられるが、かかる装填比は高価な試薬の浪費である。好ましい装填比(ジメチルアミノエタノール:有機リチウム)は、(1.00:1.05)~約(1:6)の範囲であり、より好ましい範囲は(1.00:1.10)~約(1:5)であり、さらにより好ましい範囲は(1.0:1.2)~約(1:4)であり、最も好ましい範囲は(1.00:1.40)~約(1:3)である。実施例の[DMEA-4Li62触媒は、3モルのn-ブチルリチウムに対して約2モルのジメチルアミノエタノールの装填比から形成された。
【0114】
約2.0モル濃度以上の該有機リチウム試薬の溶液をさらに炭化水素溶媒、特にエチルベンゼンの一部で約≦0.2モル濃度まで希釈することが、より活性の高い[DMEA-
xLiyz触媒の形成において有利である(が必須ではない)ことが見出されている。
1つの説明は、該有機リチウム化合物の濃度がより低いと、有機リチウム種が高分子凝集体に存在する可能性が低いということである。スチレン及び共役ジエンのリビングアニオン重合反応におけるアルキルリチウム化合物の会合度によって生じる複雑な関係は、当技術分野で十分に確立されている(これに関しては、Hsieh H.L.and Quirk,R.P. Anionic Polymerization Principles and Practical Applications,Marcel Dekk
er,1996,New York,pp 135-132、特に138ページ、表6.2を参照されたい)。比較的濃縮された溶液(≧1.0モル濃度溶液)として通常は供給されるように、n-ブチルリチウムの会合度は通常6であり、t-ブチルリチウム及びsec-ブチルリチウムの会合度は通常炭化水素溶媒中で4である。該溶媒による有機リチウム化合物の希釈は、該有機リチウム試薬の会合の低下、ひいては[DMEA-xLiy
z触媒の形成時の局在的な有機リチウム濃度の低下につながり得る。理論に拘束される
ことを望むものではないが、触媒形成の過程で該有機リチウム化合物の局所濃度が高いことが、活性の低い、すなわち、あまり利用できないLiHの超凝集体の活性型[DMEA-xLiyz触媒の形成をもたらす可能性がある。脂肪族または脂環式炭化水素と比較して低いpKaは、該リチウムDMEA-アルコキシドの最初の形成を超えたDMEAHに対する該有機リチウム試薬の望ましくない任意の攻撃の抑制においてもある程度有利であり得る。従って、sec-ブチルリチウムの使用は、n-ブチルリチウムと比較してこの有機リチウム化合物の固有の会合の状態が低いため、n-ブチルリチウムより効率的であることが判明し得る。
【0115】
水素雰囲気下で形成された場合、[DMEA-xLiyz触媒は凝集体として存在し、これはある特定の化学量論下では所定の分子量の明確に定義された種として存在することができる一方、他の化学量論または装填比では、明確に定義されていないが不均一な凝集体の混合物または超凝集体として存在する触媒が得られると考えられることに留意されたい。さらに、ポリ3級アミン促進剤または任意の他の適切な有機ルイス塩基(例えば、テトラヒドロフラン)の存在が、ある特定の凝集体をさらに安定化することができるか、または、より大きな凝集体のあまり均一でない混合物をより小さくより活性の高い凝集体に分散させることを促進することができるかのいずれかであると考えられる。従って、触媒系の活性は、当該装填比、触媒成分、及び該触媒の調製において従ったプロトコルに基づいてかなり異なる可能性がある。
【0116】
[DMEA-xLiyz触媒の形成に使用される分子水素の分圧は、約0.1~300バールもしくは約0.5~約12.0バール、または約1.0~約10.0バールもしくは約1.1~約5.0バールの間の圧力に維持される。低いまたは高い水素分圧は、気相から凝縮相へのH2の物質移動のために適切な混合が得られ、ひいては混合が[DMEA-]xLiyHz触媒の合理的に短期間での形成にとって重要である限り、使用することができる。
【0117】
[DMEA-]xLiyHz触媒の形成に使用される温度は、約-96℃~約130℃
の範囲、より好ましくは約20℃~約110℃の範囲、最も好ましくは30℃~90℃の範囲に維持される。[DMEA-]xLiyHz触媒の形成において、及びそれに続く初
期加熱の過程では、該触媒成分は、当該炭化水素溶媒(もしくは溶媒混合物)の融点または供給されるもしくはされるであろうモノマーの凝固点を単に超える温度で混合すること及び反応させることができる。低温(すなわち、-10~15℃)で、及びさらには極低温条件下(-10℃~-126℃)で該触媒成分を混合することは、使用されるTMEDA促進剤及び/またはDMEAHの部分的な分解につながり得るリチオ化反応を回避または抑制するという利点を有する場合がある。
【0118】
窒素は、本発明の[DMEA-]xLiyHz触媒によって「固定」され得る、すなわ
ち、N2が還元され得る(この証拠は観察されていないが)可能性があることから、反応
器の上部空間及び系からN2を除去または少なくとも最小限に抑えることが望ましい可能
性があるが、恐らくその必要はない。一般に活性化水素化物に対して不活性と見なされる他の気体、例えば、希ガス(He、Ne、Ar)の存在または比較的軽質の脂肪族もしくは脂環式炭化水素(反応温度に近いまたはそれ未満の沸点を有する炭化水素)とともに操作することが可能である。
【0119】
これら不活性ガスの中でも比較的軽質の炭化水素が好ましい(ブチルリチウム試薬から生じる任意のC4炭化水素等)。これは、かかる炭化水素が一般に反応媒体に可溶であり、それ故上部空間の容積の減少に伴ってH2を置換することがなく、それによって、一定
の反応器圧力でのモノマー供給の過程において顕著に様々な量でH2の分圧を低下させる
こともないためである。従って、凝縮相の体積の増加につれて該上部空間で圧縮される不活性ガスはあまり望ましくない。しかしながら、当該上部空間の容積が固定されている場合の希ガス等のかかる低溶解性のガスの連続工程における存在は、恐らく何らかの利点のため使用されることもある。市販の反応器を定圧の低陽圧で操作することは困難であり、それ故、所望のH2分圧、よって活性が、より高い全反応器圧力で維持され得るように、
存在している低沸点(石油エーテル)炭化水素を有することが有利な場合がある。かかる軽質炭化水素は、何らかの還流冷却手段という付加的な利点をもたらすことさえある。
【0120】
該[DMEA-]xLiyHz触媒の形成の際、TMEDAは、還元もしくは水素化物
形成工程の間に任意に存在することもできれば、水素化物形成に続いて任意に添加することもできる。TMEDAは、該[DMEA-]xLiyHz触媒の形成をある特定の条件
下で促進する場合もあれば、使用時の該[DMEA-]xLiyHz触媒活性の促進に有
効である場合もあるが、該触媒の形成に必須ではない。実際、触媒形成の過程での微量のTMEDAの存在でも、触媒活性の減少につながり得るといういくつかの証拠がある。TMEDAで錯化された有機リチウム試薬は、競合的還元を受け、Schleyerの超活性型ナノメータサイズのLiHを生じ得ると思われる(Schleyer,P.v.R.、et.al. J.Org.Chem.1987. 52, 4299、及びSchleyer,P.v.R.、et.al. Angew Chem Int.Ed.Engl.1986 25 465)。かかるナノメータのLiHは、HMAPS工程用の触媒としては極めて非効率的であることが見出されており(以下に記載する)、それ故、その同時形成は、活性型触媒の力価を低下させる。従って、完全に必要というわけではないが、該[DMEA-]xLiyHz触媒の形成後にTMEDAを添加することが推奨される
。同様に、当該触媒形成用反応器及び反応器列を使用前にすすぐだけでなく、再生溶媒からのTMEDAの酸抽出または除去によって、該[DMEA-]xLiyHz触媒形成段
階から外来TMEDAを除去しないまでも減少させることに何らかの努力をすることが推奨される。反応器中で[DMEA-]xLiyHz触媒を形成するため、TMEDAを予
め装填された、またはTMEDAを装填されるべきHMAPS重合反応器に該触媒を移すことも、必須ではないが賢明である。
【0121】
TMEDAを使用する場合には、リチウム対TMEDAのモル比(リチウム:TMEDA)が、ほぼ限界(∞:1)またはより実際的に(10,000:1)~約(1:8)、または好ましくは約(5:1)もしくは約(1:5)、またはより好ましくは(3:1)~約(1:3)の比で含まれる。これに関連して、装填比(∞:1)またはより実際的に(10,000:1)は、該TMEDAが意図的に装填された前の実験から当該反応器もしくは装填ラインまたはタンクに残された量に起因する微量のTMEDA促進剤の意図しない存在を表す場合がある。さらに、リチウムの合計対TMEDAの装填比が(1:8)を超えることは本発明の範囲内であるが、かかる装填比は、たとえあったとしてもごくわずかの利点しかもたらさず、TMEDA促進剤だけでなく、当該反応物または生成物の混合物から該TMEDA促進剤を除去及び/または回収するのに必要な任意の試薬及び/または追加の努力の無駄な使用を示す。
【0122】
LOXLIH「DMEA-]xLiyHz触媒の形成に使用され得る炭化水素溶媒は、
当該反応条件下で分子水素(H2)より高いpKaを有する任意の炭化水素である。かかる好ましい溶媒の非限定的な例は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンであり、エチルベンゼンとともに、またはエチルベンゼンなしで使用される。他の炭化水素溶媒は、それ
らの使用が:1)当該塩類似水素化物触媒、反応性中間体、過渡的リビングポリマー鎖、及び当該ポリマー鎖分布生成物の溶解性に影響を与えない限り、または2)HMSHIPまたはHMAPS工程に該触媒を使用する場合、該溶媒は、該炭化水素溶媒が約2wt%以上のレベルで該HMAPS生成物分布に導入される十分に活性が高い有機連鎖移動剤として作用しない限り、使用することができる。
【0123】
本発明のさらなる詳細な説明
本出願の別の実施形態は、水素媒介アニオン連鎖移動重合方法に関し、これは、アニオン重合性モノマー、例えば、ビニル芳香族、及び/またはスチレン系モノマーを、分子水素を含む雰囲気下で、炭化水素溶媒及び炭化水素可溶性塩類似水素化物触媒の反応混合物を含む反応容器に供給することを含む。該可溶性塩類水素化物触媒には、別々に、または組み合わせてのいずれかで使用されるLOXSH触媒が含まれる。該LOXSH触媒工程の好ましい実施形態は、速度論的連鎖長分布(ν)、従って重合度(DPn)、従って数
平均分子量(Mn)を有し、これらは、以下の関係によって決定されるか、さもなければ
規定される:
【数3】
従って、Mnは、本質的に他の運動項を除外して設定され、従って、ポリマーは本質的に
水素及びモノマーからのみ形成されるアニオン連鎖移動ポリマー分布であり、添加されたいずれの有機連鎖移動剤の組み込みもほとんどない、すなわち、少なくとも約2wt%未満、より好ましくは1wt%未満、より好ましくは0.1wt%未満である。従って、モノマーがスチレンの場合のかかるポリマーのMn(エチルベンゼン含量を除いて)は:
【数4】
で与えられ、この場合、スチレンのモルは、スチレンの供給量、水素のモルは消費量であり、生じたエチルベンゼンのモルは少量、好ましくは生成物の組成の10wt%未満、より好ましくは7wt%未満、最も好ましくは5wt%未満である。
【0124】
従って、本発明はまた、LOXSH触媒によるアニオン連鎖移動重合方法に関し、これは、アニオン重合性モノマー(例えば、ビニル芳香族モノマー及び/または好ましくはスチレン系モノマー)を、反応混合物に、反応容器中で分子水素を含む雰囲気下で供給することを含み、当該反応混合物は、(i)有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(ii)任意にポリ3級アミン化合物、(iii)3級アミノアルコール化合物、3級アミノエーテルアルコール、エーテルアルコール、またはそれらの組み合わせから選択される極性錯化剤、(iv)任意にアルカリ金属もしくは金属合金及び/または固体塩類似水素化物及び/または塩類似金属アミド、(v)任意に、少なくとも1つのC-H共有結合のpKaがトルエンのpKaのものより2.75pKa単位上から、トルエンの
pKaより-4.30pKa単位下の範囲内にある芳香族炭化水素、(vi)任意に、ビニル芳香族モノマー、及び(vii)H2よりpKaが高い、該芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、(viii)分子水素中から生成されたとともに、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0125】
LOXSH触媒の形成用、ならびに上記触媒及びまたは試薬組成物に使用される上記成分の同じ非限定的な例及び量は、該LOXSH触媒の塩類似水素化物開始水素媒介重合方法の実施に使用してもよく、繰り返す必要はない。
【0126】
該炭化水素及び芳香族炭化水素溶媒は同じでも異なっていてもよい。このことは、該芳香族炭化水素が該芳香族炭化水素及び該溶媒の両方の機能を果たすことができることを意味している。エチルベンゼンは、スチレンの一部がエチルベンゼンに還元され、ひいてはエチルベンゼンが再生溶媒の推定成分であることを考慮すると、該LOXSH触媒の形成において、及び本発明のLOXSH工程を行うために使用される炭化水素溶媒から副生物であるエチルベンゼンの分留に高度の配慮、時間、及びエネルギーがかからない限り、商業的なスチレンの水素媒介アニオン重合において好ましい成分である。エチルベンゼンのみを使用することが考えられ、その場合、LOXSH触媒の形成工程に関して、成分(v)及び(vii)は1つの成分(または制約)に統合され、同じになる。また、エチルベンゼンを含まない再生及び/または未使用の炭化水素溶媒を用いたエチルベンゼンを含まない工程の使用も考えられる。
【0127】
該アニオン重合性炭化水素モノマーとしては、1つ以上のビニル芳香族モノマー、特にスチレン系モノマーを挙げることができる。好ましくは、該ビニル芳香族モノマーは、スチレン系モノマー、例えばスチレン、またはアルキル化スチレンモノマー、例えば、メチルスチレンのo-、m-、及びp-異性体、p-イソプロピルスチレン、2,4-ジエチルスチレン、o-エチルスチレン、3,5-ジイソブチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、2-エチル-4-メチルスチレン、ならびにそれらの組み合わせである。分岐分子構造を含まない線状ポリマー微細構造を形成するためには、スチレンが好ましいビニル芳香族モノマーである。アルキル化スチレンモノマーは、ある特定の工程条件下でそれ自体が連鎖移動剤として挙動し、ある程度の分岐及び潜在的な架橋をもたらす。ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族モノマーはコモノマーとしても使用できるが、分岐及び架橋が起こり得る。アルファアルキル化スチレン(例えば、α-メチルスチレン)等のスチレン系モノマーは、一般に連鎖移動条件下では単独重合しないが、コモノマーとして、特に共役ジエンとともに用いることができる。しかしながら、アルファアルキル化スチレンの使用は、ポリマー微細構造に4級炭素の形成をもたらすであろうことに留意されたい。従って、かかるアルファアルキル化スチレンの使用は、求電子芳香族置換反応による誘導体化のための基材として形成されるスチレン系ポリマーについては避けるべきである。
【0128】
上記LOXSH触媒工程に使用される分子水素の分圧は、約0.5~約19.0バール、もしく約1.5~約12.0バール、または約2.5~約10.0バール、もしくは約3.0~約7.0バールの間の圧力に維持される。
【0129】
約10.0バールを超える水素分圧は、工程条件が凝縮相への水素移送を維持するために適切に混合する通常の操作を伴う該工程の間、ある期間許容される。しかしながら、かなりの時間そのような高い水素分圧であることは、通常、モノマーの水素化と、ポリマーの分子量の実質的な低下につながる。反対に、0.1バール未満(1.5PSI未満)の水素圧力は、水素化カリウム形態のLOXKH触媒に関与する工程の通常の操作の間許容される。そのような低水素分圧条件、従って凝縮相での低H2活性の下では、添加される
か実験の過程で生成されるかにかかわらず、有機連鎖移動剤からの連鎖移動はより大きく競合する。LOXLiH、またはLOXMgH2及びそれらの組み合わせを使用する場合
、水素の物質移動が乏しい条件下で短時間モノマーを供給することは、高分子量のポリマー鎖の製造、それ故、高分子量のテールを伴うより非対称の生成物分布につながる(GPCで測定される値の実質的な増加「Mw10%高」ダルトンに反映される)。上記の分圧
は、該分圧が分子水素の凝縮相活性を反映するように、すなわち、凝縮相へのH2の定常
状態の物質移動が確立されるように、分子水素の凝縮相への適切な物質移動が維持される場合にのみ意味があることが指摘される。従って、凝縮相への物質移動が気相と凝縮相の混合が不十分なために減少され、ひいては物質移動が乏しくなる場合に、はるかに高いH2分圧を加えることができる。
【0130】
窒素は、本発明の塩類似水素化物触媒によって「固定」され得る、すなわち、N2が還
元され得る(この証拠は観察されていないが)可能性があることから、及び、半バッチ条件下で操作する場合にモノマー供給によって反応器の上部空間の容積が減少するため、当該反応器の上部空間及び系からN2を除去または少なくとも最小限に抑えることが望まし
い可能性があるが、恐らくその必要はない。一般に活性化水素化物に対して不活性と見なされる他の気体、例えば、希ガス(He、Ne、Ar)の存在または比較的軽質の脂肪族もしくは脂環式炭化水素(反応温度に近いまたはそれ未満の沸点を有する炭化水素)とともに操作することが可能である。これら不活性ガスの中でも比較的軽質の炭化水素が好ましい。これは、かかる炭化水素が一般に反応媒体に可溶であり、それ故H2を置換するこ
とがなく、従って、一定の反応器圧力でのモノマー供給の過程において顕著に様々な量でH2の分圧を低下させることがないためである。従って、凝縮相の体積の増加につれて該
上部空間で圧縮される不活性ガスはあまり望ましくない。しかしながら、当該上部空間の容積が固定されている場合の希ガス等のかかる低溶解性のガスの連続工程における存在は、恐らく何らかの利点のため使用されることもある。市販の反応器を定圧の低陽圧で操作することは困難であり、それ故、所望のH2分圧、よって活性が、より高い全反応器圧力
で維持され得るように、存在している低沸点(例えば、石油エーテル)炭化水素を有することが有利な場合がある。かかる軽質炭化水素は、何らかの還流冷却手段という付加的な利点をもたらすことさえある。
【0131】
該反応混合物及び/または工程の温度は、約20℃~約130℃の範囲、より好ましくは約40℃~110℃の範囲、最も好ましくは約60℃~約90℃の範囲に維持される。
【0132】
モノマー対最初に形成される金属水素化物の装填の合計のモル比(モノマー:金属水素化物)は、約(10:1)~約(1000:1)、または約(10:1)~約(600:1)もしくは(40:1)~約(600:1)、または約(150:1)~約(360:1)である。形成される金属水素化物のモル量は、有機金属結合、すなわち、有機リチウム及び/または有機マグネシウムの炭素-金属結合のモル量と等しいと見なされるが、pKa>H2を有するその共役酸は、pKa<H2を有するすべてのプロトン種との該触媒形成反応条件下で反応後に残る。分解反応に起因する金属水素化物の量の任意の減少は考慮しておらず、触媒の失活に寄与する条件(例えば、温度)ならびに試薬(例えば、有機リチウム試薬によって容易に金属化及び分解を受けるある特定のエーテル等の有機種)は単に避けた方がよい。
【0133】
本発明の工程技術のバッチまたは半バッチ操作において、モノマー(例えば、スチレン)は、反応媒体に時間をかけて供給され、従って、モノマーの最初の1滴または増分に由来する蒸気が供給された瞬間に形成された塩類似金属水素化物に対するモノマーの初期の比は、数学的に限界(1:∞)に近づく。従って、記載された好ましい範囲外の、装填された合計モノマー対最初に形成された塩類似金属水素化物のモル比、すなわち、限界からの範囲(1.00:∞~1.00:0.101)であって、約(1:10,000~約9.9:1.0)であるモノマー対生じた塩類似金属水素化物のモル比が、以下に示す実施例の各々の開始時の実際的な範囲として示される。しかしながら、モノマーの供給は、通常、より高い所望のモノマー対金属水素化物比が完了するまで継続される。(1:10,000~約9.9:1.0)に限定された装填モル比の実施は、本発明の範囲内であるが、有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物の無駄な利用を示すに過ぎない。
【0134】
反対に、モノマーを、最初に約1000:1を超える相対モル比で塩類似金属水素化化合物に供給することで実行不可能になる。すなわち、連鎖移動の減少をもたらし、好ましくない分子量分布(MWD)の組成物を製造する。LOXLiHが触媒する工程は、該触
媒の形成の容易さ、微細構造に関する選択性の両方のため、及び最終的に触媒活性のため、より好ましい工程である。実施例14及び15において、15,000%の触媒効率を、>600:1のモノマー:金属水素化物装填比を用いて達成することができることが実証されている。これら2実験の組み合わせで、Mw=730でPDn=1.4を有することを特徴とする二量体を除去したポリマー分布が75%の単離収率で製造された。
【0135】
LOXSH工程に関しては、ポリ3級アミン(PTA)促進剤は任意である。従って、モノマーのPTA組成物を使用する場合、PTA促進剤は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計対PTA(金属:PTA)のモル比が、ほぼ限界の(∞:1)またはより実際的に(10.000:1)~約(1:8)、または好ましくは約(5:1)もしくは約
(1:5)またはさらにより好ましくは(3:1)~約(1:3)の比で存在する。これに関連して、装填比(1:∞)またはより実際的には(10,000:1)は、該PTAが意図的に装填された前の実験から当該反応器もしくは装填ラインまたはタンクに残された量に起因する微量のPTA促進剤の意図しない存在を表す場合があることを理解されたい。さらに、合計金属対PTAの装填比が(1:8)を超えることは本発明の範囲内であるが、かかる装填比は、たとえあったとしてもごくわずかの利点しかもたらさず、PTA促進剤だけでなく、当該反応物または生成物の混合物から該PTA促進剤を除去及び/または回収するのに必要な任意の試薬及び/または追加の努力の無駄な使用を示す
【0136】
触媒量に対するモノマー供給量は、ポリマー組成物の多分散性、すなわち、PDn、ひ
いては、Mn、Mw、Mz、PDn、数平均標準偏差(σn)、及び非対称性(nα3)の値に
よって測定される全体的な分子量分布(MWD)の設定に関する決定的反応速度因子である。従って、所定のH2活性(または分圧)にて、所定の反応器設計または配置において
ある特定の相対的比率でモノマーを供給することが賢明である。モノマー対触媒がごく小さい相対供給量(すなわち、約15モルモノマー/時間/モル活性Li未満)であると、好ましくないレベルの還元された(本質的に水素化された)モノマーといくらかの二量体が生じることは明らかであるはずである。さらに、生じる組成物は、非対称性値が高く、あまり望ましくない。その一方で、ごく高い相対供給量では、通常、より高い分子量分布が生じ、かかる組成物は、さもなければ経済的に、ほとんどまたは全く連鎖移動なしで製造することができる。LOXSH触媒の分子式は、決定される必要はなく、凝集体の形成のために必ずしも完全に定義される必要もなく、既知のこれらの触媒の凝集体の分子量でもないため、触媒に対する1時間当たりのモノマー(スチレン)の供給量は、やはり該触媒組成物において形成される活性型水素化物の量を用いて表される。各当量モルの活性型有機リチウムアルキル及び/または活性型有機マグネシウムアルキルは、1当量モルの塩類似水素化物を形成することが仮定され、該有機リチウム化合物は1当量を提供し、該有機マグネシウムは2当量を提供する。従って、本発明の実施において、塩類似水素化化合物に対する1時間当たりのモノマーの供給量は、反応器に装填された1モルの活性型塩類似水素化物試薬当たり、1時間当たり、約10~約500モルのモノマーの範囲、または、より好ましくは、反応器内で最初に生じた1モルの塩類似水素化物当たり、1時間当たり、約65~約380モルのモノマーの範囲であるべきである。この場合もやはり、塩類似水素化物の当量モルは、最初に装填された活性型有機リチウムアルキルのモル当量及び/または活性型有機マグネシウムアルキルのモル当量と等しいと見なされる。重ねて、活性型有機リチウムアルキル及び/または活性型有機マグネシウムアルキルのモル当量とは、反応混合物中に含まれるH2より低いpKaを有するありとあらゆるプロトン種との反応後に残る有機リチウムアルキルの量及び/またはマグネシウムアルキルラジカルの量を意味する。
【0137】
モノマー供給の過程での反応混合物の温度は、約20℃~約130℃の範囲、もしくは約40℃~約99℃の範囲、または約60℃~約90℃の範囲に維持される。実験全体の間または実験の一部の間、より高い温度が使用され得ることが考えられるが、触媒の何ら
かの分解を促進する、及び/またはポリマー鎖からのヒドリドの脱離、ならびに不飽和結合で停止された連鎖長の形成を引き起こす温度は避けた方がよい。かかるヒドリド脱離停止反応の量は、温度及び触媒組成によって異なるはずである。LOXSH触媒の形成において、及び初期加熱の過程では、該触媒は、当該炭化水素溶媒(もしくは溶媒混合物)の融点または供給されるモノマーの凝固点を単に超える温度で混合することができる。低温(すなわち、-10~15℃)で、及びなお極低温条件下(-10℃~-126℃)で該触媒成分を混合することは、使用されるポリ3級アミン促進剤及び/または極性錯化剤の部分的な分解につながり得るリチオ化反応もしくは他の金属化反応を回避または抑制するという利点を有する場合がある。しかしながら、塩類似水素化物触媒またはその前駆体錯体及び試薬の沈殿をもたらす条件は、恐らく避けた方がよい。
【0138】
反応媒体におけるモノマーの所望の分散レベルは、実験の過程を通じて水素が気相から及び/または水素ガスの供給から凝縮相へ輸送される効率に依存する。理想的には、商業規模、パイロット規模、及びさらにはベンチ規模の反応器でさえ、モノマー供給の過程を通じて気相から凝縮相への水素移送が本質的に均一であるように設計及び構成され得る。相間のかかる均一な水素輸送下では、該反応器内で局所的に高い濃度が存在するようにモノマーを供給することによって、モノマーのその飽和類似体への還元を最小にすることが望ましい。ベンチ規模または小パイロット規模の反応器では、かかる局所的に高いモノマー濃度は、比較的低い供給速度を用い、極めて高い相対的モノマー対触媒供給量及び供給比を使用することによって達成される。大規模な商業的装置では、モノマーは、反応混合物の大部分と物理的に離れた、またはそれとは別であることができる反応部に供給される(すなわち、ポンプ・アラウンド・ループ)。にもかかわらず、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(DMAEOE)から生じるLOXLiH触媒、本発明のこれらHMSHIP工程の塩類似水素化物触媒の利点は、かかる触媒が、該工程条件下で非常に安定であると思われ、触媒活性を低下させず、使用されたポリ3級アミン促進剤またはアミノアルコキシド極性錯化剤由来の不純物ももたらさないことである。これらの条件下では、還元されたモノマーの生成は、装填されたモノマーの合計の10%より十分低く維持される。二量体含量も生成物分布の12%未満を維持することができ、ひいては、三量体以上の収率は、装填されたモノマーの80%~90%を十分に超えることができる。
【0139】
例えば、一定熱流束で工程温度の急激な低下及び/またはH2の取り込みの停止で示さ
れる、LOXSH触媒工程のモノマー供給及び反応の完了時には、当該反応混合物は水素圧力下で維持され、その後、クエンチ及び水洗のために洗浄用反応器に移送される。該洗浄用反応器には、水が装填される(H2SO4等の鉱酸及び/または酢酸等の有機酸を含むまたは含まない)。さらに、該洗浄用反応器には、予め任意の追加量の溶媒、好ましくは炭化水素溶媒が装填されてもよい。クエンチは、冷却しながら、または該炭化水素溶媒が該洗浄用反応器の圧力条件下で水と共沸混合物を形成する温度以下の周囲温度で行うことができる。生成物は、アルカリ金属塩及び含まれる場合にはPTA促進剤の少なくとも一部、ならびに極性錯化剤を除去するために水洗される。極めて酸性の条件下では、かかる試薬は、該酸から生じるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩とともにほぼ完全に除去される。酸の当量以下が使用される塩基性条件下では、含まれる場合にPTA促進剤及び極性錯化剤は、有機反応混合物及び水性洗浄液の間で分配される。水洗は、所望のpHの出口洗浄水が得られるまで継続される。塩基性条件下では、pH9~pH11は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩がすべて除去されたことを示す。酸性条件下では、pH6~pH8(洗浄水のアルカリ度に依存して)は、酸性種のすべてが除去されたこと、または少なくとも中和されたことを示す。
【0140】
洗浄が完了したと判断された場合、溶媒と、任意の残りのポリ3級アミン促進剤及び任意の残りの極性錯化剤(含まれていた場合)の部分ならびにモノマーの還元産物は、好ましくは反応混合物から分離及び回収され、それによって水の最後の痕跡も該反応混合物か
ら共沸的に除去される。この分離操作は、得られる生成物の混合物のモノマーの還元産物含量が約0.1wt%未満になるまで継続するべきである。モノマー二量体含量を減少させることによる生成物分布のさらなる修正及び形成は、いくつかの用途には望ましい。高沸点の二量体については、これはワイプ式薄膜蒸発器を用いて容易に行われる。
【0141】
本発明は、スチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)を行う方法に関し、これは、ある特定の好ましい条件下で、極めて純度の高い「ヘッドトゥーテール」の微細構造を有する非対称性の低い新規かつ有益な低分子量アニオン連鎖移動ポリマー分布の形成が高収率で生じる。該方法は、スチレンモノマーを、[DMEA-xLiyz触媒を含む適切な溶媒に対し、分子水素を含む雰囲気下で供給することを特徴とし、ここでは、分子水素からの連鎖移動が、エチルベンゼン副生物を含む得られる生成物分布の数平均分子量(Mn)を決定する機構の重要な構成要素である。従って、HMAPS生成物分布の数平均分
子量は、式:
【数5】
で与えられ。ここで、[スチレン]は、供給されたスチレンの合計量であり、[H2]は
、瞬間的か重合反応の全期間であるかにかかわらず、ある期間にわたって消費された水素の合計量である。該モノマーの場合、かかる方法から生成される生成物分布は、以下HMAPS分布と呼ぶ。HMAPS Mの分子量分布(すなわち、Mn、Mw、Mz、PDn、σn、及び非対称性)の観点から形態が設定され、それにより、特定の触媒濃度及び水素分
圧または活性でのスチレンモノマー対触媒の相対供給量によって制御される。
【0142】
本発明はまた、アニオン連鎖移動重合方法に関し、これは、ビニル芳香族モノマー及び/または好ましくはスチレン系モノマーを、反応混合物に、式[DMEA-xLiyzの水素媒介連鎖移動重合触媒を有する反応容器中で分子水素を含む雰囲気下で供給することを含み、当該触媒は:(i)約y当量の有機リチウム化合物、(ii)任意にTMEDA化合物、(iii)約x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼン、(v)H2よりpKaが高い、芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、ならびに(vi)分子水素を接触させる工程から生成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、当該式はさらに、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子錯体、すなわち、[DMEA-xLiyz・XTMEDAを、TMEDAのモルの触媒[DMEA-xLiyzのモル当たりのモル比Xで含むことができ、X=0.0001~約8.0である。
【0143】
従って、本発明はさらに、アニオン連鎖移動重合用のHMAPS工程に関し、これは、スチレンモノマーを、反応混合物に、反応容器中でH2を含む雰囲気下で供給することを
含み、当該反応混合物は、化学式[DMEA-xLiyzを有する触媒を含み、当該触媒は:(i)約y当量の有機リチウム化合物及び/または有機マグネシウム化合物、(ii)任意にTMEDA化合物、(iii)約x当量のジメチルアミノエタノール、(iv)任意にエチルベンゼン、(v)H2よりpKaが高い、芳香族炭化水素と同じでも異なっていてもよい炭化水素溶媒、ならびに(vi)分子水素を接触させる工程から生成され、生成されるヒドリドの量zは、式z=y-xで与えられ、x、y、及びzは、ゼロより大きい正の実数の整数または分数であり、当該触媒または試薬を含む水素化物の溶解性は、1リットル当たり少なくとも約0.0080モルである。
【0144】
[DMEA-xLiyz触媒の形成用、ならびに上記触媒及びまたは試薬組成物に使用
される上記成分の同じ非限定的な例及び量は、該[DMEA-xLiyzのHMAPS工程の実施に使用してもよく、繰り返す必要はない。
【0145】
使用され得る炭化水素溶媒は、当該反応条件下で分子水素(H2)より高いpKaを有する任意の炭化水素である。かかる好ましい溶媒の非限定的な例は、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンであり、エチルベンゼンとともに、またはエチルベンゼンなしで使用される。他の炭化水素溶媒は、それらの使用が:1)当該塩類似水素化物触媒、反応性中間体、過渡的リビングポリマー鎖、及び当該ポリマー鎖分布生成物の溶解性に影響を与えない限り、または2)該炭化水素溶媒が2wt%以上のレベルで該HMAPS生成物分布に導入される十分に活性が高い有機連鎖移動剤として作用しない限り、使用することができる。
【0146】
最も望ましい本発明のHMAPS分布を形成するために本発明のHMAPS工程を行う上で、水素化リチウムに対するモノマー供給は、一般に、約(10:1)~約(1000:1)、好ましくは約(50:1)~約(800:1)、最も好ましくは(100:1)~約(600:1)の範囲であり、供給されるスチレンモノマーの合計量に応じて、本工程の半バッチ操作の水素化リチウム濃度は、実験の開始時には約200ppm~約750ppmであり、実験の終了時には約65ppm~約350ppmである。連続モードの操作では、操作の過程を通じて水素化リチウム濃度が約200ppm~約500ppmの間であるように該工程を操作することが好ましい。
【0147】
本発明の工程技術のバッチまたは半バッチ操作において、モノマー(すなわち、スチレン)は、反応媒体に時間をかけて供給され、従って、モノマーの最初の1滴または増分に由来する蒸気が供給された瞬間に形成された[DMEA-]xLiyHz触媒に対するモ
ノマーの初期の比は、数学的に限界(1:∞)に近づく。従って、記載された好ましい範囲外の、装填された合計モノマー対最初に形成された塩類似水素化リチウムのモル比、すなわち、限界からの範囲(1.00:∞~1.00:0.101)であって、約(1:10,000~約9.9:1.0)であるモノマー対生じた[DMEA-]xLiyHz触
媒のモル比が、以下に示す実施例の各々の開始時の実際的な範囲として示される。しかしながら、モノマーの供給は、通常、より高い所望のモノマー対水素化リチウム比が完了するまで継続される。(1:10,000~約9.9:1.0)に限定された装填モル比の実施は、本発明の範囲内であるが、[DMEA-]xLiyHz触媒の形成に使用される
有機リチウム化合物の無駄な利用を示すに過ぎない。
【0148】
反対に、モノマーを、最初に約1000:1を超える相対モル比で[DMEA-]xL
iyHz触媒に供給することで、粘度レベルによって実行不可能になる。すなわち、連鎖移動の減少をもたらし、好ましくない分子量分布(MWD)の組成物を製造する。[DMEA-]xLiyHzが触媒する工程技術は、該触媒の形成の容易さ、微細構造に関する
選択性、及び最終的に高い触媒活性を特徴とする。実施例14及び15において、15,000%の触媒効率を、>600:1のモノマー:水素化リチウム装填比を用いて達成することができることが実証されている。これら2実験の組み合わせで、Mw=730でP
n=1.4を有することを特徴とする二量体を除去したポリマー分布が75%の単離収
率で製造された。
【0149】
[DMEA-]xLiyHz触媒の量に対するモノマー供給量は、ポリマー組成物の多
分散性、すなわち、PDn、ひいては、Mn、Mw、Mz、PDn、数平均標準偏差(σn
、及び非対称性(nα3)の値によって測定される全体的な分子量分布(MWD)の設定に関する決定的反応速度因子である。従って、所定のH2活性(または分圧)にて、所定の
反応器設計または配置においてある特定の相対的比率でモノマーを供給することが賢明である。モノマー対触媒がごく小さい相対供給量(すなわち、約15モルモノマー/時間/
モル活性Li未満)であると、好ましくないレベルの還元された(本質的に水素化された)モノマーといくらかの二量体が生じることは明らかであるはずである。さらに、生じる組成物は、非対称性値が高く、あまり望ましくない。その一方で、相対供給量が高いほど、一般に分子量分布は大きくなり、エチルベンゼン及びスチレン二量体収率は低くなる。Mwが850~1050の範囲のHMAPS組成物は、エチルベンゼン(4%~6%の低
さの収率で得られる)及び二量体(8%~12%の低さの収率で得られる)を除去した後、約82%~約90%の収率で容易に調製され得る。
【0150】
モノマー供給の過程での反応混合物の温度は、約20℃~約130℃の範囲、もしくは約40℃~約99℃の範囲、または約60℃~約90℃の範囲に維持される。実験全体または実験の一部の間、より高い温度が使用され得ることが考えられるが、触媒の何らかの分解を促進する、及び/またはポリマー鎖からのヒドリドの脱離、ならびに不飽和結合で停止された連鎖長分布の有意なレベルの形成を引き起こす温度は避けた方がよい。かかるヒドリド脱離停止反応の量は、温度及び触媒組成によって異なり得る。
【0151】
反応媒体におけるモノマーの所望の分散レベルは、実験の過程を通じて水素が気相から及び/または水素ガスの供給から凝縮相へ輸送される効率に依存する。理想的には、商業規模、パイロット規模、及びさらにはベンチ規模の反応器でさえ、モノマー供給の過程を通じて気相から凝縮相への水素移送が本質的に均一であるように設計及び構成され得る。相間のかかる均一な水素輸送下では、該反応器内で局所的に高い濃度が存在するようにモノマーを供給することによって、モノマーのその飽和類似体への還元を最小にすることが望ましい。ベンチ規模または小パイロット規模の反応器では、かかる局所的に高いモノマー濃度は、比較的低い供給速度を用い、極めて高い相対的モノマー対触媒供給量及び供給比を使用することによって達成され、供給量(体積/秒)及びモノマーが供給される面積(円筒状の供給先端の半径によって設定される)(すなわち、cc/秒を平方cmで割る)によって制御される。大規模な商業的装置では、モノマーは、反応混合物の大部分と物理的に離れた、またはそれとは別であることができる反応部に供給され得る(すなわち、ポンプ・アラウンド・ループ)。[DMEA-xLiyz触媒は、かかる触媒が、該工程条件下で非常に安定であると思われ、触媒活性を低下させず、ひいては使用されたポリ3級アミン促進剤またはアミノアルコキシド極性錯化剤由来の不純物生成をもたらさないという点において利点を有する。HMAPS工程条件下では、還元されたエチルベンゼンの生成は、装填されたモノマーの合計の10%より十分低く維持される。二量体含量も生成物分布の12%未満を維持することができる。スチレン二量体含量を2%未満、好ましくは1%未満まで除去した、従って三量体以上を>98%含むHMAPS分布の収率は、装填されたモノマーの合計の80%~90%を十分に超えることができる。
【0152】
該成分が所望の装填比で該触媒と混合され、必要に応じてさらに活性化されると、該触媒は、本発明の水素媒介アニオン重合法用に使用できる状態である。従って、スチレンモノマーは、水素分圧約0.001~約10.0バール、または約0.3~約6.8バール、もしくは約0.5~約5.2バール、または約1.0~約4.2バールの間の下、[DMEA-]xLiyHz触媒組成物に供給される。約10.0バールを超える水素分圧は
、工程条件が凝縮相への水素移送を維持するために適切に混合する通常の操作を伴う該工程の間、ある期間許容される。しかしながら、かなりの時間そのような高い水素分圧であることは、通常、ポリマーの分子量の実質的な低下とエチルベンゼンの収量増加を伴うモノマーの水素化につながる。反対に、約0.1バール未満(1.5PSI未満)の水素圧力は、該工程の通常の操作の間許容されるが、GPCで測定される約2000ダルトンを超える10%高い分子量を有する極めて高分子量のテールによる高非対称性の組成物をもたらす。かかる高非対称性の組成物の形成はまた、反応条件が、凝縮相への水素の物質移動を乏しくする場合にも生じる。生成物の分子量分布の特徴としてのかかる高分子量テールの生成は、高い粘度の反応媒体を生成する不適切な混合条件下で短時間モノマーを供給
する場合に観察される。この高い粘度が、水素の物質移動をますます非効率的にし、さらにいっそう高い粘度をもたらす。高い粘度をもたらし得る反応条件は:1)反応温度、及び/または2)最適触媒濃度未満、及び/または3)最適モノマー対触媒装填比未満、及び/または4)局所的に高すぎるモノマー濃度、及び/または5)反応器の配置/設計の悪さに起因して混合が非効率的になった場合の供給期間である。従って、上記の分圧は、該分圧が分子水素の凝縮相活性を反映するように、すなわち、凝縮相へのH2の定常状態
の物質移動が確立されるように、分子水素の凝縮相への適切な物質移動が、維持される場合にのみ意味があることが指摘される。従って、凝縮相への物質移動が気相と凝縮相の混合が不十分なために減少され、ひいては物質移動が乏しくなる場合に、はるかに高いH2
分圧を加えることができる。しかしながら、粘度が大きくなりすぎる場合、混合を高めると通常は発泡につながり、凝縮相への物質移動の効率がさらに悪くなる。
【0153】
例えば、一定熱流束で工程温度の急激な低下及び/またはH2の取り込みの停止で示さ
れる、[DMEA-]xLiyHz触媒HMAPS工程のスチレンモノマー供給及び反応
の完了時には、当該反応混合物は水素圧力下で維持され、その後、クエンチ及び水洗のために洗浄用反応器に移送される。該洗浄用反応器には、水が装填される(H2SO4等の鉱酸及び/または酢酸等の有機酸を含むまたは含まない)。さらに、該洗浄用反応器には、予め任意の追加量の溶媒、好ましくは炭化水素溶媒が装填されてもよい。クエンチは、冷却しながら、または該炭化水素溶媒が該洗浄用反応器の圧力条件下で水と共沸混合物を形成する温度以下の周囲温度で行うことができる。生成物は、アルカリリチウム塩及び含まれる場合にはTMEDA促進剤の少なくとも一部、ならびに極性錯化剤を除去するために水洗される。極めて酸性の条件下では、かかる試薬は、該酸から生じるアルカリ及びアルカリ土類リチウム塩とともにほぼ完全に除去される。酸の当量以下が使用される塩基性条件下では、含まれる場合にTMEDA促進剤及びDMEAH試薬は、有機反応混合物及び水性洗浄液の間で分配される。水洗は、所望のpHの出口洗浄水が得られるまで継続される。塩基性条件下では、pH9~pH11は、アルカリ及びアルカリ土類リチウム塩がすべて除去されたことを示す。酸性条件下では、pH6~pH8(洗浄水のアルカリ度に依存して)は、酸性種のすべてが除去されたこと、または少なくとも中和されたことを示す。酸性洗浄条件下では時々、少量(2リットルの運転で20mg)の界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムを加え、エマルションまたはミセルの形成を破壊することが望ましい場合がある。
【0154】
洗浄が完了したと判断された場合、溶媒と、任意の残りのポリ3級アミン促進剤及び任意の残りの極性錯化剤(含まれていた場合)の部分ならびにエチルベンゼン副生物は、好ましくは反応混合物から分離及び回収され、それによって水の最後の痕跡も該反応混合物から共沸的に除去される。この分離操作は、得られる生成物の混合物のエチルベンゼン副生物含量が約0.1wt%未満になるまで継続するべきである。本質的に完全なエチルベンゼンの除去による修正は、好ましくはワイプ式薄膜蒸発器での蒸留によるスチレン二量体含量の低減によって、さらに該HMAPS分布を異なる形にすることによって達成される。
【0155】
他の従来技術(例えば、EPO 741147)と比較して、インサイチュでリチウムアルコキシドを形成する能力を特徴とするHMAPS工程は、炭化水素可溶性塩類似金属水素化物触媒の形成において実験室的に便宜がよく、大規模商業的にも有利である。従って、LOXLiH及びLOXMgH2触媒を形成する場合、インサイチュでリチウム及び
/またはマグネシウムアルコキシド試薬前駆体を形成することは:(1)可燃性空気及び水分反応性固体の取り扱いを回避し、(2)金属アルコキシドを大モル過剰のポリ3級アミン促進剤の濃縮物に溶解することを排除し、(3)溶媒及び他の試薬の再生に先立って工程流から痕跡程度の副生物のアルコールを除去する必要性を排除し、かつ(4)ポリ3級アミン促進剤の必要量を大きく減少させ、いくつかの実施形態では排除する。LOXL
iH及びLOXMgH2触媒の両方は、該触媒形成性及び/または重合反応混合物により
均一に溶解すると思われる。従って、実験間のばらつきが実質的に改善される、すなわち、再現性がより高いと考えられ、ひいては、実施例38及び39のSASH工程または実施例40のHASH工程よりさらにいっそう頑健な商業的工程をもたらす。LOXLiH及びLOXMgH2触媒はまた、重合反応器及び他の関連装置の壁ならびに内部部品に、
好ましくない固体をたとえあったとしてもごくわずかの実質的な量しか残さないと思われる。反応器表面への不溶性触媒の沈着物は、触媒がn-ブチルリチウム、カリウムtert-ブトキシド、TMEDA、及びエチルベンゼン等の試薬から、窒素等の不活性雰囲気下で形成される従来技術の有機連鎖移動工程に伴う重大な問題である。
【0156】
LOXLiH及びLOXMgH2触媒及びそれらが触媒する水素媒介アニオン連鎖移動
工程の偶発的な利点はこれらの触媒及び工程が、開裂重合及び連鎖異性化の不純物または不純物分布を含まない微細構造を備えた純粋な連鎖移動ポリスチレン組成物を与えるということである。このことは、最初の4~6オリゴマーをガスクロマトグラフィーで分析することにより、実験的に立証された(図3及び4参照。これらは、LOXLiH PSオリゴマーの微細構造を、従来技術のエチルベンゼン連鎖移動重合PS由来のオリゴマーのものと比較している)。LOXKH触媒工程ならびにHASH及びSASH工程は、概して、先行技術(図12~14も参照のこと)にも共通するあまり望ましくない微細構造のポリスチレン組成物を製造する(図5~7参照)。従って、LOXLiH PS及びLOXMgH2 PS組成物は、生成物分布に実施される芳香族求電子置換反応等のさらなる
化学から得られる商品の形成において非常に有利である。さらなる実験とともに、光学的に活性なアミノアルコールを含めた触媒のアミノアルコール成分の賢明な選択により、本発明の実施者は、ビニル芳香族ポリマーのタクティシティー等の他の微細構造の特徴を制御する方法を見出し得ることを理解されたい。
【0157】
【化4】
従って、本発明の別の実施形態は、塩類似水素化物で開始された、上記ポリマーのポリスチレン構造12(スチレンに特定しているが、これに限定されない)に示される、97%超のヘッドトゥーテール微細構造、より好ましくは98%超のヘッドトゥーテール微細構造、及び最も好ましくは99%超のヘッドトゥーテール微細構造であるポリマー微細構造を有するアニオン連鎖移動スチレン系ポリマー分布である。換言すれば、本発明のアニオン連鎖移動スチレン系ポリマー組成物は、塩類似水素化物のスチレン系モノマーへの付加を介して開始され、ポリマー鎖の3.0%未満、より好ましくは2.0%未満、及び最も好ましくは0.8%未満がポリマー微細構造中に1つ以上の4級炭素を有する連鎖長分布を有する。さらに、上記水素化物開始ポリ(スチレン系)構造(この場合もやはりスチレンに特定しているが、これに限定されない)12の当該分布は、開裂重合工程から生じる副生物分布(複数可)としての連鎖長分布(複数可)を3%未満、より好ましくは2%未満、及びよりいっそう好ましくは1%未満、ならびに最も好ましくは0.2%未満から、検出限界未満の量含み、この場合、該連鎖長分布の微細構造及び純度は、以下、上記ポリマー構造のn=0~n=4の当該水素媒介塩類似水素化物開始ポリスチレンまたはポリ(スチレン系)もしくはポリ(ビニル芳香族)分布から得られる最も低い分子量の連鎖のガスクロマトグラフィー分析で決定される。
【0158】
最も好ましい最初に生成される水素媒介塩類似水素化物開始スチレン系分布は、スチレンモノマー及び水素のみから生じ、上記構造(12)の連鎖長分布を有する。当該連鎖長分布は、相対モル含量の統計上の数平均分布におけるi-1個の個別のポリマー連鎖長からなり、iは、所定の個別のポリマー連鎖に組み込まれたモノマーの総数である。数iは、i=2~i=iの正の整数である。従って、(鎖-1)n=0(スチレン二量体)の場合i=2、(鎖-2)n=1(スチレン三量体)の場合i=3、(鎖-3)n=2(スチレン四量体)の場合i=4、(鎖-4)n=3(スチレン五量体)の場合i=5、(鎖-5)n=4の場合(スチレン六量体)i=6、...及び(鎖-(i-1))n=i-2の場合i=iである。従って、(i-1)番目の個別のポリマー連鎖は、最も長い連鎖長の個別のポリマー連鎖である。我々は、一般に、本発明のポリマー組成物に関するGPCのMWD分析の結果は、ガンマ確率密度関数(PDF)で合理的にモデル化することができることを見出した。しかしながら、より重要なことには、単金属リチウム系LOXLiH触媒以外の触媒から生じる組成物は、一般にベータPDFでより正確にモデル化されることを我々は見出した。最も重要なことには、LOXLiH PSのGPC MWDの結果は、ワイブルPDFで正確にモデル化され、すなわち、これは、LOXLiHが触媒する系に関して、その分子量分布は、デッドポリマー連鎖の有意な再生なしに連鎖移動のみによって規定され、同様に、ポリマー分布の生成における有機連鎖移動剤としてのエチルベンゼンの活性化も、関与も、組み込みもないことを示し得る。
【0159】
スチレンがモノマーの場合、本発明の連鎖長分布の分子量分布は、Mnが315~93
4ダルトンの範囲であり、Mwが約392~約1705ダルトンの範囲であり、Mzが約512~2930ダルトンの範囲であり、PDnは1.24~1.82の範囲であるととも
に、標準偏差が156~849ダルトンの範囲であり、非対称性が1.40~約3.00の範囲であることを特徴とする。より好ましい組成物は、Mnが410~680ダルトン
の範囲であり、Mwが約553~約1205ダルトンの範囲であり、Mzが約745~1950ダルトンの範囲であり、PDnが1.29~1.82の範囲であるとともに、標準偏
差が257~600ダルトンの範囲であり、非対称性が1.50~約2.60の範囲である分子量分布を有する。最も好ましい組成物は、Mnが444~683ダルトンの範囲で
あり、Mwが約600~約1150ダルトンの範囲であり、Mzが約798~1768ダルトンの範囲であり、PDnが1.35~1.68の範囲であるとともに、標準偏差が26
3~565ダルトンの範囲であり、非対称性が1.50~約2.31の範囲である分子量分布を有する。
【0160】
本発明の好ましい非ブレンド組成物は、スチレン単独ではないにしても、本質的にスチレンのみからなり、97wt%を超える「ヘッドトゥーテール」の微細構造を有し、それらの連鎖長分布は、最も低分子量の連鎖の部分の除去によってさらに異なる形にされているか、または修正されている。低分子量の連鎖、特にスチレン二量体の除去、すなわち、例えば、すべての他の算術平均(例えば、グレード・ポイント・アベレージ)から最低値(複数可)または最低値(複数可)の一部を除去することは、全体的な分子量分布が増加した新たな平均をもたらす。従って、本発明の好ましい修正分子量分布は、変更されていない分布と重なるが、該分布のより低い分子量画分の一部の除去によって変更された単純な数値結果のため、上記で特定された分子量分布または分子量パラメータの範囲内に存在しない場合がある。従って、二量体含量が低減されているがなお存在しており、分布全体の約0.1~約1.0wt%を示す(GPC分析で測定)好ましい組成物は、Mnが40
7~1018ダルトンの範囲であり、Mwが約487~約1741ダルトンの範囲であり
、Mzが約579~2938ダルトンの範囲であり、PDnが1.40~1.71の範囲であるとともに、標準偏差が180~858ダルトンの範囲であり、非対称性が1.31~約3.016の範囲である分子量分布または連鎖長分布を有する。より好ましい組成物は、Mnが494~788ダルトンの範囲であり、Mwが約623~約1278ダルトンの範囲であり、Mzが約782~1964ダルトンの範囲であり、PDnが1.26~1.62
の範囲であるとともに、標準偏差が253~621ダルトンの範囲であり、非対称性が1.40~約2.40の範囲である分子量分布を有する。最も好ましい組成物は、Mnが5
21~737ダルトンの範囲であり、Mwが約661~約1202ダルトンの範囲であり
、Mzが約827~1783ダルトンの範囲であり、PDnが1.27~1.63の範囲であるとともに、標準偏差が270~586ダルトンの範囲であり、非対称性が1.40~約2.50の範囲である分子量分布を有する。
【0161】
統計的分布が組み合わされるブレンド操作は、PDn用に規定された制約、すなわち、
標準偏差が適用されない非統計的分布をもたらし得る。しかしながら、かかるブレンドは、それらが本発明の組成物の組み合わせによって生成され、本発明から生じたものであるという点において、本発明の範囲内である。
【0162】
【化5】
従って、本発明の別の実施形態は、HMAPS分布と呼ばれるLOXLIH PS分布である。かかるHMAPS分布は、Mn≒[スチレン]/[H2]、ならびに、所定の触媒組成、触媒濃度、及び水素圧力でのスチレン対触媒の相対的供給量によって規定されるMw及びMzを有する。HMAPS分布は水素化リチウムによって開始され、水素由来のプロトンによって停止され、上記ポリマーのポリスチレン構造12で示される、97%超のヘッドトゥーテール微細構造、より好ましくは98%超のヘッドトゥーテール微細構造、及び最も好ましくは99%超のヘッドトゥーテール微細構造であるポリマー微細構造を有する。換言すれば、本発明のHMAPSポリマー組成物は、水素化リチウムのスチレンモノマーへの付加を介して開始され、ポリマー鎖の3.0%未満、より好ましくは2.0%未満、及び最も好ましくは0.8%未満がポリマー微細構造中に1つ以上の4級炭素を有する連鎖長分布を有する。さらに、上記12のHMAPS分布は、開裂重合工程から生じる副生物分布(複数可)としての連鎖長分布(複数可)を3%未満、より好ましくは2%未満、及びよりいっそう好ましくは1%未満、ならびに最も好ましくは0.2%未満から、検出限界未満の量含み、この場合、該連鎖長分布の微細構造及び純度は、以下、上記ポリマー構造12のn=0~n=2のHMAPS分布から得られる最も低い分子量の連鎖のガスクロマトグラフィー分析で決定される。
【0163】
最も好ましい最初に生成されるHMAPS分布は、相対モル含量の統計上の数平均分布におけるi-1個の個別のポリマー連鎖長からなる連鎖長分布を有し、iは、所定の個別のポリマー連鎖に組み込まれたモノマーの総数である。数iは、i=2~i=iの正の整数である。従って、(鎖-1)n=0(スチレン二量体)の場合i=2、(鎖-2)n=1(スチレン三量体)の場合i=3、(鎖-3)n=2(スチレン四量体)の場合i=4、(鎖-4)n=3(スチレン五量体)の場合i=5、(鎖-5)n=4の場合(スチレン六量体)i=6、...及び(鎖-(i-1))n=i-2の場合i=iである。従って、(i-1)番目の個別のポリマー連鎖は、最も長い連鎖長の個別のポリマー連鎖である。我々は、一般に、本発明のポリマー組成物に関するGPCのMWD分析の結果は、ガンマ確率密度関数(PDF)で合理的にモデル化することができることを見出した。しかしながら、より重要なことには、HMAPS分布は、一般にワイブルPDFで非常に良好にモデル化されることを我々は見出した。これは、該重合工程が排他的ではないにしてもほぼ排他的に水素媒介による:i)開始、ii)連鎖成長、及びiii)連鎖停止の段階
に限定される、すなわち、エチルベンゼンは、連鎖移動剤として速度論的に活性でないという意味に解釈される。
【0164】
本発明のHMAPS組成物の分子量分布は、GPC(UV検出器)分析で特徴づけられ、Mnが400~800ダルトンの範囲であり、Mwが約600~約1200ダルトンの範囲であり、PDnが約1.35~約1.75の範囲であり、標準偏差が約270~約55
0ダルトンの範囲であり、Mw10%高が約3300ダルトン未満である。より好ましい
組成物は、HMAPSポリマーであり、分布はGPC(UV検出器)分析で測定される通りに特徴づけられ、Mnが約400~約800ダルトンの範囲であり、Mwが約600~約1200ダルトンの範囲であり、Mzが約750~約1500ダルトンの範囲であり、P
nが約1.35~約1.75の範囲であり、標準偏差が約270~約550ダルトンの
範囲であり、非対称性が約1.60~約2.2の範囲であり、Mw10%高が約2400
ダルトン未満である。
【0165】
本発明の好ましいHMAPS分布は、スチレン単独ではないにしても、本質的にスチレンのみからなり、97wt%を超える「ヘッドトゥーテール」の微細構造を有し、それらの連鎖長分布は、最も低分子量の連鎖の部分の除去によってさらに異なる形にされているか、または修正されている。低分子量の連鎖、特にスチレン二量体の除去は、分子量分布の各モーメント(すなわち、Mn、Mw、及びMz)に関して新たな高値、ひいては全体的
なMWDの増大及び変更をもたらす。従って、本発明の好ましい修正分子量分布は、変更されていない分布と重なるが、該分布のより低い分子量画分の一部の除去によって変更された単純な数値結果のため、上記で特定された分子量分布または分子量パラメータの範囲内に存在しない場合がある。従って、二量体含量が低減されているがなお存在しており、分布全体の約0.1~約1.5wt%を示す(GPC分析UV検出器で測定)好ましいHMAPS組成物は、Mnが約500~約800ダルトンの範囲であり、Mwが約650~約1200ダルトンの範囲であり、Mzが約900~約1500ダルトンの範囲であり、P
nが約1.25~約1.70の範囲であるとともに、標準偏差が約280~約600ダ
ルトンの範囲であり、非対称性が約1.45~約3.20の範囲であり、Mw10%高が
約1500ダルトン~約3500ダルトンの範囲である分子量分布または連鎖長分布を有する。
【0166】
統計的分布が組み合わされるブレンド操作は、PDn用に規定された制約、すなわち、
標準偏差が適用されない非統計的分布をもたらし得る。しかしながら、かかるブレンドは、それらが本発明の組成物の組み合わせによって生成され、本発明から生じたものであるという点において、本発明の範囲内である。
【0167】
従って、本発明はまた、純粋なポリスチレン組成物の求電子芳香族臭素化で生成される高分子難燃剤組成物に関する。当該臭素化ポリスチレン組成物は、スチレンモノマーの塩類似水素化物開始水素媒介アニオン重合で生成されるポリスチレン組成物のための溶媒中での臭素及び臭素化触媒による臭素化、または他の既知の臭素化工程を伴う工程によって調製されている。従って、本発明は、上記HMAPS分布の臭素化ポリスチレンを含む難燃剤組成物を提供し、該組成物は:(i)臭素含量が約73wt%~約77wt%の範囲であり、(ii)300℃での熱的HBr値が検出限界の50ppm未満及び約1000ppm未満、ここで、wt%及びppm値は該組成物の合計重量に基づいており、5%の熱重量(TGA)減量が約355℃超~約375℃の温度で起こり、ガラス転移温度が約110℃~約155℃の範囲である。
【0168】
本明細書または特許請求の範囲のいずれかの箇所において化学名または化学式で言及される成分は、単数形で言及されようと複数形で言及されようと、化学名または化学型(例えば、別の成分、溶媒等)で言及される別の物質と接触する前にそれらが存在すると見な
される。得られる混合物または溶液中で、もしあれば、どんな化学変化、化学変換、及び/または化学反応が起こっても、かかる変化、変換、及び/または反応は本開示に従って要求された条件下で特定の成分を一緒にした当然の結果であるために問題ではない。従って、該成分は、所望の操作の実施または所望の組成物の生成に関連して一緒にされるべき含有物と見なされる。また、以下の特許請求の範囲で物質、成分、及び/または含有物が現在時制(「含む」、「である」等)で言及される場合があるが、該言及は、本開示に従って最初に1つ以上の他の物質、成分、及び/または含有物と接触、ブレンド、または混合される直前の時点で存在していた、該物質、成分、または含有物に対する。物質、成分、または含有物が、接触、ブレンド、もしくは混合操作の過程で化学反応または変換を通して元の固有性を失っている可能性があるという事実は、本開示に従い、化学者の通常の技術を用いて行われた場合には、実際的な問題はない。
【0169】
本明細書に記載されかつ請求項にかかる本発明は、本明細書に開示の特定の実施例及び実施形態によって範囲が限定されるものではない。これは、これら実施例及び実施形態が、本発明のいくつかの態様の説明であると意図されるためである。任意の同等の実施形態は、本発明の範囲内であることを意図する。実際に、本明細書に示された及び記載されたものに加え、本発明の様々な修正が前述の説明から当業者には明らかになるであろう。かかる修正もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0170】
以下実施例により本発明を説明する。しかしながら、本明細書に十分に説明され、特許請求の範囲に記載される本発明は、以下の実施例の詳細によって限定されることを意図されないことを理解されたい。
【実施例0171】
使用される一般的な装置
HMSHIP工程に使用される装置は以下の通りである。熱電対、底部排液弁、冷却コイル、熱油ジャケット、及び2つもしくは3つまたは4ついずれかの傾斜羽根タービンインペラ(以下に示し実施例で特定される各インペラの配置で)を備えた316ステンレス鋼製の2リットルParrオートクレーブに、さらにピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、窒素でパージされた250mlのステンレス製装填容器、十分に較正した高圧計量ポンプ、及び0.02”、もしくは0.01”、または0.007”のいずれかのIDの末端部分を有する1/16インチのODの表面下モノマー供給ライン(記載の通り、またはさもなければ実施例に記載の通り)を取り付けた。撹拌機の磁気装置を高速空気駆動モータに接続し、重合中、通常は撹拌機のインペラが1130±25RPMの速度で回転するように操作した(実施例で特に断りのない限り)。オートクレーブは、油バブラー及び/または、底部排液管を有し、オーバーヘッドの攪拌及び蒸留用に装備された6リットルの油ジャケット付き折り目付き洗浄用容器に排気する。該オートクレーブの底部排液弁及びディップ・レッグ・サンプリング・ポートは両方とも、クエンチされていない反応混合物を直接移送するために洗浄用容器に配管する。大量の溶媒(例えば、前の実験から回収されたシクロヘキサンもしくはメチルシクロヘキサンもしくはエチルベンゼンまたはそれらの混合物)を該反応器に該装填容器を通してピストンポンプにより装填する。触媒成分(例えば、TMEDA/カリウムt-ブトキシド/溶媒溶液及びブチルリチウム)を、別々に該装填容器を通して該反応器に、精密計量バーニアハンドルニードル弁で制御された流量で装填する。該装填容器の内容物を、窒素もしくは水素または水素/窒素雰囲気のいずれかを有するオートクレーブに最小限の窒素背圧で圧送する。スチレンを高圧計量ポンプにて、阻害剤を除去するため、所定の定速で塩基性アルミナカラム(1または2個の0.5”O.Dカラム、各々が11.0gの60~325メッシュのAl23入り)を介して供給する。水素は、上部空間及び/または表面下に供給し、所望の圧力を保つ。該オートクレーブ反応器を所望の反応温度に、またはそれ以上(+1℃~+3℃)の温度設定点を有する油で加熱し、その反応温度を、反応器の制御装置を準備した後(一般に、周囲温度
で始まる場合モノマー供給から最初の20~30分後)、該所定の設定点で厳密に維持した。従って、該反応温度は、所望の設定点温度より通常5℃を超えない短時間の温度変動を有し得る。
【0172】
本発明の開発の過程で、2つ、3つ、もしくは4つの傾斜羽根タービンインペラを含む4種の別々の配置(下記配置I~IV)または配列を使用した:
I.2つの傾斜羽根、反応器の上部から1つ目は6.25”及び2つ目は10.0”。
II.3つの傾斜羽根、反応器の上部から1つ目は6.0”、2つ目は8.0”、及び3つ目は10”。
III.3つの傾斜羽根、反応器の上部から1つ目は5.0”、2つ目は7.0”、及び3つ目は10”。
IV.4つの傾斜羽根、反応器の上部から1つ目は4.0”、2つ目は6.0”、3つ目は8”、及び4つ目は10”。
該2リットルのオートクレーブは、深さが10インチの円筒であり、従って、各インチは容積200mlを表す。3つのインペラを備えた配置II及びIIIは、該反応器内の全体積が一番上のインペラが物質移動の点で無効になるレベルを大きく超えないように供給が制限されている限り、供給の過程を通じて均一な水素の取り込みをもたらした。Parr2リットル反応器では、4つの傾斜羽根インペラを用いる配置IVが、特に本発明のLOXSH触媒による本発明の操作にとって好ましい配置であり、この配置は、スチレンモノマー供給を通じて、凝縮相への蒸気空間の均一な物質移動、ひいては水素の取り込みを伴うこの反応器の容積の十分な活用を可能にした。この重合反応器は容積2000mlであり、実際に使える最大容積1750mlを有し、最初に生成する反応混合物は通常400~600mlの体積であることから、安全に供給できるスチレンの最大体積は、1350ml~1150mlの範囲である(重合の際の温度または密度の変化を考慮していない)。従って、かかる体積のスチレン(1150ml~1350ml)を供給することを、この反応器の配置に対するスチレンまたはモノマーの完全装填と見なす。スチレンの完全装填もしくはスチレンの部分装填という用語、または装填されるスチレンのわずかな部分という意味を含むために用いられる任意の用語もしくは他のフレーズは、上記の装置の限界または制限であり、異なる反応器の配列もしくは配置または操作モード(バッチ、半バッチ、半連続、連続、逆混合、もしくは栓流はすべて、本発明の範囲内のモード及び/または配置である)を有する反応器システム(複数可)において本発明の工程または実施に対する限界を表すものでは決してない。以下に記載する実施例は、本発明のバッチまたは半バッチ操作の代表例である。明らかに、当業者は、これら実施例の教示を得ることができ、本発明の適用を、ある程度の逆混合を伴う及び/または伴わない連続操作を伴う操作モードを含むように拡大することができ、従って、かかるモードは本発明の十分範囲内である。
【0173】
装填を窒素雰囲気下で重合反応器に行う場合、そのオートクレーブ反応器を加圧し、その後65PSIGのH2で排気する(65PSIGを0PSIGに排気する)ことにより
少なくとも3回パージする。その重合反応器をその後所望のH2圧力まで加圧する。反応
器の装填が水素雰囲気を含む反応器のためになされる場合、その反応器は通常50PSIGのH2で2回加圧及び排気する。スチレン(99%、Acros)、TMEDA(Al
drich)、2-メトキシメタノール(99.9% Aldrich HPLCグレード)、2-N、N-ジメチルエタノールアミン(99.5% Aldrich)、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール(98% Aldrich)、水素化カリウム(鉱油中30%、Aldrich)、ヘプタン中の1.0Mのジ-n-ブチルマグネシウム、及びn-ブチルリチウム(シクロヘキサン中2M(Aldrich)は、各々、業者からのものをそのまま使用する。無水シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びエチルベンゼン(すべてAldrich)は、不活性乾燥窒素雰囲気下で取り扱う。
【0174】
実施例1~24
実施例1~24の実験の詳細(反応条件、試薬の装填、ならびに最初及び最後の触媒濃度)、スケールアップパラメータ(相対的供給及び1時間当たりの相対的供給量)、ならびに結果(GPCで測定されるポリマーの分子量分布[MWD]及びポリマーの収率)を表III~VIに表形式で示す。本発明のLOXSH触媒及び重合反応条件は、それらを合成する試薬及び工程が実施される反応パラメータの無数の組み合わせを与えることは明らかであるはずである。従って、実施例1~5及び実施例6~13は、この新規触媒系及び反応条件を探索するために設計された最初のスコーピング実験を含む。従って、これらの実施例は、1実験当たり好ましいモノマー量の約25%~50%しか使用しなかった。使用したスチレンモノマーの量を減らし、インペラ配置IIを使用した。従って、重合反応におけるインペラの配列及びスチレンモノマーの供給を短縮したことを除き、これら実験の準備及び実施は、実施例14~24と基本的に同じであった。従って、実施例3、14~15、20~21、及び24を代表例と見なし、より詳細に記載する。このようにして製造されたLOXLiH PS組成物(実施例1~24)の4~6種の最も揮発性の高いスチレンオリゴマーのGC分析は、別個のポリマー鎖の99.4%~99.9%が純粋な線状「ヘッドトゥーテール」ポリマー微細構造を有することを示したことに留意されたい。加えて、これらLOXLiH PS組成物は、基本的にいかなる開裂重合の不純物も副生物の分布も含まない。個々のモノマーの繰り返し単位に基づいて、これらの分布の統計モデル(ワイブルPDF)は、スチレンの繰り返し単位の99.986モル%と99.999モル%の間が2°(メチレン)または3°(メチン)いずれかのベンジル炭素原子を有することを示している。別の表現に変えると、これらのLOXLiH PS組成物は、10ppm未満から140ppm以下の4級炭素「テールトゥーヘッドトゥーテール」結合を微細構造中に有する。
【0175】
実施例3
完全モノマー供給体積の25%のLOXLiH、およそ[DMEA-5Li127触媒
の80℃での代表例
無水シクロヘキサン495ml(384.9g)中の345mlを反応器に25℃にて乾燥水素(0PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800RPM、上記
配置IIで3つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め2.27g(0.0255mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、134.7g(1.27mol)のエチルベンゼン、及び12.22g(0.105mol)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水シクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、30.37ml(0.0607モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムをこの装填容器を通して反応器に移送し、その後無水シクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げ、その結果、反応器の圧力は、水素が消費されるにつれて15分間の装填時間をかけて-3PSIGに低下した。この反応器の上部空間を21PSIGの乾燥H2で(表面下供給ラインを通して)2回パー
ジ及び排気し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を0PSIGにした。この反応器をその後4PSIGまで加圧を増加させながら70℃に加熱した。加熱は、反応器のジャケットで81℃の油によって行った。70℃に達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、257.2g(2.47mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、2.02ft/s)を通して、反応温度を80℃に制御しながら38分間をかけて、6PSIGの水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は79℃に達し、圧力は13PSIGまで上昇した。レギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。
【0176】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物は、予め加熱(N2雰囲気)ならびに予め3
00mlの脱酸素水及び200mlのシクロヘキサンを装填した洗浄用容器にH2の陽圧
で移送した。
【0177】
クエンチされていない反応混合物の移送の過程で10mlのサンプルを分析用に採取した。このサンプルは本質的にウォーターホワイト、すなわち、無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで極めてゆっくりであるが絶えず1時間超の間水素が生じ、最初のクエンチで生じたのみの極小粒子から水素が放出するように見えた。従って、このようにして生じた触媒は、驚くべきことに、重合の終了条件下、シクロヘキサン中で極めてゆっくりとメタノリシスを受ける。二量体含量を含む粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:Mn:702、Mw:1091、Mz:1489、PD:1.554、σn=523、nα3=1.537。従って、これらの条件は、例外的に低非対称性の線状(分岐がない)アニオン連鎖移動分布を製造する。
【0178】
標準的なワークアップ及び生成物の単離
二相の生成物の混合物を洗浄用反応器内で65℃に加熱し、その後これらの相を分離した。相の切断は65℃で容易になされ、かつ急速で、沈降時間をほとんど必要としなかった。水及び任意の小片またはエマルションを底部排液弁から除去した。反応器から除去した洗浄水のpHを測定し、最初の洗浄液は常に(前後すべての同様の実験を意味する)pH=14であった。追加の脱酸素水洗浄を行った。除去した水洗相はpH≒12であった。その有機相を次に300mlの3wt%H2SO4で洗浄し、続いて300mlの水道水で2回洗浄し、終点のpHは7であった。洗浄用反応器内で、この洗浄用反応器のジャケット温度を165℃まで徐々に加熱しながら通常の蒸留によって、この水洗した生成物の混合物からシクロヘキサン及びエチルベンゼンを除去した。ポットの温度が140℃を超える温度に達したときに蒸留が完了したと見なした。この溶液を冷却し、394.75gの溶液を回収した。その後、ワイプ式薄膜蒸発器(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)の使用によりこの溶液からさらにエチルベンゼンを除去した。この最初のWFE操作で、二量体を含むMn:702、Mw:1091、Mz:148
9、PD:1.554、σn=523、nα3=1.537のGPC MWDを有する24
5.0gのLOXLiH PS分布が得られた。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、2.40GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:821、Mw:1152、Mz:1505、PD:1.403、σn=521、nα3=1.417のGPC MWDを有する217.9gのLOXLiH PS分布が得られた。
【0179】
実施例14及び15
LOXLiH[DMEA-4Li62触媒用の80℃でのフルスケールモノマー供給量の代表例とオリゴマーの微細構造分析
無水シクロヘキサン300ml(233.7g)のうちの150mlを反応器に37℃にて乾燥水素(10PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800RPM
、上記配置IIIで3つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め2.72g(0.0305mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、140.0g(1.32mol)のエチルベンゼン、及び1.82g(0.0157mol)のT
MEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水シクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、22.90ml(0.0458モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムをこの装填容器を通して反応器に移送し、その後無水シクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は15分間の装填時間の間に9PSIGに低下した。この反応器の上部空間を50PSIG~0PSIGで、乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)3回パージ及び排
気し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を45PSIGにした。この反応器をその後63PSIGまで加圧を増加させながら74℃に加熱した。加熱は、反応器のジャケットを流れる81℃の油によって行った。反応温度が73℃に達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、960.4g(9.22mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.88ft/s)を通して、反応温度を80℃に制御しながら151分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は81℃に達し、圧力は13PSIGまで降下した。水素レギュレータは圧力16PSIGを維持するように設定した。このレギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは
、一定またはほぼ一定であると思われた。
【0180】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。このようにして、反応混
合物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。上記の工程を、実施例15として、1020.4g(9.80mol.)のスチレンを160分間かけて供給したこと以外は、試薬の量り分け及び条件の再現におけるわずかな実験間のばらつきの範囲内と等しい装填ならびに条件で繰り返した。上記の通り追加の9分間の供給中、水素の取り込みはやや減少した。
【0181】
クエンチされていない反応混合物(実施例14及び15)の移送の過程で、個々の反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。これらのサンプルは本質的にウォーターホワイト、すなわち、無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。これらのサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールで直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。二量体含量を含む粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:実施例14Mn:439、Mw:628、Mz:886、PD:1.411、σn=288、nα3=2.108、実施例15Mn:428、Mw:636、Mz:979、PD:1.539、σn=298、nα3=2.778。
【0182】
上からの標準的ワークアップで3271gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を含むMn
434、Mw:630、Mz:934、PD:1.452、σn=292、nα3=2.54
3のGPC MWDを有する1793gのLOXLiH PS分布が得られた。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、2.40GPC面積%のスチレン二量体含量及
びMn:530、Mw:731、Mz:1150、PD:1.379、σn=326、nα3=3.661のGPC MWDを有する1492gのLOXLiH PS分布が得られた。第三のWFE操作を行い、このLOXLiH PS分布の微細構造を決定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した1492gの生成物分布のうち163.2gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(0.13mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、Mn:310、Mw:323、Mz:337、PD:1.043のGPC M
WDを有する31.24gのスチレンオリゴマーの混合物が製造された。GC分析は、連鎖の99.940%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、開裂した(FWi
-14)微細構造を有する連鎖はたとえあったとしてもわずかしかなかったことを示した(図3参照)。
【0183】
実施例14及び15は、実施例15において追加量のスチレンモノマーが使用されたこと以外はほぼ等しいことに留意されたい。これらの実施例はインペラ配置IIIを使用しているが、これは、実施例14に関しては、凝縮相への水素移送に対する均一性には十分以上であったが、実施例15の追加で供給された60グラムのモノマーには完全に十分よりは下であることが立証された。このことは、実施例14と比較して実施例15のMWDではPDn、σn、及びnα3の値が増加していることに反映されている(表V)。従って、同じサイズの開始反応媒体により多くのモノマーを供給するため4つ目のインペラを、配置IVに関して上記した通りの間隔で撹拌機のシャフトに加えた。配置IVは実施例20~21及び24で使用した。実施例21では好ましい合計モノマー供給量の25%のみを使用したこと以外、実施例21は実施例20と同一であった。これは、実験の間に分子量分布がどのように展開するかを調査するために行った。この実験によれば、分子量が増加するにつれてPDn、及びnα3の値は低下しており、供給の継続に伴って、徐々に異なる
統計的分布のデッドポリマー鎖を形成し、同時にLOXLiH触媒を再生している間じゅう、供給されたスチレンモノマーの各増分によって幅が狭く非対称性の小さい分布が生じることを示している。この組み合わせの実験は、定常状態条件で操作される連続工程を使用して、所望の低多分散性、幅、及び非対称性を有するさらにいっそう好ましい分子量分布を形成することができることを示している。
【0184】
実施例20及び21
80℃でのフルスケールモノマー供給量のLOXLiH[DMEA-2Li64触媒の代表例
無水メチルシクロヘキサン300ml(231.0g)のうちの150mlを反応器に-5℃にて乾燥水素(12PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800
RPM、上記配置VIで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め1.00g(0.0112mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、140.0g(1.32mol)のエチルベンゼン、及び2.60g(0.022mol)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水メチルシクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、16.81ml(0.0336モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムをこの装填容器を通して反応器に移送し、その後無水メチルシクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は15分間の装填時間の間に14PSIGに増加した。この反応器の上部空間を50PSIGで、乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)3回パージ及
び排気し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を40PSIGにした。この反応器をその後70℃に加熱し、反応器の温度が18℃に達したころには、圧力は2PSIGから42PSIGに増加しており、加熱に際した水素の取り込みを示していた。H2圧力を46PSIGに上げ、反応器が72℃に達するころまでに、その
圧力は60PSIGに増加していた。この加熱工程は、反応器のジャケットを流れる81
℃の油によって行った。72℃に達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、1042.5g(10.01mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.88ft/s)を通して、反応温度を80℃に制御しながら164分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は80℃に達し、圧力は32PSIGまで降下した。水素レギュレータは圧力14PSIGを維持するように設定した。このレギュレータへの弁を閉め、4PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、一定またはほぼ一定であると思われた。
【0185】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。このようにして、反応混
合物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。上記の工程を、実施例21として、255.0g(2.45mol.)のスチレンを40分間かけて供給したこと以外は、試薬の量り分け及び条件の再現におけるわずかな実験間のばらつきの範囲内と等しい装填ならびに条件で繰り返した。
【0186】
クエンチされていない反応混合物(実施例20及び21)の移送の過程で、個々の反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。これらのサンプルは本質的にウォーターホワイト、すなわち、無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。これらのサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールで直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。二量体含量を含む粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:実施例20Mn:466、Mw:675、Mz:951、PD:1.409、σn=312、nα3=2.033、実施例21Mn:408、Mw:598、Mz:932、PD:1.559、σn=278、nα3=2.993。
【0187】
上からの標準的ワークアップであるが82℃で行うと1631.5gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を含むMn:424、Mw:626、Mz:979、PD:1.476、σn=293、nα3=2.9794のGPC MWDを有する1168gのLOXLiH PS分布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、1.40GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:536、Mw:722、Mz:1049、PD:1.
379、σn=326、nα3=2.912のGPC MWDを有する946gのLOXL
iH PS分布が得られた。
【0188】
実施例24
80℃でのフルスケールモノマー供給量のLOXLiH[DMEA-5Li127触媒
の代表例とオリゴマーの微細構造分析
無水メチルシクロヘキサン300ml(231.0g)のうちの150mlを反応器に-5℃にて乾燥水素(13PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800
RPM、上記配置IVで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め2.27g(0.0255mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、14
0.0g(1.32mol)のエチルベンゼン、及び12.40g(0.107mol)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水メチルシクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、30.79ml(0.0616モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムをこの装填容器を通して反応器に移送し、その後無水メチルシクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は15分間の装填時間の間に14PSIGに増加した。この反応器の上部空間を50PSIG~0PSIGで、乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して
)3回パージ及び排気し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を41PSIGにした。この反応器をその後73℃に加熱し、反応器の温度が72℃に達するころまでには、圧力は62PSIGに増加していた。この加熱工程は、反応器のジャケットを流れる81℃の油によって行った。73℃に達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、1041.0g(10.00mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.88ft/s)を通して、反応温度を80℃に制御しながら164分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は81℃に達し、圧力は34PSIGまで降下した。水素レギュレータは圧力14PSIGを維持するように設定した。このレギュレータへの弁を閉め、4PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、一定またはほぼ一定で
あると思われた。
【0189】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(酸性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300m
lの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。このようにして、反応混合
物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。
【0190】
クエンチされていない反応混合物の移送の過程で、反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。このサンプルは本質的にウォーターホワイト、すなわち、無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。二量体含量を含む粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:Mn:466、Mw:675、Mz:951、PD:1.409
、σn=312、nα3=2.033。
【0191】
上からの標準的ワークアップであるが82℃で行うと1312.9gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を含むMn:477、Mw:685、Mz:961、PD:1.436、σn=315、nα3=2.032のGPC MWDを有する966.2gのLOXLiH PS分布が得られた。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、1.2GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:575、Mw:753、Mz:933、PD:1.310
、σn=320、nα3=1.933のGPC MWDを有する828.4gのLOXLi
H PS分布が得られた。第三のWFE操作を行い、このLOXLiH PS分布の微細構造を決定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収し
た966.2gの生成物分布のうち106.2gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(<0.1mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、Mn:372、Mw:398、Mz:426、P
D:1.069のGPC MWDを有する33.17gのスチレンオリゴマーの混合物が製造された。GC分析は、連鎖の99.82%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、開裂した(FWi-14)微細構造を有する連鎖はたとえあったとしてもわずか
しかなかったことを示した(図4参照)。
【0192】
一連のLOXLiH実験(実施例29~35)の終了後、そのオートクレーブ反応器を標準的なドラムグレード(無水ではない)シクロヘキサンですすぎ、窒素で十分にパージし、その後検査のために開放した。加熱された反応器壁及び冷表面(すなわち、冷却コイル、撹拌機部品、ディップ・レッグ、モノマー供給ライン、及びサーモウェル)には、どの点から見てもいかなる固体もなかった。
【0193】
実施例25~29
実施例25~29の実験の詳細(反応条件、試薬の装填、ならびに最初及び最後の触媒濃度)、スケールアップパラメータ(相対的供給及び1時間当たりの相対的供給量)、ならびに結果(GPCで測定されるポリマーの分子量分布及びポリマーの収率)を表VIIに表形式で示す。上述したことが繰り返されるが、本発明のLOXSH触媒及び重合反応条件は、それらを合成する試薬及び工程が実施される反応パラメータの無数の組み合わせを与えることが明らかであるはずである。これら実施例25~29は、他の塩類似水素化物を含む二金属触媒を含む。従って、実施例25~27は、LOXKH触媒の形成に水素化カリウムの使用を伴い、実施例28~29は、有機マグネシウム試薬を用いたLOXMgH2触媒の形成を伴う。実施例26、28、及び29をより詳細に説明する。
【0194】
このようにして製造されたLOXMgH2 PS組成物(実施例28~29)の4~6
の最も揮発性の高いスチレンオリゴマーのGC分析は、99.2%の基本的にいかなる開裂重合の不純物も副生物の分布も含まない線状「ヘッドトゥーテール」ポリマー微細構造を示したことに留意されたい。これらの分布の統計モデル(ベータPDF)は、スチレンの繰り返し単位の約99.982モル%が2°(メチレン)または3°(メチン)いずれかのベンジル炭素原子を有することを示している。別の表現に変えると、これらのLOXMgH2 PS組成物は、185ppm以下の4級炭素「テールトゥーヘッドトゥーテー
ル」結合を有する。LOXKHが製造したオリゴマーの分析では、組成物の極めて高いレベル、すなわち、別個のポリマー鎖の8~12%が単一の4級炭素ヘッド「テールトゥーヘッドトゥーテール」結合を示した。従って、これら組成物の統計モデル(ベータPDF)によれば、これらのLOXKH組成物は、2°(メチレン)または3°(メチン)いずれかのベンジル炭素原子を有するスチレン繰り返し単位を99.725モル%未満有し得る。このことは、これらの組成物が、ある特定の用途に対してそれらをあまり好ましくない組成物にする4級炭素「テールトゥーヘッドトゥーテール」結合を2750ppmより多く有し得ることを意味する。
【0195】
驚くべきことに、Li:K比が15:1のLOXKH触媒から製造された実施例27の組成物でさえ、好ましくない単一の4級炭素「テールトゥーヘッドトゥーテール」結合を有する連鎖を8wt%より多く有する組成物を製造した。表VIIに示される結果によれば、一つには、2部の第I族金属(M+)に対して1部のDMEAHから生じた触媒は、
式[DMEA-484の凝集体として存在すると仮定される。この仮定によれば、実施例27(15:1Li:K)の触媒は、式[DMEA-4Li84を有する1つの凝集体と式[DMEA-4Li7KH4を有する1つの凝集体からなり得る。実施例25(3:1Li:K)の触媒は、式[DMEA-4Li624の凝集体または複数の凝集体であり
得るとともに、実施例26(7:1Li:K)の触媒は、式[DMEA-4Li7KH4
有する凝集体であり得る。ここで、これらの凝集体触媒系の各々では、最も活性の高い水素化物種は、開始の観点から、ひいてはあまり望ましくないポリマー微細構造の形成の観点から、これら3つの実施例(25、26、及び27)が、他のすべてのカリウム系触媒系と同様に与えたようにKHである。
【0196】
LOXKHと比較してこれとは対照的に、実施例28及び29はLOXMgH2凝集体
触媒系の代表例であり、LOXLiH凝集体触媒はLOXMgH2より活性が高いと思わ
れる。実施例28に関しては、DMEAH対n-ブチルリチウム対ジブチルマグネシウムの化学量論比は、1つの単一凝集体が生じた場合に実験式[DMEA-21Li28Mg415を有するようなものであり、従って、LiH及びMgH2両方の活性種が存在すべきま
たは少なくとも存在し得る。いくつかの異なる凝集体が生じ、それらの一部はマグネシウムを含まず、従って活性型試薬としてLiHの形態が触媒組成物に存在するはずであることが予想される。対照的に、実施例29のn-ブチルリチウム及びジブチルマグネシウムの装填は、マグネシウムアルキルラジカル(ジブチルマグネシウム基)のみを残してリチウムアルキルラジカル(ブチルリチウム基)のすべてを消費するようなものであった。化学量論的及び予想される実施例29の実験式は、[DMEA-4Li4MgH2であり、従って、明示型のLiHは存在しないはずである。
【0197】
実施例28を実施例29より有意に低い水素圧力で実行して同様の生成物のMWDを得ることができたという点から、全リチウム触媒の凝集体が存在する可能性が高く、これは水素化マグネシウムをある程度の量含む触媒凝集体より水素媒介塩類似水素化物開始重合法用の触媒として活性が高いということが推測される。さらに、実施例29の触媒は、活性型LiHが存在しないように形成された(すなわち、DMEAHのモルは装填された有機リチウムのモルを超えていた)。この触媒系は極めて有効であったが、実施例28よりはるかに高いH2圧力を要した。市販の反応器の要求(定圧及び適切なシールのために必
要な単純な量の背圧を維持する上での課題)を考慮すると、控えめに高いH2圧力に対す
るこの必要性は、LOXLiH触媒(実施例1~24)及び実施例28の混合LOXLiH LOXMgH2触媒と比べて偶発的な利点と見なされる。
【0198】
実施例25~27用の[DMEA-2LiK・2TMEDA原液の生成
TMEDA2~5モルで容易に炭化水素溶媒に溶解されるカリウムtert-ブトキシドと異なり、N,N-ジメチルエタノールアミンから生じるカリウムアルコキシド、すなわち[DMEA-]Kは、TMEDAが添加されても溶解が不十分であると思われる。し
かしながら、水素化カリウム、n-ブチルリチウム、及びDMEAHから生じた混合金属アルコキシドは、エチルベンゼンに容易に溶解した。従って、TMEDAで錯化した混合金属アミノアルコキシド「[DMEA-2LiK・2TMEDA」のエチルベンゼン溶液の6.12wt%の均一な206.71gの原液を、窒素雰囲気下、182.5(1.72モル)の無水エチルベンゼン中、1.10g(0.274)の乾燥未使用KH、4.90g(0.0550モル)のDMEAH、6.51(0.560モル)のTMEDA、及び15.12ml(0.0302モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液から調製した。これは、30wt%KHの鉱油溶液3.67gを、窒素でパージしたグローブボックス内で、撹拌機のホットプレート上に設置した予め計量した炉乾燥した500mlホウケイ酸ガラスボトル及びガラス被覆撹拌子に装填することによって実現した。この水素化カリウム懸濁液をその後30mlの無水n-ペンタンで3回洗浄及びデカントした。乾燥窒素流下で恒量になるまで乾燥した後、182.46gのエチルベンゼン、6.51gのTMEDA(約99.5%)、及び4.90gのDMEAH(約99.5%、H2放出につれて少しずつ添加)をその後装填した。得られた不均質溶液を50℃ま
で徐々に加温し、n-ブチルリチウムをゆっくりと加えた後に均質溶液が生じた。10モル%過剰のn-ブチルリチウムを要して、他のプロトン種の存在を示す持続的な暗赤色の均質溶液を製造した。DMEAH1滴を加えて赤色を消色し、室温まで冷却すると、この
原液は均質を保った。所望の量のカリウムイオンを含むこの6.12wt%の均質原液の分割量をその後実施例25~27の反応混合物の生成に用いた。
【0199】
実施例26
LOXKH[DMEA-4Li7KH4触媒の80℃での代表例とオリゴマーの微細構造分析
無水シクロヘキサン300ml(233.7g)のうちの150mlを反応器に37℃にて乾燥水素(10PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800RPM
、上記配置IIIで3つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、50.0mlの無水シクロヘキサンに溶解した追加の1.23g(0.0138mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン及び1.63g(0.0140mol)のTMEDAと混合した、上記の6.12wt%均質溶液51.68gを装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水シクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、42.71g(0.403)の無水EBで希釈した2.0Mのn-ブチルリチウム20.66ml(0.0413モル)をこの装填容器を通して反応器に移送し、その後無水シクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は18分間の装填時間の間に8PSIGに低下した。この反応器の上部空間を50PSIGで、乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)3回パージ及び排気し(反応器の外に
内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を41PSIGにした。この反応器をその後62PSIGまで加圧を増加させながら75℃に加熱した。加熱は、反応器のジャケットの81℃の油によって行った。75℃に達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、996.9g(9.57mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.88ft/s)を通して、反応温度を81.5℃に制御しながら156分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は82℃に達し、圧力は47PSIGまで降下した。水素レギュレータは圧力22PSIGを維持するように設定した。このレギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、モノマー供給の過程でいくらか
低下すると思われ、水素に加えてエチルベンゼンがこの触媒組成物とともに連鎖移動剤として挙動することを示した。
【0200】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエンチされていない反
応混合物の移送の過程で、この反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。このサンプルは赤色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。GPCによれば、二量体含量を含む粗クエンチ反応混合物の分析は以下の通りであった:Mn:688、Mw:1051、Mz:1461、PD:1.527、σn=500、nα3=1.725。
【0201】
上からの標準的ワークアップであるが82℃で行うと1159.5gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作
)で、二量体を含むMn:689、Mw:1051、Mz:1461、PD:1.527、
σn=500、nα3=1.725のGPC MWDを有する935gのLOXLKH P
S分布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、0.48GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:765、Mw:1099、Mz:1486、PD:
1.437、σn=505、nα3=1.667のGPC MWDを有する845gのLO
XKH PS分布が得られた。第三のWFE操作を行い、このLOXKH PS分布の微細構造を決定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した845gの生成物分布のうち150.2gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(<0.1mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、Mn:34、Mw:371、Mz:400、PD:
1.077のGPC MWDを有する18.94gのスチレンオリゴマーの混合物が得られた。GC分析は、連鎖の89.53%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、開裂した(FWi-14)微細構造を有する連鎖は0.78%であり、連鎖の残部はあ
まり望ましくない単一の4級「テールトゥーヘッドトゥーテール」結合を個別のポリマー鎖に有することを示した。(図6参照)。
【0202】
実施例28
LOXMgH2[DMEA-21Li28Mg415触媒に対する80℃での完全モノマー
供給の代表例
無水メチルシクロヘキサン375ml(288.8g)のうちの175mlを反応器に-5℃にて乾燥水素(13PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800
RPM、上記配置VIで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め3.32g(0.0372mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、30.0g(0.28mol)のエチルベンゼン、及び6.51g(0.056mol)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水メチルシクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、80g(0.75モル)に溶解した2.0Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液24.50ml(0.0490モル)をこの装填容器を通して反応器に移送し、その後無水メチルシクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。その後、30.0g(0.28モル)のエチルベンゼンに溶解した1.0Mのジブチルマグネシウムのヘプタン溶液7.00ml(0.007モル)をこの反応器に装填容器を通して装填及び移送し、その後、無水メチルシクロヘキサンの上記総量から50mlの分割量を装填及び移送した。この有機リチウム/有機マグネシウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は15分間の装填時間の間に16PSIGに増加した。この反応器の上部空間を50PSIGで、乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)3回
パージ及び排気し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を46PSIG及び-3.4℃にした。反応器をその後40℃に加熱し、この反応器の温度が40℃に達するころまで(45分)には、圧力は55PSIGに増加していた。この反応器を46PSIGまで排気し、加熱を継続した。さらに15分加熱後、この反応器は67℃に達し、圧力は63PSIGになった。この加熱工程は、反応器のジャケットを流れる81℃の油によって行った。72℃及び64PSIGに達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、1009.0g(9.69mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.88ft/s)を通して、反応温度を82℃に制御しながら159分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は80℃に達し、圧力は36PSIGまで降下した。水素レギュレータは、次の40分間の供給の間圧力14PSIGを維持するように設定した。合計60分間モノマーを供給した後、水素圧力を11PSIGに設定した。このレギュレータへの弁を閉め、4PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要
な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、ほぼ一定で
あると思われた。
【0203】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(酸性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300m
lの3wt%H2SO4を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエンチされてい
ない反応混合物の移送の過程で、この反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。このサンプルは淡黄色であり、固体は認められなかった。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで直ちに黄色が消色し、水素ガスの生成と放出が生じた。二量体含量を含む粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:Mn:504、Mw:773、Mz:11
80、PD:1.534、σn=368、nα3=2.538。
【0204】
二相の生成物の混合物を洗浄用反応器内で82℃に加熱し、その後これらの相を分離した。相の切断は82℃で容易になされ、かつ急速で、沈降時間をほとんど必要としなかった。その有機相を次に終点のpH7が達成されるまで4×300mlの水道水で洗浄した。上記の標準的な生成物の単離からの標準的な溶媒除去で1561.8gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を含むMn:511、Mw:780、Mz:1187、PD:1.526、
σn=371、nα3=2.530のGPC MWDを有する962gのLOXMgH2 PS分布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、1.1GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:622、Mw:853、Mz:1207、PD:1.
371、σn=379、nα3=2.417のGPC MWDを有する828.4gのLO
XMgH2 PS分布が得られた。
【0205】
実施例29
LOXMgH2[DMEA-]4Li4MgH2触媒に対する80℃での50%モノマー供給量の代表例とオリゴマーの微細構造分析
無水メチルシクロヘキサン375ml(288.8g)のうちの175mlを反応器に-5℃にて乾燥水素(12PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800
RPM、上記配置VIで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め5.00g(0.0561mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、30.0g(0.28mol)のエチルベンゼン、及び8.15g(0.056mol)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水メチルシクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、80g(0.75モル)に溶解した2.0Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液28.05ml(0.0561モル)をこの装填容器を通して反応器に移送し、その後無水メチルシクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。その後、30.0g(0.28モル)のエチルベンゼンに溶解した1.0Mのジブチルマグネシウムのヘプタン溶液14.00ml(0.014モル)をこの反応器に装填容器を通して装填及び移送し、その後、無水メチルシクロヘキサンの上記総量から50mlの分割量を装填及び移送した。この有機リチウム/有機マグネシウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は16分間の装填時間の間に17PSIGに増加した。この反応器の上部空間を0PSIGに排気し、その後65PSIGに、乾燥H2で(表面
下供給ラインを通して)加圧し、3回排気し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を44PSIG及び-4.4℃にした。その後、この反応器を71℃まで120分で加熱した。この加熱工程は、反応器のジャケットの81℃の油によって行った。71℃及び61PSIGに達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、509.0g(4.89mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.88ft/s)を通して、反応温度を81℃に制御しながら80分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は80℃に達し、圧力は49PSIGまで降下した。(しかしながら、圧力降下における証拠としての水素消費は、LOXLiHの実験と比較して約0.25~0.75分遅れたことが指摘されている。)水素レギュレータは、次の40分間の供給の間圧力46PSIGを維持するように設定した。合計60分間モノマーを供給した後、水素圧力を65PSIGで制御した。このレギュレータへの弁を閉め、4PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位
とした水素の取り込みは、ほぼ一定であると思われた。
【0206】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの3wt%H2SO4を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエンチされて
いない反応混合物の移送の過程で、この反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。このサンプルは淡黄色であり、いくつか大きな沈殿粒子があった。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで直ちに黄色が消色し、水素ガスの生成と放出が生じた。二量体含量を含む粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:Mn:481、Mw:713、Mz:1008、PD:1.482、σn=334、nα3=1.969。
【0207】
実施例28のワークアップ及び除去手順で729.9gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を含むMn:485、Mw:718、Mz:1018、PD:1.480、σn=336、n
α3=2.000のGPC MWDを有する492gのLOXMgH2 PS分布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、1.1GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:593、Mw:805、Mz:1116、PD:1.358、σn=355、nα3=2.256のGPC MWDを有する427gのLOXMgH2 PS分布
が得られた。第三のWFE操作を行い、このLOXMgH2 PS分布の微細構造を決定
するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した492gの生成物分布のうち94.5gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(0.12mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、Mn:314、Mw:329、Mz:344、PD:1.049の
GPC MWDを有する15.73gのスチレンオリゴマーの混合物が製造された。GC分析は、連鎖の99.21%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、開裂した(FWi-14)微細構造を有する連鎖を含まず、ブチル基で開始されたオリゴマーが痕
跡量であることを示した。(図8参照)。観察された水素消費のわずかな遅れ及びブチル基で開始されたポリスチレン分布の痕跡の存在は、水素化マグネシウム組成物の形成が、触媒組成物中の残余のブチルマグネシウムラジカルによるスチレンのアルキル化後により
完全に達成されることを示唆し得る。このことは、ベンジルマグネシウムまたはベンジルマグネサイト試薬は、脂肪族マグネシウムまたは脂肪族マグネサイト試薬よりも容易に水素によって還元されることを示唆し得る。
【0208】
この一連のLOXMgH2実験(実施例28及び29)の終了後、そのオートクレーブ
反応器を標準的なドラムグレード(無水ではない)シクロヘキサンですすぎ、窒素で十分にパージし、その後検査のために開放した。加熱された反応器壁及び冷表面(すなわち、冷却コイル、撹拌機部品、ディップ・レッグ、モノマー供給ライン、及びサーモウェル)は、うろこ状の白色固体で覆われていた。反応器表面からこの固体を水道水で洗い流すと、pH=11のすすぎ液を生じた。分析(ICP)により、このうろこ状の固体は、リチウム及びマグネシウムの塩からなり、LiOHとして84.0ミリグラム(3.51ミリモルのLi、すなわち全リチウムの3.34%)及びMg(OH)2として0.24ミリ
グラム(0.004ミリモルのMg、すなわち合計マグネシウムの0.02%)であることが示された。2つの実験間で105.1ミリモルのリチウム及び21.02ミリモルのマグネシウムが装填されていたことから、この固体残渣は、リチウムのわずかな比率のみ及び装填されたマグネシウムの本質的に痕跡を表している。
【0209】
実施例30~32
実施例30~32の実験の詳細(反応条件、試薬の装填、ならびに最初及び最後の触媒濃度)、スケールアップパラメータ(相対的供給及び1時間当たりの相対的供給量)、ならびに結果(GPCで測定されるポリマーの分子量分布及びポリマーの収率)を表VIIIに表形式で示す。実施例30~32は、錯化配位子がリチウムメトキシエトキシド[MEOE-]Li+またはリチウム2-N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシド[DMAEOE-]Li+のいずれかである他のLOXLiH触媒の形成及び工程を伴なう。実施例30は、実験式[MEOE-4Li84・4TMEDAを有する炭化水素可溶性水素化リチウム試薬または触媒が、TMEDAの存在下、水素雰囲気下で2-メトキシエタノール[MEOEH]、n-ブチルリチウムから生成され得ることを立証している。実施例30はまた、この触媒系はスチレンモノマーの重合を開始するが、この実施例の条件下ではその水素媒介または連鎖移動工程が非効率的であり、錯化水素化リチウム1モル当たり0.86モルのポリマー鎖しか生じないことも示している。このことは、この触媒がリビングポリ(スチリル)リチウム種を含む水素連鎖移動反応を促進または容易にするためであれば、この触媒のリチウムアルコキシド錯化剤にアミン官能基が存在することが必要であることを暗示している可能性がある。実験式[MEOE-4Li128を有する炭化水素可
溶性水素化リチウム組成物は、炭化水素可溶性型のLiHに対して極めて高いヒドリド含量、すなわち、2.06wt%のヒドリドを有することに留意されたい。同様に、実験式[MEOE-4Li84の組成物は、高いヒドリド含量、すなわち、1.12wt%のヒドリドを有する。
【0210】
実施例31及び32では、2-N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール[DMAEOEH]を用いて水素化物試薬または触媒種を形成した。実施例31で用いた試薬装填は、実験式[DMAEOE-4Li84・4TMEDAを有する触媒が形成されるようなものであった。しかしながら、最初から、水素の取り込みの証拠がほとんどないことから、触媒がほとんど形成されないことは明らかであった。TMEDAが[DMAEOE-]L
+種のn-ブチルリチウムによる分解を促進したと推測される。従って、この実施例の
条件下でのこの触媒は、極めて幅の広い高非対称性の分布を有する極めて高分子量(Mw
=183,233)のポリスチレン組成物を製造した。TMEDAが[DMAEOE-
Li+種のn-ブチルリチウムによる分解を促進したと推測される。実施例32で用いた
試薬装填は、TMEDAを含まない実験式[DMAEOE-4Li62を有する触媒が形成されるようなものであった。加えて、この触媒は最初-5℃で形成された。実施例32の反応条件下で、所望の触媒が生じ、少なくとも最初はDMAEHから形成される触媒の
ものに匹敵する活性を有していたが、スチレンモノマーの供給の過程でこの触媒活性が急激に低下し、Mz=139,795と非対称性34.4によって示される高分子量テールの形成をもたらした。この反応の温度条件下で触媒の分解が生じたことが推測される。触媒形成の過程か重合工程中かにかかわらず、[DMAEOE-]Li+の分解は、以下に示すように、ジメチルアミノ官能基に対してアルファの金属化に続いて、エチレングリコールのジリチウムアルコキシドの脱離及びビニルジメチルアミン(エナミン)の形成を伴うと考えられる。従って、この配位子及びかかる可能性のある分解工程を受けやすい任意の他の配位子は、単金属リチウム触媒を含む水素媒介塩類似水素化物開始重合法のための触媒の形成用のDMEAHにあまり好ましくない。
【化6】
【0211】
実施例30
2-メトキシエタノールから形成されるLOXLiH[MEOE-4Li84・4TMEDA触媒の代表例
無水シクロヘキサン550ml(428.5g)中の400mlを反応器に20℃にて乾燥水素(0PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800RPM、上記
配置IIIで3つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め2.10g(0.0276mol.)の2-メトキシエタノール、15.0g(0.14mol)のエチルベンゼン、及び3.35g(0.029mol)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水シクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、80g(0.75モル)に溶解した2.0Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液28.77ml(0.0575モル)をこの装填容器を通して反応器に15分かけて移送し、その後無水シクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力が-4PSIGに低下し、温度が22℃に上昇したことで、H2の消費が示された。この反応器の上部空間をその後50PS
IG~0PSIGの乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)3回パージ及び排気し(
反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を35PSIGにした。その後、この反応器を60分間で73℃に加熱した。この加熱工程は、反応器のジャケットを流れる81℃の油によって行った。73℃及び51PSIGに達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、160.0g(1.54mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.35ft/s)を通して、反応温度を80℃に制御しながら35分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は78℃に達し、圧力は52PSIGまで上昇した。水素レギュレータへの弁を閉めたままにしたところ、上部空間がスチレンモノマーの供給によって圧縮されるにつれ、圧力が上昇した。合計35分間の供給の後、水素圧力は55PSIGに達した。
【0212】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常
はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物は、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエンチされていない反
応混合物の移送の過程でこの反応混合物から10mlのサンプルを採取した。このサンプルは無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。
【0213】
上部空間の窒素注入でエチルベンゼンがそれ以上上部から取り出されない場合に蒸留が完了したと見なされること以外は、上からの標準的なワークアップ及び溶媒除去とする。得られた樹脂は、アルミ箔で補強した予め計量した金属トレーに底部排液弁を通して移送した。その後、真空オーブン内で、100℃から165℃に徐々に熱し、真空を50.0mmHgから1.0mmHgの真空まで徐々に上げて、この樹脂からさらにエチルベンゼンを除去した。冷却後、得られた脆い無色樹脂を採取し、GPCで分析した:Mn:61
79、Mw:14,450、Mz:22,964、PD:1.578、σn=7192、nα3=2.338。
【0214】
実施例32
2-N,N-ジメチルアミノエトキシエタノールから形成されるLOXLiH[DMAEOE-4Li62触媒の代表例
無水メチルシクロヘキサン300ml(231.0g)中の150mlを反応器に-5℃にて乾燥水素(0PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800RPM
、上記配置IIIで3つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め4.00g(0.0300mol.)の2-N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール及び16.0g(0.14mol)のエチルベンゼンから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水メチルシクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、120g(1.13モル)に溶解した2.0Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液22.54ml(0.0451モル)をこの装填容器を通して反応器に15分かけて移送し、その後無水メチルシクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は上昇も低下もしなかった。この反応器の上部空間をその後50PSIGに乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)加圧し、
3回排気し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を36PSIGにした。その後、この反応器を60分間で73℃に加熱した。この加熱工程は、反応器のジャケットの81℃の油によって行った。72℃及び59PSIGに達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、131.1g(1.26mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.35ft/s)を通して、反応温度を80℃に制御しながら29分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は82℃に達し、圧力は52PSIGに降下した。水素レギュレータを36PSIGに設定した。スチレンモノマーの供給の最初の10~15分間、この工程はDMEAから形成される触媒系と同程度に進むように思われた。しかしながら、20分までに、水素の取り込みが急速に減少していくことは非常に明らかであった。
【0215】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(酸性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物は、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300m
lの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエンチされていない反応
混合物の移送の過程でこの反応混合物から10mlのサンプルを採取した。このサンプルは無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。
【0216】
上部空間の窒素注入でエチルベンゼンがそれ以上上部から取り出されない場合に蒸留が完了したと見なされること以外は、上からの標準的なワークアップ及び溶媒除去とする。得られた樹脂は、アルミ箔で補強した予め計量した金属トレーに底部排液弁を通して移送した。その後、真空オーブン内で、100℃から165℃に徐々に熱し、真空を50.0mmHgから1.0mmHgの真空まで徐々に上げて、この樹脂からさらにエチルベンゼンを除去した。冷却後、得られた脆い無色樹脂を採取し、GPCで分析した:Mn:74
5、Mw:23,605、Mz:139,795、PD:5.922、σn=4127、nα3=34.431。
【0217】
実施例33~37
実施例33~37の実験の詳細(反応条件、試薬の装填、ならびに最初及び最後の触媒濃度)、スケールアップパラメータ(相対的供給及び1時間当たりの相対的供給量)、ならびに結果(GPCで測定されるポリマーの分子量分布及びポリマーの収率)も同様に表VIIIに表形式で示す。これらの実施例(33~37)は、たとえあったとしてもごくわずかの水素が存在する炭化水素雰囲気下で計画的に実施した。これらの実施例の目的は、以下の4点を実証することである:(1)本発明のLOXLiH触媒がスチレン等のモノマーの重合を開始する。(2)得られるこれらの実施例のMn分子量が、形成されるL
OXLiH触媒凝集体の実際の組成の何らかの実験的証拠を与える。(3)追加の促進剤TMEDAが実際に触媒活性の決定に役割を果たすことを実証する。及び(4)これらの実施例で水素が存在しないことにより、水素が本発明の塩類似水素化物開始重合工程を媒介し、恐らくはさらに活性化さえするという優れた驚くべき効果を明らかにはっきりと有するということ。
【0218】
従って、実験式[DMEA-2Li3HをLiH:スチレン比1:31.9(Mn計算値=3316)で有する触媒を使用した実施例33は、Mn=6707で%効率≒50%の
塩類似水素化物開始ポリスチレン組成物を与えた。エチルベンゼンからの連鎖移動がないと仮定すると、これは、2つのLiHのうちの一方のみが重合を開始するために凝集体中で利用可能であることを暗示し、実際の触媒種または開始種が化学式[DMEA-4Li62を有することを示している。比較して、同じ触媒系を使用したがリチウム金属1モル当たり1モルのTMEDAを有する実施例34は、Mn=5084の塩類似水素化物開始
ポリスチレン組成物を製造した。従って、このTMEDAの装填は、2モルのDMEAH及び3モルのn-ブチルリチウムから形成された触媒用の水素化物の効率及び恐らくは利用可能性を増加させると思われる。実施例33及び34とは対照的に、実施例35及び36の触媒系は、意外にも完全に異なる挙動を示す。従って、実施例35及び36は、実験式[DMEA-]LiHを有する触媒を使用した(実施例35TMEDAなし、実施例3
6TMEDAあり、リチウムの合計1モル当たりTMEDA0.5モル)。表VIIIに示すように、実施例35及び36の%効率は、それぞれ、35%及び26%であった。この場合もやはり連鎖移動剤としてのエチルベンゼンの関与がほとんどまたは全くないと仮定すると、これは、実験式または実際の化学式がそれぞれ、[DMEA-3Li63及び[DMEA-4Li84・4TMEDAの組成を有する触媒の形成を示し、どちらの場合も1つのヒドリドのみがスチレンへの付加及びポリマー開始種の形成に利用可能である。実施例33~36の触媒の%効率、すなわち、約50%、約66.7%、約33.3%、及び約0.25%から、本発明のLOXLiH触媒及び延長線上で考えてLOXSH触媒は、それらの形成に使用される試薬に応じて定義された化学量論の比較的単純な凝集体として存在する可能性が高いことが明らかになるはずである。実施例37はしかしながら、
はるかに複雑ではあるが明確に定義された超凝集体の形成が生じ得ることを示唆し得る。従って、実験式[DMEA-]Li32をLiH:スチレン比1:18.6(Mn計算値=1933)で有する触媒を使用した実施例37は、Mn=17,972で%効率≒11%
の塩類似水素化物開始ポリスチレン組成物を与えた。これは、9つのLiHのうちの1つのみがスチレンに付加するために、ひいては重合を開始するために利用可能であったことを暗示している。これは、実験式[DMEA-8Li168及び[DMEA-6Li1812を75:25の比で有する凝集体の混合物で、8個のうちの1個及び12個のうちの1
個のLiHが重合の開始に利用可能であったことを示す。従って、LOXLiH触媒の実際の化学式に関してちょうど提示されたような理論に拘束されることを望むものではないが、実施例33~37は、上記4点(1)~(4)を明確に実証している。実施例37は、実施例33~37を代表するものとして示す。
【0219】
実施例37
炭化水素雰囲気下、82℃でのLOXLiH[DMEA-]Li32・2TMEDA触
媒の代表例
無水シクロヘキサン650ml(506.4g)中の450mlを反応器に10℃にて乾燥水素(11PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(800RPM、上
記配置IIIで3つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め3.02g(0.0339mol.)のN,N-ジメチルアミノエタノール及び7.90g(0.068mol)のTMEDAを無水シクロヘキサンの上記総量からの50ml分に溶解して生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水シクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、65g(0.61モル)に溶解した2.0Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液50.90ml(0.1018モル)をこの装填容器を通して反応器に15分かけて移送し、その後無水シクロヘキサンの上記総量から2回分の50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力は5PSIGに低下し、温度は13℃に上昇した。この反応器の上部空間をその後50PSIGに乾燥H2
で(表面下供給ラインを通して)加圧し、その後0PSIGに排気することを合計3回繰り返し(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)、反応器を46PSIGにした。その後、この反応器を50分間で70℃に加熱した。この加熱工程は、反応器のジャケットを流れる85℃の油によって行った。73℃及び57PSIGに達した時点で、この水素雰囲気を鉱油バブラーに排気した(0PSIG)。加熱は、反応器の温度が82℃に達し、排気ラインが凝縮するシクロヘキサン蒸気から温まり始め、ひいては残余の水素をパージし、炭化水素雰囲気を確立するまで続けた。この鉱油バブラーへの弁を閉じ、攪拌を794RPMに減じ、スチレンモノマーの供給を開始し、131.3g(1.26mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.29ft/s)を通して、反応温度を82℃に制御しながら30分かけて、その炭化水素雰囲気に対して供給した。
【0220】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水エチルベンゼンでフラッシュした。反応器は、攪拌を1130RPMに上げた際の60PSIGへの圧力低下に伴い、65PSIG H2に加圧し
た。このような水素クエンチアニオン重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予
め300mlの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエンチされて
いない水素化物反応混合物の移送の過程でこの反応混合物から10mlのサンプルを採取した。このサンプルはかすかにピンク色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。このサンプルをサンプルバイアルに閉じ込められた空気とともに振盪することでそのかすかなピンク色が消色した。このサンプルをホールピペットからメタノール滴を添加することによってクエンチした。このメタノールクエンチで直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。
【0221】
上部空間の窒素注入でエチルベンゼンがそれ以上上部から取り出されない場合に蒸留が完了したと見なされること以外は、上からの標準的なワークアップ及び溶媒除去とする。得られた樹脂(154g)は、アルミ箔で補強した予め計量した金属トレーに底部排液弁を通して移送した。その後、真空オーブン内で、100℃から165℃に徐々に熱し、真空を50.0mmHgから1.0mmHgの真空まで徐々に上げて、この樹脂からさらにエチルベンゼンを除去した。冷却後、得られた脆い無色樹脂(128g)を採取し、GPCで分析した:Mn:17,972、Mw:37,183、Mz:49,015、PD:1
.318、σn=18,581、nα3=1.299。
【0222】
実施例38~40
実施例38~40は、スチレンモノマー及び触媒として他の形態の塩類似水素化物を含む水素媒介塩類似水素化物開始重合法の例である。実施例38の超活性型塩類似水素化物(SASH)触媒は、TMEDAの存在下、ブチルリチウム及びt-ブチルアルコールから調製した。この触媒は、良くてもやや溶ける程度のものであり、結果として分子量が高いHMSHIP分布を製造した。実施例39のSASH触媒は、TMEDAの存在下、ブチルリチウムに加えてカリウムt-ブトキシドから調製した。この触媒は、低分子量HMSHIP分布の形成において効率が高かったが、このSASH触媒工程は、そのポリマー微細構造に好ましくない4級「テールトゥーヘッドトゥーテール」結合を生じた(すべての他のカリウム系アニオン連鎖移動重合反応と同様)。実施例40は、水素雰囲気下、ナトリウムカリウム合金のTHF分散液にスチレンモノマーを供給することによって生じた高活性型塩類似水素化物(HASH)触媒を使用した。このHASH触媒は、得られる分子量分布を生じるのに必要なナトリウム及びカリウムのグラム原子を基にすると比較的非効率的であった。さらに、このHASH触媒は、予想通り、異なる微細構造、特に開裂オリゴマーのポリマー分布の複雑な混合物を与えた。
【0223】
実施例38
高分子量ポリスチレン分布組成物を製造する超活性型水素化リチウム触媒工程
無水エチルベンゼン300gを水素雰囲気下(0PSIG)、20℃で反応器に装填した。この攪拌溶媒(800RPM、ツイン傾斜羽根、配置IIIの羽根配列)に装填容器を通して、予め3.62g(0.0489mol.)のtert-ブチルアルコール、69.9g(0.66mol.)のエチルベンゼン、及び23.50g(0.202mol.)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、エチルベンゼンの50g分でフラッシュした。攪拌を1130RPMに上げ、その後100gのエチルベンゼンに溶解した2.0Mのn-ブチルリチウム54.10ml(0.11モル)を、装填容器を通して反応器にゆっくりと移送した。反応器の温度は5℃から25℃に上昇し、圧力は2PSIGまで上がり、その後、ブチルリチウム溶液を抜き出し、続いて反応器への50gのすすぎ用分割量のエチルベンゼンで-4PSIGに降下した。合計で570g(5.4mol.)のエチルベンゼンを含む反応器を90℃まで加熱した。触媒成分の装填の過程で導入された微量のN2を、乾燥H2で(上部空間を通して)50PSIGに加圧し、3回排気する(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)ことによりパージした。H2レギュレータを最初は21PSIGに設定した
。スチレン462.2g(4.44mol.)を、表面下供給ライン(0.02”IDの先端、1.2ft/s)を通して、温度を90℃に制御し、水素圧力を徐々に41PSIGまで上げながら116分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。スチレン供給の終了時、アルミナカラムを含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。この実験の過程で、水素レギュレータへの弁を定期的に閉鎖し、スチレン供給中の水素の取り込みを確認した。この反応は
極めてゆっくりではあるが水素を取り込んだ。
【0224】
この反応混合物のクエンチされていない内容物を、予め300mlの65℃に加熱された脱酸素水を装填した洗浄用容器(N2雰囲気)に移送し、その後脱酸素水で洗浄した(3×300ml)。この反応混合物を、その後、水性クエンチ物の分離に際して適切に廃棄した。クエンチされていない反応混合物の移送の過程で、このクエンチされていない反応混合物の分割量10mlを採取した。この無色のサンプルは、均一に懸濁された非常に細かく分割された固体が豊富であった。このサンプルをメタノールでクエンチしたところ、この粘性混合物から直ちに水素ガスの生成と放出が生じた。標準的な高分子量カラム及びポリスチレン標準を用いたこのサンプルのGPC分析は以下の通りであった:GPC MWD Mn:1030、Mw:5635、Mz:10,066、PD:5.47、σn=2178、nα3=4.13。
【0225】
実施例39
エチルベンゼン中のSASH触媒実験に関する中温の70℃での80%モノマー供給量の代表例とオリゴマーの微細構造分析
無水エチルベンゼン300g(2.83モル)のうちの200gを乾燥窒素雰囲気下、20℃で反応器に装填した。この攪拌溶媒(800RPM、ツイン傾斜羽根、配置Iの羽根配列)に装填容器を通して、予め4.57g(0.0407mol.)のカリウムt-ブトキシド、44g(0.41mol.)のエチルベンゼン、及び20.83g(0.179mol.)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、上記300gのエチルベンゼンの50g分でフラッシュした。次に、20.34ml(0.0407モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムを、装填容器を通して反応容器に移送し、続いて上記のエチルベンゼンの50gの分割量を移送した。反応器を65℃に加熱した。その後攪拌を1130RPMに上げ、反応器を乾燥H2で(上部
空間を通して)65PSIGに加圧し、3回排気する(反応器の外に内容物が発泡しないように徐々に排気する)ことによりN2をパージした。H2レギュレータを11PSIGに設定し、800g(7.68mol.)のスチレンを、表面下供給ライン(0.01”IDの先端、5.2ft/s)を通して、温度を70℃に制御しながら183分かけて、水素の上部圧力に対して供給した。スチレン供給の終了時、アルミナカラムを含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。
【0226】
このクエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱し(N2雰囲気)、予め300
mlの脱酸素水を、前の実験から蒸留した回収シクロヘキサン500mlとともに装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエンチされていない反応混合物の移送の過程で
、この反応混合物のサンプル10mlを分析用に採取した。このサンプルは赤色で光に対して透明であり、リビングAPS工程のサンプルの色と同様の外観を与えた。このサンプルの外観は、水素雰囲気の非存在下で行われるアニオン連鎖移動重合のサンプルの特徴的な暗い黒赤(ブラックチェリー)色とは完全に異なっていた。水素化物の形成前にN2
で触媒成分が混合されるSASH触媒のこのようなサンプルは、一般に大きな(mmサイズ)触媒粒子を含み得る。このサンプルは、メタノールの滴の添加によってクエンチされ、これにより直ちに赤色が消色され、水素ガスの生成と放出が直ちに生じる。この粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:Mn:367、Mw:497、Mz
:695、PD:1.35、σn=218、nα3=2.38。
【0227】
上記からの標準的なワークアップ及び除去手順で1303gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、14
0℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、Mn:3
76、Mw:508、Mz:707、PD:1.35、σn=223、nα3=3.34のG
PC MWDを有する827.9gのSASH PS分布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給)で、0.99GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:48
6、Mw:593、Mz:750、PD:1.22、σn=228、nα3=2.15のGP
C MWDを有する608.7のSASH PS分布が得られた。第三のWFE操作を行い、このSASH PS分布の微細構造を決定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した608.7gの生成物分布のうち180.2gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(<0.1mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、Mn:33
2、Mw:348、Mz:363、PD:1.048のGPC MWDを有する33.17gのスチレンオリゴマーの混合物が製造された。GC分析は、連鎖の93.49%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、開裂した(FWi-14)微細構造を有する
連鎖が0.11%しかないことを示した(図7参照)。
【0228】
実施例40
高活性型塩類似水素化物触媒の水素媒介スチレン重合とオリゴマーの微細構造分析
このアニオン連鎖移動工程は、米国特許第5,777,162号及び第5,866,720号に記載の修正2リットルオートクレーブ反応器にて行った。無水テトラヒドロフラン818g及び6.2g(0.183g原子のアルカリ金属)のナトリウムカリウム合金(NaK2)を乾燥窒素雰囲気下、20℃でこの反応器に装填した。この未攪拌の反応混
合物の窒素を水素(3×70PSIG)でパージし、70PSIG H2に加圧した。高
速高せん断混合(1900RPM)を適用し、スチレン208.0g(2.00モル)を73分かけて(3.15ml/分)この反応混合物に供給した。スチレンモノマーの供給中、反応器の圧力を70~60PSIG H2の間に維持した。供給の終了後、反応器の
2を排気し、反応混合物をイソプロピルアルコールで注意深くクエンチした。クエンチ
された反応混合物のサンプルをGPCで分析したところ、以下のMWDを有していた:Mn:591、Mw:943、Mz:1438、PD:1.60、σn=456、nα3=2.38。この反応塊を、エチルベンゼンを含む折り目付き洗浄用反応器に移送し、水洗し、THFを除去した。ワイプ式薄膜蒸発器WFE(2”ガラスPope Still、グラファイト羽根、300.0mmHgの真空、140℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給量にて操作)で、Mn:603、Mw:956、Mz:1373、P
D:1.58、σn=461、nα3=1.906のGPC MWDを有する191gのポ
リスチレン樹脂が製造された。上記からの191gのうちの164gのサンプルを第二のWFE操作(0.4mmHgの真空、230℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給量)に供し、Mn:802、Mw:1081、Mz:1418、PD:1
.35、σn=473、nα3=1.645のGPC MWDを有する153.6gの樹脂
を得た。この第二のWFE操作で、二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体の複雑な混合物18.2gを得た。GC分析は、この複雑な混合物が、ヘッドトゥーテール重合、連鎖の異性化、及び連鎖開裂重合を含む反応経路から生じることを示している(図5参照)。
【0229】
二量体を除去したLOXLiH及びLOXMgH2の調製の終了後、水素媒介塩類似水
素化物が重合生成物分布を開始する。これら組成物の11種をPCT公開番号:第WO2010/127091号(US 8,802,787 B2)の工程技術に従って臭素化し、臭素化アニオン連鎖移動ビニル芳香族ポリマー(Br-ACTVAP)を形成した。これらの臭素化ポリマーの物性の平均及び標準偏差を、実施例14~15の生成物分布を混合ならびにその後ストリップすることにより形成されたBr-ACTVAPの特性とともに以下に記載する。二量体を除去した組成物は、Mw=731及びPDn=1.38を有
していた。これらの組成物をさらに耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の高分子難燃剤として試験したところ、色(YI)、アイゾット衝撃、熱変形温度、及びVICAT軟化温度を含め、優れた全体的特性を有する難燃(1/8”及び1/16”でUL94 V0)HIPS配合物を与えたことが分かった。
【表4】
【0230】
実施例14及び15の触媒組成物が[DMEA-]Li32・1.0TMEDAからな
っていたこと、ならびにこの組成物が臭素化されると優れた全体的特性を与えたということから、この特定のLOXLiH触媒及び得られる水素媒介アニオン性ポリスチレン(HMAPS)のさらなる開発が必要であると考えられた。
【0231】
実施例41~42
実施例41~42は、[DMEA-xLiyzの複雑な化学量論をさらに解明するために設計された実験をさらに示す。これらの実施例は、DMEAH:n-ブチルリチウムの装填比以外は同一の条件下で行った。これら2つの実施例の数値の詳細を表IXに示す。実験の詳細を以下に示す。
【0232】
実施例41
炭化水素雰囲気下、77~79℃での[DMEA-]Li32触媒の代表例
無水シクロヘキサンの総量500ml(385.3g)中の220mlを反応器に37.6℃にて乾燥水素(20PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(600
RPM、上記配置VIで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め5.18g(0.0581mol.)のN,N-ジメチルアミノエタノールを無水シクロヘキサンの上記総量のうちの20mlに溶解して生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、無水シクロヘキサンの上記総量からの50ml分でフラッシュした。次に、シクロヘキサンの上記総量500mlの120mlに溶解した2.0Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液44.95ml(0.0899モル)をこの装填容器を通して反応器に20分かけて移送し、その後無水シクロヘキサンの上記総量から50mlの分割量を移送した。この有機リチウムの装填の過程で攪拌速度は600RPMに維持し、反応器の圧力は24PSIGに上昇した後18PSIGに低下し、温度は39.9℃に上昇した。この反応器の上部空間をその後53PSIGに乾燥H2
で(表面下供給ラインを通して)加圧し、攪拌を1000RPMに上げ、触媒溶液は30分で69.9℃に上昇した。この加熱工程の過程でH2圧力は64PSIGに達した。こ
の反応器をさらに76PSIGに加圧し、2.5時間攪拌した後、73.2℃で0PSIGに排気した。その後この反応器を30分間で92℃に加熱した。この加熱工程は、反応器のジャケットを流れる115℃の油によって行った。92℃及び8PSIGに達した時点で、この水素雰囲気を鉱油バブラーに排気して4PSIGにし、シクロヘキサン蒸気が上部で凝縮し始め、炭化水素雰囲気を確立した。この鉱油バブラーへの弁を閉じ、攪拌を1100RPMに増し、反応器を冷却して76.9℃及び圧力-2PSIGにした。
スチレンモノマー98.0g(0.94mol.)を90gのシクロヘキサンと混合した。スチレン/シクロヘキサン供給を、表面下供給ライン(0.02”IDの先端)を通して、反応温度を79.4℃(80~85℃)のジャケットの油を決して超えない反応温度に制御しながら60分かけて(5.0ml/分)、その炭化水素雰囲気に対して供給した。
【0233】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。この反応器を65PSIG H2に加圧した。この水素クエンチアニオン重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300mlの脱酸素水を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。クエ
ンチされていない水素化物反応混合物の移送の過程でこの反応混合物の10mlのサンプルを採取した。このサンプルはかすかにピンク色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。このサンプルをサンプルバイアルに閉じ込められた空気とともに振盪することでそのかすかなピンク色が消色した。上部空間の窒素注入でエチルベンゼンがそれ以上上部から取り出されない場合に蒸留が完了したと見なされること以外は、上からの標準的なワークアップ及び溶媒除去とする。得られた樹脂(90g)は、アルミ箔で補強した予め計量した金属トレーに底部排液弁を通して移送した(かなり困難であり、高温のエア・ガンを用いた)。冷却した樹脂のGPCによる分析で以下を得た:Mn:13,
845、Mw:38,933、Mz:65,777、PD:2.812、σn=18,63
7、nα3=2.84。
【0234】
実施例42~51
実施例42~51は、副生物のエチルベンゼン及びスチレン二量体生成の低下(Mn
増加)によって通常もたらされる収率の向上を示しており、これは、供給の間に約275±50ppmのLiH~約80±20ppmのLiHまで変化する触媒濃度で促進剤としてTMEDAを用いた場合に、より速い相対的供給速度及びわずかに低い水素圧力に起因する。これらの実施例に関する詳細及び結果を表Xに示す。この一連の実施例を行う過程で、触媒生成の間のTMEDAの存在が、失活効果を有し得ることが分かった。従って、
実施例42~47に関しては、TMEDAは、水素雰囲気下でDMEAHとn-ブチルリチウムを混合した後にのみ反応器に装填したが、反応器には、前の実験からある程度のヒール(heal)が含まれていた(反応器が予め清浄にされていた実施例42を除く)。従って、実施例42~47に関しては、Mnは概して供給速度の増加及びH2圧力の低下とともに増加する。実施例48はしかしながら、Mnは、用いた供給速度の増加及びH2(9PSIG)圧力の低下に伴い457ダルトンに低下した。実施例47及び48を実施して2週間を超える期間が経過しており、この期間に、反応器の表面に残された任意の反応混合物、すなわち、TMEDAを含むものが反応器の底に流れた。加えて、反応器がこれほどの長期間放置されていたため、実施例48の触媒形成の前に、無水シクロヘキサンの500mlのフラッシュを用いて実施例47の任意の残留物をパージした。従って、実施例49では、TMEDAは、n-ブチルリチウムを装填する前に反応器に装填し、その結果、この実施例では高いH2(11PSIG)圧力を用いたにもかかわらず、Mn=540のHMAPS分布を生じた。後続の2つの実験である実施例50及び51では、触媒成分の装填は十分にすすいだ反応器に行った。TMEDAは、超活性型であるが不溶性の、n-ブチルリチウム、TMEDA、及び水素から、炭化水素可溶型のLiHを与える仲介DMEAHなしで直接形成されるであろう水素化リチウムの形成を促進すると推測される。従って、実施例50及び51はともに、表Xの実施例の代表例であり、この表の実施例の好ましい方法の代表例であると見なされる。
【0235】
実施例50及び51
[DMEA-4Li62・2TMEDA触媒用の80℃でのフルスケールモノマー供給量の代表例
無水シクロヘキサン300ml(233.7g)のうちの150mlを、よくすすいだ反応器に37℃にて乾燥水素(16PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒
(800RPM、上記配置IVで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め2.53g(0.0284mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、総量170.0g(1.60mol)のうちの20gのエチルベンゼン、及び上記300mlのうちの50mlから生成した溶液を装填した。次に、120gの無水エチルベンゼン(上記170gから)及び無水シクロヘキサンの上記総量からさらに50mlの分割量に溶解した2.0Mのn-ブチルリチウム21.25ml(0.0425モル)をこの装填容器内で混合し、その後、水素下で、その攪拌(800RPM)反応混合物に15分かけて圧送した。この有機リチウムの装填の終わりに、攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力はピーク圧力の19PSIGから終点圧力の14PSIGに降下した。触媒形成の過程で温度は2~3℃上昇した。最後に、30gの無水エチルベンゼンに溶解した3.40g(0.0293mol)のTMEDAを無水シクロヘキサンの最後の50mlの分割量と混合し、この攪拌反応混合物に圧送した。この反応器の上部空間を0PSIGに排気し、その後乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)45PSIG
に加圧した。その反応器を次に73.2℃に加熱し圧力が63PSIGに上昇した。加熱は、反応器のジャケットを流れる80℃の油によって行った。反応温度が73℃に達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、1058.7g(10.17mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端)を通して、反応温度を80℃に制御することを試みながら116分かけて、11PSIGの水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は82.8℃に達した。レギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、
一定またはほぼ一定であると思われた。
【0236】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマ
ー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの5wt%H2SO4水溶液を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。このよう
にして、反応混合物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。この装填容器及び反応器をその後300mlの無水シクロヘキサンですすぎ、そのすすぎ液を洗浄用反応器に移送し、粗クエンチ反応混合物と合わせた。
【0237】
実施例51として、10PSIGのH2を使用した以外は、試薬の量り分け及び条件の
再現におけるわずかな実験間のばらつきの範囲内と等しい装填ならびに条件で上記の工程を繰り返した。ほぼ10%のH2活性の低下にもかかわらず、水素の取り込みは、実施例
50に対して実施例51でなお速かった。
【0238】
クエンチされていない反応混合物(実施例50及び51)の移送の過程で、個々の反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。これらのサンプルはわずかにピンクからウォーターホワイト、すなわち、本質的に無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。いずれの色も、それら混合物を穏やかに振盪/回転させることで、またはさもなければ空気と接触させることで消色した。これらのサンプルをこれら粗反応混合物をクエンチすることなくGPC分析に供した。エチルベンゼンを除くが二量体含量を含むGPC分析は、以下の通りであった:実施例50Mn:525、Mw:804、Mz:1165、PD:1.449、σn=383、nα3=2.075、及びMw10%高=
2048、実施例51Mn:506、Mw:758、Mz:1080、PD:1.425、
σn=357、nα3=2.001、及びMw10%高=1844。
【0239】
上からの標準的ワークアップで2613gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を含むMn
519、Mw:783、Mz:1122、PD:1.452、σn=370、nα3=2.0
274、及びMw10%高=1922のGPC MWDを有する1997.5のHMAP
S分布が得られた。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、2.38GPC面積%のスチレン二量体含量ならびにMn:601、Mw:836、Mz:1142、PD:
1.391、σn=326、nα3=1.923、及びMw10%高=1955のGPC MWDを有する1800.0gのHMAPS分布が得られた。
【0240】
実施例52~59
実施例52~59は、HMAPS工程が、エチルベンゼンを含めた追加の芳香族溶媒の恩恵を受けずに実行することができることを実証する。これらの実施例は、HMAPS工程が、ほぼ同じHMAPS分布を様々な工程条件下で再現性良く製造するという点から、極めて頑健であるということを十分に実証する。実施例56~59は、促進剤であるTMEDAの使用によってもたらされるいかなる工程的な利益も、水素圧力の増加で補うことができ、それにより、促進剤の使用を低減し、除去することさえできることを実証する。この一連の高収率の実施例(ポリマー収率が約96~約97%の収率、二量体を除去したポリマーの収率約86%~約87%)は、非対称性の値が約1.67~2.00の範囲のHMAPS分布及び二量体を除去した非対称性の値が約1.63~1.82の範囲のHMAPPS分布を製造した。実施例58及び59は、これらの実施例の代表例であると見なされる。これら2つの実施例の実施において、触媒の熟成がより活性が高く好ましい触媒を与えることが不用意に発見された。
【0241】
実施例58及び59
[DMEA-4Li62触媒用の80℃でのフルスケールモノマー供給量の代表例
無水シクロヘキサン500ml(389.5g)のうちの200mlを、よくすすいだ反応器に37℃にて乾燥水素(16PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒
(800RPM、上記配置IVで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め2.55g(0.0285mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン、上記500mlのシクロヘキサンの総量500mlのうちの70mlから生成した溶液を装填した。次に、上記500mlから170mlの無水シクロヘキサンにさらに溶解した2.0Mのn-ブチルリチウム21.47ml(0.0429モル)をこの装填容器に移送し、その後、水素下で、その攪拌(800RPM)反応混合物に15分かけて圧送した。この有機リチウムの装填の終わりに、攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力はピーク圧力の19PSIGから終点圧力の16PSIGに降下して戻った。触媒形成の過程で温度は2~3℃上昇した。この反応器の上部空間を0PSIGに排気し、その後乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)45PSIGに加圧した。その反
応器をその後63PSIGまで加圧を増加させながら73.2℃に加熱した。加熱は、反応器のジャケットを流れる80℃の油によって行った。反応温度が73℃に達した時点でスチレンモノマーの供給を開始し、1061.0g(10.19mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端)を通して、反応温度を80℃に制御しながら117分かけて、15~17PSIGの水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は81.7℃に達した。レギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、一定またはほ
ぼ一定であると思われた。
【0242】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)ならびに予め3
00mlの5wt%H2SO4水溶液及び前の実験の溶媒除去由来のワイプ式薄膜蒸発器から回収した≒250gのエチルベンゼンを装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。
このようにして、反応混合物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。この装填容器及び反応器をその後200mlの無水シクロヘキサンですすぎ、そのすすぎ液を洗浄用反応器に移送し、粗クエンチ反応混合物と合わせた。
【0243】
実施例59として、触媒を3時間熟成し、その結果としてH2を14PSIGに下げて
調節し実施例58の取り込みと合わせたこと以外は、試薬の量り分けにおけるわずかな実験間のばらつきの範囲内と等しい装填及び条件で上記の工程を繰り返した。しかしながら、製造されたHMAPS分布は、実施例59が実施例58よりも非対称性が低かったこと、すなわち、非対称性がそれぞれ、1.826対1.928であったこと以外はほぼ同じであったことは明らかである。
【0244】
クエンチされていない反応混合物(実施例58及び59)の移送の過程で、個々の反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。これらのサンプルはわずかにピンクからウォーターホワイト、すなわち、本質的に無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。いずれの色も、それら混合物を穏やかに振盪/回転させることで、またはさもなければ空気と接触させることで消色した。これらのサンプルをこれら粗反応混合物をクエンチすることなくGPC分析に供した。エチルベンゼンを除くが二量体含
量を含むGPC分析は、以下の通りであった:実施例58Mn:570、Mw:890、Mz:1276、PD:1.434、σn=427、nα3=1.928、及びMw10%高=
2168、実施例59Mn:584、Mw:909、Mz:1286、PD:1.415、
σn=436、nα3=1.826、及びMw10%高=2166。
【0245】
上からの標準的ワークアップで2487gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を除くMn
690、Mw:970、Mz:1328、PD:1.406、σn=440、nα3=1.8
89、及びMw10%高=2263のGPC MWDを有する2094.3g(洗浄にお
けるWFE由来の再生エチルベンゼンの二量体含量で補正した場合2052g)のHMAPS分布が製造された。反応の過程で生じた二量体を含む全分布は、統計的に補正された場合、以下のように推定される:Mn:612、Mw:919.18、Mz:1294、P
D:1.406、σn=434、nα3=1.8791。第二のWFE操作(0.1~0.
3mmHgの真空、160℃、最大速度の65%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、0.48GPC面積%のスチレン二量体含量ならびにMn:704、Mw:984、Mz:1334、PD:1.398、σn=444、nα3=1.815、及びMw
0%高=2268のGPC MWDを有する1825.7gのHMAPS分布が得られた。
【0246】
第三のWFE操作を行い、このHMAPS PS分布の微細構造を決定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した1825gの生成物分布のうち125gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(0.13mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、22gのスチレンオリゴマーが得られた。そのGC分析で、連鎖の99.97%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、もしあるとしてもわずかの連鎖が、水素化リチウムの脱離が生じて不飽和鎖の末端が生成した(FWi-2)微細構造であると
推定されたことが示された(図16参照)。真の(FWi-14)材料のスパイキング実験で、この組成物がこの微細構造を含まないことが明確に証明された。
【0247】
実施例60~67
実施例60~67は、HMAPS工程が、先行実施例から得られた乾燥(水分<10ppm)再生溶媒で行うことができることを実証する。溶媒の再生利用は、洗浄用反応器のストリップ及び最初のWFE操作由来のシクロヘキサン及びエチルベンゼンを合わせ、水の共沸蒸留に続いて、1気圧で約140℃のポット温度への簡単な蒸留を伴う。さらなる乾燥は、活性化分子篩を用いて達成される。実施例61及び62ならびに比較的程度は小さいが実施例60及び67で使用した好ましいとは言えない工程条件に起因して、これらの実施例は、生成されたMWD及び供給の最後の8~13%の間のH2の取り込みの低下
からも明らかなように、モノマー供給の終わりに高分子量の材料を製造した。
【0248】
実験のうち実施例61が最も好ましくない結果をもたらし、Mw10%高が2629ダ
ルトンの高分子量テールを生じた。実施例61に関しては、より少ない触媒負荷を用いた結果としてあまり好ましくない相対的スチレン対触媒供給比の下で、水素の物質移動は供給の最後の13%の間に非効率的になった。実施例60は、触媒が1時間熟成され、溶媒が再生エチルベンゼンを含有したこと以外は実施例58(熟成なし)及び59(3時間熟成)に匹敵する。最初は、この触媒は実施例58または59のいずれよりも活性が高いと思われたが、スチレン供給の最後の8分間に触媒活性が低下し、わずかに高い分子量を生じたようであった。実施例61に関しては、触媒負荷を20%低減するための試みがなされたが、このことが、供給の最後13分間で水素の取り込みが遅くなった際に高分子量のテールをもたらした。本発明の範囲をさらに確立する過程で(実施例62~67)、混合
の減少(標準の1130rpmに対して1000rpm)は:i)温度の上昇、及び/またはii)合計モノマー供給量の減少、及び/またはiii)モノマー供給速度の低下、及び/またはiv)水素圧力の増加、v)触媒熟成時間の増加によって相殺され得ることが分かった。これらの実験の結果を表XIIに示す。実施例64及び65は代表例と見なされる。
【0249】
実施例64及び65
先行実施例から回収された再生溶媒を用いた[DMEA-4Li62触媒用の90℃でのフルスケールモノマー供給量の代表例
再生無水溶媒[79.4wt%シクロヘキサン(CH)、20.6wt%エチルベンゼン(EB)]の合計320ml(252.65g)のうちの220mlを、よくすすいだ反応器に37℃にて乾燥水素(16PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒
(800RPM、上記配置IVで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、予め2.55g(0.0285mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン及びさらに上記再生溶媒の50mlと合わせた20mlのシクロヘキサンから生成した溶液を装填した。次に、その無水シクロヘキサン120mlに溶解した2.0Mのn-ブチルリチウム21.47ml(0.0429モル)をこの装填容器に移送し、さらに上記再生溶媒50mlと合わせた(逆混合は極めて少ない)。この未混合の溶液を次に水素下で、その攪拌(800RPM)反応混合物に15分かけて圧送した。この有機リチウムの装填の終わりに、攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力はピーク圧力の19PSIGから終点圧力の16PSIGに降下して戻った。触媒形成の過程で温度は2~3℃上昇した。この反応器の上部空間を0PSIGに排気し、その後乾燥H2にて(
表面下供給ラインを通して)45PSIGに加圧した。その反応器を、その後加圧を63PSIGに増加させながら72℃に加熱し、さらに72PSIGに加圧した。この加熱は、反応器のジャケットを流れる80℃の油によって行い、すなわち、この反応器を72℃及び72PSIGに60分間保持し、その後17PSIGに排気した。この反応器をその後82℃に加熱し、加圧は必要に応じて排気することにより17PSIGに維持した。この加熱は、反応器のジャケットを流れる90℃の油によって行い、すなわち、この反応器を82℃及び17PSIGに75分間保持し、その時点でスチレンモノマーの供給を開始し、1015.0g(9.75mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端)を通して、反応温度を80℃に制御しながら119分かけて、13~15PSIGの水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は81.7℃に達した。レギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、一定またはほぼ一定であると思われた。
【0250】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)ならびに予め3
00gのH2Oに溶解された5.13gの酢酸溶液300ml及び前の実験の最初の溶媒
除去から予め回収された300の再生溶媒を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した
。このようにして、反応混合物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。この装填容器及び反応器をその後200mlの再生溶媒ですすぎ、そのすすぎ液を洗浄用反応器に移送し、粗クエンチ反応混合物と合わせた。
【0251】
実施例65として、1035.8gのスチレンを121分かけて供給したこと、触媒を
72℃で34分間及び82℃で26分間熟成したこと以外は、試薬の量り分けにおけるわずかな実験間のばらつきの範囲内と等しい装填ならびに条件で上記の工程を繰り返した。製造されたHMAPS分布は、GPC分析の実験誤差の範囲内にほぼ等しかったことは明らかである。
【0252】
クエンチされていない反応混合物(実施例64及び65)の移送の過程で、個々の反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。これらのサンプルはわずかにピンクからウォーターホワイト、すなわち、本質的に無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。いずれの色も、それら混合物を穏やかに振盪/回転させることで、またはさもなければ空気と接触させることで消色した。これらのサンプルをこれら粗反応混合物をクエンチすることなくGPC分析に供した。エチルベンゼンを除くが二量体含量を含むGPC分析は、以下の通りであった:実施例64Mn:550、Mw:835、Mz:1173、PD:1.405、σn=396、nα3=1.832、及びMw10%高=
1982、実施例65Mn:558、Mw:848、Mz:1188、PD:1.401、
σn=402、nα3=1.805、及びMw10%高=2003。
【0253】
上からの標準的ワークアップで2487gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、二量体を含むMn
562、Mw:848、Mz:1186、PD:1.509、σn=401、nα3=1.8
11、及びMw10%高=2002のGPC MWDを有する1947gのHMAPS分
布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、160℃、最大速度の65%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、0.13GPC面積%のスチレン二量体含量ならびにMn:695、Mw:935、Mz:12284、PD:1.
345、σn=408、nα3=1.681、及びMw10%高=2064のGPC MWDを有する1716gのHMAPS分布が得られた。
【0254】
第三のWFE操作を行い、このHMAPS PS分布の微細構造を決定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した1825gの生成物分布のうち125gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(0.13mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、22gのスチレンオリゴマーが得られた。そのGC分析で、連鎖の99.93%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、もしあるとしてもわずかの連鎖が、水素化リチウムの脱離が生じて不飽和鎖の末端が生成した(FWi-2)微細構造であると
推定されたことが示された(図17参照)。
【0255】
実施例68~74
実施例68~74は、HMAPS工程が、100%乾燥された(水分<10ppm)先行実施例から得られた再生溶媒で行うことができることを実証する。上記の通り、溶媒の再生利用は、洗浄用反応器のストリップ及び最初のWFE操作由来のシクロヘキサン及びエチルベンゼンを合わせ、水の共沸蒸留に続いて、1気圧で約140℃のポット温度への簡単な蒸留を伴う。さらなる乾燥は、活性化分子篩を用いて達成される。上記と同様、使用した好ましいとは言えない工程条件、すなわち、使用した反応器形状に対して<1000RPMでの混合に起因して、実施例68及び72で、ならびに比較的程度は小さいが実施例67及び70は、生成されたMWD及び供給の最後の8~13%の間のH2の取り込
みの低下からも明らかなように、モノマー供給の終わりに高分子量の材料を製造した。実施例68及び69は、使用した溶媒を、装填の前に2.0Mのn-ブチルリチウムをさらに希釈するように変更したこと以外は、上記からの実施例66及び67とほぼ同じであるということに留意することが重要である。実施例66及び実施例67では、未使用の無水シクロヘキサンを、有機リチウム試薬を最初に溶解することに用いた。一方実施例68及
び69では、93%のシクロヘキサン及び7%のエチルベンゼンからなる再生溶媒を用いた。この装填プロトコルは、より低い水素圧力(それぞれ、17~19PSIGに対して13~14PSIG)でのわずかに低い分子量分布(Mn=550及びMn=558[それぞれ、実施例64及び65]に対してMn=532及びMn=533[それぞれ、実施例68及び69])からも明らかなように、意外にも、さらにいっそう活性が高い触媒を形成した。実施例70~73は、ある程度のエチルベンゼンでの最初の希釈(この工程では促進剤を使用しない)によって生じた触媒の活性は、重合の過程で撹拌機のRPM、ひいては混合の量を低下させることによって抑制され得る。しかしながら、これは、スチレン供給の終了時に高分子材料を生じる傾向があり、RPM及び/または水素圧力を増加させることで、及び/または供給スチレンモノマーの合計量を減少することによって相殺され得ることから、あまり好ましくなかった。
【0256】
実施例72及び73は、エチルベンゼンをより多く存在させることが、わずかに減少させたRPMで触媒を形成するよりも影響が少ないことを実証する。従って、この触媒は、概して、本発明の反応器形状での触媒形成の過程での凝縮相への効果的な水素の物質移動に十分である800RPMで形成される。実施例73に関しては、触媒成分を500RPMの混合で合わせるが、これは800に比べて十分ではないが、意外にも、さらにいっそう活性が高い触媒の形成に明らかに適切である。実施例74では、200RPM及び2PSIGの水素を用いて触媒を形成した。この触媒は、最初極めて活性が高く、9~11PSIGで実行する必要があったが、その水素活性でもH2の取り込みはとても大きかった
。驚くべきことに、この触媒は最初極めて活性が高かったにもかかわらず、次第に活性が減少し、低分子量連鎖が多いとともにMw10%高が3323ダルトンの極めて非対称性の分布を生じた。従って、[DMEA-]Li及びn-ブチルリチウムから形成される錯
体は、触媒を極低温条件より十分に高い温度で形成する場合には、それが形成されるにつれて還元することが望ましい。理論に拘束されることを望むものではないが、混合及び水素の物質移動を制御することで、還元率を制御することが、触媒を予備調整し、炭化水素溶液中で最も活性の高い形態の触媒の凝集体を形成することを助けると考えられる。従って、実施例72及び73は、この一連の実施例(68~74)の代表例と見なし、以下に詳細に説明する。
【0257】
実施例72及び73
先行実施例から回収された再生溶媒を100%用いた[DMEA-4Li62触媒用の90℃でのフル及び90%スケールモノマー供給量の代表例
再生無水溶媒[85.0wt%シクロヘキサン(CH)、15.0wt%エチルベンゼン(EB)]の合計500ml(392g)のうちの220mlを、よくすすいだ反応器に37℃にて乾燥水素(16PSIG H2)雰囲気下で装填した。この攪拌溶媒(80
0RPM、上記配置IVで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、2.54g(0.0285mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン及び20mlの上記再生溶媒から生成した完全に混合した溶液を装填し、これに対して、さらに50mlの再生溶媒の分割量を、当該装填容器で合わせる際にほとんど混合せずに加えた。次に、再生溶媒120mlにさらに溶解した2.0Mのn-ブチルリチウム21.47ml(0.0429モル)をこの装填容器に移送し、さらに上記再生溶媒50mlと合わせた(逆混合は極めて少ない)。この未混合の溶液を次に水素下で、その攪拌(800RPM)反応混合物に15分かけて圧送した。この有機リチウムの装填の終わりに、攪拌速度を1130RPMに上げたところ、反応器の圧力はピーク圧力の19PSIGから終点圧力の16PSIGに降下して戻った。触媒形成の過程で温度は2~3℃上昇した。この反応器の上部空間を0PSIGに排気し、その後乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して
)45PSIGに加圧した。その反応器を次に加圧を63PSIGに増加させながら72℃に加熱しさらに72PSIGに加圧した。この加熱は、反応器のジャケットを流れる80℃の油によって行い、すなわち、この反応器を72℃及び72PSIGに150分間保
持し、その後17PSIGに排気した。反応器のジャケットを流れる90℃の油によってこの反応器をその後80℃に加熱するとともに圧力は20PSIGに上昇した。150分間の触媒熟成の終わりに、RPMを960回に調節し、スチレンモノマーの供給を開始し、1000.0g(9.60mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端)を通して、反応温度を91℃に制御しながら122分かけて、15~17PSIGの水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は90.5℃に達した。レギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2
のモルを単位とした水素の取り込みは、一定またはほぼ一定であると思われた。この実験の終わりにRPMを975に調節したところ、水素の圧力は18PSIGに上昇した。
【0258】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)ならびに予め3
00gのH2Oに溶解された5.13gの酢酸の水溶液300ml及び前の実験の最初の
溶媒除去から予め回収された300の再生溶媒を装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送
した。このようにして、反応混合物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。この装填容器及び反応器をその後200mlの再生溶媒ですすぎ、そのすすぎ液を洗浄用反応器に移送し、粗クエンチ反応混合物と合わせた。
【0259】
実施例73として、911.3gのスチレンを111分かけて水素圧力14PSIGに対して供給し、触媒成分を800RPMではなく500RPMでの混合で合わせたこと以外は、試薬の量り分けにおけるわずかな実験間のばらつきの範囲内と等しい装填ならびに条件で上記の工程を繰り返した。供給量を減少させたことで、供給の終わりにRPMまたは水素圧力を増加させる必要がなかった。製造されたHMAPS分布は、実施例72が少量の高分子量組成物を供給の終わりに生じたこと以外は、極めて類似していたことは明らかである。
【0260】
クエンチされていない反応混合物(実施例72及び73)の移送の過程で、個々の反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。これらのサンプルはわずかにピンクからウォーターホワイト、すなわち、本質的に無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。いずれの色も、それら混合物を穏やかに振盪/回転させることで、またはさもなければ空気と接触させることで消色した。これらのサンプルをこれら粗反応混合物をクエンチすることなくGPC分析に供した。エチルベンゼンを除くが二量体含量を含むGPC分析は、以下の通りであった:実施例72Mn:485、Mw:747、Mz:1133、PD:1.517、σn=356、nα3=2.462、及びMw10%高=
1965、実施例73Mn:480、Mw:710、Mz:1009、PD:1.421、
σn=332、nα3=2.025、及びMw10%高=1732。
【0261】
上からの標準的ワークアップで2270gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で1786.5gのHMAPSが得られ、これをさらに第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、160℃、最大速度の65%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)でストリップに供し(分析せずに)、0.13GPC面積%のスチレン二量体含量ならびにMn:519
、Mw:817、Mz:1149、PD:1.382、σn=365、nα3=2.285、
及びMw10%高=1998のGPC MWDを有する1574gのHMAPS分布を得
た。
【0262】
実施例42~74(合計32回の実験)の終了後、反応器を、窒素を吹き込んで有機物がなくなった再生溶媒1リットルですすぎ、その後検査のために開放した。この反応器は、概して極めて清浄であり、ポリマーを含まず、触媒を形成するために用いた溶媒の体積を示すレベルでその壁及び表面に痕跡程度の固体があるのみであったことが分かった。この反応器を湿った布に続いてメタノールをしみこませた布で拭い清浄にした。モノマーの0.02”I.D.の供給先端は、長さが同じでI.D.≒0.45”のものと交換した。この反応器を、ジャケットを100℃の油で加熱しながら窒素流下で密封乾燥した。
【0263】
実施例75~79
これらの実施例(75~79)のすべてにおいて、触媒は500RPMの混合、18~21PSIGの水素圧力で形成し、さらに72℃及び72PSIGの水素圧力で200~240分間熟成した。実施例75~77は、0.045”I.D.のモノマー供給ラインの先端、80℃及び1130RPMの混合、異なるスチレン供給量、ならびに異なる再生溶媒の装填及び組成を使用した。3つの実験のうち、実施例77のHMAPS工程が好ましかった。実施例78は、0.045”I.D.のスチレン供給の先端及び未使用の無水メチルシクロヘキサン(MCH)溶媒を使用したため、この実験の過程で有機リチウム試薬のエチルベンゼンでの最初の希釈はなかった。実施例75~78の終了後、その反応器を再度窒素でフラッシュして有機物をパージし、検査のために開放した。この反応器は清浄であり、触媒形成の過程で反応器の体積を示すラインにいかなる固体もないことが分かった。触媒形成の過程で使用されるRPMが低いほど、触媒を形成する反応混合物の飛散が少ないという利点ももたらし得るということ、及びそれにより、露出及び加熱された反応器表面の溶媒の蒸発分離に起因する触媒成分の沈着を減少させ得ることが推測される。実施例75~78の終了後、あまり好ましくない0.045”I.D.のスチレン供給の先端を除去し、好ましい0.02”のスチレン供給の先端と交換し、その後、このシリーズの最後の実験(実施例79)に備えた。MCH及びエチルベンゼン中で生じた触媒を使用した実施例79を以下に詳細に説明する。
【0264】
実施例79
混合されたエチルベンゼン及びメチルシクロヘキサン溶媒での[DMEA-4Li62触媒用の90℃でのフルスケールモノマー供給量の代表例
無水メチルシクロヘキサン(MCH)溶媒の合計320ml(246.4g)のうちの220を、よくすすいだ反応器に37.6℃にて乾燥水素(18PSIG H2)雰囲気
下で装填した。この攪拌溶媒(500RPM、上記配置IVで4つの傾斜羽根タービン)に装填容器を通して窒素の陽圧により、2.55g(0.0286mol.)のN,N-ジメチルエタノールアミン及び20mlのエチルベンゼンから生成した完全に混合した溶液を装填し、これに対して、MCHの50mlの分割量を、当該装填容器で合わせる際にほとんど混合せずに加えた。次に、無水エチルベンゼン160mlにさらに溶解した2.0Mのn-ブチルリチウム21.52ml(0.0430モル)をこの装填容器に移送し、さらにMCH50mlと逆混合がほとんどなく合わせた。この未混合の溶液を次に水素下で、その攪拌(525RPM)反応混合物に20.75分かけて圧送した。この有機リチウムの装填の終わりに、攪拌速度を1050RPMに上げたところ、反応器の圧力はピーク圧力の21PSIGから終点圧力の20PSIGに38.8℃で降下して戻った。この反応器の上部空間をその後乾燥H2にて(表面下供給ラインを通して)48PSIGに
加圧した。その反応器を次に加圧を59PSIGに増加させながら73.2℃に加熱し、さらに75PSIGに加圧した(反応器への有機リチウムの装填を完了してから60分が経過していた)。この加熱は、反応器のジャケットを流れる80℃の油によって行い、すなわち、この反応器を73.9℃及び75PSIGに205分間保持し、その後15PS
IGに排気した。従って、有機リチウム試薬のエチルベンゼン溶液の反応器への装填を始めてから約4時間が経過していた。この時点で混合を1130RPM回に調節し、スチレンモノマーの供給を開始し、1023.9g(9.83mol.)のスチレンを供給した。スチレンは、表面下供給ライン(0.02”IDの先端)を通して、反応温度を82.5℃に制御しながら113分かけて、11~15PSIGの水素の上部圧力に対して供給した。モノマー供給の開始から10分以内に、反応器の温度は83.6℃に達した。レギュレータへの弁を閉め、5PSIG降下するのに要する時間を測定して水素の取り込みを定期的に監視した。このようにして、圧力が1PSIG降下(-1)するのに必要な秒単位の時間を記録した。この値が推定された反応器の上部空間に応じて調整された場合、スチレン供給1モル当たりのH2のモルを単位とした水素の取り込みは、一定またはほぼ一
定であると思われた。
【0265】
スチレン供給の終了時、アルミナカラム(塩基性アルミナ)を含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlのMCHでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。クエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)ならびに予め380gのH2Oに溶解された6gの酢酸及び14gのH2SO4の水溶液400mlならびに未使用のMCH300mlを装填した洗浄用容器にH2の陽圧で移送した。このようにして、反応混合
物をこの洗浄用反応器内で注意深くクエンチした。この装填容器及び反応器をその後200mlの再生溶媒ですすぎ、そのすすぎ液を洗浄用反応器に移送し、粗クエンチ反応混合物と合わせた。
【0266】
クエンチされていない反応混合物の移送の過程で、この反応混合物から10mlのサンプルを分析用に採取した。これらのサンプルはわずかにピンクからウォーターホワイト、すなわち、本質的に無色及び光に対して透明で、沈殿または懸濁した固体がなかった。いずれの色も、それら混合物を穏やかに振盪/回転させることで、またはさもなければ空気と接触させることで消色した。これらのサンプルをこれら粗反応混合物をクエンチすることなくGPC分析に供した。エチルベンゼンを除くが二量体含量を含むGPC分析は、以下の通りであった:Mn:511、Mw:767、Mz:1096、PD:1.429、σn=362、nα3=2.020、及びMw10%高=1871。
【0267】
上からの標準的ワークアップで1000gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大速度の60%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、Mn:542、Mw:804、Mz:1142、PD:1.483、σn=377、nα3=2.009、及びMw
10%高=1955のGPC分析を有する961gのHMAPSが製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、160℃、最大速度の65%のワイパー速度、1.0リットル/時間の供給)で、1.3GPC面積%のスチレン二量体含量ならびにMn:627、Mw:855、Mz:1163、PD:1.364、σn=378、nα3=1.999、及びMw10%高=1995のGPC MWDを有する871gのHMAPS
分布を得た。
【0268】
実施例42~79で調製したHMAPS分布を、をPCT公開番号:第WO2010/127091号(US 8,802,787 B2)の工程技術に従って臭素化し、臭素化アニオン連鎖移動ビニル芳香族ポリマー(Br-ACTVAP)を形成した。これらの臭素化ポリマーの物性の平均及び標準偏差を、実施例14~15の生成物分布を混合ならびにその後ストリップすることにより形成されたBr-ACTVAPの特性とともに以下に記載する。その二量体を除去した組成物は、Mw=731及びPDn=1.38を有していた。これらの組成物をさらに耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の高分子難燃剤として
試験したところ、色(YI)、アイゾット衝撃、熱変形温度、及びVICAT軟化温度を含め、優れた全体的特性を有する難燃(1/8”及び1/16”でUL94 V0)HIPS配合物を与えることが分かった。
【表5】
【0269】
比較例
以下に記載され、上記図12、13、及び14に示される、連鎖移動剤がエチルベンゼンである先行技術のアニオン連鎖移動重合法を窒素雰囲気下でカリウム系触媒とともに用いた比較例80~83では、これらの先行技術が、相異なるあまり望ましくない微細構造の複雑なポリマー鎖分布につながる好ましくない競合する重合段階(すなわち、図1及び2に示す反応経路の段階)に大きく悩まされることを実証する。実施例25~27、39、及び40において、我々は、LOXKH、SASH及びHASH、カリウムならびにカリウム及びナトリウム系触媒系、すなわち、本発明の水素媒介アニオン連鎖移動工程技術は、(水素を含まない)先行技術同様、複雑な複数のポリマー連鎖長分布を製造することを実証している。かかるカリウム及びナトリウム系の塩類似水素化物工程の生成物分布組成物間の差は、主に、異なる相対的比率の所望の「ヘッドトゥーテール」及び好ましくない「テールトゥーヘッドトゥーテール」ならびに開裂微細構造にある。
【0270】
予想外であり、有益なことに、実施例1~24、28、29、及び42~79に記載の通り、LOXLiH及び/またはLOXMgH2の凝集体を触媒として使用する本発明の
工程技術は、大幅に改善された全体的なポリマー微細構造を与える。すなわち、LOXLiH及びLOXMgH2触媒は、ほとんど最も望ましい「ヘッドトゥーテール」の微細構
造のオリゴマー鎖のみからなるポリスチレン分布を製造する。驚くべきことに、これらの試薬及び本発明の触媒は、どの点から見ても、好ましくない競合する経路をほぼすべて除去し、高分子臭素化難燃剤等のポリマー製品の形成において有用であることがすでに証明されている分子量分布の範囲の最も望ましいポリマー微細構造(すなわち、上記ポリマー構造1)の連鎖移動分布のみを提供する。
理論に拘束されることを望むものではないが、アニオン連鎖移動重合条件下でLOXLiH及び/またはLOXMgH2以外の触媒が使用される場合、顕著な競合する副反応経路
が、種々の好ましくない微細構造を有する追加の異性体オリゴマー鎖の分布を生じさせる(図1参照)。図1の異性化経路は、開裂/重合を伴うさらなる競合する経路を与える。これらの開裂/重合工程は:(A)もう1つのメチル(-CH3)炭素を有するオリゴマ
ー鎖構造(14ダルトンの増加)、及び/または(B)メチル(-CH3)炭素が1つ少
ないオリゴマー鎖構造(14ダルトンの減少、図2参照)をもたらす。このような競合する重合反応経路は、通常、ポリマー鎖の骨格(すなわち、ポリマー微細構造)内に4級炭素原子をもたらす。かかる4級炭素原子は、ポリマー分布を、ブレンステッド酸(例えば、スルホン化)またはルイス酸(例えば、ハロゲン化)のいずれかを含む芳香族求電子置換触媒との親和性が低いものにする。
【0271】
比較例80
WO2010065468A8の比較例46、EPO 741147のエチルベンゼン連鎖移動組成物からの低分子量オリゴマーの単離
WO2010065468A8の実施例46で保持された、水洗後の生成物の混合物の150mlのサンプルを、クーゲルロール蒸留装置にて、減圧下で注意深く濃縮した。そのシクロヘキサン溶媒及びエチルベンゼン連鎖移動剤をポリマーから、終点条件のクーゲルロールオーブンでの150℃及び管球内での1.0mmHgの真空まで留去した。溶媒を含む受器を取り除いて新しい受器と交換し、オーブンでの最終温度220℃及び管球内での<0.1mmHgの真空まで蒸留を続けた。この蒸留は、受器内に凝縮物の証拠が確認できなくなるまで続けた。受器の内容物を塩化メチレンに溶解し、ガスクロマトグラフィーで分析した。GC分析で、連鎖の93%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、連鎖の3.4%が好ましくない「テールトゥーヘッドトゥーテール」の4級炭素結合を有し、連鎖の3.2%が開裂した(FWi-14)微細構造を有することが示された
図12参照)。
【0272】
比較例81
WO2008154453のACTVAP組成物からの低分子量オリゴマーの単離とオリゴマーの微細構造分析
ACTVAP組成物をスチレンから調製した。ここでは連鎖移動剤としてトルエンの代わりにエチルベンゼンを用いた。このアニオン連鎖移動工程は、WO2008154453に記載の12リットルのガラス製重合反応器にて、この出願の実施例8と同様に行った。従って、1905gのスチレン(18.29モル)を、13.74g(0.1224モル)のカリウムtert-ブトキシド、71.51g(0.6154モル)のTMEDA,及び63.12(0.1262モル)の2Mのn-ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液から4517.07g(42.55モル)に形成した反応混合物に供給した(110分、反応温度70℃)。ワークアップ及びエチルベンゼンの除去後(WFE195℃、60mmHg)、GPC MWD:Mn:266、Mw:301、Mz:357、PD:1.1
33を有する2765.7gのACTVAPが回収された。第二のWFE操作(195℃
25mmHg)で、GPC MWD:Mn:297、Mw:334、Mz:385、PD
:1.126を有する2070gのACTVAPが得られた。最初の2070gのうちの1106gでの第三のWFE操作(135℃ 0.5mmHg)で、この工程の主な反応生成物であるエチルベンゼンのスチレンへのモノ付加物(ヘッドトゥーテールのスチレン二量体と構造的に等しい)を本質的に含まない組成物909.25gが得られた。第四のWFE操作(199.5℃、0.12mmHg)で449.02gの蒸留物が得られた。GC分析で、連鎖の91%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、連鎖の8.9%が好ましくない「テールトゥーヘッドトゥーテール」の4級炭素結合を有し、連鎖の0.22%が開裂した(FWi-14)微細構造を有することが示された(図13参照)
【0273】
比較例82
窒素下であること、すなわち、水素がないことを除いて実施例40に等しい工程とオリゴマーの微細構造分析
無水エチルベンゼン356g(3.35モル)のうちの256gを反応器に装填し、その後乾燥窒素雰囲気下で65℃に加熱した。この攪拌溶液(1000RPM、ツイン傾斜羽根、配置Iの羽根配列)に、装填容器を通して予め4.57g(0.0407mol.)のカリウムt-ブトキシド、44g(0.41mol.)のエチルベンゼン、及び20.83g(0.179mol.)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、上記の356gの無水エチルベンゼンの50g分でフラッシュした。次に、20.34ml(0.0407モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムを、装填容器を通して反応容器に移送し、続いて上記のエチルベンゼンの50gの分割量を移送した。攪拌を1045RPMに維持しながら、800g(7.68mol.)のスチレンを、表面下供給ライン(0.01”IDの先端、5.2ft/s)を通して、温度を70℃に制御しながら183分かけて、窒素の上部圧力に対して供給した。供給中、反応器の圧力は0PSIGから4PSIGに上昇し、これをその後排気して0PSIGに戻したため、残りの供給の間は反応器を鉱油バブラーに排気した。スチレン供給の終了時、アルミナカラムを含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。
【0274】
このクエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの脱酸素水をシクロヘキサン500mlとともに装填した洗浄用容器(N2雰囲気)
にN2の陽圧で移送した。クエンチされていない反応混合物の移送の過程で、この反応混
合物のサンプル10mlを分析用に採取した。このサンプルは、先に観察された他のすべてのACTVAP及びACTSP工程に特徴的な暗い黒赤(ブラックチェリー)色であり、光に対して透明ではなかった。このサンプルは、メタノール滴の添加によってクエンチされ、これにより直ちに暗赤色が消色され、ガスの生成はなかった。この粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:Mn:567、Mw:908、Mz:133
1、PD:1.601、σn=440、nα3=2.048。
【0275】
上記の標準的なワークアップ及び溶媒除去手順で1240.2gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給にて操作)で、Mn
:580、Mw:904、Mz:1286、PD:1.559、σn=433、nα3=1.
868のGPC MWDを有する943.1gのACTVAP分布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.5℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給)で、0.70GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:707、Mw:976、Mz:1306、PD:1.380、σn=436、nα3=1.
741のGPC MWDを有する849.4gのACTVAP分布が得られた。従って、この比較例の条件と実施例40のものは使用した雰囲気以外は等しかった。明らかに、実施例40の水素媒介は、連鎖移動効率を大きく改善し、はるかに低い値のMn、Mw、及びMzのMWDを与えた。第三のWFE操作を行い、このACTVAP分布の微細構造を決
定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した849.4gの生成物分布のうち131.2gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(<0.1mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、Mn:318、Mw:338、Mz:357、PD:1.
061のMWDを有する19.07gのスチレンオリゴマーの混合物が得られた。GC分析は、連鎖の93%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有し、好ましくない「テールトゥーヘッドトゥーテール」の4級炭素結合を有する連鎖が5.0%、及び開裂した(FWi-14)微細構造を有する連鎖が2.3%であることを示した(図14参照)。
【0276】
比較例83
窒素下であることを除いて実施例40と等しい工程及び水素を用いずにn-プロピルベンゼンを用いた比較例43とオリゴマーの微細構造分析
無水n-プロピルベンゼン381g(3.18モル)のうちの281gを反応器に装填し、その後乾燥窒素雰囲気下で65℃に加熱した。この攪拌溶液(1130RPM、ツイン傾斜羽根、配置Iの羽根配列)に、装填容器を通して予め4.61g(0.0411mol.)のカリウムt-ブトキシド、50g(0.42mol.)のn-プロピルベンゼン、及び26.34g(0.179mol.)のTMEDAから生成した溶液を装填した。この装填容器及びこの反応器への移送ラインは、上記の381gの無水n-プロピルベンゼンの50g分でフラッシュした。次に、20.32ml(0.0407モル)の2.0Mのn-ブチルリチウムを、装填容器を通して反応容器に移送し、続いて上記のn-プロピルベンゼンの50gの分割量を移送した。攪拌を1131RPMに維持しながら、804g(7.72mol.)のスチレンを、表面下供給ライン(0.01”IDの先端、5.2ft/s)を通して、温度を70℃に制御しながら183分かけて、窒素の上部圧力に対して供給した。スチレンモノマーの供給中、反応器の圧力は0PSIGから9PSIGに上昇した。スチレン供給の終了時、アルミナカラムを含めた反応器へのモノマー供給ラインを50mlの無水シクロヘキサンでフラッシュした。反応器へのスチレン供給及びフラッシュは、さらなる反応熱が観察されなかった場合に完了したと見なし、通常はコイリングコイル(coiling coil)の自動制御弁の永久閉鎖によって示される。
【0277】
このクエンチされていない重合反応混合物を、予め加熱(N2雰囲気)及び予め300
mlの脱酸素水を、シクロヘキサン500mlとともに装填した洗浄用容器(N2雰囲気
)にN2の陽圧で移送した。クエンチされていない反応混合物の移送の過程で、この反応
混合物のサンプル10mlを分析用に採取した。このサンプルは、先に観察された他のすべてのACTVAP及びACTSP工程に特徴的な暗い黒赤(ブラックチェリー)色であり、光に対して透明ではなかった。このサンプルは、メタノール滴の添加によってクエンチされ、これにより直ちに暗赤色が消色され、ガスの生成はなかった。この粗クエンチ反応混合物のGPC分析は、以下の通りであった:Mn:668、Mw:1013、Mz:1
354、PD:1.517、σn=480、nα3=1.413。
【0278】
上からの標準的なワークアップ及びストリップで1908.2.2gの溶液が得られた。ワイプ式薄膜蒸発(WFE、2”ガラスPope Still、50.0mmHgの真空、140℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給にて操作)。この最初のWFE操作で、Mn:690、Mw:1017、Mz:1336、PD:1.47
5、σn=475、nα3=1.992のGPC MWDを有する939.88gのACT
VAP分布が製造された。第二のWFE操作(0.1~0.3mmHgの真空、172.
5℃、最大ワイパー速度の60%、1.0リットル/時間の供給)で、0.70GPC面積%のスチレン二量体含量及びMn:785、Mw:1066、Mz:1353、PD:1
.358、σn=470、nα3=1.245のGPC MWDを有する866.04のA
CTVAP分布が得られた。このように、この比較例の条件と比較例43のものは使用した連鎖移動剤以外は等しく、従って、それらのMWDに関してこれら組成物はほぼ同一である。
【0279】
第三のWFE操作を行い、このACTVAP分布の微細構造を決定するために低分子量オリゴマーを得た。従って、第二のWFE操作から回収した866.04gの生成物分布のうち161.4gのサンプルからオリゴマーを取り除いた(<0.1mmHgの真空、199.5℃、最大速度の85%のワイパー速度、2.0g/分の供給)。この第三のWFE操作で、16.33gのACTVAPオリゴマー混合物が得られた。GC分析は、連鎖の99.08%が所望の「ヘッドトゥーテール」微細構造を有することを示した(図9参照)。
【0280】
従って、これら3つの比較例(41~43)から、それらの形成における連鎖移動剤としてエチルベンゼンに頼る先行技術の組成物は、好ましくない微細構造のポリマー鎖のさらなる分布の生成につながる両方の連鎖異性化反応を被ることが明らかである。これら比較例ならびに本発明のLOXKH、SASH、及びHASHの実施例に示された結果は、図1及び図2に説明されるこの好ましくない経路が、カリウム及びナトリウムによって促進されることを示している。極めて驚くべきかつ有益なことに、本発明のLOXLiH及びLOXMgH2の実施例は、本発明のこれら新規な触媒が同様に本発明の水素媒介塩類
似水素化物開始重合法に用いられた場合、図1及び2の反応経路が大きく抑制され、事実上、排除さえもされることを明らかに示している。
不必要に高いレベル、すなわち、ポリマー鎖の3%より多い4級炭素は、ポリマー鎖の開始種がエチルベンゼンから生じたかスチレンから生じたかにかかわらずα-メチルベンジルアニオンArC(R)H-(R=CH3)である場合にのみ生じることに留意することが重要である。R=Hの場合のアニオンArC(R)H-(すなわち、メチルベンゼン、例
えばトルエンから生じる開始剤)に関しては、図1に類似した経路がどんなに高い頻度で起ころうと、4級炭素結合を形成することは構造的に不可能である。比較例44が示すように、RがCH3より大きなアルキル基(例えば、実施例40のCH2CH3)及び同様に
誘導的にCH3より良好な電子供与体である場合のアニオンArC(R)H-については、図1及び2の経路は大きく減少され、その結果として、4級炭素結合が連鎖の3%未満、さらに1%未満でさえある組成物を得ることができる。これは、以下の構造を調べることで明らかになるはずである。
【化7】
【0281】
以下、本発明の発見に照らして説明することができるように、図1の異性化反応、すな
わち、バックバイティング(backbiting)経路は、本質的にスチレンのリビング三量体でのみ生じることをさらに理解されたい。当業者には、リビングスチレン四量体、五量体、六量体等々が関与するバックバイティング経路は、フェニル基またはポリ(スチリル)鎖を強制的に不利な位置にし、それ故、バックバイティングが抑制されることが理解されよう。これは、上記のリビング五量体を示す化学構造から明らかであるはずである。従って、バックバイティングまたは分子内プロトン移動から生じる好ましくない連鎖異性化反応の程度は、立体電子効果によって決定される。遷移状態のまたは活性化錯体は、6個の原子(5個の炭素及び1つのプロトン)を含み、移動するプロトンに対するアルファ基が大きく強い電子供与体である場合に抑制される。驚くべきことに、アニオンに関連しているカチオンの性質が、プロトン移動反応に劇的な影響を及ぼす。従って、リビング三量体の分子内プロトン移動は、他のアルカリ金属及びアルカリ土類金属と比較して、マグネシウムによって大きく抑制され、リチウムによって本質的に排除される。従って、ナトリウム、カリウム、及びすべての他の第1族及び第2族の金属が、この好ましくない分子内プロトン移動を促進し、このバックバイティング反応があまり望ましくないポリマー微細構造の組成物を生じる。これは特に、エチルベンゼンとスチレンの組み合わせ、またはスチレン単独のいずれかから組成物を形成する場合に問題である。
【0282】
エチルベンゼンは、リチウム系の連鎖移動触媒を用いる場合に非効率的な連鎖移動剤である(例えば、エチルベンゼン、ブチルリチウム、及びTMEDAから形成される触媒、EP O 741 147の実施例Dの上の表I)。しかしながら、本発明の新規な水素媒介塩類似水素化物開始重合法と組み合わせて用いる新規な単金属リチウム触媒ならびに新規な二金属リチウム及びマグネシウム触媒は、初めて、追加の有機連鎖移動剤を含まず、極めて高い、すなわち、97%より多く、さらに99.2%より多くの所望の「ヘッドトゥーテール」のポリマー微細構造を有し、本質的にヒドリドイオン以外の他の開始種を組み込まないアニオン連鎖移動ポリスチレン分布、すなわち、ポリスチレン組成物の芳香族求電子置換反応を介したさらなる誘導体化に必要な微細構造の完全性を提供する。
【0283】
分析方法
低分子量(Mw<1600ダルトン)のMw、Mn、Mz、PD、及びMw10%高の値の観点からの分子量分布は、UV検出器、オートサンプラー、ポンプ、及び温度制御されたカラム区画を備えたViscotek TDAのモジュラー・システムを用いてGPCにより得た。用いたカラムは、Agilent Oligoporeカラム、300mm×7.5mm、品番1113-6520であった。用いた溶媒はテトラヒドロフランのHPLCグレードであった。使用した試験手順は、約0.06~0.1gのサンプルを10mLのTHFに溶解することを必要とした。この溶液の分割量を濾過し、200μLをカラムに注入する。単離された1,3-ジフェニルブタン(二量体)及び1,3,5-トリフェニルヘキサン(三量体)付加物に基づいて、分離方法はサイズ排除であり、ピークは、1,3-ジフェニルブタン、1,3,5-トリフェニルヘキサン、1,3,5,7-テトラフェニルオクタン(四量体)、1,3,5,7,9-ペンタフェニルデカン(五量体)等としてのそれらの溶出順序に準じて特定した。オリゴマー材料の個々のピークにその後理論分子量値を割り当てる。較正曲線は、これらの理論値及びそれらの対応する保持時間を用いて構築する。この較正に基づいて、全体的な分布データを計算し報告する。これらの計算は、Viscotek Omnisec、バージョン4.2.0.237ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データ収集及び処理システムによって行った。
【0284】
高分子量(Mw>1600ダルトン)のMw、Mn、Mz、及びPD値の観点からの分子量分布は、UV検出器、オートサンプラー、ポンプ、及び温度制御されたカラム区画を備えたViscotek TDAのモジュラー・システムを用いてGPCにより得た。以下の3種のAgilent Technologiesのカラムを直列で用いて分離を行った:(1)Oligoporeカラム、300mm×7.5mm、品番1113-6520
、(1)Mixed Bed E、300mm×7.5mm、品番1110-6300、及び(1)Mixed Bed D、300mm×7.5mm、品番1110-6504。用いた溶媒はテトラヒドロフランのHPLCグレードであった。使用した試験手順は、約0.06~0.1gのサンプルを10mLのTHFに溶解することを必要とした。この溶液の分割量を濾過し、200μLをカラムに注入する。単離された1,3-ジフェニルブタン(二量体)及び1,3,5-トリフェニルヘキサン(三量体)付加物に基づいて、分離方法はサイズ排除であり、ピークは、1,3-ジフェニルブタン、1,3,5-トリフェニルヘキサン、1,3,5,7-テトラフェニルオクタン(四量体)、1,3,5,7,9-ペンタフェニルデカン(五量体)等としてのそれらの溶出順序に準じて特定した。オリゴマー材料の個々のピークにその後理論分子量値を割り当てる。較正曲線は、これらの理論値及びそれらの対応する保持時間を、分子量が既知のポリスチレンの参照基準の保持時間とともに用いて構築する。この較正に基づいて、全体的な分布データを計算し報告する。上記の通り、これらの計算は、Viscotek Omnisec、バージョン4.2.0.237ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データ収集及び処理システムによって行った。
【0285】
低分子スチレンオリゴマー(二量体から六量体)の分析用のガスクロマトグラフィー方法及び条件は以下の通りである。生成物樹脂由来のワイプ式薄膜蒸留及び/またはクーゲルロール蒸留から得られたスチレンオリゴマー混合物は、Agilent Technologies DB-5 30メーター、0.25mm I.D.、25μmカラムを備えたHewlett Packard HP 6850ガスクロマトグラフを用いて分析した。オリゴマーサンプルは、塩化メチレン中2.5wt%溶液として調製し、手動で注入し(注入温度270℃)、温度プログラムを用いてヘリウムキャリアガスで分離し、炎イオン化検出器を用いてレスポンスを測った。温度プログラムは以下の通りであった:a)初期温度100℃で2分間保持、キャリアガスの流量は1.5ml/分、b)プログラム化した温度上昇、300℃まで8℃/分、キャリアガス流量2.0ml/分、c)300℃で10.0分間保持、キャリアガスの流量2.0ml/分、d)プログラム化した温度上昇、320℃まで3.0℃/分、キャリアガスの流量2.0ml/分、及びe)320℃で15.0分間保持、キャリアガスの流量2.0ml/分。データを収集し、Atlas 8.2.3クロマトグラフィーデータシステムを用いて分析した。微細構造の帰属は、オリゴマー微細構造に組み込まれたスチレンモノマー単位の数に基づいてグループ分けし(すなわち、二量体、隔てて三量体、隔てて四量体、隔てて五量体、隔てて六量体)、当該グループの合計面積カウントに基づいて正規化したオリゴマーについて単離された標準または標準の混合物に基づいて行った。さらに、オリゴマー混合物を質量分析法によって分析し、上記図1及び2の競合する好ましくない開裂重合工程から生じたオリゴマー構造の帰属をさらに裏付けた(すなわち、個別のオリゴマーでFWi=[i(104)+
2-14]ダルトン及び個別のオリゴマーでFWi=[i(104)+2+14]、ここ
でiは:1)スチレンモノマー単位の数であるか、または2)エチルベンゼンスチレン連鎖移動重合生成物の芳香環の数であり、目的の個別のオリゴマー鎖に組み込まれている)。図3~17に示されるように、微細構造分析のこのGC法の適用から明らかかつ疑う余地がないのは、組成的に関連するものの全く異なる先行技術は、極端に異なる好ましくない量のオリゴマー微細構造を最初の6種の個別のオリゴマー構造について有する組成物を与えるということである。さらに、二量体から六量体の生成物の混合物、特に三量体及び四量体のオリゴマーを分析するこの技術は、ポリマー分布全体の微細構造の完全性または純度を予測するものと見なされる。従って、分布全体の微細構造の純度は、このオリゴマー分析によって確立することができると十分考えられる。従って、好ましいLOXSH PS及びHMAPS組成物は、先行技術の組成物から、このオリゴマー試験によって、GC分析が最初の5種のオリゴマー(二量体から六量体)にわたって実施されるか三量体及び四量体にのみ実施されるかにかかわらず、容易に識別される。かかる微細構造の純度は、先行技術よりも優れた利点であると考えられ、OECDのポリマーの定義によってポリ
マーと見なされ、スチレンモノマー単独ではないにしても、本質的にスチレンモノマーからなるポリスチレン組成物の形成における進歩である。
【0286】
本発明の触媒及び試薬組成物の実験式の決定
上記の通り、スチレン及び共役ジエンのリビングアニオン重合反応のための開始剤としてのアルキルリチウム化合物及び開始剤としての混合有機金属の会合度によって生じる複雑な関係は、当技術分野で十分に確立されている(これに関しては、Hsieh H.L.and Quirk,R.P. Anionic Polymerization Principles and Practical Applications,Marcel Dekker,1996,New York,pp 135-132、特に138ページ、表6.2を参照されたい)。n-ブチルリチウムの会合度は通常6であり、t-ブチルリチウム及びsec-ブチルリチウムの会合度は通常炭化水素溶媒中で4である。従って、会合したアルキルリチウム化合物の凝集体中、6個のn-ブチルリチウム剤のうちの1個のみがリビング重合を開始し、sec-ブチルリチウム及びt-ブチルリチウムの両方に関しては4個のうちの1個のみである。本発明の概念は、類推により、触媒組成物の凝集体当たり1個のヒドリドのみがアニオン重合を開始するということである。従って、理論的にはリビングアニオン重合下で形成され得る凝集体の数に対する生成されたポリマーの数の反比が、本発明の平均構成触媒組成物の証拠を提供するはずである。
【0287】
上記の通り、ただ2つのみの既知の炭化水素可溶性水素化リチウム試薬が、光分解を介して形成された超凝集体の分子式[(t-BuOLi)16(LiH)17]を有する凝集体及びStashの炭化水素可溶性LiH錯体の[(DipNPPh24Li84](Dip、2,6-iPr263)として存在していた。どちらの場合も分子式は単離及びx
線結晶構造解析によって決定された。本発明の触媒組成物は、x線結晶構造解析もしくは例えば燃焼分析または他の化学分析の現代的方法を実施することができるように単離されている必要はない。当技術分野で一般に使用される実験式という用語は、下付き記号が、1分子中の原子比を与える最小の整数である化学式である。本明細書では、しかしながら、我々は、「実験式」を、触媒組成物に存在する極性錯化剤(複数可)、塩類似金属(複数可)、及び全イオン結合型水素化物の整数比としての構成成分の化学式と定義する。さらに、この触媒組成物は、触媒の凝集体の成分の組成物と見なされ、各凝集体は、ただ1つのリビングアニオン性ポリスチレン鎖を開始する。
【0288】
本発明の触媒組成物は、それらの構成成分の観点から:(1)十分に解明され、よく特徴づけられた試薬を触媒組成物の形成に用いているため、ならびに(2)(a)極性錯化剤(複数可)の相対比率、(b)塩類似金属(複数可)、及び(c)活性型金属アルキル、従って存在する全イオン結合型水素化物の観点から、相対的な装填比が触媒反応混合物を明確に定義するために知られている。しかしながら、触媒(複数可)の凝集の状態は、単に既知の成分のこれらの単純な装填比に基づいて知ることができない。触媒凝集体組成物の平均またはこの文脈では「実験式」(上記の文脈で定義した通り)を決定するための簡単な試験は考案されている。この試験は、水素を含まない不活性雰囲気下(すなわち、連鎖移動のすべての形態を含まない、実施例33~37)でスチレンのリビングアニオン重合(APS)用の開始剤として試薬としての触媒の適用を必要とする。得られるAPS分布(Mn APS)の数平均分子量の比率を次に理論数平均分子量(Mn-Th)に関連させる
。この場合、Mn-Th≒104*[装填したスチレンのモル]/[生じたヒドリドの合計モル]であり、生じたヒドリドの各モルは、ヒドリドが生じる活性型リチウムアルキル及び活性型マグネシウムアルキルの合計当量に等しい(活性型リチウムアルキルは1当量を提供し、活性型マグネシウムアルキルは2当量を提供する)。この分析手法を説明するため、実施例36を再検討する。実施例36では、触媒は、1モルのジメチルエタノールアミン、2モルのn-ブチルリチウム、及び1モルの水素を必要とする装填比から形成された。従って、この触媒形成反応は、化学式[DMEA-]Li2Hを有する触媒組成物を製造
する。この触媒組成物に対して、スチレン(10.5モル)を装填したが、これは、この触媒に含まれる水素化リチウムの量に対して21モルであり、従って、Mn-Th≒104*21≒2184ダルトンである。しかしながら、実験的に決定されたMn APSは8447
であり、従って、Mn APS/Mn-Th=8447/2184=3.9≒4である。これによ
れば、[DMEA-4Li84からなる凝集体がこの反応混合物で形成され、凝集体中に含まれるヒドリドの1個のみが不活性雰囲気下でスチレンのリビングアニオン重合を開始すると結論付けられる。この実験式[DMEA-4Li84は、1モルの嵩高い亜ホスフィンアミド配位子DipNHPPh2、2モルのsec-ブチルリチウム、及びフェニル
シランから形成された凝集体のStaschによるx線結晶構造解析によって得られた分子式[(DipNPPh24Li84]と比較しても遜色がない。従って、実際には、Staschの炭化水素可溶性LiH錯体に対する単純な類推及びこの試験方法の適用により、実験式[DMEA-4Li84は、実際に実施例36の触媒組成物の凝集体の少なくとも一部の分子式であるという強い証拠が存在する。[DMEA-4Li84に関する最小の整数比は[DMEA-]Li2Hであるが、この式は、本発明を実施する上で使用される触媒凝集体組成物(複数可)に関する情報をほとんどもたらさないということが指摘される。本発明の実施者は、必要に応じて、形成される凝集体が、例えば、各[PCA-
が独立して、同じでも異なっていてもよい[PCA-4Li84として構成されるように、複数の極性錯化剤を用いてもよいことも指摘される。
【表6-1】
【表6-2】
【表7-1】
【表7-2】
【表8-1】
【表8-2】
【表9-1】
【表9-2】
【表10-1】
【表10-2】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表12】
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【表14-1】
【表14-2】
【表15-1】
【表15-2】
【表16-1】
【表16-2】
【表17-1】
【表17-2】
【表18-1】
【表18-2】
【表18-3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)ポリスチレンを含むポリスチレン組成物であって、前記ポリスチレンは、97重量%を超える、下記のポリマー構造:
【化1】
に図示されるヘッドトゥーテール微細構造のポリマー微細構造を有し、かつ前記ポリスチレンは、前記ポリマー微細構造中3.0%未満のポリマー鎖が、1つ以上の4級炭素を有するポリマー連鎖長分布と、開裂重合工程から生じる副生成物分布とを有し、前記連鎖長分布の前記微細構造及び純度は、以下、n=0からn=2の前記HMAPS分布から得られる最も低い分子量の連鎖のガスクロマトグラフィー分析で決定される、ポリスチレン組成物。
【請求項2】
前記ポリマー微細構造は、98重量%超のヘッドトゥーテールであり、かつ、前記ポリマー微細構造中2.0重量%未満の前記ポリマー鎖が、1つ以上の4級炭素を有するポリマー連鎖長分布と、開裂重合工程から生じる副生成物分布とを有する、請求項1に記載のポリスチレン組成物。
【請求項3】
前記ポリマー微細構造は、99重量%を超えるヘッドトゥーテールであり、かつ前記ポリマー微細構造中1.0重量%未満の前記ポリマー鎖が、1つ以上の4級炭素を有するポリマー連鎖長分布と、開裂重合工程から生じる副生成物分布とを有する、請求項1に記載のポリスチレン組成物。
【請求項4】
前記HMAPSポリスチレンは、約315から約934ダルトンの範囲内のM n 、約392から約1705ダルトンの範囲内のM w 、約512から約2930ダルトンの範囲内のM z 、約1.24から約1.82範囲内のPD n 、約156から約849ダルトンの範囲内の標準偏差、及び約1.40から約3.00の範囲内の非対称性を有することを特徴とする、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析により測定される分子量分布を有する、請求項1に記載のポリスチレン組成物。
【請求項5】
前記HMAPSポリスチレンは、約400から約800ダルトンの範囲内のM n 、約600から約1200ダルトンの範囲内のM w 、約1.35から約1.75の範囲内のPD n 、約270から約550ダルトンの範囲内の標準偏差、及び約3300ダルトン未満の上位10%のM w を有することを特徴とする、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析により測定される分子量分布を有する、請求項1に記載のポリスチレン組成物。
【請求項6】
前記HMAPSポリスチレンは、約400から約800ダルトンの範囲内のM n 、約600から約1200ダルトンの範囲内のM w 、約750から約1500ダルトンの範囲内のM z 、約1.35から約1.75の範囲内のPD n 、約270から約550ダルトンの範囲内の標準偏差、約1.60から約2.2の範囲内の非対称性、及び約2400ダルトン未満の上位10%のM w を有することを特徴とする、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析により測定される分子量分布を有する、請求項1に記載のポリスチレン組成物。
【請求項7】
スチレンの水素媒介アニオン重合(HMAPS)ポリスチレンの臭素化生成物を含む臭素化ポリスチレン組成物であって、前記HMAPSポリスチレンは、97重量%を超える、下記のポリマー構造:
【化2】
に図示されるヘッドトゥーテール微細構造のポリマー微細構造を有し、かつ前記ポリスチレンは、前記ポリマー微細構造中3.0%未満のポリマー鎖が、1つ以上の4級炭素を有するポリマー連鎖長分布と、開裂重合工程から生じる副生成物分布とを有し、前記連鎖長分布の前記微細構造及び純度は、以下、n=0からn=2の前記HMAPS分布から得られる最も低い分子量の連鎖のガスクロマトグラフィー分析で決定される、臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項8】
前記ポリマー微細構造は、98重量%超のヘッドトゥーテールであり、かつ、前記ポリマー微細構造中2.0重量%未満の前記ポリマー鎖が、1つ以上の4級炭素を有するポリマー連鎖長分布と、開裂重合工程から生じる副生成物分布とを有する、請求項7に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項9】
前記HMAPSポリスチレンは、約315から約934ダルトンの範囲内のM n 、約392から約1705ダルトンの範囲内のM w 、約512から約2930ダルトンの範囲内のM z 、約1.24から約1.82の範囲内のPD n 、約156から約849ダルトンの範囲内の標準偏差、及び約1.40から約3.00の範囲内の非対称性を有することを特徴とする、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析により測定される分子量分布を有する、請求項7に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項10】
前記HMAPSポリスチレンは、約400から約800ダルトンの範囲内のM n 、約600から約1200ダルトンの範囲内のM w 、約1.35から約1.75の範囲内のPD n 、約270から約550ダルトンの範囲内の標準偏差、及び約3300ダルトン未満の上位10%のM w を有することを特徴とする、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析により測定される分子量分布を有する、請求項7に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項11】
前記HMAPSポリスチレンは、約400から約800ダルトンの範囲内のM n 、約600から約1200ダルトンの範囲内のM w 、約750から約1500ダルトンの範囲内のM z 、約1.35から約1.75の範囲内のPD n 、約270から約550ダルトンの範囲内の標準偏差、約1.60から約2.2の範囲内の非対称性、及び約2400ダルトン未満の上位10%のM w を有することを特徴とする、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析により測定される分子量分布を有する、請求項7に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項12】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii) 前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて、検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度、のうちの1つ以上を有する、請求項7に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項13】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度、のうちの2つ以上を有する、請求項7に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項14】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度を有する、請求項7に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項15】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度、のうちの1つ以上を有する、請求項9に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項16】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度、のうちの2つ以上を有する、請求項9に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項17】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度、を有する、請求項9に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項18】
前記HMAPSポリスチレンは、約315から約934ダルトンの範囲内のM n 、約392から約1705ダルトンの範囲内のM w 、約512から約2930ダルトンの範囲内のM z 、約1.24から約1.82の範囲内のPD n 、約156から約849ダルトンの範囲内の標準偏差、及び約1.40から約3.00の範囲内の非対称性を有することを特徴とする、前記連鎖長分布のGPC(UV検出器)分析により測定される分子量分布を有する、請求項8に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項19】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度、のうちの1つ以上を有する、請求項18に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【請求項20】
前記臭素化ポリスチレンは、(i)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて約73重量%から約77重量%の範囲内の臭素含有量、(ii)前記臭素化ポリスチレンの総重量に基づいて検出限界の50ppm未満かつ約1000ppm以下の300℃での熱的HBr値、(iii)約355℃超から約375℃の温度で起こる、5%の熱重量(TGA)測定による重量損失、及び(iv)約110℃から約155℃の範囲内のガラス転移温度、のうちの2つ以上を有する、請求項18に記載の臭素化ポリスチレン組成物。
【外国語明細書】