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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178300
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20241217BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20241217BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241217BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20241217BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J37/02 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 250
B01D53/94 280
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
B01J23/63 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024162525
(22)【出願日】2024-09-19
(62)【分割の表示】P 2024531400の分割
【原出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023004091
(32)【優先日】2023-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】諌山 彰大
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亮
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 徳也
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 大典
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能の低下の防止と、リンに曝露された後の排ガス浄化性能の低下の防止とを実現することができる排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】基材10と、基材に設けられた第1触媒層20と、第1触媒層の上側に設けられた第2触媒層30とを備える排ガス浄化用触媒1であって、第1触媒層が、Pdを含み、第2触媒層が、Rhと、Ce、Zr及びAlを含む複合酸化物とを含み、排ガス浄化用触媒が、以下の条件A及びB:
(A)第1触媒層が、Srを含み、第1触媒層中のSrの金属換算含有率が、第1触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上である;
(B)第2触媒層が、Srを含み、第2触媒層中のSrの金属換算含有率が、第2触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上である
の少なくとも一方を満たす、排ガス浄化用触媒を提供する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に設けられた第1触媒層と、前記第1触媒層の上側に設けられた第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記第1触媒層が、Pdを含み、
前記第2触媒層が、Rhと、Ce、Zr及びAlを含む複合酸化物とを含み、
前記排ガス浄化用触媒が、以下の条件A及びB:
(A)前記第1触媒層が、Srを含み、前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上である;
(B)前記第2触媒層が、Srを含み、前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上である
の少なくとも一方を満たす、前記排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
条件Aにおいて、前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上7.0質量%以下であり、
条件Bにおいて、前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上7.0質量%以下である、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
条件Aにおいて、前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上4.0質量%以下であり、
条件Bにおいて、前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上4.0質量%以下である、請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記複合酸化物が、Laを含み、前記複合酸化物中のLaのLa換算含有率が、前記複合酸化物の質量を基準として、1.0質量%以上である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記排ガス浄化用触媒が条件Aを満たす場合、前記排ガス浄化用触媒が、以下の条件C:
(C)前記第1触媒層の質量を基準とする前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率の、前記第2触媒層の質量を基準とする前記第2触媒層中の前記複合酸化物の含有率に対する比が、0.0010以上0.0800以下である
を満たし、
前記排ガス浄化用触媒が条件Bを満たす場合、前記排ガス浄化用触媒が、以下の条件D:
(D)前記第2触媒層の質量を基準とする前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率の、前記第2触媒層の質量を基準とする前記第2触媒層中の前記複合酸化物の含有率に対する比が、0.0010以上0.0800以下である
を満たす、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記第2触媒層中の前記複合酸化物の含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、80.0質量%以上である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記複合酸化物中のAlのAl換算含有率が、前記複合酸化物の質量を基準として、30.0質量%以上60.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記排ガス浄化用触媒が、条件A及びBのうち、少なくとも条件Aを満たす、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する目的で触媒、例えば、Pt、Pd、Rh等の貴金属元素を含む触媒が使用されている。Pt及びPdは主としてHC及びCOの酸化浄化に関与し、Rhは主としてNOxの還元浄化に関与する。
【0003】
Pdは、リン(例えば、エンジンオイル中のリン)による被毒を受けやすい。Pdのリン被毒を抑制することができる排ガス浄化用触媒として、基材と、基材に設けられた第1触媒層と、第1触媒層の上側に設けられた第2触媒層とを備え、第1触媒層がPdを含み、第2触媒層がRhを含む、排ガス浄化用触媒が知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-136319号公報
【特許文献2】特開2016-185531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガス浄化用触媒には、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止と、リン(例えば、エンジンオイル中のリン)に曝露された後の排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止とが求められている。なお、本明細書において、「低温」とは、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下、より一層好ましくは300℃以下の温度を意味し、「高温」とは、好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上、より一層好ましくは900℃以上の温度を意味する。
【0006】
本発明は、基材と、基材に設けられた第1触媒層と、第1触媒層の上側に設けられた第2触媒層とを備え、第1触媒層がPdを含み、第2触媒層がRhを含む、排ガス浄化用触媒であって、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止と、リンに曝露された後の排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止とを実現することができる排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]基材と、前記基材に設けられた第1触媒層と、前記第1触媒層の上側に設けられた第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記第1触媒層が、Pdを含み、
前記第2触媒層が、Rhと、Ce、Zr及びAlを含む複合酸化物とを含み、
前記排ガス浄化用触媒が、以下の条件A及びB:
(A)前記第1触媒層が、Srを含み、前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上である;
(B)前記第2触媒層が、Srを含み、前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上である
の少なくとも一方を満たす、前記排ガス浄化用触媒。
[2]条件Aにおいて、前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上7.0質量%以下であり、
条件Bにおいて、前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上7.0質量%以下である、[1]に記載の排ガス浄化用触媒。
[3]条件Aにおいて、前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第1触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上4.0質量%以下であり、
条件Bにおいて、前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、0.1質量%以上4.0質量%以下である、[2]に記載の排ガス浄化用触媒。
[4]前記複合酸化物が、Laを含み、前記複合酸化物中のLaのLa換算含有率が、前記複合酸化物の質量を基準として、1.0質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
[5]前記排ガス浄化用触媒が条件Aを満たす場合、前記排ガス浄化用触媒が、以下の条件C:
(C)前記第1触媒層の質量を基準とする前記第1触媒層中のSrの金属換算含有率の、前記第2触媒層の質量を基準とする前記第2触媒層中の前記複合酸化物の含有率に対する比が、0.0010以上0.0800以下である
を満たし、
前記排ガス浄化用触媒が条件Bを満たす場合、前記排ガス浄化用触媒が、以下の条件D:
(D)前記第2触媒層の質量を基準とする前記第2触媒層中のSrの金属換算含有率の、前記第2触媒層の質量を基準とする前記第2触媒層中の前記複合酸化物の含有率に対する比が、0.0010以上0.0800以下である
を満たす、[1]~[4]のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
[6]前記第2触媒層中の前記複合酸化物の含有率が、前記第2触媒層の質量を基準として、80.0質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
[7]前記複合酸化物中のAlのAl換算含有率が、前記複合酸化物の質量を基準として、30.0質量%以上60.0質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
[8]前記排ガス浄化用触媒が、条件A及びBのうち、少なくとも条件Aを満たす、[1]~[7]のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基材と、基材に設けられた第1触媒層と、第1触媒層の上側に設けられた第2触媒層とを備え、第1触媒層がPdを含み、第2触媒層がRhを含む、排ガス浄化用触媒であって、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止と、リンに曝露された後の排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止とを実現することができる排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒が内燃機関の排気経路に配置されている状態を示す一部端面図である。
図2図2は、図1のA-A線端面図である。
図3図3は、図2中の符号Rで示す領域の拡大図である。
図4図4は、図1のB-B線端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪排ガス浄化用触媒≫
以下、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0011】
以下、図1~4に基づいて、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用触媒1(以下「触媒1」という場合がある。)について説明する。
【0012】
図1に示すように、触媒1は、内燃機関の排気管P内の排気通路に配置されている。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジン等である。内燃機関から排出された排ガスは、排気管Pの一端から他端に向けて排気管P内の排気通路を流通し、排気管P内に設けられた触媒1で浄化される。図面において、排ガス流通方向は、符号Xで示されている。本明細書において、排ガス流通方向Xの上流側を「排ガス流入側」又は「上流側」、排ガス流通方向Xの下流側を「排ガス流出側」又は「下流側」という場合がある。
【0013】
排気管P内の排気通路には、触媒1の上流側及び/又は下流側に、その他の排ガス浄化用触媒が配置されていてもよい。
【0014】
図2~4に示すように、触媒1は、基材10と、基材10に設けられた第1触媒層20と、第1触媒層20の上側に設けられた第2触媒層30とを備える。
【0015】
<基材>
以下、基材10について説明する。
【0016】
基材10を構成する材料は、公知の材料から適宜選択することができる。基材10を構成する材料としては、例えば、セラミックス材料、金属材料等が挙げられるが、セラミックス材料が好ましい。セラミックス材料としては、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミックス、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミックス、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム等の酸化物セラミックス等が挙げられる。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼等の合金等が挙げられる。
【0017】
図2~4に示すように、基材10は、筒状部11と、筒状部11内に設けられた隔壁部12と、隔壁部12によって仕切られたセル13とを有する。基材10は、ハニカム構造体であることが好ましい。
【0018】
図2に示すように、筒状部11は、基材10の外形を規定し、筒状部11の軸方向は、基材10の軸方向と一致する。図2に示すように、筒状部11の形状は、円筒状であるが、楕円筒状、多角筒状等のその他の形状であってもよい。
【0019】
図2~4に示すように、隣接するセル13の間には隔壁部12が存在し、隣接するセル13は隔壁部12によって仕切られている。隔壁部12は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有していてもよい。隔壁部12の厚みは、例えば20μm以上1500μm以下である。
【0020】
図4に示すように、セル13は、排ガス流通方向Xに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
【0021】
図4に示すように、セル13の排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部はともに開口している。したがって、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、セル13の排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、フロースルー型と呼ばれる。
【0022】
図2及び3に示すように、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)の平面視形状は、四角形であるが、六角形、八角形等のその他の形状であってもよい。セル13の排ガス流出側の端部(開口部)の平面視形状も同様である。
【0023】
基材10の1平方インチ当たりのセル密度は、例えば100セル以上1000セル以下である。基材10の1平方インチ当たりのセル密度は、基材10を排ガス流通方向Xと垂直な平面で切断して得られた断面における1平方インチ当たりのセル13の合計個数を意味する。
【0024】
基材10の体積は、例えば0.1L以上20L以下である。基材10の体積は、基材10の見かけの体積を意味する。例えば、基材10が円柱状である場合、基材10の外径を2rとし、基材10の長さをL10とすると、基材10の体積は、式:基材10の体積=π×r×L10で表される。
【0025】
<第1触媒層>
以下、第1触媒層20について説明する。
【0026】
図3及び4に示すように、第1触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面に設けられている。「隔壁部12のセル13側表面」は、排ガス流通方向Xに延在する、隔壁部12の外表面を意味する。第1触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよいが、通常、隔壁部12のセル13側表面に直接設けられている。
【0027】
第1触媒層20は、隔壁部12のセル13側表面からセル13側に隆起している部分(以下「隆起部分」という。)で構成されていてもよいし、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)で構成されていてもよいし、隆起部分及び内在部分を有していてもよい。「基材10に設けられた第1触媒層20」には、第1触媒層20が隆起部分で構成されている実施形態、第1触媒層20が内在部分で構成されている実施形態、並びに、第1触媒層20が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれもが包含される。
【0028】
図4に示すように、第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0029】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積あたりの第1触媒層20の質量(焼成後の質量)は、好ましくは50g/L以上230g/L以下、より好ましくは70g/L以上180g/L以下、より一層好ましくは80g/L以上150g/L以下である。基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量は、式:(第1触媒層20の質量)/((基材10の体積)×(第1触媒層20の平均長さL20/基材10の長さL10))から算出される。なお、本明細書において、「長さ」は、別段規定される場合を除き、基材10の軸方向の寸法を意味する。
【0030】
本明細書において、「第1触媒層20の質量」は、第1触媒層20に含まれる全ての金属元素のうち、貴金属元素については金属換算の質量を、貴金属元素以外の金属元素については酸化物換算の質量を求め、これらを合計したものを意味する。すなわち、「第1触媒層20の質量」は、第1触媒層20に含まれる貴金属元素の金属換算の質量と、第1触媒層20に含まれる貴金属元素以外の金属元素の酸化物換算の質量とを合計することにより求められた計算質量を意味する。なお、「金属元素」には、Si、B等の半金属元素も包含される。
【0031】
本明細書において、「貴金属元素」には、Pt(白金元素)、Pd(パラジウム元素)、Rh(ロジウム元素)、Ru(ルテニウム元素)、Os(オスミウム元素)、Ir(イリジウム元素)、Au(金元素)及びAg(銀元素)が包含される。
【0032】
本明細書において、Ce、Pr及びTbを除く希土類元素の酸化物はセスキ酸化物(M,MはCe、Pr及びTb以外の希土類元素を表す)を、Ceの酸化物はCeOを、Prの酸化物はPr11を、Tbの酸化物はTbを、Alの酸化物はAlを、Zrの酸化物はZrOを、Siの酸化物はSiOを、Bの酸化物はBを、Crの酸化物はCrを、Mgの酸化物はMgOを、Caの酸化物はCaOを、Srの酸化物はSrOを、Baの酸化物はBaOを、Feの酸化物はFeを、Mnの酸化物はMnを、Niの酸化物はNiOを、Tiの酸化物はTiOを、Znの酸化物はZnOを、Snの酸化物はSnOを意味する。
【0033】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法の一例は、以下の通りである。
【0034】
触媒1から、基材10の軸方向に延在し、基材10の長さL10と同一の長さを有するサンプルを切り出す。サンプルは、例えば、直径25.4mmの円柱状である。なお、サンプルの直径の値は必要に応じて変更することができる。第1触媒層20が隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在している場合、サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流入側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。第1触媒層20が隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在している場合、サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流出側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。いずれの場合も、切断片の長さは5mmである。切断片の組成を、蛍光X線分析装置(XRF)(例えば、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)、波長分散型X線分析装置(WDX)等)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等を使用して分析し、切断片の組成に基づいて、切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認する。
【0035】
第1触媒層20の一部を含むことが明らかである切断片に関しては、必ずしも組成分析を行う必要はない。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面を観察し、切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。
【0036】
切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認した後、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さ=5mm×(第1触媒層20の一部を含む切断片の数)
【0037】
例えば、第1切断片~第k切断片は第1触媒層20の一部を含むが、第(k+1)~第n切断片は第1触媒層20の一部を含まない場合、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さは、(5×k)mmである。
【0038】
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さのより詳細な測定方法の一例は、以下の通りである。
第k切断片(第1触媒層20が隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在している場合、第1触媒層20の一部を含む切断片のうち、サンプルの最も排ガス流出側から得られた切断片であり、第1触媒層20が隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在している場合、第1触媒層20の一部を含む切断片のうち、サンプルの最も排ガス流入側から得られた切断片である)を基材10の軸方向で切断して、SEM、EPMA等を使用して切断面に存在する第1触媒層20の一部を観察することにより、第k切断片における第1触媒層20の一部の長さを測定する。そして、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さ=(5mm×(k-1))+(第k切断片に含まれる第1触媒層20の一部の長さ)
【0039】
触媒1から任意に切り出された8~16個のサンプルに関して、各サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを測定し、それらの平均値を第1触媒層20の平均長さL20とする。
【0040】
第1触媒層20は、Pdを触媒活性成分として含む。Pdは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Pd、Pdを含む合金、Pdを含む化合物(例えば、Pdの酸化物)等の、Pdを含む触媒活性成分の形態で第1触媒層20に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Pdを含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0041】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、第1触媒層20中のPdの金属換算含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、好ましくは0.010質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.050質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは0.10質量%以上10質量%以下である。
【0042】
第1触媒層20は、Pd以外の貴金属元素を触媒活性成分として含んでいてもよい。Pd以外の貴金属元素としては、例えば、Pt、Rh、Ir、Ru、Os、Au、Ag等が挙げられる。Pd以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の、Pd以外の貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で第1触媒層20に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Pd以外の貴金属元素を含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0043】
第1触媒層20がPdとPd以外の貴金属元素とを含む場合、PdとPd以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化性能に関与するPdの活性点が減少するおそれがある。したがって、第1触媒層20は、Pd以外の貴金属元素を実質的に含まないことが好ましい。
【0044】
「第1触媒層20がPd以外の貴金属元素を実質的に含まない」とは、第1触媒層20中のPd以外の貴金属元素の金属換算含有率が、第1触媒層20の質量を基準として、好ましくは0.050質量%以下、より好ましくは0.010質量%以下であることを意味する。下限はゼロである。「第1触媒層20中のPd以外の貴金属元素の金属換算含有率」は、第1触媒層20がPd以外の1種の貴金属元素を含む場合には、当該1種の貴金属元素の金属換算含有率を意味し、第1触媒層20がPd以外の2種以上の貴金属元素を含む場合には、当該2種以上の貴金属元素の金属換算含有率の合計を意味する。
【0045】
第1触媒層20中の各金属元素の金属換算含有率は、式:(第1触媒層20中の各金属元素の金属換算の質量)/(第1触媒層20の質量)×100から求められる。例えば、第1触媒層20中のPdの金属換算含有率は、式:(第1触媒層20中のPdの金属換算の質量)/(第1触媒層20の質量)×100から求められる。
【0046】
第1触媒層20の形成に使用される原料の組成が判明している場合、第1触媒層20に含まれる各金属元素の金属換算含有率は、第1触媒層20の形成に使用される原料の組成から求めることができる。
【0047】
第1触媒層20の形成に使用される原料の組成が判明していない場合、第1触媒層20に含まれる各金属元素の金属換算含有率は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)等の常法を使用して求めることができる。具体的には、下記の通りである。
【0048】
第1触媒層20から得られた試料について、SEM-EDX等の常法を使用して元素分析を行い、試料全体の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各金属元素の含有率(質量%)を求める。SEMの10視野の各々について、各金属元素の含有率(質量%)を求め、10視野における各金属元素の含有率(質量%)の平均値を、第1触媒層20中の各金属元素の含有率(質量%)とする。
【0049】
第1触媒層20は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。
【0050】
「触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されている」とは、担体の外表面及び/又は細孔内表面に、触媒活性成分の少なくとも一部が、物理的又は化学的に吸着又は保持されている状態を意味する。触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていることは、例えば、SEM-EDX等を使用して確認することができる。具体的には、第1触媒層20の断面をSEM-EDXで分析して得られた元素マッピングにおいて、触媒活性成分の少なくとも一部と担体とが同じ領域に存在している場合、触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていると判断することができる。
【0051】
担体は、例えば、無機酸化物から選択することができる。無機酸化物は、例えば、粒子状である。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、無機酸化物は、多孔質であることが好ましい。無機酸化物は、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有していてもよいし、有していなくてもよい。本明細書において、OSCを有する無機酸化物を「OSC材料」という場合がある。担体として使用される無機酸化物は、バインダとして使用される無機酸化物(例えば、アルミナバインダ、ジルコニアバインダ、チタニアバインダ、シリカバインダ等の無機酸化物系バインダ)とは区別される。
【0052】
無機酸化物としては、例えば、Al系酸化物、Ce系酸化物、Ce-Zr系複合酸化物、Ce以外の希土類元素の酸化物、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、MgO、ZnO、SnO等をベースとした酸化物等が挙げられる。
【0053】
Al系酸化物は、Alを含む酸化物であって、酸化物を構成するO以外の元素のうち、質量基準で最も含有率が大きい元素がAlである酸化物を意味する。但し、Ce-Zr系複合酸化物に該当するものは、Al系酸化物に該当しないものとする。
【0054】
Ce系酸化物は、Ceを含む酸化物であって、酸化物を構成するO以外の元素のうち、質量基準で最も含有率が大きい元素がCeである酸化物を意味する。ただし、Ce-Zr系複合酸化物に該当するものは、Ce系酸化物に該当しないものとする。
【0055】
Ce-Zr系複合酸化物は、Ce及びZrを含む複合酸化物であって、複合酸化物中のCeのCeO換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5.0質量%以上95.0質量%以下であり、且つ、複合酸化物中のZrのZrO換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5.0質量%以上95.0質量%以下であり、且つ、複合酸化物中のAlのAl換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5.0質量%未満である酸化物を意味する。
【0056】
Al系酸化物、Ce系酸化物又はCe-Zr系複合酸化物中の各元素の酸化物換算含有率は、後述するCe-Zr-Al系複合酸化物中の各元素の酸化物換算含有率と同様にして求めることができる。
【0057】
第1触媒層20は、バインダ、安定剤等のその他の成分を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、セリアゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル等の無機酸化物系バインダが挙げられる。
【0058】
<第2触媒層>
以下、第2触媒層30について説明する。
【0059】
図3及び4に示すように、第2触媒層30は、第1触媒層20の上側に設けられている。
【0060】
「第2触媒層30が第1触媒層20の上側に設けられている」とは、第1触媒層20の2つの主面のうち、隔壁部12側の主面とは反対側の主面上に、第2触媒層30の一部又は全部が存在することを意味する。「第1触媒層20の主面」は、排ガス流通方向Xに延在する、第1触媒層20の外表面を意味する。第2触媒層30は、第1触媒層20の主面上に、直接設けられていてもよいし、別の層を介して設けられていてもよいが、通常、第1触媒層20の主面上に直接設けられている。第2触媒層30は、第1触媒層20の主面の一部を覆うように設けられていてもよいし、第1触媒層20の主面の全体を覆うように設けられていてもよい。「第1触媒層20の上側に設けられた第2触媒層30」には、第2触媒層30が第1触媒層20の主面上に直接設けられている実施形態、及び、第2触媒層30が第1触媒層20の主面上に別の層を介して設けられている実施形態のいずれもが包含される。
【0061】
図4に示すように、第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から隔壁部12の排ガス流出側の端部まで排ガス流通方向Xに沿って延在している。第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Xに沿って延在していてもよいし、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至らないように、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Xとは反対の方向に沿って延在していてもよい。
【0062】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量(焼成後の質量)は、好ましくは20g/L以上150g/L以下、より好ましくは50g/L以上120g/L以下、より一層好ましくは70g/L以上100g/L以下である。基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量は、式:(第2触媒層30の質量)/((基材10の体積)×(第2触媒層30の平均長さL30/基材10の長さL10))から算出される。
【0063】
第1触媒層20の質量に関する上記説明は、第2触媒層30にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に読み替えられる。
【0064】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、第2触媒層30の平均長さL30の測定方法にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に、「平均長さL20」は「平均長さL30」に読み替えられる。
【0065】
第2触媒層30は、Rhを触媒活性成分として含む。Rhは、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属Rh、Rhを含む合金、Rhを含む化合物(例えば、Rhの酸化物)等の、Rhを含む触媒活性成分の形態で第2触媒層30に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Rhを含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0066】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、第2触媒層30中のRhの金属換算含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは0.010質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.050質量%以上3質量%以下、より一層好ましくは0.10質量%以上2質量%以下である。
【0067】
第2触媒層30は、Rh以外の貴金属元素を触媒活性成分として含んでいてもよい。Rh以外の貴金属元素としては、例えば、Pt、Pd、Ir、Ru、Os、Au、Ag等が挙げられる。Rh以外の貴金属元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、貴金属元素を含む合金、貴金属元素を含む化合物(例えば、貴金属元素の酸化物)等の、Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分の形態で第2触媒層30に含まれる。排ガス浄化性能を向上させる観点から、Rh以外の貴金属元素を含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0068】
第2触媒層30がRhとRh以外の貴金属元素とを含む場合、RhとRh以外の貴金属元素とが合金を形成し、排ガス浄化性能に関与するRhの活性点が減少するおそれがある。したがって、第2触媒層30は、Rh以外の貴金属元素を実質的に含まないことが好ましい。
【0069】
「第2触媒層30がRh以外の貴金属元素を実質的に含まない」とは、第2触媒層30中のRh以外の貴金属元素の金属換算含有率が、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは0.050質量%以下、より好ましくは0.010質量%以下であることを意味する。下限はゼロである。「第2触媒層30中のRh以外の貴金属元素の金属換算含有率」は、第2触媒層30がRh以外の1種の貴金属元素を含む場合には、当該1種の貴金属元素の金属換算含有率を意味し、第2触媒層30がRh以外の2種以上の貴金属元素を含む場合には、当該2種以上の貴金属元素の金属換算含有率の合計を意味する。
【0070】
第2触媒層30中の各金属元素の金属換算含有率は、式:(第2触媒層30中の各金属元素の金属換算の質量)/(第2触媒層30の質量)×100から求められる。例えば、第2触媒層30中のRhの金属換算含有率は、式:(第2触媒層30中のRhの金属換算の質量)/(第2触媒層30の質量)×100から求められる。
【0071】
第2触媒層30中の各金属元素の金属換算含有率は、第1触媒層20中の各金属元素の金属換算含有率と同様にして求めることができる。
【0072】
第2触媒層30は、Ce、Zr及びAlを含む複合酸化物(以下「Ce-Zr-Al系複合酸化物」という場合がある。)を含む。
【0073】
第2触媒層30がCe-Zr-Al系複合酸化物を含むか否かは、SEM-EDX等の常法により判定することができる。具体的には、第2触媒層30をSEM-EDXで観察し、第2触媒層30中の同一箇所にCe、Zr及びAlが存在する場合には、第2触媒層30がCe-Zr-Al系複合酸化物を含むと判定することができる。
【0074】
内燃機関に供給される空気/燃料比(空燃比)は、理論空燃比(ストイキ)近傍に制御されることが望ましい。しかしながら、実際の空燃比は、車両の走行条件等によってストイキを中心にリッチ(燃料過剰雰囲気)側又はリーン(燃料希薄雰囲気)側に変動するため、排ガスの空燃比も同様にリッチ側又はリーン側に変動する。Ce-Zr-Al系複合酸化物は、酸素貯蔵能を有するため、Ce-Zr-Al系複合酸化物を使用することにより、排ガス中の酸素濃度の変動を緩和して触媒の作動ウインドウを拡大することができる。また、Ce-Zr-Al系複合酸化物は耐熱性を有するため、高温環境において、Ce-Zr-Al系複合酸化物の凝集、Ce-Zr-Al系複合酸化物の細孔の消失(すなわち比表面積の低下)等に伴うRhの埋没、Rhのシンタリング等を防止することができる。したがって、第2触媒層30がCe-Zr-Al系複合酸化物を含むことにより、高温環境に曝露された後のRhの排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下を防止することができる。
【0075】
Ce-Zr-Al系複合酸化物は、Ce、Zr及びAlを含む複合酸化物であって、複合酸化物中のCeのCeO換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、1.0質量%以上94.0質量%以下であり、且つ、複合酸化物中のZrのZrO換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、1.0質量%以上94.0質量%以下であり、且つ、複合酸化物中のAlのAl換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5.0質量%以上98.0質量%以下である複合酸化物を意味する。
【0076】
Ce-Zr-Al系複合酸化物は、例えば、粒子状である。Ce-Zr-Al系複合酸化物は、触媒活性成分の担体として使用される。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物は、多孔質であることが好ましい。
【0077】
第2触媒層30において、触媒活性成分の少なくとも一部は、Ce-Zr-Al系複合酸化物に担持されていることが好ましい。担持の意義及び確認方法に関する説明は、<第1触媒層20>における説明と同様である。
【0078】
酸素貯蔵能及び耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCeのCeO換算含有率は、Ce-Zr-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは2.0質量%以上40.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以上20.0質量%以下、より一層好ましくは5.0質量%以上15.0質量%以下である。
【0079】
酸素貯蔵能及び耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のZrのZrO換算含有率は、Ce-Zr-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは10.0質量%以上70.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以上60.0質量%以下、より一層好ましくは20.0質量%以上50.0質量%以下である。
【0080】
酸素貯蔵能及び耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のAlのAl換算含有率は、Ce-Zr-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは30.0質量%以上60.0質量%以下、より好ましくは35.0質量%以上55.0質量%以下、より一層好ましくは40.0質量%以上50.0質量%以下である。
【0081】
酸素貯蔵能及び耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCeのCeO換算含有率、ZrのZrO換算含有率及びAlのAl換算含有率の合計は、Ce-Zr-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは70.0質量%以上、より好ましくは80.0質量%以上、より一層好ましくは90.0質量%以上である。上限は、100質量%である。
【0082】
酸素貯蔵能及び耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCeのCeO換算含有率及びZrのZrO換算含有率の合計の、Ce-Zr-Al系複合酸化物のAlのAl換算含有率に対する比は、好ましくは0.5以上1.2以下、より好ましくは0.6以上1.1以下、より一層好ましくは0.7以上1.0以下である。
【0083】
Ce-Zr-Al系複合酸化物は、Ce、Zr及びAl以外の1種又は2種以上の金属元素を含んでいてもよい。Ce、Zr及びAl以外の金属元素としては、例えば、Ce以外の希土類元素等が挙げられる。Ce以外の希土類元素としては、例えば、Y、Pr、Sc、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。
【0084】
Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCe、Zr及びAl以外の金属元素の酸化物換算含有率は、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCeのCeO換算含有率、ZrのZrO換算含有率及びAlのAl換算含有率を考慮して適宜調整することができる。酸素貯蔵能及び耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCe、Zr及びAl以外の金属元素の酸化物換算含有率は、好ましくは30.0質量%以下、より好ましくは20.0質量%以下、より一層好ましくは15.0質量%以下である。下限はゼロである。「Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCe、Zr及びAl以外の金属元素の酸化物換算含有率」は、Ce-Zr-Al系複合酸化物がCe、Zr及びAl以外の1種の金属元素を含む場合には、当該1種の金属元素の酸化物換算含有率を意味し、Ce-Zr-Al系複合酸化物がCe、Zr及びAl以外の2種以上の金属元素を含む場合には、当該2種以上の金属元素の酸化物換算含有率の合計を意味する。
【0085】
耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物は、Laを含むことが好ましい。耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のLaのLa換算含有率は、Ce-Zr-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、より一層好ましくは4.0質量%以上である。Ce-Zr-Al系複合酸化物中のLaのLa換算含有率の上限は、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCeのCeO換算含有率、ZrのZrO換算含有率及びAlのAl換算含有率を考慮して適宜調整することができる。Ce-Zr-Al系複合酸化物中のLaのLa換算含有率は、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、より一層好ましくは8.0質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0086】
耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物は、Ce及びLa以外の希土類元素を含んでいてもよい。耐熱性を向上させる観点から、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCe及びLa以外の希土類元素の酸化物換算含有率は、Ce-Zr-Al系複合酸化物の質量を基準として、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、より一層好ましくは4.0質量%以上である。Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCe及びLa以外の希土類元素の酸化物換算含有率の上限は、Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCeのCeO換算含有率、ZrのZrO換算含有率及びAlのAl換算含有率を考慮して適宜調整することができる。Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCe及びLa以外の希土類元素の酸化物換算含有率は、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、より一層好ましくは8.0質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。「Ce-Zr-Al系複合酸化物中のCe及びLa以外の希土類元素の酸化物換算含有率」は、Ce-Zr-Al系複合酸化物がCe及びLa以外の1種の希土類元素を含む場合には、当該1種の希土類元素の酸化物換算含有率を意味し、Ce-Zr-Al系複合酸化物がCe及びLa以外の2種以上の希土類元素を含む場合には、当該2種以上の希土類元素の酸化物換算含有率の合計を意味する。
【0087】
Ce-Zr-Al系複合酸化物の組成が判明している場合、Ce-Zr-Al系複合酸化物中の各元素の酸化物換算含有率は、Ce-Zr-Al系複合酸化物の組成から求めることができる。
【0088】
Ce-Zr-Al系複合酸化物の組成が判明していない場合、Ce-Zr-Al系複合酸化物中の各元素の酸化物換算含有率は、第2触媒層30から得られた試料をエネルギー分散型X線分光法(EDX)で分析し、得られた元素マッピングと、指定した粒子のEDX元素分析とから測定することができる。具体的には、元素マッピングにより定性的にCe-Zr-Al系複合酸化物粒子及びその他の粒子を識別(色分け)し、指定した粒子に対して組成分析(元素分析)することにより、指定した粒子中の各元素の酸化物換算含有率を測定することができる。
【0089】
Ce-Zr-Al系複合酸化物において、Ceは、固溶体相(例えば、CeOとZrOとの固溶体相、CeOとAlとの固溶体相、CeOとZrOとAlとの固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、CeO単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Ceの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0090】
Ce-Zr-Al系複合酸化物において、Zrは、固溶体相(例えば、CeOとZrOとの固溶体相、ZrOとAlとの固溶体相、CeOとZrOとAlとの固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(例えば、ZrO単独相)を形成していてもよいし、固溶体相及び単独相の両方を形成していてもよいが、Zrの少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0091】
Ce-Zr-Al系複合酸化物において、Alは、固溶体相(例えば、CeOとAlとの固溶体相、ZrOとAlとの固溶体相、CeOとZrOとAlとの固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(Al単独相)を形成していてもよい。
【0092】
Ce-Zr-Al系複合酸化物がCe、Zr及びAl以外の1種又は2種以上の金属元素を含む場合、Ce、Zr及びAl以外の金属元素は、固溶体相(例えば、CeOとCe、Zr及びAl以外の金属元素の酸化物との固溶体相、ZrOとCe、Zr及びAl以外の金属元素の酸化物との固溶体相、CeOとZrOとCe、Zr及びAl以外の金属元素の酸化物との固溶体相等)を形成していてもよいし、結晶相又は非晶質相である単独相(Ce、Zr及びAl以外の金属元素の酸化物単独相)を形成していてもよいが、Ce、Zr及びAl以外の金属元素の少なくとも一部は固溶体相を形成していることが好ましい。
【0093】
高温環境に曝露された後のRhの排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下をより効果的に防止する観点から、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは85.0質量%以上、より一層好ましくは88.0質量%以上である。第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率の上限は、第2触媒層30中の他の成分(例えば、Rh)の含有率を考慮して適宜調整することができる。第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは98.0質量%以下、より好ましくは97.0質量%以下、より一層好ましくは95.0質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0094】
第2触媒層30の形成に使用される原料の組成が判明している場合、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率は、第2触媒層30の形成に使用される原料の組成から求めることができる。
【0095】
第2触媒層30の形成に使用される原料の組成が判明していない場合、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率は、SEM-EDX等の常法により求めることができる。具体的には、下記の通りである。
【0096】
(1)第2触媒層30から得られた試料について、SEM-EDX等の常法を用いて元素分析を行い、試料全体の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各元素の含有率(質量%)を求める。
(2)第2触媒層30から得られた試料について、SEM-EDX等の常法を用いて元素マッピングを行い、試料に含まれる粒子の種類(例えば、Ce-Zr-Al系複合酸化物粒子及び場合によりその他の粒子)を特定する。
(3)各種類の粒子について、任意に選択された複数個(例えば50個)の粒子をSEM-EDXにて元素分析し、粒子の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各元素の含有率(質量%)を求める。各種類の粒子について、各元素の含有率(質量%)の平均値を求める。
(4)試料における各元素の含有率(質量%)と、各種類の粒子における各元素の含有率(質量%)と、試料における各種類の粒子の含有率(質量%)との関係を表す方程式を作成して解くことにより、試料における各種類の粒子の含有率(質量%)を算出し、これを、第2触媒層30中の各種類の粒子の含有率(質量%)とする。
【0097】
第2触媒層30は、Ce-Zr-Al系複合酸化物以外の1種又は2種以上の担体(以下「その他の担体」という場合がある。)を含んでいてもよい。第2触媒層30がその他の担体を含む場合、触媒活性成分の少なくとも一部はその他の担体に担持されていることが好ましい。担体に関する説明(無機酸化物に関する説明を含む)並びに担持の意義及び確認方法は、<第1触媒層20>における説明と同様である。
【0098】
<条件A及びB>
触媒1は、以下の条件A及びB:
(A)第1触媒層20が、Srを含み、第1触媒層20中のSrの金属換算含有率が、第1触媒層20の質量を基準として、0.1質量%以上である;
(B)第2触媒層30が、Srを含み、第2触媒層30中のSrの金属換算含有率が、第2触媒層30の質量を基準として、0.1質量%以上である
の少なくとも一方を満たす。
【0099】
第1触媒層20中のPdは、リン(例えば、エンジンオイル中のリン)による被毒を受けやすいため、第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)は、リンに曝露された後に低下しやすい。これに対して、触媒1が条件A及びBの少なくとも一方を満たす場合、第1触媒層20及び/又は第2触媒層30中のSrがリンを捕捉するため、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)の低下を防止することができる。なお、本発明者らは、リン被毒抑制のために種々のアルカリ土類金属元素を検討した結果、Mg及びCaは、Srと比較して、第1触媒層20又は第2触媒層30中に存在し得るAlと化合しやすく、これにより耐熱性を低下させやすいこと、Baは、Srと比較して、第1触媒層20又は第2触媒層30中に存在し得るAlと化合しやすく、これにより耐熱性を低下させやすいとともに、Rhの排ガス浄化性能の低下を生じやすいこと、並びに、Srは、Mg、Ca及びBaと比較して、第1触媒層20又は第2触媒層30中に存在し得るAlと化合しにくく、これにより耐熱性を低下させにくいとともに、Rh及びPdの排ガス浄化性能の低下を生じにくいことを見出し、これらの知見に基づいて、Srを選択した。
【0100】
Ce-Zr-Al系複合酸化物は、嵩密度が大きい、すなわち質量あたりの見かけの体積が小さい。したがって、第2触媒層30がリンに曝露される際、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物は、リン侵入に対する物理的な遮断特性が低い。このため、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率が増加するほど、リンは第2触媒層30を通過して第1触媒層20に到達しやすくなり、第1触媒層20中のPdは、リンによる被毒を受けやすくなる。したがって、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率が80.0質量%以上である場合、触媒1が条件A及びBの少なくとも一方を満たすことによる効果は顕著である。
【0101】
リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)の低下をより効果的に防止する観点から、条件Aにおいて、第1触媒層20中のSrの金属換算含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0102】
リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)の低下をより効果的に防止する観点から、条件Bにおいて、第2触媒層30中のSrの金属換算含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0103】
内燃機関に供給される空気/燃料比(空燃比)は、理論空燃比(ストイキ)近傍に制御されることが望ましい。しかしながら、実際の空燃比は、車両の走行条件等によってストイキを中心にリッチ(燃料過剰雰囲気)側又はリーン(燃料希薄雰囲気)側に変動するため、排ガスの空燃比も同様にリッチ側又はリーン側に変動する。Srは、リンを捕集する性質に加えて、排ガスがリーン状態のときにはNOxを吸着し、排ガスがリッチ状態のときにはNOxを放出する性質がある。したがって、Sr量が過剰であると、排ガスがリーン状態からリッチ状態に切り替わったときに、Srから一度に大量のNOxが放出され、放出されたNOxが触媒1によって浄化しきれないおそれがある。なお、排ガスがリーン状態からリッチ状態に切り替わったときに、Srから放出されるNOxを以下「過渡NOx」という場合がある。そこで、Sr量の上限を適度に制限し、過渡NOx量の過度な増加を防止し、過渡NOx量を触媒1が浄化し得る範囲内に収めることが好ましい。
【0104】
過渡NOx量の過度な増加をより効果的に防止する観点から、条件Aにおいて、第1触媒層20中のSrの金属換算含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、より一層好ましくは3.0質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0105】
過渡NOx量の過度な増加をより効果的に防止する観点から、条件Bにおいて、第2触媒層30中のSrの金属換算含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、より一層好ましくは3.0質量%以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0106】
好ましい実施形態において、第1触媒層20中のSrの金属換算含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、0.1質量%以上7.0質量%以下であり、かつ/あるいは、第2触媒層30中のSrの金属換算含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、0.1質量%以上7.0質量%以下である。これにより、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)の低下をより効果的に防止することができるとともに、過渡NOx量の過度な増加をより効果的に防止することができる。
【0107】
より好ましい実施形態において、第1触媒層20中のSrの金属換算含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、0.1質量%以上4.0質量%以下であり、かつ/あるいは、第2触媒層30中のSrの金属換算含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、0.1質量%以上4.0質量%以下である。これにより、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)の低下をより効果的に防止することができるとともに、過渡NOx量の過度な増加をより効果的に防止することができる。
【0108】
触媒1が条件Aを満たす場合、触媒1は条件Bを満たしてもよいし、満たさなくてもよい。「触媒1が条件Bを満たさない」には、第2触媒層30がSrを含まない実施形態、及び、第2触媒層30がSrを含み、第2触媒層30中のSrの金属換算含有率が、第2触媒層30の質量を基準として、0.1質量%未満である実施形態が包含される。後者の実施形態において、第2触媒層30中のSrの金属換算含有率は、第2触媒層30の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、より一層好ましくは0.01質量%以下である。
【0109】
触媒1が条件Bを満たす場合、触媒1は条件Aを満たしてもよいし、満たさなくてもよい。「触媒1が条件Aを満たさない」には、第1触媒層20がSrを含まない実施形態、及び、第1触媒層20がSrを含み、第1触媒層20中のSrの金属換算含有率が、第1触媒層20の質量を基準として、0.1質量%未満である実施形態が包含される。後者の実施形態において、第1触媒層20中のSrの金属換算含有率は、第1触媒層20の質量を基準として、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、より一層好ましくは0.01質量%以下である。
【0110】
「触媒1が条件A及びBの少なくとも一方を満たす」には、(a)触媒1が条件A及びBを満たす実施形態、(b)触媒1が条件Aを満たし、条件Bを満たさない実施形態、及び(c)触媒1が条件Bを満たし、条件Aを満たさない実施形態が包含される。
【0111】
触媒1が条件Bを満たす場合には、排ガスに含まれるリンが第1触媒層20に到達する前に、第2触媒層30中のSrによりリンを捕捉できるので、第1触媒層20が条件Aを満たす場合と比較して、第1触媒層20中のPdのリンによる被毒をより効果的に防止できるという利点がある。一方、触媒1が条件Bを満たす場合には、第2触媒層30中のSrが、第2触媒層30中のRhの排ガス浄化性能を低下させるという欠点がある。これに対して、触媒1が条件Aを満たす場合には、触媒1が条件Bを満たす場合と比較して、第1触媒層20中のPdのリンによる被毒を防止する効果は劣るものの、第1触媒層20中のSrが、第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能を低下させるという欠点はない。このため、SrによるPdのリン被毒の防止と、Srによる貴金属元素の排ガス浄化性能の低下の防止とをバランス良く実現する観点から、実施形態a~cのうち、実施形態a及びb(すなわち、触媒1が、条件A及びBのうち、少なくとも条件Aを満たすこと)が好ましく、実施形態b(すなわち、触媒1が、条件Aを満たし、条件Bを満たさないこと)がより好ましい。
【0112】
第1触媒層20中のSrの金属含有率及び第2触媒層30中のSrの金属含有率はそれぞれ、第1触媒層20中の各金属元素の金属換算含有率と同様にして求めることができる。
【0113】
触媒1が条件Aを満たす場合、第1触媒層20は、1種又は2種以上のSr源を含み、触媒1が条件Bを満たす場合、第2触媒層30は、1種又は2種以上のSr源を含む。
【0114】
Sr源は、Srを含む化合物である限り特に限定されない。Srの存在形態は、特に限定されない。Srは、例えば、酸化物、炭酸塩及び硫酸塩から選択される1種又は2種以上の形態で存在し得る。Srの効果をより効果的に発揮させる観点から、Srは、SrO及びSrCOから選択される1種又は2種の形態で存在していることが好ましい。
【0115】
触媒1が条件Aを満たす場合、触媒1は、以下の条件C:
(C)第1触媒層20の質量を基準とする第1触媒層20中のSrの金属換算含有率(質量%)の、第2触媒層30の質量を基準とする第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率(質量%)に対する比(第1触媒層20中のSrの金属換算含有率(質量%)/第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率(質量%))が、0.0010以上0.0800以下である
を満たすことが好ましい。Ce-Zr-Al系複合酸化物の嵩密度が大きいことに起因して第1触媒層20中のPdがリン被毒を受けやすくなる現象は、第2触媒層30中にCe-Zr-Al系複合酸化物が多く含まれる場合に特に顕著である。したがって、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の量に見合った量のSrが第1触媒層20中に含まれていることにより、すなわち、触媒1が条件Cを満たすことにより、第1触媒層20中のPdのリン被毒をより効果的に防止することができる。
【0116】
第1触媒層20中のPdのリン被毒をより効果的に防止する観点から、第1触媒層20の質量を基準とする第1触媒層20中のSrの金属換算含有率(質量%)の、第2触媒層30の質量を基準とする第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率(質量%)に対する比は、好ましくは0.0010以上0.0800以下、より好ましくは0.0020以上0.0500以下、より一層好ましくは0.0040以上0.0130以下である。
【0117】
触媒1が条件Bを満たす場合、触媒1は、以下の条件D:
(D)第2触媒層30の質量を基準とする第2触媒層30中のSrの金属換算含有率(質量%)の、第2触媒層30の質量を基準とする第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率(質量%)に対する比(第2触媒層30中のSrの金属換算含有率(質量%)/第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率(質量%))が、0.0010以上0.0800以下である
を満たすことが好ましい。Ce-Zr-Al系複合酸化物の嵩密度が大きいことに起因して第1触媒層20中のPdがリン被毒を受けやすくなる現象は、第2触媒層30中にCe-Zr-Al系複合酸化物中が多く含まれる場合に特に顕著である。したがって、第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の量に見合った量のSrが第2触媒層30中に含まれていることにより、すなわち、触媒1が条件Dを満たすことにより、第1触媒層20中のPdのリン被毒をより効果的に防止することができる。
【0118】
第1触媒層20中のPdのリン被毒をより効果的に防止する観点から、第2触媒層30の質量を基準とする第2触媒層30中のSrの金属換算含有率(質量%)の、第2触媒層30の質量を基準とする第2触媒層30中のCe-Zr-Al系複合酸化物の含有率(質量%)に対する比は、好ましくは0.0010以上0.0800以下、より好ましくは0.0020以上0.0500以下、より一層好ましくは0.0040以上0.0130以下である。
【0119】
<触媒の作用>
触媒1では、第2触媒層30が第1触媒層20の上側に設けられている。したがって、セル13の排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、第2触媒層30と接触した後、第1触媒層20と接触する。第2触媒層30と接触した排ガスは、第2触媒層30中の触媒活性成分(例えば、Rh)により浄化され、第1触媒層20と接触した排ガスは、第1触媒層20中の触媒活性成分(例えば、Pd)により浄化される。第2触媒層30がCe-Zr-Al系複合酸化物を含むことにより、高温環境に曝露された後のRhの排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下を防止することができる。また、触媒1が条件A及びBの少なくとも一方を満たすことにより、リン(例えば、エンジンオイル中のリン)に曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)の低下を防止することができる。したがって、触媒1は、高温環境に曝露された後のRhの排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止と、リン(例えば、エンジンオイル中のリン)に曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における第1触媒層20中のPdの排ガス浄化性能)の低下の防止とを実現することができる。
【0120】
<触媒の製造>
触媒1は、基材10に第1触媒層20を形成した後、第1触媒層20の上側に第2触媒層30を形成することにより製造することができる。
【0121】
第1触媒層20は、Pdの供給源(例えば、Pd塩)、場合によりSrの供給源(例えば、Sr塩)及び場合によりその他の成分(例えば、無機酸化物、バインダ、溶媒等)を混合して第1スラリーを調製し、第1スラリーを基材10上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0122】
第2触媒層30は、Rhの供給源(例えば、Rh塩)、Ce-Zr-Al系複合酸化物、場合によりSrの供給源(例えば、Sr塩)及び場合によりその他の成分(例えば、Ce-Zr-Al系複合酸化物以外の無機酸化物、バインダ、溶媒等)を混合して第2スラリーを調製し、第2スラリーを第1触媒層20上に塗布し、乾燥し、焼成することにより形成することができる。
【0123】
Pdの供給源としては、例えば、Pd塩が挙げられ、Pd塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。Rhの供給源としては、例えば、Rh塩が挙げられ、Rh塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。Srの供給源としては、例えば、Sr塩が挙げられ、Sr塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物等が挙げられる。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。
【0124】
乾燥温度は、例えば70℃以上150℃以下であり、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。焼成温度は、例えば200℃以上700℃以下であり、焼成時間は、例えば0.5時間以上5時間以下である。焼成は、例えば、大気雰囲気下で行うことができる。
【実施例0125】
〔実施例1〕
(1)下層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料(Ce-Zr系複合酸化物,以下「CZ」という場合がある。)を用意した。
CeのCeO換算含有率:40.0質量%,ZrのZrO換算含有率:50.0質量%,Ce以外の希土類元素の酸化物換算含有率:10.0質量%
【0126】
調合容器に、硝酸パラジウム水溶液、Ce-Zr系複合酸化物、La修飾アルミナ(La修飾量:1質量%)、硝酸ストロンチウム、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、下層形成用スラリーを調製した。下層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の下層の質量を基準(100質量%)として、Pdが金属換算で4.0質量%、Ce-Zr系複合酸化物が40.0質量%、La修飾アルミナが45.4質量%、Srが金属換算で0.5質量%(SrO換算で0.6質量%)、アルミナゾルの固形分が10.0質量%となるように調整した。なお、硝酸ストロンチウムは焼成により酸化ストロンチウムに変換される。
【0127】
(2)下層の形成
フロースルー型基材として、厚みが50~70μmの隔壁で区画された軸方向に延びるセルを、軸方向と直交する面において600セル/インチの密度で有し、体積が1.0Lであるフロースルー型基材を用意した。
【0128】
下層形成用スラリーにフロースルー型基材を浸漬し、下層形成用スラリーが塗布されたフロースルー型基材を150℃で0.5時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成して、下層を形成した。フロースルー型基材のうち下層が形成されている部分の単位体積当たりの下層の質量は、100g/Lであった。
【0129】
(3)上層形成用スラリーの調製
下記組成のOSC材料(Ce-Zr-Al系複合酸化物,以下「CZA」という場合がある。)を用意した。
CeのCeO換算含有率:10.0質量%,ZrのZrO換算含有率:35.0質量%,AlのAl換算含有率:45.0質量%,LaのLa換算含有率:5.0質量%,Ce及びLa以外の希土類元素の酸化物換算含有率:5.0質量%
【0130】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、Ce-Zr-Al系複合酸化物、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で1.0質量%、Ce-Zr-Al系複合酸化物が89.0質量%、アルミナゾルの固形分が10.0質量%となるように調整した。
【0131】
(4)上層の形成
上層形成用スラリーに、下層が形成されたフロースルー型基材を浸漬し、上層形成用スラリーが塗布されたフロースルー型基材を150℃で0.5時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成して、下層上に上層を形成した。フロースルー型基材のうち上層が形成されている部分の単位体積当たりの上層の質量は、80g/Lであった。
【0132】
以上のようにして、フロースルー型基材に形成された下層と、下層上に形成された上層とを備える排ガス浄化用触媒を製造した。
【0133】
〔実施例2~4〕
下層用形成スラリーにおいて、硝酸ストロンチウムの添加量を、焼成後の下層の質量を基準(100質量%)として、Srが金属換算で1.0質量%(実施例2)、2.5質量%(実施例3)又は5.0質量%(実施例4)となるように調整し、硝酸ストロンチウムの添加量の増加分、La修飾アルミナの添加量を減らした点を除き、実施例1と同様にして、実施例2~4の排ガス浄化用触媒を製造した。
【0134】
〔比較例1〕
下層形成用スラリーの調製及び下層の形成を実施例2と同様に行った。
【0135】
下記組成のOSC材料(Ce-Zr系複合酸化物,以下「CZ」という場合がある。)を準備した。
CeのCeO換算含有率:15.0質量%,ZrのZrO換算含有率:75.0質量%,Ce以外の希土類元素の酸化物換算含有率:10.0質量%
【0136】
調合容器に、硝酸ロジウム水溶液、Ce-Zr系複合酸化物、La修飾アルミナ(La修飾量:1質量%)、アルミナゾル及び水を加え、混合及び撹拌し、上層形成用スラリーを調製した。上層形成用スラリー中の各成分量は、焼成後の上層の質量を基準(100質量%)として、Rhが金属換算で1.0質量%、Ce-Zr系複合酸化物が50.0質量%、La修飾アルミナが39.0質量%、アルミナゾルの固形分が10.0質量%となるように調整した。この上層用スラリーを用いた点を除き、実施例2と同様にして、上層を形成した。
【0137】
〔比較例2〕
下層用形成スラリーにおいて、硝酸ストロンチウムを添加せず、硝酸ストロンチウムの添加量の減少分、La修飾アルミナの添加量を増やした点を除き、実施例1と同様にして、比較例2の排ガス浄化用触媒を製造した。
【0138】
〔試験例〕
(1)触媒の熱処理
30mLにコアリングした排ガス浄化用触媒に対して、石英製の管状炉を使用して1000℃で20時間、10体積%HO雰囲気下、下記FCモードにて熱処理を行った。熱処理後の触媒を評価用サンプルとして使用した。
FCモード:下記組成のモデルガス(3L/分)と空気(3L/分)とを交互に流した。
モデルガス流量:C 6mL/分、O 71mL/分、N 2923mL/分(計3L/分)とした。
10体積%HOは水入りタンクより気化させ、水蒸気としてモデルガス又は空気に混入させた。温度により飽和水蒸気圧を調整し、上記体積%の水蒸気量とした。
【0139】
(2)触媒のリン被毒処理
石英製の管状炉中で、上記(1)の熱処理後の触媒の上流側からジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む溶液を噴霧しながら、750℃で20時間、10体積%HO雰囲気下、下記ガス流量条件でリン被毒処理を行った。
各ガス流量条件:N 11.9L/分、CO 3.0L/分、O 0.1L/分(計15L/分)とした。
10体積%HOは水入りタンクより気化させ、水蒸気としてモデルガス又は空気に混入させた。温度により飽和水蒸気圧を調整し、上記体積%の水蒸気量とした。
【0140】
(3)排ガス浄化性能(T50)の評価
上記(1)又は上記(2)の処理を施した触媒を排気通路に配置し、排気モデルガス(CO 0.50vol%,H 0.17vol%,O 0.50vol%,NO 400volppm,C 1180volppm,CO 14vol%,HO 10vol%,N 残部)を空間速度100000/hで流通させながら、20℃/分の昇温温度で500℃まで昇温し、全炭化水素(THC)、窒素酸化物(NOx)及び一酸化炭素(CO)の浄化率を連続的に測定し、全炭化水素(THC)、窒素酸化物(NOx)及び一酸化炭素(CO)の浄化率が50%に達する温度(ライトオフ温度T50)(℃)を求めた。ライトオフ温度T50は、昇温時について求めた。結果を表1に示す。
【0141】
(4)過渡NOx排出量の評価
上記(2)の処理を施した触媒を排気通路に配置し、下記リーン条件、N、下記リッチ条件の順番で雰囲気を切り替え、空間速度100000/h、400℃で各5分ずつ流通させた。
リーン条件:NO 1000volppm,O 5000volppm,N 残部
リッチ条件:CO 5000volppm,N 残部
【0142】
リッチ条件に切り替えた際に排出されるNO及びNOの合計量を過渡NOx排出量(μmol)として評価を行った。
【0143】
【表1】
【0144】
実施例1~4の排ガス浄化用触媒は、基材と、Pdを含む下層と、Rh及びCe-Zr-Al系複合酸化物を含む上層とを備え、以下の条件A:
(A)下層が、Srを含み、下層中のSrの金属換算含有率が、下層の質量を基準として、0.1質量%以上である
を満たす。
【0145】
比較例1の排ガス浄化用触媒は、基材と、Pdを含む下層と、Rhを含む上層とを備え、以下の条件A:
(A)下層が、Srを含み、下層中のSrの金属換算含有率が、下層の質量を基準として、0.1質量%以上である
を満たす。しかしながら、比較例1の排ガス浄化用触媒において、上層は、Ce-Zr系複合酸化物は含むが、Ce-Zr-Al系複合酸化物は含まない。
【0146】
比較例2の排ガス浄化用触媒は、基材と、Pdを含む下層と、Rh及びCe-Zr-Al系複合酸化物を含む上層とを備える。しかしながら、比較例2の排ガス浄化用触媒は、以下の条件A:
(A)下層が、Srを含み、下層中のSrの金属換算含有率が、下層の質量を基準として、0.1質量%以上である
を満たさない。また、比較例2の排ガス浄化用触媒は、以下の条件B:
(B)上層が、Srを含み、上層中のSrの金属換算含有率が、上層の質量を基準として、0.1質量%以上である
も満たさない。
【0147】
表1に示すように、実施例1~4の排ガス浄化用触媒は、比較例1の排ガス浄化用触媒と比較して、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下をより効果的に防止することができる。
【0148】
表1に示すように、実施例1~4の排ガス浄化用触媒は、比較例2の排ガス浄化用触媒と比較して、リンに曝露された後の排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下をより効果的に防止することができる。
【0149】
このように、実施例1~4の排ガス浄化用触媒は、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能(特に、高温環境に曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止と、リンに曝露された後の排ガス浄化性能(特に、リンに曝露された後の排ガス浄化性能のうち、内燃機関の始動直後の低温環境における排ガス浄化性能)の低下の防止とを実現することができる。
【符号の説明】
【0150】
P・・・内燃機関の排気管
1・・・排ガス浄化用触媒
10・・・基材
11・・・筒状部
12・・・隔壁部
13・・・セル
20・・・第1触媒層
30・・・第2触媒層
図1
図2
図3
図4