(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178312
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】不快香味改善組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241217BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20241217BHJP
C12P 1/00 20060101ALI20241217BHJP
C12P 7/6418 20220101ALI20241217BHJP
A23L 11/65 20210101ALN20241217BHJP
A23C 9/13 20060101ALN20241217BHJP
A23C 19/00 20060101ALN20241217BHJP
A23L 11/00 20210101ALN20241217BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20241217BHJP
A23L 2/38 20210101ALN20241217BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20241217BHJP
A23L 2/66 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/20 D
C12P1/00 A
C12P7/6418
A23L11/65
A23C9/13
A23C19/00
A23L11/00 F
A23L2/00 B
A23L2/38 P
A23L2/38 R
A23L2/52
A23L2/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024163515
(22)【出願日】2024-09-20
(62)【分割の表示】P 2022125552の分割
【原出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000214537
【氏名又は名称】長谷川香料株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上敷領 俊
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸司
(72)【発明者】
【氏名】細貝 知弘
(72)【発明者】
【氏名】兼先 宏典
(72)【発明者】
【氏名】小林 隼人
(57)【要約】
【課題】不快香味改善に有効な組成物を提供する。
【解決手段】パルミトレイン酸を有効成分として含む不快香味改善組成物とする。好ましくは、不快香味が、豆類含有飲食品、酢含有飲食品、麦類含有飲食品、アーモンド含有飲食品、ビタミン類含有飲食品、または乳含有飲食品から感じられる不快香味である。例えば、不快香味が、酸味、酸臭、えぐ味、苦味、渋味、ホエー臭、穀物臭、香ばしさ、油脂劣化臭、青臭さ、カビ臭、硫黄臭およびフェノール臭からなる群から選択される1種以上であってよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1および2を含む、パルミトレイン酸を有効成分として含む不快香味改善組成物の製造方法。
(工程1) パルミトレイン酸を分子中に含む化合物を含む組成物を用意する工程
(工程2) 前記工程1で用意した前記組成物を酵素処理することによって前記化合物から遊離したパルミトレイン酸を含む酵素処理物を得る工程
【請求項2】
前記酵素処理がリパーゼ処理である、請求項1に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程2の後に、前記酵素処理物を乳化させる工程をさらに含む、請求項1または2に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
【請求項4】
前記組成物が植物果実もしくは種実、その搾汁もしくは搾油、または該搾汁もしくは搾油の残渣である、請求項1または2に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
【請求項5】
前記組成物がマカダミア種子の搾油である、請求項1または2に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不快香味改善組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品や香粧品など各種消費財に対する消費者の香りや味(本明細書では総じて香味ということもある)への要求は高度化しており、不快な香味を改善するための技術が複数提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、7-ドデセン酸、8-ドデセン酸、9-ドデセン酸または10-ドデセン酸を、飲食品に添加することにより、飲食品に有する不快味、特に酸味・苦味・渋味由来の不快味を低減し、飲食品の風味を改善することが提案されている。また、特許文献2には、クロロゲン酸を有効成分として含有することを特徴とするカゼイン又はコラーゲンのカゼイン臭又はコラーゲン臭の臭気抑制剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-188705号公報
【特許文献2】特開2003-210119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来用いられてきた不快香味改善のための素材では、各種不快香味の改善に十分に対応できておらず、不快香味を改善できる有用な素材の発見が課題となっていた。従って、本発明の課題は、不快香味の改善に有用な化合物を含む不快香味改善組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意研究したところ、パルミトレイン酸を含む組成物が不快香味改善に有用であることを見出し、本発明に至った。
【0007】
かくして、本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
[1] 下記工程1および2を含む、パルミトレイン酸を有効成分として含む不快香味改善組成物の製造方法。
(工程1) パルミトレイン酸を分子中に含む化合物を含む組成物を用意する工程
(工程2) 前記工程1で用意した前記組成物を酵素処理することによって前記化合物から遊離したパルミトレイン酸を含む酵素処理物を得る工程
[2] 前記酵素処理がリパーゼ処理である、[1]に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
[3] 前記工程2の後に、前記酵素処理物を乳化させる工程をさらに含む、[1]または[2]に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
[4] 前記組成物が植物果実もしくは種実、その搾汁もしくは搾油、または該搾汁もしくは搾油の残渣である、[1]または[2]に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
[5] 前記組成物がマカダミア種子の搾油である、[1]または[2]に記載の不快香味改善組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、不快香味の改善に有効な不快香味改善組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、具体例を挙げつつさらに詳細に説明する。本明細書において、「~」は下限値および上限値を含む範囲を意味し、濃度(ppt、ppb、ppmなど)、%は特に断りのない限りそれぞれ質量濃度、質量%を表し、濃度とは特に断りのない限り最終濃度とする。
【0010】
[不快香味改善組成物]
本発明の一実施態様に係る不快香味改善組成物(本明細書では本件不快香味改善組成物ということもある)は、パルミトレイン酸を含む組成物であり、各種消費財に添加してその消費財の不快香味を改善できるものである。パルミトレイン酸とは、特に断りのない限り遊離パルミトレイン酸を意味する。
【0011】
本明細書において「添加」とは、ある対象に噴霧、滴下などによって単に加えること、およびある対象と混ぜ合わせることの、少なくとも1つを含む。
【0012】
本明細書において「香味」とは、代表的には嗅覚と味覚を含む感覚を意味し、「不快香味」とは、動物、代表的にはヒトが感じられる不快な香味を意味する。本発明の一態様において、不快香味とは、酸味、酸臭、えぐ味、苦味、渋味、ホエー臭、穀物臭、香ばしさ、油脂劣化臭、青臭さ、カビ臭、硫黄臭およびフェノール臭からなる群から選択される1種以上を含むものであってよい。本発明の他の一態様においては、前掲の酸味、酸臭、えぐ味、苦味、渋味、ホエー臭、穀物臭、香ばしさ、油脂劣化臭、青臭さ、カビ臭、硫黄臭およびフェノール臭からなる群から選択される1種以上が、豆類(特に大豆)、麦類、アーモンド、ビタミン類、乳または酢に由来する不快香味であってよい。すなわち、本発明の不快香味改善組成物は、例えば、豆類(特に大豆)含有飲食品、麦類含有飲食品、アーモンド含有飲食品、ビタミン類含有飲食品、乳含有飲食品または酢含有飲食品の不快香味の改善に有効に使用することができる。穀物臭とは、大麦、小麦に代表される穀類の乾燥した粉を思わせる香味を含む感覚を意味する。ホエー臭とは、やや酸味のある獣臭さまたは生臭さを含む香味の感覚を意味する。油脂劣化臭とは、揚げ油から感じられるようなすえた油のような香味を含む香味の感覚を意味する。フェノール臭とは、薬品のようなツンとした匂いを含む香味の感覚を意味する。
【0013】
本明細書において「改善」とは、消費財から感じられる不快香味が、本件不快香味改善組成物を添加しない場合に比べて弱いまたは実質的に感じない状態にすることを含む。本件不快香味改善組成物は、不快香味改善可能な香味付与組成物として使用することもでき、このような使用も本発明の不快香味改善の用途に含まれる。
【0014】
本件不快香味改善組成物の例として、飲食品、香粧品、保健衛生品など各種の消費財に添加できる、パルミトレイン酸を含む各種添加物が挙げられる。より具体的な例としては、各種消費財に添加できる、パルミトレイン酸を含む、香料組成物、各種動植物エキス、または各種動植物原料の発酵品、酵素処理品もしくは加熱処理品などが挙げられ、これらの形態としては、水溶性または油溶性溶媒溶液、乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)が挙げられるが、本発明は以上の例に限定されない。
【0015】
本件不快香味改善組成物は、パルミトレイン酸に加えて、溶媒、分散媒、パルミトレイン酸以外の香味付与成分、抗酸化成分などの補助成分など任意の他の成分(具体例は後述)を含み得るが、実質的にパルミトレイン酸のみからなるものであってもよい。本件不快香味改善組成物がパルミトレイン酸以外の成分も含む場合、当該不快香味改善組成物中のパルミトレイン酸の濃度は、不快香味改善組成物の添加対象や香気特性に応じて任意に決定できる。
【0016】
本件不快香味改善組成物中のパルミトレイン酸の濃度の例として、本件不快香味改善組成物が実質的にパルミトレイン酸のみ、またはパルミトレイン酸およびその溶媒または分散媒(具体例は後述)のみを含む場合は、10ppb~100%の範囲内が例示でき、好ましい例として10ppm~99%の範囲内が挙げられる。例えば、市販の純度95%以上(例えば98%、99%など)のパルミトレイン酸を本件不快香味改善組成物として使用することができる。
【0017】
本件不快香味改善組成物中のパルミトレイン酸の濃度の例として、特に本件不快香味改善組成物がパルミトレイン酸およびその溶媒以外にも成分を含む場合には、当該不快香味改善組成物中のパルミトレイン酸の濃度は、上述したように不快香味改善組成物の添加対象や香気特性に応じて任意に決定でき、消費財に不快香味改善効果が奏される濃度で添加可能なように適当な濃度にすればよく、例えば、10ppm~90%、より具体的には、下限値を10ppm、100ppm、1000ppm、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%のいずれかとし、上限値を90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%、1000ppm、100ppmのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせによる範囲内とすることができるが、これらに限定されない。好ましくは1%~60%、より好ましくは5%~55%、さらに好ましくは10~50%、さらに好ましくは15~35%の範囲内が挙げられる。なお、不快香味改善組成物の処方などにも依存するが、不快香味改善組成物中のパルミトレイン酸の濃度を10ppm~90%とすると、パルミトレイン酸由来の香味が過度に突出することなく消費財への不快香味改善効果が得られやすくなる。しかし、本件不快香味改善組成物やその添加対象の香味その他条件によっては、パルミトレイン酸を10ppm~90%の範囲外の濃度で含んでよい。
【0018】
本件不快香味改善組成物において、パルミトレイン酸に加えてさらに含み得る任意の他の成分の具体例として、各種類の香料化合物、香料組成物、色素類、ビタミン類、機能性物質、魚肉エキス類、畜肉エキス類、動植物エキス類、動植物油脂、酵母エキス類、動植物タンパク質類、動植物タンパク質分解物類、澱粉、デキストリン、糖類、アミノ酸類、核酸類、有機酸類、溶剤、乳化剤、比重調整剤、抗酸化剤などを例示することができる。例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品用香料、平成12年1月14日発行」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」(平成12年度厚生科学研究報告書、日本香料工業会、平成13年3月発行)、および「合成香料 化学と商品知識」(2016年12月20日増補新版発行、合成香料編集委員会編集、化学工業日報社)に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
【0019】
香料化合物のその他の例として、炭化水素化合物としては、α-ピネン、β-ピネン、ミルセン、カンフェン、リモネンなどのモノテルペン、バレンセン、セドレン、カリオフィレン、ロンギフォレンなどのセスキテルペン、1,3,5-ウンデカトリエンなどが挙げられる。
【0020】
アルコール化合物としては、ブタノール、ペンタノール、3-オクタノール、ヘキサノール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、プレノール、2,6-ノナジエノールなどの飽和または不飽和アルコール、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、テトラヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、テルピネオールなどのテルペンアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールが挙げられる。
【0021】
アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、(E)-2-ヘキセナール、2,4-オクタジエナールなどの飽和または不飽和アルデヒド、シトロネラール、ヒドロキシシトロネラール、シトラール、ミルテナール、ペリルアルデヒドなどのテルペンアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、p-トリルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0022】
ケトン化合物としては、2-ヘプタノン、2-ウンデカノン、1-オクテン-3-オン、アセトインなどの飽和または不飽和ケトン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、マルトール、エチルマルトール、シクロテン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノンなどのジケトンおよびヒドロキシケトン、カルボン、メントン、ヌートカトンなどのテルペンケトン、α-イオノン、β-イオノン、β-ダマセノンなどのテルペン分解物に由来するケトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトンが挙げられる。
【0023】
フランまたはエーテル化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、ローズオキシド、リナロールオキシド、メントフラン、テアスピラン、エストラゴール、オイゲノール、1,8-シネオールなどが挙げられる。
【0024】
エステル化合物としては、酢酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、酪酸イソアミル、2-メチル酪酸エチル、3-メチル酪酸エチル、イソ酪酸2-メチルブチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、カプロン酸エチル、イソ吉草酸イソアミル、ノナン酸エチルなどの脂肪族エステル、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、酢酸ラバンジュリル、酢酸テルペニルなどのテルペンアルコールエステル、酢酸ベンジル、酪酸ベンジル、サリチル酸メチル、サリチル酸ベンジル、ケイ皮酸メチル、プロピオン酸シンナミル、安息香酸エチル、イソ吉草酸シンナミル、3-メチル-2-フェニルグリシド酸エチルなどの芳香族エステルが挙げられる。
【0025】
ラクトン化合物としては、γ-デカラクトン、γ-ドデカラクトン、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、7-デセン-4-オリド、2-デセン-5-オリドなどの飽和または不飽和ラクトンが挙げられる。
【0026】
酸化合物としては、酢酸、酪酸、オクタン酸、イソバレル酸、カプロン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの飽和または不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0027】
含窒素化合物としては、ピリジン、アルキル置換ピラジン、アントラニル酸メチル、トリメチルピラジンなどが挙げられる。
【0028】
含硫化合物としては、メタンチオール、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、アリルイソチオシアネート、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-1-ブタンチオール、2-メチル-1-ブタンチオール、およびフルフリルメルカプタンなどが挙げられる。
【0029】
天然精油としては、スイートオレンジ、ビターオレンジ、プチグレン、レモン、ベルガモット、マンダリン、ネロリ、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミール、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ヒヤシンス、ライラック、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、スギ、ヒノキ、ベチバー、パチョリ、ラブダナム、エルダーフラワー、クラリセージなどが挙げられる。
【0030】
各種動植物エキスとしては、ハーブまたはスパイスの抽出物、コーヒー、緑茶、紅茶、またはウーロン茶などの各種茶抽出物や、乳または乳加工品およびこれらのリパーゼおよび/またはプロテアーゼなどの各種酵素分解物などが挙げられる。
【0031】
また、公知の不快香味改善に関係する素材と併用してもよく、そのような素材として、例えば、特開2021-171023号公報、特開2021-142111号公報、特開2021-108822号公報、特開2020-188705号公報、特開2018-87153号公報、特開2015-144621号公報、特許6009616号公報、特開2015-67558号公報、特許6158664号公報、特開2015-67557号公報、特開2014-240360号公報、特許6216543号公報、特開2014-34517号公報、特許5220942号公報、特開2013-143930号公報、特許5019659号公報、特開2013-21926号公報、特許4925488号公報、特開2012-80840号公報、特許5198533号公報、特開2012-80778号公報、特許6005333号公報、特開2012-34603号公報、特許5340238号公報、特開2011-103873号公報、特許4562049号公報、特開2011-223942号公報、特許5349399号公報、特開2011-103774号公報、特許4606505号公報、特開2008-253217号公報、特開2006-104257号公報、特許4391378号公報、特開2004-248611号公報、特許4216091号公報、特開2004-18829号公報、特開2003-210119号公報、特許3830137号公報、特開2003-96486号公報、特開平9-221429号公報、特許3431383号公報、特開平8-119843号公報に記載のものを採用してよい。
【0032】
特に好ましく併用できる動植物エキスとして、動植物エキスに適宜アミノ酸や糖類を加え加熱処理(例えば80~200℃、好ましくは100~180℃の範囲内)を施したもの(例えば、特開2018-102308号公報、特開2018-102309号公報、特開2018-102310号公報、特開2018-102307号公報、特開2017-51206号公報、国際公開2016/72114号、国際公開2016/72111号、国際公開2016/63394号、特開2015-112038号公報、特開2013-252111号公報、特開2013-252113号公報、特開2013-252112号公報、または特開2013-252114号公報などに記載のもの)が挙げられる。
【0033】
パルミトレイン酸は油溶性であるため、本件不快香味改善組成物を水中油型の乳化製剤とすることで、各種飲食品に添加しても水分からのパルミトレイン酸の分離を起こさず、広範な飲食品に使用することができる。また、乳化製剤とすることで、パルミトレイン酸自体またはパルミトレイン酸を溶剤に単に溶解させた溶液よりも、香味改善効果が持続し、特に後味の不快香味に対する改善効果が高まる。
【0034】
本発明の別の一態様では、本件不快香味改善組成物として、パルミトレイン酸を含む植物果実または種実、その搾汁、搾油、または搾汁もしくは搾油の残渣を用いてもよく、さらに乳化処理によって乳化製剤としたもの、それをさらに粉末化処理を行って粉末製剤としたものを用いることもできる(乳化処理および粉末処理手順の具体例については後述する。)。
【0035】
本発明のさらに別の一態様では、本件不快香味改善組成物として、パルミトレイン酸を分子中に含む化合物(本明細書では、パルミトレイン酸内包化合物ともいう)を含む組成物の酵素処理物であって、当該酵素処理によってパルミトレイン酸内包化合物から遊離したパルミトレイン酸を含む酵素処理物を用いることができる。
【0036】
本明細書においてパルミトレイン酸を分子中に含む化合物(パルミトレイン酸内包化合物)とは、その化合物の分子構造内にパルミトレイン酸の分子構造またはその一部分に含み、酵素処理(酵素処理手順の具体例については後述する。)によってパルミトレイン酸が遊離可能な化合物を意味する。代表的には、パルミトレイン酸のカルボキシル基がグリセロールのヒドロキシ基とエステル結合した構造を有するグリセリド類であって、酵素処理はリパーゼ処理であり、リパーゼによるエステル結合の加水分解作用によってパルミトレイン酸が遊離する態様が挙げられる。パルミトレイン酸内包化合物の具体例としては、トリアシルグリセロール(トリグリセリドとも呼ばれる)であって、3箇所のエステル結合中、少なくとも1箇所のエステル結合がパルミトレイン酸とのエステル結合であるものが挙げられる。ただし本発明はこの態様に限定されず、酵素処理による加水分解その他作用によってパルミトレイン酸が遊離可能な任意の化合物をパルミトレイン酸内包化合物とすることができる。
【0037】
なお、パルミトレイン酸内包化合物を含む組成物は、パルミトレイン酸およびパルミトレイン酸内包化合物の両方を含むものであってもよい。この場合、所望のパルミトレイン酸濃度に応じて、前記酵素処理を行ってパルミトレイン酸内包化合物からパルミトレイン酸を遊離させてもよく、当該酵素処理を行わずにパルミトレイン酸を含む組成物としてそのまま(またはさらに乳化および/または粉末処理をしたものを)本発明の不快香味改善組成物として使用してもよい。
【0038】
パルミトレイン酸内包化合物を含む組成物は、好ましくは植物果実または種実、その搾汁、搾油、または搾汁もしくは搾油の残渣であり、さらに好ましくは植物の果実または種実の搾油であり、その具体例として、パルミトレイン酸内包化合物を含むマカダミアナッツオイル、アボカドオイル、アーモンドオイル、カシューナッツオイル、ヘーゼルナッツオイルおよびピスタチオオイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本件不快香味改善組成物が前記リパーゼ処理物である場合のパルミトレイン酸濃度としては、一定以上のパルミトレイン酸濃度を確保することで消費財への添加量を少量にできる観点、リパーゼ処理の時間や処理コストの費用対効果の観点から、10~40%、好ましくは15~35%の範囲内が挙げられる。前記乳化製剤の場合のパルミトレイン酸濃度としては、一定以上のパルミトレイン酸濃度を確保することで消費財への添加量を少量にできる観点からは、100ppm~1%の範囲内が例示でき、2000ppm~5000ppmの範囲内が好適濃度範囲の一例である。前記粉末製剤の場合のパルミトレイン酸濃度としては、一定以上のパルミトレイン酸濃度を確保することで消費財への添加量を少量にできる観点からは、100ppm~5%の範囲内が例示でき、1%~3%が好適濃度範囲の一例である。ただし、本件不快香味改善組成物の添加対象や所望の添加効果に応じて、パルミトレイン酸の濃度はここで例示した範囲外の濃度を採用することもできる。
【0040】
[不快香味改善組成物の製造方法]
本件不快香味改善組成物の製造方法は、パルミトレイン酸を含む組成物(本明細書では、実質的にパルミトレイン酸からなるもの、またはパルミトレイン酸およびその他成分を含むものの両方を含む。)を消費財に添加可能な組成物に添加することを含み、この添加によって得られた組成物を本件不快香味改善組成物とすることができ、各種消費財に添加可能な組成物の例としては、飲食品、香粧品、保健衛生品に添加することが可能な溶媒、抗酸化剤、色素、およびその他添加物から選択される1種以上を含む組成物が例示できる。また、さらにそれを乳化製剤、粉末製剤、その他固体製剤(固形脂など)としたものを本件不快香味組成物としてもよい。
【0041】
使用する溶媒の種類に特に制限はない。水溶性溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシルグリコール、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ジエチルフタレートなどを例示することができる。これらのうち、飲食品へ使用する場合には、エタノールまたはプロピレングリコールが特に好ましい。油溶性溶媒としては、植物性油脂、動物性油脂、精製油脂類(例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの加工油脂や、トリアセチン、トリプロピオニンなどの短鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる)、ハーコリン、各種精油、トリエチルシトレートなどを例示することができる。
【0042】
本件不快香味改善組成物を乳化製剤とするためには、パルミトレイン酸またはパルミトレイン酸を含む組成物を、適宜植物油脂で希釈して、さらに必要に応じて比重調整剤(ショ糖酢酸イソ酪酸エステルなど)、油溶性抗酸化剤を含有させたのち、水溶性溶媒および乳化剤と共に乳化して得ることができる。乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種類の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、加工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びおよびその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン、キラヤサポニン、カゼインナトリウムなどの乳化剤を使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、パルミトレイン酸1質量部に対し、約0.01~約100質量部、好ましくは約0.1~約50質量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶媒液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種類または2種類以上の混合物を添加することができる。
【0043】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、アラビアガム、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜添加することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0044】
本件不快香味改善組成物の製造方法の別の一態様として、少なくとも下記の工程1および2を含む方法が挙げられる。工程2で得られた酵素処理物をそのまま本件不快香味改善組成物として用いることができる。
(工程1)パルミトレイン酸を分子中に含む化合物(パルミトレイン酸内包化合物)を含む組成物を用意する工程
(工程2) 工程1で用意した前記組成物を酵素処理することによって前記化合物から遊離したパルミトレイン酸を含む酵素処理物を得る工程(本件酵素処理物ということもある。)。
【0045】
酵素処理とは上述のとおりパルミトレイン酸内包化合物からパルミトレイン酸を遊離させることが可能な処理を意味する。工程2で得られた本件酵素処理物を本件不快香味改善組成物として使用することができる。
【0046】
さらに、工程1の前または工程1と2との間に、パルミトレイン酸濃度を高める目的で、工程1の組成物にパルミトレイン酸を含む組成物を添加する工程を含んでもよい。
【0047】
前記組成物は、好ましくは上述のとおり植物果実もしくは種実、その搾汁もしくは搾油、または該搾汁もしくは搾油の残渣である。好ましくは植物の果実または種実の搾油であり、より好ましくは植物種実の搾油であり、具体例としてマカダミアナッツオイル、アボカドオイル、アーモンドオイル、カシューナッツオイル、ヘーゼルナッツオイルおよびピスタチオオイルの搾油が好ましく挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
酵素処理の具体的手順の例として、パルミトレイン酸内包化合物を含む植物種実の搾油を適宜加熱殺菌(例えば70~98℃で5~30分間)した後、任意のリパーゼおよび水を添加して当該リパーゼの至適温度にて10~30時間程度リパーゼ処理することによって、パルミトレイン酸内包化合物からパルミトレイン酸を遊離させる処理手順が例示できる。その後必要であればさらなる加熱殺菌、水層の除去、濾過を行って、本件不快香味改善組成物とすることができる。このようにして得られたリパーゼ処理物中のパルミトレイン酸の濃度は特に限定されず、例えば上述の濃度範囲内とすることができる。
【0049】
本件酵素処理物を上述の乳化処理によって乳化製剤としたものや、上述の粉末化処理によって粉末製剤としたものを本件不快香味改善組成物とすることもでき、乳化製剤または粉末製剤中のパルミトレイン酸濃度も特に限定されず、上述の濃度範囲内が例示できる。
【0050】
本発明の別の一態様として、上述のようにパルミトレイン酸内包化合物を含む組成物から得られた本件不快香味改善組成物を各種消費財に添加可能な任意の組成物に添加することを含む、不快香味改善組成物の製造方法が提供される。各種消費財に添加可能な組成物の例としては、飲食品、香粧品、保健衛生品に添加することが可能な溶剤、抗酸化剤、色素、およびその他添加物から選択される1種以上を含む組成物が例示できる。
【0051】
さらに、本発明の別の一態様として、任意の方法で得られた本件不快香味改善組成物を他の香味付与組成物に添加することで、添加対象の香味付与組成物を不快香味改善組成物として製造することもできる。このように製造された本件不快香味改善組成物は、飲食品、香粧品、保健衛生品などの各種消費財の添加用組成物として、各種消費財の製造に用いることができる。
【0052】
[消費財の不快香味改善付与方法および消費財]
本件不快香味改善組成物を、各種消費財(代表的には、飲食品、香粧品、保健衛生品など)に添加することによって、不快香味の抑制された消費財が製造される。そのため、本発明において、各種消費財の不快香味改善方法とは、不快香味の抑制された消費財の製造方法ともいえる。不快香味改善組成物の各種消費財への添加タイミングは任意であり、不快香味改善組成物それ自体を飲食品、香粧品、保健衛生品などの各種消費財に添加してもよいし、1種または2種以上の他の香味付与組成物(例えば、水溶性香料組成物、乳化香料組成物、任意の香料化合物、天然精油(例えば、前掲の「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料」、「日本における食品香料化合物の使用実態調査」、および「合成香料 化学と商品知識」に記載される香料化合物)、から選択される1種以上)と併せて各種消費財に添加してもよい。
【0053】
本件不快香味改善組成物を添加可能な飲食品は特に限定されず、いかなる香味(風味ともいう)を有していてもよいが、香味の例として、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑などの各種柑橘風味;ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、桃、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー(洋ナシ)、ブドウ(グレープ、マスカット、巨峰など)、ライチ、パッションフルーツなどの各種フルーツ風味;ミルク、ヨーグルト、バター、カスタードなどの乳風味または乳風味を含む風味;バニラ風味;緑茶、抹茶、焙じ茶、紅茶、ウーロン茶、麦茶、コーン茶、そば茶、プーアル茶、ハーブティなどの各種茶風味;コーヒー風味;コーラ風味;カカオ風味;ココア風味;スペアミント、ペパーミントなどの各種ミント風味;シナモン、カモミール、カルダモン、キャラウェイ、クミン、クローブ、コショウ、コリアンダー、サンショウ、シソ、ショウガ、スターアニス、タイム、トウガラシ、ナツメグ、バジル、マジョラム、ローズマリー、ローレル、ワサビ、山椒、ニンニク(ガーリック)などの各種スパイスまたはハーブ風味;アーモンド、カシューナッツ、クルミなどの各種ナッツ風味;ワイン、ブランデー、ウイスキー、ラム、ジン、リキュール、日本酒、焼酎、ビールなどの各種酒類(アルコール)風味;ニンジン、トマト、キュウリ、タマネギ、コーン(トウモロコシ)、ジャガイモ、などの野菜風味であって、特に大豆、エンドウ豆、ヒヨコ豆などの豆類風味;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉風味;魚介風味;野菜、畜肉、魚介などの出汁(ブイヨン)風味;コンソメ風味;カラメル風味;大麦、小麦などの麦類風味;米酢、黒酢、リンゴ酢などの酢風味;などの風味の1以上を有する飲食品が挙げられる。すなわち、上記風味の1種類のみを感じさせる飲食品でもよく、2種類以上の風味を感じさせる飲食品でもよく、その複数種類の風味が同類であっても異類であってもよく、例えば、前者の例としてフルーツ風味のうちバナナ、ピーチおよびアップル風味など複数のフルーツ風味を感じさせる飲食品(いわゆるミックスフルーツ風味)が挙げられ、後者の例として、レモンなどの柑橘風味および乳風味を感じさせる飲食品(シトラス風味の乳酸菌飲料など)や、ミント風味や柑橘風味とコーラ風味とを感じさせる飲食品(ミントまたはレモンフレーバーのコーラ飲料など)が挙げられるが、本件不快香味改善組成物によって不快香味を改善可能な任意の風味であってよい。
【0054】
本件不快香味改善組成物による不快香味改善効果が高い香味の例として、酸味、酸臭、えぐ味、苦味、渋味、ホエー臭、穀物臭、香ばしさ、油脂劣化臭、青臭さ、カビ臭、硫黄臭およびフェノール臭の少なくとも1種以上が感じられる場合のある香味が挙げられる。
【0055】
より具体的な飲食品例としては、せんべい、あられ、おこし、餅類、饅頭、ういろう、あん類、羊かん、水羊かん、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、氷菓、アイスクリーム、アイスミルク、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー、ピーナッツペーストまたはその他のペースト類、ホイップクリームなどの菓子または菓子素材類;パン、うどん、ラーメン、中華麺、すし、五目飯、チャーハン、ピラフ、餃子の皮、シューマイの皮、お好み焼き、たこ焼き、などのパン類、麺類、ご飯類、その他穀類;糠漬け、梅干、福神漬け、べったら漬け、千枚漬け、らっきょう、味噌漬け、たくあん漬け、および、それらの漬物の素、などの漬物類;サバ、イワシ、サンマ、サケ、マグロ、カツオ、クジラ、カレイ、イカナゴ、アユなどの魚類、スルメイカ、ヤリイカ、紋甲イカ、ホタルイカなどのイカ類、マダコ、イイダコなどのタコ類、クルマエビ、ボタンエビ、イセエビ、ブラックタイガーなどのエビ類、タラバガニ、ズワイガニ、ワタリガニ、ケガニなどのカニ類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、などの魚介類;鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉などの畜肉類;缶詰、煮魚、佃煮、すり身、水産練り製品(ちくわ、蒲鉾、あげ蒲鉾、カニ足蒲鉾など)、フライ、天ぷら、カレー、シチュー、ビーフシチュー、ハヤシライスソース、ミートソース、マーボ豆腐、ハンバーグ、餃子、釜飯の素、スープ類(コーンスープ、トマトスープ、コンソメスープなど)、肉団子、角煮、畜肉缶詰、野菜の煮物、筑前煮、おでん、鍋物、持ち帰り惣菜類、ラーメン、そば、うどん、そうめんなどの麺類およびそれに用いるスープ、野菜スープなどの動植物原料を用いた加工食品類;卓上塩、調味塩、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、お茶漬けの素、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、めんつゆ(昆布だしまたは鰹だしなど)、ソース(中濃ソース、トマトソースなど)、ケチャップ、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素(昆布だしまたは鰹だしなど)、複合調味料、新みりん、唐揚げ粉・たこ焼き粉などのミックス粉、などの調味料類、これらの調味料類が添加された動物性または植物性だし風味飲食品;チーズ、ヨーグルト、バター、生クリームなどの乳製品;リンゴ、ぶどう、マンゴー、桃、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)などの果汁、果肉、果粒、果皮などを用いた果実飲料;トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス、ワラビ、ゼンマイなどの野菜や、これら野菜類を含む野菜系飲料、野菜スープなどの野菜含有飲食品;コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、炭酸飲料、コーラ飲料、乳酸菌飲料、乳を含む飲料(ミルクティ、カフェオレなど)、果実または果汁入り飲料(レモンティやオレンジティなどのフルーツティなど)などの嗜好飲料品;生薬やハーブを含む飲料;コーラ飲料スポーツドリンク、ハチミツ飲料、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンクなどの機能性飲料;各種酒類風味(ビール風味、梅酒風味、チューハイ風味など)のアルコールテースト飲料などのノンアルコール嗜好飲料類(ノンアルコールビール、ノンアルコールチューハイなど);ワイン、焼酎、泡盛、清酒、ビール、チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒、いわゆる「第三のビール」などを含むビールテイスト飲料(ビール風味飲料ともいう)、その他醸造酒(発泡性)、リキュール(発泡性)、またはこれらを含む、アルコール飲料類;などを挙げることができる。
【0056】
本件不快香味改善組成物の添加対象である消費財の特に好適な例として、豆類(特に大豆)、麦類、アーモンド、酢、乳、およびビタミン類から選択される少なくとも1種を含有する飲食品が挙げられる。大豆含有飲食品の具体例としては、豆腐、油揚げ、厚揚げ、豆乳、おから、納豆、味噌、醤油、煮豆、きな粉、ゆば、大豆を原料とした植物プロテイン(本明細書では大豆プロテインということもある。)が挙げられ、特に豆乳、大豆プロテインが好ましい。その他の豆類では、エンドウ豆を用いたペースト、プロテイン、ヒヨコ豆を用いたペースト、プロテインが例として挙げられる。麦類含有飲食品としては、特に大麦を用いた製品が例示でき、オートミールやオートミルクが好適例として挙げられる。アーモンド含有飲食品としては、アーモンドペースト、アーモンドミルクが例示できる。酢含有飲食品の具体例としては、米酢、穀物酢、黒酢、ワインビネガー、リンゴ酢、バルサミコ酢自体、およびこれらを含有する各種飲料、調味料が挙げられ、特に酢を含有する清涼飲料または機能性飲料が好ましい。乳含有飲食品の具体例としては、牛乳、ヤギ乳、羊乳、馬乳などに代表される乳自体、これらの乳を用いた各種乳製品が挙げられ、乳製品の具体例としては、成分調整乳、加工乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、乳酸菌飲料、乳飲料、発酵乳(ヨーグルト等)、バター、チーズ、クリーム、アイスクリーム、練乳、粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、およびこれらを含むまたは用いて製造される各種飲料(ミルクティなどの乳を含む各種茶飲料など)が挙げられる。ビタミン類飲食品の具体例としては、ビタミン飲料、ビタミン含有サプリメント錠などが挙げられる。ただし、本件不快香味改善組成物の添加対象はこれらに限定されるものではない。
【0057】
本件不快香味改善組成物を添加した飲食品、香粧品、保健衛生品などの各種消費財中のパルミトレイン酸の濃度は、消費財の香味や所望の効果の程度などに応じて任意に決定できる。
【0058】
喫食可能な消費財(代表的には飲食品)であれば、当該消費財中のパルミトレイン酸の濃度として1ppb~100ppmの濃度範囲において、飲食品の不快香味を抑制できることを発明者らは確認している。例えば、下限値を1ppb、10ppb、100ppb、1ppm、10ppmのいずれか、上限値100ppm、10ppm、1ppm、100ppb、10ppbのいずれかとして、これら下限値および上限値の任意の組み合わせの範囲内でよいが、これらの濃度範囲に限定されない。濃度範囲の好ましい具体例として、10ppb~100ppm、100ppb~10ppm、100ppb~1ppm、10ppb~100ppmの範囲内が挙げられる。
【実施例0059】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
[実施例1] 不快香味改善効果の確認1:豆類含有飲食品1
市販の無調整豆乳を用意した(以下、基本豆乳飲料ともいう。)。また、市販のパルミトレイン酸(純度98%)を用意し、本発明の一態様に係る不快香味改善組成物とした(本発明品1-1)。
【0061】
次いで、基本豆乳飲料に、本発明品1-1をパルミトレイン酸の濃度が100ppm、20ppm、1ppm、100ppb、10ppb、または1ppbとなるように添加して、本発明の消費財の一態様に係る豆乳飲料を得た(本発明品1-2~1-7;以下、それぞれを本発明の豆乳飲料ともいう。)。
【0062】
また、市販のパルミチン酸(純度98%)、市販のステアリン酸(純度98%)を用意した。そして、前記した基本豆乳飲料に、前記パルミチン酸、ステアリン酸のそれぞれを、その濃度が1ppmとなるように添加して、比較品の豆乳飲料を得た(比較品1-1(パルミチン酸添加)、比較品1-2(ステアリン酸添加))。
【0063】
そして、本発明および比較品の豆乳飲料の香味について官能評価を行った。官能評価では、基本豆乳飲料を対照品1とし、対照品1と比べた本発明品1-2~1-7および比較品1-1~1-2の香味について、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト12人に評価させた。評価にあたっては、本発明品および比較品の不快香味について下記基準で点数付けさせるとともに、対照品1と異なると感じられた香味について自由にコメントさせた。
(基準)対照品と比べた不快香味について
「大きく改善された」=4点
「改善された」=3点
「わずかに改善された」=2点
「改善が感じられなかった」=1点
「不快香味がより強く感じられた」=0点
【0064】
表1に、パネリスト12人の点数平均および代表的なコメントを示す。
【0065】
【0066】
表1に示すように、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品1-1)を不快香味改善組成物として飲食品に添加することで、その飲食品の不快香味を改善できることが確認された。一方で、パルミトレイン酸と同じ脂肪酸類であるパルミチン酸、およびステアリン酸では不快香味改善効果は不十分であった。
【0067】
[実施例2] 不快香味改善効果の確認2:乳含有飲食品(1)
市販のヨーグルトを用意した(以下、基本ヨーグルトともいう。)。また、市販のパルミトレイン酸(純度98%)を用意し、本発明の一態様に係る不快香味改善組成物とした(本発明品2-1)。
【0068】
次いで、基本ヨーグルトに、本発明品2-1をパルミトレイン酸の濃度が100ppm、20ppm、1ppm、100ppb、10ppb、または1ppbとなるように添加して、本発明の消費財の一態様に係るヨーグルトを得た(本発明品2-2~2-7;以下、それぞれを本発明のヨーグルトともいう。)。
【0069】
そして、本発明のヨーグルトの香味について官能評価を行った。官能評価では、基本ヨーグルトを対照品2とし、対照品2と比べた本発明品2-2~2-7の香味について、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト12人に評価させた。評価にあたっては、本発明品の不快香味について下記基準で点数付けさせるとともに、対照品2と異なると感じられた香味について自由にコメントさせた。
(基準)対照品と比べた不快香味について
「大きく改善された」=4点
「改善された」=3点
「わずかに改善された」=2点
「改善が感じられなかった」=1点
「不快香味がより強く感じられた」=0点
【0070】
表2に、パネリスト12人の点数平均および代表的なコメントを示す。
【0071】
【0072】
表2に示すように、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品2-1)を不快香味改善組成物として飲食品に添加することで、その飲食品の不快香味を改善できることが確認された。
【0073】
[実施例3] 不快香味改善効果の確認3:乳含有飲食品(2)
市販のミルクプロテイン(Milk Protein Concentrate 480、フォンテラ社製)を用意し、水で希釈して乳タンパク質含量約7.7%のミルクプロテイン飲料(以下、基本ミルクプロテイン飲料ともいう。)を調製した。また、市販のパルミトレイン酸(純度98%)を用意し、本発明の一態様に係る不快香味改善組成物とした(本発明品3-1)。
【0074】
次いで、基本ミルクプロテイン飲料に、本発明品3-1をパルミトレイン酸の濃度が100ppm、20ppm、1ppm、100ppb、または10ppbとなるように添加して、本発明の消費財の一態様に係るミルクプロテイン飲料を得た(本発明品3-2~3-6;以下、それぞれを本発明のミルクプロテイン飲料ともいう。)。
【0075】
そして、本発明のミルクプロテイン飲料の香味について官能評価を行った。官能評価では、基本ミルクプロテイン飲料を対照品3とし、対照品3と比べた本発明品3-2~3-6の香味について、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト12人に評価させた。評価にあたっては、本発明品の不快香味について下記基準で点数付けさせるとともに、対照品3と異なると感じられた香味について自由にコメントさせた。
(基準)対照品と比べた不快香味について
「大きく改善された」=4点
「改善された」=3点
「わずかに改善された」=2点
「改善が感じられなかった」=1点
「不快香味がより強く感じられた」=0点
【0076】
表3に、パネリスト12人の点数平均および代表的なコメントを示す。
【0077】
【0078】
表3に示すように、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品3-1)を不快香味改善組成物として飲食品に添加することで、その飲食品の不快香味を改善できることが確認された。
【0079】
[実施例4] 不快香味改善効果の確認4:酢含有飲食品
市販の黒酢入り飲料(酢酸濃度約3mg/mL)を用意した(以下、基本黒酢飲料ともいう。)。また、市販のパルミトレイン酸(純度99%)を用意し、本発明の一態様に係る不快香味改善組成物とした(本発明品4-1)。
【0080】
次いで、基本黒酢飲料に、本発明品4-1をパルミトレイン酸の濃度が100ppm、20ppm、1ppm、100ppb、10ppb、または1ppbとなるように添加して、本発明の消費財の一態様に係る黒酢飲料を得た(本発明品4-2~4-7;以下、それぞれを本発明の黒酢飲料ともいう。)。
【0081】
そして、本発明の黒酢飲料の香味について官能評価を行った。官能評価では、基本黒酢飲料を対照品4とし、対照品4と比べた本発明品4-2~4-7の香味について、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト10人に評価させた。評価にあたっては、本発明品の不快香味について下記基準で点数付けさせるとともに、対照品4と異なると感じられた香味について自由にコメントさせた。
(基準)対照品と比べた不快香味について
「大きく改善された」=4点
「改善された」=3点
「わずかに改善された」=2点
「改善が感じられなかった」=1点
「不快香味がより強く感じられた」=0点
【0082】
表4に、パネリスト10人の点数平均および代表的なコメントを示す。
【0083】
【0084】
表4に示すように、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品4-1)を不快香味改善組成物として飲食品に添加することで、その飲食品の不快香味を改善できることが確認された。
【0085】
[実施例5] 不快香味改善効果の確認5:ビタミン含有飲食品
市販のビタミン飲料を用意した(以下、基本ビタミン飲料ともいう。)。基本ビタミン飲料に含まれる主なビタミン類は、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンC、およびビタミンDであった(ビタミンB1の濃度はおおよそ0.2%であった。)。
【0086】
また、市販のパルミトレイン酸(純度99%)を用意し、本発明の一態様に係る不快香味改善組成物とした(本発明品5-1)。
【0087】
次いで、基本ビタミン飲料に、本発明品5-1をパルミトレイン酸の濃度が100ppm、20ppm、1ppm、100ppb、または10ppbとなるように添加して、本発明の消費財の一態様に係るビタミン飲料を得た(本発明品5-2~5-6;以下、それぞれを本発明のビタミン飲料ともいう。)。
【0088】
そして、本発明のビタミン飲料の香味について官能評価を行った。官能評価では、基本ビタミン飲料を対照品5とし、対照品5と比べた本発明品5-2~5-6の香味について、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト10人に評価させた。評価にあたっては、本発明品の不快香味について下記基準で点数付けさせるとともに、対照品5と異なると感じられた香味について自由にコメントさせた。
(基準)対照品と比べた不快香味について
「大きく改善された」=4点
「改善された」=3点
「わずかに改善された」=2点
「改善が感じられなかった」=1点
「不快香味がより強く感じられた」=0点
【0089】
表5に、パネリスト10人の点数平均および代表的なコメントを示す。
【0090】
【0091】
表5に示すように、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品5-1)を不快香味改善組成物として飲食品に添加することで、その飲食品の不快香味を改善できることが確認された。
【0092】
[実施例6] パルミトレイン酸を含む組成物およびその乳化製剤の製造例
本発明の一態様に係る不快香味改善組成物の製造例として、下記手順で、パルミトレイン酸を分子中に含む化合物(パルミトレイン酸内包化合物)を含む組成物を酵素処理して当該化合物からパルミトレイン酸を遊離させ、パルミトレイン酸を含む組成物を本件不快香味改善組成物として得た。パルミトレイン酸内包化合物として、植物種実の搾油、具体的にはマカダミア種子の搾油を用いた。
【0093】
(工程1)市販のマカダミアナッツオイル(マカダミア種子の搾油)850gを用意し、約75℃で加熱殺菌後、40℃前後まで冷却した。
【0094】
(工程2)冷却後のマカダミアナッツオイルに、リパーゼ(リパーゼAY「アマノ」30SD、天野エンザイム社製)4gおよび水110gを添加したのち約40℃で約22時間酵素処理を行った。次いで並塩を26g加えて約85℃で15分間の加熱殺菌を行った。そして、抗酸化剤(トコフェロール)3gを加えたのちに約70℃に冷却し、約1時間静置した。次いで、分離した水層を廃棄し油層部分を得た。得られた油層部分に濾過助剤7gを添加後10分間攪拌し、吸引濾過を行って不純物を除去し、マカダミアナッツオイルの酵素処理物(リパーゼ処理)704gを得た。
【0095】
得られたマカダミアナッツオイルの酵素処理物は、パルミトレイン酸を25%含み、このまま本発明の一態様に係る不快香味改善組成物として使用することができる(本発明品6-1)。
【0096】
次いで、本発明品6-1を乳化した製剤を下記手順で調製した。
【0097】
モノオレイン酸デカグリセリル30gとグリセリン770gの混合物を用意し、約90℃に加熱して殺菌処理およびモノオレイン酸デカグリセリルの溶解処理を行って混合物1を得た。一方で、植物油脂80gと本発明品6-1の20gとの混合物2を得た。次いで、混合物2を混合物1に、T.K.ロボミックス(プライミクス社製)により2000rpmで攪拌しながら加え、7000rpmで5分間攪拌することで乳化し、さらに水100gを加えてよく混合して終夜静置し、濾過を行って、本発明の一態様に係る不快香味改善組成物(乳化製剤、平均粒径約178nm)を得た(本発明品6-2)。本発明品6-2のパルミトレイン酸濃度は0.5%であった。
【0098】
本件不快香味改善組成物の別の一態様として、パルミトレイン酸濃度を高める目的で、実施例1で用意した純度98%のパルミトレイン酸を、本発明品6-1にパルミトレイン酸の濃度が50%となるように添加して、本件不快香味改善組成物(本発明品6-3)を得た。さらに、本発明品6-3の乳化製剤を調製するため、本発明品6-1を本発明品6-3に代えた以外は本発明品6-2の調製方法と同様にして本発明品6-3を乳化製剤としたものを調製し、本発明の一態様に係る不快香味改善組成物(乳化製剤、平均粒径約180nm)を得た(本発明品6-4)。本発明品6-4のパルミトレイン酸濃度は1%であった。 このように、酵素処理物であっても、適宜パルミトレイン酸を添加したものを酵素処理することで、所望のパルミトレイン酸濃度を得ることができる。
【0099】
[実施例7] 不快香味改善効果の確認6:乳含有飲食品(3)
市販のチーズソースを用意した(以下、基本チーズソースともいう。)。そこに、実施例6で調製した本発明品6-1(パルミトレイン酸濃度25%)を4ppm加えて(パルミトレイン酸濃度として1ppm)、本発明の一態様に係るチーズソースを得た(本発明品7-1;以下、本発明のチーズソースともいう。)。また、基本チーズソースに、実施例6で調製した本発明品6-3(パルミトレイン酸濃度50%)を4ppm加えて(パルミトレイン酸濃度として2ppm)、本発明の別の一態様に係るチーズソースを得た(本発明品7-2;以下、本発明のチーズソースともいう。)。
【0100】
そして、本発明のチーズソースの香味について官能評価を行った。官能評価では、基本チーズソースを対照品7とし、対照品7と比べた本発明品7-1および7-2の香味について、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト5人に自由にコメントさせた。その結果、パネリスト5人の全員が、対照品7を喫食した際に感じられた、カビ様または硫黄様の不快香味が軽減されており、特にトップの香味についてその軽減が顕著であり、不快香味が改善されていたと回答した。また、パネリスト5名全員が、当該効果は、パルミトレイン酸濃度が高い本発明品6-2を添加した本発明品7-2の方が、本発明品7-1よりも高いと評価した。
【0101】
[実施例8] 不快香味改善効果の確認7:実施例1~5の飲食品への乳化製剤の添加
実施例1で用意した基本豆乳飲料、実施例2で用意した基本ヨーグルト、実施例3で用意した基本ミルクプロテイン飲料、実施例4で用意した基本黒酢飲料、実施例5で用意した基本ビタミン飲料に対し、実施例6で調製した本発明品6-2(パルミトレイン酸を0.5%含む乳化製剤)を下記表6に記載のとおり添加して、本発明の一態様に係る各種飲食品を得た(本発明品8-1~8-25)。
【0102】
そして、本発明の各種飲食品の香味について官能評価を行った。官能評価では、基本豆乳飲料を対照品8-1として当該対照品と比べた本発明品8-1~8-6の香味について、基本ヨーグルトを対照品8-2として当該対照品と比べた本発明品8-7~8-11の香味について、基本ミルクプロテイン飲料を対照品8-3として当該対照品と比べた本発明品8-12~8-15の香味について、基本黒酢飲料を対照品8-4として当該対照品と比べた本発明品8-16~8-20の香味について、基本ビタミン飲料を対照品8-5として当該対照品と比べた本発明品8-21~8-25の香味について、経験年数12年以上のよく訓練されたパネリスト10人に評価させた。評価にあたっては、本発明品の不快香味について下記基準で点数付けさせるとともに、各対照品と異なると感じられた香味について自由にコメントさせた。
(基準)対照品と比べた不快香味について
「大きく改善された」=4点
「改善された」=3点
「わずかに改善された」=2点
「改善が感じられなかった」=1点
「不快香味がより強く感じられた」=0点
【0103】
表6に、パネリスト10人の点数平均および代表的なコメントを示す。
【0104】
【0105】
表6に示すように、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品6-2、乳化製剤)を不快香味改善組成物として各種飲食品に添加することで、その飲食品の不快香味を改善できることが確認された。なお、本発明品6-2に代えて本発明品6-4(本発明品6-2よりパルミトレイン酸濃度の高い乳化製剤)を使用した場合、乳化製剤の添加量を本発明品6-2より少なくすることができると考えられる。
【0106】
[実施例9] 不快香味改善効果の確認8:豆類含有食品2
下記表7に示す成分を用いて、下記手順に従って大豆ミートのハンバーグを調製した。
【0107】
【0108】
まず、成分3~6(食塩、上白糖、L-グルタミン酸ナトリウム)を成分2(湯)で溶解し、そこにビーフフレーバー1(水溶性、長谷川香料株式会社製)を添加して着味液を得て、素早く成分1(粒状大豆蛋白)を浸漬した。そこに成分7(加工でん粉)を添加し、均一になるまで捏ねて、混合物1を得た。また、成分9(粉末大豆蛋白)と成分10(メチルセルロース)を成分11(米サラダ油1)に分散させペーストを得て、そこに成分8(冷水、氷水でよい)を添加後、ハンドミキサーで攪拌しカードを作成して、混合物2を得た。そして、混合物1および混合物2をよく混ぜ合わせた後、成分12(米サラダ油2)およびビーフフレーバー2(油溶性、長谷川香料株式会社製)を添加して混合物3を調製した。得られた混合物3の約100gを取り、成型してスチームオーブンで蒸した(120℃、10分間)のち、ホットプレートで焼いて、基本大豆ミートハンバーグを得た。
【0109】
一方で、実施例1で用意した市販のパルミトレイン酸(純度98%、本発明品1-1)を、基本ハンバーグの調製においてビーフフレーバー2とともに1000ppm、100ppm、10ppm、または1ppmの濃度で添加した以外は基本ハンバーグと同様にして、本発明の一態様に係る大豆ミートハンバーグを得た(本発明品9-1~9-4)。
【0110】
そして、本発明の大豆ミートハンバーグの香味について官能評価を行った。官能評価では、基本大豆ミートハンバーグを対照品9とし、対照品9と比べた本発明品9-1~9-4の香味について、経験年数12年以上のよく訓練されたパネリスト10人に評価させた。評価にあたっては、本発明品の不快香味について下記基準で点数付けさせるとともに、対照品9と異なると感じられた香味について自由にコメントさせた。
(基準)対照品と比べた不快香味について
「大きく改善された」=4点
「改善された」=3点
「わずかに改善された」=2点
「改善が感じられなかった」=1点
「不快香味がより強く感じられた」=0点
【0111】
表8に、パネリスト10人の点数平均および代表的なコメントを示す。
【0112】
【0113】
表6に示すように、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品1-1)を不快香味改善組成物として飲食品に添加することで、その飲食品を改善できることが確認された。
【0114】
[実施例10] 不快香味改善効果の確認9:その他飲食品
実施例1で用意した市販のパルミトレイン酸(純度98%、本発明品1-1)を、下記表9に示す市販の飲食品にパルミトレイン酸濃度が1ppmとなるように添加して、本発明の一態様に係る各種飲食品を得た(本発明品10-1~10-8)。
【0115】
そして、本発明の飲食品の香味について官能評価を行った。官能評価では、市販の飲食品を下記表9に示すとおり対照品とし、それぞれの対照品と比べて軽減した本発明品の不快香味について、経験年数10年以上のよく訓練されたパネリスト5人に自由にコメントさせた。代表的なコメントを表9に示す。
【0116】
【0117】
表9に示すとおり、パルミトレイン酸を含む組成物(本発明品1-1)を不快香味改善組成物として各種飲食品に添加することで、その各種飲食品を改善できることが確認された。
【0118】
また、表9には1ppmの例しか示していないが、これら市販の飲食品にパルミトレイン酸濃度が1ppb~10ppmの範囲となるように添加した場合、上記不快香味の改善効果が奏されることを確認した。