(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178331
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】液体および/またはエアロゾルを気化するための気化器装置、特に滅菌気化器装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
A61L2/20 106
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024164119
(22)【出願日】2024-09-20
(62)【分割の表示】P 2023515302の分割
【原出願日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】102020123389.2
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521208365
【氏名又は名称】アムパック ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Ampack GmbH
【住所又は居所原語表記】Lechfeldgraben 7, 86343 Koenigsbrunn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100210099
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 太介
(72)【発明者】
【氏名】コアビニアン トムシ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ハーク
(72)【発明者】
【氏名】マークス ツィマーマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、液体および/またはエアロゾル、特に液体H
2O
2および/またはエアロゾル化H
2O
2を気化するための気化器装置を提供する。
【解決手段】気化器空間において、供給された液体および/または供給されたエアロゾルを気化するための少なくとも1つの加熱ユニットと、を有する、気化器装置に基づく。加熱ユニットが、別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である加熱要素、特に加熱回路を備えるマトリックス加熱ユニットとして実現される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を気化するための気化器装置、特に滅菌気化器装置であって、
気化すべき前記液体および/または気化すべき前記エアロゾルを供給することができる気化器空間(14)を画定する少なくとも1つの気化器空間ハウジング(16)を備える少なくとも1つのハウジング(12)と、
供給された前記液体および/または供給された前記エアロゾルを気化するための少なくとも1つの加熱ユニット(18)と、
を有する、気化器装置において、
前記加熱ユニット(18)が、別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である加熱要素(20,22,24,26,28,30)、特に加熱回路を備えるマトリックス加熱ユニットとして実現され、
前記加熱ユニット(18)が、不規則かつ/または規則的に平面に配置される複数の加熱要素(20,22,24,26,28,30)を備え、
前記加熱要素(20,22,24,26,28,30)が、前記加熱ユニット(18)の加熱プレート(86)に配置され、
前記加熱プレート(86)の表面が、前記液体および/またはエアロゾルを気化するための前記加熱ユニット(18)の気化器表面(68)を形成する、
ことを特徴とする、気化器装置。
【請求項2】
各加熱要素(20,22,24,26,28,30)に、前記加熱ユニット(18)の、特に個々の、調整電子要素(32,34,36,38,40,42)、および/または前記加熱ユニット(18)の、特に個々の、監視電子要素(44,46,48,50,52,54)が割り当てられ、各加熱回路が、特に、前記加熱ユニット(18)の統合された調整電子要素(32,34,36,38,40,42)および/または前記加熱ユニット(18)の統合された監視電子要素(44,46,48,50,52,54)を備えることを特徴とする、請求項1記載の気化器装置。
【請求項3】
前記加熱要素(20,22,24,26,28,30)が、前記加熱ユニット(18)の中心軸線(56)の周りに同心状に配置されるか、または前記加熱要素(20,22,24,26,28,30)が、前記気化器空間ハウジング(16)の方に向いた前記加熱ユニット(18)の側(58)に格子状に配置されることを特徴とする、請求項1または2記載の気化器装置。
【請求項4】
前記ハウジング(12)が、前記加熱ユニット(18)を収容するための少なくとも1つの加熱ハウジング(60)を備え、前記加熱ハウジング(60)が、前記気化器空間ハウジング(16)と、特に直接、接続され、前記加熱要素(20,22,24,26,28,30)が、前記加熱ハウジング(60)と前記気化器空間ハウジング(16)との間で前記ハウジング(12)の接続境界面(64)の領域に少なくとも部分的に配置されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の気化器装置。
【請求項5】
前記加熱ユニット(18)の少なくとも1つの加熱要素(20,30)が、前記気化器空間ハウジング(16)に、特に直接、隣接するように、前記加熱ユニット(18)が、前記気化器空間ハウジング(16)に配置されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の気化器装置。
【請求項6】
前記気化器空間ハウジング(16)の方への予荷重力を前記加熱ユニット(18)に与えるように構成される少なくとも1つの弾性的な予荷重要素(66)、特にばね要素を備える特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の気化器装置。
【請求項7】
前記気化器空間ハウジング(16)に供給された前記液体および/または前記気化器空間ハウジング(16)に供給された前記エアロゾルの未気化部分を運び去るための、前記気化器空間ハウジング(16)および/または前記加熱ユニット(18)の前記気化器表面(68)に配置された少なくとも1つの流出開口(70)を備える特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の気化器装置。
【請求項8】
前記加熱要素(20,22,24,26,28,30)に割り当てられる前記加熱ユニット(18)の前記気化器表面(68)が、気化すべき前記液体および/または気化すべき前記エアロゾルに対して耐性を有するように、特にH2O2に対して耐性を有するように実現されるコーティングを有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の気化器装置。
【請求項9】
前記気化器空間ハウジング(16)が、前記気化器空間(14)で気化した前記液体および/または前記気化器空間(14)で気化した前記エアロゾル、特にH2O2蒸気-ガス混合物を、直接または分配器を介して包装要素に供給するための幾つかの気化器出口(72,74,76)を備えることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の気化器装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の少なくとも1つの気化器装置を有する製造機械、特に食品充填機および/または食品包装機。
【請求項11】
気化器装置、特に請求項1から9までのいずれか1項記載の気化器装置を用いて液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を気化するための方法において、
少なくとも1つの方法ステップ(82)では、マトリックス加熱ユニットとして形成された加熱ユニット(18)の、不規則かつ/または規則的に平面に配置される複数の加熱要素(20,22,24,26,28,30)が、別々に、特に個々に調整かつ/または監視され、
前記加熱要素(20,22,24,26,28,30)が、前記加熱ユニット(18)の加熱プレート(86)に配置され、
少なくとも1つの方法ステップでは、前記加熱ユニット(18)の気化器表面(68)を形成する前記加熱プレート(86)の表面を用いて液体および/またはエアロゾルが気化される、
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術
独国特許出願公開第102017215200号明細書から、液体および/またはエアロゾルを気化するための気化器装置、特に滅菌気化器装置であって、気化すべき液体および/または気化すべきエアロゾルを供給することができる気化器空間を画定する少なくとも1つの気化器空間ハウジングを備える少なくとも1つのハウジングと、供給された液体および/または供給されたエアロゾルを気化するための少なくとも1つの加熱ユニットと、を有する、気化器装置が既に知られている。
【0002】
さらに、独国特許出願公開第102016105676号明細書、西独国特許出願公開第3540161号明細書および独国特許出願公開第102011056440号明細書から、気化器装置が既に知られている。
【0003】
発明の開示
本発明は、液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を気化するための気化器装置、特に滅菌気化器装置であって、気化すべき液体および/または気化すべきエアロゾルを供給することができる気化器空間を画定する少なくとも1つの気化器空間ハウジングを備える少なくとも1つのハウジングと、特に気化器空間において、供給された液体および/または供給されたエアロゾルを気化するための少なくとも1つの加熱ユニットと、を有する、気化器装置に基づく。
【0004】
加熱ユニットが、別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である加熱要素、特に加熱回路を備えるマトリックス加熱ユニットとして実現され、加熱ユニットが、不規則かつ/または規則的に平面に配置される複数の加熱要素を備え、加熱要素が、加熱ユニットの加熱プレートに配置され、加熱プレートの表面が、液体および/またはエアロゾルを気化するための加熱ユニットの気化器表面を形成する、ことが提案される。好ましくは、マトリックス加熱ユニットの加熱要素は、グループに分割され、特にセグメント化される。マトリックス加熱ユニットは、特に代替的または付加的に、特に平面に配置され、個々に調整可能な幾つかの加熱ゾーンを備える、単一の蛇行状の加熱要素を備える加熱ユニットとして実装されてもよく、または特に平面にあり、好ましくはグループに分割された、特にセグメント化された複数の蛇行状の加熱要素を備えてもよい。優先的には、マトリックス加熱ユニットは、特に平面で見て、同心状または格子状に配置される、セグメント化された複数の電気加熱回路を備える。加熱要素、特に発熱抵抗体は、別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である。加熱要素、特に発熱抵抗体が、「別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である」ことは、特に、加熱要素、特に個々の発熱抵抗体を、互いに独立して、ある温度に調整することができること、および/または個々の各加熱要素の温度を、他の加熱要素から独立して、各加熱要素において別々に記録することができることを定義するものとする。好ましくは、加熱要素、特に各別々の加熱要素は、特に回路構成に関連して、加熱ユニットの個々の加熱回路を形成する。加熱要素は、優先的には、加熱ユニットの加熱プレートに、特にその内部に配置される。加熱プレートは、好ましくは、セラミックまたは金属材料で作られる。しかし、加熱プレートが、気化器プロセス、特にH2O2気化器プロセスでの使用に適した、当業者によって好都合と見なされる異なる材料で作られることも考えられる。加熱要素は、優先的には、規則的または不規則に分布するように、加熱プレートに配置される。好ましくは、加熱要素は、特に平面で見て、互いに離間して加熱プレートに配置される。特に、加熱要素は、加熱プレートのウェブによって分離されるように、加熱プレートに配置される。好ましくは、加熱要素は、加熱プレートに挿入され、特に埋め込まれる。加熱要素は、例えば加熱プレートに流込み成形されるなど、加熱プレートと一部品の実装形態で実現されてもよいし、または例えば加熱プレートの溝などの受容部にはめ込まれ、特に固定されてもよい。「一部品の実装形態で」という用語は、特に、例えば溶接プロセスおよび/または接着プロセスなどによる物質同士の結合によって接続されること、特に有利には、流込み成形による製造および/または一部品もしくは多部品の射出成形手順での製造により成形されることを意味する。好ましくは、加熱要素は、加熱プレートの表面と少なくとも実質的に同一平面で終端する。加熱プレートの表面は、特に加熱要素の表面と共に、液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を気化するための加熱ユニットの気化器表面を形成する。しかし、加熱要素が、気化器表面を形成する加熱プレートの表面からオフセットして平行に配置される平面で加熱プレートに、特にその内部に配置され、加熱要素が、例えば、気化器表面を加熱するために気化器表面に接触することも考えられる。当業者によって好都合と見なされる、加熱プレートにおける、特にその内部における加熱要素の他の配置も考えられる。気化器装置は、好ましくは、無菌および/または超洗浄の分野において製造機械の包装要素の滅菌プロセスで使用されることを意図している。
【0005】
気化器装置のハウジングは、好ましくは、多部品の実装形態で実現される。ハウジングは、特に、気化器装置の個々の構成要素を収容する、少なくとも部分的に取り囲む、かつ/または支持するために構成される。「構成される」は、特に、具体的に実装される、具体的に設計される、かつ/または具体的に装備されることを意味する。ある機能のために物体が構成されることにより、特に、物体が、少なくとも1つの適用状態および/または動作状態では前記ある機能を満たすことおよび/または実行することが理解される。ハウジングは、気化器空間を画定する気化器空間ハウジングを備え、特にハウジングの装着状態では、気化器空間の一方の側が加熱プレートによって画定される。気化器空間ハウジングは、好ましくは、鐘形状で実現される。特にハウジングの長手方向軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる平面で見て、気化器空間ハウジングは、円形、楕円形または多角形の断面を有してもよく、または当業者によって好都合と見なされる異なる断面を有してもよい。ハウジングの長手方向軸線は、好ましくは、加熱プレートの気化器表面に対して少なくとも実質的に垂直に延びる。加熱プレートは、好ましくは、長手方向軸線に関して対称に、特に回転対称にハウジングに配置される。加熱プレートは特に、長手方向軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる長手方向範囲を有する。気化器表面は、好ましくは、長手方向軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる。用語「実質的に垂直に」は、ここでは特に、基準方向に対する方向の向きを定義することを意図しており、方向と基準方向とは、特に投影平面で見て、90°の角度を有し、角度は、特に8°よりも小さい、有利には5°よりも小さい、特に有利には2°よりも小さい最大偏差を有する。気化器空間ハウジングは、好ましくは、特に加熱プレートとは反対側に面する気化器空間の側で、少なくとも周方向に沿って、かつ長手方向軸線に対して少なくとも実質的に平行に延びる少なくとも1つの方向で気化器空間を画定する。周方向は、優先的には、ハウジングの長手方向軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる平面に延びる。気化器空間ハウジングは、好ましくは、金属材料で作られる。しかし、気化器空間ハウジングが、当業者によって好都合と見なされる異なる材料で作られ、気化器プロセス、特にH2O2気化器プロセスで使用されるのに適していることも考えられる。
【0006】
気化器装置は、優先的には、気化器空間ハウジングと加熱プレートとの間に配置される少なくとも1つの封止要素を備える、少なくとも1つの封止ユニットを備える。封止要素は、円形もしくは多角形の断面、または当業者によって好都合と見なされる更なる断面を有してもよい。長手方向軸線に対して少なくとも実質的に平行に延びる方向に沿って見て、封止要素は、気化器空間ハウジングと加熱プレートとの間に配置されてもよく、または長手方向軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる方向に沿って見て、封止要素は、気化器空間ハウジングと加熱プレートとの間に配置されてもよい。封止要素は、好ましくは、少なくとも一方の側で気化器空間ハウジングに隣接し、少なくとも一方の別の側で加熱プレートに隣接する。気化器空間ハウジングおよび/または加熱プレートは、封止要素を受容するための少なくとも1つの受容凹部を有してもよい。しかし、封止ユニットが、特に長手方向軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる方向に沿って、かつ/または長手方向軸線に対して少なくとも実質的に平行に延びる方向に沿って見て、気化器空間ハウジングと加熱プレートとの間に配置される複数の封止要素を備えることも考えられる。
【0007】
ハウジングは、少なくとも加熱ユニットを収容するように構成される加熱ハウジングをさらに備える。加熱ハウジングは、好ましくは、金属材料で作られる。しかし、加熱ハウジングが、当業者によって好都合と見なされる異なる材料で作られることも考えられる。加熱ハウジングと気化器空間ハウジングとは、優先的には、特に解放可能に、互いに接続される。好ましくは、加熱ハウジングおよび気化器空間ハウジングはそれぞれ、加熱ハウジングと気化器空間ハウジングとを接続するための接続フランジを備える。加熱ハウジングと気化器空間ハウジングとの接続状態で、加熱プレートは、加熱ハウジングと気化器空間ハウジングとの間に、特に接続境界面の領域に配置される。好ましくは、気化器空間ハウジングは、特に加熱ユニットのメンテナンス目的のために、加熱ハウジングから取外し可能であるように実現される。接続境界面は、好ましくは、長手方向軸線に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に延びる平面に延びる。
【0008】
気化器装置は、優先的には、特に加熱ハウジング内に配置される加熱ユニットの電子構成要素の大きな熱負荷に抗する断熱のために、気化器空間ハウジングと加熱ハウジングとの間に配置される少なくとも1つの断熱要素を有する、少なくとも1つの断熱ユニットを備える。断熱要素は、円形もしくは多角形の断面、または当業者によって好都合と見なされる更なる断面を有してもよい。長手方向軸線に対して少なくとも実質的に平行に延びる方向で見て、断熱要素は、優先的には、気化器空間ハウジングと加熱ハウジングとの間に、特に接続境界面の領域に配置される。優先的には、断熱要素は、少なくとも一方の側で気化器空間ハウジングに隣接し、少なくとも一方の別の側で加熱ハウジングに隣接する。断熱ユニットは、好ましくは、気化器空間ハウジングの外側に配置される少なくとも1つの更なる断熱要素を備える。更なる断熱要素は、周方向に沿って気化器空間ハウジングを包囲する。優先的には、更なる断熱要素は、気化器空間ハウジングの外面に隣接する。更なる断熱要素は、特に、気化器空間ハウジングの内壁での結露形成を抑制するために、かつ/または環境/周囲空気への対流を抑制するために、気化器空間の断熱のために構成される。断熱ユニットが、代替的または付加的に、気化器装置の個々の構成要素の断熱のために、更なる断熱要素を備えることが考えられる。
【0009】
気化器装置は、好ましくは、液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を気化器空間に供給するための少なくとも1つの供給要素、特に供給ノズルまたは供給ドリッパを備える、少なくとも1つの供給ユニットを備える。供給要素は、好ましくは、気化器空間ハウジングに、特に加熱プレートとは反対側に位置する気化器空間ハウジングのカバーに配置される。しかし、供給要素が、液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2の供給を可能にするように、当業者によって好都合と見なされるハウジングの異なる位置に配置されることも考えられる。供給要素は、優先的には、供給要素の中心軸線がハウジングの長手方向軸線に対して少なくとも実質的に平行に、特に同軸に向くように、気化器空間ハウジングに配置される。気化器空間ハウジングのカバーは、好ましくは、気化器空間ハウジングのベース本体、特に筒形、好ましくは円筒形のベース本体に、取外し可能に配置され、特に固定される。しかし、カバーが、気化器空間ハウジングのベース本体と一部品の実装形態で実現されること、特に解放可能な接続技術を有しないこと、および/またはベース本体に紛失しないように配置されることも考えられる。
【0010】
気化器空間ハウジングは、好ましくは、気化器空間の洗浄プロセス、特にCIPプロセス(定置洗浄プロセス)を可能にするための洗浄アクセス開口または洗浄接続部を備える。洗浄アクセス開口または洗浄接続部は、ハウジングの長手方向軸線に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に、または少なくとも実質的に平行に向けられてよい。洗浄アクセス開口または洗浄接続部は、代替的または付加的に、気化器空間に供給された液体および/または気化器空間に供給されたエアロゾルの未気化部分を運び去るための、気化器空間ハウジングのオーバーフロー開口を備えてもよい。気化器空間ハウジングは、優先的には、気化器空間で気化した液体および/または気化器空間で気化したエアロゾル、特にH2O2蒸気-ガス混合物を、直接または分配器を介して、特に気化器装置を備える、製造機械、特に食品充填機および/または食品包装機の1つまたは幾つかの導管を介して、包装要素に運ぶための少なくとも1つの気化器出口または気化器流出接続部を備える。気化器出口または気化器流出接続部は、ハウジングの長手方向軸線に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に、または少なくとも実質的に平行に向けられてもよい。
【0011】
本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、それぞれの加熱要素の個々の作動が可能になる。有利には、気化器装置の実質的に全動作時間にわたって、均等な加熱状況を得ることが可能になる。有利には、気化器表面での滴形成を検出し、好ましくは、これを気化器プロセスの初期に抑制することが可能になる。有利には、選択的なエネルギー入力が可能になる。有利には、気化器表面での滴形成を有利に抑制することができるため、特に気化器表面の個々の小領域を異なる温度で個々に作動させることができるため、低いエネルギー消費を達成することができる。
【0012】
各加熱要素に、加熱ユニットの、特に個々の、調整電子要素、および/または加熱ユニットの、特に個々の、監視電子要素が割り当てられ、各加熱回路が、特に加熱ユニットの統合された調整電子要素および/または加熱ユニットの統合された監視電子要素を備えることがさらに提案される。加熱ユニットの調整電子要素および/または監視電子要素は、好ましくは、少なくとも大部分において、気化器空間ハウジングの方を向いた加熱プレートの側で加熱ハウジング内に配置される。しかし、加熱ユニットの調整電子要素および/または監視電子要素が、加熱ハウジングの外側に配置され、例えば、加熱ユニットの外部であり、かつ/または加熱ユニットとは別々に形成され、例えば、更なる構成要素の制御または調整のために構成される演算ユニットの一部であることも考えられる。特に、加熱ユニットの調整電子要素および/または監視電子要素は、加熱ユニットの接続線、特に加熱ユニットの電気接続線を用いて、特に当業者に既に知られている形態で、加熱要素に接続される。接続線は、ケーブルとして、加熱プレートと一部品の実装形態で実現されるはんだ付けされた銅線として、または当業者によって好都合と見なされる異なる接続線として形成されてもよい。加熱ユニットの調整電子要素および/または監視電子要素は、優先的には、加熱要素を別々に、特に個々に調整かつ/または監視するように構成される。特に、各個々の加熱要素には、それぞれの加熱要素の温度を、別々に、特に個々に調整かつ/または監視する目的で、個々の調整電子要素および/または個々の監視電子要素が割り当てられる。個々の調整電子要素および/もしくは個々の監視電子要素が、個々のハードウェア構成要素として実装されること、または個々の調整電子要素および/もしくは個々の監視電子要素が、個々の加熱要素に選択的に割り当てられるソフトウェア構成要素として実装されることが考えられる。個々の加熱要素の温度監視および/または温度調整が、例えば、加熱要素、特に発熱抵抗体として形成される加熱要素の抵抗値の監視/調整によってもたらされてもよく、または当業者によって好都合と見なされる異なる形態で実施されてもよい。代替的に、各個々の加熱要素には、加熱要素の温度を独立して制御するために、加熱ユニットのそれ自体の制御用電子要素が割り当てられることも考えられる。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、気化器プロセス、特に滅菌プロセスのサイクル期間内に加熱要素の温度設定値からの逸脱を確実に検出することが可能になる。小さな無効電力による有利な調整が可能になる。
【0013】
さらに、加熱要素が、加熱ユニットの中心軸線の周りに同心状に配置されるか、または、加熱要素が、気化器空間ハウジングの方に面する加熱ユニットの側に格子状に配置されることが提案される。好ましくは、特に加熱ユニットがハウジングに配置された状態で、加熱ユニットの中心軸線は、ハウジングの長手方向軸線に対して少なくとも実質的に平行に、特に同軸に延びる。加熱要素は、好ましくは、ハウジングの長手方向軸線の周りに同心状に、または長手方向軸線を完全に含む少なくとも1つの平面に関して鏡面対称に配置される。加熱要素は、点状または線状の発熱抵抗体として実現されてもよい。点状の発熱抵抗体としての加熱要素の実装形態では、好ましくは、幾つかの加熱要素が、特に他の加熱要素のグループから独立して、別々に調整可能かつ/または監視可能であるグループを一緒に形成する。好ましくは、点状の発熱抵抗体としての加熱要素の実装形態では、加熱要素は、例えば、スクリーンの格子に類似して配置され、好ましくは、個々に作動可能な加熱ピクセルを形成する。線状の抵抗体としての加熱要素の実装形態では、これらは、例えば、円弧状、1つ以上の直線、l字状、s字状、ジグザグ状、波状、列と線の配列などで実装および/または配置されてもよい。加熱要素は、好ましくは、加熱ユニットの中心軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる平面に規則的に分布するように配置されてもよく、または加熱プレートの中心からの距離に応じて、加熱プレートの縁に向かって、外側に増加または減少する寸法を有してもよい。当業者によって好都合と見なされる、加熱要素の他の実装形態および/または配置も考えられる。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、気化のための加熱された大きな気化器表面を得ることが可能であり、気化器表面での滴形成の抑制および汚染の検出のために、高いエネルギー要求を有する個々の加熱要素を個々に調整することが可能になる。
【0014】
ハウジングが、加熱ユニットを収容するための少なくとも1つの、特に前述の、加熱ハウジングを備え、加熱ハウジングが、特に前述の接続境界面を介して、気化器空間ハウジングと、特に直接、接続され、加熱要素が、加熱ハウジングと気化器空間ハウジングとの間でハウジングの接続境界面の領域に少なくとも部分的に配置されることが、さらに提案される。好ましくは、接続境界面に対して少なくとも実質的に平行に、かつ長手方向軸線に対して少なくとも実質的に垂直に延びる平面が、加熱ユニットと交差する。加熱ユニットは、好ましくは、特に気化器空間ハウジングと加熱ハウジングとが互いに隣接して配置される状態で、周方向に沿って気化器空間ハウジングおよび加熱ハウジングによって囲まれる。好ましくは、加熱プレートは、特に加熱プレートの縁領域で、気化器空間ハウジングに、特に直接、隣接する。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。気化器空間への有利な入熱が可能になる。特に加熱ハウジングから気化器空間ハウジングを簡単に取り外すことができるため、加熱要素の容易なメンテナンスが可能になる。
【0015】
特に気化器空間ハウジングと加熱ハウジングが互いに隣接して配置される状態で、加熱ユニットの少なくとも1つの加熱要素が、気化器空間ハウジングに、特に直接、隣接するように、加熱ユニットが気化器空間ハウジングに配置されることがさらに提案される。好ましくは、加熱ユニットの個々の加熱要素が、気化器空間ハウジングに少なくとも部分的に隣接する。優先的には、個々の加熱要素が、気化器空間ハウジングに直接、特に少なくとも個々の加熱要素の小領域で接触する。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、気化器空間ハウジングの加熱は、気化器空間ハウジングの内壁での結露形成を抑制する目的で実現することができる。
【0016】
この他に、気化器装置が、少なくとも1つの弾性的な予荷重要素、特にばね要素を備え、この要素が、気化器空間ハウジングの方への予荷重力を加熱ユニットに与えるように構成されることが提案される。予荷重要素は、好ましくは、加熱ハウジング内に配置される。予荷重要素は、優先的には、一方の側で加熱ユニットに支持され、別の側で加熱ハウジングに、特に加熱ハウジングの内壁に支持される。予荷重要素は、螺旋ばね、エラストマー、ガス圧縮ばね、板ばね、液圧ピストン、または当業者によって好都合と見なされる別の予荷重要素として形成されてもよい。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、気化器空間ハウジングへの確実な入熱を可能にするように、加熱ユニットが気化器空間ハウジングに確実に隣接することが達成可能である。
【0017】
さらに、気化器装置が、気化器空間ハウジングに供給された液体および/または気化器空間ハウジングに供給されたエアロゾルの未気化部分を運び去るための、気化器空間ハウジングおよび/または加熱ユニットの気化器表面に配置された少なくとも1つの流出開口を備えることが提案される。流出開口が気化器空間ハウジングに配置される場合、流出開口は、好ましくは、長手方向軸線に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に延びる向きを有する。流出開口が加熱ユニットの気化器表面、特に加熱プレートに配置される場合、流出開口は、好ましくは、長手方向軸線に対して少なくとも実質的に平行に延びる向きを有する。しかし、当業者によって好都合と見なされる、気化器空間ハウジングおよび/または加熱プレートにおける流出開口の他の向きおよび/または配置も考えられる。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、加熱ユニットの汚染を抑制することが可能になる。
【0018】
加熱要素に割り当てられる気化器表面が、気化すべき液体および/または気化すべきエアロゾルに対して耐性を有するように、特にH2O2に対して耐性を有するように実現されるコーティングを有することも提案される。コーティングは、好ましくは、気化器表面を形成し、気化器空間の方に面する加熱プレートの側に配置される。コーティングは、好ましくは、加熱要素を覆うか、または加熱要素、特に気化器空間の方に面する加熱要素の表面が、コーティングが設けられた気化器表面を少なくとも部分的に形成する。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、未気化液体および/または未気化エアロゾル、特に未気化H2O2の付着を抑制することが可能になる。
【0019】
その上、気化器空間ハウジングが、気化器空間で気化した液体および/または気化器空間で気化したエアロゾル、特にH2O2蒸気-ガス混合物を、直接または分配器を介して、特に製造機械の1つまたは幾つかの導管を介して包装要素に供給するための幾つかの気化器出口を備えることが提案される。気化器出口は、ハウジングの長手方向軸線に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に、または少なくとも実質的に平行に向けられてもよい。気化器出口は、周方向に沿って規則的または不規則に分布するように、気化器空間ハウジングに配置されてもよい。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。有利には、滅菌ガス混合物の集中製造が達成可能であり、これは、製造機械の異なる包装要素または位置に特に柔軟に分配することができる。
【0020】
この他に、本発明は、本発明による少なくとも1つの気化器装置を有する製造機械、特に食品充填機および/または食品包装機を提案する。製造機械は、食品産業または医療産業での使用を意図したものであってもよい。製造機械は、気化器装置に加えて、例えば製品製造装置、製品充填装置、製造される製品または充填すべき製品が自動的に包装される製品包装装置、製品搬送装置などのように、当業者によって好都合と見なされる更なる構成要素を有してもよい。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。例えば、充填されるべき製品または包装されるべき製品が充填および包装される包装要素の信頼性の高い滅菌が有利に達成可能である。
【0021】
本発明はさらに、液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を、気化器装置を用いて、特に本発明による気化器装置を用いて気化するための方法に関する。少なくとも1つの方法ステップでは、マトリックス加熱ユニットとして形成された加熱ユニットの、規則的かつ/または不規則に平面に配置される複数の加熱要素が、別々に、特に個々に調整かつ/または監視され、加熱要素が、加熱ユニットの加熱プレートに配置され、少なくとも1つの方法ステップでは、加熱ユニットの気化器表面を形成する加熱プレートの表面を用いて液体および/またはエアロゾルが気化されることが提案される。気化器装置について既に開示された特徴は、気化器装置に関して既に開示された特徴が、方法に関しても開示されたと見なされるように、方法に関して類推して理解される。本発明による実装形態は、気化器プロセス、特に滅菌プロセスにおける高度なプロセス信頼性を達成することを可能にする。例えば、充填すべき製品または包装すべき製品が充填および包装される包装要素の信頼性の高い滅菌が有利に達成可能である。
【0022】
本発明による気化器装置、本発明による製造機械および/または本発明による方法は、ここでは、上述した用途および実装形態に限定されない。特に、ここで記述される機能を満たすために、本発明による気化器装置、本発明による製造機械および/または本発明による方法は、ここで与えられた数とは異なる数の個々の要素、構成要素およびユニットならびに方法ステップを有してもよい。その上、本開示で与えられる値の範囲に関して、記述された限界内にある値も開示されており、要求に従って適用可能であると見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
更なる利点は、図面の以下の説明から明らかになるであろう。図面では、本発明の例示的な実施形態が示される。図面、説明および特許請求の範囲は、複数の特徴を組み合わせて含む。当業者であれば、意図的に特徴を別個に検討することもでき、さらに好都合な組み合わせを見出すであろう。
【
図1】本発明による気化器装置の概略的な説明図である。
【
図2】本発明による気化器装置の断面図であり、概略的な説明図である。
【
図3a】本発明による気化器装置のハウジングの加熱ハウジングから気化器空間ハウジングが取り外された状態で、本発明による気化器装置の加熱ユニットを上から見た概略図である。
【
図3b】本発明による代替的に実装された気化器装置の代替的なハウジングの加熱ハウジングから気化器空間ハウジングが取り外された状態で、本発明による気化器装置の代替的な加熱ユニットを上から見た概略図である。
【
図4】本発明による気化器装置を有する本発明による製造機械の概略的な説明図である。
【
図5】本発明による方法の概略的なフローチャートである。
【0024】
例示的な実施形態の説明
図1は、液体および/またはエアロゾル、特に液体H
2O
2および/またはエアロゾル化H
2O
2を気化するための気化器装置10を示す。気化器装置10は、好ましくは、食品産業および/または医療産業における滅菌プロセスでの用途のために構成された滅菌気化器装置として形成される。気化器装置10は、気化すべき液体および/または気化すべきエアロゾルを供給することができる気化器空間14(
図2参照)を画定する少なくとも1つの気化器空間ハウジング16を備える、少なくとも1つのハウジング12を有する。気化器装置10は、供給された液体および/または供給されたエアロゾルを気化するための少なくとも1つの加熱ユニット18を備える。気化器装置10は、好ましくは、
図4に例示的に示す製造機械78、特に食品充填機および/または食品包装機の一部である。しかし、気化器装置10が、製造機械78から独立して動作可能な自己完結型の装置として実現されることも考えられる。
【0025】
気化器装置10のハウジング12は、好ましくは、多部品の実装形態で実現される。ハウジング12は、特に、気化器装置10の個々の構成要素を収容する、少なくとも部分的に取り囲む、かつ/または支持するために構成される。ハウジング12は、気化器空間ハウジング16と、加熱ユニット18を少なくとも部分的に収容する少なくとも1つの加熱ハウジング60とを備える。優先的には、気化器空間ハウジング16と加熱ハウジング60は、一緒に気化器空間14を画定する。気化器空間ハウジング16は、好ましくは、鐘状の形状で実現される。気化器空間ハウジング16は、特にハウジング12の長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に垂直に延びる平面で見て、円形の断面、楕円形の断面、多角形の断面、または当業者によって好都合と見なされる異なる断面を有してもよい。ハウジング12の長手方向軸線84は、好ましくは、加熱ユニット18の加熱プレート86の気化器表面68に対して少なくとも実質的に垂直に延びる(
図2参照)。気化器表面68は、好ましくは、気化器空間14の方を向いた加熱プレート86の側58に配置される。加熱ユニット18の加熱要素20,22,24,26,28,30に割り当てられる加熱ユニット18の気化器表面68は、気化すべき液体および/または気化すべきエアロゾルに対して耐性を有するように、特にH
2O
2に対して耐性を有するように実装されるコーティングを有する。気化器空間ハウジング16は、好ましくは、特に加熱プレート86とは反対側を向いた気化器空間14の側で、少なくとも周方向88に沿って、かつ長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に平行に延びる少なくとも1つの方向で、気化器空間14を画定する。周方向88は、優先的には、ハウジング12の長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に垂直に延びる平面に延びる。気化器空間ハウジング16は、好ましくは、金属材料で作られる。しかし、気化器空間ハウジング16が、気化器プロセス、特にH
2O
2気化器プロセスで使用するのに適した、当業者によって好都合と見なされる異なる材料で作られることも考えられる。優先的には、加熱ハウジング60と気化器空間ハウジング16とは、特に解放可能に、互いに接続される。好ましくは、加熱ハウジング60および気化器空間ハウジング16はそれぞれ、加熱ハウジング60と気化器空間ハウジング16を接続するための接続フランジ90,92を備える。例えば、加熱ハウジング60と気化器空間ハウジング16とは、接続フランジ90,92によって画定された接続境界面64を介したねじ接続(ここでは詳細に示していない)を用いて、特に解放可能に、互いに接続される。加熱ハウジング60と気化器空間ハウジング16が接続された状態で、加熱プレート86は、加熱ハウジング60と気化器空間ハウジング16との間に、特に接続境界面64の領域に配置される。好ましくは、気化器空間ハウジング16は、特に加熱ユニット18のメンテナンス目的のために、加熱ハウジング60から取外し可能に実装される。接続境界面64は、好ましくは、長手方向軸線84に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に延びる平面に延びる。
【0026】
気化器装置10は、優先的には、特に高熱負荷に抗して加熱ハウジング60内に配置される加熱ユニット18の電子構成要素の断熱のために、気化器空間ハウジング16と加熱ハウジング60との間に配置される少なくとも1つの断熱要素120を有する、少なくとも1つの断熱ユニット118を備える(
図1および
図2参照)。断熱要素120は、円形の断面、多角形の断面、または当業者によって好都合と見なされる異なる断面を有してもよい。長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に平行に延びる方向に沿って見て、断熱要素120は、優先的には、特に接続境界面64の領域で、気化器空間ハウジング16と加熱ハウジング60との間に配置される。優先的には、断熱要素120は、環形状、特に円弧形状で実装される。
【0027】
気化器装置10は、好ましくは、液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を気化器空間14に供給するための少なくとも1つの供給要素96、特に供給ノズルまたは供給ドリッパを備える、少なくとも1つの供給ユニット94を備える。供給要素96は、好ましくは、気化器空間ハウジング16に、特に、加熱プレート86とは反対側に位置する気化器空間ハウジング16のカバー98に配置される。しかし、供給要素96が、液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2の供給を可能にするように、当業者によって好都合と見なされるハウジング12の異なる位置に配置されることも考えられる。供給要素96は、優先的には、供給要素96の中心軸線がハウジング12の長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に平行に、特に同軸に向くように、気化器空間ハウジング16に配置される。気化器空間ハウジング16のカバー98は、好ましくは、特に筒形、好ましくは円筒形の、気化器空間ハウジング16のベース本体100に取外し可能に配置され、特に固定される。しかし、カバー98が、気化器空間ハウジング16のベース本体100と一部品の実装形態で実現されること、特に解放可能な接続技術を有しないこと、および/またはベース本体100に紛失しないように配置されることも考えられる。
【0028】
気化器空間ハウジング16は、優先的には、気化器空間14で気化した液体および/または気化器空間14で気化したエアロゾル、特にH2O2蒸気-ガス混合物を、直接または分配器を介して、特に製造機械78の1つまたは幾つかの導管(ここでは詳細に示していない)を介して包装要素に供給するための、少なくとも1つの気化器出口72,74,76または気化器流出接続部を備える。気化器出口72,74,76または気化器流出接続部は、ハウジング12の長手方向軸線84に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に、または少なくとも実質的に平行に向けられてもよい。気化器装置10の少なくとも1つの実装形態では、気化器空間ハウジング16は、気化器空間14で気化した液体および/または気化器空間14で気化したエアロゾル、特にH2O2蒸気-ガス混合物を直接または分配器を介して幾つかの包装要素に供給するための幾つかの気化器出口72,74,76を備える。
【0029】
図2は、長手方向軸線84を含む平面に沿った気化器装置10の断面図を示す。気化器装置10は、好ましくは、気化器空間ハウジング16と加熱プレート86との間に配置される少なくとも1つの封止要素104を備える、少なくとも1つの封止ユニット102を備える。長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に垂直に延びる方向に沿って見て、封止要素104は、気化器空間ハウジング16と加熱プレート86との間に配置される。しかし、代替的または付加的に、長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に平行に延びる方向に沿って見て、封止ユニット102の封止要素、特に前述の封止要素が、気化器空間ハウジング16と加熱プレート86との間に配置されることが考えられる。封止要素104は、好ましくは、少なくとも一方の側で気化器空間ハウジング16に隣接し、少なくとも一方の別の側で加熱プレート86に隣接する。気化器空間ハウジング16および/または加熱プレート86は、封止要素104を少なくとも部分的に受容するための少なくとも1つの受容凹部を備えてもよい。しかし、封止ユニット102が、気化器空間ハウジング16と加熱プレート86との間に配置される複数の封止要素を備えることも考えられる。取外し可能なカバー98を有する気化器空間ハウジング16の実装形態では、封止ユニット102は、好ましくは、
図2に例示的に示すように、カバー98とベース本体100との間に配置される少なくとも1つの更なる封止要素106を備える。
【0030】
気化器装置10は、特に高熱負荷に抗して加熱ハウジング60内に配置される加熱ユニット18の電子構成要素の断熱のために、気化器空間ハウジング16と加熱ハウジング60との間に配置される少なくとも1つの断熱要素を有する、断熱ユニットを備えてもよい。断熱ユニットは、付加的に、気化器空間ハウジング16の外側に配置される少なくとも1つの更なる断熱要素を備えてもよい。更なる断熱要素は、特に気化器空間ハウジング16の内壁での結露形成を抑制するように、周方向88に沿って気化器空間ハウジング16を包囲してもよい。
【0031】
気化器空間ハウジング16は、好ましくは、気化器空間14の洗浄プロセス、特にCIPプロセス(定置洗浄プロセス)を可能にするように、洗浄アクセス開口および/または接続部108を備える。洗浄アクセス開口および/または接続部108は、ハウジング12の長手方向軸線84に対して横方向に、特に少なくとも実質的に垂直に、または少なくとも実質的に平行に向けられてもよい。洗浄アクセス開口および/または接続部108は、代替的または付加的に、気化器空間14に供給された液体および/または気化器空間14に供給されたエアロゾルの未気化部分を運び去るための、気化器空間ハウジング16のオーバーフロー開口を形成してもよい。
【0032】
加熱プレート86は、好ましくは、長手方向軸線84に関して対称に、特に回転対称にハウジング12に配置される。加熱プレート86は、特に、長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に垂直に延びる主要範囲を有する。気化器表面68は、好ましくは、長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に垂直に延びる。特に、ここで示す例示的な実施形態では、気化器表面68は、平面として実現される。しかし、気化器表面68が、その輪郭に関して、例えば階段状、ドーム状、起伏状などの、当業者によって好都合と見なされる異なる実装形態を有することも考えられる。
【0033】
図3aは、気化器空間ハウジング16が加熱ハウジング60から取り外された状態での加熱ユニット18の概略的な上面図を示す。加熱ユニット18は、別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である加熱要素20,22,24,26,28,30を備えるマトリックス加熱ユニットとして形成される。加熱要素20,22,24,26,28,30は、好ましくは、別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である発熱抵抗体として実装される。優先的には、加熱ユニット18は、セグメント化された複数の電気加熱回路を備え、これらは、特に平面で見て、同心状または格子状に配置される。好ましくは、加熱要素20,22,24,26,28,30、特に各個々の加熱要素20,22,24,26,28,30は、特に配線に関連して、加熱ユニット18の個々の加熱回路を形成する。加熱要素20,22,24,26,28,30は、優先的には、加熱ユニット18の加熱プレート86に、特にその内部に、配置される。加熱要素20,22,24,26,28,30は、規則的または不規則に分布するように、加熱プレート86に配置されてもよい。好ましくは、加熱要素20,22,24,26,28,30は、加熱プレート86に挿入され、特に加熱プレート86に埋め込まれる。好ましくは、加熱要素20,22,24,26,28,30は、加熱プレート86の表面と少なくとも実質的に同一平面で終端する。加熱プレート86の表面は、特に加熱要素20,22,24,26,28,30の表面と共に、液体および/またはエアロゾル、特に液体H
2O
2および/またはエアロゾル化H
2O
2を気化するための加熱ユニット18の気化器表面68を形成する。しかし、加熱要素20,22,24,26,28,30が、気化器表面68を形成する加熱プレート86の表面に対して平行にオフセットされた平面で、加熱プレート86に、特にその内部に配置され、加熱要素20,22,24,26,28,30が、例えば、気化器表面68を加熱するために気化器表面に接触することも考えられる。当業者によって好都合と見なされる、加熱プレート86における、特にその内部における加熱要素20,22,24,26,28,30の他の配置も考えられる。
【0034】
各加熱要素20,22,24,26,28,30には、加熱ユニット18の、特に個々の、調整電子要素32,34,36,38,40,42、および/または加熱ユニット18の、特に個々の、監視電子要素44,46,48,50,52,54が割り当てられる。好ましくは、各電気加熱回路は、加熱ユニット18の統合された調整電子要素32,34,36,38,40,42、および/または加熱ユニット18の統合された監視電子要素44,46,48,50,52,54を備える。加熱要素20,22,24,26,28,30は、好ましくは、加熱ユニット18の割り当てられた調整電子要素32,34,36,38,40,42および/または監視電子要素44,46,48,50,52,54と共に、個々に調整可能かつ/または監視可能である加熱ユニット18の電気加熱回路を形成する。
【0035】
図3aに示す例示的な実施形態では、加熱要素20,22,24,26,28,30は、加熱ユニット18の中心軸線56の周りに同心状に配置される。
図3bに示す気化器装置10’の例示的な実施形態では、気化器装置10’の加熱ユニット18’の加熱要素20’,22’,24’,26’,28’,30’は、気化器空間ハウジング(ここでは詳細に示していない)の方を向いた加熱ユニット18’の側に格子状に配置される。
図1~
図3aで既に説明した気化器装置10の例示的な実施形態とは異なり、
図3bに示す気化器装置10’は、加熱ユニット18’の代替的な配置および/または実装形態、ならびにハウジング12’の代替的な実装形態を有する。
図3bに示す気化器装置10’のハウジング12’および
図3bに示す加熱ユニット18’は、多角形の断面、特に正方形または長方形の断面を有する。しかし、加熱ユニット18’のみが多角形の断面、特に正方形または長方形の断面を有し、ハウジング12’が円形の断面を有することも考えられる。その逆も考えられる。
図3bに示す気化器装置10’の代替的な実装形態の更なる特徴に関して、気化器装置10の特徴が
図3bに示す気化器装置10’に関して類推的に読まれるように、
図1~
図3aに示す気化器装置10の上記の説明および以下の説明が参照されてもよい。
【0036】
図2は、ハウジング12が、加熱ユニット18を収容するための加熱ハウジング60を少なくとも備え、加熱ハウジング60は、気化器空間ハウジング16と、特に直接、接続され、加熱要素20,22,24,26,28,30は、加熱ハウジング60と気化器空間ハウジング16との間でハウジング12の接続境界面64の領域に少なくとも部分的に配置されることを示す。加熱ユニット18は、加熱ユニット18の少なくとも1つの加熱要素20,30が気化器空間ハウジング16に、特に直接、隣接するように、気化器空間ハウジング16に配置される。好ましくは、加熱ユニットの少なくとも2つ、特に少なくとも4つの加熱要素20,30が、気化器空間ハウジング16に直接隣接する。優先的には、加熱プレート86の周辺領域に配置された加熱要素20,30は、気化器空間ハウジング16に直接隣接する。
【0037】
気化器装置10は、(
図2に破線で示す)少なくとも1つの弾性的な予荷重要素66、特にばね要素をさらに備え、これは、気化器空間ハウジング16の方への予荷重力を加熱ユニット18に与えるように構成される。予荷重要素66は、優先的には、一方の側で加熱ユニット18に支持され、別の側で加熱ハウジング60に、特に加熱ハウジング60の内壁に支持される。予荷重要素66は、螺旋ばね、エラストマー、ガス圧縮ばね、板ばね、または当業者によって好都合と見なされる別の予荷重要素として形成されてもよい。
【0038】
気化器装置10は、気化器空間ハウジング16に供給された液体および/または気化器空間ハウジング16に供給されたエアロゾルの未気化部分を運び去るための、気化器空間ハウジング16または加熱ユニット18の気化器表面68に配置される少なくとも1つの流出開口70(
図1および
図2参照)を備える。流出開口70は、優先的には、長手方向軸線84に対して少なくとも実質的に平行な向きを有する。しかし、当業者によって好都合と見なされる、気化器空間ハウジング16および/または加熱プレート86における流出開口70の異なる向きおよび/または配置も考えられる。気化器空間ハウジング16に供給された液体および/または気化器空間ハウジング16に供給されたエアロゾルの未気化部分を運び去ることに加えて、流出開口70が洗浄装置、特にCIP洗浄装置を接続するために構成されることもさらに考えられる。
【0039】
図5は、気化器装置10を用いて液体および/またはエアロゾル、特に液体H
2O
2および/またはエアロゾル化H
2O
2を気化するための方法80のフローチャートを示す。少なくとも1つの方法ステップ110では、加熱ユニット18が起動される。少なくとも1つの方法ステップ112では、液体および/またはエアロゾルが、供給ユニット94を介して気化器空間14に供給される。少なくとも1つの方法ステップ82では、マトリックス加熱ユニットとして実現される加熱ユニット18の加熱要素20,22,24,26,28,30は、別々に、特に個々に調整かつ/または監視される。加熱要素20,22,24,26,28,30は、それぞれの調整電子要素32,34,36,38,40,42および/または監視電子要素44,46,48,50,52,54を用いて、別々に調整かつ/または監視される。少なくとも1つの方法ステップ116では、気化器空間14で気化した液体および/または気化器空間14で気化したエアロゾル、特にH
2O
2蒸気-ガス混合物が、滅菌すべき包装要素への供給のために、特に導管を介して吸引される。特に必ずしも存在しない、少なくとも1つの方法ステップ114では、気化器空間14で気化した液体および/または気化器空間14で気化したエアロゾル中の物質濃度、特にH
2O
2濃度が、特にそれに依存する加熱ユニット18を調整するために、記録され、かつ/または気化器空間14で気化した液体および/または気化器空間14で気化したエアロゾル、特にH
2O
2蒸気-ガス混合物の滴検出および/または、特に間接的な、決定が、加熱ユニット18の電力消費によって行われる。方法80の更なる方法ステップに関しては、気化器装置10の説明が参照され、方法80について類推的に理解される。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体および/またはエアロゾル、特に液体H2O2および/またはエアロゾル化H2O2を気化するための気化器装置、特に滅菌気化器装置であって、
気化すべき前記液体および/または気化すべき前記エアロゾルを供給することができる気化器空間(14)を画定する少なくとも1つの気化器空間ハウジング(16)を備える少なくとも1つのハウジング(12)と、
供給された前記液体および/または供給された前記エアロゾルを気化するための少なくとも1つの加熱ユニット(18)と、
を有する、気化器装置において、
前記加熱ユニット(18)が、別々に、特に個々に調整可能かつ/または監視可能である加熱要素(20,22,24,26,28,30)、特に加熱回路を備えるマトリックス加熱ユニットとして実現され、
前記加熱ユニット(18)が、不規則かつ/または規則的に平面に配置される複数の加熱要素(20,22,24,26,28,30)を備え、
前記加熱要素(20,22,24,26,28,30)が、前記加熱ユニット(18)の加熱プレート(86)に配置され、
前記加熱プレート(86)の表面が、前記液体および/またはエアロゾルを気化するための前記加熱ユニット(18)の気化器表面(68)を形成する、
ことを特徴とする、気化器装置。
【外国語明細書】