IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レヴェニオ リサーチ オーワイの特許一覧

<>
  • 特開-呼吸測定のための方法および装置 図1
  • 特開-呼吸測定のための方法および装置 図2
  • 特開-呼吸測定のための方法および装置 図3
  • 特開-呼吸測定のための方法および装置 図4
  • 特開-呼吸測定のための方法および装置 図5
  • 特開-呼吸測定のための方法および装置 図6
  • 特開-呼吸測定のための方法および装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178350
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】呼吸測定のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20241217BHJP
   A61B 5/087 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/087
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165005
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2021537488の分割
【原出願日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】62/728,268
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521094861
【氏名又は名称】レヴェニオ リサーチ オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】セッパー,ヴィレ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ハルト,アントン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肺機能検査を行うことができる方法を提供する。
【解決手段】ある期間にわたる、呼吸の流速および気量、または呼吸の流速および時間、または呼吸の時間および気量の形態の、複数の測定された呼吸サイクルに相当する測定データを使用して、呼吸の変化を測定するための方法であって、そのような測定データは、少なくとも呼吸サイクルの呼気相の測定に属し、呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の呼気相のばらつきを解析し、測定は、ある期間にわたる測定であり、呼吸サイクルの呼気相間のばらつきは、呼吸サイクルの呼気相の呼気量の前半の範囲の測定データから解析される、方法。対応する装置およびコンピュータプログラム製品も提示される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある期間にわたる、呼吸の流速および気量、または呼吸の流速および時間、または呼吸の時間および気量の形態の、複数の測定された呼吸サイクルに相当する測定データを使用して、呼吸の変化を測定するための方法であって、前記測定データは、少なくとも前記呼吸サイクルの呼気相の測定に属し、
前記方法は、前記呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の呼気相のばらつきを解析することを備え、前記測定は、ある期間にわたる測定であり、
前記呼吸サイクルの呼気相間のばらつきは、前記呼吸サイクルの呼気相の呼気量の前半の範囲の測定データから解析され、
前記ばらつきは、気道閉塞の存在を検出するのに使用され、
前記測定された呼吸サイクルは、前記呼吸サイクルの呼気相の呼気量の15~45%の範囲の測定データから解析される、方法。
【請求項2】
前記測定データの呼吸サイクルは、移動平均化窓を使用して時間平均される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記測定データのいくつかの測定信号から心原性振動を除去するための信号処理を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定データは、運動、会話、泣き、または咳等によって歪んだデータ部分を破棄するように処理される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、前記測定データのいくつかの測定信号に1つ以上の較正係数または較正モデルを適用することによって、測定正確度を改善することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記呼吸サイクルは、ある期間にわたる継続的な呼吸サイクルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
呼吸の流速および気量、または呼吸の流速および時間、または呼吸の時間および気量に相当する呼吸サイクルは、連続呼吸測定からの測定に属する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記期間は、少なくとも数分、数時間、または夜間睡眠時間を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定データは、前記呼気量または時間が0~100%などの一定の範囲に正規化されるように正規化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
呼気流速の時間積分が前記呼気量の時間積分に等しくなるように呼気流速が正規化されるように、前記測定データは正規化される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ある期間にわたる、呼吸の流速および気量、または呼吸の流速および時間、または呼吸の時間および気量を測定するための測定手段を含む、呼吸の変化を測定するための装置であって、そのような測定は、少なくとも前記呼吸サイクルの呼気相の測定に属し、
前記装置は、前記呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の呼気相のばらつきを解析するように配置された演算手段をさらに含み、前記測定は、ある期間にわたる測定であり、
前記呼吸サイクルの呼気相間のばらつきは、前記呼吸サイクルの呼気相の呼気量の前半の範囲の測定データから解析され、
前記ばらつきは、気道閉塞の存在を検出するのに使用され、
前記測定された呼吸サイクルは、前記呼吸サイクルの呼気相の呼気量の15~45%の範囲の測定データから解析される、装置。
【請求項12】
前記測定手段は、インピーダンス呼吸記録手段を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記インピーダンス呼吸記録手段は、人体の腕と接触するように構成された少なくとも1つの電極、および人体の胸部と皮膚接触するように構成された少なくとも1つの電極を使用することと、呼吸量変化に関連するインピーダンス信号変化、または呼吸流速に関連する時間微分インピーダンス信号変化を定めることとを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
コンピュータに請求項1に記載の方法を実行させるためのコンピュータコードを含む、非一時的コンピュータ可読媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本発明は、呼吸測定に関する。具体的に、しかしながら非排他的には、本発明は、人の呼吸の変化を測定および検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺機能測定は、複数の肺疾患の監視および診断の基礎である。しかしながら、発育段階または精神的もしくは身体的制約のために協力する能力の限られた被験者は、要求の多い呼吸操作を必要とする通常の肺機能検査を行うことができない。例えば、未就学児の喘息の診断は、従来の肺機能検査が適さないため困難である。
【0003】
自発的な周期性呼吸(TB)中の測定は、最小限の協力しか必要とせず、したがって、小さい子供および乳幼児に適している。TB流速曲線または流速-気量(TBFV)曲線から導かれるパラメータは、若年患者の閉塞性呼吸器疾患で、決定的な方法で変化することを示唆する大規模な調査が存在する。研究は、例えば、TBパラメータは、1秒量(FEV1)、気道抵抗、気管支拡張反応、およびメタコリン負荷に関連し、病的呼吸状態を区別するのに使用され得ることを示している。
【0004】
TBパターンを測定および解析するための現在の技術および装置は、気道との直接のアクセスの必要性によって妨げられる。測定の心理面を克服するために鎮静剤がしばしば使用され得るが、物理的な接顔および死腔の増加は、呼吸パターンを依然として歪ませる。特に、周期性呼吸の時間変動性の解析は、直接の気道アクセスを必要とする器具では実現不可能なより長いTB記録から利益を得るであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、特に呼吸測定のための方法および装置に関連して、先行技術の装置に見られる前述の欠点の1つ以上を少なくとも軽減することである。目的は、概して、本開示による方法、装置、およびコンピュータプログラム製品を用いて達成される。
【0006】
本発明の利点は、人の呼吸の変化を検出するのに使用され得る方法で、人の呼吸を測定することを可能とすることである。そのような検出された呼吸の変化は、その後、検出された呼吸の変化の原因を診断するのに使用されてよい。
【0007】
本発明の一態様によれば、ある期間にわたる、呼吸の流速および気量、または呼吸の流速および時間、または呼吸の時間および気量の形態の、複数の測定された呼吸サイクルに相当する測定データを使用して、呼吸の変化を測定するための方法であって、そのような測定データは、少なくとも呼吸サイクルの呼気相の測定に属し、
呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の呼気相のばらつきを解析し、測定は、ある期間にわたる測定であり、
呼吸サイクルの呼気相間のばらつきは、呼吸サイクルの呼気相の呼気量の前半の範囲の測定データから解析される、方法。
【0008】
本発明の別の態様によれば、ある期間にわたる、呼吸の流速および気量、または呼吸の流速および時間、または呼吸の時間および気量を測定するための測定手段を含む、呼吸の変化を測定するための装置であって、そのような測定は、少なくとも呼吸サイクルの呼気相の測定に属し、
呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の呼気相のばらつきを解析し、測定は、ある期間にわたって測定された測定である
ように配置された演算手段をさらに含み、
呼吸サイクルの呼気相間のばらつきは、呼吸サイクルの呼気相の呼気量の前半の範囲の測定データから解析される、装置。
【0009】
本発明の別の態様によれば、コンピュータに請求項1に記載の方法を実行させるためのコンピュータコードを含む、非一時的コンピュータ可読媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品。
【0010】
以上で簡単に説明されたように、本発明の異なる態様の有用性は、各特定の実施形態に応じた複数の問題に起因する。
【0011】
「いくつかの」という表現は、本明細書では、1つ(1)から始まる任意の正の整数を指すことがある。「複数の」という表現は、2つ(2)から始まる任意の正の整数をそれぞれ指すことがある。
【0012】
「例示的」という用語は、本明細書では、例または例のような特徴を指し、唯一またはただ1つの好ましい選択肢ではない。
【0013】
「1回換気量」という表現は、1回の正常な吸気または呼気中に置き換えられる空気量に相当する量である。したがって、「周期性呼吸」という表現は、気量が1回換気量であるような正常な呼吸を指すのに使用される。
【0014】
「呼吸サイクル」という表現は、呼気および吸気の両方を含む呼吸のサイクルを指すのに使用される。「呼気相」という表現は、呼吸サイクルの吸気を除く、呼吸サイクルの呼気を指すのに使用される。
【0015】
本発明の異なる実施形態も、添付の従属特許請求項に開示される。
【0016】
本発明のいくつかの例示的実施形態を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による方法に適した測定手段装置の実施形態を描写する。
図2】本発明による方法に適した測定手段装置の別の実施形態を描写する。
図3】本発明による方法の実施形態のフロー図を示す。
図4】2つの群のTBFV測定のばらつき間のウィルコクソン順位和検定からのp値を例解する図を描写し、第1の群は、喘息患者のTBFV測定データを含み、第2の群は、健常者のTBFV測定データを含む。
図5】ある時間枠における睡眠時連続測定中の人から得られた複数の流速-気量曲線を例解するグラフを描写する。
図6】ある時間枠における睡眠時連続測定中の人から得られた複数の流速-気量曲線を例解する別のグラフを描写する。
図7】ある時間枠における睡眠時連続測定中の人から得られた複数の流速-気量曲線を例解する別のグラフを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明による方法に適した測定手段装置の実施形態を描写する。インピーダンス呼吸記録用機器30は、コネクタインタフェース31を介して、人体1の右腕2に取り付けられたセンサ11および左腕3に取り付けられたセンサ12に接続される。センサ21、23は、人体1の両側の側胸部または中腋窩線に取り付けられる。センサ要素は、コネクタインタフェース31に電気信号を伝える電極およびケーブル13、14、15、16を含む。中腋窩線は、前腋窩線と後腋窩線との間の胴体上の冠状線と定義される。センサ配置は、中腋窩線から数センチメートル変動してよい。
【0019】
センサ11、12、21、22、ケーブル13、14、15、16、インタフェース31、および機器30は、インピーダンス呼吸記録測定システムの構成要素である。センサ11、12、21、22は、インピーダンス呼吸記録システムを使用する人がセンサを人体1の正しい位置に接続するのを助ける文字、色、または他の表示を含んでよい。スリーブ41、41は、左腕2と右腕3とを区別する表示を含んでよい。スリーブ41、42の大きさまたは形状も、ユーザがセンサ11、12を誤った位置に設置するのを防ぎ得る。
【0020】
装置の一実施形態では、機器30用に構成されたインタフェース31は、色分けまたは文字などの、正しい設置手順の表示を含むように配置される。機器30は、ユーザに手順について知らせるためのディスプレイも含んでよい。機器30に実装されたソフトウェアは、支援情報をユーザに提供するためのコードも含んでよく、正しい設置手順を確認するか、または設置もしくは動作中にエラーがあれば知らせる。エラー状態の一例は、測定データが所定の範囲外にあることである。
【0021】
機器30は、インピーダンス呼吸記録情報を、コンピュータまたは他の医療デバイスなどの別のデバイスに伝送するインタフェースを含んでよい。一実施形態では、機器30は、呼吸によって生じる胸部インピーダンスの変化を、他の用途で使用され得る高レベル呼吸信号に変換するように配置される。機器30は、別の医療デバイスに統合されてもよい。
【0022】
図2は、センサ11、12がスリーブ41、42の一部であるように配置される、本発明による方法に適した測定手段装置の別の実施形態を描写する。スリーブ41、42は、腕2、3と胴体との間の直接の皮膚接触を防ぐ電気抵抗材料で作製される。これは、電流が皮膚を通り、したがって偽値に寄与するのを防ぐ。生体インピーダンス値は、上部腋窩線を通して、または肺の上部の好ましい経路から、測定される。スリーブは、インピーダンス呼吸記録システムで使用されるように配置されたシャツまたはジャケット43の一部であってもよい。スリーブは、アームバンドの形態であってもよい。一実施形態では、アームバンドの厚さは、体と腕の距離を保つ。スリーブは、銀または白金などの好適な材料で作製された繊維電極として構成された電極を含んでもよい。
【0023】
センサ11、12、21、22は、異なる構成で配置されてよい。4極生体インピーダンス測定では4つの電極が使用され、2つは定振幅の交流電流の供給用であり、2つは電圧感知用である。また、電流が測定されている間、定電圧が使用されてよい。電極は、例えば、両腕から測定される電圧差を測定しているか、または電極は、インピーダンスの測定を可能とするために電流を供給していてよい。同じパラメータ用の電極対は、常に互いから距離をおいて位置付けられる。電流の供給および電圧の測定は、電極対として単一のセンサに組み合わされてもよい。
【0024】
インピーダンス呼吸記録法では、小さい高周波電流は、皮膚電極対を通り、別の電極対は、インピーダンスに比例し、さらには肺気量に比例する、発生した電圧を記録するのに使用される。心原性振動は、参照により本書に組み込まれるフィンランド特許出願FI20115110に記載されたフィルタリング技術によって除去され得る。
【0025】
電極11、12の腕2、3への配置は、特に低肺気量スケールでの、肺気量に対するインピーダンスの測定結果の直線性を著しく改善する。1つの例示的な電極配置は、上腕二頭筋と上腕三頭筋との間である。腕への電極のこの配置は、腋窩上線への配置と言える。腕と体側部との間の皮膚接触を防ぐことで、皮膚接触が生体インピーダンス値に寄与していないため、測定値を改善する。
【0026】
胸部インピーダンス信号から心原性振動をフィルタリングするための方法の例を、本明細書に提示する。
【0027】
振動信号Soscの抑制は、上記振動信号Soscおよび変調信号Smodを含む複合信号Sを提供することと、複合信号Sを高域フィルタで高域フィルタリングして、振動信号Soscの推定値および変調信号Smodの推定値を生成することと、振動信号Soscの推定値は、変調信号Smodの第1の状態中の第1の振動および変調信号Smodの第2の状態中の第2の振動を含み、上記第1の状態と関連する第1のビンおよび上記第2の状態と関連する第2のビンを定めることと、変調信号Smodの推定値から定められた状態に従って上記第1の振動に第1のビンを割り当て、変調信号Smodの推定値から定められた状態に従って上記第2の振動に第2のビンを割り当てることと、上記第1のビンにおける上記第1の振動の第1の平均波形、および上記第2のビンにおける上記第2の振動の第2の平均波形を形成することと、上記第1および第2の平均波形の各状態において、上記複合信号Sから上記振動信号Soscを抑制するために、上記第1および第2の平均波形を使用することとによって行われる。
【0028】
言い換えれば、振動信号Soscは、振動信号Soscおよび変調信号Smodを含む複合信号Sから、変調信号Smodの部分を除去することなく抑制され得る。複合信号Sは、高域フィルタリングされて、振動信号Soscの推定値および変調信号Smodの推定値を生成する。振動信号Soscの推定値は、変調信号Smodの第1の状態中の第1の振動および変調信号Smodの第2の状態中の第2の振動を少なくとも含む。上記第1の状態と関連する第1のビンおよび上記第2の状態と関連する第2のビンが定められ、変調信号Smodの推定値から定められた状態に従って上記第1の振動に第1のビンが割り当てられ、変調信号Smodの推定値から定められた状態に従って上記第2の振動に第2のビンが割り当てられる。上記第1のビンにおける上記第1の振動の第1の平均波形、および上記第2のビンにおける上記第2の振動の第2の平均波形が形成される。そして、これらの第1および第2の平均波形は、上記第1および第2の平均波形の各状態において複合信号Sから減算されて、変調信号Smodを形成する。方法は、例えば、インピーダンス呼吸記録信号中の心原性振動を抑制するために適用されてよく、心原性振動およびインピーダンス呼吸記録信号は、経胸壁インピーダンス信号を形成する。
【0029】
図3は、本発明による方法の実施形態を描写する。
【0030】
302で、呼吸測定に属する測定データを収集するために、測定手段装置を使用もしくは構成してよいか、または測定データを得るために、呼吸測定に属する測定データを含むデータベースなどの情報源にアクセスしてよい。
【0031】
304で、複数の呼吸サイクルに相当する呼吸測定データを得る。そのような呼吸データは、呼吸の流速および気量に相当する気量および呼吸流速測定データ、または呼吸流速および呼吸時間に相当する呼吸流速および時間測定データ、または呼吸の期間にわたる気量に相当する気量および時間測定データを含んでよく、そのようなデータは、ある期間にわたる、複数の呼吸サイクルからの測定の測定データを含む。呼吸測定データは、少なくとも数分、5時間以上などの数時間、または夜間睡眠時間などの、ある期間にわたる呼吸サイクルを含んでよく、ある期間にわたる呼吸サイクルの測定は、好ましくは、少なくとも特定の睡眠段階などの好ましい時間窓中で、継続的および連続的なものである。解析される呼吸測定データは、単一の人にのみ属するものでなければならず、好ましくは、呼吸サイクルは、一晩の睡眠、または日中の任意の時間での睡眠中の他のそのような十分な期間にわたる呼吸サイクルなどの、連続期間にわたる継続的な呼吸サイクルで構成される。加えて、異なる睡眠段階中の呼吸サイクルに属する呼吸測定が使用されてよく、複数の睡眠段階にわたる複数の呼吸サイクルに属する呼吸測定データの使用は、よりロバストなデータ品質を方法にもたらし得る。あるいは、好ましい1つ以上の特定の睡眠段階に属する呼吸測定値が得られ、使用されてよい。あるいは、呼吸測定データは、覚醒状態などの非睡眠段階中の連続期間にわたる継続的な呼吸サイクルに属するものであってもよい。異なる人は、または異なる時間の同じ人でさえ、その周期性呼吸において異なるばらつきを有し得、したがって本方法は、好ましくは、ある時間枠で人に対して行われた呼吸測定に属する呼吸測定データを用いて行われ、その結果、測定は、本質的に連続的であるか、または呼吸サイクルは、時間に関して継続的な呼吸サイクルを含む。
【0032】
呼吸測定が本明細書で一般的に言及されるが、呼吸測定データは、呼吸サイクルの呼気相のみに属する測定データから得ることができる。
【0033】
呼吸測定データを得ることは、必要とされる呼吸サイクル測定の量の閾値、すなわち、呼吸測定データが方法で解析されることが可能であるか、または方法で解析されるのに十分であると見なされるのに必要な、呼吸サイクル測定の測定データ量および/または十分なタイムスパンも含んでよい。例えば、そのような閾値は、少なくとも5時間の期間にわたる、呼吸サイクルのTB呼気相流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定を含んでよい。測定データ量の増加は、経時的な周期性呼吸のばらつきの解析の正確度を高め得るが、データの十分性ならびにデータの種類(例えば、いくつかの睡眠段階中の呼吸サイクルに属するのか、および/または覚醒状態中の呼吸サイクルに属するのか)は、例えば、方法の用途、ならびに測定データの品質または種類、さらには方法の所望の正確度を考慮して変動してよいことを、当業者は理解することになる。
【0034】
呼吸サイクルのTB呼気相流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の呼吸測定データは、以上で記載されたようなインピーダンス呼吸記録測定手段で測定されてよい。呼吸量、時間、および/または流速データを測定するためのいくつかの他の実現可能な測定手段および技術は、通常、心弾図法などの容量測定に基づく、ベッド、マットレス、毛布等に配置されたセンサ測定装置を含む。いくつかのさらなる実現可能な測定装置は、伸びを測定する、衣服またはストラップなどのウェアラブルデバイスを含み、一例としては、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィ(RIP)が挙げられる。さらに、(例えば、DOI:10.1109/TMTT.2013.2256924で述べられる)ドップラーレーダセンサ装置、(例えば、PneumaCareによる)光電気プレチスモグラフィ、(例えば、VoluSenseによる)電磁誘導プレチスモグラフィ、および加速度計に基づく装置が使用されてよい。明らかに、周期性呼吸から呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定値を取得するための、他の好適な手段も使用されてよい。
【0035】
測定データは、好ましくは、夜間または日中を問わず、就寝中の人などの、安静時の単一の人に対して行われたTB呼吸サイクル測定を含む。方法は、方法を使用するための測定データを、データベース、クラウド、または他のそのような情報源から得ることなどによって、既存のデータセットに対して行われてよい。ゆえに、方法は、測定データを収集するために実際の測定を行うことを含む必要はない。また、呼吸測定データは、人の呼気相のみの測定に属するデータセットから得られてよい。明らかに、複数の呼吸サイクルに属する呼吸測定データはまた、複数の人の呼吸測定データに相当するデータセットから得られてよく、データは、単一の人にのみ属する関連呼吸サイクルデータが選択されるようにフィルタリングされる。
【0036】
測定データはまた、例えば、流速-気量、流速-時間、または時間-気量呼吸測定の複合信号から心原性振動を除去するための、例えば信号フィルタリングを考慮して、前処理されてよいか、またはこの時点で処理されてよい。測定データはまた、測定中に生じた可能性がある、運動、会話、泣き、咳等によって歪んだデータ部分を破棄するように前処理されてよいか、またはこの時点で処理されてよい。さらに、測定データはまた、流速-気量、流速-時間、または時間-気量呼吸測定の複合信号またはフィルタリングされた信号に、1つ以上の較正係数または較正モデルを適用することによって、測定正確度を改善するように処理または前処理されてよい。
【0037】
306で、呼吸サイクルの吸気相に相当するデータを除いてよい。方法のこの項目は、測定データが呼気相の測定データのみを含む場合、例えば、吸気相が測定されず、省略された場合、または呼吸測定データが呼気相の測定データのみを含むように、呼吸測定データが方法に提供された場合、必須ではない。
【0038】
308で、測定データを、呼気量または時間が0~100%などの一定の範囲に正規化されるように正規化してよい。さらに、呼気流速の時間積分が呼気量の時間積分に等しくなるように呼気流速が正規化されるように、測定データは正規化される。任意選択で、測定データは、すでに正規化された形態であってもよく、その場合、方法のこの項目は必須ではない。しかしながら、データの正規化は必須ではなく、測定データは、呼吸量または肺からの空気の流速の絶対測定に属さない測定データを含んでもよい。測定データは、例えば、測定された呼吸の流速および時間から計算される、tptef/t(tptef=最大周期性呼気流速までの時間、t=呼気の全持続時間)比、または測定された呼吸の流速および気量から計算される、Vptef/V(Vptef=最大周期性呼気流速での気量、V=最大周期性呼気流速での気量)比のような、相対的な形態であってよい。比tptef/tおよびVptef/Vの測定は、先行技術、例えば、刊行物“An Official American Thoracic Society/European Respiratory Society Statement: Pulmonary Function Testing in Preschool Children.”American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, 175(12), pp. 1304-1345で述べられている。
【0039】
310で、移動平均化窓を使用して、呼吸サイクルおよびその呼気相の平均値を計算してよい。これは、方法の任意選択の項目であるが、呼吸サイクル間の相関の計算をより効率的にすることの利益を有し、それは、相関が、すべての個々の呼吸サイクルよりもむしろ複数の平均化された呼吸サイクルから計算され得、その個々の呼吸サイクルは、はるかに数が多い場合があるためである。平均化スキームの例は、20の継続的な個々の呼吸サイクルの平均を計算することと、それらを1つの平均化された呼吸サイクルとして表すこととを含んでよい。
【0040】
312で、経時的な、個々のまたは平均化された呼吸サイクル間の、呼気相の呼気量の前半のばらつきを計算する。ばらつきは、例えば、ある期間にわたる呼吸サイクルに相当する、呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の、個々のまたは平均化された呼気相間の相関から計算されてよい。また、呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の、個々のおよび/または平均化された呼気相間のばらつきを計算するための他の手段が使用されてよい。流速-気量スケールでの、呼吸サイクルの平均化された呼気相間のばらつきの例を、図5図7に示す。
【0041】
314で、計算された相関および/または計算されたばらつきを使用して、周期性呼吸中の呼気のばらつきを決定してよい。呼気相の呼気量の前半におけるばらつきのレベルは、気道閉塞の存在と関連することが示されており、例えば、呼気相のばらつきのレベルがより低いことは、いくらかの気道閉塞の存在を示し、一方、呼気相のばらつきのレベルがより高いことは、健康な周期性呼吸を示す。したがって、これは、喘息の診断などの、肺疾患診断の基礎として使用されてよい。同様に、決定された呼気相のばらつきのレベルは、薬物または処置効率を決定するのに使用されてよい。明らかに、方法のこのステップは、方法に必須ではないが、本発明のいくつかの実際の用途の例を提供する。
【0042】
本発明の方法は、好ましくはコンピュータ実装方法であり、コンピュータ、コンピュータネットワーク、または類似の演算手段で行われてよい。本発明の装置は、図1または図2によるインピーダンス呼吸記録測定手段、またはある期間にわたる、呼吸の流速および気量、または呼吸の流速および時間、または呼吸の時間および気量を測定するための、他のそのような記載された測定手段を使用してよく、測定手段に少なくとも機能的に接続されたコンピュータ、コンピュータネットワーク等の演算手段を使用して、測定手段から測定データを収集し、呼吸サイクルの流速-気量、流速-時間、または時間-気量測定の呼気相のばらつきの解析を実行してよく、呼吸サイクルの呼気相間のばらつきは、呼吸サイクルの呼気相の呼気量の前半の範囲の測定データから解析される。述べられたような信号解析はまた、演算手段、コンピュータネットワーク等で行われてよい。
【0043】
図4は、2つの群のサンプルの測定間の比較のp値を例解する図を描写する。第1の群は、少なくとも3人の救急医が立ち会った下気道閉塞を有する2.5歳(0.~5.7歳、中央値および範囲)の患者70人を含み、そこから、ICS投薬を4週間やめている群の人の60測定のサンプルを取得した。第1の群のサンプルが比較される第2の群は、4.3歳(1.5~6.0歳、中央値および範囲)の健常者対照39人を含み、合計80回測定した。直線相関を、異なる範囲で、すべてのTB流速-気量測定間で計算した。ばらつきを、各終夜記録の相関値の四分位範囲(r15-45IQR)として評価した。p値を、2つの群間でウィルコクソン順位和検定を使用して計算した。本明細書で計算された異なる範囲から、15~45%の範囲の測定値の相関のばらつきが、p値によって示されるように、第1の群および第2の群のサンプルの測定値間の差を有意に示すことが明らかである。
【0044】
測定値は、睡眠段階にかかわらず、睡眠中の複数の人から経時的に取得されたTBFV測定値を含む。述べられたように、呼気量の15~45%の範囲の測定値が、健常者群と喘息患者群との間の差を最も良く示すが、有意差は、10~50%または20~40%の範囲でも見出され得る。ゆえに、呼吸サイクルの呼気の気量または時間の前半が、他の範囲も指してよく、範囲は最大で約60%を超えない。
【0045】
臨床実験的証拠は、周期性呼吸に本質的に存在するばらつきが、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの閉塞性気道疾患の存在下で減少することを示す。この変化は、呼吸困難によって変調された複雑な感覚情報(肺圧受容器、化学受容器等)を統合する呼吸神経制御中枢の反応から生じる。図7に示すように、喘息の存在下での呼気相の少量のばらつきは、図5および図6の呼気流速-気量曲線の初期部分と比較して、明らかに、呼気流速-気量曲線の初期部分で後半部分よりも顕著である。これは、おそらく、呼気開始時、吸気筋(横隔膜、肋間筋)の活性化は急に終わらないという事実による。代わりに、吸気筋の活性は続き、呼気の最初の部分の間に低下し、呼気の後半部分では、呼気は、肺および胸郭の機械的反跳によってのみ駆動される、完全な受動状態になる。これは、初期の呼気は、気道閉塞に敏感な呼吸神経制御の影響を受け、したがって、気道閉塞の存在の検出を目的とする場合、初期の呼気が、周期性呼吸のばらつきを評価するのにより良いことを意味する。
【0046】
図5~7は、睡眠段階にかかわらず、睡眠中の幾人かの人から取得され、流速-気量曲線として提示されたTB測定を例解する。測定データは、流速-時間または気量-時間曲線としても提示され得る。明確にするために、描写された呼吸サイクルの呼気相曲線は、呼吸サイクルの平均化された呼気相を含む。
【0047】
図中、前半の15~45%の好ましい範囲、とりわけ、呼吸サイクルの呼気相の呼気量の15~45%が、安静時の呼気相と比較して、その範囲での呼吸サイクルの比較的大きい量のばらつきを強調するために、2つの垂直線で印をつけられている。
【0048】
図5は、ある時間枠における睡眠時連続測定中の単一の人から得られた、複数の呼気流速-気量曲線(すなわち、吸気を除く)を例解するグラフを描写する。この場合、サンプルは、吸入コルチコステロイド(ICS)投薬中の喘息患者を含む。データから、かなりの経時的な呼吸のばらつきが、呼気の呼気量の前半の範囲で検出され得る。
【0049】
図6は、ある時間枠における睡眠時連続測定中の単一の人から得られた、複数の呼気流速-気量曲線(吸気を除く)を例解する別のグラフを描写する。この場合、サンプルは、肺疾患のない健常者を含む。データから、かなりの経時的な呼吸のばらつきが、呼気の呼気量の前半の範囲で検出され得る。
【0050】
図7は、ある時間枠における睡眠時連続測定中の単一の人から得られた、複数の呼気流速-気量曲線(吸気を除く)を例解する別のグラフを描写する。この場合、サンプルは、ICS投薬を4週間やめている喘息患者を含む。データから、ごくわずかな経時的な呼吸のばらつきが、呼気の呼気量の前半の範囲で検出され得る。
【0051】
本発明の範囲は、添付の請求項とともにその均等物によって決定される。開示された実施形態は例解目的のためにのみ構築されたものであり、本明細書で説明された革新的支点は、発明の各特定の使用事例により良く適するさらなる実施形態、実施形態の組み合わせ、変形、および均等物を包含することになるという事実を、当業者は再び理解することになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7