(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178392
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241217BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20241217BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/18 G
H05K1/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166304
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2023531863の分割
【原出願日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021106969
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 賢治
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 航
(57)【要約】 (修正有)
【課題】給電位置の近くにある配線の部分における断面積と給電位置から離れている配線の部分における断面積との差を小さくすることができるプリント配線板を提供する。
【解決手段】プリント配線板100は、主面を有するベースフィルム10と、主面上に配置されている配線20、配線20の第1位置P1から分岐している第1めっきリード60と、配線20の第2位置P2から分岐している第2めっきリード70とを備える。第1位置P1と第2位置P2の中間位置である配線20の第3位置P3における配線の断面積は、第1位置P1における配線の断面積の95パーセント以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するベースフィルムと、
前記主面上に配置されている配線と、
前記配線の第1位置に接続されている第1めっきリードと、
前記配線の第2位置に接続されている第2めっきリードとを備え、
前記第1位置と前記第2位置の中間位置である前記配線の第3位置における前記配線の断面積は、前記第1位置における前記配線の断面積の95パーセント以上である、プリント配線板。
【請求項2】
前記配線は、前記主面上に配置されているシード層と、前記シード層上に配置されている第1電解めっき層と、前記シード層及び前記第1電解めっき層を覆う第2電解めっき層とを有し、
前記第3位置における前記第2電解めっき層の厚さは、8μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記第1めっきリードの前記配線とは反対側の端と前記第1位置との間における前記第1めっきリードの電気抵抗値は、1Ω以下であり、
前記第1めっきリードの前記配線とは反対側の端と前記第3位置との間における前記配線及び前記第1めっきリードの電気抵抗値は、5Ω以上6Ω以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記配線は、前記主面上において渦巻き状に前記配線を巻回することにより構成されている少なくとも1つのコイルを有する、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記第1めっきリードの前記配線とは反対側の端及び前記第2めっきリードの前記配線とは反対側の端は、前記ベースフィルムの端に達している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板に関する。本出願は、2021年6月28日に出願した日本特許出願である特願2021-106969号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2016-9854号公報(特許文献1)には、プリント配線板が記載されている。特許文献1に記載のプリント配線板は、ベースフィルムと、ベースフィルムの主面上に配置されている配線とを有している。配線は、ベースフィルムの主面上に配置されているシード層と、シード層上に配置されている芯体と、芯体を覆っているシュリンク層とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のプリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に配置されている配線と、配線の第1位置に接続されている第1めっきリードと、配線の第2位置に接続されている第2めっきリードとを備える。第1位置と第2位置の中間位置である配線の第3位置における配線の断面積は、第1位置における配線の断面積の95パーセント以上である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、プリント配線板100の平面図である。
【
図2】
図2は、プリント配線板100の底面図である。
【
図3】
図3は、
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
【
図4】
図4は、プリント配線板100の製造方法を示す工程図である。
【
図5】
図5は、シード層形成工程S21が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
【
図6】
図6は、レジスト形成工程S22が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
【
図7】
図7は、第1電解めっき工程S23が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
【
図8】
図8は、レジスト除去工程S24が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
【
図9】
図9は、シード層除去工程S25が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載のプリント配線板の配線の形成では、第1に、シード層がベースフィルムの主面上に形成される。第2に、シード層上に開口を有するレジストが形成される。第3に、シード層に通電することにより、レジストの開口から露出しているシード層上に電解めっき(第1電解めっき)が行われる。これにより、芯体が形成される。第3に、レジスト及び芯体の間にあるシード層を除去した上で芯体に通電が行われることにより、芯体を覆うように電解めっき(第2電解めっき)が行われる。これにより、シュリンク層が形成される。
【0007】
第2電解めっき工程において、給電位置から離れている芯体の部分に加わる電圧は、給電位置の近くにある芯体の部分に加わる電圧よりも低い。そのため、給電位置から離れている配線の部分では、シュリンク層の厚さが小さくなる。すなわち、給電位置から離れている配線の部分では、断面積が小さくなり、電気抵抗値が増大する。
【0008】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、給電位置の近くにある配線の部分における断面積と給電位置から離れている配線の部分における断面積との差を小さくすることができるプリント配線板を提供するものである。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のプリント配線板によると、給電位置の近くにある配線の部分における断面積と給電位置から離れている配線の部分における断面積との差を小さくすることができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)実施形態に係るプリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に配置されている配線と、配線の第1位置に接続されている第1めっきリードと、配線の第2位置に接続されている第2めっきリードとを備える。第1位置と第2位置の中間位置である配線の第3位置における配線の断面積は、第1位置における配線の断面積の95パーセント以上である。
【0012】
上記(1)のプリント配線板によると、給電位置の近くにある配線の部分における断面積と給電位置から離れている配線の部分における断面積との差を小さくすることが可能である。
【0013】
(2)上記(1)のプリント配線板では、配線が、主面上に配置されているシード層、シード層上に配置されている第1電解めっき層及びシード層及び第1電解めっき層を覆う第2電解めっき層とを有していてもよい。第3位置における前記第2電解めっき層の厚さは、8μm以下であってもよい。
【0014】
(3)上記(1)又は上記(2)のプリント配線板では、第1めっきリードの配線とは反対側の端と第1位置との間における第1めっきリードの電気抵抗値が1Ω以下であってもよく、第1めっきリードの配線とは反対側の端と第3位置との間における配線及び第1めっきリードの電気抵抗値が5Ω以上6Ω以下であってもよい。
【0015】
(4)上記(1)から上記(3)のプリント配線板では、配線が、主面上において渦巻き状に配線を巻回することにより構成されている少なくとも1つのコイルを有していてもよい。
【0016】
(5)上記(1)から上記(4)のプリント配線板では、第1めっきリードの配線とは反対側の端及び第2めっきリードの配線とは反対側の端は、ベースフィルムの端に達していてもよい。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0018】
(実施形態に係るプリント配線板の構成)
以下に、実施形態に係るプリント配線板(「プリント配線板100」とする)の構成を説明する。
【0019】
図1は、プリント配線板100の平面図である。
図2は、プリント配線板100の底面図である。
図3は、
図1中のIII-IIIにおける断面図である。
図1、
図2及び
図3に示されるように、プリント配線板100は、ベースフィルム10と、配線20と、第1めっきリード60と、第2めっきリード70とを有している。
【0020】
ベースフィルム10は、可撓性を有する絶縁性の材料により形成されている。つまり、プリント配線板100は、フレキシブルプリント配線板である。ベースフィルム10を構成している材料の具体例としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート及びフッ素樹脂が挙げられる。
【0021】
ベースフィルム10の主面は、第1主面10a及び第2主面10bである。第2主面10bは、第1主面10aの反対面である。第1主面10aから第2主面10bに向かう方向を、ベースフィルム10の厚さ方向ということがある。
【0022】
配線20は、ベースフィルム10の主面上に配置されている。配線20は、例えば、第1配線30と、第2配線40と、第3配線50とを有している。第1配線30及び第2配線40は、第1主面10a上に配置されている。第3配線50は、第2主面10b上に配置されている。
【0023】
第1配線30は、第1端30aと第2端30bとを有している。第2端30bは、第1端30aの反対側の端である。第1配線30には、端子31と、ランド32とが設けられている。端子31は、第1配線30の第1端30a側に設けられている。ランド32は、第1配線30の第2端30b側に設けられている。
【0024】
第1配線30は、コイル33を有している。コイル33は、第1配線30が第1主面10a上において渦巻き状に巻回されることにより構成されている。第1端30aは、平面視において(第1主面10aに直交している方向から見て)、コイル33の外側にある。第2端30bは、平面視において、コイル33の内側にある。
【0025】
第2配線40は、第1端40aと第2端40bとを有している。第2端40bは、第1端40aの反対側の端である。第2配線40には、端子41と、ランド42とが設けられている。端子41は、第2配線40の第1端40a側に設けられている。ランド42は、第2配線40の第2端40b側に設けられている。
【0026】
第3配線50は、第1端50aと第2端50bとを有している。第2端50bは、第1端50aの反対側の端である。第3配線50には、ランド51と、ランド52とが設けられている。ランド51は、第3配線50の第1端50a側に設けられている。ランド52は、第3配線50の第2端50b側に設けられている。
【0027】
第3配線50は、コイル53を有している。コイル53は、第3配線50が第2主面10b上において渦巻き状に巻回されることにより構成されている。第1端50aは、平面視において(第2主面10bに直交している方向から見て)、コイル53の外側にある。第2端50bは、平面視において、コイル53の内側にある。コイル53は、ベースフィルム10の厚さ方向において、コイル33と重なっている。
【0028】
ベースフィルム10には、貫通穴10c及び貫通穴10dが形成されている。貫通穴10c及び貫通穴10dは、厚さ方向に沿ってベースフィルム10を貫通している。貫通穴10cは、平面視においてランド32及びランド52に重なっている。貫通穴10dは、平面視において、ランド42及びランド51に重なっている。
【0029】
ランド32及びランド52は、貫通穴10cの内壁面上に配置されている導電体(図示せず)により電気的に接続されている。ランド42及びランド51は、貫通穴10dの内壁面上に配置されている導電体(図示せず)により電気的に接続されている。第1配線30、第2配線40及び第3配線50は、これにより、ベースフィルム10上に配置されている配線として、一体化されている。
【0030】
配線20(第1配線30、第2配線40及び第3配線50)は、シード層21と、第1電解めっき層22と、第2電解めっき層23とを有している。
【0031】
シード層21は、ベースフィルム10の主面(第1主面10a及び第2主面10b)上に配置されている。シード層21は、例えば第1層と、第2層とを有している。シード層21の第1層は、ベースフィルム10の主面(第1主面10a及び第2主面10b)上に配置されている。シード層21の第2層は、シード層21の第1層上に配置されている。
【0032】
シード層21の第1層は、例えば、スパッタ層(スパッタリングにより形成された層)である。シード層21は、例えば、ニッケル-クロム合金により形成されている。シード層21の第2層は、例えば無電解めっき層(無電解めっきにより形成された層)である。シード層21の第2層は、例えば銅により形成されている。
【0033】
第1電解めっき層22は、電解めっきにより形成された層である。第1電解めっき層22は、例えば、銅により形成されている。すなわち、第1電解めっき層22は、シード層21の第2層と同一材料により形成されている。第1電解めっき層22は、シード層21上に配置されている。
【0034】
第2電解めっき層23は、電解めっきにより形成された層である。第2電解めっき層23は、例えば、銅により形成されている。第2電解めっき層23は、シード層21及び第1電解めっき層22を覆っている。より具体的には、第2電解めっき層23は、シード層21及び第1電解めっき層22の側面上並びに第1電解めっき層22の上面上に配置されている。第2電解めっき層23の厚さを、厚さTとする。
【0035】
第1めっきリード60は配線20の第1位置P1に接続されている。より具体的には、第1めっきリード60は、第1配線30に接続されている。第1位置P1は、例えば、第1端30a側にある。第1めっきリード60は、端子31を介して第1配線30の第1端30a側に接続されている。第1めっきリード60の配線20(第1配線30)とは反対側の端は、ベースフィルム10の端に達している。第1めっきリード60は、第1主面10a上に配置されている。
【0036】
第2めっきリード70は配線20の第2位置P2に接続されている。より具体的には、第2めっきリード70は、第2配線40に接続されている。第2位置P2は、例えば、第1端40a側にある。第2めっきリード70は、端子41を介して第2配線40の第1端40a側に接続されている。第2めっきリード70の配線20(第2配線40)とは反対側の端は、ベースフィルム10の端に達している。第2めっきリード70は、第1主面10a上に配置されている。
【0037】
なお、図示されていないが、第1めっきリード60及び第2めっきリード70は、配線20(第1配線30、第2配線40及び第3配線50)と同様の構造になっている。すなわち、第1めっきリード60及び第2めっきリード70は、シード層21と、第1電解めっき層22と、第2電解めっき層23とを有している。
【0038】
第1位置P1と第2位置P2との中間位置である配線20の位置を、第3位置P3とする。第3位置P3は、第1位置P1及び第2位置P2よりも給電位置から遠い。このことを別の観点から言えば、第1位置P1及び第2位置P2は、第3位置よりも給電位置に近い。第1めっきリード60の配線20とは反対側の端と第1位置P1との間にある第1めっきリード60の電気抵抗値は、例えば、1Ω以下である。第1めっきリード60の配線20とは反対側の端と第3位置P3との間にある配線20及び第1めっきリード60の電気抵抗値は、例えば、5Ω以上6Ω以下である。配線20の電気抵抗値及び第1めっきリード60の電気抵抗値は、測定箇所にテスターのプローブを接触させることにより測定される。
【0039】
第3位置P3における配線20の断面積は、第1位置P1における配線20の断面積の95パーセント以上である。すなわち、第1位置P1における配線20の断面積から第3位置P3における配線20の断面積を減じた値は、第1位置P1における配線20の断面積の5パーセント以下である。なお、第3位置P3における配線20の断面積は、第1位置P1における配線20の断面積の100パーセント以下である。配線20の断面積は、以下の方法で測定される。第1に、測定位置において、配線20の長さ方向に直交する断面の画像が取得される。この画像の取得は、顕微鏡を用いて行われる。この断面は、ミクロトーム等の断面加工装置を用いて露出される。第2に、上記のようにして取得された配線20の断面の画像に基づいて、配線20の断面積が算出される。
【0040】
第3位置P3における厚さTは、8μm以下であることが好ましい。第3位置P3は、例えば、第1配線30にある。
【0041】
(実施形態に係るプリント配線板100の製造方法)
以下に、プリント配線板100の製造方法を説明する。
【0042】
図4は、プリント配線板100の製造方法を示す工程図である。
図4に示されているように、プリント配線板100の製造方法は、準備工程S1と、配線形成工程S2とを有している。配線形成工程S2は、準備工程S1の後に行われる。
【0043】
準備工程S1では、ベースフィルム10が準備される。準備工程S1で準備されるベースフィルムでは、第1主面10a上に第1配線30、第2配線40、第1めっきリード60及び第2めっきリード70が形成されておらず、第2主面10b上に第3配線50が形成されていない。また、準備工程S1で準備されるベースフィルムは、個片化されていない。
【0044】
配線形成工程S2では、配線20が形成される。さらに、配線形成工程S2では、第1めっきリード60及び第2めっきリード70が形成される。配線形成工程S2は、セミアディティブ工法を用いて行われる。
【0045】
より具体的には、配線形成工程S2は、シード層形成工程S21と、レジスト形成工程S22と、第1電解めっき工程S23と、レジスト除去工程S24と、シード層除去工程S25と、第2電解めっき工程S26とを有している。レジスト形成工程S22は、シード層形成工程S21の後に行われる。第1電解めっき工程S23は、レジスト形成工程S22の後に行われる。レジスト除去工程S24は、第1電解めっき工程S23の後に行われる。シード層除去工程S25は、レジスト除去工程S24の後に行われる。第2電解めっき工程S26は、シード層除去工程S25の後に行われる。
【0046】
図5は、シード層形成工程S21が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
図5に示されるように、シード層形成工程S21では、シード層21の形成が行われる。シード層21は、ベースフィルム10の主面(第1主面10a及び第2主面10b)に対してスパッタリング及び無電解めっきが順次行われることにより形成される。
【0047】
図6は、レジスト形成工程S22が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
図6に示されるように、レジスト形成工程S22では、レジスト80の形成が行われる。レジスト80は、感光性の有機材料がシード層21上に塗布されるとともに塗布された感光性の有機材料を露光及び現像してパターンニングすることにより形成される。レジスト80は、開口を有している。レジスト80の開口からは、シード層21が露出している。
図7は、第1電解めっき工程S23が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
図7に示されるように、第1電解めっき工程S23では、第1電解めっき層22の形成が行われる。第1電解めっき層22は、シード層21に通電してレジスト80の開口から露出しているシード層21上に電解めっきが行われることにより形成される。
【0048】
図8は、レジスト除去工程S24が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
図8に示されるように、レジスト除去工程S24では、レジスト80がシード層21から剥離されて除去される。レジスト80が除去された結果、第1電解めっき層22の間からは、シード層21が露出する。
【0049】
図9は、シード層除去工程S25が行われた後のベースフィルム10の断面図である。
図9に示されるように、シード層除去工程S25では、第1電解めっき層22の間から露出しているシード層21の除去が行われる。第1電解めっき層22の間から露出しているシード層21の除去は、エッチングにより行われる。
【0050】
エッチングは、第1電解めっき層22の間にエッチング液を供給することにより行われる。エッチング液は、エッチング液中の反応種のエッチング対象近傍への拡散ではなくエッチング液中の反応種とエッチング対象との反応によりエッチングが律速されるように選択される。
【0051】
より具体的には、エッチング液には、シード層21の第2層及び第1電解めっき層22を構成している材料(すなわち、銅)に対する溶解反応速度が0.5μm/分以下となるエッチング液が用いられる。そのようなエッチング液の具体例としては、硫酸過酸化水素水溶液が挙げられる。
【0052】
なお、シード層21の第2層のエッチングが完了した後には、エッチング液の切り換えが行われる。切り換え後のエッチング液としては、シード層21の第1層を構成している材料(すなわち、ニッケル-クロム合金)に対する選択比が高いエッチング液が用いられる。そのため、エッチング液の切り換え後には、第1電解めっき層22に対するエッチングは進行しにくい。
【0053】
第2電解めっき工程S26では、第2電解めっき層23の形成が行われる。第2電解めっき層23は、電解めっきにより形成される。第2電解めっき工程S26の電解めっきにおける給電は、第2電解めっき工程S26の後に第1めっきリード60及び第2めっきリード70となる部分のシード層21及び第1電解めっき層22を介して行われる。以上により、
図1、
図2及び
図3に示される構造の配線20(第1配線30、第2配線40及び第3配線50)が形成される。
【0054】
第1めっきリード60及び第2めっきリード70に含まれているシード層21及び第1電解めっき層22は、個片化される前のベースフィルム10の端部にある給電端子まで延在している。第2電解めっき工程S26が行われた後には、ベースフィルム10は、切断されて個片化される。そのため、第1めっきリード60及び第2めっきリード70は、個片化後のベースフィルム10の端に達するように延在している。
【0055】
(実施形態に係るプリント配線板の効果)
以下に、プリント配線板100の効果を説明する。
【0056】
第3位置P3は、第1位置P1よりも第2電解めっき工程S26における給電位置から離れている。そのため、第3位置P3における厚さTが第1位置P1における厚さTよりも小さくなりやすく、その結果、第3位置P3における配線20の断面積が第1位置P1における配線20の断面積よりも小さくなりやすい。
【0057】
本発明者らが鋭意検討したところによると、給電位置の近くにある配線20の部分の厚さTと給電位置から離れている配線20の部分の厚さTとの差を小さくするためには、第2電解めっき工程S26においてシード層21及び第1電解めっき層22を流れる電流の電流密度を下げることが有効である。しかしながら、第2電解めっき工程S26においてシード層21及び第1電解めっき層22を流れる電流の電流密度を下げると、第2電解めっき層23の形成速度が低下し、第2電解めっき工程S26に要する時間が増加してしまう。
【0058】
シード層除去工程S25では、シード層21の第2層を除去する際に、第1電解めっき層22も部分的に除去される。第2電解めっき層23は、シード層除去工程S25で第1電解めっき層22が薄くなってしまったことを補うために形成されるので、シード層除去工程S25における第1電解めっき層22の除去量が少ない場合は、第2電解めっき層23を厚く形成する必要はない。
【0059】
シード層除去工程S25では、第1電解めっき層22の間にエッチング液が供給されにくい。そのため、シード層除去工程S25におけるエッチングにシード層21を構成している材料に対する溶解反応速度が大きいエッチング液(つまり、エッチング液中の反応種のエッチング対象近傍への拡散がエッチングを律速するエッチング液)が用いられると、シード層21に対するエッチングのばらつきが大きくなる。その結果、確実なシード層21の除去を行うためにエッチング量を増加させざるを得ず、第1電解めっき層22が薄くなってしまう。
【0060】
しかしながら、シード層除去工程S25におけるエッチングにシード層21を構成している材料に対する溶解反応速度が低いエッチング液が用いられると(すなわち、シード層除去工程S25のエッチングがエッチング液中の反応種とエッチング対象との反応により律速されるようになると)、第1電解めっき層22の間にエッチング液が供給されにくくても、シード層21に対するエッチングにばらつきが生じにくい。
【0061】
その結果、プリント配線板100では、シード層除去工程S25における第1電解めっき層22に対する過剰なエッチングが抑制されており、第1電解めっき層22の厚さが維持されている。そのため、プリント配線板100では、第2電解めっき層23を厚く形成する必要がなく、第2電解めっき工程S26に要する時間を増加させることなくシード層21及び第1電解めっき層22を流れる電流の電流密度を下げることができる。このようにして、プリント配線板100は、給電位置の近くにある配線20の部分における断面積と給電位置から離れている配線20の部分における断面積との差を小さくすることができる。
【0062】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
100 プリント配線板、10 ベースフィルム、10a 第1主面、10b 第2主面、10c,10d 貫通穴、20 配線、21 シード層、22 第1電解めっき層、23 第2電解めっき層、30 第1配線、30a 第1端、30b 第2端、31 端子、32 ランド、33 コイル、40 第2配線、40a 第1端、40b 第2端、41 端子、42 ランド、50 第3配線、50a 第1端、50b 第2端、51,52 ランド、53 コイル、60 第1めっきリード、70 第2めっきリード、80 レジスト、P1 第1位置、P2 第2位置、P3 第3位置、S1 準備工程、S2 配線形成工程、S21 シード層形成工程、S22 レジスト形成工程、S23 第1電解めっき工程、S24 レジスト除去工程、S25 シード層除去工程、S26 第2電解めっき工程、T 厚さ。