(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178410
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/82 20130101AFI20241217BHJP
【FI】
A61F2/82
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166754
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2020530214の分割
【原出願日】2019-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2018133106
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518151146
【氏名又は名称】糸井 隆夫
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸井 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体管腔の分枝部分に一回の手技で容易に留置させることができるステントを提供する。
【解決手段】ステント1は、第1骨格部11を有する筒形状の第1ステント部1Aと、第2骨格部12、13を有する筒形状の2つの第2ステント部1Bと、を備える。第1骨格部及び2つの第2骨格部は、2つの第2ステント部が分枝した股部1aにおいて接続される。第1骨格部及び2つの第2骨格部の各々は、それぞれの軸方向を囲う周方向において山部と谷部とが交互に形成されるよう金属線材を屈曲させ、山部と谷部を軸方向にかみ合わせるように編み込んでなり、軸方向に略直交する径方向において、収縮状態から拡張して筒状流路を画成する拡張状態へと自己拡張可能に構成される。第1骨格部と2つの第2骨格部とは、線径及び山の高さが異なることで径方向の拡張力が異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔内に留置されるステントであって、
前記生体管腔の第1管腔内に留置され、第1骨格部を有する筒形状の第1ステント部と、
前記第1管腔から分枝した第2管腔内に留置され、第2骨格部を有する筒形状の2つの第2ステント部と、を備え、
前記第1骨格部及び前記2つの第2骨格部は、前記2つの第2ステント部が分枝した股部において接続され、
前記第1骨格部及び前記2つの第2骨格部の各々は、それぞれの軸方向を囲う周方向において山部と谷部とが交互に形成されるよう金属線材を屈曲させ、前記山部と前記谷部を前記軸方向にかみ合わせるように編み込んでなり、前記軸方向に略直交する径方向において、収縮状態から拡張して筒状流路を画成する拡張状態へと自己拡張可能に構成され、
前記第1骨格部と前記2つの第2骨格部とは、線径及び山の高さが異なることで前記径方向の拡張力が異なり、
前記第1ステント部と前記2つの第2ステント部とを一体として前記第1管腔内及び前記第2管腔内に留置可能に形成されていることを特徴とするステント。
【請求項2】
前記第1骨格部及び前記2つの第2骨格部を覆う皮膜部と、
前記第1ステント部の開放端部側の前記第1骨格部の屈曲部に接続され、ループ形状の係着部を有する抜去補助部と、をさらに備え、
前記皮膜部によって、前記第1ステント部と前記第2ステント部が一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記2つの第2骨格部は前記股部にて接続され、
前記抜去補助部の前記第1骨格部に接続された部分は、前記第1ステント部の前記軸方向に前記2つの第2骨格部どうしの接続部分と並んで配置される、
請求項2に記載のステント。
【請求項4】
前記2つの第2ステント部は、前記第1ステント部よりも管径が細い、
請求項2又は3に記載のステント。
【請求項5】
前記抜去補助部は、前記第1ステント部の前記開放端部において、周方向に複数設けられる、
請求項2から4のいずれか一項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔に留置されるステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、食道、胆管、気管、尿管などの生体管腔に生じた狭窄部又は閉塞部に留置され、病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持するステントが知られている。ステントグラフト留置術においては、病変部位の状態によってステントを分枝させて留置することがある。例えば、肝門近傍に生じた病変部位に対しては、総肝管から右肝管及び左肝管(肝臓内の胆管)に分枝しているので、総肝管、右肝管及び左肝管のそれぞれにステントを留置する必要がある。
【0003】
このような場合、従来は、主管腔(例えば、総肝管)用のステントと分枝管腔(例えば、右肝管及び左肝管)用のステントというように複数のステントを用意して、一のステントの開口(例えば、骨格部の網目)に他のステントを挿入して、ステント同士を部分的に重複させて接続している(例えば、特許文献1参照)。例えば、肝門近傍に生じた病変部位に対してステントを留置する場合は、総肝管から一方の肝管(例えば、右肝管)に跨がって留置されるステントに対して、他方の肝管(例えば、左肝管)に留置されるステントが挿入され、接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1等の場合、ステントごとに留置システムが必要となり、また、ステントを留置する際の手技も煩雑であり、ステントの変形や破損、肝門部の閉塞の虞がある。また、ステントの網目どうしが絡まるため、留置後の抜去が困難となる。したがって、ステント留置術を行う施術者には、豊富な経験と高い技量が要求される。
【0006】
本発明の目的は、生体管腔の分枝部分に一回の手技で容易に留置させることができるステントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るステントは、
生体管腔内に留置されるステントであって、
前記生体管腔の第1管腔内に留置され、第1骨格部を有する筒形状の第1ステント部と、
前記第1管腔から分枝した第2管腔内に留置され、第2骨格部を有する筒形状の2つの第2ステント部と、を備え、
前記第1骨格部及び前記2つの第2骨格部は、前記2つの第2ステント部が分枝した股部において接続され、
前記第1骨格部及び前記2つの第2骨格部の各々は、それぞれの軸方向を囲う周方向において山部と谷部とが交互に形成されるよう金属線材を屈曲させ、前記山部と前記谷部を前記軸方向にかみ合わせるように編み込んでなり、前記軸方向に略直交する径方向において、収縮状態から拡張して筒状流路を画成する拡張状態へと自己拡張可能に構成され、
前記第1骨格部と前記2つの第2骨格部とは、線径及び山の高さが異なることで前記径方向の拡張力が異なり、
前記第1ステント部と前記2つの第2ステント部とを一体として前記第1管腔内及び前記第2管腔内に留置可能に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生体管腔の分枝部分に一回の手技で容易にステントを留置させることができるとともに、容易に抜去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る胆管ステントの外観を示す図である。
【
図2】
図2は、胆管ステントの第1ステント部の軸方向に沿って第2ステント部を合わせた状態を示す図である。
【
図3】
図3A、3Bは、胆管ステントの留置態様の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第2の実施の形態に係る胆管ステントの外観を示す図である。
【
図5】
図5A、5Bは、胆管ステントの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、本発明の一例として、肝門部HP(
図3A、3B参照)の病変部位(例えば、肝門部HPの閉塞部又は狭窄部)を径方向外側に押し拡げて閉塞(狭窄)の治療を行うべく、総肝管H1、右肝管H2及び左肝管H3内に留置されて使用される胆管ステント1について説明する。
【0011】
図1は、第1の実施の形態に係る胆管ステント1の外観を示す図である。
図2は、胆管ステント1の第1ステント部1Aの軸方向に沿って第2ステント部1B、1Cを合わせた状態を示す図である。
図3は、胆管ステント1の留置状態を示す図である。
図3Bは、
図3Aにおける肝門部HPを拡大して示している。
【0012】
胆管ステント1は、いわゆるカバードステントである。また、胆管ステント1は、第1ステント部1Aと、第1ステント部1Aから分枝する第2ステント部1B、1Cに区画される。
図3A及び
図3Bに示すように、第1ステント部1Aは総肝管H1に配置される部分であり、第2ステント部1B、1Cは、右肝管H2及び左肝管H3に留置される部分である。
【0013】
第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cは、胆汁の流路を画成する筒形状を有する。本実施の形態では、第2ステント部1B、1Cは、第1ステント部1Aよりも管径が細く、第1ステント部1Aの一方の端部から二股に分枝するように連設されている。すなわち、胆管ステント1は、全体としてY字形状を有している。第2ステント部1B、1Cが分枝した股部1aの角度は、胆管ステント1が留置される肝門部HPの形状に応じて設定される。
【0014】
第1ステント部1Aには、第1骨格部11が配置されている。第2ステント部1B、1Cには、それぞれ第2骨格部12、13が配置されている。
第1骨格部11は、例えば、1又は複数の金属線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら、それぞれの軸方向に螺旋状に巻回した構成である。
第2骨格部12、13は、例えば、金属線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら円環状に形成された複数の骨格が、それぞれの軸方向に所定の間隔で配置された構成である。
第1骨格部11及び第2骨格部12、13は、それぞれの軸方向に略直交する径方向において、内側に収縮した収縮状態から、外側に拡張して筒状流路を画成する拡張状態へと自己拡張可能に構成されている。
【0015】
なお、第1骨格部11と第2骨格部12、13は、股部1aにおいて接続されていてもよいし、分離されていてもよい。
また、第1骨格部11は、金属線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら円環状に形成された複数の骨格が、それぞれの軸方向に所定の間隔で配置された構成であってもよい。また、第2骨格部12、13は、1又は複数の金属線材を山部と谷部とが交互に形成されるように屈曲しながら、それぞれの軸方向に螺旋状に巻回した構成であってもよい。また、第1骨格部11、第2骨格部12、13は、例えば、線材の屈曲部を交互にかみ合わせるように編み込んだ構成であってもよく、これにより、各骨格部の屈曲性を向上させたり軸方向への変形(伸張)を規制させたりすることができる。また、第1骨格部11、第2骨格部12、13は、例えば、螺旋状に右回りに巻回された線材と左回りに巻回された線材(同一線材を端部で折り返した場合を含む)を網目が形成されるように互いに交差させて編み込んだ構成であってもよく、これにより、各骨格部の直進性を向上させることができる。
したがって、例えば、第1骨格部11は、線材の屈曲部を交互にかみ合わせて編み込んだ構成とし、第2骨格部12、13は、線材を互いに交差させて編み込んだ構成とすることで、屈曲性を向上させるとともに軸方向への変形を規制した第1骨格部11と、直進性を向上させた第2骨格部12、13とを有する胆管ステント1とすることもできる。
【0016】
第1骨格部11及び第2骨格部12、13の拡張力は、第1骨格部11及び第2骨格部12、13を形成する線材の軸方向における密度(単位長さ当たりの骨格量)によって制御することができる。本実施の形態では、山の高さにより第1骨格部11及び第2骨格部12、13の拡張力が制御されている。具体的には、第2骨格部12、13の山の高さは、第1骨格部11の山の高さよりも高く、第2骨格部12、13の拡張力は、第1骨格部11の拡張力に比較して小さくなっている。なお、第2骨格部12、13の拡張力が、それぞれ異なるように設定されてもよいし、第1骨格部11の拡張力よりも大きくなるように設定されてもよい。
【0017】
このように、第1骨格部11及び第2骨格部12、13は、それぞれの軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒形状を有しており、胆管ステント1は、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の自己拡張力により、胆管ステント1の外面で総肝管H1、右肝管H2及び左肝管H3の内面を押圧するとともに、この状態にて胆管ステント1の外面側から加えられる外力に応じて第1骨格部11及び第2骨格部12、13が変形可能となっている。
【0018】
また、
図2に示すように、第1ステント部1Aの軸方向に沿って第2ステント部1B、1Cを合わせたときに(すなわち、第2ステント部1B、1Cの延在方向が同一方向となるように並設されたときに)、第2骨格部12、13は、それぞれの軸方向の位置が重ならないようになっている(軸方向にずれている)。これにより、第2ステント部1B、1Cを径方向に圧縮しやすくなるので、胆管ステント1をシースに収納しやすくなる。
【0019】
第1骨格部11及び第2骨格部12、13を形成する金属線材の材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金(ニチノール)、チタン合金等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。また、X線造影性を有する合金材料を用いてもよい。この場合、胆管ステント1の位置を体外から確認することができるようになる。なお、第1骨格部11及び第2骨格部12、13は、金属材料以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されてもよい。
【0020】
なお、第1骨格部11及び第2骨格部12、13を形成する線材の材料、線種(例えば、ワイヤー等の円形線材、又は、レーザーカットによる角状線材)、線径(断面積)、周方向における折り返し回数及び折り返し形状(山部の数及び山部の形状)、並びに、軸方向における線材間隔(単位長さ当たりの骨格量)等は、留置する生体管腔に応じて必要となる第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cの柔軟性を基準として適宜選択される。ここで、柔軟性とは、第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cの曲がり易さのことであり、特に、軸方向の曲げ剛性により規定される。すなわち、第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cの柔軟性が高いとは、軸方向の曲げ剛性が適度に低く、生体管腔やシース内でキンクすることなく当該生体管腔やシースの形状に追従する性質を有することをいう。
【0021】
また、第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cには、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の周面を覆うように皮膜部14が配置されている。
皮膜部14は、胆汁の流路を形成する膜体である。この皮膜部14は、第1骨格部11及び第2骨格部12、13を挟み込むように、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の外周面と内周面に配置されてもよいし、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の外周面のみに配置されてもよいし、内周面のみに配置されてもよい。
【0022】
皮膜部14を形成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0023】
本実施の形態では、皮膜部14が一体的に形成されることで、第1ステント部1Aと第2ステント部1B、1Cが一体化されている。換言すると、第1骨格部11及び第2骨格部12、13は、皮膜部14を所定の拡張状態で保持するように補強している。
【0024】
また、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の外周面には、伸長規制部16が配置されている。
伸長規制部16は、例えば、第1骨格部11及び第2骨格部12、13のそれぞれの軸方向に沿って配置され、矩形状の長尺部材で形成される。具体的には、伸長規制部16は、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の軸方向の両端部に亘るように、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の外周面(例えば、皮膜部14の内側)に固定(例えば、接着等)されている。また、第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cのそれぞれにおいて、180°回転させた位置に2つの伸長規制部16、16が配置されている。このうち、第1ステント部1A及び第2ステント部1Bのそれぞれの
図1における左側に配設された伸長規制部16は連続して一体的に形成され、また、第1ステント部1A及び第2ステント部1Cのそれぞれの
図1における右側に配設された伸長規制部16は連続して一体的に形成されている。
【0025】
伸長規制部16は、例えば、生体適合性を有する糸(例えば、ポリエステル糸等)又は布地(織物(布帛)や編物)によって形成され、少なくとも胆管ステント1の径方向への拡張性を損なわない範囲で、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の軸方向への伸長を規制可能な強度を有する。
【0026】
伸長規制部16によって、胆管ステント1を径方向に収縮してシース内に収容する際の、軸方向への伸長が抑制される。したがって、伸長規制部のないステントに比較して、シース内に収容したときの胆管ステント1の軸方向の長さが短く、胆管ステント1とシースとの接触面積は小さくなって、シースから胆管ステント1を放出する際の摩擦抵抗が小さくなる。また、胆管ステント1がシースから放出されて第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cが拡張状態となる際の軸方向の短縮率が低減されるので、肝門部HPの所望の留置部位に胆管ステント1を留置することができる。
【0027】
なお、伸長規制部16は配設されていなくてもよいし、第1ステント部1A及び第2ステント部1B、1Cのそれぞれにおいて、周方向に所定の間隔を空けて3以上設けられてもよい。また、第1ステント部1Aのみに伸長規制部16を設けるようにしてもよい。
また、伸長規制部16は、例えば、皮膜部14の外側に設けられてもよい。この場合、肝門部HPに胆管ステント1を留置したときに胆管壁と伸長規制部16とが接触するので、伸長規制部16に胆管壁が食い込む。したがって、胆管ステント1が留置位置からずれるのを防止することができる。すなわち、伸長規制部16を、胆管ステント1の位置ずれ抑止手段として機能させることができる。
【0028】
また、第1ステント部1Aには、他方の端部(開放端部)に抜去補助部15が接続されている。
抜去補助部15は、肝門部HPに留置した胆管ステント1を抜去する際に使用される補助具である。抜去補助部15は、回収用カテーテルの先端に設けられた引掛け具(スネア:回収用部材、図示略)が係着される係着部を有する。係着部は、例えば、線材を屈曲加工することにより形成される。係着部は、例えば、フック形状を有していてもよいし、ループ形状を有していてもよい。
なお、抜去補助部15を形成する線材には、例えば、第1骨格部11と同様の物を適用することができ、第1骨格部11と一体的に形成されていてもよい。また、抜去補助部15は、第1ステント部1Aの開放端部において、周方向に複数設けられてもよい。
また、抜去補助部15は、例えば、植物繊維、動物繊維等の天然繊維製や、合成繊維、高性能繊維等の化学繊維製の紐状の部材により形成されてもよく、具体的には、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維などが挙げられる。
【0029】
このように、第1の実施の形態に係る胆管ステント1は、肝門部HP(生体管腔内)に留置される胆管ステント1であって、総肝管H1に留置され、第1骨格部11を有する筒形状の第1ステント部1Aと、総肝管H1から分枝した右肝管H2、左肝管H3に留置され、第2骨格部12、13を有する筒形状の第2ステント部1B、1Cと、を備える。そして、第1ステント部1Aと第2ステント部1B、1Cとを一体として総肝管H1内、右肝管H2内、左肝管H3内に留置可能に形成されている。
【0030】
具体的には、胆管ステント1において、第1骨格部11と第2骨格部12、13は、径方向に重複していない。すなわち、複数のステントを接続してステント同士が部分的に重複している、従来のpartial stent-in-stentとは異なる。
これにより、肝門部HP(生体管腔の分枝部分)に一回の手技で容易に胆管ステント1を留置させることができる。したがって、施術者の経験や技量に関わらず、安定した手術が実現される。また、従来のようにステントの網目どうしが絡まることがなく、胆管ステント1の留置後の抜去も容易に行うことができる。
【0031】
また、胆管ステント1は、第1骨格部11及び第2骨格部12、13を覆う皮膜部14を有し、皮膜部14によって、第1ステント部1Aと第2ステント部1B、1Cが一体化されている。
これにより、第1骨格部11及び第2骨格部12、13の形態に関わらず、第1ステント部1Aと第2ステント部1B、1Cを一体化することができるので、設計の自由度が向上する。
【0032】
また、第1骨格部11と第2骨格部12、13は、別々の線材で形成され、それぞれ分離している。
これにより、複雑な編み込み設計は不要となるので、第1骨格部11及び第2骨格部12、13を容易に作製することができる。
【0033】
また、胆管ステント1は、第1ステント部1Aの同一部位から分枝する複数の第2ステント部1B、1Cを備え、第2ステント部1B、1Cは、第1ステント部1Aの軸方向に沿って合わせたときに、それぞれの第2骨格部12、13が軸方向にずれている。
これにより、第2ステント部1B、1Cを径方向に圧縮しやすくなるので、胆管ステント1をシースに収納しやすくなる。
【0034】
なお、第1の実施形態では、皮膜部14が一体的に形成された構成を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、皮膜部14の構成は適宜任意に変更可能である。すなわち、第1骨格部11と第2骨格部12、13を個別に覆う構成としてもよい。この場合、第1ステント部1Aに配置される皮膜部14と第2ステント部1B、1Cに配置される皮膜部14を接着することにより第1ステント部1Aと第2ステント部1B、1Cを一体化してもよいし、第1骨格部11と第2骨格部12、13を接続することにより第1ステント部1Aと第2ステント部1B、1Cを一体化してもよい。
【0035】
また、第1骨格部11と第2骨格部12、13を皮膜部14により一体化する構成としたが、一例であってこれに限られるものではなく、分離してなる第1ステント部と第2ステント部とを組み合わせて肝門部HPの分枝部分に留置可能としてもよい。すなわち、例えば、図示は省略するが、総肝管H1から右肝管H2(又は左肝管H3)に延在する第1ステント部の左肝管H3(又は右肝管H2)への分枝部分に、第2ステント部との接続部を設け、この接続部に第2ステント部を組み合わせた状態で肝門部HPの分枝部分に留置するようにしてもよい。つまり、ステント部どうしが組み合わされる領域を総肝管H1ではなく、右肝管H2(又は左肝管H3)とすることで、骨格部どうしが重なる領域をより少なくすることができる。
なお、分離してなる第1ステント部と第2ステント部とを留置する手法としては、例えば、図示は省略するが、従来のpartial stent-in-stentと同様の手法を適用することができ、ここでは詳細な説明は省略する。
【0036】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係る胆管ステント2の外観を示す図である。
図4に示すように、胆管ステント2は、骨格部21のみからなる、いわゆるベアステントである。また、胆管ステント2は、第1ステント部2Aと、第1ステント部2Aから分枝する第2ステント部2B、2Cに区画される。第1ステント部2Aは総肝管H1に配置される部分であり、第2ステント部2B、2Cは、右肝管H2及び左肝管H3に留置される部分である(
図3A及び
図3B参照)。なお、図示は省略するが、第1の実施の形態と同様に、第1ステント部2Aの開放端部(
図4中、下端部)には、抜去補助部が接続されてもよい。
【0037】
胆管ステント2は、骨格部21が皮膜部で覆われていない点で第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0038】
骨格部21は、例えば、金属線材を、それぞれの軸方向に螺旋状に網目が形成されるように巻回した自己拡張型のステント骨格である。より具体的には、骨格部21は、螺旋状に右回りに巻回された線材と左回りに巻回された線材(同一線材を端部で折り返した場合を含む)を網目が形成されるように互いに交差させて編み込んだ構成を有している。骨格部21は、第1ステント部2A及び第2ステント部2B、2Cのすべてにわたって連続する1又は複数の線材で形成されている。
骨格部21は、それぞれの軸方向に略直交する径方向において、内側に収縮した収縮状態から、外側に拡張して筒状流路を画成する拡張状態へと自己拡張可能に構成されている。
【0039】
このように、第1ステント部2Aの骨格部21(第1骨格部)及び第2ステント部2B、2Cの骨格部21(第2骨格部)は、それぞれの軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な筒形状を有しており、骨格部21の自己拡張力により、胆管ステント2の外面で総肝管H1、右肝管H2及び左肝管H3の内面を押圧するとともに、この状態にて胆管ステント2の外面側から加えられる外力に応じて骨格部21が変形可能となっている。
【0040】
また、網目の大きさにより骨格部21の拡張力が制御されている。具体的には、第2ステント部2B、2Cでは、第1ステント部2Aに比較して、骨格部21の網目が大きく、第2ステント部2B、2Cにおける骨格部21の拡張力は、第1ステント部2Aにおける骨格部21の拡張力に比較して小さくなっている。なお、第2ステント部2B、2Cにおける骨格部21の拡張力が、それぞれ異なるように設定されてもよいし、第1ステント部2Aの骨格部21の拡張力よりも大きくなるように設定されてもよい。
【0041】
また、第1ステント部2A及び第2ステント部2B、2Cを構成する骨格部21が同じ線材で連続して形成されることで、第1ステント部2Aと第2ステント部2B、2Cが一体化されている。これにより、第1ステント部2A及び第2ステント部2B、2Cの骨格部21を個別に作製した後で接続する場合に比較して、容易に胆管ステント2を作製することができる。なお、骨格部21が同じ線材で連続して形成されていればよく、線材の本数は特に限定されない。
【0042】
したがって、第2の実施の形態に係る胆管ステント2にあっても、上記第1の実施の形態と同様に、第1ステント部2Aの骨格部21(第1骨格部)と第2ステント部2B、2Cの骨格部21(第2骨格部)は、第1骨格部の径方向に重複しておらず、複数のステントを接続してステント同士が部分的に重複している、従来のpartial stent-in-stentとは異なる。
これにより、肝門部HP(生体管腔の分枝部分)に一回の手技で容易に胆管ステント2を留置させることができる。したがって、施術者の経験や技量に関わらず、安定した手術が実現される。また、従来のようにステントの網目どうしが絡まることがなく、胆管ステント2の留置後の抜去も容易に行うことができる。
【0043】
また、胆管ステント2において、第1ステント部2Aの一端部から第2ステント部2B、2Cが分枝し、第1ステント部2Aの骨格部21(第1骨格部)と第2ステント部2B、2Cの骨格部21(第2骨格部)は、同一の線材で形成されている。
これにより、第1ステント部2Aの骨格部21と第2ステント部2B、2Cの骨格部21を接続する工程が不要となるので、胆管ステント2を容易に作製することができる。
【0044】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0045】
例えば、第1の実施の形態に係る胆管ステント1において、第1ステント部1Aと第2ステント部1B、1Cを個別に作製した後で、接続するようにしてもよい。同様に、第2の実施の形態に係る胆管ステント2において、第1ステント部2Aと第2ステント部2B、2Cを個別に作製した後で、接続するようにしてもよい。
また例えば、第1の実施の形態に係る胆管ステント1において、第1骨格部11及び第2骨格部12、13を同一の線材によって形成してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、第1ステント部1A(2A)が総肝管H1に留置され、第2ステント部1B(2B)、1C(2C)が右肝管H2及び左肝管H3に留置される構成であるが、一例であってこれに限定されるものではなく、第2ステント部に、他のステント部を組み合わせるようにしてもよい。
すなわち、例えば、
図5A及び
図5Bに示すように、胆管ステント202は、第1ステント部2Aの右肝管H2への分枝部分に、第2ステント部としての短い接続部202Bを設け、この接続部202Bに延長用の他のステント部2Dを接続するようになっている。この場合、第2ステント部(接続部202B)と他のステント部2Dとが、総肝管H1ではなく、右肝管H2で接続され、接続部202Bと延長用の他のステント部2Dの骨格部21どうしが重なる領域をより少なくすることができる。
【0047】
なお、例えば、他のステント部2Dの端部をフランジ状に形成し、第2ステント部(接続部202B)の開口縁に引っ掛けるようにしてもよく、この場合には、第2ステント部(接続部202B)の軸方向の長さを実質的に0「ゼロ」とすることができる。
また、胆管ステント202及び他のステント部2Dのうち、少なくとも一方は、皮膜部を有していてもよい。
【0048】
さらに、上記実施の形態では、胆管ステントがY字形状を有する場合について示したが、分枝形状はこれに限定されない。例えば、T字状に分枝したり、π字状に分枝したりする場合にも、本発明を適用できる。さらには、第2ステント部の数は3以上であってもよい。
【0049】
また、第1ステント部の第1骨格部及び第2ステント部の第2骨格部は、金属製の円筒部材にレーザー加工を施して形成したレーザーカット型であってもよい。
【0050】
本発明は、実施の形態で説明した胆管ステント1、2に限らず、消化器系管腔や血管などの生体管腔の分枝部分に留置されるステントに適用することができる。
【0051】
また、実施の形態では、第1ステント部1A、2Aが直筒形状を有している場合を示しているが、一例であってこれに限られるものではなく、留置部位に応じて湾曲した形状を有していてもよいし、留置後に管腔形状に沿った湾曲形状を有することになってもよい。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0053】
2018年7月13日出願の特願2018-133106の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0054】
1、2 胆管ステント(ステント)
1A、2A 第1ステント部
1B、1C、2B、2C 第2ステント部
11 第1骨格部
12、13 第2骨格部
14 皮膜部
15 抜去補助部
16 伸長規制部
21 骨格部(第1骨格部、第2骨格部)
HP 肝門部(生体管腔)
H1 総肝管(第1管腔)
H2 右肝管(第2管腔)
H3 左肝管(第2管腔)