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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178411
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】試薬、測定方法、および測定装置
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20241217BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20241217BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/02
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166805
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2023578171の分割
【原出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】515052682
【氏名又は名称】株式会社バランス・イースト
(74)【代理人】
【識別番号】100145861
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 薫
(72)【発明者】
【氏名】徳田美幸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる試薬、測定方法、および測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の試薬1は、検体に含まれる標的となる微生物を蛍光させる試薬1であって、標的となる微生物を大腸菌とし、検体において大腸菌を選択的に蛍光させる。本発明の試薬1は、[バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA]1Aと所定の蛍光試薬1Bとを結合した試薬1であり、[バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA]1Aを所定の蛍光試薬1Bにより蛍光させるとともに、蛍光させた[バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA]1Aが、検体に含まれる標的となる微生物である大腸菌と選択的に感染することにより、大腸菌を選択的に取り込んで蛍光させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体に含まれる標的となる微生物である大腸菌を選択的に蛍光させる試薬により前記標的となる微生物である大腸菌の測定を行う測定方法であって、
バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAと、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とを混合して結合したものを前記試薬とし、
前記試薬を、標的となる大腸菌に選択的に感染させて大腸菌を蛍光させることを特徴とする測定方法。
【請求項2】
検体に含まれる標的となる微生物である大腸菌を選択的に蛍光させる試薬により前記標的となる微生物である大腸菌の測定を行う測定方法であって、
バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAと、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とを混合して結合したものを前記試薬とし、
黒色のフィルタに前記試薬を含侵させ、
前記試薬を含侵させた前記黒色のフィルタに大腸菌を含む検体を含侵させ、
スライドグラスにマーキングされた測定円に前記試薬および前記検体を含侵させた前記黒色のフィルタを設置し、さらに、前記スライドグラスをカバーグラスで覆いプレパラートを作製し、
顕微鏡装置のステージに設置した前記プレパラートを用いて、蛍光処理装置の励起光照射部により所定の波長の励起光を照射する蛍光処理を行い、
前記顕微鏡装置の撮影部により、前記励起光を吸収した前記プレパラートの前記黒色のフィルタを複数撮影し、
前記顕微鏡装置の解析部により、前記撮影部が撮影した画像から標的とする微生物である大腸菌を所定の認識パラメータに基づいて認識する一方で、前記大腸菌以外のものは認識しないように解析して前記大腸菌を測定することを特徴とする測定方法。
【請求項3】
前記撮影部が撮影した前記プレパラートの画像を補正部により補正することを特徴とする請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記補正部は、前記プレパラートにおける前記スライドグラス間の厚みおよび/または形状の相違を修正するよう前記画像を補正することを特徴とする請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記補正部は、 前記顕微鏡装置において前記プレパラートを設置するステージの水平方向に対する傾きを修正するよう前記画像を補正することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
前記解析部は、前記撮影された画像から前記標的とする微生物である大腸菌を所定の認識パラメータに基づいて認識し、前記大腸菌以外のものは認識しないものであり、前記認識パラメータは、前記標的とする微生物である大腸菌の形状、サイズ、蛍光の強度、および蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つを含むことを特徴とする請求項2~請求項5のいずれか一項に記載の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬、測定方法、および測定装置に関し、特に、検体に含まれる標的となる微生物を蛍光させる試薬、測定方法、および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過去より食品の微生物管理は、トータルの品質管理の中でも中心的ファクターとなっている。食品衛生法でも、食品や食材事に一般細菌数と大腸菌数等の微生物数は基準値として定められている。よって各種食品関連事業所では日々、食品や、食材からサンプルを抜き取り、一般細菌数と大腸菌数等の微生物数の検査を行っている。食品の細菌数等を検査する技術は、例えば特許文献1に開示される技術を参照することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-52976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査の現状は国が定める培養法に頼らざるを得ない状況で48時間の時間と、それに伴い膨大なコストが計上されている。自社検査体制が無い企業は、検査をすべて外部依頼している。しかしながら、これら検査体制は大きな問題を抱えている。それは、検査に要する時間である。食品の大半は、鮮度が重要で有るため、製造後はすぐに出荷される。つまり当日の生産品の微生物検査結果は48時間の判定であるにもかかわらず、検査結果が出る前に、出荷され食されてしまうのである。万一、先に出荷された食品の微生物汚染により食中毒が発生したとしても、原因があとから分かると言う事である。この問題は、世界的にも共通のテーマとなっている。求められているニーズは、検査結果が出てから安心して出荷出来る事である。近年、培養法以外の簡易判定キットも各種販売はされているものの、2時間以上は、かかる上、簡易で有るため精度に問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる試薬、測定方法、および測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の試薬は、検体に含まれる標的となる微生物を蛍光させる試薬であって、前記標的となる微生物を選択的に蛍光させることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記標的となる微生物を選択的に蛍光させることにより、微生物を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる。
【0008】
前記標的となる微生物を大腸菌とし、前記検体において前記大腸菌を選択的に蛍光させることにより、検体において大腸菌を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく大腸菌の測定を行うことができる。
【0009】
バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAと所定の蛍光試薬とを結合したものであることが好ましい。
【0010】
バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAと所定の蛍光試薬とを結合したものを、前記検体に含まれる標的となる微生物である大腸菌と選択的に感染させることにより前記大腸菌を蛍光させることが好ましい。
【0011】
前記所定の蛍光試薬は、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の測定方法は、検体に含まれる標的となる微生物を蛍光させる試薬により前記標的となる微生物の測定を行う測定方法であって、前記標的となる微生物を選択的に蛍光させることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前記標的となる微生物を選択的に蛍光させることにより、検体において微生物を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる。
【0014】
前記標的となる微生物を大腸菌とし、前記試薬は、前記検体において前記大腸菌を選択的に蛍光させることにより、検体において大腸菌を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく大腸菌の測定を行うことができる。
【0015】
前記試薬は、バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAに所定の蛍光試薬とを結合した試薬であることが好ましい。
【0016】
前記試薬は、バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAと所定の蛍光試薬とを結合した試薬であり、前記試薬を、前記検体に含まれる標的となる微生物である大腸菌と選択的に感染させることにより前記大腸菌を蛍光させることが好ましい。
【0017】
前記所定の蛍光試薬は、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることが好ましい。
【0018】
黒色のフィルタに前記微生物を選択的に蛍光させる試薬を含侵させるとともに、前記試薬を含侵させた前記黒色のフィルタを用いて前記微生物を選択的に蛍光させる処理を行うことにより、黒色の背景に微生物の蛍光を浮き出るようにすることができ、迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる。
【0019】
スライドグラスにマーキングされた測定円の中に前記試薬および前記微生物を含む検体を含侵させた前記黒色のフィルタを設置してカバーガラスで覆いプレパラートを作製することができる。
【0020】
前記測定円は、前記スライドグラスに複数マーキングされ、前記複数マーキングされている前記測定円のそれぞれの中に前記微生物を含む検体を含侵させた前記黒色のフィルタを設置することにより、微生物を含む検体を複数並行して測定することができ、測定の効率を向上させることができる。
【0021】
前記プレパラートを設置するステージをXY軸に沿って移動させて前記プレパラートの画像を撮影することができる。
【0022】
CMOSセンサーを用いて前記プレパラートの画像を撮影するとともに、撮影した画像を補正し、撮影した画像を解析することができる。
【0023】
前記プレパラートにおけるスライドグラス間の厚みおよび/または形状の相違が修正されるように撮影した画像を補正することにより、スライドグラス間の厚みおよび/または形状が相違する場合にあっても相違が修正されるように補正することができる。
【0024】
前記ステージの傾きが修正されるように撮影した画像を補正することにより、ステージが傾く場合にあっても傾きが修正されるように補正することができる。
【0025】
撮影された画像から前記標的とする微生物を所定の認識パラメータに基づいて認識し、前記標的とする微生物以外のものは認識しないことにより、標的とする微生物のみを効率よく認識することができる。
【0026】
前記認識パラメータは、前記標的とする微生物の形状、前記標的とする微生物のサイズ、前記標的とする微生物の蛍光の強度、および前記標的とする微生物の蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つを含むことができる。
【0027】
上記目的を達成するために、本発明の測定装置は、検体に含まれる標的となる微生物を蛍光させる試薬により前記標的となる微生物の測定を行う測定装置であって、前記標的となる微生物を選択的に蛍光させることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、前記標的となる微生物を選択的に蛍光させることにより、微生物を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる。
【0029】
前記標的となる微生物を大腸菌とし、前記試薬は、前記検体において前記大腸菌を選択的に蛍光させることにより、検体において大腸菌を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく大腸菌の測定を行うことができる。
【0030】
前記試薬は、バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAに所定の蛍光試薬とを結合した試薬であることが好ましい。
【0031】
前記試薬は、バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNAと所定の蛍光試薬とを結合した試薬であり、前記試薬を、前記検体に含まれる標的となる微生物である大腸菌と選択的に感染させることにより前記大腸菌を蛍光させることが好ましい。
【0032】
前記所定の蛍光試薬は、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることが好ましい。
【0033】
黒色のフィルタに前記微生物を選択的に蛍光させる試薬を含侵させるとともに、前記試薬を含侵させた前記黒色のフィルタを用いて前記微生物を選択的に蛍光させる処理を行うことにより、黒色の背景に微生物の蛍光を浮き出るようにすることができ、迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる。
【0034】
スライドグラスにマーキングされた測定円の中に前記試薬および前記微生物を含む検体を含侵させた前記黒色のフィルタを設置してカバーガラスで覆いプレパラートを作製することができる。
【0035】
前記測定円は、前記スライドグラスに複数マーキングされ、前記複数マーキングされている前記測定円のそれぞれの中に前記微生物を含む検体を含侵させた前記黒色のフィルタを設置することにより、微生物を含む検体を複数並行して測定することができ、測定の効率を向上させることができる。
【0036】
前記プレパラートを設置するステージをXY軸に沿って移動させて前記プレパラートの画像を撮影することができる。
【0037】
CMOSセンサーを用いて前記プレパラートの画像を撮影するとともに、撮影した画像を補正し、撮影した画像を解析することができる。
【0038】
前記プレパラートにおける前記スライドグラス間の厚みおよび/または形状の相違が修正されるように撮影した画像を補正することにより、スライドグラス間の厚みおよび/または形状が相違する場合にあっても相違が修正されるように補正することができる。
【0039】
前記ステージの傾きが修正されるように撮影した画像を補正することにより、ステージが傾く場合にあっても傾きが修正されるように補正することができる。
【0040】
撮影された画像から前記標的とする微生物を所定の認識パラメータに基づいて認識し、前記標的とする微生物以外のものは認識しないことにより、標的とする微生物のみを効率よく認識することができる。
【0041】
前記認識パラメータは、前記標的とする微生物の形状、前記標的とする微生物のサイズ、前記標的とする微生物の蛍光の強度、および前記標的とする微生物の蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つを含むことができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、迅速にかつ精度よく微生物の測定を行うことができる試薬、測定方法、および測定装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の実施形態に係る試薬の構成を示す図である。
図2】同試薬が大腸菌に取り込まれた状態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置に用いられるプレパラートの作製方法を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置に用いられるプレパラートの作製方法を示す図3に続く図である。
図5】本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置に用いられるプレパラートの作製方法を示す図4に続く図である。
図6】本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置に用いられるプレパラートの作製方法を示す図5に続く図である。
図7】本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置に用いられるプレパラートの作製方法を示す図6に続く図である。
図8】本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置に用いられるプレパラートの作製方法を示す図7に続く図である。
図9】同測定方法および測定装置に用いられる顕微鏡装置の構成を示す図である。
図10】同測定方法および測定装置に用いられる顕微鏡装置の構成を示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0045】
[試薬の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る試薬の構成を示す図、図2は、同試薬が大腸菌に取り込まれた状態を示す図である。
【0046】
本発明の実施形態に係る試薬1は、図1に示すように、[バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA]1Aと所定の蛍光試薬1Bとを予め混合して結合した試薬である。バクテリオファージT4は、大腸菌102に感染するバクテリオファージの種であり、二本鎖DNAウイルスに分類される。バクテリオファージt4DNAは、バクテリオファージT4のDNAであり、例えば、バクテリオファージT4からDNAを抽出して得ることができる。
【0047】
すなわち、試薬1は、図2に示す検体100に含まれる標的となる微生物101を蛍光させる試薬1であって、標的となる微生物101を選択的に蛍光させることができる。本実施形態にあっては、標的となる微生物101を大腸菌102とし、検体100において大腸菌102を選択的に蛍光させることができる。
【0048】
つまり、試薬1は、上記したように、[バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA]1Aと所定の蛍光試薬1Bとを予め混合して結合した試薬であり、試薬1を、検体100に含まれる標的となる微生物101である大腸菌102と選択的に感染させて大腸菌102に取り込むことにより大腸菌102を蛍光させることができる。本実施形態にあっては、所定の蛍光試薬1Bは、DNA蛍光試薬であり、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることができる。FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)は、大腸菌102の培養をすることなく用いることができ、例えば予め大腸菌102の培養が必要なAO(アクリルオレンジ)に対し顕著な効果を有する。
【0049】
このように、試薬1は、標的となる微生物101を選択的に蛍光させることにより、微生物101を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく微生物101の測定を行うことができる。
【0050】
また、標的となる微生物101を大腸菌102とし、検体100において大腸菌102を選択的に蛍光させることにより、検体100において大腸菌102を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく大腸菌102の測定を行うことができる。
【0051】
[測定方法および測定装置の実施形態]
図3乃至図8は、本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置に用いられるプレパラートの作製方法を示す図、図9および図10は、同測定方法および測定装置に用いられる顕微鏡装置の構成を示す図である。
【0052】
本発明の実施形態に係る測定方法および測定装置200には、上記した試薬1が用いられる。すなわち、本測定方法および測定装置200は、検体100に含まれる標的となる微生物101を蛍光させる試薬1により標的となる微生物101の測定を行う測定方法および測定装置200であって、標的となる微生物101を選択的に蛍光させることができる。測定装置200は、後述する蛍光処理装置60および顕微鏡装置70を有している。
【0053】
本測定方法および測定装置200においては、標的となる微生物101を大腸菌102とし、試薬1は、検体において大腸菌102を選択的に蛍光させることができる。
【0054】
試薬1は、図1に示すように、[バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA]1Aに所定の蛍光試薬1Bとを予め混合して結合した試薬である。バクテリオファージT4は、大腸菌102に感染するバクテリオファージの種であり、二本鎖DNAウイルスに分類される。バクテリオファージt4DNAは、バクテリオファージT4のDNAであり、例えば、バクテリオファージT4からDNAを抽出して得ることができる。
【0055】
すなわち、試薬1は、図2に示す検体100に含まれる標的となる微生物101を蛍光させる試薬1であって、標的となる微生物101を選択的に蛍光させることができる。本実施形態にあっては、標的となる微生物101を大腸菌102とし、検体100において大腸菌102を選択的に蛍光させることができる。
【0056】
つまり、試薬1は、上記したように、[バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA]1Aと所定の蛍光試薬1Bとを予め混合して結合した試薬であり、試薬1を、検体100に含まれる標的となる微生物101である大腸菌102と選択的に感染させて大腸菌102に取り込むことにより大腸菌102を蛍光させることができる。本実施形態にあっては、所定の蛍光試薬1Bは、DNA蛍光試薬であり、FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)とすることができる。FDA (フルオレセイン・ジアセテート)および/またはPI(プロピディウムイオダイド)は、大腸菌102の培養をすることなく用いることができ、例えば予め大腸菌102の培養が必要なAO(アクリルオレンジ)に対し顕著な効果を有する。
【0057】
本測定方法および測定装置200においては、所定のプレパラート10を用いて大腸菌102の測定を行うことができる。プレパラート10の作製方法は次のように説明される。
【0058】
すなわち、まず図3に示すように、黒色のフィルタ20を用意する。
次いで、図4に示すように、黒色のフィルタ20に大腸菌102を選択的に蛍光させる試薬1を含侵させるとともに、試薬1を含侵させた黒色のフィルタ20を用いて大腸菌102を選択的に蛍光させる処理を行うことを可能とする。
【0059】
より詳しくは、図4に示すように、黒色のフィルタ20に大腸菌102を選択的に蛍光させる試薬1を含侵させるとともに、図5に示すように、試薬1を含侵させた黒色のフィルタ20に大腸菌102を含む検体100を含侵させて大腸菌102を選択的に蛍光させる処理を行うことを可能とする。
【0060】
続いて、スライドグラス30を用意し、図6に示すように、スライドグラス30に測定円40をマーキングする。
【0061】
次に、図7に示すように、マーキングされた測定円40の中に試薬1および大腸菌102を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20を設置して、続いて、図8に示すように、カバーガラス50で覆いプレパラート10を作製する。
【0062】
測定円40は、スライドグラス30に複数マーキングされ、複数マーキングされている測定円40のそれぞれの中に大腸菌102を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20を設置する。
【0063】
また、本測定方法および測定装置200においては、このように作製されたプレパラート10を用いて、図9および図10に示すように、蛍光処理装置60により蛍光処理を行い、顕微鏡装置70により画像の撮影や補正、解析を行うことができる。顕微鏡装置70は蛍光顕微鏡装置である。
【0064】
すなわち、蛍光処理装置60は、励起光照射部61および波長測定部62を有している。励起光照射部61は、プレパラート10(より詳しくは、試薬1および大腸菌102を含侵させた複数の黒色のフィルタ20)に所定の波長の励起光を照射することができる。波長測定部62は、励起光を吸収したプレパラート10(より詳しくは、試薬1および大腸菌102を含侵させた複数の黒色のフィルタ20)からの蛍光の波長を測定することができる。
【0065】
顕微鏡装置70は、XY軸に沿って移動するステージ71を有している。すなわち、顕微鏡装置70において、プレパラート10を設置するステージ71をXY軸に沿って移動させて励起光を吸収したプレパラート10(より詳しくは、試薬1および大腸菌102を含侵させた複数の黒色のフィルタ20)の画像を複数撮影することができる。
【0066】
より詳しくは、顕微鏡装置70は、更に記憶部72、撮影部73、補正部75、および解析部74を有している。
【0067】
記憶部72は、標準的な認識パラメータとして標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な形状、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的なサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の濃淡のデータを記憶することができる。
【0068】
また、撮影部73は、CMOSセンサーを用いてプレパラート10の画像を複数の黒色フィルタ20のそれぞれにおいて複数撮影するとともに、補正部75は、撮影部73が撮影した画像を補正し、解析部74は、撮影部73が撮影した画像を定性的および/または定量的に解析することができる。
【0069】
ここで、補正部75は、プレパラート10におけるスライドグラス30間の厚みおよび/または形状の相違が修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することができる。
【0070】
すなわち、補正部75は、標準とするスライドグラス30の厚みおよび/または形状に対する撮影対象となるスライドグラス30の厚みおよび/または形状の相違が修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することができる。
【0071】
また、補正部75は、ステージ71の傾きが修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することができる。すなわち、補正部75は、ステージ71の所定の方向より詳しくは水平方向に対する傾きが修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することができる。なお、撮影部73は、プレパラート10との距離を複数変更することにより、画像を拡大または縮小しながら撮影することもできる。すなわち、スライドグラス30の厚みや形状の個体差、およびスライドグラス30を設置するステージ71の傾きを測定毎に、検体100の表面を撮影部73にて3測点以上の距離で測定して、スライドグラス30の個体差(厚みや歪み)や傾きを撮影部73のズームや補正部75で補正しながら撮影することができる機能を有している。
【0072】
更に、解析部74は、撮影部73により撮影された画像から標的とする微生物101である大腸菌102を所定の認識パラメータに基づいて認識し、標的とする微生物101である大腸菌102以外のものは認識しないように解析することができる。
【0073】
認識パラメータは、例えば、標的とする微生物101である大腸菌102の形状、標的とする微生物101である大腸菌102のサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つを含むことができる。
【0074】
すなわち、解析部74は、記憶部72に記憶された標準的な認識パラメータとして標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な形状、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的なサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の濃淡のデータを読み出すとともに、これら読み出したデータと撮影部73により撮影された画像(より詳しくは補正部75により補正された画像)とを比較して、撮影された画像(より詳しくは補正された画像)が、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な形状、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的なサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つと所定の範囲で合致するか否かを解析することができる。
【0075】
撮影された画像(より詳しくは補正された画像)が、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な形状、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的なサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つと所定の範囲で合致した場合、解析部74は、撮影された画像(より詳しくは補正された画像)の微生物101が標的とする微生物101である大腸菌102であるとみなすことができる。
【0076】
本発明者は、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な形状、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的なサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の標準的な蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つと所定の範囲で合致した場合に撮影された画像(より詳しくは補正された画像)の微生物101が標的とする微生物101である大腸菌102とみなすことができることを明らかにしている。
【0077】
すなわち、検体100には、大腸菌102等の微生物101の他に、食品残さや、汚れ、その他の異物が混入されていることがあり、上記のような蛍光染色を行っても、微生物101と非微生物との判定が難しい場合があるが、上記のような3つ以上の認識パラメータによって認識することによって大腸菌102等の微生物101のみを測定し、微生物101以外は測定しないこととすることが可能となる。
【0078】
なお、撮影部73が撮影した画像において、標的とする微生物101である大腸菌102の形状、標的とする微生物101である大腸菌102のサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の蛍光の濃淡は、プレパラート10におけるスライドグラス30間の厚みおよび/または形状の相違やステージ71の傾きによりピントがずれて画像がぼやけてしまう等影響を受けることとなるが、上記したように、補正部75は、プレパラート10におけるスライドグラス30間の厚みおよび/または形状の相違が修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することができるとともに、ステージ71の傾きが修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することができるため、このような影響を適宜補正して正確な画像処理を行うことができる。
【0079】
以上説明したように、本発明の測定方法および測定装置200によれば、標的となる微生物101を選択的に蛍光させることにより、検体100において微生物101を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく微生物101の測定を行うことができる。
【0080】
また、標的となる微生物101を大腸菌102とし、試薬1は、検体100において大腸菌102を選択的に蛍光させることにより、検体100において大腸菌102を選択して測定することができる等、迅速にかつ精度よく大腸菌102の測定を行うことができる。
【0081】
更に黒色のフィルタ20に大腸菌102を選択的に蛍光させる試薬1を含侵させるとともに、試薬1を含侵させた黒色のフィルタ20を用いて大腸菌102を選択的に蛍光させる処理を行うことにより、黒色の背景に大腸菌102の蛍光を浮き出るようにすることができ、迅速にかつ精度よく大腸菌102の測定を行うことができる。
【0082】
更にまた、測定円40は、スライドグラス30に複数マーキングされ、複数マーキングされている測定円40のそれぞれの中に大腸菌102を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20を設置することにより、大腸菌102を含む検体100を複数並行して測定することができ、測定の効率を向上させることができる。
【0083】
また更に、補正部75は、プレパラート10におけるスライドグラス30間の厚みおよび/または形状の相違が修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することにより、スライドグラス30間の厚みおよび/または形状が相違する場合にあっても相違が修正されるように補正することができる。
【0084】
また、補正部75は、ステージ71の傾きが修正されるように撮影部73が撮影した画像を補正することにより、ステージ71が傾く場合にあっても傾きが修正されるように補正することができる。
【0085】
更に、補正部75は、撮影部73により撮影された画像から標的とする微生物101を所定の認識パラメータに基づいて認識し、標的とする微生物101以外のものは認識しないことにより、標的とする微生物101のみを効率よく認識することができる。
【0086】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることなく種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【0087】
すなわち、上述した実施形態にあっては、微生物101を大腸菌102とすることとしているが、大腸菌102以外の微生物101に適宜対応可能である。
【0088】
つまり、上述した実施形態にあっては、黒色のフィルタ20に大腸菌102を選択的に蛍光させる試薬1を含侵させるとともに、試薬1を含侵させた黒色のフィルタ20を用いて大腸菌102を選択的に蛍光させる処理を行うこととしているが、黒色のフィルタ20に大腸菌102以外の微生物101を選択的に蛍光させる試薬1を含侵させるとともに、試薬1を含侵させた黒色のフィルタ20を用いて大腸菌102以外の微生物101を選択的に蛍光させる処理を行うこととしても所要の効果を奏することができる。
【0089】
また、上述した実施形態にあっては、スライドグラス30にマーキングされた測定円40の中に試薬1および大腸菌102を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20を設置してカバーガラス50で覆いプレパラート10を作製することとしているが、スライドグラス30にマーキングされた測定円40の中に試薬1および大腸菌102以外の微生物101を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20を設置してカバーガラス50で覆いプレパラート10を作製することとしても所要の効果を奏することができる。
【0090】
更に、上述した実施形態にあっては、撮影部73により撮影された画像から標的とする微生物101である大腸菌102を所定の認識パラメータに基づいて認識し、標的とする微生物101である大腸菌102以外のものは認識しないこととし、認識パラメータは、標的とする微生物101である大腸菌102の形状、標的とする微生物101である大腸菌102のサイズ、標的とする微生物101である大腸菌102の蛍光の強度、および標的とする微生物101である大腸菌102の蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つを含むこととしているが、標的とする微生物101を大腸菌102以外の微生物101としても所要の効果を奏することができる。
【0091】
つまり、単に、撮影部73により撮影された画像から標的とする微生物101を所定の認識パラメータに基づいて認識し、標的とする微生物101以外のものは認識しないこととし、認識パラメータは、標的とする微生物101の形状、標的とする微生物101のサイズ、標的とする微生物101の蛍光の強度、および標的とする微生物101の蛍光の濃淡の少なくともいずれか三つを含むこととしても所要の効果を奏することができる。
【0092】
更にまた、上述した実施形態にあっては、複数マーキングされている測定円40のそれぞれの中に大腸菌102を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20を設置することとしているが、大腸菌102を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20と大腸菌102以外の微生物101を含む検体100を含侵させた黒色のフィルタ20をそれぞれ別々の測定円40の中に設置し二種以上の微生物101を同時測定することとしてもよい(例えば、一般細菌数と大腸菌数を同時に測定する)。
【符号の説明】
【0093】
1:試薬
1A:バクテリオファージt4および/またはバクテリオファージt4DNA
1B:蛍光試薬
10:プレパラート
20:フィルタ
30:スライドグラス
40:測定円
50:カバーガラス
60:蛍光処理装置
61:励起光照射部
62:波長測定部
70:顕微鏡装置
71:ステージ
72:記憶部
73:撮影部
74:解析部
75:補正部
100:検体
101:微生物
102:大腸菌
200:測定装置
図1
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