(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178416
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】圧縮機構及び圧縮機構を備えるHVACシステム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
F25B1/00 387L
F25B1/00 361J
F25B1/00 399Y
F25B1/00 387B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024166992
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2022567548の分割
【原出願日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】16/869,367
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】石黒 貴也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】HVACシステム用の圧縮機構を提供する。
【解決手段】圧縮機構は、第1圧縮機と、第2圧縮機と、を備える。第1圧縮機は、第1分岐と第2分岐とを有する冷媒吸込ラインの第1分岐と流体連通する。第1圧縮機は、第1油排出管とも流体連通する。第2圧縮機は、冷媒吸込ラインの第2分岐と流体連通する。第2圧縮機は、第2油排出管と流体連通する。第2油排出管は、第2圧縮機から冷媒吸込ラインの第1分岐及び第2分岐に油を送るよう構成される。第1油排出管は、第1圧縮機から冷媒吸込ラインの第2分岐にのみ油を送るよう構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HVACシステム用の圧縮機構であって、
第1分岐と第2分岐とを有する冷媒吸込ラインの前記第1分岐と流体連通する第1圧縮機であって、第1油排出管とも流体連通する第1圧縮機と、
前記冷媒吸込ラインの前記第2分岐と流体連通し、第2油排出管と流体連通する第2圧縮機と、
を備え、
前記第2油排出管は、前記第2圧縮機から前記冷媒吸込ラインの前記第1分岐及び前記第2分岐に油を送るよう構成され、前記第1油排出管は、前記第1圧縮機から前記冷媒吸込ラインの前記第2分岐にのみ油を送るよう構成される、
圧縮機構。
【請求項2】
前記第1圧縮機がインバータ圧縮機であり、前記第2圧縮機が定速圧縮機である、
請求項1に記載の圧縮機構。
【請求項3】
前記第1圧縮機の油キャリーオーバーは、前記第2圧縮機の油キャリーオーバーより少ない、
請求項1又は2に記載の圧縮機構。
【請求項4】
前記第2油排出管は、前記第2油排出管から前記冷媒吸込ラインの前記第1分岐へと油を送るよう構成された第2油排出管第1分岐と、前記第2油排出管から前記冷媒吸込ラインの前記第2分岐に油を送るよう構成された第2油排出管第2分岐とを備える、
請求項1又は2に記載の圧縮機構。
【請求項5】
前記第2油排出管の前記第2油排出管第1分岐と流体連通する第1キャピラリ管と、前記第1油排出管と流体連通する第2キャピラリ管と、前記第2油排出管の前記第2油排出管第2分岐と流体連通する第3キャピラリ管とをさらに備える、
請求項4に記載の圧縮機構。
【請求項6】
前記第1キャピラリ管および前記第2キャピラリ管が略同様の油流を通過させるよう構成される、
請求項5に記載の圧縮機構。
【請求項7】
前記第3キャピラリ管は、前記第1キャピラリ管または前記第2キャピラリ管と比較して、より多くの油流を通過させるよう構成される、
請求項5に記載の圧縮機構。
【請求項8】
前記第2圧縮機を少なくとも2台含み、
前記少なくとも2台の前記第2圧縮機は、単一の前記第2油排出管と流体連通する、
請求項2に記載の圧縮機構。
【請求項9】
前記第1圧縮機は1台である、
請求項2に記載の圧縮機構。
【請求項10】
ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群から選択された圧縮機油をさらに備える、
請求項1に記載の圧縮機構。
【請求項11】
請求項1に記載の圧縮機構と、
前記第1分岐と前記第2分岐とを有する前記冷媒吸込ラインと、
前記第1圧縮機と流体連通し、前記第1圧縮機から前記冷媒吸込ラインの前記第2分岐にのみ油を送るよう構成される前記第1油排出管と、
前記第2圧縮機と流体連通し、前記第2圧縮機から前記冷媒吸込ラインの前記第1分岐及び前記第2分岐に油を送るよう構成される前記第2油排出管と、
を備えるHVACシステム。
【請求項12】
建物に冷水を供給するよう構成されたチラーシステムをさらに備える、
請求項11に記載のHVACシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して圧縮機の動作および効率に関し、特に、暖房、換気、空調、および冷蔵装置用の複数の圧縮機間の油キャリーオーバーのバランス化に関する。
【背景技術】
【0002】
本項は、本実施形態の様々な態様のより良い理解を容易にするために、本明細書で述べる各実施形態の様々な態様に関連し得る技術の様々な側面を読者に紹介することを意図している。したがって、以下の記述は、このような観点で読まれるものであり、先行技術を認めるものではないと理解されたい。
【0003】
現代の住宅向けおよび産業向け顧客は、室内空間が温度管理されているものと考えている。一般に、暖房、換気、および空調(「HVAC」)システムは、室内空間の空気を低温(冷房用)または高温(暖房用)の供給源に循環させ、これによって室内空間の周囲温度を調整する。HVACシステムは、よく知られた物理的原理である、気体から液体に変化する流体は熱を放出し、液体から気体に変化する流体は熱を吸収するという原理を特に利用して、これらの低温源と高温源を生成している。
【0004】
一般的なシステムでは、圧縮機及び冷媒の流れや圧力を調整する他の流量制御装置を使用して、閉ループの配管を流体冷媒が流通し、これによって冷媒を液相と気相との間で循環させる。このような相変化は通常、HVACの熱交換器内で起こる。熱交換器は閉ループの一部であり、循環する冷媒と流れる外気との間で熱を伝達するよう設計される。これが冷却サイクルの基本である。冷媒が気体から液体に変化する場合、熱交換器は「凝縮器」と呼ばれ、凝縮する流体は周囲環境に熱を放出する。冷媒が液体から気体に変化する場合、熱交換器は「蒸発器」と呼ばれ、蒸発する冷媒は周囲環境から熱を吸収する。
【0005】
圧縮機は、ほとんどのHVAC設備の中核をなしている。圧縮機は、冷媒を圧縮して冷却サイクルを開始する役割を果たす。一部のシステムでは、複数の圧縮機を使用して冷媒を圧縮する。これら複数の圧縮機には、定速圧縮機と、可変速圧縮機すなわちインバータ圧縮機との両方を含んでもよい。圧縮機の潤滑に油を使用するシステムもあり、この油は冷媒とともに一部排出されることがある。このようなシステムでは、圧縮された冷媒とこの圧縮された冷媒とともに運ばれる油とが油分離器に送られる。油分離器は、排出された油から圧縮された冷媒を分離する。油分離器を経た後、圧縮された冷媒は凝縮器へと排出され、分離された油は、油戻りラインを通って油分離器から吸込ラインに分流されその後圧縮機に戻される。
【0006】
吸込ラインは通常、冷媒蒸気を蒸発器から圧縮機に運ぶ配管である。複数の圧縮機を使用するシステムでは、吸込ラインが複数の側部または分岐を持ち、複数の圧縮機に冷媒蒸気を供給することができる。
【0007】
複数の圧縮機を備える商用HVAC用途では、単一の冷却回路を使用することでメリットが得られる場合がある。ただし、この場合、複数の圧縮機間の不均衡な油キャリーオーバーにより、非効率的な圧縮機動作となる可能性がある。複数の圧縮機を使用するシステムでは、各圧縮機が、圧縮冷媒とともにそれぞれ異なる量の油を排出する場合がある。構成によっては、これにより、ある圧縮機から別の圧縮機へと流れる油の量が不適切となってしまい、それによって過剰な油のキャリーオーバーおよび/またはバイパス損失が発生する可能性がある。
【0008】
複数の圧縮機を使用する場合、油のキャリーオーバーを効率的に管理し、バイパス損失を低減するようなシステムが必要である。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に開示するいくつかの実施形態の特定の態様を以下に記載する。これらの態様は、本発明が取りうる特定の形態についての概要を読者に提供するために示されているにすぎず、これらの態様が本発明の範囲を限定することを意図していないと理解されたい。実際、本発明は、以下に記載されていない様々な態様を包含し得る。
【0010】
本開示の各実施形態は一般に、単一の冷却回路を備えた複数の圧縮機を利用する、暖房、換気、空調または冷蔵(HVACR)システムに関する。
【0011】
いくつかの実施形態は、第1油分離器と流体連通する一以上のインバータ圧縮機と、第2油分離器と流体連通する一以上の定速圧縮機とを有する。いくつかの実施形態は、第1側部および第2側部を有する吸込ラインであって、吸込ラインの第1側部は、一以上のインバータ圧縮機に冷媒を供給するよう構成され、吸込ラインの第2側部は、一以上の定速圧縮機に冷媒を供給するよう構成された吸込ラインと、第1油分離器から吸込ラインの第2側部に油を送るよう構成した第1油戻りラインと、第2油戻りラインであって、油を第2油分離器から吸入ラインの第1側部および第2側部の両方に送るように分割されている第2油戻りラインと、を有する。
【0012】
いくつかの実施形態は、第1分岐と第2分岐とを有する冷媒吸込ラインの第1分岐と流体連通する第1圧縮機であって、第1油排出管とも流体連通する第1圧縮機と、冷媒吸込ラインの第2分岐と流体連通し、第2油排出管と流体連通する第2圧縮機と、を有する。第2油排出管は、第2圧縮機から冷媒吸込ラインの第1分岐及び第2分岐に油を送るよう構成され、第1油排出管は、第1圧縮機から冷媒吸込ラインの第2分岐に油を送るよう構成される。
【0013】
いくつかの実施形態は、第1部分および第2部分を有する低圧冷媒ラインであって、低圧冷媒ラインの第1部分および第2部分は、冷媒流入点からそれぞれ異なる方向に延在する低圧冷媒ラインと、第1圧縮機を第1油分離器に流体接続する第1油排出ラインと、第2キャピラリ管を介して第1油分離器を低圧冷媒ラインの第2部分に接続する第1油戻りラインと、第1圧縮機より油キャリーオーバーが大きい第2圧縮機を第2油分離器に流体接続する第2油排出ラインと、第2油分離器を第1キャピラリ管を介して低圧冷媒ラインの第1部分に接続し、第3キャピラリ管を介して第2油分離器を低圧冷媒ラインの第2部分に接続する第2油戻りラインと、を有し、第1キャピラリ管および第2キャピラリ管は、略同量の油が流れるよう構成され、第3キャピラリ管は、第1キャピラリ管または第2キャピラリ管よりも多くの油が流れるよう構成される。
【0014】
本実施形態の様々な態様に関連して、上述した特徴の様々な改良が存在し得る。これら様々な態様には、さらなる特徴を組み込むこともできる。これらの改良および追加される特徴は、個別にまたは任意に組み合わせられて存在してもよい。例えば、一以上の図示した実施形態に関して以下で論じるさまざまな特徴を、本開示の上記の態様のいずれかに単独でまたは任意の組み合わせで組み込んでもよい。繰り返しになるが、上述の概要は、請求項の主題を限定するものではなく、いくつかの実施形態の特定の態様および状況を読者に理解してもらうことのみを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
特定の実施形態のこのような及びその他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明により、よりよく理解されるであろう。なお、以下の図面において同一の参照符号は同様の構成要素を示す。
【
図1】圧縮冷媒を排出し、油分離器と吸込ラインを介して油を循環させる、1台の圧縮機を備えたHVACシステムの模式図である。
【
図2】本開示に係る第1油分離器及び第2油分離器と第1油戻りライン又は第2油戻りラインとに冷媒及び油を排出する2つの圧縮機を有するHVACシステムの模式図である。
【
図3】本開示に係るHVACシステムの特定の実施形態の模式図である。
【
図4】本開示に係る、インバータ圧縮機と定速圧縮機とを備えるHVACシステムの模式図である。
【
図5】本開示に係る、インバータ圧縮機と複数の定速圧縮機とを備えるHVACシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の一以上の具体的な実施形態について説明する。これらの実施形態の説明を簡潔にするために、本明細書では、実際の装置の全ての特徴を説明していない場合がある。あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合のようにあらゆる実際の装置の開発では、多数の装置固有の決定を行って、様々な装置間で変化する可能性があるシステム関連及びビジネス関連の制約条件への整合のような、開発者の特定の目標を達成しければならないことを理解されたい。さらに、そのような開発努力は、複雑かつ時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず本開示の恩恵を有する当業者にとっては、設計、製作及び製造の日常的な活動であることを理解されたい。
【0017】
様々な実施形態の各要素を紹介する際、「一つ」、「その(the)」、「前記(said)」等の語を使用する場合があるが、これらの語は一以上の要素があることを示すことを意図している。「含む」、「備える」、および「有する」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。
【0018】
いくつかの実施形態において、HVACシステムは、HVACの熱交換器において冷媒と室内空間の空気との間で熱を交換することによって、室内空間の空気を冷却または加熱することができる。別の実施形態では、HVACシステムは、HVACの熱交換器において冷媒と水との間で熱を交換することによって、水を冷却または加熱することができる。HVACの熱交換器において冷却または加熱された水を、空調に使用することができる。たとえば、HVACシステムが、HVACの熱交換器で冷媒によって冷却された冷水を建物に供給する冷却システムを有してもよい。HVACシステムでは、圧縮機は通常、蒸発器から低圧の冷媒を取り除き、この冷媒を高温高圧の蒸気に圧縮して凝縮器に吐出する。圧縮機の可動部分を潤滑するために油が使用される。圧縮機の油としては、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエステル(POE)、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、ポリビニルエーテル(PVE)、およびR-1234yf油からなる群から選択可能である。圧縮機内の油の一部は、高圧の冷媒蒸気とともに圧縮機から排出される。圧縮機内の油量を適正に保つため、冷媒とともに排出された油を圧縮機に戻す。圧縮機から高圧の冷媒とともに排出される油の量を油キャリーオーバーと称する。油キャリーオーバーのバランスがとれていると、圧縮機から排出された油とほぼ同量の油が圧縮機に戻されるので、圧縮機内に所望の油量が維持される。
【0019】
圧縮機の油がなくなると、可動部分が過熱したり、損傷したりする可能性がある。一方圧縮機に戻される油が多すぎると、圧縮機の動作効率が低下する。これは、少なくとも部分的には、圧縮機の構成部品が過剰な油を介して移動することによって生じる液体摩擦抵抗が原因である。
【0020】
油と冷媒の両方が圧縮機を出る際に、高温の冷媒蒸気からこのような油を分離するために、油分離器を使用することができる。油分離器は、圧縮機と凝縮器の間の排出ラインに配置される。油分離器内では高圧冷媒の流れが緩やかになり、油分離器内での油滴の捕捉が可能となる。重い油滴は冷媒蒸気から分離され、油分離器の底へと落下する。油分離器に溜まった油は、油分離器と吸込ラインとを結ぶ油戻りラインを通じて圧縮機に戻される。
【0021】
通常、油分離器の底部には一定量の油が保持される。油分離器の油がなくなると、高圧冷媒蒸気の一部が油分離器を通過し、凝縮器に送られずに圧縮機の吸込ラインに戻ることがある。このような高温高圧の冷媒蒸気の再循環はバイパス損失と呼ばれ、システム全体の効率の低下につながる。
【0022】
図1に戻り、圧縮機110は、高圧冷媒とともに油を圧縮機110から油分離器120へと排出する。その後、油が高圧冷媒から分離され、油分離器120の底部に落下する。いくつかの実施形態では、この油はフィルタ125を通過し、次いで油戻りライン130へと進み、キャピラリ管140等の流量制限装置に到達する。キャピラリ管140は、油戻りライン130から吸込ライン150に戻る油の流れを制限する。キャピラリ管を通過する油の量は、キャピラリ管の大きさによって決まる。キャピラリ管の大きさによって、キャピラリ管を通過する流体の流量と圧力低下とを制御することができる。油は、吸込ライン150を通過すると、圧縮機110に戻される。
【0023】
油分離器120が圧縮機110から油を受け取るよりも速く油戻りライン130に油を排出すると、油分離器120の油が空になってしまう場合がある。この場合、高圧冷媒蒸気の少なくとも一部は、油分離器120、油戻りライン130、およびキャピラリ管140を通過し、低圧吸込ライン150に流れ込むことになる。その結果、圧縮機がそれまでに吐出した高圧の冷媒を再び圧縮して凝縮器に吐出し、冷却サイクルに利用する必要があるので、システム全体の効率が低下してしまう。
【0024】
図2は、本開示に係るHVACシステムの模式図である。
図2において、圧縮機A 210は、圧縮機B 215よりも容量が小さく油のキャリーオーバーが少ない。つまり、圧縮機A 210が高圧冷媒とともに排出する総油量は、圧縮機B 215に比べて少ない。圧縮機B 215は、圧縮機A 210よりも容量が大きく、圧縮機A 210に比べてより多くの油を排出する。
【0025】
図2に示す実施形態は、圧縮機A 210と第1油分離器233とを接続する第1油排出ライン211と、圧縮機B 215と第2油分離器235とを接続する第2油排出ライン216とを有する。この実施形態は、第1側部223および第2側部225を有する吸込ライン220を有する。いくつかの実施形態では、これら第1側部223および第2側部225は、冷媒流入点227で分かれる。第1油戻りライン242は、第2キャピラリ管254を介して、第1油分離器を吸込ライン220の第2側部225に接続する。第2油戻りライン244は、第1分岐246および第2分岐248を有する。第1分岐246は、第1キャピラリ管252を介して、第2油分離器235を吸込ライン220の第1側部223に接続する。第2分岐248は、第3キャピラリ管256を介して、第2油分離器235を吸込ライン220の第2側部225に接続する。
【0026】
圧縮機A 210から排出された油は、第1油分離器233に入り、油の一部は、第1油分離器233を通過して第1油戻りライン242に至る。この油は、第2キャピラリ管254を介して計量され、低圧吸込ライン220の第2側部225に入る。圧縮機A 210および圧縮機B 215の両方が作動している場合、吸込ライン220の第2側部225は、低圧冷媒および油を圧縮機B 215に供給し、吸込ライン220の第1側部223は、低圧冷媒および油を圧縮機A 210に供給する。圧縮機A 210のみが作動し圧縮機B 215が停止している場合、吸込ライン220の第1側部223または第2側部225のいずれかに入った油は、圧縮機A 210へと引き寄せられる。圧縮機A 210と圧縮機B 215の両方が動作している場合、第2キャピラリ管254を通過した油は、吸入ライン220の第2側部225を通過して圧縮機B 215に流入する。
【0027】
圧縮機B 215から排出された油は、第2油分離器235に入り、油の一部は、第2油分離器235を通過して第2油戻りライン244に至る。第2油戻りライン244に入った油の一部は、第2油戻りライン244の第1分岐246を通過し、第2油戻りライン244に入った残りの油は、第2の油戻りライン244の第2分岐248を通過する。第1分岐246は、第1キャピラリ管252を介して、第2油戻りライン244を吸込ライン220の第1側部223に接続する。第2分岐248は、第3キャピラリ管256を介して、第2油戻りライン244を吸込ライン220の第2側部225に接続する。
【0028】
あるキャピラリ管を通過する油の量は、このキャピラリ管のサイズによって決まる。キャピラリ管のサイズを変えることによって、このキャピラリ管を通過する流体の流量と圧力低下とを制御することができる。
【0029】
バランスのとれた運転では、圧縮機A 210に戻される油の量は、圧縮機A 210が排出する油の量と略同じである。第1キャピラリ管252は、所望の量の油を第2油分離器235から吸込ライン220の第1側部223に、そして最終的に圧縮機A 210に供給するよう選択する。圧縮機の大きさ、流量、構成などの圧縮機の仕様に応じて、所望な油量は決められる。
【0030】
第2キャピラリ管254は、第1キャピラリ管252と同じまたは略同じ量の油を供給するよう選択される。第2キャピラリ管254は、第1油分離器233から吸込ライン220の第2側部225に油を供給する。圧縮機B 215が作動していると、この油は吸込ライン220の第2側部225を通って圧縮機B 215に至る。圧縮機B 215が作動していない場合、吸込ライン220の第2側部225から吸込ライン220の第1側部223へ、さらに圧縮機A 210内へと油が引き寄せられる。圧縮機B 215が作動していない場合、圧縮機A 210および第1油戻りライン242は、圧縮機A 210によって排出された油が圧縮機A 210に戻るように自己循環経路を形成する。
【0031】
図3は、本開示に係る具体的な実施形態の例を示す図である。
図3に示す実施形態では、圧縮機A 310は、20kg/hの割合で油を排出する。この油は、第1油分離器333によって高圧冷媒から分離される。第1油分離器333は、18kg/hの油を捕集し、高圧冷媒とともに2kg/hの油を排出する。第1油分離器333で捕捉された18kg/hの油は、第1油戻りライン342を通り、第2キャピラリ管254を通って、吸込ライン320の第2側部325に送られる。この特定の実施形態では、圧縮機B 315は、高圧冷媒と共に60kg/hの油を排出する。第2油分離器335は、54kg/hの油を捕集し、高圧冷媒とともに6kg/hの油を排出する。捕捉された54kg/hの油は、第2油戻りライン344に送られる。第2油戻りラインの第1分岐346は、第1キャピラリ管352を介して吸込ライン220の第1側部223に18kg/hの油を運ぶ。第2油戻りラインの第2分岐348は、第3キャピラリ管356を介して吸込ライン320の第2側部325に36kg/hの油を運ぶ。合計8kg/hの油が2つの油分離器から排出され、高圧冷媒に伴われる油が最終的に吸込ライン320を通って各圧縮機に戻されるまで、この油は高圧冷媒と共に循環する。大容量の圧縮機Bは、小容量の圧縮機Aよりも、吸込ラインを介して供給される8kg/hの油のうちより多くの量を吸引することが理解されよう。この割合は、各圧縮機が第1または第2の油分離器から油を失う割合に略等しい。
図3に示す実施形態では、吸込ライン320から2kg/hの油が吸込ライン320の第1側部323に流れ、6kg/hの油が吸込ライン320の第2側部325に流れる。
【0032】
図3に示すように、第1キャピラリ管352を通過して吸込ライン320の第1側部323に至る油量と、第2キャピラリ管354を通過して吸込ライン320の第2側部325に至る油量とは、略同じである。第3キャピラリ管356は、第2油戻りラインの第2分岐348から、吸込ライン320の第2側部325へと、36kg/hの油を通過させるよう構成される。すなわち、第3キャピラリ管356は、第1キャピラリ管352または第2キャピラリ管354と比較して、より多くの油の流れを通過させるよう構成される。
【0033】
圧縮機AおよびBの両方が作動している場合、この構成によれば、第2の油分離器335から圧縮機A 310に18kg/hの油を供給する。この構成は、第1油分離器333から18kg/hの油および第2油分離器335から36kg/hの油を圧縮機B 315に供給する。
【0034】
圧縮機Bが停止すると、第2油分離器335への油の排出が停止する。この状況では、第1油分離器333から吸込ライン320の第2側部325に排出される18kg/hの油は、吸込ライン320の第1側部323を通って圧縮機A 310に引き戻される。圧縮機B 315が作動しているかどうかにかかわらず、本開示の構成は、バランスのとれた18kg/hの油を圧縮機A 310に供給する。圧縮機B 315の起動中および/または停止中に、システムが再平衡化するまで、油の流れが一時的に中断する可能性があることを理解されたい。
【0035】
図4は、本開示による一実施形態を示す模式図である。
図4に示すように、いくつかの実施形態において、圧縮機A 410は、可変速インバータ圧縮機であってもよく、一方、圧縮機B 415は、定速圧縮機である。圧縮機A 410と圧縮機B 415の大きさを特定の方法で設定すれば、1台の可変速圧縮機と同様の大きさの定速圧縮機との組み合わせにより、インバータ圧縮機のみを用いて可能な最低流量から、可変圧縮機と定速圧縮機とを組み合わせることによる合計最大出力までの実質的に任意の流量を作成することが可能である。
【0036】
図5は、圧縮機Bが複数の定速圧縮機515、517、519を有する実施形態を示す模式図である。いくつかの実施形態において、システム全体で所望の冷媒流を生成するために、各定速圧縮機を作動させたり停止したりすることができる。いくつかの実施形態では、各定速圧縮機515、517、519は、高圧冷媒および任意のこれに伴う油を、第2油分離器535に排出する。すなわち、いくつかの実施形態では、HVACは、単一の第2油分離器535と流体連通する少なくとも2つの定速圧縮機を有する。各定速圧縮機515、517、519は、さらに、吸込ライン525の第2側部に接続されてもよい。したがって、本明細書で説明するバランスの取れた油キャリーオーバーをもたらす動作原理は、単一の定速圧縮機を使用する実施形態および複数の定速圧縮機を使用する実施形態に等しく適用することができる。他の実施形態では、圧縮機Aが複数のインバータ圧縮機を有してもよい。
【0037】
定速圧縮機とインバータ圧縮機のサイズに応じて、このような構成を使用して広範囲の流量を生成可能である。状況に応じて、インバータ圧縮機のみで生成する最小流量から、インバータ圧縮機とすべての定速圧縮機との組み合わせによって生成する最大流量まで取り得る。
【0038】
開示した圧縮機の油戻りシステムの一般的な概念について、いくつかの特定の実施形態に関連して述べてきたが、多くの変形が考慮されることを理解されるであろう。
【0039】
本開示の態様は、様々な変形および代替形態を受け入れることができるが、特定の実施形態を例として図面に示し、本明細書で詳細に説明してきた。ただし、本発明は、開示された特定の形態に限定されることを意図していないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内にあるすべての修正、等価物、および代替物を対象とする。