(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178424
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】増殖性疾患の処置で使用するためのジスルホナートスチルベン
(51)【国際特許分類】
A61K 31/27 20060101AFI20241217BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61K31/27
A61P35/00
A61P15/00
A61P19/00
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024167307
(22)【出願日】2024-09-26
(62)【分割の表示】P 2021529116の分割
【原出願日】2019-11-22
(31)【優先権主張番号】18306546.5
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】505028222
【氏名又は名称】ナント ユニベルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】516086358
【氏名又は名称】サントル ナショナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】521221238
【氏名又は名称】ユニバーシテ デュ・マン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【弁理士】
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】デマイヤー,アレクサンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ウィーゲル,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】シュネ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】マテー,モニーク
(72)【発明者】
【氏名】ル・ブルトン,ジャック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増殖性疾患の処置に使用するための新規のRAD51タンパク質阻害剤の提供。
【解決手段】式(I):
の化合物であって、式中、R
0AおよびR
0Bは、独立して、水素、リチウム、ナトリウム、およびカリウムから選択され; Rは、(C
1-C
4)-アルキルおよびフェニルから選択され、ここで前記フェニルは、独立して(C
1-C
3)-アルキル、(C
1-C
3)-アルコキシ、およびニトロから選択される1つまたは2つの置換基で置換されていてもよい;化合物またはその薬学的に許容される塩。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖性疾患の処置における使用のための医薬組成物であって、式(I):
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、
R
0AおよびR
0Bは、独立して、水素、リチウム、ナトリウム、およびカリウムから選択され;
Rは、(C
1-C
4)-アルキルおよびフェニルから選択され、ここで前記フェニルは、独立して(C
1-C
3)-アルキル、(C
1-C
3)-アルコキシ、およびニトロから選択される1つまたは2つの置換基で置換されていてもよい;
医薬組成物。
【請求項2】
前記フェニルは、独立してメチル、メトキシ、およびニトロから選択される1つまたは2つの置換基で置換されていてもよい、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
R0AおよびR0Bが両方ともナトリウムである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
R0AおよびR0Bが両方ともカリウムである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記式(I)の化合物が、
【表1】
から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記増殖性疾患が、がんである、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記がんが、乳がんである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記がんが、神経膠芽腫である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記がんが、多発性骨髄腫である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも別の活性成分をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記少なくとも別の活性成分が、抗悪性腫瘍性の活性成分である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
式(II):
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であって、式中、
R
0AおよびR
0Bは、独立して、水素、リチウム、ナトリウム、およびカリウムから選択される、
化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
R0AおよびR0Bが、同一である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
R0AおよびR0Bが両方ともナトリウムである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
ハロ-ホルメートと(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アミノベンゼンスルホナート)との反応のステップを含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の化合物を製造するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性疾患の処置に使用するための、RAD51タンパク質の阻害剤として有用なジスルホナートスチルベン化合物、特にジスルホナートスチルベンに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法または化学療法などの増殖性疾患療法は、多くの場合、がん細胞から誘導された耐性および/または固有の耐性に直面している。DNA修復経路は、この処置により損傷を受けたがん細胞のDNAを回復させることが可能であり、これにより、上記処置の効力は低減する。よって、DNA修復経路の阻害は、抗悪性腫瘍性処置に対し腫瘍を感作するための興味深い選択肢である。
【0003】
二重鎖切断(DSB)は、DNAの最も有害な核の変化であり、相同組み換え(HR)と呼ばれる生体プロセスにより修復され得る。RAD51タンパク質は、HR修復経路の主要な要素である。RAD51タンパク質のリコンビナーゼ活性の第1のステップは、相同性の検索と、損傷したDNA配列と相同配列との間の鎖交換とを触媒するRAD51タンパク質のヌクレオフィラメントの形成であり、これによりDSBの正確な修復を確保する。よって、RAD51タンパク質の調節不全は、発がんをもたらし、がんの耐性を促進し得る。RAD51タンパク質の過剰発現は、いくつかのがんの起源で細胞のゲノムの不安定性をもたらし、また、一部の抗がん処置により誘導されるDSBの修復を促進することにより耐性を提供する。特に、がんについて処置されており、より高いレベルのRAD51タンパク質を発現する患者の生存が短いこと、およびアンチセンスまたはリボザイム処置によってRAD51タンパク質の量を減少させると、放射線療法によるがん処置の有効性が改善することが示されている。よって、RAD51タンパク質は、HRを調節するための適切な生物学的標的であり、よって、抗増殖性処置のより良好な効力をもたらす。
【0004】
抗リコンビナーゼ活性を示す小分子の同定に注目が集まっており、いくつかのRAD51タンパク質阻害性小分子が見出されている。これらは、RAD51タンパク質リコンビナーゼ活性の特定のステップを直接妨害し、それによってHR修復経路を防止または制限することができる。当該分野のRAD51タンパク質小分子阻害剤の例として、以下がある。
【化1】
【0005】
特に、BPQが、タンパク質-DNAの相互作用を標的とすることによりRAD51のフィラメントの形成を障害すること(Huang, F. et al., ”Inhibition of Homologous Recombination in Human Cells by Targeting RAD51 Recombinase”, Journal of Medicinal Chemistry, April 2012, Vol. 55, pp. 3011-3020)、およびドキソルビシンで処置したがん細胞の感作が観察され得ること(Alagpulinsa, D. A. et al., ”A small-molecule inhibitor of RAD51 reduces homologous recombination and sensitizes multiple myeloma cells to doxorubicin”, Frontiers in Oncology, October 2014, Vol. 4, p. 289)が示されている。
【0006】
特に、DIDSが、HRの際にRAD51のリコンビナーゼ活性を阻害できることが示された(Ishida, T., et al., ”DIDS, a chemical compound that inhibits RAD51-mediated homologous pairing and strand exchange.”, Nucleic Acids Research, 2009, Vol. 37, No. 10, pp. 3367 3376)。阻害活性はDIDSとRAD51タンパク質との直接的な相互作用に起因すると思われるが、DIDSの作用機構は、解明されておらず、関与する生物学的標的も依然として決定されていない。
【0007】
しかしながら、DIDSまたはBPQなどのRAD51タンパク質小分子阻害剤は、たとえば治療効率(たとえば感作効果に関する)、副作用の存在もしくは効力、他の生物学的受容体に対する選択性、および/または当該分子の化学的安定性に関する、がんに対するそれらの医学的使用を障害する制限を有する。
【0008】
特に、阻害剤としてのDIDSは、膜輸送体(Wilson, M. C., et al. ”Studies on the DIDS-binding site of monocarboxylate transporter 1 suggest a homology model of the open conformation and a plausible translocation cycle.”, Journal of Biological Chemistry, 2009, Vol. 284, No. 30, pp. 20011 20021)およびイオンチャネル(Matulef, K., et al. ”Discovery of potent CLC chloride channel inhibitors.”, ACS Chemical Biology, 2008, Vol. 3, No. 7, pp. 419 428)をも阻害するため、RADタンパク質に特異的ではない。よって、DIDSは、細胞傷害性などの有害な副作用を誘導し得る。
【0009】
さらに、DIDSのイソチオシアネート官能基は、加水分解に感受性があることが知られており(Jakobsen, P. and Horobin, R.W., ”Preparation and Characterization of 4-Acetamido-4’-Isothiocyanostilbene-2,2’-Disulfonic Acid (Sits) And Related Stilbene Disulfonates” Stain Technology, 1989, Vol. 64, No. 6, pp. 301-313)、結果として、潜在的な塩素チャネルまたは輸送体阻害活性を有するDIDSオリゴマーが、形成され得る(たとえば国際特許公開公報第2010/148177号参照)。
【0010】
本出願人は、既知の化合物の制限を克服するために可能な、新規RAD51タンパク質阻害剤を想定および合成するために徹底的な研究を行った。予想外なことに、この研究の過程の間に、いくつかのジスルホナートスチルベン化合物が、RAD51タンパク質の強力な阻害剤であり、よって、増殖性疾患の処置に有用であり得ることが見出された。
【0011】
本発明に係るジスルホナートスチルベンは、強力なRAD51タンパク質阻害剤である。その有効性は、当該分野のRAD51タンパク質と同等であるか、またはこれより優れている。特にこれらは、抗悪性腫瘍薬の存在下で増殖性細胞を効率的に感作する。
【0012】
本発明に係るジスルホナートスチルベンは、当該分野のRAD51阻害剤よりも有害な副作用の誘導が少ない。特にこれらは、細胞傷害性が低い。
【0013】
本発明に係るジスルホナートスチルベンはまた、当該分野の分子と比較して改善された化学的安定性を有し得る。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、増殖性疾患の処置に使用するための、式(I)の化合物:
【化2】
(式中、
R
0AおよびR
0Bは、独立して、水素、リチウム、ナトリウム、およびカリウムから選択され;
R
AおよびR
Bは、同一であり、-NH-COR、-NH-COOR、-NH-SO
2R、アジド、シアノ、およびハロゲン化物から選択され;
ここで、各Rは、独立して、(C
1-C
6)-アルキル、(C
3-C
6)-シクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、および(C
6-C
10)-ヘテロアリール基から選択され、
前記基は、独立して(C
1-C
6)-アルキル、(C
3-C
6)-シクロアルキル、(C
1-C
6)-アルコキシ、(C
1-C
6)-アルキル-S-、およびニトロから選択される1つまたは2つの置換基で置換されていてもよい)
、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0015】
一実施形態によれば、各Rは、独立して、(C1-C4)-アルキル、フェニル、ピリジニル、またはジアジニル基から選択され;フェニル、ピリジニル、またはジアジニル基は、独立して(C1-C3)-アルキル、(C1-C3)-アルコキシ、およびニトロから選択される、好ましくはメチル、メトキシ、およびニトロから選択される、1つまたは2つの置換基で置換されていてもよい。一実施形態によれば、RAおよびRBは、-NH-COR、-NH-COOR、および-NH-SO2Rから選択される。一実施形態によれば、RAおよびRBは、アジド、シアノ、およびハロゲン化物から選択される。一実施形態によれば、ハロゲン化物は、ヨウ素である。一実施形態によれば、R0AおよびR0Bが両方ともナトリウムであるか、またはR0AおよびR0Bが両方ともカリウムである。
【0016】
一実施形態によれば、本化合物は、
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アセトアミドベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-プロピオンアミド(propionamido)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-ベンズアミドベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-(4-メトキシベンズアミド)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-(4-ニトロベンズアミド)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((エトキシカルボニル)アミノ)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((イソブトキシカルボニル)アミノ)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((フェノキシカルボニル)アミノ)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-(フェニルスルホンアミド)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((4-メチルフェニル)スルホンアミド)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((4-ニトロフェニル)スルホンアミド)ベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アジドベンゼンスルホナート);
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-シアノベンゼンスルホナート);および
カリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-ヨードベンゼンスルホナート)
から選択される。
【0017】
一実施形態によれば、増殖性疾患は、がん、好ましくは乳がん、神経膠芽腫、または多発性骨髄腫である。
【0018】
また本発明は、本発明に係る使用のための式(I)の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む組成物にも関する。
【0019】
一実施形態によれば、本組成物は、少なくとも別の活性成分をさらに含む。一実施形態では、少なくとも別の活性成分は、抗悪性腫瘍性の活性成分である。
【0020】
また本発明は、式(II)の化合物:
【化3】
(式中、
R
0AおよびR
0Bは、独立して、水素、リチウム、ナトリウム、およびカリウムから選択され;
各Rは、独立して、(C
6-C
10)-アリールおよび(C
6-C
10)-ヘテロアリール基から選択される)
またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0021】
一実施形態によれば、各Rは、独立して、フェニル、ピリジニル、およびジアジニルから選択され;好ましくはフェニルである。一実施形態によれば、R0AおよびR0Bが、同一であり;好ましくはR0AおよびR0Bがナトリウムである。
【0022】
また本発明は、本発明に係る式(II)の化合物を製造するためのプロセスであって、ハロ-ホルメートと(E)6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アミノベンゼンスルホナート)の反応のステップを含む、プロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0024】
「活性成分」および「活性な薬学的成分」および「治療剤」は、治療で使用するためのおよび健康に関連する化合物を表す。特に活性成分は、疾患、好ましくは増殖性疾患を処置または防止するために適応され得る。また活性成分は、疾患、好ましくは増殖性疾患を処置または防止するために、別の活性成分の治療活性を改善するために適応され得る。
【0025】
「アルケン」または「アルケニル」は、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは1~4個の炭素原子を有し;少なくとも1つの二重結合を有する、いずれかの直鎖状または分枝状の炭化水素鎖を表す。アルケニル基の例は、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニルおよびそのアイソマー、2-ヘキセニルおよびそのアイソマー、または2,4-ペンタジエニルである。
【0026】
「アルコキシ」は、式-O-アルキルの基を表す。
【0027】
「アルキル」は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは1~4個の炭素原子を有するいずれかの直鎖状または分枝状の飽和炭化水素鎖を表す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチルおよびそのアイソマー(たとえばn-ペンチルもしくはi-ペンチル)、またはヘキシルおよびそのアイソマー(たとえばn-ヘキシルもしくはi-ヘキシル)である。
【0028】
「アルキン」または「アルキニル」は、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは1~4個の炭素原子を有し;少なくとも1つの三重結合を有する、いずれかの直鎖状または分枝状の炭化水素鎖を表す。アルキニル基の例は、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ペンチニルおよびそのアイソマー、または2-ヘキシニルおよびそのアイソマーである。
【0029】
「アミド」は、アミド部分(-NH-CO-)を含む基を表す。
【0030】
「アリール」は、5~16個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子、より好ましくは6~10個の炭素原子を有し;単環(すなわちフェニル)または少なくとも1つの環が芳香環である、共に縮合(たとえばナフチル)かもしくは共有結合した複数の芳香環を有する、多価不飽和芳香族炭化水素基を表す。芳香環は、任意選択で、それに縮合した1~2つのさらなる環(シクロアルキル、ヘテロシクリル(heterocyclyl)、またはヘテロアリールのいずれか)を含み得る。アリールの例は、フェニル、ビフェニリル、ビフェニレニル、5-または6-テトラリニル、ナフタレン-1-または-2-イル、4-、5-、6、または7-インデニル、1-、2-、3-、4-、または5-アセナフチレニル(acenaphtylenyl)、3-、4-、または5-アセナフテニル(acenaphtenyl)、1-または2-ペンタレニル(pentalenyl)、4-または5-インダニル、5-、6-、7-、または8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1-、2-、3-、4-、または5-ピレニルである。
【0031】
「アジド」は、式-N3の基を表す。
【0032】
「BPQ」は、(E)-3-ベンジル-2-(2-(ピリジン-3-イル)ビニル)キナゾリン-4(3H)-オンを表す。
【0033】
「カルバメート」は、カルバメート部分(-NH-COO-)を含む基を表す。
【0034】
「Ctrl」は、「対照」を意味する。
【0035】
シアノは、式-CNの基を表す。
【0036】
「シクロアルキル」は、直鎖状または分枝状である、少なくとも3個の炭素原子を含むいずれかの環式または多環式のアルキル基を表す。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
【0037】
「シクロアルケニル」は、直鎖状または分枝状である、少なくとも5個の炭素原子を含むいずれかの環式または多環式のアルケニル基を表す。
【0038】
「DIDS」は、4,4’-ジイソチオシアノ-2,2’-スチルベン-ジスルホン酸を表す。
【0039】
「疾患」は、いずれかの疾患、障害、または病態、好ましくは増殖性の疾患、障害、または病態を包有する。処置の目的は、それを必要とする対象において疾患を防止または遅延させることである。
【0040】
「DNA」は、デオキシリボ核酸を表す。
【0041】
「ハロゲン化物」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)原子を表す。
【0042】
「ヘテロアリール」は、5~16個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子、より好ましくは6~10個の炭素原子を有し;少なくとも1つの環が芳香族である、共に縮合かまたは共有結合した1つまたは2つの環を有し;これら環の1つ以上で1つ以上の炭素原子が、酸素、窒素、および/または硫黄の元素に置換されており、窒素および硫黄ヘテロ原子が任意選択で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が、任意選択で四級化されていてもよい、芳香環または芳香環系を表す。このような環は、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル環に縮合し得る。ヘテロアリールの例は、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル(oxatriazolyl)、チアトリアゾリル(thiatriazolyl)、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]-チアゾリルまたはチエノ[3,2-b]フラニルである。
【0043】
「ヘテロアルキル」は、少なくとも3個の炭素原子を含み、酸素、窒素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子によって中断される、いずれかのアルキル基を表す。窒素および硫黄のヘテロ原子は、任意選択で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されてもよい。
【0044】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも3個の炭素原子を含み、直鎖状または分枝状であり、酸素、窒素、および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子によって中断される、非芳香族の環式または多環式のアルキル基を表す。窒素および硫黄のヘテロ原子は、任意選択で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されてもよい。
【0045】
「ニトロ」は、式-NO2の基を表す。
【0046】
「医薬組成物」は、薬学的に許容される賦形剤と会合した活性成分を含む組成物を表す。医薬組成物は、治療に使用するためのものであり、健康に関連している。特に医薬組成物は、疾患、好ましくは増殖性疾患を処置または防止するために適応され得る。
【0047】
「薬学的に許容される」は、医薬組成物の成分が互いに適合性であり、対象に投与した際に有害ではないことを意味する。
【0048】
「薬学的に許容される賦形剤」は、対象に投与した際に、有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応をもたらさない賦形剤またはビヒクルを表す。これは、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。ヒトへの投与では、調製物は、たとえばアメリカ食品医薬局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)が要求する無菌性、発熱性、全般的な安全性、および純度の基準と一致しなければならない。
【0049】
「RAD51」、「RAD51A」、または「RECA」は、RAD51遺伝子を表す。
【0050】
「RAD51タンパク質」は、「DNA修復タンパク質RAD51タンパク質ホモログ1」または「RADリコンビナーゼ」の略語であり、RAD51によりコードされるタンパク質を表す。
【0051】
「RAD51タンパク質ヌクレオフィラメント」は、RAD51タンパク質依存性相同組み換え(HR)プロセスの主要なステップに関与するシナプス前のフィラメントアセンブリを表す(Velic, D. et al., ”DNA Damage Signalling and Repair Inhibitors”, Biomolecules, November 2015, Vol. 5, No. 4, pp. 3204-3059)。
【0052】
「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを表す。好ましくは、対象は、患者、すなわち医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または現在/将来に医療の対象である/あろう対象である。好ましくは、対象は増殖性疾患を有する。
【0053】
「スルホンアミド」は、スルホンアミド部分(-NH-SO2-)を含む基を表す。
【0054】
「処置する(treating)」または「処置(treatment)」または「軽減(alleviation)」は、治療的処置および予防的または防止的手段(この目的は、それを必要とする対象の目的の疾患を防止または遅延する(弱める)ことである)の両方を表す。処置を必要とするものは、疾患、障害、もしくは病態をすでに有するもの、および障害を有する傾向のあるもの、または障害を防止すべきものを含む。本発明に係る物質または組成物の治療量を投与した後に、対象が、以下:病原性細胞の数の低下;病原性である総細胞のパーセントの低下;特定の疾患、障害、もしくは病態に関連する症状のうちの1つ以上のある程度までの緩和;罹患率および死亡率の低下;および/またはクオリティオブライフの問題の改善のうちの1つ以上の観察可能かつ/または測定可能な低減または不存在を示す場合、対象の当該疾患、障害、または病態に関する「処置」が成功している。処置の成功および疾患、障害、または病態の改善を評価するための上記パラメータは、医師に知られている通常の手順により容易に測定可能である。好ましくは、処置される疾患は、増殖性疾患である。
【0055】
化学的な置換基が化学基の組み合わせである場合、分子に対する置換基の結合点は、記載される最後の化学基によるものである。たとえば、「アリールアルキル」置換基は、アルキル部分を介して分子の残りに結合しており、これは、以下:「アリール-アルキル-」のように表され得る。
【0056】
詳細な説明
化合物
本発明は、式(I-0)の化合物:
【化4】
(式中、
R
0AおよびR
0Bは、独立して、水素;薬学的に許容される陽イオン;およびスルホナート官能保護基または前駆体から選択され;
R
AおよびR
Bは、独立して、アミド、カルバメート、スルホンアミド、アジド、シアノ、およびハロゲン化物から選択される)
に関する。
【0057】
一実施形態によれば、RAおよびRBは同一である。一実施形態では、RAおよびRBは、同じアミドである。一実施形態では、RAおよびRBは、同じカルバミドである。一実施形態では、RAおよびRBは、同じスルホンアミドである。一実施形態では、RAおよびRBは、アジドである。一実施形態では、RAおよびRBは、シアノである。一実施形態では、RAおよびRBは、ハロゲン化物である。
【0058】
一実施形態によれば、RAおよびRBは、独立して、アミド、カルバメート、およびスルホンアミドから選択される。一実施形態によれば、アミドは、-NH-CORであり、カルバメートは、NH-COORであり、および/またはスルホンアミドは、-NH-SO2Rであり;
各Rは、独立して、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、アリールシクロアルキル、ヘテロアリールシクロアルキル、アルケニル、アリールアルケニル、ヘテロアリールアルケニル、シクロアルケニル、アリールシクロアルケニル、ヘテロアリールシクロアルケニル、アルキニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキニル、アリール、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、アルケニルアリール、シクロアルケニルアリール、アルキニルアリール、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、シクロアルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、シクロアルケニルヘテロアリール、およびアルキニルヘテロアリール基から選択され、
基または置換基は、任意選択で、酸素(O)、窒素(N)、および硫黄(S)から選択される少なくとも1つの置換基によって中断され、
基は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アミノ(-NH2)、アジド(-N3)、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、オキソ(=O)、ハロゲン化物、ヒドロキシル(-OH)、ホルミル(-C(O)H)、カルボキシル(-COOH)、アミド(-C(O)-NH2)、およびチオ(=S)およびスルフヒドリル(-SH)から選択される少なくとも1つの置換基で、任意選択で置換され;
基または置換基において置換しているかまたはこれに含まれている窒素原子または硫黄原子は、任意選択で酸化されており、基または置換基において置換しているかまたはこれに含まれている窒素原子は、任意選択で四級化されている。
【0059】
一実施形態では、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択され、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように、中断、置換、酸化、および/または四級化されている。1つの具体的な実施形態では、Rは、アルキル、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択され、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように、中断、置換、酸化、および/または四級化されている。1つのさらなる具体的な実施形態では、Rは、(C1-C6)-アルキル(C3-C6)-シクロアルキル基、(C6-C10)-アリール基、および(C6-C10)-ヘテロアリール基から選択され、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように、中断、置換、酸化、および/または四級化されている。1つのさらなる具体的な実施形態では、Rは、アルキル基およびアリール基から選択され、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように、中断、置換、酸化、および/または四級化されている。1つのさらなる具体的な実施形態では、Rは、アルキル基およびシクロアルキル基から選択され、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように、中断、置換、酸化、および/または四級化されている。1つのさらなる具体的な実施形態では、Rは、アリール基およびヘテロアリール基から選択され、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように、中断、置換、酸化、および/または四級化されている。
【0060】
一実施形態では、Rは、本明細書中上記に定義される通りであり、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように中断、酸化、または四級化されており;この基は、任意選択で、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキル-S-、およびニトロから選択される少なくとも1つの置換基で、置換されている。1つの具体的な実施形態では、Rは、本明細書中上記に定義される通りであり、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように中断、酸化、または四級化されており、この基は、任意選択で、(C1-C6)-アルキル、(C3-C6)-シクロアルキル、(C1-C6)-アルコキシ、(C1-C6)-アルキル-S、およびニトロから選択され、好ましくは(C1-C3)-アルキル、(C1-C3)-アルコキシ、およびニトロから選択され;より好ましくは(C1-C2)-アルキル、(C1-C2)-アルコキシ、およびニトロから選択され、さらにより好ましくはメチル、メトキシ、およびニトロから選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。1つの具体的な実施形態では、Rは、本明細書中上記に定義される通りであり、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように中断、酸化、または四級化されており;この基は、任意選択で、アルキル、アルコキシ、およびニトロから選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。一実施形態では、Rは、本明細書中上記に定義される通りであり、この基は、任意選択で、本明細書中上述されるように中断、酸化、または四級化されており;この基は、任意選択で、(C1-C3)-アルキル、(C1-C3)-アルコキシ、およびニトロから選択;好ましくは(C1-C2)-アルキル、(C1-C2)-アルコキシ、およびニトロから選択;より好ましくはメチル、メトキシ、およびニトロから選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。
【0061】
1つのより具体的な実施形態では、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択され;この基は、任意選択で、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキル-S-、およびニトロから選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。1つのさらなる具体的な実施形態では、Rは、アルキル基およびアリール基から選択され;アリール基は、任意選択で、アルキル、アルコキシ、およびニトロから選択される少なくとも1つの置換基で置換されている。たとえば、アルキルとしてのRは、メチル、エチル、プロピル、およびブチルであり得る。たとえば、アリールとしてのRは、置換基を含まないフェニル、またはメチル、メトキシ、およびニトロから選択される1つのみの基で置換されているフェニルであり得る。
【0062】
1つのより具体的な実施形態では、Rは、(C1-C4)-アルキル、たとえばメチル、エチル、プロピル(たとえばn-プロピルおよびイソプロピル)、ならびにブチル(たとえばn-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチル)である。
【0063】
別のより具体的な実施形態では、Rは、フェニルであり、フェニルは、任意選択で、本明細書中上述されるように中断、置換、酸化、および/または四級化されている。
【0064】
別のより具体的な実施形態では、Rは、ピリジニルまたはジアジニルであり、ピリジニルまたはジアジニルは、任意選択で、本明細書中上述されるように中断、置換、酸化、および/または四級化されている。ピリジニル基またはジアジニル基は、ピリジニルまたはジアジニルの炭素原子(たとえば2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、5-ピリジニル、または6-ピリジニル)または窒素原子(たとえば1-ピリジニル)のいずれかより;好ましくはピリジニルもしくはジアジニルの炭素原子により、アミド、カルバメート、またはスルホンアミドの官能基に結合し得る。
【0065】
一実施形態では、Rは、本明細書中上述されるように1つまたは2つの置換基で置換されている。1つの具体的な実施形態では、Rは、本明細書中上述されるように1つのみの置換基で置換されている。
【0066】
一実施形態によれば、RAおよびRBは、独立して、アジド、シアノ、およびハロゲン化物から選択される。一実施形態では、ハロゲン化物は、ヨウ素(I)原子である。
【0067】
一実施形態によれば、RAおよびRBのうち少なくとも1つはアミドではなく、特に-NH-COR(Rは、本明細書中上述される通りである)ではない。一実施形態では、RAおよびRBは両方ともアミドではない。一実施形態によれば、RAおよびRBのうち少なくとも1つはスルホンアミドではなく、特に-NH-SO2R(式中Rは、本明細書中上述される通りである)ではない。一実施形態では、RAおよびRBは両方ともスルホンアミドではない。一実施形態によれば、R基のうち少なくとも1つは、アルキルではない。一実施形態では、R基はアルキルではない。一実施形態によれば、R基のうち少なくとも1つは、シクロアルキルではない。一実施形態では、R基はシクロアルキルではない。一実施形態によれば、R基のうち少なくとも1つは、スルホナート官能基(-SO2-)で置換されていない。一実施形態では、R基は、スルホナート官能基で置換されていない。
【0068】
一実施形態によれば、R0AおよびR0Bは、同一である。一実施形態では、R0AおよびR0Bは水素である。一実施形態では、R0AおよびR0Bは、同じ薬学的に許容される陽イオンである。
【0069】
一実施形態によれば、R0Aおよび/またはR0Bは、薬学的に許容されるアルカリ性陽イオンである。一実施形態では、薬学的に許容されるアルカリ性陽イオンは、リチウム(Li+)、ナトリウム(Na+)、およびカリウム(K+)から選択される。好ましくは、薬学的に許容されるアルカリ性陽イオンは、ナトリウム(Na+)またはカリウム(K+)、より好ましくはナトリウム(Na+)である。
【0070】
一実施形態によれば、R0Aおよび/またはR0Bは、本明細書中上述されるアルキル基、たとえばエチル、イソペンチル、メチル、エチル、イソプロピル、またはネオペンチルなどである。この実施形態では、式(I-0)の化合物は、たとえば合成前駆体として有用である。
【0071】
一実施形態によれば、R0Aおよび/またはR0Bは、本明細書中上述されるアリール基、たとえばフェニルまたはパラ-ニトロフェニルなどである。一実施形態では、アルキル基は、エチルから選択される。この実施形態では、式(I-0)の化合物は、たとえばプロドラッグとして有用である。
【0072】
一実施形態によれば、R0Aおよび/またはR0Bは、酵素系(たとえばニトロレダクターゼまたはエステラーゼ)により、遊離スルホナート官能基、たとえば国際特許公開公報第2011/017800号(Kong, X. et al.)に開示される官能基に変換され得る官能基を含む基である。この実施形態では、この実施形態では、式(I-0)の化合物は、たとえばプロドラッグとして有用である。
【0073】
一実施形態によれば、本発明に係る化合物は、式(I-a)の化合物である。
【化5】
(式中、R
0Aおよび/またはR
0Bは、本明細書中上述される通りである)
【0074】
一実施形態では、本発明に係る化合物は、式(I-a-i)の化合物である。
【化6】
(式中、R
Aは、本明細書中上述される通りである)
【0075】
一実施形態では、本発明に係る化合物は、式(I-a-ii)の化合物である。
【化7】
(式中、R
Aは、本明細書中上述される通りである)
【0076】
一実施形態によれば、本発明に係る化合物は、式(I-b)の化合物である。
【化8】
(式中、R
AおよびR
Bは、本明細書中上述される通りである)
【0077】
一実施形態によれば、本発明に係る化合物は、式(I-c)の化合物である。
【化9】
(式中、R
AおよびR
Bは、本明細書中上述される通りである)
【0078】
一実施形態によれば、本発明に係る化合物は、式(II-0)の化合物である。
【化10】
(式中、R
AおよびR
B、ならびに各Rは、本明細書中上述される通りである)
【0079】
一実施形態によれば、本発明に係る化合物は、式(III-0)の化合物である。
【化11】
(式中、R
AおよびR
Bは、本明細書中上述される通りである)
【0080】
1つの具体的な実施形態では、本発明に係る化合物は、以下の表1の化合物から選択される。
【表1】
【0081】
表1の化合物は、ChemDraw(登録商標)Professional 15.0(PerkinElmer)を使用して命名した。
【0082】
一実施形態によれば、RAおよび/またはRBは、チオシアネートではない。一実施形態によれば、RAおよび/またはRBは、ニトロではない。
【0083】
一実施形態では、Rはメチルではない。一実施形態によれば、Rはエチルではない。
【0084】
本発明に係る化合物に対する言及は、その全てのエナンチオマー、溶媒和物(たとえば水和物)、多形(たとえば結晶形態)、複数の成分の複合体、および薬学的に許容される塩を包有する。さらに本発明に係る化合物に対する言及は、その全てのプロドラッグを包有する。
【0085】
本発明に係る化合物に対する言及は、その全ての薬学的に許容される塩を包有する。薬学的に許容される塩は、その酸付加塩および塩基付加塩を含む。適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチルスルファート、ナフタレート(naphthylate)、2-ナプシラート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/水素、リン酸塩/二水素、リン酸塩、ピログルタミン酸塩、サッカラート、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル化物、トリフルオロ酢酸塩、およびキシナホ酸塩が挙げられる。適切な塩基は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例として、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、モルフォリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルフォリン、および亜鉛の塩が挙げられる。酸および塩基のヘミ塩、たとえばヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩もまた形成され得る。本化合物が酸性基および塩基性基を含む場合、これは分子内塩をも形成し得る。本化合物が水素を供与するヘテロ原子(たとえばNH)を含む場合、その薬学的に許容される塩は、分子内の塩基性基または原子に上記水素原子を伝達することにより形成される塩および/またはアイソマーをも含む。これら塩は、標準的な手順、たとえば適切な有機塩基または無機塩基と遊離酸を反応させることにより、調製され得る。
【0086】
本発明の一部ではない、スルホネートの官能基を有さない化合物を、以下の表2に提示する。
【表2】
【0087】
表2の化合物は、ChemDraw(登録商標) Professional 15.0(PerkinElmer)を使用して命名した。表2の化合物は、以下の「実施例」のセクションにおいて比較のため使用されている。これらは、本発明の一部ではない。
【0088】
合成
本明細書中上述される本発明に係る化合物は、当該分野で知られているいずれかの合成方法により製造され得る。
【0089】
一実施形態によれば、本化合物は、ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アミノベンゼンスルホナート)(DADS):
【化12】
から開始して製造される。
【0090】
一実施形態では、本化合物は、たとえば酸塩化物または無水塩化物などの酸ハロゲン化物または無水ハロゲン化物とDADSの反応により製造される。一実施形態では、本化合物は、たとえばクロロホルメートなどのハロ-ホルメートとDADSの反応により製造される。一実施形態では、本化合物は、たとえばスルホニル塩化物などのスルホニルハロゲン化物とDADSの反応により製造される。1つの具体的な実施形態では、この反応は、塩基性媒体において、たとえばNa2CO3またはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下で行われる。1つの具体的な実施形態では、この反応は、溶媒、たとえば水/ジオキサン混合物、ジメチルスルホキシド(DMF)またはジクロロメタン(CH2Cl2)などにおいて行われる。1つの具体的な実施形態では、触媒、たとえばテトラブチルアンモニウムクロリドなどが存在し得る。1つの具体的な実施形態では、この反応は、室温または80℃で行われる。
【0091】
これら実施形態を、以下のスキーム1に示す。
【化13】
【0092】
一実施形態では、本化合物は、ジアゾニウム複塩の調製後の求核剤による置換(サンドマイヤー反応)を介した芳香族アミノ基の置換によりDADSから開始して製造され、求核剤は、たとえばN-
3、CN-、またはI-である。
【0093】
1つの具体的な実施形態では、ジアゾニウム複塩の調製は、Na2NO2および酢酸(AcOH)の存在下で行われる。1つの具体的な実施形態では、求核剤は、ナトリウムまたはカリウムの塩である。1つの具体的な実施形態では、置換ステップは、触媒、たとえば銅(I)または(II)触媒、たとえばヨウ化銅(CuI)などの存在下で行われる。1つの具体的な実施形態では、第1および/または第2の反応ステップは、たとえば水などの溶媒において行われる。1つの具体的な実施形態では、第1および/または第2の反応ステップは、室温で行われる。
【0094】
組成物
また本発明は、本明細書中上述される本発明に係る化合物を含む組成物に関する。
【0095】
一実施形態によれば、本組成物は、少なくとも別の活性成分をさらに含み、すなわち本発明に係る化合物および別の異なる活性成分を含む。一実施形態では、活性成分は、抗悪性腫瘍薬、すなわち、増殖性疾患の処置に有効な化合物である。1つの具体的な実施形態では、活性成分は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害剤、および細胞傷害性抗生剤から選択される。抗悪性腫瘍薬の例は、参照により本明細書中に組み込まれているActualite Pharmaceutiques, October 1992(No. 302, pp. 41-43)に列挙されている。1つのさらなる具体的な実施形態では、活性成分は、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、テトラジン、アジリジン、シスプラチン、およびシスプラチン誘導体(たとえばカルボプラチンおよびオキサリプラチン)から選択されるアルキル化剤、ならびにプロカルバジンおよびヘキサメチルメラミンなどの非古典的なアルキル化剤から選択される。抗悪性腫瘍薬の例として、シスプラチンもしくはその誘導体;トポイソメラーゼの阻害剤、たとえばエトポシドもしくはトポテカン;またはチロシンキナーゼ受容体、たとえばエルロチニブもしくはイマチニブが挙げられる。
【0096】
一実施形態によれば、本組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。一実施形態では、本組成物は、医薬組成物である。一実施形態では、本組成物は薬物である。
【0097】
キット
また本発明は、本明細書中上述される本発明に係る化合物または組成物を含むキットに関する。
【0098】
一実施形態によれば、本キットは、本発明に係る少なくとも1つの医薬組成物と、別の活性成分を含む少なくとも別の医薬組成物とを含む。
【0099】
一実施形態によれば、本キットは、本発明に係る複数の医薬組成物、たとえば、毎月、毎週、または毎日の投与のための複数の単回用量を含む。
【0100】
使用および方法
【0101】
また本発明は、DNA修復を阻害するため、たとえば二重鎖切断の修復を阻害するための、本明細書中上述される本発明に係る化合物または組成物の使用に関する。また本発明は、それを必要とする対象のDNA修復(たとえばたとえば二重鎖切断の修復)を阻害するための方法であって、本明細書中上述される本発明に係る化合物または組成物を対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0102】
一実施形態によれば、二重鎖切断の修復の阻害は、RAD51タンパク質の阻害を含む。RAD51タンパク質の阻害は、たとえばRAD51タンパク質合成の防止などのRAD51タンパク質の存在のいずれかの低減、および/またはRAD51タンパク質のフォールディングの防止を含む。RAD51タンパク質の阻害はまた、たとえばRAD51タンパク質ヌクレオフィラメントの形成、DNAとRAD51タンパク質の結合、および/またはRAD51タンパク質の触媒活性の防止などの、RAD51タンパク質の生体活性のいずれかの低減を含む。
【0103】
また本発明は、薬物として使用するための、本明細書中上述される本発明に係る化合物または組成物に関する。一実施形態によれば、本発明は、増殖性疾患の処置に使用するための化合物または組成物に関する。一実施形態によれば、本発明は、がんの処置に使用するための化合物または組成物に関する。
【0104】
また本発明は、それを必要とする対象の疾患を処置する方法であって、本明細書中上述される本発明に係る化合物または組成物を対象に投与するステップを含む方法に関する。一実施形態によれば、この疾患は、増殖性疾患である。
【0105】
また本発明は、薬物の製造における、本明細書中上述される本発明に係る化合物または組成物の使用に関する。一実施形態によれば、この薬物は、増殖性疾患を処置するためのものである。
【0106】
一実施形態では、増殖性疾患はがんである。具体的な実施形態では、がんは、乳がん、神経膠芽腫、および多発性骨髄腫から選択される。一実施形態では、処置は、第1選択、第2選択、または第3選択のがんの処置である。
【0107】
一実施形態によれば、本化合物または本組成物は、少なくとも別の活性成分と同時に、連続して、または別々に、それを必要とする対象に投与される。一実施形態では、他の活性成分は、本化合物または本組成物との同時投与により投与される。一実施形態では、他の活性成分は、本化合物または本組成物との連続投与により投与される。一実施形態では、他の活性成分は、本化合物または本組成物と別々の投与により投与される。
【0108】
一実施形態によれば、本化合物は、ウイルス性疾患の処置に使用するためのものではない。一実施形態では、本化合物は、HSV、HIV、またはCMVの処置に使用するためのものではない。一実施形態によれば、本化合物は、炎症性疾患の処置に使用するためのものではない。一実施形態では、本化合物は、炎症性皮膚疾患の処置に使用するためのものではない。一実施形態によれば、本化合物は、自己免疫疾患の処置に使用するためのものではない。一実施形態によれば、本化合物は、避妊に使用するためのものではない。
【0109】
一実施形態によれば、本化合物は、卵胞刺激ホルモン(FSH)アンタゴニストではない。一実施形態によれば、本化合物は、塩化物チャネルまたは輸送体化合物(CLC)ではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【
図1】
図1は、以下の実施例2に提示されるように、化合物B-1~B-3、X-4、およびDIDSのうちの1つの存在下でRAD51タンパク質のオリゴマー形成の度合いをy軸上にそれぞれ示すヒストグラムのシリーズである。
【
図2】
図2は、以下の実施例3に提示されるように、化合物B-1~B-3、X-4、DIDS、およびBPQのうちの1つの存在下での、一本鎖NDAとRAD51タンパク質の相対的結合(%)をy軸上に示し、異なる量の化合物(μM)をx軸上にそれぞれ示す一連のヒストグラムである。
【
図3】
図3は、以下の実施例5に提示されるように、化合物C-3、B-3、およびX-2のうちの1つの存在下での細胞内HR阻害(%)をy軸上に示すヒストグラムである。
【
図4】
図4は、以下の実施例6に提示されるように、シスプラチン単独の存在下(四角の印を有する上の曲線)またはB-2化合物20μMを伴うシスプラチンの存在下(円形の印を有する下の曲線)での細胞の生存率(%)をy軸上に示し、異なる量のシスプラチン(μM)をx軸上に示すグラフである。
【
図5】
図5は、以下の実施例6に提示されるように、カンプトテシン単独の存在下(四角の印を有する上の曲線)またはB-2化合物20μMを伴うカンプトテシンの存在下(円形の点を有する下の曲線)での細胞の生存率(%)をy軸上に示し、異なる量のカンプトテシン(μM)をx軸上に示すグラフである。
【
図6】
図6は、以下の実施例7に提示されるように、化合物B-1~B-3またはBPQのうちの1つの存在下での細胞のバイアビリティ(%)をy軸上に示すグラフである。
【
図7】
図7は、以下の実施例7に提示されるように、50μMの化合物DIDS、B-1~B-3、またはBPQのうちの1つの存在下で生存率(%)をy軸上に示すグラフである。
【
図8】
図8は、以下の実施例8に提示されるように、化合物B-2 20μM、シスプラチン30μM、または化合物B-2 20μM+シスプラチン30μMでの処置の後の核あたり20超のRad51の病巣を含む細胞の定量化(%)をy軸上に示すヒストグラムである。
【実施例0111】
本発明を、以下の実施例によりさらに説明する。
【0112】
実施例1:スチルベン化合物の合成
材料および方法
材料
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アミノベンゼンスルホナート)(DADS)は、Alfa Aesarから購入した(4,4’-ジアミノスチルベン2,2’-ジスルホン酸, CAS 81-11-8)。4,4’-ジアミノスチルベン二塩酸塩(CAS 54760-75-7)を含む他の反応物は、Sigma Aldrich(Bethesda, US)から購入した。使用される全ての溶媒は、試薬のグレードであった。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカで覆われたアルミニウムシート(Kieselgel 60F254, MERCK)で行った。
【0113】
全般的な方法
溶出したTLCを、UV照射(λ=254nm)またはモリブデン酸溶液を使用して顕色した。NMRスペクトルを、適切な重水素化溶媒に溶解したサンプルについて、室温にてBRUKER AC300(1Hでは300MHz、13Cでは75MHz)またはBRUKER 400(1Hでは400MHz、13Cでは100MHz)で記録した。1Hに関してテトラメチルシラン(TMS)、13Cに関して重水素化溶媒シグナルの参照物質を使用した。化学シフト(Chemical displacement)の値(δ)を、ppm(parts per million)およびヘルツ(Hz)でのカップリング定数で表す。明らかに同定されたプロトンおよび炭素を明記した。赤外線分光法分析は、IRTF Bruker Tensor 27, Vector 22で記録した。低分解能マススペクトル(Low resolution mass spectrum)は、CEISAM研究所において、70eVのThermo-Finnigan DSQII quadripolar(NH3ガスを伴うCI)またはWaters Xevo G2-XS QTOFで、記録した。高低分解能マススペクトル(Da単位のHRMS)分析は、IRS-UN center(Mass Spectrometry platform, Nantes)において、LC-Q-TOF(Synapt-G2 HDMS, Waters)で記録した。
【0114】
合成方法
全般的合成手順1:水/ジオキサン(比率10:2)の混合物中のDADS(1mmol、0.37g)の懸濁液に、Na2CO3(5eq、5mmol)を添加した。この溶液は清澄かつ黄色となり、無水物(4mmol)を、テトラブチルアンモニウムクロリド(0.1eq)の触媒量と共に添加した。2時間~18時間撹拌した後、沈殿物が形成された。これをろ過し、Et2Oで洗浄し、NMR分析により観察されるように、予想された純粋な化合物を提供した。純度の最適化のため、第2の沈殿ステップ(DMSO:Et2O)を行うことができた。
【0115】
全般的合成手順2:ジメチルスルホキシド(DMF)中のDADS(1mmol、0.37g)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(5eq)を添加した。酸塩化物(4eq)を添加し、この反応物を、80℃で一晩加熱した。室温に冷却した後、沈殿物が形成されるまでメタノールを添加した。これをろ過し、Et2Oで洗浄した。次に、沈殿物をDMSOに溶解し、Na2CO3の水溶液を添加して、Et2Oで沈殿させた後に、予想したナトリウム塩を得た。
【0116】
全般的合成手順3:水/ジオキサン(比率10:2)の混合物中のDADS(1mmol、0.37g)の懸濁液に、Na2CO3(5eq、5mmol)を添加した。この溶液は清澄かつ黄色となり、クロロホルメート試薬(2.5eq)を添加した。一晩撹拌した後、沈殿物が形成された。これをろ過し、Et2Oで洗浄すると、NMR分析により観察されるように、予想された純粋な化合物を提供した。純度の最適化のため、第2の沈殿ステップ(DMSO:Et2O)を行うことができた。
【0117】
全般的合成手順4:水/ジオキサン(比率10:2)の混合物中のDADS(1mmol、0.37g)の懸濁液に、Na2CO3(5eq、5mmol)を添加した。この溶液は清澄かつ黄色となり、スルホニルクロリド試薬(2.5eq)を添加した。一晩撹拌した後、沈殿物が形成された。これをろ過し、Et2Oで洗浄すると、NMR分析により観察されるように予想された純粋な化合物を提供した。純度の最適化のため、第2の沈殿ステップ(DMSO:Et2O)を行うことができた。
【0118】
全般的合成手順5:CH2Cl2(10mL)中の4,4’-ジアミノスチルベン二塩酸塩(1mmol、0.28g)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(5eq)を添加した。溶液は清澄かつ褐色となり、塩化物試薬(2.5eq)を添加した。一晩撹拌した後、沈殿物が形成された。これをろ過し、Et2Oで洗浄すると、NMR分析により観察されるように予想された純粋な化合物を提供した。純度の最適化のため、第2の沈殿ステップ(DMSO:Et2O)を行うことができた。
【0119】
全般的合成手順6:水(6mL)中のDADS(1mmol、0.37g)の懸濁液に、Na2NO2(0.14g、2.2eq)水溶液(2mL)、次いで酢酸(5eq)の水溶液(2mL)を添加した。45分間撹拌した後、触媒量のCu(I)(0.2eq)の存在下または非存在下で、ナトリウム塩またはカリウム塩を添加した(2mLの水において2eq~4eq)。4時間~3日間撹拌した後、MeOHおよびEt2Oを添加し、沈殿物を得た。これをろ過し、Et2Oで洗浄すると、NMR分析により観察されるように予想された純粋な化合物を提供した。純度の最適化のため、第2の沈殿ステップ(DMSO:Et2O)を行うことができた。
【0120】
結果
上記の表1に提示されるジスルホナートスチルベン化合物および上記の表2に提示される比較されるの非スルホン化スチルベン化合物を、上述の全般的合成手順1~5により合成した。
【0121】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アセトアミドベンゼンスルホナート)(A-1)を、全般的合成手順1にしたがい、DADSおよび酢酸無水物から調製した。沈殿により精製した後、これを62%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6):δ ppm 10.03 (s, 2H, 2 x NH), 7.96 (s, 2H, CH=CH), 7.94 (d, 2H, 2 x Har), 7.68 (dd, 2H, 2 x Har), 7.52 (d, 2H, 2 x Har), 2.03 (s, 6H, 2 x CH3). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 168.08 (2 x CO), 145.69 (2 x CIVar), 137.29 (2 x CIVar), 129.88 (2 x CIVar), 125.98 (CH=CH), 125.57 (2 x CHar), 118.99 (2 x CHar), 117.74 (2 x CHar), 23.90 (2 x CH3). MS (ESI+) m/z : [M+Na]+ = 521.0, MS (ESI-) m/z : [M-Na]-=475.0. HRMS (ESI+):[M+Na] C18H16N2O8Na3S2の理論値521.0041;実測値521.0029.
【0122】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-プロピオンアミド(propionamido)ベンゼンスルホナート))(A-2)を、全般的合成手順1にしたがい、DADSおよびプロピオン酸無水物から調製した。沈殿により精製した後、これを、76%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 9.63 (s, 2H, 2 x NH), 7.93 (s, 2H, CH=CH), 7.90 (s, 2H, 2 x Har), 7.49 (s, 4H, 4 x Har), 4.12 (q, 4H, 2 x CH2), 1.24 (t, 6H, 2 x CH3). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 153.43 (2 x CO), 145.71 (2 x CIVar), 137.13 (2 x CIVar), 129.40 (2 x CIVar), 125.88 (CH=CH), 125.68 (2 x CHar), 118.39 (2 x CHar), 117.22 (2 x CHar), 60.04 (2 x CH2), 14.50 (2 x CH3). MS (ESI-) m/z : [M-Na]- = 535.2. HRMS (ESI-):[M-Na]- C20H20N2O10NaS2の理論値535.0457;実測値535.0443.
【0123】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-ベンズアミドベンゼンスルホナート)(A-3)を、全般的合成手順1にしたがい、DADSおよび安息香酸無水物から調製した。沈殿により精製した後、これを、70%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 8.11 (s, 2H, CH=CH), 8.09 (s, 2H, 2 x Har), 7.96 (d, 2H, 2 x Har), 7.69 (d, 2H, 2 x Har), 7.33 (m, 10H, 10 x Har). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 154.04 (2 x CIVar’), 152.35 (2 x CO), 144.27 (2 x CIVar), 138.64 (2 x CIVar), 132.13 (2 x CIVar), 130.45 (4 x CHar’), 128.67 (2 x CHar), 127.99 (CH=CH), 126.64 (2 x CHar), 122.92 (4 x CHar), 121.57 (2 x CHar), 119.01 (2 x CHar). MS (ESI+) m/z : [M+Na]+ = 676.9. HRMS (ESI+):[M+Na] C28H20N2O10Na3S2の理論値677.0252;実測値677.0262.
【0124】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-(4-メトキシベンズアミド)ベンゼンスルホナート)(A-4)を、全般的合成手順2にしたがい、DADSおよび4-メトキシベンゾイルクロリドから調製した。沈殿により精製した後、これを、44%の収率で得た。1HNMR (300MHz, CD3OD): δ ppm 10.21 (s, 2H, 2 x NH), 8.18 (d, 2H, 2 x Har), 8.05 (s, 2H, CH=CH), 8.02 (d, 4H, 4 x Har), 7.88 (dd, 2H, 2 x Har), 7.58 (d, 2H, 2 x Har), 7.05 (d, 4H, 4 x Har), 3.84 (s, 6H, 2 x CH3). 13C NMR (75MHz, CD3OD): δ ppm 164.57 (2 x CO), 161.80 (2 x CIVar’), 145.66 (2 x CIVar), 137.37 (2 x CIVar), 130.27 (2 x CIVar), 129.60 (4 x CHar), 126.77 (2 x CIVar), 126.14 (CH=CH), 125.41 (2 x CHar), 120.35 (2 x CHar), 119.18 (2 x CHar), 113.48 (4 x CHar), 55.35 (2 x OMe). MS (ESI-) m/z : [M-Na]- = 659.1. HRMS (ESI-): cald for [M-2Na]2- C30H25N2O10S2 637.0951; found 637.0932.[M-Na]- C30H24N2O10NaS2の理論値659.0770;実測値659.0778.
【0125】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-(4-ニトロベンズアミド)ベンゼンスルホナート)(A-5)を、全般的合成手順2にしたがい、DADSおよび4-ニトロベンゾイルクロリドから調製した。沈殿により精製した後、これを、70%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 10.70 (s, 2H, 2 x NH), 8.36 (m, 4H, 4 x Har), 8.24 (m, 6H, 6 x Har), 8.08 (s, 2H, CH=CH), 7.91 (dd, 2H, 2 x Har), 7.63 (d, 2H, 2 x Har). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 163.54 (2 x CO), 149.06 (2 x CIVar), 145.86 (2 x CIVar), 140.41 (2 x CIVar), 136.78 (2 x CIVar), 130.92 (2 x CIVar), 129.23 (4 x CHar), 126.42 (2 x CHar), 125.58 (CH=CH), 123.41 (4 x CHar), 120.44 (2 x CHar), 119.32 (2 x CHar). MS (ESI+) m/z : [M+Na]+ = 734.9, MS (ESI-) m/z : [M-Na]- = 688.9. HRMS (ESI+):[M+Na]+ C28H18N4O12Na3S2の理論値735.0056;実測値735.0057.
【0126】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((エトキシカルボニル)アミノ)ベンゼンスルホナート)(C-1)を、全般的合成手順3にしたがい、DADSおよびエチルクロロホルメートから調製した。沈殿により精製した後、これを、66%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 9.63 (s, 2H, 2 x NH), 7.93 (s, 2H, CH=CH), 7.90 (s, 2H, 2 x Har), 7.49 (s, 4H, 4 x Har), 4.12 (q, 4H, 2 x CH2), 1.24 (t, 6H, 2 x CH3). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 153.43 (2 x CO), 145.71 (2 x CIVar), 137.13 (2 x CIVar), 129.40 (2 x CIVar), 125.88 (CH=CH), 125.68 (2 x CHar), 118.39 (2 x CHar), 117.22 (2 x CHar), 60.04 (2 x CH2), 14.50 (2 x CH3). MS (ESI-) m/z : [M-Na]- = 535.2. HRMS (ESI-):[M- Na]- C20H20N2O10NaS2の理論値535.0457;実測値535.0443.
【0127】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((イソブトキシカルボニル)アミノ)ベンゼンスルホナート)(C-2)を、全般的合成手順3にしたがい、DADSおよびイソブチルクロロホルメートから調製した。沈殿により精製した後、これを、67%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 9.65 (s, 2H, 2 x NH), 7.94 (s, 2H, CH=CH), 7.92 (d, 2H, 2 x Har), 7.49 (m, 4H, 4 x Har), 3.87 (d, 4H, 2 x CH2), 1.92 (m, 2H, 2 x CH), 0.94 (d, 12H, 4 x CH3). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 153.58 (2 x CO), 145.72 (2 x CIVar), 137.169 (2 x CIVar), 129.41 (2 x CIVar), 125.89 (CH=CH), 125.70 (2 x CHar), 118.44 (2 x CHar), 117.25 (2 x CHar), 70.01 (2 x OCH2), 27.55 (2 x CH), 18.90 (4 x CH3). MS (ESI+) m/z : [M+Na]+ = 637.1, MS (ESI-) m/z : [M-Na]- = 591.0. HRMS (ESI+):[M+Na]+ C24H28N2O10Na3S2の理論値637.0878;実測値637.0870.
【0128】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((フェノキシカルボニル)アミノ)ベンゼンスルホナート)(C-3)を、全般的合成手順3にしたがい、DADSおよびフェニルクロロホルメートから調製した。沈殿により精製した後、これを、38%の収率で得た。1HNMR (300MHz, CD3OD): δ ppm 8.11 (s, 2H, CH=CH), 8.09 (s, 2H, 2 x Har), 7.96 (d, 2H, 2 x Har), 7.69 (dd, 2H, 2 x Har), 7.39 (m, 4H, 4 x Har), 7.22 (m, 6H, 6 x Har). 13C NMR (75MHz, CD3OD) : δ ppm 154.04 (2 x CIVar), 152.35 (2 x CO), 144.27 (2 x CIVar), 138.64 (2 x CIVar), 132.13 (2 x CIVar), 130.45 (4 x CHar), 128.67 (2 x CHar), 127.99 (CH=CH), 126.64 (2 x CHar), 122.92 (4 x CHar), 121.57 (2 x CHar), 119.01 (2 x CHar). MS (ESI+) m/z : [M+Na]+ = 676.9. HRMS (ESI+):[M+Na]+ C28H20N2O10Na3S2の理論値677.0252;実測値677.0262.
【0129】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-(フェニルスルホンアミド)ベンゼンスルホナート)(S-1)を、全般的合成手順4にしたがい、DADSおよびベンゼンスルホニルクロリドから調製した。沈殿により精製した後、これを、81%の収率で得た。1HNMR (300MHz, D2O): δ ppm 7.80 (m, 4H, Har), 7.65 (s, 2H, CH=CH), 7.64 (d, 2H, J =8.2 Hz, 2 x Har), 7.60-7.48 (m, 6H, Har), 7.43 (d, 2H, J = 2.44 Hz, 2 x Har), 7.06 (dd, 2H, J = 2.44 Hzおよび8.6 Hz, 2X Har). 13C NMR (75MHz, D2O): δ ppm 144.06 (2xCIV), 141.11 (2xCIV), 140.19 (2xCIV), 132.18 (2xCHar), 129.11 (4xCHar), 127.91 (2xCHar), 127.61 (2xCIV), 126.47 (4xCHar), 125.78 (CH=CH), 124.40 (2xCHar), 119.66 (2xCHar). HRMS (ESI+):C26H19N2O10Na2S4 [M-H]-の理論値692.9718;実測値692.9719.
【0130】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-((4-メチルフェニル)スルホンアミド)ベンゼンスルホナート)(S-2)を、全般的合成手順4にしたがい、DADSおよびパラ-トルエンスルホニルクロリドから調製した。沈殿により精製した後、これを、87%の収率で得た。1HNMR (300MHz, D2O): δ ppm 7.68 (m, 4H, 4xHar), 7.64 (s, 2H, CH=CH), 7.64 (s, 2H, CH=CH), 7.64 (d, 2H, 2 x Har), 7.42 (d, 2H, J = 2.4 Hz, 2 x Har), 7.33 (m, 4H, 4 x Har), 7.03 (dd, 2H, J = 8.5 Hzおよび2.5 Hz, 2 x Har), 2.35 (s, 6H, 2 x CH3). HRMS (ESI-):C28H23N2O10S4Na2 [M+H]-の理論値721.0031;実測値721.0024.
【0131】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-(4-ニトロフェニルスルホンアミド)ベンゼンスルホナート)(S-3)を、全般的合成手順3にしたがい、DADSおよび4-ニトロベンゼンスルホニルクロリドから調製した。沈殿により精製した後、これを、81%の収率で得た。1HNMR (300MHz, D2O): δ ppm 8.32 (dl, 4H, 4 x Har), 7.99(dl, 4H, 4xHar), 7.664 (m, 4H, 2 x HarおよびCH=CH), 7.43 (sl, 2H, 2 x Har), 7.05 (dl, 2H, 2x Har). HRMS (ESI+):C26H19N4O14S4Na2 [M+H]+の理論値784.9570;実測値784.9560.
【0132】
(E)-N,N’-(エテン-1,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ジアセトアミド(X-1)を、全般的合成手順5にしたがい、4,4’-ジアミノスチルベン二塩酸塩および塩化アセチルから調製した。沈殿により精製した後、これを、53%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 10.06 (s, 2H, 2 x NH), 7.54 (m, 8H, 8 x Har), 7.07 (s, 2H, CH=CH), 2.05 (s, 6H, 2 x CH3). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 168.17 (2 x CO), 138.58 (2 x CIVar), 131.95 (2 x CIVar), 126.58 (4 x CHar), 126.47 (CH=CH), 118.98 (4 x CHar), 23.96 (2 x CH3). MS (ESI+) m/z: [M+Na]+ = 317.1. HRMS (ESI+):[M+Na]+の理論値C18H18N2O2Na 317.1266;実測値317.1278.
【0133】
ジフェニル(エテン-1,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))(E)-ジカルバメート(X-2)を、全般的合成手順5にしたがい、4,4’-ジアミノスチルベン二塩酸塩およびフェニルクロロホルメートから調製した。沈殿により精製した後、これを、54%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 10.33 (s, 2H, NHCO), 7.57-7.42 (m, 10H, Har), 7.30-7.23 (m, 8H, Har), 7.11 (s, 2H, CH=CH). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 151.54 (2x CIV), 150.41 (2x CIV), 137.81 (2x CIVar), 131.99 (2x CIVar), 129.36 (4xCHar), 126.82 (4xC), 126.52 (CH=CH), 125.39 (2xCHar), 121.89 (4xCHar), 118.48 (4xCHar). HRMS (ESI+):[M+Na]+ C28H22N2O4Naの理論値473.1472; 実測値473.1471.
【0134】
(E)-N,N’-(エテン-1,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ジベンゼンスルホンアミド(X-3)を、全般的合成手順5にしたがい、4,4’-ジアミノスチルベン二塩酸塩およびフェニルスルホニルクロリドから調製した。沈殿により精製した後、これを、41%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 10.31 (sl, 2H, NH), 7.76 (dd, 4H, J=8.33 Hzおよび1.55 Hz, 2 x Har), 7.60-7.54 (m, 6H, 6xHar), 7.38 (d, 4H, J = 8.64 Hz, Har stilb), 7.07 (d, 4H, J = 8.64 Hz, Har stilb), 6.97 (s, 2H, CH=CH). HRMS (ESI+):[M+Na]+ C26H22O4N2NaS2の理論値513.0913;実測値513.0918.
【0135】
(E)-1,2-ビス(4-アジドフェニル)エテン(X-4)を、全般的合成手順6に従い、NaN3(2eq)を伴い、Cu触媒を伴わずに、4,4’-ジアミノスチルベン二塩酸塩から調製した。褐色の沈殿物をろ過した後、カラムクロマトグラフィーによる精製により2つの生成物が提供され、予測される(E)-アイソマー(X-4)が同定された。IR (cm-1): υmax = 2111および2081 (N3). 1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 7.64 (d, 4H, CHar), 7.23 (s, 2H, CH=CH), 7.13 (d, 4H, CHar).
【0136】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-アジドベンゼンスルホナート)(B-1)を、全般的合成手順6にしたがい、NaN3(2eq)を伴い、銅触媒を用いずに、DADSから調製した。3時間30分の間撹拌した後、Na2CO3を添加して、約9のpHを得た。沈殿により精製した後、これを、80%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 8.04 (s, 2H, CH=CH), 7.63 (d, 2H, 2 x Har), 7.50 (d, 2H, 2 x Har), 7.12 (dd, 2H, 2 x Har).13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 147.07 (2 x CIV), 136.99 (2 x CIV), 131.82 (2 x CIV), 127.05 (2 x CHar), 126.50 (CH=CH), 119.55 (2 x CHar), 117.32 (2 x CHar). MS (ESI-) m/z : [M-Na]- = 442.9. HRMS (ESI-):[M-Na]-の理論値C14H8N6O6NaS2; 442.9844実測値442.9858.
【0137】
ナトリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-シアノベンゼンスルホナート)(B-2)を、全般的合成手順6にしたがい、触媒としてNaCN(0.2g)およびCuCl(0.05g)を使用して、DADSから調製した。沈殿により精製した後、これを褐色の粉末として59%の収率で得た。1HNMR (300MHz, DMSO-d6): δ ppm 8.27 (s, 2H, CH=CH), 8.07 (d, 2H, 2 x Har), 7.88 (dd, 2H, 2 x Har), 7.77 (d, 2H, 2 x Har). 13C NMR (75MHz, DMSO-d6): δ ppm 146.59 (2 x CIV), 138.83 (2 x CIV), 132.64 (2 x CHar), 130.51 (2 x CHar), 129.50 (2 x CH=CH), 126.64 (2 x CHar), 118.62 (2 x CN), 109.25 (2 x CIV). MS (ESI-) m/z : [M-Na]- = 411.
【0138】
カリウム(E)-6,6’-(エテン-1,2-ジイル)ビス(3-ヨードベンゼンスルホナート)(B-3)を、全般的合成手順6にしたがい、触媒としてKI(5eq、0.83g)およびCuI(0.1eq、0.02g)を使用して、DADSから調製した。沈殿により精製した後、これを、褐色の粉末として41%の収率で得た。1HNMR (300MHz, D2O):δ ppm 8.23 (d, J = 1.4 Hz, 4H, CHar), 7.92 (dd, J = 1.4 HzおよびJ = 8.2 Hz, 4H, CHar), 7.84 (s, 2H, CH=CH), 7.61 (d, J = 8.3 Hz, CHar (5)). 13C NMR (75MHz, D2O): δ ppm 140.1 (2 x CIV), 140.65 (2 x CHar), 135.52 (2 x CHar), 134.07 (2 x CIV), 128.9 (2 x CHar),127.9 (CH=CH), 92.37 (2 x C-I). MS (ESI-) m/z: [M-2K+Na]- = 612.8; [M-2K+H]- = 590.8; [M-K]-= 628.8. HRMS (ESI ):[M-K]- C14H8O6N2Kの理論値628.7489;実測値628.7496。
【0139】
実施例2:In vitroでのアッセイ-SDS-PAGEゲル(架橋)によるRAD51オリゴマー形成
材料および方法
この反応は、室温で行った。2.5μmのHsRad51を、表記の濃度の試験化合物と、20mmのリン酸ナトリウム、50mmのNaCl、1mmのMgCl2、および1mmのATPを含むバッファーにおいて10分間インキュベートした。架橋反応を、スベリン酸ジスクシンイミジル(50μm)の添加により開始し、30分間進行させた。反応を、トリス-HCl(pH7.5、最終濃度50mm)の添加によりクエンチし、その後15分間インキュベートした。次に生成物を12%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、マウスモノクローナル抗Rad51抗体(NeoMarkers)および抗マウスAlexa-Fluor 700コンジュゲート型2次抗体(Molecular Probes, Eugene, OR)を用いたウェスタンブロットにより検出した。架橋した二量体を、Odyssey Infrared Imaging System scanner(Li-Cor Biosciences)により定量化した(Martinez, S. F. et al., ”Targeting human Rad51 by specific DNA aptamers induces inhibition of homologous recombination”, Biochimie, December 2010, Vol. 92, No. 12, pp. 1832-1838)。
【0140】
結果
架橋後のSDS-PAGE電気泳動は、RAD51タンパク質複合体を維持および固定し、よって、RAD51タンパク質のオリゴマー形成(ポリマー形成)の度合いの可視化を可能にする。よって、このRAD51タンパク質のリコンビナーゼの活性の鍵となるステップに及ぼすRADタンパク質阻害剤、B-1、B-2、B-3、DIDS、およびX-4の作用が評価されている。この結果を、
図1に提示する。
【0141】
これら結果は、ジスルホナートスチルベンB-1、B-2、およびB-3の存在下で、RAD51のオリゴマー形成状態の有意な低下が観察されたことを示している。オリゴマーの形態は、2つのシアノ基を含むB-2では非常に強く減少している。ジスルホナートスチルベンB-1、B-2、およびB-3により誘導されるこの低下は、参照化合物DIDSで観察された低下と比較して同じ桁の範囲内である。DIDSおよびB-1~B-3が、RAD51タンパク質のモノマー間の界面で作用することによりオリゴマー形成を妨げるということが、本出願人の理解である。
【0142】
注目すべきことに、B-1とは対照的に、スルホネート基を含まない比較化合物X-4は、RAD51タンパク質のオリゴマー形成に作用しない。よって、2つのスルホネート基は、RAD51タンパク質の阻害特性に必須であると思われる。
【0143】
よって、本発明に係るジスルホナートスチルベンは、RAD51タンパク質のオリゴマー形成の防止により証明されるように、強力なRAD51タンパク質阻害剤である。
【0144】
実施例3:in vitroでのアッセイ-干渉分光法によるRAD51ヌクレオフィラメント形成
材料および方法
ssDNAに対するRad51の結合を、BLItz platform(ForteBio Inc.)を使用してBLI(Bio-Layer Interferometry)技術によりモニタリングおよび定量化した。この手順は、4つのステップを含む:(1)1×PBS、10mMのMgCl2および0.0075%のTween20を含むバッファーでのベースラインを、20秒間記録した;(2)Rad51のローディングおよび結合を、バッファーAにおいて1.5μMのRad51および1mMのATPを使用して40秒間測定した;(3)ssDNAからのRad51の解離を、バッファーAにおいて20秒間記録した;(4)ssDNAバイオセンサーを、50mMのNaOH浴を使用して再生成した。タンパク質サンプルの4μLの滴下を使用したステップ2を除き、ステップ1、3、および4は、0.5mLのチューブにおいて250μLの溶液を使用した。測定パラメータは、以下の通りであった:室温の測定および撹拌速度2200rpm。Rad51のssDNA結合に対するCSBおよび類縁体の作用を調査するために、分子を、表記の濃度でステップ2のタンパク質サンプルに含め、5分間インキュベートした後、バイオセンサー上にローディングした(Normand, A. et al., ”Identification and characterization of human Rad51 inhibitors by screening of an existing drug library.”, Biochemical Pharmacology, October 2014, Vol. 91, No. 3, pp. 293-300.)。
【0145】
結果
干渉分光法(Blitz(登録商標), Fortebio)に基づく試験は、阻害剤の存在下または非存在下でバイオセンサーの担体に固定された一本鎖DNAとのRAD51タンパク質の結合の動態の測定を可能にする。RAD51ヌクレオフィラメントの形成に及ぼす化合物B-1、B-2、B-3、BPQ、およびX-4の作用が、漸増用量の阻害剤の存在下で評価されている。この結果を、
図2に提示する。
【0146】
これら結果は、ジスルホナートスチルベンB-1、B-2、およびB-3が、RAD51タンパク質ヌクレオフィラメントの形成を阻害することを示している。ヌクレオフィラメントの形成は、2つのシアノ基を含むB-2では非常に強く減少している。B-1、B-2、およびB-3の活性は、参照物質の1つBPQと同等であるかまたはさらにはこれよりも良好である。B-1、B-2、およびB-3の活性は、低用量(5μM)で参照物質の1つDIDSと同等である。B-2は、高用量(50μM)でDIDSと比較して同じ作用を有する。
【0147】
これら結果もまた、比較化合物X-3が、いずれの量においても、RAD51タンパク質に何の阻害作用も有さないことを示している。
【0148】
よって、本発明に係るジスルホナートスチルベンは、RAD51タンパク質ヌクレオフィラメント形成の防止により証明されるように、強力なRAD51タンパク質阻害剤である。
【0149】
実施例4:in vitroでのアッセイ-D-ループアッセイによるDNA侵入
材料および方法
標識した100-ssDNA**(1μM)を、20mMのTris-HCl(pH8)、1mMのATP、1mMのDTT、1mMのCaCl2を含む標準的な反応バッファー10μLにおいて表記の量の対応する分子の存在下または不存在下で、0.5μMのRad51と、37℃で20分間インキュベートした。この反応を、スーパーコイルpPB4.3 DNA(bpにおいて200μM)を添加することにより開始した。37℃で30分間インキュベートした後、反応を停止溶液(10mMのTris-HCl(pH8)、10mMのMgCl2、1%のSDS、および1mg/mLのプロテイナーゼK)により停止および除タンパクした。反応混合物を、37℃で15分間さらにインキュベートした。5倍のloading dye(0.05%のブロモフェノールブルー、8%のグリセロール、1mMのEDTA)を添加した後、反応生成物を、1%アガロースゲル上での電気泳動により分離させた。電気泳動は、0.5XTAEバッファー(20mMのTris、10mMの酢酸、および1mMのEDTA)において100Vで2時間行った。標識した生成物(100-ssDNA**およびD-ループ)を、Odyssey Infrared Imager(LI-COR)の700nmの赤外線蛍光検出チャネルを用いたIRD-700色素の検出により可視化および定量化した(Normand, A. et al., Biochemical Pharmacology, October 2014, Vol. 91, No. 3, pp. 293-300.)。
【0150】
結果
「D-ループ」in vitroでの試験は、鎖交換構造(D-ループ)の形成の定量化、よって、リコンビナーゼの機構の鎖交換ステップの間の分子の阻害力の決定を可能にする。次に、化合物A-1~A-5、B-1~B-3、B-1~B-3、およびDIDSの存在下でのRAD51タンパク質の阻害を測定するIC
50を計算する。この結果を以下の表3に提示する。
【表3】
【0151】
これら結果は、ジスルホナートスチルベンA-3、A-4、C-3、S-1、S-2、B-1、B-2、およびB-3が比較的低いIC50を有し、よって、鎖交換構造(D-ループ)の形成の強力な阻害剤であることを示している。ジスルホナートスチルベンA-4、C-3、およびB-2は、DIDS参照化合物の同じ桁の範囲内で非常に低いIC50値を有し、よって、鎖交換ステップの防止に特に効率的である。
【0152】
よって、本発明に係るジスルホナートスチルベンは、DNA侵入により証明されるように、強力なRAD51タンパク質阻害剤である。
【0153】
実施例5:細胞アッセイ-細胞内相同組み換え(HR)に及ぼす作用
材料および方法
pCMV-HA-I-SceIプラスミドでトランスフェクションし、72時間インキュベーションした後、細胞を、PBSおよび50mMのEDTAにおいて回収し、ペレット状にし、2%パラホルムアルデヒド(paraformaledhyde)で20分間固定した。GFPを発現する細胞のパーセンテージを、Cytoflex(Beckman Coulter)を使用してFACS分析によりスコア付けした。少なくとも3回の独立した実験を行い、HA-I-SceIbの発現を、ウサギの抗HA抗体(Abcam)でのウェスタンブロットにより毎回検証した。
【0154】
結果
組み換え線維芽細胞株RG37を使用して、細胞の状況でのin vitroでの結果(実施例2~5)を確認する。この細胞株は、2つの非機能的なGFPカセットを含み、このうちの1つは、制限酵素のトランスフェクションにより誘導可能な固有の切断部位を有する。DNAの二重鎖切断(DSB)と等価である切断の後、相同組み換え(HR)は、完全なGFPカセットの再構成をもたらし、よって細胞を蛍光にする。次に、細胞内HRの比率をフローサイトメトリーでの測定により決定し、化合物C-3、B-2、およびX-2での処置後の細胞におけるHRのレベルを測定する。この結果を、
図3に提示する。
【0155】
よって、HRに及ぼす有意な阻害性作用が、ジスルホナートスチルベンC-3およびB-2で得られるが、スルホナート基を含まない比較化合物X-2はいずれの阻害ももたらさないことから、これらの結果はin vitroでの結果を裏付けた(
図3)。
【0156】
よって、本発明に係るジスルホナートスチルベンは、細胞内相同組み換えにより証明されるように、強力なRAD51タンパク質阻害剤である。
【0157】
実施例6:細胞アッセイ-抗悪性腫瘍薬での感作作用
材料および方法
クローン形成能試験を、前立腺がん(DU-145)を含むがん由来のいくつかのモデル細胞株に対して行う。細胞を、DNAを標的とする抗がん剤(シスプラチンまたはカンプトテシン)に対して曝露する。損傷した細胞数を計測し、三連の培養プレートにおいてB-2の存在下または非存在下で播種する。37℃での約2週間のインキュベーションの後、形成されるクローンの数を計測する。その後、その損傷を修復することが可能な各細胞はクローンを形成する。計測した後、生存のパーセンテージを、100%が生存するとみなされる対照条件と比較して計算する。
【0158】
結果
RAD51タンパク質阻害剤の主な関心は、化学物質耐性または放射線耐性の癌細胞株の感作である。クローン形成能の評価を、ジスルホナートスチルベンB-2(RAD51タンパク質阻害剤)の存在下または非存在下においてシスプラチン処置で処置したDU-145細胞株で行った。この結果を、
図4および以下の表4に提示する。
【表4】
【0159】
これら結果は、シスプラチン単独の存在下(四角の印を有する上の曲線)での細胞の生存率が、シスプラチンの量にかかわらずB-2化合物20μMを伴うシスプラチンの存在下(円形の印を有する下の曲線)よりも高いことを示している(
図4)。よって、B-2は、実際に、シスプラチンの抗悪性腫瘍活性を補完するがん細胞株に対する感作剤として作用する。この作用はまた、シスプラチンの成長阻害のIC
50がB-2の存在下で約40%減少することによっても証明されている(表4)。
【0160】
同じ実験を、RAD51が媒介する相同組み換えにより修復されるDNA損傷を誘導することが知られているカンプトテシンの処置を使用して行った。
【0161】
DU-145細胞株を、ジスルホナートスチルベンB-2(RAD51タンパク質阻害剤)の存在下または非存在下においてカンプトテシンで処置し、クローン形成性細胞の生存を決定した。この結果を、
図5および以下の表5に示す。
【表5】
【0162】
これら結果は、カンプトテシン単独の存在下(四角いドットを伴う上の曲線)での細胞の生存率が、カンプトテシンの量にかかわらず、B-2化合物20μMおよびカンプトテシンの存在下(円形の印を有する下の曲線)よりも高いことを示している(
図5)。よって、B-2は、実際に、カンプトテシンの抗悪性腫瘍活性を補完する癌性細胞株に対する感作剤として作用する。この作用はまた、カンプトテシンの増殖阻害のIC
50がB-2の存在下で約90%減少することによっても証明されている(表5)。
【0163】
よって、本発明に係るジスルホナートスチルベンは、強力な感作剤であり、よって増殖性疾患の処置に有用である。
【0164】
実施例7:細胞アッセイ-細胞傷害性
材料および方法
前立腺がん細胞DU145(癌)および線維芽細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)および1%のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した最小必須培地(RPMI1640培地)において培養し、5%のCO2、37℃で増殖させた。
【0165】
処置した分子を、20mMの濃度でDMSOに溶解し、保存した。
【0166】
DU145細胞および線維芽細胞を、標準的な96ウェルプレートにおいて100μlの培地に5×103個の細胞/ウェルで播種した。これらプレートを、5%のCO2の雰囲気で、37℃で24時間インキュベートした。DMSOに希釈した分子溶液を、RPMI1640培地により60μMから0.02μMに連続希釈し、100μlのRPMIに4連で添加した。
【0167】
72時間のインキュベーションの後、5mg/ml-1のMTT20μlを製造社の指示に従い各ウェルに添加した。37℃での2時間のインキュベーションの後、培地を除去し、200μlのDMSOを各ウェルに添加してホルマザン結晶を溶解した。次に、各ウェルの540nmでの吸光度を、EnSpire マルチモードプレートリーダーを使用してモニタリングした。各ウェルの吸光度は、対照(未処置の細胞を有するウェル)のパーセンテージとして表し、50%阻害濃度(IC50)を決定した。IC50値は、50%成長阻害をもたらす薬物の濃度として定義される。結果は、少なくとも3回の実験の平均値を表す。全てのデータは、平均値±標準偏差として表した。IC50値は、ソフトウェアGraphPad InStat 3.0を使用して濃度-対数応答曲線の線形回帰分析により計算した。
【0168】
結果
DU245前立腺がん細胞株を使用して、小分子である本発明のスチルベン化合物B-1~B-3および参照化合物BPQの毒性を評価および比較した。
【0169】
化合物B1~B3は、DU-145細胞に対して3日間50μMで細胞傷害作用を有しなかったのに対して、BPQは、同じインキュベーション時間、同じ濃度において細胞において高い細胞傷害性(低い細胞のバイアビリティ)をもたらす(
図6)。実際に、BPQは、90%の細胞の死亡率をもたらすが、本発明のスチルベン誘導体は、細胞のバイアビリティに影響しない(>95%の細胞のバイアビリティ)。同じ結果が、線維芽細胞で得られている(
図7)。
【0170】
線維芽細胞で行った試験(
図7)もまた、DIDSが、本発明のスチルベン誘導体とは反対に、50μMで3日間細胞傷害性作用を有することを示している。
【0171】
実施例8:細胞アッセイ-Rad51の病巣の定量化
材料および方法
DU-145細胞を、10%のウシ胎仔血清(Gibco Invitrogen)を補充した培地(RPMI)においてウェルあたり5×103個の細胞の密度でカバーガラス(Life Technologies)上で成長させた。細胞を、20μMのRAD51阻害剤B-2の存在下または非存在下で1時間、30μMのシスプラチンで処置し、次に培地を、分子フリー培地(molecule-free medium)と交換した。18時間後に、細胞をPBSで5分間洗浄し、25分間無水エタノールで固定した。
【0172】
固定した細胞を、1:1000に希釈した抗RAD51抗体を含むPBSバッファーにおいて室温で1時間インキュベートした。PBSで5分間3回洗浄した後、暗室でスライドを、AlexaFluor 555とコンジュゲートした二次抗体(希釈1:0000)を含むPBS溶液と45分間インキュベートした。スライドをPBSで3回洗浄し、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)を伴うProLong Antifade(Life Technologies)で対比染色および標本作製を行い、カバーガラスを適用した。このスライドを、共焦点顕微鏡(Nikon A-1RSi, Minato-ku, Tokyo, Japan)および落射蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse E800)で観察した。画像を、NIS Element software(Version 3.6, Nikon, Tokyo, Japan)を使用して記録した。RAD51の病巣の定量化を、Fiji-ImageJ software (NIH, Bethesda, Maryland, USA)由来のプログラムで処理した。
【0173】
結果
DU145前立腺がん細胞株を使用して、B-2の存在下または非存在下でのシスプラチン処置後のRAD51の病巣のレベルを評価した。
【0174】
シスプラチン単独での処置は、高レベルのRAD51の病巣を誘導するが、このレベルは、処置がB-220μMと関連する場合は、減少する。細胞あたりのRAD51の病巣の数の定量化の後、20超のRAD51の病巣を含む細胞の数を決定した。
【0175】
図8のヒストグラムのグラフから、シスプラチン30μMが媒介するRAD51の病巣のレベルが、B-2によって減少する(約20%)ことが確認される。この結果は、B-2が、シスプラチンが媒介するDNA損傷後のRAD51病巣形成を減少できることを示している。