(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178439
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】望ましくないRNA種の消去
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241217BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241217BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241217BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
C12N9/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024168445
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2021516607の分割
【原出願日】2019-09-19
(31)【優先権主張番号】62/736,006
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514000473
【氏名又は名称】キアゲン サイエンシーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】エリック レーダー
(72)【発明者】
【氏名】ニルス トルストロプ
(72)【発明者】
【氏名】ヨール クロムヘウア
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ワイ. キム
(72)【発明者】
【氏名】サシャ シュトラウス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】逆転写の間の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するための方法およびキットを提供する。
【解決手段】ロックド核酸(LNA)を含むものなどのブロッキングオリゴヌクレオチドを使用する。別の態様では、望ましくないRNA種の複数の領域に相補的である(好ましくは完全に相補的である)ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットであって、各ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域へのその結合を増大させる、1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含む、セットを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する表明
本出願に付随する配列表は、紙コピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、ここに参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、830109_416WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは97.5KBであり、2019年9月15日に作成され、EFS-Webを通して電子的に提出されている。
【0002】
背景
本開示は、特にトランスクリプトームシークエンシングライブラリーを構築するための、RNA試料から望ましくないRNA種を消去するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
トランスクリプトームシークエンシングのために構築されるライブラリーは、シークエンシング予算の大半を取り上げ、RNAシークエンシングを極めて非効率にする、大量の望ましくない種(例えば、細胞質リボソームRNA、ミトコンドリアリボソームRNAおよびグロビンmRNA)で構成される。rRNAだけで、試料で見出されるRNAの80%より多くを構成する。その結果、次世代シークエンシング(NGS)ライブラリーからmRNAを富化するかまたは望ましくないRNAを消去するために、様々な方法が開発されている。例えば、ポリ(A)RNAは、RNA試料から単離される。有効であるが、この手順は面倒であり、長い非コードRNAまたはポリAテールが欠如している他のRNAの特徴付けを可能にしない。さらに、それはFFPE試料などの、かなり傷害を受けた試料に不適当である。他の方法は、NGSライブラリー構築の前にRNA試料中の望ましくないRNAをハイブリダイズするために、アンチセンスDNAまたはRNAのプローブを使用する。ハイブリダイゼーションの後、一手法では、試料を二本鎖RNA特異的酵素(RNアーゼH)で消化し、このようにしてRNAプローブおよび望ましくないRNAを除去する。しかし、この方法はあまり効率的でなく、技術的不確実性に満ちている。代わりの手法ではプローブはビオチン化プローブであり、プローブ/標的RNA分子をストレプトアビジンでコーティングされたビーズまたは表面に捕捉することによって、望ましくないRNAが試料から選択的に除去されることを可能にする。しかし、この方法は時間がかかり、高コストであり、若干有効なだけである。さらに、ビーズの結合および洗浄は困難であり、非特異的結合および捕捉のために通常かなりの試料喪失をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、RNA試料から望ましくないRNA種を消去するための方法、ブロッキングオリゴヌクレオチド、組成物およびキットを提供する。
【0005】
一態様では、本開示は、逆転写の間に、RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するための方法であって:
(a)1つまたは複数の所望のRNA種および1つまたは複数の望ましくないRNA種を含むRNA試料を提供するステップ、
(b)1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドをRNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域にアニールさせて鋳型混合物を生成するステップであって、
1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域に相補的であり、それに安定して結合し、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドの伸長を防ぐ3’改変を含む、ステップ、および
(c)鋳型混合物を:
(i)少なくとも1つの逆転写酵素、
(ii)1つまたは複数の逆転写プライマー、および
(iii)反応緩衝液
を含む反応混合物と一緒に、1つまたは複数の所望のRNA種を鋳型として使用してcDNA分子を合成するのに十分な条件の下でインキュベートするステップであって、1つまたは複数の望ましくないRNA種を使用したcDNA合成は阻害される、ステップ、を含む方法を提供する。
【0006】
別の態様では、本開示は、望ましくないRNA種の複数の領域に相補的である(好ましくは完全に相補的である)ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットであって、各ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域へのその結合を増大させる、1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含む、セットを提供する。
【0007】
関連する態様では、本開示は、ブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットを提供する。
【0008】
別の態様では、本開示は、RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するキットであって:
(1)(a)RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域に相補的である1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドであって、各々は、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドと1つまたは複数の望ましくないRNA種の領域の間の結合を増大させる1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含む、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチド、または
(b)本明細書で提供されるブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットのセット、および
(2)逆転写酵素
を含むキットを提供する。
【0009】
別の態様では、本開示は、逆転写の間に、RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するためのブロッキングオリゴヌクレオチドを設計するための方法であって:
(a)1つまたは複数の望ましくないRNA種の領域に相補的な複数のブロッキングオリゴヌクレオチドを生成するステップ、
(b)許容されないブロッキングオリゴヌクレオチドをフィルタリングするステップ、
(c)1つまたは複数の望ましくないRNA種の複数の異なる領域に相補的であるブロッキングオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の群を生成するステップ、および
(d)必要に応じて群の間でブロッキングオリゴヌクレオチドをシャッフルしてブロッキングオリゴヌクレオチドの新しい群を生成し、ブロッキングオリゴヌクレオチドの新しい群の1つまたは複数を選択するステップ
を含む方法を提供する。
【0010】
別の態様では、本開示は、RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害することにおける、請求項28から43のいずれかのキットまたはその構成要素(1)の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例2による望ましくないRNA種の消去における、Ribo-Zero rRNA Removalキット(Illumina)の使用とブロッキングオリゴヌクレオチド(ブロッカーB1からB193)の使用の間で非rRNA遺伝子の相対的な遺伝子発現を比較する散布図である。
【0012】
【
図2】
図2は、実施例2による望ましくないRNA種の消去における、ブロッキングオリゴヌクレオチド(ブロッカーB1からB193)の使用とポリA選択の間で非rRNA遺伝子の相対的な遺伝子発現を比較する散布図である。
【0013】
【
図3】
図3は、実施例2による望ましくないRNA種の消去における、Ribo-Zero rRNA Removalキット(Illumina)の使用とポリAの使用の間で非rRNA遺伝子の相対的な遺伝子発現を比較する散布図である。
【0014】
【
図4】
図4は、実施例2による望ましくないRNA種の消去におけるRibo-Zero rRNA Removalキット(Illumina)の使用と消去なしの間で非rRNA遺伝子の相対的な遺伝子発現を比較する散布図である。
【0015】
【
図5】
図5は、実施例2による望ましくないRNA種の消去におけるブロッキングオリゴヌクレオチド(ブロッカーB1からB193)の使用と消去なしの間で非rRNA遺伝子の相対的な遺伝子発現を比較する散布図である。
【0016】
【
図6】
図6は、実施例4に記載のブロッカーを設計するための例示的なアルゴリズムを記載する。
【0017】
【
図7】
図7は、実施例4に記載されるブロッカーの数とブロッカーによってカバーされる標的5S rRNAの割合の間の関係を示すグラフである。
【0018】
【
図8】
図8は、実施例4に記載されるブロッカーの数とブロッカーによってカバーされる標的16S rRNAの割合の間の関係を示すグラフである。
【0019】
【
図9】
図9は、実施例4に記載されるブロッカーの数とブロッカーによってカバーされる標的23S rRNAの割合の間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、RNA試料から望ましくないRNA種を消去するための方法、ブロッキングオリゴヌクレオチド、組成物およびキットを提供する。生じる消去されたRNA試料は様々な下流の適用のために、特にトランスクリプトームシークエンシングライブラリーを構築するために有益である。
【0021】
本明細書で提供される方法は、逆転写の間に望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するために、望ましくないRNA種の領域に相補的なブロッキングオリゴヌクレオチド(例えば、ロックド核酸(LNA)強化アンチセンスオリゴヌクレオチド)を使用する。
【0022】
同様に、指定された位置で望ましくないRNA(例えば、細胞質およびミトコンドリアのrRNA、グロビンmRNA)に沿って、敷き詰められたブロッキングオリゴヌクレオチド(例えば、LNA強化アンチセンスオリゴヌクレオチド)を設計するための方法も開示される。一般的に使用される逆転写温度で望ましくないRNAへのアンチセンスオリゴヌクレオチドの持続的な結合を促進するために、LNA塩基はオリゴヌクレオチドに配置される。
【0023】
本明細書で提供される望ましくないRNA種を消去する方法は、既存の方法と比較して以下の利点の1つまたは複数を有する:(1)本方法による望ましくないRNA消失はNGSライブラリー構築の前というよりはその間に起こるので、それらはより速く、より少ない工程をとる;(2)本方法は、係留されたオリゴ(dT)プライムドライブラリーだけでなく、ランダムな6merプライムドライブラリーと使用することもできる;(3)本方法は、(オリゴ(dT)を使用してポリ(A)含有RNAだけを富化することと対照的に)いかなる望ましくないRNAも消去するために使用することができる;(4)本方法は、(オリゴ(dT)を使用したポリ(A)mRNA富化と対照的に)試料の残りのRNAプロファイルを有意に変化させない;(5)本方法は、望ましくないRNAを消去することにおいて既存の方法よりも有効であるかまたは少なくともそれと同じくらい有効である;および(6)本方法は、より少ない試料喪失(例えば、ビオチン標識アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズを使用したrRNA除去と比較して)を引き起こす。
【0024】
以下の記載では、本明細書で提供されるいかなる範囲も、その範囲内の全ての値を含む。用語「または」は、内容が別途指図しない限り、「および/または」(すなわち、代替物のいずれか1つ、両方またはその任意の組合せを意味する)を含むその意味で一般的に用いられる点に注意すべきである。さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、内容が別途指図しない限り、単数形「a」、「an」および「the」には複数形が含まれる。用語、「含む(include)」、「有する」、「含む(comprise)」
およびそれらの変異体は同義的に使用され、非限定的であると解釈すべきである。用語「約」は、参照値の±10%を指す。例えば、「約50℃」は「50℃±5℃」(すなわち、50℃±50℃の10%)を指す。
【0025】
A.望ましくないRNA種を消去する方法
一態様では、本開示は、逆転写の間に、RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するための方法であって:
(a)1つまたは複数の所望のRNA種および1つまたは複数の望ましくないRNA種を含むRNA試料を提供するステップ、
(b)1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドをRNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域にアニールさせて鋳型混合物を生成するステップであって、
1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域に相補的であり、それに安定して結合し、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドの伸長を防ぐ3’改変を含む、ステップ、および
(c)鋳型混合物を:
(i)少なくとも1つの逆転写酵素、
(ii)1つまたは複数の逆転写プライマー、および
(iii)反応緩衝液
を含む反応混合物と一緒に、1つまたは複数の所望のRNA種を鋳型として使用してcDNA分子を合成するのに十分な条件の下でインキュベートするステップであって、1つまたは複数の望ましくないRNA種を使用したcDNA合成は阻害される、ステップ
を含む方法を提供する。
【0026】
1.cDNA合成を阻害すること
RNA種のcDNA合成は、逆転写の間にRNA種を鋳型として使用して生成される一本鎖または二本鎖のcDNAの量が、参照条件の下で(例えば、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドの不在下で)逆転写の間に生成される一本鎖または二本鎖cDNAの量と比較して、改変された条件の下で(例えば、RNA種の1つまたは複数の領域に相補的な1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドの存在下で)統計的に有意な程度で低減される場合、阻害される。
【0027】
合成されたcDNAの量の低減は、本明細書で提供される実施例で開示されるqPCRまたはトランスクリプトームシークエンシングを使用して測定することができ、当業者に公知である他の技術(例えば、DNAマイクロアレイ)を含むこともできる。
【0028】
RNA種のcDNA合成の阻害は、RNA種の消去、またはRNA種を消去することと呼ぶことができる。RNA種が最初のRNA試料から物理的に除去されなくても、最初のRNA試料の下流での操作または分析におけるRNA種の関与は、RNA種のcDNA合成の阻害のために低減または排除される。
【0029】
2.望ましくないRNA種
用語「望ましくないRNA種」、「望ましくないRNA」または「望ましくないRNA分子」は、RNA組成物の所与の下流の操作または分析のために最初のRNA組成物で望ましくないRNA種または分子を指す。そのようなRNA種または分子は、下流の操作または分析の標的でなく、それらに干渉することがある。
【0030】
望ましくないRNAは、最初のRNA組成物に存在する任意の望ましくないRNAであってよい。望ましくないRNAは、ブロッキングオリゴヌクレオチドの配列特異的設計を可能にするために、それがその配列により目的の残りのRNA集団から識別可能な限り、任意の配列を含むことができる。
【0031】
一実施形態により、望ましくないRNAは、rRNA、tRNA、snRNA、snoRNAおよび豊富なタンパク質mRNAからなる群の中の1つまたは複数から選択される。
【0032】
真核生物の試料を加工する場合、望ましくないRNAは、好ましくは28S rRNA、18S rRNA、5.8S rRNA、5S rRNA、ミトコンドリアの12S rRNAおよびミトコンドリアの16S rRNAから選択される真核生物のrRNAであってよい。好ましくは、前記のrRNAタイプの少なくとも2つ、少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つが消去され、ここで、好ましくは18S rRNAおよび28S rRNAが消去されるべきrRNAの中にある。一実施形態により、前記のrRNAタイプの全てが消去される。さらに、28S rRNAおよび18S rRNAに加えて、12Sおよび16Sの真核生物ミトコンドリアrRNA分子などの他の非コードrRNA種を消去するのも好ましい。植物試料からの全RNAを加工する場合、クロロプラストrRNAなどのプラスチドrRNAを消去することができる。
【0033】
ある特定の実施形態では、望ましくないRNAは、23S、16Sおよび5Sの原核生物rRNAからなる群より選択される、1つまたは複数である。これは、原核生物試料を加工する場合に特に実行可能である。好ましくは、全てのこれらのrRNAタイプは、それぞれのrRNAタイプに特異的であるブロッキングオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の群を使用して消去される。
【0034】
さらに、本開示の方法は、豊富なタンパク質コードmRNA種を特異的に消去するために使用することもできる。加工された試料によっては、試料に含まれるmRNAは、ある特定の豊富なmRNAタイプに主に対応することがある。例えば、血液試料のトランスクリプトームを分析すること、例えば配列決定することを意図する場合、試料に含まれるmRNAのほとんどはグロビンmRNAに対応する。しかし、多くの適用の場合、含まれるグロビンmRNAの配列は関心がなく、したがって、タンパク質をコードするmRNAであるが、グロビンmRNAは本出願にとって望ましくないRNAに相当する。追加の望ましくない豊富なタンパク質コードmRNAには、ACTB、B2M、GAPDH、GUSB、HPRT1、HSP90AB1、LDHA、NONO、PGK1、PPIH、RPLP0、TFRCまたは様々なミトコンドリア遺伝子を含めることができる。
【0035】
ある特定の実施形態では、下記のように、RNA試料は、複数の生物体からの核酸を含有する出発材料、例えば植物、動物および/もしくは細菌種を含有する環境試料、またはヒト細胞もしくは組織および1つまたは複数の細菌種を含有する臨床試料に由来すること(例えば、それから単離すること)ができる。そのような実施形態では、この方法が、複数の生物体からの特異的タイプのRNA種のcDNA合成を阻害すること(例えば、出発材料中の複数の細菌からの5S rRNAのcDNA合成を阻害すること)が可能であるように、望ましくないRNA種は、出発材料に存在する複数の生物体(例えば、複数の異なる細菌)からの特異的タイプのRNA種(例えば、5S rRNA)を包含するかまたはそれからなることができる。一部の他の実施形態では、この方法が、複数の生物体からの複数のタイプのRNA種のcDNA合成を阻害すること(例えば、出発材料中の複数の細菌からの5S rRNAのcDNA合成を阻害すること)が可能であるように、望ましくないRNA種は、出発材料に存在する複数の生物体(例えば、複数の異なる細菌)からの複数のタイプのRNA種(例えば、5S、16Sおよび23S rRNA)を包含するかまたはそれからなることができる。
【0036】
ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である異なる望ましくないRNA種の数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500、および/または多くとも1,000,000、多くとも500,000、多くとも100,000、多くとも50,000、多くとも10,000、多くとも9000、多くとも8000、多くとも7000、多くとも6000、多くとも5000、多くとも4000、多くとも3000、または多くとも2000、例えば、2から1,000,000、100から500,000、500から100,000、および1000から10,000である。
【0037】
3.RNA試料
上記の通り、本明細書に開示される逆転写の間にRNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するための方法のステップ(a)は、1つまたは複数の所望のRNA種および1つまたは複数の望ましくないRNA種を含むRNA試料を提供することである。
【0038】
用語「RNA試料」は、RNA含有試料を指す。好ましくは、RNA試料は、出発材料から単離されたRNAを含有する試料である。RNA試料は、出発材料から単離されたDNAをさらに含有することができる。一部の実施形態では、RNA試料は、出発材料から単離され、さらに断片化されたRNA分子を含有する。他の場合では、RNA試料は、特異的核酸単離なしで直接的に溶解された試料に由来する。
【0039】
本明細書で使用される用語「核酸」または「核酸(複数形)」は、一般的にサブユニット間のホスホジエステル結合によって共有結合するリボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドを含むポリマーを指す。核酸には、DNAおよびRNAが含まれる。DNAには、限定されずに、ゲノムDNA、線状DNA、環状DNA、プラスミドDNA、cDNAおよび遊離の循環DNA(例えば、腫瘍由来のまたは胎児のDNA)が含まれる。RNAには、限定されずに、hnRNA、mRNA、非コードRNA(ncRNA)および遊離の循環RNA(例えば、腫瘍由来のRNA)が含まれる。非コードRNAには、限定されずに、rRNA、tRNA、lncRNA(長い非コードRNA)、lincRNA(長い遺伝子間非コードRNA)、miRNA(マイクロRNA)およびsiRNA(小さい干渉RNA)が含まれる。
RNA試料が生成される出発材料は、RNA分子を含む任意の材料であってよい。出発材料は、細胞試料、環境試料、体から得られる試料、特に体液試料、およびヒト、動物または植物組織試料などの生体試料または材料であってよい。具体的な例には、限定されずに、肝臓、脾臓、腎臓、肺、腸、脳、心臓、筋肉、すい臓、細胞培養物からの試料を限定されずに含む、全血、血液製剤、血漿、血清、赤血球、白血球、バフィーコート、尿、痰、唾液、精液、リンパ液、羊水、脳脊髄液、腹膜滲出液、胸水、嚢胞からの流体、滑液、硝子体液、房水、ブルサ液(bursafluid)、目洗浄液、目吸引物、肺洗浄液、骨髄吸引物、肺吸引物、生検試料、スワブ試料、動物(ヒトを含む)または植物組織、ならびに上記の試料から得られる溶解物、抽出物または材料および画分、または試料の上もしくは中に存在するかもしれない任意の細胞および微生物およびウイルスなどが含まれる。
【0040】
RNAを含有する臨床または法医学場面から得られる材料も、出発材料の意図された意味の範囲におよぶ。好ましくは、出発材料は、真核生物または原核生物、好ましくはヒト、動物、植物、細菌または真菌類に由来する生体試料である。好ましくは、出発材料は、細胞、組織、腫瘍細胞、細菌、ウイルスおよび体液、例えば血液、血液製剤(例えば、バフィーコート、血漿および血清)、尿、体液(liquor)、痰、大便、CSFおよび精液、上皮スワブ、生検、骨髄試料および組織試料、好ましくは器官組織試料、例えば肺、腎臓または肝臓からなる群より選択される。
【0041】
出発材料には、保存、固定および/または安定化された試料などの加工された試料も含まれる。そのような試料の非限定的な例には、保存された、例えばホルマリン固定およびパラフィン包埋された細胞含有試料(FFPE試料)、または架橋もしくは非架橋固定剤(例えば、グルタルアルデヒド)もしくはPAXgene Tissueシステムで処理された他の試料が含まれる。例えば、FFPEによって外科的手順の後に腫瘍生検試料が慣例的に保存され、それはRNAの完全性を損なうことがあり、特に含まれるRNAを分解することがある。したがって、RNA試料は、改変または分解されたRNAからなるかまたはそれを含むことができる。改変または分解は、例えば、保存剤による処理によることがある。
【0042】
核酸は、RNA試料を提供するために、当技術分野で公知の方法によって出発材料から単離することができる。RNA試料は、DNAおよびRNAの両方を含有することができる。ある特定の実施形態では、出発材料中のDNAは除去または分解されているので、RNA試料はRNAを主に含有する。RNA試料中のRNAは、出発材料から単離された全RNAであってよい。あるいは、RNA試料中のRNAは、出発材料から単離された全RNAの画分(例えば、大部分はmRNAを含有する画分)であってよく、ここでは、ある特定のRNA種(例えば、ポリ(A)テールのないRNA)が消去または除去されている。
【0043】
上で開示される通り、RNA試料は、出発材料から単離され、さらに断片化されたRNA分子を含有することができる。単離されたRNAなどの核酸を断片化することは、物理的、酵素的または化学的に実行することができる。物理的断片化には、音響せん断、超音波処理および流体力学的せん断が含まれる。酵素的断片化は、5’リン酸および3’ヒドロキシル基を有する小さい断片にRNAを切断するエンドヌクレアーゼ(例えば、RNアーゼIII)を使用することができる。化学的断片化には、熱および二価金属カチオン(例えば、マグネシウムまたは亜鉛)が含まれる。
【0044】
同様に、上で開示されている通り、ある特定の実施形態では、RNA試料は、特異的核酸単離が実行されていない粗製の溶解物に由来する。
【0045】
4.所望のRNA種
望ましくないRNAに加えて、RNA試料は、1つまたは複数の所望のRNA種も含有する。所望のRNA種は、その特徴(例えば、発現レベルまたは配列)に関心がある、任意のRNA種または分子であってよい。ある特定の実施形態では、所望のRNA種は、mRNA、好ましくはその発現レベルの変化(参照発現レベルと比較して)、またはその配列の変化(野生型配列と比較して)が疾患もしくは障害と、または疾患もしくは障害の処置への応答と関連するものを含む。
【0046】
5.ブロッキングオリゴヌクレオチド
本明細書で使用される用語「ブロッキングオリゴヌクレオチド」は、望ましくないRNA種の領域に相補的であり、それに安定して結合することが可能であるオリゴヌクレオチドを指す。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域を「標的にする」と記載することができる。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、その3’末端の改変(すなわち、「3’改変」)のために伸長させることができない。その結果として、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、逆転写の間に望ましくないRNA種の領域を鋳型として使用して、cDNA合成を阻害することができる。
【0047】
RNA種を含むRNA試料の逆転写の間に、オリゴヌクレオチドがRNA種の領域にアニールし、RNA種の領域に結合したままであるならば、オリゴヌクレオチドはRNA種の領域に安定して結合することが可能である。
【0048】
好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、同じ配列を有するがいかなる改変されたヌクレオチドもないオリゴヌクレオチドと比較して、オリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種の領域の間の結合を増大させる、1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含有する。ある特定の他の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、上記の改変されたヌクレオチドのいずれも含有しないが、逆転写の間に望ましくないRNA種の領域に安定して結合することができるほど十分に長い。
【0049】
ブロッキングオリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種の領域の間の結合を増大させる1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含有する実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域は、長さが少なくとも10ヌクレオチド、例えば長さが少なくとも11、12、13、14、15、16、17または18ヌクレオチドであってよい。そのような領域は、長さが多くとも100ヌクレオチド、例えば長さが多くとも90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、24、23、22、21または20ヌクレオチドであってよい。ある特定の実施形態では、領域は、長さが10~100ヌクレオチド、例えば長さが15~80、20~60、25~40、10~30、16~24または18~22ヌクレオチドであってよい。
【0050】
ブロッキングオリゴヌクレオチドがオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種の領域の間の結合を増大させるいかなる改変されたヌクレオチドも含有しない実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域は、長さが少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40ヌクレオチドであってよい。そのような領域は、長さが多くとも100ヌクレオチド、例えば長さが多くとも90、80、70、60または50ヌクレオチドであってよい。ある特定の実施形態では、領域は、長さが20~100ヌクレオチド、例えば長さが25~90、25~80、25~70、25~60、25~50、25~40、25~30、30~90、30~80、30~70、30~60、30~50、30~40、35~90、35~80、35~70、35~60、35~50、35~40、40~90、40~80、40~70、40~60または40~50ヌクレオチドであってよい。
【0051】
上で開示されるように、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域に相補的である。オリゴヌクレオチド中のヌクレオチドの少なくとも80%、例えば少なくとも85%、少なくとも90%または好ましくは少なくとも95%が望ましくないRNA種の領域に相補的である場合、オリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域に相補的である。ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域と1つまたは複数の(例えば、多くとも6、多くとも5、多くとも4、多くとも3、多くとも2またはわずか1つの)ヌクレオチドミスマッチを含む。好ましくは、ミスマッチは、オリゴヌクレオチドの5’末端またはその近く(例えば、そこから最初の10ヌクレオチド以内、例えば最初の5ヌクレオチド以内)にある。例えば、5’-GACAAACCCTTGTGTCGAG-3’(配列番号15)の配列を有するブロッキングオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’末端の「G」と望ましくないRNA種の領域の3’末端の「G」の間にミスマッチがあるとしても、望ましくないRNA種の3’-GTCGACACAAGGGTTTGTC-5’(配列番号508)の領域に相補的である。ある特定の他の実施形態では、望ましくないRNA種の領域の完全に相補的な配列と比較したとき、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のヌクレオチド挿入(例えば、多くとも6、多くとも5、多くとも4、多くとも3、多くとも2またはわずか1つのヌクレオチドを有する挿入)を含むことができる。例えば、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域の2つの連続したセクションにそれぞれ完全に相補的であるが、1つまたは複数のヌクレオチドによって分離される2つのセグメントを含むことができる。
【0052】
好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の領域に完全に相補的である。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの各ヌクレオチドが望ましくないRNA種の領域の対応位置のヌクレオチドに相補的である場合、望ましくないRNA種の領域に完全に相補的である。例えば、5’-GACAAACCCTTGTGTCGAG-3’(配列番号15)の配列を有するオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の3’-CTCGACACAAGGGTTTGTC-5’(配列番号509)の領域に完全に相補的である。
【0053】
同様に上で開示されるように、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、逆転写の間にオリゴヌクレオチドの伸長を防ぐ3’改変を有する。3’改変はオリゴヌクレオチドの3’-OHを別の基(例えば、リン酸基)で置き換え、それは、生じるオリゴヌクレオチドが逆転写の間に逆転写酵素によって伸長することを不可能にする。そのような改変を含有するオリゴヌクレオチドの伸長を防ぐ3’改変には、限定されずに、3’ddC(ジデオキシシチジン)、3’インバーテッドdT、3’C3スペーサー、3’Amino Modifier(3AmMo)および3’リン酸化が含まれる。3’改変のいくつかは、例えばIntegrated DNA Technologiesから市販されている。
【0054】
a.結合を増大させるために改変されたヌクレオチドを有するブロッキングオリゴヌクレオチド
上で開示されるように、好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、同じ配列を有するがいかなる改変されたヌクレオチドも有さないオリゴヌクレオチドと比較して、ブロッキングオリゴヌクレオチドとブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域の間の結合を増大させる、1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含む。
【0055】
改変されたヌクレオチドは、各々リン酸基、5炭糖(すなわち、デオキシリボースまたはリボース)、ならびにアデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウリジンから選択される窒素塩基を含む天然に存在するヌクレオチド以外のヌクレオチドである。
【0056】
改変されたヌクレオチドは、それが、同じ条件(例えば、20mM KCl)の下で測定した、同じ配列を有するがいかなる改変されたヌクレオチドも有さないオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種の領域の間で形成される二重鎖の融点と比較して、改変されたヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種の領域の間で形成される二重鎖の融点を上昇させる場合、同じ配列を有するがいかなる改変されたヌクレオチドも有さないオリゴヌクレオチドと比較して、オリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種の領域の間の結合を増大させる。
【0057】
本開示で使用されるオリゴヌクレオチドの融点(Tm)は、115mM KClにおいてオリゴヌクレオチドの50%がその完全な相補体と二重鎖になり、50%が遊離している温度である。Tmは、その相補体によるオリゴヌクレオチドの吸光度変化を温度の関数として測定する(すなわち、融解曲線を生成する)ことによって決定される。Tmは、融解曲線中の二本鎖DNAおよび一本鎖DNAのプラトーの間の半分の読取り値である。
【0058】
そのようなヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドのTmを上昇させることが可能な例示的なヌクレオチドには、限定されずに、2’-O-メチルリボース、5-ヒドロキシブチニル-2’-デオキシウリジン(Integrated DNA Technologies)、2-アミノ-2’デオキシアデノシン(IBA Lifesciences)、5-メチル-2’デオキシシチジン(IBA Lifesciences)、またはロックド核酸(LNA)を含むヌクレオチドが含まれる。
【0059】
好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のLNAを含む。LNAは、改変されたRNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’酸素および4’炭素を接続する追加の架橋で改変される。架橋は3’-エンド(北)コンフォメーションでリボースを「ロック」し、それはA形二重鎖でしばしば見出される。LNAヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドのDNAまたはRNA残基と混ぜ合わせることができ、ワトソンクリック塩基対合則によってDNAまたはRNAとハイブリダイズすることができる。ロックされたリボースコンフォメーションは、塩基スタッキングおよび骨格前組織化を増強する。これは、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性(融点)を有意に上昇させる(例えば、Kauret al., Biochemistry 45(23):7347-55, 2006;Owczarzy et al.,Biochemistry50(43):9352-67, 2011を参照)。オリゴヌクレオチドに組み込まれる場合、二重鎖の融点の上昇は、LNAヌクレオチド1つあたり2~8℃であってよい。1つまたは複数のLNAヌクレオチドを含むDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドは、「LNAオリゴヌクレオチド」と呼ばれる。そのようなオリゴヌクレオチドは、従来のホスホアミダイト化学によって合成することができ、市販されてもいる(例えば、Exiqonから)。
【0060】
追加のブロッキングオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAに類似しているがペプチド結合によって連結される反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位で構成される骨格を有する合成ポリマーである、ペプチド核酸オリゴマーであってよい。ペプチド核酸オリゴマーでは、様々なプリンおよびピリミジン塩基がメチレン架橋(-CH2-)およびカルボニル基(-(C=O)-)によって骨格に連結される。
【0061】
ブロッキングオリゴヌクレオチド中の改変されたヌクレオチド(例えば、LNA)の数は、3~30、好ましくは4~16、より好ましくは3~15の範囲におよぶ。
【0062】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの長さは、少なくとも10ヌクレオチドの長さ、例えば少なくとも11、12、13、14、15、16、17または18ヌクレオチドの長さであってよい。それらは、長さが多くとも100ヌクレオチド、例えば長さが多くとも100ヌクレオチド、例えば長さが多くとも90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、24、23、22、21または20ヌクレオチドであってよい。ある特定の実施形態では、長さは、10~100ヌクレオチド、例えば15~80、20~60、25~40、10~30、16~24または18~22ヌクレオチドであってよい。
【0063】
ブロッキングオリゴヌクレオチドとブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域の間で形成される二重鎖の融点は、115mM KClで測定したとき、80から96℃、82から94℃、または好ましくは86から92℃の範囲におよぶ。
【0064】
b.結合を増大させるための改変されたヌクレオチドのないブロッキングオリゴヌクレオチド
上で開示されるように、ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、ブロッキングオリゴヌクレオチドとブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域の間の結合を増大させるいかなる改変されたヌクレオチドも含まないが、逆転写の間に望ましくないRNA種の領域に安定して結合することができるほど十分に長い。
【0065】
上記の改変されたヌクレオチドのないブロッキングオリゴヌクレオチドの長さは、少なくとも20ヌクレオチドの長さ、例えば少なくとも25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35ヌクレオチドの長さであってよい。それらは多くとも100ヌクレオチド、例えば多くとも90、80、70、60、50、45または40ヌクレオチドの長さであってよい。ある特定の実施形態では、長さは、25~100ヌクレオチド、例えば、30~80、30~70、30~60、30~50、30~45、30~40、35~80、35~70、35~60、35~50、35~45、40~80、40~70、40~60、40~50または40~45ヌクレオチドであってよい。
【0066】
ブロッキングオリゴヌクレオチドとブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域の間で形成される二重鎖の融点は、115mM KClで測定したとき、80から96℃、82から94℃、または好ましくは86から92℃の範囲におよぶ。
【0067】
c.複数のブロッキングオリゴヌクレオチド
本明細書に開示される方法で使用されるブロッキングオリゴヌクレオチドの数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1500または少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000または少なくとも10,000、および/または多くとも100,000、多くとも90,000、多くとも80,000、多くとも70,000、多くとも60,000、または多くとも50,000、例えば2から100,000、100から80,000、または800から50,000であってよい。
【0068】
ある特定の実施形態では、2つまたはそれより多くのブロッキングオリゴヌクレオチドが、単一の望ましくないRNA種の複数の異なる領域(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9または少なくとも10)に相補的である。ある特定の他の実施形態では、2つまたはそれより多くのブロッキングオリゴヌクレオチドが、複数の望ましくないRNA種(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9または少なくとも10の望ましくないRNA種)の複数の異なる領域(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9または少なくとも10の異なる領域)に相補的である。
【0069】
複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが1つまたは複数の望ましくないRNA種の複数の異なる領域に相補的である、ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である1つまたは複数の望ましくないRNA種の2つの近隣領域の間の距離は、0から100ヌクレオチド、例えば0から75ヌクレオチド、0から50ヌクレオチド、20から100ヌクレオチド、20から75ヌクレオチド、20から50ヌクレオチド、30から100ヌクレオチド、30から75ヌクレオチド、30から50ヌクレオチドまたは30から45ヌクレオチドの範囲におよんでもよい。
【0070】
ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、単一の望ましくないRNA種(例えば、E.coli 5SのrRNA)のcDNA合成を阻害するためのブロッキングオリゴヌクレオチドのセットを含むかまたはそれからなる。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の複数の異なる(好ましくは、下の他のセクションに詳細に記載されているように等間隔の)領域に相補的である。
【0071】
ある特定の他の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドは、複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するためのブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットを含むかまたはそれからなる。ブロッキングオリゴヌクレオチドの各セットは、前記のように望ましくないRNA種の複数の異なる(好ましくは、等間隔の)領域に相補的であり、ブロッキングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、異なる望ましくないRNA種の等間隔の領域に相補的である。
【0072】
ブロッキングオリゴヌクレオチドは、本明細書で「ブロッカー」、「ブロッキングアンチセンスオリゴヌクレオチド」などと呼ぶこともできる。
【0073】
本開示による方法でヒト18S rRNAを消去することで使用することができる例示的なブロッキングオリゴヌクレオチド(ブロッカーB1~B193)は、実施例に記載される。細菌の5S、16Sおよび23S rRNAをそれぞれ消去することで使用することができる例示的なブロッキングオリゴヌクレオチド(ブロッカー5S1~5S100、ブロッカー16S1~16S100、ブロッカー23S1~23S100)は、実施例4に記載される。
【0074】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの追加の記載が、下の本開示のセクションB、CおよびDに提供される。
【0075】
6.望ましくないRNAにブロッキングオリゴヌクレオチドをアニールすること
上に開示の通り、本明細書に開示される逆転写の間にRNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するための方法のステップ(b)は、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドをRNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域にアニールさせて鋳型混合物を生成することである。
【0076】
このステップは、ブロッキングオリゴヌクレオチドがRNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域にアニールするのに適当な条件の下で、RNA試料を1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドと混合することによって実行することができる。生じた混合物は、「アニーリング混合物」と本明細書で呼ばれる。
【0077】
一般的に、アニーリング混合物は、RNA試料中のRNA分子が変性するように、高温(例えば、約65℃、約70℃、75℃、80℃、85℃、90℃もしくは95℃、または少なくとも65℃、少なくとも70℃、好ましくは少なくとも75℃)に十分な時間(例えば、少なくとも約30秒間、例えば少なくとも1分間または少なくとも2分間)先ず加熱され、その後、より低い温度(例えば、40℃またはそれより低い温度、例えば、25℃またはそれより低い温度、室温またはそれより低い温度(22℃~25℃)、または4℃)に冷却される。
【0078】
冷却プロセスは様々な方法で、例えば規定の時間、規定のレベルで温度を徐々に下げることで、または室温に自然に冷却させることで実行することができる。例示的な冷却プロセスには、限定されずに以下のものが含まれる:
プロセス1
温度 時間
75℃ 2分間
70℃ 2分間
65℃ 2分間
60℃ 2分間
55℃ 2分間
37℃ 5分間
25℃ 5分間
4℃ 保持
プロセス2
温度 時間
90℃ 30秒間
85℃ 2分間
80℃ 2分間
75℃ 2分間
70℃ 2分間
65℃ 2分間
60℃ 2分間
55℃ 2分間
37℃ 5分間
プロセス3
温度 時間
90℃ 2分間
サーモサイクラーをオフにして、室温に自然冷却させる
プロセス4
温度 時間
89℃ 8分間
75℃ 2分間
70℃ 2分間
65℃ 2分間
60℃ 2分間
55℃ 2分間
37℃ 2分間
25℃ 2分間
【0079】
アニーリング混合物中の1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドの量は、ブロッキングオリゴヌクレオチドにつき約0.1pmolから約50pmol、例えばブロッキングオリゴヌクレオチドにつき約0.5pmolから約20pmol、約0.5pmolから約10pmol、約1pmolから約20pmol、約1pmolから約10pmol、約1.5pmolから約10pmol、約1.5pmolから約8pmol、または2pmolから約7pmolであってよい。
【0080】
好ましくは、異なるブロッキングオリゴヌクレオチドの各々のほぼ同じ量がアニール混合物中に存在する。ある特定の実施形態では、異なるブロッキングオリゴヌクレオチドの量は異なる。例えば、最も高い量を有するブロッキングオリゴヌクレオチドの、最も低い量を有するものに対するモル比は、約10から約1.1、約5から約1.1または約2から約1.1であってよい。
【0081】
アニーリング混合物からのRNAの量は、約1pgから約5000ng、例えば約5pgから約5000ng、約10pgから約5000ng、約100pgから約5000ng、約1ngから約5000ng、約5ngから約5000ng、約10ngから約5000ng、約100ngから約5000ng、約5pgから約3000ng、約10pgから約3000ng、約100pgから約3000ng、約1ngから約3000ng、約5ngから約3000ng、約10ngから約3000ng、約100ngから約3000ng、約5pgから約1000ng、約10pgから約1000ng、約100pgから約1000ng、約1ngから約1000ng、約5ngから約1000ng、約10ngから約1000ng、約100ngから約1000ng、または約25ngから約500ngの範囲におよんでもよい。RNAの量は、少なくとも約1pg、約5pg、約10pg、約50pg、約100pg、約500pg、約1ng、約5ng、約10ng、約50ngもしくは約100ng、および/または多くとも約500ng、約1000ng、約3000ngもしくは約5000ngであってよい。
【0082】
アニーリング混合物は、望ましくないRNA種へのブロッキングオリゴヌクレオチドのアニーリングを増加させるために、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドおよびRNA試料に加えて、1つまたは複数の一価のカチオン(例えば、Na+およびK+)を含有することができる。アニーリング混合物中の一価の濃度は、5mMから50mM、例えば10mMから30mMまたは15mMから25mMの範囲におよぶ。
【0083】
好ましくは、アニーリング混合物は、10mM~30mM、例えば15mM~25mMの濃度のNaClまたはKClを含有する。
【0084】
アニーリング混合物は、pHが5から9の範囲内の緩衝液、例えば20~50nMのホスフェートを含有する緩衝液pH6.5~7.5を必要に応じて含むことができる。
【0085】
アニーリングプロセスが実行されると、アニーリング混合物は「鋳型混合物」と呼ぶことができ、それは以降のcDNA合成のための鋳型として使用される。ある特定の実施形態では、cDNA合成のための鋳型として使用する前に、アニーリング混合物は浄化することができる。例えば、浄化は、アニーリング混合物を固体支持体と混合し、それに結合した核酸を有する固体支持体を液相から分離し、必要に応じて固体支持体を洗浄し、核酸を固体支持体から溶出させることによって、核酸(例えば、RNA)に結合する固体支持体を使用して実行することができる。この混合、分離、必要に応じた洗浄および溶出プロセスは、一度(すなわち、2回の浄化)、二度(すなわち、3回の浄化)またはより多くの回数繰り返すことができる。例示的な固体支持体には、下記の実施例で使用される、QIAseqビーズが含まれる。
【0086】
7.逆転写
上記の通り、本明細書に開示される逆転写の間にRNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するための方法のステップ(c)は、上記のように生成された鋳型混合物を、(i)少なくとも1つの逆転写酵素、(ii)1つまたは複数の逆転写プライマー、および(iii)逆転写緩衝液を含む反応混合物と、1つまたは複数の所望のRNA種を鋳型として使用してcDNA分子を合成するのに十分な条件の下でインキュベートすることである。1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドは1つまたは複数の望ましくないRNA種にアニールするので、そのような望ましくないRNA種の転写は阻害される。
【0087】
8.逆転写酵素
用語「逆転写酵素」は、RNA鋳型を使用して相補的DNA(cDNA)鎖を合成することが可能なRNA依存性DNAポリメラーゼを指す。ステップ(c)で有益な逆転写酵素は、AMV逆転写酵素、RSV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素、HIV逆転写酵素、EIAV逆転写酵素、RAV逆転写酵素、TTH DNAポリメラーゼ、C.hydrogenoformans DNAポリメラーゼ、Superscript(登録商標)I逆転写酵素、Superscript(登録商標)II逆転写酵素、Thermoscript(商標)RT MMLV、ASLVおよびそのRNアーゼH変異体、または上記の酵素のいくつかの混合物を非限定的に含む、1つまたは複数のウイルス逆転写酵素であってよい。好ましくは、逆転写酵素はEnzScript(商標)M-MLV逆転写酵素RNA H-(Enzymatics)であり、それは、野生型M-MLV逆転写酵素にとって天然の測定可能なRNアーゼH活性を排除する3つの点変異を含有する。RNアーゼH活性の喪失は、完全長cDNA転写物(5kb)のより大きな収量、および野生型M-MLV逆転写酵素に対して増加した熱安定性を可能にする。増加した熱安定性は、第1鎖の反応のより高いインキュベーション温度(最高50℃)を可能にし、GCリッチな領域の鋳型RNA二次構造の変性を助ける。
【0088】
9.逆転写プライマー
ステップ(c)で有益な逆転写プライマーは、オリゴ(dT)プライマー、すなわち、デオキシチミン(dT)の一本鎖配列であってよい。オリゴ(dT)の長さは8塩基から30塩基まで異なってよく、異なる長さのオリゴ(dT)、例えばオリゴ(dT)12~18または単一の規定の長さのオリゴ(dT)、例えばオリゴ(dT)18もしくはオリゴ(dT)20の混合物であってよい。
【0089】
好ましくは、ステップ(c)で使用される逆転写プライマーは、ランダムプライマー、例えばランダムな6mer(N6)、7mer(N7)、8mer(N8)、9mer(N9)等である。
【0090】
ある特定の実施形態では、逆転写プライマーは、1つまたは複数のオリゴ(dT)プライマーおよび1つまたは複数のランダムプライマーの混合物であってよい。
【0091】
ある特定の他の実施形態では、逆転写プライマーは、1つまたは複数の所望のRNA種に特異的なプライマーを含むことができる。
【0092】
逆転写プライマーは、固定または係留された、例えば係留されたオリゴ(dT)プライマーであってよい。あるいは、それらは溶液中にあり、固相(例えば、ビーズ)に固定化されなくてもよい。
【0093】
10.反応緩衝液および他の成分
ステップ(c)の反応混合物(「逆転写反応混合物」とも呼ばれる)は、逆転写のために適する反応緩衝液、例えばpHが約8.3または8.4のトリス緩衝液を、約20から約50mMの範囲内の濃度で含む。
【0094】
反応混合物は、各dNTPが約0.1から約1mMの範囲内(例えば、約0.5mM)の濃度のdNTPも含む。
【0095】
反応混合物は、約1から約10mM、例えば約3から約5mMの範囲内の濃度のMgCl2も一般的に含む。
【0096】
反応混合物は、約10mMなどの約5から約20mMの範囲内の濃度の還元剤、例えばDTTを、必要に応じてさらに含む。
【0097】
11.逆転写の条件
反応混合物は、RNA試料中の1つまたは複数の所望のRNA種を鋳型として使用してcDNA分子を合成するのに十分な条件に曝される。条件は、反応混合物を1つまたは複数の適当な温度(例えば、約35℃~約50℃または約37℃~45℃、例えば約35℃、約37℃、約40℃、約42℃、約45℃または約50℃)で十分な時間(例えば、約30分~約1時間)、インキュベートすることを一般的に含む。ある特定の実施形態では、第1鎖cDNA合成のためのより高い温度のインキュベーションステップの前に、プライマーTmを上昇させるためのプライマー伸張のために、低温インキュベーションステップ(例えば、25℃で約2~約10分間)を実行することができる。
【0098】
12.第2のcDNA鎖を合成すること
ある特定の実施形態では、ステップ(c)(すなわち、第1鎖cDNAの合成)の後、本明細書に開示される方法は、二本鎖cDNAを生成するために第2鎖cDNAを合成するステップ(d)を含むことができる。
【0099】
第2鎖cDNAを合成するための当技術分野で公知である手順を、ステップ(d)で使用することができる。例えば、逆転写酵素の内因性RNアーゼHからもたらされるmRNAのニックおよびギャップを刻むために、E.coliのRNアーゼHを使用することができる。ポリメラーゼIは、ニックトランスレーションによって第2鎖合成を次に開始する。E.coliのDNAリガーゼがその後第2鎖cDNAに残されているいかなる切断も封鎖し、二本鎖cDNA生成物を生成する。
【0100】
ステップ(d)は、QIAseq Stranded Total RNA Libraryキット(QIAGEN)または他の市販キット(例えば、Illumina、New England BioLabs、KAPA Biosystems、Thermo
Fisher Scientificから)を使用して実行することもできる。
【0101】
13.シークエンシングライブラリーの構築およびシークエンシング
ある特定の実施形態では、二本鎖DNAがステップ(d)で生成された後、本明細書に開示される方法は、シークエンシングライブラリーを構築するために、ステップ(d)で生成された二本鎖cDNAを増幅するためのステップ(e)をさらに含む。シークエンシングライブラリーは、さらなるステップ、ステップ(f)で、1つまたは複数の所望のRNA種を配列決定するために使用することができる。
【0102】
ステップ(d)で生成された二本鎖cDNAは、当技術分野で公知である方法を使用してステップ(e)でシークエンシングライブラリーを調製するために使用することができる。例えば、二本鎖DNAは、末端修復すること、A-付加に曝すこと、およびアダプターにライゲーションすることができる。アダプター連結cDNA分子は、1回または複数回の増幅(例えば、ユニバーサルPCR、ブリッジPCR、エマルションPCRまたはローリングサイクル増幅)を通してさらに増幅して、シークエンシングライブラリー(すなわち、例えばシークエンシングプライマー結合部位を含む、配列決定の準備のできたDNA断片の収集物)を生成することができる。
【0103】
シークエンシングライブラリーは、ステップ(f)において当技術分野で公知の方法を使用して配列決定をすることができる(Myllykangas et al.,Bioinformatics for High Throughput Sequencing,Rodriguez-Ezpeleta et al.(eds.), Springer Science+Business Media, LLC, 2012, pages11-25を参照)。例示的な高スループットDNAシークエンシングシステムには、限定されずに、元は454 Life Sciencesによって開発され、その後Roche(Basel、Switzerland)によって獲得されたGS FLXシークエンシングシステム、Solexaによって開発され、その後Illumina Inc.(San Diego、CA)によって獲得されたGenome
Analyzer(Bentley,Curr Opin Genet Dev 16:545-52, 2006;Bentley et al.,
Nature 456:53-59, 2008を参照)、Life Technologies(Foste
r City、CA)によるSOLiD配列システム(Smithet al., Nucleic Acid Res 38: e142, 2010;Valouevet al., Genome Res 18:1051-63,2008を参照)、Complete Genomicsによって開発され、BGIによって獲得されたCGA(Drmanacet al., Science327:78-81, 2010を参照)、Pacific Biosciences(Menlo Park、CA)によって開発されたPacBio RSシークエンシング技術(Eidetal., Science 323: 133-8, 2009を参照)、および、Life Techn
ologies Corporationによって開発されたIon Torrent(米国特許出願公開第2009/0026082号;2010/0137143号;および2010/0282617号を参照)が含まれる。
【0104】
シークエンシングライブラリーのシークエンシングから得られるシークエンシング読取りは、目的のRNA種の発現レベルおよび/または配列を決定するために分析することができる。そのような情報は、疾患の診断またはRNA試料が得られる被験体の具体的な処置への応答性の予測で役立つことができる。
【0105】
14.他の下流での用途
ステップ(d)で生成された二本鎖cDNAは、目的のRNA種の有無を含む発現レベルを決定するために、マイクロアレイ分析で使用することができる。追加の用途には、それらのコードされたタンパク質の機能に基づいて遺伝子を特定するか、新規遺伝子を発見するか、または異なる細胞もしくは組織における選択的スプライシングを研究するための機能性クローニングが含まれる。
【0106】
15.消去効率
第1鎖cDNA分子は、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種からのcDNA合成を阻害することにおける、ブロッキングオリゴヌクレオチドの効率を検査するためにqPCRで鋳型として使用することができる。例示的な方法は、下の実施例1に開示される。簡潔には、逆転写の間にブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合と比較して、逆転写の間に1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合の、望ましくないRNA種から逆転写されるcDNAの増幅のCtの増加は、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが望ましくないRNA種からのcDNA合成の阻害において有効なことを示す。他の処理に対して同等または改善を実証するために、Ctの増加を別の処理(例えば、商業的に利用可能な処理)のものと比較することができる。
【0107】
ある特定の実施形態では、逆転写の間に1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合の望ましくないRNA種から逆転写されるcDNAの増幅のCt値は、逆転写の間にブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合のCt値の少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、または少なくとも4倍である。
【0108】
望ましくないRNA種からのcDNA合成の阻害におけるブロッキングオリゴヌクレオチドの効率は、全トランスクリプトームシークエンシングを通して分析することもできる。例示的な方法は、下の実施例2に開示される。簡潔には、逆転写の間にブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合と比較して、逆転写の間に1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合の、望ましくないRNA種(例えば、18S
rRNA)に由来する全読取りの百分率の低下は、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが望ましくないRNA種からのcDNA合成の阻害において有効なことを示す。百分率の低下は、他の処理に対して同等または改善を実証するために、別の処理(例えば、商業的に利用可能な処理)のものと比較することができる。
【0109】
本開示による逆転写の間に1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合の、望ましくないRNA種(例えば、18S rRNA)に由来する全読取りの百分率は、多くとも5%、多くとも4%、多くとも3%、多くとも2%、多くとも1%、多くとも0.8%、多くとも0.6%、多くとも0.5%、多くとも0.4%、多くとも0.3%、多くとも0.2%、多くとも0.1%または多くとも0.05%であってよい。
【0110】
逆転写の間に1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合の、望ましくないRNA種(例えば、18S rRNA)に由来する全読取りの百分率の、ブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合のものに対する比は、多くとも0.2、多くとも0.15、多くとも0.1、多くとも0.08、多くとも0.06、多くとも0.05、多くとも0.04、多くとも0.03または多くとも0.02である。
【0111】
16.オフターゲット消去
ブロッキングオリゴヌクレオチドによるオフターゲット消去の程度を検査するために、第1鎖cDNA分子をqPCRで鋳型として使用することができる。例示的な方法は、下の実施例1に開示される。簡潔には、逆転写の間にブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合と比較して、逆転写の間に1つまたは複数の望ましくないRNA種を標的にする1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合の、所望のRNA種から逆転写されるcDNAの増幅のCtの増加は、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが所望のRNA種からのcDNA合成の阻害を引き起こすことを示す。そのような阻害は、「オフターゲット消去」と呼ばれる。2つの治療薬のオフターゲット消去を評価するために、Ct増加を別の処理(例えば、商業的に利用可能な処理)のものと比較することができる。
【0112】
ある特定の実施形態では、逆転写の間に1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合と、逆転写の間にブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合の間の所望のRNA種(例えば、GAPDH mRNA)から逆転写されるcDNAの増幅のCt値の増加は、逆転写の間にブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合のCt値の多くとも20%、多くとも15%、多くとも10%、多くとも8%、多くとも6%、または多くとも5%である。
【0113】
ブロッキングオリゴヌクレオチドによるオフターゲット消去の程度は、全トランスクリプトームシークエンシングを通して分析することもできる。例示的な方法は、下の実施例2に開示される。簡潔には、逆転写の間に1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドが使用される場合の1つまたは複数の望ましくないRNA種をコードするもの以外の遺伝子の相対的遺伝子発現を、逆転写の間にブロッキングオリゴヌクレオチドが使用されない場合と比較する散布図を作成することができる。散布図のR2は、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドによる処理と無処理の間で相対的遺伝子発現がどの程度類似しているかについて示す。R2が1により近いほど、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドの使用に関連したオフターゲット消去の程度はより低い。
【0114】
ある特定の実施形態では、上で作成される散布図のR2は、少なくとも0.85、少なくとも0.86、少なくとも0.87、少なくとも0.88、少なくとも0.89、少なくとも0.90または少なくとも0.91である。
【0115】
B.ブロッキングオリゴヌクレオチドを設計すること
一態様では、本開示は、逆転写の間に、RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するためのブロッキングオリゴヌクレオチドを設計するための方法であって:
(a)1つまたは複数の望ましくないRNA種の領域に完全に相補的な(好ましくは完全に相補的な)複数のブロッキングオリゴヌクレオチドを生成するステップ、
(b)許容されないブロッキングオリゴヌクレオチドをフィルタリングするステップ、
(c)1つまたは複数の望ましくないRNA種の複数の異なる(好ましくは、等間隔の)領域に相補的であるブロッキングオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の群を生成するステップ、および
【0116】
(d)必要に応じて群の間でブロッキングオリゴヌクレオチドをシャッフルしてブロッキングオリゴヌクレオチドの新しい群を生成し、ブロッキングオリゴヌクレオチドの新しい群の1つまたは複数を選択するステップ
を含む方法を提供する。
【0117】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの選択された群は、1つまたは複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を、好ましくは最小限のオフターゲット消去で阻害することにおいて有効である。1つまたは複数の望ましくないRNA種からのcDNA合成の阻害、およびブロッキングオリゴヌクレオチドの選択された群のオフターゲット消去に対する有効性は、上でセクションAに記載される通りに評価することができる。
【0118】
好ましくは、各ブロッキングオリゴヌクレオチドは、ブロッキングオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種のそれらの標的にされた領域の間の結合を増大させる、1つまたは複数の改変されたヌクレオチドを含む。同様に好ましくは、各ブロッキングオリゴヌクレオチドは、それらの伸長を防ぐ3’改変を含む。
【0119】
以下の記載は、例示的なブロッキングオリゴヌクレオチドとしてLNAオリゴヌクレオチドを使用する。他の改変されたヌクレオチドを含有するブロッキングオリゴヌクレオチド、ならびに望ましくないRNA種の領域への結合を増大させるためのいかなる改変されたヌクレオチドも有さないが、望ましくないRNA種の領域に安定して結合するのに十分な長さであるものは、望ましくないRNA種を、好ましくはオフターゲット消去がほとんどなしでまたは全くなしで消去するのに有効であるように同様に設計することができる。
【0120】
1.ステップ(a)
本明細書で提供されるブロッキングオリゴヌクレオチドを設計するための方法のステップ(a)は、1つまたは複数の望ましくないRNA種の領域に相補的な(好ましくは完全に相補的な)複数のブロッキングオリゴヌクレオチドを生成することである。
【0121】
このステップでは、ブロッキングオリゴヌクレオチドの1つまたは複数のパラメータ、例えば、ブロッキングオリゴヌクレオチドの長さ、ブロッキングオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種のそれらの対応する領域(すなわち、ブロッキングオリゴヌクレオチドが完全に相補的である望ましくないRNA種の領域)の間で形成される二重鎖の予測されるTm、自己ハイブリダイゼーション、および望ましくないRNA種が属するトランスクリプトームでのオフターゲットハイブリダイゼーションを特徴付け、スコア付けることができる。各ブロッキングオリゴヌクレオチドの1つまたは複数のパラメータのスコアが、最終の合わせたスコアを生成するために使用される。そのようなプロセスの間、最終の合わせたスコアを生成するために、異なるパラメータを異なって計量することができる。
【0122】
ブロッキングオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種のそれらの対応する領域の間で形成される二重鎖のTmを予測するためのアルゴリズムは、SantaLucia, Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 95: 1460-5, 1998、およびLNA含有ブロッキングオリゴヌクレオチドのTm測定に基づくことができる。
【0123】
好ましくは、異なるパラメータを試験することによって最良のブロッキングオリゴヌクレオチドを改善して、選択するために、擬似アルゴリズムが使用される。例えば、ブロッキングオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種のその対応する領域の間で形成される二重鎖のTmは、以下の4方法によって改善することができる:(1)LNAヌクレオチドの数を低減する、(2)LNAヌクレオチドの数を増加させる、(3)LNAヌクレオチドパターンを変更する、および(4)ブロッキングオリゴヌクレオチドの長さを変更する。このような方法で、変更がブロッキングオリゴヌクレオチドの全体的スコアを改善するかどうか確かめるために異なるパラメータを試験するために、複数の小アルゴリズムが使用される。
【0124】
LNAブロッキングオリゴヌクレオチドは、以下の特性のうちの1つ、複数および全てを有することができる:
【0125】
(1)それらの長さは、10から30ヌクレオチド、好ましくは16から24ヌクレオチド、17から23ヌクレオチドまたは18から22ヌクレオチドの範囲におよんでもよい。
【0126】
(2)各LNAブロッキングオリゴヌクレオチド中のLNAの数は、2~20、好ましくは4~16、より好ましくは3~15の範囲におよんでもよい。
【0127】
(3)LNAブロッキングオリゴヌクレオチドとLNAブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域の間で形成される二重鎖の融点は、80から96℃、好ましくは86から92℃の範囲におよぶ。
【0128】
(4)ステップ(a)で生成されるLNAブロッキングオリゴヌクレオチドの数は、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000または少なくとも10000、および/または多くとも1,000,000、多くとも500,000、多くとも100,000、多くとも90,000、多くとも80,000、多くとも70,000、多くとも60,000または多くとも50,000、例えば100から1,000,000、500から100,000、および1000から10,000である。
【0129】
(5)LNAブロッキングオリゴヌクレオチドは、それら自体に対してではなく、LNAブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域に結合する可能性がある。
【0130】
(6)LNAブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種が属するトランスクリプトームの中の他の領域に対してではなく、LNAブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域に結合する可能性がある。
【0131】
(7)LNAブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である(好ましくは完全に相補的である)異なる望ましくないRNA種の数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4または少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500、および/または多くとも1,000,000、多くとも500,000、多くとも100,000、多くとも50,000、多くとも10,000、多くとも9000、多くとも8000、多くとも7000、多くとも6000、多くとも5000、多くとも4000、多くとも3000または多くとも2000、例えば2から1,000,000、100から500,000、500から100,000および1000から10,000である。
【0132】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの追加の記載は、上のセクションA.5.ブロッキングオリゴヌクレオチドおよびセクションC.ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットで提供される。
【0133】
2.ステップ(b)
本明細書で提供されるブロッキングオリゴヌクレオチドを設計するための方法のステップ(b)は、許容されないブロッキングオリゴヌクレオチドをフィルタリングすることである。これは、ブロッキングオリゴヌクレオチドのために最小限の最終の合わせたスコアを設定することによって実行することができる。最小限の最終の合わせたスコア未満の最終の合わせたスコアを有するブロッキングオリゴヌクレオチドは、許容されないとみなされ、フィルタリングで排除される。
【0134】
3.ステップ(c)
本明細書で提供されるブロッキングオリゴヌクレオチドを設計するための方法のステップ(c)は、1つまたは複数の望ましくないRNA種の複数の異なる(好ましくは、等間隔の)領域に相補的であるブロッキングオリゴヌクレオチドの1つまたは複数の群を生成することである。
【0135】
ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの群は、単一RNA種(例えば、ヒト5S rRNA)の複数の領域を標的にする。
【0136】
ある特定の他の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの群は、複数の生物体からの単一タイプの複数のRNA種(例えば、細菌5S rRNA)を標的にする。
【0137】
ある特定の他の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの群は、単一の生物体の複数のタイプのRNA種(例えば、ヒトrRNA)を標的にする。
【0138】
ある特定の他の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの群は、複数の生物体の複数のタイプのRNA種(例えば、細菌rRNA)を標的にする。
【0139】
望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するために、望ましくないRNA種の領域がcDNAに逆転写されず、下流での分析で検出されないように、ブロッキングオリゴヌクレオチドが望ましくないRNA種に沿って拡散していることが好ましい。上位の最終の合わせたスコアを有するブロッキングオリゴヌクレオチドを選択し、望ましくないRNA種にわたって均一に拡散するものを選び出すためのプログラムを、このステップで使用することができる。
【0140】
好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の複数の異なる領域は、望ましくないRNA種に沿って均等に間隔があいている。異なる領域の均一な分布は、最小限のまたは低減された数の異なるブロッキングオリゴヌクレオチドによる望ましくないRNA種のcDNA合成の有効な阻害を可能にする。
【0141】
近隣領域の間の最長距離が近隣領域の間の最短距離の多くとも2.5倍、好ましくは多くとも2倍または多くとも1.5倍である場合、望ましくないRNA種の領域は均等に間隔があいている。近隣領域の間の距離は、上流領域(すなわち、望ましくないRNA種の5’末端により近い領域)の3’末端と、下流領域(すなわち、望ましくないRNA種の3’末端により近い領域)の5’末端の間のヌクレオチドの数である。例えば、望ましくないRNA種の近隣領域の間の距離が30、32、35、37、38、40、43および45である場合、近隣領域の間の最長距離が45であり、それは最短距離30の1.5倍であるので、そのような領域は均等に間隔があいていると考えられる。
【0142】
ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の均一に分布した近隣領域の間の距離は、20~50、25~50、30~50、20~45、25~45、30~45または31~43ヌクレオチドの範囲におよんでもよい。
【0143】
ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の複数の異なる領域は、均一に分布していない。近隣領域の間の距離は、0~100ヌクレオチド、例えば、0~75ヌクレオチド、0~50ヌクレオチド、5~100ヌクレオチド、5~75ヌクレオチド、5~50ヌクレオチド、5~40ヌクレオチド、5~30ヌクレオチド、10~100ヌクレオチド、10~75ヌクレオチド、10~50ヌクレオチド、10~40ヌクレオチド、10~30ヌクレオチド、20~100ヌクレオチド、20~75ヌクレオチド、20~60ヌクレオチドまたは30~100ヌクレオチドの範囲におよんでもよい。一般に、ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の近隣領域が互いの近くに(例えば、多くとも25、20、15、10または5ヌクレオチド離れて)位置する場合、より多くのブロッキングオリゴヌクレオチドが必要とされる。しかし、望ましくないRNA種の近隣領域の間の配列を鋳型として使用したcDNA合成の不十分な阻害を回避するために、近隣領域は、あまりに遠くにある(例えば、75、100、125または150ヌクレオチドを超えて離れている)べきでない。
【0144】
多数(例えば、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも300、少なくとも4000または少なくとも5000)の異なる望ましくないRNA種を消去すべきある特定の実施形態では、標的にされた望ましくないRNA種の全カバレージを最も増加させるようにブロッキングオリゴヌクレオチドを選択することによって、群を形成することができる。異なる望ましくないRNA種は、複数の生物体からの単一タイプの望ましくないRNA(例えば、細菌5S rRNA)、単一の生物体からの複数タイプの望ましくないRNA(例えば、ヒトの豊富なmRNA)、または複数の生物体からの複数タイプの望ましくないRNA(例えば、細菌rRNA)であってよい。
【0145】
一部の実施形態では、単一のブロッキングオリゴヌクレオチドは、互いに同種である複数の生物体からの望ましくないRNA種(例えば、ある特定の細菌株からの5S rRNA)を標的にすることができる。したがって、群の中のブロッキングオリゴヌクレオチドの数は、ブロッキングオリゴヌクレオチドが標的にする望ましくないRNA種の数未満であってよい。
【0146】
多数の異なる望ましくないRNA種のカバレージを最大にするために、貪欲アルゴリズムを使用することができる。貪欲アルゴリズムは、その選択が全般的に任意の解決策につながることを希望して、常に局所的に最適な選択をするアルゴリズムである。例示的な貪欲アルゴリズムは、ブロッキングオリゴヌクレオチドの長さ(「BLOCKER LENGTH」)、望ましくないRNA種にアニールするときの近隣のブロッキングオリゴヌクレオチド間の距離(「DISTANCE」)および群を形成するブロッキングオリゴヌクレオチドの数(「NUMBER」)を最初に規定し、以下のステップを実行することを含むことができる:
【0147】
1.標的配列のセットにおいてK=BLOCKER LENGTHを有する全てのkmerの頻度を数える、
2.頻度によりkmerを分類する、
3.最も高い頻度のkmerをブロッカーセットに加える、
4.全ての標的配列で選択されたkmerの位置を見出す、
5.各標的配列においてkmer位置の0.5~2DISTANCE(好ましくは1DISTANCE)下流の、および0.2~1DISTANCE(好ましくは0.5DISTANCE)上流のkmerを決定する、
6.頻度リストの中のDISTANCEの範囲内のkmerを減らす、および
7.ブロッカーのNUMBERに到達するまでステップ2~6を繰り返す。
【0148】
細菌5S、16Sおよび23S rRNA配列を消去するブロッキングオリゴヌクレオチドを設計するためにそのようなアルゴリズムを使用する例は、実施例4に提供される。
【0149】
そのような設計アルゴリズムは、標的配列の全体のカバレージを最も増加させるブロッカーの選択で有益である。kmerの頻度はしばしば自己相関しているので、隣接したkmerの数を減少させることは以前に選択されたブロッカーによって既にカバーされている領域でブロッカーを選択することを回避する。上流のkmer数を減少させることは、下流の既に選択されたブロッカーに近すぎるブロッカーを選択することを回避する。そのようなアルゴリズムは、より少ない標的配列を完全にカバーするよりは、可能な限り多くの標的配列を部分的にカバーするように調整される。
【0150】
4.ステップ(d)
ステップ(c)で複数の群が生成されるある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドを設計するための方法は、ブロッキングオリゴヌクレオチドの新しい群を生成するために、群の間でブロッキングオリゴヌクレオチドをシャッフルすること、およびブロッキングオリゴヌクレオチドの新しい群の1つまたは複数を選択することをさらに含むことができる。
【0151】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの群は、群の中のブロッキングオリゴヌクレオチドの平均スコアとしてスコア付けることができる。スコア付けに影響するパラメータには、ブロッキングオリゴヌクレオチドの物理的パラメータ、例えばブロッキングオリゴヌクレオチドと望ましくないRNA種のそれらの対応する領域の間で形成される二重鎖の融点、ブロッキングオリゴヌクレオチドの長さ、ブロッキングオリゴヌクレオチドの自己ハイブリダイゼーション、LNAパターン、ブロッキングオリゴヌクレオチドの中のLNAヌクレオチドの数、およびブロッキングオリゴヌクレオチドのオフターゲットハイブリダイゼーション;ならびに群パラメータ、例えば、望ましくないRNA種のそれらの対応する領域にアニールするときの近隣のブロッキングオリゴヌクレオチドの間の最小および最大の距離、および群の中のブロッキングオリゴヌクレオチドの間での交差ハイブリダイゼーションが含まれる。
【0152】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの群の間でブロッキングオリゴヌクレオチドをシャッフルするこのステップでは、一群のブロッキングオリゴヌクレオチドの中の交差ハイブリダイゼーションは最小にされる。例えば、互いと高いTm(例えば、65℃を超える)で二重鎖を形成することができるブロッキングオリゴヌクレオチドの数は、最小にされる。
【0153】
ブロッキングオリゴヌクレオチドをシャッフルし、一群のブロッキングオリゴヌクレオチドのスコアが増加するか試験するために、プログラムを使用することができる。最も高い群スコアを有する一群のブロッキングオリゴヌクレオチドを生成するために、このプロセスを複数回繰り返すことができる。所与の望ましくないRNA種の各々のために(例えば、1つの群は最も高い群スコアを有するヒト5.8S rRNAを標的にし、別の群は別の最も高い群スコアを有するヒト18S rRNAを標的にする)、または、所与のタイプの望ましくないRNA種のために(例えば、1つの群は最も高い群スコアを有する細菌rRNAを標的にし、別の群は別の最も高い群スコアを有する細菌16S rRNAを標的にする)、最も高い群スコアを各々有するブロッキングオリゴヌクレオチドの複数の群を生成することができる。
【0154】
最も高いスコアを有する選択された群は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1000の異なるブロッキングオリゴヌクレオチド、および/または多くとも10,000、多くとも9000、多くとも8000、多くとも7000、多くとも6000、または多くとも5000の異なるブロッキングオリゴヌクレオチド、例えば10~10,000、または100~5000の異なるブロッキングオリゴヌクレオチドを有することができる。
【0155】
ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの複数の群が選択され、そのような群は、RNA試料からの望ましくないRNA種にアニールする場合、一緒にプールしてもよい。あるいは、それらは、それらの標的の望ましくないRNA種に別々にアニールすることができる。
【0156】
5.ブロッキング効率およびオフターゲット消去のための実験的試験
ブロッキングオリゴヌクレオチドの選択された群は、そのブロッキング効率および/またはオフターゲット消去のために実験によりさらに試験することができる。そのような試験のための例示的な方法は、上のセクションAおよび下の実施例に記載される。
【0157】
C.ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットまたは組成物
一態様では、本開示は、望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するためのブロッキングオリゴヌクレオチドのセットを提供する。ブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種の複数の異なる(好ましくは、等間隔の)領域に相補的(好ましくは、完全に相補的)である。
【0158】
セットの中のブロッキングオリゴヌクレオチドの数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、もしくは少なくとも50、および/または多くとも1000、多くとも900、多くとも800、多くとも700、多くとも600、多くとも500、多くとも400、多くとも300もしくは多くとも200、例えば2~1000、5~500および10~300であってよい。
【0159】
好ましくは、ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットは、LNAブロッキングオリゴヌクレオチドのセットであり、以下の特性のうちの1つから全てを有することができる:
(1)それらの長さは、10から30ヌクレオチド、好ましくは16から24ヌクレオチド、17から23ヌクレオチドまたは18から22ヌクレオチドの範囲におよんでもよい。
(2)各LNAブロッキングオリゴヌクレオチド中のLNAの数は、2~20、好ましくは4~16、より好ましくは3~15の範囲におよんでもよい。
(3)LNAブロッキングオリゴヌクレオチドとLNAブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域の間で形成される二重鎖の融点は、80から96℃、好ましくは86から92℃の範囲におよぶ。
(4)望ましくないRNA種の長さによって、LNAブロッキングオリゴヌクレオチドの数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70または少なくとも80である。
(5)LNAブロッキングオリゴヌクレオチドは、それ自体ではなく、LNAブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域に結合する可能性がある。
(6)LNAブロッキングオリゴヌクレオチドは、望ましくないRNA種が属するトランスクリプトームの中の他の領域ではなく、LNAブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域に結合する可能性がある。
(7)(a)ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域は、望ましくないRNA種に沿って均一に分布し、近隣領域の間の距離は、20~50、25~50、30~50、20~45、25~45、30~45または31~43ヌクレオチドの範囲におよんでもよいか、または
(b)ブロッキングオリゴヌクレオチドが相補的である望ましくないRNA種の領域は、望ましくないRNA種に沿って均一に分布しておらず、近隣領域の間の距離は0~100ヌクレオチド、例えば、0~75ヌクレオチド、0~50ヌクレオチド、5~100ヌクレオチド、5~75ヌクレオチド、5~50ヌクレオチド、5~40ヌクレオチド、5~30ヌクレオチド、10~100ヌクレオチド、10~75ヌクレオチド、10~50ヌクレオチド、10~40ヌクレオチド、10~30ヌクレオチド、20~100ヌクレオチド、20~75ヌクレオチド、20~60ヌクレオチド、または30~100ヌクレオチドの範囲におよんでもよい。
【0160】
関連する態様では、本開示は、複数の望ましくないRNA種のcDNA合成を阻害するためのブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットを提供する。ブロッキングオリゴヌクレオチドの各セットは、前記のように望ましくないRNA種の複数の異なる(好ましくは、等間隔の)領域に相補的(好ましくは、完全に相補的)である。ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの異なるセットは、異なる望ましくないRNA種の複数の異なる(好ましくは、等間隔の)領域に相補的である。
【0161】
セットの数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400もしくは少なくとも500、および/または多くとも10,000、多くとも9000、多くとも8000、多くとも7000、多くとも6000、多くとも5000、多くとも4000、多くとも3000もしくは多くとも2000、例えば2~10,000、2~5000、2~1000、2~500、2~200、10~10,000、10~5000、10~1000、10~500、10~200、100~10,000、100~5000、100~1000または100~500であってよい。
【0162】
ブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットの中のブロッキングオリゴヌクレオチドの総数は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1500もしくは少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000もしくは少なくとも10,000、および/または多くとも100,000、多くとも90,000、多くとも80,000、多くとも70,000、多くとも60,000もしくは多くとも50,000、例えば2~100,000、100~80,000または800~50,000であってよい。
【0163】
ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットが標的にする複数の望ましくないRNA種は、単一の生物体からの複数のタイプのRNA種(例えば、ヒト5.8S rRNA、ヒト18S rRNAおよびヒト28S rRNA)に属する。ある特定の他の実施形態では、複数の望ましくないRNA種は、複数の生物体に由来する。そのような実施形態では、複数の望ましくないRNA種は、単一タイプのRNA種(例えば、複数の細菌株からの5S rRNA)または複数の異なるタイプのRNA種(例えば、複数の細菌株からの5S rRNA、16S rRNAおよび23S rRNA)に属することができる。
【0164】
ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットが完全に相補的である異なる望ましくないRNA種の数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4もしくは少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400もしくは少なくとも500、および/または多くとも1,000,000、多くとも500,000、多くとも100,000、多くとも50,000、多くとも10,000、多くとも9000、多くとも8000、多くとも7000、多くとも6000、多くとも5000、多くとも4000、多くとも3000もしくは多くとも2000、例えば2~1,000,000、100~500,000、500~100,000および1000~10,000である。
【0165】
ある特定の実施形態では、ブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットが調製され、各セットは、単一の生物体(例えば、ヒト、植物、特定の細菌株)からの1つまたは複数の望ましくない種を標的にする。所与の試料中にどんな生物体が潜在的に存在しているかによって、そのような生物体の望ましくない種を標的にするブロッキングオリゴヌクレオチドの異なるセットを一緒に組み合わせて、それらの生物体から望ましくないRNA種を消去することにおいて使用することができる。その望ましくないRNA種を消去すべき異なる生物体の数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50および/または多くとも10,000、多くとも5,000、多くとも1000、多くとも500もしくは多くとも100、例えば2~10,000、5~5,000もしくは10~1,000であってよい。
【0166】
関連する態様では、本開示は、このセクションおよび他のセクション(例えば、セクションA)に記載されている、1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチド、ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットおよび/またはブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットを含む組成物または混合物を提供する。例えば、混合物は、ヒトの望ましくないRNA種を標的にするオリゴヌクレオチド、および病原性細菌株からの1つまたは複数の望ましくないRNA種を標的にする1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチドの複数のセットを含むことができる。
【0167】
D.望ましくないRNA種を消去するためのキット
本開示は、RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないDNA種のcDNA合成を阻害するキットであって:(1)(a)RNA試料中の1つまたは複数の望ましくないRNA種の1つまたは複数の領域に相補的(好ましくは、完全に相補的)である1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチド、(b)ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットまたは複数のセット、および(2)逆転写酵素を含むキットも提供する。
【0168】
上のセクション(例えば、セクションA.5.およびC)は、キットに含まれてもよい1つまたは複数のブロッキングオリゴヌクレオチド、ブロッキングオリゴヌクレオチドのセットまたは複数のセット、および逆転写酵素を記載するために言及される。
【0169】
ある特定の実施形態では、キットは以下の成分の1つから全てをさらに含むことができる:
逆転写プライマー、
逆転写に適する反応緩衝液、
第2のcDNA鎖合成のための酵素(例えば、E.coli RNアーゼH DNAポリメラーゼIおよびE.coli DNAリガーゼ)、
DNAポリメラーゼ(例えば、Taq DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、ホットスタートDNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、Bsu DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼおよびPwo DNAポリメラーゼ)、
DNAリガーゼ(例えば、E.coli DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼ、哺乳動物のDNAリガーゼおよび熱安定性のDNAリガーゼ)、
シークエンシングのためのDNAポリメラーゼ(例えば、T7 DNAポリメラーゼ、Sequenase、Sequenaseバージョン2)、
DNA増幅および/またはシークエンシングのためのオリゴヌクレオチドプライマー、ならびに
アダプター(一本鎖または二本鎖DNA分子にライゲーションさせることができる一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチド)。
【0170】
キットの成分は、一般的に別々の容器またはコンパートメントに含有される。しかし、適当な場合、成分のいくつかは混合物または組成物として提供されてもよい。成分の追加の記載は、本開示の実施例を含む他のセクションで提供される。
【0171】
以下の実施例は例示のためであり、限定するものでない。
【実施例0172】
本開示の実施例1~3で、以下の材料および試薬が使用された:
ユニバーサルヒト参照RNA(UHRR)(Agilent Technologies)。
ブロッカーの193個のプール(B1~B193)、その配列は下の表に示す。
ブロッカーの96個のプール(B1~B193の奇数のウェルだけ、すなわち、B1、B3、・・・、B193)。
5×BC3 RT緩衝液:Qiagen RT2 First Strandキットからの5×逆転写緩衝液
QIAseqビーズ
N6プライマー:IDTに注文したランダムな6mer(標準の脱塩)。
フォワードプライマー18S FP2:CTCAACACGGGAAACCTCAC(配列番号1)
リバースプライマー18S RP2:CGCTCCACCAACTAAGAACG(配列番号2)
フォワードプライマー18S FP1:ATGGCCGTTCTTAGTTGGTG(配列番号3)
リバースプライマー18S RP1:CGCTGAGCCAGTCAGTGTAG(配列番号4)
フォワードプライマー18S FP3:GTAACCCGTTGAACCCCATT(配列番号5)
リバースプライマー18S RP3:CCATCCAATCGGTAGTAGCG(配列番号6)
フォワードプライマー18S FP4:GGCCCTGTAATTGGAATGAGTC(配列番号7)
リバースプライマー18S RP4:CCAAGATCCAACTACGAGCTT(配列番号8)
フォワードプライマーGAPDH FP:CACTGCCACCCAGAAGACTG(配列番号9)
リバースプライマーGAPDH RP:CAGCTCAGGGATGACCTTG(配列番号10)
フォワードプライマーACTB FP:TGCGTGACATTAAGGAGAAGC(配列番号11)
リバースプライマーACTB RP:GGAAGGAAGGCTGGAAGAGTG(配列番号12)
フォワードプライマーRPLP0 FP:CAATGTTGCCAGTGTCTGTC(配列番号13)
リバースプライマーRPLP0 RP:AGCAAGTGGGAAGGTGTAATC(配列番号14)
2×PA-012 Master Mix:QIAGENからのDNAポリメラーゼを含むqPCRのための2×マスターミックス。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
「+」は、次のヌクレオチド(すなわち、「+」の右のヌクレオチド)がLNAヌクレオチドで
あることを示す。例えば、B193では、「+A」、「+C」および「+T」は、塩基A、CおよびT
をそれぞれ有するLNAヌクレオチドを示す。
【0173】
(実施例1)
本開示の例示的な方法とRibo-Zero rRNA REMOVALキットの間の比較
この実施例は、qPCRを通したIlluminaによるRibo-Zero rRNA Removalキットを使用したものと本開示の例示的な方法の望ましくないRNA消去を記載する。
【0174】
段階的ワークフロー:
1a.ブロッカーを全RNA試料とハイブリダイズさせる
A.20mM KClも含有する15μlの体積で、100ngのユニバーサルヒト参照RNA(UHRR)(Agilent Technologies)をブロッカー(B1~B193)と混合する。
B.サーモサイクラーでインキュベートする:
【表2】
【0175】
1b.Illumina Ribo-zero rRNA Removalキットを使用したrRNA消去:
A.反応ごとに、225μlの磁気ビーズを225μlの水で2回洗浄する。全ての上清を取り除く。
B.65μlの磁気ビーズ再懸濁溶液を加え、混合する。室温で、とっておく。
C.別のチューブでは、10μlのRibo-zero Removal溶液、4μlの反応緩衝液、RNA試料および水を、40μlの総体積まで混合する。68℃で10分間インキュベートする。室温で5分間インキュベートする。
D.ステップCからの試料をステップBからの試料と混合し、室温で5分間インキュベートする。50℃で5分間インキュベートする。
E.上清(すなわち、消去した試料)を清潔なチューブに移す。
F.2体積のQIAseqビーズを1体積のステップEからの試料に加える。RNAが結合した後、200μlの80%エタノールで2回洗浄する。乾燥させる。20μlの水に最終試料を溶出させる。
【0176】
2a.ステップ1aの後の逆転写反応
A.一緒に混合する
前のステップからのRNA:13μl
【表3】
B.サーモサイクラーでインキュベートする:25℃10分間、42℃30分間、4℃で保持。
【0177】
2b.ステップ1bの後の逆転写反応
1つの例外を除いてステップ2aと同じに実行する:
13μlの試料を使用する代わりに、0.36μlだけを使用する(ステップ2aと同等のインプットを達成するために)
【0178】
3.cDNAを精製する
80μlの水および130μlのQIAseqビーズを、ステップ2aまたはステップ2bからの20μl試料に加える。結合したcDNAを200μlの80%エタノール(EtOH)で2回洗浄する。乾燥させる。20μlの水に溶出させる。
【0179】
4.qPCRを実行する
A.一緒に混合する
【表4】
B.リアルタイム機器でインキュベートする:95℃9分間、98℃1分間、40サイクルの(98℃15秒間、60℃1.5分間、データ収集を行う)。
【表5】
【0180】
データの要約:
試料1~5のCt値は、漸増量のB1~B193ブロッカーを使用することが、ブロッカーのない試料6のものと比較して、4qPCRプライマーアッセイによって測定された18S rRNA cDNA領域のより少ない合成をもたらしたことを示す(18S FP2およびRP2、18S FP1およびRP1、18S FP3およびRP3、ならびに18S FP4およびRP4)。18.55pmolの各ブロッカーを使用することは、18S rDNA cDNA合成のブロッキングで最良の結果を与えた。
【0181】
試料2~5の3つのハウスキーピング遺伝子(GAPDH、ACTBおよびRPLP0)のCt値は、ブロッカーのない試料6と比較した試料2~5の類似のCt値のために、ブロッカーの存在によるオフターゲット効果がなかったことを示す。18.55pmolの各ブロッカー(試料1)は、ブロッカーなし(試料6)と比較してさらなるオフターゲット効果を引き起こした。
【0182】
試料7(Ribo-Zero消去)および試料8(Ribo-Zero消去なし)の間のCt値の比較は、Ribo-Zero rRNA Removalキットを使用することが、qPCRプライマーアッセイによって測定された18S rRNA cDNA領域のより少ない合成をもたらしたこと、およびRibo-Zero消去がオフターゲット効果を引き起こさなかったことを示す。
【0183】
データは、193ブロッカープールのそれぞれ8.75pmolが、rRNA cDNAの量およびオフターゲット効果の両方の低減において少なくともRibo-Zeroと同じくらい良好に作用したことをさらに示す。
【0184】
(実施例2)
全トランスクリプトームライブラリーのシークエンシングを介した、本開示の例示的な方法と、Ribo-Zeroキット、ポリ(A)mRNA富化および無処理との比較
この実施例は、全トランスクリプトームライブラリーのシークエンシングを介して、本開示の例示的な方法の18S rRNA消去を、RiboZeroキット、ポリ(A)mRNA富化、および無処理のものと比較した。
【0185】
段階的ワークフロー:
1.A.ブロッカーの193プールのために:100ng UHRRを、8.75pmolの各ブロッカーと一緒に混合する。下のステップ2のQIAseq鎖全RNAライブラリーキットに進む。
【0186】
B.Illumina Ribo-zeroのために:以下の改変を除いて実施例1のステップ1bと同じプロトコールを使用する:
*90μlの磁気ビーズおよび35μlの再懸濁溶液を使用する。
*20μlの最終体積のために、100ngのUHRRを、2μlのRibo-zero除去溶液、2μlの反応緩衝液および水を混合する。
下のステップ2のQIAseq鎖全RNAライブラリーキットに進む。
【0187】
C.ポリ(A)mRNA富化のために:QIAseq鎖mRNA選抜キットを以下の通りに使用する:
i.100ngのUHRR、1μlのRNアーゼ阻害剤、250μlの緩衝液mRBB、25μlの純粋なmRNAビーズおよび水を、526μlの総体積まで一緒に混合する。70℃で3分間インキュベートする。
ii.室温で10分間インキュベートする。磁気スタンドに置き、上清を取り除く。
iii.400μlの緩衝液OW2でビーズを2回洗浄する。上清を取り除く。
iv.50μlの緩衝液OEBを加え、混合し、70℃で3分間インキュベートする。次に、室温で5分間インキュベートする。
v.50μlの緩衝液mRBBを加え、混合する。室温で10分間インキュベートする。
vi.磁気スタンドの上でビーズをペレットにし、上清を次に取り除く。400μlの緩衝液OW2でビーズを1回洗浄する。
vii.70℃に加熱した31μlの緩衝液OEBを加え、混合する。磁気スタンドの上でビーズをペレットにする。
viii.29μl(これは、mRNAを含有する)をとる。
ix.下のステップ2のQIAseq鎖全RNAライブラリーキットに進む。
【0188】
D.無処理:29μlの総体積のために、100ngのUHRRおよび水を一緒に混合する。下のステップ2のQIAseq鎖全RNAライブラリーキットに進む。
【0189】
2.QIAseq鎖全RNAライブラリーキット:
下に掲載されるあらゆる成分は、このキットからとられる。
【0190】
RNA断片化および逆転写:
i.ステップ1.A、1.B、1.Cおよび1.Dから試料をとり、8μlの5×RT緩衝液および水を37μlの総体積まで加える。
【0191】
ii.ステップ1.A.からの試料のために、95℃15分間インキュベートし、直後に75℃まで下降させることによって、RNAを断片化し、ブロッカーをハイブリダイズさせ、実施例1に記載されるアニーリングプログラムを実行する。ステップiiiに行く。
試料1.B.、1.C.および1.D.のために、95℃で15分間インキュベートすることによってRNAを断片化し、4℃で保持する。ステップiiiに行く。
【0192】
iii.1μlのRT酵素、1μlのRNアーゼ阻害剤、1μlの0.4M DTTを加える。25℃で10分間、42℃で15分間、70℃で15分間インキュベートし、4℃で保持する。
【0193】
iv.逆転写の後、56μlのQIAseqビーズを加え、混合する。cDNAがビーズに結合した後、200μlの80%EtOHで2回洗浄する。ビーズを乾燥させた後、38.5μlの水で溶出させる。
【0194】
第2鎖合成/末端-修復/A-付加:
v.38.5μlの試料を5μlの第2鎖緩衝液および6.5μlの第2鎖酵素ミックスと混合する。25℃で30分間、65℃で15分間インキュベートし、4℃で保持する。
【0195】
vi.70μlのQIAseqビーズを加え、混合する。DNAがビーズに結合した後、200μlの80%EtOHで2回洗浄する。ビーズの乾燥後、50μlの水で溶出させる。
【0196】
アダプターライゲーション:
vii.アダプターを1:100に希釈し、2μlのアダプターを50μlの試料に次に加える。100μlの総体積のために、25μlの4×Ultralow Inputライゲーション緩衝液、5μlのUltralow Inputリガーゼ、6.5μlのライゲーション開始剤、11.5μlの水を加える。混合し、次に25℃で10分間インキュベートする。
【0197】
viii.80μlのQIAseqビーズを加え、混合する。DNAがビーズに結合した後、200μlの80%EtOHで2回洗浄する。ビーズが乾燥した後、90μlの水で溶出させる。108μlのビーズを90μlの試料に加え、混合する。DNAがビーズに結合した後、200μlの80%EtOHで2回洗浄する。ビーズが乾燥した後、23.5μlの水で溶出させる。
【0198】
ユニバーサルPCR増幅:
iv.50μlの総体積のために、23.5μlの試料に対して、Illuminaのための1.5μlのCleanStart PCRプライマーミックス、および25μlのCleanStart PCRミックス2×を加える。
【0199】
x.37℃で15分間、98℃で2分間、15サイクルの(98℃で20秒間、60℃で30秒間、72℃で30秒間)、72℃で1分間インキュベートし、4℃で保持する。
【0200】
xi.60μlのQIAseqビーズを加え、混合する。DNAがビーズに結合した後、200μlの80%EtOHで2回洗浄する。ビーズが乾燥した後、22μlの水で溶出させる。
【0201】
xii.22μlの試料が、Illumina NextSeq 500システムでのシークエンシングで直ぐに使用できる最終ライブラリーである。
【0202】
シークエンシングパラメータ:
150サイクル(75×2のペアエンド)高アウトプットv2によるIllumina
NextSeq 500システム。1.4pMのライブラリーをロードする。
【0203】
分析は、Galaxy(http://usegalaxy.org)を使用して実行した。HISAT2アラインメントプログラム(Galaxyバージョン2.1.0)を使用した、ペアエンド読取りの参照ゲノムb37 hg19とのアラインメント。遺伝子計数はfeatureCounts計数プログラム(Galaxyバージョン1.6.0.2)で実行し、参照ゲノムb37 hg19およびrRNA gtfファイルはUCSC表ブラウザーから得た。
【表6】
【0204】
シークエンシング結果の要約:
rRNAである全読取りの%の調査は、ブロッカー193プールがRibo-zeroに優っていることを明らかにする。
【0205】
散布図(
図1~5)は、各方法の非rRNA遺伝子の相対的な遺伝子発現を比較する。各点は、2つのハウスキーピング遺伝子GAPDHおよびACTBの平均に正規化された各特異な非rRNA遺伝子の読取りのlog2を表す。各散布図に、16,000個の遺伝子がある。散布図の調査は、ブロッカーおよびRibo-zeroの両方が類似の遺伝子発現プロファイル(
図1、R
2=0.9123)を生成し、したがって、ブロッキング方法はRibo-zeroによるものを越えて遺伝子発現プロファイルを変更しなかったことを明らかにする。実際、ブロッキング方法は、無処理と比較して非rRNA遺伝子の遺伝子発現プロファイルの類似性で、Ribo-zeroに対してわずかな改善を示した(
図4および5を比較する)。ribo消去または無処理およびポリ(A)富化の間の低い相関が予想される(
図2および3)。
【0206】
(実施例3)
異なるRNA量におけるブロッカーの性能
この実施例は、異なるRNA量におけるブロッカーの性能を試験した。
【0207】
段階的ワークフロー:
ワークフローには、異なるインプット量、異なるブロッカープール、異なるアダプター希釈およびPCR増幅のサイクルについて調整したこと以外、実施例2と同じステップが含まれた(実施例2に記載のQIAseq鎖RNAライブラリーキットプロトコールに存在したこれらの変化の詳細については、下のqPCRデータ表を参照)。各条件のために、2反復を実行した。
【表7-1】
【表7-2】
【表8】
【0208】
qPCRデータの要約:
5ngインプットおよび25ngインプット
8.75pmolのブロッカー(試料1および7)によるrRNAのブロッキングは、100ngインプット(試料13)と同じくらい良好に作用した。4.38pmolによるrRNAのブロッキングでは、わずかな低減だけがあった(試料3を試料1と比較し、試料9を試料7と比較する)。3つのハウスキーピング遺伝子(GADPH、ACTBおよびRPLP0)については、試料5と比較した試料1および3のCt値、および試料11と比較した試料7および9のCt値の低下によって示される通り、ブロッカーの包含はこれらの遺伝子の検出および定量化を有意に改善した。
【0209】
500ngおよび1000ngインプット
193個のブロッカーのプールを使用したとき、8.75pmolのブロッカー(試料19および27)によるrRNAのブロッキングは、100ngインプット(試料13)と同じくらい良好に作用した。再び、4.38pmolによるrRNAのブロッキングでわずかな低減だけがあった(試料23を試料19と比較し、試料27を試料31と比較する)。100ngのインプット(試料13)と比較して、3つのハウスキーピング遺伝子に対して追加の負の効果はなかった(試料19および27)。
【0210】
96個のブロッカーのプールを使用したとき、rRNAのブロッキングに対して、より実質的な負の影響があった(試料21と19の間、試料22と23の間、試料29と27の間および試料30と31の間で、18S rRNAアッセイのCt値を比較する)。しかし、100ngのインプットと比較して、ハウスキーピング遺伝子に対する追加の負の影響はなかった(試料20、21、29および30の間のハウスキーピング遺伝子アッセイのCt値を試料13と比較する)。
【0211】
シークエンシングパラメータ:
150サイクル(75×2のペアエンド)高アウトプットv2によるIllumina
NextSeq 500システムを使用して、シークエンシングを実行した。1.6pMのライブラリーをロードする。
【0212】
分析は、Galaxy(http://usegalaxy.org)を使用して実行した。HISAT2アラインメントプログラム(Galaxyバージョン2.1.0)を使用して、参照ゲノムb38 hg38とのペアエンド読取りのアラインメントを実行した。遺伝子計数はfeatureCounts計数プログラム(Galaxyバージョン1.6.0.2)で実行し、参照ゲノムb38 hg38およびrRNA gtfファイルはUCSC表ブラウザーから得た。
【表9-1】
【表9-2】
【0213】
上表の要約
試験した全てのRNAインプット量で、193個のブロッカーのプールの各々8.75pmolは、rRNAであった読取りの量を低減することで最良に作用した(試料1、2、7、8、13、14、19、20、27および28を参照)。193プールの各々の4.38pmolも良好に作用したが、rRNAブロッキング性能で多少の低減があった(試料3、4、9、10、15、16、23、24、31および32を参照)。
【0214】
非rRNA遺伝子のシークエンシング結果(散布図):
25ng、100ng、500ngおよび1000ngのインプット量について11,000個の特異な非rRNA遺伝子の遺伝子発現プロファイルを示すために、193個のブロッカーのプールを各ブロッカーにつき4.38pmolまたは8.75pmolで使用して、散布図を作成した。各点は、2つのハウスキーピング遺伝子GAPDHおよびACTBの平均に正規化された各特異な非rRNA遺伝子の読取りのlog2を表す。散布図を、下の表AおよびBに要約する。
【表A】
【0215】
【0216】
非rRNA遺伝子のシークエンシング結果の要約(散布図):
QIASeq鎖全RNAライブラリーキットは100ngの全RNAの示唆された最小インプットを有するので、25ngのインプットの結果は、技術的複製が予想通りに劣ったR2値を有したことを示す(表A、参照番号1および2を参照)。しかし、ブロッカーの包含は、ブロッカーなしと比較してR2値を改善した(参照番号1および2のR2値を参照番号3のそれと比較する)。この改善は、非rRNA遺伝子の検出および定量化の感度を強化するブロッカーの結果であった。
【0217】
技術的複製の再現性は、100ng、500ngおよび1000ngのインプットで良好であって(表A、参照番号4、5、7、8、10および11を参照)、再び、無処理と比較してブロッカーでより優れていた(表AのR2値を、参照番号4または5と参照番号6の間で;参照番号7または8と参照番号9;および参照番号10または11と参照番号12の間で比較する)。
【0218】
散布図は、全てのブロッカー量について、100ng、500ng、1000ngの間に非rRNA遺伝子発現プロファイルの非常に良好な相関があったことを示し(表B、参照番号17、21、25、27、30、31、33および34を参照、その全ては0.96を超えるR2値を有する)、193個のブロッカーのプールを8.75pmolまたは4.38pmolで使用することが、rRNAをなお効果的に排除しつつも、遺伝子発現プロファイルを負に変化させなかったことを示す。
【0219】
(実施例4)
細菌の5S、16Sおよび23SのrRNA配列のcDNA合成をブロックするためのブロッカーを設計すること
この実施例は、細菌の5S、16Sおよび23SのrRNA配列のcDNA合成をブロックするためのブロッカーの設計を記載する。この設計は、単一種(例えば、E.coli K12)、または何千もの異なるrRNA配列が潜在的に存在する大便、汚水、環境などの複合試料におけるように、ミックスされたコミュニティである試料に適用可能である。
【0220】
設計のために、5S細菌rRNA配列(7,300個の全配列)を5S rRNAデータベース(http://combio.pl/rrna/)からダウンロードし、16S細菌rRNA配列(168,096個の全配列)をSILVA(https://www.arb-silva.de/)からダウンロードし、23S細菌rRNA配列(592,605個の全配列)をSILVA(https://www.arb-silva.de/)からダウンロードした。データベースに対して配列を絶えず加え、改変し、または削除することができるので、将来の設計は変更された数の配列を考慮する可能性がある。
【0221】
細菌rRNA cDNA合成ブロッカーの分子的性質は、ヒト、マウスおよびラットrRNAのcDNA合成をブロックするために使用されるものに主に類似している(上記のブロッカーB1~B193を参照)。オリゴヌクレオチドは長さが(平均して)20bpであり、rRNA配列に対して敷き詰められたアンチセンスがLNAオリゴヌクレオチドを含有し、オリゴヌクレオチドの各々の3’末端にブロッキング残基を含有する場合、間隔は(平均して)30bpである。ブロッカーは、細菌rRNAのcDNA合成を、ヒト、マウスおよびラットrRNAブロッカーと類似の方法でブロックすると予想される。
【0222】
細菌rRNA配列の莫大な数のために、各ブロッカーは、特定のrRNAタイプ(それが5S、16S、または23Sであるにせよ)のrRNA配列の全てを考慮したときに全カバレージを最も増加させるように選び出された。ブロッカーは、目的の標的rRNA配列にアンチセンスであるように設計される。具体的には、BLOCKER LENGTH(すなわち、約20bp)、標的rRNA配列(例えば、細菌5S rRNA)のセットにアニーリングするときの近接ブロッカーの間のDISTANCE(すなわち、約30bp)、および選択するブロッカーのNUMBER(例えば、1000または2000)を規定した後、以下の設計アルゴリズムを使用した:
1.標的配列のセットにおいてK=BLOCKER LENGTHを有する全てのkmerの頻度を数える、
2.頻度によりkmerを分類する、
3.最も高い頻度のkmerをブロッカーセットに加える、
4.全ての標的配列で選択されたkmerの位置を見出す、
5.各標的配列でkmer位置のDISTANCE下流および0.5DISTANCE上流の範囲内のkmerを決定する、
6.頻度リストの中のステップ5で特定されたkmerを減らす、および
7.ブロッカーのNUMBERに到達するまでステップ2~6を繰り返す。
【0223】
上記のプロセスの例は、
図6に示される。この実施例では、ブロッカー長は6ヌクレオチドであり、近接ブロッカーの間の距離は10である。互いに対するブロッカーの配向について、ブロッカーは目的の標的rRNA配列にアンチセンスで設計される。第1のステップは、全ての標的配列(ただ1つの例示的な標的配列を
図6の上部に示す)で全ての可能な6merを数え、頻度が最も高い6merを決定し、および左の表に示すように標的核酸の中のそれらの頻度に基づいて6merをランク付けすることである。次のステップは、頻度が最も高い6merの各発生時の選択されたDISTANCEの範囲内の6merのカウント数を減少させ、カウント数およびランクを更新し、第2の反復のために新しい頻度が最も高い6merを特定することである。
【0224】
カバーされるrRNA配列の全割合は、ブロッカーの数が増加するときに増加する(
図7~9を参照)。5S rRNAについては、全てのrRNA配列の96%は、ブロッカーが20bpの長さであり、間隔が30bpであるときに10,000個のブロッカーでカバーされる(
図7を参照)。16S rRNAについては、全てのrRNA配列の90%は、ブロッカーが20bpの長さであり、間隔が30bpであるときに6,100個のブロッカーでカバーされる(
図8を参照)。23S rRNAについては、全てのrRNA配列の96%は、ブロッカーが20bpの長さであり、間隔が30bpであるときに10,000個のブロッカーでカバーされる(
図9を参照)。
【0225】
細菌rRNAのcDNA合成をブロックしようと試みる場合、全てのブロッカーを含むことを必要とされない。カバレージは、5S rRNAで83%(最初の1000個のブロッカーを使用する)、16S rRNAで84%(最初の2000個のブロッカーを使用する)および23S rRNAで84%(最初の1000個のブロッカーを使用する)であった。5S rRNA、16S rRNAおよび23S rRNAのための最初の100個のブロッカーの配列を、下の表に例示的なブロッカーとして示す。標準の脱塩精製を使用して、各オリゴの35nmolを合成した。合成の後、4000個のブロッカーを含有し、実施例5~8で使用されたブロッカーミックスを生成するために、4つのプールを組み合わせた。
【0226】
細菌の5S rRNA、16S rRNAおよび23S rRNAの各々のための100個の例示的ブロッカーの配列を、下の表に提供する。
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【0227】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【0228】
【0229】
(実施例5)
ブロッカーで細菌rRNAをブロックすること
【0230】
この実施例は、実施例4に記載されているようなブロッカーミックスによる細菌rRNAのブロッキングを記載する。この実施例で記載されるブロッカーミックスに関連する量は、ブロッカーミックス中の各ブロッカーの量である。例えば、2.9pmolのブロッカーミックスは、ブロックミックスが、2.9pmolの各ブロッカーを含有することを指す。
【0231】
実験詳細
i.RNA(100ngのTurbo DNアーゼ処理全RNA):
【0232】
1.E.coli全RNA(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号AM7940、「E.coli試料」)
【0233】
2.腸マイクロバイオーム全細胞ミックス(ATCC、カタログ番号MSA-2006、「ATCC腸試料」)
【0234】
ii.ブロッカー消去手順
【0235】
1.ブロッカーミックス(ブロッカーなし、2.9pmol、1.45pmolおよび0.73pmol)を全RNA(100ng)および1×FH緩衝液(50mMトリスpH8.0、40mM KCl、3mM MgCl2)と15μlの最終反応体積(最終反応を15μlにするのにH2Oを使用した)で合わせる
【0236】
2.反応を89℃で8分間、続いて75℃で2分間、70℃で2分間、65℃で2分間、60℃で2分間、55℃で2分間、37℃で2分間および25℃で2分間加熱した。
【0237】
3.1.3×(ビーズ対試料v/v比)ビーズ浄化を実行した(「浄化なし」と記された実験条件ではこれは実行されなかった):
a.19.5μlのQIAseqビーズ(室温に予熱する)を15μlの反応に加える。ボルテックスすることによって完全に混合し、室温で5分間インキュベートする。
b.ビーズが完全にペレットになるまで(約2分間)、卓上遠心機で遠心分離する。
c.チューブ/プレートを磁気ラックに2分間置く。溶液が透明になると、ビーズを磁気スタンドの上に置いたまま、上清を注意深く取り除いて捨てる。
d.ビーズをなお磁気スタンドの上に置いたまま、200μlの80%エタノールを加える。チューブを(2~3回)回転させるか、または磁石の2つのカラム位置の間を側から側にプレートを動かしてビーズを洗浄する。洗浄液を注意深く取り除いて捨てる。
e.エタノール洗浄を繰り返し、この2回目の洗浄の後に、あらゆる痕跡量のエタノール洗浄液を完全に取り除く。
f.ビーズをなお磁気スタンドの上に置いたまま、室温で10分間風乾させる。
g.磁気スタンドからビーズを取り出し、31μlの無ヌクレアーゼ水を加えることによってビーズから核酸を溶出させる。ピペット操作をすることによって良く混合する。
h.溶液が透明になるまで、チューブ/プレートを磁気ラックに戻す。
i.29μlの上清を清潔なチューブ/プレートに移す。
【0238】
iii.QIAseq鎖RNAライブラリー調製
【0239】
1.QIAseq鎖全RNAライブラリーキットに関連する第1鎖合成反応をセットして実行する:
【表13】
【0240】
2.ユーザーマニュアルにより残りのQIAseq鎖ライブラリーを調製する
【0241】
iv.次世代シークエンシングを実行する
1.150サイクル(75×2のペアエンド)によるIllumina NextSeq 500システムを使用する。
【0242】
v.CLC Genomics Workbenchを使用してデータ分析を実行する。
【0243】
結果
結果は、下の表に示す。
【表14】
FPKM:100万読取りあたりのエクソン1キロベースあたりの断片
【0244】
結果は、以下を示す:
両試料(E.coliおよびATCC腸)のブロッカーなしは、高い百分率のrRNAをもたらした。
【0245】
2.9pmolのブロッカーは、E.coliおよびATCC腸試料によるrRNAブロッキングに関して最良の性能を与えた。
【0246】
E.coli試料については、ブロッカーの量を減少させることは、rRNAブロッキングに無視できる影響を及ぼした。しかし、ATCC腸試料については、ブロッカーの量が低減された場合、rRNAにマッピングされた読取りの量は増加した。
【0247】
rRNAブロッキングは、検出される遺伝子数の増加につながった。
【0248】
ブロッキング有効性は、ブロッカー設計アルゴリズムによって予測されたものと一致しない:E.coli試料については、設計アルゴリズムは、ブロッキング有効性が5Sの93%、16Sの99%および23Sの99%であると予測した。全てのrRNAの97%が取り除かれたので、上の結果は、これが実際に達成されたことを示す。
【0249】
結論
細菌のrRNAブロッカーは、rRNAにマッピングされた読取りをE.coli試料の場合約97%から約3%に、およびATCC腸試料の場合約95%から約12%に低減させた。
【0250】
(実施例6)
異なる量のブロッカーおよび異なるビーズ浄化ステップで細菌rRNAをブロックすること
この実施例は、異なる濃度の実施例4に記載されているブロッカーミックスおよび異なるビーズ浄化ステップでの細菌rRNAのブロッキングを記載する。実施例5と同様に、この実施例で記載されるブロッカーミックスに関連する量は、ブロッカーミックス中の各ブロッカーの量である。
【0251】
この実施例では、実施例5に記載のATCC腸試料をRNA試料として使用した。方法および材料は、この実施例で使用されたブロックミックスの量が2.9pmolおよび5.8pmolであったこと、ならびにビーズ浄化の2つのバージョンが実行されたこと以外は、実施例5と同じであった:1つ(「1回」)は実施例5と同じで、他(「2回」)はステップ3.c.と3.d.の間に以下の追加のステップを有した:
【0252】
(i)15μlの無ヌクレアーゼ水および19.5μlのQIAseq NGSビーズ結合緩衝液を加える。ボルテックスすることによって完全に混合し、室温で5分間インキュベートする。
【0253】
(ii)ビーズが完全にペレットになるまで(約2分間)、卓上遠心機で遠心分離する。
【0254】
(iii)チューブ/プレートを磁気ラックの上に2分間置く。溶液が透明になると、ビーズを磁気スタンドの上に置いたまま、上清を注意深く取り除いて捨てる。
【0255】
【0256】
結果は、以下を示す:
ブロッカーの量を2.9pmolから5.8pmolに倍増させることは、rRNAの消去を向上させた。
【0257】
5.8pmolのブロッカーミックスが使用されたときに調製されたNGSライブラリーは、低い濃度を有した。
【0258】
5.8pmolのブロッカーミックスの使用は改善されたrRNA消去をもたらしたが、カットオフが0.3または3.0のFPKMであったかどうかにかかわらず、それは正にコールされるより少ない遺伝子をもたらした。
【0259】
2回の1.3×ビーズ浄化は、中立の効果を有した。
【0260】
結論
5.8pmolのブロッカーミックスはrRNA消去においてより有効であったが、rRNA消去および正に発現される遺伝子の両方を考慮した場合、2.9pmolがより好ましいかもしれない。
【0261】
(実施例7)
異なる量のブロッカーおよび異なるビーズ浄化ステップで細菌rRNAをブロックすること
この実施例も、異なる濃度の実施例4に記載されているブロッカーミックスおよび異なるビーズ浄化ステップでの細菌rRNAのブロッキングを記載する。実施例5と同様に、この実施例で記載されるブロッカーミックスに関連する量は、ブロッカーミックス中の各ブロッカーの量である。
【0262】
この実施例では、実施例5に記載のATCC腸試料をRNA試料として使用した。方法および材料は、この実施例で使用されたブロックミックスの量が2.9pmol、4.35pmolおよび5.8pmolであったこと以外は、実施例6と同じであった。
【0263】
【0264】
結果は、以下を示す:
ブロッカーを2.9pmolから4.35pmolに、さらに5.8pmolに増加させることは、rRNAの消去を向上させた。
【0265】
5.8pmolのブロッカーミックスを使用して調製されたNGSライブラリーは、ビーズ浄化の回数に関係なく低い濃度を有した。
【0266】
2回の1.3×ビーズ浄化は検出される遺伝子の数を向上させたが、rRNA百分率も増加させた。結局のところ、検出される遺伝子の増加した数を有することがより望ましい。
【0267】
対でマッピングされた読取りも、2回の1.3×ビーズ浄化で増加する。
【0268】
結論
2.9pmolのブロッカーミックスおよび2回の1.3×ビーズ浄化の組合せは、最も望ましい結果を提供する。
【0269】
(実施例8)
異なるビーズ浄化ステップでブロッカーを用いて細菌rRNAをブロックすること
この実施例も、実施例4に記載されているブロッカーミックスを用いる異なるビーズ浄化ステップでの細菌rRNAのブロッキングを記載する。実施例5と同様に、この実施例で記載されるブロッカーミックスに関連する量は、ブロッカーミックス中の各ブロッカーの量である。
この実施例では、2つの異なるRNA試料が使用された。1つは実施例5に記載のATCC腸試料であり、RNA試料として使用した。他(「ATCC3ミックス」)は、以下の混合物であった:
a.20株均等ミックス全細胞材料(ATCC、カタログ番号MSA-2002)
b.皮膚マイクロバイオーム全細胞ミックス(ATCC、カタログ番号MSA-2005)
c.口マイクロバイオーム全細胞ミックス(ATCC、カタログ番号MSA-2004)
【0270】
方法および材料は、この実施例で使用されたブロックミックスの量が2.9pmolであったこと以外は、実施例6と同じであった。
【0271】
結果
結果は、下の表に示す。
【表17-1】
【表17-2】
【0272】
結果は、以下を示す:
ATCC腸試料については、1回または2回の1.3×ビーズ浄化が使用されたかどうかによって、2.9pmolのブロッカーミックスはrRNAを約95%から約13%または20%まで消去した。1回と2回のビーズ浄化の間では、追加の回は増加した遺伝子検出を可能にした。
【0273】
ATCC3ミックス試料(重複する種によって占められる場合28細菌種からなる)については、1回または2回の1.3×ビーズ浄化が使用されたかどうかによって、2.9pmolのブロッカーミックスはrRNAを約95%から約10%または約15%まで消去した。1回と2回のビーズ浄化の間では、追加の回は増加した遺伝子検出を可能にした。ブロッカーミックスの量を2.9pmolから4.35pmolに、さらに5.8pmolに増加させることは、rRNAの消去を向上させた。
【0274】
結論
rRNA消去および遺伝子発現の両方の結果を考慮したとき、2.9pmolのブロッカーミックスおよび2回の1.3×ビーズ浄化の組合せは、最も望ましい結果を提供する。
【0275】
実施例5~8の結果は、細菌rRNAの消去に関して、2.9pmolの各ブロッカーが2回のビーズ浄化とともに最適な量であったことを示す。しかし、rRNA消去については、1回のビーズ浄化を用いたときでさえ、1.45pmol、およびさらには5.8pmolの各ブロッカーも、rRNAを消去するのに作用した。
【0276】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。この明細書で言及するおよび/または出願データシートに掲載される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物の全ては、参照により本明細書に完全に組み込まれる。実施形態の態様は、さらなる他の実施形態を提供するために、様々な特許、出願および刊行物の概念を採用するのに必要な場合、改変することができる。
【0277】
上に詳述される記載を考慮して、これらおよび他の変更を実施形態に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲で開示される具体的な実施形態に限定するものと解釈されるべきでなく、全ての可能な実施形態を、そのような特許請求の範囲が権利を有する全範囲の同等物とともに含むものと解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。
【0278】
本出願は、本明細書に参照により完全に組み込まれる、2018年9月25日に出願の米国特許仮出願第62/736,006号の優先権を主張する。