(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178448
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】切欠溝が形成された分離膜を含む二次電池用電極組立体およびそれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20241217BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241217BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20241217BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20241217BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M10/0566
H01M50/463 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024169653
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2022567424の分割
【原出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067468
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、キュタエ
(72)【発明者】
【氏名】オー、サン セウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒェヒェオン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】積層体の分離膜に切欠溝を形成して高温収縮方向および経路を誘導することによって電極間のハードショートの防止および高温安全性を改善できる二次電池用電極組立体、およびそれを含む二次電池を提供する。
【解決手段】正極111、負極112、および前記正極と負極の間に介在する分離膜113を含み、両側最外面には分離膜が位置している積層体;および前記積層体の両側最外面に位置する分離膜の間の固定のために積層方向に付着した2対以上の固定部材114a、114b、114cを含み、前記分離膜は少なくとも一対の切欠溝115を含み、前記一対の切欠溝は電極タブ111a、112aの突出方向と垂直な一面と、その対角線方向に位置する他面に一つずつ形成されている二次電池用電極組立体およびそれを含む二次電池が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および前記正極と負極の間に介在する分離膜を含み、両側最外面には前記分離膜が位置している積層体;および
前記積層体の両側最外面に位置する前記分離膜の間の固定のために積層方向に付着した2対以上の固定部材を含み、
前記分離膜は少なくとも一対の切欠溝を含み、
前記一対の切欠溝は電極タブの突出方向と垂直な一面と、その対角線方向に位置する他面に一つずつ形成されている、二次電池用電極組立体。
【請求項2】
前記切欠溝は2対以上形成されており、前記切欠溝は前記電極タブの突出方向と垂直なそれぞれの面に対角線方向、および一直線方向になるように形成されている、請求項1に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項3】
前記切欠溝は前記電極タブの干渉を受けない位置に形成されている、請求項1または2に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項4】
前記切欠溝の平面上形状はスリット形、多角形、円形、または楕円形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項5】
前記切欠溝の平面上形状はスリット形または三角形である、請求項4に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項6】
前記固定部材はポリイミド(Polyimide)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項7】
前記固定部材は前記電極タブの突出方向と平行な両側面に互いに向かい合う位置で一対の固定部材が付着しており、他の一対以上の固定部材は前記一対の固定部材と離隔した位置で前記電極タブの突出方向と平行な両側面に互いに向かい合う位置で付着している、請求項1から6のいずれか一項に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項8】
前記二次電池用電極組立体はラミネーション・アンド・スタック型電極組立体、またはスタック・アンド・フォールディング型電極組立体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の二次電池用電極組立体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の二次電池用電極組立体が二次電池ケースに電解液と共に内蔵されている、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2021年5月26日付韓国特許出願第10-2021-0067468号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は切欠溝が形成された分離膜を含む二次電池用電極組立体およびそれを含む二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
化石燃料使用の急激な増加により代替エネルギーやクリーンエネルギーの使用に対する要求が増加しており、その一環として最も活発に研究されている分野が電気化学を利用した発電、蓄電分野である。
【0004】
現在このような電気化学的エネルギーを用いる電気化学素子の代表的な例として二次電池が挙げられ、ますますその使用領域が拡大している傾向である。
【0005】
最近では携帯用コンピュータ、携帯電話、カメラなどの携帯用機器に対する技術開発と需要の増加によりエネルギー源として二次電池の需要が急激に増加しており、このような二次電池の中で、高い充放電特性と寿命特性を示して環境に優しいリチウム二次電池に対して多くの研究が行われており、また商用化されて広く使用されている。
【0006】
一般にリチウム二次電池は正極と負極および多孔性分離膜からなる電極組立体にリチウム非水系電解質を含浸させて製造する。
【0007】
この時、前記正極と負極などの電極は完全に分離しなければならないが、分離膜の収縮、電極活物質の突出などにより互いに接触して短絡が発生する問題がある。
【0008】
一般に正極活物質と負極活物質の短絡の際、小さい熱と共にセルの電圧が落ちて反応が終了するが、正極箔と負極活物質が直接短絡するハードショートの場合、機械、電気、熱的アビュースとして発生して発熱を伴うと、以後熱暴走につながるなど安全性が大きく脅かされる。
【0009】
特にこのようなハードショートは主に高温で起きる分離膜の収縮によって分離膜および電極の変形が起きて電極間ショート、発火などの順に起きる。
【0010】
図1には従来の電極組立体が模式的に図示されており、
図2には電極組立体が高温で変形されることによってハードショートが起きる現象を模式的に図示した。
【0011】
図1および
図2を参照すると、正極11、負極12、および正極11と負極12の間に介在する分離膜13を含み、両側最外面にも分離膜13が位置している積層体10が積層体10の両側最外面に位置する分離膜13の間の固定のために積層方向に付着した3対以上の固定部材14で固定されている。
【0012】
このような積層体10は以後二次電池に製造された後使用される際、高温で分離膜13の収縮が起きる。具体的には、温度が上がるほど分離膜13の収縮は加速化し、素材によって所定の差異があるが、150℃でMD/TD方向への収縮が約10%~20%であり、180℃でMD/TD方向への収縮はそれぞれ40%を超える。この時、分離膜13の収縮は固定部材14の間の狭い空間で起き、これによってAのように正極11が共に積層方向に変形されることにより正極11と負極12の間のハードショートが発生して、発火につながる問題があった。
【0013】
したがって、かかる問題を解決して高温での分離膜収縮による電極間のハードショートを遅延または防止して高温での安全性を強化できる技術開発が切実な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記のような従来技術の問題と過去から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0015】
具体的には、本発明の目的は、積層体の分離膜に切欠溝を形成して高温収縮方向および経路を誘導することによって電極間のハードショートの防止および高温安全性を改善できる二次電池用電極組立体、およびそれを含む二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するための本発明の一実施形態による二次電池用電極組立体は、
正極、負極、および前記正極と負極の間に介在する分離膜を含み、両側最外面には分離膜が位置している積層体;
および前記積層体の両側最外面に位置する分離膜の間の固定のために積層方向に付着した2対以上の固定部材を含み、
前記分離膜は少なくとも一対の切欠溝を含み、
前記一対の切欠溝は電極タブの突出方向と垂直な一面と、その対角線方向に位置する他面に一つずつ形成されていることを特徴とする。
【0017】
この時、前記切欠溝は2対以上形成されており、前記切欠溝は前記電極タブの突出方向と垂直なそれぞれの面に対角線方向、および一直線方向になるように形成されていてもよい。
【0018】
また、前記切欠溝は前記電極タブの干渉を受けない位置に形成されていてもよい。
【0019】
前記切欠溝の平面上形状はスリット形、多角形、円形、または楕円形であり得、詳細にはスリット形または三角形であり得る。
【0020】
一方、前記固定部材はポリイミド(Polyimide)を含み得る。
【0021】
前記固定部材は前記電極タブの突出方向と平行な両側面に互いに向かい合う位置で一対の固定部材が付着しており、他の一対以上の固定部材は前記一対の固定部材と離隔した位置で前記電極タブの突出方向と平行な両側面に互いに向かい合う位置で付着していてもよい。
【0022】
一方、前記電極組立体はラミネーション・アンド・スタック型電極組立体、またはスタック・アンド・フォールディング型電極組立体であり得る。
【0023】
延いては、本発明の一実施形態によれば、本発明による電極組立体が二次電池ケースに電解液と共に内蔵されている二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来の二次電池用電極組立体の模式図である。
【
図2】従来の二次電池用電極組立体が高温で変形されて分離膜が収縮した形態の模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態による二次電池の電極組立体の模式図である。
【
図4】
図3の電極組立体が高温で変形されて分離膜が収縮した形態の模式図である。
【
図5】本発明の他の一実施形態による二次電池の電極組立体の模式図である。
【
図6】
図5の電極組立体が高温で変形されて分離膜が収縮した形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常的または辞典的な意味に限定して解釈すべきではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に則して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈すべきである。
【0027】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【0028】
本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、
二次電池用電極組立体であって、
正極、負極、および前記正極と負極の間に介在する分離膜を含み、両側最外面には分離膜が位置している積層体;
および前記積層体の両側最外面に位置する分離膜の間の固定のために積層方向に付着した2対以上の固定部材を含み、
前記分離膜は少なくとも一対の切欠溝を含み、
前記一対の切欠溝は電極タブの突出方向と垂直な一面と、その対角線方向に位置する他面に一つずつ形成されている二次電池用電極組立体が提供される。
【0030】
図3には本発明の一実施形態による二次電池用電極組立体100が模式的に図示されている。
【0031】
図3を参照すると、本発明による電極組立体100は、正極111、負極112、および正極111と負極112の間に介在して、両側最外面に存在する分離膜113を含む積層体110と、積層体110の両側最外面に位置する分離膜113の間の固定のために積層方向に付着した3対の固定部材114を含む。
【0032】
固定部材114は積層体110の固定のために設けられるものであり、積層体110の堅固な固定のために、少なくとも2対以上の固定部材を含むことができる。
【0033】
この時、固定部材114は、電極タブ111a,112aの突出方向と平行な両側面に互いに向かい合う位置で一対の固定部材114aが付着しており、他の一対以上の固定部材114b,114cは一対の固定部材114aと離隔した位置で電極タブ111a,112aの突出方向と平行な両側面に互いに向かい合う位置で付着している。
【0034】
このような固定部材114をなす材料は、電池に使用される多様な材料が選択されるが、詳細には、耐熱性を有し、かつ絶縁性を有して短絡問題がない素材が好ましく、例えば、ポリイミド(Polyimide)を含むことができる。
【0035】
また、本発明によれば、分離膜113は電極タブ111a,112aの突出方向と垂直な一面と、その対角線方向に位置する他面に一つずつ形成された一対の切欠溝115を含み、切欠溝115は第1極性を有する電極タブと第2極性を有する電極活物質層が接触して短絡を誘発しないように、電極タブ111a,112aの干渉を受けない位置に形成されていることができる。
【0036】
すなわち、例えば、切欠溝115が電極タブ111a,112bと重なる位置に形成される場合、正極タブ111aと負極112の負極活物質層が切欠溝115部分で接触して短絡が発生する可能性があるので、このような問題を防止するためにタブ111a,112aの干渉を受けない位置に形成されている。
【0037】
また、一対の切欠溝115は詳細には互いに左右および上下対称である位置に形成されている。
【0038】
図4にはこのような電極組立体100が高温に露出した時、分離膜が収縮、変形される現象を模式的に図示した。
【0039】
図4を参照すると、本発明のように、分離膜113に一対の切欠溝115を形成する場合、電極組立体100が高温に露出する場合、同一に分離膜の収縮が起きるが、既に形成されていた一対の切欠溝115により一対の切欠溝115をつなぐ形で分離膜の破れが発生し、これにより、固定部材114の間での収縮が発生せず、正極111と分離膜114が積層方向に変形されないため、ハードショートを防止して発火の可能性を低くして電池安全性を向上させることができる。
【0040】
すなわち、一対の切欠溝115は分離膜113が収縮する経路を誘導しながら分離膜113の破れを発生させて正極111または負極112の積層方向への変形を防止する。
【0041】
一方、前記
図3から
図4のように一対の切欠溝を形成することができるが、2対以上形成することもできる。
【0042】
図5には本発明の他の一実施形態により、2対の切欠溝が形成されている電極組立体200を模式的に図示し、
図6にはこのような電極組立体が高温に露出した時、分離膜が収縮、変形される現象を模式的に図示した。
【0043】
先に、
図5を参照すると、
図3のように、電極組立体200は、積層体210と、積層体210の両側最外面に位置する分離膜213の間の固定のために積層方向に付着した3対の固定部材214を含む。ただし、分離膜213は電極タブ211a,212aの突出方向と垂直なそれぞれの面に対角線方向、および一直線方向になるように形成された2対の切欠溝215を含み、2対の切欠溝215はすべて電極タブ211a,212aの干渉を受けない位置に形成されている。また、2対の切欠溝215は詳細には互いに左右、上下対称である形態で形成されている。
【0044】
図6を参照すると、このように2対の切欠溝215が形成された電極組立体200も高温に露出する場合、分離膜213の収縮が発生し、分離膜213は2対の切欠溝215により上下方向または対角線方向に破れて収縮する。したがって、一対の切欠溝を形成した電極組立体100と同様に、固定部材214の間での収縮が発生せず、正極または負極と分離膜214が積層方向に変形されないため、ハードショートを防止して発火の可能性を低くして電池安全性を向上させることができる。
【0045】
このように2対以上の切欠溝を形成すると、分離膜収縮および破れの経路をより確実に誘導することができる。
【0046】
一方、前記切欠溝の平面上形状は限定されず、多様に形成されることができ、例えば、スリット形、多角形、円形または楕円形であり得る。
【0047】
図7にはこのような切欠溝315の平面上形状を模式的に示した。
【0048】
図7を参照すると、切欠溝315は平面上形状を三角形に形成して、分離膜313収縮および破れ方向を対角線方向に誘導することができ(a)、または平面上形状をスリット形に形成して、分離膜313の収縮および破れ方向をスリットが形成された方向、すなわち一直線方向に誘導することができ(b)、または平面上形状を四角形に形成して、分離膜313の収縮および破れ方向を両側下部エッジで伸びていく方向に誘導することができ(c)、または平面上形状を円形または楕円形に形成して、分離膜313の収縮および破れ方向を多方面に誘導することもできる。
【0049】
ただし、詳細には、切欠溝315の平面上形状は、分離膜収縮および破れの方向が一定で、固定部材への影響を最小化できるようにスリット形または三角形であり得る。
【0050】
また、このような切欠溝の大きさは切欠溝の形成により正極と負極の短絡が起きない大きさ、すなわち、正極活物質層と負極活物質層が露出しない大きさで形成されることが好ましく、このような範囲内であればその大きさは限定されない。
【0051】
一方、前記電極組立体は積層体を含む形態であれば限定されず、スタック型電極組立体、ラミネーション・アンド・スタック型電極組立体、またはスタック・アンド・フォールディング型電極組立体であり得、詳細には、ラミネーション・アンド・スタック型電極組立体、またはスタック・アンド・フォールディング型電極組立体であり得る。
【0052】
このような電極組立体の詳しい製造方法と構成は当業界に公知されているので、本発明では詳しい説明を省略する。
【0053】
一方、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記電極組立体が二次電池ケースに電解液と共に内蔵されている二次電池が提供される。
【0054】
この時、前記電解液はリチウム塩非水系電解質であり得、前記二次電池はリチウム二次電池であり得る。
【0055】
前記構成は従来に良く知られているので、本発明で具体的な説明は省略する。
【0056】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば上記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用および変形を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上で説明した通り、本発明の一実施形態による二次電池用電極組立体は、分離膜に切欠溝を形成して分離膜に人為的な欠陥を与えることによって、それにより高温での分離膜収縮時に収縮方向および経路を誘導して、高温で発生し得る電極間のハードショートを遅延、および防止することによって、高温での発火を防ぎ二次電池の安全性を強化できる効果がある。
【外国語明細書】