(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178451
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】音響機器用嗜好性反映装置及び嗜好性反映方法
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024170115
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2021030459の分割
【原出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和広
(57)【要約】
【課題】固定的な出力特性ではなく、個別ユーザー毎の嗜好性に応じた出力特性を音響機器の出力音に反映する。
【解決手段】音響機器30に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための音響機器用嗜好性反映装置10であって、音響機器30の出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を記憶する特性記憶部13と、出力音に対するユーザーの反応を反映した反応情報に基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する制御部11と、特性記憶部13において制御部11が選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定する特性設定部15と、を備え、反応情報は、ユーザーが発した音声情報である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響機器に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記音響機器の出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を記憶する特性記憶部と、
出力音に対するユーザーの反応を反映した反応情報に基づき、前記特性記憶部に記憶された出力特性を選択する制御部と、
前記特性記憶部において前記制御部が選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定する特性設定部と、
を備え、
前記反応情報は、ユーザーが発した音声情報である、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記音声情報がポジティブである場合、前記制御部は既に設定された出力特性を変更しない、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記音声情報がネガティブである場合、前記制御部はユーザーに対し、メッセージ出力部を介して出力音に対する評価を問うメッセージを送出する、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記制御部は前記反応情報に加えて、周辺環境のノイズに基づき、前記特性記憶部に記憶された出力特性を選択する、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記音響機器がラジオであり、
前記制御部は前記反応情報に加えて、前記ラジオの受信電波の電界強度又は受信電波のマルチパス環境の少なくともいずれかに基づき、前記特性記憶部に記憶された出力特性を選択する、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記制御部が出力特性を変更する場合、前記制御部は既に設定された出力特性に比べて、高周波領域の出力レベルが小さい出力特性を選択する、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記制御部が出力特性を変更する場合、前記制御部は既に設定された出力特性に比べて、低周波領域の出力レベルが小さい出力特性を選択する、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の音響機器用嗜好性反映装置であって、
前記制御部は前記出力特性の選択にあたって、ユーザーの出力音に対する反応を推定するための機械学習を行った学習済みモデルを搭載した人工知能を用いる、
音響機器用嗜好性反映装置。
【請求項9】
音響機器に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための音響機器用嗜好性反映装置が実行する嗜好性反映方法であって、
前記音響機器の出力音に対するユーザーの反応を反映した反応情報に基づき、出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を選択し、
選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定し、
前記反応情報は、ユーザーが発した音声情報である、
嗜好性反映方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響機器用嗜好性反映装置及び嗜好性反映方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動車用ユーザーもてなしシステムを開示している。本システムにおいては、もてなし動作部の動作内容がユーザー生体特性情報の内容に応じて変化し、ひいては、自動車利用に際してのユーザーへサービス(もてなし)効果を、ユーザーの精神状態あるいは体調に応じさらなる適正化を図ることができる。具体的には、機能抽出マトリックスから特定される機能に対する動作制御時の基準参照情報が抽出され、この基準参照情報に別途取得されたユーザー生体特性情報に反映される体調ないし精神状態を加味して、選択された機能の動作内容の適正化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、自動車用ユーザーもてなしシステムにおいて、ユーザーの状態を検出し、検出結果に基づき車内照明やオーディオ用のコンテンツを変更する機能を開示している。しかしながら、本文献のシステムは、車両に搭乗したユーザー自身の嗜好性、環境等に応じて機器内部のパラメータ設定まで変更可能なものではなく、個別ユーザーに応じた細やかな設定変更を行うものではない。
【0005】
本開示は、個別ユーザーの音響についての嗜好性を音響機器の出力特性に反映するための音響機器用嗜好性反映装置及び嗜好性反映方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の音響機器用嗜好性反映装置は、音響機器に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための音響機器用嗜好性反映装置であって、前記音響機器の出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を記憶する特性記憶部と、出力音に対するユーザーの反応を反映した反応情報に基づき、前記特性記憶部に記憶された出力特性を選択する制御部と、前記特性記憶部において前記制御部が選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定する特性設定部と、を備え、前記反応情報は、ユーザーが発した音声情報である。
【0007】
本開示の嗜好性反映方法は、音響機器に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための音響機器用嗜好性反映装置が実行する嗜好性反映方法であって、前記音響機器の出力音に対するユーザーの反応を反映した反応情報に基づき、出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を選択し、選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定し、前記反応情報は、ユーザーが発した音声情報である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、固定的な出力特性ではなく、個別ユーザー毎の音響についての嗜好性に応じた出力特性を音響機器の出力音に反映することができ、ユーザーの満足度をより上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の音響機器用嗜好性反映装置を含む音響システムのブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、従来技術の音響機器における出力特性を示す周波数特性グラフである。
【
図2B】
図2Bは、本実施形態の音響機器用嗜好性反映装置における周波数特性グラフである。
【
図3】
図3は、音響機器用嗜好性反映装置の制御部が有する機能を分類したブロック図である。
【
図4】
図4は、音響機器用嗜好性反映装置が実行する嗜好性反映方法の一例の手順を含むフローチャートである。
【
図5】
図5は、音響機器用嗜好性反映装置が実行する嗜好性反映方法の他の例の手順を含むフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明者の知見)
ラジオ、カーステレオ等の音響機器は、出荷段階において出力音の特性に関わる音響特性が設定される。このような音響特性の設定は、例えば音質を低下させてでもノイズを低減させる設定を優先すべきか、あるいはその逆が良いか等、様々な試行錯誤を要する。
【0011】
これまでの設定は、設計担当者の感応評価、予め調査した顧客満足度スコア等の様な不十分な情報からの類推に頼らざるを得ない状況にある。したがって、個別ユーザーの嗜好性や環境に合わせたきめ細かな設定を、音響機器に反映することは十分に実現されていない。
【0012】
以下、図面を用いて、本開示に係る音響機器用嗜好性反映装置及び嗜好性反映方法を詳細に説明する。
図1は、実施形態の音響機器用嗜好性反映装置10を含む音響システム100のブロック図を示す。音響システム100は、ユーザーの嗜好性を反映した音を出力可能なシステムであり、音響機器用嗜好性反映装置10と、マイク21と、カメラ23と、音響機器30とを含む。音響システム100は、例えば車両のような乗物に搭載され、乗物に搭乗したユーザーの嗜好に合致した音を出力し得るが、音響システムの設置場所は特に限定されない。
【0013】
音響機器用嗜好性反映装置10は、音響機器30に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための装置であって、制御部11と、特性記憶部13と、特性設定部15と、メッセージ出力部17と、入力部19と、を備える。制御部11はプロセッサの如き演算装置により構成され、各種処理を行い音響機器用嗜好性反映装置10の動作を司る役割を果たす。特性記憶部13はメモリの如き記憶装置により構成される。特性記憶部13は、例えば、音響機器30の出力音のパターンに相当する出力特性を記憶している。音響機器30が後述するラジオ受信部35を備える場合、特性記憶部13は、ラジオの受信設定に相当する特性をも記憶している。ラジオの受信設定とは、例えば、オーディオのハイカット設定や、帯域幅制御等に関する設定である。特性設定部15は種々のハードウェア回路等により構成される。特性設定部15は、例えばDSP(Digital Signal Processor)回路によって構成される。特性設定部15は、音響機器30の出力音を出力特性に従って設定する。ここで、音響機器30が後述するラジオ受信部35を備える場合、「音響機器30の出力音を出力特性に従って設定する」とは、ラジオ受信部35の受信設定を変更することを含む。
【0014】
メッセージ出力部17はスピーカ等の音声出力装置や液晶ディスプレイ等の表示装置により構成され、音響機器30の出力音に対する評価を問うメッセージを送出する。入力部19はタッチパネル、スイッチ等の入力装置や、マイク等の音声入力装置により構成され、メッセージ出力部17が出力したメッセージに対し、ユーザーが入力した回答を受け付ける。
【0015】
マイク21は出力音に対するユーザーの音声を検出し、カメラ23は出力音に対するユーザーの反応を反映した表情、動作、態度等を撮像する。マイク21が検出するユーザーの音声及びカメラ23が撮像するユーザーの表情、動作、態度等は、出力音に対するユーザーの反応である反応情報である。更にマイク21は、音響システム100の周辺環境において、後述する音響機器30の出力部33を構成するスピーカから拾うラジオのノイズ、いわゆる聴感ノイズをも検出する。なお、音響システム100の周辺環境は、音響システム100が車両に搭載された場合には車内空間に相当する。聴感ノイズは、例えば20Hz~20kHzなどの音声帯域においていろいろな周波数成分を含んでいるノイズである。マイク21、カメラ23は、所定のインターフェースを介して音響機器用嗜好性反映装置10に接続されているが、音響機器用嗜好性反映装置10がマイク21、カメラ23を内蔵していてもよい。
【0016】
音響機器30は、操作部31と、出力部33と、ラジオ受信部35と、オーディオ音源部37とを備え、AMラジオ、FMラジオ等のラジオ、CD等の各種記憶媒体、ネットワークを介した各種の音声データ等を含む各種音源の音を出力し得るエンタテイメント装置である。操作部31はタッチパネル、スイッチ等の入力装置や、マイク等の音声入力装置により構成され、ユーザーによる音響機器30の操作入力、例えば音量操作、ラジオのチャンネル切替、イコライザー調整等、を受け付ける。出力部33は、増幅装置、スピーカ等により構成され、音を出力する。ラジオ受信部35は音源の一つであるラジオを受信し、その受信電波について、その電界強度、マルチパス環境等のデータを音響機器用嗜好性反映装置10に出力する。オーディオ音源部37はラジオ以外のオーディオ機器、例えばCD等の各種記憶媒体、ネットワークを介した各種の音声データ等の音源のデータを音響機器用嗜好性反映装置10に出力する。
【0017】
尚、音響機器用嗜好性反映装置10は、外部のクラウドシステムの如きネットワークと有線又は無線の通信インターフェースを介して接続可能である。
【0018】
図2Aは、従来技術の音響機器におけるユーザーの嗜好性に応じた出力特性を示す周波数特性グラフを示す。周波数特性グラフは、横軸が周波数、縦軸が音量レベルであり、音響機器の出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を視覚的に表すグラフである。音の感じ方は各人毎に異なっており、例えば一部のユーザーにとっては高音域の音がうるさい、と感じても、他のユーザーにとっては同じ高音域の音でもうるさいと感じないこともある。このようなユーザー毎の好みを嗜好性と呼ぶ。嗜好性の違いは、周波数特性グラフの形の違いとなって表れる。
【0019】
図2Aに示す様に、従来技術においては、設計担当者の感応評価、予め調査した顧客満足度スコア等の様な情報に基づき、単一の周波数特性グラフを用意し、音響機器はこの周波数特性グラフに沿う様な固定された出力特性をもって音を出力している。しかしながら、上述した様に音の嗜好性は各人毎に異なっており、固定された出力特性が人によっては必ずしも好ましいものとはいえず、例えば
図2Aの破線で丸く囲った部分の高音域の出力が、人によっては耳障りに聞こえる場合もあり得る。
【0020】
一方、
図2Bは、本実施形態の音響機器用嗜好性反映装置10における周波数特性グラフを示す。本実施形態の音響機器用嗜好性反映装置10は、予め特性記憶部13に音響機器30の出力音のパターンに相当する出力特性を複数記憶し、顧客の嗜好性を検出した上で、制御部11が検出した嗜好性に応じて適切な出力特性である周波数特性グラフを選択する。この選択を受けて、特性設定部15は音響機器30の出力音の出力特性を設定する。尚、出力特性の選択にあたって、制御部11は、ユーザーの出力音に対する反応を推定するための機械学習を行った学習済みの学習モデルを搭載した人工知能(AI;Artificial Intelligence)を用いることができる。
【0021】
図2Bは複数の周波数特性グラフ及びその選択の例を示している。本例の周波数特性グラフには、高音域の波形をある程度残す特性を持つ高音質型、高音域の音を削ってノイズを低減する特性を持つノイズ重視型、高音質型とノイズ重視型の中間の特性を持つ中音質型、等の予め設定された複数種類が予め準備されており、特性記憶部13に記憶されている。音響機器の30のユーザーが、高音質型の出力特性による出力音がうるさいと感じる場合、音響機器用嗜好性反映装置10は、高音質型の出力特性を中音質型の出力特性や、ノイズ重視型の出力特性に切り替える。もちろんユーザーが任意のタイミングで出力特性を更新することもできる。
【0022】
図3は、音響機器用嗜好性反映装置10の制御部11が有する機能を分類したブロック図である。制御部11は、マイク21、カメラ23、音響機器30から得られる情報に基づき、ユーザーにとって音響機器30の出力音が好ましいものか、すなわち嗜好性に合致したものであるかを判定し、判定結果に応じて
図2Bに示した周波数特性グラフで示される出力特性を選択し、場合によっては既存設定された出力特性を変更する。
【0023】
具体的に制御部11は、マイク21が検出したユーザーが発した音声情報をユーザーの反応情報として捉え、音声情報に基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。制御部11は、マイク21が検出した周辺環境のノイズに基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。更に制御部11は、カメラ23がユーザーを撮像して得られるユーザーの顔情報や動作情報を含む撮像情報をユーザーの反応情報として捉え、撮像情報に基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。
【0024】
マイク21からの周辺環境のノイズについては、ユーザーにとって耳障りなノイズか、耳障りでない、例えば軽めのノイズかを判定してよい。また、ユーザーの発する音声情報については、その声色からもたらされるユーザーの感情を判定してよい。更にユーザーが示す表情、動作を含む撮像情報については、表情、動作からもたらされるユーザーの感情を判定してよい。
【0025】
種々の方法がこのような判定にあたって利用可能であるが、例えばユーザーの音響機器30の出力音に対する反応を推定するための機械学習を行った学習済みモデルを搭載した人工知能(AI;Artificial Intelligence)を用いることが可能である。AIは、例えば学習済みモデルに所定フォーマットの入力情報を入力した場合の出力がAかBの2つの値しか取らない2値分類を用いて良否判定してよい。また、AIは、学習済みモデルに所定フォーマットの入力情報を入力した場合の出力がABCDEFGの7つの如き複数のクラスに多値分類した上で、クラスABGは「良」、クラスCEFは「否」、などのように判定してもよい。その他、AIは、学習済みモデルに所定フォーマットの入力情報を入力した場合の出力が単一のスカラー値となるように構成して、このスカラー値をスコアとして用いて、例えばスコア80以上ならば「良」、スコア80未満ならば「否」、などのように判定してもよい。「良」はユーザーにとって心地よい状態を意味し、「否」はユーザーにとって心地が良くない、例えばラジオのノイズがうるさいと思っている状態を意味する。
【0026】
特性記憶部13はAIの学習済みモデルを記憶することができる。制御部11は、特性記憶部13に記憶された学習済みモデルに上記のノイズ、音声情報、顔情報、動作情報等を所定フォーマットに成形した上で入力することにより、AI判定を行うことができる。なお、学習済みモデルはアップデートを行ってもよい。音響機器用嗜好性反映装置10は、取得したユーザーの嗜好性に関わる情報をクラウドシステム経由にてサーバ等にアップロードする。送信先のサーバ等の装置が機械学習を更に行い、更新された学習モデルを音響機器用嗜好性反映装置10装置がダウンロードして、以後、ダウンロード後の学習モデルを使用することができる。
【0027】
更に制御部11は、音響機器30の操作部31に対するユーザーの操作を反応情報として捉え、操作に基づき特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。このような操作は、例えばラジオのチャンネル切替、音響機器30のイコライザー調整等を含んでいる。チャンネル切替は、ユーザーが現在設定されているチャンネルを気に入っていないという感情が発露したものであり、イコライザー調整は、ユーザーが現在設定されているイコライザー設定を気に入っていないという感情が発露したものであり、いずれも音響機器30の出力音に対するユーザーの感情を反映しているものと把握される。
【0028】
更に制御部11は、ラジオ受信部35から得られるラジオの受信電波について、その電界強度又はマルチパス環境等の少なくともいずれかのデータに基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。電界強度、マルチパス環境等という指標は、出力音の品質を評価する尺度であり、音響機器30の出力音に対するユーザーの感情に影響を与え、ユーザーの感情を反映しているものと把握される。マルチパス環境はマルチパスノイズ等をも含んでおり、電波状態悪化のレベル指標である。例えこの指標が大きくても耳障りなノイズでない場合もあり、マイク21が検出したノイズのAI判定が補う。逆にマイク21が検出したノイズのAI判定のみを判断指標としても、ラジオ放送の内容そのものである可能性もあるため、ラジオ受信部35による受信電波そのものの状態をも判断指標とすることができる。
【0029】
更に制御部11は、オーディオ音源部37から得られるラジオ以外のオーディオ機器の音源のデータに基づき特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。制御部11は、オーディオ機器の出力特性を直接検出し、出力特性の設定に役立てることができる。
【0030】
特性設定部15は種々のハードウェア回路等により構成され、音響機器30の出力音を出力特性に従って設定する。特性設定部15は周波数特性設定回路、高周波数フィルタ回路等、出力音に関わる種々の回路を含んでおり、特性記憶部13において制御部11が選択した出力特性を参照し、特性記憶部13から選び、これに従って出力音を設定する。
【0031】
特性設定部15は、音響機器30の出力音を出力特性に従って設定するが、ここでの変更は上述した様に、ラジオ受信部35によるラジオ電波の受信設定を変更することを含む。ラジオの受信設定は、例えば帯域幅処理、高周波領域のカット処理、低周波領域のカット処理の三つの受信設定を含む。
【0032】
帯域幅処理は、受信するラジオ電波の帯域幅を、ユーザーの嗜好性に応じて制御する処理である。例えば、FMラジオの場合、中間周波数フィルタを狭くするほど、弱電界で希望放送局の選択性能が上がり、周囲雑音や、隣接放送局の影響を受けにくくなる。しかしながら、希望放送内容まで削って狭くすると音質が悪化する。帯域幅は、ユーザーがノイズ低減を重視するか、または音質を重視するか、といったユーザーの嗜好性に応じて設定される。特性設定部15は、ノイズ低減重視のユーザーの場合、ラジオ受信部35の受信帯域幅を比較的狭く設定し、音質重視のユーザーの場合、ラジオ受信部35の受信帯域幅を比較的広く設定する。
【0033】
高周波領域のカット処理は、高周波領域のカット処理量を、ユーザーの嗜好性に応じて変化させる処理である。例えば、ラジオの受信電波が弱電界であるとき、あるいは、マルチパス検出レベルが高いときに、ラジオ受信部35は、高周波領域のカット処理量を増加させることにより、ノイズを低減させることができる。特性設定部15は、例えば、高周波領域のカット処理量の増加量、あるいは、高周波領域のカット処理量の増加を開始する閾値となる電界強度およびマルチパス検出レベルを、ユーザーの嗜好性に応じて変化させることができる。例えば、特性設定部15は、受信電界強度が30dBu以下になったときに、ラジオ受信部35の高周波領域のカット処理量を受信電界強度およびユーザーの嗜好性に応じて変化させる。あるいは、例えば特性設定部15は、マルチパス検出レベルが高いときに、ラジオ受信部35の高周波領域のカット処理量をユーザーの嗜好性に応じて変化させる。尚、比較的値の高い60-70dBu位の受信電界強度からマルチパス検出レベルが高くなるため、特性設定部15は、受信電界強度に応じてラジオ受信部35の高周波領域のカット処理量を変化させる。
【0034】
低周波領域のカット処理は、ユーザーの嗜好性に応じた処理であり、高周波領域のカット処理に伴い、音が不明瞭になることを抑制するために行われる。ただし、低周波領域のカット処理の処理量は、高周波領域のカット処理の処理量に応じて決定されるわけではなく、両者はそれぞれ独立して制御されることが一般的である。
【0035】
尚、上述の帯域幅処理、高周波領域のカット処理、低周波領域のカット処理は、それぞれ独立して設定を変更可能であるが、ユーザーの嗜好性に応じてどれを優先して変化させるかは受信電界等の状況によって異なる。例えば弱電界の場合には帯域幅を狭くする処理を優先的に行うことができる。
【0036】
図4は音響機器用嗜好性反映装置10が行う、音響機器に対しユーザーの嗜好性を反映する嗜好性反映方法の手順を記したフローチャートを示す。尚、本例は音響機器30の音源がラジオである場合の手順を示している。
【0037】
制御部11は、ラジオ受信部35からの電界強度に関するデータに基づき、受信したラジオ電波が弱電界およびマルチパス環境の少なくとも一方に該当するか否かを判定する(ステップS101)。弱電界とは、例えば電界が所定のdBu、dBm値以下等、所定以下の出力値として定義してもよい。例えば制御部11は、30dBu以下の出力値を弱電界であると判定してよい。
【0038】
また、制御部11はラジオ受信部35からのマルチパス環境に関するデータに基づき、ラジオ電波の受信状況がマルチパス環境、すなわち多重波伝搬であるか否かを判定する。マルチパス環境であるか否の判定は、マルチパス検出レベルが所定値以上、例えば10dB以上であるか否かという数値に基づき行うことができる。ラジオ電波の受信状況が弱電界およびマルチパス環境ではない場合(ステップS101:No)、出力設定を変える必要はないのでそれ以上先の処理は行わず、ステップS101に戻る。
【0039】
ラジオ電波の受信状況が弱電界およびマルチパス環境の少なくとも一方である場合(ステップS101:Yes)、制御部11は、マイク21が検出した周辺環境のノイズに対するAIによる判定情報に基づき、ノイズの度合を判定する(ステップS103)。例えばAIが、ノイズがユーザーにとって耳障りである可能性がないと判定した場合(ステップS103:No)、出力設定を変える必要はないのでそれ以上先の処理は行わず、ステップS101に戻る。
【0040】
あくまで一例であるが、マイク21が検出した周辺環境のノイズについて、非常にきついノイズである可能性が10%、きついノイズである可能性が80%、中位のノイズである可能性が7%、軽いノイズである可能性が3%、であるとAIが判定したとする。きついノイズと、非常にきついノイズについては、ノイズがユーザーにとって耳障りである可能性があると制御部11が判定する(ステップS103:Yes)。中位のノイズと、軽いノイズについては、ノイズがユーザーにとって耳障りである可能性がないと制御部11が判定する(ステップS103:No)。上記の例においては、きついノイズである可能性が80%と、一番高い可能性を有しているので、制御部11はノイズがユーザーにとって耳障りである可能性があると判定する(ステップS103:Yes)。
【0041】
ノイズがユーザーにとって耳障りである可能性があると制御部11が判定した場合(ステップS103:Yes)、制御部11は、ユーザーが操作部31を操作してラジオのチャンネルを切替えたか否かを判定する(ステップS104)。チャンネル切替を検出した場合、すなわちユーザーが現在のチャンネルを気に入らずに切替えたことを検出した場合(ステップS104:Yes)、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して音響機器30の出力音に対する評価を問うメッセージを送出する(ステップS106)。メッセージの内容は、例えば、「ラジオのノイズがうるさいですか? 設定を変更しますか?」等、出力音に対するユーザーの評価を問うものであってよく、メッセージの内容は適宜設定可能である。送出されたメッセージに対し、ユーザーは、入力部19を介して回答を入力するか、メッセージを無視する。メッセージに対しユーザーから同意する回答を得られない場合(ステップS106:No)、すなわちユーザーの回答がメッセージに対し否定的である場合や回答がない場合、出力設定を変える必要はないのでそれ以上先の処理は行わず、ステップS101に戻る。回答は、入力部19がタッチパネル、スイッチ等の入力装置の場合はユーザーの手による操作に行われ、入力部19がマイク等の音声入力装置の場合はユーザーの音声入力により行われる。
【0042】
メッセージに対しユーザーから同意する回答を得られた場合(ステップS106:Yes)、制御部11が特性記憶部13に記憶された適切な出力特性を選択し、特性設定部15が、特性記憶部13において制御部11が選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定する(ステップS107)。この設定はユーザーの反応によって異なるが、例えばユーザーの反応がノイズや高音域を耳障りに感じたものである場合、制御部11は
図2Bの例の様に、既に設定された出力特性に比べて、高周波領域の出力レベルが小さい出力特性を選択することができる。すなわち、特性設定部15によって既に設定された出力特性が高音質型又は中音質型であり、この特性を変更する場合、制御部11は高音域の音を削ってノイズを低減する特性を持つノイズ重視型の出力特性を選択し、特性設定部15はノイズ重視型の出力特性を設定する。これにより、出力部33は以前に比べて高周波領域の出力レベルを抑えた音を出力し、ユーザーがノイズや高音域を耳障りに感じにくくなる。
【0043】
ステップS104にて操作部31によるチャンネル切替を検出しなかった場合(ステップS104:No)、制御部11は更に、ユーザーが操作部31を操作してイコライザーを調整したか、または音量操作をしたか否かを判定する(ステップS105)。操作部31によるイコライザー調整または音量操作を検出した場合(ステップS105:Yes)、上述したステップS106へ処理が遷移し、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して音響機器30の出力音に対する評価を問うメッセージを送出する。
【0044】
操作部31によるイコライザー調整または音量操作が検出されなかった場合(ステップS105:No)、制御部11は、マイク21の検出したユーザーの音声に対するAIによる判定情報に基づき、ユーザーの感情が音響機器30の出力音、本例ではラジオの音に対し肯定的であるか否か、すなわちポジティブであるか否かを判定する(ステップS108)。音声に対してポジティブな反応との判定を得たら(ステップS108:Yes)、出力設定を変える必要はないのでそれ以上先の処理は行わず、ステップS101に戻る。ポジティブな反応検出の例としては、鼻歌を検出した場合、声のトーンが通常より高い場合等である。
【0045】
音声に対してポジティブな反応との判定を得られなかった場合(ステップS108:No)、更に制御部11は、マイク21の検出したユーザーの音声に対するAIによる判定情報に基づき、ユーザーの感情が音響機器30の出力音、本例ではラジオの音に対し否定的であるか否か、すなわちネガティブであるか否かを判定する(ステップS109)。音声に対してネガティブな反応との判定を得たら(ステップS109:Yes)、上述したステップS106へ処理が遷移し、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して音響機器30の出力音に対する評価を問うメッセージを送出する。ネガティブな反応検出の例としては、「うるさい」、「いまいち」等の、ネガティブな発言を検出(例えば3回以上/日)した場合等である。
【0046】
音声に対してネガティブな反応との判定を得られなかった場合(ステップS109:No)、更に制御部11は、カメラ23の撮像したユーザーの撮像画像に対するAIによる判定情報に基づき、ユーザーの感情が音響機器30の出力音、本例ではラジオの音に対し肯定的であるか否か、すなわちポジティブであるか否かを判定する(ステップS110)。ポジティブな反応との判定を得たら(ステップS110:Yes)、出力設定を変える必要はないのでそれ以上先の処理は行わず、ステップS101に戻る。ポジティブな反応検出の例としては、笑顔の検出、身体動作が乗っている状態、動作のリズムの検出等がある。
【0047】
カメラの撮像画像に対してポジティブな反応との判定を得られなかった場合(ステップS110:No)、更に制御部11は、カメラ23の撮像したユーザーの撮像画像に対するAIによる判定情報に基づき、ユーザーの感情が音響機器30の出力音、本例ではラジオの音に対し否定的であるか否か、すなわちネガティブであるか否かを判定する(ステップS111)。音声に対してネガティブな反応との判定を得たら(ステップS111:Yes)、上述したステップS106へ処理が遷移し、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して音響機器30の出力音に対する評価を問うメッセージを送出する。ネガティブな反応との判定が得られなかったら(ステップS111:No)、出力設定を変える必要はないのでそれ以上先の処理は行わず、ステップS101に戻る。ネガティブな反応検出の例としては、不快な顔表情を検出(例えば3回以上/日)した場合等がある。
【0048】
本開示によれば、固定的な出力特性ではなく、個別ユーザー毎の嗜好性に応じた出力特性を音響機器の出力音に反映することができ、ユーザーの満足度をより上げることができる。
【0049】
特に本実施形態においては、ステップS104~S106の様に、操作部31によるチャンネル切替やイコライザー調整等、ユーザーの操作が反応情報の一つであり、操作の発生時に制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して出力音に対する評価を問うメッセージを送出することができる。よって、ユーザーに出力音の嗜好について確認した上で出力特性を変更するか否かを決定することができ、出力特性の設定変更の有無をより適切に判定することができる。
【0050】
また、本実施形態においては、ステップS108、S109の様に、マイク21から取得した、ユーザーが発した音声情報が反応情報の一つであり、ユーザーの嗜好を容易に取得することができる。また、音声情報がポジティブである場合、制御部11は既に設定された出力特性を変更せず、音声情報がネガティブである場合、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して出力音に対する評価を問うメッセージを送出することができる。よって、ユーザーに出力音の嗜好について確認した上で出力特性を変更するか否かを決定することができ、出力特性の設定変更の有無をより適切に判定することができる。
【0051】
更に本実施形態においては、ステップS110、S111の様に、カメラ23から取得した、ユーザーを撮像して得られる撮像情報が反応情報の一つであり、ユーザーの嗜好を容易に取得することができる。また、撮像情報がポジティブである場合、制御部11は既に設定された出力特性を変更せず、撮像情報がネガティブである場合、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して出力音に対する評価を問うメッセージを送出することができる。よって、ユーザーに出力音の嗜好について確認した上で出力特性を変更するか否かを決定することができ、出力特性の設定変更の有無をより適切に判定することができる。
【0052】
尚、本実施形態においては、音響機器30がラジオである場合、ステップS101の様に、制御部11はユーザーの反応情報に加えて、ラジオの受信電波の電界強度又は受信電波のマルチパス環境の少なくともいずれかを捉える。その上で、その後のステップにおける出力特性の選択に至っているため、制御部11は、ラジオの受信電波の電界強度又は受信電波のマルチパス環境の少なくともいずれかに基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択することができるといえる。
【0053】
また、本実施形態においては、ステップS103の様に、制御部11はユーザーの反応情報に加えて、周辺環境のノイズを捉える。その上で、その後のステップにおける出力特性の選択に至っているため、制御部11は、周辺環境のノイズに基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択することができるといえる。
【0054】
音響機器30の音源がラジオ以外のオーディオ機器などの音源、例えばCD等の記憶媒体やネットワークを介した各種の音声データである場合、ステップS101、S104を省略することができる。
図5はこのような音源における嗜好性反映方法の手順を記したフローチャートを示す。制御部11は、マイク21が検出した周辺環境のノイズに対するAIによる判定情報に基づき、ノイズの度合を判定する(ステップS103)。例えばAIが、ノイズがユーザーにとって耳障りである可能性がないと判定した場合(ステップS103:No)、制御部11は更に、ユーザーが操作部31を操作してイコライザーを調整したか、または音量操作をしたか否かを判定する(ステップS105)。他の処理は
図4に示したものと同じである。
【0055】
以上のように、音響機器30に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための音響機器用嗜好性反映装置10が、音響機器30の出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を記憶する特性記憶部13と、出力音に対するユーザーの反応を反映した反応情報に基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する制御部11と、特性記憶部13において制御部11が選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定する特性設定部15と、を備える。これにより、固定的な出力特性ではなく、個別ユーザー毎の嗜好性に応じた出力特性を音響機器30の出力音に反映することができ、ユーザーの満足度をより上げることができる。
【0056】
反応情報は、音響機器30の操作部31に対するユーザーの操作であり、操作の発生時に、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して出力音に対する評価を問うメッセージを送出する。これにより、ユーザーに出力音の嗜好について確認した上で出力特性を変更するか否かを決定することができ、出力特性の設定変更の有無をより適切に判定することができる。
【0057】
反応情報は、ユーザーが発した音声情報である。音声情報がポジティブである場合、制御部11は既に設定された出力特性を変更しない。音声情報がネガティブである場合、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して出力音に対する評価を問うメッセージを送出する。これにより、ユーザーが発した音声情報に基づいてユーザーの嗜好を取得し、出力音の出力特性を設定することができる。また、ユーザーに出力音の嗜好について確認した上で出力特性を変更するか否かを決定することができ、出力特性の設定変更の有無をより適切に判定することができる。
【0058】
反応情報は、ユーザーを撮像して得られる撮像情報である。撮像情報がポジティブである場合、制御部11は既に設定された出力特性を変更しない。撮像情報がネガティブである場合、制御部11はユーザーに対し、メッセージ出力部17を介して出力音に対する評価を問うメッセージを送出する。これにより、撮像情報に基づいてユーザーの嗜好を取得し、出力音の出力特性を設定することができる。また、ユーザーに出力音の嗜好について確認した上で出力特性を変更するか否かを決定することができ、出力特性の設定変更の有無をより適切に判定することができる。
【0059】
制御部11は反応情報に加えて、周辺環境のノイズに基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。これにより、周辺環境のノイズに基づき、出力特性を選択することができる。
【0060】
音響機器30がラジオであり、制御部11は反応情報に加えて、ラジオの受信電波の電界強度又は受信電波のマルチパス環境の少なくともいずれかに基づき、特性記憶部13に記憶された出力特性を選択する。これにより、ラジオの受信電波の電界強度又は受信電波のマルチパス環境の少なくともいずれかに基づき、出力特性を選択することができる。
【0061】
制御部11が出力特性を変更する場合、制御部11は既に設定された出力特性に比べて、高周波領域の出力レベルが小さい出力特性を選択する。これにより、ユーザーが高音域を耳障りに感じにくくなるように、出力特性を変えることができる。
【0062】
制御部11が出力特性を変更する場合、制御部11は既に設定された出力特性に比べて、低周波領域の出力レベルが小さい出力特性を選択する。これにより、ユーザーにとって音が不明瞭になることを抑制するように出力特性を変えることができる。
【0063】
制御部11は出力特性の選択にあたって、ユーザーの出力音に対する反応を推定するための機械学習を行った学習済みモデルを搭載した人工知能を用いる。これにより、人工知能による判定結果に基づいて、出力特性を選択することができる。
【0064】
音響機器30に対し、ユーザーの嗜好性を反映するための音響機器用嗜好性反映装置10が実行する嗜好性反映方法において、音響機器30の出力音に対するユーザーの反応を反映した反応情報に基づき、出力音における周波数毎の出力レベルを規定する出力特性を選択し、選択した出力特性を参照し、出力音の出力特性を設定する。これにより、固定的な出力特性ではなく、個別ユーザー毎の嗜好性に応じた出力特性を音響機器30の出力音に反映することができ、ユーザーの満足度をより上げることができる。
【0065】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示の音響機器用嗜好性反映装置及び嗜好性反映方法によれば、固定的な出力特性ではなく、個別ユーザー毎の嗜好性に応じた出力特性を音響機器の出力音に反映することができ、ユーザーの満足度をより向上させ得る音響機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 音響機器用嗜好性反映装置
11 制御部
13 特性記憶部
15 特性設定部
17 メッセージ出力部
19 変更指示入力部
21 マイク
23 カメラ
30 音響機器
31 操作部
33 出力部
35 ラジオ受信部
37 オーディオ音源部
100 音響システム