(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178457
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】注入システム、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20241217BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/168 540
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024171994
(22)【出願日】2024-10-01
(62)【分割の表示】P 2019119335の分割
【原出願日】2019-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】518234173
【氏名又は名称】株式会社サーキュラス
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】吹越 由美子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康史
(57)【要約】
【課題】ユーザーに利便性を提供する。
【解決手段】注入システムは、注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入装置と、シミュレーション結果を表示するディスプレイとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入装置と、
シミュレーション結果を表示する表示部とを備える、注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション結果を表示する表示部を備える注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、造影剤の注入プロトコルを生成する生成装置を備える注入装置が記載されている。そして、生成装置は、画素値及び持続時間の少なくとも一方の情報を取得する撮像条件取得部と、取得された画素値又は取得された持続時間に基づいて注入プロトコルを生成するプロトコル生成部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザーにより利便性を提供する注入システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一例としての注入システムは、注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入装置と、シミュレーション結果を表示する表示部とを備える。
【0006】
これにより、ユーザーに利便性を提供することができる。
【0007】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】表示部に表示されるシミュレーション画面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0010】
特に言及した場合を除き、造影剤という用語は、造影剤単体と、造影剤に加えて他の溶媒及び添加物を含む薬液との両方を含む。また、以下では、特に言及した場合を除き、画素値という用語は、造影されている撮像部位における、CT値、関心領域(ROI)に含まれる画素のCT値の和若しくは平均値、又は関心領域のSD値(標準偏差値)を含む。さらに、画素値は、これらの値から造影されていない撮像部位における値(例えば、単純CTにおける撮像部位のCT値)を減算して得られた値を含む。関心領域は予め設定されているか、又はユーザーが関心領域を選択できる。
【0011】
[第1実施形態]
注入システム120及び撮像システム130の概略図である
図1を参照して、不図示のシミュレータを備える注入システム120について説明する。本実施形態において、注入システム120及び撮像システム130の少なくとも一方は、被写体の組織における画素値の経時変化を予測するシミュレータを備えている。
【0012】
図1に示すように、注入システム120は、注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入装置の一例である注入ヘッド20と、シミュレーション結果を表示する表示部の一例であるタッチパネル26とを備えている。そして、注入ヘッド20は、シリンジに充填された薬液、例えば、生理食塩水及び各種造影剤を被写体に注入する。また、注入システム120は、注入ヘッド20を保持するスタンド22と、注入ヘッド20に有線又は無線接続されたコンソール23とを備えている。
【0013】
このコンソール23は、注入ヘッド20を制御する制御装置として機能すると共に、画素値の経時変化を予測するシミュレータとしても機能する。代替的に、注入システム120は、当該シミュレータとしても機能し、かつ注入ヘッド20に有線又は無線接続された外部装置をさらに備えていてもよい。また、コンソール23は、表示部及び入力部として機能するタッチパネル26を備え、注入ヘッド20及び撮像装置30と有線又は無線で通信できる。このタッチパネル26は、注入プロトコル、装置の入力状態、設定状態、注入結果、及び各種情報等を表示できる。また、ユーザーは、タッチパネル26によって、薬液情報、注入プロトコル、組織情報、被写体情報及び目標値(目標画素値と、目標画素値を維持する持続時間である目標持続時間)を入力できる。代替的に、注入システム120は、タッチパネル26に代えて、表示部としてのディスプレイと、入力部としてのキーボードとを備えていてもよい。
【0014】
さらに、注入システム120は、コンソール23に代えて、注入ヘッド20に接続された制御装置と、該制御装置に接続され且つ薬液の注入状況が表示される表示部(例えばタッチパネル)とを有していてもよい。この場合、当該制御装置が、画素値の経時変化を予測するシミュレータとして機能する。また、注入ヘッド20及び制御装置は、スタンド22と一体的に構成することもできる。さらに、スタンド22に代えて天吊部材を設け、該天吊部材を介して天井から注入ヘッド20を天吊することもできる。
【0015】
また、注入ヘッド20は、注入ヘッド20を遠隔操作する遠隔操作装置(例えばハンドスイッチ又はフットスイッチ)を有していてもよい。この遠隔操作装置は、注入ヘッド20を遠隔操作して注入を開始又は停止できる。さらに、注入ヘッド20は、電源又はバッテリーを有していてもよい。この電源又はバッテリーは、注入ヘッド20又は制御装置のいずれかに設けることができ、これらとは別に設けることもできる。
【0016】
注入ヘッド20は、薬液が充填されたシリンジが搭載されるシリンジ保持部と、注入プロトコルに従ってシリンジ内の薬液を押し出す駆動機構とを備えている。また、注入ヘッド20は、駆動機構の動作を入力するための操作部28を有している。操作部28には、例えば駆動機構の前進ボタン、駆動機構の後進ボタン、及び最終確認ボタンが設けられている。さらに、注入ヘッド20は、注入条件、注入状況、装置の入力状態、設定状態、及び各種注入結果が表示されるヘッドディスプレイを備えていてもよい。例えば、ヘッドディスプレイは、注入ヘッド20の側方に設置されるか、又は注入ヘッド20に内蔵される。さらに、ヘッドディスプレイは、ユーザーが操作可能なタッチパネル式のディスプレイであってもよい。この場合、ヘッドディスプレイは、
図2及び
図3に示す画面を表示してもよく、ユーザーは表示された画面から各情報を入力できる。
【0017】
造影剤が注入される際には、注入ヘッド20に搭載されたシリンジの先端部に延長チューブ等の付属品が接続される。そして、注入準備が完了すると、ユーザーが操作部28の最終確認ボタンを押す。これにより、注入ヘッド20は、注入を開始できる状態で待機する。注入を開始すると、シリンジから押し出された造影剤は、延長チューブを介して被写体の体内へ注入される。
【0018】
また、注入ヘッド20には、RFIDチップ、ICタグ、又はバーコード等のデータキャリアを有するプレフィルドシリンジ、及び種々のシリンジを搭載できる。そのため、注入ヘッド20は、シリンジに取り付けられたデータキャリアの読み取りを行う読取部を備えている。データキャリアには、薬液に関する薬液情報が記憶されている。さらに、注入ヘッド20は、3つ以上のシリンジ保持部を有していてもよく、又は1つのみのシリンジ保持部を有していてもよい。
【0019】
注入ヘッド20は、不図示のサーバー(外部記憶装置)から情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。また、撮像システム130の撮像装置30も、サーバーから情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。このサーバーは、例えば、RIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication System)、及びHIS(Hospital Information System)である。
【0020】
サーバーには、予め検査オーダーが記憶されている。この検査オーダーは、被写体に関する被写体情報と、検査内容に関する検査情報とを備えている。また、サーバーは、撮像装置30から送信された画像のデータ等の撮像結果に関する情報と、注入ヘッド20から送信された注入結果に関する情報を記憶できる。なお、注入ヘッド20及び撮像装置30を操作するために、外部の検像システム又は画像作成用ワークステーションを用いることもできる。
【0021】
撮像システム130は、造影剤を注入する注入ヘッド20と、注入ヘッド20に有線又は無線で接続され且つ被写体を撮像する医療用の撮像装置30とを備えている。この撮像装置30としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置等の各種医療用の撮像装置がある。以下では、撮像システム130がCT装置を備える例について説明する。
【0022】
撮像装置30は、撮像プランに従って被写体を撮像する撮像部31と、撮像装置30の全体を制御する制御装置32を有している。この撮像プランには、例えば、撮像部位、実効管電圧、機種名、メーカー名、撮像時間、管電圧、撮像範囲、回転速度、ヘリカルピッチ、曝射時間、線量、及び撮像方法が含まれている。そして、制御装置32は、撮像プランに従うように撮像部31を制御して被写体を撮像する。さらに、制御装置32は、画素値の経時変化を予測するシミュレータとしても機能する。また、制御装置32は、撮像部31、注入ヘッド20、及びサーバー(外部記憶装置)と有線又は無線によって通信できる。なお、シミュレータは、撮像プランに含まれる情報をさらに考慮して、より高精度なシミュレーションを行ってもよい。
【0023】
撮像部31は、寝台と、被写体にX線を照射するX線源と、被写体を透過したX線を検出するX線検出器とを有している。この撮像部31は、被写体にX線を曝射し、被写体を透過したX線に基づいて被写体の体内を逆投影することで、被写体の透視画像を撮像する。
【0024】
撮像装置30は、シミュレーション結果を表示する表示部として機能するディスプレイ33を有している。このディスプレイ33は、制御装置32に接続されており、装置の入力状態、設定状態、撮像結果、及び各種情報を表示する。代替的に、制御装置32とディスプレイ33とは、一体的に構成することもできる。さらに、撮像装置30は、入力部として機能するキーボード等のユーザインタフェース34を有している。ユーザーは、薬液情報、注入プロトコル、組織情報、被写体情報及び目標値等を含む情報を、ユーザインタフェース34から撮像装置30に入力できる。
【0025】
[シミュレータ]
被写体の組織における画素値の経時変化を予測するシミュレータ(灌流シミュレータ)について説明する。以下では、注入システム120及び撮像システム130の少なくとも一方が、検査部位における画素値の経時変化をシミュレーションするシミュレータを備える例について説明する。ただし、シミュレータが外部に設けられている場合には、注入システム120及び撮像システム130は、予測部を備えていなくともよい。この場合、予測部によるシミュレーション結果は、注入システム120及び撮像システム130の結果取得部が取得する。この結果取得部は、制御装置32又はコンソール23の制御部が備えていてもよい。
【0026】
シミュレータとして機能する制御装置32又はコンソール23は、CPU等からなる制御部と、制御プログラムを記憶している記憶部(メモリ)とを備えている。この制御部は、記憶部に記憶された制御プログラムに従ってシミュレータの各部を制御している。また、制御部は、結果取得部、予測部、被写体情報取得部、プロトコル取得部、組織情報取得部、薬液情報取得部、及び検査情報取得部を有している。さらに制御部は、目標値取得部を備えている。ただし、これらの複数の機能部は外部に設けられていてもよく、この場合に制御部は、複数の機能部の一部のみを備えている。
【0027】
記憶部に実装された制御プログラムに対応して制御部が各種処理を実行することにより、各部が各種機能として論理的に実現される。さらに、制御部は、表示部として機能するタッチパネル26又はディスプレイ33を制御して、被写体に関連する被写体情報、薬液に関連する薬液情報、及び部位情報の少なくとも一つの入力欄を表示させる。なお、予測部が制御装置32又はコンソール23の外部に設けられている場合、制御部の結果取得部が、予測部からシミュレーション結果を受け取る。そして、制御部は、結果取得部が受け取ったシミュレーション結果を、タッチパネル26又はディスプレイ33に表示させる。
【0028】
記憶部は、コンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体である。そして、記憶部は、制御部が動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、プログラム若しくはシステムソフトウェアを格納するROM(Read Only Memory)、又はハードディスクドライブを有する。また、記憶部は、被写体の組織における画素値の経時変化をコンピューター(制御部)に予測させるシミュレーションプログラムを記憶している。このシミュレーションプログラムは、他の記録媒体に記憶させることもできる。
【0029】
代替的に、制御部は、CD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)、CF(Compact Flash)カード等の可搬記録媒体、又はインターネットに接続されたサーバー等の外部記憶媒体に記憶された制御プログラム及びシミュレーションプログラムに従って、各種処理を制御することもできる。
【0030】
被写体情報取得部は、被写体に関する被写体情報を取得する。この被写体情報は、例えば、ヘモグロビン量、体重、身長、体表面積、心機能、心拍数、一回拍出量、心拍出量、推定糸球体濾過量(eGFR)、クレアチニン値、年齢、性別、除脂肪体重、ボディマス指数、循環血液量、被験者番号(被験者ID)、被験者の疾病並びに副作用の履歴、被験者氏名、生年月日、血液量、及び血流速度を含んでいる。
【0031】
また、被写体情報取得部は、タッチパネル26又はユーザインタフェース34を介して、ユーザーが入力した被写体情報を取得する。さらに、被写体情報取得部は、記憶部又は外部記憶装置から被写体情報を取得してもよい。このような外部記憶装置としては、例えば、RIS、PACS、HIS、検像システム、及び画像作成用ワークステーションがある。さらに、被写体情報取得部は、
図1に示す撮像装置30又は注入ヘッド20から被写体情報を取得してもよい。
【0032】
プロトコル取得部は、造影剤を含む薬液の注入プロトコルを取得する。このプロトコル取得部は、被写体情報取得部から取得した被写体情報に基づいて、注入プロトコルを生成して取得してもよい。また、プロトコル取得部は、タッチパネル26又はユーザインタフェース34を介してユーザーが入力した注入プロトコルを取得してもよい。注入プロトコルは、一例として、薬液の注入時間及び注入速度を含んでいる。さらに、注入プロトコルは、注入方法、造影剤注入箇所、注入量、注入タイミング、造影剤濃度、注入圧力、及び注入速度の加速度を含んでいてもよい。また、プロトコル取得部は、記憶部、外部記憶装置又は注入ヘッド20から注入プロトコルを取得してもよい。
【0033】
注入プロトコルは、造影剤の注入時間及び注入速度、生理食塩水の注入時間及び注入速度、造影剤の後押し注入の有無、注入速度の増減、クロス注入の有無、リンク速度設定の有無、及び注入用チューブの体積等の情報を含んでいてもよい。このクロス注入とは、注入開始から設定された時間が経過するまで、生理食塩水の注入速度より高速で造影剤を注入した後、注入速度が徐々に減少するように造影剤を注入すると同時に、注入速度が徐々に増加するように生理食塩水を注入する注入方法である。また、リンク速度設定とは、造影剤と生理食塩水の注入速度が同一になるように、両者の注入速度をリンクさせる設定である。
【0034】
さらに、プロトコル取得部は、入力された目標値に基づいて注入プロトコルを生成する。このプロトコル取得部は、予測部によるシミュレーション結果(例えばTDC)に対応する注入プロトコルを生成することもできる。さらに、プロトコル取得部は、検査情報、被験者情報及び薬液情報に基づいて、注入プロトコルを生成することもできる。代替的に、プロトコル取得部は、記憶部に記憶された注入プロトコルの中から、ユーザーが入力した条件を満たす注入プロトコルを読み出すことによって注入プロトコルを取得してもよい。
【0035】
組織情報取得部は、被写体の組織情報を取得する。この組織情報は、例えば、組織におけるコンパートメント数(血管及び臓器の分割コンパートメント数)、組織の体積(血管腔の体積)、毛細血管の体積、細胞外液腔の体積、単位組織あたりの血流量(血流速度)、組織における造影剤の染み出し速度(毛細血管透過性表面積)、組織における造影剤の染み戻り速度(毛細血管透過性表面積)、及び組織生来の画素値を含んでいる。コンパートメント数は、小さな体積を有する組織よりも大きな体積を有する組織の方が多くなるように設定してもよい。
【0036】
また、組織情報取得部は、タッチパネル26又はユーザインタフェース34を介してユーザーが入力した組織情報を取得する。組織には、心臓(右心室及び左心室)、血管、腎臓、尿管、その他の臓器及び筋肉が含まれる。例えば、組織情報取得部が組織生来の画素値を取得した場合、予測部は、各組織の生来の画素値に基づいて造影剤による増強の程度を予測する。また、組織情報取得部は、記憶部、外部記憶装置又は注入ヘッド20から組織情報を取得してもよい。
【0037】
薬液情報取得部は、薬液に関する薬液情報として、例えば造影剤及び生理食塩水に関する情報を取得する。この薬液情報取得部は、タッチパネル26又はユーザインタフェース34を介してユーザーが入力した薬液情報を取得する。薬液情報は、例えば、ヨード量、粘稠度、浸透圧比、造影剤量、生理食塩水量、製品ID、製品名称、化学分類、含有成分、濃度、消費期限、シリンジ容量、シリンジ耐圧、シリンダ内径、ピストンストローク、及びロット番号を含んでいる。代替的に、薬液情報取得部は、記憶部、外部記憶装置又は注入ヘッド20から薬液情報を取得してもよい。さらに、薬液情報取得部は、注入ヘッド20に内蔵された読取部から薬液情報を取得してもよい。この読取部は、注入ヘッド20に搭載されるシリンジに取り付けられたデータキャリアから薬液情報を読み取る。
【0038】
検査情報取得部は、検査に関連する情報として、特に検査部位を特定する部位情報を取得する。ユーザーは、タッチパネル26又はユーザインタフェース34から、検査情報を入力できる。この検査情報は、一例として撮像する検査部位を特定する部位情報、圧力リミット、使用ヨード量、管電圧(kV)、検査番号(検査ID)、検査日時、薬液種類、及び薬液名称を含んでいる。この部位情報は、撮像対象として選択される部位(範囲)を特定できる情報である。例えば部位情報は、検査部位名、撮像方法の名称、及び薬液の注入部位から検査部位までの距離を含む。
【0039】
目標値取得部は、目標値(目標画素値及び目標持続時間の少なくとも一方)を取得する。この目標値取得部は、タッチパネル26又はユーザインタフェース34を介してユーザーが入力した目標値を取得できる。代替的に、目標値取得部は、記憶部、外部記憶装置又は注入ヘッド20から、予め記憶された目標値を取得してもよい。制御部は、目標値取得部が取得した目標値に到達するシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを、タッチパネル26又はユーザインタフェース34に表示させる。この注入プロトコルは、プロトコル取得部が取得する。
【0040】
予測部は、シミュレーション結果を生成する。一例として、予測部は、画素値の経時変化を示す時間濃度曲線(以下、「TDC」(Time Density Curve)ともいう)を、シミュレーション結果として生成する。また、予測部は、被写体の組織の画素値の経時変化をシミュレーションする。すなわち、予測部は、取得した被写体情報と、注入プロトコルと、薬液情報と、検査情報とに基づいて、被写体の各組織の画素値の経時変化をシミュレーションする。さらに、予測部は、所定の画素値、例えば目標画素値が維持される予測持続時間を求める。シミュレーション後に、予測部は、時間ごとの各コンパートメントの画素値を、各組織と関連付けて記憶部に記憶させてもよい。
【0041】
一例として、予測部は、被写体情報取得部から、被写体情報として体重又は除脂肪体重を受け取る。また、プロトコル取得部は、被写体情報、薬液情報及び検査情報に基づいて、注入プロトコルを生成して予測部に受け渡す。例えば、プロトコル取得部は、検査部位、被写体の体重、及び造影剤のヨード量に基づいて、造影剤及び生理食塩水の注入時間及び注入速度を算出する。そして、予測部は、被写体の組織を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれにおいて、被写体の組織における画素値の経時変化をシミュレーションする。このシミュレーションは、被写体情報と、注入プロトコルと、組織情報とに基づいて実行される。これにより、予測部は、検査部位における画素値の経時変化を示すTDCをシミュレーション結果として生成する。
【0042】
さらに、予測部は、被写体情報取得部から、被写体情報として、ヘモグロビン量(g/dL)、体重(kg)、身長(cm)、心機能(%)、心拍数(bpm)、体表面積(m2)、心拍出量(L/min)、及びeGFRを受け取ってもよい。これにより、予測部は、より多くの情報に基づいて、より正確な高精度シミュレーションを行うことができる。その結果、例えば手術シミュレーションを行うために又は治療方針を決定するために、より画質が高い画像を撮像できるか若しくは三次元画像を作成できる。代替的に、予測部は、体表面積、心拍出量、及び推定糸球体濾過量の少なくとも1つを算出してもよい。例えば、体表面積は、体重及び身長に基づいて、藤本式、デュボア式又は新谷式によって算出できる。また、心拍出量は、体表面積、心機能及び心拍数に基づいて算出できる。また、eGFRは、クレアチニン値、年齢及び性別に基づいて算出できる。
【0043】
結果取得部は、例えばTDCを、検査部位における画素値の経時変化をシミュレーション結果として取得する。制御部が予測部を備える場合、結果取得部は予測部からシミュレーション結果を取得する。代替的に、結果取得部は、外部のシミュレータからシミュレーション結果を取得してもよい。
【0044】
なお、予測部が外部に設けられている場合、注入システム120又は撮像システム130は、被写体情報取得部と、薬液情報取得部と、検査情報取得部と、目標値取得部とを備え、予測部はこれらの各部から必要な情報を受け取ることができる。そして、注入システム120又は撮像システム130の結果取得部は、外部の予測部からシミュレーション結果を取得する。すなわち、注入システム120又は撮像システム130の各部と、外部の予測部とが協働してシミュレータとして機能する。
【0045】
[画素値の経時変化の予測]
以下、予測部によるシミュレーションの一例について説明する。被写体の各組織は、組織情報取得部から取得された組織の分割コンパートメント数に応じて、血流方向に沿って複数のコンパートメントに分割されている。予測部は、予測対象のコンパートメントを含む組織の体積と、当該組織の毛細血管体積と、当該組織の細胞外液腔体積とを、分割コンパートメント数で除算して、各コンパートメントについて画素値の経時変化を予測する。
【0046】
被写体の組織は、右心室、大動脈、静脈、動脈、脳(頭)、上肢、心筋(右冠動脈が支配的な心筋、前下行枝が支配的な心筋、回旋枝が支配的な心筋)、肺、肝臓、胃、脾臓、膵臓、腸管、腎臓、尿管、下肢、左心室、上行大動脈、下行大動脈、及び腹部大動脈を含む。そして、上肢静脈から注入された造影剤は、右心室、肺、左心室、大動脈(上行大動脈、下行大動脈)を介して各臓器に移動し、その後、静脈を介して右心室に到達する。そして、体内に注入された造影剤は、腎臓及び尿管を介して体外に排出される。
【0047】
予測部は、各組織(血管及び臓器)における画素値の変化を時間関数として求めるために、例えば下記式1のような微分方程式を用いる。ここでは、コンパートメントに流入する造影剤の濃度をC1とし、コンパートメントから流出する造影剤の濃度をC2とし、コンパートメントの体積をVとし、コンパートメントにおける単位組織あたりの血流量(血流速度)をQとしている。
【0048】
【0049】
さらに、予測部は、右心室、左心室、血管以外の組織における画素値の変化を求めるために、造影剤が毛細血管から細胞外液腔へと透過する際の染み出し速度と、細胞外液腔から毛細血管へと透過する際の染み戻り速度とを考慮する。そのため、予測部は、例えば下記式2及び式3のような微分方程式を用いている。ここでは、細胞外液腔の体積をVecとし、細胞外液腔の造影剤の濃度をCecとし、毛細血管の体積をVivとし、毛細血管の造影剤の濃度をCivとし、染み出し速度をPS1とし、染み戻り速度をPS2としている。
【0050】
【0051】
【0052】
予測部は、上記微分方程式を解くことにより、注入開始からの経過時間と画素値(造影剤濃度)の変化が時間関数として求める。さらに、予測部は、所定の排出速度に基づく造影剤の排出量を算出し、腎臓の毛細血管内の造影剤から当該排出量を減じてシミュレーションしてもよい。これにより、腎臓に到達した造影剤の一部が、体全体(血漿中)の合計造影剤量から減算されるようにシミュレーションが行われる。造影剤の排出をシミュレーションすることによって、体全体の合計造影剤量が経時的に減少するため、より精度の高いシミュレーションを行うことができる。
【0053】
シミュレーションが終了すると、予測部は、シミュレーション結果を記憶部に順次記憶させる。このシミュレーション結果は、検査部位における画素値の経時変化を示すTDCを含み、その他に組織に関連付けられた時間ごとの画素値の情報を含んでいてもよい。そして、制御部は、タッチパネル26又はディスプレイ33に、TDCを表示させる。代替的に、予測部は、特許第3553968号に記載の予測方法を用いてシミュレーションを行ってもよい。
【0054】
[設定画面]
図2及び
図3を参照して、表示部に先に表示される設定画面と、表示部に後に表示可能なシミュレーション画面とについて説明する。以下では、コンソール23がシミュレータとして機能して、タッチパネル26が表示部として機能する例について説明する。
【0055】
図2の入力画面は各種設定を入力するための設定画面である。この設定画面の右側上部には、ユーザーが設定を完了させて確認が終了したときに選択するチェックボタン11が表示されている。また、チェックボタン11の左側には、薬液情報入力欄12が表示されている。
図2の例では、薬液情報として造影剤の製品名称と、造影剤のヨード含有量300mg/mLが入力されている。さらに、チェックボタン11の下側には、注入ヘッド20に搭載されているシリンジ内の薬液充填量が表示されている。
図2の例では、造影剤シリンジ内の造影剤の充填量が140mLであり、生理食塩水シリンジ内の生理食塩水の充填量が130mLであることが示されている。
【0056】
薬液充填量の下側には、検査情報の一部を入力する第1検査情報入力欄16Aが表示されている。
図2の例では、第1検査情報入力欄16Aには、造影剤の使用ヨード量600mgl/kgと、圧力リミット300PSIが入力されている。第1検査情報入力欄16Aの下側には、シミュレーション結果を示す結果表示欄15Aに縮小TDCが表示されている。結果表示欄15Aに表示されている縮小TDCにおいて、横軸は注入開始からの経過時間(sec)に対応し、縦軸は画素値(HU)に対応する。このように、設定画面においてTDCを確認できるので、ユーザーに利便性を提供できる。
【0057】
結果表示欄15Aの左側には、注入プロトコルを入力するプロトコル入力欄14が表示されている。ユーザーは、プロトコル入力欄14において、薬液の注入速度、注入量、注入時間、及び注入開始タイミングの少なくともいずれか一つの情報を入力できる。このプロトコル入力欄14には、横軸が注入開始からの経過時間を示すグラフによって入力された注入プロトコルが示されている。
図2の例の注入プロトコルにおいては、注入開始後に造影剤が注入速度3.0mL/secで90ml(すなわち30sec)注入される。そして、造影剤の注入後(すなわち注入開始から30sec経過後)に、生理食塩水が注入速度3.0mL/secで45ml(すなわち15sec)注入される。代替的に、入力された注入プロトコルは、縦軸が注入速度又は注入量を示すグラフによって示してもよい。
【0058】
薬液情報入力欄12の下側には、被験者を模した画像が表示されており、当該画像の下側には第2検査情報入力欄16Bが表示されている。ユーザーは、第2検査情報入力欄16Bに表示された複数の組織名の中から検査部位を選択する。
図2の例では、肝臓と腎臓のうち、検査部位として肝臓が選択された状態が示されている。代替的に、部位情報は、被験者を模した画像の中から検査部位を選択するように入力してもよい。また、第2検査情報入力欄16Bの下側には、被写体情報入力欄17が表示されている。ユーザーは、第2検査情報入力欄16Bに被写体の体重を入力する。
図2の例では、被写体情報として、体重60kgが入力されている。
【0059】
目標値を入力したい場合、又はシミュレーション結果の詳細を確認したい場合、ユーザーは、結果表示欄15Aをタッチして選択する。結果表示欄15Aが選択されると、
図3に示すシミュレーション画面が表示される。結果表示欄15Aに代えて又は加えて、シミュレーション画面を表示するための表示ボタンを設定画面に表示させてもよい。表示されたシミュレーション画面では、設定画面よりもシミュレーション結果を示すTDCが大きく表示される。シミュレーション画面においても、チェックボタン11、薬液充填量、第1検査情報入力欄16A、第2検査情報入力欄16B、及び被写体情報入力欄17が表示されている。なお、第1検査情報入力欄16A、第2検査情報入力欄16B、及び被写体情報入力欄17は、ユーザーの再入力による入力内容の変更を受け入れてもよく、当該変更を受け入れなくともよい。
【0060】
シミュレーション画面の左側下部には、結果表示欄15Bに拡大TDCが表示されている。制御部は、この拡大TDCに、目標値としての目標画素値を入力する画素値入力欄18Aと、目標値としての目標持続時間を入力する持続時間入力欄18Bとを表示させる。
図3の例では、目標画素値400HU及び目標持続時間4secが入力されている。なお、ユーザーが入力する前は予め設定された目標値が表示され、予め設定された目標値は記憶部が記憶している。これにより、ユーザーが目標値を入力しなくとも、シミュレーション結果を表示させることができる。制御部は、予め設定された目標値に代えて、目盛のみを表示させてもよい。
【0061】
さらに、拡大TDCには、推奨される撮像タイミングを示すタイミング表示欄18Cが表示されている。この撮像タイミングは、制御部がシミュレーション結果から予想するとともに、タッチパネル26に表示させる。
図3の例では、撮像タイミングとして、注入開始から20sec経過時の始期から、注入開始から25sec経過時の終期までの範囲が2本の縦棒に挟まれた状態で示されている。この撮像タイミングは、目標画素値に到達してから目標画素値を下回る前までの範囲と一致するように、制御部の予測によって求められている。代替的に、当該始期を目標画素値に到達した時点と一致させるとともに、当該終期を予想画素値が再度目標画素値と一致する時点から撮像時間(例えば1sec)を差し引いた時点と一致させてもよい。これにより、撮像している間に渡って目標画素値を超える範囲を、撮像タイミングとして示すことができる。
【0062】
結果表示欄15Bの上側には、目標値の入力又は変更を確定させる変更ボタン19が表示されている。ユーザーは、目標値を入力して確認すると、変更ボタン19を選択する。そして、ユーザーによって目標値が入力された場合、予測部が再シミュレーションを行い、入力された目標画素値又は目標持続時間に到達するシミュレーション結果を生成する。結果取得部は、生成されたシミュレーション結果を予測部から再度取得する。例えば、再シミュレーションにおいては、入力された目標値に到達するようなTDCが生成されるように注入プロトコルが変更され、変更された注入プロトコルに基づいてシミュレーションが行われる。ただし、注入プロトコルの変更が不要であれば、既に設定されている注入プロトコルに基づいてシミュレーションが行われる。
【0063】
再シミュレーションで使用された注入プロトコルを確認したい場合、又は入力値を変更したい場合、ユーザーは、一例として体重入力ボタン13を選択する。これにより、制御部は、
図2に示す設定画面が再表示する。ユーザーは、設定画面において注入プロトコルの確認と、再入力による入力値の変更とを行うことができる。代替的に、制御部は、シミュレーション画面を、設定画面に重畳するようにポップアップ表示させてもよい。この場合、ユーザーは、設定画面にタッチして設定画面を前面に表示させることができる。
【0064】
制御部は、シミュレーション画面、又は設定画面に切替ボタンを表示させてもよい。一例として、入力可能な情報の数が少ない通常シミュレーションモードを表示する画面と、入力可能な情報の数が多い高精度シミュレーションモードを表示する画面とが、切替ボタンの選択に応じて切り替えられてもよい。高精度シミュレーションモードにおいて、予測部は、より多くの情報に基づく高精度シミュレーションを行う。そして、制御部は、より多くの情報に基づいて生成されたシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを、タッチパネル26に表示させる、
【0065】
この場合、結果取得部は、通常シミュレーションモードにおいて、通常の情報に基づいて生成されたシミュレーション結果を取得する。さらに、結果取得部は、高精度シミュレーションモードにおいて、通常よりも多くの情報に基づいて生成されたシミュレーション結果を取得する。高精度シミュレーションモードは、コンソール23に接続された外部装置が実行してもよい。結果取得部は外部装置からシミュレーション結果を受け取り、コンソール23と外部装置とが協働して機能的に一体のシミュレータとして機能する。代替的に、入力可能な情報の数が多い通常シミュレーションモードを表示する画面と、入力可能な情報の数が少ない高速シミュレーションモードを表示する画面とが、切替ボタンの選択に応じて切り替えられてもよい。高速シミュレーションモードにおいて、予測部は、より少ない情報に基づいて、より高速にシミュレーション結果を生成できる。
【0066】
[入力フロー]
ユーザーが注入ヘッド20の電源をオンにした後にシリンジを搭載すると、注入ヘッド20の読取部は、薬液情報(例えば製品ID)を読み取って制御部に送る。そして、制御部の薬液情報取得部は、読取部が読み取った薬液情報を取得する。また、制御部は、製品IDに基づく製品名称及びヨード含有量等を薬液情報入力欄12に表示させる。さらに、薬液情報取得部は、薬液情報入力欄12にユーザーが入力した製品名称を薬液情報として取得してもよい。薬液情報取得部は、取得した製品ID又は製品名称を、薬液情報として記憶部に一時的に記憶させる。
【0067】
そして、ユーザーは、被写体情報入力欄17に被写体情報として被写体の体重を入力する。すると、被写体情報取得部は、被写体の体重を被写体情報として取得して、記憶部に一時的に記憶させる。また、制御部は、被写体情報入力欄17に体重を表示させる。続いて、ユーザーは、第1検査情報入力欄16Aに圧力リミットと、使用ヨード量とを入力する。すると、検査情報取得部は、入力された圧力リミットと使用ヨード量を検査情報として取得して、記憶部に一時的に記憶させる。代替的に、使用ヨード量は、被写体の体重に基づいて制御部が算出して、自動的に第1検査情報入力欄16Aに表示してもよい。
【0068】
さらに、ユーザーは、第2検査情報入力欄16Bに表示された複数の部位の中から所望の検査部位(例えば肝臓)を選択してタッチする。すると、検査情報取得部は、入力された検査部位を部位情報として取得して、記憶部に一時的に記憶させる。また、制御部は、被験者を模した画像及び第2検査情報入力欄16Bにおいて、入力された検査部位を強調して表示させる。
図2の例では、入力された検査部位が他の部位とは異なる色で表示されている。なお、薬液情報、検査情報、及び被写体情報の取得順序又は入力順序は、適宜変更できる。
【0069】
プロトコル取得部は、検査情報、被験者情報及び薬液情報に基づいて、注入プロトコルとして注入速度及び注入時間を生成して取得する。そして、プロトコル取得部は取得した注入プロトコルを記憶部に一時的に記憶させ、制御部はプロトコル入力欄14に注入プロトコルを表示させる。代替的に、プロトコル取得部は、ユーザーがプロトコル入力欄14に入力した注入プロトコルを取得してもよい。さらに、プロトコル取得部は、外部のコンピューターが生成した注入プロトコルを取得してもよい。
【0070】
予測部は、薬液情報、検査情報、被写体情報、及び注入プロトコルに基づいてシミュレーションを行う。そして、予測部は、シミュレーション結果としてTDCを作成して、記憶部に一時的に記憶させる。制御部は、結果表示欄15Aに作成されたTDCを表示させる。ここで、記憶部は、検査部位ごとの目標画素値を予め記憶している。そこで、制御部は、仮の目標画素値をTDCに重畳表示させる。さらに、制御部は、仮の目標画素値が維持される持続時間を、仮の目標持続時間としてTDCに重畳表示させる。
図2の例では、制御部は、仮の目標画素値400HUと仮の目標持続時間4secを表示させている。
【0071】
ユーザーは、設定画面の表示内容、特に結果表示欄15Aに表示されたTDCを確認し、変更がなければチェックボタン11を選択する。これにより、注入準備が完了して、注入ヘッド20は注入可能状態で待機する。代替的に、ユーザーは、注入ヘッド20の最終確認ボタンを押してもよい。設定画面において入力した情報を変更する場合、ユーザーは、各入力欄に情報を再入力する。プロトコル取得部は、変更後の情報に基づいて、注入プロトコルを生成して取得する。予測部は、変更後の情報、及び変更された注入プロトコルに基づいて自動的にシミュレーションを行う。そして、予測部は、シミュレーション結果としてTDCを再度作成して、記憶部に一時的に記憶させる。制御部は、結果表示欄15Aに作成されたTDCを表示させる。
【0072】
これにより、ユーザーは、設定画面においてTDCを確認しながら、各情報を入力及び変更できる。代替的に、設定画面に変更ボタンを表示させて、ユーザーが変更ボタンを選択した時に、ユーザーの操作に応じて予測部が再びシミュレーションを行ってもよい。また、予測部は、注入プロトコルが変更されたときに、再びシミュレーションを行ってもよい。
【0073】
目標値を入力したい場合、又はTDCを拡大してシミュレーション結果の詳細を確認したい場合、ユーザーは、結果表示欄15Aにタッチして
図3のシミュレーション画面を表示させる。シミュレーション画面において、ユーザーは、画素値入力欄18A又は持続時間入力欄18Bに、目標値として目標画素値又は目標持続時間を入力する。そして、ユーザーが変更ボタン19をタッチして選択すると、予測部は、入力された目標値に到達するようなTDCと、当該TDCに対応する注入プロトコルとを再シミュレーションによって生成する。そして、プロトコル取得部は、予測部から注入プロトコルを取得して記憶部に一時的に記憶させる。
【0074】
その後、ユーザーは、注入プロトコルを確認するために、体重入力ボタン13を選択する。体重入力ボタン13が選択されると、制御部は、設定画面を再表示させるとともに、生成された注入プロトコルをプロトコル入力欄14に表示させる。ユーザーは、設定画面の表示内容、特にプロトコル入力欄14に表示された注入プロトコルを確認し、変更がなければチェックボタン11を選択する。これにより、注入準備が完了して、注入ヘッド20は注入可能状態で待機する。変更が不要である場合、ユーザーは、シミュレーション画面においてチェックボタン11を選択してもよい。
【0075】
以上説明した第1実施形態に係る発明によれば、各種設定を入力する際にTDCを確認できるため、ユーザーに利便性を提供することができる。
【0076】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0077】
例えば、目標値を設定画面において入力できるように、画素値入力欄18A及び持続時間入力欄18Bを設定画面に表示させてもよい。また、シミュレータは、撮像装置30及び注入ヘッド20の少なくとも一方に有線又は無線接続される外部コンピューターに搭載してもよい。この場合、シミュレータは、シミュレーション結果と、シミュレーション結果に対応する最適な注入プロトコルを、撮像装置30及び注入ヘッド20に送信する。また、結果表示欄15Aは、ポップアップ画面であってもよい。この場合、制御部は、予測部がシミュレーションを終了させたときに、設定画面に重畳するように結果表示欄15Aをポップアップ表示する。これにより、ユーザーが使用している設定画面のレイアウトを変更せずに、結果表示欄15Aを表示させることができる。そのため、ユーザーの設定環境を変更せずに、TDCを確認する機会を提供できる。
【0078】
さらに、
図3に示すシミュレ-ション画面においては、画素値入力欄18A、持続時間入力欄18B並びにタイミング表示欄18Cを含む結果表示欄15Bと、変更ボタン19のみが表示されてもよい。また、注入ヘッド20のヘッドディスプレイに設定画面又はシミュレーション画面を表示して、注入直前に情報を入力してもよい。例えば、注入直前に被写体の体重等を測定して被写体情報を取得して、取得した被写体情報を入力してもよい。これにより、より正確な被写体情報に基づいて、より高精度なシミュレーションを行うことができる。そのため、ユーザーは、撮像タイミングをより正確に把握して、より高品質な撮像結果を得ることができる。
【0079】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0080】
(付記1)
注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入装置と、
被写体に関連する被写体情報を取得する被写体情報取得部と、
薬液に関連する薬液情報を取得する薬液情報取得部と、
検査部位を特定する部位情報を取得する検査情報取得部と、
前記検査部位における画素値の経時変化をシミュレーション結果として取得する結果取得部と、
前記シミュレーション結果を表示する表示部と、
前記表示部を制御するととともに、前記被写体情報、前記薬液情報、及び前記部位情報の少なくとも一つの入力欄を前記表示部に表示させる、制御部とを備える、注入システム。
【0081】
(付記2)
前記シミュレーション結果を生成する予測部をさらに備える、付記1に記載の注入システム。
【0082】
(付記3)
前記制御部は、前記シミュレーション結果から撮像タイミングを予想するとともに、前記撮像タイミングを前記表示部に表示させる、付記1又は2に記載の注入システム。
【0083】
(付記4)
前記制御部は、目標画素値又は目標持続時間の入力欄を前記表示部に表示させる、付記1から3のいずれか一つに記載の注入システム。
【0084】
(付記5)
前記目標画素値又は前記目標持続時間が入力された場合、前記結果取得部は、前記目標画素値又は前記目標持続時間に到達するシミュレーション結果を再度取得する、付記4に記載の注入システム。
【0085】
(付記6)
前記結果取得部は、通常の情報に基づいて生成されたシミュレーション結果と、前記通常の情報より多くの情報に基づいて生成されたシミュレーション結果とを取得する、付記4に記載の注入システム。
【0086】
(付記7)
前記制御部は、前記より多くの情報に基づいて生成されたシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを、前記表示部に表示させる、付記6に記載の注入システム。
【0087】
(付記8)
目標画素値又は目標持続時間を取得する目標値取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記目標値取得部が取得した前記目標画素値又は前記目標持続時間に到達するシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを、前記表示部に表示させる、付記1から7のいずれか一つに記載の注入システム。
【符号の説明】
【0088】
20:注入装置、26:表示部、33:表示部、120:注入システム
【手続補正書】
【提出日】2024-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素値の経時変化のシミュレーション結果を表示する表示部と、
前記シミュレーション結果として、被写体の組織における画素値の経時変化を示す時間濃度曲線を前記表示部に表示させる制御部とを備え、
前記制御部は、撮像タイミングの始期から終期までの範囲が、前記時間濃度曲線に重なって表示されるように前記表示部を制御する、注入システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記シミュレーション結果から前記撮像タイミングを予想する、請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
前記制御部は、目標画素値に到達してから前記目標画素値を下回る前までの範囲と一致するように、前記撮像タイミングの前記範囲を予想する、請求項2に記載の注入システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記始期を示す縦棒と前記終期を示す縦棒とによって、前記撮像タイミングの前記範囲が表示されるように前記表示部を制御する、請求項1から3のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項5】
画素値の経時変化のシミュレーション結果を表示する表示部と、
ユーザが注入プロトコルを入力するためのプロトコル入力欄を表示する設定画面と、前記シミュレーション結果を表示するシミュレーション画面とを前記表示部に表示させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記設定画面の表示中に前記ユーザが所定の操作を行うと、前記シミュレーション画面が表示されるように前記表示部を制御する、注入システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記シミュレーション結果として、被写体の組織における画素値の経時変化を示す時間濃度曲線が表示されるように前記表示部を制御する、請求項5に記載の注入システム。
【請求項7】
前記制御部は、シミュレーションの結果表示欄、表示ボタン、又は切替ボタンを前記設定画面に表示させるとともに、
前記所定の操作は、前記結果表示欄、前記表示ボタン、又は前記切替ボタンを選択する操作である、請求項5又は6に記載の注入システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記プロトコル入力欄に代えて前記シミュレーション結果が表示されるように前記表示部を制御する、請求項5から7のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記シミュレーション結果が表示される場合に、前記プロトコル入力欄が表示されていた位置に前記シミュレーション結果が表示されるように前記表示部を制御する、請求項5から8のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記シミュレーション結果が表示される場合に、被験者を模した画像の下側に前記シミュレーション結果が表示されるように前記表示部を制御する、請求項5から9のいずれか一項に記載の注入システム。
【請求項11】
コンピュータと、画素値の経時変化のシミュレーション結果を表示する表示部とを備える注入システムの制御方法であって、
前記コンピュータは、
前記シミュレーション結果として、被写体の組織における画素値の経時変化を示す時間濃度曲線が表示され、且つ撮像タイミングの始期から終期までの範囲が、前記時間濃度曲線に重なって表示されるように前記表示部を制御する、制御方法。
【請求項12】
コンピュータと、画素値の経時変化のシミュレーション結果を表示する表示部とを備える注入システムの制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記シミュレーション結果として、被写体の組織における画素値の経時変化を示す時間濃度曲線が表示され、且つ撮像タイミングの始期から終期までの範囲が、前記時間濃度曲線に重なって表示されるように前記表示部を制御させる、制御プログラム。