(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178467
(43)【公開日】2024-12-24
(54)【発明の名称】Tie2活性化剤、血管の成熟化剤または血管の安定化剤、その飲食品、並びに毛細血管改善剤、毛細血管改善用飲食品
(51)【国際特許分類】
A61K 36/54 20060101AFI20241217BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20241217BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241217BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241217BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
A61K36/54
A61P9/14
A61P9/00
A61P43/00 111
A23L33/105
A61K127:00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024173327
(22)【出願日】2024-10-02
(62)【分割の表示】P 2024031765の分割
【原出願日】2024-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2023082801
(32)【優先日】2023-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023192631
(32)【優先日】2023-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 博覧会名(ひと・社会・地球の健康を考えるビジネストレード&セミナー 健康博覧会 Health & Wellness Japan)、開催日(令和5年2月8日~令和5年2月10日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 試供品およびチラシの郵送、郵送日(令和5年3月15日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名(沖縄発 楽管茶)、発行者名(日本亜健康研究所 自然療法センター)、発行年月日(令和5年2月13日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物名(「楽管茶」により毛細血管健康改善の実例)、発行者名(日本亜健康研究所株式会社)、発行年月日(令和5年4月1日)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 試飲実証実験試験日(令和5年2月5日~令和5年3月30日)、試験場所(日本亜健康研究所 自然療法センター)
(71)【出願人】
【識別番号】315013892
【氏名又は名称】日本亜健康研究所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【弁理士】
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】柯 彬
(72)【発明者】
【氏名】梁 運飛
(57)【要約】
【課題】その有効成分でTie2を活性化させるとともに血行促進を図り、かつその有効成分の体内への吸収率を高め、それにより毛細血管改善を実現することができるTie2活性化剤、血管の成熟化剤または血管の安定化剤、その飲食品、並びに毛細血管改善剤、毛細血管改善用飲食品を提供する。
【解決手段】その本発明に係る茶はルイボスの葉部および/または枝部の加工物と、オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の葉部の加工物と、シナモンの枝部および/または皮部の加工物と、紅花の加工物と、黒豆の加工物と、を有効成分として含有する。16名のボランティアにその茶を飲ませ、マイクロスコープにより指先の毛細血管の状態および血流速度を飲む前後にて観察と測定し、その飲食品により毛細血管の改善効果があるか否かを調べた。その結果飲食品は毛細血管の形、血管ループの長さ、血管の太さ、毛細血管周辺組織の明るさおよび血流速度にて改善効果が確認された。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の葉の抽出物を有効成分として含有する、
Tie2活性化剤。
【請求項2】
オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の葉の抽出物を有効成分として含有して、Tie2活性化作用に基づく血管の成熟化作用または血管の安定化作用を有する、
血管の成熟化剤または血管の安定化剤。
【請求項3】
Tie2の活性化、血管の成熟化、および血管の安定化の少なくともいずれかのために用いられる飲食品であって、
請求項1に記載のTie2活性化剤、請求項2に記載の血管の成熟化剤、および請求項2に記載の血管の安定化剤の少なくともいずれかを含有する、
飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tie2活性化剤、血管の成熟化剤または血管の安定化剤、その飲食品、並びに毛細血管改善剤、毛細血管改善用飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
毛細血管は、血管の末梢部位において小動脈と小静脈の間の直径6~15μmの網目状な細い血管であり、全身の血管の99%に当たって、組織に栄養、酸素、ホルモン等を送達し、老廃物を体外に排出する役割とともに水分、体温の調節にも関与している。このため毛細血管の健全性は身体の健康に深く影響している。
【0003】
毛細血管の新生は、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)に関与している。VEGFが血管内皮細胞に作用すると細胞の分裂や遊走、分化などを誘導し、その結果、既存の血管から枝分かれした新たな血管が形成される。一方、新生毛細血管の構造的な成熟化および成熟した毛細血管の構造的安定化は、壁細胞から分泌されるアンジオポエチン-1(angiopoietin1;Ang-1)と血管内皮細胞膜上に存在する受容体型チロシンキナーゼ(tyrosine kinase with Ig and EGF homology domain-2;Tie2)に左右される(たとえば非特許文献1~3参照)。
【0004】
毛細血管の管壁は1個の壁細胞が複数の内皮細胞の外腔面から直接的に接着して形成される。具体的には、壁細胞から分泌されるAng-1は血管内皮細胞膜上のTie2受容体と結合し、Tie2にリン酸化をさせ活性化にし、活性化されていた血管内皮細胞同士はぴったりと密着して、内皮細胞間の接着斑を形成する。そして、壁細胞が内皮細胞に対し裏打ちすることにより頑丈な毛細血管の管壁となる。
【0005】
加齢や生活習慣の乱れ、炎症応答、過剰に増えた活性酸素などによって壁細胞の機能は弱化になると、アンジオポエチン-1の分泌が減少し、Tie2の活性化ができなくなって、壁細胞が内皮細胞からはがれやすくなり、内皮細胞間の接着斑も崩壊し、血管の安定性が崩れ、毛細血管の形状を保(たも)てなくなった。そして、内皮細胞同士の間の接着斑が崩壊された毛細血管は曲がりくねっていて、萎縮して、管腔を拡大化された。内皮細胞間に隙間ができたので、毛細血管内の細胞や液性因子などの内環境因子が容易に血管外に漏出し、血流速度も遅くなった。
【0006】
毛細血管は45歳くらいから衰えていて(たとえば非特許文献4参照)、本発明者らが試験対象(後述参照)とした30代から70代の指先毛細血管受検者のうち、80%以上は血管の曲がり、ねじり、萎縮、太くなり、バイパス血管の形成などの血管変形、濃い褐色あるいはピンク色の靄(もや)などの血管漏れの異常現象、血流速度低下などの劣化症状が見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Suni C et al.: Requisite role of Angiopoietin-1, a ligand for the TIE 2 receptor, during embryonic angiogenesis. Cell 87: 1171-1180, 1996.
【非特許文献2】Fukuhara S et al.: Angiopoietin-1/Tie2 receptor signaling in vascular quiescence and angiogenesis, Histol Histopathol. 25, 2010.
【非特許文献3】福原茂朋、望月直樹: アンジオポエチン-1による血管安定化メカニズム、日本薬理学雑誌、くすりとからだ、日本薬理学会、136(1):26-30, 2010.
【非特許文献4】Kajiya K et al.: Structural alterations of the cutaneous vasculature in aged and in photoaged human skin in vivo. J Dermatol Sci. 61:206-207, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の課題を解決するため本発明者らは鋭意検討を進めた結果、加齢などの原因により起こった毛細血管の劣化などを対処するため、発明者らは、Tie2を活性化させるとともに血行促進を図る有効成分を見出し、かつその有効成分を腸内に吸収させることを促進させる本発明を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii、別名:沖縄カラキ)の葉部の抽出物が、Tie2活性化、血管の成熟化または血管の安定化の効果を有することを見出し、本発明を完成した。さらに、本発明者らは、Tie2を活性化させる植物エキスがあり、血行促進される成分があり、および有効成分を腸内に吸収を促進させる乳酸菌エキスを含めるとの四要素に基づいて、前述のオキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の他に、Tie2を活性化させる成分を有する、シナモンおよびルイボス、血行促進作用がある紅花、血液を増やして血流を促進させる黒豆、および腸内フローラを良好にして腸の消化と吸収機能を高める乳酸菌をブレンド(混合)して構成される本発明を完成した。
【0010】
つまり、前述の課題を解決するための手段としては、後記のとおりである。
[1]
オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の葉の抽出物を有効成分として含有する、
Tie2活性化剤。
[2]
オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の葉の抽出物を有効成分として含有して、Tie2活性化作用に基づく血管の成熟化作用または血管の安定化作用を有する、
血管の成熟化剤または血管の安定化剤。
[3]
Tie2の活性化、血管の成熟化、および血管の安定化の少なくともいずれかのために用いられる飲食品であって、
[1]に記載のTie2活性化剤、[2]に記載の血管の成熟化剤、および[2]に記載の血管の安定化剤の少なくともいずれかを含有する、
飲食品。
[4]
ルイボスの葉部および/または枝部の加工物と、
オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の葉部の加工物と、
シナモンの枝部および/または皮部の加工物と、
紅花の加工物と、
黒豆の加工物と、
を有効成分として含有する、毛細血管改善剤。
[5]
前記加工物はいずれも乾燥粉砕物である、
[4]に記載の毛細血管改善剤。
[6]
乳酸菌をさらに含有する、
[4]に記載の毛細血管改善剤。
[7]
毛細血管改善のために用いられる飲食品であって、[4]に記載の毛細血管改善剤を含有することを特徴とする飲食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、その有効成分でTie2を活性化させるとともに血行促進を図り、かつその有効成分の体内への吸収率を高め、それにより毛細血管改善を実現することができる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」ともいう。)またはその実施例を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る飲食品を摂取する前後の数値の変化を示す第1のグラフ(毛細血管直径)
【
図2】本発明に係る飲食品を摂取する前後の数値の変化を示す第2のグラフ(血管ループの長さ)
【
図3】本発明に係る飲食品を摂取する前後の数値の変化を示す第3のグラフ(血流速度)
【
図4】本発明に係る飲食品を摂取する前の血管の様子を示す写真(毛細血管像)
【
図5】本発明に係る飲食品を摂取した後の血管の様子を示す写真(毛細血管像)
【
図6】本発明に係る飲食品を摂取する前の血管の様子を示す写真(毛細血管ループの長さと血流速度)
【
図7】本発明に係る飲食品を摂取した後の血管の様子を示す写真(毛細血管ループの長さと血流速度)
【
図8】楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管血流速度の改善効果
【
図9】楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管の長さの改善効果
【
図10】楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管太さの改善効果
【
図11】楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管本数の改善効果
【
図12】楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)により変形した毛細血管の改善効果
【
図13】楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管周りの靄の改善効果
【
図14】楽管茶群と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管改善効果の比較
【
図15】楽管茶群検証番号15、60歳の女性の観察結果
【
図16】楽管茶群検証番号11、52歳の男性の観察結果
【
図17】楽管茶群検証番号4、73歳の男性の観察結果
【
図18】楽管茶群検証番号14、54歳の男性の観察結果
【
図19】ウエスタンブロットにより検出した各試料におけるリン酸化されたTie2タンパク質のバンドを示す図
【
図20】Tie2リン酸化データをグラフ化したもの
【
図21】第4実施例での事例1の一回目の検査結果を示す写真
【
図22】第4実施例での事例1の二回目の検査結果を示す写真
【
図23】第4実施例での事例1の三回目の検査結果を示す写真
【
図24】第4実施例での事例1の四回目の検査結果を示す写真
【
図25】第4実施例での事例2の一回目の検査結果を示す写真
【
図26】第4実施例での事例2の二回目の検査結果を示す写真
【
図27】第4実施例での事例2の三回目の検査結果を示す写真
【
図28】第4実施例での事例2の四回目の検査結果を示す写真
【
図29】第5実施例での検査結果である、ウエスタンブロットの写真
【
図30】第5実施例での検査結果であるデータグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る毛細血管改善剤、毛細血管改善用飲食品、並びにTie2活性化剤、血管の成熟化剤または血管の安定化剤、その飲食品を具体的に開示する1または複数の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、すでによく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0017】
また、特段のことわりがない限り、この明細書および添付された請求項において使用されるパラメーター、反応条件および成分の濃度などを表すすべての数は、すべての例において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、反対に指示されない限り、以下の明細書および添付の請求項において示された数的パラメーターは、少なくとも特定の分析技法に依存して変化し得る近似である。
【0018】
<用語の説明>
「を含む」および「を含有する」と同義である用語「を含む」または「により特徴づけられる」は、包括的または開放型な意味で解釈されるものであり、追加の、挙げられていない要素または方法のステップを排除しない。「を含む」は、請求項の言語で使用される技術用語であり、それは名を挙げられた請求項要素は必須であるが、他の請求項要素が追加されて請求項の範囲内で構成物をさらに形成してもよいことを意味する。
【0019】
また、本明細書において使用する、「からなる」という語句は、請求項で特定されていない、いかなる要素、ステップまたは成分も排除する。語句「からなる(またはその変形)」が、プリアンブルの直後ではなくむしろ、請求項の本体の節に現れる場合、それは、その節において示された要素のみを限定し、他の要素が当該請求項全体から排除されるのではない。本明細書において使用する語句「から本質的になる」は、請求項の範囲を、特定された要素または方法ステップに加えて、請求された対象事物の主成分および新規な特徴(単数または複数)に実質的に影響しないものに限定する。
【0020】
用語「を含む」、「からなる」および「から本質的になる」に関して、これら3つの用語の1つが本明細書において使用される場合、本発明で開示されたおよび請求された対象事物は、他の2つの用語のいずれかの使用も含むこともある。したがって、そうではないと明示的に挙げなかったいくつかの実施形態において、「を含む」の任意の場合が、「からなる」または「から本質的になる」によって置き換えられ得る。
【0021】
用語「工程」もしくは「ステップ」は、プロセスまたは方法の特徴に関連して、明示的に用いられ、または暗示的に用いられ得る。しかしながら、順番または手順について明記されない限り、このような明示的な工程もしくはステップの間、または暗示的な工程もしくはステップの間における、順番または手順は、限定されない。
【0022】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。本実施形態は、毛細血管改善剤、および毛細血管改善用飲食品に関するものである。
【0023】
本実施形態では、毛細血管改善用飲食品(以下「飲食品」ともいう)は、毛細血管改善剤として、ルイボスの葉部および枝部の少なくともいずれかの加工物と、シナモンの葉部および枝部の少なくともいずれかの加工物と、紅花の加工物と、黒豆の加工物と、を有効成分として含有して提供される茶である。つまり、前述の加工物は、いずれも乾燥粉砕物である。また、本実施形態の飲食品は、乳酸菌をさらに含有する。
【0024】
換言すると、本実施形態の飲食品は、Tie2を活性化させる植物エキスがあり、血行促進される成分があり、および有効成分を腸内に吸収を促進させる乳酸菌エキスを含めるとの三要素に基づいて、Tie2を活性化させる成分を有するシナモンとルイボス、血行促進作用がある紅花、血液を増やして血流を促進させる黒豆および腸内フローラを良好にし、腸の消化と吸収機能をアップさせる乳酸菌をブレンドしてなる茶である。本発明者らは、この茶を「楽管茶」とも称呼している(後述参照)。
【0025】
本実施形態に係る飲食品の有効成分のシナモン(Cinnamomum)とルイボス(Aspalathuslinearis)は、アンジオポエチン-1と同様なTie2を活性化させるピペリン(piperine)という物質が含まれている。ピペリンは血流によって毛細血管に到着する際、血管内皮細胞のTie2受容体と結合してTie2にリン酸化(活性化)をさせ、そして毛細血管を修復され、血管構造を強化させる役割を果たし、毛細血管の正常化および安定化を保っている。
【0026】
また、シナモンは、辛味と甘味を持って、体を温める作用のある温熱性で、多くの経絡に作用し経絡とその側枝を温めて寒を散らし、陽の気の循環を改善および心臓の陽を強化することにより、血液循環を活性化し、冷えからくる腹痛や関節痛、月経痛などの痛みを和らげる。ルイボスはノンカフェイン、低タンニン、緑茶よりも多くのポリフェノールを有する。
【0027】
漢方薬によく用いられている生薬の紅花は、体を温める作用のある温性で、滞った血行をスムーズにさせて、優れた活血化症作用で血行障害による諸症状を改善し、血液循環を活性化させてうっ血を解消し、痛みの和らげ(緩和)や月経不順および冷え症に役立つ。血行を促進し体を温める効果があるため血行促進の生薬として日本薬局方に収録されている。
【0028】
黒豆は、血液を増やし血流をアップさせる機能性物質と知られているアントシアニンが多く含まれる。アントシアニンは強い抗酸化作用を持ち、血小板の凝固を抑制する効果もあるので、毛細血管の保護、血管機能と循環機能の改善が期待できる。また、アントシアニンの応用により血管に関連する死亡リスクを減らすことが確認されている。
【0029】
ルイボス、シナモン、紅花および黒豆の加工物としては、特に制限はなく、その加工対象部分はその目的に応じて適宜選択することが可能であり、たとえば、葉部、枝部、茎部、花部、果実部、根部および皮部などが例示される。ここで、これらの中でも、ルイボスの場合には葉部および/または枝部が好ましい。シナモンの場合には皮部が好ましい。紅花の場合には花部が好ましい。黒豆の場合には豆本体そのものおよび/または皮部が好ましい。
【0030】
それら加工物の部位の調製方法としては、該当部位を乾燥させた後、そのまままたは粉砕機を用い粉砕してその乾燥粉砕物を茶の材料として用いる。すなわち、本実施形態では、それぞれの乾燥物の粉砕物をたとえばティーバッグなどの収納袋に収納して茶の態様で毛細血管改善用飲食品として提供される。その乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0031】
飲食者は、その収納袋をたとえばお湯や水の中に投入してその有効成分をお湯または水に抽出した状態で飲食する。その飲食を通じて、飲食者は、有効成分を摂取することが可能である。
【0032】
なお、本実施形態では加工物いずれも乾燥粉砕物とされるが、それに限定されず、その抽出物(エキス)を用いてもよい。抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法により容易に得ることが可能である。抽出物としては、特に制限はなく、その目的に応じて適宜選択することが可能であり、たとえば、抽出液の希釈液、濃縮液、抽出液の乾燥物などが挙げられる。
【0033】
また、その抽出方法としては、特に限定はなく、その目的に応じて適宜選択することが可能であり、たとえば抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料である前述の植物の抽出部位を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣(ざんさ)を除くことにより抽出液を得る方法などが例示される。
【0034】
また、本実施形態の飲食品には、整腸作用がある乳酸菌が含有される。乳酸菌のうちEC-12株が好ましい。EC-12株は、腸内フローラを良好にし、腸の消化と吸収機能を向上させる。乳酸菌EC-12株を摂取すると、腸内のビフィズス菌が約2.3倍に増加し、排便量が増えることが実験で確認されている(Terada A et al.: Effects of the consumption of heat-killed Enterococcus faecalis EC-12 preparation on microbiota and metabolic activity of the faeces in healthy adults. Microbial Ecology in Health and Disease.16(4):188-194, 2004.)。そして、有効成分の吸収の促進するため多くのサプリメントにはその乳酸菌株が添加されている。
【0035】
また、その抽出条件(抽出時間および抽出温度)、並びに抽出溶媒の使用量としては、特に限定はなく、その目的に応じて適宜選択することが可能である。
【0036】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態は、Tie2活性化剤、血管の成熟化剤または血管の安定化剤、およびその飲食品に関するものである。
【0037】
本実施形態では、アルコール(たとえばメタノール)により抽出した沖縄カラキ(オキナワニッケイ:学名 Cinnamomum sieboldii Meisn.)の葉(葉部)のエキスを用いる、Tie2活性化剤、血管の成熟化剤または血管の安定化剤、およびその飲食品である。つまり、オキナワニッケイ(Cinnamomum sieboldii)の葉部の抽出物を有効成分として含有するものである。なお、オキナワニッケイは、沖縄では沖縄カラキとも呼ばれている。
【0038】
従前の知見では、試験管内では、シナモン(カラキの幹の皮部分)からの抽出物によりTie2を活性化させる作用が実証されるが、その葉部ではTie2の活性化作用があるかどうか明らかにされていなかった。また、準絶滅危惧種に指定されている沖縄の貴重な木とする沖縄カラキに対する保全活動を行っているので、幹の皮を使えなくなり、沖縄カラキの葉のさらなる研究および応用の開発は大きな価値があると考え、本発明者らは、鋭意検討の結果、アルデヒド、クローブ、ポリフェノール、カテキン三量体などが多く含まれているのが特徴であり、末梢血管の拡張、血流増加、解熱および温める等の効果がある沖縄カラキの葉の抽出物がTie2の活性化作用があることを見出したのである。
【0039】
本実施形態では沖縄カラキの葉部の抽出物が用いられる。抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法により容易に得ることが可能である。抽出物としては、特に制限はなく、その目的に応じて適宜選択することが可能であり、たとえば、抽出液の希釈液、濃縮液、抽出液の乾燥物などが挙げられる。
【0040】
また、その抽出方法としては、特に限定はなく、その目的に応じて適宜選択することが可能であり、たとえば抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料である前述の植物の抽出部位を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣(ざんさ)を除くことにより抽出液を得る方法などが例示される。また、本実施形態の場合、抽出溶媒をアルコールとするのが好適とされる。
【0041】
また、前述の第1実施形態の、毛細血管改善剤としての毛細血管改善用飲食品に、本実施形態のオキナワニッケイ(学名 Cinnamomum sieboldii、別名:沖縄カラキ)の葉(葉部)の抽出物または粉末(たとえば乾燥粉砕物)を混合するように構成してもよい。その場合、Tie2の活性化作用、血管の成熟化作用または血管の安定化作用などをさらに高めることができて好適である。
【0042】
ここで、本実施形態のオキナワニッケイの葉部の加工物の他、ルイボスの葉部および/または枝部の加工物と、シナモンの枝部および/または皮部の加工物と、紅花の加工物と、黒豆の加工物と、を有効成分として含有する毛細血管改善剤または飲食品について、中医学の視点(別の観点)から説明する。
【0043】
中国では『活血化お』の中医学の概念がある。生活習慣の乱れなどが原因して『お血』が発生するが、ある植物・食物は血管の血流の滞りを改善、痛みや冷え性、皮膚新陳代謝や血流循環を促進することは「活血化お」の効能といわれる。
【0044】
本発明では、その中医学の思想に基づいて、本発明者らが鋭意検討を行った。その結果、中国民間の古来から知られる活血化お効果がある“桂皮(シナモン)”、紅花”、"黒豆“を中心として、さらにその他に本実施形態でいう、沖縄で貴重なオキナワニッケイ(沖縄)を新たに加えて、毛細血管の血流を改善することが可能な飲食品(茶はその一例)を開発したのである。
【0045】
中医学では、植物や食物の性(五性:温、熱、涼、寒、平)、味(五味:酸味、苦味、甘味、辛味、塩味)、帰経(肝経、心経、腎経、脾経、肺経)および陰陽などの効能を重視する(たとえば、次の文献など参照:「中国薬典2020版」、「漢日医学大辞典(中国人民衛生出版社)」、「富山大学 和漢医薬学総合研究所 和漢薬データベースポータル」、「薬用植物総合情報データペース[国立研究開発法人 医薬基盤研究所]」)。
【0046】
前述の第1の実施形態または第2の実施形態でいえば、桂皮(シナモン)は、性:熱、味:辛、甘、帰経:腎、脾、心、肝。陰陽:陽を補うとされる。具体的には、その効能として、補陽、散お、胃・腹部の冷痛、痛経、頻尿などを改善し、陽気を高めるとされる。
前述のように、本実施形態ではその新たな素材(材料)としてオキナワニッケイ(沖縄カラキの葉を加え、さらに血行を促すことで内蔵を温める働き、末梢神経の拡張、血流増加、発汗解熱、温める効果が期待される。
【0047】
紅花は、性:温、味:辛、帰経心、肝、陰陽:陰気を高めるとされる。具体的には、その効能として「活血」「散お」「通経」の作用が知られる。黒豆は、性:平、味:甘、帰経:腎、脾;陰陽:陰気を高めるとされる。具体的には、その効能として「活血」「利水」「去風」「解毒」の作用が知られる。
【0048】
そのような植物の陰陽バランスが揃え、各種の性質を発揮する桂皮、紅花、黒豆を中心として、プラス南アフリカ共和国のルイボスティ、吸収しやすいための乳酸菌を組み合わせることで、毛細循環を促進し、さらに活血化お、血流改善の良い効果が実現される(後述の実施例などで詳説)。
【実施例0049】
本発明に係る実施例(適用例および/または具体例)として1または複数の試験を挙げ、本発明の有用性についてより詳細に説明する。
なお、本発明は、これらの1または複数の実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
<第1実施例>
本実施例では、本発明に係る飲食品(茶、前述の第1実施形態)の血管改善に関する有効性を確認するため確認試験を行った。
図1~
図7を参照しながら、その有用性確認のための試験内容について説明する。
図1は、本発明に係る飲食品を摂取する前後の数値の変化を示す第1のグラフ(毛細血管直径)である。
図2は、本発明に係る飲食品を摂取する前後の数値の変化を示す第2のグラフ(血管ループの長さ)である。
図3は、本発明に係る飲食品を摂取する前後の数値の変化を示す第3のグラフ(血流速度)である。
図4は、本発明に係る飲食品を摂取する前の血管の様子を示す写真(毛細血管像)である。
図5は、本発明に係る飲食品を摂取した後の血管の様子を示す写真(毛細血管像)である。
図6は、本発明に係る飲食品を摂取する前の血管の様子を示す写真(毛細血管ループの長さと血流速度)である。
図7は、本発明に係る飲食品を摂取した後の血管の様子を示す写真(毛細血管ループの長さと血流速度)である。
【0051】
[・対象と方法]
研究対象は50歳から73歳の5名(男性1名、女性4名)のボランティアであり、それぞれ本発明に係る飲食品(茶、一包(3g)/日)を約150mlの沸騰したての熱湯に入れ、5分間でふやかして飲む。
【0052】
高機能画像解析計測ソフトGOKO Measure PlusおよびGOKO Bscan-Z/ZD専用流速計測ソフトGOKO-VIPを付いているマイクロスコープ(日本GOKO映像機器株式会社制)を用いて、本発明に係る飲食品を飲む前と飲んだ30日後に二回利き手でない薬指の指先の爪廓部での毛細血管の状況を観察と測定した。
【0053】
測定していたパラメーター(変数)は、(1)毛細血管の形、(2)毛細血管周辺組織の明るさ、(3)血管ループの長さ、(4)血管の太さ、および(5)血流速度であった。そのうち、各受験者の血管ループの長さ、血管の太さおよび血流速度については、それぞれ三回の同じ場所での測定値の平均値であった。スチューデントの対をなすデータのt検定により本発明に係る飲食品を飲む前後の2つの平均値の差のp値の確率を計算した。
【0054】
[・結果]
観察と測定した結果を表1、および
図1~
図7に示す。
【0055】
【0056】
表1には、本発明に係る飲食品を飲む前後に測定された毛細血管のパラメーターのそれぞれが示される。
【0057】
(1)血管の形について、理想的な指先の毛細血管ループは真っすぐで、横にかかるバイパスが見られなく、血管ループがねじって変形することでもない。
【0058】
(2)毛細血管周辺組織の明るさは血管の老化、炎症、血管漏れなどの原因で影響され、これらの原因により老廃物や血管から漏れた物質および炎症反応物などが組織にたまって濃厚な靄(もや)が形成する。
【0059】
(3)理想的な指先の毛細血管の太さは約6~15μmである。本発明に係る飲食品を飲む前の毛細血管の太さの平均値16.4±2.5μmに対し、飲む後の平均値は14.3±3.0μmになった。
【0060】
(4)理想的な指先の毛細血管ループの長さは250μm以上である。本発明に係る飲食品を飲む前の毛細血管ループの長さの平均値259.2±58.1μmに対し、飲む後の平均値は321.3±141.4μmになった。
【0061】
(5)毛細血管の血流速度は速いほど良い。本発明に係る飲食品を飲む前の毛細血管の血流速度の平均値204.2±166.4μm/sに対し、飲んだ後の平均値は459.1±311.6μm/sになった。
【0062】
そして、
図1~
図3を参照しながら、本発明に係る飲食品を飲む前後の毛細血管の太さ、血管ループの長さおよび血流速度変化(*、p<0.05)について説明する。
【0063】
血管の太さについては、飲んだ後の平均値は飲む前より2.1μmに細くなった(p<0.046,有意差があった)。血管ループの長さについては、飲んだ後の平均値は飲む前より62.1μmにのばしたが、有意差はなかった(p>0.11)。血流速度については、飲んだ後の平均値は飲む前より254.9μm/に速くなった(p<0.018,有意差があった)。
【0064】
図4および
図5には、61歳の女性の本発明に係る飲食品飲用30日(毎日3g)の前後の毛細血管像(140倍)が示される。
【0065】
図4および
図5に示すように、飲む前には、毛細血管の周りの組織に濃厚な褐色靄がかかっていて、毛細血管がはっきりと見えない。飲んだ後には、褐色靄は消えていて、毛細血管がはっきりと見え、毛細血管ループも伸ばされた。
【0066】
図6および
図7には、61歳の女性の本発明に係る飲食品飲用30日(毎日3g)の前後の毛細血管ループの長さと血流速度の変化(560倍)が示される。
【0067】
図6および
図7に示すように、写真の中の符号1の毛細血管ループの長さは、飲む前に201.3μmであり、飲んだ後に296.2μmとなり、1.5倍をのばした。血流速度は、飲む前の286.6μm/sから424.8μm/sに変え、1.6倍に速くなった
【0068】
写真の中の符号2の血管ループの長さは、飲む前に331.9μmであり、飲む後に561.3μmとなり、1.7倍をのばした。血流速度は、飲む前の238.8μm/sから411.1μm/sになり、1.8倍に速くなった。
【0069】
写真の中の符号3の血管の血流速度は、飲む前は50.7μm/sであり、飲んだ後に331.9μm/sになり3.8倍に速くなった。また、1と2の毛細血管ループは、飲む前は曲がりくねっていたが、飲んだ後真っすぐとなった。
【0070】
[・考察と結論]
本試験では、前述のような健康改善作用のあるシナモン、ルイボス、紅花、黒豆およびEC-12乳酸菌からブレンドしてなる飲食品(茶)を一か月程度飲んだ後、毛細血管の形、毛細血管周辺組織の明るさ、毛細血管の太さ、毛細血管ループの長さ、および毛細血管の血流速度がすべて改善されることが確認された。特に、毛細血管の太さと毛細血管の血流速度が有意に改善されることによって、本発明が人の毛細血管の健康改善効果があることが確認された。
【0071】
<第2実施例>
本実施例では、本発明に係る飲食品(茶、前述の第1実施形態)に関し、爪廓部毛細血管の機能改善に関する有効性を確認するため確認試験を行った。
なお、本実施例では当該飲食品である茶を「楽管茶」(後述参照)ともいう。
【0072】
[・目的]
本実施例の被験者である30代から80代の指先毛細血管受検者の内、80%以上は血管の曲がり、ねじり、萎縮、太くなり、バイパス血管の形成などの血管変形、濃い褐色(老廃物溜(だ)まり)あるいはピンク色(血管漏れ)の靄などの異常現象、血流速度低下などの劣化症状が見られた(後述参照)。
【0073】
試験管内では、シナモン、ルイボスおよびヒハツ等からの抽出物によりTie2を活性化させる作用が実証されたが、腸での吸収および血液流れの状態等の影響する要因があるので、服用により生体内で毛細血管にどのような影響を与えるか、まだ解明されていない。本発明者らは、加齢などの原因により起こった毛細血管の劣化を対処するため、Tie2を活性化させる成分があり、血行促進される成分があり、および有効成分を腸内に吸収を促進させる乳酸菌エキスを含めているとの三要素に基づいて、Tie2を活性化させる作用を有するシナモンとルイボス、血行促進作用がある紅花、血液を増やして血流を促進させる黒豆および腸内フローラを良好にし、腸の消化と吸収機能をアップさせる乳酸菌をブレンドして「楽管茶」という飲食品を作って、生体内実験により毛細血管に対する影響を検証した。
【0074】
[・対象、材料と方法]
[・・対象]
38歳から81歳まで(平均57歳、男性18名と女性14名)の32名のボランティアから無作為抽出法により16名ずつ「楽管茶検証群」と「シナモン+ルイボス対照群」に分けた。
【0075】
[・・材料]
[1]検証群に与えるのは「楽管茶」(沖縄カラキの葉粉末入りシナモン、ルイボス、紅花、黒豆および乳酸菌エキスをブレンドしたもの)である。
[2]対照群に与えるのは「シナモン+ルイボス」(楽管茶に含めっている同量のシナモンとルイボスをブレンドしたもの)である。
【0076】
[・・方法]
[1]検証群と対照群にそれぞれ「楽管茶」(一包(3g)/日)と「シナモン+ルイボス」粉末(一包(2g)/日)を約150mlの沸騰したての熱湯に入れ、5分間以上でふやかした状態で飲ませ、30日間中断なく飲み続けた。
[2]高機能画像解析計測ソフトGOKO Measure PlusおよびGOKO Bscan-Z/ZD専用流速計測ソフトGOKO-VIPを付くマイクロスコープ(日本GOKO映像機器株式会社製)を用いて、「楽管茶」および「シナモン+ルイボス」を飲む前日と30日飲んだ後に二回で、利き手でない薬指の指先の爪廓部での毛細血管の状況を観察と測定した。
[3]測定時の注意事項:
26±1℃の室温、被験者が座って測定指と心臓は同高にし、前後二回とも同じ部位を観察と測定することである。
[4]測定と観察のパラメーター(変数):
(1)毛細血管の形(ねじれていた等の変形血管のスコア):
一つの視野(140倍率)においての変形血管の割合より、<10%=0; >10%,<30=1; >30%,<60%=2; > 60%=3。血管の形について、理想的な指先の毛細血管ループは真っすぐで、横にかかるバイパスが見られなく、血管ループがねじれて変形することでもない。
(2)毛細血管周辺組織の明るさ(靄):
一つの視野(140倍率)においての靄の割合より、なし=0; 視野の1/3=1; 視野の1/2=2; >視野の1/2=3。毛細血管周辺組織の明るさは血管の老化、炎症、血管漏れなどの原因で影響され、これらの原因により老廃物や血管から漏れた物質および炎症反応物などが組織にたまって濃厚な靄が形成する。
(3)血管ループの長さ:
140倍率での一番長い五本の血管ループの長さの平均値(μm)。理想的な指先の毛細血管ループの長さは250μm以上と考えられる。
(4)血管の太さ:
140倍率あるいは560倍率での五つの血管の直径の平均値(μm)。理想的な指先の毛細血管の太さは約6~14μmと考えられる。
(5)毛細血管本数:
140倍率での一つの視野の上一列目の毛細血管ループの本数。理想的な指先の毛細血管の本数は>20と考えられる。
(6)血流速度:
撮れた動画により三つの毛細血管ループの動脈側の血流速度の平均値(μm/s)。毛細血管の血流速度は速いほど良いと考えられる。
[5]統計:
データは、各群で得た値の平均±SEMで表した(n=16)。平均値の差は、ANOVAプログラムおよび対応のない二元t検定の分析により確認した。有意性の閾値は、比較数で割った値(P<0.05)とした。
【0077】
[・測定結果]
測定結果を表2、表3に示す。
表2は、楽管茶群生データおよび被験者リストを示す。
表3は、対照群生データおよび被験者リストを示す。
【0078】
【0079】
【0080】
[・統計分析]
測定結果を統計分析した。その分析結果を表4、表5、および
図8~
図14に示す。
表4は、「楽管茶」と「シナモン+ルイボス」を飲むことにより毛細血管に与えた影響を示す。
表5は、「楽管茶」と「シナモン+ルイボス」の毛細血管改善効果の比較を示す。
図8は、楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管血流速度の改善効果を示す。
図9は、楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管の長さの改善効果を示す。
図10は、楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管太さの改善効果を示す。
図11は、楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管本数の改善効果を示す。
図12は、楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)により変形した毛細血管の改善効果を示す。
図13は、楽管茶と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管周りの靄の改善効果を示す。
図14は、楽管茶群と対照群(シナモン+ルイボス)の毛細血管改善効果の比較を示す。
【0081】
【0082】
【0083】
表4に示すように、楽管茶はすべての測定項目に改善効果が有ったが、シナモン+ルイボスは血管の長さ、太さおよび血管本数だけに改善効果が示された。***,P<0.001; **,P<0.01; *, P<0.05。
表5に示すように、毛細血管の長さ、太さおよび血管本数の平均増加あるいは減少値において、「楽管茶」と「シナモン+ルイボス」の差が有る。 *,P<0.05。
【0084】
図8に示すように、両群とも血流速度の増加が見られたが、対照群には飲む前後の有意差がなかった。
図9に示すように、両群とも改善効果が有った。**,P<0.01; ***,P<0.001。
図10に示すように、両群とも毛細血管細くなる改善効果が有った。*,P<0.05。
図11に示すように、両群とも改善効果が有意だった。*,P<0.05; **,P<0.01。
図12に示すように、対照群には飲む前後の有意差がなかった。*,P<0.05。
図13に示すように、対照群には改善傾向が見られたが有意差がなかった。***,P<0.001。
図14に示すように、毛細血管の長さ(A)、太さ(B)および血管本数(C)において両群とも改善効果があるが、両群の効果の差が有意になったから、対照群より楽管茶の効果が良いと示された。*,P<0.05。
【0085】
[・本実施例での第1の事例について]
図15を参照しながら、前述の確認試験で観察された第1の事例について説明する。
図15は、楽管茶群検証番号15(表2参照)、60歳の女性の観察結果を示す。
【0086】
図15には、飲用「楽管茶」30日(毎日3g)の前(左)、後(右)の毛細血管の血流速度、血管ループの長さ、血管周囲の明瞭さおよび血管ループの形の改善が示される。
[・・上の写真(倍率=140)]:
飲用前には濃厚褐色とピンク靄(炎症、血管漏れおよび代謝の悪い)が見えて、血管が短くてはっきり見えなかった。飲用後褐色とピンク靄が著しく薄くなって、血管は長くなってはっきりと見えた。
[・・下の写真(倍率=560)]:
(1)飲用前後の血流速度:1=286.6μm/s → 424.8μm/s;2=238.9μm/s → 411.1μm/s;3=50.75μm/s → 196.58μm/s;4=184.3μm/s → 295.7μm/s。それぞれ1.6、1.8、3.8と1.4倍に早くなった。
(2)飲用前後の血管ループの長さ:1=201.3μm → 296.2μm;2=181.4μm → 253.7μm;3=159.1μm → 277.2μm;4=212.8μm → 394.9μm。それぞれ1.5、1.4、1.7と1.9倍に長くなった。
(3)飲用前と比べて、飲用後には血管周囲のピンク靄が減って、血管漏れが改善された。
(4)飲用後1から4までの変形していた血管ループはまっすぐになって、変形が改善された。
【0087】
[・本実施例での第2の事例について]
図16を参照しながら、前述の確認試験で観察された第2の事例について説明する。
図16は、楽管茶群検証番号11(表2参照)、52歳の男性の観察結果を示す。
【0088】
図16には、飲用「楽管茶」30日(毎日3g)の前(左)、後(右)の毛細血管の血流速度、血管ループの長さおよび血管の太さの改善が示される。
[・・上の写真(倍率=140)]:
飲用前には血管が短くて太かった。飲用後は血管が長く、細くなってはっきりと見えた。
[・・下の写真(倍率=560)]:
(1)飲用前後の平均血流速度は、107.6μm/sから706.5μm/sになって、6.5倍に早くなった。
(2)飲用前後の血管ループの平均長さは、103.7μmから208.8μmになって、2倍に長くなった。
(3)飲用前後の血管の平均太さは、13.5μmから9.3μmになって、4.2μmが減った。
「↓」は、同じ場所を示す目印である。
【0089】
[・本実施例での第3の事例について]
図17を参照しながら、前述の確認試験で観察された第3の事例について説明する。
図17は、楽管茶群検証番号4(表2参照)、73歳の男性の観察結果を示す。
【0090】
図17には、飲用「楽管茶」30日(毎日3g)の前(左)、後(右)の毛細血管の血流速度、血管の長さ、血管の太さ、変形血管および血管周囲の明瞭さの改善(倍率=140)が示される。飲用前は血管が短く・太くで、血管ループがねじれていて、血管周囲に濃いピンク靄がかかっていた。飲用後、血管が長く・細くになって、血管ループが真っすぐなった。ピンク靄も薄くなった。
【0091】
(1)飲用前後の平均血流速度は、194.1μm/sから489.7μm/sになって、2.5倍に早くなった。
(2)飲用前後の血管ループの平均長さは、175.2μmから283.7μmになって、1.6倍に長くなった。
(3)飲用前後の血管の平均太さは、18.6μmから12.3μmになって、5.3μmを減った。
(4)捻(ねじ)れた血管(変形血管)の比例は、飲用前の60%から飲用後の10%になって、変形程度が著しく軽くなった。「↓」は、同じ場所を示す目印である。
【0092】
[・本実施例での第4の事例について]
図18を参照しながら、前述の確認試験で観察された第4の事例について説明する。
図18は、楽管茶群検証番号14(表2参照)、54歳の男性の観察結果を示す。
【0093】
図18には、飲用「楽管茶」30日(毎日3g)の前(左)、後(右)の毛細血管の血流速度、血管の太さおよび変形血管の改善(倍率=560)。
【0094】
(1)飲用前後の平均血流速度は、238.5μm/sから360.9μm/sになって、1.5倍に早くなった。
(2)飲用前後の血管の平均太さは、12.6μmから9.9μmになって、2.7μmを減った。
(3)飲用前にくっついた血管ループ(変形血管ループ)は、飲用後に正常な血管ループの形に戻った。変形した血管の比例は、飲用前の70%から飲用後の20%になった。黒塗りの「↓」は、くっついた変形血管ループを示す;白塗り(中抜き)の「↓」は、正常な血管ループを示す。
(4)モニターからの声:
飲みやすく、冷え性改善の声が多かった。そのほか血圧の下げ、食欲のアップ、便通の改善、顔色の改善、寝つきが良くなって、朝スッキリ、何となく気分がよくなった等の反応があった。
【0095】
[・考察と結論]
「楽管茶」の構成成分のシナモン(Cinnamomum)とルイボス(Aspalathus linearis)は、アンジオポエチン-1のようなTie2を活性化させるs-シリンガレシノール(s-Syringaresinol)などの物質が含まれて、試験管内で、血管内皮細胞のTie2受容体と結合してTie2にリン酸化(活性化)をさせることが実証された。また、シナモンは、辛味と甘味を持って、体を温める作用のある温熱性で、多くの経絡に作用し、陽の気の循環を改善することにより、血液循環を活性化し、冷えからくる腹痛や関節痛、月経痛などの痛みを和らげる。ルイボスはノンカフェイン、低タンニン、緑茶よりも多くのポリフェノールを持っている。
【0096】
漢方薬によく用いられている生薬の紅花は、体を温める作用のある温性で、滞った血行をスムーズにさせて、優れた活血化お作用で血行障害による諸症状を改善し、血液循環を活性化させてうっ血を解消し、痛みの和らげ(緩和)や月経不順および冷え症に役立つ。
血行を促進し体を温める効果があるため血行促進の生薬として日本薬局方に収録されている。
【0097】
黒豆は、血液を増やし血流をアップさせる機能性物質と知られているアントシアニンが多く含まれる。アントシアニンは強い抗酸化作用を持ち、血小板の凝固を抑制する効果もあるので、毛細血管の保護、血管機能と循環機能の改善が期待できる。また、アントシアニンの応用により血管に関連する死亡リスクを減らすことがわかっている。さらに、血管内皮細胞において、黒豆のポリフェノールはNO産生促進作用があり、血流が増大することを示唆した。
【0098】
整腸作用がある乳酸菌の中のEC-12株は、腸内フローラを良好にし、腸の消化と吸収機能をアップさせることが知られている。乳酸菌EC-12株を摂取すると、腸内のビフィズス菌が約2.3倍に増加し、排便量が増えることが実験で確認されている。そして、有効成分の吸収を促進するため多くのサプリメントにはその乳酸菌株が添加されている。
【0099】
シナモンとルイボスは、すでにそれぞれ試験管内で毛細血管内皮細胞のTie2受容体を活性化させる効果が有ったと報告されたが、生体内での毛細血管の改善効果が、有効成分の腸内での吸収および血液の流れの状態等により影響されるので、腸内での吸収の促進および血行の促進のものを加えれば、身体内での効果がさらにアップと考えられている。
【0100】
本実施例には、上述のような健康改善作用のある、シナモン、ルイボス、紅花、黒豆およびEC-12乳酸菌からブレンドした「楽管茶」は、測定していたすべて六つのパラメーターにおいて飲用前後に有意差があり、毛細血管の改善効果が示唆されていたが、「シナモン+ルイボス」は、血管の長さ、血管の太さおよび血管本数の三つのパラメーターだけ改善された。さらに、これらの三つのパラメーターにおいても、「楽管茶」による平均増加値(長さと本数)あるいは減少値(太さ)は、「シナモン+ルイボス」より大きかった(いずれもP<0.05)。
【0101】
結論として、(1)吸収の促進および血行の促進のものを含む「楽管茶」は、毛細血管の形、毛細血管周辺組織の靄、毛細血管の太さ、毛細血管の長さ、毛細血管の数および毛細血管の血流速度が改善され、人の毛細血管の健康改善効果が有った。(2)試験管内で検証された毛細血管に良い成分が、飲用により身体内で役割をよく果たすのは、腸での吸収および血行の促進をさせることが重要なことと示唆された。
【0102】
さらに、後述のいわゆる考察を踏まえてオキナワニッケイ(学名 Cinnamomum sieboldii Meisn.:別名:沖縄カラキ)の葉(葉部)の抽出物または粉末(たとえば乾燥粉砕物)を当該「楽管茶」と混合することにより、Tie2の活性化作用をさらに高めることが可能となる。
【0103】
<第3実施例>
本実施例では、アルデヒド、クローブ、ポリフェノール、カテキン三量体などが多く含まれているのが特徴であり、末梢血管の拡張、血流増加、解熱および温める等の効果がある沖縄カラキの葉を用いてTie2の活性化作用を確認するための確認試験を行った。
【0104】
[・材料と方法]
[・・材料]:
乾燥された大宜味村農園にて栽培している沖縄カラキ(学名 Cinnamomum sieboldii Meisn.)の葉の粉末。
[・・抽出法]:
メタノールによって抽出された。具体的には、3gの葉の粉末にメタノール60Lを加え、50℃で3時間放置。吸引濾過後、濾液(ろえき)を減圧濃縮した。
[・・解析方法]:
マウスpro-B細胞(Ba/F3)にhuman Tie2を過剰発現させた細胞(Ba/F3-human Tie2)をTie2リン酸化解析に用いた。Tie2の生理的リガンドAngiopoietin-1 (Ang1 300ng/ml)およびネガティブコントロール PBSあるいはDMSO)、そして被検体により、Ba/F3-human Tie2を刺激した。通常培養用培地(10%FBS RPMI1640 + 1pg/ml mouse IL-3)に直接検体を種々の濃度で添加して15分後、細胞をPBSで洗浄し、RIPA lysis bufferとHalt Protease and Phosphatase Inhibitor Cocktailにより細胞抽出液を回収した。細胞抽出液を7.5% SDSゲルに電気泳動し、nylon membranes に転写した。転写されたnylon membranes を % skim milk +0.5% BSA/TBST で60 分間非特異的蛋白をブロックし, 抗-Tie2抗体 (Ab33 Upstate社), 抗リン酸化-Tie2抗体 (Tyr992 Cell Signaling Technology社)でブロットした。引き続きHRP標識した2次抗体でブロットし、得られた反応物はECL溶液で可視化して撮影した。Tie2のリン酸化の有無は、Amersham Imager 680のソフトを用いて計測した。
【0105】
[・結果]
図19、
図20、および表6に、本実施例での試験結果を示す。
図19は、ウエスタンブロットにより検出した各試料におけるリン酸化されたTie2タンパク質のバンドを示す図である。
図20は、表6のTie2リン酸化データをグラフ化したものである。
表6は、ウエスタンブロットにより計算した数値である。
【0106】
【0107】
図19に示すように、検出されたバンドの強度は、リン酸化されたTie2のタンパク質量に比例している。バンドの強度が高い程、リン酸化されたTie2のタンパク質量が多いことを示している。(1)バンドはDMSO対照、(2)バンドはAng1ポジティブ対照、(5)バンドは沖縄カラキの葉の抽出物(500ug/mL)、(6)バンドは沖縄カラキの葉の抽出物(1000ug/mL)である。(6)バンドのリン酸化されたTie2(P-Tie2)は、(1)のDMSO対照より濃さが高くて、表6に示すように、Tie2のリン酸化率はDMSO対照の1.8倍になった(1.5倍以上ならTie2をリン酸化している可能性が高い。)。
【0108】
表6に示すように、(6)は、沖縄カラキの葉の抽出物(1000ug/mL)であり、リン酸化されたTie2は(1)のDMSO対照の99361に対して130991であり、Tie2のリン酸化率はDMSO対照の1.8倍であった。
【0109】
図20に示すように、(6)の沖縄カラキの葉の抽出物(1000ug/mL)のTie2リン酸化率はDMSO対照の1.8倍である。
【0110】
[・考察]
ウエスタンブロットのDMSOのコントロールに比べ、Angiopoietin-1によりTie2のリン酸化が観察されたことから、本解析は成立していると判断された。沖縄カラキの葉(葉部)の抽出物(1000ug/mL)試料は、Tie2のリン酸化率はDMSO対照の1.8倍であり(1.5倍以上ならTie2をリン酸化している可能性が高いである)、軽度であるが、Tie2のリン酸化が観察された。目視のバンドの濃さからも、Tie2をリン酸化している可能性が高い。本発明の有用性が確認された。
【0111】
また、本実施例では抽出方法としてアルコールを用いたがこれに限らず、前述の楽管茶と同様に、沖縄カラキの葉(葉部)を乾燥粉砕物として粉末状に加工し、茶のように熱湯(高温の水)で抽出して飲用するようにしてもよい。そのような場合でも同様な効果を奏する。
【0112】
<第4実施例>
本実施例では、前述の楽管茶による新型コロナウイルス感染症患者の毛細血管の改善に関する本発明の有用性を確認するために確認試験を行った。確認試験は2つの事例で行われた。
【0113】
[・目的]
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症によって引き起こされる症状や、障害を受ける臓器は極めて多岐にわたる。新型コロナウイルス感染症におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質は、線溶耐性のあるフィブリンを誘導し、毛細血管での微小血栓が形成したことが、最近の研究報告から明らかとなった(Lize M.et.al. SARS-CoV-2 spike protein S1induces fibrin(ogen) resistant to fibrinolysis: implications for microclot formation in COVID-19. Biosci Rep. 2021 Aug 27; 41:8)。微小血栓ができて毛細血管がふさがれると、血管が変形し、血液や酸素の流れに影響が生じ、様々な症状につながる。この点、本発明は新型コロナウイルス感染症患者にも有効であるか確認した。
【0114】
[・方法]
高機能画像解析計測ソフトGOKO Measure PlusおよびGOKO Bscan-Z/ZD専用流速計測ソフトGOKO-VIPを付くマイクロスコープ(日本GOKO映像機器株式会社製)を用いて、2例の新型コロナウイルス感染症患者において、新型コロナウイルスの感染前後、および楽管茶(一包(3g)/日)を約150mlの沸騰したての熱湯に入れ、5分間以上でふやかした状態で飲む)を飲む前後で数回、利き手でない薬指の指先の爪廓部での毛細血管の変化(血管の長さ、血管の太さ、血流速度、靄など)を測定し、毛細血管に対する新型コロナウイルス感染の影響、およびその影響に対する楽管茶の効果を調べた。
【0115】
[・事例1の結果について]
本事例での被験者は、63歳の女性である。本事例に関する結果を
図21~
図24に示す。
なお、図中、矢印「↓」は同じ場所を示す。
図21は、本実施例での事例1の一回目の検査結果を示す写真である。2023.07.04撮影(一回目の検査)倍率145
図22は、本実施例での事例1の二回目の検査結果を示す写真である。2023.08.20撮影(二回目の検査)倍率145
図23は、本実施例での事例1の三回目の検査結果を示す写真である。2023.09.21撮影(三回目の検査)倍率145
図24は、本実施例での事例1の四回目の検査結果を示す写真である。2023.10.26撮影(四回目の検査)倍率145
【0116】
図21に示すように、血管長さ147.2μm、血管太さ13.4μm、血流速度190.7μm/s、靄が濃いことが観察された。また、2023.07.04から2023.07.17までに楽管茶を飲んだ。2023.07.18にコロナが診断され、楽管茶飲みは中断された。
【0117】
図22に示すように、血管長さ103.7μm(一回目の147.2μmより短くなった)、血管太さ14.3μm(一回目の13.4μmより太くなった)、血流速度101.8μm/s(一回目の190.7μm/sよりかなり遅くなった)となっていることが観察された。また、新型コロナウイルス感染により毛細血管が著しく改変された。2023.08.20から2023.09.20までに楽管茶の飲みが再開した。
【0118】
図23に示すように、血管長さ152.2μm(二回目の103.7μmより長くなった)、血管太さ13.3μm(二回目の14.3μmより細くなった)、血流速度215.9μm/s(二回目の101.8μm/sよりかなり遅くなった)となっていることが観察された。2023.09.21から2023.10.24までに続けて楽管茶を飲んだ。
【0119】
図24に示すように、血管長さ237.3μm(感染前よりも長くなった)、血管太さ12.1μm(感染前よりも細くなった)、血流速度406.3μm/s(感染前よりも著しく速くなった)。毛細血管周りの靄が前3回よりも著しく減った(代謝の改善を示され)ことが観察された。
【0120】
そのように、事例1において、楽管茶により毛細血管は、新型コロナウイルス感染の影響から回復して、さらに感染前によりも良くなったことが示された。
【0121】
[・事例2の結果について]
本事例での被験者は、69歳の男性である。本事例に関する結果を
図25~
図28に示す。
なお、図中、矢印「↓」は同じ場所を示す。
図25は、本実施例での事例2の一回目の検査結果を示す写真である。2023.07.17撮影(一回目の検査)倍率145
図26は、本実施例での事例2の二回目の検査結果を示す写真である。2023.08.18撮影(二回目の検査)倍率145
図27は、本実施例での事例2の三回目の検査結果を示す写真である。2023.09.24撮影(三回目の検査)倍率145
図28は、本実施例での事例2の四回目の検査結果を示す写真である。2023.10.26撮影(四回目の検査)倍率145
【0122】
図25に示すように、血管長さ304.6μm、血管太さ9.6μm、血流速度260.9μm/sとなっていることが観察された。また、2023.07.17から2023.08.17までに楽管茶を飲んだ。
【0123】
図26に示すように、血管長さ282.4μm、血管太さ9.3μm、血流速度272.9μm/sとなっていることが観察された。また、一回目の検査とあまり変わらない。2023.08.18から2023.08.20までにただ二日間楽管茶を飲んで、2023.08.21にコロナ診断され、楽管茶飲みは中断された。
【0124】
図27に示すように、血管長さ108.5μm(一回目の304.6μmと二回目の282.4μmより著しく短くなった)、血管太さ11.7μm(一回目の9.6μmと二回目の9.3μmより太くなった)、血流速度129.3μm/s(一回目の206.9μm/sと二回目の272.9μm/sよりかなり遅くなった)となっていることが観察された。また、新型コロナウイルス感染により毛細血管が著しく改変された。
【0125】
血管長さ352.7μm((感染前よりも長くなった))、血管太さ9.6μm(感染前に戻った)、血流速度610.9μm/s(感染前よりも2倍以上速くなった)となっていることが観察された。
【0126】
そのように、事例2において、楽管茶により毛細血管は、新型コロナウイルス感染の影響から完全に回復して、さらに感染前によりも良くなったことが示された。
【0127】
[・考察]
新型コロナウイルス感染者の毛細血管において、微小血栓が形成されたから、毛細血管の機能は低下した(Lize M.et.al. Biosci Rep. 2021 Aug 27; 41:8)。本実施例での事例1および事例2の感染者とも、新型コロナウイルス感染後、指先の毛細血管が著しく萎縮し、短くなり、太くなり、血液流速が著しく遅くなり、感染による毛細血管の損傷が現わられた。楽管茶を続けて飲むことにより、2例とも、毛細血管が損傷から完全に回復した。特に、毛細血管の長さおよび血液流速が著しく改善され、感染前と比べても改善された。この結果により、楽管茶は新型コロナウイルス感染者の毛細血管の損傷に対する改善効果があると示唆された。
【0128】
<第5実施例>
本実施例では、オキナワニッケイ(別名:沖縄カラキ、以下「沖縄カラキ」ともいう。)の葉(葉部)からの抽出物によるTie2の活性化効果の再現性検証するための試験を行った。
【0129】
[・目的]
先行研究によれば、メタノールを用いて抽出した沖縄カラキの乾燥葉の抽出物が1000ug/mLの濃度(その試験の最高検証濃度)でTie2をリン酸化(活性化)させた効果が観察されている。そこで、本実施例では、Tie2のリン酸化を引き起こす効果について、沖縄カラキの乾燥葉の抽出物の1000ug/mL濃度でのリン酸化効果の再現性を検証し、さらに乾燥葉の1500ug/mLと2000ug/mLの高濃度の効果および半乾燥葉の抽出物の効果を検証した。
【0130】
[・材料と方法]
[・・材料]
沖縄県大宜味村農園にて栽培している沖縄カラキの乾燥葉と半乾燥葉の粉末。
【0131】
[・・方法]
[1]抽出方法
メタノールにより抽出された。詳細は、3gの葉の粉末にメタノール60Lを加え、50℃で3時間放置した。吸引濾過後、濾液を減圧濃縮した。
【0132】
[2]解析方法
マウスpro-B細胞(Ba/F3)にhuman Tie2を過剰発現させた細胞(Ba/F3-human Tie2)を使用してTie2リン酸化解析を行った。Tie2の生理的リガンドであるAngiopoietin-1(Ang1 300ng/ml)およびネガティブコントロール(PBSあるいはDMSO)、そして被検体を使用して、Ba/F3-human Tie2を刺激した。通常の培養用培地(10%FBS RPMI1640 + 1pg/ml mouse IL-3)に直接検体を種々の濃度で添加し、15分後に細胞をPBSで洗浄し、RIPA lysis bufferとHalt Protease and Phosphatase Inhibitor Cocktailにより細胞抽出液を回収した。細胞抽出液を7.5% SDS ゲルに電気泳動し、nylon membranesに転写した。転写されたnylon membranesを4% skim milk +0.5% BSA/TBSTで60分間非特異的蛋白をブロックした。引き続きHRP標識した2次抗体でブロットし、得られた反応物はECL溶液で可視化して撮影した。Tie2のリン酸化の有無は、Amersham Imager 680のソフトを用いて計測した。
【0133】
[・試験結果]
本実施例での試験結果を
図29、
図30、および表7に示す。
図29は、本実施例での検査結果である、ウエスタンブロットの写真である。
図30は、本実施例での検査結果であるデータグラフである。
表7は、
図29に基づいてウエスタンブロットにより計算した数値を示す。
【0134】
【0135】
図29は、ウエスタンブロットにより検出した各試料におけるリン酸化されたTie2タンパク質のバンドを示している。
【0136】
図29に示すように、検出されたバンドの強度は、リン酸化されたTie2のタンパク質量に比例している。バンドの強度が高い程、リン酸化されたTie2のタンパク質量が多いことを示している。バンド・ナンバーは、(1)DMSO対照、(2)Ang1ポジティブ対照、(3)乾燥葉抽出物1000ug/mL、(4)乾燥葉抽出物1000ug/mL、(5)乾燥葉抽出物1500ug/mL、(6)乾燥葉抽出物2000ug/mL、(7)半乾燥葉抽出物1000ug/mL、(8)半乾燥葉抽出物1000ug/mL、(9)半乾燥葉抽出物1500ug/mL、(10)半乾燥葉抽出物2000ug/mLをそれぞれ意味している。
【0137】
図29に示すように、(3)の乾燥葉抽出物1000ug/mLによるリン酸化されたTie2(P-Tie2)は、(1)のDMSO対照よりも濃さが高く、さらに表7に示すように、Tie2のリン酸化率はDMSO対照の1.9倍になって、再現性が確認された(先行研究では同濃度で1.8倍であり、1.5倍以上でTie2をリン酸化していることが示されている。)。
【0138】
同様に乾燥葉抽出物の1500μg/mL(5)(Tie2のリン酸化率はDMSO対照の1.7倍、表7を参照)、および2000μg/mL(6)(Tie2のリン酸化率はDMSO対照の2.4倍、表7を参照)では、用量依存的にTie2のリン酸化が誘導された。乾燥葉抽出物についてはEC50が1000μg/mL程度であると推測される。半乾燥葉抽出物では、表7に示すように、(7)の1000ug/mLと(10)の2000μg/mLにおいて、Tie2のリン酸化は観察された(それぞれのTie2のリン酸化率はDMSO対照の約1.6倍と1.7倍になった)。また、目視でのバンドの濃さからも、Tie2がリン酸化されていたことがわかった。
【0139】
前述のように表7は、ウエスタンブロットによって計算した数値を示している。Tie2のリン酸化率がDMSO対照の1.5倍以上であれば、Tie2がリン酸化されていることを示す。これにより、乾燥葉抽出物の(3)1000ug/mL、(5)1500μg/mL、(6)2000μg/mL、および半乾燥葉抽出物の(7)1000ug/mLと(10)2000μg/mLにおいて、Tie2のリン酸化が観察された。
【0140】
前述のように
図30は、表7のTie2リン酸化データをグラフ化のものである。DMSO対照と比較して、乾燥葉抽出物の(3)1000ug/mL、(5)1500μg/mL、(6)2000μg/mL、および半乾燥葉抽出物の(7)1000ug/mLと(10)2000μg/mLにおいて、Tie2リン酸化が観察された。
【0141】
[・考察]
ウエスタンブロットのDMSOのコントロールに比べ、Angiopoietin-1によりTie2のリン酸化が観察されたことから、本実施例での評価試験(本解析)は成立していると判断される。つまり、本実施例によれば、メタノールを用いて沖縄カラキの乾燥葉からの抽出物が1000ug/mLの濃度(その試験の最高検証濃度)でTie2をリン酸化させた効果が観察された。
【0142】
また、その再現性およびさらなる高濃度での効果を検証するため、同じ方法を用いて追加試験を行った。また、追加試験では沖縄カラキの半乾燥葉も検証した。その結果は以下のとおりであった。
【0143】
[1]DMSO対照と比較して、乾燥葉抽出物1000ug/mLによりリン酸化されたTie2は1.9倍に増加し、先行試験の同濃度の効果の再現性が確認された。
[2]乾燥葉抽出物の1500μg/mLおよび2000μg/mLでは、用量依存的にTie2のリン酸化が誘導された。
[3]乾燥葉抽出物についてはEC50が1000μg/mL程度であると推測された。
[4]半乾燥葉抽出物では、乾燥葉よりTie2のリン酸化効果が弱いが、1000ug/mLと2000μg/mLにおいて、用量依存的にTie2のリン酸化が誘導されたことが示された。
[5]半乾燥葉抽出物でもEC50が1000μg/mL程度であると推測された。
【0144】
そのようにして本実施例によれば、その結論として、沖縄カラキの乾燥葉および半乾燥葉の抽出物はTie2をリン酸化させる効果を有することが示された。
なお、半乾燥葉試料が乾燥葉よりTie2のリン酸化効果が弱いのは、乾燥不足により水分と油分が過剰で、有効成分が薄くなった可能性が推測される。
【0145】
<さいごに>
以上で1または複数の具体的実施形態および1または複数の具体的実施例の説明を終えるが、本発明の態様はこれら実施形態または実施例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良などが可能である。
本発明は、その有効成分でTie2を活性化させるとともに血行促進を図り、かつその有効成分の体内への吸収率を高め、それにより毛細血管改善を実現することができるTie2活性化剤、血管の成熟化剤または血管の安定化剤、その飲食品、並びに毛細血管改善剤、毛細血管改善用飲食品として有用である。