IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-実装構造体 図1
  • 特開-実装構造体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178474
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】実装構造体
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20241218BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20241218BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20241218BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20241218BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H05K3/34
C22C13/00
C22C9/02
B23K35/26 310A
B23K35/30 310C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146115
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 明夫
(72)【発明者】
【氏名】小椋 智
(72)【発明者】
【氏名】木村 朋己
(72)【発明者】
【氏名】木村 真之介
(72)【発明者】
【氏名】山本 千秋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 育史
(72)【発明者】
【氏名】吉野 数基
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319BB01
5E319BB08
5E319BB10
5E319CC33
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】電子部品の実装後に高温環境下に曝した場合にも、外部電極からはんだまたははんだ接合部への金属原子の拡散を効果的に抑制することができる電子部品の提供。
【解決手段】部品本体と、前記部品本体の表面に設けられた外部電極とを備える電子部品であって、前記外部電極は、Ni/Cu/Snの積層構造を含むことを特徴とする、電子部品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品本体と、
前記部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備える電子部品であって、
前記外部電極は、M/Cu/酸化防止膜の積層構造を含み、
前記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金である、
電子部品。
【請求項2】
前記Mは、Ni又はNiを含む合金である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記Mは、Niである、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記酸化防止膜は、Sn、Ag、Au、又はOSPの層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記酸化防止膜は、Sn層である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記Cu層の厚さは、0.1μm以上10μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記Cu層の厚さは、0.3μm以上5μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
部品本体と該部品本体の表面に設けられた外部電極とを備える電子部品と、
はんだ接合部と
を含む実装構造体であって、
前記電子部品は、はんだ接合部により他の電子部品に接合されており、
前記外部電極は、前記はんだ接合部との界面に、(Cu,MSn又はCuSnで表される金属間化合物層をし、
前記Mは、第9族~第11族の金属であり、
前記xは、5以上7以下であり、
前記yは、4以上6以下である、
構造実装体。
【請求項9】
前記外部電極は、M/(Cu,MSn又はM/CuSnの積層構造を含み、
前記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金であり、
前記Mは、第9族~第11族の金属であり、
前記xは、5以上7以下であり、
前記yは、4以上6以下である、
請求項8に記載の実装構造体。
【請求項10】
前記外部電極は、M/Cu/(Cu,MSn又はM/Cu/CuSnの積層構造を含み、
前記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金であり、
前記Mは、第9族~第11族の金属であり、
前記xは、5以上7以下であり、
前記yは、4以上6以下である、
請求項8に記載の実装構造体。
【請求項11】
前記M/Cu/(Cu,MSn又はM/Cu/CuSnの積層構造におけるCu層の厚さは、0.1μm以上5μm以下である、請求項10に記載の実装構造体。
【請求項12】
前記Mは、Ni又はNiを含む合金であり、前記Mは、Niである、請求項8~11のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項13】
前記(Cu,MSn層又はCuSn層の、下層に対する被覆率は、50%以上100%以下である、請求項8~12のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項14】
前記(Cu,MSn層又はCuSn層の厚みは、0.1μm以上である、請求項8~13のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項15】
x+yは、10以上12以下である、請求項8~14のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項16】
xは6であり、yは5である、請求項8~15のいずれか1項に記載の実装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品、及び当該電子部品を含む実装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子部品は、部品本体と、その表面に設けられた外部電極とを含み、電子部品を基板に実装する場合、外部電極が、基板に形成された電極部(例えばランド)にはんだ接合され得る(本明細書において、はんだ接合により形成される接合部を「はんだ接合部」とも言う)。例えば、特許文献1には、内部電極層および誘電体層から形成された積層体(部品本体)の端部に端子電極(外部電極)を有する積層セラミックコンデンサにおいて、端子電極が、Ag系導体膜(下地膜)、Niめっき中間層、および外部めっき層(Snめっき層)から形成されることが記載されている。特許文献1には、Niめっき中間層の厚さを所定厚さ以上とし、かつそのばらつきを低減することにより、はんだ接合時に起こり得るAg系導体膜のはんだ食われを有効に防止でき、耐熱性(例えば270℃で10秒)に優れた端子電極を形成できる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-196351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品を基板に実装した実装構造体は、例えば自動車のエンジンルームの電子燃料噴射制御の回路部に使用される場合のように、より一層過酷な温度環境下での使用に耐えることが求められている。かかる過酷な高温環境下で実装構造体が使用されると、特許文献1のような構成では、Niめっき中間層に含まれるNiがはんだ接合部に比較的大きい速度で拡散(熱拡散)し得、これにより、Ag系導体膜(下地膜)からAgもはんだ接合部に拡散し得る。はんだ接合部への拡散によりAg系導体膜からAgが喪失する「はんだ食われ」は、実装構造体の使用の間にも起こり得、その結果、電子部品の部品本体とAg系導体膜との間の接続が不十分になり、電子部品の接続信頼性が低下し得る。
【0005】
本開示は、電子部品の実装後に高温環境下に曝した場合にも、外部電極からはんだまたははんだ接合部への金属原子の拡散を効果的に抑制することができる、電子部品を提供することを目的とする。更に、本開示は、かかる電子部品が実装された実装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を含む。
[1] 部品本体と、
前記部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備える電子部品であって、
前記外部電極は、M/Cu/酸化防止膜の積層構造を含み、
前記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金である、
電子部品。
[2] 前記Mは、Ni又はNiを含む合金である、上記[1]に記載の電子部品。
[3] 前記Mは、Niである、上記[1]又は[2]に記載の電子部品。
[4] 前記酸化防止膜は、Sn、Ag、Au、又はOSPの層である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の電子部品。
[5] 前記酸化防止膜は、Sn層である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の電子部品。
[6] 前記Cu層の厚さは、0.1μm以上10μm以下である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の電子部品。
[7] 前記Cu層の厚さは、0.3μm以上5μm以下である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の電子部品。
[8] 部品本体と該部品本体の表面に設けられた外部電極とを備える電子部品と、
はんだ接合部と
を含む実装構造体であって、
前記電子部品は、はんだ接合部により他の電子部品に接合されており、
前記外部電極は、前記はんだ接合部との界面に、(Cu,MSn又はCuSnで表される金属間化合物層をし、
前記Mは、第9族~第11族の金属であり、
前記xは、5以上7以下であり、
前記yは、4以上6以下である、
構造実装体。
[9] 前記外部電極は、M/(Cu,MSn又はM/CuSnの積層構造を含み、
前記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金であり、
前記Mは、第9族~第11族の金属であり、
前記xは、5以上7以下であり、
前記yは、4以上6以下である、
上記[8]に記載の実装構造体。
[10] 前記外部電極は、M/Cu/(Cu,MSn又はM/Cu/CuSnの積層構造を含み、
前記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金であり、
前記Mは、第9族~第11族の金属であり、
前記xは、5以上7以下であり、
前記yは、4以上6以下である、
上記[8]に記載の実装構造体。
[11] 前記M/Cu/(Cu,MSn又はM/Cu/CuSnの積層構造におけるCu層の厚さは、0.1μm以上5μm以下である、上記[10]に記載の実装構造体。
[12] 前記Mは、Ni又はNiを含む合金であり、前記Mは、Niである、上記[9]~[11]のいずれか1項に記載の実装構造体。
[13] 前記(Cu,MSn層又はCuSn層の、下層に対する被覆率は、50%以上100%以下である、上記[8]~[12]のいずれか1項に記載の実装構造体。
[14] 前記(Cu,MSn層又はCuSn層の厚みは、0.1μm以上である、上記[8]~[13]のいずれか1項に記載の実装構造体。
[15] x+yは、10以上12以下である、上記[8]~[14]のいずれか1項に記載の実装構造体。
[16] xは6であり、yは5である、上記[8]~[15]のいずれか1項に記載の実装構造体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電子部品の実装後に高温環境下に曝した場合にも、外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散を効果的に抑制することができる電子部品を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一の実施形態である積層セラミックコンデンサ1aの概略断面図である。
図2図2は、本開示の一の実施形態である実装構造体21の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の電子部品および実装構造体について、以下、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、各実施形態の電子部品および実装構造体の形状および配置等は、図示する例に限定されない。
【0010】
本開示の電子部品は、
部品本体と、
上記部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備える電子部品であって、
上記外部電極は、M/Cu/酸化防止膜の積層構造を含む。ここに、前記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金である。
【0011】
本実施形態において、本開示の電子部品は、図1に示す積層セラミックコンデンサ1aであり得る。積層セラミックコンデンサ1aは、部品本体2と、部品本体の表面に設けられた外部電極3a,3bを有する。部品本体2は、内部電極5a,5b、誘電体部分(誘電体層)6を有する。外部電極3a,3bは、それぞれ、下地層11a,11b、M層12a,12b、Cu層13a,13b、及び酸化防止膜14a,14bから成る。
【0012】
本開示の電子部品は、外部電極に、M/Cu/酸化防止膜の積層構造を含む。かかる積層構造により、本開示の電子部品を他の電子部品にはんだにより実装する際に、外部電極とはんだ接合部の界面に、上記M/Cu/酸化防止膜の積層構造に由来する金属間化合物層が形成される。かかる金属間化合物層は、はんだ食われに対するバリア膜として機能し得、特に高温での使用時においても長期間バリア膜として機能し得ることから、信頼性が高くなる。
【0013】
上記部品本体2は、本実施形態ではコンデンサの本体であるが、その表面に外部電極が設けられるものであればこれに限定されない。例えば、部品本体は、インダクタ、抵抗、LC複合部品等として使用し得る電子部品の本体を挙げることができる。
【0014】
上記部品本体は、特に限定されず、通常行われる手法を用いて構成し得る。
【0015】
上記部品本体の材質は、特に限定されず、通常用いられる材質を用いることができる。材質としては、例えば、セラミック、樹脂、金属、それらの複合材等を挙げることができ、具体的には、セラミックを挙げることができる。
【0016】
図1に示す積層セラミックコンデンサ1aは、外部電極を2つ有するが、本開示の電子部品はこの態様に限定されず、3つ以上の外部電極を設けることができる。
【0017】
図1に示されるように、外部電極3a,3bは、それぞれ、下地層11a,11b、M層12a,12b、Cu層13a,13b、及び酸化防止膜14a,14bから成る。即ち、外部電極は、下地層上に、M/Cu/酸化防止膜の積層構造を含む。
【0018】
上記下地層は、特に限定されないが、Cu、Ag、Ni、またはPd、あるいはその合金層であり得る。下地層は、好ましくはCuまたはAg、より好ましくはCuの層であり得る。下地層は、単層であっても、2層以上であってもよい。
【0019】
上記下地層は、他の材料、例えば、ガラスなどを含んでいてもよい。
【0020】
上記下地層は、部品本体の表面上に設けられ、好ましくは部品本体に接触して設けられる。
【0021】
上記下地層の厚さは、特に限定されず、例えば、1μm以上500μm以下であり得、好ましくは3μm以上300μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下、例えば5μm以上50μm以下または10μm以上30μm以下であり得る。
【0022】
上記下地層の形成方法は、特に限定されず、例えばめっき(例えば、電解めっきまたは無電解めっき)、スパッタ、ペーストを塗布し、硬化または焼き付けする方法等が挙げられる。
【0023】
上記M層は、上記下地層上に設けられる。
【0024】
上記Mは、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金である。
【0025】
一の態様において、Mは、Ni又はNiを含む合金である。
【0026】
上記合金は、好ましくは、Niと、Zn、W、Re、Os、Mo、Nb、Ir、Ru、Rh、Cr、Pt、Ti、Lu、Pd、Fe、Cu及びCoからなる群から選択される1種又はそれ以上の金属との合金である。
【0027】
好ましい態様において、Mは、Niである。
【0028】
上記M層の厚さは、特に限定されず、例えば、0.01μm以上100μm以下であり得、好ましくは0.1μm以上50μm以下、より好ましくは0.3μm以上10μm以下、例えば0.3μm以上3μm以下または1μm以上5μm以下であり得る。
【0029】
上記M層の形成方法は、特に限定されないが、例えばめっき(例えば、電解めっきまたは無電解めっき)、スパッタ等が挙げられる。
【0030】
上記Cu層の厚さは、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.2μm以上8μm以下、さらに好ましくは0.3μm以上5.0μm以下であり得る。Cu層の厚さを0.3μm以上にすることにより、他の電子部品に実装した際に、より広範囲にわたって、好ましくは電外部極の表面全体にわたって、下記する(Cu,MSn又はCuSnの層が形成され、より確実にはんだ食われを抑制することができる。また、Cu層の厚さを10μm以下とすることにより、小型化が容易になる。Cu層の厚さを0.1μm以上とすることにより、(Cu,MSn又はCuSnの層を一様に形成することが容易になり、はんだ食われ抑制効果が大きくなる。これは、Cu層の厚みが0.1μm以上であれば、はんだ中のCuも界面に供給されるためと考えられる。
【0031】
上記Cu層の形成方法は、特に限定されないが、例えばめっき(例えば、電解めっきまたは無電解めっき)、スパッタ等が挙げられる。
【0032】
上記酸化防止膜は、好ましくは、Sn、Ag、Au、又はOSP(Organic Solderability Preservative、即ち水溶性プリフラックス)の層である。
【0033】
上記酸化防止膜は、好ましくはSn、Ag又はAuの層であり、より好ましくはSn層である。
【0034】
上記酸化防止膜の厚さは、特に限定されず、例えば、0.01μm以上100μm以下であり得、好ましくは0.1μm以上50μm以下、より好ましくは0.3μm以上10μm以下、例えば0.3μm以上3μm以下または1μm以上5μm以下であり得る。
【0035】
上記酸化防止膜の形成方法は、特に限定されないが、例えばめっき(例えば、電解めっきまたは無電解めっき)、スパッタ等が挙げられる。
【0036】
上記M/Cu/酸化防止膜の積層構造の厚さは、好ましくは1.0μm以上300μm以下、より好ましくは5.0μm以上100μm以下であり得る。
【0037】
上記M層、Cu層、及び酸化防止膜は、それぞれ、他の微量物質、例えば、不可避的に混入し得る微量原子等を含んでいてもよい。
【0038】
上記M/Cu/酸化防止膜は、好ましくはNi/Cu/Snである。
【0039】
上記した本開示の電子部品は、はんだを用いて他の電子部品に実装することができ、これにより実装構造体が得られる。本開示は、本開示の電子部品とはんだ接合部を含む実装構造体も提供する。
【0040】
本開示の実装構造体は、
部品本体と該部品本体の表面に設けられた外部電極とを備える電子部品と、
はんだ接合部と
を含む実装構造体であって、
上記電子部品は、はんだ接合部により他の電子部品に接合されており、
上記外部電極は、上記はんだ接合部との界面に、(Cu,MSn又はCuSnで表される金属間化合物層を有する。ここに、上記Mは、第9族~第11族の金属であり、xは、5以上7以下であり、yは、4以上6以下である。
【0041】
本実施形態において、本開示の実装構造体は、図2に示す実装構造体21であり得る。実装構造体21は、積層セラミックコンデンサ1b、及びはんだ接合部22a,22bを含む。実装構造体21の積層セラミックコンデンサ1bは、他の電子部品である基板23に、はんだ接合部により接合されている。積層セラミックコンデンサ1bは、上記した積層セラミックコンデンサ1aをはんだにより基板23に接合したものであり、外部電極3a,3bが外部電極3c,3dに変化していること以外は、上記の電子部品と同様の構成を有する。
【0042】
本実施形態において、他の電子部品は基板23であるが、これに限定されず、本開示の電子部品とはんだにより接続される電子部品であれば、特に限定されない。
【0043】
上記はんだ接合部22a,22bは、基板23と積層セラミックコンデンサ1を接合するものであり、具体的には、基板23の表面に設けられた電極部24a,24bと、積層セラミックコンデンサ1bの外部電極3c,3dとを接合する。
【0044】
上記基板の表面に設けられる電極部24a,24bは、特に限定されず、通常用いられるものを使用できる。電極部は、例えば、Ni、Cu、Ag、Sn、Au、Pd等の導電性物質、および場合により、プリフラックス等によって形成され得る。
【0045】
上記はんだ接合部は、一般的な方法で形成し得るが、例えば、はんだペーストを用い、リフローすることにより形成され得る。
【0046】
本実施態様において、はんだは特に限定されず、通常用いられるものを使用できる。はんだとしては、例えば、Sn-Ag-Cu系合金(SAC)、Sn-Zn-Bi系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag-In-Bi系合金、Sn-Zn-Al系合金、Sn-Sb系合金等を用いることができる。
【0047】
好ましい態様において、はんだはSACである。
【0048】
上記外部電極3c,3dは、はんだ接合部との界面に、(Cu,MSn又はCuSnで表される金属間化合物層を有する。かかる金属間化合物層が存在することにより、外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散、即ちはんだ食われを抑制することができる。
【0049】
上記金属間化合物層は、外部電極とはんだ接合部との界面全体にわたって存在する。金属間化合物層が外部電極とはんだ接合部との界面全体にわたって存在することにより、より確実に外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散を抑制することができる。
【0050】
上記実装構造体における外部電極は、M/(Cu,MSnもしくはCuSn、またはM/Cu/(Cu,MSnもしくはCuSnの積層構造を含む。
【0051】
上記Mは、上記と同意義であり、第9族~第11族の金属、又は第9族~第11族の金属を含む合金である。
【0052】
上記Mは、第9族~第11族の金属である。
【0053】
好ましい態様において、Mは、Niである。
【0054】
上記xは、5以上7以下であり、上記yは、4以上6以下である。
【0055】
一の態様において、xは、5.5以上6.5以下であり、yは、4.5以上5.5以下である。
【0056】
x+yは、好ましくは10以上12以下、より好ましくは10.5以上11.5以下である。
【0057】
好ましい態様において、xは6であり、yは5である。
【0058】
上記M/(Cu,MSn又はCuSnおよびM/Cu/(Cu,MSn又はCuSnの積層構造は、上記した積層セラミックコンデンサ1aをはんだにより基板23に接合する際に、M/Cu/酸化防止膜中のSn、ならびにはんだ中のSnが金属間化合物を形成することにより形成される。
【0059】
上記(Cu,MSn中のM含有量は、好ましくは0.01at%以上25at%以下、より好ましくは0.1at%以上20at%以下であり得る。
【0060】
上記M層の厚さは、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5μm以上8μm以下であり得る。
【0061】
上記Cu層の厚さは、存在する場合、好ましくは0.1μm以上5μm以下、より好ましくは0.3μm以上3μm以下であり得る。
【0062】
上記(Cu,MSn又はCuSn層の厚さは、好ましくは0.01μm以上20μm以下であり得る。(Cu,MSn又はCuSn層の厚さを0.01μm以上とすることにより、より確実に外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散を抑制することができる。(Cu,MSn又はCuSn層の厚さを20μm以下とすることにより、実装構造体をより小型化することができる。
【実施例0063】
以下、実施例を用いて本開示の電子部品および実装構造体を具体的に説明するが、本開示の電子部品および実装構造体はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1~3
(電子部品の作製)
Cu粉とガラスとが混合されたペーストに、チップ状のセラミック積層体を浸漬した後、引き上げ、ペーストを付着させた。その後、800℃で焼成し、セラミック積層体の表面に、下地層としてCuとガラスとを含む複合層を形成した。次いで、上記下地層上に、スパッタ法によりNi層、Cu層、及びSn層を形成し、実施例1~3の試料を得た。各層の厚みを表1に示す。
【0065】
比較例1
Ni層とSn層の間のCu層を形成しないこと以外は、上記実施例1~3と同様にして、比較例1の試料を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例4~6
(実装構造体の作製)
上記実施例1~3の試料を、プリント基板にSACはんだを用いてリフロー実装して、実施例4~6の実装構造体を得た。リフローは、予熱温度を150℃とし、60秒間キープした後、最高温度250℃で100秒間行った。
【0068】
比較例2
比較例1の試料を、プリント基板にSACはんだを用いてリフロー実装して、比較例2の実装構造体を得た。
【0069】
試験例1
実施例4~6及び2の実装構造体について、外部電極の断面を走査型電子顕微鏡(FE-SEM/EDX)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、FE-SEM:SU8230/EDX:5060FQ)により観察した。
【0070】
実施例4~6の実装構造体については、外部電極は、下地層上にNi/(Cu,Ni)Sn層が形成されていることが確認された。一方、比較例2の試料については、下地層上に、Ni/NiSn/(Cu,Ni)Sn層が形成されていることが確認された。
【0071】
試験例2(耐熱試験)
上記実施例4~6および比較例2で得られた実装構造体を、温度175℃の環境下に静置し、はんだ食われの発生の有無について観察した。はんだ食われの発生の有無は、外部電極の断面を走査型電子顕微鏡(FE-SEM/EDX)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、FE-SEM:SU8230/EDX:5060FQ)により観察することにより判断した。また、初期膜厚と175℃で静置した後の膜厚の差から、はんだ食われについての反応速度定数を算出した。結果を、下記表に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
実施例4~6の実装構造体は、500時間経過後もはんだ食われは観察されなかった。一方、比較例2の実装構造体は、局所的にはんだ食われが発生していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の電子部品は、高温での使用が求められる用途において好適に用いられる。
【符号の説明】
【0075】
1a,1b…積層セラミックコンデンサ
2…部品本体
3a,3b…外部電極
3c,3d…外部電極
5a,5b…内部電極
6…誘電体部分(誘電体層)
11a,11b…下地層
12a,12b…M
13a,13b…Cu層
14a,14b…酸化防止膜
21…実装構造体
22a,22b…はんだ接合部
23…基板
24a,24b…電極部
図1
図2