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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178477
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】カプセル剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4741 20060101AFI20241218BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241218BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20241218BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A61K31/4741
A61P31/14
A61K9/48
A61K47/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180615
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英輝
(72)【発明者】
【氏名】森 隆宏
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB21
4C076CC35
4C076DD67
4C076EE32H
4C076FF63
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA37
4C086MA55
4C086NA10
4C086ZB33
(57)【要約】
【課題】SARS-CoV-2感染に基づく疾患、COVID-19の予防及び/又は治療のための新たな医薬を提供すること。
【解決手段】(a)平均粒子径0.5~10μmのセファランチン及び(b)平均粒子径1~200μmの乳糖を含有するカプセル剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均粒子径0.5~10μmのセファランチン及び(b)平均粒子径1~200μmの乳糖を含有するカプセル剤。
【請求項2】
成分(a)と成分(b)の含有質量比(a/b)が、0.001~0.5である請求項1記載のカプセル剤。
【請求項3】
吸入粉末用カプセル剤である請求項1又は2記載のカプセル剤。
【請求項4】
1カプセル中の成分(a)の含有量が、1~40mgである請求項1~3のいずれか1項記載のカプセル剤。
【請求項5】
成分(b)が乳糖水和物である請求項1~4のいずれか1項記載のカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セファランチンを含有するカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
COVID-19(日本名:新型コロナウイルス感染症)は、2019新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって発症する感染症である。COVID-19は、2019年11月に中華人民共和国の武漢で発生が確認され、同年12月にWHOに報告された感染症であり、これ以降世界的に感染が拡大している。その症状は、発熱、空咳、疲労、喀痰、息切れ、咽頭痛、頭痛、筋肉痛、関節痛、嗅覚異常、味覚異常などから始まり、重症例では肺炎が重症化して呼吸不全に陥り、死亡の転帰をとるものである。
その感染力、罹患した際の重症化率等未だ不明な点があることに加え、新型であることから有効な治療法も未だ模索中であり、世界中の人々を不安に陥らせている。
これまでに、多数の既存薬物のスクリーニングがなされ、最近になって、セファランチンがCOVID-19の治療薬として期待されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】https://www.tus.ac.jp/mediarelations/archive/20200422_9837.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、SARS-CoV-2感染に基づく疾患、COVID-19の予防及び/又は治療のための新たな医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記セファランチンは、現在、散剤及び錠剤の経口投与用製剤、並びに注射剤が用いられている。本発明者らは、SARS-CoV-2の感染抑制に効果的な薬物として考えられるセファランチンを最もSARS-CoV-2が感染する部位に適用することを着想した。その結果、セファランチンを下気道に直接適用できる吸入剤とすることにより、当該目的が達成できることを見出し、また、セファランチンの粒子径を0.5~10μmとすることにより、下気道に直接セファランチンを効率よく供給可能な吸入剤が得られることを見出した。そして、さらに検討した結果、粒子径0.5~10μmのセファランチンと粒子径1~200μmの乳糖をカプセルに封入すれば、保存安定性に優れた吸入粉末用カプセル剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[5]を提供するものである。
[1](a)粒子径0.5~10μmのセファランチン及び(b)粒子径1~200μmの乳糖を含有するカプセル剤。
[2]成分(a)と成分(b)の含有質量比(a/b)が、0.001~0.5である[1]記載のカプセル剤。
[3]吸入粉末用カプセル剤である[1]又は[2]記載のカプセル剤。
[4]1カプセル中の成分(a)の含有量が、0.01~40mgである[1]~[3]のいずれかに記載のカプセル剤。
[5]成分(b)が乳糖水和物である[1]~[4]のいずれかに記載のカプセル剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のカプセル剤は、セファランチン微細粉末と乳糖を含有し、セファランチンの保存安定性に優れ、吸入粉末剤として使用すると、下気道にセファランチンを効率よく供給可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカプセル剤は、(a)粒子径0.5~10μmのセファランチン及び(b)粒子径1~200μmの乳糖を含有する。
【0009】
本発明で用いる成分(a)のセファランチンは、化学名を6',12'-Dimethoxy-2,2'-dimethyl-6,7-[methylenebis(oxy)]oxyacanthanとする化学物質であり、タマサキツヅラフジ、コウトウツズラフジ、ハスノハカズラ等から抽出されうるアルカロイドの一種である。
セファランチンは、放射線による白血球減少症、円形脱毛症・粃糠性脱毛症、滲出性中耳炎、マムシ咬傷の治療に用いられている。本発明のようにセファランチンを吸入剤とした場合には、これらの適応症に加えて、SARS-CoV-2の感染抑制薬、COVID-19の予防及び/又は治療薬として特に有用である。
【0010】
本発明において、セファランチンは化学合成されたものでも、タマサキツヅラフジ、コウトウツズラフジ、ハスノハカズラ等から抽出されたものでもいずれをも用いることができる。タマサキツヅラフジより抽出される場合は、セファランチンに加えて、イソテトランドリン、シクレアニン、ベルバミン等のセファランチン以外の他のアルカロイドをも含むタマサキツヅラフジ抽出物を用いることも可能である。セファランチンやタマサキツヅラフジ抽出物は市販品があり、購入して用いることが可能であり、また、タマサキツヅラフジ抽出物は公知の手法を用いることにより、タマサキツヅラフジから製造することができる。
【0011】
本発明で用いるセファランチンを下気道(気管、気管支、肺臓)に適用するには、セファランチンの下気道への到達性の観点から、その粒子径を0.5~10μmとするのが好ましく、1~8μmとするのがより好ましく、2~8μmとするのが更に好ましい。粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法(Partica LA-950V2:株式会社堀場製作所)により得られた累積頻度50%径を意味する(以下、D50と記載する場合がある)。この粒子径は、製造時の粉砕、篩過などによって調整することができる。
【0012】
1カプセル中のセファランチンの含有量は、1回投与量であるのが好ましく、0.01~40mgであるのが好ましく、0.1~30mgであるのがより好ましく、1~20mgであるのが更に好ましい。
カプセルは、1日につき1~3回程度に分けて、食前、食間、食後、就寝前等に1~8カプセル(好ましくは1~4カプセル、特に好ましくは1~2カプセル)服用することができる。
【0013】
本発明で用いる成分(b)の乳糖は、賦形剤である。乳糖としては、乳糖水和物を用いるのが好ましい。
乳糖の粒子径は、セファランチンの下気道への到達性と保存安定性を考慮すると、1~200μmであるのが好ましく、1~180μmであるのがより好ましい。この粒子径は、製造時の粉砕、篩過などによって調整することができる。
【0014】
また、乳糖は、(b1)粒子径1~50μmの微細乳糖と(b2)粒子径50~200μmの乳糖とを混合して用いるのが、セファランチンの下気道への到達性と保存安定性の観点でより好ましい。ここで、微細乳糖の粒子径は、1~40μmが好ましく、1~30μmがより好ましく、1~20μmが更に好ましい。粒子径50~200μmの乳糖の粒子径は、70~180μmが好ましく、80~160μmがより好ましく、100~150μmが更に好ましい。また、微細乳糖と粒子径50~200μmの乳糖との含有質量比(b1/b2)は、0.0001~0.5が好ましく、0.001~0.2がより好ましく、0.01~0.1が更に好ましい。
【0015】
成分(a)と成分(b)の含有質量比(a/b)は、セファランチンの下気道への到達性、保存安定性及び粉末吸入の容易性などの観点から、0.001~0.5が好ましく、0.005~0.25がより好ましく、0.01~0.1が更に好ましい。
【0016】
本発明のカプセル剤には、前記成分(a)及び成分(b)以外に、酢酸、リン酸、ホウ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン酸、ε-アミノカプロン酸、硫酸及びそれらの薬学的に許容される塩、水酸化ナトリウム、塩酸等のpH調整剤、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラベン類、ベンザルコニウム塩化物、またはクロロブタノール等の防腐剤、クロモグリク酸ナトリウム等の安定剤、カアトレジン、フェノール等の保存剤、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム、塩化ナトリウム、カルメロースナトリウム、キシリトール、グリセリン、クレアチニン、ステアリン酸マグネシウム、ニコチン酸アミド、マクロゴール(600、4000等)、トコフエロール及びその誘導体、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等の安定化剤等、オレイン酸、精製オレイン酸、精製水等の基剤、無水エタノール等の可溶化剤、注射用水等の溶剤等などを含有させることもできるが、それらの含有量はカプセル内容物全量に対し、5質量%以下とするのが好ましく、3質量%以下とするのがより好ましく、2質量%以下とするのが更に好ましい。
【0017】
本発明のカプセル剤は、硬カプセルであるのが好ましく、その剤皮としては、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール共重合体、プルランなどが挙げられ、安定性の観点からヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に好ましい。市販品としては、例えば、PEG(マクロゴール)を配合した日本薬局方ゼラチンカプセル(クオリカプス株式会社)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを基剤とするクオリーVTM(クオリカプス株式会社)やVcapsTMPlus(ロンザジャパン株式会社)、ポリビニルアルコール共重合体を基剤とするPONDACTMカプセル(日新化成株式会社)、プルランを基剤とするNPcapsTM(ロンザジャパン株式会社)等が挙げられる。
【0018】
本発明のカプセル剤は、経口投与剤として使用することもできるが、吸入粉末カプセル剤として使用するのが、セファランチンを下気道に到達させる観点から好ましい。本発明のカプセル剤の使用に際しては、吸入投与のために適切な器具又は装置を使用すればよい。
【0019】
吸入粉末カプセル剤の吸入投与のための器具の具体例としては、ドライパウダー吸入器(Dry Powder Inhaler;以下、DPIと略する)を挙げることができる。本発明の吸入粉末用カプセル剤に用いるデバイスはDPIとして通常用いられるものを使用することができる。例えばデバイスとして、モノヘラー、ハンディヘラー、ブリーズヘラー、フローキャプス等が挙げられる。
【0020】
前記カプセル剤は、さらに、不活性ガス及び/又は脱酸素剤が封入された気密包装体に収容して医薬品として供給するのが好ましい。
本発明において「気密包装体」とは、通常の取扱い、運搬又は保存等の状態において、固体及び液体の包装体外からの実質的な侵入を抑制し得る包装を意味し、第十八改正日本薬局方 通則に定義される「気密容器」及び「密封容器」を包含する概念である。当該包装体としては、定形、不定形のいずれのものも用いることができ、具体的には例えば、ビン包装、SP(Strip Package)包装、PTP(Press Through Package)包装、ピロー包装、スティック包装等が挙げられる。本発明においては、さらにこれらを複数組み合わせたものであってもよく、具体的には例えば、前記カプセル剤をまずPTP包装にて包装し、これをさらにピロー包装にて包装する形態が挙げられる。
【0021】
気密包装体の包装材料(素材)としては、通常防湿性を発揮し得るものであれば特に限定されず、医薬品や食品の分野で、水分に弱い内容物の防湿等を目的として用いられる材料を適宜用いることができる。
ビン包装に用いられるビン本体の材料としては例えば、ガラス、プラスチック( ポリエステル、ポリエチレン(低密度(LDPE)、高密度(HDPE)を含む)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン等)、金属(アルミニウム)等が挙げられる。また、栓や蓋の材料としては例えば、プラスチック(ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン等)、金属(アルミニウム)等が挙げられる。ビン包装するに際しては、例えば、前記カプセル剤を、市販のビン内に適当な数量格納し、次いで、適当な栓や蓋で封をすればよい。なお、ビンは、格納するカプセル剤の数量に応じた大きさのものを適宜選択すればよく、ビンの容量としては、例えば、10~500mL程度であり、14~400mLが好ましく、24~350mLがより好ましい。ビン包装の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)がより好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)が特に好ましい。
【0022】
また、SP包装、PTP包装、ピロー包装やスティック包装等に用いられる包装材料としては例えば、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、二軸延伸ポリエステル(PET)、グルコース変性PET(PET-G)、二軸延伸ナイロン(ONy、PA)、セロハン、紙、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、無延伸ポリプロピレン(CPP、IPP)、アイオノマー樹脂(IO)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、二軸延伸ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、環状ポリオレフィン(COC)、無延伸ナイロン(CNy)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、硬質塩化ビニル(VSC)等の樹脂や、アルミニウム箔(AL)のような金属箔等が挙げられ、これらの2種以上を適宜組み合わせた多層構造としてもよい。斯かる多層構造としては例えば、PVCとPVDCを積層したもの(PVC/PVDC。以下、同様に省略して表記する。)、PVC/PVDC/PE/PVC、PVC/PVDC/PE/PVDC/PVC、CPP/COC/CPP、PVC/AL、CPP/AL、CPP/CPP/CPP等が挙げられる。斯かる多層構造を形成する方法としては、押出しラミネート、ドライラミネート、共押出しラミネート、サーマルラミネート、ウェットラミネート、ノンソルベントラミネート、ヒートラミネート等の公知のラミネート方法が挙げられる。SP包装、PTP包装、ピロー包装やスティック包装等に用いられる包装材料としては、ポリ塩化ビニル、アルミニウム箔が好ましい。
【0023】
本発明のカプセル剤は、さらに気密包装体に収容して医薬品として供給することができる。具体的には例えば、ビン包装、SP(Strip Package)包装、PTP(Press Through Package)包装、ピロー包装、スティック包装等が挙げられる。本発明のカプセル剤は、PTP包装にて包装し、これをさらにピロー包装にて包装する形態も挙げられる。
【0024】
本発明のカプセル剤は、セファランチンの適応症である円形脱毛症・粃糠性脱毛症、滲出性中耳炎、マムシ咬傷に加えて、SARS-CoV-2の感染抑制薬、COVID-19の予防及び/又は治療薬として用いることができる。その投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などによって異なるが、通常は成人に対して、セファランチンとして1日1~20mgの範囲が挙げられる。また、本発明のカプセル剤をSARS-CoV-2の感染抑制薬、COVID-19の予防及び/又は治療薬として用いる場合、ネルフィナビルなどの抗HIV剤と併用することもできる。
【実施例0025】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
【0026】
参考例1
ジェットミルで粉砕したセファランチン(粒子径:1.2μm:レーザー回折法により測定)1.5gに乳糖水和物98.5gを添加し、ハイフレックスグラル(深江パウテック(株)製、HF-GS-2J)で混合した。得られた粉末0.1gをカプセルに充填して、吸入粉末剤を製造した。
【0027】
参考比較例1
未粉砕のセファランチン(粒子径:50μm:レーザー回折法により測定)1.5gに乳糖水和物98.5gを添加し、ハイフレックスグラル(深江パウテック(株)製、HF-GS-2J)で混合した。得られた粉末0.1gをカプセルに充填して、吸入粉末剤を製造した。
【0028】
試験例1
参考例1及び参考比較例1で得た吸入粉末剤について、デバイスとしてモノヘラーを用いて、Stage2表示率(%)及び微粒子量(FPD)(%)を測定した。結果を表1に示す。
(1)Stage2表示率(%)
吸入剤のIn vitro評価装置であるTwin Impingerを用いて、気道到達率であるStage2表示率を求めた。
(2)微粒子量(FPD)(%)
日本薬局方 第十七改正第二追補の吸入剤の空気力学的粒度測定法に準拠して、装置1のマルチステージリキッドインピンジャーを用いて評価した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から明らかなように、参考例1の吸入粉末剤は、Stage2表示率(%)及び微粒子量(FPD)(%)が30%程度と高く、肺深部までセファランチンを到達させることが可能と考えられた。
一方、参考比較例1のセファランチン未粉砕の場合は、Stage2表示率(%)及び微粒子量(FPD)(%)が3%程度と低く、肺深部までセファランチンを到達させることは困難と考えられた。
【0031】
参考例2
[サンプル1]
セファランチン(D50:133μm)2gをガラス瓶(2K規格瓶)に入れ、サンプル1とした。
[サンプル2]
ジェットミルで粉砕したセファランチン(D50:3.5μm)2gをガラス瓶(2K規格瓶)に入れ、サンプル2とした。
[サンプル3]
ジェットミルで粉砕したセファランチン(D50:3.5μm)2gと乳糖水和物18g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120)を混合し、ガラス瓶(2K規格瓶)に入れ、サンプル3とした。
[サンプル4]
ジェットミルで粉砕したセファランチン(D50:3.5μm)2gと乳糖水和物18g(D50:8.1μm、商品名:InhaLacTM400)を混合し、ガラス瓶(2K規格瓶)に入れ、サンプル4とした。
【0032】
試験例2
上記各種サンプルにつき、保存開始前及び80℃3日間保存後のセファランチン由来の分解物(類縁物質)の割合を、HPLC装置を用いて測定した。具体的には、セファランチンの類縁物質の割合を、セファランチン及びその類縁物質に由来する総ピーク面積に対する面積百分率(%)として測定した。
そして、得られた各種サンプルについての保存開始前及び80℃3日間保存後のセファランチンの類縁物質の割合(%)より、以下の式に従い、各種サンプルについてのセファランチン由来の分解物の増加率(%)を算出した。
セファランチン由来の分解物の増加率(%)=(80℃3日間保存後のセファランチンの類縁物質の割合(%))-(保存開始前のセファランチンの類縁物質の割合(%))
【0033】
<分解物の測定>
分解物の測定は、以下の条件にて液体クロマトグラフ法により定量した。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:284nm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
カラム:液体クロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲル(4.6mm×15cm、φ5μm)
移動相:アセトニトリル/薄めたトリエチルアミン(1→2000)混液(1:1)
【0034】
得られた結果を表2に示す。
表2より、セファランチンは、微粉末とすることにより、保存安定性が低下することが判明した。セファランチンは、乳糖と混合しても、保存安定性が低下した。
【0035】
【表2】
【0036】
製造例1
ジェットミルで粉砕したセファランチン(D50:3.5μm)2g、乳糖水和物17.26g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)、及び乳糖水和物0.74g(D50:8.1μm、商品名:InhaLacTM400、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)を混合し、粉末を得た。
【0037】
実施例1
製造例1で得た粉末を1カプセル当たり100mgとなるように3号HPMCカプセル(商品名:VcapsTMPlus(白色)、販売会社:ロンザジャパン株式会社)に充填し200カプセル調製した。
得られた5カプセルをガラス瓶(2K規格瓶)に入れ、医薬製剤を製した。
【0038】
比較例1
製造例1で得た粉末100mgをガラス瓶(2K規格瓶)に入れ、医薬製剤を製した。
【0039】
試験例3
上記各種サンプルにつき、保存開始前及び60℃2週間保存後のセファランチン由来の類縁物質の割合を、HPLC装置を用いて測定した。
【0040】
【表3】
【0041】
表3より、(a)平均粒子径0.5~10μmのセファランチンと、(b)平均粒子径1~200μmの乳糖を、カプセル中に封入することにより、保存安定性が向上することがわかった。
【0042】
製造例2
ジェットミルでセファランチン(D50:133μm)5.0gと乳糖水和物5.0g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)を粉砕し、粉砕品を得た(平均粒子径:2.6μm)。得られた粉砕品4.0gと乳糖水和物16.0g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)を混合し、粉末を得た。
【0043】
製造例3
ジェットミルでセファランチン(D50:133μm)5.0gと乳糖水和物5.0g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)を粉砕し、粉砕品を得た(平均粒子径:2.6μm)。得られた粉砕品2.0gと乳糖水和物18.0g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)を混合し、粉末を得た。
【0044】
製造例4
ジェットミルでセファランチン(D50:133μm)5.0gと乳糖水和物5.0g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)を粉砕し、粉砕品を得た(平均粒子径:2.6μm)。得られた粉砕品0.4gと乳糖水和物19.6g(D50:134μm、商品名:InhaLacTM120、販売会社:MEGGLE GmbH& CO.KG)を混合し、粉末を得た。
【0045】
実施例2~4
前記製造例2~4で得た粉末を1カプセル当たり100mgとなるように3号HPMCカプセル(商品名:VcapsTMPlus(白色)、販売会社:ロンザジャパン株式会社)に充填し20カプセル調製し、実施例2~4とした。