(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178481
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】GCL阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07C 381/10 20060101AFI20241218BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20241218BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C07C381/10 CSP
A61K31/198
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183784
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】梅村 周平
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 隆之
(72)【発明者】
【氏名】川俣 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】笠野 実希
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206FA53
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB26
4H006AA01
4H006AB28
4H006TN10
4H006TN30
4H006TN50
4H006TN60
(57)【要約】
【課題】 がんなどのGCL関連疾患の進行抑制、再発抑制および/または治療において、GCL阻害活性を有する化合物を有効成分とする薬剤を提供すること。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】
(式中、全ての記号は、明細書中に記載の記号と同じ意味を表す。)で示される化合物、またはその塩は、GCL阻害活性を有するため、がんなどのGCL関連疾患の進行抑制、再発抑制および/または治療において有用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
R
1は、水素原子、メチル基またはヒドロキシル基を表し、
R
2は、(1)-C(R
3R
4)-R
5または(2)1~9個のR
6で置換されていてもよいC3~C5シクロアルキル基を表し、
R
3またはR
4は、それぞれ、(1)水素原子、(2)ヒドロキシル基、(3)ハロゲン原子または(4)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、
R
5は、(1)トリフルオロメチル基または(2)tert-ブチル基を表し、
R
6は、(1)ヒドロキシル基、(2)ハロゲン原子または(3)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、R
6が複数の場合、複数のR
6はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、
R
7は、水素原子またはC1~C4アルキル基を表し、
nは0または1を表す。)で示される化合物またはその塩。
【請求項2】
R2が、(1)-C(R3R4)-CF3または(2)1~4個のR6で置換されていてもよいC4~C5シクロアルキル基である、請求項1記載の化合物、またはその塩。
【請求項3】
R
2が、
【化2】
(式中、記号は請求項1と同じ意味を表す。)、または
【化3】
(式中、mは1~3の整数を表し、pは0~3の整数を表し、R
6aは、(1)ヒドロキシル基、(2)ハロゲン原子または(3)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、pが2または3のとき、複数のR
6aはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)である、請求項1または2記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
R1が水素原子であり、nが1である、請求項1~3のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
一般式(I)で示される化合物が、一般式(II-3)
【化4】
(式中、R
2aは
【化5】
(式中、記号は請求項1と同じ意味を表す。)、または
【化6】
(式中、記号は請求項3と同じ意味を表す。)を表し、その他の記号は請求項1と同じ意味を表す。)で示される化合物である、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項6】
R7が水素原子、エチル基またはイソプロピル基である、請求項1~5のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項7】
一般式(I)で示される化合物が、
(1)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(2)(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロペンチルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(3)(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロブチルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(4)(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロプロピルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(5)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-メチルブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(6)(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(3,3-ジフルオロシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(7)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4-ジメチルペンチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(8)(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(9)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(10)(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(1-フルオロシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(11)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(12)(2S)-2-アミノ-4-{S-[4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)ブチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(13)(2S)-2-アミノ-4-[S-(3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(14)(S)-2-アミノ-4-((R,3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(15)(S)-2-アミノ-4-((R,3S)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(16)(S)-2-アミノ-4-((R)-2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(17)(S)-2-アミノ-4-((S)-4,4,4-トリフルオロブチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(18)エチル(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート、および
(19)イソプロピル(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート
からなる群から選択される化合物である、請求項1記載の化合物またはその塩。
【請求項8】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩を含有する医薬組成物。
【請求項9】
GCL阻害剤である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
がんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤である、請求項8または9記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩の有効量を、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療を必要とする患者に投与することを特徴とする、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療方法。
【請求項12】
がんの進行抑制、再発抑制および/または治療に使用される、請求項1記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩。
【請求項13】
がんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤を製造するための、請求項1記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グルタミン酸システインリガーゼ(以下、「GCL」と記載)阻害活性を有する化合物またはその塩およびそれらを有効成分として含有する医薬組成物等に関する。詳しくは、一般式(I):
【0002】
【0003】
(式中、全ての記号は後記と同じ意味を表す。)で示される化合物またはその塩(以下、本開示化合物という。)およびそれらを有効成分として含有する医薬組成物等に関する。
【背景技術】
【0004】
GCLは、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(以下、「GCLC」と記載)とグルタミン酸システインリガーゼ修飾サブユニット(以下、「GCLM」と記載)で構成される、グルタチオン(以下、「GSH」と記載)合成の律速酵素である。
【0005】
本酵素とがんとの関係が報告されている。例えば、GCLC阻害剤が、ARID1A欠損がんの治療に有用であること(特許文献1)やGCLCをノックアウトすることで、急性骨髄性白血病(AML)の腫瘍増殖が抑制されたことが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
GCLC阻害剤としては、L-ブチオニンスルホキシイミン(以下、BSOと記載)が知られている。また、GCLC阻害剤として、BSO誘導体や低分子化合物に関する報告がある(特許文献2、非特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/138385号パンフレット
【特許文献2】国際公開第1989/009205号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】アメリカン・ジャーナル・オブ・キャンサー・リサーチ、2911頁、第11巻、6号、2021年(American Journal of Cancer Research 2911頁、11(6)、2021)
【非特許文献2】バイオサイエンス、バイオテクノロジー、アンド バイオケミストリー、1500頁、第66巻、7号、2002年(Bioscience、Biotechnology、and Biochemistry 1500、66(7)、2002)
【非特許文献3】バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー、1935頁、第6巻、1998年(Bioorganic & Medicinal Chemistry 1935、6、1998)
【非特許文献4】モレキュラー・ファーマコロジー、1140頁、第71巻、2007年(MOLECULAR PHARMACOLOGY 1140、71、2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、GCLに対して阻害活性を有する化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、後述の一般式(I)で示される化合物が、GCLに対して阻害活性を有することを見出した。
【0011】
すなわち、本開示は、一態様において、
[1]一般式(I):
【0012】
【0013】
(式中、R1は、水素原子、メチル基またはヒドロキシル基を表し、R2は、(1)-C(R3R4)-R5または(2)1~9個のR6で置換されていてもよいC3~C5シクロアルキル基を表し、R3またはR4は、それぞれ、(1)水素原子、(2)ヒドロキシル基、(3)ハロゲン原子または(4)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、R5は、(1)トリフルオロメチル基または(2)tert-ブチル基を表し、R6は、(1)ヒドロキシル基、(2)ハロゲン原子または(3)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、R6が複数の場合、複数のR6はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、R7は、水素原子またはC1~C4アルキル基を表し、nは0または1を表す。)で示される化合物またはその塩、
[2]前記[1]に記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩を含有する医薬組成物、
[3]GCL阻害剤である、前記[2]記載の医薬組成物等の実施態様を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示化合物は、GCLに対して阻害活性を有することから、がんなどのGCLに関連する疾患(GCL関連疾患)の進行抑制、再発抑制および/または治療剤の有効成分として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】BSOおよび実施例2で製造した化合物投与後24時間における腫瘍中GSH量を示す。
【
図2】BSOならびに実施例2および実施例3でそれぞれ製造した各化合物投与後24時間における腫瘍中GSH量を示す。
【
図3】BSOならびに実施例2および実施例3でそれぞれ製造した各化合物投与後の各群の腫瘍体積の推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を詳細に説明する。
【0017】
本開示において、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子等が挙げられる。好ましくはフッ素または塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。
【0018】
本開示において、1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基とは、例えば、1つ、2つまたは3つのハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基であり、具体的にはフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基およびトリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0019】
本開示において、C1~C4アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基が挙げられる。
【0020】
本開示において、C3~C5シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基およびシクロペンチル基が挙げられる。
【0021】
本開示において、C3~C4シクロアルキル基としては、シクロプロピル基およびシクロブチル基が挙げられる。
【0022】
本開示において、C4~C5シクロアルキル基としては、シクロブチル基およびシクロペンチル基が挙げられる。
などが挙げられる。
【0023】
本開示において、R1として好ましくは水素原子である。
【0024】
本開示において、nとして好ましくは1である。
【0025】
本開示において、R5として好ましくは、トリフルオロメチル基である。
【0026】
本開示において、R2として好ましくは(1)-C(R3R4)-CF3または(2)1~4個(好ましくは1~3個、より好ましくは1または2個)のR6で置換されていてもよいC3~C5シクロアルキル基(C3~C5シクロアルキル基として好ましくは、C3~C4シクロアルキル基またはC4~C5シクロアルキル基であり、より好ましくはシクロブチル基)である。
【0027】
本開示において、R3として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシル基であり、より好ましくは、水素原子またはヒドロキシル基であり、さらに好ましくはヒドロキシル基である。
【0028】
本開示において、R4として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基である。
【0029】
本開示において、R6として好ましくは、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、より好ましくは、ヒドロキシル基またはハロゲン原子である。
【0030】
本開示において、R2として好ましい一実施形態は、
【0031】
【0032】
(式中、波線は、隣接する基との結合位置(CH2(CHR1)nとの結合位置)を示し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)である。
【0033】
本開示において、R2として好ましい一実施形態は、
【0034】
【0035】
(式中、mは1~3の整数を表し、pは0~3の整数を表し、R6aは、(1)ヒドロキシル基、(2)ハロゲン原子または(3)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、pが2または3のとき、複数のR6aはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)である。
【0036】
本開示において、R2として好ましい一実施形態は、
【0037】
【0038】
(式中、m-1は1または2を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)、または
【0039】
【0040】
(式中、m-2は1または2を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)である。
【0041】
本開示において、R2として好ましい一実施形態は、
【0042】
【0043】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)である。
【0044】
本開示において、R6aとして好ましくは、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子である。
【0045】
本開示において、mとして好ましくは、2である。
【0046】
本開示において、m-1として好ましくは、2である。
【0047】
本開示において、m-2として好ましくは、1である。
【0048】
本開示において、pとして好ましくは、0~2であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
本開示において、R7として好ましくは、水素原子、エチル基またはイソプロピル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0049】
本開示において、一般式(I)で示される化合物として好ましくは、一般式(I―1)
【0050】
【0051】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。) で示される化合物である。
【0052】
本開示において、一般式(I)で示される化合物として好ましくは、一般式(I―2)
【0053】
【0054】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。) で示される化合物である。
【0055】
本開示において、一般式(I)で示される化合物として好ましくは、一般式(II)
【0056】
【0057】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。) で示される化合物である。
【0058】
本開示において、一般式(I)で示される化合物として好ましくは、一般式(II-1)
【0059】
【0060】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。) で示される化合物である。
【0061】
本開示において、一般式(I)で示される化合物として好ましくは、一般式(II-2)
【0062】
【0063】
(式中、記号は前記と同じ意味を表す。) で示される化合物である。
【0064】
本開示において、一般式(I)で示される化合物として好ましくは、一般式(II-3)
【0065】
【0066】
(式中、R2aは
【0067】
【0068】
(式中、記号は前記と同じ意味を表す。)、または
【0069】
【0070】
(式中、記号は前記と同じ意味を表す。)を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)で示される化合物である。
【0071】
本開示において、一般式(I)で示される化合物として好ましくは、前記の一般式を含む各々の基の好ましい定義の組み合わせである。
【0072】
本開示において、一般式(I)で示される化合物の別の態様として最も好ましくは、後記の実施例に記載の実施例化合物またはその塩である。
【0073】
本開示化合物は、GCL阻害活性を有する。本開示において、GCL阻害活性は、一実施形態において、GCLC阻害活性である。本開示化合物は、一実施形態において、BSOと同等以上のGCL阻害活性を有する。本開示化合物は、一実施形態において、BSOよりも細胞内でのGCL阻害作用が強い。本開示化合物は、一実施形態において、BSOよりも細胞内でのGCL阻害作用が約2倍以上、約3倍以上、約4倍以上、約5倍以上または約10倍以上強い。細胞内でのGCL阻害作用は、一般的な測定方法を用いて確認することができ、例えば、後述の薬理実施例2に記載の方法により測定することができる。
【0074】
本開示化合物は、一実施形態において、薬物動態に優れる。動態に関する各パラメーター(AUC、CLtotal、T1/2および/またはBA等)は、一般的な測定方法を用いて確認することができる。
【0075】
本開示化合物は、一実施形態において、BSOよりも、強いインビボ作用を有し、BSOよりも低濃度から有効性を発揮する。インビボ作用(有効性等)は、例えば、一般的な測定方法を用いて確認することができ、例えば、後述の薬理実施例3に記載の方法により測定することができる。
【0076】
本開示においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルコキシ基およびアルキレン基などには直鎖のものおよび分岐鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E、Z、シス、トランス体)、不斉炭素の存在などによる異性体(R、S体、α、β体、エナンチオマー、ジアステレオマー)、スルホキシイミン(Sulfoximine)の硫黄原子(不斉)の存在による異性体(R、S体、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D、L、d、l体)、クロマトグラフ分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、これらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本開示に含まれる。また、本開示においては、互変異性による異性体をもすべて包含する。
【0077】
本開示においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【0078】
【0079】
は紙面の向こう側(すなわちα-配置)に結合していることを表し、
【0080】
【0081】
は紙面の手前側(すなわちβ-配置)に結合していることを表し、
【0082】
【0083】
は、α-配置とβ-配置の任意の混合物であることを表す。
[塩]
一般式(I)等で示される化合物は、公知の方法で塩に変換される。
【0084】
塩として好ましくは薬学的に許容される塩である。
【0085】
塩は、水溶性のものが好ましい。
【0086】
薬学的に許容される塩としては、例えば、酸付加塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩などが挙げられる。
【0087】
酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩および硝酸塩のような無機酸塩または酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、およびグルコン酸塩のような有機酸塩が挙げられる。
【0088】
アルカリ金属塩としては、例えば、カリウム塩およびナトリウム塩などが挙げられる。
【0089】
アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩などが挙げられる。
【0090】
アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0091】
アミン塩としては、例えば、トリエチルアミン塩、メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、シクロペンチルアミン塩、ベンジルアミン塩、フェネチルアミン塩、ピペリジン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、リジン塩、アルギニン塩およびN-メチル-D-グルカミン塩などが挙げられる。
【0092】
また、本開示化合物は、任意の方法でN-オキシド体にすることができる。N-オキシド体とは、一般式(I)等で示される化合物の窒素原子が、酸化されたものを表す。
【0093】
一般式(I)等で示される化合物およびその塩は、溶媒和していない形態で存在してもよいし、水、エタノールなどの薬学的に許容できる溶媒と溶媒和した形態で存在してもよい。溶媒和物として好ましくは水和物である。一般式(I)等で示される化合物およびその塩は、溶媒和物に変換することができる。
【0094】
一般式(I)等で示される化合物は、適切な共結晶形成剤と共結晶を形成することができる。共結晶としては、薬学的に許容される共結晶形成剤と形成される、薬学的に許容されるものが好ましい。共結晶は、典型的に、2種以上の異なる分子がイオン結合とは異なる分子間相互作用で形成される結晶として定義される。また、共結晶は中性分子と塩の複合体であってもよい。共結晶は、公知の方法、例えば、融解結晶化により、溶媒からの再結晶により、または成分を一緒に物理的に粉砕することにより、調製することができる。適当な共結晶形成剤としては、WO2006/007448に記載のものを含む。
【0095】
本開示において、本開示化合物に関する言及はすべて、一般式(I)等で示される化合物、その塩、そのN-オキシド体、その溶媒和物(例えば、水和物)、もしくはその共結晶、または一般式(I)等で示される化合物の塩のN-オキシド体、その溶媒和物(例えば、水和物)、もしくはその共結晶を包含する。
[プロドラッグ]
一般式(I)等で示される化合物のプロドラッグとは、生体内において酵素や胃酸などによる反応により一般式(I)等で示される化合物に変換される化合物をいう。一般式(I)等で示される化合物のプロドラッグとしては、例えば、一般式(I)等で示される化合物がアミノ基を有する場合、該アミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、一般式(I)等で示される化合物のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、アセトキシメチル化、tert-ブチル化された化合物など);一般式(I)等で示される化合物が水酸基を有する場合、該水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、一般式(I)等で示される化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物など)が挙げられ;一般式(I)等で示される化合物がカルボキシ基を有する場合、該カルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例えば、一般式(I)等で示される化合物のカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、1-{(エトキシカルボニル)オキシ}エチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、1-{[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ}エチルエステル化、メチルアミド化された化合物など)などが挙げられる。これらの化合物はそれ自体公知の方法によって製造することができる。また、一般式(I等)で示される化合物のプロドラッグは水和物および非水和物のいずれであってもよい。また、一般式(I)等で示される化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163~198頁に記載されているような、生理的条件において一般式(I)で示される化合物に変化するものであってもよい。
【0096】
さらに、一般式(I)等で示される化合物を構成する各原子は、その同位元素(例えば、2H、3H、11C、13C、14C、15N、16N、17O、18O、18F、35S、36Cl、77Br、125Iなど)などで置換されていてもよい。
[本開示化合物の製造方法]
本開示化合物は、公知の方法、例えば、以下に示す方法、これらに準ずる方法、Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、3rd Edition(Richard C.Larock、John Wiley & Sons Inc、2018)に記載された方法または実施例に示す方法等を適宜改良し、組み合わせて用いることで製造することができる。出発原料は、塩を用いてもよい。それぞれの反応を行う順序は、導入されている保護基や反応条件によって適宜入れ替えることができる。
【0097】
また、アミノ基、カルボキシル基または水酸基を有する化合物は、必要に応じて、これらの基に対して汎用される保護基、例えば、T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、Wiley、New York、5th Edition、2014に記載の保護基で保護された化合物を用いて、適切な反応工程の後、公知の脱保護反応を行って製造することができる。
【0098】
カルボキシル基の保護基としては、例えば、メチル、エチル、tert-ブチル、トリクロロエチル、ベンジル(Bn)、フェナシル、p-メトキシベンジル、トリチル、2-クロロトリチル等が挙げられる。
【0099】
アミノ基の保護基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、1-メチル-1-(4-ビフェニル)エトキシカルボニル(Bpoc)基、トリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンジル(Bn)基、p-メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル(BOM)基、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)基等が挙げられる。
【0100】
水酸基の保護基としては、例えば、メチル、トリチル、メトキシメチル(MOM)、1-エトキシエチル(EE)、メトキシエトキシメチル(MEM)、2-テトラヒドロピラニル(THP)、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、アセチル(Ac)、ピバロイル、ベンゾイル、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル、アリルオキシカルボニル(Alloc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル(Troc)等が挙げられる。
【0101】
脱保護反応は公知であり、以下の方法で行うことができる。例えば、
(1)アルカリ加水分解による脱保護反応、
(2)酸性条件下における脱保護反応、
(3)加水素分解による脱保護反応、
(4)シリル基の脱保護反応、
(5)金属を用いる脱保護反応、
(6)金属錯体を用いる脱保護反応、等が挙げられる。
【0102】
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)アルカリ加水分解による脱保護反応は、例えば、有機溶媒(例えば、メタノール、テトラヒドロフラン(以下、THF)、ジオキサン等)中、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)または炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物を用いて、0~40℃で行われる。
【0103】
(2)酸条件下での脱保護反応は、例えば、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、メタノール、イソプロピルアルコール、THF、アニソール等)中、有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トシル酸等)または無機酸(例えば、塩酸、硫酸等)もしくはこれらの混合物(例えば、臭化水素/酢酸等)中、2,2,2-トリフルオロエタノールの存在下または非存在下、0~100℃で行われる。
【0104】
(3)加水素分解による脱保護反応は、例えば、溶媒(例えば、エーテル系(例えば、THF、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等)、アルコール系(例えば、メタノール、エタノール等)、ベンゼン系(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ケトン系(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、ニトリル系(例えば、アセトニトリル等)、アミド系(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMF)等)、水、酢酸エチル、酢酸またはそれらの2以上の混合溶媒等)中、触媒(例えば、パラジウム-炭素、パラジウム黒、水酸化パラジウム-炭素、酸化白金、ラネーニッケル等)の存在下、常圧または加圧下の水素雰囲気下またはギ酸アンモニウム存在下、0~200℃で行われる。
【0105】
(4)シリル基の脱保護反応は、例えば、水と混和しうる有機溶媒(例えば、THF、アセトニトリル等)中、テトラブチルアンモニウムフルオライドを用いて、0~40℃で行われる。また、例えば、有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トシル酸等)または無機酸(例えば、塩酸、硫酸等)もしくはこれらの混合物(例えば、臭化水素/酢酸等)中、-10~100℃で行われる。
【0106】
(5)金属を用いる脱保護反応は、例えば、酸性溶媒(例えば、酢酸、pH4.2~7.2の緩衝液またはそれらの溶液とTHF等の有機溶媒との混合液)中、粉末亜鉛の存在下、必要であれば超音波をかけながら、0~40℃で行われる。
【0107】
(6)金属錯体を用いる脱保護反応は、例えば、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、DMF、THF、酢酸エチル、アセトニトリル、ジオキサン、エタノール等)、水またはそれらの混合溶媒中、トラップ試薬(例えば、水素化トリブチルスズ、トリエチルシラン、ジメドン、モルホリン、ジエチルアミン、ピロリジン等)、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、2-エチルヘキサン酸等)および/または有機酸塩(例えば、2-エチルヘキサン酸ナトリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム等)の存在下、ホスフィン系試薬(例えば、トリフェニルホスフィン等)の存在下または非存在下、金属錯体(例えば、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等)を用いて、0~40℃で行われる。
【0108】
一般式(I)で示される化合物は、反応工程式1で製造することができる。
【0109】
【0110】
(反応工程式1中、PGはアミノ基の保護基を表し、Xは脱離基を表し、CO2Meはメトキシカルボニル基を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。)
反応工程式1中、反応1-1はS-アルキル化反応である。S-アルキル化反応は公知であり、例えば、有機溶媒(DMF、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、THF、メチルtert-ブチルエーテル等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)もしくは炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)またはその水溶液あるいはこれらの混合物の存在下、0~100℃で反応させることにより行なわれる。
【0111】
反応工程式1中、反応1-2はスルフィドからスルホキシイミンへの酸化反応である。例えば、有機溶媒(メタノール(MeOH))中、二酢酸ヨードベンゼンとカルバミン酸アンモニウムの存在下、0℃~室温で行われる。
【0112】
反応工程式1中、反応1-3は脱保護反応であり、前記と同様の方法で実施することができる。
【0113】
反応工程式1中、反応1-4は脱保護反応であり、前記と同様の方法で実施することができる。
【0114】
本明細書中の各反応において、出発原料として用いた、一般式1a、一般式1bで示される化合物は公知であるか、あるいは公知の方法、例えば、Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、3rd Edition(Richard C.Larock、John Wiley & Sons Inc、2018)等に記載された方法、または公知の方法を一部改変した方法等を組み合わせて用いることで容易に製造することができる。
【0115】
本発明に用いられる化合物のうち、光学活性を有する化合物は、光学活性を有する出発原料または試薬を用いて製造するか、ラセミ体の製造中間体を光学分割し、次いで本開示化合物に導くか、あるいはラセミ体の本開示化合物を光学分割することで製造することができる。
【0116】
この光学分割は公知であり、例えば、他の光学活性な化合物と塩・錯体などを形成させ、再結晶を行った後、目的とする化合物を単離するか、あるいは直接キラルカラムなどを用いて分離する方法などが挙げられる。
【0117】
本明細書中の各反応において、加熱を伴う反応は、当業者にとって明らかなように、水浴、油浴、砂浴またはマイクロウェーブを用いて行なうことができる。
【0118】
本明細書中の各反応において、適宜、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール等)に担持させた固相担持試薬を用いてもよい。
【0119】
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、イオン交換樹脂、スカベンジャー樹脂あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶などの方法により精製することができる。精製は反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
[毒性]
本開示化合物の毒性は低いものであるため、医薬品として安全に使用することができる。
[医薬品への適用]
本開示化合物は、GCLに対して阻害活性を有するため、GCLに関連する疾患(GCL関連疾患)、例えば、がんの有効な進行抑制、再発抑制または治療剤として処方することができる。
【0120】
本開示化合物が進行抑制、再発抑制および/または治療の対象とするがんには、何れの固形がんおよび血液がんも含まれるが、一例では、ARID1A欠損がんおよび/またはGCLに感受性を有するがん(GCL感受性がん)が挙げられる。
【0121】
本明細書で使用される場合、ARID1A欠損は、ARID1A遺伝子変異によって引き起こされるARID1A遺伝子欠損またはARID1Aタンパク質欠損を意味する。ARID1A欠損がんとは、ARID1A欠損を有するがんを意味する。ARID1A欠損がんの例としては、卵巣がん、子宮がん、胃がん、膀胱がん、胆管がん、肝がん、食道がん、肺がん、結腸がん、膵臓がん、乳がん、神経芽細胞腫、神経膠腫、皮膚がん、B細胞リンパ腫および腎がんなどがある。
【0122】
GCL感受性がんとしては、例えば、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫が挙げられる。
【0123】
なお、本明細書において「がん治療」とは、例えば、(a)がん細胞の増殖を減少させるため、(b)がんに起因する症状を低減させるため、がん患者の生活の質を向上させるため、(c)既に投与されている他の抗がん剤またはがん治療補助薬の用量を低減させるため、および/または(d)がん患者の生存期間を延長させるために行われる治療を含む。また、「がんの進行抑制」とは、がんの進行を遅延、がんに関連する症状を安定化および症状の進行を後退させることを意味する。「再発抑制」とは、がん治療あるいは癌外科的切除術によってがん病変が完全にもしくは実質的に消滅または取り除かれた患者におけるがん再発を予防的に抑止することを意味する。
【0124】
本開示化合物を上記の疾患の進行抑制、再発抑制および/または治療の目的に用いるには、有効成分である当該物質を、通常、各種の添加剤または溶媒などの薬学的に許容される担体とともに製剤化したうえで、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。ここで、薬学的に許容される担体とは、一般的に医薬品の製剤に用いられる、有効成分以外の物質を意味する。薬学的に許容される担体は、その製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害で、有効成分の治療効果を妨げないものが好ましい。また、薬学的に許容される担体は、有効成分および製剤の有用性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、または使用性を向上させるなどの目的で用いることもできる。具体的には、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物事典」(日本医薬品添加剤協会編集)などに記載されているような物質を、適宜目的に応じて選択すればよい。
【0125】
投与に用いられる剤型としては、例えば、経口投与用製剤(例:錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤など)、口腔用製剤(例:口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤など)、注射用製剤(例:注射剤など)、透析用製剤(例:透析用剤など)、吸入用製剤(例:吸入剤など)、眼科用製剤(例:点眼剤、眼軟膏剤など)、耳科用製剤(例:点耳剤など)、鼻科用製剤(例:点鼻剤など)、直腸用製剤(例:坐剤、直腸用半固形剤、腸注剤など)、腟用製剤(例:腟錠、腟用坐剤など)および皮膚用製剤(例:外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤など)などが挙げられる。
【0126】
[併用または配合剤]
本開示化合物または本開示化合物を有効成分として含む医薬組成物(以下、「本開示化合物等」と略記する。)は、(a)がんの進行抑制、再発抑制および/または治療効果の増強のために、(b)組み合わせて処方される他の薬剤の投与量の低減のために、(c)組み合わせて処方される他の薬剤の副作用の軽減のために、および/または(d)組み合わせて処方される他の薬剤の免疫増強作用を高めるために、すなわち、アジュバンドとして、一種以上の他の薬剤とともに組み合わせて処方してもよい。本開示において、他の薬剤(例えば、他の抗がん剤)とともに組み合わせて処方する場合の投与形態には、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態であっても、また別々の製剤としての投与形態であってもよい。その併用により、その他の薬剤の予防、症状進展抑制、再発抑制および/または治療効果を補完したり、投与量あるいは投与回数を維持ないし低減することができる。本開示化合物等と他の薬剤を別々に処方する場合には、一定期間同時投与し、その後、本開示化合物等のみあるいは他の薬剤のみを投与してもよい。また、本開示化合物等を先に投与し、その投与の後に他の薬剤を投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本開示化合物等を後に投与してもよく、また、上記投与において、一定期間、両薬剤が同時に投与される期間があってもよい。また、各々の薬剤の投与方法は同じでも異なっていてもよい。薬剤の性質により、本開示化合物を含む製剤と他の薬剤を含む製剤のキットとして提供することもできる。ここで、他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、前記他の薬剤には、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
[処方]
本開示化合物等または本開示化合物と他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから2,000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.1ngから200mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日30分から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するため、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0127】
本開示化合物は、薬学的有効量で哺乳動物(好ましくはヒト、より好ましくはヒト患者)へ投与される。
【0128】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的、科学的用語および略語は、本発明の分野に属する当業者によって普通に理解されるものと同様の意味を有する。
【0129】
また、本明細書において、明示的に引用される全ての特許文献および非特許文献もしくは参考文献の内容は、全て本明細書の一部としてここに引用し得る。
【0130】
本開示は、一態様において、下記の実施態様を提供する。
[1] 一般式(I)
【0131】
【0132】
(式中、
R1は、水素原子、メチル基またはヒドロキシル基を表し、
R2は、(1)-C(R3R4)-R5または(2)1~9個のR6で置換されていてもよいC3~C5シクロアルキル基を表し、
R3またはR4は、それぞれ、(1)水素原子、(2)ヒドロキシル基、(3)ハロゲン原子または(4)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、
R5は、(1)トリフルオロメチル基または(2)tert-ブチル基を表し、
R6は、(1)ヒドロキシル基、(2)ハロゲン原子または(3)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、R6が複数の場合、複数のR6はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、
R7は、水素原子またはC1~C4アルキル基を表し、
nは0または1を表す。)で示される化合物またはその塩、
[2] R2が、(1)-C(R3R4)-CF3または(2)1~4個のR6で置換されていてもよいC3~C5シクロアルキル基(好ましくは、1~4個(好ましくは1~3個、より好ましくは1または2個)のR6で置換されていてもよいシクロブチル基)である、前記[1]記載の化合物またはその塩、
[3] R3が、水素原子、ハロゲン原子またはヒドロキシル基(より好ましくは、水素原子またはヒドロキシル基)である、前記[1]または[2]に記載の化合物またはその塩、
[4] R6が、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基(より好ましくは、ヒドロキシル基またはハロゲン原子)である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物またはその塩、
[5] R2が、
【0133】
【0134】
(式中、記号は前記[1]と同じ意味を表す。)、または
【0135】
【0136】
(式中、mは1~3の整数を表し、pは0~3(好ましくは0~2)の整数を表し、R6aは、(1)ヒドロキシル基、(2)ハロゲン原子または(3)1~3個のハロゲン原子で置換されていてもよいメチル基を表し、pが2または3のとき、複数のR6aはそれぞれ同じでも異なっていてもよい。)である、前記[1]または[2]に記載の化合物またはその塩、
[6] R2が、
【0137】
【0138】
(式中、記号は前記[1]と同じ意味を表す。)である、前記[5]記載の化合物またはその塩、
[7] R4が、水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基(より好ましくは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基)である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の化合物またはその塩、
[8] R2が、
【0139】
【0140】
(式中、記号は前記[5]と同じ意味を表す。)である、前記[5]記載の化合物またはその塩、
[9] R6aが、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基(より好ましくはハロゲン原子)である、前記[5]または[8]に記載の化合物またはその塩、
[10] mが2である、前記[5]、[8]または[9]に記載の化合物またはその塩、
[11] nが1である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の化合物またはその塩、
[12] R1が水素原子である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の化合物またはその塩、
[13] 一般式(I)で示される化合物が、一般式(II-3)
【0141】
【0142】
(式中、R2aは
【0143】
【0144】
(式中、記号は前記[1]と同じ意味を表す。)、または
【0145】
【0146】
(式中、記号は前記[5]と同じ意味を表す。)を表し、その他の記号は前記[1]と同じ意味を表す。)で示される化合物である、前記[1]記載の化合物またはその塩、
[14] R4が、水素原子、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基(より好ましくは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基)である、前記[13]に記載の化合物またはその塩、
[15] R6aが、ハロゲン原子、メチル基またはトリフルオロメチル基(より好ましくはハロゲン原子)であり、pが0または1である、前記[13]に記載の化合物またはその塩、
[16] R7が水素原子、エチル基またはイソプロピル基(より好ましくは水素原子)である、前記[1]~[15]のいずれかに記載の化合物またはその塩、
[17] 一般式(I)で示される化合物が、
(1)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(2)(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロペンチルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(3)(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロブチルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(4)(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロプロピルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(5)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-メチルブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(6)(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(3,3-ジフルオロシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(7)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4-ジメチルペンチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(8)(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(9)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(10)(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(1-フルオロシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(11)(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(12)(2S)-2-アミノ-4-{S-[4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)ブチル]スルホンイミドイル}ブタン酸、
(13)(2S)-2-アミノ-4-[S-(3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸、
(14)(S)-2-アミノ-4-((R,3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(15)(S)-2-アミノ-4-((R,3S)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(16)(S)-2-アミノ-4-((R)-2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(17)(S)-2-アミノ-4-((S)-4,4,4-トリフルオロブチルスルホンイミドイル)ブタン酸、
(18)エチル(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート、および
(19)イソプロピル(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート
からなる群から選択される化合物である、前記[1]記載の化合物またはその塩、
[18] 前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩を含有する医薬組成物、
[19] GCL阻害剤である、前記[18]記載の医薬組成物、
[20] GCL関連疾患(例えば、がん)の進行抑制、再発抑制および/または治療剤である、前記[18]または [19]記載の医薬組成物、
[21] 前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩の有効量を、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療を必要とする患者に投与することを特徴とする、がんの進行抑制、再発抑制および/または治療方法、
[22] がんの進行抑制、再発抑制および/または治療に使用される、前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩、ならびに
[23] がんの進行抑制、再発抑制および/または治療剤を製造するための、前記[1]記載の一般式(I)で示される化合物またはその塩の使用。
【0147】
本開示は、一態様において、下記の実施態様を提供するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本開示の記載に基づき種々の変更または修飾が当業者には可能であり、これらの変更または修飾も本発明に含まれる。
[合成実施例]
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されるカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
【0148】
NMRの箇所に示されているカッコ内の溶媒は、測定に使用した溶媒を示す。
【0149】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、ACD/Name(登録商標)を用いるか、ChemDraw Professional(バージョン18.0、PerkinElmer社製)を用いるか、またはIUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0150】
LC-MS/ELSDは、下記条件で行った。
条件A;カラム:YMC triart C18(粒子径:1.9 x 10-6 m, カラム長:30 x 2.0 mm I.D.);流速:1.0mL/min;カラム温度:30℃;移動相(A):0.1%トリフルオロ酢酸水溶液;移動相(B):0.1%TFA-アセトニトリル溶液;グラジエント(移動相(A):移動相(B)の比率を記載):[0分]95:5;[0.1分]95:5;[1.2分]5:95;[1.6分]5:95;検出器:UV(PDA)、ELSD、MS。
条件B;カラム:YMC triart C18(粒子径:1.9 x 10-6 m, カラム長:30 x 2.0 mm I.D.);流速:1.0mL/min;カラム温度:30℃;移動相(A):0.1%トリフルオロ酢酸水溶液;移動相(B):0.1%TFA-アセトニトリル溶液;グラジエント(移動相(A):移動相(B)の比率を記載):[0分]95:5;[0.1分]95:5;[1.2分]5:50;[1.21分]5:95;[1.6分]5:95;検出器:UV(PDA)、ELSD、MS。
【0151】
HPLC保持時間は、合成中間体については条件A、本開示化合物については条件Bでの保持時間を示す。
【0152】
SFC分取は、下記の何れかの条件で行った。
条件C;カラム:ダイセル CHIRALPAK IC(粒子径:5μm;カラム長:250x20 mm I.D.);流速:100mL/min;カラム温度:35℃;圧力:120bar;移動相(A):CO2;移動相(B):MeOH;アイソクラティック(移動相(A):移動相(B)=95:5);検出器:UV220nm。
条件D;カラム:ダイセル CHIRALPAK IC(粒子径:5μm;カラム長:250x20 mm I.D.);流速:100mL/min;カラム温度:35℃;圧力:120bar;移動相(A):CO2;移動相(B):MeOH;アイソクラティック(移動相(A):移動相(B)=90:10);検出器:UV210nm。
条件E;カラム:ダイセル CHIRALPAK IC(粒子径:5μm;カラム長:250x20 mm I.D.);流速:100mL/min;カラム温度:35℃;圧力:120bar;移動相(A):CO2;移動相(B):EtOH;アイソクラティック(移動相(A):移動相(B)=92:8);検出器:UV220nm。
参考例1:メチル(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-[(4,4,4-トリフルオロブチル)チオ]ブタノアート
メチル(2S)-4-メルカプト-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート(CAS:690637-98-0)(750mg)のDMF(10mL)溶液に炭酸カリウム(415mg)および4,4,4-トリフルオロブチルメタンスルホナート(CAS:164523-19-7)(806mg)を加え、窒素雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(1.08g)を得た。
TLC:Rf 0.5(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
参考例2:メチル(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート
参考例1で製造した化合物(1.08g)のメタノール(10mL)溶液に二酢酸ヨードベンゼン(2.03g)およびカルバミン酸アンモニウム(351mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(820mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(酢酸エチル)
参考例3:(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
参考例2で製造した化合物(820mg)のTHF(6mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(176mg)の水溶液(3mL)を0℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応液をジオールシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=85:15)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(764mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.845
実施例1:(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0153】
【0154】
参考例3で製造した化合物(764mg)に5Nの塩酸水溶液(5mL)を加え、室温で30分撹拌した。反応液に水(5mL)を加え、イオン交換樹脂(商品名:DOWEX(H+form))に担持した。充分量の水で洗った後、8%のアンモニア水溶液により溶出させた。ニンヒドリンに反応するフラクションを集め、濃縮することにより、以下の物性値を有する本開示化合物(473mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):293(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ 2.02, 2.20 - 2.38, 3.23 - 3.43, 3.77。
実施例1-1~1-4
4,4,4-トリフルオロブチルメタンスルホナートの代わりに対応するメタンスルホナートを用いて、参考例1→参考例2→参考例3→実施例1と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する本開示化合物を得た。
実施例1-1:(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロペンチルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0155】
【0156】
以下の物性値を有する本開示化合物(23mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.683;
MS(ESI,Pos.):263(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ 1.00 - 1.14, 1.37 - 1.60, 1.64 - 1.77, 1.77 - 1.86, 2.14 - 2.34, 3.16 - 3.39, 3.75。
実施例1-2:(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロブチルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0157】
【0158】
以下の物性値を有する本開示化合物(75mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.567;
MS(ESI,Pos.):249(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ 1.48 - 1.64, 1.68 - 1.85, 1.90 - 2.04, 2.14 - 2.37, 2.91 - 3.16, 3.17 - 3.44, 3.77。
実施例1-3:(2S)-2-アミノ-4-[S-(2-シクロプロピルエチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0159】
【0160】
以下の物性値を有する本開示化合物(48mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.425;
MS(ESI,Pos.):235(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ -0.05 - 0.08, 0.30 - 0.44, 0.69, 1.47 - 1.65, 2.13 - 2.27, 3.14 - 3.35, 3.71。
実施例1-4:(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-メチルブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0161】
【0162】
以下の物性値を有する本開示化合物(22mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.599;
MS(ESI,Pos.):291(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ 1.08, 1.73 - 1.87, 1.97 - 2.18, 2.20 - 2.34, 2.36 - 2.51, 3.21 - 3.44, 3.79。
参考例4:2-(3,3-ジフルオロシクロブチル)エチルメタンスルホナート
2-(3,3-ジフルオロシクロブチル)エタノール(CAS:1056467-54-9)(200mg)のジクロロメタン(2mL)溶液に氷冷下でジイソプロピルエチルアミン(0.38mL)およびメシル酸無水物(281mg)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(314mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
実施例1-5:(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(3,3-ジフルオロシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸
【0163】
【0164】
4,4,4-トリフルオロブチルメタンスルホナートの代わりに参考例4で製造した化合物を用いて、参考例1→参考例2→参考例3→実施例1と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する本開示化合物(61mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.523;
MS(ESI,Pos.):285(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 1.86 - 2.00, 2.12 - 2.31, 2.57 - 2.73, 3.12 - 3.41, 3.76。
実施例1-6:(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4-ジメチルペンチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0165】
【0166】
以下の物性値を有する本開示化合物(25mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.714;
MS(ESI,Pos.):265(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 0.81, 1.17 - 1.29, 1.64 - 1.77, 2.15 - 2.30, 3.12 - 3.20, 3.20 - 3.39, 3.74。
参考例5:2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチルメタンスルホナート
1-(2-ヒドロキシエチル)シクロブタノール(CAS:83237-27-8)(200mg)のジクロロメタン(2mL)溶液に氷冷下でジイソプロピルエチルアミン(0.4mL)およびメシル酸無水物(329mg)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(335mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)
参考例6:メチル(2S)-4-{[2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチル]チオ}-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート
メチル(2S)-4-メルカプト-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート(CAS:690637-98-0)(200mg)のDMF(4mL)溶液に炭酸カリウム(166mg)および参考例5で製造した化合物(202mg)を加え、窒素雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:4)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(236mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)
参考例7:メチル(2S)-4-{S-[2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート
参考例6で製造した化合物(235mg)のメタノール(5mL)溶液に二酢酸ヨードベンゼン(132mg)およびカルバミン酸アンモニウム(653mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=95:5)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(90mg)を得た。
TLC:Rf 0.2(酢酸エチル)
参考例8:(2S)-4-{S-[2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタン酸
参考例7で製造した化合物(90mg)のTHF(1mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(20mg)の水溶液(0.5mL)を0℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応液をジオールシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=85:15)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(62mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.773
実施例2:(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸
【0167】
【0168】
参考例8で製造した化合物(62mg)に5Nの塩酸水溶液(1mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に水(1mL)を加え、イオン交換樹脂(商品名:DOWEX(H+form))に担持した。充分量の水で洗った後、8%のアンモニア水溶液により溶出させた。ニンヒドリンに反応するフラクションを集め、濃縮することにより、以下の物性値を有する本開示化合物(12mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):265(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 1.43 - 1.62, 1.63 - 1.77, 1.92 - 2.09, 2.20 - 2.36, 3.17 - 3.45, 3.79。
参考例9:エチル3-{[ジメチル(2-メチル-2-プロパニル)シリル]オキシ}-4,4,4-トリフルオロブタノアート
エチル4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブタノアート(CAS:372-30-5)(600mg)のDMF(2mL)溶液にイミダゾール(439mg)およびtert-ブチルジメチルクロロシラン(632mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、以下の物性値を有する表題化合物を得た。
TLC:Rf 0.8(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)
参考例10:3-{[ジメチル(2-メチル-2-プロパニル)シリル]オキシ}-4,4,4-トリフルオロ-1-ブタノール
参考例9で得られた残渣のTHF(10mL)溶液に氷冷下でリチウムボロヒドリド(140mg)およびメタノール(0.52mL)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(510mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
参考例11:3-{[ジメチル(2-メチル-2-プロパニル)シリル]オキシ}-4,4,4-トリフルオロブチルメタンスルホナート
参考例10で製造した化合物(200mg)のジクロロメタン(2mL)溶液に氷冷下でジイソプロピルエチルアミン(0.2mL)およびメシル酸無水物(162mg)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(260mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
参考例12:メチル(2S)-4-[(3-{[ジメチル(2-メチル-2-プロパニル)シリル]オキシ}-4,4,4-トリフルオロブチル)チオ]-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート
メチル(2S)-4-メルカプト-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート(CAS:690637-98-0)(180mg)のDMF(8mL)溶液に炭酸カリウム(100mg)および参考例11で製造した化合物(267mg)を加え、窒素雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(350mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
参考例13:メチル(2S)-4-[S-(3-{[ジメチル(2-メチル-2-プロパニル)シリル]オキシ}-4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート
参考例12で製造した化合物(350mg)のメタノール(5mL)溶液に二酢酸ヨードベンゼン(690mg)およびカルバミン酸アンモニウム(140mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(270mg)を得た。
TLC:Rf 0.5(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)
参考例14:(2S)-4-[S-(3-{[ジメチル(2-メチル-2-プロパニル)シリル]オキシ}-4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタン酸
参考例13で製造した化合物(270mg)のTHF(2mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(44mg)の水溶液(1mL)を0℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応液をジオールシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=95:5)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(200mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.114
実施例3:(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0169】
【0170】
参考例14で製造した化合物(200mg)に5Nの塩酸水溶液(2mL)を加え室温で1時間撹拌した。反応液に水(2mL)を加え、イオン交換樹脂(商品名:DOWEX(H+form))に担持した。充分量の水で洗った後、8%のアンモニア水溶液により溶出させた。ニンヒドリンに反応するフラクションを集め、濃縮することにより、以下の物性値を有する本開示題化合物(47mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):293(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 1.95 - 2.07, 2.15 - 2.34, 3.25 - 3.46, 3.77 - 3.82, 4.17。
実施例3-1:(2S)-2-アミノ-4-{S-[2-(1-フルオロシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}ブタン酸
【0171】
【0172】
参考例11で製造した化合物の代わりに対応するメタンスルホナートを用いて、参考例12→参考例13→参考例14→実施例3と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する本開示化合物(95mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.596;
MS(ESI,Pos.):267(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 1.41 - 1.54, 1.67 - 1.81, 2.03 - 2.12, 2.14 - 2.34, 3.23 - 3.45, 3.75 - 3.85。
参考例15:4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチルブチル 4-メチルベンゼンスルホナート
4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸(CAS:338-03-4)(200mg)のTHF(2mL)溶液に氷冷下でボラン-THF錯体(0.92M、3.9mL)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に氷冷下、メタノールを加え、減圧濃縮した。得られた残渣のピリジン(2mL)溶液に塩化パラトルエンスルホニル(266mg)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(244mg)を得た。
TLC:Rf 0.5(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
実施例3-2:(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-メチルブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0173】
【0174】
参考例11で製造した化合物の代わりに参考例15で製造した化合物を用いて、参考例12→参考例13→参考例14→実施例3と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する本開示化合物(62mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.329;
MS(ESI,Pos.):307(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 1.32, 2.01 - 2.21, 2.24 - 2.34, 3.25 - 3.46, 3.76 - 3.84。
参考例16:4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)ブチル 4-メチルベンゼンスルホナート
4,4,4-トリフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1,3-ブタンジオール(CAS:21379-33-9)(139mg)のピリジン(2mL)溶液に塩化パラトルエンスルホニル(149mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(244mg)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
実施例3-3:(2S)-2-アミノ-4-{S-[4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(トリフルオロメチル)ブチル]スルホンイミドイル}ブタン酸
【0175】
【0176】
参考例11で製造した化合物の代わりに参考例16で製造した化合物を用いて、参考例12→参考例13→参考例14→実施例3と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する本開示化合物(66mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.746;
MS(ESI,Pos.):361(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ 2.20 - 2.39, 2.39 - 2.49, 3.27 - 3.52, 3.80。
実施例3-4:(2S)-2-アミノ-4-[S-(3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸
【0177】
【0178】
参考例11で製造した化合物の代わりに対応するアイオダイド(CAS:40723-80-6)を用いて、参考例12→参考例13→参考例14→実施例3と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する本開示化合物(110mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.637;
MS(ESI,Pos.):313(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 2.28, 2.58 - 2.80, 3.26 - 3.44, 3.44 - 3.62, 3.77。
参考例17:ベンジル(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブタノアート
(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブタン酸(CAS:108211-36-5)(1g)のDMF(10mL)溶液に炭酸カリウム(1.75g)および臭化ベンジル(826mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルとヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(1.57g)を得た。
参考例18:ベンジル(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-[(トリエチルシリル)オキシ]ブタノアート
参考例17で得られた残渣(1.57g)のDMF(8mL)溶液にイミダゾール(861mg)およびTESCl(1.37mL)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルとヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(2.3g)を得た。
TLC:Rf 0.8(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)
参考例19:(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-[(トリエチルシリル)オキシ]-1-ブタノール
参考例18で得られた化合物(2.3g)のTHF(20mL)溶液に氷冷下でリチウムボロヒドリド(276mg)およびメタノール(1.0mL)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に氷冷下、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(1.32g)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)
参考例20:(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-[(トリエチルシリル)オキシ]ブチルメタンスルホナート
参考例19で製造した化合物(1.32g)のジクロロメタン(10mL)溶液に氷冷下でジイソプロピルエチルアミン(1.3mL)およびメシル酸無水物(1g)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(1.7g)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)
参考例21:メチル(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-({(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-[(トリエチルシリル)オキシ]ブチル}チオ)ブタノアート
メチル(2S)-4-メルカプト-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート(CAS:690637-98-0)(1g)のDMF(15mL)溶液に炭酸カリウム(554mg)および参考例20で製造した化合物(1.62g)を加え、窒素雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルとヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(1.9g)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)
参考例22:メチル(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-(S-{(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-[(トリエチルシリル)オキシ]ブチル}スルホンイミドイル)ブタノアート
参考例21で製造した化合物(1.9g)のメタノール(19mL)溶液に二酢酸ヨードベンゼン(2.6g)およびカルバミン酸アンモニウム(450mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(1.65g)を得た。
TLC:Rf 0.5(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)
参考例23:メチル(S)-4-((R,3R)-N-((ベンジルオキシ)カルボニル)-4,4,4-トリフルオロ-3-((トリエチルシリル)オキシ)ブチルスルホンイミドイル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノアート
参考例22で製造した化合物(1.65g)のジクロロメタン(10mL)溶液にピリジン(1.28mL)およびクロロギ酸ベンジル(0.67mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)によって精製した。得られた化合物をSFC(条件E)で分取することにより、以下の物性値を有する表題化合物(680mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.418
参考例24:メチル(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-((R,3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-((トリエチルシリル)オキシ)ブチルスルホンイミドイル)ブタノアート
参考例23で製造した化合物(680mg)のメタノール(8mL)溶液にパラジウム炭素(68mg)を加え、水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(8mL)を加え、セライト(商品名)でろ過することにより、以下の物性値を有する表題化合物(540mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.202
参考例25:(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-((R,3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチルスルホンイミドイル)ブタン酸
参考例24で製造した化合物(540mg)のTHF(2mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(78mg)の水溶液(1mL)を0℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応液をジオールシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=85:15)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(360mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.792
実施例4:(S)-2-アミノ-4-((R,3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチルスルホンイミドイル)ブタン酸
【0179】
【0180】
参考例25で製造した化合物(360mg)に5Nの塩酸水溶液(3mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に水(3mL)を加え、イオン交換樹脂(商品名:DOWEX(H+form))に担持した。充分量の水で洗った後、8%のアンモニア水溶液により溶出させた。ニンヒドリンに反応するフラクションを集め、濃縮することにより、以下の物性値を有する本開示化合物(236mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):293(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 1.95 - 2.10, 2.16 - 2.36, 3.26 - 3.48, 3.75 - 3.82, 4.18。
参考例26:(3S)-4,4,4-トリフルオロ-3-[(トリエチルシリル)オキシ]ブチルメタンスルホナート
(3R)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブタン酸の代わりに、(3S)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブタン酸(CAS:128899-79-6)を用いて、参考例17→参考例18→参考例19→参考例20と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する表題化合物(1.78g)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)
実施例5:(S)-2-アミノ-4-((R,3S)-4,4,4-トリフルオロ-3-ヒドロキシブチルスルホンイミドイル)ブタン酸
【0181】
【0182】
参考例20で製造した化合物の代わりに参考例26で製造した化合物を用いて、参考例21→参考例22→参考例23→参考例24→参考例25→実施例4と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する表題化合物(185mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):293(M+H)+;
1H-NMR(D2O): δ 1.95 - 2.07, 2.15 - 2.35, 3.25 - 3.46, 3.79, 4.17。
参考例27:メチル(2S)-4-{[2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチル]チオ}-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート
メチル(2S)-4-メルカプト-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート(CAS:690637-98-0)(6.3g)のDMF(100mL)溶液に炭酸カリウム(3.5g)および1-(2-ブロモエチル)シクロブタノール(CAS:1909309-61-0)(5g)を加え、窒素雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。反応液を水で希釈し、酢酸エチルおよびヘキサン(2:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:4)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(8.7g)を得た。
TLC:Rf 0.3(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)
参考例28:メチル(2S)-4-{[2-(1-アセトキシシクロブチル)エチル]チオ}-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート
参考例27で製造した化合物(8.7g)のジクロロメタン(150mL)溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(10mL)、無水酢酸(4.3mL)および4-ジメチルアミノピリジン(CAS:1122-58-3)(610mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(9.35g)を得た。
TLC:Rf 0.6(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)
参考例29:メチル(2S)-4-{S-[2-(1-アセトキシシクロブチル)エチル]スルホンイミドイル}-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ブタノアート
参考例28で製造した化合物(9.35g)のメタノール(100mL)溶液に、二酢酸ヨードベンゼン(16.2g)およびカルバミン酸アンモニウム(2.8g)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(8.35g)を得た。
TLC:Rf 0.5(酢酸エチル)
参考例30:メチル(S)-4-((R)-2-(1-アセトキシシクロブチル)-N-((ベンジルオキシ)カルボニル)エチルスルホンイミドイル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノアート
参考例29で製造した化合物(500mg)のジクロロメタン(4mL)溶液に、ピリジン(1mL)およびクロロギ酸ベンジル(0.25mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)によって精製した。得られた化合物をSFC(条件D)で分取することにより、以下の物性値を有する標題化合物(250mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.208
参考例31:メチル(S)-4-((R)-2-(1-アセトキシシクロブチル)エチルスルホンイミドイル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノアート
参考例30で製造した化合物(250mg)のメタノール(4mL)溶液にパラジウム炭素(25mg)を加え水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル(4mL)を加え、セライト(商品名)でろ過することにより、以下の物性値を有する表題化合物(180mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.967
参考例32:(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-((R)-2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチルスルホンイミドイル)ブタン酸
参考例31で製造した化合物(180mg)のTHF(2mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(54mg)の水溶液(1mL)を0℃で加え、室温で2時間撹拌した。反応液をジオールシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=85:15)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(156mg)を得た。
HPLC保持時間(分):0.837
実施例6:(S)-2-アミノ-4-((R)-2-(1-ヒドロキシシクロブチル)エチルスルホンイミドイル)ブタン酸
【0183】
【0184】
参考例32で製造した化合物(156mg)に5Nの塩酸水溶液(2mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液に水(2mL)を加え、イオン交換樹脂(商品名:DOWEX(H+form))に担持した。充分量の水で洗った後、8%のアンモニア水溶液により溶出させた。ニンヒドリンに反応するフラクションを集め、濃縮することにより、以下の物性値を有する本開示化合物(60mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):265(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ 1.44 - 1.59, 1.62 - 1.77, 1.93 - 2.08, 2.21 - 2.34, 3.15 - 3.31, 3.31 - 3.44 , 3.75 - 3.82。
参考例33:メチル(S)-4-((S)-N-((ベンジルオキシ)カルボニル)-4,4,4-トリフルオロブチルスルホンイミドイル)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタノアート
メチル(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート(215mg)のジクロロメタン(10mL)溶液に、ピリジン(1mL)およびクロロギ酸ベンジル(0.17mL)を0℃にて加えた後、室温で終夜撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)によって精製した。得られた化合物をSFC(条件C)で分取することにより、以下の物性値を有する表題化合物(87mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):547(M+Na)+。
参考例34:メチル(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-4-((S)-4,4,4-トリフルオロブチルスルホンイミドイル)ブタノアート
参考例33で製造した化合物(79mg)のメタノール(4mL)溶液にパラジウム炭素(35mg)を加え水素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。反応液に酢酸エチル(4mL)を加え、セライトでろ過した後、濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(60mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):391(M+H)+。
参考例35:メチル(S)-2-アミノ-4-((S)-4,4,4-トリフルオロブチルスルホンイミドイル)ブタノアート
参考例34で製造した化合物(60mg)のメタノール(1mL)溶液に4N塩酸/酢酸エチル溶液(1mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液を濃縮した後、イオン交換樹脂(商品名:DOWEX(H+fоrm))に担持させた。充分量のメタノールで洗浄した後、2Nアンモニア/メタノール溶液で溶出させた。ニンヒドリンに反応するフラクションを集め、濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(39mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):291(M+H)+。
実施例7:(S)-2-アミノ-4-((S)-4,4,4-トリフルオロブチルスルホンイミドイル)ブタン酸
【0185】
【0186】
参考例35で製造した化合物(39mg)に水(0.5mL)を加え、0℃に冷却した。反応液に1N水酸化ナトリウム水溶液(0.14mL)を加え、30分撹拌した。反応液をイオン交換樹脂(商品名:DOWEX(NH4+form))に担持させ、充分量の水で溶出させた。ニンヒドリンに反応するフラクションを集め、濃縮することにより、以下の物性値を有する本開示化合物(33mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):277(M+H)+;
1H-NMR(D2O):δ 1.98 - 2.06, 2.23 - 2.36, 3.23 - 3.41, 3.77。
参考例36:(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-[(4,4,4-トリフルオロブチル)チオ]ブタン酸
参考例1で製造した化合物(70mg)のTHF(1mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(16mg)の水溶液(0.5mL)を0℃で加え、室温で1時間撹拌した。反応液に1N塩酸水溶液を加えて酸性とし、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、以下の物性値を有する表題化合物(67mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.162
参考例37:エチル(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-[(4,4,4-トリフルオロブチル)チオ]ブタノアート
参考例36で製造した化合物(67mg)のジクロロメタン(1mL)溶液に、エタノール(0.057mL)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(CAS:25952-53-8)(56mg)および4-ジメチルアミノピリジン(CAS:1122-58-3)(5mg)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(57mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.288
参考例38:エチル(2S)-2-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート
参考例37で製造した化合物(57mg)のメタノール(3mL)溶液に二酢酸ヨードベンゼン(123mg)およびカルバミン酸アンモニウム(24mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:8)によって精製することにより、以下の物性値を有する表題化合物(61mg)を得た。
HPLC保持時間(分):1.05
実施例8:エチル(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート
【0187】
【0188】
参考例38で製造した化合物(61mg)に4N塩酸-ジオキサン溶液(1mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=2:1)によって精製することにより、以下の物性値を有する本開示化合物(45mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):305(M+H)+;
1H-NMR(CDCl3): δ 1.24 - 1.33, 1.90, 1.94 - 2.07, 2.09 - 2.22, 2.22 - 2.38, 3.07 - 3.16, 3.16 - 3.32, 3.58, 4.21。
実施例8-1:イソプロピル(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタノアート
【0189】
【0190】
エタノールの代わりに2-プロパノールを用いて、参考例37→参考例38→実施例8と同様の操作を行うことにより、以下の物性値を有する本開示化合物(43mg)を得た。
MS(ESI,Pos.):319(M+H)+;
1H-NMR(CDCl3):δ 1.27, 1.83 - 2.06, 2.09 - 2.22, 2.22 - 2.39, 3.11, 3.14 - 3.32, 3.53, 5.05。
[薬理実施例]
以下の薬理実施例において、比較例として、BSO(Toronto Research Chemicals)(CAS番号:83730-53-4)および非特許文献2に記載の化合物番号Ic((2S)-2-アミノ-4-[(2R,S)-2-カルボキシブチル-(R,S)-スルホンイミドイル]ブタン酸((2S)-2-Amino-4-[(2R,S)-2-carboxybutyl-(R,S)-sulfonimidoyl]butanoic acid))を使用し、それぞれ比較例1および比較例2とした。
[薬理実施例1]GCL酵素阻害活性評価
(GCL-化合物プレインキュベーション酵素阻害活性評価系(基質スタート))
200mmol/L Tris-HCl(pH 8.0)、20mmol/L MgCl2、150mmol/L KCl、0.1% BSAを含むアッセイバッファーを用いて、リコンビナントヒトGCLCおよびリコンビナントヒトGCLMを1:2のモル濃度比で混合し、37℃で60分間静置して複合体形成させたものをヒトGCL酵素溶液とした。次に、終濃度5nmol/L GCLCに相当するヒトGCL酵素複合体溶液にATPを終濃度0.2mmol/Lで、各化合物を終濃度0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10または30μmol/Lとなるよう添加した。このヒトGCL酵素複合体-ATP-化合物混合溶液を室温で60分間プレインキュベートした。さらに、基質であるL-グルタミン酸(L-glutamic acid、Nacalai tesque社)とL-システイン(L-cysteine、Nacalai tesque社)をそれぞれ終濃度1.2および0.2mmol/Lとなるように添加し、酵素反応を開始した。なお、リコンビナントヒトGCLCおよびリコンビナントヒトGCLMはそれぞれHisタグ付きであり、大腸菌に発現させた後にニッケルカラムおよび陰イオン交換カラムで精製したものを用いた。酵素反応は384ウェルポリプロピレン製のマイクロプレートを用いて室温で実施し、酵素非添加ウェルをBlank群とした。
【0191】
酵素反応開始1時間後に、内部標準物質として20μmol/Lのオフタルミン酸(Ophthalmic acid)を含む1%ギ酸水溶液を添加して酵素反応を停止させた。酵素反応プレートの上部をアルミシールし、560gで5分間、室温にて遠心後、RapidFire-Mass Spectrometryシステムにて酵素反応生成物であるγ-グルタミルシステイン(γ-glutamylcysteine)および内部標準物質オフタルミン酸を定量した。それぞれの定量値の比をとり、Blank群の平均値を100%阻害、化合物非添加群の平均値を0%阻害として、各化合物濃度におけるγ-グルタミルシステイン産生阻害率を算出し、IC50値を求めた。
【0192】
本開示化合物は優れたGCL酵素阻害活性を示した。表1に、本開示化合物の代表例として、各実施例において示される化合物のGCL酵素阻害活性(IC50値)を示す。
【0193】
非特許文献2において、比較例2として示される化合物は、BSOよりも、大腸菌GCLCへの結合親和性が約500倍(Ki値比)向上したことが報告されていたが、本アッセイ系においては、BSOと同等の阻害活性であった。
【0194】
【0195】
また、GCL酵素阻害活性は以下の方法においても評価できる。
(GCL酵素阻害活性評価系(酵素スタート))
200 mmol/L Tris-HCl(pH 8.0)、20 mmol/L MgCl2、150 mmol/L KCl,0.1% BSAを含むアッセイバッファーを用いて、リコンビナントヒトGCLCおよびリコンビナントヒトGCLMを1:2のモル濃度比で混合し、37℃で60分間静置して複合体形成させたものをヒトGCL酵素溶液とした。次に、ATP、基質であるL-グルタミン酸およびL-システインをそれぞれ終濃度0.2、1.2および0.2mmol/Lとなるよう調製し、各化合物を終濃度0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10または30μmol/Lとなるよう添加した。さらに続けて、上述のようにあらかじめ調製しておいたヒトGCL酵素複合体を終濃度5nmol/L GCLCに相当する濃度となるように添加し、酵素反応を開始した。なお、リコンビナントヒトGCLCおよびリコンビナントヒトGCLMはそれぞれHisタグ付きであり、大腸菌に発現させた後にニッケルカラムと陰イオン交換カラムで精製したものを用いた。酵素反応は384ウェルポリプロピレン製のマイクロプレートを用いて室温で実施し、酵素非添加ウェルをBlank群とした。
【0196】
酵素反応開始1時間後に、内部標準物質として20μmol/Lのオフタルミン酸を含む1%ギ酸水溶液を添加して酵素反応を停止させた。酵素反応プレートの上部をアルミシールし、560gで5分間、室温にて遠心後、RapidFire-Mass Spectrometryシステムにて酵素反応生成物であるγ-グルタミルシステインおよび内部標準物質オフタルミン酸を定量した。それぞれの定量値の比をとり、Blank群の平均値を100%阻害、化合物非添加群の平均値を0%阻害として、各化合物濃度におけるγ-グルタミルシステイン産生阻害率を算出し、IC50値を求めた。本系においても、本開示化合物は優れたGCL酵素阻害活性を示した。
[薬理実施例2]インビトロ試験
(細胞培養)
ヒト卵巣がん細胞株TOV21G(以下、細胞と記載)はATCC社より購入した。細胞は2mmol/L L-Glutamine、10%(vol%)FBS、1%(vol%)Penicillin-Streptomycin-Amphotericin B Suspensionを含むDMEM/Ham’s F-12(以下、10%FBS-DMEM/Ham’s F-12)を使用し、37℃、5%CO2および95%Air条件下で培養した。
[薬理実施例2-1]インビトロGSH濃度測定試験
(方法)
細胞を平底96ウェルプレートに2×103細胞/100μL/ウェルで播種した後、37℃、5%CO2および95%Air条件下で一晩インキュベーションした。細胞播種の翌日に各化合物を培養細胞に添加し、37℃、5%CO2および95%Air条件下で24時間培養後にGSH濃度をGSH-GloTM Glutathione Assay(Promega)にて、ATP濃度をCellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega)にて測定した。細胞数補正の代替としてGSH濃度をATP濃度で除した数値を用いた。用量反応曲線を作成し、IC50値を算出した。
(結果)
BSO(比較例1)、比較例2、ならびに実施例1、実施例1-2、実施例2、実施例3、実施例8および実施例8-1でそれぞれ製造した各化合物のGCL阻害活性のIC50値はそれぞれ、1.5、1.3、0.2、0.2、0.3、0.1、0.007および0.01μmol/Lであった。比較例2がBSOと同等の阻害活性であったのに対し、本開示化合物はBSOよりも細胞系でのGCL阻害活性が向上していた。例えば、実施例1、実施例1-2、実施例1-5、実施例2、実施例3、実施例3-2、実施例3-3、実施例8および実施例8-1でそれぞれ製造した各化合物は、BSOの細胞系での活性に対して、GCL阻害活性として、各々7、7、3、6、14、12、10、206および106倍向上していることが確認された。
[薬理実施例2-2]インビトロ増殖試験
(方法)
細胞を平底96ウェルプレートに2×103細胞/100μL/ウェルで播種した後、37℃、5%CO2および95%Air条件下で一晩インキュベーションした。細胞播種の翌日に各化合物を培養細胞に添加し、37℃、5%CO2、95%Air条件下で48時間培養後にATP濃度をCellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega)にて測定した。用量反応曲線を作成し、IC50値を算出した。
(結果)
BSO(比較例1)ならびに実施例1、実施例1-2、実施例2、実施例3、実施例8および実施例8-1でそれぞれ製造した各化合物の細胞増殖阻害のIC50値はそれぞれ、4.8、0.5、0.6、0.5、0.2、0.02および0.03μmol/Lであり、BSOの細胞系での活性に対して、増殖阻害活性として、各々11、9、11、27、292および166倍向上していることが確認された。
【0197】
薬理実施例2-1および薬理実施例2-2より、上記薬理実施例に記載の化合物に代表される本開示化合物は、BSOよりも細胞系での活性が向上した化合物であることが確認された。
[薬理実施例3]インビボ試験
(細胞培養)
ヒト卵巣がん細胞株TOV21G細胞はATCC社より購入した。同細胞は10%FBS-DMEM/Ham’s F-12を使用し、37℃、5%CO
2および95%Air条件下で培養した。
(インビボゼノグラフト試験)
移植時7~8週齢の雌性CB17/Icr-Prkdc
scid/CrlCrljマウスを実験に用いた。培養細胞をマトリゲルと等量ずつ混合した細胞懸濁液を目的濃度に調製し、マウス右側腹部皮下に2.5×10
6細胞/0.1mL/bodyの細胞を移植した。腫瘍が認められた個体について腫瘍の長径および短径を電子ノギスで測定し、以下の式に従って腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積(mm
3)=腫瘍の長径(mm)×(腫瘍の短径(mm))
2×0.5
化合物は注射用水に溶解し、ゾンデを用いて1日1回経口投与を行った。
(インビボGSH濃度測定試験)
化合物投与前日または投与当日の平均腫瘍体積140~180mm
3の個体を実験に用い、投与後24時間の腫瘍を濃度測定に供した。腫瘍重量を測定後、10倍量の5% 5-Sulfosalicylic acidを加え、氷冷下にてホモジナイザーで破砕した。遠心分離後の上清を使用し、GSH/GSSG-Glo
TM Assay(Promega)を用いて総GSH濃度を測定した。上清中のタンパク質量をPierce
TM BCA Protein Assay Kitを用いて定量し、補正に用いた。
[薬理実施例3-1]TOV21G細胞皮下移植モデルにおける薬物動力学(PD)評価
単回投与後の腫瘍中GSH量を指標としたPD評価を実施した。TOV21G細胞を皮下移植後19日に群分けを行い、その翌日にBSO(比較例1)および実施例2で製造した化合物を各々単回経口投与した。群分け時の各群の腫瘍体積の平均値は、141~158mm
3であった。BSOの用量を100、300および750mg/kg、実施例2で製造した化合物を30、100および300mg/kgとした。評価時点は、単回投与後24時間とした(
図1)。BSOは用量依存的に腫瘍中GSHを低下させ、最も高用量である750mg/kgでは21%まで低下させた。実施例2で製造した化合物について、用量依存的に腫瘍中GSHを低下させ、最も高用量である300mg/kgではコントロールの20%まで低下させた。
【0198】
次に、実施例3で製造した化合物について、単回投与後の腫瘍中GSH量を指標としたPD評価を実施した。TOV21Gを皮下移植後19日に群分けを行い、その3日後に同化合物を単回経口投与した。投与日の各群の腫瘍体積の平均値は、141~177mm
3であった。実施例3で製造した化合物の用量を30、100および300mg/kgとし、評価時点を24時間とした。また、実施例2で製造した化合物の再現性確認および最大作用を確認するため、同化合物の300mg/kgおよび750mg/kg投与後24時間についても評価した。その結果、実施例3で製造した化合物が投薬後24時間において腫瘍中GSHを低下させることを確認した(
図2)。実施例2で製造した化合物については、再現性を確認し、前回試験において100mg/kgおよび300mg/kgで用量反応性があったこと、ならびに今回試験の結果から300mg/kgで最大作用を示すと考えられた。
【0199】
以上から、最大作用を示す用量としてはBSOが750mg/kg、実施例2で製造した化合物が300mg/kg、実施例3で製造した化合物が100mg/kgであり、実施例2および実施例3でそれぞれ製造した各化合物は、それぞれ用量比でBSOより約3倍および約7.5倍、インビボ活性が向上していることが確認された。
[薬理実施例3-2]TOV21G細胞皮下移植モデルにおける抗腫瘍効果評価
実施例2および実施例3でそれぞれ製造した各化合物のインビボ抗腫瘍効果を評価した。各群の平均腫瘍体積が105~108mm3になった時点で群分けを行い、群分け日当日から最終観察日の前日まで各化合物を1日1回連日経口投与した。BSOの投与量を750mg/kg、実施例2で製造した化合物の投与量を300mg/kg、実施例3で製造した化合物の投与量を30および100mg/kgとした。本試験の最終評価日はDay23とした。
【0200】
各群の腫瘍体積を
図3に示した。Day23における各群の腫瘍体積の平均値は、媒体群で819mm
3、BSO 750mg/kg群で463mm
3、実施例2 300mg/kg群で396mm
3、実施例3 30mg/kg群で453mm
3、実施例3 100mg/kg群で414mm
3であった。BSO 750mg/kg群の平均腫瘍増殖抑制率(TGI
mean)が44%であったのに対し、実施例2 300mg/kg群のTGI
meanが52%、実施例3 30mg/kg群および100mg/kg群のTGI
meanがそれぞれ45%および49%であった。以上から、最大作用を示す用量としてはBSOが750mg/kg、実施例2で製造した化合物が300mg/kg、実施例3で製造した化合物が30mg/kgであり、実施例2および実施例3でそれぞれ製造した各化合物は、それぞれ用量比でBSOより約3倍および約25倍インビボ活性が向上していることが確認された。
【0201】
以上から、実施例2および実施例3に代表される本開示化合物は、BSOよりもインビボ活性が向上した化合物であることが確認された。
[製剤実施例]
製剤例
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤約1万錠が得られる。
・(2S)-2-アミノ-4-[S-(4,4,4-トリフルオロブチル)スルホンイミドイル]ブタン酸 ……100g
・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤) …… 20g
・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤) …… 10g
・微結晶セルロース ……870g
【産業上の利用可能性】
【0202】
本開示化合物は、GCL阻害活性を有するため、本開示化合物を有効成分として含む医薬品は、がんなどのGCL関連疾患の進行抑制、再発抑制および/または治療剤として有用である。