(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178482
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】化合物、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤及び医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 409/14 20060101AFI20241218BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20241218BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20241218BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20241218BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241218BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241218BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241218BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20241218BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241218BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241218BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241218BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241218BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241218BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C07D409/14
C07D413/14 CSP
A61K31/422
A61K31/4184
A61P9/12
A61P9/00
A61P13/12
A61P27/06
A61P25/28
A61P1/16
A61P29/00
A61P35/00
A61K9/70 401
A61K9/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185368
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】519305627
【氏名又は名称】株式会社アークメディスン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100168893
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】田中 圭悟
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB07
4C063CC92
4C063DD26
4C063EE01
4C076AA11
4C076AA72
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC17
4C076CC27
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CA04
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA58
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】AT1受容体拮抗作用を有する化合物等の提供。
【解決手段】下記式(1):
[式中、R
1は、水素、アルキル、アルコキシ又はアルコキシアルキルであり、R
2は、それぞれ独立して、アルキルであり、nは、0~2の整数であり、Arはイソキサゾール誘導体又はピラジン誘導体]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中、
R
1は、水素、アルキル、アルコキシ又はアルコキシアルキルであり、
R
2は、それぞれ独立して、アルキルであり、
nは、0~2の整数であり、
Arは、下記式(Ar1)又は(Ar2):
【化2】
(式中、
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル又はハロゲンであり、
R
5は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、アルコキシ又はハロアルコキシであり、
mは、0~3の整数である)
である]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項2】
R1が、アルコキシアルキルである、請求項1に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項3】
nが、0である、請求項1又は2に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項4】
Arが、式(Ar1)である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項5】
R3及びR4が、それぞれ独立して、アルキル又はハロゲンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項6】
下記化合物:
【化3-1】
【化3-2】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤。
【請求項8】
エンドセリンA受容体を対照として、アンジオテンシンIIタイプ1受容体を選択的に阻害する、請求項7に記載のアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、医薬組成物。
【請求項10】
高血圧症、心疾患、心筋梗塞後の心不全進行、腎疾患、インターベンション後の血管肥厚、インターベンション後の閉塞、インターベンション後の臓器障害、緑内障、高眼圧症、アルツハイマー病、中枢神経障害、認知症、肝臓疾患、好酸球性食道炎、変形性膝関節炎、表皮水疱症、マルファン症候群、又はがんを予防又は治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
注射剤、貼付剤、又は点眼剤である、請求項9又は10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アンジオテンシンIIに対する受容体としては、アンジオテンシンIIタイプ1受容体(AT1受容体)及びアンジオテンシンIIタイプ2受容体(AT2受容体)があり、AT1受容体が関連(介在)する疾患として様々なものが報告されている。
【0003】
AT1受容体関連疾患としては、例えば、高血圧症(特許文献1)、心疾患(例えば、心肥大、急性心不全、うっ血性心不全を含む慢性心不全、拡張不全、心筋症、狭心症、心筋炎、心房細動、不整脈、頻脈、及び心筋梗塞)(非特許文献1及び2)、心筋梗塞後の心不全進行(非特許文献3)、腎疾患(例えば、腎炎、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎不全、血栓性微小血管症、透析の合併症、及び放射線照射による腎症を含む臓器障害)(非特許文献4及び5)、インターベンション(例えば、経皮的冠動脈形成術、ステント留置、冠動脈内視鏡、血管内超音波、及び冠注血栓溶解療法)後の血管肥厚、閉塞及び臓器障害(非特許文献6)、眼疾患(例えば、緑内障、及び高眼圧症)(非特許文献7及び8)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)(非特許文献9)、中枢神経障害(例えば、脳出血及び脳梗塞等の障害、並びにその後遺症及び合併症)(非特許文献10)、認知症(例えば、脳血管性認知症)(非特許文献11)、肝臓疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患)(非特許文献12及び13)、好酸球性食道炎(非特許文献14)、骨疾患(例えば、変形性膝関節炎)(非特許文献15)、皮膚疾患(例えば、表皮水疱症)(非特許文献16)、全身疾患(例えば、マルファン症候群)(非特許文献17)、並びにがん(非特許文献18)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/80384号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Vascular Health and Risk Management 2008,4,67.
【非特許文献2】Annals of Palliative Medicine 2021,10,8684.
【非特許文献3】The Lancet 2002,360,752.
【非特許文献4】The New England Journal of Medicine2001,345,861.
【非特許文献5】Blood Pressure 2019,28,358.
【非特許文献6】BMC Cardiovascular Disorders 2017,17,278.
【非特許文献7】Experimental Eye Research 2005,80,629.
【非特許文献8】Journal of Cardiovascular Pharmacology 2000,36,169.
【非特許文献9】Journal of Clinical Investigation 2007,117,3393.
【非特許文献10】International Journal of Molecular Sciences 2012,13,7739.
【非特許文献11】Hypertension Research 2009,32, 738.
【非特許文献12】Oncotarget 2018,9,24155.
【非特許文献13】Physiological Reports 2016,4,e13016.
【非特許文献14】Expert Review of Clinical Immunology 2020,16,421.
【非特許文献15】Journal of Orthopaedic Translation 2021,29,30.
【非特許文献16】Dermatologic Therapy 2020,e14279.
【非特許文献17】European Heart Journal 2020,41,4181.
【非特許文献18】Biochemical Pharmacology 2018,151,96.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、AT1受容体拮抗作用を有する化合物、又は前記化合物を含むAT1受容体拮抗剤若しくは医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討した結果、所定の構造を有する化合物がAT1受容体拮抗作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
下記式(1):
【化1】
[式中、
R
1は、水素、アルキル、アルコキシ又はアルコキシアルキルであり、
R
2は、それぞれ独立して、アルキルであり、
nは、0~2の整数であり、
Arは、下記式(Ar1)又は(Ar2):
【化2】
(式中、
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル又はハロゲンであり、
R
5は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、アルコキシ又はハロアルコキシであり、
mは、0~3の整数である)
である]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[2]
R
1が、アルコキシアルキルである、[1]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[3]
nが、0である、[1]又は[2]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[4]
Arが、式(Ar1)である、[1]~[3」のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[5]
R
3及びR
4が、それぞれ独立して、アルキル又はハロゲンである、[1]~[4]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[6]
下記化合物:
【化3-1】
【化3-2】
からなる群から選択される、[1]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤。
[8]
エンドセリンA受容体を対照として、アンジオテンシンIIタイプ1受容体を選択的に阻害する、[7]に記載のアンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤。
[9]
[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、医薬組成物。
[10]
高血圧症、心疾患、心筋梗塞後の心不全進行、腎疾患、インターベンション後の血管肥厚、インターベンション後の閉塞、インターベンション後の臓器障害、緑内障、高眼圧症、アルツハイマー病、中枢神経障害、認知症、肝臓疾患、好酸球性食道炎、変形性膝関節炎、表皮水疱症、マルファン症候群、又はがんを予防又は治療するための、[9]に記載の医薬組成物。
[11]
注射剤、貼付剤又は点眼剤である、[9]又は[10]に記載の医薬組成物。
【0009】
また、本発明は以下の実施形態も含む。
[A1]
アンジオテンシンIIタイプ1受容体を阻害する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[A2]
エンドセリンA受容体を対照として、アンジオテンシンIIタイプ1受容体を選択的に阻害する、[A1]に記載の方法。
[A3]
疾患を予防又は治療する方法であって、その必要のある患者に有効量の[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩を投与することを含む方法。
[A4]
前記疾患が、高血圧症、心疾患、心筋梗塞後の心不全進行、腎疾患、インターベンション後の血管肥厚、インターベンション後の閉塞、インターベンション後の臓器障害、緑内障、高眼圧症、アルツハイマー病、中枢神経障害、認知症、肝臓疾患、好酸球性食道炎、変形性膝関節炎、表皮水疱症、マルファン症候群、又はがんである、[A3]に記載の方法。
【0010】
[B1]
アンジオテンシンIIタイプ1受容体の阻害に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B2]
エンドセリンA受容体を対照として、アンジオテンシンIIタイプ1受容体を選択的に阻害する、[B1]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B3]
疾患の予防又は治療に使用するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
[B4]
前記疾患が、高血圧症、心疾患、心筋梗塞後の心不全進行、腎疾患、インターベンション後の血管肥厚、インターベンション後の閉塞、インターベンション後の臓器障害、緑内障、高眼圧症、アルツハイマー病、中枢神経障害、認知症、肝臓疾患、好酸球性食道炎、変形性膝関節炎、表皮水疱症、マルファン症候群、又はがんである、[B3]に記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩。
【0011】
[C1]
アンジオテンシンIIタイプ1受容体を阻害するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[C2]
エンドセリンA受容体を対照として、アンジオテンシンIIタイプ1受容体を選択的に阻害する、[C1]に記載の使用。
[C3]
疾患を予防又は治療するための、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[C4]
前記疾患が、高血圧症、心疾患、心筋梗塞後の心不全進行、腎疾患、インターベンション後の血管肥厚、インターベンション後の閉塞、インターベンション後の臓器障害、緑内障、高眼圧症、アルツハイマー病、中枢神経障害、認知症、肝臓疾患、好酸球性食道炎、変形性膝関節炎、表皮水疱症、マルファン症候群、又はがんである、[C3]に記載の使用。
【0012】
[D1]
アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤の製造における、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D2]
前記アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤が、エンドセリンA受容体を対照として、アンジオテンシンIIタイプ1受容体を選択的に阻害する、[D1]に記載の使用。
[D3]
疾患を予防又は治療するための医薬組成物の製造における、[1]~[6]のいずれかに記載の化合物又はその医薬上許容可能な塩の使用。
[D4]
前記疾患が、高血圧症、心疾患、心筋梗塞後の心不全進行、腎疾患、インターベンション後の血管肥厚、インターベンション後の閉塞、インターベンション後の臓器障害、緑内障、高眼圧症、アルツハイマー病、中枢神経障害、認知症、肝臓疾患、好酸球性食道炎、変形性膝関節炎、表皮水疱症、マルファン症候群、又はがんである、[D3]に記載の使用。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、AT1受容体拮抗作用を有する化合物、又は前記化合物を含むAT1受容体拮抗剤若しくは医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
<化合物>
本発明の一実施形態は、下記式(1):
【化4】
[式中、
R
1は、水素、アルキル、アルコキシ又はアルコキシアルキルであり、
R
2は、それぞれ独立して、アルキルであり、
nは、0~2の整数であり、
Arは、下記式(Ar1)又は(Ar2):
【化5】
(式中、
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル又はハロゲンであり、
R
5は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、アルコキシ又はハロアルコキシであり、
mは、0~3の整数である)
である]
で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩に関する。
【0016】
式(1)との関係において、アルキル(アルコキシアルキル及びハロアルキルにおけるアルキルを含む。)は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
式(1)との関係において、アルコキシ(アルコキシアルキル及びハロアルコキシにおけるアルコキシを含む。)に含まれるアルキル部分は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0017】
式(1)において、R1は、水素、アルキル、アルコキシ又はアルコキシアルキルであり、好ましくはアルコキシアルキルである。
【0018】
R1のアルキルは、好ましくは炭素数1~6のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~3のアルキルである。
R1のアルコキシは、好ましくは炭素数1~6のアルコキシであり、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルコキシである。
R1のアルコキシアルキルにおけるアルコキシは、好ましくは炭素数1~6のアルコキシであり、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルコキシである。
R1のアルコキシアルキルにおけるアルキルは、好ましくは炭素数1~6のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~3のアルキルであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルキルであり、特に好ましくはメチルである。
【0019】
式(1)において、R2は、それぞれ独立して、アルキルであり、好ましくは炭素数1~6のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~3のアルキルであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルキルであり、特に好ましくはメチルである。
【0020】
式(1)において、nは、0~2の整数であり、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0021】
式(1)において、Arは、式(Ar1)又は式(Ar2)であり、好ましくは式(Ar1)である
【0022】
式(1)において、R3は、アルキル、ハロアルキル又はハロゲンであり、好ましくはアルキル又はハロゲンである。
【0023】
R3のアルキル(ハロアルキルにおけるアルキルを含む。)は、好ましくは炭素数1~6のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~3のアルキルであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルキルであり、特に好ましくはメチルである。
R3のハロゲン、及びハロアルキルにおけるハロは、好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくは塩素である。
【0024】
式(1)において、R4は、アルキル、ハロアルキル又はハロゲンであり、好ましくはアルキル又はハロゲンであり、より好ましくはアルキルである。
【0025】
R4のアルキル(ハロアルキルにおけるアルキルを含む。)は、好ましくは炭素数1~6のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~3のアルキルであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルキルであり、特に好ましくはメチルである。
R4のハロゲン、及びハロアルキルにおけるハロは、好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくは塩素である。
【0026】
式(1)において、R5は、それぞれ独立して、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、アルコキシ又はハロアルコキシであり、好ましくはアルキル又はアルコキシである。
【0027】
R5のアルキル(ハロアルキルにおけるアルキルを含む。)は、好ましくは炭素数1~6のアルキルであり、より好ましくは炭素数1~3のアルキルであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルキルであり、特に好ましくはメチルである。
R5のハロゲン、並びにハロアルキル及びハロアルコキシにおけるハロは、好ましくはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくは塩素である。
R5のアルコキシ(ハロアルコキシにおけるアルコキシを含む。)は、好ましくは炭素数1~6のアルコキシであり、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシであり、更に好ましくは炭素数1又は2のアルコキシであり、特に好ましくはメトキシである。
【0028】
式(1)において、mは、0~3の整数であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは2である。
【0029】
式(1)で表される化合物は、特に限定するものではないが、下記の化合物であることが好ましい。
【化6-1】
【化6-2】
【0030】
式(1)で表される化合物の医薬上許容可能な塩は、医薬として使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩;フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、パルミチン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩;ジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機塩基塩を挙げることができる。
【0031】
式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩は、水和物等の溶媒和物を形成していてもよい。本明細書において、溶媒和物は、式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩に包含されるものとする。
【0032】
式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩に立体異性体(例えば、エナンチオマー及びジアステレオマー)が存在する場合、個々の立体異性体及びこれらの混合物(例えば、ラセミ体)は、式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩に包含されるものとする。
【0033】
<アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗剤>
本発明の一実施形態は、式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、AT1受容体拮抗剤に関する。本実施形態のAT1受容体拮抗剤は、好ましくは、エンドセリンA受容体(ETA受容体)を対照として、AT1受容体を選択的に阻害することができる。AT1受容体を選択的に阻害することによって、ETA受容体の阻害による副作用(例えば催奇形性)のリスクを低減することができる。
【0034】
具体的には、ETA受容体阻害濃度(IC50)/AT1受容体阻害濃度(IC50)が、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましく、1,000以上であることが特に好ましい。ETA受容体阻害濃度(IC50)/AT1受容体阻害濃度(IC50)の上限は特に限定されないが、例えば、10,000、8,000、6,000、4,000等としてもよい。ETA受容体阻害濃度、及びAT1受容体阻害濃度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
本実施形態のAT1受容体拮抗剤のAT1受容体阻害濃度(IC50)は、1.0nM以下であることが好ましく、0.5nM以下であることがより好ましく、0.2nM以下であることが更に好ましく、0.1nM以下であることが特に好ましい。AT1受容体阻害濃度(IC50)の下限は特に限定されないが、例えば、0.0025nM、0.005nM、0.01nM、0.02nM等としてもよい。
【0036】
本実施形態のAT1受容体拮抗剤のETA受容体阻害濃度(IC50)は、10nM以上であることが好ましく、20nM以上であることがより好ましく、50nM以上であることが更に好ましく、100nM以上であることが特に好ましい。ETA受容体阻害濃度(IC50)の上限は特に限定されないが、例えば、1,000nM、800nM、600nM、400nM等としてもよい。
【0037】
本実施形態のAT1受容体拮抗剤を使用することにより、AT1受容体が関連(介在)する疾患を治療及び/又は予防することができる。このような疾患としては、下記<医薬組成物>の欄に記載した疾患を挙げることができる。
【0038】
本実施形態のAT1受容体拮抗剤及び後述の医薬組成物の投与対象は、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、マウス、ラット、モルモット、イヌ及びウサギであり、更に好ましくはヒトである。
【0039】
<医薬組成物>
本発明の一実施形態は、式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩を含む、医薬組成物に関する。
【0040】
本実施形態の医薬組成物が予防対象又は治療対象とする疾患としては、例えば以下のものが挙げられる。
高血圧症;
心疾患(例えば、心肥大、急性心不全、うっ血性心不全を含む慢性心不全、拡張不全、心筋症、狭心症、心筋炎、心房細動、不整脈、頻脈、及び心筋梗塞);
心筋梗塞後の心不全進行;
腎疾患(例えば、腎炎、糸球体腎炎、糸球体硬化症、腎不全、血栓性微小血管症、透析の合併症、及び放射線照射による腎症を含む臓器障害);
インターベンション(例えば、経皮的冠動脈形成術、ステント留置、冠動脈内視鏡、血管内超音波、及び冠注血栓溶解療法)後の血管肥厚、閉塞及び臓器障害;
眼疾患(例えば、緑内障、及び高眼圧症);
神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病);
中枢神経障害(例えば、脳出血及び脳梗塞等の障害、並びにその後遺症及び合併症);
認知症(例えば、脳血管性認知症);
肝臓疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患);
好酸球性食道炎;
骨疾患(例えば、変形性膝関節炎);
皮膚疾患(例えば、表皮水疱症);
全身疾患(例えば、マルファン症候群);並びに
がん。
【0041】
本実施形態の医薬組成物は、経口的又は非経口的に投与することができる。経口投与用の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、及び懸濁剤が挙げられる。非経口投与用の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、点眼剤、貼付剤及び坐剤が挙げられる。特に限定するものではないが、本実施形態の医薬組成物は注射剤であることが好ましい。注射剤とすることにより、緊急度が高い疾患に好適に使用することができる。緊急度が高い疾患としては、例えば、脳出血や心筋梗塞等の臓器障害を伴う急性の高血圧症が挙げられる
【0042】
本実施形態の医薬組成物を注射剤とする場合、注射剤は、式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩に加えて、第2の有効成分を含んでいてもよい。第2の有効成分としては、例えば、式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩以外の、AT1受容体拮抗作用を有する化合物が挙げられ、具体的にはロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン,イルベサルタン、アジルサルタン等が挙げられる。
【0043】
本実施形態の医薬組成物は、必要に応じて、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤等を含んでいてもよい。
【0044】
本実施形態の医薬組成物の投与量は、患者の状態や体重、化合物の種類、疾患の種類、投与経路等によって異なり、適切な量を医師が決定することができる。
【0045】
<化合物の製造方法>
式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩は、公知の方法を適宜利用して合成することができる。合成方法の一例として、下記のスキームAを挙げることができる。
【化7】
【0046】
スキームAにおいて、R1~R4及びnは上記のとおりであり、X1~X3はハロゲンであり、Proは保護基である。
【0047】
スキームAにおいて、化合物(A1)を還元剤(例えば、ジメチルスルフィドボラン)と反応させて化合物(A2)を得て(工程A1)、化合物(A2)をハロゲン化剤(例えば、四臭化炭素)と反応させて化合物(A3)を得る(工程A2)。化合物(A4)を金属水素化物(例えば水素化ナトリウム)を反応させた後、化合物(A3)と反応させて化合物(A5)を得て(工程A3)、化合物(A5)をビス(ピナコラト)ジボロンと反応させて化合物(A6)を得る(工程A4)。
【0048】
化合物(A7)をジアゾ化した後、二酸化硫黄と反応させて化合物(A8)を得る(工程A5)。化合物(A8)を化合物(A9)と反応させて化合物(A10)を得て(工程A6)、化合物(A10)のアミノ基を保護基(例えば、メトキシメチル基)で保護して化合物(A11)を得る(工程A7)。
【0049】
化合物(A6)と化合物(A11)とを反応させて化合物(A12)を得て(工程A8)、化合物(A12)を脱保護して化合物(A13)を得る(工程A9)。
【0050】
式(1)で表される化合物又はその医薬上許容可能な塩の合成方法は、上記スキームAに限定されるものではなく、最終化合物の構造に応じて、適切な合成ルート及び反応条件を当業者が適宜設定することができる。
【実施例0051】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0052】
[製造例1-1]
メチル 4-ブロモ-3-(メトキシメチル)ベンゾアート
【化8】
メチル 4-ブロモ-3-(ブロモメチル)ベンゾアート(3.50g、11.4mmol)、メタノール(28mL)及びN,N-ジメチルホルムアミド(7mL)の混合物に、ナトリウムメトキシド(1.23g、22.8mmol)を0℃でゆっくり加え、室温で16時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(1.50g)を得た。
ESI-MS: m/z 258.9 [M+1]+
【0053】
[製造例1-2]
4-ブロモ-3-(メトキシメチル)安息香酸
【化9】
メチル 4-ブロモ-3-(メトキシメチル)ベンゾアート(2.00g、7.75mmol)及びメタノール(20.0mL)の混合物に、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(5.00mL、10.0mmol)を0℃で加え、室温で2時間攪拌した。反応混合物を減圧下溶媒留去し、残渣を2mol/L塩酸で中和した。析出物を濾取し、標記化合物(1.50g)を得た。
ESI-MS: m/z 242.89 [M-1]-
【0054】
[製造例1-3]
(4-ブロモ-3-(メトキシメチル)フェニル)メタノール
【化10】
4-ブロモ-3-(メトキシメチル)安息香酸(1.50g、6.14mmol)及びTHF(20mL)の混合物にジメチルスルフィドボラン(0.58mL、9.22mmol)を0℃でゆっくり加え、反応混合物を80℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温とし、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(1.30g)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.52 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.16 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.74 (s, 2H), 4.62 (s, 2H), 3.47 (s, 3H).
【0055】
[製造例1-4]
1-ブロモ-4-(ブロモメチル)-2-(メトキシメチル)ベンゼン
【化11】
(4-ブロモ-3-(メトキシメチル)フェニル)メタノール(1.30g、5.65mmol)、トリフェニルホスフィン(2.96g、11.3mmol)及びジクロロメタン(15mL)の混合物に四臭化炭素(1.87g、8.51mmol)を0℃でゆっくり加え、室温で4時間攪拌した。反応混合物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(1.30g)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.51-7.49 (m, 2H), 7.18 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.50 (s, 2H), 4.45 (s, 2H), 3.49 (s, 3H).
【0056】
[製造例1-5]
3-(4-ブロモ-3-(メトキシメチル)ベンジル)-2-ブチル-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン
【化12】
2-ブチル-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(1.19g、6.12mmol)とDMF(20mL)の混合物に、60%水素化ナトリウム(544mg、11.3mmol)を0℃でゆっくり加え、同温で30分間攪拌した。反応混合物に1-ブロモ-4-(ブロモメチル)-2-(メトキシメチル)ベンゼン(1.2g、4.08mmol)をゆっくり加え、同温で2時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(1.20g)を得た。
ESI-MS: m/z 407.30 [M+1]+
【0057】
[製造例1-6]
2-ブチル-3-(3-(メトキシメチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン
【化13】
アルゴン雰囲気下、3-(4-ブロモ-3-(メトキシメチル)ベンジル)-2-ブチル-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(0.50g、1.23mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(0.469g、1.84mmol)、酢酸カリウム(0.241g、2.46mmol)及び1,4-ジオキサン(10.0mL)の混合物に、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(0.050g、0.061mmol)を加え、反応混合物を100℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温とし、セライトを用いて濾過し、濾液を減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(1.10g)を得た。
ESI-MS: m/z 455.43 [M+1]+
【0058】
[製造例1-7]
2-ブロモチオフェン-3-アミン塩酸塩
【化14】
tert-ブチル (2-ブロモチオフェン-3-イル)カルバマート(5.10g、18.3mmol)及びジクロロメタン(60.0mL)の混合物に4.0mol/L塩化水素・1,4-ジオキサン溶液(10.0mL)を0℃で加え、反応混合物を室温で3時間攪拌した。反応混合物を減圧下溶媒留去し、残渣をジエチルエーテルで洗浄し、標記化合物(3.50g)を粗体として得た。得られた粗体は、これ以上の精製をすることなく次の反応に用いた。
【0059】
[製造例1-8]
2-ブロモチオフェン-3-スルホニル クロリド
【化15】
2-ブロモチオフェン-3-アミン塩酸塩の粗体(2.00g、9.38mmol)、テトラヒドロフラン、及び濃塩酸(3mL)の混合物に、少量の水で溶かした亜硝酸ナトリウム(0.64g、9.38mmol)を-10℃でゆっくり加え、同温で5分間攪拌した。反応混合物を、塩化銅(I)(0.27g、2.81mmol)、酢酸(2.30mL)及び水(10.0mL)に二酸化硫黄を充填させた0℃の混合物に加え30分間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1mol/L塩酸、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.70g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.39 (d, 1H, J = 5.6 Hz), 7.04 (d, 1H, J = 5.6 Hz).
【0060】
[製造例1-9]
2-ブロモ-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)チオフェン-3-スルホンアミド
【化16】
4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-アミン(0.194g、1.73mmol)とピリジン(5.0mL)との混合物に、4-ジメチルアミノピリジン(14mg、0.11mmol)及び2-ブロモチオフェン-3-スルホニル クロリド(0.3g、1.15mmol)を0℃でゆっくり加え、反応混合物を55℃で16時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を2mol/L塩酸、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去し、標記化合物を粗体として得た。得られた粗体はこれ以上の精製をすることなく、次の反応に用いた。
ESI-MS: m/z 338.89 [M+3]+
【0061】
[製造例1-10]
2-ブロモ-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)-N-(メトキシメチル)チオフェン-3-スルホンアミド
【化17】
2-ブロモ-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)チオフェン-3-スルホンアミド(0.27g、0.80mmol)とDMF(5.0mL)の混合物に、60%水素化ナトリウム(80mg、8.90mmol)を0℃でゆっくり加え、同温で30分間攪拌した。反応混合物にクロロメチルメチルエーテル(0.12mL、1。60mmol)をゆっくり加え、室温で3時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.17g)を得た。
ESI-MS: m/z 382.94 [M+3]+
【0062】
[製造例1-11]
2-(4-((2-ブチル-4-オキソ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-3-イル)メチル)-2-(メトキシメチル)フェニル)-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)-N-(メトキシメチル)チオフェン-3-スルホンアミド
【化18】
アルゴン雰囲気下、2-ブロモ-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)-N-(メトキシメチル)チオフェン-3-スルホンアミド(100mg、0.26mmol)、2-ブチル-3-(3-(メトキシメチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(119mg、0.26mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(2.0mL)及び炭酸カリウム(145mg、1.05mmol)の混合物に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(9mg、0.013mmolを加え、反応混合物を100℃で6時間攪拌した。反応混合物を室温とし、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(80mg)を得た。
ESI-MS: m/z 629.34 [M+1]+
【0063】
[実施例1]
2-(4-((2-ブチル-4-オキソ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-3-イル)メチル)-2-(メトキシメチル)フェニル)-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)チオフェン-3-スルホンアミド
【化19】
2-(4-((2-ブチル-4-オキソ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-3-イル)メチル)-2-(メトキシメチル)フェニル)-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)-N-(メトキシメチル)チオフェン-3-スルホンアミド(80mg、0.12mmol)及びメタノール(1.00mL)の混合物に6mol/L塩酸(0.50mL)を室温で加え、反応混合物を70℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温とし、減圧下溶媒留去した。残渣に酢酸エチルを加え、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣を高速液体クロマトグラフィー(Sunfire C18 (19×250)10μm、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル)により精製し、標記化合物(12mg)を得た。
ESI-MS: m/z 585.25 [M+1]+
【0064】
[製造例2-1]
4-ブロモ-3-(エトキシメチル)安息香酸
【化20】
メチル 4-ブロモ-3-(ブロモメチル)ベンゾアート(1.0g、3.27mmol)、エタノール(8mL)及びN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)の混合物に、ナトリウムエトキシド(446mg、6.55mmol)を0℃でゆっくり加え、室温で4時間攪拌した。反応混合物に氷冷水及び1mol/L塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.30g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 13.18 (bs, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.75-7.73 (m, 2H), 4.52 (s, 2H), 3.60 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.20 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
【0065】
[製造例2-2]
(4-ブロモ-3-(エトキシメチル)フェニル)メタノール
【化21】
4-ブロモ-3-(エトキシメチル)安息香酸(0.30g、1.16mmol)及びTHF(5mL)の混合物にジメチルスルフィドボラン(0.22mL、2.32mmol)を0℃でゆっくり加え、反応混合物を80℃で6時間攪拌した。反応混合物を室温とし、メタノールを加え、減圧下溶媒留去した。残渣に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0,25g)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.52-7.46 (m, 2H), 7.15 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.66 (s, 2H), 4.55 (s, 2H), 3.66-3.61 (m, 2H), 1.29 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0066】
[製造例2-3]
1-ブロモ-4-(ブロモメチル)-2-(エトキシメチル)ベンゼン
【化22】
(4-ブロモ-3-(エトキシメチル)フェニル)メタノール(0.20g、0.81mmol)、トリフェニルホスフィン(425mg、1.62mmol)及びジクロロメタン(4mL)の混合物に四臭化炭素(538mg、1.62mmol)を0℃でゆっくり加え、室温で2時間攪拌した。反応混合物に水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(160mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.51-7.49 (m, 2H), 7.18 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.53 (s, 2H), 4.45 (s, 2H), 3.66-3.61 (m, 2H), 1.30-1.25 (t, J = 7.2 Hz, 3H).
【0067】
[製造例2-4]
3-(4-ブロモ-3-(エトキシメチル)ベンジル)-2-ブチル-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン
【化23】
2-ブチル-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(152mg、0.783mmol)とDMF(3mL)の混合物に、60%水素化ナトリウム(38mg、0.783mmol)を0℃でゆっくり加え、同温で30分間攪拌した。反応混合物に1-ブロモ-4-(ブロモメチル)-2-(エトキシメチル)ベンゼン(160mg、0.52mmol)及びDMF(2mL)の混合物をゆっくり加え、同温で2時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.1g)を得た。
ESI-MS: m/z 423.13 [M+3]+
【0068】
[製造例2-5]
2-ブチル-3-(3-(エトキシメチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン
【化24】
アルゴン雰囲気下、3-(4-ブロモ-3-(エトキシメチル)ベンジル)-2-ブチル-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(0.26g、0.62mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(236mg、0.93mmol)、酢酸カリウム(122mg、1.24mmol)及び1,4-ジオキサン(5mL)の混合物に、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(25mg、0.03mmol)を加え、反応混合物を100℃で16時間攪拌した。反応混合物を室温とし、セライトを用いて濾過し、濾液を減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(120mg)を得た。
ESI-MS: m/z 469.42 [M+1]+
【0069】
[製造例2-6]
2-ブロモ-N-(4-クロロ-5-メチルイソオキサゾール-3-イル)チオフェン-3-スルホンアミド
【化25】
4-クロロ-5-メチルイソオキサゾール-3-アミン(0.64g、1.73mmol)とピリジン(8.0mL)との混合物に、4-ジメチルアミノピリジン(75mg、0.60mmol)及び2-ブロモチオフェン-3-スルホニルクロリド(0.52g、2.0mmol)を0℃でゆっくり加え、反応混合物を55℃で16時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を2mol/L塩酸、及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下溶媒留去し、標記化合物(0.50g)を得た。
ESI-MS: m/z 358.97 [M+3]+
【0070】
[製造例2-7]
2-ブロモ-N-(4-クロロ-5-メチルイソオキサゾール-3-イル)-N-(メトキシメチル)チオフェン-3-スルホンアミド
【化26】
2-ブロモ-N-(4,5-ジメチルイソオキサゾール-3-イル)チオフェン-3-スルホンアミド(0.50g、1.40mmol)とDMF(5.0mL)の混合物に、60%水素化ナトリウム(168mg、3.51mmol)を0℃でゆっくり加え、同温で30分間攪拌した。反応混合物にクロロメチルメチルエーテル(0.21mL、2.81mmol)をゆっくり加え、室温で3時間攪拌した。反応混合物に氷冷水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)により精製し、標記化合物(0.30g)を粗体として得た。得られた粗体は、これ以上の精製をすることなく次の反応に用いた。
【0071】
[実施例2]
2-(4-((2-ブチル-4-オキソ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-3-イル)メチル)-2-(エトキシメチル)フェニル)-N-(4-クロロ-5-メチルイソオキサゾール-3-イル)チオフェン-3-スルホンアミド
【化27】
アルゴン雰囲気下、2-ブロモ-N-(4-クロロ-5-メチルイソオキサゾール-3-イル)-N-(メトキシメチル)チオフェン-3-スルホンアミドの粗体(250mg、0.62mmol)、2-ブチル-3-(3-(エトキシメチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナ-1-エン-4-オン(250mg、0.53mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)及び炭酸カリウム(0.150g、1.06mmol)の混合物に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(20mg、0.028mmol)を加え、反応混合物を100℃で6時間攪拌した。反応混合物を室温とし、水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下溶媒留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)及び高速液体クロマトグラフィー(Sunfire C18 (19×250)10μm、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液/アセトニトリル)により精製し、標記化合物(27mg)を得た。
ESI-MS: m/z 619.26 [M+1]+
【0072】
[試験例1:アンジオテンシンII type1受容体阻害作用]
アンジオテンシンII type1受容体の阻害作用を以下の方法で検討した。
ヒトAngiotensin II type 1受容体(Accession Number NP_000676.1)を強制発現させたCHO-K1-mt aequorin-Gα16細胞を抗生剤無添加の培地で18時間培養した後、PBS-EDTA(5mM EDTA)で処理し、遠心分離後(2分、405×g、室温)、アッセイバッファー(DMEM/HAM's F12 with HEPES+0.1% BSA protease free)に懸濁させた。
1×106個/mLの細胞を終濃度5μMのCoelenterazin h(Molecular Probes)存在下4時間以上室温でインキュベートし、Angiotensin IIによるアゴニスト反応を確認し、EC80に相当するAngiotensin II濃度を求めた。
続いて96穴プレートに10000個/wellのCoelenterazin h処置した細胞懸濁液を50μLと被験物質(終濃度0.5%DMSO)を含むアッセイバッファー50μL添加し、15分後に終濃度がEC80濃度になるようにAngiotensin II溶液を100μL添加し、FDSS6000(浜松ホトニクス)にて受容体活性を発光量で測定した。IC50値はXLfit(IDBS)を用いて算出した。
【0073】
IC50値が1.0nM以下、又は1.0nMで50%以上の阻害作用を示した場合「A」、IC50値が100nMより大きい、又は100nMで50%より小さい阻害作用を示した場合「C」、「A」と「C」の間のものを「B」とした。結果を表1に示す。
【表1】
【0074】
[試験例2:エンドセリンA受容体阻害作用]
エンドセリンA受容体の阻害作用を以下の方法で検討した。
ヒトEndothelin A受容体(Accession Number NP_001948.1)を強制発現させたCHO-K1-mt aequorin細胞を抗生剤無添加の培地で18時間培養した後、PBS-EDTA(5mM EDTA)で処理し、遠心分離後(2分、405×g、室温)、アッセイバッファー(DMEM/HAM‘s F12 with HEPES+0.1% BSA protease free)に懸濁させた。
1×106個/mLの細胞を終濃度5μMのCoelenterazin h(Molecular Probes)存在下4時間室温でインキュベートし、Endothelinによるアゴニスト反応を確認し、EC80に相当するEndothelin濃度を求めた。
続いて96穴プレートに10000個/wellのCoelenterazin h処置した細胞懸濁液を50μLと被験物質(終濃度0.5%DMSO)を含むアッセイバッファー50μL添加し、15分後に終濃度がEC80濃度になるようにEndothelinを添加し、FDSS6000(浜松ホトニクス)にて受容体活性を発光量で測定した。IC50値はXLfit(IDBS)を用いて算出した。
【0075】
IC50値が1.0nM以下、又は1.0nMで50%以上の阻害作用を示した場合「A」、IC50値が100nMより大きい、又は100nMで50%より小さい阻害作用を示した場合「C」、「A」と「C」の間のものを「B」とした。結果を表2に示す。
【表2】