(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178484
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法、ハンナ型間質性膀胱炎診断キット、及びハンナ型間質性膀胱炎治療剤
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20241218BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20241218BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20241218BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20241218BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241218BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241218BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241218BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20241218BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/68
C12Q1/6888 Z
A61P13/10
A61P31/04
A61K45/00
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185694
(22)【出願日】2021-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】501083643
【氏名又は名称】学校法人慈恵大学
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】古田 昭
(72)【発明者】
【氏名】政木 隆博
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB03
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QR35
4B063QR72
4B063QR75
4B063QS25
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB351
4C084ZB352
(57)【要約】
【課題】ハンナ型間質性膀胱炎を特異的に検出できる、ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法、ハンナ型間質性膀胱炎診断キット、及びハンナ型間質性膀胱炎治療剤を提供する。
【解決手段】ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法であって、
被験者由来の尿から、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物の存在量を検出する、検出方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法であって、
被験者由来の尿から、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物の存在量を検出する、検出方法。
【請求項2】
前記微生物の16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNAを検出する、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
更に、CXCL10を検出する、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
膀胱痛スコアを用いる、請求項1~3のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項5】
前記尿は、女性由来である、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項6】
Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物の16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNAを増幅するためのプライマーセット、及び/或いは16SリボゾームDNA若しくは16SリボゾームRNA又はその増幅産物に結合するプローブを含む、ハンナ型間質性膀胱炎診断キット。
【請求項7】
Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物に対する抗菌剤を有効成分として含有する、ハンナ型間質性膀胱炎治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法、ハンナ型間質性膀胱炎診断キット、及びハンナ型間質性膀胱炎治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンナ型間質性膀胱炎(HIC)は、膀胱に原因不明の炎症が起こり、尿が近い、膀胱や尿道に違和感や痛みが起こる等のつらい症状が出る難病(指定難病226)である。HICの病理学的所見としては、間質にリンパ球浸潤が見られ、間質の炎症に伴う、膀胱上皮の剥離が生じる。
【0003】
しかしながら、係る所見は、通常の膀胱炎でも見られる非特異的な炎症反応である。ハンナ病変のみの局所的治療では根治しないため、早期発見・早期治療が必要となっている。
【0004】
このような要望に対して、CXCL10を含む遺伝子マーカーを用いた潰瘍型(ハンナ型)間質性膀胱炎の検出を補助する方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、CXCL10は、ハンナ型間質性膀胱炎以外の間質性膀胱炎においても発現上昇が認められるため、よりハンナ型間質性膀胱炎特異的に増減する診断マーカーが求められている。
そこで、本発明は、ハンナ型間質性膀胱炎を特異的に検出できる、ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法、ハンナ型間質性膀胱炎診断キット、及びハンナ型間質性膀胱炎治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法であって、
被験者由来の尿から、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物の存在量を検出する、検出方法。
[2]前記微生物の16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNAを検出する、[1]に記載の検出方法。
[3]更に、CXCL10を検出する、[1]又は[2]に記載の検出方法。
[4]膀胱痛スコアを用いる、[1]~[3]のいずれか一つに記載の検出方法。
[5]前記尿は、女性由来である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の検出方法。
[6]Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物の16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNAを増幅するためのプライマーセット、及び/或いは16SリボゾームDNA若しくは16SリボゾームRNA又はその増幅産物に結合するプローブを含む、ハンナ型間質性膀胱炎診断キット。
[7]Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物に対する抗菌剤を有効成分として含有する、ハンナ型間質性膀胱炎治療剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハンナ型間質性膀胱炎を特異的に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(上段)HIC患者におけるPeptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌それぞれの存在量とTrabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、及びLactobacillus(ラクトバシラス)属細菌それぞれの存在量との相関係数を算出した表である。(下段)HIC患者におけるTrabulsiella(トラブルシエラ)属細菌/(Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌+Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌+Anaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌)の値に基づくROC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法≫
本発明のハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法は、被験者由来の尿から、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物の存在量を検出する方法である。
【0011】
実施例において後述するように、本発明者は、ハンナ型間質性膀胱炎患者の尿を用いて16S rRNA菌叢解析を行い、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌の存在量が、健常者と比較して大きく異なることを見出した。
【0012】
これら細菌の検出方法としては、特に限定されず、特定的抗体を用いる方法、細菌特異的な遺伝子配列を解析する方法等挙げられる。
細菌特異的な遺伝子配列を解析する方法としては、16SリボゾームRNA又は16SリボゾームDNAを解析する方法が挙げられる。詳細には、プライマーを用いてPCRにより16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNAの断片を増幅し、その増幅産物を解析してもよく、細菌に特異的な16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNA遺伝子配列に相補的なプローブを用いて、ハイブリダイゼーションを用いた方法により、解析してもよい。
定量性の観点から、PCRにより16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNAの断片を増幅し、その増幅産物を解析することが好ましい。具体的な定量方法としては、次世代シークエンサー(NGS)法やリアルタイムPCR(RT-PCR)法が挙げられる。
【0013】
次世代シークエンサーでは、解析されたDNA断片をリードと呼び、リード数と1リード当たりに決定される塩基数(リード長)の積が出力データとなる。本実施形態において、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌の16SリボゾームDNA内の領域をsingleplex PCRまたはmultiplex PCRで増幅し、次世代シークエンサー(NGS)でその増幅産物の塩基配列を解析し、当該領域のリード数を計数することにより定量することが好ましい。multiplex PCRは、一つのPCR反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。上述した細菌の遺伝子にアニールするプライマーの組み合わせの少なくとも一部を、一つのPCR反応系で使用してもよい。
【0014】
リアルタイムPCRでは、インターカレータ-法、プローブ法、サイクリングプローブ法等を用いて、蛍光強度を検出することにより、増幅産物の生成量をモニターすることができる。本実施形態において、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌の16SリボゾームDNA内の領域をsingleplexまたはmultiplexのリアルタイムPCR法により定量することが好ましい。multiplex PCRにおいては、上述した細菌の遺伝子にアニールする様々なプライマーの組み合わせの少なくとも一部を、一つのPCR反応系で使用してもよい。
【0015】
また、リアルタイムPCRにおいては、細菌に特異的な16SリボゾームDNA遺伝子配列に相補的な蛍光色素標識プローブを用いることが好ましい。
定量方法としては、ターゲットの実際のコピー数を決定する絶対定量法とサンプル間の相対値を決定する比較定量法が挙げられ、取得したいデータの質に応じて使い分けられる。
【0016】
実施例で後述するように、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、及びAnaerococcus(アナエロコッカス)属細菌それぞれの存在量とTrabulsiella(トラブルシエラ)属細菌の存在量との間に強い相関が認められたことから、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌/(Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌+Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌+Anaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌)の値をハンナ型間質性膀胱炎の診断に用いることが好ましい。
【0017】
ハンナ型間質性膀胱炎の患者は、女性に多いことから、被験者由来の尿は女性由来であることが好ましい。患者の年齢層としては、すべての年齢層に幅広く認められるが、閉経後の女性に特に多く認められる。また、実施例で後述するように、閉経前後で該当細菌の存在量が異なることから、尿サンプルは、閉経前後で分けて診断に用いることが好ましい。
【0018】
本発明の検出方法において、更に、CXCL10を検出することが好ましい。CXCLは、炎症性ケモカインであり、非特異的炎症マーカーである。CXCL10の尿中存在レベルにおいて、30以上であれば、ハンナ型間質性膀胱炎であることをサポートする。
【0019】
本発明の検出方法において、更に、膀胱痛スコアを用いることが好ましい。膀胱痛スコアとしては、日本間質性膀胱炎研究会作成の重症度基準が挙げられる。膀胱痛は、0~10の11段階で表記したNRS(Numerical Rating Scale)で表記される。日本間質性膀胱炎研究会作成の重症度基準においては、膀胱痛スコアが0~10の11段階の内、4以上であれば、ハンナ型間質性膀胱炎であることをサポートする。
【0020】
≪診断キット≫
本発明のハンナ型間質性膀胱炎診断キットは、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物の16SリボゾームDNA又は16SリボゾームRNAを増幅するためのプライマーセット、及び/或いは16SリボゾームDNA若しくは16SリボゾームRNA又はその増幅産物に結合するプローブを含む。本発明の診断キットは、上述した≪ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法≫に好適に用いられ、≪ハンナ型間質性膀胱炎診断マーカーの検出方法≫に記載された構成を含む。
【0021】
更に、上記プライマーセット、及び/又はプローブに加えて、尿からDNA又はRNAを抽出するためのキットを備えていてもよい。
【0022】
≪ハンナ型間質性膀胱炎治療剤≫
本発明のハンナ型間質性膀胱炎治療剤は、Trabulsiella(トラブルシエラ)属細菌、Peptoniphilus(ペプトニフィラス)属細菌、Anaerococcus(アナエロコッカス)属細菌、及びAnaerobacillus(アナエロバシラス)属細菌からなる群から選ばれる少なくとも1種の微生物に対する抗菌剤を有効成分として含有する。
【0023】
抗菌剤としては、ニトロイミダゾール系、カルバペネム系、マクロライド系、ニューキノロン系、セフェム系、ペニシリン系、キノロン系、ニューキノロン系抗菌剤が挙げられる。具体的な抗菌剤としては、メトロニダゾール、ドリペネム、アジスロマイシン、シタフロキサシン水和物、セフォペラゾン、プルリフロキサシン、ピペラシリン、ガレノキサシン、ホスホマイシン、パズフロキサシン等が挙げられる。
【0024】
本発明のハンナ型間質性膀胱炎治療剤は、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の形態で経口的に、又は、注射剤、坐剤、皮膚外用剤等の形態で非経口的に投与することができる。
【0025】
薬学的に許容される担体としては、通常の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤;アルギン酸等の膨化剤;水、エタノール、グリセリン等の注射剤用溶剤;ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤等が挙げられる。薬学的に許容される担体は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
本発明のハンナ型間質性膀胱炎治療剤は、更に添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤等が挙げられる。
添加剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
(投与方法)
本発明のハンナ型間質性膀胱炎治療剤の投与方法は特に限定されず、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等は経口投与される。また、注射剤は、単独で、又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて、動脈内、筋肉内、皮内、皮下又は腹腔内投与される。または、膀胱へ局所投与される。膀胱内投与には、膀胱内注入療法と膀胱壁内注入療法の2つが挙げられる。後者は、内視鏡にて経尿道的に特殊な針を用いて薬剤を注入する方法である。坐剤は直腸内投与される。皮膚外用剤は、患部に塗布、貼付又はスプレーされる。
【0028】
(投与量)
本発明のハンナ型間質性膀胱炎治療剤の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、例えば1日あたり1μg~10g、例えば1日あたり0.01~2000mgの有効成分を投与すればよい。また、注射剤の場合には、例えば1日あたり0.1μg~1g、例えば1日あたり0.001~200mgの有効成分を投与すればよい。また、坐剤の場合には、例えば1日あたり1μg~10g、例えば1日あたり0.01~2000mgの有効成分を投与すればよい。
【0029】
(治療方法)
本発明のハンナ型間質性膀胱炎治療方法は、経尿道的ハンナ病変電気焼灼術による局所治療と、上記ハンナ型間質性膀胱炎治療剤の投与によるハンナ病辺部以外の治療を含む。電気焼灼術による局所治療だけでは、根治しないため、ハンナ型間質性膀胱炎治療剤の投与により、より効率的な治療効果が得られる。
【実施例0030】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
閉経前の健常者20人、及び閉経前のHIC患者10人、並びに、閉経後の健常者20人、及び閉経後のHIC患者20人の尿を採取した。尿アリコートを遠心分離によってペレット化し、DNeasy Blood&Tissueキット(QIAGEN社製)を使用して沈殿物から全DNAを単離した。
単離したDNAについて、V1-V2超可変領域に固有のプライマーセットを使用して16S rDNA配列を増幅した後、次世代シーケンサーを用いてシーケンス行った。統計分析ソフトウェア(Prism、GraphPad Software、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用してデータ分析を実行した。門レベルのすべての微生物を比較し、相対存在量が低い(<0.1%)属レベルの微生物をフィルターにかけ、残りの上位50種類の微生物を分析した。結果を
図1に示す。
図1に示す様に、閉経前のHIC患者は、閉経前の健常者よりもPeptoniphilus及びAnaerococcusの存在量が多かった。閉経後のHIC患者は、閉経後の健常者よりもAnaerobacillusの存在量が多かった。閉経後のHIC患者は、閉経後の健常者よりもTrabulsiellaの存在量が少なかった。
【0032】
図1の結果に基づき、HIC患者におけるPeptoniphilus、Anaerococcus、及びAnaerobacillusそれぞれの存在量とTrabulsiella、及びLactobacillusそれぞれの存在量との相関係数を算出した。結果を
図2上段に示す。Peptoniphilus、及びAnaerococcusそれぞれの存在量とTrabulsiellaの存在量との間に強い相関が認められた。
【0033】
図1の結果に基づき、HIC患者におけるTrabulsiella/(Peptoniphilus+Anaerococcus+Anaerobacillus)の値を求め、ROC曲線を作成した。結果を
図2下段に示す。AUCは、0.77であった。