(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178486
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】動画像符号化装置、動画像復号装置
(51)【国際特許分類】
H04N 19/82 20140101AFI20241218BHJP
H04N 19/70 20140101ALI20241218BHJP
【FI】
H04N19/82
H04N19/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188749
(22)【出願日】2021-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157200
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 茂孝
(74)【代理人】
【識別番号】100160783
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高田 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 知宏
(72)【発明者】
【氏名】中條 健
(72)【発明者】
【氏名】青野 友子
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159MA04
5C159MA05
5C159MC11
5C159ME01
5C159PP04
5C159PP16
5C159RB09
5C159RC11
5C159RC40
5C159UA02
5C159UA05
5C159UA16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】NNフィルタ部とccALF処理部とのどちらか一方のみを適用的に切り替える動画像符号化装置及び動画像復号装置を提供する。
【解決手段】動画像伝送システムにおいて、動画像復号装置のループフィルタは、予測画像と残差画像の和から再構成画像を生成し、輝度と色差信号から2層以上の積和演算を用いたフィルタ処理を行うNNフィルタ部と、輝度と色差信号から色差信号を導出するccALF処理部を備え、NNフィルタ部若しくはccALF処理部のどちらか一方のみを排他的に再構成画像に適応する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測画像と残差画像の和から再構成画像を生成し、
輝度と色差信号から2層以上の積和演算を用いたフィルタ処理を行うNNフィルタ部と、輝度と色差信号から色差信号を導出するccALF処理部を備え、上記NNフィルタ部もしくは上記ccALF処理部のどちらか一方のみを排他的に再構成画像に適応することを特徴とする動画像復号装置。
【請求項2】
SPS、ピクチャヘッダもしくは、スライスヘッダで上記NNフィルタ部の処理が利用可能かを示すsh_nn_enabled_flagと、上記ccALF処理部の処理が利用可能かを示すsh_alf_cc_cb_enabled_flag及びsh_alf_cc_cr_enabled_flagを符号化データから復号するヘッダ復号部を備え、上記ヘッダ復号部は、上記sh_nn_enabled_flagが利用可能な値の場合に、上記sh_alf_cc_cb_enabled_flag及びsh_alf_cc_cr_enabled_flagを符号化データから復号せずに利用可能ではないことを示す値に設定するか、あるいは、上記sh_alf_cc_cb_enabled_flag及びsh_alf_cc_cr_enabled_flagが利用可能な値の場合に、上記sh_nn_enabled_flagを符号化データから復号せずに利用可能ではないことを示す値に設定することを特徴とする請求項1に記載の動画像復号装置。
【請求項3】
スライスヘッダでsh_nn_enabled_flagとsh_alf_cc_cb_enabled_flag及びsh_alf_cc_cr_enabled_flagを符号化データから復号するヘッダ復号部と、CTUごとにnn_ctb_scale_idxを復号するCT情報復号部3021と、上記nn_ctb_scale_idxに応じて輝度と色差信号からフィルタ処理を行うNNフィルタ部と、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagが1の場合に輝度と色差信号から色差信号を導出するccALF処理部を備え、nn_ctb_scale_idxか、もしくはalf_ctb_cc_cb_flag及びalf_ctb_cc_cr_flagのどちらか一方のみを復号し、一方が1以上の場合には他方を0とすることを特徴とする請求項1に動画像復号装置。
【請求項4】
上記CT情報復号部3021は、nn_ctb_scale_idxが1以上の場合に、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagを復号せずに0を導出することを特徴とする請求項1に記載の動画像復号装置。
【請求項5】
上記CT情報復号部3021は、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagが1の場合に、nn_ctb_scale_idxを復号せずに0を導出することを特徴とする請求項1に記載の動画像復号装置。
【請求項6】
スライスヘッダでsh_nn_enabled_flagとsh_alf_enabled_flagを復号するヘッダ復号部と、CTUごとにNNフラグからnn_ctb_scale_idxを復号するCT情報復号部3021と、nn_ctb_scale_idxが1以上の場合に輝度と色差信号からフィルタ処理を行うNNフィルタ部と、alf_ctb_flagが1の場合にエッジ強度によりフィルタ処理を切り替えながら適用するALF処理部を備え、nn_ctb_scale_idxか、もしくはalf_ctb_flagのどちらか一方のみを復号し、一方が1以上の場合には他方が0となることを特徴とする動画像復号装置。
【請求項7】
パラメータセット、ピクチャヘッダ、もしくは、スライスヘッダで符号化データからNNモデルインデックスを符号化データから復号するヘッダ復号部と、CTU単位でNN部分モデルインデックスを符号化データから復号するCT情報復号部3021と、複数の部分モデルから構成されるニューラルネットワークによりフィルタ処理を行うNNフィルタ部と、ニューラルネットワークモデルの上記モデルのパラメータを切り替えるNNモデル選択部と、ニューラルネットワークモデルの上記複数の部分モデルのうち特定の部分モデルのパラメータを切り替えるNN部分モデル選択部を備え、
上記NNフィルタ部は、上記NNモデルインデックスに基づいて、上記NNフィルタ部で使用するモデルを選択し、上記NN部分モデル選択部は、上記NN部分モデルインデックスに基づい
て上記特定の部分モデルのパラメータを切り替えることを特徴とする動画像復号装置。
【請求項8】
上記モデル選択部は、第一の領域単位でモデルを切り替え、上記部分モデル選択部は、第一の領域よりも小さい第二の領域単位で部分モデルを切り替えることを特徴とする、請求項7に記載の動画像復号装置。
【請求項9】
スライスヘッダで符号化データからフィルタパラメータを復号するヘッダ復号部と、デブロッキングフィルタ強度bSを導出するbS導出部と、復号画像に対してデブロッキングフィルタを適用するDF部と、上記復号画像に対してニューラルネットワークによりフィルタ処理を適用するNNフィルタ部と、画像合成部を備える動画像復号装置において、
上記bS導出部は、上記フィルタパラメータに応じて上記bSを導出し、
上記ヘッダ復号部は、上記フィルタパラメータとして、NNフィルタで用いるための第1のフィルタパラメータと、DFで用いるための第2のフィルタパラメータを復号し、
上記bS導出部は、第1のフィルタパラメータから第1のbS値(bS1)を導出し、第2のフィルタパラメータから第2のbS値(bS2)を導出し、
上記NNフィルタ部は、第1のbS値を用いてフィルタ処理を行い、
上記DF部は、第2のbS値を用いてフィルタ処理を行うことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項10】
スライスヘッダで符号化データからフィルタパラメータを復号するヘッダ復号部と、デブロッキングフィルタ強度bSを導出するbS導出部と、復号画像に対してデブロッキングフィルタを適用するDF部と、上記復号画像に対してニューラルネットワークによりフィルタ処理を適用するNNフィルタ部と、画像合成部を備える動画像復号装置において、
上記bS導出部は、上記フィルタパラメータに応じて上記bSを導出し、
上記ヘッダ復号部は、上記フィルタパラメータとして、NNフィルタで用いるためのNNフィルタパラメータと、DFで用いるためのフィルタパラメータとNNフィルタパラメータとの差分である差分パラメータを復号し、
上記bS導出部は、NNフィルタパラメータから第1のbS値(bS1)を導出し、NNフィルタパラメータと差分パラメータから第2のbS値(bS2)を導出し、
上記NNフィルタ部は、第1のbS値を用いてフィルタ処理を行い、
上記DF部は、第2のbS値を用いてフィルタ処理を行うことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項11】
上記フィルタパラメータは、betaとtCであり、bS導出部は、betaを用いて、ブロック境界からのフィルタリング適用範囲を制御し、tCを用いて、あるピクセル値に対するフィルタリング後の変化量をクリッピングすることを特徴とする請求項10に記載の動画像復号装置。
【請求項12】
CTUでalf_ctb_flagを復号するCT復号部と、復号画像に対してALF処理を適用するALF処理部と、上記復号画像に対してニューラルネットワークによりフィルタ処理を適用するNNフィルタ部と、ALFパディング部を備え、
上記ALF部は、ALFクラス分類を行うALFクラス分類部と、ALFクラスフィルタを行うALFクラスフィルタ部を備え、
上記ALFクラス分類部は、上記NNフィルタ部の処理前の画像からクラス分類を行い、
上記ALFクラスフィルタ部は、上記NNフィルタ部の処理後の画像からクラスフィルタリングを行うことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項13】
上記NNフィルタ部と上記ALFクラス分類部は、並列で処理を行うことを特徴とする請求項12に記載の動画像復号装置。
【請求項14】
上記ALFパディング部は、virtual boundaryより下の画素、及びその画素と原点に対して対象の画素を参照する代わりに、近傍画素でパディング処理を行い、
上記NNフィルタ部及びALF部は、パディング処理後の画像を用いて処理を適用することを特徴とする請求項12に記載の動画像復号装置。
【請求項15】
予測画像と残差画像の和から再構成画像を生成し
輝度と色差信号から2層以上の積和演算を用いたフィルタ処理を行うNNフィルタ部と、輝度と色差信号から色差信号を導出するccALF処理部を備え、上記NNフィルタ部もしくは上記ccALF処理部のどちらか一方のみを排他的に再構成画像に適応することを特徴とする動画像符号化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、動画像符号化装置、動画像復号装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像を効率的に伝送または記録するために、動画像を符号化することによって符号化データを生成する動画像符号化装置、および、当該符号化データを復号することによって復号画像を生成する動画像復号装置が用いられている。
【0003】
具体的な動画像符号化方式としては、例えば、H.264/AVCやH.265/HEVC(High-Efficiency Video Coding)方式などが挙げられる。
【0004】
このような動画像符号化方式においては、動画像を構成する画像(ピクチャ)は、画像を分割することにより得られるスライス、スライスを分割することにより得られる符号化ツリーユニット(CTU:Coding Tree Unit)、符号化ツリーユニットを分割することで得られる符号化単位(符号化ユニット(Coding Unit:CU)と呼ばれることもある)、及び、符号化単位を分割することより得られる変換ユニット(TU:Transform Unit)からなる階層構造により管理され、CU毎に符号化/復号される。
【0005】
また、このような動画像符号化方式においては、通常、入力画像を符号化/復号することによって得られる局所復号画像に基づいて予測画像が生成され、当該予測画像を入力画像(原画像)から減算して得られる予測誤差(「差分画像」または「残差画像」と呼ぶこともある)が符号化される。予測画像の生成方法としては、画面間予測(インター予測)、および、画面内予測(イントラ予測)が挙げられる。また、符号化ループ内の量子化処理により発生する符号化ノイズを低減し、画質劣化がフレーム間で伝播することを防ぐ技術であるループ内フィルタ技術が規定されている。
【0006】
また、近年の動画像符号化及び復号の技術として非特許文献1が挙げられる。
【0007】
非特許文献1においては、ループ内フィルタのSAOとALFの間にニューラルネットワークフィルタを配置し、入力によってCTUごとにネットワークモデルを適応的に選択する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Z. Dai, Y. Yu, H. Yu, K. Sato, L. Xu, Z. Xie, D. Wang, "[AHG11] Neural Network-based Adaptive Model Selection for CNN In-Loop Filtering", JVET-X0126, Oct. 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1では、入力画像に応じて適応的にネットワークパラメータ全体を切り替えている。しかしながら、ネットワークパラメータ全体を切り替える場合、CTUなどの小さなブロック単位でのパラメータの切替が困難である。また、非特許文献1では、ALFの前にNN(Neural Network)フィルタ処理を行っているが、NNフィルタを施した後に逐次的にALFクラス分類、フィルタリングを行うと、処理に時間を要する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る動画像復号装置は、パラメータセット、ピクチャヘッダ、もしくは、スライスヘッダでNNモデルインデックスを符号化データから復号するヘッダ復号部と、CTU単位でNNレイヤインデックスを符号化データから復号するCT情報復号部3021と、複数の層から構成されるニューラルネットワークによりフィルタ処理を行うNNフィルタ部と、ニューラルネットワークモデルの上記複数の層のうち特定の層のパラメータを切り替えるNNレイヤ選択部を備え、上記NNフィルタ部は、上記NNモデルインデックスに基づいて、上記NNフィルタ部で使用するモデルを選択し、上記NNレイヤ選択部は、上記NNレイヤインデックスに基づいて上記特定の層のパラメータを切り替える。
【0011】
また、CTUでnn_alf_ctb_flagを復号するCT復号部と、復号画像に対してALF処理を適用するALF処理部と、上記復号画像に対してニューラルネットワークによりフィルタ処理を適用するNNフィルタ部と、ALFパディング部を備え、上記ALF部は、ALFクラス分類を行うALFクラス分類部と、ALFクラスフィルタを行うALFクラスフィルタ部を備え、上記ALFクラス分類部は、上記NNフィルタ部の処理前の画像からクラス分類を行い、上記ALFクラスフィルタ部は、上記NNフィルタ部の処理後の画像からクラスフィルタリングを行う。
【発明の効果】
【0012】
第1の領域でNNモデルを選択し、第1の領域よりも小さい第2の領域でファインチューニング(finetuning)されたネットワーク層を選択することで、NNモデル全体の切り替えに必要なオーバーヘッドなしで、小さなブロック単位でも適応的にNNモデルを選択することが可能となる。
【0013】
また、NNフィルタを施す前の画像でALFクラス分類を行い、NNフィルタ処理後の画像とALFクラス情報を用いてALF処理を行うことで、NNフィルタ処理とALFクラス分類を並列に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る動画像伝送システムの構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る動画像符号化装置を搭載した送信装置、および、動画像復号装置を搭載した受信装置の構成を示す図である。PROD_Aは動画像符号化装置を搭載した送信装置を示しており、PROD_Bは動画像復号装置を搭載した受信装置を示している。
【
図3】本実施形態に係る動画像符号化装置を搭載した記録装置、および、動画像復号装置を搭載した再生装置の構成を示す図である。PROD_Cは動画像符号化装置を搭載した記録装置を示しており、PROD_Dは動画像復号装置を搭載した再生装置を示している。
【
図5】本実施形態に係る動画像伝送システムにおいて処理の対象となる画像の概念図である。
【
図6】参照ピクチャおよび参照ピクチャリストの一例を示す概念図である。
【
図8】画像復号装置の概略的動作を説明するフローチャートである。
【
図9】インター予測パラメータ導出部の構成を示す概略図である。
【
図10】インター予測画像生成部の構成を示す概略図である。
【
図11】画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】NNフィルタ部611のニューラルネットワークの構成を示す図である。
【
図14】ループフィルタ305におけるccALFとNNフィルタとの排他的切替処理を示す図である。
【
図15】ループフィルタ305において、色差でccNNを求める場合の処理を示す図である。
【
図16】ループフィルタ305において、NNフィルタ部611dが入力画像のY,Cb,Crコンポーネントをそれぞれ用いる場合の処理を示す図である。
【
図17】スライスヘッダにおけるccALFとNNフィルタとのフラグの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【
図18】CTUにおけるccALFフラグとNNスケールインデックスの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【
図19】CTUにおけるccALFフラグとNNフラグの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【
図20】ループフィルタ305におけるALFとNNフィルタとの排他的切替処理を示す図である。
【
図21】スライスヘッダにおける色差ALFとNNフィルタとのフラグの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【
図22】CTUにおけるCTUにおけるALFフラグとNNスケールインデックスの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【
図23】CTUにおけるALFフラグとNNフラグの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【
図24】スライスにおけるNNモデル切替と、CTUにおける部分モデルの切替を示す図である。
【
図25】スライスヘッダにおけるNNモデルインデックスの復号を示す図である。
【
図26】CTUにおけるNN部分モデルインデックスの復号を示す図である。
【
図27】NNフィルタ、DF(Deblocking Filter)で用いるbS算出用パラメータを用いて、bSを導出する処理を示す図である。
【
図28】DFで用いるbS算出用パラメータを、NNフィルタで用いるbS算出用パラメータとの差分として入力し、bSを導出する処理を示す図である。
【
図29】NNフィルタのbS算出用パラメータの復号に関するシンタックスを示す図である。
【
図30】量子化パラメータに基づく、パラメータbeta'とtC'の導出表である。
【
図31】NNフィルタ前画像を用いたALFクラス分類処理と、NNフィルタ後画像を用いたALFクラスフィルタ処理を示す図である。
【
図33】スライスが矩形の場合のみNNフィルタを適用可能とするフラグに関するシンタックスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る動画像伝送システムの構成を示す概略図である。
【0017】
動画像伝送システム1は、解像度が変換された異なる解像度の画像を符号化した符号化データを伝送し、伝送された符号化データを復号し画像を元の解像度に逆変換して表示するシステムである。動画像伝送システム1は、動画像符号化装置10とネットワーク21と動画像復号装置30と画像表示装置41からなる。
【0018】
動画像符号化装置10は、前処理装置(前処理部)51、画像符号化装置(画像符号化部)11、合成情報作成装置(合成情報作成部)71から構成される。
【0019】
動画像復号装置30は、画像復号装置(画像復号部)31、後処理装置(後処理部)61から構成される。
【0020】
前処理装置51は、動画像に含まれる画像Tの解像度を必要に応じて変換し、異なる解像度の画像を含む可変解像度動画像T2を、画像符号化装置11に供給する。また、前処理装置51は、画像の解像度変換の有無を示すフィルタ情報を画像符号化装置11に供給してもよい。当該情報が解像度変換を示す場合、動画像符号化装置10は、後述するref_pic_resampling_enabled_flagを1に設定する。そして、符号化データTeのシーケンスパラメータセットSPS(Sequence Parameter Set)において符号化する。
【0021】
合成情報作成装置71は、動画像に含まれる画像T1に基づいて、フィルタ情報を作成し、画像符号化装置11に送る。
画像符号化装置11には可変解像度画像T2が入力される。画像符号化装置11は、RPRの枠組みを用いて、PPS単位で入力画像の画像サイズ情報を符号化し、画像復号装置31に送る。
【0022】
ネットワーク21は、符号化されたフィルタ情報及び符号化データTeを画像復号装置31に伝送する。符号化されたフィルタ情報の一部または全部は、付加拡張情報SEIとして、符号化データTeに含められてもよい。ネットワーク21は、インターネット(Internet)、広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)、小規模ネットワーク(LAN:Local Area Network)またはこれらの組み合わせである。ネットワーク21は、必ずしも双方向の通信網に限らず、地上デジタル放送、衛星放送等の放送波を伝送する一方向の通信網であっても良い。また、ネットワーク21は、DVD(Digital Versatile Disc:登録商標)、BD(Blue-ray Disc:登録商標)等の符号化データTeを記録した記憶媒体で代替されても良い。
【0023】
画像復号装置31は、ネットワーク21が伝送した符号化データTeのそれぞれを復号し、可変解像度復号画像を生成して後処理装置61に供給する。
【0024】
後処理装置61は、フィルタ情報が解像度変換を示す場合、符号化データに含まれる画像サイズ情報に基づいて、超解像用のモデルパラメータを用いた超解像処理を行う。そして、解像度変換された画像を逆変換することによって、オリジナルサイズの復号画像を生成する。また、フィルタ情報が解像度変換を示さない場合、画像復元用のモデルパラメータを用いた画像復元処理を行う。画像復元処理を行うことによって、符号化ノイズを低減した復号画像を生成する。
【0025】
画像表示装置41は、後処理装置61から入力された1または複数の復号画像Td2の全部または一部を表示する。画像表示装置41は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-luminescence)ディスプレイ等の表示デバイスを備える。ディスプレイの形態としては、据え置き、モバイル、HMD等が挙げられる。また、画像復号装置31が高い処理能力を有する場合には、画質の高い画像を表示し、より低い処理能力しか有しない場合には、高い処理能力、表示能力を必要としない画像を表示する。
【0026】
図5は、
図1に示す動画像伝送システムにおいて処理の対象となる画像の概念図であって、時間の経過に伴う、当該画像の解像度の変化を示す図である。ただし、
図5においては、画像が符号化されているか否かを区別していない。
図5は、動画像伝送システムの処理過程において、解像度を低下させて画像復号装置31に画像を伝送する例を示している。
図5に示すように、通常、画像前処理装置51は、伝送される情報の情報量を少なくするために画像の解像度を低下させる変換を行う。
【0027】
<演算子>
本明細書で用いる演算子を以下に記載する。
【0028】
>>は右ビットシフト、<<は左ビットシフト、&はビットワイズAND、|はビットワイズOR、|=はOR代入演算子であり、||は論理和を示す。
【0029】
x?y:zは、xが真(0以外)の場合にy、xが偽(0)の場合にzをとる3項演算子である。
【0030】
Clip3(a,b,c)は、cをa以上b以下の値にクリップする関数であり、c<aの場合にはaを返し、c>bの場合にはbを返し、その他の場合にはcを返す関数である(ただし、a<=b)。
【0031】
abs(a)はaの絶対値を返す関数である。
【0032】
Int(a)はaの整数値を返す関数である。
【0033】
floor(a)はa以下の最大の整数を返す関数である。
【0034】
ceil(a)はa以上の最小の整数を返す関数である。
【0035】
a/dはdによるaの除算(小数点以下切り捨て)を表す。
【0036】
a^bはaのb乗を表す。a=2、bが整数の場合、2^b=1<<bである。
【0037】
<符号化データTeの構造>
本実施形態に係る画像符号化装置11および画像復号装置31の詳細な説明に先立って、画像符号化装置11によって生成され、画像復号装置31によって復号される符号化データTeのデータ構造について説明する。
【0038】
図4は、符号化データTeにおけるデータの階層構造を示す図である。符号化データTeは、例示的に、シーケンス、およびシーケンスを構成する複数のピクチャを含む。
図4には、シーケンスSEQを既定する符号化ビデオシーケンス、ピクチャPICTを規定する符号化ピクチャ、スライスSを規定する符号化スライス、スライスデータを規定する符号化スライスデータ、符号化スライスデータに含まれる符号化ツリーユニット、符号化ツリーユニットに含まれる符号化ユニットを示す図が示されている。
【0039】
(符号化ビデオシーケンス)
符号化ビデオシーケンスでは、処理対象のシーケンスSEQを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。シーケンスSEQは、
図4に示すように、ビデオパラメータセットVPS(Video Parameter Set)、シーケンスパラメータセットSPS(Sequence Parameter Set)、ピクチャパラメータセットPPS(Picture Parameter Set)、Adaptation Parameter Set(APS)、ピクチャPICT、及び、付加拡張情報SEI(Supplemental Enhancement Information)を含んでいる。
【0040】
ビデオパラメータセットVPSでは、複数のレイヤから構成されている動画像において、複数の動画像に共通する符号化パラメータの集合および動画像に含まれる複数のレイヤおよび個々のレイヤに関連する符号化パラメータの集合が規定されている。
【0041】
シーケンスパラメータセットSPSでは、対象シーケンスを復号するために画像復号装置31が参照する符号化パラメータの集合が規定されている。例えば、ピクチャの幅や高さが規定される。なお、SPSは複数存在してもよい。その場合、PPSから複数のSPSの何れかを選択する。
【0042】
(符号化ピクチャ)
符号化ピクチャでは、処理対象のピクチャPICTを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。ピクチャPICTは、
図4に示すように、ピクチャヘッ
ダPH、スライス0~スライスNS-1を含む(NSはピクチャPICTに含まれるスライスの総数)。
【0043】
以下、スライス0~スライスNS-1のそれぞれを区別する必要が無い場合、符号の添え字を省略して記述することがある。また、以下に説明する符号化データTeに含まれるデータであって、添え字を付している他のデータについても同様である。
【0044】
(符号化スライス)
符号化スライスでは、処理対象のスライスSを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。スライスは、
図4に示すように、スライスヘッダ、および、スライスデータを含んでいる。
【0045】
スライスヘッダには、対象スライスの復号方法を決定するために画像復号装置31が参照する符号化パラメータ群が含まれる。スライスタイプを指定するスライスタイプ指定情報(slice_type)は、スライスヘッダに含まれる符号化パラメータの一例である。
【0046】
スライスタイプ指定情報により指定可能なスライスタイプとしては、(1)符号化の際にイントラ予測のみを用いるIスライス、(2)符号化の際に単予測(L0予測)、または、イントラ予測を用いるPスライス、(3)符号化の際に単予測(L0予測或いはL1予測)、双予測、または、イントラ予測を用いるBスライスなどが挙げられる。なお、インター予測は、単予測、双予測に限定されず、より多くの参照ピクチャを用いて予測画像を生成してもよい。以下、P、Bスライスと呼ぶ場合には、インター予測を用いることができるブロックを含むスライスを指す。
【0047】
なお、スライスヘッダは、ピクチャパラメータセットPPSへの参照(pic_parameter_set_id)を含んでいても良い。
【0048】
(符号化スライスデータ)
符号化スライスデータでは、処理対象のスライスデータを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。スライスデータは、
図4の符号化スライスヘッダに示すように、CTU(Coding Tree Unit)を含んでいる。CTUは、スライスを構成する固定サイズ(例えば64x64)のブロックであり、最大符号化単位(LCU:Largest Coding Unit)、CTB(Coding Tree Block)と呼ぶこともある。
【0049】
(符号化ツリーユニット)
図4には、処理対象のCTUを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。CTUは、再帰的な4分木分割(QT(Quad Tree)分割)、2分木分割(BT(Binary Tree)分割)あるいは3分木分割(TT(Ternary Tree)分割)により、符号化処理の基本的な単位である符号化ユニットCUに分割される。BT分割とTT分割を合わせてマルチツリー分割(MT(Multi Tree)分割)と呼ぶ。再帰的な4分木分割により得られる木構造のノードのことを符号化ノード(Coding Node)と称する。4分木、2分木、及び3分木の中間ノードは、符号化ノードであり、CTU自身も最上位の符号化ノードとして規定される。
【0050】
CTは、CT情報として、CT分割を行うか否かを示すCU分割フラグ(split_cu_flag)、QT分割を行うか否かを示すQT分割フラグ(qt_split_cu_flag)、MT分割の分割方向を示すMT分割方向(mtt_split_cu_vertical_flag)、MT分割の分割タイプを示すMT分割タイプ(mtt_split_cu_binary_flag)を含む。split_cu_flag、qt_split_cu_flag、mtt_split_cu_vertical_flag、mtt_split_cu_binary_flagは符号化ノード毎に伝送される。
【0051】
(符号化ユニット)
図4は、処理対象の符号化ユニットを復号するために画像復号装置31が参照するデータの集合が規定されている。具体的には、CUは、CUヘッダCUH、予測パラメータ、変換パラメータ、量子化変換係数等から構成される。CUヘッダでは予測モード等が規定される。
【0052】
予測処理は、CU単位で行われる場合と、CUをさらに分割したサブCU単位で行われる場合がある。CUとサブCUのサイズが等しい場合には、CU中のサブCUは1つである。CUがサブCUのサイズよりも大きい場合、CUはサブCUに分割される。たとえばCUが8x8、サブCUが4x4の場合、CUは水平2分割、垂直2分割からなる、4つのサブCUに分割される。
【0053】
予測の種類(予測モード)は、イントラ予測と、インター予測の2つがある。イントラ予測は、同一ピクチャ内の予測であり、インター予測は、互いに異なるピクチャ間(例えば、表示時刻間、レイヤ画像間)で行われる予測処理を指す。
【0054】
変換・量子化処理はCU単位で行われるが、量子化変換係数は4x4等のサブブロック単位でエントロピー符号化してもよい。
【0055】
(予測パラメータ)
予測画像は、ブロックに付随する予測パラメータによって導出される。予測パラメータには、イントラ予測とインター予測の予測パラメータがある。
【0056】
以下、インター予測の予測パラメータについて説明する。インター予測パラメータは、予測リスト利用フラグpredFlagL0とpredFlagL1、参照ピクチャインデックスrefIdxL0とrefIdxL1、動きベクトルmvL0とmvL1から構成される。predFlagL0、predFlagL1は、参照ピクチャリスト(L0リスト、L1リスト)が用いられるか否かを示すフラグであり、値が1の場合に対応する参照ピクチャリストが用いられる。なお、本明細書中「XXであるか否かを示すフラグ」と記す場合、フラグが0以外(たとえば1)をXXである場合、0をXXではない場合とし、論理否定、論理積などでは1を真、0を偽と扱う(以下同様)。但し、実際の装置や方法では真値、偽値として他の値を用いることもできる。
【0057】
インター予測パラメータを導出するためのシンタックス要素には、例えば、マージモードで用いるアフィンフラグaffine_flag、マージフラグmerge_flag、マージインデックスmerge_idx、MMVDフラグmmvd_flag、AMVPモードで用いる参照ピクチャを選択するためのインター予測識別子inter_pred_idc、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、動きベクトルを導出するための予測ベクトルインデックスmvp_LX_idx、差分ベクトルmvdLX、動きベクトル精度モードamvr_modeがある。
【0058】
(参照ピクチャリスト)
参照ピクチャリストは、参照ピクチャメモリ306に記憶された参照ピクチャからなるリストである。
図6は、参照ピクチャおよび参照ピクチャリストの一例を示す概念図である。
図6の参照ピクチャの一例を示す概念図において、矩形はピクチャ、矢印はピクチャの参照関係、横軸は時間、矩形中のI、P、Bは各々イントラピクチャ、単予測ピクチャ、双予測ピクチャ、矩形中の数字は復号順を示す。図に示すように、ピクチャの復号順は、I0、P1、B2、B3、B4であり、表示順は、I0、B3、B2、B4、P1である。
【0059】
(マージ予測とAMVP予測)
予測パラメータの復号(符号化)方法には、マージ予測(merge)モードとAMVP(Advanced Motion Vector Prediction、適応動きベクトル予測)モードがあり、merge_flagは、これらを識別するためのフラグである。マージ予測モードは、予測リスト利用フラグpredFlagLX、参照ピクチャインデックスrefIdxLX、動きベクトルmvLXを符号化データに含めずに、既に処理した近傍ブロックの予測パラメータ等から導出するモードである。AMVPモードは、inter_pred_idc、refIdxLX、mvLXを符号化データに含めるモードである。なお、mvLXは、予測ベクトルmvpLXを識別するmvp_LX_idxと差分ベクトルmvdLXとして符号化される。また、マージ予測モードの他に、アフィン予測モード、MMVD予測モードがあってもよい。
【0060】
inter_pred_idcは、参照ピクチャの種類および数を示す値であり、PRED_L0、PRED_L1、PRED_BIの何れかの値をとる。PRED_L0、PRED_L1は、各々L0リスト、L1リストで管理された1枚の参照ピクチャを用いる単予測を示す。PRED_BIはL0リストとL1リストで管理された2枚の参照ピクチャを用いる双予測を示す。
【0061】
merge_idxは、処理が完了したブロックから導出される予測パラメータ候補(マージ候補)のうち、いずれの予測パラメータを対象ブロックの予測パラメータとして用いるかを示すインデックスである。
【0062】
(動きベクトル)
mvLXは、異なる2つのピクチャ上のブロック間のシフト量を示す。mvLXに関する予測ベクトル、差分ベクトルを、それぞれmvpLX、mvdLXと呼ぶ。
【0063】
(インター予測識別子inter_pred_idcと予測リスト利用フラグpredFlagLX)
inter_pred_idcと、predFlagL0、predFlagL1の関係は以下のとおりであり、相互に変換可能である。
【0064】
inter_pred_idc=(predFlagL1<<1)+predFlagL0
predFlagL0=inter_pred_idc&1
predFlagL1=inter_pred_idc>>1
(画像復号装置の構成)
本実施形態に係る画像復号装置31(
図7)の構成について説明する。
【0065】
画像復号装置31は、エントロピー復号部301、パラメータ復号部(予測画像復号装置)302、ループフィルタ305、参照ピクチャメモリ306、予測パラメータメモリ307、予測画像生成部(予測画像生成装置)308、逆量子化・逆変換部311、及び加算部312、予測パラメータ導出部320を含んで構成される。なお、後述の画像符号化装置11に合わせ、画像復号装置31にループフィルタ305が含まれない構成もある。
【0066】
パラメータ復号部302は、さらに、ヘッダ復号部3020、CT情報復号部3021、及びCU復号部3022(予測モード復号部)を備えており、CU復号部3022はさらにTU復号部3024を備えている。これらを総称して復号モジュールと呼んでもよい。ヘッダ復号部3020は、符号化データからVPS、SPS、PPS、APSなどのパラメータセット情報、ピクチャヘッダ、スライスヘッダ(スライス情報)を復号する。CT情報復号部3021は、符号化データからCTを復号する。CU復号部3022は符号化データからCUを復号する。TU復号部3024は、TUに予測誤差が含まれている場合に、符号化データからQP更新情報(量子化補正値)と量子化予測誤差(residual_coding)を復号する。
【0067】
TU復号部3024は、スキップモード以外(skip_mode==0)の場合に、符号化データからQP更新情報と量子化予測誤差を復号する。より具体的には、TU復号部3024は、skip_mode==0の場合に、対象ブロックに量子化予測誤差が含まれているか否かを示すフラグcu_cbpを復号し、cu_cbpが1の場合に量子化予測誤差を復号する。cu_cbpが符号化データに存在しない場合は0と導出する。
【0068】
予測画像生成部308は、インター予測画像生成部309及びイントラ予測画像生成部310を含んで構成される。
【0069】
予測パラメータ導出部320は、インター予測パラメータ導出部303及びイントラ予測パラメータ導出部304を含んで構成される。
【0070】
また、以降では処理の単位としてCTU、CUを使用した例を記載するが、この例に限らず、サブCU単位で処理をしてもよい。あるいはCTU、CUをブロック、サブCUをサブブロックと読み替え、ブロックあるいはサブブロック単位の処理としてもよい。
【0071】
エントロピー復号部301は、外部から入力された符号化データTeに対してエントロピー復号を行って、個々の符号(シンタックス要素)を復号する。
【0072】
エントロピー復号部301は、復号した符号をパラメータ復号部302に出力する。復号した符号とは、例えば、予測モードpredMode、merge_flag、merge_idx、inter_pred_idc、refIdxLX、mvp_LX_idx、mvdLX、amvr_mode等である。どの符号を復号するかの制御は、パラメータ復号部302の指示に基づいて行われる。
【0073】
(基本フロー)
図8は、画像復号装置31の概略的動作を説明するフローチャートである。
【0074】
(S1100:パラメータセット情報復号)ヘッダ復号部3020は、符号化データからVPS、SPS、PPSなどのパラメータセット情報を復号する。
【0075】
(S1200:スライス情報復号)ヘッダ復号部3020は、符号化データからスライスヘッダ(スライス情報)を復号する。
【0076】
以下、画像復号装置31は、対象ピクチャに含まれる各CTUについて、S1300からS5000の処理を繰り返すことにより各CTUの復号画像を導出する。
【0077】
(S1300:CTU情報復号)CT情報復号部3021は、符号化データからCTUを復号する。
【0078】
(S1400:CT情報復号)CT情報復号部3021は、符号化データからCTを復号する。
【0079】
(S1500:CU復号)CU復号部3022はS1510、S1520を実施して、符号化データからCUを復号する。
【0080】
(S1510:CU情報復号)CU復号部3022は、符号化データからCU情報、予測情報、CU残差フラグtu_cb_coded_flag、tu_cr_coded_flag、tu_y_coded_flag等を復号する。
【0081】
(S1520:TU情報復号)TU復号部3024は、TUに予測誤差が含まれている場合に、符号化データからQP更新情報と量子化予測誤差、変換インデックスmts_idxを復号する。なお、QP更新情報は、量子化パラメータQPの予測値である量子化パラメータ予測値qPpredからの差分値である。
【0082】
(S2000:予測画像生成)予測画像生成部308は、対象CUに含まれる各ブロックについて、予測情報に基づいて予測画像を生成する。
【0083】
(S3000:逆量子化・逆変換)逆量子化・逆変換部311は、対象CUに含まれる各TUについて、逆量子化・逆変換処理を実行する。
【0084】
(S4000:復号画像生成)加算部312は、予測画像生成部308より供給される予測画像と、逆量子化・逆変換部311より供給される予測誤差とを加算することによって、対象CUの復号画像を生成する。
【0085】
(S5000:ループフィルタ)ループフィルタ305は、復号画像にデブロッキングフィルタ、SAO、ALFなどのループフィルタをかけ、復号画像を生成する。
【0086】
(インター予測パラメータ導出部の構成)
図9には、本実施形態に係るインター予測パラメータ導出部303の構成を示す概略図が示されている。インター予測パラメータ導出部303は、パラメータ復号部302から入力されたシンタックス要素に基づいて、予測パラメータメモリ307に記憶された予測パラメータを参照してインター予測パラメータを導出する。また、インター予測パラメータをインター予測画像生成部309、予測パラメータメモリ307に出力する。インター予測パラメータ導出部303及びその内部の要素であるAMVP予測パラメータ導出部3032、マージ予測パラメータ導出部3036、アフィン予測部30372、MMVD予測部30373、GPM部30377、DMVR部30537、MV加算部3038は、画像符号化装置、画像復号装置で共通する手段であるので、これらを総称して動きベクトル導出部(動きベクトル導出装置)と称してもよい。
【0087】
affine_flagが1、すなわち、アフィン予測モードを示す場合、アフィン予測部30372は、サブブロック単位のインター予測パラメータを導出する。
【0088】
mmvd_flagが1、すなわち、MMVD予測モードを示す場合、MMVD予測部30373は、マージ予測パラメータ導出部3036で導出されるマージ候補と差分ベクトルからインター予測パラメータを導出する。
【0089】
gpm_flagが1、すなわち、Geometric Partitioning Modeを示す場合、GPM部30377はGPMパラメータを導出する。
【0090】
merge_flagが1、すなわち、マージ予測モードを示す場合、merge_idxを導出し、マージ予測パラメータ導出部3036に出力する。
【0091】
merge_flagが0、すなわち、AMVP予測モードを示す場合、AMVP予測パラメータ導出部3032はinter_pred_idc、refIdxLXかmvp_LX_idxからmvpLXを導出する。
【0092】
(MV加算部)
MV加算部3038では導出されたmvpLXとmvdLXを加算し、mvLXを導出する。
【0093】
(アフィン予測部)
アフィン予測部30372は、1)対象ブロックの2つの制御点CP0、CP1、もしくは3つの制御点CP0,CP1,CP2の動きベクトルを導出し、2)対象ブロックのアフィン予測パラメータを導出し、3)アフィン予測パラメータから各サブブロックの動きベクトルを導出する。
【0094】
(マージ予測)
マージ予測パラメータ導出部3036は、対象ブロックの空間近傍ブロックあるいは時間近傍ブロックの予測パラメータ(mvLX、refIdxLX等)を用いて、対象ブロックの予測パラメータを導出する。
【0095】
(DMVR)
続いて、DMVR部30375はDMVR(Decoder side Motion Vector Refinement)処理を行う。DMVR部30375は、対象CUに対して、merge_flagが1、又は、スキップフラグskip_flagが1の場合、当該対象CUの動きベクトルmvLXを修正する。具体的には、マージ予測部30374が導出する予測パラメータが双予測である場合、2つの参照ピクチャと動きベクトルから導出される予測画像を用いてmvLXを修正する。修正後のmvLXはインター予測画像生成部309に供給される。
【0096】
(AMVP予測)
AMVP予測パラメータ導出部3032は、予測ベクトル候補のうち、mvp_LX_idxが示す動きベクトルmvpListLX[mvp_LX_idx]をmvpLXとして選択し、MV加算部3038に出力する。
【0097】
(MV加算部)
MV加算部3038は、AMVP予測パラメータ導出部3032から入力されたmvpLXと復号したmvdLXを加算してmvLXを算出する。加算部3038は、算出したmvLXをインター予測画像生成部309および予測パラメータメモリ307に出力する。
【0098】
mvLX[0]=mvpLX[0]+mvdLX[0]
mvLX[1]=mvpLX[1]+mvdLX[1]
ループフィルタ305は、符号化ループ内に設けたフィルタで、ブロック歪やリンギング歪を除去し、画質を改善するフィルタである。ループフィルタ305は、加算部312が生成したCUの復号画像に対し、デブロッキングフィルタ、サンプル適応オフセット(SAO)、適応ループフィルタ(ALF)、クロスコンポーネントALF(ccALF)、ニューラルネットワークフィルタ(NN)、クロスコンポーネントニューラルネットワークフィルタ(ccNN)等のフィルタを施す。
【0099】
SAO部は、DF後の画像に対して、SAOのクラスに応じてオフセットを加算する。SAOのクラス分類には、バンドオフセット(Band offset)とエッジオフセット(Edge Offset)がある。バンドオフセットは画素値を32個のバンドに分割する。エッジオフセットは、上下・左右・斜めの4方向のいずれかに対して各方向の隣接2画素間の画素値変化の内分点の値から対象画素を分類する。。バンドオフセットは、連続する4個のバンドに属する画素値をもつ画素に対して、バンドごとに設定したオフセット値を加算する。エッジオフセットでも、対象画素値にクラスごとのオフセットを加算し、処理後の画像を出力する。
【0100】
ALF部312は、DF後あるいはSAO処理後の画像を4x4の小領域に分割する。輝度画像(Y画像)は小領域単位で、方向性(例えば5方向クラス)及びアクティビティ(例えば5段階)に基づいて複数のクラス(例えば25)に分類する。そして、分類に基づくフィルタを用いてフィルタ処理を行い処理後の画像を出力する。また、Y画像には7x7のダイヤモンド型のフィルタを適用し、色差画像(Cb,Cr画像)には5x5のダイヤモンド型のフィルタを適用してもよい。ALFのフィルタ係数は、動画像復号装置、動画像符号化装置があらかじめ備える固定フィルタのほか、符号化データから復号されるフィルタ係数を用いてもよい。
【0101】
ccALF部313はDF後あるいはSAO処理後のY画像に対して、Cb,Crの画素位置と、同位置に対応するY画像の周辺画素(例えば8画素)に対するフィルタ処理結果をCb,Crの画素値にそれぞれ加算する。ccALFのフィルタ係数も符号化データで復号、符号化される。
【0102】
参照ピクチャメモリ306は、CUの復号画像を、対象ピクチャ及び対象CU毎に予め定めた位置に記憶する。
【0103】
予測パラメータメモリ307は、CTUあるいはCU毎に予め定めた位置に予測パラメータを記憶する。具体的には、予測パラメータメモリ307は、パラメータ復号部302が復号したパラ
メータ及び予測パラメータ導出部320が導出したパラメータ等を記憶する。
【0104】
予測画像生成部308には予測パラメータ導出部320が導出したパラメータが入力される。また、予測画像生成部308は、参照ピクチャメモリ306から参照ピクチャを読み出す。予測画像生成部308は、predModeが示す予測モードで、パラメータと参照ピクチャ(参照ピクチャブロック)を用いてブロックもしくはサブブロックの予測画像を生成する。ここで、参照ピクチャブロックとは、参照ピクチャ上の画素の集合(通常矩形であるのでブロックと呼ぶ)であり、予測画像を生成するために参照する領域である。
【0105】
(インター予測画像生成部309)
predModeがインター予測モードを示す場合、インター予測画像生成部309は、インター予測パラメータ導出部303から入力されたインター予測パラメータと参照ピクチャを用いてインター予測によりブロックもしくはサブブロックの予測画像を生成する。
【0106】
図10は、本実施形態に係る予測画像生成部308に含まれるインター予測画像生成部309の構成を示す概略図である。インター予測画像生成部309は、動き補償部(予測画像生成装置)3091、合成部3095を含んで構成される。合成部3095は、IntraInter合成部30951、GPM合成部30952、BDOF部30954、重み予測部3094を含んで構成される。
【0107】
(動き補償)
動き補償部3091(補間画像生成部3091)は、インター予測パラメータ導出部303から入力された、インター予測パラメータ(predFlagLX、refIdxLX、mvLX)に基づいて、参照ピクチャメモリ306から参照ブロックを読み出すことによって補間画像(動き補償画像)を生成する。参照ブロックは、refIdxLXで指定された参照ピクチャRefPicLX上で、対象ブロックの位置からmvLXシフトした位置のブロックである。ここで、mvLXが整数精度でない場合には、動き補償フィルタと呼ばれる小数位置の画素を生成するためのフィルタを施して、補間画像を生成する。
【0108】
なお、動き補償部3091は、スケールパラメータ導出部30378で導出された参照ピクチャの水平方向のスケーリング比RefPicScale[i][j][0]、および、参照ピクチャの垂直方向のスケーリング比RefPicScale[i][j][1]に応じて、補間画像をスケーリングする機能を有している。
【0109】
合成部3095は、IntraInter合成部30951、GPM合成部30952、重み予測部3094、BDOF部30954を備えている。
【0110】
(IntraInter合成処理)
IntraInter合成部30951は、インター予測画像とイントラ予測画像の重み付け和により予測画像を生成する。
【0111】
(GPM合成処理)
GPM合成部30952は、上述したGPMを用いた予測画像を生成する。
【0112】
(BDOF予測)
BDOF部30954は、双予測モードにおいて、2つの予測画像(第1の予測画像及び第2の予測画像)及び勾配補正項を参照して予測画像を生成する。
【0113】
(重み予測)
重み予測部3094は、補間画像PredLXから重み予測を行いブロックの予測画像pbSamplesを生成する。
【0114】
イントラ予測画像生成部310は、predModeがイントラ予測モードを示す場合、イントラ予測パラメータ導出部304から入力されたイントラ予測パラメータと参照ピクチャメモリ306から読み出した参照画素を用いてイントラ予測を行う。
【0115】
逆量子化・逆変換部311は、パラメータ復号部302から入力された量子化変換係数を逆量子化して変換係数を求める。
【0116】
加算部312は、予測画像生成部308から入力されたブロックの予測画像と逆量子化・逆変換部311から入力された予測誤差を画素毎に加算して、ブロックの復号画像を生成する。加算部312はブロックの復号画像を参照ピクチャメモリ306に記憶し、また、ループフィルタ305に出力する。
【0117】
逆量子化・逆変換部311は、パラメータ復号部302から入力された量子化変換係数を逆量子化して変換係数を求める。
【0118】
加算部312は、予測画像生成部308から入力されたブロックの予測画像と逆量子化・逆変換部311から入力された予測誤差を画素毎に加算して、ブロックの復号画像を生成する。加算部312はブロックの復号画像を参照ピクチャメモリ306に記憶し、また、ループフィルタ305に出力する。
【0119】
(画像符号化装置の構成)
次に、本実施形態に係る画像符号化装置11の構成について説明する。
図11は、本実施形態に係る画像符号化装置11の構成を示すブロック図である。画像符号化装置11は、予測画像生成部101、減算部102、変換・量子化部103、逆量子化・逆変換部105、加算部106、ループフィルタ107、予測パラメータメモリ(予測パラメータ記憶部、フレームメモリ)108、参照ピクチャメモリ(参照画像記憶部、フレームメモリ)109、符号化パラメータ決定部110、パラメータ符号化部111、予測パラメータ導出部120、エントロピー符号化部104を含んで構成される。
【0120】
予測画像生成部101はCU毎に予測画像を生成する。予測画像生成部101は既に説明したインター予測画像生成部309とイントラ予測画像生成部310を含んでおり、説明を省略する。
【0121】
減算部102は、予測画像生成部101から入力されたブロックの予測画像の画素値を、画像Tの画素値から減算して予測誤差を生成する。減算部102は予測誤差を変換・量子化部103に出力する。
【0122】
変換・量子化部103は、減算部102から入力された予測誤差に対し、周波数変換によって変換係数を算出し、量子化によって量子化変換係数を導出する。変換・量子化部103は、量子化変換係数をパラメータ符号化部111及び逆量子化・逆変換部105に出力する。
【0123】
逆量子化・逆変換部105は、画像復号装置31における逆量子化・逆変換部311(
図7)と同じであり、説明を省略する。算出した予測誤差は加算部106に出力される。
【0124】
パラメータ符号化部111は、ヘッダ符号化部1110、CT情報符号化部1111、CU符号化部1112(予測モード符号化部)を備えている。CU符号化部1112はさらにTU符号化部1114を備えている。以下、各モジュールの概略動作を説明する。
【0125】
ヘッダ符号化部1110はフィルタ情報、ヘッダ情報、分割情報、予測情報、量子化変換係数等のパラメータの符号化処理を行う。
【0126】
CT情報符号化部1111は、QT、MT(BT、TT)分割情報等を符号化する。
【0127】
CU符号化部1112はCU情報、予測情報、分割情報等を符号化する。
【0128】
TU符号化部1114は、TUに予測誤差が含まれている場合に、QP更新情報と量子化予測誤差を符号化する。
【0129】
CT情報符号化部1111、CU符号化部1112は、インター予測パラメータ(predMode、merge_flag、merge_idx、inter_pred_idc、refIdxLX、mvp_LX_idx、mvdLX)、イントラ予測パラメータ(intra_luma_mpm_flag、intra_luma_mpm_idx、intra_luma_mpm_reminder、intra_chroma_pred_mode)、量子化変換係数等のシンタックス要素をパラメータ符号化部111に供給する。
【0130】
エントロピー符号化部104には、パラメータ符号化部111から量子化変換係数と符号化パラメータ(分割情報、予測パラメータ)が入力される。エントロピー符号化部104はこれらをエントロピー符号化して符号化データTeを生成し、出力する。
【0131】
予測パラメータ導出部120は、インター予測パラメータ符号化部112、イントラ予測パラメータ符号化部113を含む手段であり、符号化パラメータ決定部110から入力されたパラメータからイントラ予測パラメータ及びイントラ予測パラメータを導出する。
【0132】
加算部106は、予測画像生成部101から入力された予測ブロックの画素値と逆量子化・逆変換部105から入力された予測誤差を画素毎に加算して復号画像を生成する。加算部106は生成した復号画像を参照ピクチャメモリ109に記憶する。
【0133】
ループフィルタ107は加算部106が生成した復号画像に対し、デブロッキングフィルタ、SAO、ALFを施す。なお、ループフィルタ107は、必ずしも上記3種類のフィルタを含まなくてもよく、例えばデブロッキングフィルタのみの構成であってもよい。
【0134】
予測パラメータメモリ108は、符号化パラメータ決定部110が生成した予測パラメータを、対象ピクチャ及びCU毎に予め定めた位置に記憶する。
【0135】
参照ピクチャメモリ109は、ループフィルタ107が生成した復号画像を対象ピクチャ及びCU毎に予め定めた位置に記憶する。
【0136】
符号化パラメータ決定部110は、符号化パラメータの複数のセットのうち、1つのセットを選択する。符号化パラメータとは、上述したQT、BTあるいはTT分割情報、予測パラメータ、あるいはこれらに関連して生成される符号化の対象となるパラメータである。予測画像生成部101は、これらの符号化パラメータを用いて予測画像を生成する。
【0137】
符号化パラメータ決定部110は、複数のセットの各々について情報量の大きさと符号化誤差を示すRDコスト値を算出する。RDコスト値は、例えば、符号量と二乗誤差に係数λを乗じた値との和である。符号量は、量子化誤差と符号化パラメータをエントロピー符号化して得られる符号化データTeの情報量である。二乗誤差は、減算部102において算出された予測誤差の二乗和である。係数λは、予め設定されたゼロよりも大きい実数である。符号化パラメータ決定部110は、算出したコスト値が最小となる符号化パラメータのセットを選択する。符号化パラメータ決定部110は決定した符号化パラメータをパラメータ符号化部111と予測パラメータ導出部120に出力する。
【0138】
なお、上述した実施形態における画像符号化装置11、画像復号装置31の一部、例えば、エントロピー復号部301、パラメータ復号部302、ループフィルタ305、予測画像生成部308、逆量子化・逆変換部311、加算部312、予測パラメータ導出部320、予測画像生成部101、減算部102、変換・量子化部103、エントロピー符号化部104、逆量子化・逆変換部105、ループフィルタ107、符号化パラメータ決定部110、パラメータ符号化部111、予測パラメータ導出部120をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、画像符号化装置11、画像復号装置31のいずれかに内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0139】
また、上述した実施形態における画像符号化装置11、画像復号装置31の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。画像符号化装置11、画像復号装置31の各機能ブロックは個別にプロセッサ化しても良いし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0140】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
(ALF部312)
ALF部312は、再構成輝度画像recPictureL、再構成色差画像recPictureCbおよびrecPictureCrを入力にとり、処理後の再構成ピクチャサンプル配列alfPictureL、AlfPictureCbおよびAlfPictureCrを出力する。なお、以下、画像のことをサンプル配列、1画素の画像をサンプルとも呼ぶ。
【0141】
alfPictureL内の各値と、alfPictureCbとalfPictureCr内の各値は、それぞれrecPictureLの値と、recPictureCbとrecPictureCrの値で初期化される。以下、alf_ctb_flag[cIdx][rx][ry]は(rx,ry)で左上座標が示される対象領域(例えばCTU)のcIdxで示す色コンポーネントの画像に対して、ALFを適用するか否かを示すフラグである。
【0142】
ALF部312は、以下の処理を行う。
【0143】
・各CTUの位置(rx,ry)、rx=0..PicWidthInCtbsY-1,ry=0..PicHeightInCtbsY-1に対し以下を行う。ここで、PicWidthInCtbsY、PicHeightInCtbsYは、それぞれピクチャ内のCTBの縦方向、横方向の個数である。
【0144】
・alf_ctb_flag[0][rx][ry]が1であるとき、recPictureL,alfPictureL,及び輝度コン
ポーネントのctb位置(xCtb,yCtb)を用いて輝度サンプルにおけるCTBのフィルタ処理を行い、alfPictureLを出力する。
【0145】
ここで、xCtbはrx<<CtbLog2SizeY、yCtbはry<<CtbLog2SizeYである。
【0146】
・sps_chroma_format_idcが0でなく、かつ、alf_ctb_flag[1][rx][ry]が1である場合、recPicture,alfPicture,色差のCTB位置(xCtbC,yCtbC),及び代替色差フィルタインデックスalf_ctb_filter_alt_idx[1][rx][ry]を用いて色差サンプルにおけるCTBのフィルタ処理を行い、alfPictureCbを出力する。
【0147】
ここで、recPictureには、recPictureCbを、alfPictureには、alfPictureCbを設定しする。また、xCtbCは(rx<<CtbLog2SizeY)/SubWidthC、yCtbCは(ry<<CtbLog2SizeY)/SubHeightC
・sps_chroma_format_idcが0でなく、かつ、alf_ctb_flag[2][rx][ry]が1である場合、recPicture,alfPicture,色差のCTB位置(xCtbC,yCtbC),及びフィルタインデックスalf_ctb_filter_alt_idx[2][rx][ry]を用いて色差サンプルにおけるCTBのフィルタ処理を行い、alfPictureCrを出力する。
【0148】
ここで、recPictureにrecPictureCrを、alfPictureには、alfPictureCrを設定する。
【0149】
・sps_chroma_format_idcが0でない場合、ccAlfPictureCbとccAlfPictureCrはそれぞれalfPictureCbとalfPictureCrに設定される。
【0150】
・各輝度コンポーネントのCTB位置(rx,ry)において、以下の処理を行う。ここで、rx=0..PicWidthInCtbsY-1,ry=0..PicHeightInCtbsY-1である。
【0151】
・sps_chroma_format_idcが0でなく、かつ、alf_ctb_cc_cb_idc[rx][ry]も0でない場合、ccALF部313によって、Y画像に対して、Cb,Crの画素位置と、同位置に対応するY画像の周辺画素(例えば8画素)に対するフィルタ処理を行い、ccAlfPictureCbを出力する。
【0152】
・sps_chroma_format_idcが0でなく、かつ、alf_ctb_cc_cr_idc[rx][ry]も0でない場合、ccALF部313によって上記処理を行い、ccAlfPictureCrを出力する。
【0153】
(ccALF部313)
ccALF部313は、ALF処理前の再構成輝度画像recPictureL、ALF後の再構成色差画像alfPictureC、現在のピクチャの左上サンプル位置に対応する色差のCTBの左上の位置(xCtbC,yCtbC)、色差サンプル内のCTBの幅ccAlfWidth、色差サンプル内のCTBの高さccAlfHeight、ccAFフィルタ係数CcAlfCoeff[j](j=0..6)を入力にとり、処理後の再構成色差画像ccalfPictureCを出力する。
フィルタ後のccAlfPicture[xCtbC+x][yCtbC+y]の導出において、alfPictureC[xCtbC+x][yCtbC+y]のそれぞれの現在の色差ブロック内の再構成色差サンプルは以下のように導出する。
ここでx=0..ccAlfWidth-1,y=0..ccAlfHeight-1である。
【0154】
・現在の色差位置(xCtbC+x,yCtbC+y)に対応する輝度位置(xL,yL)は以下の様に求められる。
【0155】
xL=(xCtbC+x)*SubWidthC
yL=(yCtbC+y)*SubHeightC
・clipLeftPos,clipRightPos,clipTopPos,clipBottomPos,clipTopLeftFlag及びclipBot
RightFlagは、(xCtbC*SubWidthC,yCtbC*SubHeightC),(x*SubWidthC,y*SubHeightC)及びvbOffsetを入力としてALF境界導出プロセスを呼び出すことによって導出する。ここでvbOffsetには4を代入する。clipLeftPos、clipRightPos、clipTopPos、clipBottomPosはそれぞれ左側、右側、上側、下側のALFの参照領域の境界線の位置である。ALFの参照領域の境界線は、virtual boundayの境界をシグナリングする場合、virtual boundaryである。そうでない場合、現在のコーディングツリーブロックの各境界がタイル、スライス、或いはサブピクチャの境界であり、また、タイル、スライス、或いはサブピクチャの境界を越えたインループフィルタリング操作が無効であるならば、ALFの参照領域の境界線はCTB境界である。上記virtual boundaryは、あるCTUに対して、輝度コンポーネントの場合、下のCTUの最上列から4画素上の列、色差コンポーネントの場合、下のCTUの最上列から2画素上の列である。
clipTopLeftFlagは2値のフラグで、輝度位置(xCtb,yCtb)を含むCTBと、輝度位置(xCtb-CtbSizeY,yCtb-CtbSizeY)をカバーするCTBが異なる場合は1を、そうでない場合は0を設定する。clipBotRightFlagは2値のフラグで、輝度位置(xCtb,yCtb)を含むCTBと、輝度位置(xCtb+CtbSizeY,yCtb+CtbSizeY)をカバーするCTBが異なる場合は1を、そうでない場合は0を設定する。ここで、CtbSizeYは、輝度のCTBのサイズである。
【0156】
・recPictureL内の輝度位置(h_{x+i,y+j},v_{y+j})(i=-1..1,j=-1..2)は以下のように導出する。
【0157】
h_{x+i,y+j}=Clip3(0,pps_pic_width_in_luma_samples-1,xL+i)
v_{y+j}=Clip3(0,pps_pic_height_in_luma_samples-1,yL+j)
(h_{x+i,y+j},v_{y+j})は(xCtbC*SubWidthC,yCtbC*SubHeightC),(hx+i,y+j,vy+j),isChroma,clipLeftPos,clipRightPos,clipTopPos,clipBottomPos,clipTopLeftFlag及びclipBotRightFlagを用いてALFサンプルパディング処理を行うことによって更新される。ここでisChromaは処理を行うコンポーネントが色差コンポーネントかどうかを示すフラグであり、ここでは0とする。
【0158】
・applyAlfLineBufBoundaryは垂直方向のサンプル位置オフセットを決定する変数であり、以下のように導出する。
【0159】
・現在のCTBの下部境界が、現在のピクチャの下部境界であり、かつ、pps_pic_height_in_luma_samples-yCtbC*SubHeightC<=-4の場合
applyAlfLineBufBoundary=0
・それ以外の場合
applyAlfLineBufBoundary=1
・垂直方向のサンプル位置オフセットyP1,yP2は垂直方向輝度サンプル位置 (y*subHeightC),applyAlfLineBufBoundaryによって以下のように導出する。
【0160】
・(y*subHeightC==CtbSizeY-5 || y*subHeightC==CtbSizeY-4) && applyAlfLineBufBoundary==1の場合
yP1=0
yP2=0
・(y*subHeightC==CtbSizeY-6 || y*subHeightC==CtbSizeY-3) && applyAlfLineBufBoundary==1
yP1=1
yP2=1
・それ以外の場合
yP1=1
yP2=2
・対象画素の画素値currは以下のように導出する。
【0161】
curr=alfPictureC[xCtbC+x][yCtbC+y]
・cross-componentフィルタ係数の配列f[j](j=0..6)は以下のように導出する。
【0162】
f[j]=CcAlfCoeff[j]
・sumは以下のように導出する。
【0163】
sum =
f[0]*(recPictureL[h_{x,y-yP1}][v_{y-yP1}]-recPictureL[h_{x,y}][v_{y}])+
f[1]*(recPictureL[h_{x-1,y}][v_{y}]-recPictureL[h_{x,y}][v_{y}])+
f[2]*(recPictureL[h_{x+1,y}][v_{y}]-recPictureL[h_{x,y}][v_{y}])+
f[3]*(recPictureL[h_{x-1,y+yP1}][v_{y+yP1}]-recPictureL[h_{x,y}][v_{y}])+
f[4]*(recPictureL[h_{x,y+yP1}][v_{y+yP1}]-recPictureL[h_{x,y}][v_{y}])+
f[5]*(recPictureL[h_{x+1,y+yP1}][v_{y+yP1}]-recPictureL[h_{x,y}][v_{y}])+
f[6]*(recPictureL[h_{x,y+yP2}][v_{y+yP2}]-recPictureL[h_{x,y}][v_{y}])
scaledSum = Clip3(-(1<<(BitDepth-1)),(1<<(BitDepth-1))-1,(sum+64)>>7)
sum = (SubHeightC==1 && (y==CtbSizeY-3 || y==CtbSizeY-4)) ? curr : curr+scaledSum
・ccAlfPicture[xCtbC+x][yCtbC+y]は以下のよう導出する。
【0164】
ccAlfPicture[xCtbC+x][yCtbC+y] = Clip3(0,(1<<BitDepth)-1,sum)
(bS導出部331)
bS導出部331は、エッジ度edgeIdcとデブロッキングフィルタの最大フィルタ長maxFilterLengthを導出する。edgeIdcはNNフィルタ処理前(NNフィルタ部601の処理前)の入力画像resPictureに、パーティション分割境界、予測ブロックの境界、変換ブロックの境界があるかを示す。さらに、edgeIdcと変換ブロックの境界、符号化パラメータから、デブロッキングフィルタの強度bSを導出する。符号化パラメータは、例えば予測モードCuPredMode、BDPCM予測モードintra_bdpcm_luma_flag、IBC予測モードであるかを示すフラグ、動きベクトル、参照ピクチャ、変換ブロックに非0係数が存在するかを示すフラグtu_y_coded_flag、tu_u_coded_flagなどである。edgeIdcとbSは0,1,2の値をとってもよいし、それ以外の値でもよい。具体的には、bS導出部331は、(xCb,yCb)、対象ブロックの幅nCbWと高さcCbH、edgeType、対象ブロックのカラーコンポーネントcIdx、大きさnCbWxnCbHの二次元配列edgeIdcを入力し、大きさnCbWxnCbHの二次元配列bSを出力する。(xCb,yCb)は対象画像の左上座標を基準にした座標である。edgeTypeは、垂直エッジ(EDGE_VER)或いは水平エッジ(EDGE_HOR)のいずれのフィルタを指定するかを示す変数である。
【0165】
bS導出部331は、変換ブロックサイズに応じてデブロッキングフィルタの最大フィルタ長maxFilterLengthを導出する。edgeType==EDGE_VERの場合、変換ブロックの幅が4以下の場合にはmaxFilterLengthP=1、変換ブロックの幅が32以上の場合にはmaxFilterLengthP=7、それ以外の場合はmaxFilterLengthP=3に設定する。edgeType==EDGE_HORは上記幅を高さに置き換えて同じ処理を行う。
【0166】
bS導出部331は、edgeTypeを参照して以下の処理を行う。gridSize、scaleWidth、及び、scaleHeightを以下のように求める。
【0167】
gridSize = cIdx == 0 ? 4 : 8
scaleWidth = (cIdx==0) ? 1 : SubWidthC
scaleHeight = (cIdx==0) ? 1 : SubHeightC
また、xN、yN、xDi(i=0..xN)、yDj(j=0..yN)を、以下のように求める。
【0168】
edgeTypeがEDGE_VERの場合、
xN = Max(0,(nCbW/gridSize)-1)
yN = cIdx == 0 ? (nCbH/4)-1 : (nCbH/2)-1
xDi = (i*gridSize)
yDj = cIdx == 0 ? (j<<2) : (j<<1)
edgeTypeがEDGE_HORの場合、
xN = cIdx == 0 ? (nCbW/4)-1 : (nCbW/2)-1
yN = Max(0,(nCbH/gridSize)-1)
xDi = cIdx == 0 ? (i<<2) : (i<<1)
yDj = j*gridSize
i=0..xN,j=0..yNに対して、以下の処理を行う。
(CU/TU/PU境界ではない場合、VirtualBoundaryでループフィルタオフと指定された境界の場合、bS==0)
以下の条件のいずれかを満たす場合に、bS[xDi][yDj]=0
・edgeIdc[xDi][yDj]==0
・edgeType==EDGE_VER、かつ、VirtualBoundariesPresentFlag==1、かつ、(xCb+xDi)==VirtualBoundaryPosX[n]/scaleWidth
・edgeType==EDGE_HOR、かつ、VirtualBoundariesPresentFlag==1、かつ、(yCb+yDi)==VirtualBoundaryPosY[n]/scaleheight
上記のいずれの条件でもない場合、以下の処理を行う。境界を挟むブロックの2つの画素p0、q0を以下のように求める。
【0169】
edgeType==EDGE_VERの場合、
p0=recPicture[xCb+xDi-1][yCb+yDj]
q0=recPicture[xCb+xDi][yCb+yDj]
edgeType==EDGE_HORの場合、
p0=recPicture[xCb+xDi][yCb+yDj-1]
q0=recPicture[xCb+xDi][yCb+yDj]
bS[xDi][yDj]を以下のように求める。
・cIdx==0、かつ、p0、q0が含まれる符号化ブロックがともにintra_bdpcm_luma_flag==1の場合、或いは、cIdx>0、かつ、p0、q0が含まれる符号化ブロックが、ともにintra_bdpcm_chroma_flag==1の場合、bS[xDi][yDj]=0
・CuPredMode[cIdx==0?0:1][x0][y0]==MODE_INTRAの場合、或いは、CuPredMode[cIdx==0?0:1][x1][y1]==MODE_INTRAの場合、或いは、p0またはq0が符号化ブロックが、ともにciip_flag==1の場合、bS[xDi][yDj]=2
・ブロック境界が変換ブロック境界でもある場合、下記条件を満たせばbS[xDi][yDj]=1
・・cIdx==0、かつ、tu_y_coded_flag[x0][y0]+tu_y_coded_flag[x1][y1]>0
ここで、(x0,y0)、(x1,y1)は、各々サンプルp0、q0を含む輝度変換ブロックの左上のサンプルの輝度の位置である。
・・cIdx==1、かつ、tu_cb_coded_flag[x0][y0]+tu_joint_cbcr_residual_flag[x0][y0]+tu_cb_coded_flag[x1][y1]+tu_joint_cbcr_residual_flag[x1][y1]>0
ここで、(x0,y0)、(x1,y1)は、各々色差サンプルp0、q0を含むCb変換ブロックの左上のサンプルに対応する輝度の位置である。
・・cIdx==2、かつ、tu_cr_coded_flag[x0][y0]+tu_joint_cbcr_residual_flag[x0][y0]+tu_cr_coded_flag[x1][y1]+tu_joint_cbcr_residual_flag[x1][y1]>0
ここで、(x0,y0)、(x1,y1)は、各々色差サンプルp0、q0を含むCr変換ブロックの左上のサンプルに対応する輝度の位置である。
・cIdx==0、edgeIdc[xDi][yDj]==2の場合、以下の条件のいずれかを満たせば、bS[xDi][yDj]=1
・・サンプルp0を含む符号化ブロックの予測モードがサンプルq0を含む符号化ブロックの予測モードと異なる。
・・サンプルp0を含むサブブロックとサンプルq0を含むサブブロックが、ともにIBC予測モードで符号化されており、2つのサブブロックの予測に用いる動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値が、所定の閾値MVTH(例えばMVTH=1/16単位の輝度サンプルで8)以上
・・サンプルp0を含むサブブロックの予測に、サンプルq0を含むサブブロックの予測とは異なる参照画像または異なる数の動きベクトルを使用。左上サンプル(xSb,ySb)のサブブロックの予測に使用される動きベクトルの数は、PredFlagL0[xSb][ySb]+PredFlagL1[xSb][ySb]に等しい。(xS,yS)に位置するサンプルを含むサブブロックを予測するために使用される参照画像と動きベクトルは、RefPicList[X][RefIdxLX[xS][yS]]、および、MvLX[xS][yS]の値を参照する。
・・p0を含むサブブロックの予測に1つの動きベクトル、q0を含むサブブロックの予測に1つの動きベクトルを使い、動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値がMVTH以上
・・p0を含むサブブロックの予測に2つの動きベクトルと2つの参照画像、q0を含むサブブロックの予測に同じ2つの参照画像の2つの動きベクトルとを使い、同じ参照ピクチャの2つのサブブロックの予測に使用された2つの動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値がMVTH以上
・・p0を含むサブブロックの予測に同じ2つの参照画像の2つの動きベクトルを使い、q0を含むサブブロックの予測に同じ2つの参照画像の2つの動きベクトルを使い、更に以下の条件を満たす場合
・・・2つのサブブロックの予測に用いるリスト0の動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値がMVTH以上、或いは、2つのサブブロックの予測に用いるリスト1の動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値がMVTH以上
・・・p0を含むサブブロックの予測に用いるリスト0の動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値と、q0を含むサブブロックの予測に用いるリスト1の動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値がMVTH以上、或いは、p0を含むサブブロックの予測に用いるリスト1の動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値と、q0を含むサブブロックの予測に用いるリスト0の動きベクトルの水平成分または垂直成分の差の絶対値がMVTH以上それ以外の場合、bS[xDi][yDj]=0
bS導出部331は、さらにブロックエッジ判定部において、デブロッキングフィルタの切り替えに用いるエッジ判定パラメータdEを導出する。bS導出部331は、すでに導出されたbSの値と、スライスヘッダで伝送されるパラメータsh_luma_tc_offset_div2からQを導出する。sh_luma_tc_offset_div2は現在のスライスの輝度コンポーネントに適用されるtCのデブロッキングパラメータのオフセット(2で割った値)である。
Q=Clip3(0,65,qP+2*(bS-1)+(sh_luma_tc_offset_div2<<1))
図30は、量子化パラメータに基づく、パラメータbeta'とtC'の導出表である。
【0170】
bS導出部331は、Qと、Qからtcを導出する
図30のテーブルを用いてtc'を導出する。さらにBitDepthに応じてtc'をシフトし、tcを導出する。
【0171】
・BitDepthが10未満の場合
tC=(tC'+(1<<(9-BitDepth)))>>(10-BitDepth)
・それ以外の場合
tC=tC'*(1<<(BitDepth-10))
bS導出部331は下記を導出する。
dp0=abs(p[2,0]-2*p[1,0]+p[0,0])
dq0=abs(q[2,0]-2*q[1,0]+q[0,0])
dpq0=dp0+dq0
dp3=abs(p[2,3],0-2*p[1,3]+p[0,3])
dq3=abs(q[2,3]-2*q[1,3]+q[0,3])
dpq3=dp3+dq3
d=dq0+dpq3
ここで
q[j][k]=edgeType == EDGE_VER ? recPicture[xCb+xBl+j][yCb+yBl+k] : recPicture[xCb+xBl+k][yCb+yBl+j]
p[j][k]=edgeType == EDGE_VER ? recPicture[xCb+xBl-I-1][yCb+yBl+k] : recPicture[xCb+xBl+k][yCb+yBl-l-1]
さらに、dpq<sThr1、かつ、sp+pq<sThr2、かつ、spq<(5*tc+1>>1)の場合、dSamを1に、それ以外では0に設定する。ここで、sThr1、sThr2は、ブロックサイズが大きい場合、sThr1=(3*beta)>>5、sThr2=beta>>4により導出し、それ以外の場合sThr1=beta>>3、sThr2=beta>>2で導出する。(xCb+xBl,yCb+yBl)の場合、dSamをdSam0に設定する。
【0172】
edgeType==EDGE_VER、かつ、(xCb+xBl,yCb+yBl+3)、かつ、edgeType==EDGE_HOR、かつ、(xCb+xBl+3,yCb+yBl)の場合、dSamをdSam3に設定する。bS導出部331は、dSam0とdSam3がどちらも1の場合、dE=3に設定する。それ以外でd<betaの場合、dE=1に設定する。それ以外の場合、dE=0に設定する。
【0173】
図12は、デブロッキングフィルタの一例を説明する図である。
【0174】
DF部603は、入力画像のブロック(CTU/CU/TU)境界に沿って隣接する画素の画素値の差が予め定められた範囲内である場合には、ブロック歪みが存在すると判定する。そして、入力画像における当該ブロック境界に対してデブロッキング処理を施すことによって、当該ブロック境界付近の画像の平滑化を行う。デブロッキングフィルタによりデブロッキング処理が施された画像は、デブロック済復号画像P_DBである。
【0175】
DF部603は、dEの値が0以外、かつ、3以外の場合、短タップフィルタとして以下の処理を行う。以下の式でデブロッキングフィルタのオンオフ判定を行う。
【0176】
abs(p20-2*p10+p00)+abs(p23-2*p13+p03)+abs(q20-2*q10+q00)+abs(q23-2*q13+q03)< beta (式DB-1)
ここで、p2k,p1k,p0k,q0k,q1k,q2kは各々、ブロック境界からの距離が2,1,0,0,1,2の画素の列または行である。p2k,p1k,p0kは境界を接するブロックP、ブロックQのうちブロックPに含まれる画素であり、q0k,q1k,q2kはブロックQに含まれる画素である。kはブロック境界方向の画素の番号を示し、k>=0である。betaは、ブロックPとブロックQの量子化パラメータの平均値QPavgと、PPSあるいはスライスヘッダSHで通知されたpps_beta_offset_div2、slice_beta_offset_div2から導出される閾値である。(式DB-1)を満たす場合、ブロックPとブロックQの境界に対し、デブロッキングフィルタをオンにする(実施する)。また、下式でフィルタ処理を行う。
【0177】
p2'=Clip3(p2-2*tc,p2+2*tc,(2*p3+3*p2+p1+p0+q0+4)>>3) (式DB-2)
p1'=Clip3(p1-2*tc,p1+2*tc,(p2+p1+p0+q0+2)>>2)
p0'=Clip3(p0-2*tc,p0+2*tc,(p2+2*p1+2*p0+2*q0+q1+4)>>3)
q0'=Clip3(q0-2*tc,q0+2*tc,(p1+2*p0+2*q0+2*q1+q2+4)>>3)
q1'=Clip3(q1-2*tc,q1+2*tc,(p0+q0+q1+q2+2)>>2)
q2'=Clip3(q2-2*tc,q2+2*tc,(p0+q0+q1+3*q2+2*q3+4)>>3)
(式DB-2)は、
図12中の各k(k>=0)に対し共通の処理であるので、kを省略した。p3,p
2,p1,p0,q0,q1,q2,q3は各々、ブロック境界からの距離が3,2,1,0,0,1,2,3の画素の列または行である。tcは、フィルタ処理を抑制するための変数であり、ブロックPとブロックQの量子化パラメータの平均値QPavgと、PPSあるいはスライスヘッダSHで通知されたpps_tc_offset_div2、slice_tc_offset_div2等から導出される閾値である。以下の式により導出する。
【0178】
DF部603は、dEの値が3の場合、長タップフィルタとして中間画素値refMiddleとmaxFilterLength依存の画素値refP、refQを導出する。
【0179】
refMiddle=(p4+p3+2*(p2+p1+p0+q0+q0+q2)+q3+q4+8)>>4
refP=(pmaxFilterLengthP+pmaxFilterLengthP-1)>>1
refQ=(qmaxFilterLengthQ+pmaxFilterLengthQ-1)>>1
DF部603は、対象画素pi、refMiddle、refP(qi、refMiddle、refQ)を用いてフィルタ後の画素値を導出する。
pi'=Clip3(pi-(tC*tCPDi>>1),pi+(tC*tCPDi>>1),(refMiddle*fi+refP*(64-fi)+32)>>6)
qj'=Clip3(qj-(tC*tCQDj>>1),qj+(tC*tCQDj>>1),(refMiddle*gj+refQ*(64-gj)+32)>>6)
ここでtCPDi、tCQDjは各々、maxFilerLengthP、maxFilterLengthQで決まる所定の値である。
【0180】
(NNフィルタ部611の構成例)
図13は、ループフィルタ305におけるニューラルネットワークフィルタ部(NNフィルタ部611)の構成を示す図である。NNフィルタ部611は、入力画像に対して、ニューラルネットワークモデルによるフィルタ処理を行う手段である。同時に、等倍もしくは有理数倍の縮小・拡大を行ってもよい。
【0181】
ここで、ニューラルネットワークモデル(以下、NNモデル)とは、ニューラルネットワークの要素および結合関係(トポロジー)と、ニューラルネットワークのパラメータ(重み、バイアス)を意味する。なお、トポロジーを固定として、ニューラルネットワークモデルはパラメータのみを切り替えても良い。
【0182】
動画像復号装置のループフィルタ305(動画像符号化装置のループフィルタ107)は、NNフィルタ部611を備える。NNフィルタ部611は、参照ピクチャメモリ306/106の画像にフィルタをかけ、参照ピクチャメモリ306/106に保存する。すでに説明したようにループフィルタは、DF、ALF、SAO、バイラテラルフィルタなどを備えてもよい。
【0183】
(NNフィルタ部611の詳細)
NNフィルタは入力画像inSamplesと入力パラメータ(例えば、QP、bSなど)を用いて、ニューラルネットワークモデルによるフィルタ処理を行う。
入力画像は、各コンポーネントごとの画像であってもよいし、複数コンポーネントの画像を異なるチャネルとした画像であってもよい。また、入力パラメータは画像と異なるチャネルとして用いてもよい。
【0184】
ニューラルネットワークは、以下の処理を繰り返し適用してもよい。
【0185】
以下の式に示すように、inSamplesにカーネルk[m][i][j]を畳み込み演算し、biasを加算した出力画像outSamplesを導出する。ここで、nn=0..n-1、xx=0..width-1、yy=0..height-1である。
【0186】
outSamples[nn][xx][yy]=ΣΣΣ(k[mm][i][j]*inSamples[mm][xx+i-of][yy+j-of]+bias[nn])
1x1 Convの場合、Σは、各々mm=0..m-1、i=0、j=0の総和を表す。このとき、of=0を設定する。3x3 Convの場合、Σは各々mm=0..m-1、i=0..2、j=0..2の総和を表す。このとき、of=1を設定する。nはoutSamplesのチャネル数、mはinSamplesのチャネル数、widthはinSamplesとoutSamplesの幅、heightはinSamplesとoutSamplesの高さである。ofは、inSamplesとoutSamplesのサイズを同一にするために、inSamplesの周囲に設けるパディングのサイズである。以下、NNフィルタの出力が補正値の場合には、outSamplesの代わりにcorrNNと示す。
【0187】
また、Depth wise Convと呼ばれる以下の式で示す処理を行ってもよい。ここで、nn=0..n-1、xx=0..width-1、yy=0..height-1である。
【0188】
outSamples[nn][xx][yy]=ΣΣ(k[nn][i][j]*inSamples[nn][xx+i-of][yy+j-of]+bias[nn])
Σは各々i、jに対する総和を表す。nはoutSamplesとinSamplesのチャネル数、widthはinSamplesとoutSamplesの幅、heightはinSamplesとoutSamplesの高さである。
【0189】
またActivateと呼ばれる非線形処理、たとえばReLUを用いてもよい。
ReLU(x) = x >= 0 ? x : 0
また以下の式に示すleakyReLUを用いてもでもよい。
leakyReLU(x) = x >= 0 ? x : a * x
ここでaは所定の値、例えば0.1や0.125である。また整数演算とするために上記の全てのk、bias、aの値を整数として、Convの後に右シフトを行ってもよい。
【0190】
ReLUでは0未満の値に対しては常に0を、それ以上の値に対しては入力値をそのまま出力する。一方、leakyReLUでは、0未満の値に対して、aで設定された勾配で線形処理が行われる。ReLUでは0未満の値に対する勾配が消失するため、学習が進みにくくなる場合がある。leakyReLUでは0未満の値に対する勾配を残しておくことで、上記問題が起こりにくくなる。また、上記leakyReLU(x)のうち、aの値をパラメータ化して用いるPReLUを用いてもよい。
【0191】
(ccALFとccNNフィルタとの排他的処理)
図14は、ループフィルタ305におけるccALF部313とccNNフィルタ部611bとの排他的処理について示す図である。
【0192】
CT情報復号部3201は、符号化データから対象領域(たとえばCTB)のCb画像に対してccALFを適用するかを示すフラグalf_ctb_cc_cb_flag、対象領域のCr画像に対してccALFを適用するかを示すフラグalf_ctb_cc_cr_flag、対象領域のcIdx成分の画像にccNNフィルタを適用するかを示すパラメータnn_ctb_scale_idx[cIdx]を復号する。
【0193】
本構成のループフィルタ305は、ALF部312と、ccALF部313と、NNフィルタ部611aとccNNフィルタ部611bと、排他切替部314を備える。
【0194】
ALF部312はY_ALF、Cb_ALF、Cr_ALFをそれぞれ備えており、各フィルタは、それぞれ、Y_ALFはY画像、Cb_ALFはCb画像、Cr_ALFはCr画像を用いて処理を行い、処理後の画像を出力する。
【0195】
ccNNフィルタ部611bは、ニューラルネットワークモデルを用いて色成分間の相関を用いて誤差を補正する補正値corrを導出する。ここでは、出力となるCb, Cr以外のY成分を入力して補正値corrを導出することからクロスコンポーネントフィルタと呼ばれる。ccNNフィルタ部611bの入力画像は以下のY成分画像recSamplesであってもよい。
【0196】
inSamples[0][x][y] = recSamples[0][x][y]
さらに、QPの画像qpMapやbSを入力してもよい。
【0197】
ccNNフィルタ部611bは、nn_ctb_scale_idxから色差スケール値NNScaleValを導出する。nn_ctb_scale_idxと色差スケール値NNScaleValとの対応関係は予め決められている。例えば以下により導出する。
NNScaleVal = 0 (nn_ctb_scale_idx == 0)
NNScaleVal = 1 (nn_ctb_scale_idx == 1)
NNScaleVal = 2 (nn_ctb_scale_idx == 2)
また、例えば、nn_ctb_scale_idxをインデックスとしたNNScaleValの配列を保持するテーブルNNScaleTblを用いて以下で導出してもよい。
NNScaleVal = NNScaleTbl[nn_ctb_scale_idx]
nn_ctb_scale_idxが0の場合、ccNNフィルタ部での処理を行わない。
【0198】
ccNNフィルタ部611bは、NNScaleValを用いてcorrNNをスケーリングした後(corrRescale)、ccNNフィルタ部611の入力画像(例えばALF処理後画像resSamplesALF)と加算することで、色差の復号画像のサンプルrecSamplesを得てもよい。
【0199】
corrRescale[x][y] = (corrNN[x][y]*NNScaleVal + (1<<(shift-1))>>shift
recSamples[x][y] = resSamplesAlf[x][y]+corrRescale[x][y]
shift=1でもよい。
【0200】
なお、3値以上のnn_ctb_scale_idxではなく2値のnn_ctb_flagを用いる構成では以下の処理を行う。
【0201】
recSamples[x][y] = nn_ctb_flag[cIdx]==0 ? recSamples[cIdx][x][y]+corrNN[x][y] : recSamples[0][x][y]
もしくは以下でもよい。
もしnn_ctb_flag[cIdx]==0の場合corrNN[x][y] = 0
recSamples[x][y] = recSamples[cIdx][x][y]+corrNN[x][y] ccNNフィルタ部611bは、Y画像に対してニューラルネットワークモデルで処理を行った結果を出力する。その後、ccNNフィルタ部611bの出力を、Cb,CrのALF処理後画像にそれぞれ加算する。
【0202】
排他切替部314には、ccNNフィルタを適用する(nn_ctb_scale_idxが1以上)の場合、ccALFを適用せず(alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagをそれぞれ0に設定し)、入力画像に対してccNNフィルタ部611bを適用する。逆に、ccALFを適用する場合(alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagが1の場合)、ccNNを適用せず(nn_ctb_scale_idxを0に設定し)、入力画像に対してccALF部313を適用する。
【0203】
なお、排他切替部314は、CT情報復号部3201による以下の動作として実現してもよい。
ccALFが適用することを示す(alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagが1である)場合は、nn_ctb_scale_idx[1], nn_ctb_scale_idx[2]を符号化データから復号せずに、nn_ctb_scale_idx[1],nn_ctb_scale_idx[2]を0にする。符号化データに現れない場合にnn_ctb_scale_idx[1],nn_ctb_scale_idx[2]を0にする。alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagが0の場合は、ccNNインデックスnn_ctb_scale_idx[1],nn_ctb_scale_idx[2]を符号化データから復号する。
【0204】
なお、排他切替部314は、CT情報復号部3201による以下の動作として実現してもよい。
ccNNフィルタが適用することを示す(nn_ctb_scale_idx[1],nn_ctb_scale_idx[2]が1であ
る)場合は、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagを符号化データから復号せずに、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagを0にする。符号化データに現れない場合にalf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagを0にする。nn_ctb_scale_idx[1],nn_ctb_scale_idx[2]が0の場合は、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagを符号化データから復号する。
【0205】
上記では、ccNNフラグnn_ctb_flagと、Cb,CrへのccALFの適用を示すccALFフラグalf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagにおいて、nn_ctb_flagか、もしくはalf_ctb_cc_cb_flag及びalf_ctb_cc_cr_flagのどちらか一方のみを復号し、一方が1以上の場合には他方を0とすることで、排他的処理を実現する。
ここで、nn_ctb_flagは、ccNNの適用を制御するフラグで、0か1の2値を持つフラグである。nn_ctb_flagヘッダ復号部3020で復号する。
【0206】
上記の構成によれば、領域ごとに、ccALFとccNNフィルタのうち、より効果的なフィルタのみを選択して処理を行うことが可能になる効果を奏する。排他的であるので処理量を低減できる。
【0207】
(ccALFとNNフィルタとの排他的処理)
図15は、ループフィルタ305において、色差に対してNNフィルタを用いる処理を示す図である。
【0208】
NNフィルタ部611cは、Cb,Cr画像を少なくとも入力し、各コンポーネント間の相関を用いる処理を行い、Cb,Cr画像をそれぞれ出力する。NNフィルタ部611cの入力画像inSamplesは以下の色成分画像recSamples、出力はcorrNNであってもよい。
【0209】
inSamples [0][x][y] = recSamples[1][x][y]
inSamples [1][x][y] = recSamples[2][x][y]
inSamples [2][x][y] = bS[x][y]
ALF部312は、Yコンポーネントでは、NNフィルタ部611aの出力画像にフィルタ処理を行い、Cb,Crコンポーネントでは、色差NNフィルタ部611cからの出力画像に対してフィルタ処理を行う。
【0210】
ALF部312は、alf_ctb_flag[cIdx]が0以外である色コンポーネントcIdxの入力画像にALF処理を適用する。
【0211】
ccALF選択部314は、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flag、及びnn_ctb_scale_idxの値からCb,CrのALF出力画像にccALF部313の出力を加算するか否かを決定する。ccALF選択部314は、nn_ctb_scale_idxの値が1以上のときは、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagの値をそれぞれ0として、ccALF部313からの出力を加算せず、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagの値が1のときは、nn_ctb_scale_idxの値を0として、ccALF部313からの出力を加算する。
【0212】
図16は、ループフィルタ305において、NNフィルタ部611dが入力画像のY,Cb,Crコンポーネントをそれぞれ用いる場合の処理を示す図である。
【0213】
NNフィルタ部611dは入力画像を用いて、各コンポーネントを用いてニューラルネットワークモデルで処理を行った画像を出力する。
【0214】
NNフィルタ部611dは、Y, Cb, Crを含む入力画像resSamplesに対してニューラルネットワークモデルで処理を行った結果を補正値corrNN[cIdx]としてそれぞれ出力し、nn_ctb_s
cale_idx[cIdx]によるスケーリングを行って、CbもしくはCrの入力画像に加算する。
【0215】
NNScaleVal = NNScaleTbl[nn_ctb_scale_idx[cIdx]]
corrRescale[x][y] = (corrNN[x][y]*NNScaleVal + (1<<(shift-1))>>shift
recSamples[cIdx][x][y] = resSamples[cIdx][x][y]+corrRescale[x][y]
shift=1、cIdx=0..2でもよい。
【0216】
NNフィルタ部611eの入力画像inSamplesは以下の色成分画像recSamples[cIdx]、出力はcorrNN[cIdx]であってもよい。cIdx=0..2
inSamples[0][x][y] = recSamples[0][x][y]
inSamples[1][x][y] = recSamples[1][x][y]
inSamples[2][x][y] = recSamples[2][x][y]
さらに、QPの画像qpMapやbSを入力してもよい。
【0217】
inSamples[3][x][y] = qpMap[x][y]
inSamples[4][x][y] = bS[x][y]
ALF部312は、コンポーネントごとにNNフィルタ部611dでの処理後の画像を用いて、ALF処理を行った画像を出力する。
【0218】
ccALF選択部314は、CT情報復号部3201により復号されたalf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flag、及びnn_ctb_scale_idxの値からCb,CrのALF出力画像に、ccALF部313からの出力を加算するか否かを決定する。
ccALF選択部314は、nn_ctb_scale_idxの値が1以上のときは、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagの値をそれぞれ0として、ccALF部313からの出力を加算せず、alf_ctb_cc_cb_flag、alf_ctb_cc_cr_flagの値が1のときは、nn_ctb_scale_idxの値を0として、ccALF部313からの出力を加算する。
【0219】
<別の構成例1>
図17は、対象ピクチャ(対象スライス)におけるccALFとNNフィルタのフラグの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【0220】
ヘッダ復号部3020は、SYN0001にて、NNフィルタが使用可能かを示すフラグ(NNフラグ)sps_nn_enabled_flagが1であるとき、対象ピクチャ(対象スライス)にNNフィルタを適用するかを示すフラグsh_nn_enabled_flagを符号化データから復号する。ヘッダ復号部3020は、sh_nn_enabled_flagが1、かつ、入力画像に色差コンポーネントが存在する場合、対象ピクチャ(対象スライス)の色差画像(Cb,Cr画像)にNNフィルタを適用するかを示すフラグsh_nn_chroma_enabled_flagを復号する。
【0221】
SYN0003にて、ヘッダ復号部3020は、sh_nn_chroma_enabled_flagが0、かつ、ccALFが使用可能であるかを示すフラグsps_ccalf_enabled_flagが1(使用可能)である場合、対象ピクチャ(対象スライス)にccALFを適用するかを示すフラグsh_alf_cc_cb_enabled_flag、sh_alf_cc_cr_enabled_flagをそれぞれ復号する。それ以外の場合(sh_alf_cc_cb_enabled_flagが現れない場合)、sh_alf_cc_cb_enabled_flag、sh_alf_cc_cr_enabled_flag(sh_alf_cc_cr_enabled_flag)に各々0(適用しない)を導出する。
【0222】
ヘッダ復号部3020は、さらにsh_alf_cc_cb_enabled_flag、sh_alf_cc_cr_enabled_flagがそれぞれ1である場合、Cb画像もしくはCr画像に対するccALFのフィルタ係数を示すインデックスsh_alf_cc_cb_aps_id、sh_alf_cc_cr_aps_idをそれぞれ復号する。
【0223】
<別の構成例2>
図18は、対象領域(ここではCTU)におけるccALFとNNフィルタの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【0224】
(SYN0011)符号化データ(例えばスライスヘッダ)から復号されたsh_nn_enabled_flagが1の場合にnn_ctb_flag[0]を復号し、nn_ctb_flag[0]が0以外である場合、輝度のNNフィルタに用いるニューラルネットワークモデルを示すインデックスnn_luma_fixed_filter_idxを復号する。nn_luma_fixed_filter_idxはNNモデル選択部323にて用いられる。NNモデル選択部323は、NNフィルタ部611で用いるニューラルネットワークモデル(ニューラルネットワークのパラメータ)を、nn_luma_fixed_filter_idxで指定されるパラメータに切り替える。
【0225】
(SYN0012)CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_nn_chroma_enabled_flagが1である場合、対象領域(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCb画像,Cr画像に適用するNNフィルタの適用度合いを示すスケールインデックスnn_ctb_scale_idx[1],nn_ctb_scale_idx[2]をそれぞれ復号する。nn_ctb_scale_idxは0,1,..,N-1の値を持つ3値以上のパラメータで、各インデックスの値に対応したスケールで色差の画素値をスケーリングする。インデックスの値が0の場合は、NNフィルタによる処理を行わない。
【0226】
(SYN0013)CT情報復号部3021は、対象領域にNNフィルタを適用する場合(nn_ctb_scale_idx[1]、nn_ctb_scale_idx[2]が適用するを示す値、0よりも大きい場合)、Cb,CrのNNフィルタに用いるNNモデルを示すインデックスnn_cb_fixed_filter_idx、nn_cr_fixed_filter_idxをそれぞれ復号する。
【0227】
(SYN0014A)CT情報復号部3021は、対象ピクチャ/スライスにccALFを適用するが、対象領域のCb画像にNNを適用しない場合(sh_alf_cc_cb_enabled_flagが1、かつ、nn_ctb_scale_idx[1]が0)、対象領域のCb画像に対してccALFを適用するかを示すフラグalf_ctb_cc_cb_flagを復号する。それ以外の場合(alf_ctb_cc_cb_flagが現れない場合)、alf_ctb_cc_cb_flagに0(適用しない)を推定する。
【0228】
(SYN0015A)CT情報復号部3021は、alf_ctb_cc_cb_flagが1(適用するを示す値)である場合、CbのccALFのフィルタインデックスalf_ctb_cc_cb_idcを復号する。
【0229】
(SYN0014B)CT情報復号部3021は、sh_alf_cc_cb_enabled_flagが1であり、かつ、nn_ctb_scale_idx[1]が0である場合、対象領域のCr画像に対してccALFを適用するかを示すフラグalf_ctb_cc_cr_flagを復号する。それ以外の場合(alf_ctb_cc_cr_flagが現れない場合)、alf_ctb_cc_cr_flagに0(適用しない)を推定する。
【0230】
(SYN0015B)CT情報復号部3021は、alf_ctb_cc_cr_flagが1である場合、CrのccALFのフィルタインデックスalf_ctb_cc_cr_idcを復号する。
【0231】
<別の構成例3>
図19は、対象領域(例えばCTU)におけるccALFとNNフィルタの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。対象領域のY画像にNNフィルタを適用するかを示すNNフラグnn_ctb_flag[0]を復号する。 (SYN0022)CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_nn_chroma_enabled_flagが1である場合、対象領域のCb, Cr画像にNNフィルタを適用するかを示すNNフラグnn_ctb_flag[1],nn_ctb_flag[2]をそれぞれ復号する。nn_ctb_flagは2値のフラグで、値が1の場合は、(CtbAddrX,CtbAddrY)にてNNフィルタを行い、値が0の場合は、NNフィルタリングを行わない。
【0232】
(SYN0024)CT情報復号部3021は、sh_alf_cc_cb_enabled_flagが1であり、かつ、CbのN
Nフラグnn_ctb_flag[1]が0である場合、対象領域のCb画像にccALFを適用するかを示すフラグalf_ctb_cc_cb_flagを復号する。それ以外の場合(alf_ctb_cc_cb_flagが現れない場合)、alf_ctb_cc_cb_flagに0(適用しない)を推定する。
【0233】
(SYN0025)CT情報復号部3021は、alf_ctb_cc_cb_flagが1である場合、CbのccALFのフィルタインデックスalf_ctb_cc_cb_idcを復号する。
【0234】
(SYN0024)CT情報復号部3021は、sh_alf_cc_cr_enabled_flagが1であり、かつ、CrのNNフラグnn_ctb_scale_idx[2]が0である場合、対象領域のCr画像にccALFを適用するかを示すフラグalf_ctb_cc_cr_flagを復号する。それ以外の場合(alf_ctb_cc_cr_flagが現れない場合)、alf_ctb_cc_cr_flagに0(適用しない)を推定する。
【0235】
(SYN0025)CT情報復号部3021は、alf_ctb_cc_cr_flagが1である場合、CrのccALFのフィルタインデックスalf_ctb_cc_cr_idcを復号する。
【0236】
(ALFとNNフィルタとの排他的切替)
図20は、対象領域(例えばCTU)におけるALF部312とNNフィルタ部611eとの排他的切替処理を示す図である。
【0237】
本構成のループフィルタ305は、ALF部312と、ccALF部313と、NNフィルタ部611eと、排他切替部314を備えており、Y,Cb,Crそれぞれの色コンポーネントごとの処理前画像と、alf_ctb_flagと、nn_ctb_scale_idxを用いて処理を行い、Y,Cb,Crそれぞれの色コンポーネントごとの処理後画像を出力する。
【0238】
ALF部312、ccALF313部に関しては前述のものと同様であるため説明を省略する。
【0239】
NNフィルタ部611eは、Cb(cIdx=1)もしくはCr(cIdx=2)の入力画像resSamplesに対してニューラルネットワークモデルで処理を行った結果を補正値corrNNとしてそれぞれ出力し、nn_ctb_scale_idx[cIdx]によるスケーリングを行って、CbもしくはCrの入力画像に加算する。NNフィルタ部611eは、Cb_NNフィルタ、Cr_NNフィルタを備えており、それぞれCb_NNフィルタはCb画像を用いて処理を行った画像を、Cr_NNフィルタはCr画像を用いて処理を行った画像をそれぞれ出力する。
【0240】
NNScaleVal = NNScaleTbl[nn_ctb_scale_idx[cIdx]]
corrRescale[x][y] = (corrNN[Idx][x][y]*NNScaleVal + (1<<(shift-1))>>shift
recSamples[cIdx][x][y] = resSamples[cIdx][x][y]+corrRescale[x][y]
shift=1、cIdx=1, 2でもよい。
【0241】
NNフィルタ部611eの入力画像inSamplesは以下の色成分画像recSamples、出力はcorrNNであってもよい。
【0242】
inSamples[0][x][y] = recSamples[1][x][y]
もしくは
inSamples[0][x][y] = recSamples[2][x][y]
排他切替部314は、入力画像と、alf_ctb_flagとnn_ctb_scale_idxのそれぞれの値を用いて、nn_ctb_scale_idxが1以上の場合、入力画像にNNフィルタ部611eを適用し、それ以外(nn_ctb_scale_idx==0)でalf_ctb_flagが1の場合は、入力画像にALF部312を適用する。
【0243】
また、排他切替部314は、alf_ctb_flagが1の場合、入力画像にALF部312を適用し、それ
以外(alf_ctb_flag ==0)でnn_ctb_scale_idxが1以上の場合は、入力画像にNNフィルタ部611eを適用する。
【0244】
図21は、スライスヘッダにおける色差ALFとNNフィルタとのフラグの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【0245】
SYN0031にて、ヘッダ復号部3020は、NNフィルタを適用するかを示すフラグsps_nn_enabled_flagが1であるとき、sh_nn_enabled_flagを復号する。sh_nn_enabled_flagが1であるとき、nn_ctb_scale_idx[0]を復号する。
【0246】
SYN0032にて、ヘッダ復号部3020は、sh_nn_enabled_flagが1であり、かつ、入力画像に色差コンポーネントが存在する場合、色差のNNフィルタを適用するかを示すフラグsh_nn_chroma_enabled_flagを復号する。
【0247】
SYN0033にて、ヘッダ復号部3020は、sh_nn_chroma_enabled_flagが0であり、かつ、入力画像に色差コンポーネントが存在する場合、Cb,CrコンポーネントでそれぞれALFを適用するかを示すフラグsh_alf_cb_enabled_flag、sh_alf_cr_enabled_flagをそれぞれ復号する。
【0248】
図22は、CTUにおけるalf_ctb_flagとnn_ctb_scaleidxの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
CT情報復号部3021は、sh_nn_enabled_flagが1であるとき、nn_ctb_scale_idx[0]を復号する。
【0249】
SYN0041にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_nn_enabled_flagが1かつnn_ctb_scale_idx[0]が0以外である場合、輝度のNNモデルインデックスnn_luma_fixed_filter_idxを復号する。
【0250】
SYN0042にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部302により復号されたsh_nn_chroma_enabled_flagが1である場合、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCb,Crのスケールインデックスnn_ctb_scale_idx[1],nn_ctb_scale_idx[2]をそれぞれ復号する。nn_ctb_scale_idxは0,1,..,N-1の値を持つ3値以上のパラメータで、各インデックスの値に対応したスケールで色差の画素値をスケーリングする。インデックスの値が0の場合は、NNフィルタによる処理を行わない。
【0251】
SYN0043にて、CT情報復号部3021は、nn_ctb_scale_idx[1]、nn_ctb_scale_idx[2]がそれぞれ0よりも大きい場合、
Cb,CrのNNフィルタのインデックスnn_cb_fixed_filter_idx、nn_cr_fixed_filter_idxをそれぞれ復号する。
【0252】
SYN0044にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_alf_cb_enabled_flagが1かつ、nn_ctb_scale_idx[1]が0である場合、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCbのALFフラグalf_ctb_flag[1]を復号する。それ以外(nn_ctb_scale_idx[1]が0以外の場合)には、alf_ctb_flag[1]を復号せずに0とする。つまり、alf_ctb_flag[1]が現れない場合に0と推定する。
【0253】
SYN0045にて、CT情報復号部3021は、alf_ctb_flag[1]が1の場合、CbのALFフィルタインデックスalf_ctb_filter_alt_idx[1]を復号する。
【0254】
SYN0044にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_alf_cr_ena
bled_flagが1である場合、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCrのALFフラグalf_ctb_flag[2]を復号する。それ以外(nn_ctb_scale_idx[2]が0以外の場合)には、alf_ctb_flag[2]を復号せずに0とする。つまり、alf_ctb_flag[2]が現れない場合に0と推定する。
【0255】
SYN0045にて、CT情報復号部3021は、alf_ctb_flag[2]が1の場合、CrのALFフィルタインデックスalf_ctb_filter_alt_idx[2]を復号する。
【0256】
図23は、CTUにおけるALFフラグとNNフラグの排他的切替を行うシンタックスを示す図である。
【0257】
図22のシンタックスと異なる点として、nn_ctb_scale_idxの代わりにnn_ctb_flagを復号する点である。
CT情報復号部3021は、sh_nn_enabled_flagが1である場合、nn_ctb_flag[0]を復号する。
【0258】
SYN0052にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_nn_chroma_enabled_flagが1である場合、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCb,CrのNNフラグnn_ctb_flag[1],nn_ctb_flag[2]をそれぞれ復号する。nn_ctb_flagは0,1の値を持つ2値のフラグで、値が1の場合は、(CtbAddrX,CtbAddrY)にてNNフィルタリングを行い、値が0の場合は、NNフィルタリングを行わない。
【0259】
SYN0054にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_alf_cb_enabled_flagが1かつ、nn_ctb_flag[1]が0である場合、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCbのALFフラグであるalf_ctb_flag[1]を復号する。それ以外、alf_ctb_flag[1]が現れない場合に0と推定する。
【0260】
SYN0055にて、CT情報復号部3021は、alf_ctb_flag[1]が1である場合、CbのALFのフィルタインデックスalf_ctb_filter_alt_idx[1]を復号する。
【0261】
SYN0054にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号されたsh_alf_cr_enabled_flagが1かつ、nn_ctb_flag[2]が0であるである場合、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCrのALFフラグであるalf_ctb_flag[2]を復号する。それ以外、alf_ctb_flag[2]が現れない場合に0と推定する。
【0262】
SYN0055にて、CT情報復号部3021は、alf_ctb_flag[2]が1である場合、CrのALFのフィルタインデックスalf_ctb_filter_alt_idx[2]を復号する。
【0263】
(異なるモデルや層によるNNモデル切替)
シーケンスやピクチャ、もしくはピクチャの局所的な特徴に応じてNNフィルタ部で用いるNNモデルを切替えることは比較的小規模なNNモデルで効果的なフィルタ処理を行うことを可能とするが、NNモデルを切替にはメモリ転送が必要であり、大規模なNNモデル全体を切り替えることは困難である。以下、比較的大きな第1のレベル(粒度、範囲、画像領域、符号化データ領域)でNNモデル全体もしくは多くの層を切り替え、より小さな第2のレベルでNNモデルの一部(一部の層)を切り替える構成を説明する。以下、第1のレベルをスライスレベルで、第2のレベルをCTUレベルの例を説明するが、それに限定されない。第1のレベルを、シーケンス、ピクチャ、サブピクチャとしても良いし、第2のレベルをCTUをさらに分割したCTもしくはCUとしてもよい。
【0264】
図25は、スライスヘッダにおけるNNモデルインデックスのシンタックステーブルの例を示す図である。
【0265】
ヘッダ復号部3020は、SYN0101にて、ヘッダ復号部3020により復号された、NNフィルタを適用するかを示すフラグsps_nn_enabled_flagが1であるとき、sh_nn_enabled_flagを復号する。
【0266】
SYN0102にて、ヘッダ復号部3020は、sh_nn_enabled_flagが1である場合、NNモデル選択部323で選択する輝度モデルのインデックスsh_nn_luma_fixed_filter_idxを復号する。
【0267】
また、SYN0103にて、ヘッダ復号部3020は、入力画像に色差コンポーネントが存在する場合、色差のNNフィルタを適用するかを示すフラグsh_nn_chroma_enabled_flagを復号する。SYN0104にて、sh_nn_chroma_enabled_flagが1である場合、NNモデル選択部323で選択する色差モデルのインデックスsh_nn_cb_fixed_filter_idx,sh_nn_cr_fixed_filter_idxをそれぞれ復号する。
【0268】
図26は、CTUにおけるNN部分モデルインデックスのシンタックステーブルの例を示す図である。
【0269】
CT情報復号部3021は、SYN0111にて、スライスヘッダで復号された、NNフィルタが使用可能かを示すフラグsh_nn_enabled_flagが1であるとき、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)における輝度モデルの部分モデルのインデックスnn_part_filter_idx[0]を復号する。
【0270】
また、SYN0112にて、CT情報復号部3021は、ヘッダ復号部3020により復号された、色差のNNフィルタが使用可能かを示すフラグsh_nn_chroma_enabled_flagが1であるとき、CTUの位置(CtbAddrX,CtbAddrY)におけるCb,Crモデルの部分モデルのインデックスnn_part_filter_idx[1],nn_part_filter_idx[2]をそれぞれ復号する。
【0271】
図24は、第1の領域(例、シーケンス、ピクチャ群、ピクチャ、スライス)におけるNNモデル切替と、第1の領域よりも小さい第2の領域(例、CTU)における部分モデルの切替を示す図である。
【0272】
NNフィルタ部611は、NNモデル処理部6111、NN部分モデル選択部322、NNモデル選択部323を備えている。
【0273】
NNモデル処理部6111は、入力画像に対して指定されたニューラルネットワークモデルを用いてフィルタ処理を行う。
ヘッダ復号部3020は、第1の領域(例えばピクチャ、スライス)に対するNNモデルインデックスnn_luma_fixed_filter_idxを符号化データ(例えばピクチャヘッダやスライスヘッダ)から復号する。
【0274】
NNモデル選択部323は、NNモデルインデックスに基づいて、予め用意された複数のNNモデル候補の中から1つのNNモデルを選択する。NNフィルタ部611は選択されたNNモデルを用いてフィルタ処理を行う。なお、切り替えは、ニューラルネットワークのトポロジーとパラメータ(重み、バイアス)の両方でもよいし、ニューラルネットワークのパラメータのみでもよい。
【0275】
例えば、NNモデル選択部323は、ニューラルネットワークのパラメータを導出してもよい。
【0276】
NNModel[i]=NNFixedModel[nn_luma_fixed_filter_idx][i]
ここで、NNModelはNNフィルタ部で用いるニューラルネットワークのパラメータ、NNFixedModelはnn_luma_fixed_filter_idxで指定されるニューラルネットワークのパラメータ、i=0..パラメータ数-1である。
【0277】
nn_luma_fixed_filter_idxは0..N-1(Nはモデル候補の総数)の非負整数値で、それぞれの番号が、対応する個々のNNモデルに紐付いている。
【0278】
CT情報復号部3021は、CTUにてNN部分モデルインデックスnn_luma_part_filter_idxを復号する。NN部分モデル選択部322は、NN部分モデルインデックスに基づいて、NNモデルの一部の(一部の層)のパラメータ(以下部分モデル)を置き換える。例えば、特定のジャンルや量子化パラメータ、ビットレートに応じて特定の一部のパラメータのみを学習しなおし(finetune)、その特定の部分パラメータを選択可能な候補NNSubFixedModelとして、動画像復号装置および動画像符号化装置に記憶しておく。NN部分モデル選択部322は、nn_luma_part_filter_idxで選択されたNNSubFixedModelを用いて、NNModelの特定の値のパラメータを導出する(置き換える)。
【0279】
NNModel[j] = NNSubFixedModel[nn_luma_part_filter_idx][j]
ここでj=nnStartIdx..nnEndIdxである。ここでnnStartIdx、nnEndIdxは、NNModelのパラメータのうち、切り替えるパラメータの開始位置と終了位置を示す。ただしnnStartIdx>=0、nnEndIdx<=パラメータ数-1。
【0280】
また、入れ替えるNNモデルのパラメータの範囲は、入力層でもよく、或いは、中間層、出力層でもよい。
【0281】
NN部分モデルインデックスは0..M-1(Mは層候補の総数)の非負整数値で、それぞれの番号が、対応する個々の部分モデル候補に紐付いている。
【0282】
この処理により、ネットワークパラメータ全体を切り替えることなく、小さなブロック単位で適応的にモデルを切り替えることにより、パラメータ切り替えに関するニューラルネットワークパラメータの小ブロック(第2の領域)におけるロード時間を削減することができる。
【0283】
(ブロック強度係数をNNフィルタとDFで個別に設定できるようにする構成)
ブロック境界に関わる情報bS(bSは例えば、CU/TU/PU境界や、TUの残差、PUのモード、PU画像そのもの、ブロック境界の画素値や動きベクトルから導出される値)を、NNフィルタで用いることでNNフィルタの適用度合いをbS値に応じて変えることができる。DFにおいてもDFの適用度合いをbS値に応じて制御する。
【0284】
以下、bSの導出を制御するパラメータ(beta、tC)を符号化データで復号し、さらにエンコーダでNNとDFのかかり具合を制御する例を説明する。本実施例では、NNとDFで別個のtCオフセットとtCオフセットを伝送し、ヘッダ復号部3020で個別に復号する。
【0285】
図27は、NNフィルタ、DFで用いるbS算出用パラメータを用いてbSを導出する処理を示す図である。
【0286】
bS導出部331aは、符号化データから復号されたパラメータbetaとtCを用いてNN用のbSとDF用のbSを算出し、各々、NNフィルタ部611fとDF部332に入力する。
【0287】
パラメータbetaは、bS導出において、ブロック境界からのフィルタリング適用範囲の閾値である。パラメータtCは、bS導出において、ある画素値に対するフィルタリング後の変化量の最大値で、フィルタリング後画素値をクリッピングするために用いる。
【0288】
beta,tCはQPとともに増加し、低QP値と比較して高QP値の場合により強くフィルタリングの効果が生じる。
【0289】
bS導出部331aは、NNフィルタ用のパラメータsh_nn_luma_beta_offset_div2,sh_nn_luma_tc2_offset_div2を上述のslice _luma_beta_offset_div2, slice_luma_tc2_offset_div2として用いてbeta1とtC1を導出しこのbeta1とtC1を用いてbS1を導出する。導出されたbS1はNNフィルタ部611fのbS値として用いられる。DF部332は、NNフィルタ用のパラメータとは異なるDF用のパラメータslice_beta_offset_div2, slice_beta_tc2_div2を用いて後述のsliceBetaOffsetDiv2として用いてbeta2と tC2を導出し、このbeta2とtC2と入力画像を用いてbS(以下bS2)を算出する。導出されたbS2はDF部332のbS値として用いられる。
なお色差の場合には、以下のようにbetaとtCを導出してもよい。NNフィルタ部611f向けには、
sliceBetaOffsetDiv2=(cIdx==1?sh_nn_cb_beta_offset_div2:sh_nn_cr_beta_offset_div2)
それ以外(DF部332)の場合には
sliceBetaOffsetDiv2=(cIdx==1?slice_cb_beta_offset_div2: slice_cr_beta_offset_div2)
Q=Clip3(0,63,QpC+(sliceBetaOffsetDiv2<<1))
パラメータbetaは以下の式のように導出する。
【0290】
beta=beta'*(1<<(BitDepth-8))
NNフィルタ部611fの処理には、
sliceTcOffsetDiv2=(cIdx==1?sh_nn_cb_tc_offset_div2:sh_nn_cr_tc_offset_div2)
それ以外(DF部332)の処理には
sliceTcOffsetDiv2=(cIdx==1?slice_cb_tc_offset_div2: slice_cr_tc_offset_div2)
Q=Clip3(0,65,QpC+2*(bS-1)+(sliceTcOffsetDiv2<<1))
パラメータtCは以下のように導出する。
【0291】
・BitDepthが10未満の場合
tC=(tC'+(1<<(9-BitDepth)))>>(10-BitDepth)
・それ以外の場合
tC=tC'*(1<<(BitDepth-10))
DF部332は、bS導出部331aで導出されたbS値に応じて、フィルタ処理を行うフィルタであり、デブロッキングノイズを抑制する効果を持つ。
【0292】
NNフィルタ部611fは、bS導出部331aで導出されたbS値に応じて、DF前の入力画像を処理するNNフィルタであり、予測や変換のブロック境界に生じるデブロッキングノイズを抑制する効果を持つ。
【0293】
NNフィルタ部611fは、bS導出部331の出力パラメータbS[][]を入力して、ニューラルネットワーク処理を行ってもよい。或いは、NNフィルタ部611の入力画像一部(1チャネル)としてbSを利用してもよい。
また、bS導出部331の出力bSは、NNフィルタ部611に入力する画像としても用いてもよい。例えば、画像のチャネルの一つとして用いてもよい。つまり、対象ブロックの左上座標(xCb, yCb)、幅width、高さheightとすると、x=xCb..xCb+width-1、y=yCb..yCb+height-1において例えば以下のように導出してもよい。
【0294】
inSamples [0][x][y] = recSamples[cIdx][x][y]
inSamples [1][x][y] = bS[x][y]
また、上記ではY, Cb, Cr独立の処理としたが以下のようにNNフィルタ部611fはY,Cb,Cr全部を入力してフィルタ処理してもよい。
【0295】
inSamples [0][x][y] = recSamples[0][x][y]
inSamples [1][x][y] = recSamples[1][x][y]
inSamples [2][x][y] = recSamples[2][x][y]
inSamples [3][x][y] = bS[x][y]
NNフィルタ部611fはCb,Crを入力してフィルタ処理してもよい。
【0296】
inSamples [0][x][y] = recSamples[1][x][y]
inSamples [1][x][y] = recSamples[2][x][y]
inSamples [][x][y] = bS[x][y]
さらに、QPの画像qpMapを入力してもよい。
ここでcIdxは色コンポーネントインデックスである。inSamplesはNNフィルタ部611の入力画像である。またbS画像は、中間層の特徴量に付加(concat)する構成で利用してもよい。
【0297】
図29は、NNフィルタのbS算出用パラメータのシンタックスを示す図である。DFフィルタ部332のパラメータ(slice_luna_beta_offset_div2、slice_luna_tc_offset_div2 etc)とは別に伝送する。
【0298】
ヘッダ復号部3020は、SYN0201にて、spsから復号された、NNフィルタが使用可能かを示すフラグsps_nn_enabled_flagが1であるとき、sh_nn_enabled_flagを復号する。
【0299】
上記ヘッダ復号部3020は、SYN0202にて、sh_nn_enabled_flagが1である場合、NNフィルタ部611fで用いるbS算出用の輝度パラメータsh_nn_luma_beta_offset_div2と、sh_nn_luma_tc_offset_div2をそれぞれ復号する。
【0300】
また、SYN0203にて、ヘッダ復号部3020は、入力画像に色差コンポーネントが存在する場合、色差のNNフィルタが使用可能かを示すフラグsh_nn_chroma_enabled_flagを符号化データから復号する。SYN0204にて、ヘッダ復号部3020は、sh_nn_chroma_enabled_flagが1である場合、NNフィルタ部で用いるbS算出用のCb,Crパラメータsh_nn_cb_beta_offset_div2,sh_nn_cb_tc_offset_div2,sh_nn_cr_beta_offset_div2,sh_nn_cr_tc_offset_div2をそれぞれ復号する。
【0301】
(差分値を送る構成)
図28は、DFで用いるbS算出用パラメータを、NNフィルタで用いるbS算出用パラメータとの差分として入力し、bSを導出する処理を示す図である。ここでは、DF用のslice_beta_offset_div2とNNフィルタ用のslice_beta_offset_div2を伝送する際、一方のフィルタのパラメータを、もう一方のパラメータの差分シンタックスを用いて伝送する例である。
【0302】
パラメータ復号部3020(bS導出部331bでも可)は、NNフィルタ用のパラメータbeta,tCを用いて、bS1を導出しNNフィルタ部611fへ入力する。また、DF用のパラメータ差分beta_diff,tC_diffを用いて、NNフィルタ用のパラメータと、DFとの差分から、DF用のパラメータを算出した後、bS2を算出してDF部332へ送る。
【0303】
例えば
NNフィルタ部611f部の処理の際には、以下のようにして、sliceLumaBetaOffsetDiv2を導出して、sliceLumaBetaOffsetDiv2とsliceLumaTcOffsetDiv2を用いてNNフィルタ用のbeta1、tC1を導出する。
sliceLumaBetaOffsetDiv2 = slice_luma_beta_offset_div2 + beta_diff
sliceTcBetaOffsetDiv2 = slice_luma_tc_offset_div2 + tc_diff
これは、以下の処理を行って、上述の方法でNNフィルタ用のbeta1、tC1を導出してもよい。
sh_nn_luma_beta_offset_div2 = slice_luma_beta_offset_div2 + beta_diff
sh_nn_luma_tc_offset_div2 = slice_luma_tc_offset_div2 + tc_diff
もちろんNNフィルタ用のパラメータから、DF用のパラメータを導出してもよい。
slice_luma_beta_offset_div2 = sh_nn_beta_offset_div2 + beta_diff
slice_luma_tc_offset_div2 = sh_nn_tc_offset_div2 + tc_diff
(NNフィルタとALFフィルタの並列構成)
ALF(Adaptive loop filter)は、ブロック単位での画像の解析によりクラス分類filtIdxを導出する処理と、得られた分類filtIdxを用いて、フィルタ係数を選択しフィルタ処理を行う処理から構成される。
【0304】
以下、ALFのクラス分類とNNフィルタで同じ入力画像を用い、NNフィルタ後画像を用いてALFのフィルタ処理を行う構成を説明する。
【0305】
図31は、入力画像を用いたALFクラス分類処理とNNフィルタ後画像を用いたALFのフィルタ処理を示す図である。
【0306】
NNフィルタ部611gは、入力画像を用いて、NNモデルによるフィルタ処理を行い、NNフィルタ後画像を出力する。
【0307】
ALFクラス分類部341は、入力画像を用いて、クラス分類結果filtIdxを出力する。
【0308】
切替部342は、ヘッダ復号部3020で復号されたパラメータnn_alf_ctb_flagと、NN_ALF出力画像、及びALF出力画像を用いて、nn_alf_ctb_flagの値に応じてNN_ALF出力画と、ALF出力画像のいずれかの画像を出力する。
【0309】
上記nn_alf_ctb_flagは、0か1かの2値を持つ変数で、上記切替部342において出力する画像を決定する変数である。nn_alf_ctb_flagは、CT情報復号部3021で復号する。
【0310】
各CTBにおいて、nn_alf_ctb_flagが1のとき、上記切替部342はNNフィルタ後画像を出力し、nn_alf_ctb_flagが0のとき、切替部342は入力画像を出力する。
つまり、nn_alf_ctb_flagの値によって、フィルタ処理部343に入力する画像を、NNフィルタ後画像と入力画像で切り替える。
【0311】
フィルタ処理部343は、復号画像と、ALFクラス分類部341により得られた分類filtIdxを用いて、ALFフィルタ処理後の画像を出力する。
フィルタ処理部343が用いる画像は、NNフィルタ後画像、入力画像である。
フィルタ処理部343は、上記画像を処理し、ALF処理後の画像を出力する。
【0312】
【0313】
ALFパディング部344は、入力画像を用いて、パディング処理を行った後の画像を出力する。
【0314】
上記パディング処理とは、対象CTUの内に仮想的に設定されるライン(Y座標で示される水平方向に沿った境界)であるvirtual boundaryより下の画素の画素は、参照画素として
使用せず、近傍画素をパディングすることで補完を行って参照画像を生成する処理である。
上記virtual boundaryは、あるCTUに対して、輝度の場合、下のCTUの最上列から4画素上の列(vbOffset=4)、色差の場合、下のCTUの最上列から2画素上の列である(vbOffset=2)。
【0315】
NNフィルタ部611gは、パディング処理後の画像を用いて処理を行う。ALF部312も、パディング処理後の画像を入力画像として処理されたNNフィルタ部611gの画像もしくは、パディング処理後の画像を用いて処理を行う。
【0316】
上記のように、NNフィルタ部611gとALF部312の両方でvirtual boundaryを考慮した処理を行うことで、ラインメモリを削減する効果がある。特にALF部312の前に処理するフィルタにおいて、ALF部312と同じvirtual boundaryを用いた処理(同じALFパディング部344の処理)を行うと好適である。
【0317】
(スライス形状に応じてNNフィルタ処理の適用可能性を制限する構成)
以下、矩形スライスにのみNNフィルタを適用可能する処理を説明する。ピクチャを画面内で分割するスライスには矩形形状のスライス(以下矩形スライス)と、非矩形のスライス(以下、)を用いる構成において、NNフィルタを適用する例を説明する。スライスはCTUを単位としても良いし、CTU以下の16x16や32x32を単位としても良い。矩形スライスであるか、非矩形スライスであるかは、符号化データのPPSからpps_rect_slice_flagを復号し、pps_rect_slice_flag=1の場合には、符号化データからスライスの幅(ここではタイル幅単位での水平方向の数-1であるpps_slice_width_in_tiles_minus1[ i ])と高さ(ここではタイル高さ単位での垂直方向の数-1、pps_slice_height_in_tiles_minus1[ i ])を復号する。ピクチャを復号された幅と高さで分割したスライスのデータを復号する。
pps_rect_slice_flag=0の場合には、スライス単位で、スライス中のCTUの数-1(sh_num_tiles_in_slice_minus1)を復号する。
【0318】
図33は、スライスが矩形の場合のみNNフィルタを適用可能とするフラグに関するシンタックスを示す図である。
【0319】
SYN0401にて、ヘッダ復号部3020は、ヘッダ復号部3020により復号された、スライスが矩形であるか否かを示すフラグpps_rect_slice_flagが1であり、かつ、ヘッダ復号部3020により復号されたNNフィルタが使用可能か否かを示すフラグであるsps_nn_enabled_flagが1である場合、NNフィルタを使用するか否かを示すフラグsh_nn_enabled_flagを復号する。
【0320】
また、SYN0402にて、ヘッダ復号部3020は、sps_nn_enabled_flagが1であり、かつ、入力画像に色差コンポーネントが存在する場合、色差コンポーネントにNNフィルタを使用するか否かを示すフラグsh_nn_enabled_flagを復号する。
【0321】
〔応用例〕
上述した動画像符号化装置10及び動画像復号装置30は、動画像の送信、受信、記録、再生を行う各種装置に搭載して利用することができる。なお、動画像は、カメラ等により撮像された自然動画像であってもよいし、コンピュータ等により生成された人工動画像(CGおよびGUIを含む)であってもよい。
【0322】
まず、上述した動画像符号化装置10及び動画像復号装置30を、動画像の送信及び受信に利用できることを、
図2を参照して説明する。
【0323】
図2のPROD_Aは、動画像符号化装置10を搭載した送信装置PROD_Aの構成を示したブロッ
ク図である。図に示すように、送信装置PROD_Aは、動画像を符号化することによって符号化データを得る符号化部PROD_A1と、符号化部PROD_A1が得た符号化データで搬送波を変調することによって変調信号を得る変調部PROD_A2と、変調部PROD_A2が得た変調信号を送信する送信部PROD_A3と、を備えている。上述した動画像符号化装置10は、この符号化部PROD_A1として利用される。
【0324】
送信装置PROD_Aは、符号化部PROD_A1に入力する動画像の供給源として、動画像を撮像するカメラPROD_A4、動画像を記録した記録媒体PROD_A5、動画像を外部から入力するための入力端子PROD_A6、及び、画像を生成または加工する画像処理部A7を更に備えていてもよい。図においては、これら全てを送信装置PROD_Aが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0325】
なお、記録媒体PROD_A5は、符号化されていない動画像を記録したものであってもよいし、伝送用の符号化方式とは異なる記録用の符号化方式で符号化された動画像を記録したものであってもよい。後者の場合、記録媒体PROD_A5と符号化部PROD_A1との間に、記録媒体PROD_A5から読み出した符号化データを記録用の符号化方式に従って復号する復号部(不図示)を介在させるとよい。
【0326】
図2のPROD_Bは、動画像復号装置30を搭載した受信装置PROD_Bの構成を示したブロック図である。図に示すように、受信装置PROD_Bは、変調信号を受信する受信部PROD_B1と、受信部PROD_B1が受信した変調信号を復調することによって符号化データを得る復調部PROD_B2と、復調部PROD_B2が得た符号化データを復号することによって動画像を得る復号部PROD_B3と、を備えている。上述した動画像復号装置30は、この復号部PROD_B3として利用される。
【0327】
受信装置PROD_Bは、復号部PROD_B3が出力する動画像の供給先として、動画像を表示するディスプレイPROD_B4、動画像を記録するための記録媒体PROD_B5、及び、動画像を外部に出力するための出力端子PROD_B6を更に備えていてもよい。図においては、これら全てを受信装置PROD_Bが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0328】
なお、記録媒体PROD_B5は、符号化されていない動画像を記録するためのものであってもよいし、伝送用の符号化方式とは異なる記録用の符号化方式で符号化されたものであってもよい。後者の場合、復号部PROD_B3と記録媒体PROD_B5との間に、復号部PROD_B3から取得した動画像を記録用の符号化方式に従って符号化する符号化部(不図示)を介在させるとよい。
【0329】
なお、変調信号を伝送する伝送媒体は、無線であってもよいし、有線であってもよい。また、変調信号を伝送する伝送態様は、放送(ここでは、送信先が予め特定されていない送信態様を指す)であってもよいし、通信(ここでは、送信先が予め特定されている送信態様を指す)であってもよい。すなわち、変調信号の伝送は、無線放送、有線放送、無線通信、及び有線通信の何れによって実現してもよい。
【0330】
例えば、地上デジタル放送の放送局(放送設備など)/受信局(テレビジョン受像機など)は、変調信号を無線放送で送受信する送信装置PROD_A/受信装置PROD_Bの一例である。また、ケーブルテレビ放送の放送局(放送設備など)/受信局(テレビジョン受像機など)は、変調信号を有線放送で送受信する送信装置PROD_A/受信装置PROD_Bの一例である。
【0331】
また、インターネットを用いたVOD(Video On Demand)サービスや動画共有サービスなどのサーバ(ワークステーションなど)/クライアント(テレビジョン受像機、パーソナ
ルコンピュータ、スマートフォンなど)は、変調信号を通信で送受信する送信装置PROD_A/受信装置PROD_Bの一例である(通常、LANにおいては伝送媒体として無線または有線の何れかが用いられ、WANにおいては伝送媒体として有線が用いられる)。ここで、パーソナルコンピュータには、デスクトップ型PC、ラップトップ型PC、及びタブレット型PCが含まれる。また、スマートフォンには、多機能携帯電話端末も含まれる。
【0332】
なお、動画共有サービスのクライアントは、サーバからダウンロードした符号化データを復号してディスプレイに表示する機能に加え、カメラで撮像した動画像を符号化してサーバにアップロードする機能を有している。すなわち、動画共有サービスのクライアントは、送信装置PROD_A及び受信装置PROD_Bの双方として機能する。
【0333】
次に、上述した動画像符号化装置10及び動画像復号装置30を、動画像の記録及び再生に利用できることを、
図3を参照して説明する。
【0334】
図3のPROD_Cは、上述した動画像符号化装置10を搭載した記録装置PROD_Cの構成を示したブロック図である。図に示すように、記録装置PROD_Cは、動画像を符号化することによって符号化データを得る符号化部PROD_C1と、符号化部PROD_C1が得た符号化データを記録媒体PROD_Mに書き込む書込部PROD_C2と、を備えている。上述した動画像符号化装置10は、この符号化部PROD_C1として利用される。
【0335】
なお、記録媒体PROD_Mは、(1)HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのように、記録装置PROD_Cに内蔵されるタイプのものであってもよいし、(2)SDメモリカードやUSB(Universal Serial Bus)フラッシュメモリなどのように、記録装置PROD_Cに接続されるタイプのものであってもよいし、(3)DVD(Digital Versatile Disc:登録商標)やBD(Blu-ray Disc:登録商標)などのように、記録装置PROD_Cに内蔵されたドライブ装置(不図示)に装填されるものであってもよい。
【0336】
また、記録装置PROD_Cは、符号化部PROD_C1に入力する動画像の供給源として、動画像を撮像するカメラPROD_C3、動画像を外部から入力するための入力端子PROD_C4、動画像を受信するための受信部PROD_C5、及び、画像を生成または加工する画像処理部PROD_C6を更に備えていてもよい。図においては、これら全てを記録装置PROD_Cが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0337】
なお、受信部PROD_C5は、符号化されていない動画像を受信するものであってもよいし、記録用の符号化方式とは異なる伝送用の符号化方式で符号化された符号化データを受信するものであってもよい。後者の場合、受信部PROD_C5と符号化部PROD_C1との間に、伝送用の符号化方式で符号化された符号化データを復号する伝送用復号部(不図示)を介在させるとよい。
【0338】
このような記録装置PROD_Cとしては、例えば、DVDレコーダ、BDレコーダ、HDD(Hard Disk Drive)レコーダなどが挙げられる(この場合、入力端子PROD_C4または受信部PROD_C5が動画像の主な供給源となる)。また、カムコーダ(この場合、カメラPROD_C3が動画像の主な供給源となる)、パーソナルコンピュータ(この場合、受信部PROD_C5または画像処理部C6が動画像の主な供給源となる)、スマートフォン(この場合、カメラPROD_C3または受信部PROD_C5が動画像の主な供給源となる)なども、このような記録装置PROD_Cの一例である。
【0339】
図3のPROD_Dは、上述した動画像復号装置30を搭載した再生装置PROD_Dの構成を示したブロックである。図に示すように、再生装置PROD_Dは、記録媒体PROD_Mに書き込まれた符号化データを読み出す読出部PROD_D1と、読出部PROD_D1が読み出した符号化データを復号
することによって動画像を得る復号部PROD_D2と、を備えている。上述した動画像復号装置30は、この復号部PROD_D2として利用される。
【0340】
なお、記録媒体PROD_Mは、(1)HDDやSSDなどのように、再生装置PROD_Dに内蔵されるタイプのものであってもよいし、(2)SDメモリカードやUSBフラッシュメモリなどのように、再生装置PROD_Dに接続されるタイプのものであってもよいし、(3)DVDやBDなどのように、再生装置PROD_Dに内蔵されたドライブ装置(不図示)に装填されるものであってもよい。
【0341】
また、再生装置PROD_Dは、復号部PROD_D2が出力する動画像の供給先として、動画像を表示するディスプレイPROD_D3、動画像を外部に出力するための出力端子PROD_D4、及び、動画像を送信する送信部PROD_D5を更に備えていてもよい。図においては、これら全てを再生装置PROD_Dが備えた構成を例示しているが、一部を省略しても構わない。
【0342】
なお、送信部PROD_D5は、符号化されていない動画像を送信するものであってもよいし、記録用の符号化方式とは異なる伝送用の符号化方式で符号化された符号化データを送信するものであってもよい。後者の場合、復号部PROD_D2と送信部PROD_D5との間に、動画像を伝送用の符号化方式で符号化する符号化部(不図示)を介在させるとよい。
【0343】
このような再生装置PROD_Dとしては、例えば、DVDプレイヤ、BDプレイヤ、HDDプレイヤなどが挙げられる(この場合、テレビジョン受像機等が接続される出力端子PROD_D4が動画像の主な供給先となる)。また、テレビジョン受像機(この場合、ディスプレイPROD_D3が動画像の主な供給先となる)、デジタルサイネージ(電子看板や電子掲示板等とも称され、ディスプレイPROD_D3または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)、デスクトップ型PC(この場合、出力端子PROD_D4または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)、ラップトップ型またはタブレット型PC(この場合、ディスプレイPROD_D3または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)、スマートフォン(この場合、ディスプレイPROD_D3または送信部PROD_D5が動画像の主な供給先となる)なども、このような再生装置PROD_Dの一例である。
【0344】
(ハードウェア的実現およびソフトウェア的実現)
また、上述した動画像復号装置30および動画像符号化装置10の各ブロックは、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0345】
後者の場合、上記各装置は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを展開するRAM(Random
Access Memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の実施形態の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである上記各装置の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記各装置に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0346】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)/MOディスク(Magneto-Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc:登録商標)/CD-R(CD Recordable)/ブルーレイディスク(Blu-ray
Disc:登録商標)等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)
/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasableand Programmable Read-Only Memory:登録商標)/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
【0347】
また、上記各装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、プログラムコードを伝送可能であればよく、特に限定されない。例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value-Added Network)、CATV(Community Antennatelevision/Cable Television)通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えば、IEEE(Institute of Electricaland Electronic Engineers)1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDA(Infrared Data Association)やリモコンのような赤外線、BlueTooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance:登録商標)、携帯電話網、衛星回線、地上デジタル放送網等の無線でも利用可能である。なお、本発明の実施形態は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0348】
本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0349】
本発明の実施形態は、画像データが符号化された符号化データを復号する動画像復号装置、および、画像データが符号化された符号化データを生成する動画像符号化装置に好適に適用することができる。また、動画像符号化装置によって生成され、動画像復号装置によって参照される符号化データのデータ構造に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0350】
1 動画像伝送システム
30 動画像復号装置
31 画像復号装置
301 エントロピー復号部
302 パラメータ復号部
303 インター予測パラメータ導出部
304 イントラ予測パラメータ導出部
305、107 ループフィルタ
306、109 参照ピクチャメモリ
307、108 予測パラメータメモリ
308、101 予測画像生成部
309 インター予測画像生成部
310 イントラ予測画像生成部
311、105 逆量子化・逆変換部
312、106 加算部
320 予測パラメータ導出部
10 動画像符号化装置
11 画像符号化装置
102 減算部
103 変換・量子化部
104 エントロピー符号化部
110 符号化パラメータ決定部
111 パラメータ符号化部
112 インター予測パラメータ符号化部
113 イントラ予測パラメータ符号化部
120 予測パラメータ導出部
71 フィルタ情報作成装置