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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178487
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】給電制御スイッチを有する定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241218BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20241218BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20241218BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20241218BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G03G21/00 500
G03G21/16 152
G03G21/00 510
G03G21/14
H05B3/00 335
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015874
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥代
(72)【発明者】
【氏名】河本 惠司
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
2H270
3K058
【Fターム(参考)】
2H033AA25
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB19
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB37
2H033BB38
2H033BE00
2H033CA23
2H033CA24
2H033CA43
2H171FA05
2H171FA19
2H171GA09
2H171MA02
2H171MA16
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB14
2H171QB32
2H171QB52
2H171QB55
2H171QC03
2H171QC22
2H171SA11
2H171SA14
2H171SA22
2H171SA26
2H270LA01
2H270LA44
2H270LD02
2H270LD05
2H270LD15
2H270MC44
2H270MC78
2H270MD02
2H270MG01
2H270MG02
2H270NE12
2H270NE18
2H270RA14
2H270RA27
2H270RB09
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
2H270ZC08
3K058AA29
3K058BA18
3K058CA02
3K058CA15
3K058CB10
3K058DA03
3K058FA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スパークの発生を防止しつつ、定着装置を継続的に稼動させる。
【解決手段】一態様に係る画像形成装置は、回転可能な回転体と、回転体に電力を供給する電源と、回転体に対する電源からの電力の供給又は電力の供給停止を制御する給電制御スイッチ55と、回転体が該回転体の表面上の特定部位を経由して電力が供給される回転位置になったときに電源から回転体への電力の供給が一時的に停止され、電力の供給を一時的に停止した後に回転体の回転に伴って、回転体が特定部位を除く部分を経由して電力が供給される回転位置になったときに電源から回転体への電力の供給が再開されるように、給電制御スイッチを制御する制御装置と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な回転体と、
前記回転体に電力を供給する電源と、
前記回転体に対する前記電源からの電力の供給又は電力の供給停止を制御する給電制御スイッチと、
前記回転体が該回転体の表面上の特定部位を経由して電力が供給される回転位置になったときに前記電源から前記回転体への電力の供給が一時的に停止され、電力の供給を一時的に停止した後に前記回転体の回転に伴って、前記回転体が前記特定部位を除く部分を経由して電力が供給される回転位置になったときに前記電源から前記回転体への電力の供給が再開されるように、前記給電制御スイッチを制御する制御装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記回転体は、電力を受けて発熱する発熱抵抗体と前記発熱抵抗体に電気的に接続された一対の電極とを有する定着ベルトを含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一対の電極に摺接する一対の摺動コンタクトを更に備え、
前記電源は、一対の摺動コンタクトを介して前記一対の電極に電力を供給する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記一対の摺動コンタクト間のインピーダンスを測定する検知部を更に備え、
前記制御装置は、前記インピーダンスが閾値よりも大きくなる前記定着ベルトの前記一対の電極上の位置を前記特定部位として特定する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記検知部は、
前記電源よりも低い電圧を前記一対の摺動コンタクトに印加する低電圧電源と、
前記低電圧電源からの前記電圧の印加によって前記一対の摺動コンタクト間に付与される電圧に基づいて前記一対の摺動コンタクト間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置と、
前記低電圧電源と前記一対の摺動コンタクトとの電気的接続を制御する検知スイッチと、
を含む、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記低電圧電源及び前記インピーダンス測定装置は、前記電源に対して電気的に並列に接続され、
前記制御装置は、前記インピーダンス測定装置が前記一対の摺動コンタクト間のインピーダンスを測定するときに、前記電源から前記一対の摺動コンタクトへの電力の供給が停止されるように前記給電制御スイッチを制御する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記一対の電極の表面を撮像する撮像部を更に備え、
前記制御装置は、前記撮像部によって取得された前記一対の電極の表面の画像に対して画像処理を行って前記特定部位を特定する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記発熱抵抗体は、略円筒形状を有し、
前記一対の電極は、前記発熱抵抗体の両端部において延在する略円環状を呈し、
前記特定部位は、前記一対の電極のうち少なくとも1つの電極の周方向位置を表し、
前記一対の摺動コンタクトは、前記定着ベルトの回転方向に固定された位置で前記一対の電極に対してそれぞれ対向している、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御装置は、特定された前記特定部位に対応する前記定着ベルトの周方向における前記一対の電極の角度位置を記憶する記憶装置を有し、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記一対の電極の角度位置に基づいて前記給電制御スイッチを制御する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記特定部位が検出されたタイミングに対応する特定タイミングを記憶する記憶装置を有し、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶された前記特定タイミングに基づいて前記給電制御スイッチを制御する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項11】
回転可能な回転体と、
前記回転体に電力を供給する電源と、
前記回転体に対する前記電源からの電力の供給又は電力の供給停止を制御する給電制御スイッチと、
前記回転体が該回転体の表面上の特定部位を経由して電力が供給される回転位置になったときに前記電源から前記回転体への電力の供給が一時的に停止され、電力の供給を一時的に停止した後に前記回転体の回転に伴って、前記回転体が前記特定部位を除く部分を経由して電力が供給される回転位置になったときに前記電源から前記回転体への電力の供給が再開されるように、前記給電制御スイッチを制御する制御装置と、
を備える定着装置。
【請求項12】
前記回転体は、電力を受けて発熱する発熱抵抗体と前記発熱抵抗体に電気的に接続された一対の電極とを有する定着ベルトを含む、請求項11に記載の定着装置。
【請求項13】
前記一対の電極に摺接する一対の摺動コンタクトを更に備え、
前記電源は、一対の摺動コンタクトを介して前記一対の電極に電力を供給する、請求項12に記載の定着装置。
【請求項14】
前記一対の摺動コンタクト間のインピーダンスを測定する検知部を更に備え、
前記制御装置は、前記インピーダンスが閾値よりも大きくなる前記定着ベルトの前記一対の電極上の位置を前記特定部位として特定する、請求項13に記載の定着装置。
【請求項15】
前記制御装置は、測定された前記インピーダンスを閾値よりも大きくさせる複数の特定部位を記憶する記憶装置を含み、前記複数の特定部位は、前記一対の電極と前記一対の摺動コンタクトとの間の電気的接続を遮断する前記一対の電極の1以上の表面領域に相当し、
前記制御装置は、前記1以上の表面領域の大きさが基準サイズよりも大きい場合に警報を出力する、請求項14に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
画像形成装置は、トナー像を用紙に定着させる定着装置を備える。定着装置は、トナー像が転写された用紙を加熱及び加圧することでトナー像を用紙に定着させる。定着装置の方式の一つとして、発熱抵抗体を有する定着ベルトを備える自己発熱型の定着装置が知られている。自己発熱型の定着装置は、発熱抵抗体に電力を供給することで定着ベルトを加熱し、加熱された定着ベルトにトナー像が転写された用紙を通過させることで当該トナー像を用紙に定着させる。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】本明細書に開示された種々の例を実施するために使用することができる例示的な画像形成装置の概略図である。
図2】例示的な定着装置を概略的に示す図である。
図3】定着ベルトの部分的な断面図である。
図4】制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】定着装置の制御方法を示すフローチャートである。
図6】(a)は事前検知工程における検知スイッチ及び給電制御スイッチの状態を示す図であり、(b)は給電制御工程における検知スイッチ及び給電制御スイッチの状態を示す図である。
図7】一対の摺動コンタクトに付与される電力の経時的変化の一例を示すタイミングチャートである。
図8】インピーダンス測定装置の抵抗値とゲインとの関係を示す図である。
図9】測定されたインピーダンスの経時的変化の一例を示す図である。
図10】記録媒体に記録された制御プログラムの機能構成を示す図である。
図11】定着装置の変形例を概略的に示す図である。
図12】定着装置の別の変形例を概略的に示す図である。
図13】定着装置の別の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下では、図面を参照して、例示的な定着装置置及び当該定着装置を備える画像形成装置及びについて説明する。なお、図面に基づいて説明するにあたり、同一の要素又は同一の機能を有する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0004】
本開示に係る画像形成装置は、例えばプリンタ等の画像形成装置である。この画像形成装置は、自己発熱型の定着装置を備える。後述するように、自己発熱型の定着装置は、通電によって発熱する発熱抵抗体と当該発熱抵抗体に電気的に接続された一対の電極とを含む定着ベルトを有する。定着ベルトの一対の電極には、当該一対の電極に摺接する一対の摺動コンタクトから電力が供給される。このとき、一対の電極の表面に傷、割れ又は凹み等の異常がある特定部位があると、特定部位が存在する部分で一対の電極と一対の摺動コンタクトとが非接触となり、スパーク(火花放電)が発生することがある。例示的な定着装置は、特定部位への電力の供給を一時的に停止して、スパークの発生を防止する。
【0005】
図1は、例示的な画像形成装置を概略的に示す図である。図1に示す画像形成装置1は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色を用いてカラー画像を形成する装置である。画像形成装置1は、印刷媒体である用紙5を搬送する搬送装置10と、静電潜像を現像する複数の現像装置20C,20M,20Y,20K(以下、個々の構成要素を区別する必要がない場合には、「現像装置20」と称する。)と、各色のトナー像を用紙5に二次転写する転写装置30と、表面に静電潜像が形成される複数の感光体40C,40M,40Y,40K(以下、個々の構成要素を区別する必要がない場合には、「感光体40」と称する。)と、積層トナー像を用紙5に定着させる定着装置50と、用紙5を排出する排出装置60とを備える。これら搬送装置10、現像装置20、転写装置30、感光体40、定着装置50及び排出装置60は、画像形成装置1の筐体15内に収容される。
【0006】
搬送装置10は、画像が形成される印刷媒体である用紙5を搬送経路12上で搬送する。用紙5は、カセット7に積層されて収容され、給紙ローラ11によりピックアップされて搬送される。搬送装置10は、用紙5に転写されるトナー像が転写領域13に到達するタイミングで、搬送経路12を介して転写領域13に用紙5を到達させる。
【0007】
現像装置20C,20M,20Y,20Kは、色ごとに設けられている。各現像装置20は、トナーを感光体40に担持させる現像ローラ45を備えている。現像装置20では、現像剤として、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を用いる。つまり、現像装置20では、トナーとキャリアを所望の混合比になるように調整し、さらに混合撹拌してトナーを均一に分散させ最適な帯電量を付与した現像剤が調整される。この現像剤を現像ローラ45に担持させる。そして、現像ローラ45の回転により現像剤が感光体40と対向する現像領域まで搬送されると、現像ローラ45に担持された現像剤に含まれるトナーが感光体40の周面上に形成された静電潜像に移動し、静電潜像が現像される。
【0008】
転写装置30は、現像装置20で形成されたトナー像を用紙5に二次転写する転写領域13に搬送する。転写装置30は、感光体40からトナー像が一次転写される無端ベルトである中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31を張架する張架ローラ34と、アイドラローラ35,36と、中間転写ベルト31を駆動する駆動ローラ37と、感光体40C,40M,40Y,40Kと共に中間転写ベルト31をそれぞれ挟持する一次転写ローラ32C,32M,32Y,32Kと、駆動ローラ37と共に中間転写ベルト31を挟持する二次転写ローラ33とを備えている。
【0009】
感光体40C,40M,40Y,40Kは、静電潜像担持体、感光体ドラム等とも呼ばれる。感光体40C,40M,40Y,40Kは、色ごとに設けられている。各感光体40は、中間転写ベルト31の移動方向に沿って設けられている。感光体40の周上には、現像装置20と、帯電装置41と、露光ユニット42と、クリーニング装置43とが設けられている。
【0010】
帯電装置41は、例えば感光体40に対して当接する帯電ローラであり、感光体40の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光ユニット42は、帯電装置41によって帯電した感光体40の表面を、用紙5に形成する画像に応じて露光する。これにより、感光体40の表面のうち露光ユニット42により露光された部分の電位が変化し、静電潜像が形成される。現像装置20C,20M,20Y,20Kは、それぞれの現像装置20に対向して設けられたトナータンク18C,18M,18Y,18Kから供給されたトナーによって感光体40に形成された静電潜像を現像し、トナー像を生成する。各トナータンク18C,18M,18Y,18K内には、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが充填されている。クリーニング装置43は、感光体40上に形成されたトナー像が中間転写ベルト31に一次転写された後に感光体40上に残存するトナーを回収する。
【0011】
定着装置50は、定着ニップ領域14に用紙5を通過させることで、中間転写ベルト31から用紙5に二次転写されたトナー像を用紙5に定着させる。定着装置50は、例えば自己発熱型の定着装置であり、無端状の定着ベルト51と、定着ベルト51の外周面に圧接された加圧ローラ52と、定着ベルト51に遊嵌された定着ローラ53と、定着ベルト51、加圧ローラ52及び定着ローラ53を収容するハウジング58とを備えている。定着ベルト51と加圧ローラ52との間には定着ニップ領域14が形成される。用紙5が当該定着ニップ領域14を通過するときにトナー像が用紙5に溶融定着される。
【0012】
排出装置60は、定着装置50によりトナー像が定着された用紙5を装置外部へ排出するための排出ローラ62,64を備えている。
【0013】
図2は例示的な定着装置50を概略的に示す斜視図である。定着装置50の定着ベルト51は、回転軸線周りに回転可能な回転体である。図3は、例示的な定着ベルト51の部分的な断面図である。定着ベルト51は、弾性変形可能な略円筒形状のベルトであり、図3に示すように、絶縁層71、発熱抵抗体72、弾性層73及び離型層74が内周側から順に積層された積層構造を有している。
【0014】
定着ベルト51の絶縁層71は、弾性変形可能な絶縁性材料によって構成されている。発熱抵抗体72は、略円筒形状を有している。発熱抵抗体72には、耐熱性の絶縁樹脂に導電性フィラーが分散して配置されており、発熱抵抗体72の抵抗値は所望の抵抗値となるように調整されている。発熱抵抗体72に電力が与えられると、発熱抵抗体72に電流が流れてジュール熱が発生する。発熱抵抗体72の発熱によって定着ベルト51が加熱される。
【0015】
弾性層73は、発熱抵抗体72の両端部を除き、発熱抵抗体72の外周面を覆っている。離型層74は、弾性層73の外周面を覆っている。
【0016】
定着ベルト51は、発熱抵抗体72に電気的に接続する一対の電極75を更に備えている。一対の電極75は、略円環状を呈し、発熱抵抗体72の弾性層73から露出した部分、すなわち定着ベルト51の両端部にそれぞれ設けられ、発熱抵抗体72の外周面に沿って延在している。一対の電極75は、金属等の導電性材料によって構成されている。すなわち、図3に示すように、定着ベルト51の一対の電極75の間の領域には絶縁層71、発熱抵抗体72、弾性層73及び離型層74が順に積層されており、定着ベルト51の一対の電極75が配置された領域には絶縁層71、発熱抵抗体72及び一対の電極75が順に積層されている。
【0017】
定着ローラ53は、定着ベルト51の内径よりも小さな外径を有し、定着ベルト51に遊嵌されている。定着ローラ53は、芯金77及び弾性層78を有している。芯金77は、例えば金属材料によって構成され、定着ベルト51の回転軸線に平行な回転軸線46に沿って延在する略円柱形状を有している。芯金77の両端部には、定着装置50のハウジング58に軸支された軸部79が設けられている。したがって、定着ローラ53は、回転軸線46周りに回転可能である。弾性層78は、シリコーンゴム又はフッ素ゴム等の弾性変形可能な材料によって構成され、芯金77の外周面を覆うように設けられている。
【0018】
加圧ローラ52は、定着ベルト51に隣接して配置され、定着ベルト51を介して定着ローラ53に圧接されている。これにより、定着ベルト51と加圧ローラ52との間に定着ニップ領域14が形成される。加圧ローラ52は、例えば芯金80、弾性層81及び離型層82を有している。芯金80は、例えば金属材料によって構成され、回転軸線46に平行な回転軸線48に沿って延在している。芯金77の両端部は、例えば定着装置50のハウジング58に軸支されている。弾性層81は、シリコーンゴム又はフッ素ゴム等の弾性変形可能な材料によって構成され、芯金80の外周面を覆うように設けられている。離型層82は、例えばフッ素樹脂等の樹脂組成物によって構成され、弾性層81の外周面を覆うように設けられている。
【0019】
加圧ローラ52は、駆動モータからの駆動力を受けて、回転軸線48周りに回転する。加圧ローラ52と定着ローラ53との間に定着ベルト51が挟持された状態で加圧ローラ52が回転すると、定着ベルト51が従動回転すると共に、定着ローラ53が回転軸線46周りに従動回転する。
【0020】
定着装置50は、高電圧電源54、給電制御スイッチ55、検知部56、一対の摺動コンタクト65及び制御装置90を更に備えている。一対の摺動コンタクト65は、例えば導電性材料によって構成されたカーボンブラシであり、一対の電極75に電気的に接続されている。一対の摺動コンタクト65は、定着ベルト51の回転方向に固定された位置において、一対の電極75に対してそれぞれ対向して配置されている。また、一対の摺動コンタクト65には、配線84の両端がそれぞれ接続されている。配線84には、高電圧電源54及び給電制御スイッチ55が直列に接続されている。定着ベルト51が回転したときに、一対の摺動コンタクト65は、一対の電極75に摺接して高電圧電源54からの電力を一対の電極75を介して定着ベルト51に供給する。
【0021】
高電圧電源54は、発熱抵抗体72を発熱させるための電力を定着ベルト51に供給する電源である。例えば、高電圧電源54は、一対の摺動コンタクト65を介して電圧を一対の電極75に印加する。高電圧電源54は、交流電源であり、例えば実効値で100V以上240V以下の交流電圧を一対の摺動コンタクト65に印加する。高電圧電源54から一対の電極75に電圧が印加されると、当該一対の電極75の間で発熱抵抗体72に電流が流れ、ジュール熱によって定着ベルト51が加熱される。
【0022】
給電制御スイッチ55は、高電圧電源54と一対の摺動コンタクト65の一方との間において配線84に接続されている。給電制御スイッチ55は、定着ベルト51に対する高電圧電源54からの電力の供給又は電力の供給停止を制御する。例えば、給電制御スイッチ55がオンになると、高電圧電源54と一対の摺動コンタクト65とが電気的に接続され、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65へ電力が供給される。一方、給電制御スイッチ55がオフになると、高電圧電源54と一対の摺動コンタクト65との電気的接続が遮断され、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が停止される。
【0023】
検知部56は、一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを測定する。図2に示すように、検知部56は、低電圧電源91、インピーダンス測定装置92及び検知スイッチ93を含む。低電圧電源91、インピーダンス測定装置92及び検知スイッチ93は、配線86に直列に接続されている。配線86は一対の端子を有しており、配線86の一方の端子86aは、高電圧電源54と一方の摺動コンタクト65との間で配線84に接続され、配線86の他方の端子86bは、給電制御スイッチ55と他方の摺動コンタクト65との間で配線84に接続されている。したがって、低電圧電源91、インピーダンス測定装置92及び検知スイッチ93は、高電圧電源54及び給電制御スイッチ55に対して電気的に並列に接続されている。
【0024】
低電圧電源91は、一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを測定するために、高電圧電源54の電圧よりも低い電圧を一対の摺動コンタクト65に印加する。低電圧電源91から一対の摺動コンタクト65に与えられる電圧は、一対の摺動コンタクト65と一対の電極75との間でスパークが発生しない程度に低い直流電圧であり、例えば5Vである。
【0025】
また、インピーダンス測定装置92は、低電圧電源91から一対の摺動コンタクト65に電圧が印加されたときに一対の摺動コンタクト65に付与される電圧の大きさに基づいて、一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを測定する。例えば、インピーダンス測定装置92は、オームの法則を利用して、一対の摺動コンタクト65に付与される電圧と配線86を流れる電流とに基づいて、一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを検出する。ここで、インピーダンス測定装置92は、100Ω以上の抵抗値を有していてもよい。インピーダンス測定装置92が100Ω以上の抵抗値を有することにより、検知部56のゲインが高められる。
【0026】
検知スイッチ93は、低電圧電源91と一対の摺動コンタクト65との間に設けられ、低電圧電源91と一対の摺動コンタクト65との電気的接続を制御する。例えば検知スイッチ93がオンになると、低電圧電源91と一対の摺動コンタクト65とが電気的に接続され、一対の摺動コンタクト65へ微弱な電力が供給される。このとき、給電制御スイッチ55はオフにされる。一方、検知スイッチ93オフになると、低電圧電源91と一対の摺動コンタクト65とが電気的に遮断され、低電圧電源91から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が停止される。
【0027】
制御装置90は、プロセッサ、記憶装置、通信装置、入力装置及び表示装置等を備える。制御装置90は、定着装置50の各部と通信可能に接続され、定着装置50の各部の動作を制御する。例えば、制御装置90は、給電制御スイッチ55及び検知スイッチ93に制御信号を送出し、給電制御スイッチ55及び検知スイッチ93のオン/オフを切り替える。また、制御装置90は、駆動モータの駆動を制御して加圧ローラ52の回転を制御する。制御装置90の記憶装置には、定着装置50で実行される各種処理をプロセッサに実行させるための制御プログラムが格納されている。
【0028】
図4を参照して、制御装置90の機能構成を説明する。図4は、制御装置90の機能構成を示すブロック図である。図4に示すように、制御装置90は、機能的構成要素として、インピーダンス取得部101、特定部102、制御部103及び出力部104を備えている。制御装置90の各機能部の動作は、後述の制御方法の説明において詳細に説明するので、ここでは各機能部の機能を簡単に説明する。
【0029】
インピーダンス取得部101は、インピーダンス測定装置92によって測定された一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを受信する。特定部102は、一対の電極75の特定部位120を特定する(図6(a)参照)。特定部位120は、一対の電極75の表面に傷、割れ又は凹み等が形成された部分であり、定着ベルト51の回転に伴って定着ベルト51の回転方向に移動する。一対の電極75の表面に特定部位120が存在すると、当該特定部位120が形成された部分で一対の電極75と一対の摺動コンタクト65とが非接触になり、電気的接続が遮断される。これにより、一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスが増大する。そこで、特定部102は、インピーダンス測定装置92によって測定されるインピーダンスが閾値よりも大きくなる一対の電極75上の位置を特定部位120として特定する。
【0030】
すなわち、特定部位120とは、一対の電極75のうち少なくとも1つの電極75の周方向位置を表しており、より具体的には、傷等によって一対の摺動コンタクト65に対する電気的接続が遮断された電極75上の1以上の表面領域を意味する。特定部102は、特定された特定部位120を示す情報を記憶装置105に保存する。特定部位120を示す情報は、例えば、特定部位120に対応する定着ベルト51の回転角度(角度位置)、又は、特定部位120が検出されたタイミングを示す情報である。
【0031】
制御部103は、定着装置50の各部の動作を制御する。例えば、制御部103は、給電制御スイッチ55及び検知スイッチ93のオン/オフを制御する。より具体的に説明すると、制御部103は、インピーダンス測定装置92によって一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを測定するときに、給電制御スイッチ55をオフにし、検知スイッチ93をオンにする。これにより、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が遮断され、低電圧電源91から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が許容される。一方、定着ニップ領域14を通過する用紙5にトナー像を定着させる場合には、検知スイッチ93をオフにし、給電制御スイッチ55をオンにする。これにより、低電圧電源91から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が遮断され、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が許容される。
【0032】
ここで、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが特定部位120に対向するときに、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65に電力が供給されると、一対の摺動コンタクト65と一対の電極75との間でスパークが発生することがある。スパークが発生すると、定着ベルト51又はその周囲の部品に損傷が生じ、定着装置50の稼動に支障をきたす恐れがある。そこで、制御部103は、スパークの発生を未然に防ぐために、一対の摺動コンタクト65から一対の電極75への電力の供給を制御する。より具体的に説明すると、制御部103は、記憶装置105に記憶された特定部位120を取得し、一対の摺動コンタクト65の少なくとも一方が特定部位120に対向しないときに給電制御スイッチ55をオンにして高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65へ電力を供給し、一対の摺動コンタクト65の少なくとも一方が特定部位120に対向するときに給電制御スイッチ55をオフにして高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給を一時的に遮断する。言い換えれば、制御部103は、定着ベルト51が特定部位120を経由して電力が供給される回転位置になったときに、高電圧電源54から定着ベルト51への電力の供給が一時的に停止されるように給電制御スイッチ55を制御する。また、制御部103は、定着ベルト51への電力の供給が一時的に停止された後、定着ベルト51の回転に伴って、定着ベルト51が特定部位120を除く部分を経由して電力が供給される回転位置になったときに、高電圧電源54から定着ベルト51への電力の供給が再開されるように給電制御スイッチ55を制御する。なお、回転位置とは、基準回転角度に対する定着ベルト51の回転角度である。
【0033】
出力部104は、各種情報を表示装置に出力する。例えば、出力部104は、一対の電極75と一対の摺動コンタクト65との電気的接続を遮断する特定部位120に対応する表面領域の大きさが基準サイズよりも大きい場合に警報を表示装置に出力する。特定部位120に対応する表面領域の大きさとは、例えば定着ベルトの回転方向における一対の電極75の表面上の傷の大きさである。出力部104は、例えば、インピーダンスが閾値よりも大きくなる時間長を測定し、測定された時間長が予め設定された時間長よりも長いときに、特定部位120に対応する表面領域の大きさが基準サイズよりも大きいと判定する。
【0034】
次に、図5を参照して例示的な定着装置50の制御方法について説明する。図5は、例示的な定着装置50の制御方法を示すフローチャートである。図5に示す各工程は、制御装置90が定着装置50の各構成要素を制御することにより実行される。図5に示すように、例示的な制御方法は、一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを測定する事前検知工程ST1と、一対の摺動コンタクト65への電力供給を制御する給電制御工程ST2とを含む。
【0035】
事前検知工程ST1は、後述する工程ST11~ST17を含む。事前検知工程ST1では、まず制御装置90の制御部103は、給電制御スイッチ55をオフにして定着ベルト51への給電を停止させる(工程ST11)。次に、制御部103は、加圧ローラ52を駆動して定着ベルト51を一定の回転速度で回転させる(工程ST12)。次に、制御部103は、検知スイッチ93をオンにする(工程ST13)。
【0036】
図6(a)に示すように、給電制御スイッチ55をオフにし、検知スイッチ93をオンにすることにより、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が停止され、低電圧電源91から一対の摺動コンタクト65へ電力が供給される。低電圧電源91からの電力が一対の摺動コンタクト65に供給されることにより、一方の摺動コンタクト65、一方の電極75、発熱抵抗体72、他方の電極75及び他方の摺動コンタクト65を経由して、配線86に電流Iが流れる。インピーダンス測定装置92は、配線86を流れる電流Iと、一対の摺動コンタクト65間に付与される電圧とに基づいて一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを測定する(工程ST14)。インピーダンスの測定は、定着ベルト51を回転させながら連続的又は周期的に行われる。
【0037】
なお、一対の摺動コンタクト65間のインピーダンスを周期的に測定する場合には、インピーダンス測定装置92は、検出すべき特定部位120のサイズに応じた周期でインピーダンスを測定する。例えば、定着ベルト51の回転速度が600mm/sであり、定着ベルト51の回転方向において0.08mm以上の長さの特定部位120を検出する場合には、インピーダンス測定装置92は、8kHz以上のサンプリング周波数でインピーダンスを測定する。これにより、検出ピッチが0.08mm以下となり、検出すべき大きさの特定部位120を適切に検出することができる。インピーダンス測定装置92は、測定したインピーダンスを制御装置90に出力する。制御装置90のインピーダンス取得部101は、インピーダンス測定装置92によって測定されたインピーダンスを取得する。
【0038】
図7は、インピーダンス測定装置92によって測定されたインピーダンスの経時的変化の一例を示している。図6(a)に示すように、一対の電極75の表面に特定部位120が形成されている場合には、一対の摺動コンタクト65の少なくとも一方が一対の電極75上の特定部位120に対向するタイミングで一対の摺動コンタクト65と一対の電極75とが部分的に非接触になり、インピーダンスが増加する。そこで、特定部102は、測定されたインピーダンスが閾値よりも大きくなる一対の電極75上の位置を特定部位120として特定する(工程ST15)。すなわち、特定部位120は、一対の電極75の表面に形成された傷等によって一対の電極75と一対の摺動コンタクト65との電気的接続が遮断される一対の電極75の一部分である。
【0039】
図8は、インピーダンス測定装置92の抵抗値と検知部56のゲインとの関係を示している。図8のグラフの横軸はインピーダンス測定装置92の抵抗値を示し、当該グラフの縦軸は一対の摺動コンタクト65に与えられる検出電圧、及び、検知部56のゲインを示している。なお、検知部56のゲインとは、一対の摺動コンタクト65が特定部位120に対向するときに検出される検出電圧(異常時検出電圧)と一対の摺動コンタクト65が特定部位120に対向していないときに検出される検出電圧(正常時検出電圧)との比である。図8に示すように、インピーダンス測定装置92が100Ω以上の抵抗値を有している場合には、検知部56のゲインは20dB以上になる。このように、インピーダンス測定装置92の抵抗値を100Ω以上にすることにより、高い精度で特定部位120を特定することが可能となる。
【0040】
特定部102は、特定した特定部位120を定着ベルト51の回転角度と関連付けて記憶装置105に記憶する(工程ST16)。例えば、特定部102は、定着ベルト51上の基準点が一対の摺動コンタクト65に対向する定着ベルト51の回転角度を基準回転角度(0°)として設定し、当該基準回転角度を基点として特定部位120が検出された回転角度を記憶装置105に記憶してもよい。なお、定着ベルト51の回転開始時点のタイミングを基準として、特定部位120が検出されたタイミング(特定タイミング)を記憶装置105に記憶してもよい。制御部103は、特定部位120が検出された回転角度又はタイミングを記憶装置105に保存した後に、検知スイッチ93をオフにする(工程ST17)。
【0041】
次いで、給電制御工程ST2が行われる。給電制御工程ST2は、後述する工程ST21~ST25を含む。給電制御工程ST2では、まず制御部103が、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが特定部位120に対向するか否かを判定する(工程ST21)。例えば制御部103は、特定部位120が検出された回転角度を記憶装置105から取得し、定着ベルト51の回転角度が記憶装置105から取得した回転角度と一致する場合に、一対の摺動コンタクト65が特定部位120に対向していると判定する。一方、制御部103は、定着ベルト51の回転角度が記憶装置105から取得した回転角度と一致しない場合には、一対の摺動コンタクト65が特定部位120に対向していないと判定する。
【0042】
一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが特定部位120に対向していないと判定された場合には、制御部103が給電制御スイッチ55をオンにする(工程ST22)。図6(b)に示すように、給電制御スイッチ55がオンになり、検知スイッチ93がオフになると、低電圧電源91から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が停止され、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65へ電力が供給される。高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65に電力が供給されると、一方の摺動コンタクト65、一方の電極75、発熱抵抗体72、他方の電極75及び他方の摺動コンタクト65を経由して、配線84に電流iが流れる。定着ベルト51の発熱抵抗体72に電流iが流れることによりジュール熱が発生し、定着ベルト51が加熱される。加熱された定着ベルト51は、加圧ローラ52と共に定着ニップ領域14を通過する用紙5を加圧及び加熱して、用紙5にトナー像を定着させる。
【0043】
一方、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが特定部位120に対向すると判定された場合には、制御部103が給電制御スイッチ55をオフにする(工程ST25)。その結果、図7に示すように、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力供給が一時的に遮断され、一対の摺動コンタクト65への通電が一時的に停止される。一対の摺動コンタクト65への通電が停止されることにより、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが特定部位120に対向するときに一対の摺動コンタクト65と一対の電極75との間でスパークが発生することが防止される。
【0044】
制御部103による給電制御スイッチ55の制御は、定着ベルト51への給電制御が終了するまで継続して行われる(工程ST23)。給電制御スイッチ55の制御は、検出すべき特定部位120のサイズに応じた周期で繰り返し行われる。給電制御が終了すると、制御部103によって給電制御スイッチ55がオフにされる(工程ST24)。
【0045】
なお、制御装置90の出力部104は、定着ベルト51の回転方向における一対の電極75上の特定部位120の大きさが基準サイズよりも大きいときに、表示装置に警報を出力してもよい。出力部104は、例えば、インピーダンスが閾値よりも大きくなる時間長を測定し、測定された時間長が予め設定された時間長よりも長いときに、特定部位120の長さが基準サイズよりも大きいと判定する。
【0046】
また、一対の電極75に複数の特定部位120が形成されている場合には、出力部104は、複数の特定部位120の累積サイズが基準サイズよりも大きいときに表示装置に警報を出力してもよい。例えば図9に示すように、定着ベルト51が一回転する間に測定されたインピーダンスが閾値を3回超えており、閾値を超えた時間長がそれぞれT1、T2、T3であるとする。この場合、出力部104は、時間長T1,T2,T3の合計が所定の時間長を超えると判定したときに表示装置に警報を出力する。これにより、一対の電極75の表面に形成された傷の累積サイズが基準サイズよりも大きいことをオペレータに報知することができる。
【0047】
次に、図10を参照して、制御装置90のプロセッサで実行可能な命令を含む制御プログラム210及び制御プログラム210を記憶する記録媒体220について説明する。図10は、記録媒体220に記録された制御プログラム210の構成を示す図である。
【0048】
図10に示されるように、制御プログラム210は、メインモジュール200、インピーダンス取得モジュール201、特定モジュール202、制御モジュール203及び出力モジュール204を備える。メインモジュール200は、制御装置90に係る処理を統括的に制御する部分である。インピーダンス取得モジュール201、特定モジュール202、制御モジュール203及び出力モジュール204を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上述したインピーダンス取得部101、特定部102、制御部103及び出力部104の機能と同様である。
【0049】
制御プログラム210は、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及び半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体220によって提供される。制御プログラム210は、データ信号としてネットワークを介して提供されてもよい。
【0050】
以上説明した画像形成装置1、定着装置50、制御方法、制御プログラム210及び記録媒体220では、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが定着ベルト51の特定部位120に対向するときに、給電制御スイッチ55が作動されて高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が遮断される。したがって、一対の摺動コンタクト65と一対の電極75との間でスパークが生じることが抑制され、一対の電極75の破損を未然に防ぐことができる。また、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが定着ベルト51の特定部位120に対向していないときには、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65へ電力が供給される。すなわち、定着ベルト51が一回転する間において、定着ベルト51が特定部位120を除く部分を経由して電力が供給される回転位置にあるときに高電圧電源54から定着ベルト51に電力が供給され、定着ベルト51の回転に伴って、定着ベルト51が特定部位120を経由して電力が供給される回転位置になったときに高電圧電源54から定着ベルト51への電力の供給が一時的に停止され、定着ベルト51が更に回転して、再び定着ベルト51が特定部位120を除く部分を経由して電力が供給される回転位置になったときに、高電圧電源54から定着ベルト51への電力の供給が再開されるように、給電制御スイッチ55のオン/オフが動的に制御される。このように給電制御スイッチ55を動的に制御することにより、一対の電極75に特定部位が存在する場合でもあっても、スパークの発生を抑制しつつ、定着装置50を継続的に稼動させることができる。
【0051】
本明細書に記載の全ての側面、利点及び特徴が、必ずしも、いずれかひとつの特定の例及び実施形態により達成される又は含まれるわけではないことは理解されたい。実際、本明細書において様々な例を記載し示したが、他の例もその配置及び詳細について修正することができることは明らかであるべきだ。ここに請求される保護主題の精神及び範囲に包含される全ての修正及び変形を請求する。
【0052】
例えば、図2に示す定着装置50では、一対の電極75が定着ベルト51の両端部に設けられているが、一対の電極75が定着ベルト51の両端部以外の位置に設けられていてもよい。図11(a)及び11(b)は、定着装置の変形例を示している。図11(a)及び11(b)に示す定着装置は、発熱抵抗体72の外周面を覆うよう配置された略円筒形状の電極75を備えている。この電極75の外周面には、定着ベルト51の回転軸線に平行に延在する一対の摺動コンタクト65が当接している。この定着装置では、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65に電力が供給されたときに、定着ベルト51の発熱抵抗体72に周方向に電流が流れ、定着ベルト51が発熱する。このような構成であっても、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが定着ベルト51の特定部位120に対向するときに、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が遮断されることにより、スパークの発生を防止することができる。
【0053】
図12(a)及び12(b)は、定着装置の別の変形例を示している。この定着装置は、発熱抵抗体72の内周面及び外周面を覆う略円筒形状の一対の電極75を備えている。一対の摺動コンタクト65は、定着ベルト51の回転軸線に平行に延在しており、発熱抵抗体72の内周面及び外周面を覆う一対の電極75にそれぞれ当接する。この定着装置50では、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65に電力が供給されたときに、定着ベルト51の発熱抵抗体72の厚み方向に電流が流れ、定着ベルト51が発熱する。このような構成であっても、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが定着ベルト51の特定部位120に対向するときに、高電圧電源54から一対の摺動コンタクト65への電力の供給が遮断されることにより、スパークの発生を防止することができる。
【0054】
図2に示す例では、制御装置90が、検知部56によって測定されたインピーダンスに基づいて特定部位120を特定しているが、制御装置90はインピーダンスを用いずに特定部位120を特定してもよい。例えば、図13に示すように、定着装置50は、一対の電極75の表面を撮像する撮像部95を更に備えていてもよい。制御装置90は、撮像部95によって取得された一対の電極75の表面の画像に対して画像処理を行い、一対の電極75の表面に形成された傷によって生じるコントラストの差異等から特定部位120を特定する。このように特定部位120を特定した場合であっても、一対の摺動コンタクト65と一対の電極75との間でスパークが生じることを抑制し、一対の電極75の破損を未然に防ぐことができる。
【0055】
なお、定着装置50は、回転可能な回転体として、略円筒形状を有する定着ベルト51に代えて、略円柱形状を有する定着ローラを備えていてもよい。この場合、定着装置50の制御装置90は、定着ローラの表面上の特定部位を経由した定着ローラへの電力の供給が停止され、定着ローラの表面上の特定部位を除く部分を経由した定着ローラへの電力の供給が許容されるように、給電制御スイッチ55を動的に制御する。これにより、スパークの発生を防止しつつ、定着装置50を継続的に稼動させることができる。
【0056】
さらに、図2に示す例では、給電制御スイッチ55は、高電圧電源54と一対の電極75との間に設けられ、高電圧電源54と一対の電極75との電気的接続を制御しているが、給電制御スイッチ55は、高電圧電源54の作動又は作動停止を制御してもよい。例えば、給電制御スイッチ55は、画像形成装置1の主電源(例えば外部電源)と高電圧電源54との間に設けられ、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが定着ベルト51の特定部位120に対向するときに、高電圧電源54の作動を停止して定着ベルト51の電力の供給を一時的に停止し、一対の摺動コンタクト65の少なくとも1つが定着ベルト51の特定部位120に対向していないときに、高電圧電源54を作動させて定着ベルト51に電力を供給してもよい。
【0057】
また、定着装置50は、必ずしも一対の摺動コンタクト65を備えていなくてもよい。例えば、定着装置50は、一対の摺動コンタクト65に代えて、非接触で一対の電極75に電力を供給する非接触給電装置を備えていてもよい。そして、給電制御スイッチ55は、一対の電極75上の特定部位120の位置に応じて非接触給電装置の作動又は作動停止を制御してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13