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特開2024-178492加工方法、加工装置、および加工プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178492
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】加工方法、加工装置、および加工プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23B 11/00 20060101AFI20241218BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20241218BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241218BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241218BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20241218BHJP
   B23P 23/02 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
B23B11/00
B23K26/34
B23K26/21 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
B23P23/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095330
(22)【出願日】2023-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】森 貴則
【テーマコード(参考)】
3C045
4E168
【Fターム(参考)】
3C045BA37
4E168BA35
4E168BA81
4E168CB03
4E168CB07
(57)【要約】
【課題】付加加工と旋削加工とを同時に実行するための技術を提供する。
【解決手段】加工方法は、ワーク主軸にワークを回転させるステップと、レーザヘッドによる付加加工と工具による旋削加工とを回転中のワークに対して同時に行う同時加工を実行するステップとを備える。同時加工は、レーザヘッドおよび工具がワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、レーザヘッドによるワークの付加加工点と工具によるワークの旋削加工点とが回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置によるワークの加工方法であって、
前記加工装置は、
前記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、
前記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、
工具を保持するための刃物台とを備え、
前記加工方法は、
前記ワーク主軸に前記ワークを回転させるステップと、
前記レーザヘッドによる付加加工と前記工具による旋削加工とを回転中の前記ワークに対して同時に行う同時加工を実行するステップとを備え、
前記同時加工は、前記レーザヘッドおよび前記工具が前記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、前記レーザヘッドによる前記ワークの付加加工点と前記工具による前記ワークの旋削加工点とが前記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される、加工方法。
【請求項2】
前記同時加工は、前記一方側において前記付加加工点が前記旋削加工点よりも先行した状態で実行される、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記同時加工は、前記一方側において前記旋削加工点が前記付加加工点よりも先行した状態で実行される、請求項1に記載の加工方法。
【請求項4】
前記付加加工点と、前記ワークの回転中心と、前記旋削加工点とは、前記回転軸方向から見て、前記付加加工点、前記ワークの回転中心、および前記旋削加工点の順に並んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項5】
前記加工装置は、さらに、前記ワークに流体を吐出するための吐出機構を備え、
前記同時加工は、前記ワークに前記流体を吐出しながら実行される、請求項1または2に記載の加工方法。
【請求項6】
前記流体は、空気またはクーラントである、請求項5に記載の加工方法。
【請求項7】
前記同時加工は、前記一方側において前記付加加工点が前記ワークに対する前記流体の吐出箇所よりも先行し、かつ前記一方側において前記吐出箇所が前記旋削加工点よりも先行した状態で実行される、請求項5に記載の加工方法。
【請求項8】
ワークの加工装置であって、
前記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、
前記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、
工具を保持するための刃物台と、
前記加工装置を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、
前記ワーク主軸に前記ワークを回転させる処理と、
前記レーザヘッドによる付加加工と前記工具による旋削加工とを回転中の前記ワークに対して同時に行う同時加工を実行する処理とを実行し、
前記同時加工は、前記レーザヘッドおよび前記工具が前記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、前記レーザヘッドによる前記ワークの付加加工点と前記工具による前記ワークの旋削加工点とが前記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される、加工装置。
【請求項9】
ワークの加工装置によって実行される加工プログラムであって、
前記加工装置は、
前記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、
前記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、
工具を保持するための刃物台とを備え、
前記加工プログラムは、前記加工装置に、
前記ワーク主軸に前記ワークを回転させるステップと、
前記レーザヘッドによる付加加工と前記工具による旋削加工とを回転中の前記ワークに対して同時に行う同時加工を実行するステップとを実行させ、
前記同時加工は、前記レーザヘッドおよび前記工具が前記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、前記レーザヘッドによる前記ワークの付加加工点と前記工具による前記ワークの旋削加工点とが前記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される、加工プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークの加工方法、ワークの加工装置、およびワークの加工プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-041603号公報(特許文献1)は、付加加工用ヘッドと、旋削加工を行うための刃物台とを備えた加工機械を開示している。当該加工機械は、ワークの付加加工とワークの旋削加工とを1つの機械で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-041603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークの加工効率を上げるために、付加加工と旋削加工とを同時に実行するための技術が望まれている。特許文献1は、付加加工と旋削加工とを同時に実行することについて開示するものではない。
【0005】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、ある局面における目的は、付加加工と旋削加工とを同時に実行するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一例では、加工装置によるワークの加工方法が提供される。上記加工装置は、上記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、上記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、工具を保持するための刃物台とを備える。上記加工方法は、上記ワーク主軸に上記ワークを回転させるステップと、上記レーザヘッドによる付加加工と上記工具による旋削加工とを回転中の上記ワークに対して同時に行う同時加工を実行するステップとを備える。上記同時加工は、上記レーザヘッドおよび上記工具が上記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、上記レーザヘッドによる上記ワークの付加加工点と上記工具による上記ワークの旋削加工点とが上記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される。
【0007】
本開示の一例では、上記同時加工は、上記一方側において上記付加加工点が上記旋削加工点よりも先行した状態で実行される。
【0008】
本開示の一例では、上記同時加工は、上記一方側において上記旋削加工点が上記付加加工点よりも先行した状態で実行される。
【0009】
本開示の一例では、上記付加加工点と、上記ワークの回転中心と、上記旋削加工点とは、上記回転軸方向から見て、上記付加加工点、上記ワークの回転中心、および上記旋削加工点の順に並んでいる。
【0010】
本開示の一例では、上記加工装置は、さらに、上記ワークに流体を吐出するための吐出機構を備える。上記同時加工は、上記ワークに上記流体を吐出しながら実行される。
【0011】
本開示の一例では、上記流体は、空気またはクーラントである。
【0012】
本開示の一例では、上記同時加工は、上記一方側において上記付加加工点が上記ワークに対する上記流体の吐出箇所よりも先行し、かつ上記一方側において上記吐出箇所が上記旋削加工点よりも先行した状態で実行される。
【0013】
本開示の他の例では、ワークの加工装置が提供される。上記加工装置は、上記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、上記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、工具を保持するための刃物台と、上記加工装置を制御するための制御部とを備える。上記制御部は、上記ワーク主軸に上記ワークを回転させる処理と、上記レーザヘッドによる付加加工と上記工具による旋削加工とを回転中の上記ワークに対して同時に行う同時加工を実行する処理とを実行する。上記同時加工は、上記レーザヘッドおよび上記工具が上記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、上記レーザヘッドによる上記ワークの付加加工点と上記工具による上記ワークの旋削加工点とが上記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される。
【0014】
本開示の他の例では、加工装置が実行するワークの加工プログラムが提供される。上記加工装置は、上記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、上記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、工具を保持するための刃物台とを備える。上記加工プログラムは、上記加工装置に、上記ワーク主軸に上記ワークを回転させるステップと、上記レーザヘッドによる付加加工と上記工具による旋削加工とを回転中の上記ワークに対して同時に行う同時加工を実行するステップとを実行させる。上記同時加工は、上記レーザヘッドおよび上記工具が上記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、上記レーザヘッドによる上記ワークの付加加工点と上記工具による上記ワークの旋削加工点とが上記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される。
【0015】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】加工装置の外観の一例を示す図である。
図2】加工装置の装置構成の一例を示す図である。
図3】付加加工中におけるレーザヘッドの断面を示す図である。
図4】同時加工の態様をX軸方向から概略的に示す図である。
図5】同時加工の態様をZ軸方向から概略的に示す図である。
図6】加工装置の駆動機構の一例を示す図である。
図7】制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8図4に示される同時加工に係る処理の流れを示すフローチャートである。
図9】変形例1に従う同時加工の態様を概略的に示す図である。
図10】変形例1に従う同時加工に係る処理の流れを示すフローチャートである。
図11】変形例3に従う同時加工の態様を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0018】
<A.加工装置100の外観>
まず、図1を参照して、実施の形態に従う加工装置100について説明する。図1は、加工装置100の外観の一例を示す図である。
【0019】
加工装置100は、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing))とが可能なAM/SMハイブリッド加工機である。除去加工の機能としては、たとえば、ミーリング機能と、旋削機能とが挙げられる。
【0020】
加工装置100は、たとえば、カバー体130と、操作盤200とを含む。
【0021】
カバー体130は、加工装置100の内部に設けられている部品を保護するための機構である。カバー体130には、ドアDRが設けられている。ドアDRは、たとえば、スライド式のドアである。ドアDRは、モータなどの駆動源により開閉可能に構成されてもよいし、手動で開閉可能に構成されてもよい。
【0022】
操作盤200は、汎用のコンピュータであり、加工に関する各種情報を表示するためのディスプレイを有する。当該ディスプレイは、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、またはその他の表示機器である。また、当該ディスプレイは、タッチパネルを備え、加工装置100に対する各種操作をタッチ操作で受け付ける。
【0023】
<B.加工装置100の装置構成>
次に、図2を参照して、加工装置100の装置構成について説明する。図2は、加工装置100の装置構成の一例を示す図である。
【0024】
上述のように、加工装置100は、カバー体130を備える。カバー体130は、加工装置100の外観を成すとともに、ワークWの付加加工を行うための加工エリアARを区画形成している。
【0025】
また、加工装置100は、ベッド11と、刃物台16と、ワーク主軸22と、心押し台25と、工具主軸30と、レーザヘッド140とを備える。
【0026】
説明の便宜のために、以下では、ワーク主軸22の回転軸方向を「Z軸方向」とも称する。Z軸方向は、図2に示されている軸AX1~AX3と平行である。また、Z軸方向に直交する水平面上の一方向を「X軸方向」とも称する。X軸方向およびZ軸方向の両方に直交する方向を「Y軸方向」と称する。図2の例では、Y軸方向は、重力方向に相当している。
【0027】
ベッド11は、加工装置100内に設けられている各種装置を支持するためのベース部材である。図2の例では、ベッド11は、刃物台16と、ワーク主軸22と、心押し台25と、工具主軸30と、レーザヘッド140とを支持している。ベッド11は、工場などの床面に設置される。ベッド11は、鋳鉄などの金属から形成されている。
【0028】
刃物台16は、タレット18を有する。タレット18は、軸AX1を中心として旋回可能に構成されている。タレット18は、軸AX1を中心とした周方向に間隔を隔てて複数の工具を保持する。また、刃物台16は、モータなどの各種駆動機構によって、X軸方向およびY軸方向に移動可能に構成されている。刃物台16は、ワーク主軸22によって回転駆動されているワークWに対して、タレット18に保持される固定工具を接触させることで旋削加工を行う。
【0029】
ワーク主軸22は、ワークWを保持しながら回転可能に構成されている。より具体的には、ワーク主軸22には、チャック機構23が設けられている。チャック機構23は、ワーク主軸22に対してワークWを固定するための機構である。また、ワーク主軸22は、その軸方向に沿う軸AX2を中心として回転可能に構成されている。
【0030】
心押し台25は、モータなどの各種駆動機構によって軸AX3に沿って移動可能に構成される。これにより、心押し台25は、ワーク主軸22とは反対側から長尺状のワークWを支持する。典型的には、軸AX3は、軸AX2と同軸上にある。また、心押し台25は、軸AX3を中心として回転可能に構成されている。
【0031】
工具主軸30は、たとえば、ワーク主軸22および心押し台25よりも高い位置に設けられている。また、工具主軸30は、工具やレーザヘッド140を脱着可能に構成される。図2には、工具主軸30に対してレーザヘッド140が装着されている例が示されている。
【0032】
工具主軸30に対するレーザヘッド140の脱着は、たとえば、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)によって実現される。加工装置100は、ワークWの付加加工を実行する際には工具主軸30にレーザヘッド140を装着する。一方で、加工装置100は、ワークWの除去加工を実行する際には工具主軸30に工具を装着する。
【0033】
除去加工の一例としては、ワーク主軸22に固定されているワークWに対して回転中の工具を接触させるミーリング加工が挙げられる。除去加工の他の例としては、軸AX2を中心として回転するワークWに対して工具を押し当てる旋削加工が挙げられる。
【0034】
レーザヘッド140は、工具主軸30に装着された状態でDED(Direct Energy Deposition)方式による付加加工を行う。付加加工を実現するための機構として、レーザヘッド140は、ヘッド本体142と、レーザノズル146とを有する。
【0035】
ヘッド本体142には、ケーブル(図示しない)を介して粉末材料が供給される。供給される粉末材料は、金属粉末であってもよいし、樹脂粉末であってもよいし、レーザ光の照射で融解するその他の種類の粉末であってもよい。
【0036】
レーザノズル146は、ワークWに向けてレーザ光を照射するとともに、ワークWにおけるレーザ光の照射領域を定める。レーザヘッド140に供給された粉末材料は、レーザノズル146を通じてワークWに向けて吐出される。
【0037】
<C.付加加工>
次に、図3を参照して、レーザヘッド140による付加加工についてさらに詳細に説明する。図3は、付加加工中におけるレーザヘッド140の断面を示す図である。
【0038】
加工装置100は、レーザヘッド140を制御することで様々な付加加工を実現することができる。付加加工の種類としては、積層加工とコーティング加工とが挙げられる。積層加工は、ワークWに層SLを積み上げていく加工である。コーティング加工は、ワークWの表面を層SLで覆う加工である。
【0039】
実施の形態に従う加工装置100は、高速付加加工を実現可能に構成される。高速付加加工技術としては、たとえば、EHLA(Extreme High-speed Laser Application)が挙げられる。
【0040】
より具体的には、レーザヘッド140は、ワーク主軸22の軸方向(すなわち、Z軸方向)に移動しながら、回転中のワークWに対してレーザ光LSを照射する。その結果、レーザ光LSの照射部分が融解し、溶融池MPがワークW上に形成される。
【0041】
また、レーザヘッド140は、レーザ光LSの照射と並行して、粉末材料PMをワークWに供給する。供給された粉末材料PMは、レーザ光LSによりワークWの表面に到達する前に融解する。その結果、融解状態の粉末材料PMが溶融池MPに投入される。溶融池MPがワークW上で硬化すると、層SLとなる。
【0042】
<D.同時加工>
加工装置100は、高速付加加工の最中にはワークWを高速に回転する。そのため、加工装置100は、ワークWの付加加工と並行して、ワークWの旋削加工を実行することができる。以下では、ワークWの付加加工とワークWの旋削加工とを同時に実行する加工を「同時加工」とも称する。
【0043】
図4および図5を参照して、加工装置100による同時加工について説明する。図4は、同時加工の態様をX軸方向から概略的に示す図である。図5は、同時加工の態様をZ軸方向から概略的に示す図である。
【0044】
図4には、ワークWに対して付加加工を行っているレーザヘッド140と、ワークWに対して旋削加工を行っている工具Tとが示されている。工具Tは、上述のタレット18を介して刃物台16(図2参照)に固定されている。
【0045】
加工装置100は、レーザヘッド140による付加加工と工具Tによる旋削加工とを回転中のワークWに対して同時に実行する。このとき、加工装置100は、レーザヘッド140および工具TをZ軸方向の一方側に駆動しながら、かつ、レーザヘッド140によるワークWの付加加工点LPと工具TによるワークWの旋削加工点TPとをZ軸方向において所定距離ΔD1以上離した状態で、同時加工を実行する。
【0046】
付加加工点LPは、レーザヘッド140がワークWに対してレーザ光を照射している箇所に相当する。旋削加工点TPは、工具TがワークWを旋削加工している箇所に相当する。異なる言い方をすれば、旋削加工点TPは、工具TとワークWとの接触点に相当する。
【0047】
図4の例では、加工装置100は、レーザヘッド140および工具Tの送り方向において付加加工点LPを旋削加工点TPよりも先行させた状態で同時加工を行っている。これにより、ワークW上の各箇所は、「付加加工→旋削加工」の順で加工されることになる。典型的には、レーザヘッド140の送り速度は、工具Tの送り速度と同じである。
【0048】
付加加工点LPは、高温になる。そのため、付加加工された箇所に対して直ぐに旋削加工が行われると、工具Tが熱により消耗してしまう。また、ワークWは、高温時には膨張する。ワークWが膨張している状態で旋削加工が行われると、寸法管理が困難になり、所望の加工精度が得られない可能性がある。
【0049】
これに対して、本実施の形態に従う加工装置100は、付加加工点LPを旋削加工点TPから距離ΔD1以上離した状態で同時加工を実行する。そのため、加工装置100は、ワークWの温度が低下した後に旋削加工を実行することができる。結果として、加工装置100は、熱による工具Tの消耗を抑制することができる。また、加工装置100は、ワークWが膨張していない状態で旋削加工を実行することができ、加工精度が低下することを回避できる。
【0050】
好ましくは、付加加工点LPと、ワークWの回転中心CPと、旋削加工点TPとは、Z軸方向から見て、付加加工点LP、ワークWの回転中心CP、および旋削加工点TPの順に並んでいる。異なる言い方をすれば、ワークWの回転中心CPは、Z軸方向の直交方向において、付加加工点LPと旋削加工点TPとの間に位置している。図5の例では、付加加工点LPと、ワークWの回転中心CPと、旋削加工点TPとは、Z軸方向から見て、一直線上に位置している。つまり、同時加工中における付加加工はY軸軸方向の一方側から行われ、同時加工中における旋削加工は、Y軸方向の他方側から行われている。
【0051】
典型的には、付加加工点LPは、Z軸方向から見てワークWの最上部に位置する。一方で、旋削加工点TPは、Z軸方向から見てワークWの最下部に位置する。付加加工と旋削加工との各々がワークWを挟んで互いに反対側から行われることで、加工装置100は、付加加工および旋削加工の一方が他方の加工精度に影響を与えることを防止できる。
【0052】
<E.加工装置100の駆動機構>
次に、図6を参照して、加工装置100における駆動機構について説明する。図6は、加工装置100の駆動機構の一例を示す図である。
【0053】
図6に示されるように、加工装置100は、制御部50と、駆動部210,220,230A,230B,240とを含む。
【0054】
制御部50は、加工装置100内の各種装置を制御する。制御部50の装置構成は、任意である。制御部50は、単体の制御ユニットで構成されてもよいし、複数の制御ユニットで構成されてもよい。一例として、制御部50は、CNC(Computer Numerical Control)と、PLC(Programmable Logic Controller)との少なくとも一方を含む。
【0055】
駆動部210は、ワーク主軸22を回転駆動するための駆動機構である。駆動部210は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部210は、モータドライバ211Cと、モータ212Cとで構成されている。
【0056】
モータドライバ211Cは、ワーク主軸22の目標回転角度または目標回転速度の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標回転角度または当該目標回転速度に応じた電流をモータ212Cに出力する。これにより、ワーク主軸22に保持されているワークは、Z軸方向を回転中心として回転する。モータ212Cは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0057】
駆動部220は、心押し台25を駆動するための駆動機構である。駆動部220は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部220は、モータドライバ221Zと、モータ222Zとで構成されている。
【0058】
モータドライバ221Zは、ワーク主軸22に関する目標位置の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標位置に応じた電流をモータ222Zに出力する。これにより、モータ222Zは、Z軸方向の任意の位置に心押し台25を移動する。モータ222Zは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0059】
駆動部230Aは、工具主軸30の位置を移動するための駆動機構である。上述のレーザヘッド140は、工具主軸30に装着されることで駆動される。駆動部230Aは、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部230Aは、モータドライバ231X~231Zと、モータ232X~232Zとで構成されている。
【0060】
モータドライバ231Xは、X軸方向における工具主軸30の目標位置の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標位置に応じた電流をモータ232Xに出力する。これにより、モータ232Xは、X軸方向の任意の位置に工具主軸30を駆動する。モータ232Xは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0061】
モータドライバ231Yは、Y軸方向における工具主軸30の目標位置の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標位置に応じた電流をモータ232Yに出力する。これにより、モータ232Yは、Y軸方向の任意の位置に工具主軸30を駆動する。モータ232Yは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0062】
モータドライバ231Zは、Z軸方向における工具主軸30の目標位置の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標位置に応じた電流をモータ232Zに出力する。これにより、モータ232Zは、Z軸方向の任意の位置に工具主軸30を移動する。モータ232Zは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0063】
駆動部230Bは、工具主軸30を回転駆動するための駆動機構である。駆動部230Bは、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部230Bは、モータドライバ231A,231Bと、モータ232A,232Bとで構成されている。
【0064】
モータドライバ231Aは、X軸方向を中心とした工具主軸30の目標回転角度または目標回転速度の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標回転角度または当該目標回転速度に応じた電流をモータ232Aに出力する。モータ232Aは、X軸方向を中心として工具主軸30を旋回駆動する。モータ232Aは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0065】
モータドライバ231Bは、工具主軸30の軸方向を回転中心とした工具主軸30の目標回転角度または目標回転速度の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標回転角度または当該目標回転速度に応じた電流をモータ232Bに出力する。モータ232Bは、工具主軸30の軸方向を回転中心として工具主軸30を回転駆動する。モータ232Bは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0066】
駆動部240は、刃物台16やタレット18を駆動するための駆動機構である。駆動部240は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部240は、モータドライバ241C,241Y,241Zと、モータ242C,242Y,242Zとで構成されている。
【0067】
モータドライバ241Cは、Z軸方向を中心としたタレット18の旋回角度に関して目標値の入力を受け、当該目標値に応じた電流をモータ242Cに出力する。これにより、モータドライバ241Cは、Z軸方向を回転中心としたタレット18の旋回角度を制御する。モータ242Cは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0068】
モータドライバ241Yは、Y軸方向における刃物台16の目標位置の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標位置に応じた電流をモータ242Yに出力する。これにより、モータ242Yは、Y軸方向の任意の位置に刃物台16を移動する。モータ242Yは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0069】
モータドライバ241Zは、Z軸方向における刃物台16の目標位置の入力を制御部50から逐次的に受け、当該目標位置に応じた電流をモータ242Zに出力する。これにより、モータ242Zは、Z軸方向の任意の位置に刃物台16を移動する。モータ242Zは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0070】
<F.制御部50のハードウェア構成>
次に、図7を参照して、図6に示される制御部50のハードウェア構成について説明する。図7は、制御部50のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0071】
上述のように、制御部50は、CNCであってもよいし、PLCであってもよい。図7には、CNCとしての制御部50のハードウェア構成が示されている。
【0072】
制御部50は、たとえば、制御回路101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、補助記憶装置120とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス109に接続される。
【0073】
制御回路101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0074】
制御回路101は、加工プログラム122などの各種プログラムを実行することで制御部50の動作を制御する。加工プログラム122は、本明細書に記載の各種処理を実現するためのプログラムである。制御回路101は、加工プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、ROM102からRAM103に加工プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、加工プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0075】
通信インターフェイス104は、各種装置と通信を実現するためのインターフェイスである。加工装置100は、たとえば、通信インターフェイス104を介して、ワークの付加加工を実現するための各種駆動ユニット(たとえば、上述の駆動部210,220,230A,230B,240など)と通信する。
【0076】
補助記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置120は、加工プログラム122などを格納する。加工プログラム122の格納場所は、補助記憶装置120に限定されず、制御回路101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0077】
また、加工プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。この場合、本実施の形態に従う各種処理は、任意のプログラムと協働して実現される。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う加工プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、加工プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが加工プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で制御部50が構成されてもよい。
【0078】
<G.同時加工の制御フロー>
次に、図8を参照して、同時加工の制御フローについて説明する。図8は、図4に示される同時加工に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0079】
図8に示される処理は、たとえば、加工装置100の制御部50が上述の加工プログラム122を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0080】
ステップS112において、制御部50は、上述の駆動部210(図6参照)を制御し、ワークWの回転を開始する。
【0081】
ステップS114において、制御部50は、付加加工と旋削加工との同時加工を開始する。このとき、制御部50は、上述の付加加工点LPが上述の旋削加工点TPよりも先行するように、レーザヘッド140および刃物台31の各々をZ軸方向に同速度で送り駆動する。また、制御部50は、付加加工点LPと旋削加工点TPとの間の距離を所定距離ΔD1(図4参照)に維持する。距離ΔD1は、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。
【0082】
ステップS120において、制御部50は、レーザヘッド140が加工終了位置に到達したか否かを判断する。レーザヘッド140に係る加工終了位置は、たとえば、加工プログラム122に記述されている。
【0083】
制御部50は、レーザヘッド140が加工終了位置に到達したと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御部50は、ステップS120の処理を再び実行する。
【0084】
ステップS122において、制御部50は、レーザヘッド140による付加加工を停止する。より具体的には、制御部50は、粉末材料の供給と、レーザ光の照射とをレーザヘッド140に停止させる。
【0085】
ステップS130において、制御部50は、刃物台31が加工終了位置に到達したか否かを判断する。刃物台31に係る加工終了位置は、たとえば、加工プログラム122に記述されている。
【0086】
制御部50は、刃物台31が加工終了位置に到達したと判断した場合(ステップS130においてYES)、制御をステップS132に切り替える。そうでない場合には(ステップS130においてNO)、制御部50は、ステップS130の処理を再び実行する。
【0087】
ステップS132において、制御部50は、工具Tによる旋削加工を停止する。より具体的には、制御部50は、ワークWの回転をワーク主軸22に停止させるとともに、ワークWから工具Tを離すように刃物台31の駆動を制御する。
【0088】
<H.変形例1>
次に、図9を参照して、図4に示される同時加工の変形例について説明する。
【0089】
上述の図4の例では、同時加工は、付加加工点LPを旋削加工点TPよりも先行させた状態で行われていた。しかしながら、同時加工は、旋削加工点TPを付加加工点LPよりも先行させた状態で行われてもよい。
【0090】
図9は、変形例1に従う同時加工の態様を概略的に示す図である。図9の例では、加工装置100は、レーザヘッド140および工具Tの送り方向において旋削加工点TPを付加加工点LPよりも先行させた状態で同時加工を実行している。また、図9の例では、旋削加工点TPは、付加加工点LPよりも距離ΔD2だけ先行している。
【0091】
距離ΔD2は、ワークWを半回転させる間に工具Tまたはレーザヘッド140がZ軸方向に移動する距離以上となるように決められる。一例として、ワークWが一回転する間に、工具Tまたはレーザヘッド140が送り方向に0.2mm移動する場合、距離ΔD2は、0.1mm以上となるように決められる。
【0092】
これにより、ワークW上の各箇所は、「旋削加工→付加加工」の順で加工されることになる。旋削加工が先に行われることで、ワークの表面が付加加工に適した状態になる。その結果、ワークの付加加工の精度が向上する。
【0093】
<I.変形例1に従う同時加工の制御フロー>
次に、図10を参照して、変形例1に従う同時加工の制御フローについて説明する。図10は、図9に示される同時加工に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0094】
図10に示される処理は、たとえば、加工装置100の制御部50が上述の加工プログラム122を実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0095】
ステップS212において、制御部50は、上述の駆動部210(図6参照)を制御し、ワークWの回転を開始する。
【0096】
ステップS214において、制御部50は、付加加工と旋削加工との同時加工を開始する。このとき、制御部50は、上述の旋削加工点TPが上述の付加加工点LPよりも先行するように、レーザヘッド140および刃物台31の各々をZ軸方向に同速度で送り駆動する。また、制御部50は、旋削加工点TPと付加加工点LPとの間の距離を所定距離ΔD2(図9参照)に維持する。距離ΔD2は、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。
【0097】
ステップS220において、制御部50は、刃物台31が加工終了位置に到達したか否かを判断する。刃物台31に係る加工終了位置は、たとえば、加工プログラム122に記述されている。
【0098】
制御部50は、刃物台31が加工終了位置に到達したと判断した場合(ステップS220においてYES)、制御をステップS222に切り替える。そうでない場合には(ステップS220においてNO)、制御部50は、ステップS220の処理を再び実行する。
【0099】
ステップS222において、制御部50は、工具Tによる旋削加工を停止する。より具体的には、制御部50は、ワークWから工具Tを離すように刃物台31の駆動を制御する。
【0100】
ステップS230において、制御部50は、レーザヘッド140が加工終了位置に到達したか否かを判断する。レーザヘッド140に係る加工終了位置は、たとえば、加工プログラム122に記述されている。
【0101】
制御部50は、レーザヘッド140が加工終了位置に到達したと判断した場合(ステップS230においてYES)、制御をステップS232に切り替える。そうでない場合には(ステップS230においてNO)、制御部50は、ステップS230の処理を再び実行する。
【0102】
ステップS232において、制御部50は、レーザヘッド140による付加加工を停止する。より具体的には、制御部50は、粉末材料の供給と、レーザ光の照射とをレーザヘッド140に停止させる。また、制御部50は、ワークWの回転をワーク主軸22に停止させる。
【0103】
<J.変形例2>
次に、変形例2に従う同時加工について説明する。
【0104】
上述の図4の例では、同時加工は、付加加工点LPを旋削加工点TPよりも先行させた状態で行われていた。また、上述の図9の例では、同時加工は、旋削加工点TPを付加加工点LPよりも先行させた状態で行われていた。これに対して、本変形例では、加工装置100は、付加加工点LPを旋削加工点TPよりも先行させる同時加工と、旋削加工点TPを付加加工点LPよりも先行させる同時加工とを組み合わせて実行する。
【0105】
より具体的には、まず、制御部50は、旋削加工点TPを付加加工点LPよりも先行させた状態で同時加工を実行する。次に、制御部50は、旋削加工点TPが加工終了位置に達したことに基づいて、刃物台31を加工開始位置に戻す。その後、制御部50は、付加加工点LPを旋削加工点TPよりも先行させた状態で同時加工を実行する。
【0106】
次に、制御部50は、付加加工点LPが加工終了位置に達したことに基づいて、レーザヘッド140を加工開始位置に戻す。その後、制御部50は、旋削加工点TPを付加加工点LPよりも先行させた状態で同時加工を実行する。
【0107】
以上のように、本変形例では、加工装置100は、旋削加工点TPを付加加工点LPよりも先行させる同時加工と、付加加工点LPを旋削加工点TPよりも先行させる同時加工とは、交互に繰り返して実行する。
【0108】
<K.変形例3>
次に、図11を参照して、変形例3に従う同時加工について説明する。図11は、変形例3に従う同時加工の態様を概略的に示す図である。
【0109】
本変形例では、加工装置100は、さらに、ワークWに流体を吐出するための吐出機構60を備える。そして、加工装置100は、ワークWに流体を吐出しながら同時加工を実行する。これにより、加工装置100は、付加加工により高温化しているワークWを冷却することができる。
【0110】
なお、吐出機構60が吐出する流体は、空気であってもよいし、クーラントであってもよいし、その他の種類の気体または液体であってもよい。クーラントがワークWの冷却に用いられる場合、加工装置100は、ワークWの温度をより効率的に下げることができ、温度変化に起因する加工精度の低下を抑制することができる。一方で、空気がワークWの冷却に用いられる場合、液体がワーク表面に付着することに伴う加工精度の低下を抑制することができる。
【0111】
吐出機構60は、Z軸方向において駆動可能に構成される。一例として、吐出機構60は、刃物台31に設けられ、刃物台31と一体的に送り駆動される。他の例として、吐出機構60の駆動部(図示しない)は、刃物台31の駆動部240(図6参照)とは別に加工装置100に設けられる。吐出機構60の駆動部は、少なくともZ軸方向に吐出機構60を駆動可能に構成される。
【0112】
加工装置100は、吐出機構60とレーザヘッド140と工具TとをZ軸方向の一方側に同一速度で送り駆動しながら同時加工を実行する。このとき、同時加工は、付加加工点LPがワークWに対する流体の吐出箇所APよりも先行した状態で、かつ当該吐出箇所APが旋削加工点TPよりも先行した状態で実行される。その結果、ワークW上の各箇所は、「付加加工→流体吐出→旋削加工」の順で加工されることになる。
【0113】
これにより、加工装置100は、ワークWの温度をより確実に低下させてから旋削加工を実行することができる。結果として、加工装置100は、熱による工具Tの消耗を抑制することができる。また、加工装置100は、ワークWが膨張していない状態で旋削加工を実行することができ、加工精度が低下することを回避できる。
【0114】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
11 ベッド、16 刃物台、18 タレット、22 ワーク主軸、23 チャック機構、25 心押し台、30 工具主軸、31 刃物台、50 制御部、60 吐出機構、100 加工装置、101 制御回路、102 ROM、103 RAM、104 通信インターフェイス、109 内部バス、120 補助記憶装置、122 加工プログラム、130 カバー体、140 レーザヘッド、142 ヘッド本体、146 レーザノズル、200 操作盤、210 駆動部、211C モータドライバ、212C モータ、220 駆動部、221Z モータドライバ、222Z モータ、230A 駆動部、230B 駆動部、231A モータドライバ、231B モータドライバ、231X モータドライバ、231Y モータドライバ、231Z モータドライバ、232A モータ、232B モータ、232X モータ、232Y モータ、232Z モータ、240 駆動部、241C モータドライバ、241Y モータドライバ、241Z モータドライバ、242C モータ、242Y モータ、242Z モータ、AP 吐出箇所、AR 加工エリア、AX1 軸、AX2 軸、AX3 軸、CP 回転中心、DR ドア、LP 付加加工点、LS レーザ光、MP 溶融池、PM 粉末材料、SL 層、T 工具、TP 旋削加工点、W ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置によるワークの加工方法であって、
前記加工装置は、
前記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、
前記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、
工具を保持するための刃物台とを備え、
前記加工方法は、
前記ワーク主軸に前記ワークを回転させるステップと、
前記レーザヘッドによる付加加工と前記工具による旋削加工とを回転中の前記ワークに対して同時に行う同時加工を実行するステップとを備え、
前記同時加工は、前記レーザヘッドおよび前記工具が前記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、前記レーザヘッドによる前記ワークの付加加工点と前記工具による前記ワークの旋削加工点とが前記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される、加工方法。
【請求項2】
前記同時加工は、前記一方側において前記付加加工点が前記旋削加工点よりも先行した状態で実行される、請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記同時加工は、前記一方側において前記旋削加工点が前記付加加工点よりも先行した状態で実行される、請求項1に記載の加工方法。
【請求項4】
前記付加加工点と、前記ワークの回転中心と、前記旋削加工点とは、前記回転軸方向から見て、一直線上に並んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項5】
前記加工装置は、さらに、前記ワークに流体を吐出するための吐出機構を備え、
前記同時加工は、前記ワークに前記流体を吐出しながら実行される、請求項1または2に記載の加工方法。
【請求項6】
前記流体は、空気またはクーラントである、請求項5に記載の加工方法。
【請求項7】
前記同時加工は、前記一方側において前記付加加工点が前記ワークに対する前記流体の吐出箇所よりも先行し、かつ前記一方側において前記吐出箇所が前記旋削加工点よりも先行した状態で実行される、請求項5に記載の加工方法。
【請求項8】
ワークの加工装置であって、
前記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、
前記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、
工具を保持するための刃物台と、
前記加工装置を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、
前記ワーク主軸に前記ワークを回転させる処理と、
前記レーザヘッドによる付加加工と前記工具による旋削加工とを回転中の前記ワークに対して同時に行う同時加工を実行する処理とを実行し、
前記同時加工は、前記レーザヘッドおよび前記工具が前記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、前記レーザヘッドによる前記ワークの付加加工点と前記工具による前記ワークの旋削加工点とが前記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される、加工装置。
【請求項9】
ワークの加工装置によって実行される加工プログラムであって、
前記加工装置は、
前記ワークを回転駆動するためのワーク主軸と、
前記ワークに対して粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射することで付加加工を行うことが可能なレーザヘッドと、
工具を保持するための刃物台とを備え、
前記加工プログラムは、前記加工装置に、
前記ワーク主軸に前記ワークを回転させるステップと、
前記レーザヘッドによる付加加工と前記工具による旋削加工とを回転中の前記ワークに対して同時に行う同時加工を実行するステップとを実行させ、
前記同時加工は、前記レーザヘッドおよび前記工具が前記ワーク主軸の回転軸方向の一方側に送り駆動されながら、かつ、前記レーザヘッドによる前記ワークの付加加工点と前記工具による前記ワークの旋削加工点とが前記回転軸方向において所定距離以上離された状態で実行される、加工プログラム。