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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178494
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20241218BHJP
   H01Q 9/40 20060101ALI20241218BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20241218BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q9/40
H01Q5/371
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096639
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池本 有輝
(72)【発明者】
【氏名】山浦 真悟
(72)【発明者】
【氏名】西本 研悟
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB06
5J046AB13
5J046UA02
(57)【要約】
【課題】限られた空間内でも、高周波帯域において、アンテナの不整合損を増大させることなく、高周波帯域のアンテナと低周波帯域のアンテナとの間のアイソレーションを確保することができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置11は、高周波帯域(FH)で通信を行う無線部20と、低周波帯域(FL)で通信を行う無線部30とを備える。無線部20は、導体板24の一方の面に対向して設けられ、高周波帯域(FH)の高帯域(FH2)で整合する高帯域側アンテナ21と、導体板24の他方の面に対向して設けられ、高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)で整合する低帯域側アンテナ22とを有する。無線部30は、低周波帯域で整合するアンテナ31を有する。高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、及び、アンテナ31は、縦方向に並んで配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波帯域で通信を行う第1無線部と、低周波帯域で通信を行う第2無線部とを備えるアンテナ装置であって、
前記第1無線部は、
導体板の一方の面に対向して設けられ、高周波帯域の高帯域で整合する高帯域側アンテナと、
前記導体板の他方の面に対向して設けられ、高周波帯域の低帯域で整合する低帯域側アンテナとを有し、
前記第2無線部は、低周波帯域で整合する低周波帯域側アンテナを有し、
前記高帯域側アンテナ、前記低帯域側アンテナ、及び、前記低周波帯域側アンテナは、縦方向に並んで配置される
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1無線部は、縦方向に沿って配置される誘電体基板を有し、
前記高帯域側アンテナと前記低帯域側アンテナとは、前記誘電体基板の一方の面に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1無線部は、縦方向に沿って配置される誘電体基板を有し、
前記高帯域側アンテナは、前記誘電体基板の一方の面に設けられ、
前記低帯域側アンテナは、前記誘電体基板の他方の面に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記低帯域側アンテナと前記低周波帯域側アンテナとは、縦方向において、互いに隣接して配置される
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記高帯域側アンテナと前記低周波帯域側アンテナとは、縦方向において、互いに隣接して配置される
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記高帯域側アンテナと前記導体板との間に電気的に接続し、前記高帯域側アンテナ及び前記低帯域側アンテナに電力を供給する給電部と、
前記高帯域側アンテナから前記低帯域側アンテナに分岐し、前記給電部に供給された電力を、前記高帯域側アンテナから前記低帯域側アンテナに分配する分岐部とを備える
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記分岐部は、前記導体板を貫通する
ことを特徴とする請求項6記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記高帯域側アンテナは、モノポールアンテナ、逆Fアンテナ、逆Lアンテナ、及び、容量装荷型モノポールアンテナのうち、いずれか1つのアンテナである
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記低周波帯域側アンテナは、モノポール方式のアンテナである
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記低周波帯域側アンテナは、容量装荷型モノポールアンテナである
ことを特徴とする請求項9記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記高帯域側アンテナにおける前記導体板から上端までの高さは、0.15波長以下の高さである
ことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、広帯域に亘ってアンテナ効率を高くし、且つ、その対象となる周波数帯域の設定を容易に行えるようにした、アンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-318631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、通信技術の発展に伴って、既存の無線システムを備えるアンテナ筐体に対して、新規の無線システムを統合することへの需要が増している。このため、新規の無線システム用のアンテナの設置スペースが省略可能となる。
【0005】
これに対して、単純に、無線システムを限られた空間内に設置するためには、種々の問題がある。例えば、特許文献1に開示されたアンテナ装置は、広帯域で整合可能であるが、限られた空間内において、広帯域で、且つ、整合可能なアンテナの近傍に、より低い帯域で整合するアンテナが存在する場合、アンテナ間の電磁結合が増大する。
【0006】
また、低い帯域付近において、アイソレーションを確保するために、アンテナサイズを小型化し、広帯域用のアンテナにおける低い帯域での反射を大きくすることは有効である。しかしながら、同時に、広帯域用のアンテナにおける低い帯域において、不整合損が増大するという問題があった。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、限られた空間内でも、高周波帯域において、アンテナの不整合損を増大させることなく、高周波帯域のアンテナと低周波帯域のアンテナとの間のアイソレーションを確保することができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係るアンテナ装置は、高周波帯域で通信を行う第1無線部と、低周波帯域で通信を行う第2無線部とを備えるアンテナ装置であって、第1無線部は、導体板の一方の面に対向して設けられ、高周波帯域の高帯域で整合する高帯域側アンテナと、導体板の他方の面に対向して設けられ、高周波帯域の低帯域で整合する低帯域側アンテナとを有し、第2無線部は、低周波帯域で整合する低周波帯域側アンテナを有し、高帯域側アンテナ、低帯域側アンテナ、及び、低周波帯域側アンテナは、縦方向に並んで配置されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、限られた空間内でも、高周波帯域において、アンテナの不整合損を増大させることなく、高周波帯域のアンテナと低周波帯域のアンテナとの間のアイソレーションを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るアンテナ装置の縦断面図である。
図2】従来のアンテナ装置の縦断面図である。
図3】実施の形態1に係るアンテナ装置の低周波帯域側のアンテナにおいて、低周波帯域(FL)を含む範囲でのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示す図である。
図4】実施の形態1に係るアンテナ装置の2つの無線部において、低周波帯域(FL)を含む範囲でのアンテナ間の電磁結合量の周波数特性を示す図である。
図5】実施の形態1に係るアンテナ装置の低周波帯域側のアンテナにおいて、低周波帯域(FL)及び高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)を含む範囲でのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示す図である。
図6】実施の形態2に係るアンテナ装置の縦断面図である。
図7】第1比較例となるアンテナ装置の縦断面図である。
図8】第2比較例となるアンテナ装置の縦断面図である。
図9】実施の形態2に係るアンテナ装置の低帯域側アンテナにおいて、高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)を含む範囲でのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示す図である。
図10】実施の形態2に係るアンテナ装置の2つの無線部において、低周波帯域(FL)を含む範囲でのアンテナ間の電磁結合量の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
実施の形態1に係るアンテナ装置11について、図1から図4を用いて説明する。
【0013】
先ず、実施の形態1に係るアンテナ装置11の構成について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係るアンテナ装置11の縦断面図である。
【0014】
図1に示すように、実施の形態1に係るアンテナ装置11は、無線部20及び無線部30を備えている。無線部20,30は、アンテナ装置11の高さ方向に並んで配置されている。無線部20は、無線部30の上方に配置されている。無線部20は、第1無線部を構成し、無線部30は、第2無線部を構成するものである。
【0015】
無線部20は、所定の周波数帯域となる高周波帯域(FH)を有する無線システムである。この無線部20は、高周波帯域(FH)のうち、低い周波数帯域を低帯域(FH1)とし、その低帯域(FH1)よりも高い周波数帯域を高帯域(FH2)としている。
【0016】
無線部20は、高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、誘電体基板23、導体板24、給電部25、及び、分岐部26を有している。
【0017】
誘電体基板23は、上下方向に沿って、縦置きにされている。この誘電体基板23の一方の面及び他方の面は、略垂直面である。高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22は、例えば、誘電体基板23の表面に設けられている。高帯域側アンテナ21は、低帯域側アンテナ22よりも高い位置に配置されている。なお、誘電体基板23の一方の面は、表面又は裏面であり、誘電体基板23の他方の面は、裏面又は表面である。一方の面と他方の面とは、互いに反対側に位置する面である。
【0018】
高帯域側アンテナ21は、例えば、誘電体基板23の表面上において、銅箔パターンで形成されるものである。この高帯域側アンテナ21は、無線部20が有する高周波帯域(FH)のうち、高帯域(FH2)で整合するアンテナである。高帯域側アンテナ21は、例えば、モノポールアンテナである。
【0019】
低帯域側アンテナ22は、例えば、誘電体基板23の表面上において、銅箔パターンで形成されるものである。この低帯域側アンテナ22は、無線部20が有する高周波帯域(FH)のうち、低帯域(FH1)で整合するアンテナである。
【0020】
導体板24は、例えば、金属材料で形成された平板部材である。この導体板24は、誘電体基板23の表面に対して、略垂直に設けられており、略水平に配置されている。導体板24は、誘電体基板23と電気的に接続されている。導体板24は、高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22に対する地板の役割を有している。高帯域側アンテナ21は、導体板24の一方の面となる上面に対向して設けられている。低帯域側アンテナ22は、導体板24の他方に面となる下面に対向して設けられている。一方の面と他方の面とは、互いに反対側に位置する面である。
【0021】
また、導体板24は、貫通孔24aを有している。この貫通孔24aは、導体板24を厚さ方向(上下方向)に貫通する孔である。
【0022】
給電部25は、高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22に対して、給電を行うものである。給電部25には、高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22を動作させるための電力が供給される。給電部25は、高帯域側アンテナ21の下端と導体板24の上面との間に設けられており、それらと電気的に接続されている。
【0023】
分岐部26は、高帯域側アンテナ21に供給された電力を、当該高帯域側アンテナ21から低帯域側アンテナ22に分配するものである。分岐部26は、高帯域側アンテナ21の下端と低帯域側アンテナ22の上端との間を、電気的に接続している。このとき、分岐部26は、導体板24の貫通孔24aを通過するように設けられている。なお、分岐部26は、誘電体基板23の表面上に形成したものでも良い。
【0024】
無線部30は、所定の周波数帯域となる低周波帯域(FL)を有する無線システムである。この無線部30が有する低周波帯域(FL)は、無線部20が有する高周波帯域(FH)よりも低い周波数帯域となっている。
【0025】
無線部30は、低周波帯域側のアンテナ31、誘電体基板32、導体板33、及び、給電部34を有している。アンテナ31は、低周波帯域側アンテナを構成するものである。
【0026】
誘電体基板32は、上下方向に沿って、縦置きにされている。この誘電体基板32の一方の面及び他方の面は、略垂直面である。アンテナ31は、例えば、誘電体基板32の表面に設けられている。誘電体基板32は、誘電体基板23より下方に配置されている。このため、アンテナ31は、高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22よりも低い位置に配置されている。また、低帯域側アンテナ22とアンテナ31とは、縦方向において、互いに隣接している。
【0027】
アンテナ31は、例えば、誘電体基板32の表面上において、銅箔パターンで形成されるものである。このアンテナ31は、無線部20が有する高周波帯域(FH)よりも低い低周波帯域(FL)で整合するアンテナである。
【0028】
導体板33は、例えば、金属材料で形成された平板部材である。この導体板33は、誘電体基板32の表面に対して、略垂直に設けられており、略水平に配置されている。導体板33は、誘電体基板32と電気的に接続されている。導体板33は、アンテナ31に対する地板の役割を有している。アンテナ31は、導体板33の一方の面となる上面に対向して設けられている。
【0029】
給電部34は、アンテナ31に対して、給電を行うものである。給電部34には、アンテナ31を動作させるための電力が供給される。給電部34は、アンテナ31の下端と導体板33の上面との間に設けられており、それらと電気的に接続されている。
【0030】
上述したように、実施の形態1に係るアンテナ装置11は、高周波帯域(FH)で通信を行う無線部20と、低周波帯域(FL)で通信を行う無線部30とを備えている。また、アンテナ装置11は、高周波帯域(FH)で通信を行う無線部20を、高帯域側アンテナ21と低帯域側アンテナ22とに分割する一方、無線部30に、低周波帯域(FL)で通信を行うアンテナ31を有している。更に、アンテナ装置11は、高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、及び、アンテナ31を、縦方向に順に、即ち、高さ方向において高い側から低い側に向けて順に、配置している。
【0031】
このとき、高帯域側アンテナ21は、高周波帯域(FH)で全反射に近くなるように、アンテナ素子が設計されている。このため、アンテナ31は、低周波帯域(FL)において、電磁結合が抑制される。この結果、高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22は、アンテナ31との間のアイソレーションを確保することができる。
【0032】
よって、アンテナ装置11は、高周波帯域(FH)におけるアンテナ21,22の不整合損を抑制することができると共に、高周波帯域(FH)における高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22と、低周波帯域側のアンテナ31との間のアイソレーションを大きくすることができる。また、アンテナ装置11は、高さを低く抑えることができるため、小型化を図ることができる。
【0033】
例えば、アンテナ装置11は、直径1.3波長の長さ、及び、高さ2.5波長の高さ程度の円筒内のように限られた体積でも、複数の無線システムの所望な周波数帯域で、アンテナ不整合損を増大させることなく、無線システム間の電磁結合を抑制し、アイソレーションを確保することができる。
【0034】
次に、実施の形態1に係るアンテナ装置11の効果について、従来のアンテナ装置15のものと比較しつつ、図2から図5を用いて説明する。
【0035】
図2は、従来のアンテナ装置15の縦断面図である。この図2に示すように、従来のアンテナ装置15は、従来の広帯域アンテナ51を、低周波帯域側のアンテナ31の上部に設けた構成となっている。この従来のアンテナ装置15は、低周波帯域側のアンテナ31、誘電体基板32、導体板33、給電部34、広帯域アンテナ51、及び、給電部52を有している。
【0036】
従来のアンテナ装置15においては、誘電体基板32が縦方向全域に設けられている。広帯域アンテナ51は、アンテナ31の上部と接するように設けられている。この広帯域アンテナ51は、例えば、誘電体基板32の表面上において、銅箔パターンで形成されるものである。給電部52は、広帯域アンテナ51に対して、給電を行うものである。給電部52には、広帯域アンテナ51を動作させるための電力が供給される。給電部52は、広帯域アンテナ51の下端と電気的に接続されている。
【0037】
図3は、実施の形態1に係るアンテナ装置11の低周波帯域側のアンテナ31において、低周波帯域(FL)を含む範囲でのVSWR(電圧定在波比:Voltage Standing Wave Ratio)の周波数特性を示す図である。図3に示す実線は、無線部30におけるアンテナ31のVSWRの周波数特性を示している。また、図3に示す点線は、従来のアンテナ装置15におけるアンテナ31のVSWRの周波数特性を示している。
【0038】
図4は、実施の形態1に係るアンテナ装置11の2つの無線部20,30において、低周波帯域(FL)を含む範囲でのアンテナ間の電磁結合量の周波数特性を示す図である。図4に示す実線は、アンテナ21,22とアンテナ31との間の電磁結合量の周波数特性を示している。また、図4に示す点線は、広帯域アンテナ51とアンテナ31との間の電磁結合量の周波数特性を示している。
【0039】
図5は、実施の形態1に係るアンテナ装置11の低周波帯域側のアンテナ31において、低周波帯域(FL)及び高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)を含む範囲でのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示す図である。図5に示す実線は、無線部30におけるアンテナ31のVSWRの周波数特性を示している。また、図5に示す点線は、従来のアンテナ装置15におけるアンテナ31のVSWRの周波数特性を示している。
【0040】
図3に示すように、無線部30のアンテナ31におけるVSWRは、低周波帯域(FL)において、小さい値となっており、当該アンテナ31は、低周波帯域(FL)において、整合していない。また、従来のアンテナ装置15のアンテナ31におけるVSWRは、低周波帯域(FL)において、小さい値となっており、当該アンテナ31は、低周波帯域(FL)において、整合していない。
【0041】
図4に示すように、低周波帯域(FL)において、アンテナ21,22とアンテナ31との間の電磁結合量は、広帯域アンテナ51とアンテナ31との間の電磁結合量よりも大きい値となっている。このため、アンテナ装置11は、アイソレーションを確保できていない。
【0042】
そこで、図1に示すように、実施の形態1に係るアンテナ装置11は、高周波帯域(FH)で通信を行う無線部20を、高帯域側アンテナ21と低帯域側アンテナ22とに分割する一方、無線部30に、低周波帯域(FL)で通信を行うアンテナ31を有し、高帯域側アンテナ21が、高周波帯域(FH)で全反射に近くなるように、そのアンテナ素子を設計している。このため、図5に示すように、アンテナ装置11は、低帯域(FH1)では整合が取れつつ、アンテナ31の給電部34でアイソレーションを確保することができる。
【0043】
以上、実施の形態1に係るアンテナ装置11は、高周波帯域(FH)で通信を行う無線部20と、低周波帯域(FL)で通信を行う無線部30とを備える。無線部20は、導体板24の上面に対向して設けられ、高周波帯域(FH)の高帯域(FH2)で整合する高帯域側アンテナ21と、導体板24の下面に対向して設けられ、高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)で整合する低帯域側アンテナ22とを有する。無線部30は、低周波帯域で整合するアンテナ31を有する。高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、及び、アンテナ31は、縦方向に並んで配置される。このため、アンテナ装置11は、限られた空間内でも、高周波帯域(FH)において、アンテナ21,22の不整合損を増大させることなく、高周波帯域(FH)のアンテナ21,22と低周波帯域のアンテナ31との間のアイソレーションを確保することができる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態2に係るアンテナ装置12について、図6から図10を用いて説明する。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図6は、実施の形態2に係るアンテナ装置12の縦断面図である。この図6に示すように、実施の形態2に係るアンテナ装置12は、図1に示す実施の形態1に係るアンテナ装置11の無線部20に替えて、無線部20Aを備えている。無線部20Aは、第1無線部を構成するものである。
【0046】
無線部20Aは、無線部20の構造に対して、高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、誘電体基板23、導体板24、給電部25、及び、分岐部26を、垂直面内において、180度回転させた構造、即ち、上下逆様にした構造となっている。このため、高帯域側アンテナ21は、導体板24の一方の面となる下面に対向して設けられている。低帯域側アンテナ22は、導体板24の他方の面となる上面に対向して設けられている。また、高帯域側アンテナ21とアンテナ31とは、縦方向において、互いに隣接して配置されている。
【0047】
図7は、第1比較例となるアンテナ装置13の縦断面図である。この図7に示すように、アンテナ装置13は、実施の形態1に係るアンテナ装置11の無線部20に替えて、無線部40Aを備えている。無線部40Aは、第1無線部を構成するものである。
【0048】
無線部40Aは、高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、給電部25、及び、分岐部26を、導体板24よりも上方に配置させた構造となっている。高帯域側アンテナ21は、誘電体基板23の表面に設けられている。一方、低帯域側アンテナ22は、誘電体基板23の裏面に設けられている。給電部25は、高帯域側アンテナ21の下端と電気的に接続されている。また、給電部25は、分岐部26を介して、低帯域側アンテナ22の下端と電気的に接続されている。このとき、分岐部26は、誘電体基板23を厚さ方向に貫通している。
【0049】
図8は、第2比較例となるアンテナ装置14の縦断面図である。この図8に示すように、アンテナ装置14は、実施の形態1に係るアンテナ装置11の無線部20に替えて、無線部40Bを備えている。無線部40Bは、第1無線部を構成するものである。
【0050】
無線部40Aは、高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、給電部25、及び、分岐部26を、導体板24よりも下方に配置させた構造となっている。高帯域側アンテナ21は、誘電体基板23の表面に設けられている。一方、低帯域側アンテナ22は、誘電体基板23の裏面に設けられている。給電部25は、高帯域側アンテナ21の上端と電気的に接続されている。また、給電部25は、分岐部26を介して、低帯域側アンテナ22の上端と電気的に接続されている。このとき、分岐部26は、誘電体基板23を厚さ方向に貫通している。
【0051】
図9は、実施の形態2に係るアンテナ装置12の低帯域側アンテナ22において、高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)を含む範囲でのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示す図である。図9に示す実線は、無線部20における低帯域側アンテナ22のVSWRの周波数特性を示している。図9に示す一点鎖線は、無線部20Aにおける低帯域側アンテナ22のVSWRの周波数特性を示している。図9に示す点線は、無線部40Aにおける低帯域側アンテナ22のVSWRの周波数特性を示している。図9に示す破線は、無線部40Bにおける低帯域側アンテナ22のVSWRの周波数特性を示している。
【0052】
図10は、実施の形態2に係るアンテナ装置12の2つの無線部20A,30において、低周波帯域(FL)を含む範囲でのアンテナ間の電磁結合量の周波数特性を示す図である。図10に示す実線は、アンテナ装置11におけるアンテナ21,22とアンテナ31との間の電磁結合量の周波数特性を示している。図10に示す一点鎖線は、アンテナ装置12におけるアンテナ21,22とアンテナ31との間の電磁結合量の周波数特性を示している。図10に示す点線は、アンテナ装置13におけるアンテナ21,22とアンテナ31との間の電磁結合量の周波数特性を示している。図10に示す破線は、アンテナ装置14におけるアンテナ21,22とアンテナ31との間の電磁結合量の周波数特性を示している。
【0053】
図9に示すように、アンテナ装置13,14は、高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)において、整合していない。これに対して、アンテナ装置11,12は、高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)において、同程度で整合している。
【0054】
図10に示すように、低周波帯域(FL)において、アンテナ装置12の電磁結合量は、アンテナ装置11の電磁結合量よりも、最大4dB程、悪化している。しかしながら、アンテナ装置12の電磁結合量は、図4に示すアンテナ装置15の電磁結合量よりも、約2dB程、改善している。このため、アンテナ装置12においても、不整合損を抑えて、アイソレーションを確保することができる。
【0055】
以上、実施の形態2に係るアンテナ装置12は、高周波帯域(FH)で通信を行う無線部20Aと、低周波帯域(FL)で通信を行う無線部30とを備える。無線部20Aは、導体板24の下面に対向して設けられ、高周波帯域(FH)の高帯域(FH2)で整合する高帯域側アンテナ21と、導体板24の上面に対向して設けられ、高周波帯域(FH)の低帯域(FH1)で整合する低帯域側アンテナ22とを有する。無線部30は、低周波帯域で整合するアンテナ31を有する。高帯域側アンテナ21、低帯域側アンテナ22、及び、アンテナ31は、縦方向に並んで配置される。このため、アンテナ装置12は、限られた空間内でも、高周波帯域(FH)において、アンテナ21,22の不整合損を増大させることなく、高周波帯域(FH)のアンテナ21,22と低周波帯域のアンテナ31との間のアイソレーションを確保することができる。
【0056】
実施の形態3.
実施の形態1に係るアンテナ装置11は、高帯域側アンテナ21を、モノポールアンテナとしている。高帯域側アンテナ21は、逆Fアンテナ、又は、逆Lアンテナ、或いは、容量装荷型モノポールアンテナでも良い。このように、高帯域側アンテナ21を、逆Fアンテナ、又は、逆Lアンテナ、或いは、容量装荷型モノポールアンテナとした場合、当該高帯域側アンテナ21を、モノポールアンテナした場合と比べて、無線部20は、低周波帯域(FL)において、より全反射し易くなる。
【0057】
実施の形態4.
実施の形態1に係るアンテナ装置11においては、低周波帯域側のアンテナ31のアンテナ方式が限定されていない。このアンテナ31は、モノポール方式のアンテナでも良い。このように、アンテナ31をモノポール方式のアンテナとした場合、無線部30は、低周波帯域(FL)に対応しつつ、低姿勢化を図ることができる。
【0058】
実施の形態5.
アンテナ31は、容量装荷型モノポールアンテナでも良い。このように、アンテナ31を容量装荷型モノポールアンテナとした場合、無線部30は、誘電体基板32におけるアンテナ31を形成するための銅箔パターンの面積を、抑えることができる。このため、無線部30は、低姿勢化を図ることができる。
【0059】
実施の形態6.
実施の形態1のアンテナ装置11のように、高帯域側アンテナ21をモノポールアンテナとした場合、高帯域側アンテナ21における導体板24から上端までの高さは、0.15波長以下の高さとなっている。モノポールアンテナとなる高帯域側アンテナ21の高さを、0.15波長以下の高さとした場合、同じアンテナ形状で、且つ、0.25波長の高さとなるアンテナを備えた場合と比べて、無線部20と無線部30との間の電磁結合量は、低減される
【0060】
実施の形態7.
実施の形態1のアンテナ装置11の無線部20は、誘電体基板23の一方の面に、高帯域側アンテナ21及び低帯域側アンテナ22を設けているが、誘電体基板23の一方の面に、高帯域側アンテナ21を設ける一方、誘電体基板23の他方の面に、低帯域側アンテナ22を設けても構わない。この場合、高帯域側アンテナ21とアンテナ31との間の電磁結合量、及び、低帯域側アンテナ22とアンテナ31との間の電磁結合量が、抑制される。
【0061】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、或いは、各実施の形態における任意の構成要素の変形、若しくは、各実施の形態における任意の構成要素の省略が可能である。
【0062】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0063】
(付記1)
高周波帯域で通信を行う第1無線部と、低周波帯域で通信を行う第2無線部とを備えるアンテナ装置であって、
前記第1無線部は、
導体板の一方の面に対向して設けられ、高周波帯域の高帯域で整合する高帯域側アンテナと、
前記導体板の他方の面に対向して設けられ、高周波帯域の低帯域で整合する低帯域側アンテナとを有し、
前記第2無線部は、低周波帯域で整合する低周波帯域側アンテナを有し、
前記高帯域側アンテナ、前記低帯域側アンテナ、及び、前記低周波帯域側アンテナは、縦方向に並んで配置される
ことを特徴とするアンテナ装置。
【0064】
(付記2)
前記第1無線部は、縦方向に沿って配置される誘電体基板を有し、
前記高帯域側アンテナと前記低帯域側アンテナとは、前記誘電体基板の一方の面に設けられる
ことを特徴とする付記1記載のアンテナ装置。
【0065】
(付記3)
前記第1無線部は、縦方向に沿って配置される誘電体基板を有し、
前記高帯域側アンテナは、前記誘電体基板の一方の面に設けられ、
前記低帯域側アンテナは、前記誘電体基板の他方の面に設けられる
ことを特徴とする付記1記載のアンテナ装置。
【0066】
(付記4)
前記低帯域側アンテナと前記低周波帯域側アンテナとは、縦方向において、互いに隣接して配置される
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【0067】
(付記5)
前記高帯域側アンテナと前記低周波帯域側アンテナとは、縦方向において、互いに隣接して配置される
ことを特徴とする付記1から付記3のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【0068】
(付記6)
前記高帯域側アンテナと前記導体板との間に電気的に接続し、前記高帯域側アンテナ及び前記低帯域側アンテナに電力を供給する給電部と、
前記高帯域側アンテナから前記低帯域側アンテナに分岐し、前記給電部に供給された電力を、前記高帯域側アンテナから前記低帯域側アンテナに分配する分岐部とを備える
ことを特徴とする付記1から付記5のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【0069】
(付記7)
前記分岐部は、前記導体板を貫通する
ことを特徴とする付記6記載のアンテナ装置。
【0070】
(付記8)
前記高帯域側アンテナは、モノポールアンテナ、逆Fアンテナ、逆Lアンテナ、及び、容量装荷型モノポールアンテナのうち、いずれか1つのアンテナである
ことを特徴とする付記1から付記7のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【0071】
(付記9)
前記低周波帯域側アンテナは、モノポール方式のアンテナである
ことを特徴とする付記1から付記8のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【0072】
(付記10)
前記低周波帯域側アンテナは、容量装荷型モノポールアンテナである
ことを特徴とする付記9記載のアンテナ装置。
【0073】
(付記11)
前記高帯域側アンテナにおける前記導体板から上端までの高さは、0.15波長以下の高さである
ことを特徴とする付記1から付記10のうちのいずれか1項記載のアンテナ装置。
【符号の説明】
【0074】
11~15 アンテナ装置、20,20A 無線部、21 高帯域側アンテナ、22 低帯域側アンテナ、23 誘電体基板、24 導体板、24a 貫通孔、25 給電部、26 分岐部、30 無線部、31 アンテナ、32 誘電体基板、33 導体板、34 給電部、40A,40B 無線部、51 広帯域アンテナ、52 給電部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10