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特開2024-1785ホットプレスシステムの温度制御方法およびホットプレスシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001785
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ホットプレスシステムの温度制御方法およびホットプレスシステム
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/34 20060101AFI20231227BHJP
   B30B 15/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B30B15/34 A
B30B15/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100668
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松浦 雅郎
【テーマコード(参考)】
4E088
4E090
【Fターム(参考)】
4E088EA03
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA01
4E090CA01
4E090DA03
4E090DA07
4E090DB01
4E090HA10
(57)【要約】
【課題】 ホットプレス装置の熱板に送られる熱媒の長寿命化、ホットプレス装置の温度制御の安定化、ホットプレス装置の省エネルギー化の少なくとも一つを適切に行う。
【解決手段】熱媒により温度制御される熱板11を備えたホットプレス装置12と該ホットプレス装置12に熱媒を供給する温度制御装置13を備えたホットプレスシステム14の温度制御方法において、温度制御装置13には熱媒を冷却するクーラ部31と熱媒を加熱するヒータ部32とが備えられ、ホットプレス装置12の熱板11から排出された熱媒をクーラ部31を経由してヒータ部32に送り、ヒータ部32の冷却を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒により温度制御される熱板を備えたホットプレス装置と該ホットプレス装置に熱媒を供給する温度制御装置を備えたホットプレスシステムの温度制御方法において、
前記温度制御装置には熱媒を冷却するクーラ部と熱媒を加熱するヒータ部とが備えられ、
ホットプレス装置の熱板から排出された熱媒をクーラ部を経由してヒータ部に送り、ヒータ部の冷却を行うホットプレスシステムの温度制御方法。
【請求項2】
ホットプレス装置の冷却工程において熱板に送る熱媒油が所定の温度に降温されるかまたは冷却工程において所定の時間となるまでクーラ部を経由してヒータ部に熱媒を送り、その後はヒータ部への熱媒の供給を停止する請求項1に記載のホットプレスシステムの温度制御方法。
【請求項3】
熱媒により温度制御される熱板を備えたホットプレス装置と該ホットプレス装置に熱媒を供給する温度制御装置を備えたホットプレスシステムにおいて、
前記温度制御装置には熱媒を冷却するクーラ部と熱媒を加熱するヒータ部とが備えられるとともに、
前記クーラ部を経由した熱媒を熱板またはヒータ部に選択的に送ることが可能なバルブが備えられたホットプレスシステム。
【請求項4】
クーラ部からヒータ部を経由して熱板に熱媒が送られる専用の管路と、クーラ部からヒータ部を経由しないで熱板に熱媒が送られる専用の管路が備えられた請求項3に記載のホットプレスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒により温度制御される熱板を備えたホットプレス装置と該ホットプレス装置に熱媒を供給する温度制御装置を備えたホットプレスシステムの温度制御方法およびホットプレスシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱媒により温度制御される熱板を備えたホットプレス装置と該ホットプレス装置に熱媒を供給する温度制御装置を備えたホットプレスシステムにおいて、温度制御装置に熱媒を冷却するクーラ部と熱媒を加熱するヒータ部とを備えたものとしては特許文献1と特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献1については「発明の詳細な説明」の段落番号[0030]および[図1]に示されるように、上流側管路34を流れる熱媒を外部ヒータシステム32とクーラ39のどちらに送るのかを三方切換弁SV34により切り換える。そして段落番号[0040]および[図2]のフローチャートに記載されるように、熱盤冷却の際には、三方切換弁SV34を切り換えて上流側管路34を流れる熱媒がクーラ39に向かうようにして熱盤を冷却する。また特許文献2については「発明の詳細な説明」の段落番号[0011]に記載されるように冷却工程においては、冷却用三方弁の弁開度をAポート側からBポート側の限度位置まで急速に変移させてクーラを通じて熱板に熱媒を送ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-264477号公報
【特許文献2】特開2000-289043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記特許文献1、特許文献2はいずれも、ホットプレス装置の昇温工程と冷却工程におけるクーラとヒータを用いた温度制御について十分な記載がされていないものであった。取り分け、ヒータ内の熱媒が冷却されないまま次回の加圧成形開始時まで滞留される問題や、次回の加圧成形の昇温制御との関係については何ら考慮されていなかった。そのためヒータ内の熱媒が高温のまま維持される場合には熱媒の劣化が早まるか、または次回のホットプレス装置による加圧成形開始時に温度制御装置のヒータから想定以上の温度の熱媒が送られて昇温制御が安定しないなどの問題があった。または昇温工程の省エネルギー化が十分に実施できないなどの問題があった。
【0005】
そこで本発明では、ホットプレス装置の熱板に送られる熱媒の長寿命化、ホットプレス装置の温度制御の安定化、ホットプレス装置の省エネルギー化の少なくとも一つを適切に行うことを可能としたホットプレスシステムの温度制御方法およびホットプレスシステムの温度制御装置を提供することを目的とする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のホットプレスシステムの温度制御方法は、熱媒により温度制御される熱板を備えたホットプレス装置と該ホットプレス装置に熱媒を供給する温度制御装置を備えたホットプレスシステムの温度制御方法において、前記温度制御装置には熱媒を冷却するクーラ部と熱媒を加熱するヒータ部とが備えられ、ホットプレス装置の熱板から排出された熱媒をクーラ部を経由してヒータ部に送り、ヒータ部の冷却を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のホットプレスシステムの温度制御方法は、熱媒により温度制御される熱板を備えたホットプレス装置と該ホットプレス装置に熱媒を供給する温度制御装置を備えたホットプレスシステムの温度制御方法において、前記温度制御装置には熱媒を冷却するクーラ部と熱媒を加熱するヒータ部とが備えられ、ホットプレス装置の熱板から排出された熱媒をクーラ部を経由してヒータ部に送り、ヒータ部の冷却を行うので、ホットプレスシステムのホットプレス装置の熱板に送られる熱媒の長寿命化、ホットプレス装置の温度制御の安定化、ホットプレス装置の省エネルギー化の少なくとも一つを適切に行うことが可能となる。また本発明のホットプレスシステムも同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のホットプレスシステムを構成するホットプレス装置と温度制御装置の概略説明図である。
図2】本実施形態のホットプレスシステムの温度制御装置の要部の概略図である。
図3】本実施形態のホットプレスシステムの加圧成形時の温度制御を示すグラフである。
図4】本実施形態のホットプレスシステムの温度制御方法を示すフローチャート図である。
図5】別の実施形態のホットプレスシステムの温度制御装置の要部の概略図である。
【0009】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0010】
<ホットプレスシステム>
本実施形態の熱媒により温度制御される熱板11を備えたホットプレスシステム14と、該ホットプレスシステム14に熱媒を供給する温度制御装置13を備えたホットプレスシステム14について、図1および図2を参照して説明する。本実施形態のホットプレスシステム14は、熱媒によりホットプレス装置12の熱板11の加熱と冷却を行うものである。本発明においてホットプレスシステム14とは、ホットプレス装置12と温度制御装置13、またはそれらを作動させる制御装置15等を含むシステム全体を指す。ホットプレス装置12は、上固定盤16と下可動盤17の間に複数の被加熱部である熱板11が複数枚配置されている。熱板11の枚数の最低限度は2枚であり、一例として2枚~20枚の範囲で熱板が垂直方向に平行に配置される。下可動盤17の下側には油圧機構29により作動される加圧シリンダ18のラム18aが固定され、ラム18aを昇降させることにより下可動盤17に固定された熱板11が昇降可能となっている。そして前記下可動盤17に固定された熱板11の更なる上昇に伴って中間の各熱板11も上固定盤16に固定された熱板11に向けて上昇可能となっている。本実施形態のホットプレス装置12は、チャンバ19内に収納され、チャンバ19内を真空状態(減圧状態)としてプレス成形可能となっているが、チャンバを備えないものでもよい。また高温対応のホットプレス装置12では、積層成形品Pの酸化防止などの目的で窒素ガス等の不活性ガスの供給装置を備えたものでもよい。
【0011】
熱板11は上下面が平坦な平面からなる均等板厚の板体であって、熱媒油等の熱媒を流通させる熱媒通路が内部に形成されている。そして各熱板11の本体の金属部分には熱板11の温度を検出する温度センサ20(サーモ―カップル)が備えられ、前記温度センサ20は制御装置15に接続されている。図1においては省略して1枚の熱板11のみに温度センサ20が記載されているが、全ての熱板11に温度センサ20が取付けられている。通常は熱板11の各部の温度を均一にするために1枚の熱板11のそれぞれのゾーンごとにそれぞれ温度センサ20が取り付けられている。温度センサ20は、熱板11を9ゾーンに分割して9箇所に取り付けてもよいし、熱媒油の入口側、中央部、熱媒油の排出口側に取り付けてもよい。また熱板11の温度センサ20は、熱板11自体の温度を測定するもの以外に、熱媒油の媒体流路内に設けられ熱媒油の温度を測定するものでもよい。
【0012】
ホットプレス装置12は、各熱板11へ熱媒油等の熱媒を分配して供給する供給側マニホールド21と、各熱板11から排出される熱媒油等の熱媒を集める排出側マニホールド22が設けられている。供給側マニホールド21と各熱板11との間にはそれぞれ熱板11に熱媒油を供給する管路23(流路)が接続されている。また管路23はそれぞれ開閉弁または流量調整弁を備えたものでもよい。また供給側マニホールド21には温度制御装置13からホットプレス装置12に接続される管路24(供給側管路)が接続されている。また供給側マニホールド21の内部には熱媒油の温度を検出する温度センサ25(サーモ―カップル)が取付けられ、前記温度センサ25は制御装置15に接続されている。なおホットプレスシステム14に使用される温度センサの種類は限定されずサーモカップル以外の温度センサでもよく、検出信号もアナログ信号を出力するものでもデジタル信号を出力するものでもよい。
【0013】
また排出側マニホールド22と各熱板11との間にはそれぞれ管路26が接続されている。また排出側マニホールド22にはホットプレス装置12から温度制御装置13に接続される管路27(排出側管路)が接続されている。また排出側マニホールド22の内部には熱媒の温度を検出する温度センサ28(サーモカップル)が取付けられ、前記温度センサ28は制御装置15に接続されている。本発明において管路24、供給側マニホールド21、管路23、管路26、排出側マニホールド22、管路27は、熱板11へ熱媒を給排する流路に相当する。本発明においてホットプレス装置12側の温度検出については、排出側マニホールド22の温度センサ28を無くすか使用せずに、供給側マニホールド21の温度センサ25と熱板11の温度センサ20を用いて熱板11の温度制御を行ってもよい。または少なくとも2点の温度センサを使用してホットプレス装置12の温度検出を行うものでもよい。
<ホットプレスシステムの温度制御装置>
【0014】
次にホットプレスシステム14の熱媒供給装置である温度制御装置13の概略について説明する。温度制御装置13には熱媒である熱媒油を冷却するクーラ部31と熱媒である熱媒油を加熱するヒータ部32とが備えられている。温度制御装置13は、ホットプレス装置12の排出側マニホールド22からに接続される管路27(排出側管路)に更に接続される導入側の管路48が設けられ、導入側の管路48には三方弁33が設けられている。なお三方弁33はそれぞれの方向への熱媒油の流量を制御可能なものでもよく、熱媒油の流れの方向を切り替えるだけのものでもよい。また三方弁33に換えて、同様の機能を有する単数または複数の弁を設けてもよい。
【0015】
三方弁33の一方の排出口はクーラ部31に接続される管路34に接続され、もう一方の排出口はクーラ部31を経由せずに熱媒をヒータ部32等に送るクーラ部バイパス管路35に接続されている。クーラ部31は、熱板11から戻ってきた熱媒油を冷却する機能を備えており、冷却水その他の冷媒を使用した公知の熱交換システムにより熱媒油の冷却制御が可能となっている。クーラ部31の排出側の管路36には熱媒油の温度を測定する温度センサ37が設けられる。そして前記管路36と前記クーラ部バイパス管路35は合流して合流管路38となっている。合流管路38には、熱媒油をホットプレス装置12の熱板11に供給するためのポンプ39が設けられている。なおポンプ39についてはこの位置に設けることには限定されず、第2の実施の形態のように2個のポンプを設けてもよい。
【0016】
ポンプ39の吐出側の合流管路40には三方弁41が設けられている。なお三方弁41は、三方弁33と同様にそれぞれの方向への流量を制御可能なものでもよく、流れの方向を切り替えるだけのものでもよい。また三方弁41に換えて、同様の機能を有する単数または複数の弁を設けてもよい。
【0017】
三方弁41の一方の排出口はヒータ部32に接続される管路42(クーラ部31からヒータ部32を経由して熱板11に熱媒が送られる専用の管路)に接続され、もう一方の排出口はヒータ部32を経由せずに熱媒を熱板11等に送る専用のヒータ部バイパス管路43に接続されている。ヒータ部32は、熱板11から直接戻ってきた熱媒油、またはクーラ部31を経由して送られてきた熱媒油を加熱する部分であり、内部の通路49の周りに電気抵抗等で発熱する電気ヒータ50が設けられている。そして前記電気ヒータ50等によりヒータ部32の内部の通路49の熱媒油の加熱制御が可能となっている。なおヒータ部32の熱源は、誘導加熱装置等、抵抗発熱以外の電気により発熱する発熱体やボイラを使用したものでもよい。またヒータ部32の内部の通路49は、流路状のものに限定されずタンク状のものであってもよい。
【0018】
ヒータ部32の排出側の管路44には熱媒油の温度を測定する温度センサ45が設けられる。そして前記管路44と前記ヒータ部バイパス管路43は合流して合流管路46となっている。そして前記合流管路46にはホットプレス装置12の熱板に送られる熱媒油の温度Eを測定する温度センサ47が設けられている。また温度制御装置13は、制御装置30を備えている。制御装置30は、前記三方弁33,41、クーラ部31、ポンプ39、ヒータ部32、温度センサ37,45,47等に接続されている。なお上記の温度制御装置13では、熱媒として熱媒油を使用するものについて説明したが、本発明に使用される熱媒としては熱媒油等の有機熱媒体の他、水(蒸気を含む)、空気等のガス、無機熱媒体を使用するものでもよい。
【0019】
次にホットプレスシステム14のホットプレス装置12と温度制御装置13の温度制御などを行う制御装置15について説明する。制御装置15は、入出力部51、記憶部52、演算部53とそれらを接続するバスライン54等を備えている。入出力部51は、ホットプレス装置12の熱板11の温度センサ20、供給側マニホールド21の温度センサ25、排出側マニホールド22の温度センサ28、温度制御装置13の温度センサ47等と接続されている。そして制御装置15には温度制御装置13の温度センサ45により検出される熱媒油の温度、熱板11の温度センサ20により検出される熱板の検出温度(または熱媒油の温度)の他、供給側マニホールド21の温度センサ25により検出される熱媒油の温度、排出側マニホールド22の温度センサ28により検出される熱媒油の温度等が入力される。
【0020】
また入出力部51は、温度制御装置13の制御装置30やホットプレス装置12にも熱媒油の開閉弁や流量調整弁がある場合はそれらの弁にも接続され、熱媒油の温度Eのコントロールが行われる。更に入出力部51は、ホットプレス装置12の加圧シリンダ18の油圧機構29、設定装置55、図示しない外部の制御装置等とも接続されている。
【0021】
制御装置15の記憶部52は、揮発メモリ、不揮発メモリ、ハードディスク等を含むものであり、成形条件や後述するヒータ部32の内部の通路49に滞留している熱媒油の冷却を含むシーケンスプログラム等が格納されている。また制御装置15の演算部53は、CPU等かならなり、PID制御等の温度制御を含むホットプレスシステム14のシーケンス制御も演算部53で行われる。また本発明の温度制御時のヒータ部32の内部の通路49に滞留している熱媒油の冷却を含むシーケンスプログラムの実行もまた演算部53で行われる。
【0022】
<ホットプレスシステムの温度制御方法とヒータ内の熱媒油の冷却制御方法>
次にホットプレスシステム14の温度制御方法とヒータ部32の内部の通路49の熱媒油の冷却制御方法について図3図4を参照して説明する。ホットプレスシステム14では、次に成形する積層成形品Pに対応する成形条件を記憶部52から読み出し、シーケンス制御により熱板11の間での積層成形品Pの加圧制御や、熱板11の温度制御を行う。最初に制御装置15からホットプレス装置12の油圧機構29に信号が送られ、加圧シリンダ18のラム18aが上昇される。そして熱板11と熱板11の間で積層成形品Pの加圧制御が行われる。
【0023】
また前記加圧制御と並行して行われるホットプレスシステム14の温度制御方法については、一般的にはPID制御により行われる。図3に示される昇温工程Aでは、熱板11に送られる熱媒油は、主に温度センサ47の温度を検出してPID制御等の温度制御がされる。この際に熱板11の温度センサ20、供給側マニホールド21の温度センサ25、排出側マニホールド22の温度センサ28で検出される温度も按分して制御に用いてもよい。この際三方弁33はクーラ部バイパス管路35に接続されており、ポンプ39から遅れてきた熱媒油は、三方弁41の開度を調整することによりヒータ部32に接続される管路42とヒータ部バイパス管路43に分配されて送られる。
【0024】
そして温度センサ47により検出される熱板に送られる熱媒油の温度Eが、熱板11の設定温度Dを上回った状態を保って連続して上昇するように設定されている。その結果前記熱板に送られる熱媒油の温度Eに対して、温度センサ20により検出される熱板11の温度がやや遅れながら追従するように上昇する。ただし上記したように設定温度Dに対して熱板に送られる熱媒油の温度Eがあまりにも高すぎると、昇温工程Aにおける熱板11の昇温制御が安定しない場合がある。本実施形態では、ヒータ部32を介して送られる熱媒油の比率と、ヒータ部32を介さずにヒータ部バイパス管路43を介して送られる熱媒油の比率を三方弁41で調整できるので、安定した所望の昇温が可能となる。なお昇温工程Aの初期段階のヒータ部の内部の通路の熱媒油の温度Fとの関係については後で詳しく説明する。
【0025】
次に熱板11が予め設定した所定の温度となるか、または所定時間が経過すると、昇温工程Aから温度保持工程Bに移行する。温度保持工程Bでは、熱板11の温度が略一定温度となるように熱媒油の供給を行う。温度保持工程Bでは熱板11は既に所定の温度に昇温されているので、熱板11の温度と、熱板に送られる熱媒油の温度Eには大きな差異はない(図3では設定温度Dと熱板に送られる熱媒油の温度Eは略同温で重なっているため熱板に送られる熱媒油の温度Eは記載を省略)。そして熱板11等の温度が降下してくると、温度制御装置13から熱板11の設定温度Dと同温か同温以上の熱媒油を熱板11に供給する。ただしこの際の温度制御装置13からホットプレス装置12の各熱板11に送られる熱媒油の送油量は昇温工程Aとの比較においては少量である。
【0026】
最近のふっ素樹脂等の絶縁材を使用した基板などでは、温度保持工程Bの熱板11の温度は360℃ないし400℃に達するものもある。そのため熱媒油も高温対応のものが使用されるがそれでも360℃ないし400℃の高温では油の劣化が早まる場合がある。高温対応の熱媒油としては、これに限定されるものではないが一例として、バーレルサーム(登録商標)300、400(いずれも最高使用温度(境膜)370℃)、バーレルシリコーンフルードST(最高境膜温度 427℃)などが挙げられる。ただし使用最高温度が低い熱媒油であっても低温で劣化が始まる場合がある。従ってホットプレス装置12の成形時の熱板11の最高設定温度が比較的低い場合(これに限定されるものではないが200℃ないし360℃)であっても本発明の対象となる。
【0027】
次に図4のフローチャート図にも記載されるように所定の時間が経過して温度保持工程Bが終了すると冷却工程Cが開始される(s1)。冷却工程Cが開始されると、制御装置15からの指令により温度制御装置13のヒータ部32の電気ヒータ50への通電が停止されヒータOFFとされる(s2)。そして更に温度制御装置13の三方弁33を管路48とクーラ部31に接続される管路34が連通するように切り換え、管路48からクーラ部31側に熱媒油が送られるように切り換える(s3)。冷却工程Cにおいて熱板に送られる熱媒油の温度Eは、降温制御される熱板11の設定温度D以下の温度を保つように連続して降温制御される。その結果前記熱板に送られる熱媒油の温度Eに対して、温度センサ20により検出される熱板11の温度がやや遅れながら追従して下降する。この際に三方弁41は、温度保持工程Bから引き続いてヒータ部32へ熱媒油が供給される状態を保っている。そのためクーラ部31を経由した熱媒油が三方弁41を介してヒータ部32に送られる。
【0028】
このことによりヒータ部32内部の通路49に滞留している温度保持工程Bの際の高温の熱媒油がヒータ部32から排出され、ヒータ部32の内部の通路49の熱媒油もまた冷却工程の進行とともに冷却される。また同時にヒータ部32の前後に接続される管路42,44についても管路42,44に滞留している高温の熱媒油が排出され、低温の熱媒油に置換される。ただしヒータ部32内部の通路49(前後の管路42,44を含む)に滞留している熱媒油は全体の送油量の中では少量なので、前記熱媒油がヒータ部32から排出されて熱板11に送られても熱板11の冷却制御に大きな影響を与えない場合が殆どである。そしてそしてヒータ部の内部の通路の熱媒油の温度Fを降温させることにより熱媒油の劣化を防止することができる。
【0029】
次に冷却工程Cにおいては、温度センサ47により検出される熱板に送られる熱媒油の温度Eが温度T1(熱媒が劣化しない温度)まで降温されたかどうかを判断する(s4)。そして熱板に送られる熱媒油の温度Eが温度T1まで降温された場合(s4=Y)は、三方弁41を切換えて、ヒータ部32への熱媒油の供給を遮断し、合流管路40とヒータ部バイパス管路43を100%連通させる(s5)。このことによりヒータ部の内部の熱媒油の温度Fはそれ以上降温されなくなる(自然冷却降温分を除く)。そして冷却工程終了時間となると(s6=Y)、成形サイクルを終了し、ホットプレス装置12のチャンバ19を開放して積層成形品Pを取り出す。
【0030】
なお上記の冷却工程Cにおいて三方弁41の開度が調整可能なタイプでは、冷却開始から、ヒータ部バイパス管路43を経由して熱板11に送られる熱媒油と、管路42からヒータ部32を経由して熱板11に送られるそれぞれの熱媒油の量を調整して、一度にヒータ部32内部の通路49に滞留していた熱媒油が排出されて熱板11に送られることの影響を受けないようにしてもよい。そして熱板に送られる熱媒油の温度Eが降温され、温度センサ47が温度T1を検出した場合(s4=Y)、三方弁41を切り換えて合流管路40とヒータ部バイパス管路43を100%連通させ(s5)、ヒータ部32(前後の管路42,44を含む)にはそれ以降熱媒油が送られないようにする。
【0031】
また前記とは異なり、冷却工程Cの開始時から急速に冷却を進行させたい場合には、冷却工程Cのスタート時から一定時間は三方弁41を制御してヒータ部32には熱媒油を供給せずに合流管路40とヒータ部バイパス管路43を100%連通させ、ヒータ部32を介さずに熱板11を急速に冷却するようにしてもよい。そして冷却工程Cの途中で三方弁41を制御してヒータ部32に熱媒油を供給し始めてもよい。従って本発明のホットプレスシステムにおいて、クーラ部31を経由してヒータ部32に熱媒を送りヒータ部32の熱媒の冷却を行う工程は、ホットプレス装置12の冷却工程Cの少なくとも一部の時間に行うものであればよい。
【0032】
更に本発明では、ホットプレス装置12の冷却工程Cにおいて熱板11に送る熱媒油が所定の温度T1に降温された際にヒータ部32への熱媒の供給を停止するもの以外に、冷却工程Cにおいて所定の時間となるまでクーラ部31を経由してヒータ部32に熱媒を送ってヒータ部32の熱媒の冷却を行い、その後にヒータ部32への熱媒の供給を停止するものでもよい。また冷却工程C(成形サイクル)の終了についても、所定時間が経過したことにより冷却工程Cを終了するもの以外に、熱板11の温度が所定の冷却工程終了温度となったことにより冷却工程Cを終了してもよい。
【0033】
次に次回のホットプレス装置12の加圧成形時の昇温工程Aについて、ヒータ部の内部の通路の熱媒油の温度Fとの関係を中心に説明する。前回の冷却工程Cにおいてヒータ部32の内部の通路49の熱媒油は、劣化しない温度までは降温されているが、冷却工程Cの終了時に熱板11に送られる熱媒油の温度よりは高温な状態で保持されている。従ってヒータ部32内の熱媒油が完全に冷却されていないので、次回の昇温工程A時のヒータ部32の初期昇温の際の電力消費量を削減することができ、省エネルギー化に貢献することができる。
【0034】
また昇温工程Aにおいては、三方弁41の開度を調整することにより、クーラ部バイパス管路35からポンプ39により送られてきた熱媒油をヒータ部32とヒータ部バイパス管路43に配分して供給することができる。そして昇温工程Aの最初の段階においてヒータ部の内部の通路の熱媒油の温度Fが温度保持工程Bほどには高温でないので、昇温工程Aの開始時の制御を安定して行うことができる。またその後も徐々に三方弁41からヒータ部32へ供給する熱媒油を増加させることにより昇温工程A全体についても安定した温度制御を行うことができる。
【0035】
上記の結果、本発明では、クーラ部31からヒータ部32を経由して熱板11に熱媒が送られる専用の管路42,44と、クーラ部31からヒータ部32を経由しないで熱板に熱媒が送られる専用の管路(ヒータ部バイパス管路43)が備えられているので、ホットプレス装置12の熱板11に送られる熱媒の長寿命化、ホットプレス装置12の温度制御の安定化、ホットプレス装置12の省エネルギー化の少なくとも一つを適切に行うことができる。
<別の実施形態のホットプレスシステムの温度制御装置>
【0036】
次に別の実施形態のホットプレスシステム14の熱媒供給装置である温度制御装置61について相違点を中心に説明する。温度制御装置61は、ホットプレス装置12の排出側マニホールド22からに接続される管路27(排出側管路)に更に接続される導入側の管路62が設けられ、導入側の管路62にはポンプ63が設けられている。ポンプ63の吐出側の管路64には三方弁65が設けられている。三方弁65の一方の排出口はクーラ部66に接続される管路67に接続され、もう一方の排出口はヒータ部68に接続される管路69に接続されている。ヒータ部68は熱媒油を加熱するものであって、熱媒油が流通する内部の通路82の周りに電気ヒータ83などの加熱手段を備えている。クーラ部66は熱板11から戻ってきた熱媒油を冷却するためのものである。クーラ部66の排出側の管路70には熱媒油の温度を測定する温度センサ71が設けられている。また前記管路70にはポンプ72が設けられている。ポンプ72の吐出側の管路には三方弁73が設けられている。
【0037】
三方弁73の一方の排出口に接続される管路74は、ヒータ部68に熱媒油が送られるように管路69に接続されている。また三方弁73のもう一方の排出口は熱板11に向けて直接に熱媒油が送られるようにヒータ部バイパス管路75に接続されている。またヒータ部68の出口側の管路76には温度センサ77が取り付けられており、前記管路76と前記ヒータ部バイパス管路75は三方弁78で合流接続されている。三方弁78の1個の排出口は、熱板11に向けて接続される管路79に接続されている。そして前記管路79には温度センサ80が設けられている。また温度制御装置61には、ポンプ63、クーラ部66,ヒータ部68、三方弁65,73,78などを制御する制御装置81が設けられている。
【0038】
図5の温度制御装置61もまた、クーラ部66からヒータ部68を経由して熱板11に熱媒が送られる専用の管路74と、クーラ部66からヒータ部68を経由しないで熱板11に熱媒が送られる専用のヒータ部バイパス管路75が備えられている。そしてまたクーラ部66を経由した熱媒を熱板11またはヒータ部68に選択的に送ることが可能なバルブである三方弁73が備えられている。なお三方弁65,73,78については、同じ機能を備えた単数または複数の別の弁により代替してもよい。
【0039】
また温度制御装置13については図1および図5のもの以外の熱媒を冷却するクーラ部と熱媒を加熱するヒータ部とが備えられ、クーラ部を経由した熱媒を熱板またはヒータ部に選択的に送ることが可能なバルブが備えられ、ホットプレス装置の熱板から排出された熱媒をクーラ部を経由してヒータ部に送り、ヒータ部の冷却を行うことのできるものであってもよい。また特には前記図1および図5の温度制御装置に更にバルブと循環管路を設け、前記循環管路を用いてヒータ部からクーラ部への熱媒を還流させる温度制御装置でもよい。熱媒を還流させることのできる温度制御装置は、ホットプレス装置12の冷却工程C以外の停止時であってもヒータ部32等の温度を最適な温度に低下させることができる。
【0040】
更に温度制御装置13は、図示しない蓄熱タンクを備えたものでもよい。蓄熱タンクは前の成形サイクルの温度保持工程の熱媒油をそのまま保存し、次の成形サイクルの昇温工程においてクーラ部31等から送られる熱媒油と混合して使用するものである。この場合も蓄熱タンク内に貯留される熱媒油は劣化しない温度に保持される。蓄熱タンクを備えたものは装置が大掛かりになる上に消防法等の法令対象となる場合もあるが、省エネルギーの面で優れている場合も多い。
【0041】
またホットプレスシステム14のホットプレス装置12と温度制御装置13の関係は、1対1のものに限定されない。更に温度制御装置13のクーラ部31とヒータ部32の個数も1対1のものに限定されず、1台の温度制御装置に対して複数基のクーラ部31と1基のヒータ部32が設けられたもの、1基のクーラ部31と複数基のヒータ部32が設けられたもの、複数基のクーラ部31と複数のヒータ部32が設けられたものなどでもよい。
【0042】
また本発明のホットプレスシステム14のホットプレス装置12の熱板は、完全に平坦なものに限定されず、キャビティ等の凹凸を備えたものでもよい。または熱板(加熱盤)に対して更に別の金型などを取り付けて使用するものでもよい。
【0043】
本発明については一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、実施形態の各記載を組み合わせしたものや当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0044】
11 熱板
12 ホットプレス装置
13,61 温度制御装置
14 ホットプレスシステム
15,30 制御装置
20,25,28,37,45,47,71,77,80 温度センサ
23,24,26,27,34,36,42,44,46,62,64,67,69,70,74,76,79 管路
31,66 クーラ部
32,68 ヒータ部
43、75 ヒータ部バイパス管路
33,41,65,73,78 三方弁(バルブ)
38,40,46 合流管路
39,63.72 ポンプ
49,82 内部の通路
50,83 電気ヒータ
A 昇温工程
B 温度保持工程
C 冷却工程
図1
図2
図3
図4
図5