(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178502
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20241218BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241218BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20241218BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20241218BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241218BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241218BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20241218BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241218BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241218BHJP
【FI】
H02J3/38 170
H02J3/32
H02J3/46
H02J3/38 120
H01M8/00 Z
H01M8/00 A
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04313
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096662
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
【テーマコード(参考)】
5G066
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5G066HA13
5G066HA15
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB08
5H127AB14
5H127AB23
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA02
5H127DA08
5H127DB69
5H127DB98
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC50
(57)【要約】
【課題】電力自給率の向上及び光熱費の低減を図ることができる電力供給システムを提供する。
【解決手段】系統電源Sと住宅Hの電力負荷とを接続する配電線10に、上流側から下流側へと順番に接続された複数の蓄電システム30を有する電力供給システム1において、太陽光発電部31と、蓄電池32と、住宅Hに設けられ貯湯タンク41を有する燃料電池40と、蓄電池32及び燃料電池40の動作を制御可能な制御部60と、を具備し、制御部60は、電力負荷に対して太陽光発電部31からの電力が不足する場合(ステップS11でYES)、蓄電池32に対して放電指示を行い(ステップS12)、蓄電池32からの放電によっても電力負荷に対して電力が不足する場合(ステップS15でYES)、待機中の燃料電池40のうち、所定の発電制御条件に従って決定される燃料電池40に対して発電指示を行うことが可能である(ステップS17及びS18)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源と複数の住宅の電力負荷とを接続する配電線に、上流側から下流側へと順番に接続された複数の蓄電システムを有する電力供給システムにおいて、
前記蓄電システムに設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能な発電部と、
前記蓄電システムに設けられ、前記発電部の発電電力を充放電可能な蓄電池と、
前記住宅に設けられて前記電力負荷に接続され、燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を用いて生成した温水を貯湯する貯湯タンクを有する燃料電池と、
前記蓄電池及び前記燃料電池の動作を制御可能な制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記電力負荷に対して前記蓄電システムからの電力が不足する場合、前記蓄電池に対して放電指示を行い、
前記蓄電池からの放電によっても前記電力負荷に対して電力が不足する場合、待機中の前記燃料電池のうち、所定の発電制御条件に従って決定される前記燃料電池に対して発電指示を行うことが可能である、
電力供給システム。
【請求項2】
前記発電制御条件には、発電指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の前記貯湯タンクの残湯量に基づいて決定する残湯量優先が含まれ、
前記制御部は、
前記発電制御条件が前記残湯量優先である場合、待機中の前記燃料電池のうち前記貯湯タンクの残湯量が最も少ない前記燃料電池に対して発電指示を行うことが可能である、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記発電制御条件には、発電指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の発電効率に基づいて決定する発電効率優先が含まれ、
前記制御部は、
前記発電制御条件が前記発電効率優先である場合、待機中の前記燃料電池のうち前記電力負荷が最も大きい前記住宅の前記燃料電池に対して発電指示を行うことが可能である、
請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記貯湯タンクの残湯量が満タンである前記燃料電池を、発電指示の対象から除外する、
請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電力負荷に対して前記蓄電システムからの電力が余剰する場合、前記蓄電池に対して充電指示を行い、
前記蓄電池への充電によっても前記電力負荷に対して電力が余剰する場合、発電中の前記燃料電池のうち、所定の待機制御条件に従って決定される前記燃料電池に対して待機指示を行うことが可能である、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記待機制御条件には、待機指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の前記貯湯タンクの残湯量に基づいて決定する残湯量優先が含まれ、
前記制御部は、
前記待機制御条件が前記残湯量優先である場合、発電中の前記燃料電池のうち前記貯湯タンクの残湯量が最も多い前記燃料電池に対して待機指示を行うことが可能である、
請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記待機制御条件には、待機指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の発電効率に基づいて決定する発電効率優先が含まれ、
前記制御部は、
前記待機制御条件が前記発電効率優先である場合、発電中の前記燃料電池のうち前記電力負荷が最も小さい前記住宅の前記燃料電池に対して待機指示を行うことが可能である、
請求項6に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記貯湯タンクの残湯量が所定の閾値未満である前記燃料電池を、待機指示の対象から除外する、
請求項7に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記貯湯タンクの残湯量が所定の閾値以下である前記燃料電池が存在する場合、前記電力負荷に対する電力の余剰又は不足に関わらず、当該燃料電池に対して発電指示を行うことが可能である、
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項10】
前記燃料電池の運転モードは、
前記電力負荷に応じた電力で発電を行う負荷追従運転と、予め定められた定格出力電力で発電を行う定格出力運転と、を含み、
前記制御部は、
前記発電制御条件が前記発電効率優先である場合、発電指示の対象の前記燃料電池の運転モードを前記負荷追従運転とし、
前記発電制御条件が前記残湯量優先である場合、発電指示の対象の前記燃料電池の運転モードを前記定格出力運転とする、
請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項11】
前記制御部は、
前記系統電源及び前記蓄電システムから前記電力負荷に供給される電力がブレーカの遮断電力に応じて決定される所定の閾値を超過する場合、前記燃料電池の運転モードを前記負荷追従運転から前記定格出力運転に変更する、
請求項10に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池及び燃料電池を具備する電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池及び燃料電池を具備する電力供給システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、系統電源からの配電線(電源ライン)に蓄電池及び燃料電池が接続され、燃料電池と蓄電池の動作を連携した電力供給システムが開示されている。特許文献1に記載の電力供給システムにおいては、例えば停電発生時に、燃料電池を定格出力運転させて蓄電池に充電し、満充電後に燃料電池を負荷追従運転に変更する。
【0004】
ここで、昨今、太陽光発電による発電電力の売電単価は下落傾向にあり、深夜電力単価よりも低い場合もある。このため、太陽光発電による発電電力を家庭内で自家消費した方が経済的に有利な場合もある。このように、電力供給システムにおいて、電力自給率の向上が望まれる。また、燃料電池を活用したさらなる光熱費の低減が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、電力自給率の向上及び光熱費の低減を図ることができる電力供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、系統電源と複数の住宅の電力負荷とを接続する配電線に、上流側から下流側へと順番に接続された複数の蓄電システムを有する電力供給システムにおいて、前記蓄電システムに設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能な発電部と、前記蓄電システムに設けられ、前記発電部の発電電力を充放電可能な蓄電池と、前記住宅に設けられて前記電力負荷に接続され、燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を用いて生成した温水を貯湯する貯湯タンクを有する燃料電池と、前記蓄電池及び前記燃料電池の動作を制御可能な制御部と、を具備し、前記制御部は、前記電力負荷に対して前記蓄電システムからの電力が不足する場合、前記蓄電池に対して放電指示を行い、前記蓄電池からの放電によっても前記電力負荷に対して電力が不足する場合、待機中の前記燃料電池のうち、所定の発電制御条件に従って決定される前記燃料電池に対して発電指示を行うことが可能であるものである。
【0009】
請求項2においては、前記発電制御条件には、発電指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の前記貯湯タンクの残湯量に基づいて決定する残湯量優先が含まれ、前記制御部は、前記発電制御条件が前記残湯量優先である場合、待機中の前記燃料電池のうち前記貯湯タンクの残湯量が最も少ない前記燃料電池に対して発電指示を行うことが可能であるものである。
【0010】
請求項3においては、前記発電制御条件には、発電指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の発電効率に基づいて決定する発電効率優先が含まれ、前記制御部は、前記発電制御条件が前記発電効率優先である場合、待機中の前記燃料電池のうち前記電力負荷が最も大きい前記住宅の前記燃料電池に対して発電指示を行うことが可能であるものである。
【0011】
請求項4においては、前記制御部は、前記貯湯タンクの残湯量が満タンである前記燃料電池を、発電指示の対象から除外するものである。
【0012】
請求項5においては、前記制御部は、前記電力負荷に対して前記蓄電システムからの電力が余剰する場合、前記蓄電池に対して充電指示を行い、前記蓄電池への充電によっても前記電力負荷に対して電力が余剰する場合、発電中の前記燃料電池のうち、所定の待機制御条件に従って決定される前記燃料電池に対して待機指示を行うことが可能であるものである。
【0013】
請求項6においては、前記待機制御条件には、待機指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の前記貯湯タンクの残湯量に基づいて決定する残湯量優先が含まれ、前記制御部は、前記待機制御条件が前記残湯量優先である場合、発電中の前記燃料電池のうち前記貯湯タンクの残湯量が最も多い前記燃料電池に対して待機指示を行うことが可能であるものである。
【0014】
請求項7においては、前記待機制御条件には、待機指示を行う前記燃料電池を前記燃料電池の発電効率に基づいて決定する発電効率優先が含まれ、前記制御部は、前記待機制御条件が前記発電効率優先である場合、発電中の前記燃料電池のうち前記電力負荷が最も小さい前記住宅の前記燃料電池に対して待機指示を行うことが可能であるものである。
【0015】
請求項8においては、前記制御部は、前記貯湯タンクの残湯量が所定の閾値未満である前記燃料電池を、待機指示の対象から除外するものである。
【0016】
請求項9においては、前記制御部は、前記貯湯タンクの残湯量が所定の閾値以下である前記燃料電池が存在する場合、前記電力負荷に対する電力の余剰又は不足に関わらず、当該燃料電池に対して発電指示を行うことが可能であるものである。
【0017】
請求項10においては、前記燃料電池の運転モードは、前記電力負荷に応じた電力で発電を行う負荷追従運転と、予め定められた定格出力電力で発電を行う定格出力運転と、を含み、前記制御部は、前記発電制御条件が前記発電効率優先である場合、発電指示の対象の前記燃料電池の運転モードを前記負荷追従運転とし、前記発電制御条件が前記残湯量優先である場合、発電指示の対象の前記燃料電池の運転モードを前記定格出力運転とするものである。
【0018】
請求項11においては、前記制御部は、前記系統電源及び前記蓄電システムから前記電力負荷に供給される電力がブレーカの遮断電力に応じて決定される所定の閾値を超過する場合、前記燃料電池の運転モードを前記負荷追従運転から前記定格出力運転に変更するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
請求項1においては、電力自給率の向上及び光熱費の低減を図ることができる。
【0021】
請求項2においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0022】
請求項3においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0023】
請求項4においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0024】
請求項5においては、電力自給率のさらなる向上を図ることができる。
【0025】
請求項6においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0026】
請求項7においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0027】
請求項8においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0028】
請求項9においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0029】
請求項10においては、燃料電池の発電コストの低減を図ることができる。
【0030】
請求項11においては、住宅街区のブレーカの遮断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの構成を示したブロック図。
【
図2】電力の供給態様に関するメインフローを示したフローチャート。
【
図3】発電制御条件が残湯量優先である場合における電力の流れの一例を示した図。
【
図4】発電制御条件が発電効率優先である場合における電力の流れの一例を示した図。
【
図5】待機制御条件が残湯量優先である場合における電力の流れの一例を示した図。
【
図6】待機制御条件が発電効率優先である場合における電力の流れの一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
【0033】
図1に示す電力供給システム1は、系統電源Sからの電力や、太陽光を利用して発電された電力を住宅Hへと供給するものである。電力供給システム1は、複数の住宅Hからなる住宅街区(電力融通街区)に適用することを想定している。
図1に示す住宅街区においては、2戸の住宅Hしか示していないが、3戸以上の住宅Hが設けられていてもよい。住宅Hにおいては、電気機器等の電力負荷を使用することにより、住宅Hに供給された電力が消費される。
【0034】
電力供給システム1は、系統電源Sからの電力や、太陽光を利用して発電された電力(後述する太陽光発電部31による発電電力)等を複数の住宅Hへと適宜供給(融通)する。
【0035】
電力供給システム1は、配電線10、スマートメータ20、蓄電システム30、燃料電池40、電力測定部50及び制御部60を具備する。
【0036】
配電線10は、系統電源Sと各住宅Hの電力負荷とを接続するものである。なお以下では、配電線10における系統電源S側を「上流側」と、各住宅Hの電力負荷側を「下流側」と称する。
【0037】
スマートメータ20は、配電線10を流れる電力を計測可能なものである。スマートメータ20は、配電線10の中途部に設置される。より詳細には、スマートメータ20は、後述する蓄電システム30よりも上流側(系統電源Sと蓄電システム30との間)、及び蓄電システム30よりも下流側(蓄電システム30と住宅Hとの間)に設けられる。スマートメータ20は、後述する制御部60と接続され、制御部60へ計測結果を送信することができる。
【0038】
蓄電システム30は、太陽光を利用して発電可能であると共に、電力を充放電可能なものである。蓄電システム30は、太陽光発電部31、蓄電池32、電力測定部33及びパワコン34を具備する。
【0039】
太陽光発電部31は、太陽光を利用して発電する装置である。太陽光発電部31は、太陽電池パネル等により構成される。太陽光発電部31は、住宅Hの屋根の上等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光発電部31は、後述するパワコン34に接続される。
【0040】
蓄電池32は、電力を充放電可能なものである。蓄電池32は、例えばリチウムイオン電池等により構成される。蓄電池32は、後述するパワコン34に接続される。
【0041】
電力測定部33は、電力を計測可能なものである。電力測定部33は、配電線10において、後述するパワコン34と配電線10との接続部の直ぐ上流側に設置される。より詳細には、電力測定部33は、配電線10において、前記(パワコン34と配電線10との)接続部と当該電力測定部33との間に、他の電線や電気機器が接続されないように設置される。電力測定部33は、パワコン34と電気的に接続され、パワコン34へ計測結果を送信することができる。
【0042】
パワコン34は、電力を適宜変換可能なハイブリッドパワーコンディショナである。パワコン34は、上述の如く太陽光発電部31及び蓄電池32に接続される。また、パワコン34は、配電線10の中途部に接続される。このように、パワコン34は、太陽光発電部31と蓄電池32と配電線10との間に設けられる。
【0043】
これにより、太陽光発電部31の発電電力は、パワコン34を介して配電線10に出力することができる。また、太陽光発電部31の発電電力は、パワコン34を介して蓄電池32に充電することができる。また、蓄電池32の放電電力は、パワコン34を介して配電線10に出力することができる。また、配電線10を流れる電力(系統電源Sからの電力)は、パワコン34を介して蓄電池32に充電することができる。
【0044】
また、パワコン34は、上述の如く電力測定部33と接続される。パワコン34は、電力測定部33の設置箇所を流れる電力の大きさ及び向き(上流側又は下流側)に関する情報を取得することができる。パワコン34は、電力測定部33から取得した情報に基づいて、蓄電池32の充放電の制御を行うことができる。
【0045】
このように、蓄電システム30は、太陽光発電部31の発電電力や蓄電池32の放電電力を、パワコン34を介して配電線10へ出力することができる。また、蓄電システム30は、太陽光発電部31の発電電力や系統電源Sからの電力を、パワコン34を介して蓄電池32に充電することができる。
【0046】
本実施形態において、蓄電システム30は4つ設けられる。4つの蓄電システム30(より詳細には、蓄電システム30のパワコン34)は、配電線10にそれぞれ接続される。具体的には、4つの蓄電システム30は、配電線10のスマートメータ20と住宅Hとの間において、電力の流れる方向に1つずつ順番に(直列に)接続される。
【0047】
燃料電池40は、水素等のガス燃料を用いて発電する装置である。燃料電池40は、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)又は固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)等により構成される。燃料電池40は、各住宅Hに設けられる。
【0048】
燃料電池40は、発電した電力を、住宅Hの電力負荷に出力可能に構成される。また、燃料電池40で発電した電力が住宅Hで消費し切れなかった場合、その余剰電力は蓄電池32に充電される。燃料電池40の運転モードには、負荷追従運転及び定格出力運転が含まれる。より詳細には、燃料電池40は、後述する電力測定部50の計測結果等に基づいて、住宅Hの電力負荷に応じた電力で発電を行う負荷追従運転を行うことができる。また、燃料電池40は、予め定められた定格出力電力で発電を行う定格出力運転を行うことができる。本実施形態において、燃料電池40の最大出力は0.7kWであるものとし、定格出力運転の際に0.7kWの出力で運転を行うものとする。
【0049】
燃料電池40は、貯湯タンク41を備えている。燃料電池40は、発電時に発生する排熱を、貯湯タンク41に温水として蓄熱することができる。貯湯タンク41内の湯は、当該貯湯タンク41が設置された住宅H内で使用される。本実施形態において、貯湯タンク41の最大貯湯量は100Lであるものとする。また、燃料電池40は、貯湯タンク41の残湯量が所定の閾値以下となると、バックアップボイラが稼動して貯湯タンク41内の湯を補充するように構成されている。本実施形態においては、燃料電池40は、貯湯タンク41の残湯量が30L以下となると、バックアップボイラが稼動するものとする。燃料電池40は、燃料ガスを使用してバックアップボイラによる湯の補充を行う。
【0050】
電力測定部50は、電力を計測可能なものである。電力測定部50は、配電線10において、各住宅Hの電力負荷のすぐ上流側に設けられる。より詳細には、電力測定部50は、配電線10において、各住宅Hへの配電線10の分岐部と各住宅Hとの間に設けられる。電力測定部50は、燃料電池40及び後述する制御部60と電気的に接続され、燃料電池40及び制御部60へ計測結果を送信することができる。
【0051】
制御部60は、蓄電システム30及び燃料電池40の動作を制御することによって、電力供給システム1における電力の供給態様を制御するものである。制御部60は、4つの蓄電システム30のそれぞれのパワコン34に電気的に接続される。また、制御部60は、住宅Hのそれぞれの燃料電池40に電気的に接続される。
【0052】
制御部60は、パワコン34を介して蓄電池32を制御することができる。また、制御部60は、スマートメータ20と電気的に接続される。制御部60は、スマートメータ20から計測結果に関する情報を取得することができる。具体的には、制御部60は、上流側のスマートメータ20の計測結果に基づいて、系統電源Sから配電線10に受け入れた電力に関する情報を取得することができる。また、制御部60は、下流側のスマートメータ20の計測結果に基づいて、住宅Hに供給された電力に関する情報を取得することができる。
【0053】
制御部60は、電力測定部50と電気的に接続される。これにより、制御部60は、各住宅Hの電力負荷に関する情報を取得することができる。
【0054】
制御部60は、燃料電池40の動作を制御することができる。制御部60は、燃料電池40に対して発電許可(発電指示)を行うことができる。より詳細には、制御部60は、待機中の燃料電池40のうち、所定の発電制御条件に従って決定される燃料電池40に対して発電許可を行うことができる。発電制御条件には、発電指示を行う燃料電池40を燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量に基づいて決定する「残湯量優先」と、発電指示を行う燃料電池40を燃料電池40の発電効率に基づいて決定する「発電効率優先」と、が含まれる。
【0055】
また、制御部60は、燃料電池40に対して待機指示を行うことができる。より詳細には、制御部60は、発電中の燃料電池40のうち、所定の待機制御条件に従って決定される燃料電池40に対して待機指示を行うことができる。待機制御条件には、待機指示を行う燃料電池40を燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量に基づいて決定する「残湯量優先」と、待機指示を行う燃料電池40を燃料電池40の発電効率に基づいて決定する「発電効率優先」と、が含まれる。
【0056】
発電制御条件及び待機制御条件には、優先順位が設定される。具体的には、「残湯量優先」又は「発電効率優先」のいずれか一方が第1優先順位、「残湯量優先」又は「発電効率優先」のいずれか他方が第2優先順位に設定される。「残湯量優先」又は「発電効率優先」のどちらを第1優先順位とするかは、電力供給システム1の設置業者や住宅Hの住人等によって予め設定することができ、実際の電力状況等に応じて後で変更できるようにしてもよい。
【0057】
また、制御部60は、燃料電池40の運転モード(負荷追従運転及び定格出力運転)を切り替えることができる。
【0058】
以下では、
図2のフローチャートを用いて、電力の供給態様に関するメインフローについて説明する。
図2に示す制御フローは、制御部60により所定のタイミングで(例えば1分ごとに)繰り返し実行される。また、以下では、燃料電池40の運転モードは、負荷追従運転に設定されているものとする。
【0059】
ステップS11において、制御部60は、住宅総購入電力量>太陽光総発電電力量であるか否かを判定する。ここで、「住宅総購入電力量」とは、見かけの住宅総負荷を示すものであり、より詳細には、各住宅Hの消費電力量の合計から各燃料電池40の発電電力量の合計を差し引いたものである。住宅総購入電力量は、下流側のスマートメータ20の計測結果に基づいて取得することができる。また、「太陽光総発電電力量」とは、4つの蓄電システム30からの電力の合計を示すものである。太陽光総発電電力量は、下流側のスマートメータ20の計測結果と上流側のスマートメータ20の計測結果との差に基づいて取得することができる。
【0060】
住宅総購入電力量及び太陽光総発電電力量としては、直近の所定期間の電力量が用いられ、例えば、1日を30分間ごとに48コマに分割した場合の直近の1コマ(30分間)の電力量が用いられる。
【0061】
制御部60は、住宅総購入電力量>太陽光総発電電力量であると判定した場合(ステップS11で「YES」)、ステップS12に移行する。一方、制御部60は、住宅総購入電力量>太陽光総発電電力量でないと判定した場合(ステップS11で「NO」)、ステップS19に移行する。
【0062】
なお、住宅総購入電力量>太陽光総発電電力量である場合(ステップS11でYES)とは、住宅Hの電力負荷に対して蓄電システム30からの電力(蓄電池32から放電されていない場合は太陽光発電部31の発電電力)が余剰していないことを意味する。一方、住宅総購入電力量>太陽光総発電電力量でない場合(ステップS11でNO)とは、住宅Hの電力負荷に対して蓄電システム30からの電力が余剰していることを意味する。
【0063】
ステップS12において、制御部60は、蓄電池32に対して放電指示を行う。具体的には、制御部60は、蓄電池32の蓄電残量等に基づいて蓄電池32の放電可能台数を算出し、蓄電残量の多い順に蓄電池32に対して放電指示を行う。
【0064】
制御部60は、ステップS12の処理を行った後、ステップS13に移行する。
【0065】
ステップS13において、制御部60は、貯湯タンク41の残湯量が閾値以下の燃料電池40はないか否かを判定する。前記閾値は、燃料電池40のバックアップボイラの稼動の閾値(30L)よりも大きな値に設定され、例えば60Lに設定される。
【0066】
制御部60は、貯湯タンク41の残湯量が閾値以下の燃料電池40はないと判定した場合(ステップS13で「YES」)、ステップS15に移行する。一方、制御部60は、貯湯タンク41の残湯量が閾値以下の燃料電池40はあると判定した場合(ステップS13で「NO」)、ステップS14に移行する。
【0067】
ステップS14において、制御部60は、待機中の燃料電池40のうち、最も貯湯タンク41の残湯量が少ない燃料電池40に発電許可を行う。発電許可を受けた燃料電池40は、負荷追従運転を行う。これにより、燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量の不足(湯切れ)によりバックアップボイラが稼動するのを回避することができ、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0068】
なお、燃料電池40の発電と待機の繰り返しを避けるため、ステップS14における発電許可は1台の燃料電池40に対してのみ行うものとする(後述するステップS17、S18、S21も同様)。これにより、発電と待機の繰り返しによる発電コストの増大を抑制することができる。
【0069】
制御部60は、ステップS14の処理を行った後、
図2に示す制御フローを終了する。
【0070】
ステップS15において、制御部60は、買電状態(系統電源Sから電力を購入している状態)か否かを判定する。制御部60は、上流側のスマートメータ20の計測結果に基づいてこの判定を行う。
【0071】
制御部60は、買電状態であると判定した場合(ステップS15で「YES」)、ステップS16に移行する。一方、制御部60は、買電状態でないと判定した場合(ステップS15で「NO」)、
図2に示す制御フローを終了する。
【0072】
なお、買電状態である場合(ステップS15でYES)とは、蓄電池32からの放電によっても住宅Hの電力負荷に対して電力が不足していることを意味する。一方、買電状態でない場合(ステップS15でNO)とは、蓄電池32からの放電によって住宅Hの電力負荷に対する電力の不足が解消していることを意味する。
【0073】
ステップS16において、制御部60は、発電制御条件は残湯量優先か(残湯量優先が第1優先順位か)否かを判定する。ここで、上述の如く制御部60には、燃料電池40の発電制御条件として、発電指示を行う燃料電池40を燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量に基づいて決定する「残湯量優先」、又は、発電指示を行う燃料電池40を燃料電池40の発電効率に基づいて決定する「発電効率優先」のいずれかが第1優先順位に設定されている。
【0074】
制御部60は、発電制御条件が残湯量優先である(残湯量優先が第1優先順位である)と判定した場合(ステップS16で「YES」)、ステップS17に移行する。一方、制御部60は、発電制御条件が残湯量優先でない(すなわち、発電効率優先が第1優先順位である)と判定した場合(ステップS16で「NO」)、ステップS18に移行する。
【0075】
ステップS17において、制御部60は、待機中の燃料電池40のうち、貯湯タンク41の残湯量が最も少ない燃料電池40に発電許可を行う。なお、貯湯タンク41の残湯量が最も少ない燃料電池40が複数台ある場合、第2優先順位の「発電効率優先」に基づいて、当該複数台の燃料電池40の中から発電許可を行う燃料電池40を決定する。但し、待機中の全ての燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量が満タンである場合、制御部60は燃料電池40に対して発電許可を行わない。
【0076】
図3は、発電制御条件として残湯量優先が第1優先順位である場合における電力の流れの一例を示している。
図3に示す例においては、住宅Hとして2つの住宅H1、H2の電力負荷がそれぞれ1.7kW、2.3kWであり、全ての蓄電システム30から住宅H1、H2に供給される電力が3kWであるものとする。また、住宅H1、H2の燃料電池40はいずれも待機中であるものとする。また、住宅H1の燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量は、住宅H2の燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量よりも多いものとする。
【0077】
上記のような電力状況において、ステップS17の処理の前において、系統電源Sから1kWの購入電力が住宅H1、H2に供給されている。ステップS17において、待機中である住宅H1、H2の燃料電池40のうち、貯湯タンク41の残湯量が最も少ない住宅H2の燃料電池40に対して発電許可される。発電許可を受けた住宅H2の燃料電池40は、負荷追従運転を行い、0.7kWの出力で発電を行う。住宅H2の燃料電池40が0.7kWの出力で発電を行うことにより、系統電源Sからの購入電力を1kWから0.3kWに低減することができる。
【0078】
このとき、住宅H2の燃料電池40を発電させることにより、住宅H2の燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量を増やすことができる。これにより、燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量の不足(湯切れ)によりバックアップボイラが稼動するのを回避することができ、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0079】
制御部60は、ステップS17の処理を行った後、
図2に示す制御フローを終了する。
【0080】
一方、ステップS18において、制御部60は、待機中の燃料電池40のうち、住宅Hの電力負荷が最も大きい燃料電池40に対して発電許可を行う。なお、電力負荷が最も大きい住宅Hが複数戸ある場合、第2優先順位の「残湯量優先」に基づいて、当該複数戸の住宅Hの燃料電池40の中から発電許可を行う燃料電池40を決定する。但し、全ての燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量が満タンである場合、制御部60は燃料電池40に対して発電許可を行わない。
【0081】
図4は、発電制御条件として発電効率優先が第1優先順位である場合における電力の流れの一例を示している。
図4に示す例においては、住宅H1、H2の電力負荷がそれぞれ0.5kW、1.5kWであり、全ての蓄電システム30から住宅H1、H2に供給される電力が1kWであるものとする。また、住宅H1、H2の燃料電池40はいずれも待機中であるものとする。
【0082】
上記のような電力状況において、ステップS17の処理の前において、系統電源Sから1kWの購入電力が住宅H1、H2に供給されている。ステップS17において、待機中である住宅H1、H2の燃料電池40のうち、電力負荷が最も大きい住宅H2の燃料電池40に対して発電許可される。発電許可を受けた住宅H2の燃料電池40は、負荷追従運転を行い、0.7kWの出力で発電を行う。住宅H2の燃料電池40が0.7kWの出力で発電を行うことにより、系統電源Sからの購入電力を1kWから0.3kWに低減することができる。
【0083】
ここで、仮に電力負荷の小さい住宅H1の燃料電池40に対して発電指示を行った場合、住宅H1の燃料電池40の出力は、住宅H1の電力負荷である0.5kWとなる。一方、上述の如く電力負荷の大きい住宅H2の燃料電池40に対して発電指示を行うと、住宅H2の燃料電池40の出力は、最大出力である0.7kWとなる。このように、住宅Hの電力負荷が大きい燃料電池40に対して発電指示を行うことにより、燃料電池40は大きな出力で運転することができ、ひいては高い発電効率で運転を行うことができる。これにより、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
【0084】
制御部60は、ステップS18の処理を行った後、
図2に示す制御フローを終了する。
【0085】
一方、ステップS11において、制御部60は、住宅総購入電力量>太陽光総発電電力量でないと判定した場合(ステップS11で「NO」)、ステップS19に移行する。
【0086】
ステップS19において、制御部60は、余剰電力に応じて蓄電池32に対して充電指示を行う。具体的には、制御部60は、蓄電池32の蓄電残量等に基づいて蓄電池32の充電可能台数を算出し、蓄電残量の少ない順に蓄電池32に対して充電指示を行う。
【0087】
制御部60は、ステップS19の処理を行った後、ステップS20に移行する。
【0088】
ステップS20において、制御部60は、貯湯タンク41の残湯量が閾値以下の燃料電池40はないか否かを判定する。前記閾値は、燃料電池40のバックアップボイラの稼動の閾値(30L)よりも大きな値に設定され、例えば60Lに設定される。
【0089】
制御部60は、貯湯タンク41の残湯量が閾値以下の燃料電池40はないと判定した場合(ステップS20で「YES」)、ステップS22に移行する。一方、制御部60は、貯湯タンク41の残湯量が閾値以下の燃料電池40はあると判定した場合(ステップS20で「NO」)、ステップS21に移行する。
【0090】
ステップS21において、制御部60は、待機中の燃料電池40のうち、最も残湯量が少ない燃料電池40に発電許可を行う。発電許可を受けた燃料電池40は、負荷追従運転を行う。これにより、燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量の不足(湯切れ)によりバックアップボイラが稼動するのを回避することができ、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0091】
制御部60は、ステップS21の処理を行った後、
図2に示す制御フローを終了する。
【0092】
ステップS22において、制御部60は、売電状態(系統電源Sへ電力が逆潮流している状態)か否かを判定する。制御部60は、上流側のスマートメータ20の計測結果に基づいてこの判定を行う。
【0093】
制御部60は、売電状態であると判定した場合(ステップS22で「YES」)、ステップS23に移行する。一方、制御部60は、売電状態でないと判定した場合(ステップS22で「NO」)、
図2に示す制御フローを終了する。
【0094】
なお、売電状態である場合(ステップS22でYES)とは、蓄電池32への充電によっても住宅Hの電力負荷に対して電力が余剰していることを意味する。一方、売電状態でない場合(ステップS22でNO)とは、蓄電池32への充電によって住宅Hの電力負荷に対する電力の余剰が解消していることを意味する。
【0095】
ステップS23において、制御部60は、待機制御条件は残湯量優先か(残湯量優先が第1優先順位か)否かを判定する。ここで、上述の如く制御部60には、燃料電池40の待機制御条件として、待機指示を行う燃料電池40を燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量に基づいて決定する「残湯量優先」、又は、待機指示を行う燃料電池40を燃料電池40の発電効率に基づいて決定する「発電効率優先」のいずれかが第1優先順位に設定されている。
【0096】
制御部60は、待機制御条件が残湯量優先である(残湯量優先が第1優先順位である)と判定した場合(ステップS23で「YES」)、ステップS24に移行する。一方、制御部60は、待機制御条件が残湯量優先でない(すなわち、発電効率優先が第1優先順位である)と判定した場合(ステップS23で「NO」)、ステップS25に移行する。
【0097】
ステップS24において、制御部60は、貯湯タンク41の残湯量が閾値(例えば60L)以上かつ発電中の燃料電池40のうち、貯湯タンク41の残湯量が最も多い燃料電池40に対して待機指示を行う。なお、貯湯タンク41の残湯量が最も多い燃料電池40が複数台ある場合、第2優先順位の「発電効率優先」に基づいて、当該複数台の燃料電池40の中から発電許可を行う燃料電池40を決定する。但し、発電中の全ての燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量が閾値(60L)未満である場合、制御部60は燃料電池40に対して待機指示を行わない。
【0098】
図5は、待機制御条件として残湯量優先が第1優先順位である場合における電力の流れの一例を示している。
図5に示す例においては、住宅H1、H2の電力負荷がそれぞれ2.1kW、2.3kWであり、全ての蓄電システム30から住宅H1、H2に供給される電力が3kW、全ての蓄電システム30から系統電源Sへ逆潮流される電力が2kWであるものとする。また、住宅H1、H2の燃料電池40はいずれも負荷追従運転で発電中であるものとする。また、住宅H1の燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量は、住宅H2の燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量よりも多いものとする。
【0099】
上記のような電力状況において、ステップS24の処理の前において、系統電源Sへ2kWの電力が逆潮流されている。ステップS24において、待機中である住宅H1、H2の燃料電池40のうち、貯湯タンク41の残湯量が最も多い住宅H1の燃料電池40に対して待機指示される。待機指示を受けた住宅H1の燃料電池40は、発電を停止する。住宅H1の燃料電池40が発電を停止することにより、蓄電システム30から住宅H1、H2に供給される電力を3kWから3.7kWに増加することができ、系統電源Sへ逆潮流する電力を2kWから1.3kWに低減することができる。
【0100】
このとき、住宅H1の燃料電池40を待機させ住宅H2の燃料電池40の発電を継続することにより、貯湯タンク41の残湯量が少ない住宅H2の燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量を増やすことができる。これにより、燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量の不足(湯切れ)によりバックアップボイラが稼動するのを回避することができ、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0101】
制御部60は、ステップS24の処理を行った後、
図2に示す制御フローを終了する。
【0102】
一方、ステップS25において、制御部60は、残湯量が閾値以上かつ発電中の燃料電池40のうち、出力が最も小さい燃料電池40に対して発電待機指示を行う。なお、出力が最も小さい燃料電池40が複数台ある場合、第2優先順位の「残湯量優先」に基づいて、当該複数台の燃料電池40の中から待機指示を行う燃料電池40を決定する。但し、発電中の全ての燃料電池40の貯湯タンク41の残湯量が閾値(60L)未満である場合、燃料電池40に待機指示を行わない。
【0103】
図6は、待機制御条件として発電効率優先が第1優先順位である場合における電力の流れの一例を示している。
図6に示す例においては、住宅H1、H2の電力負荷がそれぞれ0.5kW、1.5kWであり、全ての蓄電システム30から住宅H1、H2に供給される電力が3kW、全ての蓄電システム30から系統電源Sへ逆潮流される電力が2kWであるものとする。また、住宅H1、H2の燃料電池40はいずれも負荷追従運転で発電中であるものとする。
【0104】
上記のような電力状況において、ステップS24の処理の前において、系統電源Sへ2kWの電力が逆潮流されている。ステップS24において、待機中である住宅H1、H2の燃料電池40のうち、電力負荷の小さい住宅H1の燃料電池40に対して待機指示される。待機指示を受けた住宅H1の燃料電池40は、発電を停止する。住宅H1の燃料電池40が発電を停止することにより、蓄電システム30から住宅H1、H2に供給される電力を3kWから3.7kWに増加することができ、系統電源Sへ逆潮流する電力を2kWから1.3kWに低減することができる。
【0105】
このとき、出力の小さい住宅H1の燃料電池40を待機させ、出力の大きい住宅H2の燃料電池40の発電を継続することにより、高い発電効率の燃料電池40で運転を行うことができる。これにより、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
【0106】
制御部60は、ステップS25の処理を行った後、
図2に示す制御フローを終了する。
【0107】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1は、
系統電源Sと複数の住宅Hの電力負荷とを接続する配電線10に、上流側から下流側へと順番に接続された複数の蓄電システム30を有する電力供給システム1において、
前記蓄電システム30に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能な太陽光発電部31(発電部)と、
前記蓄電システム30に設けられ、前記太陽光発電部31の発電電力を充放電可能な蓄電池32と、
前記住宅Hに設けられて前記電力負荷に接続され、燃料を用いて発電可能であるとともに、発電時に発生する熱を用いて生成した温水を貯湯する貯湯タンク41を有する燃料電池40と、
前記蓄電池32及び前記燃料電池40の動作を制御可能な制御部60と、
を具備し、
前記制御部60は、
前記電力負荷に対して前記蓄電システムからの電力が不足する場合(ステップS11でYES)、前記蓄電池32に対して放電指示を行い(ステップS12)、
前記蓄電池32からの放電によっても前記電力負荷に対して電力が不足する場合(ステップS15でYES)、待機中の前記燃料電池40のうち、所定の発電制御条件に従って決定される前記燃料電池40に対して発電指示を行うことが可能である(ステップS17及びS18)ものである。
【0108】
このような構成により、電力自給率の向上及び光熱費の低減を図ることができる。
具体的には、住宅Hの電力負荷に対して太陽光発電部31からの電力が不足する場合(ステップS11でYES)、まず蓄電池32から放電させることにより(ステップS12)、蓄電池32に充電されていた太陽光発電部31からの電力を電力負荷に使用することができる。これにより、電力自給率の向上を図ることができる。
また、蓄電池32からの放電によっても電力負荷に対して電力が不足する場合(ステップS15でYES)、燃料電池40を発電させることにより(ステップS17、S18)、系統電源Sからの購入電力を低減することができ、ひいては光熱費の低減を図ることができる。
【0109】
また、前記発電制御条件には、発電指示を行う前記燃料電池40を前記燃料電池40の前記貯湯タンク41の残湯量に基づいて決定する残湯量優先が含まれ、
前記制御部60は、
前記発電制御条件が前記残湯量優先である場合(ステップS16でYES)、待機中の前記燃料電池40のうち前記貯湯タンク41の残湯量が最も少ない前記燃料電池40に対して発電指示を行うことが可能である(ステップS17)ものである。
【0110】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、貯湯タンク41の残湯量の不足(湯切れ)によりバックアップボイラが稼動するのを回避することができ、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0111】
また、前記発電制御条件には、発電指示を行う前記燃料電池40を前記燃料電池40の発電効率に基づいて決定する発電効率優先が含まれ、
前記制御部60は、
前記発電制御条件が前記発電効率優先である場合(ステップS16でNO)、待機中の前記燃料電池40のうち前記電力負荷が最も大きい前記住宅Hの前記燃料電池40に対して発電指示を行うことが可能である(ステップS18)ものである。
【0112】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、発電効率が最も高い燃料電池40を発電させることにより、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
【0113】
また、前記制御部60は、
前記貯湯タンク41の残湯量が満タンである前記燃料電池40を、発電指示の対象から除外する(ステップS17、S18)ものである。
【0114】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、貯湯タンク41の残湯量が満タンである燃料電池40に対しては発電指示を行わないことにより、発電時に発生する熱を廃棄するのを抑制でき、ひいては燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
【0115】
また、前記制御部60は、
前記電力負荷に対して前記蓄電システムからの電力が余剰する場合(ステップS11でNO)、前記蓄電池に対して充電指示を行い(ステップS19)、
前記蓄電池への充電によっても前記電力負荷に対して電力が余剰する場合(ステップS22でYES)、発電中の前記燃料電池40のうち、所定の待機制御条件に従って決定される前記燃料電池40に対して待機指示を行うことが可能である(ステップS24及びS25)ものである。
【0116】
このような構成により、電力自給率のさらなる向上を図ることができる。
具体的には、蓄電池32からの充電によっても電力負荷に対して電力が余剰する場合、発電中の燃料電池40を待機させることにより、太陽光発電部31及び蓄電池32からの電力の自家消費を拡大することができる。
【0117】
また、前記待機制御条件には、待機指示を行う前記燃料電池40を前記燃料電池40の前記貯湯タンク41の残湯量に基づいて決定する残湯量優先が含まれ、
前記制御部60は、
前記待機制御条件が前記残湯量優先である場合(ステップS23でYES)、発電中の前記燃料電池40のうち前記貯湯タンク41の残湯量が最も多い前記燃料電池40に対して待機指示を行うことが可能である(ステップS24)ものである。
【0118】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、貯湯タンク41の残湯量の不足(湯切れ)によりバックアップボイラが稼動するのを回避することができ、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0119】
また、前記待機制御条件には、待機指示を行う前記燃料電池40を前記燃料電池40の発電効率に基づいて決定する発電効率優先が含まれ、
前記制御部60は、
前記待機制御条件が前記発電効率優先である場合(ステップS23でNO)、発電中の前記燃料電池40のうち前記電力負荷が最も小さい前記住宅Hの前記燃料電池40に対して待機指示を行うことが可能である(ステップS25)ものである。
【0120】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、発電効率が最も低い燃料電池40を待機させることにより、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
【0121】
また、前記制御部60は、
前記貯湯タンク41の残湯量が所定の閾値(例えば60L)未満である前記燃料電池40を、待機指示の対象から除外する(ステップS24及びS25)ものである。
【0122】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、貯湯タンク41の残湯量が所定の閾値(例えば60L)以下である燃料電池40に対しては待機指示を行わないことにより、バックアップボイラが稼動するのを抑制でき、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0123】
また、前記制御部60は、
前記貯湯タンク41の残湯量が所定の閾値(例えば60L)以下である場合(ステップS13、S20でNO)、前記電力負荷に対する電力の余剰又は不足に関わらず、当該燃料電池40に対して発電指示を行うことが可能である(ステップS14、S21)ものである。
【0124】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、バックアップボイラが稼動するのを抑制でき、ひいてはガス使用量の増加によって燃料電池40の発電コストが増大するのを抑制することができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0126】
例えば、本実施形態において、蓄電システム30は4つ設けられるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば3つ以下であってもよく、また5つ以上であってもよい。
【0127】
また、蓄電システム30は、発電部として太陽光発電部31を有する構成としたが、太陽光発電部31の代わりに他の電力の供給源(例えば、太陽光以外の自然エネルギーを用いて発電を行う水力発電部や風力発電部等)を有していてもよい。
【0128】
また、本実施形態において、制御部60は、蓄電システム30の外部に設けられる構成としたが、蓄電池32の内部に組み込まれる等、蓄電システム30の内部に設けられる構成でもよく、その構成は限定されるものではない。
【0129】
また、本実施形態において、
図2に示す制御フローの実行中において、燃料電池40は負荷追従運転を行うものとしたが、定格出力運転を行うものであってもよい。或いは、発電制御条件が発電効率優先である場合(ステップS16でNO)、発電指示の対象の燃料電池40の運転モードを負荷追従運転として燃料電池40の発電を開始し、発電中に貯湯タンク41の残湯量が閾値(例えば40L)以下となった場合、前記閾値よりも大きい閾値(例えば60L)を超過するまで燃料電池40の運転モードを定格出力運転に変更してもよい。また、発電制御条件が残湯量優先である場合(ステップS16でYES)、発電指示の対象の燃料電池40の運転モードを定格出力運転として燃料電池40の発電を開始し、発電中に貯湯タンク41の残湯量が閾値(例えば60L)を超過した場合、燃料電池40の運転モードを負荷追従運転に変更してもよい。このように、貯湯タンク41の残湯量が少なくなった場合に燃料電池40の運転モードを定格出力運転とすることにより、貯湯タンク41の残湯量を早く増やすことができ、貯湯タンク41の湯切れを抑制することができる。
【0130】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1において、
前記燃料電池40の運転モードは、
前記電力負荷に応じた電力で発電を行う負荷追従運転と、予め定められた定格出力電力で発電を行う定格出力運転と、を含み、
前記制御部60は、
前記発電制御条件が前記発電効率優先である場合(ステップS16でNO)、発電指示の対象の前記燃料電池40の運転モードを前記負荷追従運転とし、
前記発電制御条件が前記残湯量優先である場合(ステップS16でYES)、発電指示の対象の前記燃料電池40の運転モードを前記定格出力運転とするものである。
【0131】
このような構成により、燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
具体的には、貯湯タンク41の残湯量の不足によりバックアップボイラが稼動するのを回避することができ、ひいてはガス使用量の増加による燃料電池40の発電コストの低減を図ることができる。
【0132】
また、本実施形態に係る電力供給システム1が設けられる電力融通街区においては、契約容量の超過によってブレーカが遮断する場合がある。そこで、ブレーカの遮断を防止するために、全ての住宅Hに供給される電力が、ブレーカが遮断される電力(例えば、45kVA)よりも僅かに小さい閾値(例えば、40kVA)を超過した場合、燃料電池40の運転モードを負荷追従運転から定格出力運転に変更するようにしてもよい。これにより、住宅Hの電力負荷に供給される燃料電池40からの電力を増大させることができ、これにより系統電源Sからの購入電力を低減でき、ひいては電力融通街区のブレーカの遮断を抑制することができる。
【0133】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1において、
前記制御部60は、
前記系統電源S及び前記蓄電システム30から前記電力負荷に供給される電力がブレーカの遮断電力に応じて決定される所定の閾値(例えば40kVA)を超過する場合、前記燃料電池40の運転モードを前記負荷追従運転から前記定格出力運転に変更するものである。
【0134】
このような構成により、電力融通街区のブレーカの遮断を抑制することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 電力供給システム
10 配電線
30 蓄電システム
31 太陽光発電部
32 蓄電池
40 燃料電池
41 貯湯タンク
60 制御部
S 系統電源
H 住宅