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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178507
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】モータ及び結束機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20241218BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H02K1/278
E04G21/12 105E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096672
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592059437
【氏名又は名称】特殊電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板垣 修
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 政人
(72)【発明者】
【氏名】磯部 卓功
(72)【発明者】
【氏名】杉原 進平
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩之
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA13
5H622PP19
(57)【要約】
【課題】表面磁石型で磁石の剥離が抑制できるモータ、このモータを備えた鉄筋結束機を提供する。
【解決手段】モータ80は、ロータ82とステータ83を備え、ロータ82は、回転軸82aと、ロータコア82bと、ロータコア82bの外周に貼り付けられ、ロータコア82bの端面82jに対し、回転軸82aの延伸する方向に沿って突出する突出部82iを有した磁石82cと、突出部82iと回転軸82aの間に充填され、突出部82iと回転軸82aを接着する封止部材82dを備える。鉄筋結束機は、モータ80を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、ステータを備えたモータであって、
前記ロータは、
回転軸と、
ロータコアと、
前記ロータコアの外周に貼り付けられ、前記ロータコアの端面に対し、前記回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した磁石と、
前記突出部と前記回転軸の間に充填され、前記突出部及び前記回転軸を接着する封止部材と
を備えたモータ。
【請求項2】
ロータと、ステータを備えたモータであって、
前記ロータは、
回転軸と、
ロータコアと、
前記ロータコアの外周に貼り付けられ、前記ロータコアの端面に対し、前記回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した複数の磁石と、
複数の前記突出部の間に充填され、複数の前記突出部を接着する封止部材と
を備えたモータ。
【請求項3】
前記封止部材は、前記磁石及び前記回転軸に対する接着性を有する樹脂で構成される
請求項1または請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ロータコアは、周方向に沿って複数の前記磁石が取り付けられ、前記ロータコアの周方向に沿って隣り合う前記磁石の間に、前記封止部材を備えた
請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記磁石の外周を被覆する被覆部材を備えた
請求項1または請求項2に記載のモータ。
【請求項6】
前記被覆部材は、収縮性を有する
請求項5に記載のモータ。
【請求項7】
前記磁石の外周が前記被覆部材で被覆された前記突出部と前記回転軸の間に、前記封止部材が充填される
請求項5に記載のモータ。
【請求項8】
前記磁石の表面は、塗装される
請求項3に記載のモータ。
【請求項9】
ワイヤを送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部と、
結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部と、
前記結束部を駆動するモータと
を備え、
前記モータは、ロータと、ステータを備え、
前記ロータは、
回転軸と、
ロータコアと、
前記ロータコアの外周に貼り付けられ、前記ロータコアの端面に対し、前記回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した磁石と、
前記突出部と前記回転軸の間に充填され、前記突出部及び前記回転軸を接着する封止部材とを備えた
結束機。
【請求項10】
ワイヤを送るワイヤ送り部と、
前記ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部と、
結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部と、
前記結束部を駆動するモータと
を備え、
前記モータは、ロータと、ステータを備え、
前記ロータは、
回転軸と、
ロータコアと、
前記ロータコアの外周に貼り付けられ、前記ロータコアの端面に対し、前記回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した複数の磁石と、
複数の前記突出部の間に充填され、複数の前記突出部を接着する封止部材とを備えた
結束機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モータ、及び、モータで駆動され、鉄筋等の結束物をワイヤで結束する結束機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物には強度を向上させるために鉄筋が使用されており、コンクリート打設時に鉄筋が所定の位置からずれないように、ワイヤで結束している。
【0003】
従来から、2本以上の鉄筋にワイヤを巻き、鉄筋に巻いたワイヤを捩じって当該2本以上の鉄筋をワイヤで結束する鉄筋結束機と称す結束機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような結束機において、ワイヤを捩じる動作で使用されるモータには、高速で正逆転を繰り返す動作と精度の良い角度制御が要求される。また、1回当たりの結束動作に掛かる時間を短縮するため、結束スピードを向上させるには、ロータのイナーシャを減らす、すなわち、ロータの重量を減らすことが考えられる。
【0005】
そこで、ロータコアの外周に磁石が貼り付けられた表面磁石型(SPM:Surface Permanent Magnet)と称す構造のモータの適用が考えられる。SPMモータでは、磁石の外側にロータコアが設けられていないため、ロータコアの体積が小さくなるので、ロータの重量を減らすことができる。これにより、結束スピードの向上に寄与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6791141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SPMモータでは、磁石がロータコアの外周に貼り付けられているため、ロータが回転する際に磁石に掛かる遠心力で、磁石がロータコアから剥離する可能性があるという課題が存在する。
【0008】
本発明は、表面磁石型で磁石の剥離が抑制できるモータ、このモータを備えた結束機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、ロータと、ステータを備えたモータであって、ロータは、回転軸と、ロータコアと、ロータコアの外周に貼り付けられ、ロータコアの端面に対し、回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した磁石と、突出部と回転軸の間に充填され、突出部及び回転軸を接着する封止部材とを備えたモータである。
【0010】
また、本発明は、ロータと、ステータを備えたモータであって、ロータは、回転軸と、ロータコアと、ロータコアの外周に貼り付けられ、ロータコアの端面に対し、回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した複数の磁石と、複数の突出部の間に充填され、複数の突出部を接着する封止部材とを備えたモータである。
【0011】
さらに、本発明は、ワイヤを送るワイヤ送り部と、ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部と、結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部と、結束部を駆動するモータとを備え、モータは、ロータと、ステータを備え、ロータは、回転軸と、ロータコアと、ロータコアの外周に貼り付けられ、ロータコアの端面に対し、回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した磁石と、突出部と回転軸の間に充填され、突出部及び回転軸を接着する封止部材とを備えた結束機である。
【0012】
また、本発明は、ワイヤを送るワイヤ送り部と、ワイヤ送り部で送られるワイヤを結束物の周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部と、結束物に巻き付けられたワイヤを捩じる結束部と、結束部を駆動するモータとを備え、モータは、ロータと、ステータを備え、ロータは、回転軸と、ロータコアと、ロータコアの外周に貼り付けられ、ロータコアの端面に対し、回転軸の延伸する方向に沿って突出する突出部を有した複数の磁石と、複数の突出部の間に充填され、複数の突出部を接着する封止部材とを備えた結束機である。
【0013】
本発明では、ロータコアの端面から突出した磁石の突出部と、回転軸との間に、封止部材が充填される。また、本発明では、ロータコアの端面から突出し、ロータコアの周方向に沿って隣り合う磁石の突出部の間に、封止部材が充填される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、封止部材は、回転軸と磁石の突出部を接着する。また、本発明では、封止部材は、ロータコアの周方向に沿って隣り合う突出部を接着する。これにより、ロータが回転しても、磁石が自身の慣性力により外側にまくり上げられる偏荷重の発生が抑制され、磁石がロータコアから剥離することが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た内部構成図である。
図2】本実施の形態のモータの一例を示す側断面図である。
図3A】本実施の形態のロータの一例を示す斜視図である。
図3B】本実施の形態のロータの一例を示す側面図である。
図3C】本実施の形態のロータの一例を示す背面図である。
図4A】本実施の形態のロータの一例を示す側断面図である。
図4B】本実施の形態のロータの一例を示す背面断面図である。
図5A】本実施の形態のロータの一例を示す分解斜視図である。
図5B】本実施の形態のロータの一例を示す封止部材充填前の斜視図である。
図6A】本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
図6B】本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す背面断面図である。
図7A】本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
図7B】本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す背面断面図である。
図8A】本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
図8B】本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す背面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明のモータの実施の形態、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
【0017】
<本実施の形態の鉄筋結束機の構成例>
図1は、本実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た内部構成図である。
【0018】
鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する形態であり、本体部10とハンドル部11を備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤWを矢印Fで示す正方向に送り、結束物である鉄筋Sの周囲に巻き回し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、矢印Rで示す逆方向に送って鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じり、鉄筋SをワイヤWで結束する。鉄筋結束機1Aは、複数本のワイヤW、本例では、2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する。
【0019】
鉄筋結束機1Aは、上述した機能を実現するため、ワイヤWが収容されるマガジン2と、2本のワイヤWを、ワイヤWの径方向に並べて送るワイヤ送り部3と、ワイヤ送り部3に送られる2本のワイヤWをガイドするワイヤガイド4を備える。また、鉄筋結束機1Aは、ワイヤ送り部3で送られる2本のワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回す環状送り経路を構成するカール形成部5と、鉄筋Sに巻き付けられた2本のワイヤWを切断する切断部6を備える。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sに巻き付けられた2本のワイヤWを捩じる結束部7と、結束部7を駆動する駆動部8を備える。
【0020】
マガジン2は、長尺状のワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20が回転、着脱可能に収納される。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤが使用される。リール20は、2本のワイヤWが巻かれ、リール20から同時に2本のワイヤWを引き出せるようになっている。
【0021】
ワイヤ送り部3は、並列された2本のワイヤWを挟持して送る一対の送りギア30を備える。ワイヤ送り部3は、図示しない送りモータの回転動作が一対の送りギア30の一方に伝達される。また、一対の送りギア30は、ギア部の噛み合いにより、一方の送りギア30の回転動作が他方の送りギア30に伝達される。
【0022】
ワイヤ送り部3は、2本のワイヤWを、一対の送りギア30が並ぶ方向に沿って並列させる。また、ワイヤ送り部3は、図示しない送りモータの回転方向の正逆を切り替えることで、送りギア30の回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向の正逆が切り替えられる。
【0023】
ワイヤガイド4は、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、送りギア30の上流側及び図示しない下流側に配置される。ワイヤガイド4は、進入してきた2本のワイヤWを、一対の送りギア30の並ぶ方向に沿って並列させて、一対の送りギア30の間にガイドする。
【0024】
カール形成部5は、ワイヤ送り部3で送られる2本のワイヤWに巻き癖をつけると共に、2本のワイヤWが並列する向きを規制するカールガイド50と、カールガイド50で巻き癖を付けられた2本のワイヤWを結束部7に誘導する誘導ガイド51を備える。カール形成部5は、ワイヤ送り部3で送られ、カールガイド50を通過する2本のワイヤWに巻き癖を付けることで、カールガイド50から誘導ガイド51を通り結束部7に到達する図1に二点鎖線で示すような環状送り経路Ruを形成する。
【0025】
切断部6は、固定刃部60と、固定刃部60との協働でワイヤWを切断する可動刃部61と、結束部7の動作を可動刃部61に伝達する伝達機構62を備える。切断部6は、固定刃部60を支点軸とした可動刃部61の回転動作でワイヤWを切断する。
【0026】
結束部7は、ワイヤWが係止されるワイヤ係止体70と、ワイヤ係止体70を作動させるスリーブ71を備える。駆動部8は、モータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を備える。
【0027】
鉄筋結束機1Aは、環状送り経路Ruを通り、ワイヤ係止体70で係止されるワイヤWの送り経路の終端に、ワイヤWの先端が突き当てられる送り規制部90を備える。また、鉄筋結束機1Aは、上述したカール形成部5のカールガイド50と誘導ガイド51が、本体部10の前側の端部に設けられる。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sが突き当てられる突き当て部91が、本体部10の前側の端部で、カールガイド50と誘導ガイド51との間に設けられる。
【0028】
鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11が本体部10から下方向に延在する。更に、ハンドル部11の下部にバッテリ15が着脱可能に取り付けられる。また、鉄筋結束機1Aは、マガジン2がハンドル部11の前方に設けられる。鉄筋結束機1Aは、上述したワイヤ送り部3、切断部6、結束部7、結束部7を駆動する駆動部8等が本体部10に収納される。
【0029】
鉄筋結束機1Aは、ハンドル部11の前側にトリガ12が設けられ、ハンドル部11の内部にスイッチ13が設けられる。鉄筋結束機1Aは、トリガ12の操作で押されるスイッチ13の状態に応じて、図示しない制御部が送りモータ及びモータ80を制御する。
【0030】
<本実施の形態のモータの構成例>
図2は、本実施の形態のモータの一例を示す側断面図である。また、図3Aは、本実施の形態のロータの一例を示す斜視図、図3Bは、本実施の形態のロータの一例を示す側面図、図3Cは、本実施の形態のロータの一例を示す背面図である。さらに、図4Aは、本実施の形態のロータの一例を示す側断面図、図4Bは、本実施の形態のロータの一例を示す背面断面図である。また、図5Aは、本実施の形態のロータの一例を示す分解斜視図、図5Bは、本実施の形態のロータの一例を示す封止部材充填前の斜視図である。
【0031】
モータ80は、ロータ82と、ステータ83と、センサ84と、ケース85を備える。モータ80は、表面磁石型(SPM:Surface Permanent Magnet)と称す構造である。
【0032】
ロータ82は、回転軸82aと、ロータコア82bと、磁石82cと、封止部材82dと、被覆部材82eを備える。
【0033】
回転軸82aは、ケース85に設けられたベアリングなどで構成される軸受部85aに、回転可能に支持される。
【0034】
ロータコア82bは、金属で所定の形状に構成され、中心に回転軸82aが取り付けられる。また、ロータコア82bは、外周に磁石82cの取付部82fが形成される。取付部82fは、磁石82cが嵌る凹凸形状を有する。
【0035】
磁石82cは永久磁石であり、ロータコア82bの外周に貼り付けられる。磁石82cは、ロータコア82bの取付部82fに嵌る形状であり、接着剤82gで取付部82fに貼り付けられる。接着剤82gは、例えばエポキシ樹脂である。
【0036】
ロータ82は、本例では、ロータコア82bの周方向に沿って均等な間隔で、4個の磁石82cが取り付けられる。ロータ82は、ロータコア82bの取付部82fに磁石82cが取り付けられると、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う磁石82cの間に、隙間82hが形成される。
【0037】
磁石82cは、突出部82iを備える。突出部82iは、ロータコア82bの一方の端面82jに対し、回転軸82aの延伸する方向に沿って突出する。これにより、突出部82iと回転軸82aとロータコア82bの一方の端面82jとの間に隙間82kが形成される。また、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iの間に、隙間82h2が形成される。
【0038】
封止部材82dは、回転軸82a、ロータコア82b、磁石82cなどの部材に対する接着性を有する樹脂であり、隙間82kに充填される。封止部材82dは、例えばエポキシ樹脂である。
【0039】
封止部材82dは、隙間82kに充填されて固化することで、回転軸82a及び磁石82cの突出部82iに接着される。封止部材82dは、隙間82kに充填されて固化することで、回転軸82a、ロータコア82bの端面82j及び磁石82cの突出部82iに接着される。これにより、少なくとも回転軸82aと磁石82cの突出部82iが、封止部材82dで接着される。回転軸82aとロータコア82bの端面82jと磁石82cの突出部82iが、封止部材82dで接着されるとなおよい。また、封止部材82dは、隙間82hに充填される。封止部材82dは、隙間82hに充填されて固化することで、ロータコア82b及び磁石82cに接着される。これにより、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う磁石82cが、封止部材82dで接着される。さらに、封止部材82dは、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iの間の隙間82h2に充填される。封止部材82dは、隙間82h2に充填されて固化することで、磁石82cの突出部82iに接着される。これにより、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iが、封止部材82dで接着される。
【0040】
なお、磁石82cは、接着剤82g及び封止部材82dとの接着性の向上や、防錆のために表面が塗装される。磁石82cの表面には、例えばエポキシ樹脂が塗装される。また、磁石82cの表面に施す塗装は、接着剤82g及び封止部材82dに対して、親和性を有するとなお良い。
【0041】
被覆部材82eは、ロータコア82bの取付部82fに貼り付けられた磁石82cの外周を被覆する。被覆部材82eは、熱による収縮性を有する樹脂のチューブで構成される。被覆部材82eは、熱で収縮させることにより、ロータコア82bの径方向の内側に向けて力を加えた状態で、磁石82cの外周を被覆する。ロータ82は、磁石82cの外周を被覆部材82eで被覆した後に、隙間82k、82hに封止部材82dが充填されることで、封止部材82dが充填される範囲が規制される。なお、被覆部材82eは、回転軸82aを被覆しない。
【0042】
ステータ83は、ステータコア83aと、コイル83bを備える。モータ80は、ステータ83で回転磁界を生じさせることで、ロータ82が回転する。
【0043】
センサ84は、ホールIC等を備え、磁石82cの突出部82iと対向する位置に設けられる。センサ84は磁束を検出することで、ロータ82の回転方向、回転角度、回転速度等を検出可能とする。
【0044】
<本実施の形態の鉄筋結束機の動作例>
次に、各図を参照して、本実施の形態の鉄筋結束機1Aにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
【0045】
鉄筋Sがカール形成部5のカールガイド50と誘導ガイド51との間に入れられ、トリガ12が操作されると、図示しない送りモータが正回転方向に駆動され、一対の送りギア30で挟持された2本のワイヤWが、矢印Fで示す正方向に送られる。
【0046】
正方向に送られるワイヤWは、カール形成部5のカールガイド50に送られる。ワイヤWは、カールガイド50を通ることで、環状送り経路Ruに沿って鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
【0047】
カールガイド50で巻き癖が付けられたワイヤWは、誘導ガイド51に誘導され、更にワイヤ送り部3で正方向に送られることで、ワイヤ係止体70に誘導される。ワイヤWの先端が送り規制部90に突き当てられる位置まで送られると、図示しない送りモータの駆動が停止される。
【0048】
ワイヤWの正方向への送りを停止した後、モータ80が正回転方向に駆動される。スリーブ71は、ワイヤ係止体70でワイヤWを係止する動作域では、回転が規制される。これにより、モータ80の回転が直線移動に変換され、スリーブ71は、前方向である矢印A1方向に移動する。スリーブ71が前方向に移動すると、ワイヤ係止体70の所定の動作でワイヤWが係止される。
【0049】
ワイヤ係止体70でワイヤWが係止される位置までスリーブ71を前進させた後、モータ80の回転を一時停止し、送りモータを逆回転方向に駆動する。
【0050】
これにより、一対の送りギア30が逆転し、一対の送りギア30の間に挟持されたワイヤWが、矢印Rで示す逆方向に送られる。ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに巻き付けられる。
【0051】
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、送りモータの逆回転方向の駆動を停止した後、モータ80が正回転方向に駆動されることで、スリーブ71が更に矢印A1で示す前方向に移動する。スリーブ71が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6に伝達されることで可動刃部61が回転し、ワイヤWの所定位置が、固定刃部60と可動刃部61の動作で切断される。
【0052】
モータ80を正回転方向に駆動することで、スリーブ71を矢印A1で示す前方向に移動させて2本のワイヤWを切断するとほぼ同時に、ワイヤ係止体70でワイヤWが前方向に押され、ワイヤWの先端側及び終端側が鉄筋S側に折り曲げられる。
【0053】
ワイヤWの先端側及び終端側を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、スリーブ71が更に前方向に移動する。スリーブ71が所定の位置まで移動すると、スリーブ71の回転の規制が解除される。
【0054】
これにより、モータ80が更に正回転方向に駆動されることでスリーブ71が回転し、ワイヤ係止体70で係止したワイヤWを捩じる動作が開始される。ワイヤWを捩じることで、モータ80に掛かる負荷が最大となったことが検知されると、モータ80の正転が停止される。次に、モータ80が逆回転方向に駆動されると、スリーブ71は、回転が規制された状態で後方向である矢印A2方向に移動する。
【0055】
スリーブ71が後方向に移動すると、ワイヤ係止体70によるワイヤWの係止が解消され、鉄筋Sを結束したワイヤWがワイヤ係止体70から抜ける。
【0056】
<モータの作用効果例>
鉄筋結束機において、ワイヤを捩じる動作で使用されるモータには、高速で正逆転を繰り返す動作と精度の良い角度制御が要求される。
【0057】
鉄筋結束機では、従来、磁石埋込型(IPM:Interior Permanent Magnet)と称すモータが使用されている。IPMモータでは、ロータコアに対し軸方向に長い磁石を使用し、磁石の端部がホールICなどで構成されるセンサに近接するように構成することで、制御精度を確保している。IPMモータでは、磁石がロータコアに埋め込まれているため、ロータが回転して磁石に遠心力が掛かっても、磁石がロータコアから剥離することが抑制される。
【0058】
これに対し、鉄筋結束機において、1回当たりの結束動作に掛かる時間を短縮するため、結束スピードを向上させるには、ロータのイナーシャを減らす、すなわち、ロータの重量を減らすことが考えられる。ロータの重量を減らすには、ロータコアや磁石を小型にすることが考えられる。しかし、ロータコアや磁石を小型にすると、磁束が落ち、モータの出力が低下する。
【0059】
そこで、ロータコアの外周に磁石が貼り付けられた構成のSPMモータの適用が考えられる。SPMモータでは、磁石の外側にロータコアが設けられていないため、ロータコアの体積が小さくなるので、ロータの重量を減らすことができる。これにより、結束スピードの向上に寄与できる。
【0060】
一方、IPMモータと同等の制御精度を確保するためには、やはりロータコアに対し軸方向に長い磁石を使用し、磁石の端部がホールICに近接するように構成する必要がある。SPMモータでは、このような構成とすると、ロータコアの外側において、磁石がロータコアの端面から軸方向に突出する形態となる。
【0061】
これにより、ロータが回転すると、磁石が自身の慣性力により外側にまくり上げられる偏荷重が発生し、磁石とロータコアとの接着面端部に応力が集中し、堅牢性が低下する可能性がある。
【0062】
そこで、ロータ82は、回転軸82aと、磁石82cの突出部82iと、ロータコア82bの一方の端面82jとの間の隙間82kに封止部材82dが充填される構成とする。隙間82kに充填された封止部材82dは、少なくとも回転軸82a及び磁石82cの突出部82iを接着する。また、隙間82kに充填された封止部材82dは、回転軸82a及び磁石82cの突出部82iと、ロータコア82bの端面82jを接着するとなおよい。これにより、ロータ82が回転しても、磁石82cが自身の慣性力により外側にまくり上げられる偏荷重の発生が抑制され、磁石82cとロータコア82bとの接着面端部に応力が集中せず、IPMモータと同等の堅牢性が確保できる。
【0063】
また、ロータ82は、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う磁石82cの間の隙間82hにも封止部材82dが充填される構成とする。これにより、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う磁石82cが、封止部材82dで接着されることで、磁石82cがロータコア82bの外周から剥離することが抑制される。さらに、ロータ82は、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iの間の隙間82h2にも封止部材82dが充填される構成とする。これにより、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iが、封止部材82dで接着されることで、磁石82cがロータコア82bの外周から剥離することが抑制される。なお、封止部材82dは、接着剤82gと同じ成分でもよい。
【0064】
図6Aは、本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す斜視図、図6Bは、本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す背面断面図である。ロータ82Lは、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iが、隙間82h2と、回転軸82aと突出部82iとの間の隙間82kにおける突出部82i側に充填された封止部材82dで接着される。これに対し、ロータ82Lは、隙間82kにおける回転軸82a側には、封止部材82dが充填されていない。このように、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82i及び対向する突出部82iが、封止部材82dで接着されることで、回転軸82aと磁石82cの突出部82iが封止部材82d接着されていなくても、磁石82cがロータコア82bの外周から剥離することが抑制される。また、隙間82kにおける突出部82i側に充填された封止部材82dが、ロータコア82bの端面82jに接着されるようにするとなおよい。
【0065】
図7Aは、本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す斜視図、図7Bは、本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す背面断面図である。ロータ82Mは、各磁石82cの突出部82iが、隙間82kに充填された封止部材82dで回転軸82aと接着される。隙間82kに充填された封止部材82dは、回転軸82a及び磁石82cの突出部82iと、ロータコア82bの端面82jを接着するとなおよい。これに対し、ロータ82Mは、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iの間の隙間82h2には封止部材82dが充填されていない。このように、隙間82h2に封止部材82dが充填されていなくても、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82i及び対向する突出部82iが、隙間82kに充填された封止部材82dで接着されることになり、磁石82cがロータコア82bの外周から剥離することが抑制される。
【0066】
図8Aは、本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す斜視図、図8Bは、本実施の形態のロータの他の実施の形態の一例を示す背面断面図である。ロータ82Nは、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82iが、回転軸82aと突出部82iとの間の隙間82kにおける突出部82i側に充填された封止部材82dで接着される。これに対し、ロータ82Nは、隙間82h2と、隙間82kにおける回転軸82a側には、封止部材82dが充填されていない。このように、ロータコア82bの周方向に沿って隣り合う突出部82i及び対向する突出部82iが、隙間82kにおける突出部82i側に充填された封止部材82dで接着されることで、回転軸82aと磁石82cの突出部82iが封止部材82d接着されていなくても、磁石82cがロータコア82bの外周から剥離することが抑制される。
【0067】
さらに、ロータ82は、磁石82cの外周が被覆部材82eで被覆される構成とする。被覆部材82eは、収縮性を有する樹脂のチューブで構成されることで、ロータコア82bの径方向の内側に向けて力を加えた状態で、磁石82cの外周を被覆する。これにより、ロータ82が回転する際に、磁石82cが自身の慣性力により外側にまくり上げられる偏荷重が発生することが、被覆部材82eによっても抑制される。
【符号の説明】
【0068】
1A・・・鉄筋結束機、2・・・マガジン、20・・・リール、3・・・ワイヤ送り部、30・・・送りギア、5・・・カール形成部、50・・・カールガイド、51・・・誘導ガイド、6・・・切断部、7・・・結束部、70・・・ワイヤ係止体、71・・・スリーブ、8・・・駆動部、80・・・モータ、81・・・減速機、82、82L、82M、82N・・・ロータ、82a・・・回転軸、82b・・・ロータコア、82c・・・磁石、82d・・・封止部材、82e・・・被覆部材、82f・・・取付部、82g・・・接着剤、82h・・・隙間、82i・・・突出部、82j・・・端面、82k・・・隙間、83・・・ステータ、83a・・・ステータコア、83b・・・コイル、84・・・センサ、85・・・ケース、85a・・・軸受部、W・・・ワイヤ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B