(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178511
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】保持部材および静電チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096682
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】上松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴司
(72)【発明者】
【氏名】松丸 郁子
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA12
5F131CA68
5F131EB14
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】脱粒粒子による凸部やウエハからの更なる脱粒の発生を抑制することができる保持部材および静電チャックを提供する。
【解決手段】対象物を保持する保持部材であって、保持部材は、対象物を保持する側の面である保持面を有し、保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、凸部の頂部を画定している頂面には、溝部が形成されていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する保持部材であって、
前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、
前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、
前記凸部の頂部を画定している頂面には、溝部が形成されていることを特徴とする、保持部材。
【請求項2】
請求項1に記載の保持部材であって、
少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記頂面の端まで伸びていることを特徴とする、保持部材。
【請求項3】
請求項1に記載の保持部材であって、
少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記保持面の中心および前記頂面の中心を通る仮想直線に対して直交する方向に伸びた直線状に形成されていることを特徴とする、保持部材。
【請求項4】
請求項1に記載の保持部材であって、
前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、
一の前記凸部および一の前記凸部よりも前記保持面の中心側にある他の前記凸部が配置され、
一の前記凸部の前記頂面に占める前記溝部の合計面積の割合は、他の前記凸部の前記頂面に占める前記溝部の合計面積の割合よりも大きいことを特徴とする、保持部材。
【請求項5】
請求項1に記載の保持部材であって、
前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、前記保持面の中心および前記頂面の中心を通る仮想直線に対して直交する方向に伸びつつ前記頂面の中心を通る仮想垂線で少なくとも一部の前記凸部の前記頂面を2つの領域に分けたとき、前記保持面の中心から遠い側の領域に占める前記溝部の合計面積の割合は、前記保持面の中心に近い側の領域に占める前記溝部の合計面積の割合よりも大きいことを特徴とする、保持部材。
【請求項6】
請求項1に記載の保持部材であって、
少なくとも1つ以上の前記溝部においては、前記溝部の開口縁部の横断面形状がC面形状もしくはR面形状であることを特徴とする、保持部材。
【請求項7】
請求項1に記載の保持部材であって、
前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記保持面の外縁に向かって凸の円弧状に形成されていることを特徴とする、保持部材。
【請求項8】
静電チャックであって、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の保持部材と、
前記保持面に静電引力を発生させる静電電極と、を備えることを特徴とする、静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持部材および静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
静電引力により対象物であるウエハを保持する保持部材を備えた静電チャックが知られている。特許文献1~3には、保持部材のうち対象物を保持する側の保持面に、ウエハが載置される凸部が形成された静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3784274号公報
【特許文献2】特許第4417197号公報
【特許文献3】特開2002-222851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凸部とウエハとの接触によって凸部もしくはウエハから脱粒が発生することがある。このように発生した脱粒粒子は、凸部とウエハとの間に挟まって応力を集中させることにより、凸部やウエハからの更なる脱粒を促進させる虞がある。この点について、特許文献1~3に開示された静電チャックにおいては、何ら考慮されていない。このため、脱粒粒子による凸部やウエハからの更なる脱粒の発生を抑制できる技術が要望されていた。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、脱粒粒子による凸部やウエハからの更なる脱粒の発生を抑制することができる保持部材および静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
(1)本発明の一形態によれば、保持部材が提供される。この保持部材は、対象物を保持する保持部材であって、前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、前記凸部の頂部を画定している頂面には、溝部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、凸部の頂部を画定している頂面には、溝部が形成されている。このため、互いに異なる熱膨張率で保持部材およびウエハが熱膨張する際に、凸部の頂面上を転動する脱粒粒子を溝部に落下させることができる。したがって、凸部とウエハとの間を転動する脱粒粒子を除去できることから、脱粒粒子による凸部やウエハからの更なる脱粒の発生を抑制することができる。その結果、保持部材の耐久性を向上することができる。
【0008】
(2)上記形態の保持部材において、少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記頂面の端まで伸びていてもよい。
この構成によれば、溝部に落とされた脱粒粒子を頂面の端から排出することができる。したがって、脱粒粒子の堆積により溝部が埋まるのを抑制することができる。
【0009】
(3)上記形態の保持部材において、少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記保持面の中心および前記頂面の中心を通る仮想直線に対して直交する方向に伸びた直線状に形成されていてもよい。
頂面は概ね仮想直線に沿った方向に熱膨張するため、脱粒粒子が頂面上を転動する方向も概ね仮想直線に沿う。この構成によれば、脱粒粒子を溝部に落下させる可能性を高めることができる。
【0010】
(4)上記形態の保持部材において、前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、一の前記凸部および一の前記凸部よりも前記保持面の中心側にある他の前記凸部が配置され、一の前記凸部の前記頂面に占める前記溝部の合計面積の割合は、他の前記凸部の前記頂面に占める前記溝部の合計面積の割合よりも大きくてもよい。
保持面と向き合う側から見て保持面のうち中心から離れている位置ほど、保持部材およびウエハが互いに異なる熱膨張率で熱膨張した際の膨張度合の差は必然的に大きくなる。すなわち、保持面の中心から離れている位置にある凸部ほど凸部とウエハとの接触部分での擦れ量が増大することから、多くの脱粒粒子が発生しやすくなる。この構成によれば、他の凸部よりも一の凸部の方がその頂面に占める溝部の合計面積の割合が大きいことから、他の凸部および一の凸部の各々において脱粒粒子の発生量に応じた適切な割合の溝部を頂面に配置することができる。
【0011】
(5)上記形態の保持部材において、前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、前記保持面の中心および前記頂面の中心を通る仮想直線に対して直交する方向に伸びつつ前記頂面の中心を通る仮想垂線で少なくとも一部の前記凸部の前記頂面を2つの領域に分けたとき、前記保持面の中心から遠い側の領域に占める前記溝部の合計面積の割合は、前記保持面の中心に近い側の領域に占める前記溝部の合計面積の割合よりも大きくてもよい。
保持面と向き合う側から保持面を見て凸部の頂面のうち保持面の中心から離れている領域ほど、保持部材およびウエハが互いに異なる熱膨張率で熱膨張した際の膨張度合の差は必然的に大きくなる。すなわち、頂面のうち保持面の中心から離れている領域ほど凸部とウエハとの接触部分での擦れ量が増大することから、多くの脱粒粒子が発生しやすくなる。この構成によれば、保持面の中心に近い側の領域よりも保持面の中心から遠い側の領域の方がその領域に占める溝部の合計面積の割合が大きくなっていることから、各々の領域において想定される脱粒粒子の発生量に応じた適切な割合の溝部を配置することができる。
【0012】
(6)上記形態の保持部材において、少なくとも1つ以上の前記溝部においては、前記溝部の開口縁部の横断面形状がC面形状もしくはR面形状であってもよい。
この構成によれば、溝部の開口縁部におけるチッピングの発生を抑制することができる。したがって、開口縁部からのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0013】
(7)上記形態の保持部材において、前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記保持面の外縁に向かって凸の円弧状に形成されていてもよい。
保持面は中心から放射状に熱膨張するため、脱粒粒子が頂面上を転動する方向も概ね放射状であることから、この構成によれば、脱粒粒子を溝部に落下させる可能性を高めることができる。
【0014】
(8)本発明の別の一形態によれば、静電チャックが提供される。この静電チャックは、上記形態に記載の保持部材と、前記保持面に静電引力を発生させる静電電極と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、静電電極に対して電力が供給されることによって、静電引力(吸着力)が発生し、この静電引力により対象物を保持面の側に保持することができる。また、凸部の頂面には溝部が形成されていることから、脱粒粒子による凸部やウエハからの更なる脱粒の発生を抑制することで保持部材の耐久性を向上させた静電チャックを提供することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、保持部材、静電チャック、真空チャック、セラミックスヒータ、半導体製造装置、およびこれらを備える部品、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の保持部材を備えた静電チャックを示す説明図である。
【
図2】保持面と向き合う側から見た保持面を示す説明図である。
【
図5】第2実施形態の保持部材の保持面に形成された凸部を示す説明図である。
【
図6】第3実施形態の保持部材の保持面に形成された凸部を示す説明図である。
【
図7】第4実施形態の保持部材の保持面に形成された凸部の拡大図である。
【
図8】第5実施形態の保持部材の保持面に形成された凸部を示す説明図である。
【
図9】第6実施形態の保持部材の保持面に形成された凸部の拡大図である。
【
図10】第7実施形態の保持部材の保持面に形成された凸部を示す説明図である。
【
図11】第8実施形態の保持部材の保持面に形成された凸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の保持部材10を備えた静電チャック1の断面構成を模式的に示す説明図である。
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。このXYZ軸は、
図2と共通する。静電チャック1は、対象物であるウエハWを静電引力により吸着して保持する装置である。
図1に示した矢印は、静電チャック1に対して、ウエハWが吸着される方向を示している。静電チャック1は、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内でウエハWを固定するために使用される。静電チャック1は、保持部材10と、静電電極30と、を備える。
【0018】
保持部材10は、円盤状の部材であり、セラミックを主成分として形成されている。主成分とは、体積含有率の最も多い成分のことをいう。保持部材10の構成材料としては、酸化アルミニウム(アルミナ)や窒化アルミニウム等が例示され、本実施形態では、アルミナである。保持部材10は、保持面10fと、裏面10bと、を有する。保持面10fは、ウエハWを保持する側の円形状の面である。裏面10bは、保持面10fの反対側に位置する円形状の面である。保持面10fには、環状凸部12と、複数の凸部14と、複数の凹部16と、が形成されている。
【0019】
図2は、保持面10fと向き合う側(+Z軸方向側)から見た保持面10fを示す説明図である。環状凸部12は、保持面10fの外縁に沿って形成されている。凸部14の各々は、環状凸部12の内側に形成されている。凸部14の各々は、保持面10fの中心Oから規則的に配置されていることが一般的であり、例えば、
図2に示すように、第1実施形態の保持部材10では、凸部14の各々は放射状に配置されている。凹部16は、凸部14の間に形成されている。換言すれば、凹部16の形成位置は、環状凸部12の内側において、凸部14が形成されていない位置にあたる。
【0020】
図1に示すように、凸部14は、側面Sと、頂面Tと、によって画定されている。側面Sは、凸部14の側部を画定している面である。頂面Tは、凸部14の頂部を画定している面である。
【0021】
保持部材10の内側には、複数の貫通流路22が形成されている。貫通流路22の各々は、保持面10fと裏面10bとの間を貫通する流路であり、裏面10bの側から供給されるヘリウムガス等の不活性ガスを保持面10fの側に供給するための流路である。貫通流路22は、保持面10fの側において凹部16に接続している。
【0022】
静電電極30は、保持部材10の内部に設けられた円盤状の部材であり、タングステンやモリブデン等の導電性材料によって形成されている。静電電極30は、図示しない外部電源から電力が供給されることによって、保持面10fに静電引力を発生させる。ウエハWは、この静電引力で保持面10fに向けて吸着されることによって、保持面10fに保持される。
【0023】
保持面10fに静電引力が発生している際、ウエハWは、環状凸部12や凸部14と接触することによって、保持面10fに保持される。このような環状凸部12や凸部14にウエハWが載置された状態において、ウエハWと保持面10fとの間の熱伝導性を高めるために、ウエハWと保持面10fとの間に不活性ガスが供給される。詳細には、不活性ガスは、裏面10bの側から貫通流路22を経て、凹部16から保持面10fの側に供給される。保持面10fの側に供給された不活性ガスは、ウエハWと凹部16との間の空間を流れて、その空間全体に拡散する。
【0024】
保持部材10の内部には、静電電極30の他に、タングステンやモリブデン等の導電性材料によって形成された複数のヒータ電極(不図示)が備えられている。ヒータ電極は、図示しない外部電源から供給される電力で発熱することによって、保持部材10に保持されたウエハWを温めることができる。このようなヒータ電極によるウエハWの加熱は、ウエハWの温度が所望の温度にならないとウエハWに対する各処理(成膜、エッチング等)の精度が低下するおそれがあるため実行される。
【0025】
図3は、保持面10fに形成された複数の凸部14のうちの1つの凸部14を拡大した説明図である。
図3に示す凸部14は、
図2と同様、保持面10fと向き合う側(+Z軸方向側)から見た凸部14である。すなわち、
図3には、頂面Tと向き合う側から見た凸部14が示されている。頂面Tには、溝部G1~G5が形成されている。また、溝部G1~G5は、保持面10fの中心O(
図2参照)および頂面Tの中心TOを通る仮想直線ILに対して直交する方向に伸びた直線状に形成されている。さらに、溝部G1~G5は、頂面Tの端まで伸びている。本実施形態では、溝部G1~G5の各々の幅は同一であるとともに、溝部G1~G5の形成間隔(溝部G1~G5のうち隣り合う溝部間の距離)は略等間隔である。なお、これ以降、凸部14の頂面Tに形成された溝部を総称して溝部Gとも呼ぶ。
【0026】
図4は、
図3のF4―F4線における溝部Gの横断面を示した説明図である。溝部Gの横断面とは、溝部Gが伸びている方向に対して直交する断面のことである。
図4に示された開口縁部EGは、溝部Gの開口OPの縁部である。
図4に示すように、開口縁部EGの横断面形状はC面形状である。溝部Gの幅WDは、保持部材10を構成するセラミックの結晶粒子径(シェラー径)の90%以上の長さであることが好ましい。結晶粒子径は、X線回析ピークの半価幅からScherrerの式により求めるものとする。また、溝部Gの深さDPは、凸部14の欠けや割れを抑制する観点から、保持部材10を構成するセラミックの結晶粒子径(シェラー径)の90%以上であって、且つ、凸部14の高さ以下であることが好ましい。本実施形態では、すべての凸部14の頂面Tに形成されたすべての溝部Gは、
図3,4で説明したような溝部Gである。他の実施形態では、一部の凸部14の頂面Tに形成されたすべての溝部Gは、
図3,4で説明したような溝部Gであり、その他の凸部14の頂面Tに形成された溝部Gには、
図3,4で説明したような溝部Gの他にそれとは異なる溝部Gが含まれていてもよいし、
図3,4で説明したような溝部Gとは異なる溝部Gのみが含まれていてもよい。
【0027】
凸部14とウエハWとの接触によって凸部14もしくはウエハWから脱粒が発生することがある。また、このような脱粒は、保持部材10にウエハWが保持されている状態において、ヒータ電極による加熱で保持部材10およびウエハWが互いに異なる熱膨張率で熱膨張することにより、凸部14とウエハWとの接触部分で擦れが生じることで発生することもある。保持部材10の熱膨張とは、
図2を用いて説明すると、XY平面において中心Oから放射状に広がる膨張のことである。ウエハWの熱膨張も同様である。脱粒粒子は、凸部14とウエハWとの間に挟まって応力を集中させることにより、凸部14やウエハWからの更なる脱粒を促進させる虞がある。また、異なる熱膨張率での凸部14およびウエハWの熱膨張によって脱粒粒子が頂面T上を転動することによっても、同様に更なる脱粒を促進する虞がある。
【0028】
この点、第1実施形態の保持部材10によれば、凸部14の頂部を画定している頂面Tには、溝部Gが形成されている。このため、互いに異なる熱膨張率で保持部材10およびウエハWが熱膨張する際に、頂面T上を転動する脱粒粒子を溝部Gに落下させることができる。したがって、凸部14とウエハWとの間に挟まる脱粒粒子を除去できることから、脱粒粒子による凸部14やウエハWからの更なる脱粒の発生を抑制することができる。その結果、保持部材10の耐久性を向上することができる。
【0029】
また、第1実施形態の保持部材10によれば、
図3に示すように、溝部Gは、仮想直線ILに対して直交する方向に伸びた直線状に形成されている。頂面Tは概ね仮想直線ILに沿った方向(厳密には保持面10fの中心Oから放射状)に熱膨張するため、脱粒粒子が頂面T上を転動する方向も概ね仮想直線ILに沿う。このため、そのような仮想直線ILに対して直交する方向に伸びた直線状に溝部Gが形成されていることから、脱粒粒子を溝部Gに落下させる可能性を高めることができる。
【0030】
また、第1実施形態の保持部材10によれば、
図3に示すように、溝部Gは、頂面Tの端まで伸びている。このため、溝部Gに落とされた脱粒粒子を頂面Tの端から排出することができる。したがって、脱粒粒子の堆積により溝部Gが埋まるのを抑制することができる。
【0031】
また、第1実施形態の保持部材10によれば、
図4に示すように、開口縁部EGの横断面形状はC面形状である。このため、開口縁部EGにおけるチッピングの発生を抑制することができる。したがって、開口縁部EGからのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態の静電チャック1によれば、静電電極30に対して電力が供給されることによって、静電引力(吸着力)が発生し、この静電引力によりウエハWを保持面10fの側に保持することができる。また、凸部14の頂面Tには溝部Gが形成されていることから、脱粒粒子による凸部14やウエハWからの更なる脱粒の発生を抑制することで保持部材10の耐久性を向上させた静電チャック1を提供することができる。
【0033】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の保持部材の保持面10fに形成された凸部14のうち3つの凸部14a1~14a3を示した説明図である。第2実施形態の保持部材は、第1実施形態の保持部材10と比べて、凸部14の頂面Tに形成されている溝部Gの態様が異なる点を除いて、第1実施形態の保持部材10と同じである。以降の第3~第8実施形態においても同様に、いずれの実施形態も、第1実施形態の保持部材10と比べて、凸部14の頂面Tに形成されている溝部Gの態様が異なる点を除いて、第1実施形態の保持部材10と同じである。すなわち、いずれの実施形態も、第1実施形態の保持部材10と同様に、静電チャックに備わっている構成であるものとする。
図5に示す凸部14a1~14a3は、
図3に示した凸部14と同様に、保持面10fと向き合う側(+Z軸方向側)から見た凸部14a1~14a3である。第2実施形態の保持部材の説明において、第1実施形態の保持部材10と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する(以降の第3~第8実施形態においても同様とする)。保持面10fと向き合う側から保持面10fを見たとき、凸部14a1~14a3は、凸部14a1、凸部14a2、凸部14a3の順で、保持面10fの中心Oから近い位置に配置されている(凸部14a1が保持面10fの中心Oから最も近い位置に配置されている)。
【0034】
凸部14a1の頂面Ta1には、溝部Ga1~Ga5が形成されている。凸部14a2の頂面Ta2には、溝部Ga6~Ga12が形成されている。凸部14a3の頂面Ta3には、溝部Ga13~Ga21が形成されている。溝部Ga1~Ga21の各々の幅は同一であるが、溝部Ga1~Ga5の形成間隔と、溝部Ga6~Ga12の形成間隔と、溝部Ga13~Ga21の形成間隔と、は異なる。詳細には、溝部Ga6~Ga12の形成間隔は、溝部Ga1~Ga5の形成間隔より狭く、溝部Ga13~Ga21の形成間隔は、溝部Ga6~Ga12の形成間隔より狭い。すなわち、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見て、凸部14a2の頂面Ta2に占める溝部Ga6~Ga12の合計面積の割合は、凸部14a1の頂面Ta1に占める溝部Ga1~Ga5の合計面積の割合より大きい。また、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見て、凸部14a3の頂面Ta3に占める溝部Ga13~Ga21の合計面積の割合は、凸部14a2の頂面Ta2に占める溝部Ga6~Ga12の合計面積の割合より大きい。このように本実施形態では、保持面10fに形成されたすべての凸部14において、保持面10fの中心Oから離れた位置にある凸部14ほど、その頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっている。換言すれば、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見て、一の凸部14よりも保持面10fの中心側にある凸部14を他の凸部14としたとき、一の凸部14の頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合は、他の凸部14の頂面に占める溝部Gの合計面積の割合よりも大きくなっている。ここで、頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合とは、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見たときの、頂面T(溝部Gが形成された領域と溝部Gが形成されていない領域とのいずれも含んだ全領域)の面積に対する溝部Gが形成された領域の合計面積の割合のことである。
図5で言えば、頂面Tを表した円形の面積に対する溝部Gを表した直線状部分の合計面積の割合のことである。なお、ウエハWと接触する頂面Tの領域(溝部Gが形成されていない領域)を確保する観点から、頂面Tに占める溝部Gの合計面積は、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見た頂面Tの面積の半分以下であるのが好ましい。
【0035】
保持面10fと向き合う側から見て(
図2の視野において)保持面10fのうち中心Oから離れている位置ほど、保持部材10およびウエハWが互いに異なる熱膨張率で熱膨張した際の膨張度合の差は必然的に大きくなる。すなわち、保持面10fの中心から離れている位置にある凸部14ほど凸部14とウエハWとの接触部分での擦れ量が増大することから、多くの脱粒粒子が発生しやすくなる。この点、第2実施形態の保持部材によれば、他の凸部14(一の凸部14よりも保持面10fの中心側にある凸部14)よりも一の凸部14の方がその頂面Tに占める溝部Gの面積の割合が大きいことから、他の凸部14および一の凸部14の各々において想定される脱粒粒子の発生量に応じた適切な割合の溝部Gを頂面Tに配置することができる。
【0036】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の保持部材の保持面10fに形成された凸部14のうち3つの凸部14b1~14b3を示した説明図である。保持面10fと向き合う側から保持面10fを見たとき、凸部14b1~14b3は、
図5に示した凸部14a1~14a3と同様に、凸部14b1、凸部14b2、凸部14b3の順で、保持面10fの中心Oから近い位置に配置されている(凸部14b1が保持面10fの中心Oから最も近い位置に配置されている)。
【0037】
凸部14b1の頂面Tb1には、溝部Gb1~Gb5が形成されている。凸部14b2の頂面Tb2には、溝部Gb6~Gb10が形成されている。凸部14b3の頂面Tb3には、溝部Gb11~Gb15が形成されている。溝部Gb1~Gb5の各々の幅は同一であり、溝部Gb6~Gb10の各々の幅は同一であり、溝部Gb11~Gb15の各々の幅は同一である。一方、溝部Gb1~G5の各々の幅と、溝部Gb6~Gb10の各々の幅と、溝部Gb11~Gb15の各々の幅と、は異なる。詳細には、溝部Gb6~Gb10の各々の幅は、溝部Gb1~Gb5の各々の幅より広く、溝部Gb11~Gb15の各々の幅は、溝部Gb6~Gb10の各々の幅より広い。すなわち、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見て、凸部14b2の頂面Tb2に占める溝部Gb6~Gb10の合計面積の割合は、凸部14b1の頂面Tb1に占める溝部Gb1~Gb5の合計面積の割合より大きい。また、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見て、凸部14b3の頂面Tb3に占める溝部Gb11~Gb15の合計面積の割合は、凸部14b2の頂面Tb2に占める溝部Gb6~Gb10の合計面積の割合より大きい。このように本実施形態では、保持面10fに形成されたすべての凸部14において、保持面10fの中心Oから離れた位置にある凸部14ほど、その頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっている。このような第3実施形態の保持部材によれば、第2実施形態の保持部材と同様に、保持面10fの中心Oからの距離に応じて、凸部14の各々で想定される脱粒粒子の発生量に応じた適切な割合の溝部Gを頂面Tに配置することができる。
【0038】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の保持部材の保持面10fに形成された複数の凸部14のうちの1つの凸部14cを拡大した説明図である。
図7に示す凸部14cは、保持面10fと向き合う側から見た凸部14cである。凸部14cの頂面Tcには、溝部Gc1~Gc5が形成されている。本実施形態では、溝部Gc1~Gc5の各々の幅は同一であるが、溝部Gc1,Gc2の形成間隔は、溝部Gc3~Gc5の形成間隔より広い。仮想垂線IPは、保持面10fと向き合う側から見て、保持面10fの中心Oおよび頂面Tcの中心TcOを通る仮想直線ILに対して直交する方向に伸びつつ頂面Tcの中心TcOを通る仮想の垂線である。この仮想垂線IPで頂面Tcを2つの領域に分けたとき、保持面10fの中心Oから遠い側の領域Fに占める溝部Gの合計面積の割合は、保持面10fの中心Oに近い側の領域Nに占める溝部Gの合計面積の割合よりも大きくなっている。
図7で言えば、領域Fもしくは領域Nに占める溝部Gの合計面積の割合とは、領域Fもしくは領域Nを表した半円形の面積に対する溝部Gを表した直線状部分の合計面積の割合のことである。本実施形態では、保持面10fに形成されたすべての凸部14の頂面Tにおいて、領域Fに占める溝部Gの合計面積の割合が、領域Nに占める溝部Gの合計面積の割合よりも大きくなっている。他の実施形態では、保持面10fに形成された一部の凸部14の頂面Tにおいてのみ、同様の関係が成り立っていてもよい。
【0039】
保持面10fと向き合う側から保持面10fを見て凸部14の頂面Tのうち保持面10fの中心Oから離れている領域ほど、保持部材10およびウエハWが互いに異なる熱膨張率で熱膨張した際の膨張度合の差は必然的に大きくなる。すなわち、頂面Tのうち保持面10fの中心Oから離れている領域ほど凸部14とウエハWとの接触部分での擦れ量が増大することから、多くの脱粒粒子が発生しやすくなる。この点、第4実施形態の保持部材によれば、領域Nよりも領域Fの方がその領域に占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっていることから、各々の領域において想定される脱粒粒子の発生量に応じた適切な割合の溝部Gを頂面Tに配置することができる。
【0040】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態の保持部材の保持面10fに形成された凸部14のうち3つの凸部14d1~14d3を示した説明図である。保持面10fと向き合う側から保持面10fを見たとき、凸部14d1~14d3は、凸部14d1、凸部14d2、凸部14d3の順で、保持面10fの中心Oから近い位置に配置されている(凸部14d1が保持面10fの中心Oから最も近い位置に配置されている)。
【0041】
凸部14d1の頂面Td1には、溝部Gd1~Gd5が形成されている。凸部14d2の頂面Td2には、溝部Gd6~Gd11が形成されている。凸部14d3の頂面Td3には、溝部Gd12~Gd18が形成されている。溝部Gd1~Gd18の各々の幅は同一である。一方、溝部Gd1,Gd2の形成間隔は、溝部Gd3~Gd5の形成間隔より広く、溝部Gd6,Gd7の形成間隔は、溝部Gd8~Gd11の形成間隔より広く、溝部Gd12,Gd13の形成間隔は、溝部Gd14~Gd18の形成間隔より広い。
【0042】
頂面Td1~Td3の各々は、
図7と同様の仮想垂線IPで2つの領域に分けたとき、各々の領域Nd1~Nd3(保持面10fの中心Oに近い側の領域)よりも領域Fd1~Fd3(保持面10fの中心Oから遠い側の領域)の方がその領域に占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっている。また、凸部14d3、凸部14d2、凸部14d1の順で、その頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっている(頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合は、凸部14d3が最も大きい)。本実施形態では、保持面10fに形成されたすべての凸部14において、凸部14d1~14d3を用いて説明した関係が成り立っている。このような第5実施形態の保持部材によれば、保持面10fの中心Oからの距離に基づいて凸部14の各々で想定される脱粒粒子の発生量および凸部14内の各領域において想定される脱粒粒子の発生量のいずれにも応じて、適切な割合の溝部Gを頂面Tに配置することができる。
【0043】
<第6実施形態>
図9は、第6実施形態の保持部材の保持面10fに形成された複数の凸部14のうちの1つの凸部14eを拡大した説明図である。
図9に示す凸部14eは、保持面10fと向き合う側から見た凸部14eである。凸部14eの頂面Teには、溝部Ge1~Ge6が形成されている。溝部Ge1~Ge3の各々の幅は同一であり、溝部Ge4~Ge6の各々の幅は同一であるが、溝部Ge1~Ge3の各々の幅と溝部Ge4~Ge6の各々の幅とは異なる。
【0044】
頂面Teは、
図7,8と同様の仮想垂線IPで2つの領域に分けたとき、領域Ne(保持面10fの中心Oに近い側の領域)よりも領域Fe(保持面10fの中心Oから遠い側の領域)の方がその領域に占める溝部Gの面積の割合が大きくなっている。本実施形態では、保持面10fに形成されたすべての凸部14の頂面Tにおいて、領域Feに占める溝部Gの合計面積の割合が、領域Neに占める溝部Gの合計面積の割合よりも大きくなっている。他の実施形態では、保持面10fに形成された一部の凸部14の頂面Tにおいてのみ、同様の関係が成り立っていてもよい。このような第6実施形態の保持部材においても、各々の領域において想定される脱粒粒子の発生量に応じた適切な割合の溝部Gを頂面Tに配置することができる。
【0045】
<第7実施形態>
図10は、第7実施形態の保持部材の保持面10fに形成された凸部14のうち3つの凸部14f1~14f3を示した説明図である。保持面10fと向き合う側から保持面10fを見たとき、凸部14f1~14f3は、凸部14f1、凸部14f2、凸部14f3の順で、保持面10fの中心Oから近い位置に配置されている(凸部14f1が保持面10fの中心Oから最も近い位置に配置されている)。
【0046】
凸部14f1の頂面Tf1には、溝部Gf1~Gf6が形成されている。凸部14f2の頂面Tf2には、溝部Gf7~Gd12が形成されている。凸部14f3の頂面Tf3には、溝部Gf13~Gf18が形成されている。溝部Gf1~Gf3,Gf7~Gf9,Gf13~Gf15の各々の幅は同一である。また、溝部Gf4~Gf6の各々の幅は同一であり、溝部Gf10~Gf12の各々の幅は同一であり、溝部Gf16~Gf18の各々の幅は同一である。一方、溝部Gf1~Gf3の各々の幅と溝部Gf4~Gf6の各々の幅とは異なり、溝部Gf7~Gf9の各々の幅と溝部Gf10~Gf12の各々の幅とは異なり、溝部Gf13~Gf15の各々の幅と溝部Gf16~Gf18の各々の幅とは異なる。また、溝部Gf16~Gf18の各々の幅、溝部Gf10~Gf12の各々の幅、溝部Gf4~Gf6の各々の幅の順で、幅は大きくなっている(溝部Gf16~Gf18の各々の幅が最も大きい)。
【0047】
頂面Tf1~Tf3の各々は、
図7~9と同様の仮想垂線IPで2つの領域に分けたとき、各々の領域Nf1~Nf3(保持面10fの中心Oに近い側の領域)よりも領域Ff1~Ff3(保持面10fの中心Oから遠い側の領域)の方がその領域に占める溝部Gの面積の割合が大きくなっている。また、凸部14f3、凸部14f2、凸部14f1の順で、その頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっている(頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合は、凸部14f3が最も大きい)。本実施形態では、保持面10fに形成されたすべての凸部14において、凸部14f1~14f3を用いて説明した関係が成り立っている。このような第7実施形態の保持部材においても、保持面10fの中心Oからの距離に基づいて凸部14の各々で想定される脱粒粒子の発生量および凸部14内の各領域において想定される脱粒粒子の発生量のいずれにも応じて、適切な割合の溝部Gを頂面Tに配置することができる。
【0048】
<第8実施形態>
図11は、第8実施形態の保持部材の保持面10fに形成された複数の凸部14のうちの1つの凸部14gを拡大した説明図である。
図11に示す凸部14gは、保持面10fと向き合う側から見た凸部14gである。凸部14gの頂面Tgには、溝部Gg1~Gg5が形成されている。また、溝部Gg1~Gg5は、保持面10fと向き合う側から保持面10fを見て、保持面10fの外縁に向かって凸の円弧状に形成されている(
図2参照)。本実施形態では、すべての凸部14の頂面Tに形成されたすべての溝部Gは、
図11で説明したような溝部Gである。他の実施形態では、一部の凸部14の頂面Tに形成されたすべての溝部Gは、
図11で説明したような溝部Gであり、その他の凸部14の頂面Tに形成された溝部Gには、
図11で説明したような溝部Gの他にそれとは異なる溝部Gが含まれていてもよいし、
図11で説明したような溝部Gとは異なる溝部Gのみが含まれていてもよい。
【0049】
保持面10fは中心Oから放射状に熱膨張するため、脱粒粒子が頂面Tg上を転動する方向も概ね放射状である。このため、そのような放射状の方向に対して溝部Gg1~Gg5が凸の円弧状に形成されていることから、第8実施形態の保持部材によれば、脱粒粒子を溝部Gg1~Gg5に落下させる可能性を高めることができる。
【0050】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0051】
第1実施形態では、保持面10fには、環状凸部12と、複数の凸部14と、複数の凹部16と、が形成されていたが、これに限られない。例えば、保持面10fには、環状凸部12は形成されておらず、複数の凸部14と、複数の凹部16と、が形成されていてもよい。
【0052】
上記実施形態では、保持部材10の内側には、複数の貫通流路22が形成されていたが、これに限られない。例えば、保持部材10の内側には、複数の貫通流路22に加えて、保持部材10の内部において貫通流路22同士を接続する流路や、その流路から分岐して凹部16に接続する流路が形成されていてもよい。
【0053】
上記実施形態の静電チャックにおいて、さらに、保持部材の裏面に、板状のベース部材が接合されていてもよい。このベース部材の内部に冷媒流路が形成されている場合には、保持部材に対象物が保持されている際に、冷媒流路内を冷媒が流れることによって、ベース部材から保持部材を介して、対象物を冷却することができる。
【0054】
上記第2,3実施形態(
図5,6参照)では、保持面10fに形成されたすべての凸部14において、保持面10fの中心Oから離れた位置にある凸部14ほど、その頂面Tに占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっていたが、これに限られない。保持面10fに形成された一部の凸部14においてのみ、同様の関係が成り立っていてもよい。
【0055】
第5,7実施形態(
図8,10参照)では、保持面10fに形成されたすべての凸部14において、凸部14d1~14d3もしくは凸部14f1~14f3を用いて説明した関係が成り立っていたが、これに限られない。保持面10fに形成された一部の凸部14においてのみ、凸部14d1~14d3もしくは凸部14f1~14f3を用いて説明した関係が成り立っていてもよい。
【0056】
第5実施形態(
図8参照)では、領域Nd1~Nd3よりも領域Fd1~Fd3の方がその領域に占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっていたが、これに限られない。領域Fd1~Fd3よりも領域Nd1~Nd3の方がその領域に占める溝部Gの合計面積の割合が大きくなっていてもよい。また、このような場合、領域Nd1~Nd3における溝部Gの形成間隔が領域Fd1~Fd3における溝部Gの形成間隔よりも狭くなっていてもよい。頂面Tのうち保持面10fの中心Oから近い領域ほど凸部14とウエハWとの間を転動する脱粒粒子の移動量が小さいことから、溝部Gの形成間隔を狭くすることで、そのような領域での溝部Gの除去効率を上げることができる。
【0057】
溝部Gの形状は、上記実施形態で説明した形状に限られない。例えば、
図12~
図15に示すような形状であってもよい。
図12には、頂面Thに溝部Ghが形成された凸部14hが示されている。溝部Ghは、格子状の溝部である。このような溝部Ghでは、凸部14とウエハWとの接触部分での擦れに対する強度が向上される。
図13には、頂面Tiに溝部Giが形成された凸部14iが示されている。また、
図14には、頂面Tjに溝部Gjが形成された凸部14jが示されている。溝部Gi、Gjは、ともに保持面10fの中心Oから放射状に伸びた放射状部分Ri、Rjと、その放射状部分同士を架橋しつつ頂面Tの端まで伸びた架橋部分Bi、Bjと、を含む。溝部Giの架橋部分Biは直線状であるのに対して、溝部Gjの架橋部分Bjは保持面10fの外縁に向かって凸の円弧状である。このような溝部Gi、Gjでは、放射状部分Ri、Rjを含んでいることによって、凸部14とウエハWとの接触部分での擦れに対する強度を一層向上される。
図15には、頂面Tkに溝部Gk1~Gk3が形成された凸部14kが示されている。溝部Gk1~Gk3は、同心円状に形成された溝部である。このような溝部Gk1~Gk3では、保持部材10およびウエハWのうち少なくとも一方が放射状に熱膨張せず膨張する方向が互いに大きく異なっていたとしても、凸部14とウエハWとの間を転動する脱粒粒子を効率的に回収できる。
【0058】
溝部Gの横断面形状は、
図4で説明した形状に限られない。例えば、
図16(A)~(C)に示すような形状であってもよい。
図16(A)には、凸部14lの頂面Tlに形成された溝部Glの横断面を示した説明図である。溝部Glの横断面形状は、台形状である。
図16(B)には、凸部14mの頂面Tmに形成された溝部Gmの横断面を示した説明図である。溝部Gmの横断面形状は、V字形状である。
図16(C)には、凸部14nの頂面Tnに形成された溝部Gnの横断面を示した説明図である。溝部Gnのうち開口縁部EGnの横断面形状はR面形状である。このような溝部Gnでは、
図4に示したC面形状の開口縁部EGと同様に、開口縁部EGnにおけるチッピングの発生を抑制することができるため、開口縁部EGnからのパーティクルの発生を抑制することができる。なお、
図4や
図16(A)~(C)で示した溝部Gの横断面形状は、いずれも溝部Gの底に角が含まれていたが、むろん溝部Gの底には角が含まれず曲面のみが含まれていてもよい。
【0059】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0060】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
対象物を保持する保持部材であって、
前記保持部材は、前記対象物を保持する側の面である保持面を有し、
前記保持面には、凸部と、凹部と、が形成されており、
前記凸部の頂部を画定している頂面には、溝部が形成されていることを特徴とする、保持部材。
[適用例2]
適用例1に記載の保持部材であって、
少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記頂面の端まで伸びていることを特徴とする、保持部材。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の保持部材であって、
少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記保持面の中心および前記頂面の中心を通る仮想直線に対して直交する方向に伸びた直線状に形成されていることを特徴とする、保持部材。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれかに記載の保持部材であって、
前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、
一の前記凸部および一の前記凸部よりも前記保持面の中心側にある他の前記凸部が配置され、
一の前記凸部の前記頂面に占める前記溝部の合計面積の割合は、他の前記凸部の前記頂面に占める前記溝部の合計面積の割合よりも大きいことを特徴とする、保持部材。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれかに記載の保持部材であって、
前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、前記保持面の中心および前記頂面の中心を通る仮想直線に対して直交する方向に伸びつつ前記頂面の中心を通る仮想垂線で少なくとも一部の前記凸部の前記頂面を2つの領域に分けたとき、前記保持面の中心から遠い側の領域に占める前記溝部の合計面積の割合は、前記保持面の中心に近い側の領域に占める前記溝部の合計面積の割合よりも大きいことを特徴とする、保持部材。
[適用例6]
適用例1から適用例5までのいずれかに記載の保持部材であって、
少なくとも1つ以上の前記溝部においては、前記溝部の開口縁部の横断面形状がC面形状もしくはR面形状であることを特徴とする、保持部材。
[適用例7]
適用例1から適用例6までのいずれかに記載の保持部材であって、
前記保持面と向き合う側から前記保持面を見て、少なくとも1つ以上の前記溝部は、前記保持面の外縁に向かって凸の円弧状に形成されていることを特徴とする、保持部材。
[適用例8]
静電チャックであって、
適用例1から適用例7までのいずれかに記載の保持部材と、
前記保持面に静電引力を発生させる静電電極と、を備えることを特徴とする、静電チャック。
【符号の説明】
【0061】
1…静電チャック
10…保持部材
10b…裏面
10f…保持面
12…環状凸部
14…凸部
T…頂面
G…溝部
16…凹部
22…貫通流路
30…静電電極