(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178519
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】空気調和機及び熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 11/00 20060101AFI20241218BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F28F11/00 A
F28D1/047 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096700
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】法福 守
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA13
3L103BB42
3L103CC17
3L103CC18
3L103CC23
3L103DD06
3L103DD33
(57)【要約】
【課題】冷媒漏洩を防ぐことを目的とする。
【解決手段】空気調和機であって、伝熱管を有する熱交換器を備え、伝熱管は、冷媒が流通する内管と、内管の径方向外側に設けられた外管とを有し、外管の一部は、内管に接し、外管と内管の間には、漏洩した冷媒を流す外溝が形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機であって、
伝熱管を有する熱交換器を備え、
前記伝熱管は、
冷媒が流通する内管と、
前記内管の径方向外側に設けられた外管と
を有し、
前記外管の一部は、前記内管に接し、
前記外管と前記内管の間には、漏洩した冷媒を流す外溝が形成される、空気調和機。
【請求項2】
前記外溝は、前記伝熱管の軸方向に平行に形成される、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記熱交換器は、
前記伝熱管を複数備え、
前記伝熱管は、折り曲げ部を有し、
前記伝熱管同士を接続する接続部に対応する位置に、前記外管の端部が設けられ、
前記外管の前記端部を覆うカバーを有し、
前記カバーは、室外に冷媒を排出する排出管に接続される、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記内管と前記外管が接する接合率は、33%以上である、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記内管と前記外管が接する接合率は、80%以下である、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項6】
伝熱管を備えた熱交換器の製造方法であって、
冷媒が流通する内管の径方向外側に外管を設ける工程と、
前記内管を拡管することで、前記内管を前記外管に当接させ、かつ前記外管をフィンに固定させる工程と
を含む、熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機及び熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機で使用されているHFC冷媒は温暖化係数が高く、地球温暖化防止のため、段階的に削減することが決まっている。次世代冷媒としては、温暖化係数が低く、効率の高い冷媒としてプロパン冷媒が候補となっている。しかし、プロパンは、可燃性があるため、室内漏洩時の安全性に課題がある。このような問題を解決するものとして、特許文献1には、熱交換器の伝熱管の溶接不良等により漏洩した冷媒を覆うカバーと、カバー内の冷媒を排出するための排出流路と、を備えた空気調和機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷媒漏洩は、溶接部分に限られるものではない。伝熱管の不良や腐食に起因した冷媒漏洩も問題となっている。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、冷媒漏洩を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気調和機であって、伝熱管を有する熱交換器を備え、前記伝熱管は、冷媒が流通する内管と、前記内管の径方向外側に設けられた外管とを有し、前記外管の一部は、前記内管に接し、前記外管と前記内管の間には、漏洩した冷媒を流す外溝が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷媒漏洩を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図8】接合比と熱通過率比のグラフを示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る伝熱管の概略構成図である。
【
図11】第2の実施形態に係る室内機の外観図である。
【
図12】第2の実施形態に係る熱交換器の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る空気調和機1を示す外観構成図である。空気調和機1は、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)で冷媒を循環させることによって、空調を行う。
図1に示すように、空気調和機1は、室内(被空調空間)に設置される室内機10と、屋外(室外)に設置される室外機20と、ユーザによって操作されるリモコン30と、を備えている。
【0010】
室内機10は、リモコン通信部11を備えている。リモコン通信部11は、赤外線通信等によって、リモコン30からの信号を受信する。また、リモコン通信部11は、リモコン30に所定の信号を送信してもよい。例えば、リモコン通信部11は、運転/停止指令、設定温度の変更、運転モードの変更、タイマの設定等の信号をリモコン30から受信する。また、リモコン通信部11は、室内温度の検出値等をリモコン30に送信してもよい。なお、
図1では省略しているが、室内機10と室外機20とは、冷媒配管を介して接続されるとともに、通信線を介して接続されている。
【0011】
図2は、実施形態に係る空気調和機1の冷媒回路Qを示す図である。なお、
図2に示す実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。また、
図2に示す破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
【0012】
室内機10は、リモコン通信部11のほかに、室内熱交換器12と、室内ファン13と、を備えている。室内熱交換器12において、その伝熱管を通流する冷媒と、室内ファン13により送り込まれる室内空気と、の間で熱交換が行われる。室内熱交換器12は、後述の四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。室内ファン13は、室内熱交換器12の付近に設置されている。室内ファン13により、室内熱交換器12に室内空気が送り込まれる。
【0013】
室外機20は、圧縮機21と、室外熱交換器22と、室外ファン23と、膨張弁24と、四方弁25と、を備えている。圧縮機21は、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。室外熱交換器22において、その伝熱管を通流する冷媒と、室外ファン23により送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる。室外熱交換器22は、四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。
【0014】
室外ファン23は、
図1に示すように、室外熱交換器22の付近に設置されている。室外ファン23により、室外熱交換器22に外気が送り込まれる。膨張弁24は、「凝縮器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、膨張弁24において減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の他方)に導かれる。四方弁25は、空気調和機1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。
【0015】
図3は、室内熱交換器12の内部の概略構成図である。室内熱交換器12は、伝熱管15と、フィン16と、を有している。伝熱管15は、Uベントを介して管が連なるサーペンタイン管である。伝熱管15の周囲には、複数のフィン16が接続されている。複数のフィン16は、伝熱管15の長手方向に沿って等間隔に配置されている。
【0016】
さらに、本実施形態においては、伝熱管15は、管が二重に設けられている。
図4は、伝熱管15の断面図である。伝熱管15は、内管151と、外管152と、を有している。外管152は、内管151の径方向の外側、すなわち、内管151の周囲に設けられている。
図5は、内管151の内壁の展開図である。
図6は、外管152の内壁の展開図である。矢印Aは、伝熱管15の軸方向、すなわち冷媒の流れる方向を示している。
【0017】
図5に示すように、内管151には、冷媒と壁との接触面積を増やすための複数の内溝1511が形成されている。内溝1511は、軸方向Aから傾いた方向に沿って伸びる。
図6に示すように、外管152には、内管151から漏洩した漏洩冷媒を流すための複数の外溝1521が形成されている。
図4に示すように、外溝1521の間に設けられた凸面1522は、内管151の外壁に接合している。外溝1521は、
図6に示すように、軸方向Aに沿って伸びる。外溝1521を流れるのは漏洩冷媒であるため、速やかに排出されるのが望ましい。そこで、このように、外溝1521は、軸方向Aに平行に形成される。このように、内管151を覆うように外管152が形成されており、外管152には、漏洩冷媒を排出口に導く流路をとなる外溝1521が形成されている。
【0018】
さらに、
図3に示すように、外管152は、室外まで伸びるように形成されており、外管152の2つの端部1522a、1522bは、室外に配置され、漏洩冷媒は、端部1522a、1522bにおいて、室外へ排出される。すなわち、端部1522a、1522bは、漏洩冷媒の排出口として機能する。
【0019】
このように、伝熱管15が二重に設けられており、漏洩冷媒は、外管152を流れて室外に排出される。したがって、内管151の不良や腐食等により冷媒が漏洩した場合にも、室内に冷媒が漏れるのを防ぐことができる。
【0020】
外管152の円周に沿って配置される外溝1521の数や幅は、特に限定されるものではない。ただし、接合比(接合率)は、80%以下が好ましい。ここで、接合比は、内管151の外壁の円周全体における、外管152が接する範囲(凸面1522の範囲)の比率である。接合比が高すぎると、漏洩冷媒の流路が確保できない。そこで、80%以下とすることで、漏洩冷媒の流路を確保することとする。
【0021】
さらに、接合比は、33%以上が好ましい。この点について説明する。
図7は、接合比と熱通過比率の関係を示す図である。
図8は、接合比と熱通過率比のグラフを示す図である。
図8に示すグラフは、
図7に示す表に対応している。グラフの横軸は接合比を示し、縦軸は熱通過率比を示している。ここで、熱通過率比は、外管152が、各接合比で内管151の外周に接合する場合の熱通過率の比率で、内管151の外壁の円周全体に外管152が接合している場合の熱通過率を100%とした場合の比率である。熱通過率は、(式1)で定義される。
図7の表及び
図8のグラフには、接合比を変化させることで、シミュレーションにより得られた、(式1)で定義される熱通過率の比率(熱通過比)が示されている。
【数1】
K(W/m
2K):熱通過率
α
0(W/m
2K):フィン16側の熱伝導率
α
i(W/m
2K):内管151の内側の熱伝達率
hc(W/m
2K):フィン接触部の熱伝達率
hr(W/m
2K):外管152の内側の接触部の熱伝達率
A
o(m
2):フィン16の面積
A
pi(m
2):内管151の内側の面積
A
po(m
2):内管151の外側の面積
A
p2(m
2):外管152の接触部面積
tp(m):内管151の厚さ
λ
p(W/mK):外管の熱伝導率
hrの逆数(1/hr)は、接触熱抵抗を示し、(式2)で表される。
【数2】
h
0は、(式3)で表される。また、Hは、(式4)で表される。
【数3】
【数4】
E(Pa):固体材料のヤング率
E
*(Pa):有効ヤング率
h
0(W/m
2K):付加コンダクタンス
H(Pa):固体の材料の硬さ
p(Pa):圧力、押しつけ圧力
R
H(m
2K/W):接触熱抵抗
z(m):平均粗さ高さ
λ
f(W/mK):介在流体の熱伝導率
λ
s(W/mK):固体材料の熱伝導率
v:ポアソン比
熱通過率比の低下が1%未満において熱通過の性能低下への影響が小さいことがわかっている。シミュレーションの結果、接合比33%において、熱通過率比が99.03%と99%を超える。このことから、接合比は、33%以上であることが好ましい。
【0022】
図9は、管が二重に設けられた伝熱管15の製造方法の説明図である。まず、
図9上側に示すように、内溝1511が形成された内管151を、外溝1521が形成された外管152に挿入する。次に、
図9下側に示すように、内管151の内側から圧力を掛けることで、内管151を拡管する。これにより、内管151の外側の壁と、内管151の内側の壁(凸部)と、を密着させることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る伝熱管15について、第1の実施形態に係る伝熱管15と異なる点を主に説明する。
図10は、第2の実施形態に係る伝熱管15の概略構成図である。本実施形態に係る伝熱管15は、複数のヘアピンパイプ153と、隣接する2つのヘアピンパイプ153を接続するリターンパイプ154と、を備えている。ここで、ヘアピンパイプ153及びリターンパイプ154は、それぞれ折れ曲げ部と接続部の一例である。ヘアピンパイプ153は、第1の実施形態に係る伝熱管15と同様に、内管151と、外管152と、を備えた二重構造である。一方、リターンパイプ154は、単管であり、ヘアピンパイプ153の内管151と接続する。このため、ヘアピンパイプ153の端において、外管152の端部1523から漏洩冷媒が流出する。そこで、流出した漏洩冷媒が室内に漏れるのを防ぐため、外管152の端部1523を覆うカバーユニット17が設けられている。
【0024】
図11は、第2の実施形態に係る室内機10の外観図である。
図11の左側の図は、室内機10を正面から見た図であり、
図11の右側の図は、室内機10を右側から見た図である。このように、カバーユニット17は、室内機10の本体右側に配置されており、カバーユニット17から排出管18が室外まで伸びている。カバーユニット17内に溜まった漏洩冷媒は、排出管18を通って室外に排出される。
【0025】
図12は、第2の実施形態に係る室内熱交換器12の製造方法の説明図である。ヘアピンパイプ153をフィン16に設けられた貫通孔(不図示)に通した状態で、
図12に示すように、拡管用のプラグ200を内管151内に挿入する。これにより、内管151と外管152を密着させる工程と、外管152の外壁とフィン16とを密着させる工程と、を同時に実行することができる。
【0026】
なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、例えばある実施形態の変形例を他の実施形態に適用するなど、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0027】
そうした変形例としては、室外熱交換器22についても、室内熱交換器12と同様に、伝熱管を内管と外管を有する二重構造としてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 空気調和機
10 室内機
11 リモコン通信部
12 室内熱交換器
13 室内ファン
15 伝熱管
16 フィン
17 カバーユニット
18 排出管
20 室外機
21 圧縮機
22 室外熱交換器
23 室外ファン
24 膨張弁
25 四方弁
151 内管
152 外管
153 ヘアピンパイプ
154 リターンパイプ
1511 内溝
1521 外溝
1522a、1522b 端部