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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178535
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】乗用芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/63 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
A01D34/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096731
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜久森 泰弘
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA15
2B083FA06
2B083FA11
2B083FA17
2B083FA18
2B083HA60
(57)【要約】
【課題】芝草の刈り取り作業において作業者が集草容器に収容された芝草の適切な排出タイミングを把握することができ、作業効率を向上させることができる乗用芝刈機を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る乗用芝刈機は、走行車体と、芝刈装置と、集草容器と、車速センサと、草丈センサと、制御部とを備える。走行車体は、作業領域を走行可能である。芝刈装置は、走行車体に設けられ、芝草を刈り取る。集草容器は、走行車体に設けられ、芝刈装置が刈り取った芝草を収容する。車速センサは、走行車体の車速を検出する。草丈センサは、芝草の刈り前草丈を検出する。制御部は、集草容器の容量データ、芝草の草密度データ、刈り幅データ、刈り高さデータおよび刈り前草丈データを記憶し、容量データ、刈り幅データ、刈り高さデータ、刈り前草丈データおよび車速データから集草容器の収容率を算出し、収容率が所定値以上の場合には報知する第1報知を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の作業領域を走行可能な走行車体と、
前記走行車体に設けられ、芝草を刈り取る芝刈装置と、
前記走行車体に設けられ、前記芝刈装置が刈り取った芝草を収容する集草容器と、
前記走行車体の車速を検出する車速センサと、
前記作業領域において前記芝刈装置によって刈り取る芝草の刈り前草丈を検出する草丈センサと、
前記集草容器の容量データ、前記作業領域における芝草の草密度データ、前記芝刈装置の刈り幅データ、前記芝刈装置による刈り高さデータおよび前記草丈センサによって検出された芝草の刈り前草丈データを記憶し、前記容量データ、前記刈り幅データ、前記刈り高さデータ、前記刈り前草丈データおよび前記車速センサによって検出された車速データから前記集草容器の芝草の収容率を算出し、前記収容率が所定値以上の場合には報知する第1報知を実行する制御部と
を備える
ことを特徴とする乗用芝刈機。
【請求項2】
前記制御部は、
予め指定された芝草の排出場所を記憶し、
前記収容率が所定値以上であり、かつ、前記排出場所が前記走行車体の前方に存在している場合には芝草の排出を促す第2報知を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の乗用芝刈機。
【請求項3】
前記制御部は、
前記作業領域において前記走行車体が直進および旋回を繰り返して往復走行する作業経路を予め設定可能であり、
前記走行車体による単位走行距離あたりの前記収容率の増加量を算出し、
前記排出場所が前記走行車体の前方に存在している場合に前記作業経路における次回の直進経路で前記集草容器が満杯になることが予想される場合には前記第2報知を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の乗用芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集草容器が刈り取った芝草(刈草)で満杯になると集草容器が収容している刈草を所定の排出場所へ排出して作業を継続する乗用芝刈機において、集草容器の刈草の収容状況を作業中においても確認できるように、集草容器に開閉可能なカバーを設ける技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、集草容器が刈草で満杯になると集草容器が収容している刈草を所定の排出場所へ排出して作業を継続する乗用芝刈機において、集草容器が刈草で満杯になったことを検知する満杯センサを設ける技術が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-328819号公報
【特許文献2】特開2019-47757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、集草容器に開閉可能なカバーを設ける場合、集草容器の刈草の収容状況を確認するために作業者がいちいちカバーを開けて集草容器の内部を目視する必要があるため、作業効率が低下していた。また、満杯センサを設ける場合、集草容器の満杯を検知できるものの、集草容器が満杯になる時期を予測することが困難であり、作業者が刈草の適切な排出タイミングを把握することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、芝草の刈り取り作業において作業者が集草容器に収容された芝草の適切な排出タイミングを把握することができ、作業効率を向上させることができる乗用芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態に係る乗用芝刈機(1)は、所定の作業領域(A)を走行可能な走行車体(2)と、前記走行車体(2)に設けられ、芝草(G1)を刈り取る芝刈装置(3)と、前記走行車体(2)に設けられ、前記芝刈装置(3)が刈り取った芝草(G2)を収容する集草容器(5)と、前記走行車体(2)の車速を検出する車速センサ(65)と、前記作業領域(A)において前記芝刈装置(3)によって刈り取る芝草(G1)の刈り前草丈(H)を検出する草丈センサ(66)と、前記集草容器(5)の容量データ(D8)、前記作業領域(A)における芝草(G1)の草密度データ(D1)、前記芝刈装置(3)の刈り幅データ(D2)、前記芝刈装置(3)による刈り高さデータ(D3)および前記草丈センサ(66)によって検出された芝草(G1)の刈り前草丈データ(D7)を記憶し、前記容量データ(D8)、前記刈り幅データ(D2)、前記刈り高さデータ(D3)、前記刈り前草丈データ(D7)および前記車速センサ(65)によって検出された車速データ(D6)から前記集草容器(5)の芝草(G2)の収容率を算出し、前記収容率が所定値以上の場合には報知する第1報知を実行する制御部(10)とを備える。
【発明の効果】
【0008】
実施形態に係る乗用芝刈機によれば、芝草の刈り取り作業において作業者が集草容器に収容された芝草の適切な排出タイミングを把握することができ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る乗用芝刈機の全体構成を示す図(その1)である。
図2図2は、実施形態に係る乗用芝刈機の全体構成を示す図(その2)である。
図3図3は、実施形態に係る乗用芝刈機における制御系の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る乗用芝刈機における芝草の刈り取り作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本願の開示する乗用芝刈機の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
<乗用芝刈機の全体構成>
図1および2を参照して実施形態に係る乗用芝刈機1の全体構成について説明する。図1および2は、実施形態に係る乗用芝刈機1の全体構成を示す図である。図1には、乗用芝刈機1の概略側面(左側面)を示している。図2には、乗用芝刈機1の芝草の刈り取り作業中における模式的な平面図を示している。
【0012】
なお、図1および2には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0013】
乗用芝刈機1は、運転者(作業者ともいう)の運転によって、所定の作業領域A図4参照)に生育している芝草など(以下、芝草という)を刈り取り、刈り取った芝草(刈草ともいう)を集草する。なお、以下では、乗用芝刈機1または後述する走行車体2を指して「機体」という場合がある。
【0014】
また、乗用芝刈機1は、運転者の手動運転によるものであってもよいし、後述する位置情報取得装置70によって取得した機体の位置情報に基づいて後述する制御部10が各部を制御する自動運転によるものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、乗用芝刈機1は、走行車体2と、芝刈装置(以下、モアという)3と、モア昇降機構4と、集草容器(以下、コレクタという)5とを備える。走行車体2は、車体フレーム21と、左右一対の前輪22と、左右一対の後輪23とを備える。車体フレーム21は、走行車体2の車体骨格を形成する。車体フレーム21には、原動機61が搭載される。車体フレーム21は、フロントアクスルケースを介して、左右一対の前輪22を支持する。
【0016】
原動機61は、前輪22および後輪23の他、回転動力によってモア3の刈刃32を駆動する。原動機71として、たとえば、エンジン(たとえば、ディーゼルエンジン)や電動モータがある。
【0017】
また、車体フレーム21は、変速装置である、たとえば、HST(Hydro Static Transmission)を収納するミッションケース24を支持する。また、車体フレーム21は、ミッションケース24から後方へと延設されたチェーンケースを介して、左右一対の後輪23を支持する。
【0018】
乗用芝刈機1では、原動機61の回転動力を、HSTを介して適宜変速し、ミッションケース24およびチェーンケースに収納された伝動機構を介して左右の後輪23へと伝達するとともに、ミッションケース24から動力を取り出し、取り出した動力を左右の前輪22へと伝達する。
【0019】
走行車体2は、フロアステップ25と、運転席26と、ステアリングコラム271と、ステアリングホイール272と、各種操作レバー281と、各種操作ペダル282と、安全フレーム29とを備える。
【0020】
フロアステップ25は、走行車体2の前部に設けられる。運転席26は、運転者が座る座席であり、フロアステップ25の後部に設けられる。ステアリングコラム271は、フロアステップ25の前部に設けられる。すなわち、ステアリングコラム271は、運転席26の前方に設けられる。ステアリングコラム271の上部にはメータパネル62やモニタ63が設けられる。
【0021】
モニタ63は、たとえば、液晶モニタである。モニタ63は、乗用芝刈機1や乗用芝刈機1による作業に関する各種情報を表示する。モニタ63は、たとえば、後述するコレクタ5における刈草G2の収容率を表示する。
【0022】
また、ステアリングコラム271の上部には報知部64が設けられる。報知部64は、後述するように、コレクタ5における芝草(刈草)G2の収容率が所定値以上の場合に、たとえば、運転者などの作業者へ向けて報知する。報知部64は、たとえば、ブザー音を発する。なお、報知部64は、ランプなどの発光によって報知する構成であってもよい。また、報知部64は、モニタ63などに表示して報知する構成であってもよい。
【0023】
ステアリングホイール272は、機体操向のための操作具であり、ステアリングコラム271の上部に設けられる。
【0024】
各種操作レバー281は、モア昇降レバー、コレクタ昇降レバー、ダンプレバーなどであり、運転席26の左右側方に設けられる。各種操作ペダル282は、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどであり、フロアステップ25の上方、かつ、ステアリングコラム271の左右側方に設けられる。
【0025】
安全フレーム(ロプスともいう)29は、機体の転倒時などに運転者の安全を確保するための部材であり、運転席26の後方に設けられる。安全フレーム29は、機体を前方(または後方)から見て、機体の左右方向に架け渡されたアーチ状となるように設けられる。
【0026】
モア3は、走行車体2の前方に設けられる。乗用芝刈機1は、機体の前部にモア3を備えた、いわゆるフロントモア型である。なお、乗用芝刈機1は、たとえば、機体の中央部にモア3を備えた、いわゆるミッドモア型であってもよい。
【0027】
モア3は、作業領域Aに生えている芝草G1を刈り取る装置であり、モアデッキ31と、刈刃32(図2参照)とを備える。乗用芝刈機1は、刈刃で刈り取った芝草(刈草)G2を、ダクト33およびシュータ34を介して、後述するコレクタ5へと搬送する。この場合、乗用芝刈機1は、ブロワ35で刈草G2を送風搬送する。
【0028】
モア昇降機構4は、モア昇降シリンダ41と、リフトアーム42とを備える。モア昇降シリンダ41は、たとえば、油圧シリンダであり、モア3を昇降駆動する。リフトアーム42は、モア昇降シリンダ41とモアデッキ31との間に設けられる。モア昇降機構4は、モア昇降シリンダ41の駆動力をリフトアーム42へと伝達して、リフトアーム42を駆動する。モア昇降機構4は、リフトアーム42を駆動することで、モア3(モアデッキ31)を昇降する。
【0029】
コレクタ5は、走行車体2の後部に設けられる。コレクタ5は、モア3が刈り取った芝草(刈草)G2を収容する容器である。コレクタ5は、たとえば、直方体状のフレーム枠で構成され、フレーム枠の前後、左右および上面が、通気穴を有するプレート部材で構成される。コレクタ5の前面には、シュータ34と連通された、刈草G2の取入口(図示せず)が形成される。
【0030】
また、コレクタ5は、蓋部51を備える。蓋部51は、コレクタ5の後面および上面が一体となって構成される。蓋部51は、コレクタ5のダンプと連動して、コレクタ5の本体から離れてコレクタ5の後部を広く開放するように構成される。コレクタ5は、ダンプによって溜まった芝草(刈草)G2を排出する。乗用芝刈機1では、基本的には、コレクタ5が刈草G2で満杯になった場合に刈草G2を排出する。乗用芝刈機1は、刈草G2を排出する場合、所定の排出場所まで移動して、所定の排出場所で刈草G2を排出する。
【0031】
なお、コレクタ5における刈草G2の収容空間には、満杯センサ(図示せず)が設けられる。満杯センサは、コレクタ5が刈草G2で満杯になったことを検知する。満杯センサは、たとえば、赤外線センサや重量センサである。なお、満杯センサによってコレクタ5の満杯が検知されるとブザー音などで報知するように構成されてもよい。また、コレクタ5における刈草G2の収容空間にカメラが設けられ、カメラによって刈草G2の収容状況を監視するように構成されてもよい。なお、集草量の仮想値とカメラによる集草量とを整合させて、フィードバックして仮想値に反映させることも可能である。
【0032】
乗用芝刈機1は、車速センサ65(図3参照)と、草丈センサ66とを備える。車速センサ65は、走行車体2(乗用芝刈機1)の走行速度(車速ともいう)を検出する。車速センサ65は、駆動輪となる前輪22または後輪23の回転数を検出することで、この乗用芝刈機1の車速を検出する。
【0033】
草丈センサ66は、作業領域Aにおいて、モア3によって刈り取る前の芝草G1の草丈(芝草G1の高さであり、刈り前草丈という)Hを検出する。草丈センサ66は、ステアリングコラム271の前方に設けられる。草丈センサ66は、たとえば、LiDAR(Light Detection and Ranging)であり、機体前方の所定領域へ向けて照射した光の散乱光を測定して、刈り前草丈Hを検出する。
【0034】
草丈センサ66は、安全フレーム29の上面部に設けられてもよい。草丈センサ66は、安全フレーム29の上面部に設けられる場合には、後述する位置情報取得装置70を取り付けるためのブラケットを利用して、ブラケットの下面に取り付けるのがよい。なお、乗用芝刈機1が運転席26を覆うキャビンを備える場合には、草丈センサ66は、キャビンのルーフ前面部に設けられることが好ましい。
【0035】
また、乗用芝刈機1は、制御部10を備える。制御部10は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部(図示せず)をはじめ、各種プログラムや必要なデータ類が記憶される、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部などを備える。
【0036】
制御部10は、各種情報の算出や、算出した情報の作業者への提示などを行う。制御部10は、作業者へ情報を提示する場合には、たとえば、モニタ63に情報を表示させることで提示する。なお、制御部10は、機体側に設けられてもよいし、乗用芝刈機1が自動運転される場合には、後述する入力装置80側に設けられてもよい。
【0037】
位置情報取得装置70は、走行車体2の上部に設けられ、走行車体2(すなわち、乗用芝刈機1)の現在の自己位置P(図4参照)を所定の周期で測定し、乗用芝刈機1の位置情報(たとえば、緯度および経度)を取得する。位置情報取得装置70は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星(人工衛星)90からの電波を受信して、乗用芝刈機1の自己位置Pを測定可能、かつ、計時可能である。
【0038】
位置情報取得装置70は、安全フレーム29の上面部に設けられてもよい。なお、乗用芝刈機1が運転席26を覆うキャビンを備える場合には、位置情報取得装置70は、キャビンのルーフ前面部に設けられることが好ましい。
【0039】
入力装置80は、作業者による制御部10へ向けた入力操作を受け付ける。入力装置は、たとえば、作業者が携行可能なタブレット端末である。入力装置80は、表示画面を備える。入力装置80の表示画面は、機体側のモニタ63に表示される情報が表示可能に構成されてもよい。また、たとえば、入力装置80の表示画面には、コレクタ5に収容している刈草G2の仮想値(量)が表示される。
【0040】
乗用芝刈機1は、所定の刈り高さHで芝草G1を刈り取る作業(以下、芝草G1の刈り取り作業という)を行う。なお、モア3による芝草G1の刈り高さHは、作業者による設定が可能である。図2に示すように、乗用芝刈機1は、所定の刈り幅(作業幅ともいう)WM1で芝草G1の刈り取り作業を行う。なお、芝草G1の刈り幅WM1は、刈刃32の左右幅(刈刃32の回転範囲)によって決まる。
【0041】
なお、乗用芝刈機1は、作業領域Aにおいて刈り取り前の芝草G1が残っている未作業領域AW1における芝草G1の刈り取り作業を行う場合、所定の刈り幅WM1に対して、芝草G1が刈り取られた、刈り取り作業済みの既作業領域AW2側に所定の作業代(重複幅)WM2分重なるように作業する。
【0042】
また、乗用芝刈機1では、芝草G1の刈り取り作業中、位置情報取得装置70によって乗用芝刈機1の自己位置Pが測定される。後述する制御部10(図3参照)は、位置情報取得装置70によって測定された乗用芝刈機1の自己位置Pに基づいて、芝草G1の刈り取り作業中における乗用芝刈機1の作業経路R(図4参照)を取得する。
【0043】
<乗用芝刈機の制御系および制御部の制御内容>
次に、図3および4を参照して実施形態に係る乗用芝刈機1における制御系および制御部100による制御内容について説明する。図3は、実施形態に係る乗用芝刈機1における制御系の一例を示すブロック図である。図4は、実施形態に係る乗用芝刈機1における芝草の刈り取り作業の説明図である。
【0044】
図3に示すように、制御部10には、位置情報取得装置70、入力装置80、車速センサ65、草丈センサ66および報知部64などが接続される。
【0045】
制御部10は、草密度データD1、刈り幅データD2、刈り高さデータD3、作業領域データD4、排出場所データD5、車速データD6、刈り前草丈データD7、コレクタ5(図1参照)の容量データD8などを記憶する。草密度データD1は、作業領域A図2参照)における芝草G1の草密度であり、たとえば、航法衛星(人工衛星)90から画像データとして取得することができる。刈り幅データD2、刈り高さデータD3、作業領域データD4および排出場所データD5は、タブレット端末などの入力装置80から入力される。
【0046】
なお、刈り幅データD2は、刈り幅WM1図2参照)から作業代WM2図2参照)を引いた数値が好ましい。モア3の刈り幅WM1は、たとえば、モア3の型式を入力することで取得することも可能である。また、モア3による刈り高さの設定は、芝草G1の刈り取り作業中のレバー操作による設定変更をフィードバック可能なモードを設定する。
【0047】
また、刈草G2の排出場所P図4参照)は、1箇所または複数箇所を任意に選択可能としてもよい。排出場所Pが1箇所の場合には、コレクタ5が1回目に満杯になる場所を刈草G2の排出場所Pとして設定する。入力装置80(図1参照)の表示画面には、たとえば、作業面積および刈り取った芝草(刈草)G2の仮想値に基づいて、満杯になる回数が表示される。
【0048】
制御部10は、容量データD8、刈り幅データD2、刈り高さデータD3、車速データD6および刈り前草丈データD7からコレクタ5における芝草(刈草)G2の収容率を算出し、収容率データD9として取得する。
【0049】
制御部10は、コレクタ5における芝草(刈草)G2の収容率(収容率データD9)が所定値以上となると、報知部64へ向けて第1報知信号S1を出力して、第1報知を実行する。第1報知では、報知部64から、運転者などの作業者へコレクタ5の収容率が所定値以上であることを報知する。
【0050】
このような構成によれば、芝草G1の刈り取り作業においてコレクタ5が満杯になる前に報知することで、乗用芝刈機1の運転者などの作業者がコレクタ5に収容された芝草(刈草)G2の適切な排出タイミングを把握することができる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0051】
なお、コレクタ5の収容率が所定値以上であることを報知する場合、報知部64によるブザー音で報知する。この場合、コレクタ5の収容率が満杯に近づくほど、たとえば、95%以上の収容率の場合には連続音、95~90%の収容率の場合には0.3秒間隔の短音、90~80%の収容率の場合には0.5秒間隔の短音、80~60%の収容率の場合には1秒間隔の短音、60%未満の収容率の場合にはブザー音なし、というように、収容率によって音を変化させる。
【0052】
また、コレクタ5の収容率が所定値以上であることを報知する場合、報知部64によるブザー音で報知する他、たとえば、入力装置80の表示画面にポップアップ表示する構成であってもよい。この場合、コレクタ5の収容率が満杯に近づくほど、たとえば、90%以上の収容率の場合には赤色、60~90%の収容率の場合には黄色、60%未満の収容率の場合には青色のように、収容率によって色を変化させてもよい。
【0053】
また、制御部10は、コレクタ5の収容率(収容率データD9)が所定値以上であり、かつ、刈草G2の排出場所Pが走行車体2(すなわち、乗用芝刈機1)の前方に存在している場合には、報知部64へ向けて第2報知信号S2を出力して、第2報知を実行する。第2報知では、報知部64から、運転者などの作業者へ芝草(刈草)G2の排出を促すように報知する。
【0054】
たとえば、排出場所Pから遠ざかっている場合に刈草G2を排出しようとすると、現在の作業位置(自己位置P)から引き返すことになるため、作業効率が低下してしまうが、このような構成によれば、図4に示すように、排出場所Pへ向かっている場合に刈草G2の排出を促すことで、作業を効率的に行うことができる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0055】
また、制御部10は、芝草G1の刈り取り作業中における乗用芝刈機1の作業経路R(図4参照)を作業経路データD10として取得する。作業経路データD10は、作業領域Aにおいて走行車体2(乗用芝刈機1)が直進および旋回を繰り返して往復走行(作業)する経路を示すデータである。このような作業経路R(作業経路データD10)は、作業者によって予め設定可能である。なお、制御部10は、位置情報取得装置70(図1参照)によって乗用芝刈機1(走行車体2)の位置情報(自己位置P)を取得し、乗用芝刈機1の自己位置Pに基づいて作業経路Rを算出してもよい。
【0056】
制御部10は、走行車体2(乗用芝刈機1)による単位走行距離あたりのコレクタ5の収容率の増加量を算出する。制御部10は、排出場所Pが走行車体2(乗用芝刈機1)の前方に存在している場合に作業経路Rにおける次回の直進経路でコレクタ5が満杯になることが予想される場合には、報知部64へ向けて第2報知信号S2を出力して、第2報知を実行する。
【0057】
このような構成によれば、排出場所Pへ向かっている場合には、排出場所Pから遠ざかる前に芝草(刈草)G2の排出を促すことで、作業を効率的に行うことができる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0058】
制御部10は、芝草G1の刈り取り量(刈草G2の量)からコレクタ5が満杯になるタイミングの予想が可能である。刈り取り量は、たとえば、「刈り取り量=(刈り前草丈データD7の値-刈り高さデータD3の値)×刈り幅データD2の値×作業経路データD10の値(走行距離)×草密度データD1の値」の計算式で算出することができる。
【0059】
なお、制御部10は、芝草G1の視認高さからモア3による刈り高さの差分の演算量とコレクタ5における刈草G2の収容率とから、収容できていない刈草G2の量を算出する。
【0060】
また、制御部10は、草丈センサ66によってモア3が刈り残した芝草G1を算出し、再度作業が必要か否かを入力装置80の表示画面にマップ表示させる。また、制御部10は、再度作業が必要な箇所を入力装置80の表示画面のマップ表示において色分けする。
【0061】
また、コレクタ5における刈草G2の収容空間に湿度計が設けられ、制御部10は、コレクタ5が朝露などを含む湿度が高い芝草(刈草)G2を収容している場合には、入力装置80の表示画面において刈草G2の排出作業を早めにポップアップ表示する。
【0062】
また、制御部10は、芝草G1の刈り取り作業終了後には、作業領域Aにおける作業条件(刈り前草丈H、刈り幅WM1、刈り高さH、排出回数、作業時間など)を、次回の作業において利用可能なように、たとえば、入力装置80などに記録する。
【0063】
上述してきた実施形態により、以下の乗用芝刈機1が実現される。
【0064】
(1)所定の作業領域Aを走行可能な走行車体2と、走行車体2に設けられ、芝草G1を刈り取る芝刈装置3と、走行車体2に設けられ、芝刈装置3が刈り取った芝草G2を収容する集草容器5と、走行車体2の車速を検出する車速センサ65と、作業領域Aにおいて芝刈装置3によって刈り取る芝草G1の刈り前草丈Hを検出する草丈センサ66と、集草容器5の容量データD8、作業領域Aにおける芝草G1の草密度データD1、芝刈装置3の刈り幅データD2、芝刈装置3による刈り高さデータD3および草丈センサ66によって検出された芝草G1の刈り前草丈データD7を記憶し、容量データD8、刈り幅データD2、刈り高さデータD3、刈り前草丈データD7および車速センサ65によって検出された車速データD6から集草容器5の芝草G2の収容率を算出し、収容率が所定値以上の場合には報知する第1報知を実行する制御部10とを備える、乗用芝刈機1。
【0065】
このような乗用芝刈機1によれば、芝草G1の刈り取り作業において集草容器5が満杯になる前に報知することで、乗用芝刈機1の運転者などの作業者が集草容器5に収容された芝草(刈草)G2の適切な排出タイミングを把握することができる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0066】
(2)上記(1)において、制御部10は、予め指定された芝草G2の排出場所Pを記憶し、収容率が所定値以上であり、かつ、排出場所Pが走行車体2の前方に存在している場合には芝草G2の排出を促す第2報知を実行する、乗用芝刈機1。
【0067】
たとえば、排出場所Pから遠ざかっている場合に刈草G2を排出しようとすると、現在の作業位置(自己位置P)から引き返すことになるため、作業効率が低下してしまうが、このような乗用芝刈機1によれば、排出場所Pへ向かっている場合に芝草(刈草)G2の排出を促すことで、作業を効率的に行うことができる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0068】
(3)上記(2)において、制御部10は、作業領域Aにおいて走行車体2が直進および旋回を繰り返して往復走行する作業経路Rを予め設定可能であり、走行車体2による単位走行距離あたりの収容率の増加量を算出し、排出場所Pが走行車体2の前方に存在している場合に作業経路Rにおける次回の直進経路で集草容器5が満杯になることが予想される場合には第2報知を実行する、乗用芝刈機1。
【0069】
このような乗用芝刈機1によれば、排出場所Pへ向かっている場合には、排出場所Pから遠ざかる前に芝草(刈草)G2の排出を促すことで、作業を効率的に行うことができる。これにより、作業効率を向上させることができる。
【0070】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 乗用芝刈機
2 走行車体
3 芝刈装置(モア)
5 集草容器(コレクタ)
10 制御部
65 車速センサ
66 草丈センサ
作業領域
D1 草密度データ
D2 刈り幅データ
D3 刈り高さデータ
D6 車速データ
D7 刈り前草丈データ
D8 容量データ
G1 芝草
G2 芝草(刈草)
刈り前草丈
排出場所
R 作業経路
図1
図2
図3
図4