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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178538
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】透明電極及び測定機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0537 20210101AFI20241218BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20241218BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20241218BHJP
   G04G 21/02 20100101ALI20241218BHJP
【FI】
A61B5/0537 110
H01B5/14 A
A61B5/026 120
G04G21/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096739
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 和男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敦
(72)【発明者】
【氏名】横手 恵紘
(72)【発明者】
【氏名】イ テフン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジョンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン インジョ
【テーマコード(参考)】
2F002
4C017
4C127
5G307
【Fターム(参考)】
2F002AA12
2F002AC01
2F002AC03
2F002GA04
4C017AA10
4C017AA11
4C017AB02
4C017AC28
4C127AA06
4C127BB03
4C127LL08
4C127LL22
5G307FA01
5G307FB01
5G307FC02
(57)【要約】
【課題】デバイス最外面への配置に耐え得る耐久性を有し、電気的測定部と光学的測定部の併用によるデバイスの設計自由度を向上させること。
【解決手段】絶縁基板10に形成され、人体等の被対象物と接触することにより電気的に接続する透明電極1であって、透明電極1は、SnOを主成分とする透明電極層20と、金属層31及び/又は導電性を有する金属酸化物層32で形成される導電層30と、を最外面側からこの順で積層した積層構造を有し、透明電極層20の側面部21の少なくとも一部は、透明電極層20及び導電層30と電気的に接続する集電部40で覆われる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板に形成され、被対象物と接触することにより電気的に接続する透明電極であって、
前記透明電極は、SnOを主成分とする透明電極層と、金属層及び/又は導電性を有する金属酸化物層で形成される導電層と、を最外面側からこの順で積層した積層構造を有し、
前記透明電極層の側面部の少なくとも一部は、前記透明電極層及び前記導電層と電気的に接続する集電部で覆われる、透明電極。
【請求項2】
前記導電層の前記金属層は、膜厚が5nmを超える場合、平面視における前記絶縁基板に対する投影面積が、前記絶縁基板の面積の30%以下となるように形成される、請求項1に記載の透明電極。
【請求項3】
前記金属層は、Ag、Al、Cr、Cu、Au、Pt、Ti、Mo、Nb、Ndから選ばれる1以上の元素を含有し、
前記透明電極層は、In、Ga、Nb、Ta、W、Zn、Sn、Zr、Si、Fから選ばれる1以上の元素を含有する、請求項1に記載の透明電極。
【請求項4】
前記金属層は、Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される第1金属で形成される第1金属部と、Ag、Al、Cr、Cu,Nbの群から選択される第2金属で形成される第2金属部と、を有し、
前記第1金属部は、前記第2金属部の露出を妨げるように配置される、請求項1に記載の透明電極。
【請求項5】
前記集電部は、Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される第1金属で形成され、前記透明電極層の側面部の少なくとも一部及び前記導電層の最外面を覆うように形成される、請求項1に記載の透明電極。
【請求項6】
前記透明電極層は、膜厚が50nm以上200nm以下である、請求項1に記載の透明電極。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の前記透明電極を具備する、測定機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルデバイス等の測定機器に搭載可能な透明電極及び該電極を搭載した測定機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、裏蓋が設けられたケース内の内側面上に第1透明電極を有する透明前基板と、内側面上に透明の第2電極を有する透明後基板と、基板同士の間の閉鎖空間を形成する、2つの基板用の固定枠とを備える表示セルは配置され、制御手段によって、表示セルに時間的情報を表示させる表示ユニットについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-121303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、健康志向の高まりを受けて、リアルタイムに身体の健康状態を監視できるスマートウェアラブルデバイスの要求・用途が急速に拡大している。
【0005】
ウェアラブルデバイスに搭載されている生体情報を取得する一般的な方法として、電気的測定と光学的測定の2通りがある。光学的測定を行う場合、光学的測定部の外装部品は測定で使用する波長において高い透過率が必要となる。一方、電気的測定を行う場合、一般的に電気的測定部は金属電極で構成されるため、光学的に不透過性を示す。そのため、ウェアラブルデバイスの限られた外装領域において、特に電気的測定部と光学的測定部を両方搭載する場合、両者を重ねて配置することが難しく、設計の自由度が低かった。
【0006】
ウェアラブルデバイスに前述の2種類の測定部を搭載する場合、周知の透明電極を用いることが考えられる。通常、透明電極は、特許文献1を含む従来の透明電極のように、高い導電性と光透過性を併せ持つITO等の材料で形成される。しかし、この種の透明電極は、典型的にケース内部等の密閉空間に配置して使用するものであり、耐久性については考慮されていない。そのため、デバイスの最外面に配置できず、設計の自由度は改善できない。
【0007】
本発明者等は、従来の透明電極の課題を解決すべく鋭意研究を重ね、従来の透明電極では未考慮であった透明性を維持しつつ、物理的及び化学的耐久性を兼ね備えた新規の透明電極の開発に成功し、本願発明に至った。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、透明性を確保しつつデバイス最外面への配置に耐え得る物理的及び化学的耐久性を有し、電気的測定部と光学的測定部の併用によるデバイスの設計自由度を向上させることのできる透明電極及び測定機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記(1)~(7)の何れか1つによって達成される。
【0010】
(1)絶縁基板に形成され、被対象物と接触することにより電気的に接続する透明電極であって、前記透明電極は、SnOを主成分とする透明電極層と、前記透明電極層の一部を前記絶縁基板と接触可能に形成された開口部を有する金属層及び/又は導電性を有する金属酸化物層で形成される導電層と、を最外面側からこの順で積層した積層構造を有し、前記透明電極層の側面部の少なくとも一部は、前記透明電極層及び前記導電層と電気的に接続する集電部で覆われる、透明電極。
【0011】
(2)前記導電層の前記金属層は、膜厚が5nmを超える場合、平面視における前記絶縁基板に対する投影面積が、前記絶縁基板の面積の30%以下となるように形成される、上記(1)に記載の透明電極。
【0012】
(3)前記金属層は、Ag、Al、Cr、Cu、Au、Pt、Ti、Mo、Nb、Ndから選ばれる1以上の元素を含有し、前記透明電極層は、In、Ga、Nb、Ta、W、Zn、Sn、Zr、Si、Fから選ばれる1以上の元素を含有する、上記(1)又は(2)に記載の透明電極。
【0013】
(4)前記金属層は、Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される第1金属で形成される第1金属部と、Ag、Al、Cr、Cu,Nbの群から選択される第2金属で形成される第2金属部と、を有し、前記第1金属部は、前記第2金属部の露出を妨げるように配置される、上記(1)~(3)の何れかに記載の透明電極。
【0014】
(5)前記集電部は、Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される第1金属で形成され、前記透明電極層の側面部の少なくとも一部及び前記導電層の最外面を覆うように形成される、上記(1)~(4)の何れかに記載の透明電極。
【0015】
(6)前記透明電極層は、膜厚が50nm以上200nm以下である、上記(1)~(5)の何れかに記載の透明電極。
【0016】
(7)上記(1)~(6)の何れかに記載の前記透明電極を具備する、測定機器。
【発明の効果】
【0017】
本発明の透明電極は、透明性を確保しつつデバイス最外面への配置に耐え得る物理的及び化学的耐久性を有し、最外面に透明電極層を配置して電気的測定部の電極として用いることができる。そのため、従来、光学的に不透明であった電極部分を透明にできるため、比較的小さな外装領域のウェアラブルデバイスにおいて、電気的測定部と光学的測定部とを重ねて配置することが可能となる。したがって、本発明の透明電極を備えたウェアラブルデバイスは、設計上の制約を低減させつつ測定方法の自由度が高まり、より多くの光学的測定が可能となる。また、本発明の透明電極を用いることで、より大きな面積で光学的な生体情報取得が可能となり、生体情報の測定精度向上が図れる。更には、電極部分を金属電極のみで構成した場合は、意匠性の観点から外装は金属調の不透明な材料に限定されるが、本発明の透明電極を用いることで、電極下層にデザインを施すことが可能となり、デバイスの意匠性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る測定機器であるウェアラブルデバイスの概念図である。
図2】本実施形態に係る透明電極の断面図である。
図3】透明電極の分解斜視図である。
図4】透明電極の導電層の変形例を示す図である。
図5】変形例1の透明電極の断面図である。
図6】変形例2の透明電極の断面図である。
図7】変形例3の透明電極の断面図である。
図8】変形例4の透明電極の断面図である。
図9】実施例の評価試験1における実施例1~実施例3の評価結果を示す表である。
図10】実施例の評価試験1における実施例4~実施例6の評価結果を示す表である。
図11】実施例の評価試験1における比較例1~比較例4の評価結果を示す表である。
図12】実施例の評価試験2における実施例A、実施例B、比較例Cの評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0020】
更に、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状等について、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0021】
また、特記しない限り、操作及び物性などは、室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0022】
なお、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明する場合は、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0023】
以下の実施形態では、本実施形態に係る透明電極1を搭載する測定機器として、腕時計型のウェアラブルデバイスを例示する。しかし、本発明の透明電極1が搭載される測定機器は、生体情報等の被測定物の情報を測定する機器であれば、腕時計型以外の他のウェアラブルデバイスやウェアラブルデバイス以外の他のデバイスにも適用可能である。
【0024】
本発明の一実施形態に係る透明電極1の構成について図1図8を適宜参照しながら説明する。ただし、図1図8は、本発明の一実施形態に係る透明電極1及び測定機器に関するものであって、本実施形態の透明電極1は、これらの図によって説明される構成に限定されない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る透明電極1を具備し、生体情報等の所定の情報を測定する測定機器であるウェアラブルデバイス100の一部が概念的に示されている。
【0026】
<ウェアラブルデバイス>
ウェアラブルデバイス100は、腕等の装着者の所定部位に装着して使用するデバイスである。ウェアラブルデバイス100は、生体情報等の目的とする情報が測定可能な機能を有し、例えば腕時計型の場合は腕時計として機能すると共に測定機器としても機能し得る。
【0027】
ウェアラブルデバイス100は、図1に示すように、デバイス本体110内に、光を照射する発光部と生体内を反射した赤外光の強度を検出する受光部を有して心拍や血流量等の生体情報を光学的に測定する光学的測定部120と、生体電位を測定して体組成(体脂肪率や筋肉量等)等の生体情報を電気的に測定する電気的測定部130と、デバイス本体110の上面側に配置され各種情報を表示する表示部140と、各部の駆動制御を統括的に行う制御部150と、各部の駆動電源を供給する電源部160と、含んで構成される。なお、ウェアラブルデバイス100の構成は、前述した構成に限定されず、デバイス構成として必要な他の機能を実現する機能実現部を備えてもよい。
【0028】
<透明電極>
透明電極1は、図1に示すように、ウェアラブルデバイス100の所定箇所(例えば装着面となるデバイス下面側)に設けられる。透明電極1は、装着者の皮膚と接触し得る箇所に配置することができる。
【0029】
透明電極1は、図2に示すように、絶縁基板10と、透明電極層20と、導電層30と、集電部40と、を含む。透明電極1は、図2図3に示すように、絶縁基板10の上に、導電層30が配置され、導電層30の上に透明電極層20が配置され、透明電極層20の側面部21の少なくとも一部を覆うように集電部40が配置される。
【0030】
〈絶縁基板〉
絶縁基板10は、無アルカリガラス等の絶縁性を有する材料で構成される。絶縁基板10は、透明電極1とウェアラブルデバイス100の内部機器と電気的接続を遮断する。
【0031】
〈透明電極層〉
透明電極層20は、導電性を有する金属酸化物で構成され、導電層30の上に配置される。透明電極層20は、導電層30と電気的に接続される。透明電極層20は、図1に示すように、ウェアラブルデバイス100の下面側の最外面に位置する。そのため、透明電極1は、被対象物(装着者の皮膚等)と接触して電気的に接続できる。
【0032】
透明電極層20は、導電性及び透明性を有すると共に、物理的及び化学的な耐久性を有する材料で構成される。透明電極層20は、これら特性を有するようにSnOを主成分とする金属酸化物で構成することができる。SnOは、ITOのようなInを主成分とした金属酸化物と比較して化学的に安定かつ耐久性にも優れている。
【0033】
透明電極層20は、SnOを主成分とし、更にIn、Ga、Nb、Ta、W、Zn、Sn、Zr、Si、Fから選ばれる1以上の元素を添加するのが好ましく、特にFを添加するのがよい。
【0034】
仮に、透明電極層20をSnOのみで形成した場合、耐久性は得られるが、表面抵抗が高くなり、表面抵抗を下げる目的で膜厚を増加させると透明性が損なわれてしまい好ましくない。これに対し、本実施形態に係る透明電極層20は、主成分であるSnOに前述した元素を1以上添加することで、スパッタリング法で成膜した場合に、膜中の平均粒子径を小さく制御しつつ表面粗さRaを低くすることができる。また、透明電極層20は、表面粗さRaを低くすることで表面平滑性が向上する。そのため、透明電極層20は、装着者の皮膚との間で摩擦が生じた際に摩耗し難くなり、優れた耐久性を示すことができる。
【0035】
透明電極層20は、耐久性及び透明性の観点から、膜厚は50nm以上200nm以下にするのが好ましく、60nmを超えて200nm未満とするのがより好ましい。透明電極層20は、膜厚を前述の範囲に制御することで、透明電極としての耐久性、導電性及び透過性が確保できる。ここで、透明電極層20は、膜厚を50nm未満にすると、耐久性及び導電性が低下して透明電極1としての機能が低下するおそれがあり好ましくない。また、透明電極層20は、膜厚が200nmを超えると、透過性が低下して光学的測定部120の測定性能を十分発揮できないおそれがあり好ましくない。
【0036】
透明電極層20は、耐久性の観点から、表面粗さRaは3.3nm以下、最大高さ粗さRzは33nm以下、膜密度は6.8g/cm-3以上とするのが好ましい。表面粗さRa、最大高さ粗さRzは、JIS B0601-2001に準拠して測定することができる。膜密度は、例えばX線反射率法(XRR)により測定することができる。透明電極層20は、表面粗さRa、最大高さ粗さRz、膜密度を前述の値に設定することで、装着者の皮膚等の摩擦による摩耗が抑制され高い耐久性を維持することができる。
【0037】
透明電極層20は、透過性の観点から、500nm以上950nm以下の波長領域の光の平均透過率が80%以上であるのが好ましい。平均透過率は、JIS R3106-2019に準拠して測定することができる。透明電極層20は、平均透過率80%以上とすることにより、光学的測定部120で必要な光情報を正確に取得できる。透明電極層20は、平均透過率が80%未満になると、透明電極層20を透過する光情報が減少するため、光学的測定部120で正確な情報取得が困難となり好ましくない。
【0038】
透明電極層20は、導電性の観点から、平面視における中央部と外周端部との間の抵抗が200Ω・cm以下、かつ前記中央部の表面抵抗が220Ω/sq以下とするのが好ましい。これにより、透明電極層20は、一般的な金属電極と比較すると表面抵抗及び抵抗は高くなるが、生体情報計測においては十分な電極性能となるため、従来の金属電極との代替が可能となる。また、正確な電気的生体情報の取得のためには、透明電極自体の抵抗は低いことが好ましい。
【0039】
〈導電層〉
導電層30は、図2に示すように、透明電極層20及び集電部40と電気的に接続し、絶縁基板10と透明電極層20との間に介在される。導電層30は、電気的測定部130等と接続される。導電層30は、金属層31及び/又は導電性を有する金属酸化物層32で形成される。
【0040】
導電層30は、金属層31のみ、又は金属層31と金属酸化物層32の積層構造で形成した場合、透明性の観点から、膜厚が5nmを超えるときは、平面視における絶縁基板10に対する投影面積が絶縁基板10の面積の30%以下とするのが好ましい。このような投影面積を有する導電層30の構造としては、図4に示すように(a)格子状、(b)線状、(c)環状、(d)膜の一部をくり抜いたくり抜き形状、(e)渦巻状等の、絶縁基板10と連通する開口部33を形成した形態が好適に挙げられる。
【0041】
なお、導電層30の形状、形成位置、開口部33の開口形状や開口サイズ等は、図4に示す形状に限定されず、少なくとも絶縁基板10に対する投影面積が絶縁基板10の面積の30%以下であれば、デバイス構成(搭載される光学的測定部120の構成や配置位置等)に応じて適宜設計することができる。
【0042】
金属層31を構成する金属は、Ag、Al、Cr、Cu、Au、Pt、Ti、Mo、Nb、Ndから選ばれる1以上の元素を含有して構成することができる。これら金属のうち、Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される金属を「第1金属」とし、Ag、Al、Cr、Cu,Nbの群から選択される金属を「第2金属」として分類できる。ここで、「第1金属」は、加工容易性と良好な耐久性を備えるが、導電性にやや乏しい性質を有する高耐久性金属である。「第2金属」は、加工容易性と良好な導電性を備えるが、耐久性(特に酸・アルカリ耐性)に乏しい性質を有する高導電性金属である。導電層30は、第1金属で形成される部分を第1金属部31A、第2金属で形成される部分を第2金属部31Bで構成できる。
【0043】
導電層30は、金属層31のみで構成した場合、導電層30として適した上記2種類の金属(第1金属、第2金属)を適宜組み合わせ、第1金属部31Aで第2金属部31Bを囲うように配置することで両者の欠点(低耐久性、低導電性)を補いつつ、両者の利点(高耐久性、高導電性)を活かすことができる(図8を参照)。
【0044】
導電層30は、図2に示す形態の他、変形例として図5図8に示すような形態とすることができる。
【0045】
導電層30は、図5に示すように、絶縁基板10の上に、第2金属部31Bからなる導電層30を形成し、導電層30の上に透明電極層20を形成した積層構造とすることができる。図5に示す形態において、導電層30は、耐久性に乏しい第2金属部31Bで形成されるため、耐久性に優れた第1金属からなる集電部40で導電層30の最外面の露出部分が覆われるため、外部に露出しない。なお、図5に示す形態は、金属のみで構成される導電層30に開口部33を形成していないため、透明性の観点から、導電層30の膜厚を5nm以下にすることが好ましい。
【0046】
導電層30は、図6に示すように、絶縁基板10の上に、金属酸化物で形成した金属酸化物層32からなる導電層30を形成し、導電層30の上に透明電極層20を形成した積層構造とすることができる。図6に示す形態において、導電層30は、耐久性に乏しい金属酸化物で形成されるが、耐久性に優れた第1金属からなる集電部40で導電層30の最外面に位置する露出部分が覆われるため、外部に露出しない。そのため、金属酸化物層32で構成される導電層30は、ITO等の耐久性の低い透明導電材料を用いることも可能となる。
【0047】
導電層30は、図7に示すように、絶縁基板10の上に、金属層31として開口部33を設けた第2金属部31Bを下層に、金属酸化物層32を上層とした2層構造の導電層30を形成し、導電層30の上に透明電極層20を形成した積層構造とすることができる。また、集電部40は、第1金属からなり、導電層30の外周面を覆うように形成される。図7に示す形態において、導電層30の下面は、絶縁基板10で全面的に覆われ、最外面の露出部分は耐久性に優れた集電部40で覆われるため、外部に露出しない。そのため、導電層30は、ITO等の耐久性の低い透明導電材料で金属酸化物層32を形成することも可能となる。
【0048】
導電層30は、図8に示すように、絶縁基板10の上に、第2金属部31Bを下層、第1金属部31Aを上層とした2層構造の導電層30を形成し、導電層30の上に透明電極層20を形成した積層構造とすることができる。導電層30は、第1金属で構成される第1金属部31Aで、第2金属で構成される第2金属部31Bを囲うように配置される。これにより、導電層30は、図8に示すように、電極形成時に透明電極層20が開口部33に入り込むため、第2金属部31Bの部分は外部に露出しない。したがって、図8に示す形態では、第2金属部31Bの露出を防いで第2金属の欠点である耐久性を補いつつ、第2金属部31Bの導電性を活かすことができる。また、図8に示す形態において、導電層30は、金属で構成され、透明電極層20の側面部21の一部を覆うように配置されるため、集電部40の機能を賄うことができる。そのため、集電部40を別途設ける必要がなく、構成を簡素化できる。
【0049】
導電層30の膜厚は、透明性及び導電性の観点から、5nm以上100nm以下が好ましく、透明性を考慮すると薄い方がよい。なお、導電層30の膜厚は、透明性等を考慮しつつ金属層31及び/又は金属酸化物層32の組み合わせにより適宜設定することができる。
【0050】
〈集電部〉
集電部40は、透明電極層20の側面部21の少なくとも一部を覆うように配置される。集電部40は、図2に示すように、導電層30の縁部に配置され、透明電極層20の側面部21の一部を全周に亘って覆うように配置することができる。集電部40は、透明電極層20と内部回路(腕時計、ウェアラブル機器等)との接続抵抗を低減する。
【0051】
集電部40の構成材料は、透明電極層20及び導電層30との電気的接続が可能な金属材料である。具体的には、集電部40の構成材料は、集電部40で使用される第1金属(Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される金属)等を好適に用いることができる。集電部40は、第1金属で形成することで高い耐久性が得られる。そのため、集電部40は、透明電極層20の側面部の少なくとも一部を覆いつつ、導電層30の最外面を覆うように形成すると、透明電極1の耐久性を高めることができる。
【0052】
透明電極1を構成する透明電極層20、導電層30、集電部40の形成方法は、真空蒸着法、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、噴霧熱分解法(SPD)の他、その形成材料に応じて最適な方法を選択することができる。特に、緻密な薄膜を形成できるPVD法が好ましい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る透明電極1は、絶縁基板10に形成され、被対象物と接触することにより電気的に接続する電極であって、透明電極1は、SnOを主成分とする透明電極層20と、金属層31及び/又は導電性を有する金属酸化物層32で形成される導電層30と、を最外面側からこの順で積層した積層構造を有し、透明電極層20の側面部21の少なくとも一部は、透明電極層20及び導電層30と電気的に接続する集電部40で覆われる。
【0054】
また、本実施形態に係る透明電極1において、導電層30の金属層31は、膜厚が5nmを超える場合、平面視における絶縁基板10に対する投影面積が、絶縁基板10の面積の30%以下となるように形成するのが好ましい。
【0055】
また、本実施形態に係る透明電極1において、金属層31は、Ag、Al、Cr、Cu、Au、Pt、Ti、Mo、Nb、Ndから選ばれる1以上の元素を含有し、透明電極層20は、In、Ga、Nb、Ta、W、Zn、Sn、Zr、Si、Fから選ばれる1以上の元素を含有して形成するのが好ましい。
【0056】
また、本実施形態に係る透明電極1において、金属層31は、Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される第1金属で形成される第1金属部31Aと、Ag、Al、Cr、Cu,Nbの群から選択される第2金属で形成される第2金属部31Bと、を有し、第1金属部31Aは、第2金属部31Bの露出を妨げるように配置するのが好ましい。
【0057】
また、本実施形態に係る透明電極1において、集電部40は、Au、Pt、Ti、Mo、Ndの群から選択される第1金属で形成され、透明電極層20の側面部21の少なくとも一部及び導電層30の最外面を覆うように形成するのが好ましい。
【0058】
また、本実施形態に係る透明電極1において、透明電極層20は、膜厚が50nm以上200nm以下とするのが好ましい。
【0059】
また、前述した透明電極1は、光学的測定部120と電気的測定部130を備える測定機能を有するウェアラブルデバイス100のような測定機器に具備することができる。
【0060】
このような構成により、最外面に物理的及び化学的耐久性と透明性を兼ね備えた透明電極層20が配置できるため、電気的測定部130の電極として用いることで、従来、光学的に不透明であった金属による電極部分を透明にできる。そのため、比較的小さな外装領域のウェアラブルデバイス100において、電気的測定部130と光学的測定部120とを重ねて配置することが可能となる。したがって、透明電極1を備えたウェアラブルデバイス100は、設計上の制約を低減させつつ測定方法の自由度が高まり、より多くの光学的測定が可能となる。また、本発明の透明電極1をウェアラブルデバイス100等に用いることで、より大きな面積で光学的な生体情報取得が可能となり、生体情報の測定精度向上が図れる。更には、従来品のように電極部分を金属電極のみで構成した場合、意匠性の観点から外装は金属調の不透明な材料に限定されるが、本発明の透明電極1を用いることで、電極下層にデザインを施すことが可能となり、デバイスの意匠性を向上させることができる。
【実施例0061】
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0062】
[評価試験1]
以下に示す実施例及び比較例の各サンプルに対する性能試験を実施した。
【0063】
<サンプルの製造>
実施例のサンプル(実施例1~6)、比較例のサンプル(比較例1~4)は、以下の工程に沿って作製した。
【0064】
〈実施例1のサンプルの製造〉
実施例1のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した(図8の形状)。導電層と透明電極層は、スパッタリング法により形成した。導電層の形成には、DCマグネトロンスパッタリング装置(株式会社昭和真空製)を使用し、透明電極層の形成には、スパッタリング装置(株式会社豊島製作所製)を用いた。導電層の成膜条件は、装置内真空度10-3Pa以下の状態にて、Arガスを導入し、圧力0.4Paとし、放電電力はDC30Wにて実施した。透明電極層の成膜条件は、装置内真空度10-3Pa以下の状態にて、Arガスを導入し、圧力0.4Paとし、放電電力はRF100Wにて実施した。また、成膜中の基板を100℃に加熱して成膜を実施した。導電層は、膜厚30nmの第2金属(Al)の上に、膜厚20nmの第1金属(Mo)を積層して形成した。導電層は、2mm×2mm四方の開口部をマトリクス状に複数配置して格子状とした。透明電極層は、SnOを主成分とした薄膜を形成した。実施例1のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、導電層と兼用とした。実施例1のサンプルは、図8に示す形状となる。
【0065】
〈実施例2のサンプルの製造〉
実施例2のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した。導電層と透明電極層は、実施例1と同様の方法により、形成した。導電層は、開口部を形成せず、膜厚3nmの第2金属(Al)で形成した。透明電極層は、SnOで形成した。実施例2のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、第1金属(Mo)を用いて導電層が露出しないように覆って形成した。実施例2のサンプルは、図5に示す形状となる。
【0066】
〈実施例3のサンプルの製造〉
実施例3のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した。導電層と透明電極層は、実施例1と同様の方法により、形成した。導電層は、膜厚30nmの第2金属(Al)で形成した。導電層は、2mm×2mm四方の開口部をマトリクス状に複数配置して格子状とした。透明電極層は、SnOで形成した。実施例3のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、第1金属(Mo)を用いて導電層が露出しないように覆って形成した。実施例3のサンプルは、図2に示す形状となる。
【0067】
〈実施例4のサンプルの製造〉
実施例4のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した。導電層と透明電極層は、実施例1と同様にスパッタリング法により、形成した。導電層は、開口部を形成せず、膜厚100nmの金属酸化物(ITO)で形成した。透明電極層は、SnOで形成した。実施例4のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、第1金属(Mo)を用いて導電層が露出しないように覆って形成した。実施例4のサンプルは、図6に示す形状となる。
【0068】
〈実施例5のサンプルの製造〉
実施例5のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した。導電層と透明電極層は、実施例1と同様にスパッタリング方法により、形成した。導電層は、膜厚30nmの第2金属(Al)の上に、膜厚100nmの金属酸化物(ITO)を積層して形成した。第2金属で形成した層は、2mm×2mm四方の開口部をマトリクス状に複数配置して格子状とした。透明電極層は、SnOで形成した。実施例5のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、第1金属(Mo)を用いて導電層が露出しないように覆って形成した。実施例5のサンプルは、図7に示す形状となる。
【0069】
〈実施例6のサンプルの製造〉
実施例6のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した。導電層と透明電極層は、実施例1と同様にスパッタリング方法により、形成した。導電層は、膜厚30nmの第2金属(Al)の上に、膜厚20nmの第1金属(Mo)を積層して形成した。導電層は、2mm×2mm四方の開口部をマトリクス状に複数配置して格子状とした。透明電極層は、SnOを主成分としてFを添加したもの(SnO:95質量部、F:5質量部)で形成した。実施例6のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、導電層と兼用とした。実施例6のサンプルは、実施例1と同様、図8に示す形状となる。
【0070】
〈比較例1のサンプルの製造〉
比較例1のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した。導電層と透明電極層は、実施例1と同様にスパッタリング方法により、形成した。導電層は、膜厚30nmの第2金属(Al)で形成した。第2金属で形成した層は、2mm×2mm四方の開口部をマトリクス状に複数配置して格子状とした。透明電極層は、SnOで形成した。実施例5のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、導電層と兼用とした。比較例1のサンプルは、実施例1の導電層のうち、第1金属の層を形成しない形状となる。
【0071】
〈比較例2のサンプルの製造〉
比較例2のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を積層し、その上に透明電極層を積層した。導電層と透明電極層は、実施例1と同様にスパッタリング方法により、形成した。導電層は、膜厚100nmの金属酸化物(ITO)で形成した。透明電極層は、SnOで形成した。比較例2のサンプルは、導電層の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。集電部は、導電層と兼用とした。比較例2のサンプルは、実施例4の集電体を形成しない形状となる。
【0072】
〈比較例3のサンプルの製造〉
比較例3のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、導電層を形成せず、SnOからなる透明電極層のみを積層した。透明電極層は、実施例1と同様にスパッタリング方法により、形成した。比較例3のサンプルは、絶縁基板の上に膜厚30nm、60nm、100nm、200nm、300nmの5種類作製した。比較例3のサンプルは、比較例2の導電層を形成しない形状となる。
【0073】
〈比較例4のサンプルの製造〉
比較例4のサンプルは、直径26mmの無アルカリガラスで形成された絶縁基板上に、透明電極層を形成せず、膜厚100nmの金属酸化物(ITO)で形成された導電層のみを積層した。導電層は、実施例1と同様にスパッタリング方法により、形成した。比較例4のサンプルは、比較例2の透明電極層を形成しない形状となる。
【0074】
<試験内容>
前述の手順により作製した実施例及び比較例の各サンプルについて、物理的耐久性試験、化学的耐久性試験、導電性試験、透明性試験を実施した。
【0075】
〈物理的耐久性試験〉
物理的耐久性試験は、φ6mmの消しゴムを1kgの荷重をかけた状態で各サンプルの透明電極層表面に配置し、往復摩擦試験機(製品名:TYPE30S、新東科学株式会社製)を用いて移動距離15mm、移動速度40往復/分で3000回往復運動させた。評価方法は、試験後、目視及び顕微鏡により電極外観の傷の有無を確認して評価した。評価基準は以下の通りである
〇:目視及び顕微鏡観察による傷無し
△:目視観察による傷無し、顕微鏡観察による傷有り
×:目視及び顕微鏡観察による傷有り。
【0076】
〈化学的耐久性試験〉
化学的耐久性試験は、:pH4.6に調整した溶液(緩衝液 pH4.6 (CKO-NaOH),東京化成工業株式会社製)に、浸漬した部分と浸漬していない部分ができるように透明電極を配置した状態で48時間放置し、試験前後での外観変化を観察した。評価基準は以下の通りである
〇:変化有り
×:変化なし。
【0077】
〈導電性試験〉
導電性試験は、表面抵抗計(製品名:ロレスタ-GX MCP-T700、日東精工アナリテック株式会社製)を用いて、サンプル中央部での4端子による表面抵抗(Ω/sq)を計測した。また、抵抗計(製品名:RM3548、日置電機株式会社製)により、サンプル中央部と集電部間(約15mm)での抵抗(Ω)を計測した。評価基準は以下の通りである
・表面抵抗
〇:200Ω/sq未満
×:200Ω/sq以上
・中央-集電部間抵抗
〇:220Ω未満
×:220Ω以上。
【0078】
〈透明性試験〉
透明性試験は、紫外可視分光光度計(製品名:UV-1900、株式会社島津製作所製)を用いて、波長530nm、660nm、940nmにおける各サンプルの透過率の平均値を算出した。評価基準は以下の通りである
〇:平均透過率80%以上
△:平均透過率70%以上80%未満
×:平均透過率70%未満。
【0079】
<結果>
図9には、実施例1~実施例3の各サンプルの仕様及び評価試験1の結果が示されている。図10には、実施例4~実施例6の各サンプルの仕様及び評価試験1の結果が示されている。図11には、比較例1~比較例4の各サンプルの仕様及び評価試験1の結果が示されている。
【0080】
図9又は図10の各表に示すように、実施例1の透明電極層の膜厚100nmのサンプル、実施例2の透明電極層の膜厚60nm及び100nmのサンプル、実施例3の透明電極層の膜厚100nmのサンプル、実施例4及び実施例5の透明電極層の膜厚30nm、60nm及び100nmのサンプルは、何れも物理的耐久性、化学的耐久性、導電性、透明性の評価が全て「〇」となり、製品として十分な品質が担保できることがわかった。また、実施例1~実施例6の結果から、「導電層の第2金属を第1金属で被覆することで、導電層(集電部)の露出した部分の化学的耐久性が得られること」、「透明電極層の膜厚を50nm以上200nm以下にすると透明性が確保できること」、「導電層に開口部を形成することで、導電層の膜厚に左右されず透明性を確保できること」、「集電部を耐久性の高い第1金属で形成し、導電層を被覆することで化学的耐久性が得られること」、「SnOを主成分とする透明電極層に所定の添加物を添加することで、膜中の結晶粒子が大きく成長せず、厚膜化しても物理的耐久性が低下しないこと」がわかった。
【0081】
一方、比較例1~比較例4は、図11の表に示すように、何れも化学的耐久性又は導電性の結果が芳しくなく、製品品質を満足できないことがわかった。また、比較例1~比較例4の結果から、「透明電極層を薄くすると、透明性は良化傾向だが、物理的耐久性及び導電性が低下すること」、「透明電極層を厚くすると、導電性は良化傾向だが、透明性が低下すること」、「第2金属で形成した導電層を集電部として利用した場合、耐久性の低い第2金属が露出しているため化学的耐久性が得られないこと」、「導電層の開口部段差により透明電極層の膜厚を60nm以下にすると導電層の被覆が不十分で物理的耐久性が得られないこと」、「透明電極層の膜厚が200nm以上の厚さになると透明性が低下すること」「導電層(金属酸化物)を集電部とした場合、金属酸化物が露出しているため化学的耐久性が得られないこと」、「透明電極層のみでは、耐久性は得られても導電性の確保が困難であること」、「導電層のみでは、化学的耐久性を確保することが困難であること」がわかった。
【0082】
[評価試験2]
以下に示す実施例及び比較例の各サンプルに対する性能試験を実施した。
【0083】
<サンプルの製造>
実施例A、実施例Bの透明電極層は、何れもスパッタリング法により形成した。
【0084】
比較例Cの透明電極層は、塗布熱分解法により形成した。
【0085】
各サンプルの表面粗さRa、最大高さ粗さRzは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(製品名:SPM-9700HT、株式会社島津製作所製)を用いて表面粗さを解析した。平均粒子径は、SEM装置(製品名:Dual Beam FIB Helios 5 UC、Thermo Scientific製)を用いて測定した。膜密度は、全自動試料水平型多目的X線回折装置(製品名:SmartLab、株式会社リガク製)を用いてX線反射率法(XRR)により測定した。
【0086】
<試験内容>
評価試験2は、評価試験1の物理的耐久性試験と同様、φ6mmの消しゴムを1kgの荷重をかけた状態で各サンプルの透明電極層表面に配置し、移動距離15mm、移動速度40往復/分で3000回往復運動させた。評価方法は、試験後、目視及び顕微鏡により電極外観の傷の有無を確認して評価した。評価基準は以下の通りである
〇:目視及び顕微鏡観察による傷無し
×:目視及び顕微鏡観察による傷有り。
【0087】
<結果>
図12には、評価試験2の結果が示されている。実施例A、実施例Bは、何れも良好な耐久性が得られることがわかった。これに対し、比較例Cは、耐久性の結果が芳しくなく、製品品質を満足できないことがわかった。このことから、透明電極の透明電極層は、耐久性の観点から、表面粗さRaは3.3nm以下、最大高さ粗さRzは33nm以下、膜密度は6.8g/cm-3以上に調整して作製することで、耐久性に優れた透明電極となることがわかった。
【符号の説明】
【0088】
1 透明電極、
10 絶縁基板、
20 透明電極層、
21 側面部、
30 導電層、
31 金属層、
31A 第1金属部、
31B 第2金属部、
32 金属酸化物層、
40 集電部、
100 測定装置として機能するウェアラブルデバイス、
110 デバイス本体部、
120 光学的測定部、
130 電気的測定部、
140 表示部、
150 制御部、
160 電源部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12