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特開2024-178545コア片、リアクトル、コンバータ、電力変換装置、およびコア片の製造方法
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  • 特開-コア片、リアクトル、コンバータ、電力変換装置、およびコア片の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178545
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】コア片、リアクトル、コンバータ、電力変換装置、およびコア片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20241218BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20241218BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20241218BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01F27/24 J
H01F27/24 K
H01F27/255
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F41/02 D
H01F27/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096752
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】高井 良典
(72)【発明者】
【氏名】村下 将也
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一郎
(57)【要約】
【課題】互いに異なる材質の第一部位と第二部位とが良好に接合されてなるコア片を提供する。
【解決手段】コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された複数の第二部位と、を備え、前記第一部位は、前記コイルの端面に面するように設けられた部分を有する第一ブロック部と、前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面の各縁部を局所的に低くした低段部と、を備え、前記複数の第二部位の各々は、前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、隣り合う前記第二部位の前記側面と向き合うように配置された第二ブロック部と、前記第二ブロック部を構成する端面の縁部に前記低段部に重なるように設けられた突部と、を備える、コア片。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、
軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、
樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された複数の第二部位と、を備え、
前記第一部位は、
前記コイルの端面に面するように設けられた部分を有する第一ブロック部と、
前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面の各縁部を局所的に低くした低段部と、を備え、
前記複数の第二部位の各々は、
前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、隣り合う前記第二部位の前記側面と向き合うように配置された第二ブロック部と、
前記第二ブロック部を構成する端面の縁部に前記低段部に重なるように設けられた突部と、を備える、
コア片。
【請求項2】
前記複数の第二部位は互いに独立して構成されており、
前記第一部位は、前記複数の第二部位の各々の前記突部に対応した前記低段部を備える、請求項1に記載のコア片。
【請求項3】
前記低段部と前記突部との接合箇所における前記第一部位の外面と前記複数の第二部位の各々の外面とが面一である、請求項1または請求項2に記載のコア片。
【請求項4】
前記複数の第二部位は、互いに異なる複合材料で構成された成形体を含む、請求項1または請求項2に記載のコア片。
【請求項5】
前記突部は、前記複数の第二部位の全てにつながった連結突部を含み、
前記連結突部は、前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面のうちの一面において、前記低段部および前記低段部以外の箇所の双方に連続して重なるように設けられている、請求項1に記載のコア片。
【請求項6】
第一コア片と第二コア片とを組み合わせた組物で構成される磁性コアと、
前記磁性コアの一部に配置されるコイルと、を備え、
前記第一コア片および前記第二コア片の少なくとも一つのコア片は、請求項1または請求項2に記載のコア片である、
リアクトル。
【請求項7】
請求項6に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項8】
請求項7に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【請求項9】
互いに連通する第一の空間および複数の第二の空間を有する金型を準備する工程と、
軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された部分コア片を前記第一の空間を含む空間に配置する工程と、
樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料を前記複数の第二の空間の各々に充填する工程と、を備え、
前記複数の第二の空間の各々は、前記第一の空間と交差する方向に延びると共に互いに並んで配置されており、
前記部分コア片は、
第一ブロック部と、
前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面の各縁部を局所的に低くした低段部と、を備え、
前記充填する工程では、前記低段部に重なるように前記複合材料を前記複数の第二の空間の各々に充填する、
コア片の製造方法。
【請求項10】
前記充填する工程では、前記複数の第二の空間の少なくとも二つに互いに異なる前記複合材料を充填する、請求項9に記載のコア片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コア片、リアクトル、コンバータ、電力変換装置、およびコア片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第一コア片と第二コア片とを組み合わせて構成されるコア片が開示されている。第一コア片は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されている。第二コア片は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成されている。コア片は、金型に第二コア片を配置し、その第二コア片の周囲に第一コア片を成形することで製造される。以下では、コア片のうち、上記圧粉成形体で構成された部位を第一部位、上記複合材料の成形体で構成された部位を第二部位と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-45166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
互いに異なる材質の第一部位と第二部位とを組み合わせて構成されるコア片では、第一部位と第二部位とが良好に接合されることが望まれる。例えば、互いに独立して構成される複数の第二部位がそれぞれ第一部位に接合される場合であっても、第一部位と各第二部位とが良好に接合されることが望まれる。
【0005】
本開示の目的の一つは、互いに異なる材質の第一部位と第二部位とが良好に接合されてなるコア片を提供することにある。本開示は、上記コア片を備えるリアクトルを提供することを別の目的の一つとする。本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータを提供することを別の目的の一つとする。本開示は、上記コンバータを備える電力変換装置を提供することを別の目的の一つとする。本開示は、互いに異なる材質の第一部位と第二部位とが良好に接合されてなるコア片の製造方法を提供することを別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコア片は、コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された複数の第二部位と、を備える。前記第一部位は、前記コイルの端面に面するように設けられた部分を有する第一ブロック部と、前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面の各縁部を局所的に低くした低段部と、を備える。前記複数の第二部位の各々は、前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、隣り合う前記第二部位の前記側面と向き合うように配置された第二ブロック部と、前記第二ブロック部を構成する端面の縁部に前記低段部に重なるように設けられた突部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコア片は、互いに異なる材質の第一部位と第二部位とが良好に接合されてなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のコア片を示す概略斜視図である。
図2図2は、実施形態1のコア片を分解した概略斜視図である。
図3図3は、実施形態1のコア片における第一部位を示す概略斜視図である。
図4図4は、実施形態1のコア片の製造方法を説明する概略構成図である。
図5図5は、実施形態1のリアクトルを示す概略斜視図である。
図6図6は、実施形態1のリアクトルの磁性コアにおける磁束の流れを示す概略図である。
図7図7は、実施形態2のコア片を示す概略斜視図である。
図8図8は、実施形態2のコア片を分解した概略斜視図である。
図9図9は、実施形態2のリアクトルを示す概略斜視図である。
図10図10は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
図11図11は、コンバータを備える電力変換装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係るコア片は、コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された複数の第二部位と、を備える。前記第一部位は、前記コイルの端面に面するように設けられた部分を有する第一ブロック部と、前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面の各縁部を局所的に低くした低段部と、を備える。前記複数の第二部位の各々は、前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、隣り合う前記第二部位の前記側面と向き合うように配置された第二ブロック部と、前記第二ブロック部を構成する端面の縁部に前記低段部に重なるように設けられた突部と、を備える。
【0011】
圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して成形体中の軟磁性粉末の含有量を多くできる。軟磁性粉末の含有量が多い圧粉成形体は、透磁率が高いものの、磁気飽和し易い。特に大電流の使用環境下において、圧粉成形体は磁気飽和し易く鉄損が増大し易い。複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して透磁率が低いものの、大電流の使用環境下で磁気飽和し難く低鉄損である。よって、圧粉成形体で構成された第一部位と複合材料の成形体で構成された第二部位とが組み合わされたコア片は、大電流であっても磁気特性に優れる。
【0012】
圧粉成形体で構成された第一部位と複合材料の成形体で構成された第二部位とは、主に互いに向かい合う端面同士で接合されている。第一部位と第二部位とは、上述した端面同士の接合箇所に加えて、第一部位に設けられた低段部と第二部位に設けられた突部とでも接合されている。低段部は第一部位の第一ブロック部における二面に設けられており、突部は各低段部に重なるように設けられている。この構成では、突部は低段部において第一部位を挟むことになる。上記コア片は、後述するように、部分コア片を配置した金型内に複合材料を充填することで製造される。部分コア片は第一部位となる。金型内に充填された複合材料は収縮しながら固化する。第一部位の低段部に重なるように固化した複合材料が突部となる。突部が低段部に重なるように設けられていることで、上記コア片は、互いに異なる材質であっても第一部位と第二部位とが良好に接合されてなる。
【0013】
(2)上記(1)に記載のコア片において、前記複数の第二部位は互いに独立して構成されており、前記第一部位は、前記複数の第二部位の各々の前記突部に対応した前記低段部を備えてもよい。
【0014】
複数の第二部位が互いに独立して構成されていたとしても、第一部位が各第二部位の突部に対応した低段部を備えることで、第一部位と第二部位とが良好に接合されてなる。
【0015】
(3)上記(1)または上記(2)に記載のコア片において、前記低段部と前記突部との接合箇所における前記第一部位の外面と前記複数の第二部位の各々の外面とが面一であってもよい。
【0016】
上記接合箇所における第一部位の外面と各第二部位の外面とが面一であれば、上記接合箇所がコア片に向き合う部材、例えばコイルに干渉し難い。
【0017】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかに記載のコア片において、前記複数の第二部位は、互いに異なる複合材料で構成された成形体を含んでもよい。
【0018】
複数の第二部位は、例えばコイルの内側面に面するように配置された部位とコイルの外側面に面するように配置された部位とを含む。コイルの内側面に面するように配置された部位は、コイル内に配置された部位である。コイルの外側面に面するように配置された部位は、コイル外に配置された部位である。コイル内に配置された部位とコイル外に配置された部位とが互いに異なる複合材料の成形体で構成されていると、コア片全体の磁気特性を調整し易い。
【0019】
(5)上記(1)に記載のコア片において、前記突部は、前記複数の第二部位の全てにつながった連結突部を含み、前記連結突部は、前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面のうちの一面において、前記低段部および前記低段部以外の箇所の双方に連続して重なるように設けられていてもよい。
【0020】
上記二面のうちの一面において、連結突部が低段部に加えて低段部以外の箇所にも重なるように設けられていると、第一部位と第二部位との接触面積を大きく確保でき、第一部位と第二部位とがより良好に接合され易い。連結突部が低段部以外の箇所にも重なるように設けられていると、第二部位の一部がコイルの端面に面するように配置される。第二部位の一部がコイルの端面に面するように配置されることで、大電流であっても磁気特性により優れる。
【0021】
(6)本開示の実施形態に係るリアクトルは、第一コア片と第二コア片とを組み合わせた組物で構成される磁性コアと、前記磁性コアの一部に配置されるコイルと、を備え、前記第一コア片および前記第二コア片の少なくとも一つのコア片は、上記(1)から上記(5)のいずれかに記載のコア片である。
【0022】
上記コア片を含む磁性コアを備えるリアクトルは、磁気特性に優れる。
【0023】
(7)本開示の実施形態に係るコンバータは、上記(6)に記載のリアクトルを備える。
【0024】
上記リアクトルを備えるコンバータは、磁気特性に優れる。
【0025】
(8)本開示の実施形態に係る電力変換装置は、上記(7)に記載のコンバータを備える。
【0026】
上記コンバータを備える電力変換装置は、磁気特性に優れる。
【0027】
(9)本開示の実施形態に係るコア片の製造方法は、互いに連通する第一の空間および複数の第二の空間を有する金型を準備する工程と、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された部分コア片を前記第一の空間を含む空間に配置する工程と、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料を前記複数の第二の空間の各々に充填する工程と、を備える。前記複数の第二の空間の各々は、前記第一の空間と交差する方向に延びると共に互いに並んで配置されている。前記部分コア片は、第一ブロック部と、前記第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面の各縁部を局所的に低くした低段部と、を備える。前記充填する工程では、前記低段部に重なるように前記複合材料を前記複数の第二の空間の各々に充填する。
【0028】
上記コア片の製造方法では、金型の第一の空間を含む空間に部分コア片を配置し、第二の空間に複合材料を充填すれば、複合材料が部分コア片の端面を覆うと共に低段部を覆う。金型内に充填された複合材料は収縮しながら固化する。部分コア片が第一部位となり、第二の空間に充填された複合材料が固化して第二部位となる。低段部に重なるように固化した複合材料が突部となる。低段部は部分コア片の第一ブロック部における二面に設けられており、突部は各低段部に重なるように形成される。この構成では、突部は低段部において部分コア片を挟むことになる。上記コア片の製造方法では、端面に加えて部分コア片の二面を挟むように複合材料が固化することで、互いに異なる材質の二つの部位が良好に接合されたコア片を製造することができる。
【0029】
(10)上記(9)に記載のコア片の製造方法において、前記充填する工程では、前記複数の第二の空間の少なくとも二つに互いに異なる前記複合材料を充填してもよい。
【0030】
複数の第二の空間の各々に充填される複合材料は、例えばコイルの内側面に面するように配置される部位とコイルの外側面に面するように配置される部位を構成する。コイルの内側面に面するように配置される部位は、コイル内に配置される部位である。コイルの外側面に面するように配置される部位は、コイル外に配置される部位である。コイル内に配置される部位とコイル外に配置される部位とを互いに異なる複合材料の成形体で構成すると、コア片全体の磁気特性を調整し易い。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
<実施形態1>
≪コア片≫
図1から図3を参照して、実施形態1のコア片1を説明する。コア片1は、後述するリアクトル7の構成要素である。コア片1は、図1に示すように、第一部位11と複数の第二部位12とが一体に成形された一体物である。実施形態1のコア片1の特徴の一つは、互いに異なる材質の第一部位11と複数の第二部位12とが良好に接合された構成を備える点にある。実施形態1のコア片1では、複数の第二部位12が互いに独立して構成されており、各第二部位12が第一部位11に接合されている。以下では、まずコア片1の全体形状を説明し、その後に第一部位11と各第二部位12の構成について説明する。
【0033】
〔コア片の全体形状〕
コア片1は、一つのミドルコア部21と二つのサイドコア部3,4と一つのエンドコア部5とを備える。コア片1は、ミドルコア部21と二つのサイドコア部3,4とエンドコア部5とで構成されたE字状の形状を有する。図1では、ミドルコア部21とエンドコア部5との境界に二点鎖線を付している。
【0034】
以下では、第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3を用いて説明することがある。第一方向D1は、ミドルコア部21において、ミドルコア部21の軸に沿ってエンドコア部5との接合面から離れる方向である。第二方向D2は、ミドルコア部2と二つのサイドコア部3,4との並びに沿ってサイドコア部3からサイドコア部4に向かう方向である。第三方向D3は、コア片1の下面から上面に向かう方向である。コア片1の下面は、図2および図3を参照して後述する第一部位11を構成する第一ブロック部110の第二面112を含む。コア片1の上面は、第一ブロック部110の第一面111を含む。第一方向D1と第二方向D2と第三方向D3とは互いに直交している。各図では、第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3の各々を片矢印で示している。以下では、第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3の各々の反対方向も同様に第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3と呼ぶことがある。
【0035】
ミドルコア部21は、後述するコイル9の巻回部90(図5図6)の内部に配置される部分を有する。ミドルコア部21は、エンドコア部5と交差する方向に延びる部分であり、巻回部90の外部に配置される部分を有してもよい。つまり、ミドルコア部21は、巻回部90の内部に配置される部分と巻回部90の外部に配置される部分とを有してもよい。ミドルコア部21の形状は、巻回部90の内周形状に概ね対応した形状である。本例のミドルコア部21は矩形のブロック体である。ミドルコア部21の角部は、巻回部90の角部に沿うように丸められている。
【0036】
二つのサイドコア部3,4は、後述するコイル9の巻回部90(図5図6)の外部でミドルコア部21と並んで配置される。二つのサイドコア部3,4は、ミドルコア部21との間に間隔を有しつつミドルコア部21を挟むように配置されている。各サイドコア部3,4の形状は、ミドルコア部21と並んで配置される形状であればよい。本例の各サイドコア部3,4は、矩形のブロック体である。本例では、二つのサイドコア部3,4の形状および寸法は同一である。本例の各サイドコア部3,4の第一方向D1に沿った長さは、ミドルコア部21の第一方向D1に沿った長さよりも長い。各サイドコア部3,4の第一方向D1に沿った長さは、ミドルコア部21の第一方向D1に沿った長さと同等以下であってもよい。本例の各サイドコア部3,4の第二方向D2に沿った長さは、ミドルコア部21の第二方向D2に沿った長さよりも短い。本例の各サイドコア部3,4の第二方向D2に沿った長さの合計は、ミドルコア部21の第二方向D2に沿った長さよりも短い。各サイドコア部3,4の第二方向D2に沿った長さの合計は、ミドルコア部21の第二方向D2に沿った長さと同等以上であってもよい。本例の各サイドコア部3,4の第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部21の第三方向D3に沿った長さと同じである。各サイドコア部3,4の第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部21の第三方向D3に沿った長さよりも短くてもよいし、長くてもよい。二つのサイドコア部3,4の形状および寸法は、異なっていてもよい。
【0037】
エンドコア部5は、後述するコイル9の巻回部90(図5図6)の外部でミドルコア部21と二つのサイドコア部3,4とをつなぐように配置される。エンドコア部5の形状は、ミドルコア部21と二つのサイドコア部3,4とをつなぐ形状であればよい。本例のエンドコア部5は、矩形のブロック体である。エンドコア部5の第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部21の第三方向D3に沿ったと同じである。エンドコア部5の第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部21の第三方向D3に沿った長さよりも短くてもよいし、長くてもよい。
【0038】
〔第一部位〕
第一部位11は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成されている。第一部位11は、図2および図3に示すように、第一ブロック部110と低段部115,116とを備える。
【0039】
〈材質〉
第一部位11を構成する圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形したものである。圧粉成形体は、後述する複合材料の成形体に比較して成形体中の軟磁性粉末の含有量を多くできる。軟磁性粉末の含有量が多い圧粉成形体は、透磁率が高い。圧粉成形体中の軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体を100体積%としたとき、例えば80体積%超、さらには85体積%以上である。上記原料粉末には、潤滑剤が含まれていてもよい。
【0040】
軟磁性粉末は、例えば、軟磁性金属の粒子、被覆粒子、または軟磁性非金属の粒子で構成される。被覆粒子は、軟磁性金属の粒子と、軟磁性金属の粒子の外周に設けられた絶縁被覆とを備える。軟磁性金属は、例えば、純鉄または鉄基合金である。鉄基合金は、例えば、Fe-Si合金またはFe-Ni合金である。絶縁被覆は、例えばリン酸塩である。軟磁性非金属は、例えばフェライトである。
【0041】
〈第一ブロック部〉
第一ブロック部110は、後述するコイル9の巻回部90の端面91(図6)に面するように設けられた部分を有するブロック体である。本例の第一ブロック部110は、ミドルコア部21の一部とエンドコア部5とを備える。本例の第一ブロック部110は、ミドルコア部21の一部とエンドコア部5とで構成されたT字状の形状を有する。
【0042】
第一ブロック部110を構成する複数の面は、図2および図3に示すように、第一面111と第二面112と端面113とを有する。第一面111と第二面112とは、第三方向D3に互いに向き合う面である。端面113は、図2に示す各第二部位12の端面123A,123B,123Cに面する。端面113は、端面123A,123B,123Cに接合された面である。
【0043】
〈低段部〉
第一面111は低段部115を備える。低段部115は、第一面111の縁部に設けられている。低段部115は、第一面111の縁部を局所的に低くした部分である。言い換えると、低段部115は、第一面111の縁部以外の箇所よりも低く段差をなす部分である。低段部115を有する第一部位11は、第一面111の縁部近傍の密度が他の箇所の密度と同等である。低段部115を有する第一部位11は、第一面111の縁部に割れが少ない。
【0044】
低段部115は、第一面111の全周に連続して設けられていてもよい。本例の低段部115は、エンドコア部5からミドルコア部21にわたる第一面111の縁部に設けられている。低段部115が第一面111の全周に連続して設けられていると、第二部位12の個数、つまり突部125の個数によらず、低段部115と突部125との接合が良好に確保される。低段部115が第一面111の全周に連続して設けられている場合、低段部115の一部が突部125に覆われている。低段部115が第一面111の全周に連続して設けられており、かつ後述するリアクトル7がモールド樹脂部10を備える場合、低段部115の残部の少なくとも一部がモールド樹脂部10に覆われてもよい。
【0045】
第一面111の縁部以外の箇所は平坦面である。この平坦面から低段部115につらなる面は傾斜面である。低段部115の底面は平坦面である。本例では、傾斜面の外方を囲むように枠状の平坦面を有する低段部115が設けられている。低段部115の底面を構成する平坦面の幅は非常に狭い。本例の第一面111では、エンドコア部5とミドルコア部21とが面一である。
【0046】
低段部115における第一面111の縁部以外の箇所に対する段差は、例えば1mm以上10mm以下である。上記段差は低段部115の深さである。低段部115の上記段差が1mm以上であれば、後述する第二部位12の突部125との接合が良好に確保され易い。低段部115の上記段差が10mm以下であれば、相対的に端面113が良好に確保され易い。低段部115における上記段差は、1mm以上7mm以下、1mm以上4mm以下、または1mm以上3mm以下であってもよい。
【0047】
第二面112は、図3に示すように、低段部116を備える。低段部116は、第二面112の縁部に設けられている。低段部116は、第二面112の縁部を局所的に低くした部分である。言い換えると、低段部116は、第二面112の縁部以外の箇所よりも低く段差をなす部分である。低段部116を有する第一部位11は、第二面112の縁部近傍の密度が他の箇所の密度と同等である。低段部116を有する第一部位11は、第二面112の縁部に割れが少ない。
【0048】
低段部116は、第二面112の全周に連続して設けられていてもよい。本例の低段部116は、図1に示すエンドコア部5からミドルコア部21にわたる第二面112の縁部に設けられている。低段部116が第二面112の全周に連続して設けられていると、図2に示す第二部位12の個数、つまり突部126の個数によらず、低段部116と突部126との接合が良好に確保される。低段部116が第二面112の全周に連続して設けられている場合、低段部116の一部が突部126に覆われている。低段部116が第二面112の全周に連続して設けられており、かつ後述するリアクトル7がモールド樹脂部10を備える場合、低段部116の残部の少なくとも一部が図5に示すモールド樹脂部10に覆われてもよい。
【0049】
第二面112の縁部以外の箇所は平坦面である。この平坦面から低段部116につらなる面は傾斜面である。低段部116の底面は平坦面である。本例では、傾斜面の外方を囲むように枠状の平坦面を有する低段部116が設けられている。低段部116の底面を構成する平坦面の幅は非常に狭い。本例の第二面112では、エンドコア部5とミドルコア部21とが面一である。
【0050】
低段部116における第二面112の縁部以外の箇所に対する段差は、例えば1mm以上10mm以下である。上記段差は低段部116の深さである。低段部116の上記段差が1mm以上であれば、後述する第二部位12の突部126との接合が良好に確保され易い。低段部116の上記段差が10mm以下であれば、相対的に端面113が良好に確保され易い。低段部116における上記段差は、1mm以上7mm以下、1mm以上4mm以下、または1mm以上3mm以下であってもよい。
【0051】
〔第二部位〕
複数の第二部位12の各々は、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成されている。本例のコア片1は、図2に示すように、三つの第二部位12A,12B,12Cを備える。第二部位12Aは、第二ブロック部120Aと突部125,126とを備える。第二部位12Bは、第二ブロック部120Bと突部125,126とを備える。第二部位12Cは、第二ブロック部120Cと突部125,126とを備える。第二部位12A,12B,12Cの材質は同じである。以下では、第二部位12A,12B,12Cで同じ構成を有するものは区別せずに第二部位12と呼ぶ。
【0052】
〈材質〉
第二部位12を構成する複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで製造される。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性、例えば透磁率または飽和磁束密度を制御し易い、特に、複合材料は、軟磁性粉末の含有量を少なく調整し易く、透磁率を低くし易い。複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して透磁率が低いものの、大電流の使用環境下で磁気飽和し難く低鉄損である。複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して、複雑な形状でも成形し易い。
【0053】
複合材料の成形体を構成する軟磁性粉末は、上述した圧粉成形体を構成する軟磁性粉末と同じである。複合材料の成形体中の軟磁性粉末の含有量は、複合材料を100体積%とすると、例えば20体積%以上80体積%以下である。
【0054】
複合材料の成形体を構成する樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、またはウレタン樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、またはフッ素樹脂である。ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロン6、ナイロン66、またはナイロン9Tである。複合材料の成形体中の樹脂の含有量は、複合材料を100体積%とすると、例えば20体積%以上80体積%以下である。
【0055】
複合材料は、樹脂に加えて、フィラーを含有していてもよい。フィラーは、放熱性の向上に寄与する。フィラーは、例えば、セラミックスまたはカーボンナノチューブといった非磁性材料からなる粉末を利用できる。セラミックスは、例えば、金属または非金属の酸化物、窒化物、炭化物である。酸化物の一例は、アルミナ、シリカ、または酸化マグネシウムである。窒化物の一例は、窒化珪素、窒化アルミニウム、または窒化ホウ素である。炭化物の一例は、炭化珪素である。
【0056】
〈第二ブロック部〉
各第二ブロック部120A,120B,120Cは、巻回部90の内側面92または外側面93(図6)のいずれかの面に面する側面を有する。各第二ブロック部120A,120B,120Cは、図2に示すように、隣り合う第二ブロック部120A,120B,120Cの側面と向き合うように配置されている。各第二ブロック部120A,120B,120Cは、複数の側面を有する。各第二ブロック部120A,120B,120Cにおいて、複数の側面のいずれかの側面が隣り合う第二ブロック部120A,120B,120Cの側面に向き合っていればよい。巻回部90の内部に配置される第二ブロック部120Aは、巻回部90の内側面92に面する側面を有する。巻回部90の外部に配置される第二ブロック部120B,120Cは、巻回部90の外側面93に面する側面を有する。
【0057】
各第二ブロック部120A,120B,120Cは、第一ブロック部110のエンドコア部5(図1)と交差する方向に延びている。本例の各第二ブロック部120A,120B,120Cは、第一方向D1に延びている。
【0058】
第二ブロック部120Aは、後述するコイル9の巻回部90の内側面92(図6)に面するように配置されたブロック体である。本例の第二ブロック部120Aは、ミドルコア部21の一部を備える。本例の第二ブロック部120Aは、ミドルコア部21の一部で構成されたI字状の形状を有する。上述した第一ブロック部110の一部と第二ブロック部120Aの全部とでミドルコア部21が構成される。
【0059】
第二ブロック部120Aを構成する複数の面は、図2に示すように、第一ブロック部110に面する端面123Aを有する。端面123Aは、第一ブロック部110の端面113に接合された面である。
【0060】
第二ブロック部120Bは、巻回部90の外側面93(図6)に面するように配置されたブロック体である。第二ブロック部120Bは、サイドコア部3を備える。第二ブロック部120Bは、サイドコア部3で構成されたI字状の形状を有する。第二ブロック部120B構成する複数の面も、第二ブロック部120Aと同様に、第一ブロック部110に面する端面123Bを有する。
【0061】
第二ブロック部120Cは、巻回部90の外側面93(図6)に面するように配置されたブロック体である。第二ブロック部120Cは、サイドコア部4を備える。第二ブロック部120Cは、サイドコア部4で構成されたI字状の形状を有する。第二ブロック部120C構成する複数の面も、第二ブロック部120Aと同様に、第一ブロック部110に面する端面123Cを有する。
【0062】
〈突部〉
端面123A,123B,123Cは突部125,126を備える。突部125,126は、端面123A,123B,123Cの各縁部に設けられている。突部125,126は、上記各縁部における第三方向D3に互いに向き合う位置に設けられている。突部125,126は、端面123A,123B,123Cから第一部位11の端面113に向かって突出している。突部125,126は、第一方向D1に突出している。
【0063】
突部125は、第一部位11に設けられた低段部115に重なるように設けられている。突部125は、低段部115に対応して設けられている。本例の突部125は、端面123A,123B,123Cを構成する一辺の全長に連続して設けられている。本例の突部125は、上記一辺に沿って延びる帯状片である。本例の突部125は、第二方向D2に沿って延びる帯状片である。突部125の突出長さは、低段部115の幅に対応している。低段部115の幅は、低段部115における第一方向D1に沿った長さである。本例の突部125は、低段部115を埋めるように設けられている。突部125が低段部115を埋めるように設けられていると、低段部115と突部125との接合箇所における第一部位11の外面と第二部位12の外面とが面一である。
【0064】
端面123Aに設けられた突部125は、突部125の両端部から部分的に第一部位11の端面113に向かって突出した延設部127をさらに備える。この延設部127は、第一方向D1に沿って延びる突片である。この延設部127も、低段部115を埋めるように設けられている。
【0065】
端面123Bに設けられた突部125は、突部125の各端部から部分的に互いに異なる方向に向かって突出した延設部127をさらに備える。突部125の第一端部に設けられた延設部127は、第一部位11の端面113に向かって突出している。突部125の第一端部に設けられた延設部127は、第一方向D1に沿って延びる突片である。突部125の第二端部に設けられた延設部127は、突部125の長さに沿ってさらに突出している。突部125の第二端部に設けられた延設部127は、第二方向D2に沿って延びる突片である。突部125の第一端部は、第二端部よりもミドルコア部21の遠位に位置する。突部125の第二端部は、第一端部よりもミドルコア部21の近位に位置する。いずれの延設部127も、低段部115を埋めるように設けられている。
【0066】
端面123Cに設けられた突部125も、端面123Bに設けられた突部125と同様に、突部125の各端部から部分的に互いに異なる方向に向かって突出した延設部127をさらに備える。端面123Cに設けられた突部125は、端面123Bに設けられた突部125と第二方向D2に対称的に設けられている。
【0067】
突部126は、第一部位11に設けられた低段部116に重なるように設けられている。突部126は、低段部116に対応して設けられている。本例の突部126は、端面123A,123B,123Cを構成する一辺の全長に連続して設けられている。本例の突部126は、上記一辺に沿って延びる帯状片である。本例の突部126は、第二方向D2に沿って延びる帯状片である。突部126の突出長さは、低段部116の幅に対応している。低段部116の幅は、低段部116における第一方向D1に沿った長さである。本例の突部126は、低段部116を埋めるように設けられている。突部126が低段部116を埋めるように設けられていると、低段部116と突部126との接合箇所における第一部位11の外面と第二部位12の外面とが面一である。突部126も、突部125と同様に、第一方向D1または第二方向D2に沿って延びる突片で構成された延設部127を備える。
【0068】
第一部位11と第二部位12Aとは、互いに向かい合う端面113,123A同士、および低段部115,116と突部125,126とで接合されている。第一部位11と第二部位12Bとは、互いに向かい合う端面113,123B同士、および低段部115,116と突部125,126とで接合されている。第一部位11と第二部位12Cとは、互いに向かい合う端面113,123C同士、および低段部115,116と突部125,126とで接合されている。低段部115が第一面111に設けられ、低段部116が第二面112に設けられており、突部125,126が低段部115,116に重なるように設けられている。そのため、突部125,126は低段部115,116において第一部位11を挟むことになる。
【0069】
複数の第二部位12は、互いに異なる複合材料で構成された成形体を含んでもよい。例えば、第二部位12Aと第二部位12Bとが互いに異なる複合材料の成形体で構成されていてもよい。このとき、第二部位12Bと第二部位12Cとが同じ複合材料の成形体で構成されていてもよい。第二部位12Bと第二部位12Cと同じ複合材料の成形体で構成されていると、後述するコイル9の巻回部90(図5)内に配置された部位と巻回部90外に配置された部位とが互いに異なる複合材料の成形体で構成されることになる。第二部位12Aと第二部位12Bと第二部位12Cとが互いに異なる複合材料の成形体で構成されていてもよい。互いに異なる複合材料とは、複合材料の構成材料の種類および含有量の少なくとも一部が異なることである。複合材料の構成材料の種類が異なるとは、軟磁性粉末の種類が異なること、および樹脂の種類が異なることを含む。軟磁性粉末の種類が異なるとは、例えば軟磁性粉末の組成が異なることである。複合材料の構成材料の含有量が異なるとは、樹脂中の軟磁性粉末の含有量が異なることである。
【0070】
≪コア片の製造方法≫
図4を参照して、実施形態1のコア片1の製造方法を説明する。コア片1の製造方法は、金型を準備する第一工程、金型に部分コア片を配置する第二工程、および金型内に複合材料を充填する第三工程を備える。第一工程、第二工程、および第三工程は順に行われる。
【0071】
〔第一工程〕
第一工程では、互いに連通する第一の空間310および複数の第二の空間321,322,323を有する金型300を準備する。第一の空間310は、後述する部分コア片370が配置される空間である。図4では、第一の空間310に部分コア片370が配置されている。第一の空間310は、第二方向D2に沿って配置された空間である。本例の第一の空間310には、部分コア片370におけるエンドコア部5(図1)に相当する部分が配置される。第一の空間310は、部分コア片370におけるエンドコア部5がぴったりと嵌まる大きさを有する。
【0072】
各第二の空間321,322,323は、第一の空間310と交差する方向に延びると共に互いに並んで配置されている。各第二の空間321,322,323は、第一方向D1に沿って配置された空間である。本例では、三つの第二の空間321,322,323のうち真ん中に位置する第二の空間321の第一方向D1に沿った長さが、両側の第二の空間322,323よりも短い。本例では、両側の第二の空間322,323の第一方向D1に沿った長さは同じである。本例では、第二の空間321の一部には、部分コア片370におけるミドルコア部21(図1)に相当する部分が配置される。第二の空間321の残部は、上述した第二ブロック部120Aに対応した大きさを有する。第二ブロック部120Aは、上述したミドルコア部21に対応している。第二の空間322は、上述した第二ブロック部120Bに対応した大きさを有する。第二ブロック部120Bは、上述したサイドコア部3に対応している。第二の空間323は、上述した第二ブロック部120Cに対応した大きさを有する。第二ブロック部120Cは、上述したサイドコア部4に対応している。
【0073】
〔第二工程〕
第二工程では、部分コア片370を第一の空間310に配置する。部分コア片370は、上述した第一部位11であり、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成されている。
【0074】
部分コア片370は、第一ブロック部と低段部375とを備える。第一ブロック部は、上述した第一部位11の第一ブロック部110であり、ミドルコア部2の一部とエンドコア部5とに対応している。低段部375は、第一ブロック部を構成する複数の面のうち互いに向き合う二面の各縁部に設けられている。低段部375は、上記二面の各面の縁部を局所的に低くした部分である。部分コア片370は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形することで製造される。原料粉末の加圧方向は、得られる部分コア片370の上記二面が互いに向き合う方向である。この加圧成形の際に、上記二面の各面の縁部に低段部375が形成される。上記二面は、上述した第一部位11の第一面111および第二面112に相当する。
【0075】
〔第三工程〕
第三工程では、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料を複数の第二の空間321,322,323の各々に充填する。複合材料は、スプルー330、ランナー340、およびゲート350を通って各第二の空間321,322,323に充填される。本例では、三つの第二の空間321,322,323に対応して三つのランナー340およびゲート350が設けられている。
【0076】
第三工程では、部分コア片370の低段部375に重なるように複合材料を各第二の空間321,322,323に充填する。各第二の空間321,322,323に充填された複合材料は、部分コア片370の端面を覆うと共に低段部375を覆う。各第二の空間321,322,323に充填された複合材料は、収縮しながら固化する。部分コア片370が第一部位11となり、各第二の空間321,322,323に充填された複合材料が固化して第二部位12となる。低段部375に重なるように固化した複合材料が突部125,126(図2)となる。本例では、低段部375に重なるように固化した複合材料で延設部127(図2)も構成される。低段部375は部分コア片370の第一ブロック部における二面に設けられているため、低段部375に重なるように固化して形成された突部125,126は低段部375において部分コア片370を挟むことになる。
【0077】
第三工程では、複数の第二の空間321,322,323の少なくとも二つに互いに異なる複合材料を充填することができる。例えば、第二の空間322と第二の空間323とに同じ複合材料を充填し、かつ第二の空間321に第二の空間322,323と異なる複合材料を充填してもよい。第二の空間321,322,323に互いに異なる複合材料を充填してもよい。本例では、第二の空間321,322,323ごとにゲート350が設けられているため、第二の空間321,322,323に互いに異なる複合材料を充填することができる。
【0078】
上述したコア片の製造方法で得られたコア片1では、各第二部位12A,12B,12Cにゲート痕が構成される。つまり、上記コア片1は、三つのゲート痕を有する。
【0079】
≪リアクトル≫
図5および図6を参照して、実施形態1のリアクトル7を説明する。リアクトル7は、磁性コア8とコイル9とを備える。磁性コア8は、第一コア片81と第二コア片82とを組み合わせた組物で構成されている。コイル9は、磁性コア8の一部に配置されている。実施形態1のリアクトル7の特徴の一つは、第一コア片81および第二コア片82の少なくとも一つのコア片が上述したコア片1である点にある。本例では、第一コア片81が上述したコア片1である。
【0080】
〔磁性コア〕
磁性コア8は、コイル9の励磁により、環状の磁路を形成するための磁性部材である。本例の磁性コア8は、第一コア片81と第二コア片82の組み合わせにより、全体としてθ状に構成されている。以下では、まず磁性コア8の全体形状を説明し、その後に第一コア片81と第二コア片82との組み合わせを説明する。
【0081】
〈磁性コアの全体形状〉
磁性コア8は、ミドルコア部2と二つのサイドコア部3,4と二つのエンドコア部5,6とを備える。図6では、ミドルコア部2と各エンドコア部5,6との境界に二点鎖線を付している。図6では、磁性コア8のうち、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された部位にクロスハッチングを付している。
【0082】
ミドルコア部2は、後述するコイル9の巻回部90(図5図6)の内部に配置される部分を有する。本例のミドルコア部2は、第一コア片81のミドルコア部21と第二コア片82のミドルコア部22とギャップとで構成されている。第二コア片82のミドルコア部22は、第一コア片81のミドルコア部21と同様の断面積を有する。ミドルコア部21およびミドルコア部22の第二方向D2に沿った各長さは同じである。ミドルコア部21およびミドルコア部22の第三方向D3に沿った各長さは同じである。ギャップは、第一コア片81のミドルコア部21と第二コア片82のミドルコア部22との間に設けられている。ギャップを設けると、リアクトル7のインダクタンスを調整し易い。ギャップには、例えば、図示しないギャップ材が配置される。ギャップ材には、公知のものが利用できる。ギャップ材の構成材料は、例えば非磁性のセラミックスまたは樹脂である。ギャップは、ギャップ材が配置されないエアギャップであってもよい。リアクトル7が後述するモールド樹脂部10を備える場合、ギャップには、モールド樹脂部10を構成する樹脂が充填されてもよい。この場合、モールド樹脂部10を構成する樹脂がギャップ材となる。
【0083】
ミドルコア部2における第一方向D1に沿った長さは、後述するコイル9の巻回部90(図5図6)における第一方向D1に沿った長さと同等以上である。本例では、ミドルコア部2における第一方向D1に沿った長さは、巻回部90における第一方向D1に沿った長さよりも若干長い。つまり、ミドルコア部2は、巻回部90の内部に配置される部分と、巻回部90の外部に配置される部分とを備える。ミドルコア部2の両端部が、巻回部90の外部に位置する。
【0084】
二つのサイドコア部3,4は、第一コア片81、つまり上述したコア片1のサイドコア部3,4である。
【0085】
二つのエンドコア部5,6のうち一つのエンドコア部5は、第一コア片81、つまり上述したコア片1のエンドコア部5である。二つのエンドコア部5,6のうち一つのエンドコア部6は、第二コア片82のエンドコア部6である。第二コア片82のエンドコア部6は、コア片1のエンドコア部5と同様の形状および大きさを有する。
【0086】
磁性コア8は、ミドルコア部2と二つのサイドコア部3,4と二つのエンドコア部5,6とが接続されることで、後述するコイル9を励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。磁束は、図7の破線の矢印で示すように、ミドルコア部2からエンドコア部5に流れ、エンドコア部5から二つのサイドコア部3,4の各々に流れ、各サイドコア部3,4からエンドコア部6に流れ、エンドコア部6からミドルコア部2に流れる。
【0087】
〈組み合わせ〉
第一コア片81と第二コア片82は、磁性コア8が第一方向D1に離れるように分割される分割片である。本例では、第一コア片81はE字状の形状を有し、第二コア片82はT字状の形状を有する。E字状の第一コア片81とT字状の第二コア片82とが組み合わされることで、磁性コア8はθ状の形状を有する。
【0088】
本例の第一コア片81は、上述したコア片1であり、第一部位11と第二部位12を備える。
【0089】
本例の第二コア片82は、圧粉成形体で構成されている。つまり、本例の第二コア片82は、第一部位11のみを備える。第二コア片82は、第一部位11で構成されていてもよいし、第一部位11と第二部位12との複合体で構成されていてもよい。第二コア片82が第一部位11と第二部位12との複合体で構成されている場合、第一部位11がエンドコア部5を備え、第二部位12がミドルコア部22を備える。第一部位11と第二部位12とは、上述したコア片1と同様に、端面113,123A,123B,123C同士で接合されると共に、低段部115,116と突部125,126とで接合されているとよい。
【0090】
第二コア片82の形状は特に限定されない。第二コア片82の形状は、例えばE字状であってもよい。E字状の第二コア片82は、ミドルコア部と二つのサイドコア部とエンドコア部とを備える。この場合、第一コア片81のミドルコア部および二つのサイドコア部における第一方向D1に沿った各長さ、および第二コア片82のミドルコア部および二つのサイドコア部における第一方向D1に沿った各長さを適宜調整すればよい。
【0091】
〔コイル〕
コイル9は、少なくとも一つの巻回部90を備える。本例のコイル9は、一つの巻回部90を備える。巻回部90は、1本の巻線を螺旋状に巻回して構成される。巻線の両端部は、巻回部90の各端部から引き出される。巻回部90から引き出された巻線の両端部には、図示しない端子金具が取り付けられる。端子金具には、図示しない外部装置が接続される。図5および図6では、巻回部90のみを示し、巻線の端部は省略している。
【0092】
巻線は、公知の巻線を利用できる。本例の巻線は、絶縁被覆を有する導体線からなる被覆平角線である。導体線は、例えば銅製の平角線で構成されている。絶縁被覆は、例えばエナメルからなる。本例の巻回部90は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルである。
【0093】
巻回部90の形状は角筒形状である。すなわち、本例の巻回部90の端面91の形状は矩形枠状である。巻回部90は内側面92と外側面93とを備える。内側面92はミドルコア部2に面する。内側面92とミドルコア部2の外周面との間には隙間が存在する。リアクトル7が後述するモールド樹脂部10を備える場合、この隙間には、モールド樹脂部10を構成する樹脂が充填される。外側面93はサイドコア部3,4に面する。端面91はエンドコア部5,6に面する。本例の巻回部90の角部は丸められている。巻回部90の形状が角筒形状であると、巻回部が同じ断面積の円筒状である場合に比較して、巻回部90と設置対象との接触面積が大きくなり易い。巻回部90と設置対象との接触面積が大きいと、リアクトル7の放熱性が向上する。巻回部90と設置対象との接触面積が大きいと、設置対象に対する巻回部90の設置状態が安定し易い。
【0094】
〔モールド樹脂部〕
リアクトル7は、図5に示すように、モールド樹脂部10を備えてもよい。図5では、分かり易いように、モールド樹脂部10の外観を二点鎖線で示している。モールド樹脂部10は、磁性コア8の少なくとも一部を覆う。モールド樹脂部10は、磁性コア8を外部環境から保護する機能を有する。モールド樹脂部10は、さらにコイル9を覆っていてもよい。つまり、モールド樹脂部10は、磁性コア8とコイル9との組物の少なくとも一部を覆うように設けられる。モールド樹脂部10によって、磁性コア8とコイル9とが一体化されて構成される。磁性コア8の外周面の一部、またはコイル9の外周面の少なくとも一部がモールド樹脂部10から露出していてもよい。
【0095】
モールド樹脂部10が磁性コア8とコイル9との間に設けられていれば、磁性コア8とコイル9との絶縁が確保され易い。モールド樹脂部10が第一コア片81のミドルコア部21と第二コア片82のミドルコア部22との間に設けられていれば、その間に設けられたモールド樹脂部10が磁性コア8のギャップ材として機能する。
【0096】
モールド樹脂部10を構成する樹脂は、例えば、上述した複合材料の樹脂と同様の樹脂である。モールド樹脂部10の構成材料は、複合材料と同様に、上述したフィラーを含有していてもよい。
【0097】
〔その他〕
リアクトル7は、図示していないものの、保持部材を備えてもよい。保持部材は、磁性コア8とコイル9との間に配置され、磁性コア8とコイル9との間の電気的絶縁を確保する機能を有する。保持部材は、磁性コア8とコイル9との相互の位置を規定して、位置決め状態を保持する機能を有する。保持部材は、例えば巻回部90の端面91とエンドコア部5,6との間に配置される。巻回部90の端面91とエンドコア部5,6との間に配置される保持部材は、例えば枠状の部材である。保持部材は、例えば巻回部90の内周面とミドルコア部2の外周面との間に配置される。巻回部90の内周面とミドルコア部2の外周面との間に配置される保持部材は、例えば筒状の部材である。巻回部90の内周面とミドルコア部2の外周面との間に配置される保持部材は、例えば、巻回部90とミドルコア部2との間にモールド樹脂部10の未固化の構成樹脂が流れることができるような構造となっている。
【0098】
<実施形態2>
≪コア片≫
図7および図8を参照して、実施形態2のコア片1を説明する。実施形態2のコア片1も、実施形態1のコア片1と同様に、第一部位11と複数の第二部位12とが一体に成形された一体物であり、互いに異なる材質の第一部位11と複数の第二部位12とが良好に接合されてなる。実施形態2のコア片1の特徴の一つは、各第二部位12に設けられた突部125が連結突部128で構成されている点にある。実施形態2のコア片1の全体形状は、実施形態1のコア片1と同様である。以下では、実施形態1のコア片1との相違点を中心に説明する。
【0099】
〔第一部位〕
第一部位11の第一ブロック部110は、コイル9の巻回部90の端面91(図6)に面するように配置された部分を有するブロック体である。本例の第一ブロック部110は、エンドコア部5の一部を備える。第一ブロック部110は、エンドコア部5の一部で構成されたI字状の形状を有する。本例の第一ブロック部110の第三方向D3に沿った長さは、エンドコア部5の第三方向D3に沿った長さよりも短い。つまり、本例の第一部位11は、エンドコア部5の第三方向D3に偏って配置されている。
【0100】
第一ブロック部110の第一面111は低段部115を備える。低段部115は、第一面111の縁部に設けられている。低段部115は、第一面111の縁部を局所的に低くした部分である。本例の低段部115は、第一面111の全周に連続して設けられている。
【0101】
図示しないものの、第一ブロック部110の第二面は低段部を備える。第一ブロック部110の第二面は、図8に示す第一面111と向き合う面である。低段部は第二面の縁部に設けられている。低段部は、第二面の縁部を局所的に低くした部分である。本例の低段部は、図8に示す低段部115と同様に、第二面の全周に連続して設けられている。
【0102】
〔第二部位〕
実施形態2のコア片1は、実施形態1のコア片1と同様に、三つの第二部位12A,12B,12Cを備える。
【0103】
第二部位12Aの第二ブロック部120Aは、ミドルコア部21を備える。第二ブロック部120Aは、ミドルコア部21で構成されたI字状の形状を有する。第二ブロック部120Aを構成する複数の面は、第一部位11に面する端面123Aを有する。
【0104】
第二部位12Bの第二ブロック部120Bは、サイドコア部3を備える。第二ブロック部120Bは、サイドコア部3で構成されたI字状の形状を有する。第二ブロック部120B構成する複数の面も、第二ブロック部120Aと同様に、第一部位11に面する端面123Bを有する。
【0105】
第二部位12Cの第二ブロック部120Cは、サイドコア部4を備える。第二ブロック部120Cは、サイドコア部4で構成されたI字状の形状を有する。第二ブロック部120C構成する複数の面も、第二ブロック部120Aと同様に、第一部位11に面する端面123Cを有する。
【0106】
第二ブロック部120A,120B,120Cは、後述するコイル9の巻回部90の内側面92(図6)に面するように配置されたブロック体である。
【0107】
端面123A,123B,123Cは突部125,126を備える。突部125,126は、端面123A,123B,123Cの各縁部に設けられている。突部125,126は、上記各縁部における第三方向D3に互いに向き合う位置に設けられている。突部125,126は、端面123A,123B,123Cから第一部位11の端面113に向かって突出している。突部125,126は、第一方向D1に突出している。
【0108】
本例の突部125は、第二部位12A,12B,12Cの全てにつながった連結突部128である。連結突部128は、第一ブロック部110の第一面111において、低段部115および低段部115以外の箇所の双方に連続して重なるように設けられている。連結突部128は、エンドコア部5の一部を構成している。上述した第一ブロック部110の一部と連結突部128とでエンドコア部5が構成される。言い換えると、第一部位11と第二部位12の一部とでエンドコア部5が構成される。図7では、ミドルコア部21とエンドコア部5との境界、およびサイドコア部3,4とエンドコア部5との境界に二点鎖線を付している。連結突部128の第二方向D2の両端部には、第一方向D1に沿って延びる突片で構成された延設部127が設けられている。
【0109】
突部126は、各第二部位12A,12B,12Cに設けられている。突部126は、低段部116を埋めるように設けられている。突部126は、実施形態1で説明した突部126と同様の構成を有する。
【0110】
実施形態2のリアクトル7は、図9に示すように、上述した実施形態2のコア片1で構成された第一コア片81を備える。第二コア片82の構成およびコイル9の構成は実施形態1と同様である。本例では、第二部位12の一部がコイル9の端面91に面するように配置される。第二部位12の一部がコイル9の端面91に面するように配置されることで、大電流であっても磁気特性により優れる。
【0111】
<変形例>
図示しないものの、コイルは二つの巻回部を備えていてもよい。この場合、磁性コアは、二つの内側コア部と二つの外側コア部とを備える。二つの内側コア部は、巻回部の内側面に面するように設けられる。二つの外側コア部は、二つの内側コア部の端面同士をつなぐように設けられる。二つの外側コア部は、各巻回部の端面に面するように設けられた部分を有する。磁性コアを構成するコア片は、例えばU字状のブロック体で構成される。U字状のコア片は、第一部位と第二部位とが接合されて構成される。例えば、第一部位は、一つの外側コア部と二つの内側コア部の各々の一部とで構成される。第二部位は、二つの内側コア部の残部で構成される。第一部位は低段部を備え、第二部位は突部を備える。
【0112】
<実施形態3>
≪コンバータ・電力変換装置≫
上述した実施形態1または実施形態2のリアクトル7は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度である。実施形態1または実施形態2のリアクトル7は、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品、またはこのコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用される。
【0113】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、図10に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。図10では、車両1200の充電箇所はインレットであるが、プラグを備える形態でもよい。
【0114】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0115】
コンバータ1110は、図11に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態1または実施形態2のリアクトル7を備える。
【0116】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態1または実施形態2のリアクトル7と同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態1または実施形態2のリアクトル7を利用することもできる。
【符号の説明】
【0117】
1 コア片
11 第一部位
110 第一ブロック部
111 第一面
112 第二面
113 端面
115,116 低段部
12,12A,12B,12C 第二部位
120A,120B,120C 第二ブロック部
123A,123B,123C 端面
125,126 突部
127 延設部
128 連結突部
2,21,22 ミドルコア部
3,4 サイドコア部
5,6 エンドコア部
7 リアクトル
8 磁性コア
81 第一コア片
82 第二コア片
9 コイル
90 巻回部
91 端面
92 内側面
93 外側面
10 モールド樹脂部
300 金型
310 第一の空間
321,322,323 第二の空間
330 スプルー
340 ランナー
350 ゲート
370 部分コア片
375 低段部
D1 第一方向、D2 第二方向、D3 第三方向
1100 電力変換装置、1110 コンバータ、1111 スイッチング素子
1112 駆動回路、1115 リアクトル、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両、1210 メインバッテリ、1220 モータ
1230 サブバッテリ、1240 補機類、1250 車輪、1300 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
〈材質〉
第二部位12を構成する複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで製造される。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性、例えば透磁率または飽和磁束密度を制御し易い特に、複合材料は、軟磁性粉末の含有量を少なく調整し易く、透磁率を低くし易い。複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して透磁率が低いものの、大電流の使用環境下で磁気飽和し難く低鉄損である。複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して、複雑な形状でも成形し易い。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
第二ブロック部120Cは、巻回部90の外側面93(図6)に面するように配置されたブロック体である。第二ブロック部120Cは、サイドコア部4を備える。第二ブロック部120Cは、サイドコア部4で構成されたI字状の形状を有する。第二ブロック部120C構成する複数の面も、第二ブロック部120Aと同様に、第一ブロック部110に面する端面123Cを有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
第二部位12Cの第二ブロック部120Cは、サイドコア部4を備える。第二ブロック部120Cは、サイドコア部4で構成されたI字状の形状を有する。第二ブロック部120C構成する複数の面も、第二ブロック部120Aと同様に、第一部位11に面する端面123Cを有する。