(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178546
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】コア片、リアクトル、コンバータ、および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20241218BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20241218BHJP
H01F 3/08 20060101ALI20241218BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20241218BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01F27/24 J
H01F37/00 M
H01F3/08
H01F27/24 K
H01F27/255
H01F37/00 A
H02M3/155 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096753
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】村下 将也
(72)【発明者】
【氏名】高井 良典
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一郎
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB14
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】互いに異なる材質の第一部位と第二部位とが良好に接合されてなり、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失であるリアクトルを製造できるコア片を提供する。
【解決手段】コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、前記コイルの端面に面するように配置される第一ブロック部と、前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、前記側面が互いに向き合うように配置される複数の第二ブロック部と、を備え、前記第一ブロック部は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された第二部位と、を備え、前記第一部位と前記第二部位とは、前記第一ブロック部の高さに沿った方向に重なっており、前記第一ブロック部の高さに対する前記第一部位の高さの比率が0.5超1未満である、コア片。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、
前記コイルの端面に面するように配置される第一ブロック部と、
前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、前記側面が互いに向き合うように配置される複数の第二ブロック部と、を備え、
前記第一ブロック部は、
軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、
樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された第二部位と、を備え、
前記第一部位と前記第二部位とは、前記第一ブロック部の高さに沿った方向に重なっており、
前記第一ブロック部の高さに対する前記第一部位の高さの比率が0.5超1未満であり、
前記第一ブロック部の高さおよび前記第一部位の高さの各々は、前記コイルの軸に沿った方向および前記複数の第二ブロック部の並ぶ方向の双方に直交する方向に沿った長さである、
コア片。
【請求項2】
前記複数の第二ブロック部は、前記第二部位と連続するように前記複合材料の成形体で構成されている、請求項1に記載のコア片。
【請求項3】
前記第一ブロック部は、前記第一ブロック部の高さに沿った方向に互いに向き合う第一面および第二面を備え、
前記第一部位は前記第一面を備え、
前記第二部位は前記第二面を備える、請求項1または請求項2に記載のコア片。
【請求項4】
前記第一部位と前記第二部位とは、前記第一ブロック部の厚さに沿った方向に重なっており、
前記第一ブロック部の厚さに対する前記第一部位の厚さの比率が0.6以上であり、
前記第一ブロック部の厚さおよび前記第一部位の厚さの各々は、前記コイルの軸に沿った長さである、請求項1または請求項2に記載のコア片。
【請求項5】
前記第一ブロック部は、前記コイルの軸に沿った方向の外方を向く外端面を備え、
前記第一部位は前記外端面を備える、請求項1または請求項2に記載のコア片。
【請求項6】
第一コア片と第二コア片とを組み合わせた組物で構成される磁性コアと、
前記磁性コアの一部に配置されるコイルと、を備え、
前記第一コア片および前記第二コア片の少なくとも一つのコア片は、請求項1または請求項2に記載のコア片である、
リアクトル。
【請求項7】
請求項6に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項8】
請求項7に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コア片、リアクトル、コンバータ、および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第一コア片と第二コア片とを組み合わせて構成されるコア片が開示されている。第一コア片は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されている。第二コア片は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成されている。コア片は、金型に第二コア片を配置し、その第二コア片の周囲に第一コア片を成形することで製造される。以下では、コア片のうち、上記圧粉成形体で構成された部位を第一部位、上記複合材料の成形体で構成された部位を第二部位と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第一部位と第二部位とを組み合わせたコア片を用いて、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失であるリアクトルを製造することが求められる。互いに異なる材質の第一部位と第二部位とを組み合わせたコア片では、第一部位と第二部位とが良好に接合されることが求められる。
【0005】
本開示の目的の一つは、互いに異なる材質の第一部位と第二部位とが良好に接合されてなり、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失であるリアクトルを製造できるコア片を提供することにある。本開示は、上記コア片を備えるリアクトルを提供することを別の目的の一つとする。本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータを提供することを別の目的の一つとする。本開示は、上記コンバータを備える電力変換装置を提供することを別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコア片は、コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、前記コイルの端面に面するように配置される第一ブロック部と、前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、前記側面が互いに向き合うように配置される複数の第二ブロック部と、を備える。前記第一ブロック部は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された第二部位と、を備える。前記第一部位と前記第二部位とは、前記第一ブロック部の高さに沿った方向に重なっている。前記第一ブロック部の高さに対する前記第一部位の高さの比率が0.5超1未満である。前記第一ブロック部の高さおよび前記第一部位の高さの各々は、前記コイルの軸に沿った方向および前記複数の第二ブロック部の並ぶ方向の双方に直交する方向に沿った長さである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコア片は、互いに異なる材質の第一部位と第二部位とが良好に接合されてなり、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失であるリアクトルを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1のコア片を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1のコア片を分解した概略斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態2のコア片を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態3のコア片を示す概略斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態4のコア片を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態5のリアクトルを示す概略斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態5のリアクトルの磁性コアにおける磁束の流れを示す概略図である。
【
図8】
図8は、実施形態6のリアクトルの磁性コアを示す概略平面図である。
【
図9】
図9は、実施形態7のリアクトルの磁性コアを示す概略平面図である。
【
図10】
図10は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
【
図11】
図11は、コンバータを備える電力変換装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係るコア片は、コイルの内外に配置される磁性コアを構成するためのコア片であって、前記コイルの端面に面するように配置される第一ブロック部と、前記コイルの内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、前記側面が互いに向き合うように配置される複数の第二ブロック部と、を備える。前記第一ブロック部は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された第一部位と、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された第二部位と、を備える。前記第一部位と前記第二部位とは、前記第一ブロック部の高さに沿った方向に重なっている。前記第一ブロック部の高さに対する前記第一部位の高さの比率が0.5超1未満である。前記第一ブロック部の高さおよび前記第一部位の高さの各々は、前記コイルの軸に沿った方向および前記複数の第二ブロック部の並ぶ方向の双方に直交する方向に沿った長さである。
【0011】
上記コア片により、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失であるリアクトルを製造することができる。圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して透磁率が高い。圧粉成形体で構成された第一部位が第一ブロック部の所定の高さの範囲内に配置されていると、第一ブロック部からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。一方で、圧粉成形体は磁気飽和し易い。第一ブロック部がコイルの端面に面するように配置されている、言い換えると第一ブロック部がコイルの外部に配置されているため、この第一ブロック部に配置された圧粉成形体による磁気飽和への影響は比較的小さく、高いインダクタンスを保つことができる。第一部位と第二部位とは、第一ブロック部の高さに沿った方向に重なっているため、比較的大きな面で良好に接合されている。
【0012】
(2)上記(1)に記載のコア片において、前記複数の第二ブロック部は、前記第二部位と連続するように前記複合材料の成形体で構成されていてもよい。
【0013】
第二ブロック部が複合材料の成形体で構成されていると、第二ブロック部の途中に設けるギャップは小さくてよい。例えば、コイル内に配置される第二ブロック部のギャップが小さいと、ギャップからの漏れ磁束が小さく、損失の悪化を抑制することができる。第一ブロック部の第二部位と第二ブロック部とが連続するように複合材料の成形体が構成されているため、第一ブロック部と第二ブロック部とが互いに強固に接合されている。第一ブロック部と第二ブロック部とが互いに強固に接合されていると、第一ブロック部と第二ブロック部とを一体物として扱い易い。
【0014】
(3)上記(1)または上記(2)に記載のコア片において、前記第一ブロック部は、前記第一ブロック部の高さに沿った方向に互いに向き合う第一面および第二面を備え、前記第一部位は前記第一面を備え、前記第二部位は前記第二面を備えてもよい。
【0015】
上記(3)のコア片は、第一ブロック部の高さ方向に第一部位と第二部位とを配置し易い。
【0016】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかに記載のコア片において、前記第一部位と前記第二部位とは、前記第一ブロック部の厚さに沿った方向に重なっており、前記第一ブロック部の厚さに対する前記第一部位の厚さの比率が0.6以上であってもよい。前記第一ブロック部の厚さおよび前記第一部位の厚さの各々は、前記コイルの軸に沿った長さである。
【0017】
第一部位と第二部位とは、第一ブロック部の高さに沿った方向に加えて、第一ブロック部の厚さに沿った方向にも重なっていると、比較的大きな面で良好に接合される。上記厚さの比率が0.6以上であれば、第一ブロック部からの漏れ磁束をより抑制することができ、損失の悪化をより抑制することができる。
【0018】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかに記載のコア片において、前記第一ブロック部は、前記コイルの軸に沿った方向の外方を向く外端面を備え、前記第一部位は前記外端面を備えてもよい。
【0019】
上記(5)のコア片は、第一ブロック部の厚さ方向に第一部位と第二部位とを配置し易い。
【0020】
(6)本開示の実施形態に係るリアクトルは、第一コア片と第二コア片とを組み合わせた組物で構成される磁性コアと、前記磁性コアの一部に配置されるコイルと、を備え、前記第一コア片および前記第二コア片の少なくとも一つのコア片は、上記(1)から上記(5)のいずれかに記載のコア片である。
【0021】
上記コア片を含む磁性コアを備えるリアクトルは、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失である。
【0022】
(7)本開示の実施形態に係るコンバータは、上記(6)に記載のリアクトルを備える。
【0023】
上記リアクトルを備えるコンバータは、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失である。
【0024】
(8)本開示の実施形態に係る電力変換装置は、上記(7)に記載のコンバータを備える。
【0025】
上記コンバータを備える電力変換装置は、大電流の使用環境下でも高いインダクタンスを保ち、かつ低損失である。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<実施形態1>
≪コア片≫
図1および
図2を参照して、実施形態1のコア片1αを説明する。コア片1αは、後述するリアクトル7(
図6)の構成要素である。コア片1αは、リアクトル7のコイル9(
図6、
図7)の内外に配置される磁性コア8を構成する。コア片1αは、第一ブロック部110と複数の第二ブロック部120とを備える。第一ブロック部110は、コイル9の巻回部90(
図6、
図7)の外部に配置される。実施形態1のコア片1αの特徴の一つは、第一ブロック部110が第一部位11と第二部位12とを備え、第一部位11が第一ブロック部110の所定の高さ範囲内に配置されている点にある。第一部位11は、圧粉形成で構成された部位である。第二部位12は、複合材料の成形体で構成された部位である。実施形態1のコア片1αでは、複数の第二ブロック部120も第二部位12を備える。実施形態1のコア片1αは、第一ブロック部110と複数の第二ブロック部120とが一体に成形された一体物である。以下では、まず第一部位11および第二部位12の材質を説明し、その後に第一ブロック部110および第二ブロック部120の構成を順に説明する。各図では、分かり易いように、第一部位11にクロスハッチングを付している。
【0028】
以下では、第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3を用いて説明することがある。第一方向D1は、コイル9の巻回部90(
図6、
図7)の軸に沿った方向である。巻回部90の軸に沿った方向は、第二ブロック部120の軸に沿った方向でもある。第二方向D2は、複数の第二ブロック部120の並ぶ方向である。第三方向D3は、第一方向D1および第二方向D2の双方に直交する方向である。第一方向D1と第二方向D2と第三方向D3とは互いに直交している。各図では、第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3の各々を片矢印で示している。以下では、第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3の各々の反対方向も同様に第一方向D1、第二方向D2、および第三方向D3と呼ぶことがある。
【0029】
〔第一部位〕
第一部位11は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成された領域である。圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形したものである。圧粉成形体は、後述する複合材料の成形体に比較して成形体中の軟磁性粉末の含有量を多くできる。軟磁性粉末の含有量が多い圧粉成形体は、透磁率が高い。圧粉成形体中の軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体を100体積%としたとき、例えば80体積%超、85体積%以上、90体積%以上、または95体積%以上である。上記原料粉末には、潤滑剤が含まれていてもよい。
【0030】
軟磁性粉末は、例えば、軟磁性金属の粒子、被覆粒子、または軟磁性非金属の粒子で構成される。被覆粒子は、軟磁性金属の粒子と、軟磁性金属の粒子の外周に設けられた絶縁被覆とを備える。軟磁性金属は、例えば、純鉄または鉄基合金である。鉄基合金は、例えば、Fe-Si合金またはFe-Ni合金である。絶縁被覆は、例えばリン酸塩である。軟磁性非金属は、例えばフェライトである。
【0031】
〔第二部位〕
第二部位12は、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成された領域である。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで製造される。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性、例えば透磁率または飽和磁束密度を制御し易い。特に、複合材料は、軟磁性粉末の含有量を少なく調整し易く、透磁率を低くし易い。複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して透磁率が低いものの、大電流の使用環境下で磁気飽和し難く低鉄損である。複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して、複雑な形状でも成形し易い。
【0032】
複合材料の成形体を構成する軟磁性粉末は、上述した圧粉成形体を構成する軟磁性粉末と同じである。複合材料の成形体中の軟磁性粉末の含有量は、複合材料を100体積%とすると、例えば20体積%以上80体積%以下である。
【0033】
複合材料の成形体を構成する樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、またはウレタン樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、またはフッ素樹脂である。ポリアミド樹脂は、例えば、ナイロン6、ナイロン66、またはナイロン9Tである。複合材料の成形体中の樹脂の含有量は、複合材料を100体積%とすると、例えば20体積%以上80体積%以下である。
【0034】
複合材料は、樹脂に加えて、フィラーを含有していてもよい。フィラーは、放熱性の向上に寄与する。フィラーは、例えば、セラミックスまたはカーボンナノチューブといった非磁性材料からなる粉末を利用できる。セラミックスは、例えば、金属または非金属の酸化物、窒化物、炭化物である。酸化物の一例は、アルミナ、シリカ、または酸化マグネシウムである。窒化物の一例は、窒化珪素、窒化アルミニウム、または窒化ホウ素である。炭化物の一例は、炭化珪素である。
【0035】
〔第一ブロック部〕
第一ブロック部110は、後述するコイル9の巻回部90の端面91(
図6、
図7)に面するように配置された領域である。第一ブロック部110をエンドコア部5と呼ぶことがある。
【0036】
第一ブロック部110は、巻回部90の外部で複数の第二ブロック部120をつなぐように配置される。第一ブロック部110の形状は、複数の第二ブロック部120をつなぐ形状であればよい。本例の第一ブロック部110は、矩形のブロック体である。
【0037】
第一ブロック部110は、第一部位11と第二部位12とを備える。第一部位11と第二部位12とは、第一ブロック部110の高さに沿った方向に重なって構成されている。第一ブロック部110の高さに沿った方向は第三方向D3である。第一ブロック部110は、第三方向D3に互いに向き合う第一面111および第二面112を備える。本例では、第一部位11が第一面111を備え、第二部位12が第二面112を備える。本例の第一部位11は、第一面111を備える一つのブロック体で構成されている。本例の第二部位12は、第一部位11の第一面111と反対の面を覆うように構成されている。第二部位12は、第一部位11を覆うことにより第二面112を備える。
【0038】
第一ブロック部110は、第一方向D1の外方を向く外端面113を備える。本例の外端面113は、第一部位11と第二部位12とで構成されている。言い換えると、本例の第一部位11および第二部位12の各々は、外端面113を備えるように配置されている。第一ブロック部110は、第二方向D2に互いに向き合う二つの側面115を備える。本例の各側面115は、第一部位11と第二部位12とで構成されている。言い換えると、本例の第一部位11および第二部位12の各々は、二つの側面115を備えるように配置されている。本例の第一部位11は、第一面111、外端面113の一部、および二つの側面115の各々の一部を備える一つのブロック体で構成されている。
【0039】
第一ブロック部110の高さH0に対する第一部位11の高さH1の比率H1/H0は、0.5超1未満である。第一ブロック部110の高さおよび第一部位11の高さの各々は、第三方向D3に沿った長さである。上述したように、圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して透磁率が高い。上記比率H1/H0が0.5超であれば、圧粉成形体で構成された第一部位11が第一ブロック部110の比較的広範囲に配置されることになる。第一部位11が比較的広範囲に配置されていると、第一ブロック部110からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。
【0040】
上述したように、圧粉成形体は磁気飽和し易い。第一ブロック部110が巻回部90の端面91(
図6、
図7)に面するように配置されている、言い換えると第一ブロック部110が巻回部90の外部に配置されているため、この第一ブロック部110に配置された圧粉成形体による磁気飽和への影響は比較的小さい。そのため、第一ブロック部110は、高いインダクタンスを保つことができる。
【0041】
上記比率H1/H0が1未満であれば、第一部位11と第二部位12とが比較的大きな面で接合されることになる。本例では、第一部位11における第一面111と反対の面の全面に第二部位12が接合されている。上記比率H1/H0が1未満であれば、第一部位11と第二部位12とが互いに良好に接合される。
【0042】
上記比率H1/H0は、0.6以上1未満、0.7以上1未満、0.8以上1未満、または0.8以上0.9以下であってもよい。
【0043】
第一ブロック部110の第二部位12は、後述する第二ブロック部120の第二部位12につながっている。第一ブロック部110の第二部位12は、各第二ブロック部120から突出した薄板状の部位である。この第一ブロック部110の第二部位12により、後述する複数の第二ブロック部120は一体化される。上記比率H1/H0に応じて、第一ブロック部110の第二部位12の高さが変わる。
【0044】
第一ブロック部110の第一部位11と第二部位12とは、第一ブロック部110の厚さに沿った方向に重なっていてもよい。第一ブロック部110の厚さに沿った方向は第一方向D1である。本例では、第一ブロック部110の第一部位11と第二部位12とは、第一ブロック部110の厚さに沿った方向に重なっていない。本例の第一部位11は、第一ブロック部110の厚さの全域に配置されている。第一ブロック部110の厚さT0に対する第一部位11の厚さT1の比率T1/T0については、
図4を参照して実施形態3で説明する。
【0045】
第一ブロック部110の第一部位11と第二部位12とは、第一ブロック部110の幅に沿った方向に重なっていてもよい。第一ブロック部110の幅に沿った方向は第二方向D2である。本例では、第一ブロック部110の第一部位11と第二部位12とは、第一ブロック部110の幅に沿った方向に重なっていない。本例の第一部位11は、第一ブロック部110の幅の全域に配置されている。第一ブロック部110の幅W0に対する第一部位11の幅W1の比率W1/W0については、
図5を参照して実施形態4で説明する。
【0046】
〔第二ブロック部〕
各第二ブロック部120は、巻回部90の内側面92または外側面93(
図7)のいずれかの面に面する側面125を有する領域である。複数の第二ブロック部120は、側面125が互いに向き合うように配置される。各第二ブロック部120は、複数の側面125を有する。各第二ブロック部120において、複数の側面125のいずれかの側面125が隣り合う第二ブロック部120の側面125に向き合っていればよい。巻回部90の内部に配置される第二ブロック部120は、巻回部90の内側面92に面する側面125を有する。巻回部90の内部に配置される第二ブロック部120をミドルコア部21と呼ぶことがある。巻回部90の外部に配置される第二ブロック部120は、巻回部90の外側面93に面する側面125を有する。巻回部90の外部に配置される第二ブロック部120をサイドコア部31,41と呼ぶことがある。
【0047】
三つの第二ブロック部120は、一つの第一ブロック部110の同一面につながり、同じ方向に延びている。各図では、第一ブロック部110と各第二ブロック部120との境界に二点鎖線を付している。
【0048】
複数の第二ブロック部120のうち、ミドルコア部21は、巻回部90(
図6、
図7)の内部に配置される部分を有する。ミドルコア部21は、第一ブロック部110と交差する方向に延びる部分であり、巻回部90の外部に配置される部分を有してもよい。つまり、ミドルコア部21は、巻回部90の内部に配置される部分と巻回部90の外部に配置される部分とを有してもよい。ミドルコア部21の形状は、巻回部90の内周形状に概ね対応した形状である。本例のミドルコア部21は矩形のブロック体である。ミドルコア部21の角部は、巻回部90の角部に沿うように丸められている。
【0049】
複数の第二ブロック部120のうち、二つのサイドコア部31,41は、巻回部90(
図6、
図7)の外部でミドルコア部21と並んで配置される。二つのサイドコア部31,41は、ミドルコア部21との間に間隔を有しつつミドルコア部21を挟むように配置されている。各サイドコア部31,41の形状は、ミドルコア部21と並んで配置される形状であればよい。本例の各サイドコア部31,41は、矩形のブロック体である。本例では、二つのサイドコア部31,41の形状および寸法は同一である。本例の各サイドコア部31,41の第一方向D1に沿った長さは、ミドルコア部21の第一方向D1に沿った長さよりも長い。各サイドコア部31,41の第一方向D1に沿った長さは、ミドルコア部21の第一方向D1に沿った長さと同じでもよいし、短くてもよい。本例の各サイドコア部31,41の第二方向D2に沿った長さは、ミドルコア部21の第二方向D2に沿った長さよりも短い。本例の各サイドコア部31,41の第二方向D2に沿った長さの合計は、ミドルコア部21の第二方向D2に沿った長さよりも短い。各サイドコア部31,41の第二方向D2に沿った長さの合計は、ミドルコア部21の第二方向D2に沿った長さと同等以上であってもよい。本例の各サイドコア部31,41の第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部21の第三方向D3に沿った長さと同じである。各サイドコア部31,41の第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部21の第三方向D3に沿った長さよりも短くてもよいし、長くてもよい。二つのサイドコア部31,41の形状および寸法は、異なっていてもよい。
【0050】
各第二ブロック部120は、少なくとも第二部位12を備える。各第二ブロック部120は、第二部位12のみを備えていてもよい。複数の第二ブロック部120の少なくとも一つは、第一部位11と第二部位12とを備えていてもよい。
【0051】
各第二ブロック部120の第二部位12は、例えば、第一ブロック部110の第二部位12と連続するように設けられている。各第二ブロック部120の第二部位12は、例えば、第一ブロック部110の第二部位12との間に繋ぎ目のない成形物である。本例の各第二ブロック部120は、第二部位12のみからなる。
【0052】
第一ブロック部110の第二部位12と各第二ブロック部120の第二部位12とは、同じ複合材料の成形体で構成されていてもよい。第一ブロック部110の第二部位12と各第二ブロック部120の第二部位12とは、互いに異なる複合材料の成形体を含んでいてもよい。例えば、第一ブロック部110の第二部位12と各第二ブロック部120の第二部位12とが互いに異なる複合材料の成形体で構成されていてもよい。複数の第二ブロック部120のうち、巻回部90の内部に配置されるミドルコア部21の第二部位12と巻回部90の外部に配置されるサイドコア部31,41の第二部位12とが互いに異なる複合材料の成形体で構成されていてもよい。このとき、第一ブロック部110の第二部位12とサイドコア部31,41の第二部位12とが同じ複合材料の成形体で構成されていてもよい。例えば、巻回部90(
図6、
図7)の内部に配置される部位と巻回部90の外部に配置される部位とが互いに異なる複合材料の成形体で構成されていてもよい。
【0053】
互いに異なる複合材料とは、複合材料の構成材料の種類および含有量の少なくとも一部が異なることである。複合材料の構成材料の種類が異なるとは、軟磁性粉末の種類が異なること、および樹脂の種類が異なることを含む。軟磁性粉末の種類が異なるとは、例えば軟磁性粉末の組成が異なることである。複合材料の構成材料の含有量が異なるとは、樹脂中の軟磁性粉末の含有量が異なることである。
【0054】
第二ブロック部120が第一部位11を備える場合、この第一部位11は、例えば、第一ブロック部110の第一部位11と連続するように設けられている。第一ブロック部110の第一部位11と第二ブロック部120の第一部位11とが不連続に設けられていてもよい。第二ブロック部120が第一部位11と第二部位12とを備える形態については、
図9を参照して実施形態7で説明する。
【0055】
本例のコア片1αは、一つの第一ブロック部110と三つの第二ブロック部120とを備える。本例のコア片1αは、一つの第一ブロック部110と三つの第二ブロック部120とで構成されたE字状の形状を有する。
【0056】
≪コア片の製造方法≫
上述したコア片1αは、例えば、以下の第一工程、第二工程、および第三工程を行うことにより製造される。第一工程、第二工程、および第三工程は順に行われる。
【0057】
〔第一工程〕
第一工程では、金型と部分コア片を準備する。金型は、互いに連通する第一の空間および複数の第二の空間を備える。第一の空間は、上述した第一ブロック部110を成形するための空間である。各第二の空間は、上述した第二ブロック部120を成形するための空間である。各第二の空間は、第一の空間と交差する方向に延びると共に互いに並んで配置されている。部分コア片は、軟磁性粉末の圧粉成形体である。部分コア片は、上述した第一ブロック部110の第一部位11である。
【0058】
〔第二工程〕
第二工程では、部分コア片を第一の空間の一部に配置する。第一の空間の残部は、部分コア片が配置された状態で何も配置されない空間である。
【0059】
〔第三工程〕
第三工程では、部分コア片の一部を覆うように、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料を第一の空間の残部および各第二の空間に充填する。複合材料が固化すると、上述した第二部位12となる。部分コア片の一部を覆うように第一の空間の残部に充填された複合材料が固化すると、上述した第一ブロック部110の第二部位12となる。各第二の空間に充填された複合材料が固化すると、上述した第二ブロック部120の第二部位12となる。
【0060】
<実施形態2>
図3を参照して、実施形態2のコア片1βを説明する。実施形態2のコア片1βは、実施形態1のコア片1αに対して、第一ブロック部110における第一部位11と第二部位12との重なり箇所が異なる。実施形態2のコア片1βは、上記重なり箇所を除いて実施形態1のコア片1αと同じ構成を備える。
【0061】
本例のコア片1βでは、第一ブロック部110の第二部位12は、第一部位11を第三方向D3に挟むように構成されている。本例の第一ブロック部110の第一部位11は、第一ブロック部110の第一面111および第二面112を備えない。本例の第一ブロック部110の第一部位11は、第一ブロック部110の外端面113の一部および二つの側面115の各々の一部を備える一つのブロック体で構成されている。本例では、第一ブロック部110の第二部位12が、第一面111、第二面112、外端面113の残部、および二つの側面115の各々の残部を備える。
【0062】
本例のコア片1βにおいても、第一ブロック部110の高さH0に対する第一部位11の高さH1の比率H1/H0は、0.5超1未満である。上記比率H1/H0が0.5超であれば、第一部位11が第一ブロック部110の高さに沿った方向のどこにあろうと、第一ブロック部110からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。
【0063】
第一部位11が第二部位12に挟まれて配置されていると、第一部位11と第二部位12とが互いにより良好に接合される。本例では、第一部位11における第三方向D3に向かい合う二面の全面がそれぞれ第二部位12に接合されている。
【0064】
<実施形態3>
図4を参照して、実施形態3のコア片1γを説明する。実施形態3のコア片1γは、実施形態1のコア片1αに対して、第一ブロック部110の第一部位11の厚さT1が異なる。実施形態3のコア片1γは、第一部位11の厚さT1を除いて実施形態1のコア片1αと同じ構成を備える。
【0065】
本例のコア片1γでは、第一ブロック部110の第一部位11と第二部位12とは、第一ブロック部110の高さに沿った方向だけでなく厚さに沿った方向にも重なっている。
【0066】
本例の第一ブロック部110の第二部位12は、連結部12Aとつば部12Bとを備える。連結部12Aは、複数の第二ブロック部120をつなぐように設けられた板状の部材である。各第二ブロック部120は、連結部12Aの同一面につながっている。連結部12Aの一部が、第一部位11に対して第一ブロック部110の厚さに沿った方向に重なる。つば部12Bは、連結部12Aから第一方向D1に沿って突出するように設けられた板状の部材である。つば部12Bが、第一部位11に対して第一ブロック部110の高さに沿った方向に重なる。
【0067】
第一ブロック部110の厚さT0に対する第一部位11の厚さT1の比率T1/T0は、例えば0.6以上である。第一ブロック部110の厚さT0は、連結部12Aの厚さとつば部12Bの突出長さとを含む。連結部12Aの厚さは、
図4で示す厚さT0から厚さT1を引いた長さである。連結部12Aの厚さは、薄膜状に薄くてもよい。
図4に示す破線は、連結部12Aとつば部12Bとの境界を示している。連結部12Aの厚さは、
図4に示す破線と二点鎖線との間の長さである。上記比率T1/T0が0.6以上であれば、圧粉成形体で構成された第一部位11が第一ブロック部110の比較的広範囲に配置されることになる。第一部位11が比較的広範囲に配置されていると、第一ブロック部110からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。
【0068】
上記比率T1/T0は、0.6以上1以下、0.65以上1以下、0.7以上1以下、0.8以上1以下、0.9以上1以下、または1であってもよい。上記比率T1/T0が1である場合、
図1に示すように、第一部位11は第一ブロック部110の厚さの全域に配置されている。
【0069】
上記比率T1/T0は、1未満であってもよい。上記比率T1/T0が1未満であれば、第一部位11と第二部位12とが比較的大きな面で接合されることになる。上記比率T1/T0が1未満であれば、第一部位11と第二部位12とが互いに良好に接合される。
【0070】
上記比率T1/T0は、0.6以上1未満、0.65以上1未満、0.7以上1未満、または0.8以上0.9以下であってもよい。
【0071】
<実施形態4>
図5を参照して、実施形態4のコア片1δを説明する。実施形態4のコア片1δは、実施形態1のコア片1αに対して、第一ブロック部110の第一部位11の幅W1が異なる。実施形態4のコア片1δは、第一部位11の幅W1を除いて実施形態1のコア片1αと同じ構成を備える。
図5では、説明の便宜上、コア片1δを
図1とは異なる方向から示している。
【0072】
本例のコア片1δでは、第一ブロック部110の第一部位11と第二部位12とは、第一ブロック部110の幅に沿った方向にも重なっている。第一部位11は、第一ブロック部110の第一面111の一部、および外端面113の一部を備える。第一部位11は、側面115を備えない。第二部位12は、第一部位11の側面を覆うことにより、第一ブロック部110の二つの側面115を備える。第二部位12は、第一ブロック部110の第二面112、第一面111の残部、および外端面113の残部も備える。
【0073】
第一ブロック部110の幅W0に対する第一部位11の幅W1の比率W1/W0は、例えば0.3以上である。本例の第一部位11は、角部が丸められている。この場合、第一部位11の幅W1は、最も広い幅のことである。上記比率W1/W0が0.3以上であれば、圧粉成形体で構成された第一部位11が第一ブロック部110の比較的広範囲に配置されることになる。第一部位11が比較的広範囲に配置されていると、第一ブロック部110からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。
【0074】
上記比率W1/W0は、0.3以上1以下、0.4以上1以下、0.5以上1以下、0.6以上1以下、0.7以上1以下、0.8以上1以下、0.9以上1以下、または1であってもよい。上記比率W1/W0が1である場合、
図1に示すように、第一部位11は第一ブロック部110の幅の全域に配置されている。
【0075】
上記比率W1/W0は、1未満であってもよい。上記比率W1/W0が1未満であれば、第一部位11と第二部位12とが比較的大きな面で接合されることになる。上記比率W1/W0が1未満であれば、第一部位11と第二部位12とが互いに良好に接合される。
【0076】
上記比率W1/W0は、0.3以上1未満、0.4以上1未満、0.5以上1未満、0.6以上1未満、0.7以上1未満、0.8以上1未満、または0.8以上0.9以下であってもよい。
【0077】
<実施形態5>
≪リアクトル≫
図6および
図7を参照して、実施形態5のリアクトル7を説明する。リアクトル7は、磁性コア8とコイル9とを備える。磁性コア8は、第一コア片81と第二コア片82とを組み合わせた組物で構成されている。第一コア片81と第二コア片82は、磁性コア8が第一方向D1に離れるように分割される分割片である。コイル9は、磁性コア8の一部に配置されている。実施形態5のリアクトル7の特徴の一つは、第一コア片81および第二コア片82の少なくとも一つのコア片が実施形態1のコア片1αである点にある。第一コア片81および第二コア片82の少なくとも一つは、実施形態2のコア片1β、実施形態3のコア片1γ、または実施形態4のコア片1δであってもよい。本例では、第一コア片81および第二コア片82の双方が実施形態1のコア片1αである。第一コア片81と第二コア片82とは、磁性コア8における第一方向D1の中間位置に対して対称である。
【0078】
〔磁性コア〕
磁性コア8は、コイル9の励磁により、環状の磁路を形成するための磁性部材である。本例の磁性コア8は、第一コア片81と第二コア片82の組み合わせにより、全体としてθ状に構成されている。
【0079】
磁性コア8は、ミドルコア部2と二つのサイドコア部3,4と二つのエンドコア部5,6とを備える。
図6および
図7では、ミドルコア部21とエンドコア部5との境界、およびサイドコア部3,4とエンドコア部5との境界に二点鎖線を付している。
【0080】
ミドルコア部2は、後述するコイル9の巻回部90の内部に配置される部分を有する。本例のミドルコア部2は、第一コア片81のミドルコア部21と第二コア片82のミドルコア部22とギャップ2gとで構成されている。ミドルコア部21,22は、上述したコア片1αの複数の第二ブロック部120の一つである。ミドルコア部21およびミドルコア部22の第二方向D2に沿った各長さは同じである。ミドルコア部21およびミドルコア部22の第三方向D3に沿った各長さは同じである。ギャップ2gは、第一コア片81のミドルコア部21と第二コア片82のミドルコア部22との間に設けられている。ギャップ2gを設けると、リアクトル7のインダクタンスを調整し易い。ギャップ2gには、例えば、図示しないギャップ材が配置される。ギャップ材には、公知のものが利用できる。ギャップ材の構成材料は、例えば非磁性のセラミックスまたは樹脂である。ギャップ2gは、ギャップ材が配置されないエアギャップであってもよい。リアクトル7が後述するモールド樹脂部を備える場合、ギャップ2gには、モールド樹脂部を構成する樹脂が充填されてもよい。この場合、モールド樹脂部を構成する樹脂がギャップ材となる。
【0081】
ミドルコア部2における第一方向D1に沿った長さは、巻回部90における第一方向D1に沿った長さと同等以上である。本例では、ミドルコア部2における第一方向D1に沿った長さは、巻回部90における第一方向D1に沿った長さよりも若干長い。つまり、ミドルコア部2は、巻回部90の内部に配置される部分と、巻回部90の外部に配置される部分とを備える。ミドルコア部2の両端部が、巻回部90の外部に位置する。
【0082】
サイドコア部3は、第一コア片81のサイドコア部31と第二コア片82のサイドコア部32とで構成されている。サイドコア部31,32は、上述したコア片1αの複数の第二ブロック部120の一つである。本例では、サイドコア部31,32間にギャップは設けられていない。言い換えると、サイドコア部31,32の端面同士が接触している。サイドコア部4は、第一コア片81のサイドコア部41と第二コア片82のサイドコア部42とで構成されている。サイドコア部41,42は、上述したコア片1αの複数の第二ブロック部120の一つである。本例では、サイドコア部41,42間にギャップは設けられていない。言い換えると、サイドコア部41,42の端面同士が接触している。
【0083】
エンドコア部5,6は、上述したコア片1αの第一ブロック部110である。
【0084】
磁性コア8は、一つのミドルコア部2と二つのサイドコア部3,4と二つのエンドコア部5,6とが接続されることで、後述するコイル9を励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。磁束は、
図7の破線の矢印で示すように、ミドルコア部2からエンドコア部5に流れ、エンドコア部5から二つのサイドコア部3,4の各々に流れ、各サイドコア部3,4からエンドコア部6に流れ、エンドコア部6からミドルコア部2に流れる。
【0085】
本例では、第一コア片81および第二コア片82の双方が実施形態1のコア片1αであるため、各エンドコア部5,6からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。
【0086】
〔コイル〕
コイル9は、少なくとも一つの巻回部90を備える。本例のコイル9は、一つの巻回部90を備える。巻回部90は、1本の巻線を螺旋状に巻回して構成される。巻線の両端部は、巻回部90の各端部から引き出される。巻回部90から引き出された巻線の両端部には、図示しない端子金具が取り付けられる。端子金具には、図示しない外部装置が接続される。
図5および
図6では、巻回部90のみを示し、巻線の端部は省略している。
【0087】
巻線は、公知の巻線を利用できる。本例の巻線は、絶縁被覆を有する導体線からなる被覆平角線である。導体線は、例えば銅製の平角線で構成されている。絶縁被覆は、例えばエナメルからなる。本例の巻回部90は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルである。
【0088】
巻回部90の形状は角筒形状である。すなわち、本例の巻回部90の端面91の形状は矩形枠状である。巻回部90は内側面92と外側面93とを備える。内側面92はミドルコア部2に面する。内側面92とミドルコア部2の外周面との間には隙間が存在する。リアクトル7が図示しないモールド樹脂部を備える場合、この隙間には、モールド樹脂部を構成する樹脂が充填される。外側面93はサイドコア部3,4に面する。端面91はエンドコア部5,6に面する。本例の巻回部90の角部は丸められている。巻回部90の形状が角筒形状であると、巻回部が同じ断面積の円筒状である場合に比較して、巻回部90と設置対象との接触面積が大きくなり易い。巻回部90と設置対象との接触面積が大きいと、リアクトル7の放熱性が向上する。巻回部90と設置対象との接触面積が大きいと、設置対象に対する巻回部90の設置状態が安定し易い。
【0089】
〔その他〕
リアクトル7は、図示していないものの、モールド樹脂部を備えてもよい。モールド樹脂部は、磁性コア8の少なくとも一部を覆う。モールド樹脂部は、磁性コア8を外部環境から保護する機能を有する。モールド樹脂部は、さらにコイル9を覆っていてもよい。つまり、モールド樹脂部は、磁性コア8とコイル9との組物の少なくとも一部を覆うように設けられる。モールド樹脂部によって、磁性コア8とコイル9とが一体化されて構成される。磁性コア8の外周面の一部、またはコイル9の外周面の少なくとも一部がモールド樹脂部から露出していてもよい。モールド樹脂部が磁性コア8とコイル9との間に設けられていれば、磁性コア8とコイル9との絶縁が確保され易い。モールド樹脂部が第一コア片81のミドルコア部21と第二コア片82のミドルコア部22との間に設けられていれば、その間に設けられたモールド樹脂部が磁性コア8のギャップ材として機能する。モールド樹脂部を構成する樹脂は、例えば、上述した複合材料の樹脂と同様の樹脂である。モールド樹脂部の構成材料は、複合材料と同様に、上述したフィラーを含有していてもよい。
【0090】
リアクトル7は、図示していないものの、保持部材を備えてもよい。保持部材は、磁性コア8とコイル9との間に配置され、磁性コア8とコイル9との間の電気的絶縁を確保する機能を有する。保持部材は、磁性コア8とコイル9との相互の位置を規定して、位置決め状態を保持する機能を有する。保持部材は、例えば巻回部90の端面91とエンドコア部5,6との間に配置される。巻回部90の端面91とエンドコア部5,6との間に配置される保持部材は、例えば枠状の部材である。保持部材は、例えば巻回部90の内周面とミドルコア部2の外周面との間に配置される。巻回部90の内周面とミドルコア部2の外周面との間に配置される保持部材は、例えば筒状の部材である。巻回部90の内周面とミドルコア部2の外周面との間に配置される保持部材は、例えば、巻回部90とミドルコア部2との間にモールド樹脂部の未固化の構成樹脂が流れることができるような構造となっている。
【0091】
<実施形態6>
図8を参照して、実施形態6のリアクトルを説明する。実施形態6のリアクトルは、実施形態5のリアクトル7に対して、第一コア片81と第二コア片82の組み合わせが異なる。実施形態6のリアクトルは、第一コア片81と第二コア片82の組み合わせを除いて実施形態5のリアクトル7と同じ構成を備える。
図8では、説明の便宜上、リアクトルを
図1に示す第一面111が見える方向から示している。
図8では、説明の便宜上、コイル9の巻回部90を断面で示している。
【0092】
本例の第一コア片81は、一つの第一ブロック部110と三つの第二ブロック部120とを備える。一つの第一ブロック部110は、実施形態1のコア片1αの第一ブロック部110と同じである。
図8では、説明の便宜上、リアクトルを
図1に示す第一面111が見える方向から示しているが、第一ブロック部110において、第一部位11と第二部位12とが第一ブロック部110の高さに沿った方向に重なっている。第一ブロック部110がエンドコア部5である。三つの第二ブロック部120のうち、巻回部90の内部に配置されるミドルコア部21は、巻回部90の外部に配置されるサイドコア部3,4よりも第一方向D1に沿った長さが短い。本例の第一コア片81は、ミドルコア部21の上記長さが短いE字状の形状を有する。各第二ブロック部120は第二部位12で構成されている。
【0093】
本例の第二コア片82は、エンドコア部6とミドルコア部22とを備える。本例の第二コア片82は、エンドコア部6とミドルコア部22とで構成されたT字状の形状を有する。エンドコア部6とミドルコア部22の双方が第一部位11で構成されている。本例の第二コア片82は、第一部位11のみで構成され、第二部位12を備えない。本例の第二コア片82は、エンドコア部6とミドルコア部22とが一体に成形された一体物である。
【0094】
本例では、E字状の第一コア片81とT字状の第二コア片82とが組み合わされることで、磁性コア8はθ状の形状を有する。
【0095】
本例では、第一コア片81が実施形態1のコア片1αの第一ブロック部110を備え、かつ第二コア片82が第一部位11で構成されているため、各エンドコア部5,6からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。
【0096】
<実施形態7>
図9を参照して、実施形態7のリアクトルを説明する。実施形態7のリアクトルは、実施形態5のリアクトル7および実施形態6のリアクトルに対して、第一コア片81と第二コア片82の組み合わせが異なる。実施形態7のリアクトルは、第一コア片81と第二コア片82の組み合わせを除いて実施形態5のリアクトル7と同じ構成を備える。
図9では、説明の便宜上、リアクトルを
図1に示す第一面111が見える方向から示している。
図9では、説明の便宜上、コイル9の巻回部90を断面で示している。
【0097】
本例の第一コア片81は、一つの第一ブロック部110と三つの第二ブロック部120とを備える。一つの第一ブロック部110は、実施形態1のコア片1αの第一ブロック部110と同じである。
図9では、説明の便宜上、リアクトルを
図1に示す第一面111が見える方向から示しているが、第一ブロック部110において、第一部位11と第二部位12とが第一ブロック部110の高さに沿った方向に重なっている。第一ブロック部110がエンドコア部5である。三つの第二ブロック部120のうち、巻回部90の内部に配置されるミドルコア部21は、巻回部90の外部に配置されるサイドコア部3,4よりも第一方向D1に沿った長さが短い。本例の第一コア片81は、ミドルコア部21の上記長さが短いE字状の形状を有する。
【0098】
ミドルコア部21は、第一部位11と第二部位12とで構成されている。ミドルコア部21の第一部位11は、第一ブロック部110の第一部位11との間に繋ぎ目のない一体のブロック体である。ミドルコア部21の第一部位11と第一ブロック部110の第一部位11とで構成されるブロック体は、T字状の形状を有する。ミドルコア部21の第二部位12は、ミドルコア部21の第一部位11の端面および第一面を覆い、第一ブロック部110の第二部位12と連続するように構成されている。サイドコア部3,4は、第二部位12で構成されている。
【0099】
本例の第二コア片82は、実施形態6の第二コア片82と同じである。
【0100】
本例では、E字状の第一コア片81とT字状の第二コア片82とが組み合わされることで、磁性コア8はθ状の形状を有する。
【0101】
本例では、第一コア片81のうちエンドコア部5を構成する第一ブロック部110が第一部位11を備え、かつ第二コア片82が第一部位11で構成されているため、各エンドコア部5,6からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化を抑制することができる。
【0102】
<変形例>
図示しないものの、コイルは二つの巻回部を備えていてもよい。この場合、磁性コアは、二つの内側コア部と二つの外側コア部とを備える。二つの内側コア部は、巻回部の内側面に面するように設けられる。二つの外側コア部は、二つの内側コア部の端面同士をつなぐように設けられる。二つの外側コア部は、各巻回部の端面に面するように設けられた部分を有する。磁性コアを構成するコア片は、例えばU字状のブロック体で構成される。U字状のコア片は、第一ブロック部と第二ブロック部とが接合されて構成される。第一ブロック部が外側コア部であり、第二ブロック部が内側コア部である。第一ブロック部は第一部位と第二部位とを備え、第一部位が第一ブロック部の所定の高さ範囲内に配置されている。
【0103】
<実施形態8>
≪コンバータ・電力変換装置≫
上述したリアクトル7は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度である。上述したリアクトル7は、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品、またはこのコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用される。
【0104】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、
図10に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図10では、車両1200の充電箇所はインレットであるが、プラグを備える形態でもよい。
【0105】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0106】
コンバータ1110は、
図11に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、上述したリアクトル7を備える。
【0107】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、上述したリアクトル7と同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、上述したリアクトル7を利用することもできる。
【0108】
[試験例]
圧粉成形体からなる第一部位と複合材料の成形体からなる第二部位とを組み合わせた種々のコア片を用いてリアクトルを作製し、そのリアクトルのインダクタンスと損失を調べた。
【0109】
試験例における各試料では、同じ形状および大きさの二つのコア片を組み合わせた磁性コアを用いた。磁性コアの形状は、
図6に示す磁性コア8と同じ形状である。各コア片は、一つの第一ブロック部と三つの第二ブロック部とを備える。第一ブロック部は、コイルの巻回部の端面に面するように配置される。三つの第二ブロック部は、巻回部の内側面または外側面のいずれかの面に面する側面を有し、側面が互いに向き合うように配置される。三つの第二ブロック部のうち、ミドルコア部は、巻回部の内部に配置される部分を有する。三つの第二ブロック部のうち、二つのサイドコア部は、巻回部の外部でミドルコア部を挟むように配置される。
【0110】
各コア片において、第一ブロック部は、第一部位と第二部位とを組み合わせて構成される。各コア片において、第二ブロック部は、第二部位のみで構成される。各試料において、第一部位を構成する圧粉成形体の材質は同じである。各試料において、第二部位を構成する複合材料の成形体の材質は同じである。
【0111】
試験例における各試料では、同じ形状および大きさのコイルを用いた。
【0112】
<試験例1>
試験例1では、第一ブロック部を構成する第一部位と第二部位とを第一ブロック部の高さに沿った方向に重ね、第一部位の高さが異なる試料を作製し、第一ブロック部の第一部位の高さによる影響を調べた。
【0113】
≪試料≫
互いに第一部位の高さが異なる第一ブロック部を備える試料No.1-1から試料No.1-6を作製した。試料No.1-1から試料No.1-6は、第一ブロック部の高さH0に対する第一部位の高さH1の比率H1/H0が異なる。試料No.1-1の比率H1/H0は0.17である。試料No.1-2の比率H1/H0は0.33である。試料No.1-3の比率H1/H0は0.50である。試料No.1-4の比率H1/H0は0.67である。試料No.1-5の比率H1/H0は0.83である。試料No.1-6の比率H1/H0は1.00である。
【0114】
試料No.1-1から試料No.1-6はいずれも、第一ブロック部の厚さT0に対する第一部位の厚さT1の比率T1/T0が1.00である。試料No.1-1から試料No.1-6はいずれも、第一ブロック部の幅W0に対する第一部位の幅W1の比率W1/W0が1.00である。
【0115】
試料No.1-10は、第一ブロック部が第二部位のみで構成されており、第一部位を備えていない。
【0116】
≪インダクタンス≫
各試料のリアクトルについて、コイルに250Aの直流電流を流したときのインダクタンスを求めた。インダクタンスの解析には、市販の電磁界解析ソフトウェアである株式会社JSOL製のJMAG-Designer22.0を使用した。その結果を表1に示す。表1では、試料No.1-10の結果を100パーセントとした相対値で示す。
【0117】
≪損失≫
各試料のリアクトルについて、リアクトルを駆動したときの損失を求めた。損失の解析には、市販の電磁界解析ソフトウェアである株式会社JSOL製のJMAG-Designer22.0を使用した。リアクトルの駆動条件は、直流電流を0A、入力電圧を300V、出力電圧を600V、周波数を20kHzとした。この条件のもと、コイルでの損失、および総損失を求めた。総損失には、コイルでの損失、磁性コアでの損失、およびリアクトルをケースに配置した際のケースでの損失が含まれる。その結果を表1に示す。表1では、試料No.1-10の結果を100パーセントとした相対値で示す。
【0118】
【0119】
表1に示されるように、比率H1/H0が0.50超であると、試料No.1-10に比較して、総損失が小さい。比率H1/H0が0.50超であると、圧粉成形体で構成された第一部位が第一ブロック部の比較的広範囲に配置されることになる。透磁率が高い圧粉成形体で構成された第一部位が比較的広範囲に配置されていることで、第一ブロック部からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化が抑制されたと考えられる。
【0120】
表1に示されるように、比率H1/H0が大きくなっても、インダクタンスの低下率は小さい。圧粉成形体は磁気飽和し易いものの、第一ブロック部が巻回部の端面に面するように配置されているため、この第一ブロック部に配置された圧粉成形体による磁気飽和への影響は比較的小さいと考えられる。つまり、比率H1/H0が大きくなっても、第一ブロック部は、高いインダクタンスを保つことができると考えられる。
【0121】
第一ブロック部において、第一部位と第二部位とが良好に接合されることが求められる。比率H1/H0が1.00未満であれば、第一部位と第二部位とが第一ブロック部の高さに沿った方向に重なっていることになり、第一部位と第二部位とが比較的大きな面で接合されることになる。よって、比率H1/H0が1.00未満であれば、第一部位と第二部位とを互いに良好に接合することができると考えられる。
【0122】
[試験例2]
試験例2では、第一ブロック部を構成する第一部位と第二部位とを第一ブロック部の厚さに沿った方向に重ね、第一部位の厚さが異なる試料を作製し、第一ブロック部の第一部位の厚さによる影響を調べた。
【0123】
≪試料≫
互いに第一部位の厚さが異なる第一ブロック部を備える試料No.2-1から試料No.2-5を作製した。試料No.2-1から試料No.2-5は、第一ブロック部の厚さT0に対する第一部位の厚さT1の比率T1/T0が異なる。試料No.2-1の比率T1/T0は0.29である。試料No.2-2の比率T1/T0は0.47である。試料No.2-3の比率T1/T0は0.65である。試料No.2-4の比率T1/T0は0.82である。試料No.2-5の比率T1/T0は1.00である。
【0124】
試料No.2-1から試料No.2-5はいずれも、第一ブロック部の高さH0に対する第一部位の高さH1の比率H1/H0が1.00である。試料No.2-1から試料No.2-5はいずれも、第一ブロック部の幅W0に対する第一部位の幅W1の比率W1/W0が1.00である。
【0125】
試料No.2-10は、第一ブロック部が第二部位のみで構成されており、第一部位を備えていない。試料No.2-10は試料No.1-10と同じである。
【0126】
≪インダクタンス≫
各試料のリアクトルについて、試験例1と同様に、コイルに250Aの直流電流を流したときのインダクタンスを求めた。その結果を表2に示す。表2では、試料No.2-10の結果を100パーセントとした相対値で示す。
【0127】
≪損失≫
各試料のリアクトルについて、試験例1と同様に、リアクトルを駆動したときの損失を求めた。その結果を表2に示す。表2では、試料No.2-10の結果を100パーセントとした相対値で示す。
【0128】
【0129】
表2に示されるように、比率T1/T0が0.47超であると、試料No.2-10に比較して、総損失が小さい。比率T1/T0が0.47超であると、圧粉成形体で構成された第一部位が第一ブロック部の比較的広範囲に配置されることになる。透磁率が高い圧粉成形体で構成された第一部位が比較的広範囲に配置されていることで、第一ブロック部からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化が抑制されたと考えられる。
【0130】
表2に示されるように、比率T1/T0が大きくなっても、インダクタンスの低下率は小さい。圧粉成形体は磁気飽和し易いものの、第一ブロック部が巻回部の端面に面するように配置されているため、この第一ブロック部に配置された圧粉成形体による磁気飽和への影響は比較的小さいと考えられる。つまり、比率T1/T0が大きくなっても、第一ブロック部は、高いインダクタンスを保つことができると考えられる。
【0131】
試験例1と試験例2とを総合的に見ると、比率H1/H0が0.50超1.00未満であり、かつ比率T1/T0が0.47超であると、損失を小さくできる上に、第一部位と第二部位とを互いに良好に接合することができると考えられる。
【0132】
[試験例3]
試験例3では、第一ブロック部を構成する第一部位と第二部位とを第一ブロック部の幅に沿った方向に重ね、第一部位の幅が異なる試料を作製し、第一ブロック部の第一部位の幅による影響を調べた。
【0133】
≪試料≫
互いに第一部位の幅が異なる第一ブロック部を備える試料No.3-1から試料No.3-6を作製した。試料No.3-1から試料No.3-6は、第一ブロック部の幅W0に対する第一部位の幅W1の比率W1/W0が異なる。試料No.3-1の比率W1/W0は0.33である。試料No.3-2の比率W1/W0は0.47である。試料No.3-3の比率W1/W0は0.60である。試料No.3-4の比率W1/W0は0.73である。試料No.3-5の比率W1/W0は0.87である。試料No.3-6の比率W1/W0は1.00である。
【0134】
試料No.3-1から試料No.3-6はいずれも、第一ブロック部の高さH0に対する第一部位の高さH1の比率H1/H0が1.00である。試料No.3-1から試料No.3-6はいずれも、第一ブロック部の厚さT0に対する第一部位の厚さT1の比率T1/T0が1.00である。
【0135】
試料No.3-10は、第一ブロック部が第二部位のみで構成されており、第一部位を備えていない。試料No.3-10は試料No.1-10と同じである。
【0136】
≪インダクタンス≫
各試料のリアクトルについて、試験例1と同様に、コイルに250Aの直流電流を流したときのインダクタンスを求めた。その結果を表3に示す。表3では、試料No.3-10の結果を100パーセントとした相対値で示す。
【0137】
≪損失≫
各試料のリアクトルについて、試験例1と同様に、リアクトルを駆動したときの損失を求めた。その結果を表3に示す。表3では、試料No.3-10の結果を100パーセントとした相対値で示す。
【0138】
【0139】
表3に示されるように、試料No.3-1から試料No.3-6のいずれも、試料No.3-10に比較して、総損失が小さい。各試料No.3-1から試料N0.3-6を比較すると、比率W1/W0が大きいほど、コイルでの損失および総損失が小さい。比率W1/W0が大きいほど、圧粉成形体で構成された第一部位が第一ブロック部の比較的広範囲に配置されることになる。透磁率が高い圧粉成形体で構成された第一部位が比較的広範囲に配置されていることで、第一ブロック部からの漏れ磁束を抑制することができ、損失の悪化が抑制されたと考えられる。
【0140】
表3に示されるように、比率W1/W0が大きくなっても、インダクタンスの低下率は小さい。圧粉成形体は磁気飽和し易いものの、第一ブロック部が巻回部の端面に面するように配置されているため、この第一ブロック部に配置された圧粉成形体による磁気飽和への影響は比較的小さいと考えられる。つまり、比率W1/W0が大きくなっても、第一ブロック部は、高いインダクタンスを保つことができると考えられる。
【0141】
試験例1と試験例3とを総合的に見ると、比率H1/H0が0.50超1.00未満であり、かつ比率W1/W0が0.30以上であると、損失を小さくできる上に、第一部位と第二部位とを互いに良好に接合することができると考えられる。
【符号の説明】
【0142】
1α,1β,1γ,1δ コア片
11 第一部位
12 第二部位、12A 連結部、12B つば部
110 第一ブロック部
111 第一面
112 第二面
113 外端面
115 側面
120 第二ブロック部
125 側面
2,21,22 ミドルコア部
3,31、32 サイドコア部
4,41,42 サイドコア部
5 エンドコア部
6 エンドコア部
2g ギャップ
7 リアクトル
8 磁性コア
81 第一コア片
82 第二コア片
9 コイル
90 巻回部
91 端面
92 内側面
93 外側面
D1 第一方向、D2 第二方向、D3 第三方向
H0,H1 高さ
T0,T1 厚さ
W0,W1 幅
1100 電力変換装置、1110 コンバータ、1111 スイッチング素子
1112 駆動回路、1115 リアクトル、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両、1210 メインバッテリ、1220 モータ
1230 サブバッテリ、1240 補機類、1250 車輪、1300 エンジン