(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178552
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】杭基礎構造、及び杭基礎構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096765
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】島田 博志
(72)【発明者】
【氏名】出雲 洋治
(72)【発明者】
【氏名】井之上 太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 香織
(72)【発明者】
【氏名】竹熊 渓
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆則
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基礎杭の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材を設ける際に、基礎部材の高さを容易に調整できる、杭基礎構造、及び杭基礎構造の構築方法を提供する。
【解決手段】杭基礎構造1は、基礎杭2と、基礎杭2の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材3と、を備える杭基礎構造1であって、基礎杭2の杭頭部2hの周辺の地盤Gまたは地盤G上の捨てコンクリート層71に設置される基部51と、基部51から上方へと延び、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられた立ち上がり部52と、を備えているレベル調整用鋼材5を備え、基礎部材3は、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して、かつ外周側面33がレベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿うように位置づけられ、基礎部材3の外周側面33が、立ち上がり部52に対し、レベル調整機構によって固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎杭と、前記基礎杭の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造であって、
前記基礎杭の杭頭部の周辺の地盤または当該地盤上の捨てコンクリート層に設置される基部と、前記基部から上方へと延び、前記基礎部材の高さ位置を調整して前記基礎部材を固定するためのレベル調整機構が設けられた立ち上がり部と、を備えているレベル調整用鋼材を備え、
前記基礎部材は、前記基礎杭の前記杭頭部から上方に離間して、かつ外周側面が前記レベル調整用鋼材の前記立ち上がり部に沿うように位置づけられ、前記基礎部材の前記外周側面が、前記立ち上がり部に対し、前記レベル調整機構を介して固定され、
前記杭頭部と、前記基礎部材との間には、セメント系材料が充填されて底部コンクリート部が形成されていることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項2】
前記レベル調整機構は、前記立ち上がり部に形成された、上下方向に延在する長孔であり、前記基礎部材の前記外周側面には、前記レベル調整用鋼材の前記長孔を介してボルトが緊締されていることを特徴とする請求項1に記載の杭基礎構造。
【請求項3】
前記基礎杭の前記杭頭部には、当該杭頭部の側面に隙間を形成するための杭頭キャップが被せられ、
前記杭頭キャップと、前記基礎部材との間に、前記底部コンクリート部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の杭基礎構造。
【請求項4】
基礎杭と、前記基礎杭の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造の構築方法であって、
地盤に前記基礎杭を打ち込み、前記基礎杭の杭頭部を地盤から上方に突出させる工程と、
基部と、前記基礎部材の高さ位置を調整して前記基礎部材を固定するためのレベル調整機構が設けられた立ち上がり部と、を備えているレベル調整用鋼材を、前記基部が前記地盤または当該地盤上の捨てコンクリート層の上に位置し、前記立ち上がり部が前記基部から上方へと延びるように設置する工程と、
前記基礎部材を、前記基礎杭の前記杭頭部から上方に離間して位置づけ、当該基礎部材の外周側面において、前記レベル調整機構を介して高さ位置を調整しつつ、前記レベル調整用鋼材の前記立ち上がり部に沿わせて支持させる工程と、
前記基礎杭の前記杭頭部と、前記基礎部材の下面との間に、セメント系材料を充填して底部コンクリート部を形成する工程と、を含むことを特徴とする杭基礎構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭と前記基礎杭の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材とを備える杭基礎構造、及び杭基礎構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎杭の上に、プレキャストコンクリート造の基礎部材を設置することで、基礎構造を構築することがある。この場合、基礎部材をプレキャストコンクリート造とすることで、工期を短縮し、施工を容易にすることができる。
例えば、特許文献1には、建築物の上部構造と杭とを接合する接合構造において、杭頭を収容する収容部を含み、上部構造と接合するとともに杭頭を覆うように設置されるプレキャストコンクリート造のキャップ部材と、杭頭の外周面と基礎部材の収容部の内側面との間に配置される緩衝材と、を備える構成が記載されている。
【0003】
上記のような、プレキャストコンクリート造の基礎部材を設置する際には、基礎部材の高さを、正確に調整する必要がある。
これに関し、特許文献2には、杭の杭頭部を覆う凹部が下面に形成されたプレキャストコンクリート製のフーチング部材と、凹部と杭頭部の間に充填されて、杭頭部にフーチング部材を接合する充填材と、を備え、フーチング部材は、杭頭部の周辺地盤に設置された設置プレート上に置かれる構成が記載されている。特許文献2において、設置プレートは、コンクリート製の平板、または鋼板であり、この設置プレートの上にフーチング部材を置いたときに、フーチング部材が設計で決められた高さに水平に配置されるように設置されている。
また、特許文献3には、基礎杭と、基礎杭の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造において、基礎部材の下面に、基礎杭の杭頭が収容される凹部が形成され、基礎杭の周囲の地盤面または地盤面上の捨てコンクリート層の上に設けられて基礎部材を支持するレベル調整材と、基礎杭の杭頭を覆う蓋部材と、蓋部材と基礎部材の凹部との間に充填された充填材と、を備える構成が記載されている。特許文献3において、レベル調整材は、金属製の薄板を積層したものであって、積層する薄板の枚数を変更することで、上面の高さ位置を調整可能とされており、基礎部材は、このようなレベル調整材の上に載置されている。
【0004】
特許文献2、3においては、フーチング部材等の基礎部材は、厚さが調整された板状の設置プレートやレベル調整材の上に設けられることによって、その高さ位置が調整されている。このような構成において、基礎部材の高さを調整するためには、計画した高さ位置に基礎部材が設置された場合における、基礎部材の下面と、基礎部材を設置する対象となる地盤等の表面との間の距離を計算し、設置プレートやレベル調整材を、厚さが当該距離と正確に一致するように、金属の薄板を積層したり、コンクリート製の板材を切削したりして、加工しなければならない。また、仮に、いったん厚さを調整した設置プレートやレベル調整材を、地盤等の表面上に設け、その上に基礎部材を設置した後に、基礎部材が計画した高さ位置に設けられていない場合においては、設置した基礎部材を揚重し、レベル調整材の厚さを再度調整するように加工して、基礎部材を設置しなおす、という手順を、基礎部材が計画した高さ位置に設けられるまで、繰り返す必要がある。したがって、基礎部材の高さを調整することが、容易ではない。
基礎杭の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材を設ける際に、基礎部材の高さをより容易に調整することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-190097号公報
【特許文献2】特開2015-200094号公報
【特許文献3】特開2022-124976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、基礎杭の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材を設ける際に、基礎部材の高さを容易に調整できる、杭基礎構造、及び杭基礎構造の構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の杭基礎構造は、基礎杭と、前記基礎杭の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造であって、前記基礎杭の杭頭部の周辺の地盤または当該地盤上の捨てコンクリート層に設置される基部と、前記基部から上方へと延び、前記基礎部材の高さ位置を調整して前記基礎部材を固定するためのレベル調整機構が設けられた立ち上がり部と、を備えているレベル調整用鋼材を備え、前記基礎部材は、前記基礎杭の前記杭頭部から上方に離間して、かつ外周側面が前記レベル調整用鋼材の前記立ち上がり部に沿うように位置づけられ、前記基礎部材の前記外周側面が、前記立ち上がり部に対し、前記レベル調整機構を介して固定され、前記杭頭部と、前記基礎部材との間には、セメント系材料が充填されて底部コンクリート部が形成されていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、基礎部材は、基礎杭の杭頭部から上方に離間して設けられている。また、基礎部材は、レベル調整用鋼材の、杭頭部の周辺の地盤または地盤上の捨てコンクリート層に設置された基部から上方へと延びるように設けられた立ち上がり部に、基礎部材の外周側面が沿うように設けられて、レベル調整用鋼材のレベル調整機構を介して固定されている。このように、レベル調整用鋼材は、基礎部材の下方ではなく、外周側面に沿うように、基礎部材の側方に設けられる。このため、基礎部材を設置するに際しては、揚重機などで基礎部材を適切な高さに静止させるように位置づけた後、基礎部材の側方の位置で、レベル調整機構により基礎部材の高さ位置を調整しつつ、基礎部材とレベル調整用鋼材を固定することで、レベル調整用鋼材により基礎部材を支持させればよい。このような作業においては、基礎部材の下面と地盤または地盤上の捨てコンクリート層との間の距離を予め計算したり、計算された距離にあわせてレベル調整に用いる部材の厚さを加工したりといった工程が不要である。
また、いったん固定した基礎部材の高さを再調整するような場合においても、揚重機などにより基礎部材を支持しつつ、固定を解除し、レベル調整機構により基礎部材の高さを調整しなおしたうえで、再度、基礎部材とレベル調整用鋼材とを固定すればよい。このような作業においても、レベル調整に用いる部材の厚さを加工したりする必要がない。
上記のような効果が相乗し、基礎杭の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材を設ける際に、基礎部材の高さを容易に調整できる、杭基礎構造を提供することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記レベル調整機構は、前記立ち上がり部に形成された、上下方向に延在する長孔であり、前記基礎部材の前記外周側面には、前記レベル調整用鋼材の前記長孔を介してボルトが緊締されている。
上記のような構成によれば、上下方向に延在するように形成された長孔をボルトが挿通される構成となっているため、レベル調整用鋼材の基部が地盤または当該地盤上の捨てコンクリート層に設置された状態で、基礎部材の高さを上下に調整することで、基礎部材とレベル調整用鋼材との相対的な高さ位置が変化したとしても、これに対応した任意の高さ位置で、ボルトを長孔に挿通させることができる。したがって、レベル調整用鋼材の、基礎部材の高さに応じた位置に、ボルトを挿通させるための孔を開設する作業を行う必要がない。
【0009】
本発明の別の態様においては、前記基礎杭の前記杭頭部には、当該杭頭部の側面に隙間を形成するための杭頭キャップが被せられ、前記杭頭キャップと、前記基礎部材との間に、前記底部コンクリート部が形成されている。
このような構成によれば、基礎杭の杭頭部に杭頭キャップを設けることで、基礎杭とプレキャストコンクリート造の基礎部材が、剛接合されておらず、半剛接合されている杭基礎構造を形成できる。基礎杭とプレキャストコンクリート造の基礎部材を半剛接合することで、基礎杭と基礎部材との接合部において杭頭部の回転拘束が緩和されるため、基礎杭に作用する地震荷重が低減され、杭基礎構造の構造安全性を高めることができる。
【0010】
また、本発明の杭基礎構造の構築方法は、基礎杭と、前記基礎杭の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造の構築方法であって、地盤に前記基礎杭を打ち込み、前記基礎杭の杭頭部を地盤から上方に突出させる工程と、基部と、前記基礎部材の高さ位置を調整して前記基礎部材を固定するためのレベル調整機構が設けられた立ち上がり部と、を備えているレベル調整用鋼材を、前記基部が前記地盤または当該地盤上の捨てコンクリート層の上に位置し、前記立ち上がり部が前記基部から上方へと延びるように設置する工程と、前記基礎部材を、前記基礎杭の前記杭頭部から上方に離間して位置づけ、当該基礎部材の外周側面において、前記レベル調整機構を介して高さ位置を調整しつつ、前記レベル調整用鋼材の前記立ち上がり部に沿わせて支持させる工程と、前記基礎杭の前記杭頭部と、前記基礎部材の下面との間に、セメント系材料を充填して底部コンクリート部を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
このような構成によれば、地盤または地盤上の捨てコンクリート層の上にレベル調整用鋼材を設置した後、基礎部材を、基礎杭の杭頭部から上方に離間して位置づけ、当該基礎部材の外周側面において、レベル調整機構を介して高さ位置を調整しつつ、レベル調整用鋼材に沿わせて支持させる。このように、レベル調整用鋼材は、基礎部材の下方ではなく、外周側面において基礎部材を支持するように、基礎部材の側方に設けられので、基礎部材を設置するに際しては、揚重機などで基礎部材を適切な高さに静止させるように位置づけた後、基礎部材の側方の位置で、レベル調整機構により基礎部材の高さ位置を調整しつつ、基礎部材とレベル調整用鋼材を固定することで、レベル調整用鋼材により基礎部材を支持させればよい。このような作業においては、基礎部材の下面と地盤または地盤上の捨てコンクリート層との間の距離を予め計算したり、計算された距離にあわせてレベル調整に用いる部材の厚さを加工したりといった工程が不要である。
したがって、基礎杭の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材を設ける際に、基礎部材の高さを容易に調整できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基礎杭の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材を設ける際に、基礎部材の高さを容易に調整できる、杭基礎構造、及び杭基礎構造の構築方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る杭基礎構造の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の杭基礎構造の、基礎部材に相当する部分の、A矢視部分における断面図である。
【
図3】杭基礎構造の構築方向の流れを示す図である。
【
図4】杭基礎構造の構築方法における、杭頭キャップを被せる工程を示す図である。
【
図5】杭基礎構造の構築方法における、レベル調整用鋼材を設置する工程を示す図である。
【
図6】杭基礎構造の構築方法における、基礎部材をレベル調整用鋼材により支持させる工程を示す図である。
【
図7】杭基礎構造の構築方法における、底部コンクリート部を形成する工程を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る杭基礎構造を示す断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る杭基礎構造の、レベル調整用鋼材の周辺の部分的な断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る杭基礎構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、基礎杭と、その基礎杭の上部に設けるプレキャストコンクリートPCa造の基礎部材とを備える杭基礎構造、及びその杭基礎構造の構築方法である。杭基礎構造は、基礎杭とPCa造の基礎部材が半剛接合される杭頭部に杭頭キャップを被せた杭基礎構造(第1実施形態)と、基礎杭とPCa造の基礎部材の間に杭頭キャップが設けられない杭基礎構造(第2実施形態)がある。
以下、添付図面を参照して、本発明による杭基礎構造、及び杭基礎構造の構築方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の第1実施形態に係る杭基礎構造の構成を示す断面図を
図1に示す。
図2は、
図1の杭基礎構造の、基礎部材に相当する部分の、A矢視部分における断面図である。
図1に示されるように、杭基礎構造1は、基礎杭2と、基礎部材3と、底部コンクリート部4と、レベル調整用鋼材5と、を主に備えている。
基礎杭2は、地盤G中で上下方向に延びるように設けられている。基礎杭2は、例えば、プレキャストコンクリート造からなる。基礎杭2の杭頭部2hは、地盤Gの表面Gf1から上方に突出している。本実施形態において、表面Gf1は、地盤Gを掘削することで、周囲の地盤Gの表面Gf2よりも下方に窪むように形成された凹部Kの底面を形成している。
【0014】
基礎杭2の杭頭部2hには、杭頭キャップ6が被せられている。杭頭キャップ6は、例えば、鋼板から形成されている。杭頭キャップ6は、杭頭部2hの上面を覆うキャップ頂板61と、キャップ頂板61の外周縁部から下方に延びて、基礎杭2の側面2sを外方から截頭円錐状に囲う周壁部62と、を一体に備えている。本実施形態において、周壁部62は、キャップ頂板61の外周縁部から下方に向かうにつれて、杭頭部2hから外側に離間するように傾斜している。周壁部62の下端は、地盤Gの表面Gf1に接触している。このような周壁部62は、杭頭部2hの側面2sとの間に、隙間Dを形成するように設けられている。
【0015】
基礎部材3は、基礎杭2の上に設けられている。基礎部材3は、基礎杭2の杭頭部2h及び杭頭キャップ6から上方に離間して設けられている。基礎部材3は、プレキャストコンクリート造である。基礎部材3は、例えば、平面視矩形状で、下面31と、上面32と、外周側面33と、を有している。下面31は、鉛直下方を向いて形成されている。上面32は、下面31に対して所定寸法上方に形成され、鉛直上方を向いて形成されている。外周側面33は、下面31の外周縁部と、上面32の外周縁部とを接続するように形成されている。外周側面33は、平面視矩形上の基礎部材3の四方の側方を向いて形成されている。
【0016】
本実施形態において、外周側面33は、下部外周側面33aと、中間部外周側面33bと、上部外周側面33cと、を有している。
下部外周側面33aは、基礎部材3の下部に形成されている。
中間部外周側面33bは、下部外周側面33aと、より上方に位置する上部外周側面33cとの間に形成されている。中間部外周側面33bは、下部外周側面33aよりも基礎部材3の中心部寄り(内側)に形成されている。下部外周側面33aと中間部外周側面33bとの間には、上方を向く段差面33dが形成されている。
上部外周側面33cは、基礎部材3の上部に形成されている。上部外周側面33cは、中間部外周側面33bよりも基礎部材3の中心部寄り(内側)に形成されている。中間部外周側面33bと上部外周側面33cとの間には、上方に向かうにつれて基礎部材3の中心部側に向かうように延びる傾斜面33sが形成されている。
【0017】
図1、
図2に示されるように、基礎部材3の内部には、第一スラブ接続筋35、第二スラブ接続筋36、籠筋37、及び底部鉄筋38が埋設されている。
第一スラブ接続筋35は、
図1の紙面に直交する方向に延びている。第一スラブ接続筋35は、上面32と平行な方向(
図1の紙面左右方向)に間隔をあけて複数本配置されている。第一スラブ接続筋35は、上下方向に間隔をあけて、3段に設けられている。第一スラブ接続筋35は、上部外周側面33cに相当する高さと、中間部外周側面33bに相当する高さの各々に設けられている。各第一スラブ接続筋35の両端は、上部外周側面33cと中間部外周側面33bに露出する第一接続スリーブ35jに接続されている。
第二スラブ接続筋36は、
図1の紙面左右方向に延びている。第二スラブ接続筋36は、上面32と平行な方向(
図1において紙面に直交する方向)に間隔をあけて複数本配置されている。第二スラブ接続筋36は、上下方向に間隔をあけて、3段に設けられている。第二スラブ接続筋36は、上部外周側面33cに相当する高さと、中間部外周側面33bに相当する高さの各々に設けられている。各第二スラブ接続筋36の両端は、上部外周側面33cと中間部外周側面33bに露出する第二接続スリーブ36jに接続されている。
図1に示されるように、籠筋37は、基礎部材3の上面32と外周側面33に沿って、基礎部材3の内側の構造を外方から囲うように、籠状に設けられている。
底部鉄筋38は、基礎部材3の下面31に沿って、複数本配置されている。複数本の底部鉄筋38は、平面視格子状に組まれている。
【0018】
基礎部材3の下面31の中央部には、上方に窪む下面凹部34が形成されている。
基礎部材3の中央部には、上下方向に延びて上面32と下面凹部34とに開口するコンクリート注入孔39が形成されている。これにより、基礎部材3の下側の空間と、上側の空間とは、コンクリート注入孔39を介して連通している。コンクリート注入孔39の径寸法は、下面凹部34の径寸法よりも小さい。
本実施形態において、基礎部材3の上面32には、ベースプレート81が設けられている。ベースプレート81上には、基礎部材3と、基礎部材3の上方に構築される建物本体(図示無し)との間に介装される積層ゴム支承100が固定される。ベースプレート81は、例えば平面視矩形の鋼板からなる。
ベースプレート81の下面には、下方に延びて基礎部材3に埋設される定着部材82が一体に設けられている。ベースプレート81には、積層ゴム支承100を固定するためのボルト(図示無し)が接続される接続スリーブ83が複数設けられている。複数の接続スリーブ83は、同心状に配置されている。各接続スリーブ83の下端には、アンカー筋84に接続されている。接続スリーブ83は、アンカー筋84とともに、基礎部材3に埋設されている。積層ゴム支承100は、複数のボルト(図示無し)の各々を、上方から、ベースプレート81を介して接続スリーブ83に締結することで、基礎部材3に固定される。
【0019】
後に説明するように、基礎部材3の下方には、底部コンクリート部4が、コンクリートを現場打ちすることで形成される。杭基礎構造1を構築するに際し、このように底部コンクリート部4が形成されるまでの間においては、基礎部材3は、レベル調整用鋼材5により支持されている。レベル調整用鋼材5は、杭頭部2hの周辺の地盤G上に形成された捨てコンクリート層71に設置されている。捨てコンクリート層71は、杭頭部2hの周辺の地盤Gの表面Gf1上に敷設された砕石71aと、砕石71aの上に打設されたレベルコンクリート71bと、を有している。
【0020】
図2に示されるように、レベル調整用鋼材5は、基礎部材3の周方向に間隔をあけて複数設けられている。レベル調整用鋼材5は、例えば、四方の外周側面33の各々に、二つずつ設けられている。
図1に示されるように、各レベル調整用鋼材5は、捨てコンクリート層71の表面に沿う板状の基部51と、基部51の一端から上方に延びる立ち上がり部52と、を一体に有する。基部51は、固定ボルト53により、捨てコンクリート層71に固定されている。立ち上がり部52は、外周側面33の下部外周側面33aに沿うように設けられている。換言すると、基礎部材3は、外周側面33がレベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿うように位置づけられている。
立ち上がり部52には、基礎部材3をレベル調整用鋼材5により支持するに際し、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられている。本実施形態においては、レベル調整機構55は、立ち上がり部52に、上下方向に延在するように形成された、長孔55Aである。立ち上がり部52は、長孔55Aに挿通させたボルト58が外方から緊締されることで、外周側面33に固定されている。換言すると、基礎部材3は、長孔55Aを介してボルト58が緊締されることで、レベル調整用鋼材5により支持されている。このようにして、基礎部材3の外周側面33が、立ち上がり部52に対し、レベル調整機構55すなわち長孔55Aを介して固定されている。ここで、外周側面33に緊締されるボルト58の上下方向の位置を、長孔55Aが延びる範囲内で調整することにより、基礎部材3の高さ位置が調整可能とされている。
【0021】
底部コンクリート部4は、杭頭部2hと、基礎部材3との間に、セメント系材料が現場打ちで充填されることで形成されている。底部コンクリート部4は、平面視で、基礎部材3の下面31と重なる範囲に形成されている。底部コンクリート部4は、より正確には、杭頭キャップ6と、基礎部材3との間に形成されている。底部コンクリート部4は、基礎部材3のコンクリート注入孔39の内側にも連続するように、上方へと延びるように形成されている。底部コンクリート部4には、底部コンクリート部4のひび割れ防止のためのメッシュ筋45が埋設されている。
このようにして、基礎杭2の杭頭部2hに設けられた杭頭キャップ6と、基礎部材3の下面との間に底部コンクリート部4が設けられることで、基礎杭2とプレキャストコンクリート造の基礎部材3とが接合されている。ここで、杭頭キャップ6により、杭頭部2hの側面2sと杭頭キャップ6との間に隙間Dが形成されているので、基礎杭2とプレキャストコンクリート造の基礎部材3とが、剛接合されておらず、半剛接合された構造となっている。
また、基礎部材3の下面31には、下面凹部34が形成されているので、底部コンクリート部4と基礎部材3との間においては、地震等による水平方向の変位が良好に伝達される。
【0022】
また、基礎部材3の周囲には、地盤Gの表面Gf2を覆うように、マットスラブ110が形成されている。地盤Gの凹部K内で基礎部材3の下部外周側面33a及び底部コンクリート部4の周囲は、例えばモルタルや土砂等の埋め戻し材101によって埋め戻されている。マットスラブ110は、地盤Gの表面Gf2及び埋め戻し材101を覆うように敷設された砕石102、砕石102上に打設されたコンクリート103上に、所定の厚さで形成されている。マットスラブ110には、複数本のマットスラブ筋111が埋設されている。各マットスラブ筋111の端部は、第一接続スリーブ35j、第二接続スリーブ36jに接続されている。
【0023】
次に、上記したような杭基礎構造1の構築方法について説明する。
図3は、杭基礎構造の構築方向の流れを示す図である。
図3に示すように、杭基礎構造1の構築方法は、地盤Gに基礎杭2を打ち込む工程S1と、レベル調整用鋼材5を設置する工程S2と、基礎部材3をレベル調整用鋼材5により支持させる工程S3と、底部コンクリート部4を形成する工程S4と、を含んでいる。
図4は、杭基礎構造の構築方法における、杭頭キャップを被せる工程を示す図である。
図4に示すように、地盤Gに基礎杭2を打ち込む工程S1では、まず、地盤Gにおいて、基礎杭2を設置する周囲を掘削し、凹部Kを形成し、凹部Kの底面、すなわち地盤Gの表面Gf1を整地する。次いで、地盤Gに基礎杭2を打ち込む。基礎杭2を打ち込む際には、水平面内における基礎杭2の芯ずれが所定の誤差範囲内となるように確認する。また、基礎杭2は、杭頭部2hが、地盤Gの表面Gf1から所定の寸法範囲内で上方に突出するように、上下方向のレベルを確認する。
その後、表面Gf1から上方に突出した基礎杭2の杭頭部2hに、杭頭キャップ6を被せる。更に、杭頭部2h(杭頭キャップ6)の周囲の地盤Gの表面Gf1上に、砕石71aを敷設し、その上にレベルコンクリート71bを打設することで、捨てコンクリート層71を形成する。
また、捨てコンクリート層71上に、底部コンクリート部4のひび割れ防止のためのメッシュ筋45を配筋する。
【0024】
図5は、杭基礎構造の構築方法における、レベル調整用鋼材を設置する工程を示す図である。
図5に示すように、レベル調整用鋼材5を設置する工程S2では、捨てコンクリート層71の上の所定位置に、複数のレベル調整用鋼材5を設置する。複数のレベル調整用鋼材5の各々は、基部51を捨てコンクリート層71の表面に沿わせ、立ち上がり部52が、上方へと延びるように設置する。複数のレベル調整用鋼材5の各々は、後に基礎部材3を計画上の位置に設けた際に、基礎部材3の外周側面33がレベル調整用鋼材5に沿う状態となるような位置、姿勢となるように設置する。その後、基部51を、固定ボルト53により、捨てコンクリート層71に固定する。
【0025】
図6は、杭基礎構造の構築方法における、基礎部材をレベル調整用鋼材により支持させる工程を示す図である。
図6に示すように、基礎部材3をレベル調整用鋼材5により支持させる工程S3では、工場等で予め製作したプレキャストコンクリート造の基礎部材3を、クレーン等で揚重し、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して、かつ外周側面33がレベル調整用鋼材5に沿うように位置づける。続いて、基礎部材3を、外周側面33において、レベル調整機構55を介して高さ位置を、設計値に基づいて調整しつつ、レベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿わせて支持させる。より具体的には、レベル調整用鋼材5に上下方向に延在するように形成された長孔55Aを介してボルト58を緊締させることで、高さ位置を調整した基礎部材3を、レベル調整用鋼材5により支持させる。
【0026】
図7は、杭基礎構造の構築方法における、底部コンクリート部を形成する工程を示す図である。
図7に示すように、底部コンクリート部4を形成する工程S4では、形成すべき底部コンクリート部4の外形形状にあわせて、捨てコンクリート層71上に型枠(図示無し)をセットする。これにより、基礎部材3の下面31と、地盤Gの表面Gf1との間の空間は、側方から、型枠によって閉塞される。その後、基礎部材3の上方からコンクリート注入孔39を通して、基礎杭2の杭頭部2h、より詳細には杭頭部2hに被せられた杭頭キャップ6と、基礎部材3の下面31との間に、セメント系材料を充填し、底部コンクリート部4を形成する。セメント系材料は、コンクリート注入孔39の内側まで充填される。底部コンクリート部4を形成するセメント系材料が硬化し、所定の強度を発現した後、型枠を撤去する。
【0027】
その後、
図1に示すように、凹部K内で基礎部材3の下部外周側面33a及び底部コンクリート部4の周囲を、例えばモルタルや土砂等の埋め戻し材101で埋め戻し、その上に、砕石102を敷設し、コンクリート103を打設する。更に、コンクリート103の上方に、マットスラブ筋111を配筋する。各マットスラブ筋111の端部は、第一接続スリーブ35j、第二接続スリーブ36jに接続する。次いで、コンクリートを所定の厚さで打設することで、マットスラブ110を形成する。
しかる後、基礎部材3上に、積層ゴム支承100を取り付け、その上に建物本体を構築していく。
【0028】
上述したような杭基礎構造1は、基礎杭2と、基礎杭2の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材3と、を備える杭基礎構造1であって、基礎杭2の杭頭部2hの周辺の地盤G上の捨てコンクリート層71に設置される基部51と、基部51から上方へと延び、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられた立ち上がり部52と、を備えているレベル調整用鋼材5を備え、基礎部材3は、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して、かつ外周側面33(下部外周側面33a)がレベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿うように位置づけられ、基礎部材の外周側面33が、立ち上がり部52に対し、レベル調整機構55を介して固定され、杭頭部2hと、基礎部材3との間には、セメント系材料が充填されて底部コンクリート部4が形成されている。
上記のような構成によれば、基礎部材3は、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して設けられている。また、基礎部材3は、レベル調整用鋼材5の、杭頭部2hの周辺の地盤G上の捨てコンクリート層71に設置された基部51から上方へと延びるように設けられた立ち上がり部52に、基礎部材3の外周側面33が沿うように設けられて、レベル調整用鋼材5のレベル調整機構55を介して固定されている。このように、レベル調整用鋼材5は、基礎部材3の下方ではなく、外周側面33に沿うように、基礎部材3の側方に設けられる。このため、基礎部材3を設置するに際しては、揚重機などで基礎部材3を適切な高さに静止させるように位置づけた後、基礎部材3の側方の位置で、レベル調整機構55により基礎部材3の高さ位置を調整しつつ、基礎部材3とレベル調整用鋼材5を固定することで、レベル調整用鋼材5により基礎部材3を支持させればよい。このような作業においては、基礎部材3の下面31と地盤G上の捨てコンクリート層71との間の距離を予め計算したり、計算された距離にあわせてレベル調整に用いる部材の厚さを加工したりといった工程が不要である。
また、いったん固定した基礎部材3の高さを再調整するような場合においても、揚重機などにより基礎部材3を支持しつつ、固定を解除し、レベル調整機構55により基礎部材3の高さを調整しなおしたうえで、再度、基礎部材3とレベル調整用鋼材5とを固定すればよい。このような作業においても、レベル調整に用いる部材の厚さを加工したりする必要がない。
上記のような効果が相乗し、基礎杭2の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材3を設ける際に、基礎部材3の高さを容易に調整できる、杭基礎構造1を提供することができる。
【0029】
特に、上記のような構成においては、基礎杭2の上方に、基礎杭2から離間して基礎部材3を設け、その後、基礎杭2と基礎部材3との間に底部コンクリート部4が打設される。このため、基礎部材3の設置位置を、基礎杭2の位置とは独立して、決定することができるので、基礎部材3を設置するに際し、基礎杭2の設置位置や高さが多少、計画上意図した位置からずれていたとしても、基礎部材3を、計画上の位置に設けることが可能である。したがって、基礎杭2を建て込む際に、施工誤差により基礎杭2の高さ位置や水平位置がずれた場合であっても、基礎杭2の施工誤差を吸収可能である。
【0030】
また、レベル調整機構55は、立ち上がり部52に形成された、上下方向に延在する長孔55Aであり、基礎部材3の外周側面33には、レベル調整用鋼材5の長孔55Aを介してボルト58が緊締されている。
上記のような構成によれば、上下方向に延在するように形成された長孔55Aをボルト58が挿通される構成となっているため、レベル調整用鋼材5の基部51が地盤G上の捨てコンクリート層71に設置された状態で、基礎部材3の高さを上下に調整することで、基礎部材3とレベル調整用鋼材5との相対的な高さ位置が変化したとしても、これに対応した任意の高さ位置で、ボルト58を長孔55Aに挿通させることができる。したがって、レベル調整用鋼材5の、基礎部材3の高さに応じた位置に、ボルト58を挿通させるための孔を開設する作業を行う必要がない。
【0031】
また、基礎杭2の杭頭部2hには、当該杭頭部2hの側面2sに隙間Dを形成するための杭頭キャップ6が被せられ、杭頭キャップ6と、基礎部材3との間に、底部コンクリート部4が形成されている。
このような構成によれば、基礎杭2の杭頭部2hに杭頭キャップ6を設けることで、基礎杭2とプレキャストコンクリート造の基礎部材3が、剛接合されておらず、半剛接合されている杭基礎構造1を形成できる。基礎杭2とプレキャストコンクリート造の基礎部材3を半剛接合することで、基礎杭2と基礎部材3との接合部において杭頭部2hの回転拘束が緩和されるため、基礎杭2に作用する地震荷重が低減され、杭基礎構造1の構造安全性を高めることができる。
【0032】
また、上述したような杭基礎構造1の構築方法は、基礎杭2と、基礎杭2の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材3と、を備える杭基礎構造1の構築方法であって、地盤Gに基礎杭2を打ち込み、基礎杭2の杭頭部2hを地盤Gから上方に突出させる工程S1と、基部51と、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられた立ち上がり部52と、を備えているレベル調整用鋼材5を、基部51が地盤G上の捨てコンクリート層71の上に位置し、立ち上がり部52が基部51から上方へと延びるように設置する工程S2と、基礎部材3を、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して位置づけ、当該基礎部材3の外周側面33(下部外周側面33a)において、レベル調整機構55を介して高さ位置を調整しつつ、レベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿わせて支持させる工程S3と、基礎杭2の杭頭部2hと、基礎部材3の下面31との間に、セメント系材料を充填して底部コンクリート部4を形成する工程S4と、を含む。
このような構成によれば、地盤G上の捨てコンクリート層71の上にレベル調整用鋼材5を設置した後、基礎部材3を、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して位置づけ、当該基礎部材3の外周側面33において、レベル調整機構55を介して高さ位置を調整しつつ、レベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿わせて支持させる。このように、レベル調整用鋼材5は、基礎部材3の下方ではなく、外周側面33おいて基礎部材3を支持するように、基礎部材3の側方に設けられので、基礎部材3を設置するに際しては、揚重機などで基礎部材3を適切な高さに静止させるように位置づけた後、基礎部材3の側方の位置で、レベル調整機構55により基礎部材3の高さ位置を調整しつつ、基礎部材3とレベル調整用鋼材5を固定することで、レベル調整用鋼材5により基礎部材3を支持させればよい。このような作業においては、基礎部材3の下面31と地盤G上の捨てコンクリート層71との間の距離を予め計算したり、計算された距離にあわせてレベル調整に用いる部材の厚さを加工したりといった工程が不要である。
したがって、基礎杭2の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材3を設ける際に、基礎部材3の高さを容易に調整できる。
【0033】
(第1実施形態の第1変形例)
なお、本発明の杭基礎構造、及び杭基礎構造の構築方法は、図面を参照して説明した上述の第1実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記第1実施形態では、複数のレベル調整用鋼材5を、周方向に間隔をあけて設けられているようにしたが、これに限られない。例えば、底部コンクリート部4を形成する際に用いる型枠を、レベル調整用鋼材5と兼用し、型枠に、長孔55Aを形成したうえで、型枠によって基礎部材3を支持するようにしてもよい。
このようにした場合においては、レベル調整用鋼材(型枠)5と基礎部材3をボルトで緊締し、レベル調整用鋼材5によって基礎部材3を支持せしめた後に、底部コンクリート部4を形成する型枠を設ける必要がなくなる。
この場合において、底部コンクリート部4を形成する際に打設したコンクリートが長孔55Aから流出することを抑制するために、基礎部材3のレベル調整が終了した後には、底部コンクリート部4を形成するコンクリートを打設する前に、長孔55Aを塞ぐようにするのが望ましい。
【0034】
(第1実施形態の第2変形例)
本発明の第1実施形態の第2変形例に係る杭基礎構造を示す断面図を、
図8に示す。
上記第1実施形態では、基礎部材3上に、積層ゴム支承100を設けるようにしたが、これに限られない。
図8に示すように、基礎部材3上に、滑り支承を設けるためのベースプレート200を設けるようにしてもよい。ベースプレート200には、滑り支承を取り付けるための取付孔201が複数形成されている。
ここで、例えば滑り支承の滑り板の面積が大きい場合においては、基礎部材3の平面視したときの大きさも大きくなる。このため、基礎部材3と底部コンクリート部4との間における水平方向における相対変位の拘束度合いをより高めることを目的として、基礎部材3の下面31において、下面凹部34の外周側に、上方に窪む外周凹部130を形成するようにしてもよい。
上記第1実施形態のように、基礎部材3上に積層ゴム支承100を設ける場合であっても、例えば積層ゴム支承100が大径であるような場合においては、本変形例と同様に、外周凹部130を形成するようにしてもよい。
【0035】
(第1実施形態の第3変形例)
本発明の第1実施形態の第3変形例に係る杭基礎構造の、レベル調整用鋼材の周辺の部分的な断面図を、
図9に示す。
図9においては、説明を簡潔にするため、底部コンクリート部4が打設される直前の状態が図示されている。
本変形例においては、レベル調整用鋼材5Aの構造が、上記実施形態とは異なっている。レベル調整用鋼材5Aは、捨てコンクリート層71の表面に沿う板状の基部51と、立ち上がり部52Aを有している。
基部51は、捨てコンクリート層71の表面に沿うように設けられている。基部51は、固定ボルト53により、捨てコンクリート層71に固定されている。
立ち上がり部52Aは、基部51の一端から上方に延びるように設けられた、第1鉛直板部52aを備えている。
【0036】
本変形例においては、立ち上がり部52Aは、第1鉛直板部52aの上端に、レベル調整機構55を備えている。本変形例におけるレベル調整機構55は、第1水平板部55a、第2鉛直板部55b、第2水平板部55c、及び高さ調整ボルト55dを備えている。
第1水平板部55aは、第1鉛直板部52aの上端から、基礎部材3とは反対側の、外側に向けて延びるように設けられている。
第2鉛直板部55bは、第1鉛直板部52aの上方に、第1鉛直板部52aから間隔をおいて設けられている。第2鉛直板部55bと第1鉛直板部52aは、同一の平面内に延在するように設けられている。第2水平板部55cは、第2鉛直板部55bの下端から、基礎部材3とは反対側の、外側に向けて延びるように設けられている。第2水平板部55cは、第1水平板部55aの上方に、第1水平板部55aから離間して、第1水平板部55aと平行となるように設けられている。
第2水平板部55cには、図示されないボルト孔が開設されている。このボルト孔には、高さ調整ボルト55dが、第2水平板部55cの上方から下方へ向けて、螺合、挿通されている。高さ調整ボルト55dの下端は、第1水平板部55aの上面に突き当たっている。
第2鉛直板部55bには、図示されないボルト孔が開設されている。このボルト孔に、ボルト58を、外方から基礎部材3の外周側面33に向けて挿通させ、緊締されることで、立ち上がり部52Aは、外周側面33に固定されている。換言すると、基礎部材3は、第2鉛直板部55bのボルト孔を介してボルト58が緊締されることで、レベル調整用鋼材5Aにより支持されている。
【0037】
このようにして、立ち上がり部52Aは、全体が、外周側面33の下部外周側面33aに沿うように設けられている。換言すると、基礎部材3は、外周側面33がレベル調整用鋼材5Aの立ち上がり部52A(の第1鉛直板部52aと第2鉛直板部55b)に沿うように位置づけられている。
上記のような構造を有する立ち上がり部52Aは、例えば溝形鋼により基部51、第1鉛直板部52a、及び第1水平板部55aを形成し、L形鋼により第2鉛直板部55b、第2水平板部55cを形成するようにして、製造され得る。
【0038】
このような構成においては、高さ調整ボルト55dを回転させることで、第1水平板部55aに対する、第2水平板部55cと、第2水平板部55cに対して相対移動不能に設けられている第2鉛直板部55bと基礎部材3の高さを、上下方向に、任意に調整することができる。
すなわち、本変形例において、基礎部材3をレベル調整用鋼材5Aにより支持するに際し、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55は、第1水平板部55a、第1水平板部55aの上方に、第1水平板部55aから離間して設けられた第2水平板部55c、第2水平板部55cの一端から上方に立ち上がるように設けられた第2鉛直板部55b、及び、第2水平板部55cのボルト孔を上方から下方へ向けて螺合、挿通されて、下端が第1水平板部55aの上面に突き当たるように設けられた高さ調整ボルト55dを備えている。
このようにして、基礎部材3の外周側面33が、立ち上がり部52Aに対し、上記のようなレベル調整機構55を介して固定されている。
【0039】
本変形例においては、
図3に示される、地盤Gに基礎杭2を打ち込む工程S1の後の、レベル調整用鋼材5を設置する工程S2において、捨てコンクリート層71の上の所定位置に、複数のレベル調整用鋼材5Aを設置する。より詳細には、レベル調整用鋼材5Aの、基部51、第1鉛直板部52a、及び第1水平板部55aを形成する溝形鋼の部分のみを、捨てコンクリート層71の上に設置する。複数のレベル調整用鋼材5Aの各々は、基部51を捨てコンクリート層71の表面に沿わせ、立ち上がり部52A(の第1鉛直板部52a)が、基部51から上方へと延びるように設置する。複数のレベル調整用鋼材5Aの各々は、後に基礎部材3を計画上の位置に設けた際に、基礎部材3の外周側面33がレベル調整用鋼材5Aに沿う状態となるような位置、姿勢となるように設置する。その後、基部51を、固定ボルト53により、捨てコンクリート層71に固定する。
また、基礎部材3の外周側面33に対して、予め、第2鉛直板部55b、第2水平板部55cを形成するL形鋼を、ボルト58によって、接合し、第2水平板部55cのボルト孔に、高さ調整ボルト55dを、第2水平板部55cの上方から下方へ向けて、螺合、挿通させておく。
【0040】
次に、基礎部材3をレベル調整用鋼材5Aにより支持させる工程S3では、基礎部材3をクレーン等で揚重し、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して、外周側面33がレベル調整用鋼材5Aの第1鉛直板部52aに沿うように、かつ第1水平板部55aと第2水平板部55cが上下方向で互いに離間して対向するように、位置づける。
その後、高さ調整ボルト55dの下端が第1水平板部55aの上面に突き当たるまで、基礎部材3を下降させ、高さ調整ボルト55dにより基礎部材3を、基礎部材3の外周側面33において、支持させる。
この状態で、高さ調整ボルト55dを適宜回転させることで、第1水平板部55aに対する基礎部材3の高さ位置を、設計値に基づいて、上下方向に調整する。このようにして、基礎部材3を、その外周側面33において、レベル調整用鋼材5Aの立ち上がり部52Aにより、レベル調整機構55を介して高さを調整しつつ支持させる。
その後、上記実施形態において、底部コンクリート部4を形成する工程S4として説明したように、底部コンクリート部4を形成する。
【0041】
本変形例においても、上記実施形態と同様な効果を奏することは、言うまでもない。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る杭基礎構造について説明する。本実施形態においては、上記第1実施形態と相違する部分についてのみ説明し、同じ構造についての説明は省略する。
本発明の第2実施形態に係る杭基礎構造を示す断面図を、
図10に示す。
上記第1実施形態では、基礎杭2の杭頭部2hに杭頭キャップ6を被せ、杭頭キャップ6と、基礎部材3との間に、底部コンクリート部4を形成した。これに替えて、本実施形態においては、杭頭キャップ6を設けない構成となっている。
本実施形態においては、
図10に示されるように、底部コンクリート部4が、直に基礎杭2の杭頭部2hに接触するような構成となり、杭頭部2hの側面2sには隙間Dは形成されない。
本実施形態における杭基礎構造1の構築方法は、上記第1実施形態において、
図3を用いて説明したものと概ね同じ構築方法となるが、地盤Gに基礎杭2を打ち込む工程S1において、基礎杭2の杭頭部2hに、杭頭キャップ6は被せられない点が、異なっている。
【0043】
上述したような杭基礎構造1は、上記第1実施形態と同様に、基礎杭2と、基礎杭2の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材3と、を備える杭基礎構造1であって、基礎杭2の杭頭部2hの周辺の地盤G上の捨てコンクリート層71に設置される基部51と、基部51から上方へと延び、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられた立ち上がり部52と、を備えているレベル調整用鋼材5を備え、基礎部材3は、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して、かつ外周側面33(下部外周側面33a)がレベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿うように位置づけられ、基礎部材の外周側面33が、立ち上がり部52に対し、レベル調整機構55を介して固定され、杭頭部2hと、基礎部材3との間には、セメント系材料が充填されて底部コンクリート部4が形成されている。
このような構成によれば、上記第1実施形態と同様に、基礎杭2の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材3を設ける際に、基礎部材3の高さを容易に調整できる、杭基礎構造1を提供することができる。
【0044】
また、上述したような杭基礎構造1の構築方法は、上記第1実施形態と同様に、基礎杭2と、基礎杭2の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材3と、を備える杭基礎構造1の構築方法であって、地盤Gに基礎杭2を打ち込み、基礎杭2の杭頭部2hを地盤Gから上方に突出させる工程S1と、基部51と、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられた立ち上がり部52と、を備えているレベル調整用鋼材5を、基部51が地盤G上の捨てコンクリート層71の上に位置し、立ち上がり部52が基部51から上方へと延びるように設置する工程S2と、基礎部材3を、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して位置づけ、当該基礎部材3の外周側面33(下部外周側面33a)において、レベル調整機構55を介して高さ位置を調整しつつ、レベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿わせて支持させる工程S3と、基礎杭2の杭頭部2hと、基礎部材3の下面31との間に、セメント系材料を充填して底部コンクリート部4を形成する工程S4と、を含む。
このような構成によれば、上記第1実施形態と同様に、基礎杭2の上にプレキャストコンクリート造の基礎部材3を設ける際に、基礎部材3の高さを容易に調整できる。
【0045】
(その他の変形例)
また、上記の各実施形態では、レベル調整用鋼材5を、捨てコンクリート層71上に設けるようにしたが、これに限られず、地盤Gの表面Gf1上に載置するようにしてもよい。
すなわち、杭基礎構造1を、基礎杭2と、基礎杭2の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材3と、を備える杭基礎構造1であって、基礎杭2の杭頭部2hの周辺の地盤Gに設置される基部51と、基部51から上方へと延び、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられた立ち上がり部52と、を備えているレベル調整用鋼材5を備え、基礎部材3は、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して、かつ外周側面33(下部外周側面33a)がレベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿うように位置づけられ、基礎部材の外周側面33が、立ち上がり部52に対し、レベル調整機構55を介して固定され、杭頭部2hと、基礎部材3との間には、セメント系材料が充填されて底部コンクリート部4が形成されている構成としてもよい。
また、杭基礎構造1の構築方法を、基礎杭2と、基礎杭2の上に設けられるプレキャストコンクリート造の基礎部材3と、を備える杭基礎構造1の構築方法であって、地盤Gに基礎杭2を打ち込み、基礎杭2の杭頭部2hを地盤Gから上方に突出させる工程S1と、基部51と、基礎部材3の高さ位置を調整して基礎部材3を固定するためのレベル調整機構55が設けられた立ち上がり部52と、を備えているレベル調整用鋼材5を、基部51が地盤Gの上に位置し、立ち上がり部52が基部51から上方へと延びるように設置する工程S2と、基礎部材3を、基礎杭2の杭頭部2hから上方に離間して位置づけ、当該基礎部材3の外周側面33(下部外周側面33a)において、レベル調整機構55を介して高さ位置を調整しつつ、レベル調整用鋼材5の立ち上がり部52に沿わせて支持させる工程S3と、基礎杭2の杭頭部2hと、基礎部材3の下面31との間に、セメント系材料を充填して底部コンクリート部4を形成する工程S4と、を含むようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、基礎部材3の上面にベースプレート81を設け、そのベースプレート上に積層ゴム支承100が配置されているが、ベースプレート81、及び積層ゴム支承100を設けることなく、基礎部材3から柱材が設けられる場合であってもよい。或いは、基礎部材3の上面に、ベースプレートを設けることなく、基礎部材3の上面に、直接、積層ゴム支承100が設けられる場合であってもよい。
【0047】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 杭基礎構造 55 レベル調整機構
2 基礎杭 55A 長孔
2h 杭頭部 58 ボルト
2s 側面 71 捨てコンクリート層
3 基礎部材 G 地盤
33 外周側面 D 隙間
33a 下部外周側面(外周側面)
4 底部コンクリート部 S1 地盤に基礎杭を打ち込む工程
5、5A レベル調整用鋼材 S2 レベル調整用鋼材を設置する工程
6 杭頭キャップ S3 基礎部材をレベル調整用鋼材により支持させる工程
51 基部 S4 底部コンクリート部を形成する工程
52、52A 立ち上がり部