IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソディックの特許一覧

<>
  • 特開-積層造形物の製造方法 図1
  • 特開-積層造形物の製造方法 図2
  • 特開-積層造形物の製造方法 図3
  • 特開-積層造形物の製造方法 図4
  • 特開-積層造形物の製造方法 図5
  • 特開-積層造形物の製造方法 図6
  • 特開-積層造形物の製造方法 図7
  • 特開-積層造形物の製造方法 図8
  • 特開-積層造形物の製造方法 図9
  • 特開-積層造形物の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178554
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】積層造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/50 20210101AFI20241218BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20241218BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20241218BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241218BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20241218BHJP
   B22F 10/368 20210101ALI20241218BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241218BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20241218BHJP
【FI】
B22F10/50
B22F10/28
B22F10/64
B22F1/00 S
B22F10/34
B22F10/368
B33Y10/00
B33Y40/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096768
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松本 格
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 翼
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA24
4K018BA14
4K018CA44
4K018EA60
4K018FA08
(57)【要約】
【課題】積層造形物を高品質に造形することが可能であり、且つマルテンサイト変態開始温度が200℃以上の金属材料に対して有効な積層造形物の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明によれば、積層造形物の製造方法であって、造形温度T1に調整された造形テーブル上に、焼戻し処理に伴い膨張する金属材料を含む材料粉体を供給して材料層を形成する材料層形成工程と、材料層にレーザ光等を照射することにより固化層を形成する固化工程とを繰り返すことにより、固化層を積層する固化層形成工程と、所定数又は所定厚み分の固化層が新たに形成されるごとに、固化層を造形温度T1から加熱温度T2まで昇温させ所定時間温度保持した後に造形温度T1まで降温させる、加熱膨張処理工程とを備え、金属材料のマルテンサイト変態開始温度は、200℃以上であり、T1<T2≦350℃及び50℃≦T2-T1≦200℃の関係が満たされる製造方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形物の製造方法であって、
造形温度に調整された造形テーブル上に、焼戻し処理に伴い膨張する金属材料を含む材料粉体を供給して材料層を形成する材料層形成工程と、前記材料層の所定領域にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成する固化工程とを繰り返すことにより、前記固化層を積層する固化層形成工程と、
所定数又は所定厚み分の前記固化層が新たに形成されるごとに、前記固化層を前記造形温度から加熱温度まで昇温させ前記加熱温度に所定時間保持した後に前記造形温度まで降温させる、加熱膨張処理工程とを備え、
前記金属材料のマルテンサイト変態開始温度は、200℃以上であり、
前記造形温度をT1、前記加熱温度をT2とすると、
下記式(1)及び(2)の関係が満たされる、製造方法。
T1<T2≦350℃ (1)
50℃≦T2-T1≦200℃ (2)
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
前記加熱温度は、200℃以上350℃以下である、製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法であって、
前記金属材料は、高速度鋼である、製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の製造方法であって、
前記積層造形物の造形完了後に、前記固化層を前記造形温度から前記加熱温度まで昇温させ前記加熱温度に所定時間保持する造形後加熱工程と、
前記造形後加熱工程の後に、前記固化層を前記加熱温度から常温まで徐冷する徐冷工程とをさらに備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の積層造形においては、種々の方式が知られている。例えば、粉末床溶融結合法では、造形テーブル上の造形領域に材料粉体からなる材料層を形成し、レーザ光又は電子ビームを走査して材料層の所定位置に照射することで、材料層を焼結又は溶融させて固化層を形成する。そして、材料層及び固化層の形成を繰り返すことによって固化層が積層され、所望の三次元造形物が製造される。
【0003】
特許文献1には、1層又は複数層の固化層を形成するごとに意図的にマルテンサイト変態を進行させ、金属の収縮による引張応力をマルテンサイト変態に伴う膨張による圧縮応力で軽減して造形物の残留応力を制御することで、造形物の変形や割れを抑制可能な積層造形物の製造方法が開示されている。具体的には、第1温度をT1、第2温度をT2、固化層のマルテンサイト変態開始温度をMs、固化層のマルテンサイト変態終了温度をMfとすると、Mf≦T1、T2<T1、及びT2≦Msを満たす温度条件で、固化層を第1温度から第2温度まで冷却してマルテンサイト変態を進行させる。マルテンサイト変態量(膨張量)は、上述の温度条件の下で第1温度及び第2温度を適切に設定することで制御可能である。また、固化層の温度調整は、例えば、加熱器及び冷却器により構成される温度調整装置を造形テーブルに設け、温度調整装置により造形テーブルを第1温度又は第2温度に対応する設定温度に調整することで可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6295001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な仕様の積層造形装置において、造形テーブルの設定温度の上限は約200~350℃である。従って、マルテンサイト変態開始温度が200℃以上の比較的高温である金属材料を用いた積層造形に特許文献1の方法を適用する場合、上述の温度条件を満たす第1温度の設定可能範囲が制限され、造形物の変形や割れを十分に抑制することが困難であった。設定温度の上限がより高い特殊仕様の造形テーブルを導入することも考えられるが、造形テーブルを非常に高温とすることによる周辺部材の熱変位等の影響が懸念される。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、積層造形物を高品質に造形することが可能であり、且つマルテンサイト変態開始温度が200℃以上の金属材料に対して有効な積層造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]積層造形物の製造方法であって、造形温度に調整された造形テーブル上に、焼戻し処理に伴い膨張する金属材料を含む材料粉体を供給して材料層を形成する材料層形成工程と、前記材料層の所定領域にレーザ光又は電子ビームを照射することにより固化層を形成する固化工程とを繰り返すことにより、前記固化層を積層する固化層形成工程と、所定数又は所定厚み分の前記固化層が新たに形成されるごとに、前記固化層を前記造形温度から加熱温度まで昇温させ前記加熱温度に所定時間保持した後に前記造形温度まで降温させる、加熱膨張処理工程とを備え、前記金属材料のマルテンサイト変態開始温度は、200℃以上であり、前記造形温度をT1、前記加熱温度をT2とすると、下記式(1)及び(2)の関係が満たされる、製造方法。T1<T2≦350℃(1)50℃≦T2-T1≦200℃(2)
[2][1]に記載の製造方法であって、前記加熱温度は、200℃以上350℃以下である、製造方法。
[3][1]又は[2]に記載の製造方法であって、前記金属材料は、高速度鋼である、製造方法。
[4][1]から[3]の何れか1項に記載の製造方法であって、前記積層造形物の造形完了後に、前記固化層を前記造形温度から前記加熱温度まで昇温させ前記加熱温度に所定時間保持する造形後加熱工程と、前記造形後加熱工程の後に、前記固化層を前記加熱温度から常温まで徐冷する徐冷工程とをさらに備える、製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る積層造形物の製造方法では、焼戻し処理に伴い膨張する金属材料を含む材料粉体が用いられ、また、加熱膨張処理工程において、所定数又は所定厚み分の固化層が新たに形成されるごとに、固化層を造形温度から加熱温度まで昇温させ所定時間保持した後に造形温度まで降温させる。これにより、金属の収縮による引張応力を加熱膨張処理工程における熱処理に伴う膨張による圧縮応力で軽減して造形物の残留応力を制御し、造形物の変形や割れを抑制することが可能となる。本発明の製造方法は、焼戻し処理に伴い膨張し、マルテンサイト変態開始温度が200℃以上の金属材料に対して有効である。また、造形温度及び加熱温度は、上述の式(1)及び(2)の関係が満たされるように設定されるため、造形テーブルの設定温度の上限が約200~350℃である一般的な仕様の積層造形装置により実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る積層造形装置100の概略構成図である。
図2】材料層形成装置3の斜視図である。
図3】材料層形成装置3のリコータヘッド32の上方からの斜視図である。
図4】材料層形成装置3のリコータヘッド32の下方からの斜視図である。
図5】温度調整装置42を備える造形テーブル4の分解斜視図である。
図6】積層造形装置100を用いた積層造形物の製造方法を示す図である。
図7】積層造形装置100を用いた積層造形物の製造方法を示す図である。
図8】積層造形装置100を用いた積層造形物の製造方法における、造形テーブル4の設定温度の変化を示すグラフである。
図9】造形テーブル4上の造形物について、固化層形成工程及び加熱膨張処理工程における上面層の温度変化を示すグラフである。
図10】造形テーブル4上の造形物について、造形後加熱工程及び徐冷工程における上面層の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.積層造形装置100
図1は、本実施形態の積層造形法において用いられる積層造形装置100の一例を示している。当該積層造形装置100は、チャンバ1、材料層形成装置3、及び照射装置5を備える。チャンバ1内に配置される造形テーブル4上に設けられた造形領域Rにおいて、材料層91及び固化層92の形成を繰り返すことで、所望の積層造形物が形成される。積層造形装置100により製造される積層造形物の用途は特に限定されないが、本発明は、金型として用いられる積層造形物の製造に特に好適に利用可能である。本発明は、例えば、プレス加工用の金型(以下、プレス金型と称する)等のような、より高い強度及びより高い剛性が求められる金型として用いられる積層造形物の製造に特に好適に利用可能である。
【0012】
1.1.チャンバ1
チャンバ1は、所望の積層造形物が形成される領域である造形領域Rを覆う。チャンバ1は、不活性ガス給排装置(不図示)に接続されている。不活性ガス給排装置は、チャンバ1に所定濃度の不活性ガスを供給し、これによりチャンバ1内が不活性ガスで充満される。また、固化層92の形成に伴い発生するヒュームを含んだ不活性ガスは、チャンバ1から排出されて不活性ガス給排装置においてヒュームの除去処理を行ったうえでチャンバ1に供給されて再利用される。なお、本明細書において不活性ガスとは、材料層91や固化層92と実質的に反応しないガスであり、成形材料の種類に応じて窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等から適当なものが選択される。
【0013】
例えば図1に示すように、チャンバ1の上面には、照射装置5から出力されるレーザ光Lの透過窓となるウィンドウ1aが設けられる。ウィンドウ1aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成され、レーザ光Lの種類に応じて、石英ガラスもしくはホウケイ酸ガラス又はゲルマニウム、シリコン、ジンクセレンもしくは臭化カリウムの結晶等から選択される。例えば、レーザ光Lがファイバレーザ又はYAGレーザの場合、ウィンドウ1aは石英ガラスで構成可能である。
【0014】
また例えば図1に示すように、チャンバ1の上面には、ウィンドウ1aを覆うように汚染防止装置17が設けられる。汚染防止装置17は、円筒状の筐体17aと、筐体17a内に配置された円筒状の拡散部材17cとを備える。筐体17aと拡散部材17cの間に不活性ガス供給空間17dが設けられる。また、筐体17aの底面には、拡散部材17cの内側に開口部17bが設けられる。拡散部材17cには多数の細孔が設けられており、不活性ガス給排装置から不活性ガス供給空間17dに供給された清浄な不活性ガスは当該細孔を通じて清浄室17eに充満され、開口部17bから汚染防止装置17の下方に向かって噴出される。このような構成により、ヒュームのウィンドウ1aへの付着を防止し、レーザ光Lの照射経路からヒュームを排除することができる。
【0015】
1.2.材料層形成装置3
材料層形成装置3は、チャンバ1の内部に設けられる。図2に示すように、材料層形成装置3は、ベース31と、ベース31上に配置されるリコータヘッド32とを備える。リコータヘッド32は、モータ等の駆動機構を内蔵するリコータヘッド駆動装置33によって水平1軸方向に往復移動可能に構成される。
【0016】
図3及び図4に示すように、リコータヘッド32は、材料収容部32aと、材料供給口32bと、材料排出口32cとを備える。材料供給口32bは、材料収容部32aの上面に設けられ、材料供給ユニット(不図示)から材料収容部32aに供給される材料粉体の受け口となる。材料排出口32cは、材料収容部32aの底面に設けられ、材料収容部32a内の材料粉体を排出する。材料排出口32cは、材料収容部32aの長手方向に延びるスリット形状を有する。リコータヘッド32の両側面には、平板状のブレード32fb,32rbが設けられる。ブレード32fb,32rbは、材料排出口32cから排出される材料粉体を平坦化して、材料層91を形成する。
【0017】
1.3.照射装置5
照射装置5は、材料層91にレーザ光L又は電子ビームを照射して固化層92を形成する。例えば図1に示すように、本実施形態の照射装置5は、チャンバ1の上方に設けられ、造形領域R内に形成される材料層91の照射領域にレーザ光Lを照射して、材料粉体を溶融又は焼結して固化させ、固化層92を形成する。図2に示すように、本実施形態の照射装置5は、レーザ光源51と、フォーカス制御ユニット53と、X軸ガルバノミラー55a及びY軸ガルバノミラー55bと、X軸ガルバノミラー55a及びY軸ガルバノミラー55bを各々回転させるアクチュエータ(不図示)とを備える。
【0018】
レーザ光源51はレーザ光Lを生成する。レーザ光Lは、材料粉体を焼結又は溶融可能であればよく、例えば、ファイバレーザ、COレーザ、YAGレーザ等が用いられる。フォーカス制御ユニット53は、内部に焦点制御レンズを備え、レーザ光Lを集光しスポット径を調整することができる。
【0019】
フォーカス制御ユニット53を通過したレーザ光Lは、水平1軸方向であるX軸方向と、他の水平1軸方向であってX軸方向に直交するY軸方向に2次元に走査される。具体的には、レーザ光Lは、X軸ガルバノミラー55aにより反射されて造形領域RのX軸方向に走査され、Y軸ガルバノミラー55bにより反射されて造形領域RのY軸方向に走査される。X軸ガルバノミラー55a及びY軸ガルバノミラー55bにより反射されたレーザ光Lは、ウィンドウ1aを透過して造形領域R内の材料層91に照射され、これにより、固化層92が形成される。
【0020】
なお、照射装置5は、上述の形態に限定されない。例えば、フォーカス制御ユニット53に変えてfθレンズが設けられてもよい。また、照射装置5は、レーザ光Lではなく電子ビームを照射して材料層91を固化させることで固化層92を形成するように構成されてもよい。具体的には、照射装置5を、電子を放出するカソード電極(不図示)と、電子を収束して加速するアノード電極(不図示)と、磁場を形成して電子ビームの方向を一方向に収束するソレノイド(不図示)と、被照射体である材料層91と電気的に接続されカソード電極との間に電圧を印加するコレクタ電極(不図示)と、を含むよう構成してもよい。このとき、カソード電極およびアノード電極が電子ビームを出力する出力源の役割を果たし、ソレノイドが電子ビームを走査する走査手段の役割を果たす。なお、ウィンドウ1aおよび汚染防止装置17を省略し、カソード電極がチャンバ1内に突出するように設けられてもよい。また、電子ビームを照射する照射装置を用いる場合は、チャンバ1内の雰囲気を、真空に近い状態の貴ガス雰囲気下においてもよい。貴ガスは、希ガスと称されることもある。
【0021】
1.4.造形テーブル4
図1に示すように、造形テーブル4はチャンバ1内に配置され、造形テーブル4上の造形領域Rに造形物が形成される。造形テーブル4は、造形テーブル駆動装置41によって駆動され鉛直方向に移動可能である。造形時には造形領域R内にベースプレート90が配置され、材料層形成装置3によってベースプレート90の上面に材料粉体が供給されて、材料層91が形成される。
【0022】
積層造形装置100は、材料層91及び固化層92の温度調整を行うための温度調整装置42を備える。本実施形態では、造形テーブル4の内部に温度調整装置42が設けられ、造形テーブル4を温度調整装置42によって所定の温度に調整することで、造形テーブル4上の材料層91及び固化層92の温度調整を行なっている。図5に示すように、温度調整装置42は、造形テーブル4を加熱するための加熱器43と、造形テーブル4を冷却するための冷却器44とを備える。
【0023】
具体的には、造形テーブル4は天板4a及び3つの支持板4b,4c,4dを備え、天板4aとその下に配置された支持板4bとの間に天板4aを加熱可能な加熱器43が配置され、支持板4bの下側の2枚の支持板4c,4dの間に天板4aを冷却可能な冷却器44が配置されている。
【0024】
加熱器43は、例えば、発熱体を有する電気ヒータ、又は内部に高温の熱媒を流通可能に構成された管状部材である。また、冷却器44は、例えば、チラーやクーリングタワー等の冷媒循環装置(不図示)から供給された冷媒を流通可能に構成された管状部材を支持板4d上に配置することで構成可能である。このような構成により、造形テーブル4の最上面の天板4aを加熱又は冷却することで所定の温度に調整することができる。材料層91及び固化層92は、天板4aとの間の直接的な伝熱、或いは天板4a上に配置されたベースプレート90及び下側に形成された層を介した間接的な伝熱により、温度調整される。
【0025】
なお、温度調整装置42の構成は、上述の実施形態の構成に限定されるものではない。本実施形態においては、冷却器44の管状部材を支持板4c,4dの間に挟むように配置しているが、例えば、支持板4c,4dの一方又は両方の内部に冷媒を流通させるための管路を形成し、当該管路により冷却器44を構成してもよい。或いは、天板4a及び3つの支持板4b,4c,4dを一体化された構造体とし、当該構造体の中に加熱器43及び冷却器44を構成してもよい。また、造形テーブル駆動装置41の熱変位を防止するため、温度調整装置42と造形テーブル駆動装置41との間に一定の温度に保たれた恒温部を設けてもよい。
【0026】
2.金属材料
材料層91の形成には、焼戻し処理に伴い膨張し且つマルテンサイト変態開始温度が200℃以上である金属材料を含む材料粉体が用いられる。焼戻し処理は、焼入れ処理後の不安定な組織を有する金属材料を所定の温度に再加熱して温度保持した後に冷却することで、組織の変態又は析出を進行させ組織を安定化させて靭性を向上させる処理を意味する。上述の性質を有する金属材料を含む材料粉体を用いることで、後述する加熱膨張処理工程において、レーザ光Lの照射直後の温度低下に伴う金属の収縮による引張応力を加熱膨張処理工程における熱処理に伴う体積膨張による圧縮応力で軽減して、造形物の残留応力を制御し造形物の変形や割れを抑制することが可能となる。
【0027】
材料粉体として用いられる当該金属材料は、マルテンサイト変態開始温度が200℃以上であり、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは350℃以上である。上述のように、マルテンサイト変態開始温度が比較的高温である場合、造形テーブル4の設定温度の上限が約200~350℃である一般的な仕様の積層造形装置においては、特許文献1に開示される方法により造形物の変形や割れを十分に抑制することが困難であったが、本発明を適用することで高品質な造形を実現することが可能となる。
【0028】
焼戻し処理に伴い膨張し且つマルテンサイト変態開始温度が200℃以上である金属材料として、JIS G4403に定められる高速度鋼が例示される。高速度鋼としては、具体的には、モリブデン系高速度鋼(SKH50、SKH51、SKH52、SKH53、SKH54、SKH55,SKH56、SKH57、SKH58、SKH59、SKH40)、タングステン系高速度鋼(SKH2、SKH3、SKH4、SKH10)が挙げられる。高速度鋼は、例えば、金型の材料として使用されている。高速度鋼は、例えば、プレス金型等のような、より高い強度及びより高い剛性が求められる金型の材料として使用されている。
【0029】
高速度鋼は、炭素を0.73~1.60質量%と比較的多く含有する。そのため、固化層92がレーザ光L又は電子ビームの照射後の非常に高温な状態から常温まで急冷される過程において、炭化物が析出した箇所を起点として亀裂が進展して割れが生じやすい。急冷を回避するために、造形テーブル4を300℃程度の比較的高温に設定して材料層91及び固化層92の温度調整を行いながら造形を行うことも行われてきたが、造形物のサイズが大きい場合には温度調整が不十分となり割れの抑制が非常に困難であった。また、高速度鋼は、マルテンサイト変態開始温度が300~400℃の比較的高温であるため、上述のように、本発明を適用することによる技術的意義が特に顕著である。
【0030】
材料粉体は、焼戻し処理に伴い膨張し且つマルテンサイト変態開始温度が200℃以上である金属材料を、材料粉体全体の50質量%以上含むことが好ましく、材料粉体全体の80質量%以上含むことがより好ましく、材料粉体全体の95質量%以上含むことがさらに好ましい。また、材料粉体を、焼戻し処理に伴い膨張し且つマルテンサイト変態開始温度が200℃以上である金属材料のみで構成してもよい。
【0031】
また、ベースプレート90は、材料粉体と同様の金属材料で構成してもよく、異なる組成の金属材料で構成してもよく、例えば鉄等の金属で構成してもよい。
【0032】
3.積層造形物の製造方法
次に、図6図10を参照して、上述の積層造形装置100を用いた積層造形物の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、造形温度T1に調整された造形テーブル4上に、焼戻し処理に伴い膨張する金属材料を含む材料粉体を供給して材料層91を形成する材料層形成工程と、材料層91の所定領域にレーザ光L又は電子ビームを照射することにより固化層92を形成する固化工程とを繰り返すことにより、固化層92を積層する固化層形成工程と、所定数又は所定厚み分の固化層92が新たに形成されるごとに、固化層92を造形温度T1から加熱温度T2まで昇温させ加熱温度T2に所定時間保持した後に造形温度T1まで降温させる、加熱膨張処理工程とを備える。また、本実施形態に係る製造方法は、積層造形物の造形完了後に、固化層92を造形温度T1から加熱温度T2まで昇温させ加熱温度T2に所定時間保持する造形後加熱工程と、造形後加熱工程の後に、固化層92を加熱温度T2から常温Tnまで徐冷する徐冷工程とをさらに備える。
【0033】
3.1.固化層形成工程
固化層形成工程は、材料層形成工程と固化工程とを備える。材料層形成工程では、造形領域Rに材料粉体からなる材料層91を形成する。また、固化工程では、材料層91の所定の照射領域に対してレーザ光Lを照射して固化層92を形成する。材料層形成工程及び固化工程は繰り返し実施される。なお、以下の説明において、固化層形成工程により新たに形成された所定数又は所定厚み分の固化層92を上面層と称する場合がある。
【0034】
まず、1回目の材料層形成工程が行われる。図8は、本実施形態の製造方法における、造形テーブル4の温度変化を示すグラフである。また、図9は、固化層形成工程及び加熱膨張処理工程における上面層の温度変化を示すグラフである。材料層形成工程を含む固化層形成工程において、造形テーブル4は造形温度T1に調整される。本実施形態では、温度調整装置42の加熱器43により天板4aを加熱することで、造形テーブル4が造形温度T1に調整される。そして、造形温度T1に調整された造形テーブル4上にベースプレート90を載置した状態で造形テーブル4の高さを適切な位置に調整する。この状態で、リコータヘッド32を図6の左側から右側に移動させることにより、図7に示すように、ベースプレート90上に1層目の材料層91が形成される。材料層91は、天板4aからベースプレート90を介した伝熱により、造形温度T1に予熱される。
【0035】
次に、1回目の固化工程が行われる。図7に示すように、1層目の材料層91の所定の照射領域にレーザ光Lを照射することによって、1層目の材料層91を固化させ、1層目の固化層92を得る。ここで、固化工程において、造形テーブル4は造形温度T1に維持されている。新たに形成された固化層92は、図9に示すように、レーザ光Lの照射直後は約1400℃~1600℃の非常に高温(温度Ts)であるが、照射完了後に造形テーブル4と熱平衡となるように温度が低下し、所定時間経過後に造形温度T1となる。金属は熱膨張係数が正であるため、このような温度低下に伴い体積が収縮する。しかし、ベースプレート90や、隣接する層との密着により収縮量が制限されるため、造形物に引張応力が残留する。
【0036】
続いて、2回目の材料層形成工程が行われる。1層目の固化層92を形成後、造形テーブル4の高さを材料層91の1層分下げる。この状態で、リコータヘッド32を造形領域Rの図7の右側から左側に移動させることにより、1層目の固化層92を覆うように2層目の材料層91が形成される。そして2回目の固化工程が行われる。上述と同様の方法で、2層目の材料層91の所定の照射領域にレーザ光L又は電子ビームを照射することによって2層目の材料層91を固化させ、2層目の固化層92を得る。
【0037】
所望の三次元造形物が得られるまで、材料層形成工程及び固化工程が繰り返され、複数の固化層92が積層される。隣接する固化層92は、互いに強く固着される。
【0038】
3.2.加熱膨張処理工程
加熱膨張処理工程は、固化層形成工程により所定数又は所定厚み分の前記固化層92が新たに形成されるごとに実施される。
【0039】
図9に示すように、加熱膨張処理工程においては、まず、材料層形成工程において造形テーブル4と熱平衡状態となり造形温度T1に維持されている固化層92を、造形温度T1から加熱温度T2に昇温させ、加熱温度T2に所定時間保持する。本実施形態では、温度調整装置42の加熱器43により天板4aを加熱することで、造形テーブル4が加熱温度T2に調整され、固化層92は、天板4aからベースプレート90及び下側に形成された層を介した伝熱により、加熱温度T2に調整されて温度保持される。
【0040】
続いて、固化層92を造形温度T1まで降温させる。本実施形態では、温度調整装置42の冷却器44により天板4aを冷却することで、造形テーブル4が加熱温度T2から造形温度T1に調整され、固化層92は、天板4aからベースプレート90及び下側に形成された層を介した伝熱により、造形温度T1に調整される。なお、以下の説明において、加熱膨張処理工程において固化層92を造形温度T1から加熱温度T2に昇温させ、加熱温度T2に所定時間保持し、その後加熱温度T2から造形温度T1に降温させる一連の処理を加熱膨張処理と称する場合がある。
【0041】
造形温度T1及び加熱温度T2は、下記式(1)及び(2)の関係を満たすように設定される。
T1<T2≦350℃ (1)
50℃≦T2-T1≦200℃ (2)
本実施形態では、一例として、造形温度T1は200℃、加熱温度T2は300℃に設定されている。
【0042】
なお、加熱膨張処理は、少なくとも上面層に対して実施されればよい。本実施形態では、造形テーブル4に温度調整装置42が設けられているため、固化層92が積層されて得られた固化体全体、すなわち、上面層及び上面層よりも下側の固化層92に対して加熱膨張処理が実施される。
【0043】
加熱膨張処理における加熱温度T2は、一般的な焼戻し処理における加熱温度(一例として、高速度鋼の場合は500℃以上)と比べてはるかに低い温度に設定される。従って、上述の加熱膨張処理は、焼戻し処理とは異なる熱処理であり、靭性の向上等の焼戻し処理の効果を奏するものではない。しかしながら、焼戻し処理に伴い膨張し且つマルテンサイト変態開始温度が200℃以上である金属材料を含む材料粉体を用いた場合、上述のような関係を満たすように設定された造形温度T1及び加熱温度T2で固化層92に対して加熱膨張処理を行うことで、焼戻し処理時と同様の体積膨張を発生させることができる。これにより、金属の収縮による引張応力を加熱膨張処理に伴う膨張による圧縮応力で軽減して造形物の残留応力を制御し、造形物の変形や割れを抑制することが可能となる。
【0044】
なお、造形温度T1及び加熱温度T2は、T1<T2≦350℃の関係を満たし、好ましくは、T1<T2≦300℃の関係を満たす。この場合、一般的な仕様の積層造形装置においても容易に加熱膨張処理を実行可能であり、また、積層造形装置100を構成する周辺部材への熱影響を抑制可能である。
【0045】
造形温度T1の下限値は特に限定されないが、造形温度T1は、例えば、100℃以上であり、好ましくは150℃以上である。加熱温度T2は、造形物の残留応力をより効果的に制御するうえで、200℃以上であることが好ましい。なお、加熱膨張処理に伴う体積膨張量は、造形温度T1と加熱温度T2の差(T2-T1)に依存し、差(T2-T1)が大きいほど体積膨張量が大きくなる。
【0046】
図9に示すように、加熱膨張処理工程において固化層92を造形温度T1から加熱温度T2へ昇温するのに要する時間(昇温時間)をt1、加熱温度T2に保持する時間(温度保持時間)をt2、加熱温度T2から造形温度T1へ降温するのに要する時間(降温時間)をt3とする。昇温時間t1は1時間以上であることが好ましく、本実施形態では1時間に設定されている。温度保持時間t2は、1時間以上であることが好ましく、本実施形態では1時間に設定されている。降温時間t3は、1時間以上であることが好ましく、本実施形態では1時間に設定されている。
【0047】
なお、加熱膨張処理工程は、造形途中に行われ、固化層92が1層形成される度に実施してもよく、複数層の固化層92が新たに形成される度に実施してもよく、所定厚み(例えば、1~10mm)分の固化層92が新たに形成される度に実施してもよい。また、加熱膨張処理工程の実施サイクルは、造形の過程において変更されてもよい。また、積層造形の事前調査として行われる試験造形において、加熱膨張処理を実施せずに造形を行い、固化層92の積層に伴って造形物に割れが発生した時点の積層数又は積層高さを調査し、当該積層数又は積層高さに基づき加熱膨張処理工程の実施サイクルを設定してもよい。この場合、例えば、当該積層数又は積層高さを超えない層数又は厚み分の固化層92が新たに形成される度に加熱膨張処理工程を実施してもよい。
【0048】
3.3.造形後加熱工程及び徐冷工程
造形後加熱工程は、造形完了後、すなわち全ての固化層92が形成された後に実施される。図10に示すように、造形後加熱工程では、固化層92を造形温度T1から加熱温度T2まで昇温させて、加熱温度T2に所定時間保持する。造形後加熱工程の後に実施される工程である徐冷工程では、固化層92を加熱温度T2から常温Tn(5℃~35℃)まで徐冷する。本実施形態では、図10に示すように、加熱温度T2から常温Tnまで、所定時間ごとに、所定の温度分降温した後に温度保持することを繰り返して固化層92を段階的に降温させることで徐冷を行う。これにより、造形の最終段階で形成された上面層についても加熱膨張処理と同様の熱処理を行って造形物の残留応力を制御することが可能となる。また、造形完了後に固化層92が常温Tnまで急冷されて、造形物に割れが発生することを抑制することができる。
【0049】
造形後加熱工程及び徐冷工程における固化層92の温度調整は、図8に示すように、造形テーブル4を温度調整することで実施可能である。
【0050】
図10に示すように、造形後加熱工程において固化層92を造形温度T1から加熱温度T2へ昇温するのに要する時間(昇温時間)をt4、加熱温度T2に保持する時間(温度保持時間)をt5とする。昇温時間t4は1時間以上であることが好ましく、本実施形態では1時間に設定されている。温度保持時間t5は、1時間以上であることが好ましく、本実施形態では1時間に設定されている。
【0051】
また、徐冷工程において固化層92を段階的に降温させる場合の1回の降温に要する時間である降温時間t6は、1時間以上であることが好ましく、本実施形態では1時間に設定されている。また、降温後の温度保持時間t7は、1時間以上であることが好ましく、本実施形態では1時間に設定されている。また、1回の降温での温度幅である降温幅ΔTは、例えば、30~70℃であり、本実施形態では50℃に設定されている。
【0052】
なお、徐冷工程は、本実施形態のように固化層92を段階的に降温させる構成に限定されるものではない。例えば、固化層92を比較的長時間に渡って連続的に降温させることで徐冷工程を実施してもよい。また、造形後加熱工程及び徐冷工程を実施せずに造形を終了してもよい。
【0053】
また、造形途中又は造形完了後に、チャンバ1内に設けられた機械加工装置95により、固化層92が積層されて得られた固化体の表面や不要部分に対して切削、研磨等の機械加工を施してもよい。上述の工程の完了後は、未固化の材料粉体及び切削屑を排出することによって、造形物を得る。
【0054】
4.他の実施形態
本発明は、以下の態様によっても実施することができる。
【0055】
上述の実施形態においては、温度調整装置42を造形テーブル4の内部に設け、材料層91及び固化層92をベースプレート90及び下側の層を介して下方から加熱又は冷却し温度調整を行った。温度調整装置42の構成は、この例に限定されるものではなく、例えば、材料層91及び固化層92をその上方から加熱又は冷却する構成としてもよい。この場合、加熱器43として、例えば、ハロゲンランプ等を用いることができる。また、冷却器44を、チャンバ1に充満される不活性ガスと同種の冷却気体を材料層91及び固化層92に対して上方から吹き付ける送風機、又はペルチェ素子等によって冷却された冷却板を材料層91及び固化層92に上方から接触させる構成としてもよい。このような温度調整装置42によれば、材料層91、及び固化層92のうち上面層を構成する部分をベースプレート90及び下側の層を介さず直接造形温度T1及び加熱温度T2に温度調整することができ、多数層の固化層92を形成した後でも迅速に温度調整を行うことができる。
【実施例0056】
以下、詳細な内容について実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
実施例1、実施例2、及び比較例1において、温度調整装置42を備える造形テーブル4上に配置されたベースプレート90の上面に積層造形により造形物を形成し、割れの発生の有無を確認した。
【0058】
<実施例1>
実施例1では、ベースプレート90(材料:S50C、縦125×横125×厚さ15mmの直方体形状)の上面に、高速度鋼であるSKH51に相当する材料粉体(ヘガネス製、高速度鋼粉M2)を用いて造形物(縦20×横20×厚さ20mmの立方体形状)を、積層造形装置100(株式会社ソディック製、OPM250L、造形テーブル4の設定温度の上限値:300℃)により造形した。固化層形成工程において、造形温度T1は200℃に設定した。造形中、1mmの固化層92が新たに形成される度に、加熱膨張処理工程を実施した。加熱膨張処理工程では、加熱温度T2は300℃、昇温時間t1は1時間、温度保持時間t2は1時間、降温時間t3は1時間に設定した。造形完了後、造形後加熱工程及び徐冷工程を実施した。造形後加熱工程では、昇温時間t4は1時間、温度保持時間t5は1時間に設定した。徐冷工程では、降温時間t6を1時間、温度保持時間t7を1時間、降温幅ΔTを50℃に設定し、固化層92を段階的に降温させることで徐冷を行った。
【0059】
<実施例2>
実施例2では、造形物を、縦80×横80×厚さ10mmの直方体形状としたこと以外は、実施例1と同じ条件で造形を行った。
【0060】
<比較例1>
比較例1では、造形物のサイズを、底面の半径が10mm、高さが45mmの略円柱形状とした。固化層形成工程において、造形温度T1は300℃に設定した。加熱膨張処理工程、造形後加熱工程、及び徐冷工程は実施しなかった。その他は、実施例1と同じ条件で造形を行った。
【0061】
<結果>
実施例1及び実施例2の造形物は、造形中、造形完了後、徐冷工程の実施から1週間経過後の何れにおいても、割れが発生しなかった。比較例1の造形物は、造形中に、造形物を高さ35mmまで造形した時点で造形物に割れが発生した。
【0062】
一般的に、造形物の水平方向のサイズが大きいほどレーザ光Lの照射直後の温度低下に伴う金属の収縮に起因する引張応力による割れが発生しやすい。比較例1においては造形物に割れが発生したのに対し、造形物のサイズがより大きい実施例2において割れが発生しなかったことから、加熱膨張処理工程の実施が造形物の割れの抑制に有効であることが分かる。
【0063】
以上、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 :チャンバ
1a :ウィンドウ
3 :材料層形成装置
4 :造形テーブル
4a :天板
4b :支持板
4c :支持板
4d :支持板
5 :照射装置
17 :汚染防止装置
17a :筐体
17b :開口部
17c :拡散部材
17d :不活性ガス供給空間
17e :清浄室
31 :ベース
32 :リコータヘッド
32a :材料収容部
32b :材料供給口
32c :材料排出口
32fb :ブレード
32rb :ブレード
33 :リコータヘッド駆動装置
41 :造形テーブル駆動装置
42 :温度調整装置
43 :加熱器
44 :冷却器
51 :レーザ光源
53 :フォーカス制御ユニット
55a :X軸ガルバノミラー
55b :Y軸ガルバノミラー
90 :ベースプレート
91 :材料層
92 :固化層
95 :機械加工装置
100 :積層造形装置
L :レーザ光
R :造形領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10