(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178557
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】列車ダイヤ変更支援装置及び列車ダイヤ変更支援方法
(51)【国際特許分類】
B61L 27/12 20220101AFI20241218BHJP
【FI】
B61L27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096773
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富山 友恵
(72)【発明者】
【氏名】木村 祥太
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄飛
(72)【発明者】
【氏名】足立 進吾
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】生原 敬人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕一
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ32
(57)【要約】
【課題】回生電力をより確実に活用することが可能な列車ダイヤ変更支援装置を提供する。
【解決手段】改善候補算出部202は、列車ダイヤ情報3に係る各列車の走行中に使用された回生電力量の変動履歴を示す回生電力量情報6と列車ダイヤ情報3とを用いて、回生電力量の使用率が基準よりも低い時間範囲において、到着時刻と出発時刻との差が一定値以下となる互いに異なる列車の組み合わせのそれぞれを改善候補として選択する。列車ダイヤ変更部203は、列車ダイヤ情報3に対して改善候補に含まれる列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更した変更ダイヤ情報を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の列車の運行計画を示す列車ダイヤ情報の変更を支援する列車ダイヤ変更支援装置であって、
前記列車ダイヤ情報に係る各列車の走行中に使用された回生電力量の変動履歴を示す回生電力量情報と前記列車ダイヤ情報とを用いて、前記回生電力量の使用率が基準よりも低い時間範囲において、到着時刻と出発時刻との差が一定値以下となる互いに異なる列車の組み合わせのそれぞれを改善候補として選択する候補選択部と、
前記列車ダイヤ情報に対して前記改善候補に含まれる列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更した変更ダイヤ情報を生成するダイヤ変更部と、を有する列車ダイヤ変更支援装置。
【請求項2】
前記ダイヤ変更部は、前記改善候補を示す画面を表示し、ユーザから指定された前記改善候補に含まれる列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更する、請求項1に記載の列車ダイヤ変更支援装置。
【請求項3】
前記列車ダイヤ情報に係る各列車の走行中に消費された消費電力量の変動履歴を示す走行実績情報と、変電所が前記列車に供給した電力量である送電量の変動履歴を示す送電履歴情報とに基づいて、前記回生電力量情報を算出する回生電力算出部をさらに有する、請求項1に記載の列車ダイヤ変更支援装置。
【請求項4】
前記回生電力量情報は、各列車に電力を供給する変電所のき電区間ごとに前記回生電力量の履歴を示し、
前記候補選択部は、前記き電区間ごとに前記改善候補を選択する、請求項1に記載の列車ダイヤ変更支援装置。
【請求項5】
前記候補選択部は、所定の時間範囲における到着時刻と出発時刻との差が一定値以下となる互いに異なる列車の組み合わせにおいて、当該所定の時間範囲に到着時刻を有する列車の数に所定の定数を乗算した値が当該所定の時間範囲における前記回生電力量よりも所定値以上大きい場合、前記回生電力量の使用率が基準よりも低いと判断する、請求項1に記載の列車ダイヤ変更支援装置。
【請求項6】
前記候補選択部は、前記回生電力量の使用率が基準よりも低い時間範囲において、当該時間範囲に到着時刻を有する列車と、当該列車のブレーキタイミングから一定値を引いた時刻から当該列車の到着時刻に一定値を加えた時刻までの間に出発時刻を有する列車との組み合わせをさらに前記改善候補として選択する、請求項1に記載の列車ダイヤ変更支援装置。
【請求項7】
前記候補選択部は、車両形式が所定の条件を満たす列車の中から、前記改善候補を選択する、請求項1に記載の列車ダイヤ変更支援装置。
【請求項8】
複数の列車の運行計画を示す列車ダイヤ情報の変更を支援する列車ダイヤ変更支援装置による列車ダイヤ変更支援方法であって、
前記列車ダイヤ情報に係る各列車の走行中に使用された回生電力量の変動履歴を示す回生電力量情報と前記列車ダイヤ情報とを用いて、前記回生電力量の使用率が基準よりも低い時間範囲において、到着時刻と出発時刻との差が一定値以下となる互いに異なる列車の組み合わせのそれぞれを改善候補として選択し、
前記列車ダイヤ情報に対して前記改善候補に含まれる列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更した変更ダイヤ情報を生成する、列車ダイヤ変更支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、列車ダイヤ変更支援装置及び列車ダイヤ変更支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境意識の高まり並びに電力費用の高騰などにより、鉄道事業者においても消費電力量の削減が重視されている。鉄道事業者では、通常、事業全体の消費電力量のうち列車の走行に関わる消費電力量が最も大きくなるため、列車の走行に関わる消費電力量の削減が課題となっている。
【0003】
これに対して特許文献1には、列車で発生する回生電力を有効活用することで消費電力量を低減するための技術が開示されている。この技術では、列車のダイヤなどからき電区間ごとの単位時間当たりの回生電力の使用率が算出され、その回生電力の使用率が閾値以下となる時間及び場所が通知される。これにより、回生電力の使用率が低い時間と場所を知ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、回生電力の使用率が低い時間と場所を知ることができるだけなので、回生電力を有効に活用することが難しいことがある。例えば、回生電力を活用するためには、列車の発着時刻などを調整する必要があるが、回生電力の使用率が低い時間と場所によっては、列車の発着時刻を大幅に変更しなければならなくなる。このような場合、回生電力を活用するために列車の発着時刻を変更することは現実的には難しく、結果として回生電力を活用することができない。
【0006】
本開示の目的は、回生電力をより確実に活用することが可能な列車ダイヤ変更支援装置及び列車ダイヤ変更支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に従う列車ダイヤ変更支援装置は、複数の列車の運行計画を示す列車ダイヤ情報の変更を支援する列車ダイヤ変更支援装置であって、前記列車ダイヤ情報に係る各列車の走行中に使用された回生電力量の変動履歴を示す回生電力量情報と前記列車ダイヤ情報とを用いて、前記回生電力量の使用率が基準よりも低い時間範囲において、到着時刻と出発時刻との差が一定値以下となる互いに異なる列車の組み合わせのそれぞれを改善候補として選択する候補選択部と、前記列車ダイヤ情報に対して前記改善候補に含まれる列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更した変更ダイヤ情報を生成するダイヤ変更部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回生電力をより確実に活用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態の列車ダイヤ変更支援装置の構成を示す図である。
【
図8】全体処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】回生電力算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】候補算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態の列車ダイヤ変更支援装置の構成を示す図である。
図1に示す列車ダイヤ変更支援装置100は、複数の列車の運行計画である列車ダイヤを示す列車ダイヤ情報の変更を支援する装置であり、入力部101と、出力部102と、通信部103と、プロセッサ104と、メモリ105とを有する。
【0012】
入力部101は、例えば、キーボード、マウス及びタッチパネルなどであり、列車ダイヤ変更支援装置100を使用するユーザから種々の情報を受け付ける。出力部102は、例えば、ディスプレイなどであり、種々の情報を出力(例えば、表示)する。通信部103は、例えば、ネットワークカードなどであり、外部装置(図示せず)と通信する。
【0013】
プロセッサ104は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などであり、メモリ105に記録されたコンピュータプログラム(図示せず)を読み取り、その読み取ったコンピュータプログラムを実行することで種々の機能部を実現する。
図1の例では、プロセッサ104は、コンピュータプログラムを実行することで、回生電力算出部201と、改善候補算出部202と、列車ダイヤ変更部203とを実現する。
【0014】
回生電力算出部201は、各列車の走行中に使用された回生電力量の走行中の変動履歴を示す回生電力量情報を算出する。改善候補算出部202は、回生電力算出部201にて算出された回生電力量情報に基づいて、到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更する変更箇所の候補である改善候補を選択する候補選択部である。列車ダイヤ変更部203は、改善候補算出部202にて算出された改善候補における列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更した変更ダイヤ示す変更ダイヤ情報を算出するダイヤ変更部である。
【0015】
メモリ105は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などであり、上述したようにプロセッサ104の動作を規定するコンピュータプログラムを記憶する。また、メモリ105は、プロセッサ104にて使用及び生成される種々の情報を記憶する。
図1の例では、メモリ105は、駅情報1と、変電所情報2と、列車ダイヤ情報3と、変電所送電履歴情報4と、車両走行実績情報5と、回生電力量情報6を記憶する。
【0016】
図2は、駅情報1の一例を示す図である。駅情報1は、列車が停車又は通過する各駅の位置を示す情報である。
図2の例では、駅情報1は、フィールド11及び12を含む。
【0017】
フィールド11は、駅を識別するための識別情報として駅の名称である駅名を格納する。フィールド12は、駅の位置を格納する。駅の位置は、
図2の例では、列車が走行する路線に沿った、所定の起点から駅の所定の位置(例えば、中央位置)までの距離で表されている。
【0018】
図3は、変電所情報2の一例を示す図である。変電所情報2は、列車を駆動するための電力を列車に供給する変電所に関する情報である。
図3に例では、変電所情報2は、フィールド21~23を含む。
【0019】
フィールド21は、変電所を識別するための識別情報として変電所の名称である変電所名を格納する。フィールド22は、変電所が列車に電力を供給するき電区間の開始位置を格納し、フィールド23は、そのき電区間の終了位置を格納する。き電区間の開始位置及び終了位置は、
図3の例では、列車が走行する路線に沿った、所定の起点からの距離で表されている。
【0020】
図4は、列車ダイヤ情報3の一例を示す図である。列車ダイヤ情報3は、列車の運行計画である列車ダイヤを示す情報である。列車ダイヤ情報3は、例えば、列車ダイヤを立案する輸送計画システム(図示せず)から取得される。なお、列車ダイヤ情報3は、列車の運行を管理する運行管理システム(図示せず)にて取得された運行結果を列車ダイヤとして示す動的データでもよい。この場合、列車ダイヤ情報3は、例えば、1日の運行終了後に行管理システムから取得される。
【0021】
図4の例では、列車ダイヤ情報3は、列車の運行便のそれぞれに対応する複数のレコード31で構成される。各レコード31は、列車が始発駅から終着駅までの停車又は通過する各駅の到着時刻及び出発時刻を示す。
【0022】
図5は、変電所送電履歴情報4の一例を示す図である。変電所送電履歴情報4は、各変電所が各列車に供給した電力量である送電量の変動履歴を示す送電履歴情報であり、変電所などから一日の運行終了後に取得されて蓄積される動的なデータである。
図5の例では、変電所送電履歴情報4は、フィールド41~44を含む。
【0023】
フィールド41は、変電所名を格納する。フィールド42は、変電所が供給する送電量を計測する計測単位時間の始点時刻である計測始点時刻を格納し、フィールド43は、その計測単位時間の終点時刻である計測終点時刻を格納する。フィールド44は、計測始点時刻から計測終点時刻までの計測単位時間において変電所が供給する送電量を格納する。なお、実際の計測単位時間が後述する回生電力量を算出する算出単位時間よりも細かい場合、変電所送電履歴情報4における計測単位時間を算出単位時間とし、フィールド44には、算出単位時間内の送電量が合算された値が格納されてもよい。また、算出単位時間の区切りは計測単位時間の区切りと合うように予め設定されているとする。
【0024】
図6は、車両走行実績情報5の一例を示す図である。車両走行実績情報5は、列車の走行実績を示す走行実績情報であり、車両に搭載された車上モニタリングシステムなどから取得されて蓄積される動的なデータである。
図6の例では、車両走行実績情報5は、フィールド50~59を含む。
【0025】
フィールド50は、列車を識別するための識別情報として列車の名称である列車名を格納する。フィールド51は、列車の車両形式を格納する。フィールド52は、走行実績を取得する取得単位時間において列車が走行していた区間である走行区間を格納する。走行区間は、図の例では、駅間で表されているが、この例に限らない。フィールド53は、取得単位時間の始点時刻における列車の位置である始点位置を格納し、フィールド54は、取得単位時間の終点時刻における列車の位置である終点位置を格納する。フィールド55は、取得単位時間の始点時刻を格納し、フィールド56は、取得単位時間の終点時刻を格納する。フィールド57は、始点時刻における列車の速度である始点速度を格納し、フィールド58は、終点時刻における列車の速度である終点速度を格納する。フィールド59は、取得単位時間において列車にて消費された電力量である消費電力量を格納する。このため、走行実績情報は、各列車の走行中に消費された消費電力量の変動履歴を示すこととなる。
【0026】
上記の分析対象となる各動的データは、特定の日のデータでもよいし、月又は半年などの所定の期間のデータの統計値(平均値又は中央値など)でもよいし、天候又は季節などの特徴でクラスタリングしたデータの統計値などでもよい。なお、統計値は、列車の運行が乱れた日などの特異日を除いたデータから算出されることが好ましい。
【0027】
図7は、回生電力量情報6の一例を示す図である。回生電力量情報6は、回生電力算出部201にて算出される情報である。
図7の例では、回生電力量情報6は、フィールド60~66を有する。
【0028】
フィールド60は、回生電力を算出する算出区間を識別する識別名を格納する。算出区間は、回生電力を算出する算出単位時間とき電区間との組み合わせで規定される。フィールド61は、算出区間の始端位置を格納し、フィールド62は、算出区間の終端位置を格納する。フィールド63は、算出区間の始端時刻を格納し、フィールド64は、算出区間の終端時刻を格納する。フィールド65は、算出区間において列車にて消費された電力量である区間消費電力量を格納する。フィールド66は、算出区間にて使用された回生電力量を格納する。
【0029】
図8は、列車ダイヤ変更支援装置100による全体処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0030】
全体処理では、先ず、回生電力算出部201は、メモリ105から変電所情報2を読み込む(ステップS101)。そして、回生電力算出部201は、変電所情報2のレコードごとにステップS102~S104を繰り返すループ処理Aを実行する。
【0031】
具体的には、ループ処理Aでは、回生電力算出部201は、先ず、変電所情報2のレコードのいずれかを対象変電所情報として取得する(ステップS102)。回生電力算出部201は、対象変電所情報に基づいて、算出単位時間ごとに、対象変電所情報にて示されるき電区間で発生した回生電力量を、これらの算出単位時間とき電区間とで規定される算出区間ごとの回生電力量として算出する回生電力量算出処理(
図9参照)を実行する(ステップS103)。そして、回生電力算出部201は、算出した算出区間ごとの回生電力量を回生電力量情報6に加えてメモリ105に記録する(ステップS104)。
【0032】
そして、全てのレコードについてステップS102~S104の処理が終了すると、ループ処理Aが終了され、改善候補算出部202は、メモリ105に記録された回生電力量情報6に基づいて、列車ダイヤ情報3における改善候補を算出する候補算出処理(
図10参照)を実行する(ステップS105)。
【0033】
そして、列車ダイヤ変更部203は、算出区間ごとの回生電力量を示す画面である回生電力表示画面(
図11参照)を出力部102に表示する(ステップS106)。回生電力表示画面は、例えば、列車ダイヤ情報3を示すダイヤ図を算出区間で区切り、各算出区間に対応する領域のそれぞれを、回線電力量のレベルに応じた色で表した画面である。
【0034】
列車ダイヤ変更部203は、回生電力表示画面において改善候補をさらに表示する(ステップS107)。このとき、列車ダイヤ変更部203は、改善候補の強調表示を行う。
【0035】
列車ダイヤ変更部203は、改善候補における列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更した変更ダイヤ示す変更ダイヤ情報を作成するダイヤ変更処理を実行し(ステップS108)、処理を終了する。
【0036】
ステップS108のダイヤ変更処理では、例えば、列車ダイヤ変更部203は、先ず、ユーザから、改善候補における駅出発時刻及び駅到着時刻の一方又は両方の変更を指示する変更指示を受け付ける。列車ダイヤ変更部203は、その変更指示に従って、列車のダイヤを変更する。このとき、列車の駅出発時刻を変更した場合、列車ダイヤ変更部203は、駅間の走行時分が変化しないように、次駅の駅到着時刻も当該駅出発時刻を変更した変更時間分だけ変更する。これにより、次駅の駅出発時刻が「次駅の駅到着時刻+最小停車時分」以下となった場合、列車ダイヤ変更部203は、アラートを出力部102に表示する。また、列車の駅到着時刻を変更した場合、列車ダイヤ変更部203は、駅間の走行時分が変化しないように、前駅の駅出発時刻も当該駅到着時刻の変更時間分だけ変更する。これにより、前駅の駅到着時刻が「前駅の駅出発時刻-最小停車時分」以下となった場合、列車ダイヤ変更部203は、アラートを出力部102に表示する。なお、最小停車時分は、駅ごとに予め設定されている。
【0037】
なお、列車ダイヤ変更部203は、ユーザから変更指示を受け付ける代わりに、所定のアルゴリズムに従って自動的に列車のダイヤを変更してもよい。
【0038】
図9は、
図8のステップS103の回生電力算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0039】
回生電力算出処理では、先ず、回生電力算出部201は、回生電力量を算出する対象となる算出区間である処理対象区間に対応する回生電力量情報(
図7に示した回生電力量情報6の1レコード分に相当するデータ)である対象データを生成する(ステップS201)。このとき、回生電力算出部201は、対象データの「始端位置」に対象変電所情報の「き電区間開始位置」を設定し、「終端位置」に対象変電所情報の「き電区間終了位置」を設定し、「始端時刻」に「処理開始時刻」を設定し、対象データにおける「終端時刻」に「始端時刻+算出単位時間」を設定する。処理開始時刻は、例えば、ユーザにて設定される。
【0040】
回生電力算出部201は、対象データの「始端時刻」が処理終了時刻となるまでステップS202~S208を繰り返すループ処理Bを実行する。処理終了時刻は、例えば、ユーザにて設定される。
【0041】
ループ処理Bでは、回生電力算出部201は、先ず、メモリ105から車両走行実績情報5を読み込む(ステップS202)。回生電力算出部201は、車両走行実績情報5のレコードごとにステップS203~S205の処理を繰り返すループ処理Cを実行する。
【0042】
ループ処理Cでは、回生電力算出部201は、先ず、車両走行実績情報5のレコードのいずれかを対象走行実績情報として取得する(ステップS203)。
【0043】
続いて、回生電力算出部201は、対象走行実績情報が処理対象区間内の情報を有するか否かを判定する(ステップS204)。具体的には、回生電力算出部201は、対象走行実績情報の「始点位置」及び「始点時刻」を、処理対象区間の「始端位置」、「終端位置」、「始端時刻」及び「終端時刻」と比較して、以下の条件C11又はC12を満たす場合、対象走行実績が処理対象区間内の情報を有すると判定する。
条件C11:「処理対象区間の終端位置>対象走行実績情報の始端位置≧処理対象区間の始端位置」、かつ、「処理対象区間の終端時刻>対象走行実績情報の始端時刻≧処理対象区間の始端時刻」
条件C12:「処理対象区間の終端位置>対象走行実績情報の終端位置≧処理対象区間の始端位置」、かつ、「処理対象区間の終端時刻≧対象走行実績情報の終端時刻>処理対象区間の始端時刻」
【0044】
対象走行実績情報が処理対象区間内の情報を有さない場合、回生電力算出部201は、ステップS203の処理に戻る。一方、対象走行実績情報が処理対象区間内の情報を有する場合、回生電力算出部201は、対象走行実績情報の消費電力量に基づいて、処理対象区間における区間消費電力量を算出する(ステップS205)。具体的には、回生電力算出部201は、対象走行実績情報の取得単位時間が処理対象区間の時間に含まれる割合である重複割合を算出し、その重複割合を対象走行実績情報の消費電力量に乗算した値(消費電力量×重複割合)を処理対象区間の区間消費電力量に加算する。
【0045】
重複割合は、
ケースC21(「処理対象区間の終端時刻>対象走行実績情報の始端時刻≧処理対象区間の始端時刻」、かつ、「処理対象区間の終端時刻≧対象走行実績情報の終端時刻≧処理対象区間の始端時刻」)の場合、1(100%)となり、
ケースC22(「処理対象区間の終端時刻>対象走行実績情報の始端時刻≧処理対象区間の始端時刻」、かつ「処理対象区間の終端時刻<対象走行実績情報の終端時刻」)の場合、「(処理対象区間の終端時刻-対象走行実績情報の始端時刻)÷(対象走行実績情報の終端時刻-対象走行実績情報の始端時刻)」となり、
ケースC23(「対象走行実績情報の始端時刻<処理対象区間の始端時刻」、かつ、「処理対象区間の終端時刻≧対象走行実績情報の終端時刻>処理対象区間の始端時刻」)の場合、「(対象走行実績情報の終端時刻-処理対象区間の始端時刻)÷(対象走行実績情報の終端時刻-対象走行実績情報の始端時刻)」となる。
【0046】
そして、車両走行実績情報5の全てのレコードについてステップS203~S205の処理が終了すると、ループ処理Cが終了される。この場合、回生電力算出部201は、変電所送電履歴情報4から、処理対象区間に対応するレコードを対象送電履歴情報として取得する(ステップS206)。具体的には、回生電力算出部201は、変電所送電履歴情報4のレコードのうち、対象変電所情報の「変電所名」と同じ「変電所名」を有し、かつ、「処理対象区間の終端時刻>計測始点時刻≧処理対象区間の始端時刻」を満たすレコードを全て対象送電履歴情報として取得する。なお、本実施形態では、変電所送電履歴情報4は、計測単位時間の区切りが算出単位時間の区切りと合うように単位時間が設定されているため、計測始点時刻が考慮されるだけでよい。
【0047】
回生電力算出部201は、ステップS206で取得した対象送電履歴情報の送電量と処理対象区間の区間消費電力量とに基づいて、処理対象区間の回生電力量を算出して、対象データに登録する(ステップS207)。具体的には、回生電力算出部201は、処理対象区間の区間消費電力量から、ステップS206で取得した対象送電履歴情報の送電量を合算した合算値を減算した値を、処理対象区間の回生電力量として算出する。
【0048】
回生電力算出部201は、現在の対象データの終端時刻を始端時刻とし、その始端時刻に単位時間を加算した値を終端時刻として設定した新たな対象データを生成する(ステップS208)。
【0049】
そして、始端時刻が処理終了時刻になるまでステップS202~S208の処理が終了すると、回生電力算出部201は、ループ処理Bを終了して、回生電力算出処理を終了する。
【0050】
なお、以上説明した回生電力算出処理では、車両走行実績情報5の消費電力量から回生電力量を算出していたが、車両走行実績情報5として予め回生電力量が登録されている場合、回生電力算出部201は、その回生電力量を用いてもよい。
【0051】
図10は、
図8のステップS105の候補算出処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0052】
候補算出処理では、先ず、改善候補算出部202は、メモリ105から回生電力量情報6を取得する(ステップS301)。改善候補算出部202は、回生電力量情報6のレコードごとにステップS302~S307の処理を繰り返すループ処理Dを実行する。
【0053】
ループ処理Dでは、改善候補算出部202は、回生電力量情報6のレコードのいずれかを取得し、そのレコードの「始端位置」、「終端位置」、「始端時刻」及び「終端時刻」で規定される算出区間を対象算出区間として設定する(ステップS302)。
【0054】
改善候補算出部202は、メモリ105内の列車ダイヤ情報3から、対象算出区間内に駅に到着する列車である回生発生列車の駅到着データを全て取得する(ステップS303)。回生発生列車は、対象算出区間において回生電力を生成する列車であり、駅到着データは、到着駅及び到着時刻を含む。
【0055】
改善候補算出部202は、駅到着データごとにステップS304~S305の処理を繰り返すループ処理Eを実行する。
【0056】
ループ処理Eでは、改善候補算出部202は、駅到着データのいずれかを対象駅到着データとして選択する(ステップS304)。そして、改善候補算出部202は、列車ダイヤ情報3から、前後の列車に影響を与えずに、対象駅到着データに対応する回生発生列車である対象回生発生列車にて生成された回生電力を受けられるように列車ダイヤを調整可能な列車の駅出発データを取得する(ステップS305)。駅出発データは、出発駅及び到着時刻を含む。
【0057】
このとき、列車ダイヤの調整量が少なければ、前後の列車に影響を与えないと考えることができる。このため、改善候補算出部202は、具体的には、以下の条件C31及びC32を満たす列車の駅出発データを取得する。
条件C31:出発時刻が対象回生発生列車の到着時刻から前後一定値以内
ただし、対象回生発生列車と同一路線・同一駅・同一方向の場合、出発駅が相互着発可能な駅でない列車は除外されてもよい。また、対象回生発生列車と異なる方向の列車を除外するか否かが、出発駅が上下線一括き電方式に対応しているか否かなどの設備条件に応じて決定されてもよい。相互着発可能な駅か否かや設備条件は、例えば、ユーザにより予め設定される。
条件C32:出発時刻が「対象回生発生列車のブレーキタイミング-一定値」から「対象回生発生列車の到着時刻+一定値」の間
なお、対象回生発生列車のブレーキタイミングは、具体的には、改善候補算出部202にて車両走行実績情報5から算出される。例えば、改善候補算出部202は、車両走行実績情報5における対象回生発生列車に対応する各レコードの駅到着時に対応するレコードから始点時刻が遅い順にソートする。そして、改善候補算出部202は、ソート後のレコードの先頭(=駅到着時のレコード)から順に「始点速度」を参照し、前のレコードから速度が増えなくなった時点のレコードの「始点時刻」をブレーキタイミングとして取得する。
【0058】
そして、取得された駅到着データの全てについてステップS304~S305の処理が終了すると、改善候補算出部202は、ループ処理Eを終了し、取得した駅出発データの数に所定の定数を乗算した値である回生電力使用余地量が算出対象区間の回生電力量よりも所定値以上大きいか否かを判断する。改善候補算出部202は、回生電力使用余地量が算出対象区間の回生電力量よりも所定値以上大きい場合、回生電力量の使用率が基準よりも低いと判断して、各対象駅到着データとその対象駅到着データに対応する駅出発データとの組み合わせを改善候補として選択し(ステップS306)、処理を終了する。定数は、回生電力量の目安としてユーザによって事前に設定されてもよい。
【0059】
以上説明した各処理は単なる一例であって、これらに限定されない。例えば、ステップS306では、改善候補算出部202は、車両形式が所定の条件を満たす列車の中から改善候補を選択してもよい。所定の条件は、車両形式に基づいて指定される条件であり、例えば、以下の条件C41~43などが挙げられる。
条件C41:所定の車両形式を有すること
条件C42:駅到着データの列車が回生ブレーキ対応車両であり、かつ、駅出発データの列車に回生電力活用可能な車両であること
条件C43:駅到着データの列車が蓄電池車両以外であること
なお、各列車の車両形式(回生ブレーキ対応及び蓄電池搭載の有無など)は、例えば、ユーザなどにて予め設定されてもよいし、車両走行実績情報5などの中で定義されていてもよい。
【0060】
また、列車ダイヤがパターンダイヤの場合、改善候補算出部202は、回生電力量情報6から、算出対象区間と始端位置及び終端位置の両方が同一のレコードを全て取得し、その中から回生電力量が最も大きいレコードを選択する。そして、改善候補算出部202は、算出対象区間の回生電力量と選択したレコードの回生電力量との差が一定値以上である場合、選択したレコードにおける改善候補に対応する列車の組み合わせも改善候補として選択する。なお、パターンダイヤか否かは、例えば、ユーザにて事前に設定される。
【0061】
図11は、回生電力表示画面の一例を示す図である。
図11に示す回生電力表示画面1100では、列車のダイヤを示すダイヤ図が区間ごとに区切られている。各区間に対応する領域は、回生電力量のレベルに応じて色分けされる。
図11の例では、区間(a)、(c)及び(d)が同一のレベルに属し、区間(b)が他の区間よりも高い(回生電力量が大きい)レベルに属している。
【0062】
また、回生電力表示画面1100では、列車の駅出発時刻及び駅到着時刻の改善候補が存在する場合、その列車の駅出発時刻及び駅到着時刻が強調表示される。
図11の例では、区間(a)において強調表示部1101を有する。強調表示部1101では、駅出発時刻及び駅到着時刻の間隔が短い列車1及び2と列車3及び4とが強調表示されている。
【0063】
以上説明したように本実施形態によれば、改善候補算出部202は、列車ダイヤ情報3に係る各列車の走行中に使用された回生電力量の変動履歴を示す回生電力量情報6と列車ダイヤ情報3とを用いて、回生電力量の使用率が基準よりも低い時間範囲において、到着時刻と出発時刻との差が一定値以下となる互いに異なる列車の組み合わせのそれぞれを改善候補として選択する。列車ダイヤ変更部203は、列車ダイヤ情報3に対して改善候補に含まれる列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更した変更ダイヤ情報を生成する。
このため、到着時刻と出発時刻との差が一定値以下となる列車の組み合わせである改善候補に基づいて、列車ダイヤ情報が変更されるので、前後の列車に影響を与えずに回生電力をより活用した列車ダイヤ情報を生成することが可能となる。したがって、回生電力をより確実に活用することが可能になる。
【0064】
また、本実施形態では、列車ダイヤ変更部203は、改善候補を示す回生電力表示画面を表示し、ユーザから指定された改善候補に含まれる列車の到着時刻及び出発時刻の少なくとも一方を変更する。このため、ユーザに要求に応じて適切な列車ダイヤの変更が可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、回生電力算出部201は、変電所送電履歴情報4及び車両走行実績情報5に基づいて、回生電力量情報6を生成する。このため、回生電力量情報6を予め用意する必要がないため、回生電力をより確実に活用することがより容易になる。
【0066】
また、本実施形態では、き電区間ごとに改善候補が選択されるため、回生電力をより確実に活用することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態では、改善候補算出部202は、取得された駅出発データの数に所定の定数を乗算した値である回生電力使用余地量が回生電力量よりも所定値以上大きい場合、回生電力量の使用率が基準よりも低いと判断する。この場合、回生電力量の使用率が低い算出区間を容易に判定することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、改善候補算出部202は、回生電力量の使用率が基準よりも低い時間範囲において、当該時間範囲に到着時刻を有する列車と、当該列車のブレーキタイミングから一定値を引いた時刻から当該列車の到着時刻に一定値を加えた時刻までの間に出発時刻を有する列車との組み合わせをさらに改善候補として選択する。この場合、前後の列車に影響を与えずに回生電力をより活用できるようにブレーキタイミングを変更することが可能となるため、回生電力をより確実に活用することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態では、改善候補算出部202は、車両形式が所定の条件を満たす列車の中から改善候補を選択する。このため、回生電力を活用できない列車を改善候補から除外したり、回生電力を蓄電する蓄電池を備えることで列車ダイヤを調整しなくても回生電力を活用できる列車を改善候補から除外したりすることが可能になる。
【0070】
上述した本開示の実施形態は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本開示を実施することができる。
【符号の説明】
【0071】
1:駅情報 2:変電所情報 3:列車ダイヤ情報 4:変電所送電履歴情報 5:車両走行実績情報 6:回生電力量情報 100:列車ダイヤ変更支援装置 101:入力部 102:出力部 103:通信部 104:プロセッサ 105:メモリ 201:回生電力算出部 202:改善候補算出部 203:列車ダイヤ変更部