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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017856
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】通気見切り部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/02 20060101AFI20240201BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E04B9/02 300
E04B1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120774
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】397025107
【氏名又は名称】日本住環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝久
(72)【発明者】
【氏名】石井 創
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA20
2E001GA67
2E001LA13
2E001NA07
2E001NC01
2E001ND25
(57)【要約】
【課題】構成簡易で通気性に優れ、通気開口から吹き込んだ雨雪が、通気部材の通気路内に入りにくいために、それが屋内側に浸入するおそれがなく、また、設置が容易な通気見切り部材を提供することを課題とする。
【解決手段】長尺の背板1と、背板1の上端から水平幅方向に延びる上面板2と、背板1の中間部から水平幅方向に延びる中間板3と、背板1の下端から水平幅方向に延びる下面板4とを有し、下面板4に多数の切り起こし開口5を並設すると共に、切り起こし開口列に沿って水切り材6を配置し、中間板3と下面板4の先端部間に、通気部材7を配置して成り、通気部材7は、その通気路8が開口する内方開口端面が、水切り材6の傾斜面6aから離隔するように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の背板と、前記背板の上端から水平幅方向に延びる上面板と、前記背板の中間部から水平幅方向に延びる中間板と、前記背板の下端から水平幅方向に延びる下面板とを有し、前記下面板に多数の切り起こし開口を並設すると共に、前記切り起こし開口列に沿って水切り材を配置し、更に、前記中間板と前記下面板の先端部間に、一方の開口端面から他方の開口端面に抜ける通気路が多数縦横に連設された樹脂製の通気部材を配置して成り、
前記通気部材は、その通気路が開口する内方開口端面が、前記水切り材の傾斜面から離隔するように配置されていることを特徴とする通気見切り部材。
【請求項2】
前記中間板の幅は、前記上面板よりも長く、上記下面板よりも短い、請求項1に記載の通気見切り部材。
【請求項3】
前記中間板は、幅方向先端に向けて下り傾斜している、請求項1又は2に記載の通気見切り部材。
【請求項4】
前記背板、上面板、中間板及び下面板は、1枚の鋼板を折曲して形成されている、請求項1に記載の通気見切り部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気見切り部材に関するものであり、より詳細には、主に一般住宅の軒部やケラバに設置される通気性を有する見切り部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏場において住宅は、日射を受けてその外装材や屋根材がかなり高温となり、小屋裏の温度はしばしば65度を超える。従って、特に夏場において、室内の快適な温熱環境を維持して涼しさを確保するためには、室内だけでなく、小屋裏の換気を行う必要がある。また、小屋裏内の換気を促進して小屋裏内を乾燥させることで、小屋裏の耐久性を高めることができる。この小屋裏換気の方法としては、棟換気又は軒換気が一般的であり、そのために種々の換気装置が提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、本願出願人の出願である特開2017-95996号には、斜面にされた一方の開口端面42から他方の開口端面43に抜ける通気路が多数縦横に連設された樹脂製の通気部材41と、通気部材41を挟持する金属製カバー材44とで構成され、カバー材44は、上面支持面45と、垂直閉塞面46と、下面支持面47と、垂直固定面48とを備え、垂直閉塞面46と通気部材41の斜面にされた開口端面42の間に通気空間49が確保され、下面支持面47に通気開口50が形成されて成る換気部材が開示されている(図8参照)。
【0004】
上記構成の換気部材の場合、通気部材41の開口端面42は、通気開口50を覆うように斜面に形成されているため、通気開口50から吹き込んだ雨雪は、通気開口50から直ちに通気部材41の通気路内に入り込み(図8矢印参照)、屋内側に浸入するおそれがあり、また、通気部材41の開口端面42が通気開口50に近接していてその間に空間がないため、その分通気性が悪くなるという問題がある。更にこの構成の換気部材の場合は、胴縁に外壁材を打ち付け固定する前に、垂直固定面48を、胴縁を介して垂木や軒桁に打ち付け固定することにより設置するものであるため、施工上制約が伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-95996号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、上記換気部材の場合は、雨雪が吹き込む可能性のある通気開口と通気部材の開口端面が近接しているために、通気開口から吹き込んだ雨雪が、通気部材の通気路内に入りやすく、それが屋内側に浸入するおそれがあり、また、通気性の面での問題があり、更に、設置に制約が伴うという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、構成簡易で通気性に優れ、通気開口から吹き込んだ雨雪が、通気部材の通気路内に入りにくいために、それが屋内側に浸入するおそれがなく、また、設置が容易な通気見切り部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、長尺の背板と、前記背板の上端から水平幅方向に延びる上面板と、前記背板の中間部から水平幅方向に延びる中間板と、前記背板の下端から水平幅方向に延びる下面板とを有し、前記下面板に多数の切り起こし開口を並設すると共に、前記切り起こし開口列に沿って水切り材を配置し、更に、前記中間板と前記下面板の先端部間に、一方の開口端面から他方の開口端面に抜ける通気路が多数縦横に連設された樹脂製の通気部材を配置して成り、前記通気部材は、その通気路が開口する内方開口端面が、前記水切り材の傾斜面から離隔するように配置されていることを特徴とする通気見切り部材である。
【0009】
一実施形態においては、前記中間板の幅は、前記上面板よりも長く、上記下面板よりも短い。また、前記中間板は、幅方向先端に向けて下り傾斜している。
【0010】
一実施形態においては、前記背板、上面板、中間板及び下面板は、1枚の鋼板を折曲して形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述したとおりであって、構成簡易で野地板の端部に容易に設置可能で、通気部材の通気路が開口する内方開口端面が水切り材の傾斜面から離隔するように配置されて、そこに空間部が形成されているため通気性がよく、また、切り起こし開口から入ってくる可能性のある雨雪は、その空間部に発生する渦気流によって弾き出されるため、通気部材を経て屋内側に浸入することが防止される効果がある。また、上面板と中間板との間に野地板の端部を挿入するようにして設置されるため、その部分における防火性能を高めることができ、更に、小屋裏の換気に用いる場合は、小屋裏内の換気を促進して小屋裏内を乾燥させることで、小屋裏の耐久性を高め得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る通気見切り部材の構成を示す下方視斜視図である。
図2】本発明に係る通気見切り部材の構成を示す側面図である。
図3】本発明に係る通気見切り部材のジョイント及びエンドキャップの構成を示す斜視図である。
図4】本発明に係る通気見切り部材のケラバへの収まり状態を示す側面図である。
図5】本発明に係る通気見切り部材の軒ゼロ(水下)への納まり状態を示す側面図である。
図6】本発明に係る通気見切り部材の軒ゼロ(水上)への納まり状態を示す側面図である。
図7】本発明に係る通気見切り部材の軒(水下)への納まり状態を示す側面図である。
図8】従来の換気材の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る通気見切り部材Aは、長尺の背板1と、背板1の上端から水平幅方向に延びる上面板2と、背板1の中間部から上面板2よりも長く水平幅方向に延びる中間板3と、背板1の下端から中間板3よりも長く水平幅方向に延びる下面板4とを有し、下面板4に多数の切り起こし開口5を並設すると共に、切り起こし開口5列に沿って水切り材6を配置し、更に、中間板3と下面板4の先端部間に、通気部材7を配置して成るものである。
【0014】
中間板3の幅は、上面板2の幅よりも長くなるようにし、また、先端に向けて若干下り傾斜させることが好ましい。これは、後述するように、上面板2と中間板3との間に野地板をスムーズに挿入できるようにするためである。また、中間板3の幅は、下面板4の幅よりも少し短くなるようにする。これは、中間板3と下面板4の先端部間への通気部材7の設置を容易にするためである。背板1、上面板2、中間板3及び下面板4は、1枚の鋼板(例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標))を折曲して形成することができる。その場合、背板1の上半部及び上面板2は2枚重ね状態になる(図1,2参照)。
【0015】
水切り材6は、平板の一端部を上方に反り上げたもので、その傾斜面6aを切り起こし開口5に対向させて、下面板4に固定される。切り起こし開口5は、2本の切込み線の中間部を押し上げ加工して形成される。
【0016】
通気部材7は、一端から他端に抜ける通気路8を多数並設したプラスチックプレートを所定数重ね、両端をヒートカッターにより溶断する公知の方法で製造することができる。この方法によった場合は、溶断に伴って上下の通気路4の切り口同士が溶着するため、上下のプラスチックプレート同士が一体化された積層体が形成される。このように溶断加工して形成される通気路8の断面形状は、図1に示されるようなきれいな四角形とはならないが、それは、却って雨風の吹き込み防止に有効なものとなる。
【0017】
通気部材7は、その通気路8を通気見切り部材Aの幅方向に通気するように向けて、下面板4に固定された水切り材6上に固定される。その際、通気部材7は、その通気路8が開口する内端面が、水切り材6の傾斜面6aから十分に離隔するように配置し、そこに広い空間部9が生成されるようにする。
【0018】
切り起こし開口5から吹き込む雨雪は、一部が水切り材6の傾斜面6aに当たって跳ね返され、一部は水切り材6の傾斜面6aを越えて水切り材6上に落ち、一時的に溜まる。しかるに、上述したようにして空間部9が形成されていると、切り起こし開口5から吹き込んでくる風が、図2に矢印で示すように、中間板3の裏面に当たって空間部9に渦を巻いて流れ込む。水切り材6上に落ちて溜まっていた雨雪は、このようにして空間部9に発生する渦気流によって弾き飛ばされ、切り起こし開口5からこぼれ落ちるため、通気部材7の通気路8内に入り込むことはない。
【0019】
通気見切り部材Aは、例えば、長さが1820mmで幅が50mmとされるが、何本かを接合してより長尺に施工する場合もある。その場合は、上面板2から下面板4にかけて覆う形状のジョイント10を接合部に被せる(図3(A))。また、両端部に、対応形状のエンドキャップ11を被せる(図3(B))。
【0020】
本発明に係る通気見切り部材Aは、一般家屋の種々の個所に設置可能なものである。図4は、通気見切り部材Aをケラバに設置した場合の収まり図である。ケラバは、桁21上に野地板22を打ち付け、その上に、アスファルトルーフィングを介して屋根材23を施工し、また、桁21の外側に、合板30、胴縁24及び外壁材25を配して構成され、各胴縁24間の空間が通気層26となる。他に透湿・防水シートの張着等の構成を含むが、それらについての説明は省略する。
【0021】
通気見切り部材Aは、その上面板2と中間板3との間に野地板22の端部を嵌め入れ、中間板3より下の部分を野地板22と外壁材25の間に差し込んで野地板22の端部に取り付け、くぎ止め等により固定する。そして、通気見切り部材Aの背板1を隠すように、唐草27が垂設される。また、下面板4と外壁材25の間の隙間は、シーリング材28が充填されてシールされる。
【0022】
上記設置状況において、通気層26内を上昇し、その上端部から抜けた空気は、通気見切り部材Aの通気部材7の開口端面から各通気路8内に流入し、通気路8を抜けて反対側の開口端面から流出し、切り起こし開口5を抜けて大気に放出される。
【0023】
一方、状況により、風と共に雨雪が切り起こし開口5から入り込むおそれがあるが、その場合は先ず、水切り材6の傾斜面6aが邪魔板として機能するため、それらの進入は極力抑止される。また、水切り材6の傾斜面6aを越えて入り込み、水切り材6上に溜まる雨雪は、上述したように空間部9に発生する渦気流によって弾き飛ばされので、通気部材7の通気路8内に入って、屋内側に浸入することはない。なお、通気見切り部材Aが上記のように設置されることで、野地板22の端部が鋼板製の通気見切り部材A内に隠れるため、その部分における防火性能が高まる。このことは、以下の各実施形態の場合にも言えることである。
【0024】
図5は、通気見切り部材Aを軒(水下)に設置した場合の収まり図であり、図6は、通気見切り部材Aを軒(水上)に設置した場合の収まり図であり、これらの場合も通気見切り部材Aは、その上面板2と中間板3との間に野地板22の端部を嵌め入れ、中間板3より下の部分を野地板22と外壁材25の間に差し込んで野地板22の端部に取り付け、くぎ止め等により固定する。そして、通気見切り部材Aの背板1を隠すように、唐草27が垂設される。下面板4と外壁材25の間の隙間は、シーリング材28が充填されてシールされる。また、野地板22の上に、屋根材23が施工される。
【0025】
図7は、通気見切り部材Aを軒先部に設置した場合の収まり図であり、図5並びに図6に示す場合と同様にして通気見切り部材Aを野地板22の端部に取り付け、くぎ止め等により固定する。そして、下面板4と鼻隠し29との間をシーリング材28でシールする。
【0026】
これら図5乃至図7に示される施工方法の場合は、小屋裏と屋外との間での通気となるが、その際にも通気見切り部材Aは、ケラバの場合と同様に作用し、雨雪が屋内側に浸入することを防止する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は上述したとおりであって、構成簡易で野地板の端部に容易に設置可能で、通気部材の通気路が開口する内方開口端面が水切り材の傾斜面から離隔するように配置されて、そこに空間部が形成されているため通気性がよく、また、切り起こし開口から入ってくる可能性のある雨雪をその空間部に発生する渦気流によって弾き飛ばすことができ、以て、雨雪が通気部材を経て屋内側に浸入することを防止することができる効果があり、また、上面板と中間板との間に野地板の端部を挿入するようにして設置されるため、その部分における防火性能を高めることができ、更に、小屋裏の換気に用いる場合は、小屋裏内の換気を促進して小屋裏内を乾燥させることで、小屋裏の耐久性を高め得る効果があるので、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0028】
A 通気見切り部材
1 背板
2 上面板
3 中間板
4 下面板
5 切り起こし開口
6 水切り材
7 通気部材
8 通気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8