(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178572
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】シール材およびシール構造体
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20241218BHJP
F16J 15/12 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/12 D
F16J15/10 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096799
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】内田 暁人
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040BA03
3J040EA03
3J040EA04
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA25
3J040EA46
3J040FA02
3J040FA06
3J040FA07
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】 シール性を維持しつつ気体透過を抑制することが可能なシール材およびシール構造体を提供すること。
【解決手段】 シール材A100は、弾性部材1と、弾性部材1の少なくとも一部を覆う当接部材2と、を備え、弾性部材1の材質は、当接部材2の材質よりも弾性変形に富み、当接部材2の材質は、弾性部材1の材質よりも気体を透過させ難く、当接部材2は、z方向においてz1側に位置する第1部21と、z方向においてz1側とは反対側であるz2側に位置する第2部22と、を有し、z方向のz1側から第1対象物3が接近し、z方向のz2側から第2対象物4が接近した場合に、少なくとも弾性部材1が弾性変形した状態において、第1部21が第1対象物3に当接し、且つ、第2部22が第2対象物4に当接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材と、
前記弾性部材の少なくとも一部を覆う当接部材と、を備え、
前記弾性部材の材質は、前記当接部材の材質よりも弾性変形に富み、
前記当接部材の材質は、前記弾性部材の材質よりも気体を透過させ難く、
前記当接部材は、第1方向において第1側に位置する第1部と、前記第1方向において前記第1側とは反対側である第2側に位置する第2部と、を有し、
前記第1方向の前記第1側から第1対象物が接近し、前記第1方向の前記第2側から第2対象物が接近した場合に、少なくとも前記弾性部材が弾性変形した状態において、前記第1部が前記第1対象物に当接し、且つ、前記第2部が前記第2対象物に当接する、シール材。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記第1方向の前記第1側に位置する第1頂部を有し、
前記第1部は、前記第1頂部を前記第1方向の前記第1側から覆っている、請求項1に記載のシール材。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記第1方向の前記第1側に位置する第1頂部を有し、
前記第1頂部は、前記第1部よりも前記第1方向の前記第1側に位置する、請求項1に記載のシール材。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記第1方向の前記第2側に位置する第2頂部を有し、
前記第2部は、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2頂部を第1側から覆っている、請求項1に記載のシール材。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記第2方向において前記第2頂部に対して前記第1側とは反対側の第2側に位置する第3頂部を有し、
前記当接部材は、前記第3頂部を前記第2方向の前記第2側から覆う第3部を有する、請求項4に記載のシール材。
【請求項6】
前記第2部は、前記第2方向の前記第1側に向かうほど前記第1方向の前記第1側に位置する形状である折り返し部を有する、請求項4に記載のシール材。
【請求項7】
前記当接部材は、前記第1部と前記第2部との間に位置する屈曲部を有する、請求項4に記載のシール材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のシール材と、
前記第1方向の前記第2側を向く天面を有する前記第1対象物と、
前記第1方向の前記第1側を向く底面および前記底面の両端から前記第1方向の前記第1側に延びる一対の側面を有する前記第2対象物と、を備え、
前記第1部が前記天面に当接し、且つ、
前記第2部が前記底面および前記側面の少なくともいずれかに当接することにより、前記第1対象物および前記第2対象物の間がシールされている、シール構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材およびシール構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
シール材およびシール材が用いられたシール構造体は、気体等の流体の流動を遮蔽する部材および構造体として広く用いられている。特許文献1には、従来のシール材の一例が開示されている。同文献に開示されたシール材は、上方に凸部を有している。この凸部は、比較的柔らかい樹脂等からなり、可撓性を有している。シール材に向けて上方から対象物が押し付けられると、凸部が選択的に変形し、対象物に当接する。これにより、シール性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象物との当接部位である凸部は、鋭角な角部形状であり、気体が通過する方向の寸法が小さい。このため、凸部において気体がシール材の材質を透過してしまうことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、シール性を維持しつつ気体透過を抑制することが可能なシール材およびシール構造体を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるシール材は、弾性部材と、前記弾性部材の少なくとも一部を覆う当接部材と、を備え、前記弾性部材の材質は、前記当接部材の材質よりも弾性変形に富み、前記当接部材の材質は、前記弾性部材の材質よりも気体を透過させ難く、前記当接部材は、第1方向において第1側に位置する第1部と、前記第1方向において前記第1側とは反対側である第2側に位置する第2部と、を有し、前記第1方向の前記第1側から第1対象物が接近し、前記第1方向の前記第2側から第2対象物が接近した場合に、少なくとも前記弾性部材が弾性変形した状態において、前記第1部が前記第1対象物に当接し、且つ、前記第2部が前記第2対象物に当接する。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記弾性部材は、前記第1方向の前記第1側に位置する第1頂部を有し、前記第1部は、前記第1頂部を前記第1方向の前記第1側から覆っている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記弾性部材は、前記第1方向の前記第1側に位置する第1頂部を有し、前記第1頂部は、前記第1部よりも前記第1方向の前記第1側に位置する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記弾性部材は、前記第1方向の前記第2側に位置する第2頂部を有し、前記第2部は、前記第1方向と直交する第2方向において前記第2頂部を第1側から覆っている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記弾性部材は、前記第2方向において前記第2頂部に対して前記第1側とは反対側の第2側に位置する第3頂部を有し、前記当接部材は、前記第3頂部を前記第2方向の前記第2側から覆う第3部を有する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第2部は、前記第2方向の前記第1側に向かうほど前記第1方向の前記第1側に位置する形状である折り返し部を有する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記当接部材は、前記第1部と前記第2部との間に位置する屈曲部を有する。
【0013】
本発明の第2の側面によって提供されるシール構造体は、本発明の第1の側面によって提供されるシール材と、前記第1方向の前記第2側を向く天面を有する前記第1対象物と、前記第1方向の前記第1側を向く底面および前記底面の両端から前記第1方向の前記第1側に延びる一対の側面を有する前記第2対象物と、を備え、前記第1部が前記天面に当接し、且つ、前記第2部が前記底面および前記側面の少なくともいずれかに当接することにより、前記第1対象物および前記第2対象物の間がシールされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シール性を維持しつつ気体透過を抑制することができる。
【0015】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)~(c)は、本発明の第1実施形態に係るシール材の全体形状についての例を示す平面図である。
【
図2】
図1(a)のII-II線に沿う断面図であり、(a)は、圧縮される前のシール材を示し、(b)は、圧縮されたシール材を含むシール構造体を示す。
【
図3】(a)は、圧縮される前のシール材を示し、(b)は、シール構造体の変形例を示す。
【
図4】(a)~(d)は、本発明の第1実施形態に係るシール材の断面構成についての変形例を示す断面図である。
【
図5】(a)~(c)は、本発明の第2実施形態に係るシール材の断面構成についての例を示す断面図である。
【
図6】(a)~(c)は、本発明の第3実施形態に係るシール材の断面構成についての例を示す断面図である。
【
図7】(a),(b)は、本発明の第4実施形態に係るシール材の断面構成についての例を示す断面図であり、(c)は、本発明の第4実施形態に係るシール構造体を示す断面図である。
【
図8】(a),(b)は、本発明の本発明の第4実施形態に係るシール材の全体形状についての変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
本発明における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に識別のために用いたものであり、それらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0019】
<第1実施形態>
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に係るシール材およびシール構造体を示している。本実施形態のシール材A100は、弾性部材1および当接部材2を備えている。
【0020】
これらの図において、本発明の第1方向をz方向と定義する。z方向の第1側をz1側、z方向の第1側とは反対側の第2側をz2側と称する。また、z方向と直交する本発明の第2方向をx方向と定義する。x方向の第1側をx1側、x1側とは反対側の第2側をx2側と称する。また、z方向およびx方向と直交する方向をy方向と定義する。
【0021】
シール材A100およびシール構造体B100の具体的な構成や用途は、何ら限定されない。シール材A100およびシール構造体B100の使用例としては、たとえば成膜工程、エッチング工程、熱処理工程等の半導体製造プロセスにおいて、所定のチャンバーの気密性を確保するために用いられる。
【0022】
シール材A100の平面視(z方向視)における形状および大きさは、何ら限定されない。
図1(a)に示す例においては、シール材A100は、平面視において円環形状である。
図1(b)に示す例においては、シール材A100は、平面視において矩形環状である。これら以外に、シール材A100は、平面視において、三角環状、五角形以上の多角形環状等であってもよい。
図1(c)に示す例においては、シール材A100は、平面視において直線状である。また、シール材A100は、シールすべき部位の形状によって、曲線状、屈曲線状等であってもよい。以降の説明においては、平面視において円環形状である場合について説明する。
図2においては、x方向がシール材A100の径方向であり、x1側が中心側、x2側が外側であり、他の図においても同様である。
【0023】
弾性部材1は、シール材A100が第1対象物3および第2対象物4によってz方向に挟まれ、押圧された場合に、十分な弾性変形が生じることにより、第1対象物3および第2対象物4のシール性を確保するための部材である。弾性部材1の材質は、当接部材2の材質よりも弾性変形に富むものが選択される。弾性変形に富むとは、たとえば縦弾性係数が当接部材2の材質の縦弾性係数よりも小さく、同条件の押圧においてより大きく変形するものを意味する。弾性部材1の材質の例としては、FFKM(パーフルオロエラストマー)、FKM(フッ素ゴム)、FVMQ(フロロシリコーンゴム)、シリコーンゴム(VMQ)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が挙げられる。弾性部材1の断面の大きさは、何ら限定されず、たとえば
図1(a)におけるシール材A100の外径が3mm~1000mm程度である場合に、弾性部材1の断面のz方向の大きさが、1mm~10mm程度、x方向の大きさが、1mm~10mm程度、である。
【0024】
本実施形態の弾性部材1は、第1頂部11、第2頂部12および第3頂部13を有する。
【0025】
第1頂部11は、弾性部材1のうちz方向において最もz1側に位置する部位である。第1頂部11の具体的な形状は何ら限定されず、図示された例においては、第1頂部11は、z方向のz1側に突出する鋭角な角部、あるいは角部の先端にわずかな曲面が設けられた形状部分、である。
【0026】
第2頂部12は、弾性部材1のうちz方向においてz2側に位置しており、図示された例においては、最もz2側に位置する。また、第2頂部12は、x方向において最もx1側に位置している。第2頂部12の具体的な形状は何ら限定されず、図示された例においては、第2頂部12は、x方向のx1側に突出する鋭角な角部、あるいは角部の先端にわずかな曲面が設けられた形状部分、である。図示された例においては、第2頂部12の角度は、第1頂部11の角度よりも大きい。
【0027】
第3頂部13は、弾性部材1のうちz方向においてz2側に位置しており、図示された例においては、第2頂部12とともに最もz2側に位置する。また、第3頂部13は、x方向において最もx2側に位置している。第3頂部13の具体的な形状は何ら限定されず、図示された例においては、第3頂部13は、x方向のx2側に突出する鋭角な角部、あるいは角部の先端にわずかな曲面が設けられた形状部分、である。図示された例においては、第3頂部13の角度は、第1頂部11の角度よりも大きく、第2頂部12と等しい。
【0028】
これらの第1頂部11、第2頂部12および第3頂部13を有する弾性部材1の断面形状は何ら限定されず、図示された例においては、三角形を呈しており、たとえば第1頂部11を頂角とする二等辺三角形である。
【0029】
当接部材2は、シール材A100が第1対象物3および第2対象物4によってz方向に挟まれ、押圧された場合に、第1対象物3および第2対象物4と当接することにより気体透過を抑制するための部材である。当接部材2の材質は、弾性部材1の材質よりも気体を透過させ難いものが選択される。シール材A100が、たとえば上述の成膜工程に用いられる場合、透過を抑制する対象とされる気体は、たとえば大気、窒素(N2)、水素(H2)、酸素(O2)、アンモニアガス(NH3)等である。また、当接部材2の材質は、弾性部材1の材質よりも弾性変形が劣るものの、後述する使用状態において有意な弾性変形を生じるものが好ましい。当接部材2の材質の例としては、金属、樹脂等が挙げられる。金属としては、たとえば、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、クロム等、またはそのいずれかの合金が挙げられ、たとえばステンレス、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)等が挙げられる。樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。本例においては、当接部材2の材質が金属である場合を説明する。当接部材2の厚さは、何ら限定されず、たとえば0.05mm~0.5mm程度である。
【0030】
弾性部材1と当接部材2との関係は、何ら限定されない。弾性部材1と当接部材2とは、取り外し可能に単に接しているだけでもよいし、弾性部材1が圧縮状態で当接部材2に嵌め込まれたものであってもよいし、接着材等で接合されていてもよいし、当接部材2の内面にコーティング等の手法によって弾性部材1が形成されていてもよい。
【0031】
本実施形態の当接部材2は、第1部21、第2部22および第3部23を有する。
【0032】
第1部21は、当接部材2のうちz方向において最もz1側に位置する部位である。図示された例においては、第1部21は、第1頂部11よりもz方向のz1側に位置しており、第1頂部11をz方向のz1側から覆っている。第1部21の具体的形状は何ら限定されず、図示された例においては、第1頂部11の形状に対応した鋭角の折り曲げ部分とされている。
【0033】
第2部22は、当接部材2のうちz方向のz2側に位置しており、図示された例においては、最もz2側に位置する。また、第2部22は、当接部材2のうちx方向において最もx1側に位置する部位である。図示された例においては、第2部22は、第2頂部12をx方向のx1側から覆っている。第2部22の具体的な形状は何ら限定されず、図示された例においては、第2頂部12のx方向のx1側の面に沿った傾斜部位の端部である。第2部22のz方向の位置は、第2頂部12のz方向の位置と同じである。
【0034】
第3部23は、当接部材2のうちz方向のz2側に位置しており、図示された例においては、第2部22とともに最もz2側に位置する。また、第2部22は、当接部材2のうちx方向において最もx2側に位置する部位である。図示された例においては、第3部23は、第3頂部13をx方向のx2側から覆っている。第3部23の具体的な形状は何ら限定されず、図示された例においては、第3頂部13のx方向のx2側の面に沿った傾斜部位の端部である。第3部23のz方向の位置は、第3頂部13のz方向の位置と同じであり、第2部22のz方向の位置と同じである。
【0035】
これらの第1部21、第2部22および第3部23を有する当接部材2の断面形状は何ら限定されない。図示された例においては、当接部材2は、第1部21および第2部22を繋ぐ傾斜部位と、第1部21および第3部23を繋ぐ傾斜部位と、を有しており、全体として弾性部材1に沿った三角山形を呈している。
【0036】
次に、シール材A100を用いたシール構造体B100の構成について、
図2(a),(b)を参照しつつ説明する。
【0037】
まず、
図2(a)に示すように、シール材A100を第2対象物4に装填する。第2対象物4の具体的構成は何ら限定されず、本実施形態においては、底面41および一対の側面42を有する。底面41は、z方向のz2側に位置しており、z方向のz1側を向く面である。一対の側面42は、底面41のx方向の両端からz方向のz1側に延びており、z方向に対して平行な面である。シール材A100が、
図1(a)に示す全体形状である場合、底面41および一対の側面42は、平面視において円形の溝部を構成し、断面形状がいわゆる各溝である。シール材A100は、一対の側面42の間において底面41に接するように装填される。図示された例においては、一対の側面42の距離は、シール材A100のx方向の大きさよりも大きく、たとえばシール材A100のx方向の大きさの
1.01倍~2.0倍程度である。
【0038】
次に、
図2(b)に示すように、シール材A100を挟んで、z方向のz1側から第1対象物3が相対的に接近し、z方向のz2側から第2対象物4が相対的に接近する。第1対象物3の具体的形状は何ら限定されず、本実施形態においては、天面31を有する。天面31は、z方向のz2側を向く面であり、図示された例においては、平坦な面である。第1対象物3および第2対象物4が接近すると、第1部21が天面31に当接する。さらに第1対象物3と第2対象物4とを接近させると、シール材A100をz方向に圧縮する押圧力が付与される。これにより、シール材A100の弾性部材1および当接部材2が、たとえば図示された形状に弾性変形する。シール材A100は、全体としてz方向の大きさが縮小し、x方向の大きさが拡大する。この結果、シール材A100と第1対象物3および第2対象物4との接触部位として、第1接触部Cp1、第2接触部Cp2および第3接触部Cp3が形成される。
【0039】
第1接触部Cp1は、第1部21と天面31とが接触した部位である。第2接触部Cp2は、第2部22と第2対象物4とが接触した部位であり、第2部22と底面41および側面42の少なくともいずれかとが接触している。第3接触部Cp3は、第3部23と第2対象物4とが接触した部位であり、第3部23と底面41および側面42の少なくともいずれかとが接触している。
【0040】
次に、シール材A100およびシール構造体B100の作用について説明する。
【0041】
図2に示すように、同図(a)の状態から同図(b)の状態にシール材A100がz方向に圧縮されると、z方向の両側において第1接触部Cp1および第2接触部Cp2が形成される。第1接触部Cp1および第2接触部Cp2においては、当接部材2と第1対象物3または第2対象物4とが当接している。当接部材2の材質は、弾性部材1の材質よりも気体を透過させ難い。したがって、シール性を維持しつつ気体透過を抑制することができる。
【0042】
シール材A100は、第3部23をさらに有する。これにより、
図2(b)に示すように、x方向の両側において第2接触部Cp2および第3接触部Cp3が形成される。したがって、シール性の維持と気体透過の抑制とをさらに促進することができる。
【0043】
第1対象物3の天面31と第1部21とが当接することにより、第1接触部Cp1が形成されている。第1部21は、当接部材2においてz方向のz1側の先端を構成しており、本実施形態においては鋭角な折り曲げ部位である。これにより、天面31と当接した際の押圧力が第1部21に集中して付与されることとなり、
図2(b)に示すような当接部材2の弾性変形をより確実に実現することができる。
【0044】
第2対象物4は、底面41と一対の側面42とを有する。これにより、第2接触部Cp2および第3接触部Cp3において、x方向における当接と、z方向における当接との少なくともいずれかを生じさせることが可能であり、さらに、x方向およびz方向の双方での当接が生じることが期待できる。これにより、シール性の維持と気体透過の抑制とをさらに高めることができる。
【0045】
当接部材2の材質が金属であることにより、気体の透過をより確実に抑制することができる。当接部材2は、比較的薄い金属板材料を折り曲げ加工すること等によって形成可能である。これにより、当接部材2を弾性変形に富むものであって、想定された変形量の使用状態においては、意図しない塑性変形を生じないものとして設計および製作することができる。
【0046】
当接部材2の断面形状が弾性部材1に沿った三角山形であることにより、z方向に圧縮されると、第2部22と第3部23とがx方向に離れ、第1部21と第2部22および第3部23とがz方向に近づくような弾性変形が容易に生じる。これにより、より少ない押圧力で当接部材2、ひいてはシール材A100を弾性変形させることが可能であり、シール性を維持しつつ気体透過を抑制するのに好ましい。
【0047】
図3~
図8は、本発明の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。また、各変形例および各実施形態における各部の構成は、技術的な矛盾を生じない範囲において相互に適宜組み合わせ可能である。
【0048】
<第1実施形態 シール構造体変形例>
図3は、シール構造体B100の変形例を示している。本変形例においては、
図3(a)に示す第2対象物4の構成が、上述の例と異なっている。本例においては、一対の側面42が、z方向に対して、傾いている。一対の側面42のx方向の距離は、z方向においてz2側からz1側に向かうほど小さくなっている。また、図示された例においては、一対の側面42のz方向のz1側におけるx方向の距離は、シール材A100のz方向のz2側のx方向の大きさよりも小さくてもよい。このような場合に、シール材A100を第2対象物4に装填するには、たとえばシール材A100をx方向に圧縮させた状態で、一対の側面42の間にシール材A100を挿入すればよい。
【0049】
次いで、
図3(b)に示すように、第1対象物3および第2対象物4がz方向において互いに接近する。これにより、シール材A100をz方向に圧縮する押圧力が付与される。これにより、シール材A100と第1対象物3および第2対象物4とが当接し、第1接触部Cp1、第2接触部Cp2および第3接触部Cp3が形成される。
【0050】
本例によっても、シール性を維持しつつ気体透過を抑制することができる。また、本例によれば、
図3(a)に示すシール材A100の第2対象物4への装填が完了した後は、シール材A100が第2対象物4から離脱することを抑制することができる。
【0051】
<第1実施形態 シール材変形例>
図4は、シール材A100の変形例を示している。
図4(a)に示すシール材A101は、当接部材2の材質が樹脂である。
図4(b)に示すシール材A102は、当接部材2の第1部21、第2部22および第3部23の材質が金属であり、第1部21および第2部22を繋ぐ傾斜部位と、第1部21および第3部23を繋ぐ傾斜部位との材質が、樹脂である。このような例によっても、当接部材2の樹脂部分が、弾性部材1よりも気体を透過させ難いことにより、気体の透過を抑制することができる。また、当接部材2が樹脂を含むことにより、より大きな弾性変形が可能となったり、意図しない塑性変形を抑制したりすることができる。
【0052】
図4(c)に示すシール材A103は、当接部材2が被覆層29を有する。被覆層29は、たとえば金属からなる当接部材2の本体部分の外表面に設けられている。被覆層29の材質はなんら限定されず、たとえば当接部材2の酸化等の化学変化を抑制する構成、あるいは、当接部材2と第1対象物3および第2対象物4との間に意図しない隙間が生じることをより確実に抑制する構成、が挙げられる。被覆層29の材質としては、たとえば、フッ素樹脂、ポリイミド(PI)等の樹脂、FFKM(パーフルオロエラストマー)、FKM(フッ素ゴム)等のエラストマー、をはじめ種々の材質が適宜挙げられる。
【0053】
図4(d)に示すシール材A104は、弾性部材1が凹部15を有する。凹部15は、弾性部材1のz方向のz2側の面からz方向のz1側に凹んだ部分であり、たとえば三角溝状である。本例によれば、シール材A104がz方向に圧縮された場合に、弾性部材1がz方向に縮み、x方向に拡大する弾性変形をより大きく生じされることが可能である。また、本例から理解されるように、弾性部材1の断面形状は、いわゆる中実の形状に限定されず、凹部15をはじめとする空隙部を有する形状であってもよい。
【0054】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係るシール材を示している。
図5(a)に示すシール材A200は、当接部材2の第2部22および第3部23の構成が上述の例と異なっている。本例においては、第2部22は、折り返し部221を有する。折り返し部221は、x方向のx1側に向かうほどz方向のz1側に位置する形状部分である。図示された例においては、折り返し部221は、断面形状が円弧形状である。
【0055】
また、第3部23は、第3部231を有する。第3部231は、x方向のx2側に向かうほどz方向のz1側に位置する形状部分である。図示された例においては、第3部231は、断面形状が円弧形状である。
【0056】
シール材A200を
図2または
図3に示す第2対象物4に装填し、シール構造体を構成した場合、折り返し部221(第2部22)が、底面41と側面42との双方に当接し易い。これにより、第2接触部Cp2は、2つの当接箇所を含む構成となりうる。また、第3部231(第3部23)が、底面41と側面42との双方に当接し易い。これにより、第3接触部Cp3は、2つの当接箇所を含む構成となりうる。したがって、気体の透過をより確実に抑制することができる。
【0057】
図5(b)に示すシール材A201は、当接部材2が2つの屈曲部25を有する。2つの屈曲部25は、第1部21および第2部22の間と、第1部21および第3部23の間とにそれぞれ設けられている。屈曲部25は、x方向において弾性部材1とは反対側に凸の形状となるように屈曲している。シール材A201がz方向に圧縮されると、当接部材2は、屈曲部25において屈曲するように弾性変形しやすい。これにより、当接部材2の意図しない部位が、いびつに変形することにより意図しない塑性変形が生じてしまうことを抑制することができる。
【0058】
図5(c)に示すシール材A202は、折り返し部221および第3部231の構成が、上述の例と異なっている。本例においては、折り返し部221および第3部231は、比較的鋭利な折返し形状であり、z方向に対して傾いた平坦な形状を有する。このような構成により、たとえば
図2または
図3に示す第2対象物4において、一対の側面42のx方向の距離がシール材A202のx方向の大きさよりも小さい場合に、平坦且つ斜めの形状部分を有する折り返し部221および第3部231が、いわゆる楔の機能を担うことにより、シール材A202を一対の側面42の間によりスムーズに挿入することができる。
【0059】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態に係るシール材を示している。
図6(a)に示すシール材A300は、当接部材2の構成が、上述の例と異なっている。本例においては、当接部材2は、第1部21と第2部22および第3部23とが、互いに離れている。言い換えると、第1部21と第2部22および第3部23との間には、スリットが形成されている。
【0060】
本例によっても、上述の第1対象物3および第2対象物4にシール材A300を装填しシール構造体を構成した場合に、第1接触部Cp1、第2接触部Cp2および第3接触部Cp3が形成され、気体の透過を抑制することができる。また、第1部21と第2部22および第3部23とが離れていることにより、シール材A300をz方向に圧縮させた場合に、当接部材2がz方向に顕著な弾性変形を呈さずとも、弾性部材1をより大きく弾性変形させることが可能である。たとえば、第1部21と第2部22および第3部23との間のスリットから、弾性部材1が外方に膨出するような弾性変形が許容される。また、第1部21と第2部22および第3部23との間における弾性部材1のx方向の大きさは、たとえば第1頂部11のx方向の大きさよりも顕著に大きい。これにより、気体の透過を抑制する効果が維持される。
【0061】
図6(b)に示すシール材A301は、シール材A300と同様に、第1部21と第2部22および第3部23とが離れている。一方、第2部22と第3部23とが、z方向のz2側において繋がっている。弾性部材1は、当接部材2によってz方向のz2側部分のすべてが覆われている。本例においては、シール材A301がz方向に圧縮された場合に、第2部22と第3部23とがx方向に離れるように当接部材2が弾性変形しなくても、弾性部材1を十分に弾性変形させることが可能である。また、本例においては、第2接触部Cp2および第3接触部Cp3は、当接部材2の第2部22および第3部23の間の全域を含むように形成され得る。
【0062】
図6(c)に示すシール材A302は、当接部材2が、第1部21および第2部22を有し、上述の第3部23を有していない。当接部材2は、第1部21を挟んで、x方向のx2側の部分がx方向のx1側の部分よりも短く、第3頂部13には到達していない。本例においては、シール材A302がz方向に圧縮された場合に、上述の第1接触部Cp1と第2接触部Cp2が形成される。これにより、z方向のz1側およびz2側において気体の透過を抑制することが可能である。また、当接部材2のx方向のx2側部分が顕著に短いことにより、シール材A302がz方向に圧縮された場合に、当接部材2の全体がx方向のx2側に倒れるような弾性変形が誘発される。また、弾性部材1は、当接部材2からx方向のx1側にはみ出すような弾性変形が許容される。したがって、シール材A302の全体をより大きく弾性変形させることができる。
【0063】
<第4実施形態>
図7は、本発明の第4実施形態に係るシール部材およびシール構造体を示している。
図7(a)に示すシール材A400は、第1頂部11が、第1部21よりもz方向のz1側に位置している。当接部材2は、開口部211を有する。開口部211は、当接部材2のz方向のz1側に設けられており、z方向に貫通するスリットである。第1頂部11は、開口部211からz方向のz1側に突出している。本例においては、第1部21は、x方向のx1側とx2側とに分割されている。
【0064】
図7(b)に示すシール材A401は、弾性部材1がさらに凸部16を有する。凸部16は、z方向のz2側に膨出する部分であり、第2部22および第3部23よりもz方向のz2側に突出している。
【0065】
図7(c)は、シール材A400またはシール材A401を用いたシール構造体B400を示している。シール材A400またはシール材A401を第2対象物4に装填し、第1対象物3と第2対象物4とを接近させると、天面31は、まず第1頂部11に当接する。また、シール材A401を用いた場合、底面41は、まず凸部16に当接する。さらに第1対象物3と第2対象物4とを接近させると、弾性部材1の弾性変形により第1頂部11が押しつぶされる格好となり、天面31と第1部21とが当接する。また、シール材A401を用いた場合、凸部16が押しつぶされる格好となり、第2部22および第3部23と底面41とが当接する。
【0066】
本実施形態によっても、シール性を維持しつつ気体透過を抑制することができる。また、第1部21は、第1対象物3が接近してきた場合に、少なくとも弾性部材1が弾性変形した状態で、天面31に当接する構成であればよい。同様に、第2部22および第3部23は、第2対象物4が接近してきた場合に、少なくとも弾性部材1が弾性変形した状態で、底面41に当接する構成であればよい。
【0067】
図8は、第4実施形態のシール材A400,A401の平面形状についての変形例を示している。
図8(a)に示す本変形例のシール材A410は、当接部材2が複数の個片領域2aに分割されている。複数の個片領域2aは、シール材A410の周方向に沿って配置されている。隣り合う個片領域2aの間には、所定の隙間が設けられている。
【0068】
当接部材2が複数の個片領域2aによって構成されていることにより、第1対象物3と第2対象物4とによってシール材A410を圧縮した場合に、周方向における当接部材2と第1対象物3および第2対象物4との当接の不均一をより縮小することができる。また、シール材A400,A401は、第1部21よりも第1頂部11がz方向のz1側に突出している。これにより、隣り合う個片領域2aの間の隙間においては、当接部材2は第1対象物3の天面31に当接しないものの、第1頂部11が天面31に当接する。これにより、隣り合う個片領域2aの隙間においてもシール性を維持することができる。
【0069】
図8(b)に示す変形例のシール材A411は、当接部材2が、複数の個片領域2aと、複数の個片領域2bとに分割されている。個片領域2aは、たとえば
図7(a)における当接部材2のx方向のx2側の部分である。個片領域2bは、たとえば
図7(a)における当接部材2のx方向のx1側の部分である。シール材A410と同様に、複数の個片領域2aは、周方向に沿って配置されており、隣り合う個片領域2aの間には、所定の隙間が設けられている。複数の個片領域2bも同様に、周方向に沿って配置されており、隣り合う個片領域2bの間には、所定の隙間が設けられている。本変形例においては、複数の個片領域2aの隙間と、複数の個片領域2bの隙間とが、周方向において互いにずれた位置に配置されている。
【0070】
本変形例によれば、シール材411と上述の天面31との接触部分においては、周方向の全周にわたって、個片領域2aの第1部21および個片領域2bの第1部21の少なくともいずれかが天面31と当接している。これにより、シール材A410と比べて気体透過をより確実に抑制することができる。
【0071】
本発明に係るシール材およびシール構造体は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るシール材およびシール構造体の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0072】
A100,A101,A102,A103,A104,A200,A201,A202,A300,A301,A302,A400,A401,A410,A411:シール材
B100,B400:シール構造体
1 :弾性部材
2 :当接部材
2a,2b:個片領域
3 :第1対象物
4 :第2対象物
11 :第1頂部
12 :第2頂部
13 :第3頂部
15 :凹部
16 :凸部
21 :第1部
22 :第2部
23 :第3部
25 :屈曲部
29 :被覆層
31 :天面
41 :底面
42 :側面
211 :開口部
221 :折り返し部
231 :第3部
Cp1 :第1接触部
Cp2 :第2接触部
Cp3 :第3接触部