(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178573
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】対物レンズ装置及び顕微鏡観察装置
(51)【国際特許分類】
G02B 21/02 20060101AFI20241218BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20241218BHJP
G02B 21/00 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
G02B21/02
G02B21/36
G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096802
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】592163734
【氏名又は名称】京セラSOC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 健史
【テーマコード(参考)】
2H052
2H087
【Fターム(参考)】
2H052AB02
2H052AB21
2H052AC04
2H052AD03
2H052AF14
2H087KA09
2H087LA01
2H087NA01
2H087PA08
2H087PA09
2H087PA16
2H087PB14
2H087PB16
2H087PB17
2H087QA01
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA13
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA42
2H087UA03
2H087UA04
(57)【要約】
【課題】浸液の変化及びサンプルが載置される容器の厚さ・光学特性の変化が大きい場合であっても、良好な結像性能を発揮できる対物レンズ装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ装置1は、光軸方向に移動可能に設けられた第1可動レンズ群Aと、第1可動レンズ群Aを光軸方向に移動させることによって軸上色収差を補正する第1補正装置Acと、光軸方向に移動可能に設けられた第2可動レンズ群Bと、第2可動レンズ群Bを光軸方向に移動させる第2補正装置Bcとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズ装置であって、
光軸方向に移動可能に設けられた第1可動レンズ群と、
前記第1可動レンズ群を光軸方向に移動させる第1補正装置と、
光軸方向に移動可能に設けられた第2可動レンズ群と、
前記第2可動レンズ群を光軸方向に移動させる第2補正装置と、を備える対物レンズ装置。
【請求項2】
前記第1可動レンズ群は、平凸レンズと平凹レンズとを接合してなる接合レンズから構成される、請求項1に記載の対物レンズ装置。
【請求項3】
前記平凸レンズ及び前記平凹レンズが以下の条件式(1)、(2)を満足する、請求項2に記載の対物レンズ装置。
|n1-n2|<0.05 ・・・(1)
|v1-v2|>10 ・・・(2)
ただし、
n1:基準波長における前記平凸レンズの屈折率
n2:基準波長における前記平凹レンズの屈折率
v1:前記平凸レンズのアッベ数
v2:前記平凹レンズのアッベ数、である。
【請求項4】
顕微鏡観察装置であって、
請求項1~3のいずれか1項に記載の対物レンズ装置と、
前記対物レンズ装置の前記第1補正装置及び前記第2補正装置を制御する制御装置と、
前記対物レンズ装置の像を結像する結像レンズと、
前記結像レンズが結像する画像を取得する画像取得装置と、を備え、
前記制御装置は、前記画像取得装置によって取得された画像データから補正量を算出し、算出された前記補正量に基づいて前記第1補正装置及び前記第2補正装置を制御する、顕微鏡観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顕微鏡対物レンズ及び顕微鏡観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、細胞を3次元的に培養して得られる細胞凝集塊や、細胞凝集塊を使った研究が注目されている。近年では、顕微鏡装置を用いて細胞凝集塊を撮影し、取得した顕微鏡画像データに対して画像解析技術を用いて創薬のためにスクリーニングを行い、薬効を評価するといったことも行われている(特許文献1~2)。
【0003】
上記のような観察対象物に対する深部撮影の際には、屈折率ミスマッチによる球面収差の発生を抑制するべく液浸対物レンズを用い、倒立顕微鏡にて観察されることが多い。このような用途に好適な液浸対物レンズが公知である(特許文献3~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-78638号公報
【特許文献2】特開2022-169853号公報
【特許文献3】特開2023-32561号公報
【特許文献4】米国特許第7349162号明細書
【特許文献5】特許6960487号公報
【特許文献6】特開平5-196873号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Bass, et al: Handbook of Optics vol.II, McGraw-Hill
【非特許文献2】R. Kingslake: Lens Design Fundamentals, SPIE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スクリーニング研究においてはサンプルを収容するための複数の窪み(ウェル)がマトリクス状に形成された容器(ウェルプレート、マイクロプレート等と呼ばれる。以下、本明細書ではウェルプレートと呼称する。)が用いられることがある。このような容器を用いることで、条件の異なる多数のサンプルを容易に作成することができる。このようなウェルプレートは、たとえば特許文献1など、多くのものが開示されている。
【0007】
従来のカバーガラス上にサンプルを載置して観察する場合に対し、ウェルプレートに収容されたサンプルを観察する場合にはいくつかの課題がある。
【0008】
まず、ウェルプレートの多くはアクリル、ポリエチレン、ポリスチレンなどで製作されており、多様な形状の製品が入手可能である。換言すれば、ウェルプレートの形状(特に厚さ)にばらつきがあり、このばらつきが光学性能変化につながってしまう。
【0009】
また、ポリスチレンなどのポリマー材料は、材料の微妙な配合の違いや、射出成型プロセスの条件の違いなどにより、ガラスに比べて光学特性及び厚さのばらつきが大きくなる(非特許文献1)。
【0010】
これらの厚さ及び光学特性の違いによって、主に球面収差と色収差が変化してしまう(非特許文献2)。かかる収差変化によって、十分な結像性能が実現できず、所望の観察ができなくなるという課題がある。
【0011】
加えて、液浸対物レンズの使用において、複数の浸液を使い分ける場合がある。異なる浸液を使用すると屈折率・アッベ数が変化することになり、やはり球面収差と色収差が変化する。
【0012】
以下、上記の課題を念頭に、既存の液浸対物レンズについて詳細に検討する。
【0013】
特許文献3では、屈折率及びアッベ数の少なくとも一方が5%以上異なる浸液の変化に際し、一部のレンズ群を光軸方向に移動させることによって球面収差と色収差を補正する対物レンズが開示されている。しかしながら、この方式では球面収差と色収差を同時に補正するため、屈折率が等しくアッベ数が異なるような浸液の変化に際しては、精緻な補正ができないという課題がある。この状況は、たとえば特許文献3で列記されている浸液のうちAの浸液とEの浸液とを使い分ける場合に相当するが、その場合の補正方法は開示されていない。
【0014】
特許文献4では複数のレンズ群を適切に移動させ、カバーガラス厚、温度、浸液の変化に応じて、適切に収差補正された状態を選択できる対物レンズが開示されている。しかしこの方式は、各レンズ群を同時に動かすものであり、設計時に想定された数種類のパターンには対応できても、それ以外の場合には対応できないという課題がある。
【0015】
特許文献5では浸液に応じて適切な平行平面板を挿抜することによって球面収差と色収差を補正する対物レンズが開示されている。しかしながら、この方式では、ある決まった浸液に対する離散的な調整はできても、設計時に想定されていないような、光学特性の不明な浸液に対しては適用できない。また、サンプルが載置される容器の光学特性変化については考慮されていない。さらに、試料側に平行平面板を保持するためのスペースを確保する必要があり、対物レンズの大型化につながるという課題もある。
【0016】
特許文献6では、カバーガラスの有無に応じて補正レンズを挿抜することで収差補正を行う対物レンズが開示されている。しかしながらこの方式では、カバーガラスがあるかないかの2つの状態間の変化は対応できても、カバーガラスがあり、かつ厚さが異なるような場合には対応できないという課題がある。
【0017】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、浸液の変化及びサンプルが載置される容器の厚さ・光学特性の変化が大きい場合であっても、良好な結像性能を発揮できる対物レンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、対物レンズ装置であって、光軸方向に移動可能な第1可動レンズ群(A)と、前記第1可動レンズ群を光軸方向に移動させることによって軸上色収差を補正する第1補正装置(Ac)と、光軸方向に移動可能な第2可動レンズ群(B)と、前記第2可動レンズ群を光軸方向に移動させることによって球面収差を補正する第2補正装置(Bc)と、を備えている。
【0019】
この態様によれば、第1補正装置及び第2補正装置のそれぞれによって異なる収差を補正できるため、浸液の変化及びサンプルが載置される容器の厚さ・光学特性の変化が大きい場合であっても、対物レンズ装置の結像性能を良好にすることができる。
【0020】
上記の態様において、前記第1可動レンズ群(A)は、平凸レンズ(A1)と平凹レンズ(A2)とを接合してなる接合レンズから構成するとよい。
【0021】
この態様によれば、簡単なレンズ構成によって第1可動レンズ群を具現化することができる。
【0022】
上記の態様において、前記平凸レンズ(A1)と前記平凹レンズ(A2)が以下の条件式(1)、(2)を満足するとよい。
|n1-n2|<0.05 ・・・(1)
|v1-v2|>10 ・・・(2)
ただし、
n1:基準波長における前記平凸レンズ(A1)の屈折率
n2:基準波長における前記平凹レンズ(A2)の屈折率
v1:前記平凸レンズ(A1)のアッベ数
v2:前記平凹レンズ(A2)のアッベ数、である。
【0023】
この態様によれば、浸液の変化及びサンプルが載置される容器の厚さ・光学特性の変化が大きい場合の対物レンズ装置の結像性能を、より良好にすることができる。
【0024】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様は、顕微鏡観察装置(100)であって、前記第1可動レンズ群(A)と、前記第1補正装置(Ac)と、前記第2可動レンズ群(B)と、前記第2補正装置(Bc)と、を備える構成の対物レンズ装置(1)と、前記対物レンズ装置の前記第1補正装置(Ac)及び前記第2補正装置(Bc)を制御する制御装置(20)と、前記対物レンズ装置の像を結像する結像レンズ(2)と、前記結像レンズが結像する画像を取得する画像取得装置(3)と、を備え、前記制御装置は、前記画像取得装置によって取得された画像データから補正量を算出し、算出された前記補正量に基づいて前記第1補正装置及び前記第2補正装置を制御する。
【0025】
この態様によれば、第1補正装置によって軸上色収差を補正でき、第2補正装置によって球面収差を補正することができる。そのため、浸液の変化及びサンプルが載置される容器の厚さ・光学特性の変化が大きい場合であっても、対物レンズ装置の結像性能を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上の態様によれば、サンプルが載置される容器の厚さや光学特性変化、浸液の変化に際しても、球面収差と色収差を個別に補正し、良好な結像性能を得られる対物レンズ装置及び顕微鏡観察装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】実施例1にかかる対物レンズ装置において、通常状態及び可動レンズ群を移動させた状態それぞれにおける、基準波長の球面収差を示す図
【
図3】実施例1にかかる対物レンズ装置における、通常状態から可動レンズ群を移動させた際の軸上色収差の変化を表す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明の一実施形態にかかる対物レンズ装置1について説明する。
【0029】
図1に示すように、対物レンズ装置1は、対物レンズを構成する複数のレンズからなる光学系10と、この光学系10を保持する鏡筒11とを備えている。対物レンズ装置1は光軸方向に移動可能な第1可動レンズ群Aを光学系10に備えている。対物レンズ装置1は、第1補正装置Acによって第1可動レンズ群Aを光軸方向に移動させることで、軸上色収差を補正することができる。第1補正装置Acは第1可動レンズ群Aを鏡筒11に対して移動させる駆動装置である。
【0030】
さらに、対物レンズ装置1は光軸方向に移動可能な第2可動レンズ群Bを光学系10に備えている。対物レンズ装置1は、第2補正装置Bcによって第2可動レンズ群Bを光軸方向に移動させることで、球面収差を補正することができる。第2補正装置Bcは第2可動レンズ群Bを鏡筒11に対して移動させる駆動装置である。
【0031】
このように対物レンズ装置1は、軸上色収差を補正する第1可動レンズ群Aと球面収差を補正する第2可動レンズ群Bとの2つ可動レンズ群A、Bを備え、それぞれを個別に移動させることによって、軸上色収差と球面収差を個別に補正することができる。これにより、柔軟な収差補正が実現できる。
【0032】
第1補正装置Ac及び第2補正装置Bcは、たとえば補正環によって具現化される。あるいは、各可動レンズ群A、Bを電動アクチュエータで移動させる方式で具現化されてもよい。電動アクチュエータを使用する場合、コンピュータを備える顕微鏡装置と電気的に接続することによって、柔軟な制御が可能となる。
【0033】
第1可動レンズ群Aは平凸レンズA1と平凹レンズA2とを接合した接合レンズから構成されている。このとき、平凸レンズA1及び平凹レンズA2は次の条件式(1)、(2)を満足している。
|n1-n2|<0.05 ・・・(1)
|v1-v2|>10 ・・・(2)
ただし、n1:基準波長における平凸レンズA1の屈折率、n2:基準波長における平凹レンズA2の屈折率、v1:平凸レンズA1のアッベ数、v2:平凹レンズA2のアッベ数、である。
【0034】
より望ましくは、平凸レンズA1及び平凹レンズA2は次の条件式(3)、(4)を満足するとよい。
|n1-n2|<0.01 ・・・(3)
|v1-v2|>20 ・・・(4)
【0035】
上記の式は、基準波長での屈折率がほぼ等しく、アッベ数の異なる2種の硝材を接合することを意味している。このような構成にすることによって、軸上色収差を選択的に変化させることが可能となる。
【0036】
いま、この第1可動レンズ群Aを光軸方向に移動させ、第1可動レンズ群Aに入射する光線高を変化させることを考える。このとき、第1可動レンズ群Aは基準波長については平行平面板とみなせるため、光線高が変化しても収差に影響を与えない。しかし、第1可動レンズ群Aは基準波長以外の波長に対してはパワーを持つので、光線高の変化によって軸上色収差が変化する。
【0037】
本発明の収差補正方法について、具体例を用いて説明する。
【0038】
図2は、後述する実施例1にかかる対物レンズ装置1において、通常状態と第1可動レンズ群Aを移動させた状態(移動状態)とのそれぞれにおける、基準波長の球面収差を重ねて図示している。
図2から分かるように、第1可動レンズ群Aを移動させても、基準波長の球面収差はほとんど変化していない。
【0039】
図3は、実施例1にかかる対物レンズ装置1における、通常状態から第1可動レンズ群Aを移動させた際の色収差への影響、具体的には軸上色収差の変化量(フォーカスシフト)を表している。
図3から分かるように、第1可動レンズ群Aを移動させると軸上色収差が大きく変化する。
【0040】
図2及び
図3から示されるように、第1可動レンズ群Aを移動させることで、基準波長の球面収差に有意な変化を与えることなく、軸上色収差を変化させることが可能となっている。
【0041】
第2可動レンズ群Bに球面収差補正機能を持たせることで、球面収差と軸上色収差の両方を良好に補正することが可能となる。
【0042】
次に、本発明の別の側面としての観察方法について説明する。
【0043】
観察方法は
図18に例示される観察装置によって具現化される。詳細については第3実施例で説明するが、観察装置は、顕微鏡観察装置100であり、少なくとも1つの対物レンズ装置1を備えた顕微鏡本体15と、顕微鏡本体15を制御する制御装置20とを備えている。顕微鏡本体15はさらに、結像レンズ2と、画像取得装置3とを備えている。なお、対物レンズ装置1は、軸上色収差を補正する第1補正装置Ac(
図1)と、球面収差を補正する第2補正装置Bc(
図1)とを備えている。
【0044】
制御装置20は、対物レンズ補正装置制御装置21と、顕微鏡制御装置22と、計算端末23とを備える。計算端末23は、画像取得装置3で取得された画像情報に基づいて残存収差量を算出する。このとき、計算端末23は観察対象として解像チャート等を用いてもよい。計算端末23は画像から像点ずれ量や残存収差量を算出し、これをもとに対物レンズ補正装置制御装置21は各可動レンズ群A、Bの移動量を算出する。これをもとに制御装置20は顕微鏡制御装置22を通じて第1補正装置Ac及び第2補正装置Bcを駆動することで、良好な結像性能が発揮された状態を得ることができる。
【0045】
このように本発明によれば、サンプルが載置される容器6の厚さや光学特性変化、浸液の変化に際しても、球面収差と色収差を個別に補正し、良好な結像性能を得られる対物レンズ装置1及び顕微鏡観察装置100が実現できる。
【0046】
以下、本発明の対物レンズ装置1にかかる複数の実施例について説明する。
図4~
図10及び表1~表4は実施例1を示し、
図11~
図17及び表5~表8は実施例2を示し、
図18~
図24及び表9~表12は実施例3を示し、
図25は実施例4を示す。
【0047】
表1及び表5は対物レンズ装置1のレンズデータを示す。表2及び表6は対物レンズ装置1の焦点距離などの基本データを示す。諸元は特に断りのない限り基準波長での値である。表3及び表7は対物レンズ装置1に使用される浸液データを示す。「浸液データ」には、各浸液の屈折率とアッベ数が示されている。表4及び表8は対物レンズ装置1の可変間隔データを示す。「可変間隔データ」には、第1~第3の状態の変化に伴う可変間隔の値が示されている。
【0048】
なお、以下のすべての諸元の値において、記載している焦点距離、曲率半径、レンズ面間隔、その他の長さの単位は特記のない限りミリメートル(mm)を使用する。ただし、光学系では比例拡大と比例縮小とにおいても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【実施例0049】
図4は実施例1の対物レンズ装置1の光路図を示す。
図5~
図7は、対物レンズ装置1の第1~第3の状態の縦収差図を示し、
図8~
図10は、対物レンズ装置1の第1~第3の状態の横収差図を示す。
【0050】
実施例1にかかる対物レンズ装置1は、第1固定レンズ群FA、第1可動レンズ群A、第2固定レンズ群FB、第2可動レンズ群B、第3固定レンズ群FCから構成されている。第1固定レンズ群FAは、接合レンズを含む複数のレンズ成分(ともに凹メニスカスレンズからなる第1レンズ成分L1(接合レンズ)及び第2レンズ成分L2(単レンズ))から構成されている。ここでレンズ成分とは、接合レンズまたは単レンズからなる1つのレンズを意味する。第1可動レンズ群Aは平凸レンズA1と平凹レンズA2とを接合した接合レンズ(第3レンズ成分L3)で構成されている。第2固定レンズ群FBは接合レンズ(凸メニスカスレンズからなる第4レンズ成分L4)から構成されている。第2可動レンズ群Bはそれぞれ両凸レンズをなす2つの接合レンズ(第5レンズ成分L5及び第6レンズ成分L6)から構成されている。第3固定レンズ群FCは、接合レンズを含む複数のレンズ(両凸レンズからなる第7レンズ成分L7、凸メニスカスレンズからなる第8レンズ成分L8及び第9レンズ成分L9によって構成されている。
【0051】
第2可動レンズ群Bは光軸方向へ移動可能となっている。光線高の高いレンズ群を可動とすることで、球面収差の補正に効果がある。
【0052】
また、第2可動レンズ群Bから射出する光線は略アフォーカルとなっている。このような構成にすることで、第2可動レンズ群Bを移動させた際に軸上色収差の変化を抑制することができる。
【0053】
第1補正装置Acは第1可動レンズ群Aを光軸方向に移動させる。また、第2補正装置Bcは第2可動レンズ群Bを光軸方向に移動させる。
【0054】
観察対象は、ポリスチレン製のウェルプレートに載置されている。ただし、
図4の光路図ではウェルの底部のみが図示されている。
【0055】
ウェルプレートと対物レンズ装置1の間隙は浸液で満たされている。
【0056】
第1の状態は基準となる状態であり、所定厚さのウェルプレートと所定の浸液を使用する状態である。なお、基準波長はd線である。第2の状態は、第1の状態とは異なる浸液を使用する状態である。さらに第3の状態は、第2の状態からウェルプレートの厚さが異なる状態である。
【0057】
実施例1のレンズデータを以下に示す。なお、「S-」から始まる硝材はすべてオハラ社のガラス名称である。またPOLYSTYRはポリスチレンである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0058】
実施例1の対物レンズ装置1の第1~第3の状態の縦収差図は
図5~
図7に示す通りである。また、実施例1の対物レンズ装置1の第1~第3の状態の横収差図は
図8~
図10に示す通りである。
実施例2にかかる対物レンズ装置1は、第2可動レンズ群Bと、第1固定レンズ群FAとで構成されている。第2可動レンズ群B内に第1可動レンズ群Aが備えられている。第2可動レンズ群Bの光軸方向の移動に伴い、第1可動レンズ群Aも一体となって移動する。
第2可動レンズ群Bは、4つの接合レンズ(凹メニスカスレンズからなる第11レンズ成分L11、平板レンズからなる第12レンズ成分L12、凹メニスカスレンズからなる第13レンズ成分L13、平凸レンズからなる第14レンズ成分L14)から構成されている。第1可動レンズ群Aは平凸レンズA1と平凹レンズA2とを接合した接合レンズ(第12レンズ成分L12)で構成されている。第1固定レンズ群FAは接合レンズを含む複数のレンズ(両凸レンズからなる第15レンズ成分L15、ともに凸メニスカスレンズからなる第16レンズ成分L16、第17レンズ成分L17及び第18レンズ成分L18によって構成されている。
第1の状態は基準となる状態であり、所定厚さのウェルプレートと所定の浸液を使用する状態である。なお、基準波長はd線である。第2の状態は、第1の状態とは異なる浸液を使用する状態である。さらに第3の状態は、第2の状態からウェルプレートの厚さが異なる状態である。