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特開2024-178574エネルギーマネジメントシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178574
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】エネルギーマネジメントシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241218BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241218BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20241218BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/38 110
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096803
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 聡
(72)【発明者】
【氏名】永田 純平
(72)【発明者】
【氏名】山根 雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大
(72)【発明者】
【氏名】平岩 慎司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康平
(72)【発明者】
【氏名】武部 智全
(72)【発明者】
【氏名】伊地智 洋文
(72)【発明者】
【氏名】小池 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】江渡 信一
(72)【発明者】
【氏名】堀本 浩志
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066AE09
5G066HB02
5G066KA01
5G066KA06
5G066KB01
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】電気と熱の両方を含めたエネルギーを有効利用する自己託送計画を生成する。
【解決手段】エネルギーマネジメントシステムは、託送計画装置、発電計画装置、及び送受電計画装置を備える。発電計画装置は、熱電併給サイトについて、計画期間の各時間帯について熱需要がコージェネレーションシステムの排熱量によって過不足なく満たされるようにコージェネレーションシステムの発電量を求める。送受電計画装置は、熱電併給サイトについて、計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成し、熱電併給サイトを除く複数のサイトについて、計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成する。託送計画装置は、複数のサイトの余剰電力及び不足電力に係る情報を取得し、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電気が自己託送されるように計画期間の各時間帯の自己託送計画を生成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱需要を排熱量によって過不足なく満たす熱主運転が行われる第1のコージェネレーションシステムを備える第1の熱電併給サイトを含む複数のサイトからなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループにおいて、連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメントシステムであって、
託送計画装置と、発電計画装置と、送受電計画装置とを備え、
前記発電計画装置は、前記第1の熱電併給サイトについて、前記計画期間の熱需要計画と電力需要計画を取得し、前記計画期間の各時間帯について熱需要が前記第1のコージェネレーションシステムの排熱量によって過不足なく満たされるように前記第1のコージェネレーションシステムの発電量を求めるように構成されており、
前記送受電計画装置は、前記第1の熱電併給サイトについて、前記計画期間の各時間帯の前記発電量と電力需要との差から余剰電力及び不足電力を求めて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成し、前記第1の熱電併給サイトを除く前記複数のサイトについて、前記計画期間の電力需要計画を取得し、当該電力需要計画に基づいて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成するように構成されており、
前記託送計画装置は、前記複数のサイトの余剰電力及び不足電力に係る情報を取得し、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電気が自己託送されるように前記計画期間の各時間帯について前記第1の熱電併給サイトの中から一次託送元を決定すると共に前記複数のサイトのうち所定の一次託送先候補の中から一次託送先を決定し、前記計画期間の各時間帯の前記一次託送元及び前記一次託送先の組み合わせ並びに前記一次託送元から前記一次託送先への託送電力量を含む前記自己託送計画を生成するように構成されている、
エネルギーマネジメントシステム。
【請求項2】
前記一次託送先候補が、前記複数のサイトのうち、前記第1の熱電併給サイト、熱利用を行わない発電設備と電力需要設備を備えるサイト、及び、発電能力を有さず電力需要設備を備えるサイトのうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項3】
前記複数のサイトは商用電力を買電可能であり、
前記託送計画装置は、前記複数のサイトの買電量の履歴と契約電力量とを記憶しており、前記一次託送先候補の中から、前記契約電力量と前記買電量の差が最も小さいサイトを前記一次託送先と決定する、
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項4】
前記託送計画装置は、前記第1の熱電併給サイトの余剰電力の合計が前記一次託送先候補の不足電力の合計よりも多い時間帯が存在する場合に、前記第1の熱電併給サイトの余剰電力の合計と前記一次託送先候補の不足電力の合計の差分に相当する電力の余剰分が前記自己託送グループの前記複数のサイトのうち前記一次託送先候補以外のサイトへ供給されるように、当該時間帯に余剰電力を持つ前記第1の熱電併給サイトの中から二次託送元を選択し、前記自己託送グループの前記複数のサイトのうち前記一次託送先候補以外のサイトを含む所定の二次託送先候補の中から二次託送先を決定し、当該時間帯の前記自己託送計画に前記二次託送元及び前記二次託送先の組み合わせ並びに前記二次託送元から前記二次託送先への託送電力量を含めるように構成されている、
請求項1に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項5】
前記複数のサイトは、電力需要を発電量によって過不足なく満たす電主運転が行われる第2のコージェネレーションシステムを備える第2の熱電併給サイトを含み、前記二次託送先候補が前記第2の熱電併給サイトを含む、
請求項4に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項6】
前記複数のサイトは商用電力を買電可能であり、
前記託送計画装置は、前記複数のサイトの買電量の履歴と契約電力量とを記憶しており、前記二次託送先候補の中から、不足電力を有し且つ前記契約電力量と前記買電量の差が最も小さいサイトを前記二次託送先と決定する、
請求項4に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項7】
前記託送計画装置は、前記第1の熱電併給サイトの余剰電力の合計が前記一次託送先候補の不足電力の合計よりも少ない時間帯が存在する場合に、前記一次託送先候補の不足電力の合計と前記第1の熱電併給サイトの余剰電力の合計との差分に相当する電力の不足分が前記自己託送グループの前記複数のサイトのうち前記第1の熱電併給サイト以外のサイトから供給されるように、当該時間帯に不足電力を持つ前記一次託送先候補の中から三次託送先を選択し、前記自己託送グループの前記複数のサイトのうち前記第1の熱電併給サイト以外のサイトから三次託送元を決定し、当該時間帯の前記自己託送計画に前記三次託送元及び前記三次託送先の組み合わせ並びに前記三次託送元から前記三次託送先への託送電力量を含めるように構成されている、
請求項1又は4に記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項8】
前記複数のサイトは商用電力を買電可能であり、
前記託送計画装置は、前記複数のサイトの買電量の履歴と契約電力量とを記憶しており、前記一次託送先候補の中から、不足電力を有し且つ前記契約電力量と前記買電量の差が最も小さいサイトを前記三次託送先と決定する、
請求項7記載のエネルギーマネジメントシステム。
【請求項9】
熱需要を排熱量によって過不足なく満たす熱主運転が行われるコージェネレーションシステムを備える熱電併給サイトを含む複数のサイトからなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループにおいて、演算処理装置が連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメント方法であって、
前記熱電併給サイトについて、前記計画期間の熱需要計画と電力需要計画を取得し、前記計画期間の各時間帯について熱需要が前記コージェネレーションシステムの排熱量によって過不足なく満たされるように前記コージェネレーションシステムの発電量を求めることと、
前記熱電併給サイトについて、前記計画期間の各時間帯について前記発電量と電力需要との差から余剰電力及び不足電力を求めて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成することと、
前記熱電併給サイトを除く前記複数のサイトについて、前記計画期間の電力需要計画を取得し、当該電力需要計画に基づいて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成することと、
前記複数のサイトの余剰電力及び不足電力に係る情報を取得し、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電気が自己託送されるように前記計画期間の各時間帯について前記熱電併給サイトの中から託送元を決定すると共に前記複数のサイトのうち所定の託送先候補の中から託送先を決定し、前記計画期間の各時間帯の前記託送元及び前記託送先の組み合わせ並びに託送電力量を含む前記自己託送計画を生成することと、を含む、
エネルギーマネジメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のサイトの電気及び熱エネルギーをマネジメントし、複数のサイトの電気の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメントシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送配電事業者によって管理される送配電ネットワークを介して、自家用発電設備から離れた場所にある需要施設へ電気を送電する仕組み(以下、自己託送システム)が知られている。自己託送システムでは、送配電ネットワークを利用することから、所定の単位時間における計画値又は実際の電力需要と同量の電力を供給すること、即ち、同時同量が要求される。単位時間ごとの電力の需要量と供給量の計画値を含む自己託送計画が配送電事業者に予め通知され、配送電事業者は自己託送計画通りに自家用発電設備から受電した電気を需要施設へ送電する。
【0003】
自家用発電設備としてコージェネレーションシステムが普及している。コージェネレーションシステムは、熱源より電力と熱を生産し供給するシステムの総称である。コージェネレーションシステムには、内燃機関で発電を行ってその際に発生する熱を活用する方法、燃料電池で発電を行ってその際に発生する熱を活用する方法、蒸気ボイラと蒸気タービンで発電を行って蒸気の一部を熱として活用する方法がある。コージェネレーションシステムで生じた熱、即ち、蒸気や温水は、製造業のプロセス利用や空調用の吸収式冷凍機、或いは給湯の熱源として利用される。
【0004】
従来、コージェネレーションシステムでは、コストを重視した運転がなされている。例えば、特許文献1では、商用電力系統からの受電電力の削減が要求されるデマンドレスポンス時間帯において、売電価格が発電コスト以下の場合に通常運転モードで運転し、売電価格が発電コストを上回る場合に最大出力運転モードで運転するように、コージェネレーションシステムの運転モードを切り替えることが記載されている。通常運転モードでは、発電電力を電力負荷の消費電力に追従させるように出力を制御する電主運転が行われる。最大出力運転モードでは、電力負荷の消費電力に関係なくコージェネレーションシステムの発電電力を定格出力に設定し、商用電力系統への逆潮流によって余剰電力が売却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-50826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1サイトのコージェネレーションシステムで発電した電気を、自己託送システムを利用して第2サイトの需要施設へ送電するにあたり、発電や送電を含めたトータルコストを最小化するように複数のサイト間で電力を融通する場合、コストを決定するための情報が必要であり、また、コストを決定するための演算が煩雑となる。
【0007】
本開示は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コージェネレーションシステムを備える少なくとも1つの熱電併給サイトを含む複数のサイトからなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループにおいて、電気と熱の両方を含めたエネルギーをより有効利用できるように、連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメントシステム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るエネルギーマネジメントシステムは、
熱需要を排熱量によって過不足なく満たす熱主運転が行われる第1のコージェネレーションシステムを備える第1の熱電併給サイトを含む複数のサイトからなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループにおいて、連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメントシステムであって、
託送計画装置と、発電計画装置と、送受電計画装置とを備え、
前記発電計画装置は、前記第1の熱電併給サイトについて、前記計画期間の熱需要計画と電力需要計画を取得し、前記計画期間の各時間帯について熱需要が前記第1のコージェネレーションシステムの排熱量によって過不足なく満たされるように前記第1のコージェネレーションシステムの発電量を求めるように構成されており、
前記送受電計画装置は、前記第1の熱電併給サイトについて、前記計画期間の各時間帯の前記発電量と電力需要との差から余剰電力及び不足電力を求めて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成し、前記第1の熱電併給サイトを除く前記複数のサイトについて、前記計画期間の電力需要計画を取得し、当該電力需要計画に基づいて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成するように構成されており、
前記託送計画装置は、前記複数のサイトの余剰電力及び不足電力に係る情報を取得し、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電気が自己託送されるように前記計画期間の各時間帯について前記第1の熱電併給サイトの中から一次託送元を決定すると共に前記複数のサイトのうち所定の一次託送先候補の中から一次託送先を決定し、前記計画期間の各時間帯の前記一次託送元及び前記一次託送先の組み合わせ並びに前記一次託送元から前記一次託送先への託送電力量を含む前記自己託送計画を生成するように構成されているものである。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るエネルギーマネジメント方法は、
熱需要を排熱量によって過不足なく満たす熱主運転が行われるコージェネレーションシステムを備える熱電併給サイトを含む複数のサイトからなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループにおいて、演算処理装置が連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメント方法であって、
前記熱電併給サイトについて、前記計画期間の熱需要計画と電力需要計画を取得し、前記計画期間の各時間帯について熱需要が前記コージェネレーションシステムの排熱量によって過不足なく満たされるように前記コージェネレーションシステムの発電量を求めることと、
前記熱電併給サイトについて、前記計画期間の各時間帯について前記発電量と電力需要との差から余剰電力及び不足電力を求めて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成することと、
前記熱電併給サイトを除く前記複数のサイトについて、前記計画期間の電力需要計画を取得し、当該電力需要計画に基づいて前記計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成することと、
前記複数のサイトの余剰電力及び不足電力に係る情報を取得し、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電気が自己託送されるように前記計画期間の各時間帯について前記熱電併給サイトの中から託送元を決定すると共に前記複数のサイトのうち所定の託送先候補の中から託送先を決定し、前記計画期間の各時間帯の前記託送元及び前記託送先の組み合わせ並びに託送電力量を含む前記自己託送計画を生成することと、を含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、コージェネレーションシステムを備える少なくとも1つの熱電併給サイトを含む複数のサイトからなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループにおいて、電気と熱の両方を含めたエネルギーをより有効利用できるように、連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメントシステム及び方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムの全体的な構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1発電計画装置による発電計画生成のフローチャートである。
図3図3は、電力需要計画の一例を表す図表である。
図4図4は、熱需要計画の一例を表す図表である。
図5図5は、発電計画の一例を示す図表である。
図6図6は、発電計画と電力需要との関係の一例を示す図表である。
図7図7は、託送計画装置による自己託送計画の生成のフローチャートである。
図8図8は、自己託送計画素の立案方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。本開示に係るエネルギーマネジメントシステム(以下、EMSと称する)は、コージェネレーションシステム(以下、CGSと称する)を備えるサイト(以下、「熱電併給サイト」と称する)を1つ以上含む複数のサイトからなる自己託送グループにおいて、サイト間で電気を自己託送するための自己託送計画を生成するものである。
【0013】
〔エネルギーマネジメントシステム1の構成〕
図1は、本開示の一態様に係るEMS1の構成を示すブロック図である。図1に示す自己託送グループGは、複数のサイト100,200,300,400からなり、任意のサイト間で電気を自己託送可能である。本実施形態に係る自己託送グループGは4つのサイトを備えるが、サイトの数は限定されない。複数のサイト100,200,300,400のうち、少なくとも1つのサイトはCGSを備える熱電併給サイトである。本実施形態に係る自己託送グループGでは、第1乃至3のサイト100,200,300が熱電併給サイトである。自己託送グループGの複数のサイトには、熱電併給サイトの他に、発電能力を有さず電力需要設備3を備えるサイト、熱利用しない発電設備を備えるサイト、熱利用しない発電設備と電力需要設備3を備えるサイト、などが含まれていてよい。
【0014】
本開示に係るEMS1は、託送計画装置9と、熱電併給サイト100,200,300に属する発電計画装置101,201,301と、各サイトに属する送受電計画装置102,202,302,402とを備える。なお、本実施形態に係るEMS1は3つの発電計画装置101,201,301を備えるが、発電計画装置の数は例示にすぎず、発電計画装置の数は1つ以上であればよい。
【0015】
託送計画装置9、各発電計画装置101,201,301、及び、各送受電計画装置102,202,302,402は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置と、有線又は無線により通信ネットワーク7や他の機器に接続するための通信I/Fと、マウス、キーボード、タッチセンサやタッチパネルなどの入力装置と、液晶ディスプレイなどの出力装置とを備える演算処理装置で実現できる。後述する託送計画装置9、発電計画装置101,201,301、及び送受電計画装置102,202,302,402の各機能は、補助記憶装置に記憶されている所定のプログラムをメモリにロードしてCPUで実行することで実現可能である。
【0016】
託送計画装置9及び複数の送受電計画装置102,202,302,402は、通信ネットワーク7や衛星通信などの通信手段を介して相互に情報の送受信が可能である。複数の発電計画装置101,201,301は、互いに異なるサイト100,200,300に属する。但し、複数の発電計画装置101,201,301の機能は1台の演算処理装置によって実現されてもよい。この場合、1台の演算処理装置の有する発電計画回路が、各熱電併給サイトの発電計画等を生成してよい。複数の送受電計画装置102,202,302,402は、互いに異なるサイト100,200,300,400に属する。但し、複数の送受電計画装置102,202,302,402の機能は1台の演算処理装置によって実現されてもよい。この場合、1台の演算処理装置の有する送受電計画回路が、各サイトの送受電計画等を生成してよい。託送計画装置9は、いずれかのサイトに配置されていてもよいし、サイトから離れて配置されていてもよい。託送計画装置9、送受電計画装置102,202,302,402、及び複数の発電計画装置101,201,301の機能は1台の演算処理装置によって実現されてもよい。
【0017】
第1発電計画装置101は、第1サイト100に属する。第1サイト100は、第1発電計画装置101の他に、第1送受電計画装置102と、少なくとも1つのCGS2と、少なくとも1つの電力需要設備3と、少なくとも1つの熱需要設備4と、受配電設備5と備える。
【0018】
第2発電計画装置201は、第2サイト200に属する。第2サイト200は、第2発電計画装置201の他に、第2送受電計画装置202と、少なくとも1つのCGS2と、少なくとも1つの電力需要設備3と、少なくとも1つの熱需要設備4と、受配電設備5とを備える。
【0019】
第3発電計画装置301は、第3サイト300に属する。第3サイト300は、第3発電計画装置301の他に、第3送受電計画装置302と、少なくとも1つのCGS2と、少なくとも1つの電力需要設備3と、少なくとも1つの熱需要設備4と、受配電設備5とを備える。
【0020】
第4送受電計画装置402は、第4サイト400に属する。第4サイト400は、第4送受電計画装置402の他に、少なくとも1つの電力需要設備3と受配電設備5とを備える。第4サイト400は発電能力を備えない。
【0021】
CGS2は自家発電設備である。CGS2のタイプは特に限定されず、各熱電併給サイトに異なるタイプのCGS2が備えられていてもよい。CGS2は、例えば、内燃機関で発電を行ってその際に発生する熱を活用するもの、燃料電池で発電を行ってその際に発生する熱を活用するもの、又は、蒸気ボイラと蒸気タービンで発電を行って蒸気の一部を熱として活用するものであってよい。
【0022】
電力需要設備3は、電気を消費する設備である。電力需要設備3は、特に限定されないが、電気を消費する加工機械などの製造設備や、空調設備、照明設備、及び電子機器などが例示される。
【0023】
熱需要設備4は、蒸気や温水などの熱エネルギーを消費する設備である。熱需要設備4は、特に限定されないが、蒸気又は温水をプロセスで利用する製造設備や、温水を利用する空調設備、給湯設備、洗浄設備、プール、浴場、及びヒーターなどが例示される。熱需要設備4には、原則として、自身が所属するサイト、即ち、自己サイトのCGS2の排熱から発生する蒸気や温水が供給される。
【0024】
受配電設備5は、電気を受ける機能、各設備の使用目的に応じた電圧に変圧する機能、及び、各設備に電気を配電する機能を有する。受配電設備5は、自己サイトの電力需要設備3と送電可能に接続されている。受配電設備5は、送配電ネットワーク8を介して他のサイトと接続されている。受配電設備5は、送配電ネットワーク8を介して電力会社の商用電力供給系統6と接続されている。第1乃至3のサイト100,200,300の各々において、受配電設備5は、サイト内のCGS2と送電可能に接続されている。
【0025】
受配電設備5は、CGS2、又は、商用電力供給系統6から送られてきた電気を、サイト内の電力需要設備3へ送電する。受配電設備5は、自己サイトのCGS2から送られてきた電気を、送配電ネットワーク8を介して他のサイトへ送電する。
【0026】
1つの自己託送グループGを構成している第1乃至4のサイト100,200,300,400において、サイト間の送電には自己託送システムが利用される。自己託送システムは、送配電事業者によって管理される送配電ネットワーク8を利用して同一グループ内のサイト間で電気を送電するサービスである。サイト内、即ち、オンサイトの送電には、自家送電システムが利用されてもよいし、自己託送システムが利用されてもよい。
【0027】
〔エネルギーマネジメント方法〕
ここで、EMS1におけるエネルギーマネジメント方法について説明する。EMS1のエネルギーマネジメント方法は、熱電併給サイト100,200,300の発電計画装置101,201,301で行われる発電計画の生成と、自己託送グループG内の各サイトの送受電計画装置102,202,302,402で行われる送受電計画の生成と、託送計画装置9で行われる自己託送計画の生成とを含む。送受電計画は、即ち、サイトの余剰電力及び不足電力に係る情報である。
【0028】
《発電計画の生成》
第1サイト100の第1発電計画装置101は、自己サイトのCGS2の発電計画を生成する。図2は、第1発電計画装置101による発電計画生成のフローチャートである。図2に示すように、第1発電計画装置101は、自身が所属する第1サイト100が熱主運転を行うか、他の運転を行うかを選択する(ステップS11)。熱主運転では、CGS2は、発電に伴い排出される熱量、即ち、排熱量を自己サイトの熱需要設備4の需要熱量又は消費熱量に追従させるように出力が制御される。他の運転は、例えば、電主運転である。電主運転では、CGS2は、発電量を自己サイトの電力需要設備3の電力需要に追従させるように出力が制御される。
【0029】
第1発電計画装置101、熱主運転を選択し(ステップS11でYES)、所定期間のエネルギー需要計画を取得する(ステップS12)。エネルギー需要計画は、所定の計画期間の熱需要計画と電力需要計画とを含む。計画期間は、例えば、1日や1週間である。計画期間は、複数の連続する時間帯からなる。各時間帯の開始時刻と終了時刻の間は所定の単位時間である。単位時間は、例えば、30分や1時間の計画期間より短い時間である。図3は、電力需要計画の一例を表す図表であり、縦軸は電力需要の予測値を表し、横軸は時間を表す。図4は、熱需要計画の一例を表す図表であり、縦軸は熱需要の予測値を表し、横軸は時間を表す。
【0030】
図3に示す電力需要計画は予め作成されて第1発電計画装置101へ与えられる。第1サイト100の電力需要計画は、計画期間の各時間帯の電力需要設備3の電力需要の予測値を時系列に並べたものである。第1サイト100が複数の電力需要設備3を有する場合は、第1サイト100の電力需要の予測値は、第1サイト100に属する電力需要設備3の個々の電力需要の予測値の総計である。電力需要の予測値は、電力需要設備3で消費される電力量の予測値であり、電力需要設備3ごとに異なり、また、サイトの運用状況や時刻や季節によって異なる。
【0031】
熱需要計画は予め作成されて第1発電計画装置101へ与えられる。第1サイト100の熱需要計画は、計画期間の各時間帯の熱需要設備4の熱需要の予測値を時系列に並べたものである。第1サイト100が複数の熱需要設備4を有する場合は、第1サイト100の熱需要の予測値は、第1サイト100に属する熱需要設備4の個々の熱需要の予測値の総計である。熱需要の予測値は、熱需要設備4で消費される熱量の予測値であり、熱需要設備4ごとに異なり、また、サイトの運用状況や時刻や季節によって異なる。
【0032】
第1発電計画装置101は、計画期間のエネルギー需要計画に基づいて、各時間帯について、第1サイト100の熱需要計画の熱需要とCGS2の排熱量とが実質的に同量となるように、即ち、熱需要が過不足なく満たされるように、CGS2の負荷率を決定する(ステップS13)。なお、熱需要とCGS2の排熱量とは厳密に同量に限定されず、実際は、熱の搬送や熱需要設備4での使用の際のロスを考慮してマージンを付加したCGS2の負荷率が決定されてもよい。第1発電計画装置101は、CGS2の負荷率と排熱量の関係を示す情報を予め記憶しており、この情報を用いて熱需要と対応する熱量を排出する負荷率を求めることができる。CGS2の負荷率と排熱量の関係を示す情報は、例えば、計算式、マップ、又はテーブルであり、予め第1発電計画装置101に与えられている。CGS2の負荷率の決定方法は、予め与えられたルールや、最適化計算などの公知の方法が利用されてよい。計画期間の各時間帯の負荷率を時系列に並べたものが、CGS2の運転計画となる。
【0033】
第1発電計画装置101は、CGS2の計画期間の運転計画に基づいて、計画期間の発電計画を生成する(ステップS14)。図5は、発電計画の一例を示す図表であり、縦軸は発電量の計画値を表し、横軸は時間を表す。図5に示すように、発電計画は、計画期間の各時間帯のCGS2の発電量の計画値を時系列に並べたものである。第1発電計画装置101は、CGS2の出力と発電量の関係を予め記憶しており、計算式やテーブルを用いて出力と対応する発電量を求めることができる。第1発電計画装置101は、このようにして求めた各時間帯の発電量を時系列に並べて計画期間の発電計画を生成する。第1発電計画装置101は、第1サイト100の熱需要計画、電力需要計画、運転計画、及び、発電計画を、ディスプレイに表示出力したり、紙などに印字出力したりできる。
【0034】
第2サイト200の第2発電計画装置201及び第3サイト300の第3発電計画装置301は、第1サイト100の第1発電計画装置101と同様に、自己サイトのエネルギー需要計画を取得し、これらから自己サイトの運転計画及び発電計画を生成する。
【0035】
《送受電計画の生成》
上記のように生成された発電計画では、自己サイト内で熱量の過不足がないようにCGS2が熱主運転が行われることから、発電量が自己サイトの電力需要に対し過剰となる時間や不足する時間が生じることがある。図6は、発電計画と電力需要との関係の一例を示す図表であり、縦軸は発電量の計画値及び電力需要の予測値を表し、横軸は時間を表す。図6に示すように、第1送受電計画装置102は、第1発電計画装置101から取得した自己サイトの電力需要計画及び発電計画に基づいて、計画期間の各時間帯の余剰電力と不足電力を求める。余剰電力は、発電量が電力需要よりも多い場合の、発電量と電力需要との差である。不足電力は、発電量が電力需要よりも少ない場合の、電力需要と発電量との差である。発電量が電力需要よりも多い時間帯は余剰電力はプラス値であり不足電力はゼロであり、発電量が電力需要よりも少ない時間帯は余剰電力はゼロであり不足電力はプラス値であり、発電量と電力需要が過不足ない時間帯は余剰電力及び不足電力はゼロである。熱需要のロスや熱需要計画及び電力需要計画の精度を考慮して、マージンを付加した余剰電力と不足電力の演算が行われてもよい。余剰電力及び不足電力は電力取引の指標となる。送受電計画は、計画期間の各時間帯の余剰電力と不足電力に係る情報を含む。第1送受電計画装置102は、自己サイトの送受電計画、即ち、計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を通信ネットワーク7を介して託送計画装置9へ出力する。
【0036】
第2送受電計画装置202及び第3送受電計画装置302は、第1送受電計画装置102と同様に、自己サイトの電力需要計画及び発電計画に基づいて計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力を求め、自己サイトの送受電計画、即ち、計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を通信ネットワーク7を介して託送計画装置9へ出力する。第1送受電計画装置102、第2送受電計画装置202、及び第3送受電計画装置302は、自己サイトの送受電計画に加えて、自己サイトの発電計画を託送計画装置9へ出力してもよい。なお、本実施形態では、第1サイト100、第2サイト200及び第3サイト300では熱主運転が行われる。但し、グループ内の全ての熱電併給サイトで熱主運転が行われる必要はなく、グループ内の一部の熱電併給サイトでは電主運転が行われてもよい。
【0037】
第4送受電計画装置402は、自己サイトの電力需要計画を取得し、電力需要計画に基づいて自己サイトの計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成する。第4サイト400は発電能力を有しないことから、第4サイト400の余剰電力はゼロであり、第4サイト400の不足電力は電力需要と対応する。第4送受電計画装置402は、自己サイトの送受電計画、即ち、計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を通信ネットワーク7を介して託送計画装置9へ出力する。
【0038】
《グループの自己託送計画の生成》
託送計画装置9は、グループの自己託送計画を生成する。図7は、託送計画装置9による自己託送計画の生成のフローチャートである。図7に示すように、託送計画装置9は、自己託送グループGに属する各サイトから送受電計画、即ち、計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を取得する(ステップS21)。つまり、託送計画装置9に、グループ内の各サイトの余剰電力及び不足電力に係る情報が集約される。本実施形態では、託送計画装置9は、第1乃至4のサイト100,200,300,400から、計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を取得する。託送計画装置9は、取得した情報を一時的に記憶する。
【0039】
託送計画装置9は、計画期間の各時間帯について、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電力が融通されるように、熱主運転が行われている熱電併給サイト群(以下、「熱主運転サイト群」と称する)の自己託送計画素案を生成する(ステップS22)。自己託送計画素案は、自己託送計画の素案である。自己託送計画は、計画期間の各時間帯について、電気の託送元と、当該託送元から送電を受ける託送先と、託送電力量とを含む自己託送計画を含む。自己託送計画には、電気の託送が行われない時間帯があってもよい。
【0040】
図8は、託送計画装置9による自己託送計画素の立案方法を説明する図である。図8には、熱主運転サイト群の計画期間の余剰電力及び不足電力に係る情報が示されている。託送計画装置9は、予め与えられたルールに基づいて、各時間帯について、一次託送元及び一次託送先の組み合わせ、並びに、一次託送元から一次託送先への託送電力量を決定する。例えば、託送計画装置9は、各時間帯について、熱主運転サイト群のうち余剰電力を持つサイトを一次託送元と決定し、一次託送先候補の中から不足電力を持つサイトを探索する。ここで、一次託送先候補には、自己託送グループGの複数のサイトのうち、熱主運転を行っている熱電併給サイト100,200,300、熱利用を行わない発電設備と電力需要設備3を備えるサイト、及び、発電能力を有さず電力需要設備3を備えるサイト400が含まれる。託送計画装置9は、一次託送先候補の中から不足電力を持つサイトが見つかった場合は、不足電力を持つサイトのうち少なくとも1つを一次託送先と決定し、一次託送元から一次託送先へ送る託送電力量を決定する。一次託送電力量は、一次託送元の余剰電力量以下であり、且つ、一次託送先の不足電力以下である。余剰電力を持つサイトが複数の場合は、余剰電力を持つサイトの各々について、一次託送先と託送電力量の決定が行われる。一つの一次託送元から2つ以上の一次託送先へ送電されてもよい。また、一つの一次託送先へ2つ以上の一次託送元から送電されてもよい。このようにして、託送計画装置9は計画期間の各時間帯について一次託送元と一次託送先の組み合わせ及び一次託送電力量を決定し、計画期間の自己託送計画素案を生成する。
【0041】
例えば、図8に示す自己託送計画素案の一例では、第1サイト100は0時から3時までの間に余剰電力を有し、第2サイト200は0時から3時までの間に不足電力を有することから、0時から3時までの間に第1サイト100から第2サイト200へ電気が自己託送される。同様に、第2サイト200及び第3サイト300は6時から9時までの間に余剰電力を有し、第1サイト100は6時から9時までの間に不足電力を有することから、6時から9時までの間に第2サイト200及び第3サイト300から第1サイト100へ電気が自己託送される。託送計画装置9は、一次託送先候補のうち、熱主運転を行っており不足電力が生じている熱電併給サイトを優先的に一次託送先に決定してよい。
【0042】
自己託送計画素案において、一次託送先が見つからなかった時間帯や、熱主運転サイト群の余剰電力の合計が一次託送先候補のサイトの不足電力の合計を上回る時間帯は、二次託送先へ余剰の電力が供給されてよい。託送計画装置9は、各時間帯について、熱主運転サイト群の余剰電力の合計が一次託送先候補のサイトの不足電力の合計より大きい場合(ステップS23でYES)、所定のルールに基づいて、二次託送先候補の中から不足電力を有する二次託送先を決定し、二次託送元から二次託送先への二次託送電力量を決定する(ステップS24)。二次託送電力量の合計は、熱電併給サイトの余剰電力の合計と一次託送先候補の不足電力の合計の差分であってよい。託送計画装置9は、一次託送先が見つからなかった場合も、上記と同様の処理を行ってよい。二次託送先候補には、自己託送グループGの複数のサイトのうち、一次託送先候補に含まれないサイトが含まれる。二次託送先候補には、例えば、熱主運転ではなく電主運転を行っている熱電併給サイトが含まれる。また、二次託送先候補には、募集をかけて、当該募集に応じたサイトが含まれていてもよい。二次託送先や、二次託送先が受電に対して支払う料金は、例えば、電力市場での電力取引価格をベースとした先着順やオークションで決定されてもよい。料金には、例えば、単位電力量あたりの受電に係る料金、即ち、単価が含まれていてよい。所定のタイミングまでに二次託送先が決定しない場合は、熱主運転が行われているサイト群全体の余剰電力は電力市場へ売電されてもよい。
【0043】
自己託送計画素案において、熱運転サイト群の余剰電力の合計が一次託送先候補の不足電力の合計に満たない時間帯は、熱主運転が行われているサイト群以外のグループ内のサイトや商用電力供給系統6から電力の不足分が供給されてよい。託送計画装置9は、各時間帯について、熱主運転サイト群の余剰電力の合計が一次託送先候補の不足電力の合計より小さい場合(ステップS25でYES)、所定のルールに基づいて、所定の三次託送元候補から余剰電力を有する三次託送元を決定し、一次託送先候補の中から不足電力を有する三次託送先を決定し、三次託送電力量を決定する(ステップS26)。三次託送電力量の合計は、一次託送先候補の不足電力の合計と熱主発電サイトの余剰電力の合計との差分であってよい。三次託送元候補には、自己託送グループGにおいて電主運転が行われている熱電併給サイトや、熱利用を行わない発電設備を備えるサイトが含まれる。また、三次託送元候補には、募集をかけて、当該募集に応じたサイトが含まれていてもよい。三次託送元や、三次託送先が受電に対して支払う料金は、例えば、電力市場での電力取引価格をベースとした先着順やオークションで決定されてもよい。所定のタイミングまでに三次託送元が決定しない場合は、三次託送元候補に商用電力供給系統6が加えられ、商用電力供給系統6が三次託送元に決定され、サイト毎の契約電力量の範囲内でサイトの不足電力が商用電力供給系統6からの買電で賄われてもよい。各サイトの所定期間の契約電力量及び買電量の履歴は託送計画装置9に記憶されている。託送計画装置9は、一次託送先、二次託送先、及び三次託送先を決定するに際し、記憶された買電量の履歴に基づいて契約電力量と買電量との差が最も小さいサイトへ優先的に電気が自己託送されるように、託送先候補の中から託送先を決定してもよい。
【0044】
託送計画装置9は、一次託送元から一次託送先への送電に係る情報を含む自己託送計画素案に、二次託送元から二次託送先への送電、及び、三次託送元から三次託送先の送電を加えて、自己託送計画を生成する(ステップS27)。生成された自己託送計画は、託送計画装置9からグループ内の送受電計画装置102,202,302,402へ出力される(ステップS28)。生成された自己託送計画は、託送計画装置9から自己託送システムを提供している送配電事業者の端末装置へ出力されてもよい。送配電事業者は、自己託送計画に従って自己託送システムの送配電ネットワーク8を利用した送電を行う。
【0045】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は熱需要を排熱量によって過不足なく満たす熱主運転が行われる第1のコージェネレーションシステム2を備える第1の熱電併給サイト100,200,300を含む複数のサイトからなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループGにおいて、連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメントシステム1であって、
託送計画装置9と、発電計画装置101,201,301と、送受電計画装置102,202,302,402とを備え、
発電計画装置101,201,301は、第1の熱電併給サイト100,200,300について、計画期間の熱需要計画と電力需要計画を取得し、計画期間の各時間帯について熱需要が第1のコージェネレーションシステム2の排熱量によって過不足なく満たされるように第1のコージェネレーションシステム2の発電量を求めるように構成されており、
送受電計画装置102,202,302,402は、第1の熱電併給サイト100,200,300について、計画期間の各時間帯の発電量と電力需要との差から余剰電力及び不足電力を求めて計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成し、第1の熱電併給サイト100,200,300を除く前記複数のサイトについて、計画期間の電力需要計画を取得し、電力需要計画に基づいて計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成するように構成されており、
託送計画装置9は、前記複数のサイトの余剰電力及び不足電力に係る情報を取得し、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電気が自己託送されるように計画期間の各時間帯について第1の熱電併給サイト100,200,300の中から一次託送元を決定すると共に前記複数のサイトのうち所定の一次託送先候補の中から一次託送先を決定し、計画期間の各時間帯の一次託送元及び一次託送先の組み合わせ並びに一次託送元から一次託送先への託送電力量を含む自己託送計画を生成するように構成されているものである。
【0046】
本開示の第2の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は、第1の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1において、一次託送先候補が、前記複数のサイトのうち、第1の熱電併給サイト100,200,300、熱利用を行わない発電設備と電力需要設備3を備えるサイト、及び、発電能力を有さず電力需要設備3を備えるサイト400のうち少なくとも1つを含むものである。
【0047】
本開示の第3の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は、第1又は2の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1において、前記複数のサイトは商用電力を買電可能であり、託送計画装置9は、前記複数のサイトの買電量の履歴と契約電力量とを記憶しており、一次託送先候補の中から、契約電力量と買電量の差が最も小さいサイトを一次託送先と決定するものである。
【0048】
一般に、定格以下運転時のコージェネレーションシステム2では、定格運転時と比較して、発電効率は低いが、排熱温度が高く排熱量が多い。従って、コージェネレーションシステム2の定格以下運転時と定格運転時では、電気と熱を合わせた総合効率の差は顕著ではない。上記第1乃至3の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1では、サイト内の熱需要設備4の熱需要とコージェネレーションシステム2の排熱量とが対応するように熱主運転が行われることから、コージェネレーションシステム2の排熱は無駄なく利用され、発電量と電力需要の差分は自己託送によって無駄なく利用される。そのため、コージェネレーションシステム2で発生した電気と熱の利用率が高まり、高い総合エネルギー効率と経済性が期待できる。更に、エネルギーマネジメントシステム1では、自己託送計画の生成のために、コージェネレーションシステム2の燃料調達コストなどの費用に係る情報を使用しないので、サイト内外に調達コストを開示せずに済む。また、コスト重視の自己託送計画では原料単価や託送料金などパラメータが多く演算が複雑であるが、熱収支を重視した自己託送計画では演算処理を単純化できる。
【0049】
本開示の第4の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は、第1乃至3のいずれかの項目に係るエネルギーマネジメントシステム1において、託送計画装置9は、第1の熱電併給サイト100,200,300の余剰電力の合計が一次託送先候補の不足電力の合計よりも多い時間帯が存在する場合に、第1の熱電併給サイト100,200,300の余剰電力の合計と一次託送先候補の不足電力の合計の差分に相当する電力の余剰分が自己託送グループGの前記複数のサイトのうち一次託送先候補以外のサイトへ供給されるように、前記時間帯に余剰電力を持つ第1の熱電併給サイト100,200,300の中から二次託送元を選択し、自己託送グループGの前記複数のサイトのうち一次託送先候補以外のサイトを含む所定の二次託送先候補の中から二次託送先を決定し、前記時間帯の自己託送計画に二次託送元及び二次託送先の組み合わせ並びに二次託送元から二次託送先への託送電力量を含めるように構成されているものである。
【0050】
本開示の第5の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は、第4の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1において、前記複数のサイトは、電力需要を発電量によって過不足なく満たす電主運転が行われる第2のコージェネレーションシステム2を備える第2の熱電併給サイトを含み、二次託送先候補が第2の熱電併給サイトを含むものである。
【0051】
本開示の第6の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は、第4又は5の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1において、前記複数のサイトは商用電力を買電可能であり、託送計画装置9は、前記複数のサイトの買電量の履歴と契約電力量とを記憶しており、二次託送先候補の中から、不足電力を有し且つ契約電力量と買電量の差が最も小さいサイトを二次託送先と決定するものである。
【0052】
上記第4乃至6の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1によれば、熱主発電サイト100,200,300で余剰となった電力は他のサイトへ託送され、他のサイトで利用される。よって、コージェネレーションシステム2で発生した電気と熱の利用率が高まり、高い総合エネルギー効率と経済性が期待できる。
【0053】
本開示の第7の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は、第1乃至6のいずれかの項目に係るエネルギーマネジメントシステム1において、託送計画装置9は、第1の熱電併給サイト100,200,300の余剰電力の合計が一次託送先候補の不足電力の合計よりも少ない時間帯が存在する場合に、一次託送先候補の不足電力の合計と第1の熱電併給サイト100,200,300の余剰電力の合計との差分に相当する電力の不足分が自己託送グループGの前記複数のサイトのうち第1の熱電併給サイト100,200,300以外のサイトから供給されるように、前記時間帯に不足電力を持つ一次託送先候補の中から三次託送先を選択し、自己託送グループGの前記複数のサイトのうち第1の熱電併給サイト100,200,300以外のサイトから三次託送元を決定し、前記時間帯の自己託送計画に三次託送元及び三次託送先の組み合わせ並びに三次託送元から三次託送先への託送電力量を含めるように構成されているものである。
【0054】
本開示の第8の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1は、第7の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1において、前記複数のサイトは商用電力を買電可能であり、託送計画装置9は、前記複数のサイトの買電量の履歴と契約電力量とを記憶しており、一次託送先候補の中から、不足電力を有し且つ契約電力量と買電量の差が最も小さいサイトを三次託送先と決定するものである。
【0055】
第7及び8の項目に係るエネルギーマネジメントシステム1によれば、熱主発電サイト100,200,300で不足電力が生じた場合には、他のサイトからその不足分の供給を受けることができるので、各サイトの電力需要設備3へ安定した電力供給が行われる。
【0056】
本開示の第9の項目に係るエネルギーマネジメント方法は、熱需要を排熱量によって過不足なく満たす熱主運転が行われるコージェネレーションシステム2を備える熱電併給サイト100,200,300を含む複数のサイト100,200,300,400からなり、サイト間で電気の自己託送が可能な自己託送グループGにおいて、演算処理装置が連続する複数の単位時間帯から構成される所定の計画期間の自己託送計画を生成するエネルギーマネジメント方法であって、
熱電併給サイト100,200,300について、計画期間の熱需要計画と電力需要計画を取得し、計画期間の各時間帯について熱需要がコージェネレーションシステム2の排熱量によって過不足なく満たされるようにコージェネレーションシステム2の発電量を求めることと、
熱電併給サイト100,200,300について、計画期間の各時間帯について発電量と電力需要との差から余剰電力及び不足電力を求めて計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成することと、
熱電併給サイト100,200,300を除く前記複数のサイトについて、計画期間の電力需要計画を取得し、電力需要計画に基づいて計画期間の各時間帯の余剰電力及び不足電力に係る情報を生成することと、
前記複数のサイトの余剰電力及び不足電力に係る情報を取得し、余剰電力を持つサイトから不足電力を持つサイトへ電気が自己託送されるように計画期間の各時間帯について熱電併給サイト100,200,300の中から託送元を決定すると共に前記複数のサイトのうち所定の託送先候補の中から託送先を決定し、計画期間の各時間帯の託送元及び託送先の組み合わせ並びに託送電力量を含む自己託送計画を生成することと、を含むものである。
【0057】
本開示に係るエネルギーマネジメント方法では、サイト内の熱需要設備4の熱需要とコージェネレーションシステム2の排熱量とが対応するように熱主運転が行われることから、コージェネレーションシステム2の排熱は無駄なく利用され、発電量と電力需要の差分は自己託送によって無駄なく利用される。そのため、コージェネレーションシステム2で発生した電気と熱の利用率が高まり、高い総合エネルギー効率と経済性が期待できる。更に、エネルギーマネジメント方法では、自己託送計画の生成のために、コージェネレーションシステム2の燃料調達コストなどの費用に係る情報を使用しないので、サイト内外に調達コストを開示せずに済む。また、コスト重視の自己託送計画では原料単価や託送料金などパラメータが多く演算が複雑であるが、熱収支を重視した自己託送計画では演算処理を単純化できる。
【0058】
本明細書で開示する託送計画装置9、複数の発電計画装置101,201,301、及び、複数の送受電計画装置102,202,302,402の機能は、当該機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(Central Processing Unit)、従来型の回路、及び/又は それらの組合せを含む、circuitry又は processing circuitryにおいて実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含み、circuitry又はprocessing circuitryとみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、programmed processorであってもよい。本明細書において、circuitry、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。当該ハードウェアがcircuitryのタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該circuitry、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。
【0059】
以上の本開示の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態に纏められているが、複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 :エネルギーマネジメントシステム
2 :コージェネレーションシステム
3 :電力需要設備
4 :熱需要設備
5 :受配電設備
6 :商用電力供給系統
7 :通信ネットワーク
8 :送配電ネットワーク
9 :託送計画装置
100,200,300,400 :サイト
101,201,301 :発電計画装置
102,202,302,402 :送受電計画装置
G :自己託送グループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8