(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178579
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】駆動装置及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02N 2/12 20060101AFI20241218BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H02N2/12
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096819
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】小田 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】土屋 聡司
(72)【発明者】
【氏名】北島 暁
【テーマコード(参考)】
5H607
5H681
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE28
5H607EE31
5H607EE36
5H607FF33
5H681AA01
5H681BB02
5H681BB14
5H681BC01
5H681CC02
5H681DD23
5H681DD63
5H681DD73
5H681EE03
5H681EE12
5H681EE20
(57)【要約】
【課題】複数の駆動手段同士の駆動が互いに負荷となることなく、各駆動手段の駆動力を合算することができる技術を提供する。
【解決手段】出力軸60と、出力軸60に対して回転可能に構成された第1部材30及び第2部材40と、出力軸60に固着された第3部材50と、第1部材30及び第2部材40のうちの一方の部材を出力軸60の周りで回転駆動させる振動型アクチュエータ10と、第1部材30及び第2部材40のうちの他方の部材を出力軸60の周りで回転駆動させる電磁モータ20と、第2部材40に回転可能に保持されるとともに、第1部材30と第3部材50とに接して挟持された転動体80と、を備え、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20のうちの少なくとも1つが駆動することによって、第3部材50及び出力軸60が一体で回転する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸と、
前記出力軸に対して回転可能に構成された第1部材および第2部材と、
前記出力軸に固着された第3部材と、
前記第1部材および前記第2部材のうちの一方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる振動型アクチュエータと、
前記第1部材および前記第2部材のうちの前記一方の部材とは異なる他方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる電磁モータと、
前記第2部材に回転可能に保持されるとともに、前記第1部材と前記第3部材とに接して挟持された転動体と、
を備え、
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータのうちの少なくとも1つが駆動することによって、前記第3部材および前記出力軸が一体で回転する
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第3部材および前記出力軸は、前記少なくとも1つが駆動することによって前記転動体を介して、前記一体で回転する
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1部材、前記第2部材および前記第3部材は、それぞれ、前記出力軸に挿通されている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータがともに駆動することによって、前記第3部材および前記出力軸が前記一体で回転する
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータのうちの一方が駆動できなくなった場合に、当該一方とは異なる他方が単体で駆動できる
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記出力軸の軸方向を基準として前記第1部材が反時計回りに回転するときを正として前記第1部材の回転数をN1とし、
前記出力軸の軸方向を基準として前記第2部材が反時計回りに回転するときを正として前記第2部材の回転数をN2とした場合、
N2/N1>0.5を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記N1と前記N2において、N2≧N1を満たす
ことを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記出力軸の軸方向を基準として前記第1部材が反時計回りに回転するときを正として前記第1部材のトルクをT1とし、
前記出力軸の軸方向を基準として前記第2部材が反時計回りに回転するときを正として前記第2部材のトルクをT2とした場合、以下の(A)式を満たす
【数1】
ことを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記振動型アクチュエータは、矩形状または環状である
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記振動型アクチュエータは、複数設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記振動型アクチュエータは、前記第1部材を前記出力軸の周りで回転駆動させ、
前記電磁モータは、前記第2部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記転動体は、球の形状、円筒の形状または円柱の形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記転動体は、歯車を含み構成されており、
前記歯車と接する前記第1部材および前記第3部材の部位には、歯が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項14】
出力軸と、
前記出力軸に対して回転可能に構成された第1部材および第2部材と、
前記出力軸に固着された第3部材と、
前記第1部材および前記第2部材のうちの一方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる振動型アクチュエータと、
前記第1部材および前記第2部材のうちの前記一方の部材とは異なる他方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる電磁モータと、
前記第2部材に回転可能に保持されるとともに、前記第1部材と前記第3部材とに接して挟持された転動体と、
を備える駆動装置の駆動方法であって、
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータのうちの少なくとも1つが駆動することによって、前記第3部材および前記出力軸が一体で回転する
ことを特徴とする駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置及び駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動装置に含まれうる振動型アクチュエータは、駆動する移動体に加圧接触する振動体を備えている。この振動型アクチュエータは、振動体に励起された振動の駆動力によって生じる摩擦を利用して移動体を相対的に移動させる振動波モータとして利用されている。また、振動型アクチュエータの一種である回転型振動アクチュエータは、例えば、カメラのオートフォーカス機能やズーム機能のためにレンズを移動させることや、カメラのパン・チルト動作の駆動源として用いられている。
【0003】
振動型アクチュエータは、摩擦を利用して移動体に駆動力を伝える構造のため、トルク(発生力)を増加させるためには、振動体と移動体との加圧接触に係る加圧を大きくすることが有効である。しかしながら、上述した加圧を大きくし過ぎると、摩擦による損失が増加して、振動体や移動体の温度が駆動中に大きく上昇したり、摩擦部分の摩耗により耐久性が低下したりするおそれがあり、適正な範囲を超えて加圧を大きくすることは難しい。この対策の1つとしては、複数の駆動手段として複数の振動型アクチュエータを同時に用いて、1つの出力軸に各振動型アクチュエータの駆動力を伝達し、駆動力を合成(合算)することでトルクを増加させる手法が考えられる。例えば、特許文献1には、1つの出力軸に対して複数の振動型アクチュエータを連結させて、各振動型アクチュエータの駆動力を重畳してトルク(発生力)を増加させる技術が記載されている。具体的に、特許文献1では、各振動型アクチュエータの回転数などの出力特性を一致させるように駆動周波数や駆動電圧の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、振動型アクチュエータの個体差等により出力特性に差が生じた場合には、各振動型アクチュエータの駆動力を合算することができず、複数の振動型アクチュエータが互いに負荷となってしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、複数の駆動手段同士の駆動が互いに負荷となることなく、各駆動手段の駆動力を合算することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駆動装置は、出力軸と、前記出力軸に対して回転可能に構成された第1部材および第2部材と、前記出力軸に固着された第3部材と、前記第1部材および前記第2部材のうちの一方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる振動型アクチュエータと、前記第1部材および前記第2部材のうちの前記一方の部材とは異なる他方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる電磁モータと、前記第2部材に回転可能に保持されるとともに、前記第1部材と前記第3部材とに接して挟持された転動体と、を備え、前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータのうちの少なくとも1つが駆動することによって、前記第3部材および前記出力軸が一体で回転する。
また、本発明は、上述した駆動装置の駆動方法を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の駆動手段(振動型アクチュエータ及び電磁モータ)同士の駆動が互いに負荷となることなく、各駆動手段の駆動力を合算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る駆動装置の概略構成の第1例を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る駆動装置の概略構成の第1例を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る振動型アクチュエータの概略構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る振動体の2つの屈曲振動モード(Aモード及びBモード)を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る駆動装置において、振動型アクチュエータによって回転駆動される第1部材と、電磁モータによって回転駆動される第2部材の回転特性の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る駆動装置において、第2部材の回転数と第3部材の回転数及びトルクとの関係の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る駆動装置において、第1部材、第2部材及び第3部材の動作パターンの一例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る駆動装置の概略構成の第2例を示す斜視図である。
【
図9】第1の実施形態に係る駆動装置の概略構成の第3例を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態に係る駆動装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図11】第3の実施形態を示し、第1及び第2の実施形態で説明した駆動装置を複数備える雲台装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る駆動装置100の概略構成の第1例を示す斜視図である。この
図1に示す第1の実施形態の第1例に係る駆動装置100を「駆動装置100-11」として記載する。具体的に、
図1(a)は、駆動装置100-11の内部構成の斜視図であり、また、
図1(b)は、駆動装置100-11の内部構成を分解した斜視図である。この
図1(a)及び
図1(b)において、同じ構成には同じ符号を付している。また、
図1(a)及び
図1(b)には、出力軸60の軸方向をz方向とし、径方向をr方向とし、Z方向から見て反時計回りを正のθとする回転座標系を図示している。
【0013】
駆動装置100-11は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、振動型アクチュエータ10、電磁モータ20、第1部材30、第2部材40、第3部材50、出力軸60、ピニオンギヤ70、及び、転動体80を備える。
【0014】
図1(a)において、振動型アクチュエータ10は、第1部材30に加圧接触した状態となっている。このため、振動型アクチュエータ10を励振させて発生した駆動力が第1部材30に伝わることで、振動型アクチュエータ10と相対的に第1部材30が出力軸60を中心として回転する。即ち、駆動装置100-11では、振動型アクチュエータ10は、第1部材30を出力軸60の周りで回転駆動させる。この振動型アクチュエータ10によって第1部材30が摩擦駆動されているため、位置ずれ(ガタ)が小さく、第1部材30を精密に位置決め駆動することが可能である。
【0015】
また、電磁モータ20の駆動力がピニオンギヤ70を介して第2部材40の外周部に設けられたスパーギヤ41に伝達し、第2部材40が出力軸60を中心として回転する。即ち、駆動装置100-11では、電磁モータ20は、第2部材40を出力軸60の周りで回転駆動させる。このとき、ピニオンギヤ70とスパーギヤ41とは、適切なバックラッシを設けている。なお、
図1(a)及び
図1(b)は模式図であるため、ピニオンギヤ70の歯とスパーギヤ41の歯とのピッチが一致していないが、実際にはピッチが一致する構成となっている。また、
図1(a)及び
図1(b)では、ピニオンギヤ70の歯数がスパーギヤ41の歯数よりも少ない、即ちギヤ比は減速としてトルクが増加するように設定されている例を図示しているが、本実施形態においてはこれに限定されるものではない。例えば、ピニオンギヤ70の歯数とスパーギヤ41の歯数を同数とする形態や、ピニオンギヤ70の歯数がスパーギヤ41の歯数よりも多い形態も、本実施形態に適用可能である。
【0016】
図1(b)は、
図1(a)に示す駆動装置100-11を出力軸60の回転軸の方向に分解した斜視図である。具体的に、
図1(b)は、例えばステンレス球である転動体80を第2部材40に対して所定の位置に位置決めする方法を説明するための図である。
図1(b)では、複数の転動体80が、第2部材40に円周上に並んで設けられた複数の穴42に挿入される様子を図示している。実際の駆動装置100-11では、複数の転動体80は、第2部材40の複数の穴42に挿入された状態で、第1部材30と第3部材50とに接して挟持されて加圧接触するように支持されている。この構造によって転動体80が第2部材40の穴42に挿入されているため、転動体80は、第2部材40に対して所定の位置関係を保ちつつ、第1部材30及び第3部材50に対して転がりながら相対的に移動することが可能となっている。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る駆動装置100の概略構成の第1例を示す断面図である。具体的に、
図2は、第1の実施形態の第1例に係る駆動装置100-11を、出力軸60の回転軸Lを通る平面でカットした断面図である。この
図2において、
図1に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0018】
駆動装置100-11は、
図2に示すように、
図1(a)及び
図1(b)に示す構成部(10~80)に加えて、外装部90、ベアリング91~94を備えている。駆動装置100-11では、
図2に示すように、第1部材30、第2部材40及び第3部材50は、それぞれ、出力軸60に挿通されている。
【0019】
第1部材30は、ベアリング92を介して出力軸60に支持されている。このため、第1部材30は、出力軸60に対して回転軸Lを中心として相対的に回転可能に構成されている。また、第2部材40は、ベアリング93を介して出力軸60に支持されている。このため、第2部材40は、出力軸60に対して回転軸Lを中心として相対的に回転可能に構成されている。第3部材50は、出力軸60に固着されて固定されている。さらに、出力軸60は、2つのベアリング91及び94を介して、外装部90に支持されている。以上の構成により、第1部材30、第2部材40、第3部材50及び出力軸60は、回転軸Lを中心として回転可能となっている。
【0020】
振動型アクチュエータ10は、外装部90に対して周方向に相対的に移動しないように支持されている。また、振動型アクチュエータ10は、不図示の加圧手段を用いて第1部材30に加圧接触している。この際の加圧手段としては、例えば、コイルバネや板バネなどのばね加圧手段や、磁力を用いた磁気加圧手段を用いることができる。
【0021】
転動体80は、第2部材40に対して自転可能に支持されており、不図示の加圧手段によって第1部材30と第3部材50とに加圧された状態で挟持されている。第1部材30及び第3部材50を転動体80に加圧接触させるための加圧手段としては、コイルバネの他、サラバネやウェーブワッシャ等を用いることができる。なお、第1部材30と第3部材50を転動体80に加圧接触させるための加圧手段は、振動型アクチュエータ10の加圧手段を用いて兼用にしてもよい。
【0022】
転動体80は、第1部材30及び第3部材50と加圧接触しているため、転動体80と第1部材30との間に働く摩擦力又は転動体80と第3部材50との間に働く摩擦力を越えない限り、転動体80が第1部材30又は第3部材50に対して滑ることはない。また、転動体80は、第1部材30及び第3部材50との接触面を転がりながら移動する(公転する)ことが可能である。このとき、転動体80は、第2部材40と滑り接触しながら自転する必要があるため、これを可能とするために、第2部材40(より具体的には、第2部材40の穴42)と転動体80との間には微小な隙間が設けられている。
【0023】
なお、
図1(b)及び
図2に示す転動体80としては、ステンレス球を用いる例を説明したが、本実施形態においてはこのステンレス球に限定されるものではない。例えば、転動体80として、サーメット球やセラミック球、樹脂球などを適用する形態も、本実施形態に適用可能である。また、転動体80の形状としては、
図1(b)及び
図2に示す球の形状に限定されるものではなく、例えばコロと呼ばれる円柱の形状や円筒の形状の部材を用いる形態も、本実施形態に適用可能である。この場合、第2部材40に、転動体80の形状に応じた穴42を設け、この穴42に転動体80を嵌め込むことにより同様の効果が得られる。
【0024】
さらに、本実施形態においては、転動体80は、歯車を含み構成してもよい。具体的には、例えば、転動体80として、円柱状または円錐状の部材に歯車を形成する。この場合、転動体80の歯車と接する第1部材30及び第3部材50の部位には、転動体80の歯車とかみ合う歯車を形成することで駆動力を伝達する構成とすることができる。ここで、転動体80に歯車を利用する場合、この歯車は、第2部材40とは滑り接触ではなく、第2部材40に支持され、第2部材40の径方向に沿った軸を中心に回転可能に構成する必要がある。また、高精度な位置決めが可能な駆動機構を実現するために、第1部材30と第3部材50とで転動体80の歯車を挟持することで予圧を与え、バックラッシを小さくすることが好ましい。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る振動型アクチュエータ10の概略構成の一例を示す分解斜視図である。振動型アクチュエータ10は、
図1に示すように、振動体13、緩衝部材14、加圧伝達部材15、及び、振動体支持部16を備える。
【0026】
振動体13は、
図3に示すように、2つの突起11a及び11bをもつ弾性体11と、圧電体12を備える。より具体的に、振動体13は、弾性体11と圧電体12とが接着されて、緩衝部材14と加圧伝達部材15を介して振動体支持部16に支持された構成となっている。また、本実施形態においては、圧電体12は、電気-機械エネルギー変換素子である。
【0027】
振動体13の弾性体11は、振動の減衰が小さい材料が好ましく、例えばステンレス鋼等の金属やセラミックを用いる。弾性体11の製造に関しては、プレス成型や切削などで2つの突起11a及び11bを一体で設けてもよいし、2つの突起11a及び11bを別体で製造して後から弾性体11に溶接や接着等で固定してもよい。
【0028】
振動体13の圧電体12は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛を用いる。また、圧電体12は、チタン酸バリウム等の鉛を含有しない圧電材料を主成分としたものでもよい。ここで、鉛を含有しないとは、鉛の含有量が1000ppm以下であることを指す。
【0029】
さらに、振動体13(より具体的には、弾性体11の突起11a及び11b)は、不図示のバネにより、加圧伝達部材15と緩衝部材14を介して、第1部材30と加圧接触している。ここで、緩衝部材14は、フェルト等で構成されている。また、加圧伝達部材15は、振動体13の振動を阻害しないように構成されている。
【0030】
図4は、第1の実施形態に係る振動体13の2つの屈曲振動モード(Aモード及びBモード)を示す図である。この
図4において、
図3に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0031】
図4(a)及び
図4(b)には、2つの突起11a及び11bをもつ弾性体11と、圧電体12を備える振動体13が図示されている。
【0032】
図4(a)における屈曲振動モードは、Aモードの場合を示している。Aモードは、矩形状の振動体13の長辺方向(
図4(a)のX方向)における二次の屈曲運動であり、短辺方向(
図4(a)のY方向)と平行な3本の節線を有している。ここで、突起11a及び11bは、Aモードの振動で節となる位置の近傍に配置されており、Aモードの振動によって、
図4(a)のX方向に往復運動を行う。
【0033】
図4(b)における屈曲振動モードは、Bモードの場合を示している。Bモードは、矩形状の振動体13の短辺方向(
図4(a)のY方向)における一次の屈曲振動であり、長辺方向(
図4(a)のX方向)と平行な2本の節線を有している。ここで、
図4(a)に示すAモードにおける節線と
図4(b)に示すBモードにおける節線は、XY平面内において略直交するように形成されている。また、突起11a及び11bは、Bモードの振動で腹となる位置の近傍に配置されており、Bモードの振動によって、
図4(b)のZ方向に往復運動を行う。
【0034】
図4(a)に示すAモードと
図4(b)に示すBモードの振動を所定の位相差で発生させることにより、突起11a及び11bの先端に楕円運動を発生させて、
図4(a)のX方向の駆動力を与えることができる。なお、圧電体12には、不図示のフレキシブルプリント基板が接着されており、この不図示のフレキシブルプリント基板から圧電体12に交流電圧を印加することによって、
図4に示す2つの屈曲振動モードを発生させることができる。
【0035】
次に、第1の実施形態の第1例に係る駆動装置100-11の動作について説明する。
まずは、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20のうちのいずれか1つを駆動させることによって、第3部材50及び出力軸60を一体で回転駆動する場合を説明する。
【0036】
始めに、振動型アクチュエータ10のみを駆動させる場合を説明する。
この場合、振動型アクチュエータ10の推力を受けて第1部材30のみが回転し、第2部材40が固定されているとき、転動体80と第1部材30との回転軸Lを中心とする周方向の摩擦力によって転動体80が自転する。さらに、自転する転動体80と第3部材50との回転軸Lを中心とする周方向の摩擦力によって第3部材50が回転し、第3部材50と出力軸60とが一体的に回転する。
【0037】
次いで、電磁モータ20のみを駆動させる場合を説明する。
この場合、電磁モータ20の駆動力により第2部材40のみが回転し、第1部材30が固定されているとき、第2部材40の回転によって第2部材40の穴42から転動体80が回転軸Lを中心とする周方向の力を受け、転動体80が回転軸Lを中心に公転する。転動体80が公転する際に、第1部材30と第3部材50との接触面から回転軸Lを中心とする周方向の摩擦力を受けるため、転動体80は転がって自転する。第1部材30は、振動型アクチュエータ10との接触による保持力によって回転しないように支持されているため、電磁モータ20の駆動力は、第2部材40及び転動体80を介して、第3部材50を回転させる力として伝達される。そして、第3部材50と出力軸60とが一体的に回転する。
【0038】
上述したように、駆動装置100-11では、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20のうちのいずれか1つを駆動させることによって、第3部材50及び出力軸60を一体で回転駆動することができる。これにより、例えば、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20のうちの一方が停止して駆動できなくなった場合でも、当該一方とは異なる他方が単体で駆動することによって、駆動装置100-11を駆動することが可能である。
【0039】
次に、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20をともに(同時に)駆動させることによって、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20の駆動力を合算した大きな駆動力で、第3部材50及び出力軸60を一体で回転駆動する場合を説明する。
【0040】
振動型アクチュエータ10と電磁モータ20とを同時に駆動することにより、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20の駆動力が合成(合算)されて第3部材50に伝達される。これにより、第3部材50と一体的に回転駆動する出力軸60から、当該合成(合算)された駆動力が駆動装置100-11の出力として取り出される。このときの出力軸60の回転数及びトルクについて、以下に説明する。
【0041】
振動型アクチュエータ10によって駆動される第1部材30、電磁モータ20によって駆動される第2部材40、及び、出力軸60と一体的に回転する第3部材50における回転数とトルクを以下のように定義する。
第1部材30:回転数N1、トルクT1
第2部材40:回転数N2、トルクT2
第3部材50:回転数N3、トルクT3
なお、回転数の単位はrpmであり、トルクの単位はNmである。回転数N1、N2及びN3と、トルクT1、T2及びT3は、
図1の紙面の上側から見て反時計回りに回る方向、即ち
図1に示す回転座標系におけるθ方向を正とする。具体的に、出力軸60の回転軸Lを基準として第1部材30が反時計回りに回転するときを正として、第1部材30の回転数をN1とし、第1部材30のトルクをT1とする。同様に、出力軸60の回転軸Lを基準として第2部材40が反時計回りに回転するときを正として、第2部材40の回転数をN2とし、第2部材40のトルクをT2とする。同様に、出力軸60の回転軸Lを基準として第3部材50が反時計回りに回転するときを正として、第3部材50の回転数をN3とし、第3部材50のトルクをT3とする。
【0042】
まず、回転数について説明する。
ここでは、転動体80と第1部材30及び第3部材50との間で、滑りは生じないものとする。このとき、転動体80は、第1部材30と第3部材50によって挟持された状態で回転軸Lを中心に公転するため、転動体80の公転の回転数は、第1部材30の回転数N1と第3部材50の回転数N3との平均となる。また、転動体80の公転の回転数は、転動体80を保持する第2部材40の回転数と等しい。つまり、第2部材40の回転数N2は、第1部材30の回転数N1と第3部材50の回転数N3との平均となる。その関係は、以下の(1)式で表される。
【数1】
【0043】
(1)式より、第3部材50の回転数N3は、以下の(2)式で表される。
N3=2・N2-N1 ・・・(2)
【0044】
(2)式より、第3部材50の回転数N3は、第2部材40の回転数N2と第1部材30の回転数N1との関係によって回転方向が変化することが分かる。
【数2】
【0045】
次いで、トルクについて説明する。
第1部材30、第2部材40及び第3部材50の回転における運動エネルギー(W)は、トルクと回転数の関係で、それぞれ、以下の(3)式~(5)式で表される。
第1部材30の運動エネルギー:W1=2π・T1・N1/60 ・・・(3)
第2部材40の運動エネルギー:W2=2π・T2・N2/60 ・・・(4)
第3部材50の運動エネルギー:W3=2π・T3・N3/60 ・・・(5)
【0046】
なお、第3部材50の運動エネルギーW3は、出力軸60の運動エネルギーと等しい。転動体80やベアリング91~94などによるエネルギー損失が極めて小さく無視できる場合、第3部材50の運動エネルギーW3は、第1部材30の運動エネルギーW1と第2部材40の運動エネルギーW2の和となり、以下の(6)式となる。
W3=W1+W2 ・・・(6)
【0047】
そして、上述した(3)式~(6)式より、以下の(7)式となる。
T3・N3=T1・N1+T2・N2 ・・・(7)
【0048】
(2)式と(7)式より、第3部材50のトルクT3は、以下の(8)式となる。
【数3】
【0049】
次に、振動型アクチュエータ10を駆動し、電磁モータ20が停止している場合の第3部材50の出力を、上述した式を用いて説明する。電磁モータ20が停止しているので、第2部材40の回転数N2=0rpmである。この場合、(2)式より、第3部材50の回転数N3=-N1であり、第1部材30の回転数N1と第3部材50の回転数N3は絶対値が等しくなり、その向きは反対方向となる。また、この場合、(8)式より、第3部材50のトルクT3=-T1となり、第3部材50のトルクT3は、第1部材30のトルクT1と絶対値が等しくなり、その向きは反対方向となる。
【0050】
続いて、電磁モータ20を駆動し、振動型アクチュエータ10が停止している場合の第3部材50の出力を、上述した式を用いて説明する。振動型アクチュエータ10が停止しているので、第1部材30の回転数N1=0rpmである。この場合、(2)式より、第3部材50の回転数N3=2・N2であり、第3部材50の回転数N3は、第2部材40の回転数N2の絶対値の2倍となり、その向きは同じ方向である。
【数4】
【0051】
次に、振動型アクチュエータ10と電磁モータ20を同時に駆動し、出力軸60から大きな出力を得る方法について説明する。
【0052】
図5は、第1の実施形態に係る駆動装置100において、振動型アクチュエータ10によって回転駆動される第1部材30と、電磁モータ20によって回転駆動される第2部材40の回転特性の一例を示す図である。
図5において、横軸は回転数を示し、縦軸はトルクを示している。第1部材30の回転数N1及びトルクT1は、一定の場合で説明するため、
図5では黒丸の1点(N1=100rpm、T1=0.5Nm)のみをプロットしている。そして、
図5では、第2部材40の回転数N2及びトルクT2が可変の場合を説明するため、2本の破線としている。なお、第2部材40の回転数N2及びトルクT2が
図5の破線上にくるのは最大出力を満たすときであり、第1象限にある場合には、第2部材40の回転数N2及びトルクT2が破線より下の領域を取りうる。また、第3象限にある場合には、逆に、第2部材40の回転数N2及びトルクT2が破線より上の領域を取りうる。第2部材40の回転方向によって回転数N2及びトルクT2の正負が変化するため、第2部材40のトルクT2の直線は、回転数0rpmを境に不連続となる。
【0053】
図6は、第1の実施形態に係る駆動装置100において、第2部材40の回転数N2と第3部材50の回転数N3及びトルクT3との関係の一例を示す図である。具体的に、
図6(a)は、第2部材40の回転数N2が正の範囲にある場合の回転数N2に対する第3部材50(出力軸60)の回転数N3及びトルクT3の変化を示す特性図である。また、
図6(b)は、第2部材40の回転数N2が負の範囲にある場合の回転数N2に対する第3部材50(出力軸60)の回転数N3及びトルクT3の変化を示す特性図である。
図6(a)及び
図6(b)において、実線は、第3部材50(出力軸60)の回転数N3を示し、破線は、第3部材50(出力軸60)のトルクT3を示している。なお、
図5、
図6(a)及び
図6(b)において、縦軸及び横軸に示した数値は、特性の一例として記載したものであり、必ずしもこの数値をとるものではない。
【0054】
次に、第3部材50(出力軸60)の回転数N3による回転を第1部材30の回転数N1と同じ方向に回転させる駆動方法について説明する。つまり、N3/N1>0となるので、上述した(2)式より、以下の(9)式となる。
N3/N1=2・N2/N1-1>0
N2/N1>0.5 ・・・(9)
この(9)式を満たすとき、第3部材50(出力軸60)を第1部材30と同じ方向に駆動させることができる。
【0055】
また、N2/N1=0.5、つまり、N2=N1/2のとき、第3部材50(出力軸60)の回転数N3は0rpmになる。また、N2/N1<0.5のとき、第3部材50(出力軸60)を第1部材30と逆の方向に回転させることができる。
【0056】
次に、第3部材50(出力軸60)の回転数N3を第1部材30の回転数N1よりも増大させる駆動方法(同じ回転数を含む)について説明する。つまり、N3がN1以上となるので、上述した(2)式より、以下の(10)式となる。
N3=2・N2-N1≧N1
N2≧N1 ・・・(10)
この(10)式を満たすとき、第3部材50(出力軸60)の回転数N3を第1部材30の回転数N1よりも増大させることがでる。
【0057】
次に、第3部材50(出力軸60)のトルクT3を第1部材30のトルクT1よりも増大させる駆動方法(同じトルクを含む)について説明する。つまり、T3≧T1となるので、上述した(8)式より、以下の(11)式となる。
【数5】
この(11)式を満たすとき、第3部材50(出力軸60)のトルクT3を第1部材30のトルクT1よりも増大させることができる。
【0058】
次に、第3部材50(出力軸60)が第1部材30に対して減速かつ増トルクとなる駆動方法について説明する。
図6(a)において第2部材40の回転数N2が正の範囲(反時計回り)では、第3部材50の回転数N3は、第2部材40の回転数N2に比例し、回転数N2が所定の値(50rpm)を境にして回転方向の正負が逆転する。また、
図6(a)において第3部材50の回転数N3が0rpmとなる第2部材40の回転数N2(50rpm)では、第3部材50のトルクT3が無限大となる。しなしながら、実際には、トルクが一定値を超えると転動体80と第1部材30又は第3部材50との間で滑りが生じるため、駆動装置100-11は、一定以上のトルクは出力できない。
【数6】
【0059】
図6(b)において第2部材40の回転数N2が負の範囲(時計回り)では、第3部材50の回転数N3は、第2部材40の回転数N2に比例する。第2部材40の回転数N2が負の方向(時計回り)に大きくなると、第3部材50の回転数N3も負の方向(時計回り)に大きくなり、それに伴って第3部材50のトルクT3は小さくなる。
【0060】
これらの特性を利用し、第1部材30の回転数N1及びトルクT1を一定とした場合、第3部材50(出力軸60)に求める出力に応じて第2部材40の回転数N2及びトルクT2を選定する必要がある。
【0061】
図7は、第1の実施形態に係る駆動装置100において、第1部材30、第2部材40及び第3部材50の動作パターンの一例を示す図である。具体的に、
図7は、第3部材50(出力軸60)の回転数N3=100rpm及びトルクT3=1Nmを出力したい場合の、第1部材30の回転数N1及びトルクT1と第2部材40の回転数N2及びトルクT2の組み合わせのパターンを示したものである。
【0062】
第3部材50(出力軸60)から同じ出力を取り出すときには、複数の組み合わせが考えられるため、第1部材30の回転数N1及びトルクT1に応じて、第2部材40の回転数N2及びトルクT2を制御する必要がある。具体的に、例えば、不図示のエンコーダを用いて、第1部材30の回転数N1、第2部材40の回転数N2、及び、第3部材50(出力軸60)の回転数N3をそれぞれ測定する。また、第1部材30の回転数N1とトルクT1との関係を表すN1-T1特性、及び、第2部材40の回転数N2とトルクT2との関係を表すN2-T2特性を別途測定するなどして取得しておく。これは、振動型アクチュエータ10と第1部材30のみを組み合わせた状態や電磁モータ20単体の特性を測定しておくことで確認することができる。なお、第2部材40の特性は、ピニオンギヤ70とスパーギヤ41とのギヤ比を用いて電磁モータ20単体の特性から換算することができる。そして、所望の第3部材50(出力軸60)の回転数N3になるように、第1部材30の回転数N1及び第2部材40の回転数N2を制御する。第3部材50(出力軸60)の回転数N3は、(2)式より導出可能であるが、転動体80が第1部材30と第3部材50との間で滑ることも考えられるため、第3部材50(出力軸60)の回転数N3も測定することが望ましい。
【0063】
また、振動型アクチュエータ10が故障等で停止して電磁モータ20のみで駆動する場合、ピニオンギヤ70とスパーギヤ41との間のバックラッシにより電磁モータ20の移動量と出力軸60の移動量との間に差が生じてしまう。このため、出力軸60の移動量を知るためにも、第1部材30、第2部材40及び第3部材50(出力軸60)のそれぞれにエンコーダが必要となる。
【0064】
本実施形態では、振動型アクチュエータ10を用いて第1部材30を駆動し、電磁モータ20を用いて第2部材40を駆動する構成を説明した。第1部材30の回転は、転動体80の転動により第3部材50及び出力軸60に動力として伝達されるため、転動体80の滑りが無い限りバックラッシに相当する微小な位置ずれが発生しない。第2部材40の回転は、穴42と転動体80の間に隙間(ガタ)があるため、第3部材50及び出力軸60に動力として伝達する際に微小なずれが発生する。したがって、振動型アクチュエータ10を、第3部材50との伝達の際にバックラッシが生じない第1部材30の駆動に用いることで、振動型アクチュエータ10のメリットが活かせる。また、第2部材40の駆動には、単位体積当たりの出力が大きい電磁モータ20を用いることで、駆動装置100-11を小型で大出力にすることが可能となる。
【0065】
図8は、第1の実施形態に係る駆動装置100の概略構成の第2例を示す斜視図である。この
図8に示す第1の実施形態の第2例に係る駆動装置100を「駆動装置100-12」として記載する。
図8において、
図1~
図3に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図1に示す駆動装置100-11は、電磁モータ20と第2部材40との駆動力伝達手段として、第2部材40のスパーギヤ41及びピニオンギヤ70を用いるものであった。これに対して、
図8に示す駆動装置100-12は、
図1に示す第2部材40に変えてタイミングプーリー141を設けた第2部材140を用い、
図1に示すピニオンギヤ70に変えてタイミングプーリー170を用いる。そして、
図8に示す駆動装置100-12は、タイミングベルト171を新たに設けて、電磁モータ20の駆動力を、タイミングプーリー170及びタイミングベルト171を介して、タイミングプーリー141を設けた第2部材140に伝達する。このような構成とすることで、
図8に示す駆動装置100-12は、電磁モータ20の駆動方向と第2部材140の駆動方向を揃えることが可能となる。これにより、電磁モータ20の反トルクによって、駆動装置100-12が電磁モータ20の駆動方向と逆に動こうとするのを防ぐことができる。
図8に示す駆動装置100-12の構成では、ギヤによるバックラッシは考慮しなくてもよいが、タイミングベルト171で駆動力を伝達するため、ギヤを用いた
図1に示す駆動装置100-11の場合よりも、駆動装置100が大型化してしまう。また、本実施形態においては、タイミングベルト171に限定されるものではなく、ベルト状の素材で駆動を伝達するものであれば他の手段でもよい。例えば、歯のないプーリーベルト及びプーリーや、ラダーチェーンのようなチェーン等でもよい。
【0067】
なお、
図1に示す駆動装置100-11及び
図8に示す駆動装置100-12では、第1部材30を駆動する振動型アクチュエータ10を1つ備える例を示しているが、本実施形態においてはこれに限定されるものではない。本実施形態に係る駆動装置100においては、第1部材30を駆動する振動型アクチュエータ10を複数設けるようにしてもよい。同様に、
図1に示す駆動装置100-11及び
図8に示す駆動装置100-12では、第2部材を駆動する電磁モータ20を1つ備える例を示しているが、第2部材を駆動する電磁モータ20を複数設けるようにしてもよい。
【0068】
図9は、第1の実施形態に係る駆動装置100の概略構成の第3例を示す断面図である。この
図9に示す第1の実施形態の第3例に係る駆動装置100を「駆動装置100-13」として記載する。
図9において、
図1~
図3に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図9に示す駆動装置100-13は、
図2に示す駆動装置100-11に対して、振動型アクチュエータ10を配置する位置及び方向が異なっている。具体的に、
図9に示す駆動装置100-13では、第1部材30を径方向から加圧接触するように振動型アクチュエータ10を配置している。
【0070】
以上説明した第1の実施形態に係る駆動装置100は、出力軸60と、出力軸60に対して回転可能に構成された第1部材30及び第2部材40と、出力軸60に固着された第3部材50を備える。さらに、第1の実施形態に係る駆動装置100は、第1部材30を出力軸60の周りで回転駆動させる振動型アクチュエータ10と、第2部材40を出力軸60の周りで回転駆動させる電磁モータ20を備える。さらに、第1の実施形態に係る駆動装置100は、第2部材40に回転可能に保持されるとともに、第1部材30と第3部材50とに接して挟持された転動体80を備える。そして、第1の実施形態に係る駆動装置100は、振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20のうちの少なくとも1つが駆動することによって、第3部材50及び出力軸60が一体で回転する。
かかる構成によれば、複数の駆動手段(振動型アクチュエータ10及び電磁モータ20)同士の駆動が互いに負荷となることなく、各駆動手段の駆動力を合算することができる。例えば、電磁モータ20は、振動型アクチュエータ10のような摩擦を利用した駆動ではないため、振動型アクチュエータ10の負荷とはなり難い。また、振動型アクチュエータ10のみを駆動させても第3部材50及び出力軸60を一体で回転させることができ、電磁モータ20のみを駆動させても第3部材50及び出力軸60を一体で回転させることができるため、それぞれの駆動力を合算することができる。
【0071】
なお、第1の実施形態に係る駆動装置100では、振動型アクチュエータ10が第1部材30を出力軸60の周りで回転駆動させ、電磁モータ20が第2部材40を出力軸60の周りで回転駆動させたが、本発明においてはこれに限定されるものではない。本発明においては、振動型アクチュエータ10は、第1部材30及び第2部材40のうちの一方の部材を出力軸60の周りで回転駆動させる形態も含む。同様に、本発明においては、電磁モータ20は、第1部材30及び第2部材40のうちの前記一方の部材とは異なる他方の部材を出力軸60の周りで回転駆動させる形態も含む。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0073】
図10は、第2の実施形態に係る駆動装置100の概略構成の一例を示す斜視図である。この
図10に示す第2の実施形態に係る駆動装置100を「駆動装置100-2」として記載する。
図10において、
図1及び
図2に示す構成と同様の構成については同じ符号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0074】
図1~
図3及び
図8~9に示す第1の実施形態に係る振動型アクチュエータ10は、その形状が矩形状であったが、
図10に示す第2の実施形態に係る振動型アクチュエータ210は、その形状が円環状となっている。
【0075】
図10において、振動型アクチュエータ210は、不図示の加圧手段を用いて第1部材230に加圧接触している。振動型アクチュエータ210に進行波振動が励振されると、振動型アクチュエータ210に駆動力が発生し、その駆動力が第1部材230を駆動し、第1部材230が振動型アクチュエータ210と相対的に移動する。
【0076】
図10に示す振動型アクチュエータ210は、複数の溝211aを備える弾性体211と、電気-機械変換素子である圧電体212とを接着等で貼り付けた構成となっている。この圧電体212に対して、不図示のフレキシブル基板等から交流電流を印加することによって、振動型アクチュエータ210に進行波振動が励振されて駆動力が発生し、第1部材230が振動型アクチュエータ210に対して相対的に移動する。
【0077】
第2の実施形態に係る駆動装置100では、第1の実施形態に係る駆動装置100よりも、一般的に出力の大きい円環状の振動型アクチュエータ210を用いることができる。
【0078】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第3の実施形態の説明では、上述した第1及び第2の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1及び第2の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0079】
第3実施形態では、第1及び第2の実施形態で説明した駆動装置100を備える装置として、監視カメラ等の撮像装置における雲台装置(旋回装置)を適用した例について説明する。
【0080】
図11は、第3の実施形態を示し、第1及び第2の実施形態で説明した駆動装置100を複数備える雲台装置300の概略構成の一例を示す図である。
図11(a)に示す雲台装置300と
図11(b)に示す雲台装置300は、第3の実施形態に係る雲台装置300を異なる方向から見たものである。例えば、
図11(a)は、雲台装置300を正面から見た図であり、
図11(b)は、雲台装置300を側面から見た図である。
【0081】
雲台装置300は、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、2つの駆動装置100-P及び100-T、ヘッド部310、ベース部320、Lアングル部330、撮像装置340を備える。
【0082】
ヘッド部310は、
図11(a)に示すように、2つの駆動装置100であるパン用の駆動装置100-P及びチルト用の駆動装置100-Tを備える。ベース部320は、ヘッド部310を支持する構成部である。Lアングル部330は、ヘッド部310に取り付けられており、撮像装置340を固定するための構成部である。
【0083】
パン用の駆動装置100-Pは、上述した第1の実施形態に係る駆動装置100-1又は第2の実施形態に係る駆動装置100-2のいずれかを適用可能である。パン用の駆動装置100-Pは、出力軸60がベース部320と連結されており、ヘッド部310とLアングル部330と撮像装置340とを、ベース部320に対してパン軸の周りに回転させるための駆動装置である。
【0084】
チルト用の駆動装置100-Tは、上述した第1の実施形態に係る駆動装置100-1又は第2の実施形態に係る駆動装置100-2のいずれかを適用可能である。チルト用の駆動装置100-Tは、出力軸60がLアングル部330と連結されており、Lアングル部330と撮像装置340とを、ヘッド部310に対してチルト軸の周りに回転させるための駆動装置である。
【0085】
Lアングル部330に取り付けられた撮像装置340は、動画や静止画の撮影用カメラであり、撮影を行いながら2つの駆動装置100-P及び100-Tの駆動により、パン及びチルトの動作が可能となっている。
【0086】
第3の実施形態に係る駆動装置100では、雲台装置300の駆動源として用いることができる。
【0087】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0088】
本発明の実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
[構成1]
出力軸と、
前記出力軸に対して回転可能に構成された第1部材および第2部材と、
前記出力軸に固着された第3部材と、
前記第1部材および前記第2部材のうちの一方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる振動型アクチュエータと、
前記第1部材および前記第2部材のうちの前記一方の部材とは異なる他方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる電磁モータと、
前記第2部材に回転可能に保持されるとともに、前記第1部材と前記第3部材とに接して挟持された転動体と、
を備え、
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータのうちの少なくとも1つが駆動することによって、前記第3部材および前記出力軸が一体で回転する
ことを特徴とする駆動装置。
[構成2]
前記第3部材および前記出力軸は、前記少なくとも1つが駆動することによって前記転動体を介して、前記一体で回転する
ことを特徴とする構成1に記載の駆動装置。
[構成3]
前記第1部材、前記第2部材および前記第3部材は、それぞれ、前記出力軸に挿通されている
ことを特徴とする構成1または2に記載の駆動装置。
[構成4]
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータがともに駆動することによって、前記第3部材および前記出力軸が前記一体で回転する
ことを特徴とする構成1乃至3のいずれか1項に記載の駆動装置。
[構成5]
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータのうちの一方が駆動できなくなった場合に、当該一方とは異なる他方が単体で駆動できる
ことを特徴とする構成1乃至4のいずれか1項に記載の駆動装置。
[構成6]
前記出力軸の軸方向を基準として前記第1部材が反時計回りに回転するときを正として前記第1部材の回転数をN1とし、
前記出力軸の軸方向を基準として前記第2部材が反時計回りに回転するときを正として前記第2部材の回転数をN2とした場合、
N2/N1>0.5を満たす
ことを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載の駆動装置。
[構成7]
前記N1と前記N2において、N2≧N1を満たす
ことを特徴とする構成6に記載の駆動装置。
[構成8]
前記出力軸の軸方向を基準として前記第1部材が反時計回りに回転するときを正として前記第1部材のトルクをT1とし、
前記出力軸の軸方向を基準として前記第2部材が反時計回りに回転するときを正として前記第2部材のトルクをT2とした場合、以下の(A)式を満たす
【数7】
ことを特徴とする構成6または7に記載の駆動装置。
[構成9]
前記振動型アクチュエータは、矩形状または環状である
ことを特徴とする構成1乃至8のいずれか1項に記載の駆動装置。
[構成10]
前記振動型アクチュエータは、複数設けられている
ことを特徴とする構成1乃至9のいずれか1項に記載の駆動装置。
[構成11]
前記振動型アクチュエータは、前記第1部材を前記出力軸の周りで回転駆動させ、
前記電磁モータは、前記第2部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる
ことを特徴とする構成1乃至10のいずれか1項に記載の駆動装置。
[構成12]
前記転動体は、球の形状、円筒の形状または円柱の形状である
ことを特徴とする構成1乃至11のいずれか1項に記載の駆動装置。
[構成13]
前記転動体は、歯車を含み構成されており、
前記歯車と接する前記第1部材および前記第3部材の部位には、歯が形成されている
ことを特徴とする構成1乃至11のいずれか1項に記載の駆動装置。
[方法1]
出力軸と、
前記出力軸に対して回転可能に構成された第1部材および第2部材と、
前記出力軸に固着された第3部材と、
前記第1部材および前記第2部材のうちの一方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる振動型アクチュエータと、
前記第1部材および前記第2部材のうちの前記一方の部材とは異なる他方の部材を前記出力軸の周りで回転駆動させる電磁モータと、
前記第2部材に回転可能に保持されるとともに、前記第1部材と前記第3部材とに接して挟持された転動体と、
を備える駆動装置の駆動方法であって、
前記振動型アクチュエータおよび前記電磁モータのうちの少なくとも1つが駆動することによって、前記第3部材および前記出力軸が一体で回転する
ことを特徴とする駆動方法。
【符号の説明】
【0089】
10,210:振動型アクチュエータ、11,211:弾性体、11a,11b:突起、12,212:圧電体、13:振動体、14:緩衝部材、15:加圧伝達部材、16:振動体支持部、20:電磁モータ、30,230:第1部材、40,140:第2部材、41:スパーギヤ、42:穴、50:第3部材、60:出力軸、70:ピニオンギヤ、80:転動体、90:外装部、91~94:ベアリング、100:駆動装置、141:タイミングプーリー、170:タイミングプーリー、171:タイミングベルト、300:雲台装置、310:ヘッド部、320:ベース部、330:Lアングル部、340:撮像装置、L:回転軸