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特開2024-178584画像観察装置、画像観察装置の制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178584
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】画像観察装置、画像観察装置の制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/00 20060101AFI20241218BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20241218BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241218BHJP
   G09G 5/373 20060101ALI20241218BHJP
   G09G 5/377 20060101ALI20241218BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20241218BHJP
   H04N 13/344 20180101ALI20241218BHJP
   H04N 13/366 20180101ALI20241218BHJP
   H04N 13/122 20180101ALI20241218BHJP
   G06F 3/04845 20220101ALI20241218BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G06T19/00 600
G06F3/01 510
G09G5/373 300
G09G5/377 100
G02B27/02 Z
H04N13/344
H04N13/366
H04N13/122
G06F3/04845
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096830
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亮史
【テーマコード(参考)】
2H199
5B050
5C182
5E555
【Fターム(参考)】
2H199CA73
2H199CA77
2H199CA92
2H199CA96
5B050AA03
5B050BA06
5B050BA09
5B050BA13
5B050CA01
5B050DA05
5B050DA07
5B050EA07
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
5C182AA31
5C182AB34
5C182AC03
5C182BA14
5C182BA56
5C182BC22
5C182BC25
5C182CB12
5C182CB17
5C182CB42
5C182CB54
5E555AA26
5E555AA27
5E555BA08
5E555BA18
5E555BA87
5E555BB08
5E555BE16
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB47
5E555CB48
5E555DA08
5E555DA09
5E555DB57
5E555DC26
5E555DC27
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】違和感の少ない画像を生成することが可能な画像観察装置を提供する。
【解決手段】画像観察装置(101)は、画像表示素子(106)と、画像表示素子からの光束を観察者(102)の眼球に導く観察光学系(107)と、観察者の視線方向を検出する視線検知手段(108、109)と、第1画像を取得する撮像手段(103、104)と、第1画像と第2画像との合成画像を生成する処理手段(120)とを有し、処理手段は、視線方向に基づいて取得された観察者の注視距離に応じて、画像表示素子に表示される合成画像の倍率を変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子と、
前記画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導く観察光学系と、
前記観察者の視線方向を検出する視線検知手段と、
第1画像を取得する撮像手段と、
前記第1画像と第2画像との合成画像を生成する処理手段とを有し、
前記処理手段は、前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の倍率を変更することを特徴とする画像観察装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
前記注視距離が第1注視距離の場合、前記倍率を第1倍率に設定し、
前記注視距離が前記第1注視距離よりも近い第2注視距離の場合、前記倍率を前記第1倍率よりも低い第2倍率に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像観察装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記倍率の単位時間あたりの変更量の上限値を有することを特徴とする請求項1に記載の画像観察装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記倍率の変更量が所定量未満である場合、前記倍率を変更しないことを特徴とする請求項1に記載の画像観察装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記倍率の総変更量の上限値を有することを特徴とする請求項1に記載の画像観察装置。
【請求項6】
前記処理手段は、前記注視距離を取得できない場合、前記倍率を所定値に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像観察装置。
【請求項7】
画像表示素子と、
前記画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導く観察光学系と、
前記観察者の視線方向を検出する視線検知手段と、
第1画像を取得する撮像手段と、
前記第1画像と第2画像との合成画像を生成する処理手段とを有し、
前記処理手段は、前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の輻輳角を変更することを特徴とする画像観察装置。
【請求項8】
前記処理手段は、
前記注視距離が第1注視距離の場合、前記輻輳角を第1輻輳角に設定し、
前記注視距離が前記第1注視距離よりも近い第2注視距離の場合、前記輻輳角を前記第1輻輳角よりも小さい第2輻輳角に設定することを特徴とする請求項7に記載の画像観察装置。
【請求項9】
前記処理手段は、前記画像表示素子に表示される前記合成画像のシフト量を変更することにより、前記輻輳角を変更することを特徴とする請求項7に記載の画像観察装置。
【請求項10】
前記処理手段は、前記輻輳角の単位時間あたりの変更量の上限値を有することを特徴とする請求項7に記載の画像観察装置。
【請求項11】
前記処理手段は、前記輻輳角の変更量が所定量未満である場合、前記輻輳角を変更しないことを特徴とする請求項7に記載の画像観察装置。
【請求項12】
前記処理手段は、前記輻輳角の総変更量の上限値を有することを特徴とする請求項7に記載の画像観察装置。
【請求項13】
前記処理手段は、前記注視距離を取得できない場合、前記輻輳角を所定値に設定することを特徴とする請求項7に記載の画像観察装置。
【請求項14】
前記第1画像は、外界の画像であり、
前記第2画像は、前記第1画像に対して前記外界での幾何学的位置関係が整合するように重畳された画像であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の画像観察装置。
【請求項15】
前記処理手段は、前記観察者の前記注視距離に関するノイズを除去するフィルタ処理を行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の画像観察装置。
【請求項16】
画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導くステップと、
前記観察者の視線方向を検出するステップと、
撮像手段により取得された第1画像と、第2画像との合成画像を生成するステップと、
前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の倍率を変更するステップとを有することを特徴とする画像観察装置の制御方法。
【請求項17】
画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導くステップと、
前記観察者の視線方向を検出するステップと、
撮像手段により取得された第1画像と、第2画像との合成画像を生成するステップと、
前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の輻輳角を変更するステップとを有することを特徴とする画像観察装置の制御方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の画像観察装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像観察装置、画像観察装置の制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現実世界と仮想世界とをリアルタイムに融合させる技術として、複合現実(MR:Mixed Reality)技術や拡張現実(AR:Augmented Reality)技術が知られている。これらの技術は、現実空間とコンピュータによって作られる仮想空間とを繋ぎ目なく融合する技術である。これにより、観察者が現実空間に仮想の物体が存在するかのような体験をするなどが可能となるため、各種分野への応用が期待されている。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、観察者がMR(以降、複合現実技術や拡張現実技術を総称してMRと呼称する)を体感するための装置の一つとして、ビデオシースルー型の画像観察装置が開示されている。これは、ビデオカメラで現実世界を撮影し、その画像にリアルタイムにCG(Computer Graphics)を重畳した合成画像を作成し、合成画像をディスプレイ等の画像表示素子に表示させ、観察者に提示する画像観察装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4294093号公報
【特許文献2】特許第3604990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MR技術において、現実世界と仮想世界との一体感を高めるには、観察者に知覚される大きさの整合を保つことが求められる。ここで知覚される大きさの整合とは、観察者が実際に現実を見る場合に知覚する世界や物体の大きさと、MRを通して知覚する世界や物体の大きさとの一致を意味する。換言すれば、ビデオシースルー型の画像観察装置の使用時と非使用時とで観察者が現実世界を同じ大きさで知覚できるか、ということである。しかし、ビデオシースルー型の画像観察装置において、知覚される大きさの整合を保つこと、すなわち違和感の少ない画像を生成することは困難である。
【0006】
そこで本発明は、違和感の少ない画像を生成することが可能な画像観察装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての画像観察装置は、画像表示素子と、前記画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導く観察光学系と、前記観察者の視線方向を検出する視線検知手段と、第1画像を取得する撮像手段と、前記第1画像と第2画像との合成画像を生成する処理手段とを有し、前記処理手段は、前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の倍率を変更する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、違和感の少ない画像を生成することが可能な画像観察装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における画像観察装置を示す図である。
図2】観察者が両眼で対象物を注視している状況を示す模式図である。
図3】第1実施形態における距離と像の大きさの比との関係を示す図である。
図4】第1実施形態における距離と像補正倍率との関係を示す図である。
図5】第2実施形態における輻輳角の説明図である。
図6】第2実施形態における距離と輻輳角差との関係を示す図である。
図7】第2実施形態における距離と片眼あたりの像シフト量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態における画像観察装置(画像表示装置)101について説明する。図1は、画像観察装置101の説明図であり、画像観察装置101としてビデオシースルー型HMD(Head Mounted Display)を用いて観察者102が画像を観察している垂直方向断面の模式図を示す。図1中の右下に示されるように、観察者102の視軸方向(図1中の左側)に向かって+Z軸を取り、Z軸に対してX軸(水平方向)およびY軸(垂直方向)を右手系座標で定義する。
【0013】
図1において、撮像光学系103および撮像素子104は、画像観察装置101の撮像手段を構成し、高さYの物体105を含む現実世界の像(外界の像)を画像データ(第1画像)として取得する。画像観察装置101は、不図示の位置合わせ手段により構成される合成画像形成手段としての機能を有する処理手段120を有する。図1において、処理手段120は、画像観察装置101の外部に配置されており、画像観察装置101と有線または無線で通信可能に接続されている。ただし本実施形態は、これに限定されるものではなく、処理手段120は画像観察装置101の内部に設けられていてもよい。
【0014】
合成画像形成手段は、現実世界(外界)の画像データ(第1画像)に対して幾何学的位置関係が略整合するように仮想の画像データ(第2画像)を重畳する機能を有する。合成画像形成手段で重畳された画像(第1画像と第2画像との重畳画像)を合成画像と呼び、合成画像はディスプレイなどの画像表示素子106に表示される。なお、状況によっては仮想の画像データが重畳されていない現実世界の画像データのみが画像表示素子106に表示される場合もあるが、そのような状態であっても本明細書ではその画像を合成画像と呼ぶ。
【0015】
107は観察光学系であり、画像表示素子106に表示された画像の拡大虚像を観察者102に提示する。すなわち観察光学系107は、画像表示素子106からの光束を観察者102の眼球に導く。観察光学系107として、屈折系だけでなく、偏光を利用した反射系などを使用することができるが、これに限定されるものではない。本実施形態では、観察光学系(接眼光学系)107の光軸と撮像光学系103の光軸は互いに一致しており、図1中のYZ断面だけでなく、XZ断面においても各光軸は一致している。また本実施形態において、撮像手段で取得された画像の画角θと、観察光学系107の画角θは、互いに一致している。ここで、画角θは、撮像光学系103および撮像素子104で取得したより広い画角のうちの一部の画角である。
【0016】
撮像光学系103の位置と観察者102の瞳位置は、Z軸方向において距離Lだけ離れている。また、撮像光学系103の位置と物体105の位置は、Z軸方向において距離Lだけ離れている。ここで、撮像光学系103の位置とは、入射瞳位置または像側主点位置などの点が代表的であるが、これらに限定されるものではない。赤外線カメラ109は、赤外線光源108で照明された観察者102の眼球の像を撮像することで、観察者102の眼球の注視方向を算出(取得)することができる。赤外線光源108および赤外線カメラ109と、注視方向情報を処理する処理手段120とにより、観察者102の視線方向を検出する視線検知手段が構成される。なお図1は、画像観察装置101として、観察者102の片眼(一方の眼)に関する構成を示すが、観察者102の他方の眼に関しても同様の構成が配置されている。
【0017】
画像観察装置101を用いずに物体105を観察する場合、観察者102は実際に距離(L+L)だけ離れた物体105を観察することになる。距離(L+L)は、観察者102の注視距離に相当する。一方、画像観察装置101を用いて物体105を観察する場合、撮像光学系103からの距離Lだけ離れた物体105を観察することに相当するため、物体105が実際よりも大きく知覚されることになる。ミラーまたはプリズムなどを用いて光路を折り曲げ、光軸一致配置を維持しながら距離Lを小さくすることも可能であるが、画像観察装置101の肥大化などの弊害がある。本実施形態において、処理手段120は、視線検知手段により検出された観察者102の視線情報(視線方向)を用いて、観察者102の注視距離に関する情報を求める。そして処理手段120は、注視距離に関する情報を用いて、画像表示素子106に表示される合成画像の倍率を変更(補正)する。
【0018】
次に、図2を参照して、観察者102が両眼で対象物を注視している状況について説明する。図2は、観察者102が両眼で対象物110を注視している状況の模式図である。観察者102から対象物110までの距離(注視距離)Lと、輻輳角θと、観察者の102の眼間距離Iとの間には、以下の式(1)で表される関係がある。
【0019】
【数1】
【0020】
式(1)より、視線検知機能を使用して輻輳角θを求めることで、距離Lを取得することができる。眼間距離Iとして、人間の平均的な目幅距離を使用することが可能であるが、視線検知機能を使用して各観察者の眼間距離Iを求めて使用してもよい。
【0021】
倍率調整手段としての機能を有する処理手段120は、距離Lに関する情報に基づいて、画像の倍率を補正する。倍率の補正値としては、図1において撮像手段が距離Lの位置にある場合に撮像される像と観察者102の瞳の位置にある場合に撮像される像の大きさの比を求めればよい。この比は、L/(L+L)として表される。
【0022】
図3は、距離と像の大きさとの比を示す図である。図3において、横軸は距離(L+L)[mm]、縦軸は撮像される像の大きさの比をそれぞれ示す。図3は、L=40mmの場合の大きさの比を表しており、大きさの比が1.0の場合に等倍、大きさの比が1.0より大きいと画像が大きく見えることを意味している。
【0023】
ここまでは、画角θと画角θは互いに一致しているとして説明したため、観察者102と物体105との間の距離(L+L)が無限大の場合、大きさの比は1.0、すなわち等倍である。一方、距離L+Lが小さくなるにつれて、画像が大きく見えるように変化する。これを補正するため、視線検知機能により求められた距離情報(距離L)を用いて、大きさの比の逆数を画像の倍率として合成画像を全体に縮小補正し、画像表示素子106に表示すればよい。
【0024】
次に、図4を参照して、像補正倍率(補正する画像の倍率)について説明する。図4は、距離と像補正倍率との関係を示す図である。図4において、横軸は距離(L+L)[mm]、縦軸は像補正倍率をそれぞれ示す。図4において、像補正倍率が1.0より小さい場合、画像を縮小することを意味している。
【0025】
具体的には、撮像素子104の最大画素数が水平4000pixel、垂直4000pixel、撮像光学系103が撮像素子104の最大画素数にとりこむ画角は水平画角80°、垂直画角80°であるとする。また、画像表示素子106の画素数が水平2000pixel、垂直2000pixelであり、観察光学系107の画角が水平60°、垂直60°であるとする。このとき、θ=θの場合は撮像素子104上の60°に相当する領域、すなわち2752pixelを2000pixelにリサイズし、これを画像表示素子106で表示させることになる。一方、視線検知手段により観察者102が距離1000mmの物体を見ていることが求められた場合、縮小すべき倍率は0.96倍となる。このため、撮像素子104の2867pixを2000pixelにリサイズし、これを画像表示素子106で表示させればよい。
【0026】
倍率調整手段としての機能を有する処理手段120は、観察者102の距離情報(注視距離)を用いて、観察者102にとって違和感の少ない適切な倍率を算出し、画像表示素子106に表示する画像データ(合成画像データ)を作成する。例えば、処理手段120は、注視距離が第1注視距離の場合には倍率を第1倍率に設定し、注視距離が第1注視距離よりも近い第2注視距離の場合には倍率を第1倍率よりも低い第2倍率に設定する。
【0027】
このように画像表示素子106に表示される合成画像の倍率を補正(調整)することにより、画像観察装置を大型化することなく、観察者は大きさの違和感が少ない画像を観察することができる。なお、倍率の補正値の算出方法は、式(1)を用いる方法に限定されるものではない。例えば、画角θと画角θとの関係、または観察者102の主観的な印象に応じて適宜選択可能であり、大きさの違和感が少ない補正を行うことが可能であれば他の方法を用いてもよい。なお、視線検出手段から求められた注視距離は、厳密には距離Lだけずれた画像を見ている状態で算出された注視距離であるため、このような点を考慮して倍率の補正値を修正してもよい。
【0028】
倍率補正を行う場合、画像の倍率が変化したことを観察者102に気づかれないようにすることが好ましい。人間の視線はサッカードと呼ばれるような高速移動などを有するため、一般的には、検出するフレームレートは高く、多くの情報を取得しているが、その中にはノイズ成分なども含まれている。そのため、距離の算出結果(観察者102の注視距離)をそのまま使用すると、画像の振動(変動、ノイズ)などを感じてしまう場合がある。このような振動を避けるため(観察者102の注視距離に関するノイズを低減するため)、処理手段120は、視線の検出結果に対してフィルタ処理を行うことにより、画像の変動を避けることが有効である。ここでフィルタには、時間方向における平均化または統計フィルタなどの既知のフィルタを使用することが可能である。
【0029】
また処理手段120は、倍率の単位時間あたりの変更量(補正量)の上限値を有する(単位時間あたりの補正量の上限値を設定する)ことにより、急激な変動を避けることも有効である。例えば、倍率の補正量を1秒あたり0.1未満に抑えると違和感が少ない。より違和感を抑えるには、倍率の相対補正量の絶対値を1秒あたり0.01未満に抑えることが好ましい。ここで倍率の相対補正量とは、例えば、画像表示素子106に表示する元の撮像素子104の画素数を2752pixelから2867pixelに変える場合、1-(2756/2867)=0.04である。
【0030】
また、わずかな注視距離の変化に対しては倍率の補正を行わないことも有効である。例えば処理手段120は、倍率の変更量(補正量)が所定量未満である場合、倍率を変更しない。具体的には、上記倍率の相対補正量が0.03未満の場合には補正を行わないということが好ましい。より好ましくは、倍率の相対補正量が0.01未満の場合には補正を行わないようにすると、正確な倍率補正と違和感の低減を両立させることができる。
【0031】
観察者102が画像観察装置101の装着を解除したことが検知された場合、または、観察者102の視線検知が不可能になった場合などには、補正後の倍率を所定の倍率に戻すことが好ましい。例えば処理手段120は、注視距離を取得できない場合、倍率を所定値(所定の倍率)に設定する。所定の倍率として、例えば倍率1.0(θ=θ)を選択可能である。
【0032】
本実施形態において、撮像光学系103が取得可能な最大画角は、画角θよりも大きい。ただし、倍率の補正量と撮像光学系103の最大画角と観察光学系107の画角θとの関係によっては、画像表示素子106に表示すべき画像領域が不足する場合もある。このため、倍率補正量に上限を設けることで、画像の欠けなどを防ぐことが可能となる。例えば処理手段120は、倍率の総変更量の上限値を有する。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の画像観察装置は、輻輳角調整手段としての機能を有する処理手段を用いて画像の輻輳角を補正する点で、倍率調整手段としての機能を有する処理手段を用いて画像の倍率を補正する第1実施形態の画像観察装置とは異なる。なお、本実施形態の画像観察装置の基本構成は、図1を参照して説明した第1実施形態の画像観察装置101と同様であるため、共通の説明については省略する。
【0034】
図5は、輻輳角の説明図であり、観察者102が物体201を観察している状態を示す。観察者102は、画像観察装置(HMD)101を装着していない場合、物体201を輻輳角θ5で観察することになる。一方、観察者102は、画像観察装置101を装着した状態で物体201を観察する場合、左眼側撮像手段202および右眼側撮像手段203は、観察者102よりも距離Lだけ物体201に近いため、輻輳角θで物体201を観察することになる。つまり、画像観察装置101を装着した状態で観察する場合、裸眼で観察する場合よりも輻輳角が大きくなるため、観察者102は物体201を近くに感じることになる。ここで、輻輳角θと輻輳角θとの差(輻輳角差)は、以下の式(2)で表される。
【0035】
【数2】
【0036】
図6は、距離と輻輳角差との関係を示す図である。図6において、横軸は距離(L+L)[mm]、縦軸は輻輳角差(°)をそれぞれ示す。 図6は、距離Lが40mm、画像観察装置101の左右のカメラ間距離(左眼側撮像手段202と右眼側撮像手段203との間の距離)と観察者102の眼幅(眼間距離I)が共に63mmの場合を示す。このような条件において、観察者102がある距離で画像観察装置101を用いて物体201を見た場合の、観察者102が知覚する輻輳角差(輻輳角のずれ)を示す。図6において、輻輳角差が大きいほど、直接の観察時よりも輻輳角が大きくなることを示し、近距離の物体を見るほど輻輳角差が大きくなっている。一般に、輻輳角のずれも知覚される大きさに影響することが知られているため、直接の観察時との違和感を生じる原因となりうる。
【0037】
そこで本実施形態の画像観察装置において、第1実施形態と同様に、視線検知手段は、観察者102が注視している物体201の輻輳角を求める。そして輻輳角調整手段としての機能を有する処理手段120は、輻輳角から求められた距離に応じたシフト量(像シフト量)だけ、合成画像を画像表示素子106に表示する際の位置をシフトさせる。これにより、観察者102が注視している注視点の輻輳角を補正(変更)することができる。
【0038】
次に、図7を参照して、像シフト量について説明する。図7は、距離と片眼あたりの像シフト量との関係を示す図である。図7において、横軸は距離(L+L)[mm]、縦軸は像シフト量[pixel]をそれぞれ示す。図7は、観察光学系107の焦点距離が20mm、画像表示素子106の画素ピッチが10μmの場合における、片眼あたりの像シフト量(pixel)を示す。像シフト量が正の場合、右眼画像は右方向に、左眼画像は左方向にそれぞれシフトさせることを意味している。
【0039】
輻輳角調整手段としての機能を有する処理手段120は、観察者102の距離情報(注視距離)に応じて、違和感の少ない適切な像シフト量を算出(取得)し、画像表示素子106に表示する画像データ(合成画像データ)を生成する。すなわち処理手段120は、視線方向に基づいて取得された観察者102の注視距離に応じて、画像表示素子106に表示される合成画像の輻輳角θを変更する。ここで合成画像の輻輳角θは、例えば図5に示されるように、観察者102が注視している物体201と左眼側撮像手段202とを結ぶ線と、物体201と右眼側撮像手段203とを結ぶ線とのなす角度に相当する。
【0040】
例えば、処理手段120は、注視距離が第1注視距離の場合には輻輳角を第1輻輳角に設定し、注視距離が第1注視距離よりも近い第2注視距離の場合には輻輳角を第1輻輳角よりも小さい第2輻輳角に設定する。好ましくは、処理手段120は、画像表示素子106に表示される合成画像のシフト量を変更することにより、輻輳角を変更する。これにより、輻輳角のずれを補正することができる。この補正により、画像観察装置を大型化することなく、観察者は大きさの違和感が少ない画像を観察することができる。
【0041】
なお本実施形態において、輻輳角の補正値(像シフト量)の算出方法は、式(2)を用いた方法に限定されるものではなく、観察者102の主観的な印象に応じて適宜選択可能であり、大きさの違和感の少ない補正を行うことができれば他の方法でもよい。なお、視線検出手段から求められた注視距離は、厳密には距離Lだけずれた画像を見ている状態で算出された注視距離であるため、このような点を考慮して輻輳角の補正値を修正してもよい。
【0042】
輻輳角の補正を行う場合、輻輳角が変化したことを観察者102に気づかれないようにすることが好ましい。人間の視線はサッカードと呼ばれるような高速移動などを有するため、一般的には、検出するフレームレートは高く、多くの情報を取得しているが、その中にはノイズ成分なども含まれている。そのため、距離の算出結果(観察者102の注視距離)をそのまま使用すると、画像の振動(変動、ノイズ)などを感じてしまう場合がある。このような振動を避けるため(観察者102の注視距離に関するノイズを低減するため)、処理手段120は、視線の検出結果に対してフィルタ処理を行うことにより、画像の変動を避けることが有効である。ここでフィルタには、時間方向における平均化または統計フィルタなどの既知のフィルタを使用することが可能である。
【0043】
また処理手段120は、輻輳角の単位時間あたりの変更量(補正量)の上限値を有する(単位時間あたりの補正量の上限値を設定する)ことにより、急激な変動を避けることも有効である。例えば、輻輳角の相対補正量を1秒あたり1°未満に抑えると違和感が少ない。より違和感を抑えるには、輻輳角の相対補正量の絶対値を1秒あたり0.5°未満に抑えることが好ましい。ここで輻輳角の相対補正量とは、例えば、現在の注視距離における輻輳角が0.62°であり、補正後の輻輳角が0.15°となる場合、0.15-0.62=-0.47°である。
【0044】
また、わずかな輻輳角の変化に対しては輻輳角の補正を行わないことも有効である。例えば処理手段120は、輻輳角の変更量(補正量)が所定量未満である場合、輻輳角を変更しない。具体的には、上記輻輳角の相対補正量の絶対値が0.5°未満の場合には補正を行わないということが好ましい。より好ましくは、倍率の相対補正量の絶対値が0.1°未満の場合には補正を行わないようにすると、正確な輻輳角の補正と違和感の低減とを両立させることができる。
【0045】
観察者102が画像観察装置101を取り外したことが検知された場合、または観察者102の視線検知が不可能になった場合などには、補正後の輻輳角を所定の輻輳角に戻すことが好ましい。例えば処理手段120は、注視距離を取得できない場合、輻輳角を所定値(所定の輻輳角)に設定する。所定の輻輳角としては、例えば角度0°(無限遠注視相当もしくは平行配置)を選択可能である。また、輻輳角の補正量に上限を設けることで、画像の欠けなどを防ぐことが可能となる。例えば処理手段120は、輻輳角の総変更量の上限値を有する。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0047】
各実施形態によれば、違和感の少ない画像を生成することが可能な画像観察装置、画像観察装置の制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【0048】
各実施形態の開示は、以下の構成および方法を含む。
(構成1)
画像表示素子と、
前記画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導く観察光学系と、
前記観察者の視線方向を検出する視線検知手段と、
第1画像を取得する撮像手段と、
前記第1画像と第2画像との合成画像を生成する処理手段とを有し、
前記処理手段は、前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の倍率を変更することを特徴とする画像観察装置。
(構成2)
前記処理手段は、
前記注視距離が第1注視距離の場合、前記倍率を第1倍率に設定し、
前記注視距離が前記第1注視距離よりも近い第2注視距離の場合、前記倍率を前記第1倍率よりも低い第2倍率に設定することを特徴とする構成1に記載の画像観察装置。
(構成3)
前記処理手段は、前記倍率の単位時間あたりの変更量の上限値を有することを特徴とする構成1または2に記載の画像観察装置。
(構成4)
前記処理手段は、前記倍率の変更量が所定量未満である場合、前記倍率を変更しないことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成5)
前記処理手段は、前記倍率の総変更量の上限値を有することを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成6)
前記処理手段は、前記注視距離を取得できない場合、前記倍率を所定値に設定することを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成7)
画像表示素子と、
前記画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導く観察光学系と、
前記観察者の視線方向を検出する視線検知手段と、
第1画像を取得する撮像手段と、
前記第1画像と第2画像との合成画像を生成する処理手段とを有し、
前記処理手段は、前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の輻輳角を変更することを特徴とする画像観察装置。
(構成8)
前記処理手段は、
前記注視距離が第1注視距離の場合、前記輻輳角を第1輻輳角に設定し、
前記注視距離が前記第1注視距離よりも近い第2注視距離の場合、前記輻輳角を前記第1輻輳角よりも小さい第2輻輳角に設定することを特徴とする構成7に記載の画像観察装置。
(構成9)
前記処理手段は、前記画像表示素子に表示される前記合成画像のシフト量を変更することにより、前記輻輳角を変更することを特徴とする構成7または8に記載の画像観察装置。
(構成10)
前記処理手段は、前記輻輳角の単位時間あたりの変更量の上限値を有することを特徴とする構成7乃至9のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成11)
前記処理手段は、前記輻輳角の変更量が所定量未満である場合、前記輻輳角を変更しないことを特徴とする構成7乃至10のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成12)
前記処理手段は、前記輻輳角の総変更量の上限値を有することを特徴とする構成7乃至11のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成13)
前記処理手段は、前記注視距離を取得できない場合、前記輻輳角を所定値に設定することを特徴とする構成7乃至12のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成14)
前記第1画像は、外界の画像であり、
前記第2画像は、前記第1画像に対して前記外界での幾何学的位置関係が整合するように重畳された画像であることを特徴とする構成1乃至13のいずれかに記載の画像観察装置。
(構成15)
前記処理手段は、前記観察者の前記注視距離に関するノイズを除去するフィルタ処理を行うことを特徴とする構成1乃至14のいずれかに記載の画像観察装置。
(方法1)
画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導くステップと、
前記観察者の視線方向を検出するステップと、
撮像手段により取得された第1画像と、第2画像との合成画像を生成するステップと、
前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の倍率を変更するステップとを有することを特徴とする画像観察装置の制御方法。
(方法2)
画像表示素子からの光束を観察者の眼球に導くステップと、
前記観察者の視線方向を検出するステップと、
撮像手段により取得された第1画像と、第2画像との合成画像を生成するステップと、
前記視線方向に基づいて取得された前記観察者の注視距離に応じて、前記画像表示素子に表示される前記合成画像の輻輳角を変更するステップとを有することを特徴とする画像観察装置の制御方法。
(構成16)
方法1または2に記載の画像観察装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0050】
各実施形態では、MR技術を用いたHMDを画像観察装置として説明したが、これに限定されるものではなく、各実施形態は他の画像観察装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
101 画像観察装置
102 観察者
103 撮像光学系(撮像手段)
104 撮像素子(撮像手段)
106 画像表示素子
107 観察光学系
108 視線検知カメラ(視線検知手段)
109 赤外線光源(視線検知手段)
120 処理手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7