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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178586
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】低音強調方法及び低音強調装置
(51)【国際特許分類】
   G10L 21/0364 20130101AFI20241218BHJP
   G10L 25/51 20130101ALI20241218BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G10L21/0364
G10L25/51 300
H04R1/00 310G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096832
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松波 豪
(72)【発明者】
【氏名】姫野 信晃
(72)【発明者】
【氏名】中西 正寛
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AA13
(57)【要約】
【課題】調波楽器が発生する音及び持続音の歪の発生を抑制しながら、低域が強調された信号を生成する。
【解決手段】低音強調装置20は、抽出部21と、生成部22と、合成部24とを備える。抽出部21は、調波楽器音成分と打楽器音成分とを含む入力音信号a1から、打楽器音成分を示す打楽器信号b2を抽出する。生成部22は、打楽器信号b2に基づいて低周波信号c4を生成する。低周波信号c4は、打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/2の周波数を有する信号である。合成部24は、低周波信号c4と入力音信号a1とに基づいて低域強調信号e1を生成する。低域強調信号e1は、入力音信号a1の低域周波数成分が強調された信号である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出することと、
前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成することと、
前記低周波信号と前記入力音信号とに基づいて、前記入力音信号の低域周波数成分が強調された低域強調信号を生成することと、を含む、
低音強調方法。
【請求項2】
前記非調波楽器音成分は、打楽器音成分を含む、
請求項1に記載の低音強調方法。
【請求項3】
前記入力音信号から、前記非調波楽器信号を抽出することは、
前記入力音信号から前記非調波楽器音成分の周波数帯域よりも高域周波数成分を低減させた第1低音信号を生成し、
前記第1低音信号から、前記非調波楽器信号を抽出することを含む、
請求項1に記載の低音強調方法。
【請求項4】
前記非調波楽器信号に基づいて前記低周波信号を生成することは、
前記非調波楽器信号から前記非調波楽器音成分の周波数帯域よりも高域周波数成分を低減させた第2低音信号を生成し、
前記第2低音信号から、前記低周波信号を生成することを含む、
請求項1に記載の低音強調方法。
【請求項5】
前記低域強調信号を生成することは、
前記入力音信号に基づいて前記低周波信号を生成するまでの時間だけ、前記入力音信号を遅延した遅延音信号を生成し、
前記遅延音信号と前記低周波信号とを加算することにより、前記低域強調信号を生成することを含む、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の低音強調方法。
【請求項6】
調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出する抽出部と、
前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成する第1生成部と、
前記低周波信号と前記入力音信号とに基づいて、前記入力音信号の低域周波数成分が強調された低域強調信号を生成する第2生成部と、を備える、
低音強調装置。
【請求項7】
調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出する抽出部と、
前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成する生成部と、
少なくとも前記低周波信号を含む出力音信号を、座席を振動させるアクチュエータに出力する出力部と、を備える、
低音強調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低音強調方法及び低音強調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響システムにおいて、入力された音信号の低音域を強調して再生する装置が知られている。例えば、特許文献1には、ローパスフィルタにより入力信号から低域成分を抽出し、抽出された低域成分の1/2の周波数の超低域成分を生成し、超低域成分と低域成分とを加算し、さらに、超低域成分と低域成分とが加算された成分と、入力信号とを加算することにより、低域が強調された出力信号を得る低音強調再生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-67628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の低音強調再生装置では、超低域成分を元の音に加算した場合、調波楽器が発生する音及び持続音の歪が大きく感じられるという課題がある。
【0005】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、調波楽器が発生する音及び持続音の歪の発生を抑制しながら、低域が強調された信号を生成する低音強調方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る低音強調方法は、調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出することと、前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成することと、前記低周波信号と前記入力音信号とに基づいて、前記入力音信号の低域周波数成分が強調された低域強調信号を生成することと、を含む。
【0007】
本開示のひとつの態様に係る低音強調装置は、調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出する抽出部と、前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成する第1生成部と、前記低周波信号と前記入力音信号とに基づいて、前記入力音信号の低域周波数成分が強調された低域強調信号を生成する第2生成部と、を備える。
【0008】
本開示のひとつの態様に係る低音強調装置は、調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出する抽出部と、前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成する生成部と、少なくとも前記低周波信号を含む出力音信号を、座席を振動させるアクチュエータに出力する出力部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る低音強調装置を含む音響システムの一例を示す構成図である。
図2図1の抽出部の機能を示すブロック図である。
図3】調波楽器音成分を有するスペクトログラムの一例を示す図である。
図4】打楽器音成分を有するスペクトログラムの一例を示す図である。
図5図1の生成部の機能を示すブロック図である。
図6】第2低音信号の一例を示す図である。
図7】波形の折り返しを説明するための図である。
図8】低域打楽器信号の一例を示す図である。
図9】第3低音信号の一例を示す図である。
図10】第1変形例に係る低音強調装置を含む音響システムの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A:第1実施形態
A1:低音強調装置の構成
【0011】
図1は、第1実施形態に係る低音強調装置20を含む音響システム1の一例を示す構成図である。音響システム1は、例えば、自動車等の車両に搭載されている。図1に示したように、音響システム1は、記憶装置10、低音強調装置20、増幅装置30、及びスピーカー装置40を有している。
【0012】
音響システム1は、低音強調装置20において、音源2から入力される入力音信号a1に基づいて低域強調信号e1を生成し、増幅装置30において、生成された低域強調信号e1を増幅し、増幅音信号e2としてスピーカー装置40に出力する。スピーカー装置40は、増幅音信号e2に基づく音を放音する。
【0013】
記憶装置10は、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体(例えば、コンピュータによって読み取り可能なnon transitoryな記録媒体)である。記憶装置10は、不揮発性メモリーと、揮発性メモリーと、を含む。不揮発性メモリーは、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)である。揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)である。
【0014】
記憶装置10は、プログラムp1と、種々の情報と、を記憶する。プログラムp1は、低音強調装置20の動作を規定する。記憶装置10は、不図示のサーバにおける記憶装置から読み取られたプログラムp1を記憶してもよい。この場合、サーバにおける記憶装置は、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体の一例である。
【0015】
低音強調装置20は、記憶装置10からプログラムp1を読み取る。低音強調装置20は、プログラムp1を実行することによって、抽出部21、生成部22、遅延部23、及び合成部24として機能する。抽出部21、生成部22、遅延部23、及び合成部24の少なくとも1つは、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路により実現されてもよい。
【0016】
抽出部21には、音源2から入力音信号a1が入力される。入力音信号a1は、調波楽器音成分と非調波楽器音成分とを含んでいる。調波楽器音成分は、基本周波数成分と、基本周波数の整数倍の周波数の成分とに分解可能な成分である。例えば、弦楽器による音、管楽器による音、ボーカル音等は、調波楽器音成分を有している。調波楽器音成分は、音高及び音色を決定づける要素であり、持続音である。これに対し、非調波楽器音成分は調波楽器音成分以外の成分である。非調波楽器音成分は、調波楽器音成分と比べてランダムな周波数成分を有しており、且つ非持続音である。非調波楽器音成分は、打楽器音成分を含んでいる。打楽器音成分は、主に打楽器から発生する音の成分である。実際には、非調波楽器音の殆どは打楽器音成分であり、実質的に打楽器音成分は、非調波楽器音成分と等価であると言える。例えば、ドラムによる音、シンバルによる音等は、打楽器音成分を有している。なお、調波楽器から発生する音であっても、奏法によっては、打楽器音成分を含むことがある。打楽器音成分は、リズム及び音の強弱を決定づける要素である。
【0017】
抽出部21は、入力音信号a1を、調波楽器音成分と打楽器音成分とに分離し、分離された打楽器音成分を示す信号を打楽器信号b2として抽出する。打楽器音成分は「非調波楽器音成分」の一例であり、打楽器信号b2は「非調波楽器信号」の一例である。
【0018】
生成部22は、打楽器信号b2に基づいて、低周波信号c4を生成する。低周波信号c4は、打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/2の周波数を有する信号である。生成部22は「第1生成部」の一例である。
【0019】
遅延部23は、入力音信号a1に基づいて遅延音信号d1を生成する。遅延音信号d1は、低周波信号c4を生成するまでの時間だけ、入力音信号a1を遅延した信号である。
【0020】
合成部24は、低周波信号c4と遅延音信号d1とを合成することにより、低域強調信号e1を生成する。低域強調信号e1は、遅延音信号d1の低域周波数成分が強調された信号である。つまり、合成部24は、低周波信号c4と入力音信号a1とに基づいて、低域強調信号e1を生成する。遅延部23と合成部24との組合せは「第2生成部」の一例である。
【0021】
以下、図2図4を参照しながら、抽出部21についてより詳細に説明する。図2は、図1の抽出部21の機能を示すブロック図である。図2に示したように、抽出部21は、ローパスフィルタ211及び打楽器音抽出部212を有している。
【0022】
ローパスフィルタ211は、2次のIIRフィルタ(Infinite Impulse Response Filter)である。ローパスフィルタ211のカットオフ周波数は、200Hzである。ローパスフィルタ211は、入力音信号a1のうち、200Hzよりも大きい周波数を有する周波数成分を減衰させることにより、第1低音信号b1を生成する。
【0023】
なお、ローパスフィルタ211のカットオフ周波数は、200Hzに限定されない。例えば、ローパスフィルタ211のカットオフ周波数は、200HzプラスマイナスK%(例えば、20%)でもよい。また、ローパスフィルタ211は、2次のIIRフィルタに限定されない。例えば、ローパスフィルタ211は、1次のIIRフィルタ又は3次のIIRフィルタであってもよいし、FIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter)のようなIIRフィルタとは異なるデジタルフィルタであってもよい。
【0024】
打楽器音抽出部212は、第1低音信号b1を、調波楽器音成分と打楽器音成分とに分離し、打楽器信号b2を抽出する。打楽器音抽出部212は、調波楽器音成分と打楽器音成分とを分離する方法として、例えば、公知のHPSS(Harmonic-Percussive Source Separation)を用いる。
【0025】
HPSSは、音信号を短時間フーリエ変換により、時間周波数領域において分解し、調波楽器音成分が示す特徴と打楽器音成分が示す特徴とがそれぞれ異なることを利用して、音信号をフィルタリングする技術である。短時間フーリエ変換は、一定の大きさの窓関数を用いて音信号を切り出し、切り出された信号をフーリエ変換しスペクトルを計算する。時間周波数領域とは、縦軸が周波数且つ横軸が時間により表される平面である。短時間フーリエ変換された音信号の強度が時間周波数領域に示されるグラフは、スペクトログラムと呼ばれる。スペクトログラムの縦軸には周波数が表され、スペクトログラムの横軸には時間が表される。従って、縦軸は周波数軸とも呼ばれ、横軸は時間軸とも呼ばれる。
【0026】
図3は、調波楽器音成分を有するスペクトログラムの一例を示す図である。図4は、打楽器音成分を有するスペクトログラムの一例を示す図である。
【0027】
調波楽器音成分は、持続音であり、音高が認識され易い音である。図3に示したように、時間周波数領域でみたとき、調波楽器音成分は、周波数軸に沿って急峻且つ時間軸に沿って滑らかであるという特徴を有している。
【0028】
一方、打楽器音成分は、非持続音であり、音高が認識され難い音である。図4に示したように、時間周波数領域でみたとき、打楽器音成分は、周波数軸に沿って滑らか且つ時間軸に沿って急峻であるという特徴を有している。
【0029】
このように、調波楽器音成分と打楽器音成分と間のスペクトログラム上における滑らかさの異方性を利用して、スペクトログラムにフィルタをかけることにより、調波楽器音成分と打楽器音成分とが分離可能である。
【0030】
調波楽器音成分を抽出するためのフィルタとしては、例えば、縦長の矩形状のフィルタが考えられる。縦長の矩形状のフィルタを用いて、スペクトログラムの縦軸に沿って平均化することにより、調波楽器音成分が抽出される。また、フィルタの範囲内において時間軸に沿って平均化することにより、打楽器音成分の影響が除去され得る。
【0031】
打楽器音成分を抽出するためのフィルタとしては、例えば、横長の矩形状のフィルタである。横長の矩形状のフィルタを用いて、スペクトログラムの横軸に沿って平均化することにより、打楽器音成分が抽出される。また、フィルタの範囲内において周波数軸に沿って平均化することにより、調波楽器音成分の影響が除去され得る。
【0032】
従って、より具体的に述べると、打楽器音抽出部212は、第1低音信号b1を短時間フーリエ変換し、短時間フーリエ変換された結果をスペクトログラムとして出力する。打楽器音抽出部212は、出力されたスペクトログラムにフィルタをかけることにより打楽器音成分を抽出する。その後、打楽器音抽出部212は、逆短時間フーリエ変換により、抽出された打楽器音成分を時間領域の音信号に変換し、打楽器信号b2として出力する。
【0033】
次に、図5図9を参照しながら、生成部22について詳細に説明する。図5は、図1の生成部22の機能を示すブロック図である。図5に示したように、生成部22は、ローパスフィルタ221、低域生成部222、ローパスフィルタ223、及びゲインコントローラ224を有している。
【0034】
ローパスフィルタ221は、打楽器信号b2から低域成分を抽出し、第2低音信号c1として出力する。ローパスフィルタ221のカットオフ周波数は、200Hzである。従って、ローパスフィルタ221は、打楽器信号b2のうちの200Hz以下の低域成分を抽出する。なお、ローパスフィルタ221のカットオフ周波数は、200Hzでなくてもよい。例えば、ローパスフィルタ221のカットオフ周波数は、200HzプラスマイナスK%(例えば、20%)の範囲内の周波数でもよい。
【0035】
低域生成部222は、ローパスフィルタ221により出力された第2低音信号c1に基づいて、打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/2の周波数の成分を有する信号を生成する。生成される信号は、第2低音信号c1よりも1オクターブ下の信号であるため、低域打楽器信号c2と呼ばれる。
【0036】
低域打楽器信号c2を生成する方法には、時間領域において生成する方法と、周波数領域において生成する方法とが知られている。低域打楽器信号c2を時間領域において生成する方法には、一般的なゼロクロス検出方法、ゼロクロス点において波形を折り返すことにより倍周期の波形を生成する方法等がある。
【0037】
ゼロクロス検出方法は、信号波形がゼロ基準電圧と交差するときにコンパレータの出力状態が変化することを利用する方法である。ゼロクロス検出により、信号波形の周期と等しい周期の矩形波が得られる。そして、得られた矩形波を二分周することにより、1/2の周波数の低域成分が得られる。
【0038】
また、低域打楽器信号c2を周波数領域において生成する方法には、FFT(Fast Fourier Transform)により時間領域の信号を周波数領域の信号に変換し、周波数領域においてピッチを検出し、検出されたピッチの周波数の1/2の周波数の信号をVCO(Voltage Controlled Oscillator)を用いて生成する方法がある。
【0039】
本実施例では、ゼロクロス点において波形を折り返す方法が採用される。以下、図6図8を参照しながら、低域生成部222による低域打楽器信号c2の生成方法を説明する。図6は、第2低音信号c1の一例を示す図である。図7は、波形の折り返しを説明するための図である。図8は、低域打楽器信号c2の一例を示す図である。
【0040】
低域生成部222に入力される第2低音信号c1が図6に示すような正弦波形であった場合を例に説明する。この場合、低域生成部222は、図7に示したように、正弦波形の2周期分、即ち、720°の位相範囲TRを繰り返し単位とし、位相範囲TRにおいて、位相360°おきにゼロレベル線において正弦波形を折り返す。より具体的に述べると、低域生成部222は、位相範囲TRの2つの区間T1及びT2のうち、区間T1においては正弦波形を折り返さず、区間T2において正弦波形を折り返す。
【0041】
従って、図7に示した処理により、波形は、図8に示したように変化する。図8に示した波形の周期は、元の打楽器信号b2の周期の2倍となる。このようにして、ローパスフィルタ221により抽出された第2低音信号c1から、周期が2倍、即ち、1オクターブ下の低域打楽器信号c2が生成される。
【0042】
図9は、第3低音信号c3の一例を示す図である。図9に示したように、ローパスフィルタ223は、低域打楽器信号c2に含まれる余分な高調波を除去する。ローパスフィルタ223のカットオフ周波数は、100Hzである。これにより、ローパスフィルタ223から、余分な高調波が除去された第3低音信号c3が出力される。なお、ローパスフィルタ223のカットオフ周波数は、100Hzに限定されない。例えば、ローパスフィルタ223のカットオフ周波数は、100HzプラスマイナスK%(例えば、20%)でもよい。
【0043】
ゲインコントローラ224は、ローパスフィルタ223から出力される第3低音信号c3のゲインを調整する。ゲインコントローラ224は、ゲインが調整された第3低音信号c3を低周波信号c4として合成部24に出力する。ゲインコントローラ224のゲインは、音響システム1をセットアップするユーザによって適宜設定可能になっている。
【0044】
遅延部23は、入力音信号a1を遅延させる。遅延部23は、遅延させた入力音信号a1を遅延音信号d1として生成し、合成部24に出力する。遅延部23による遅延時間は、抽出部21において生じる遅延時間及び生成部22において生じる遅延時間の和に等しくなるように予め設定される。言い換えると、遅延部23による遅延時間は、入力音信号a1に基づいて低周波信号c4を生成するまでの時間である。
【0045】
なお、低音域の信号は中音域又は高音域の信号に比べて立ち上がりが遅い。そのため、遅延時間は、低周波信号c4の遅延音信号d1に対するタイミングが早くなるように設定されてもよい。言い換えると、遅延部23による遅延時間は、入力音信号a1に基づいて低周波信号c4を生成するまでの時間よりも長くなるように設定されてもよい。これにより、低音感がより強調される。また、遅延部23は、ゲインコントローラの機能を有していてもよい。
【0046】
合成部24は、低周波信号c4と遅延音信号d1とに基づいて、低域強調信号e1を生成する。より具体的に述べると、合成部24は、遅延音信号d1と低周波信号c4とを加算することにより、低域強調信号e1を生成する。低域強調信号e1は、入力音信号a1の低域周波数成分が強調された信号である。遅延部23及び合成部24の組合せは「第2生成部」の一例である。
【0047】
増幅装置30は、低域強調信号e1をスピーカー駆動に適したレベルに増幅し、増幅音信号e2をスピーカー装置40に出力する。
【0048】
スピーカー装置40は、増幅音信号e2に応じた音を放音する。
【0049】
A2:第1実施形態のまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る低音強調方法は、入力音信号a1から、打楽器信号b2を抽出することと、打楽器信号b2に基づいて、低周波信号c4を生成することと、低周波信号c4と入力音信号a1とに基づいて、低域強調信号e1を生成することを含む。入力音信号a1は、調波楽器音成分と非調波楽器音成分とを含む信号である。低周波信号c4は、打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/2の周波数を有する信号である。低域強調信号e1は、入力音信号a1の低域周波数成分が強調された信号である。
【0050】
調波楽器音成分の低音を強調するために、調波楽器音成分の基本波成分の周波数の1/2の周波数を有する低域信号を生成し、元の調波楽器音成分に加えた場合、低域信号が加えられた調波楽器音成分には、低域信号の倍音が存在しないことがある。また、調波楽器音成分は持続音であるため、低域信号が加えられた調波楽器音成分は、不自然に歪んだ音と認識されることがある。一方、非調波楽器音成分は、調波楽器音成分と比べてランダムな周波数成分を有しており、且つ非持続音であるため、非調波楽器音成分の低音を強調しても、歪として認識され難い。従って、この方法によれば、調波楽器音成分の低音は強調されないので、歪の発生が抑制される。また、非調波楽器音成分の低音は強調されるので、迫力感及びビート感を高めることができる。
【0051】
また、第1実施形態に係る低音強調方法において、非調波楽器音成分は、打楽器音成分を含む。
【0052】
打楽器音成分は、調波楽器音成分と比べてランダムな周波数成分をより多く有しており、且つ非持続音であるため、打楽器音成分の低音を強調しても、歪として認識され難い。従って、この方法によれば、調波楽器音成分の低音は強調されず、打楽器音成分の低音が強調されるので、より迫力感及びビート感を高めることができる。
【0053】
また、第1実施形態に係る低音強調方法において、入力音信号a1から、打楽器信号b2を抽出することは、入力音信号a1から第1低音信号b1を生成し、第1低音信号b1から、打楽器信号b2を抽出することを含む。第1低音信号b1は、打楽器音成分の周波数帯域よりも高域周波数成分を低減させた信号である。
【0054】
この方法によれば、高周波成分を低減させた第1低音信号b1から打楽器信号b2が抽出される。このため、打楽器信号b2の抽出にかかる演算量は、高周波成分を低減させる前の入力音信号a1から打楽器信号b2を抽出する場合の演算量に比べて低減されるため、演算負荷が軽減される。
【0055】
また、第1実施形態に係る低音強調方法において、打楽器信号b2に基づいて低周波信号c4を生成することは、打楽器信号b2から第2低音信号c1を生成し、第2低音信号c1から、低周波信号c4を生成することを含む。第2低音信号c1は、打楽器音成分の周波数帯域よりも高域周波数成分を低減させた信号である。
【0056】
この方法によれば、打楽器音成分の低周波成分だけが強調されるため、より迫力感及びビート感を高めることができる。
【0057】
また、第1実施形態に係る低音強調方法において、低域強調信号e1を生成することは、遅延音信号d1を生成し、遅延音信号d1と低周波信号c4とを加算することにより、低域強調信号e1を生成することを含む。遅延音信号d1は、入力音信号a1に基づいて低周波信号c4を生成するまでの時間だけ、入力音信号a1を遅延した信号である。
【0058】
この方法によれば、低周波信号c4と入力音信号a1との位相関係を調整できるため、より歪が少なく、且つ迫力感及びビート感が高まった音を再生できる。
【0059】
また、第1実施形態に係る低音強調装置20は、抽出部21と、生成部22と、遅延部23と、合成部24と、を備える。抽出部21は、入力音信号a1から、打楽器信号b2を抽出する。生成部22は、打楽器信号b2に基づいて、低周波信号c4を生成する。合成部24は、低周波信号c4と入力音信号a1とに基づいて、低域強調信号e1を生成する。
【0060】
この態様によれば、調波楽器音成分の低音は強調されないので、歪の発生が抑制される。また、打楽器音成分の低音は強調されるので、迫力感及びビート感を高めることができる。
【0061】
なお、第1実施形態において、打楽器音成分は「非調波楽器音成分」の一例であり、打楽器信号b2は「非調波楽器信号」の一例であり、生成部22は「第1生成部」の一例であり、遅延部23及び合成部24の組合せは「第2生成部」の一例である。
【0062】
B:変形例
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。具体的な変形の態様を以下に例示する。また、以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内において適宜併合され得る。なお、以下に例示する変形例において、作用や機能が前述の実施形態と同等である要素については、以上の説明において使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜省略する。
【0063】
B1:第1変形例
以下、図10を参照しながら、第1変形例に係る音響システムについて説明する。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、第1実施形態と同一の構成要素に対しては、同一の符号を用いると共に、その機能の説明を省略することがある。また、以下の説明では、説明の簡略化のため、主として第1変形例が、第1実施形態に比較して相違する点について説明する。
【0064】
図10は、第1変形例に係る低音強調装置20Aを含む音響システム1Aの一例を示す構成図である。音響システム1Aは、第1実施形態に係る音響システム1と同様に、自動車等の車両に搭載されている。音響システム1Aは、記憶装置10A、低音強調装置20A、増幅装置30、スピーカー装置40、及びアクチュエータ50を有している。
【0065】
記憶装置10Aは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体である。記憶装置10Aは、不揮発性メモリーと、揮発性メモリー、とを含む。不揮発性メモリーは、例えば、ROM、EPROM、及びEEPROMである。揮発性メモリーは、例えば、RAMである。
【0066】
記憶装置10Aは、プログラムp2と、種々の情報と、を記憶する。プログラムp2は、低音強調装置20Aの動作を規定する。記憶装置10Aは、不図示のサーバにおける記憶装置から読み取られたプログラムp2を記憶してもよい。この場合、サーバにおける記憶装置は、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体の一例である。
【0067】
低音強調装置20Aは、記憶装置10Aからプログラムp2を読み取る。低音強調装置20Aは、プログラムp2を実行することによって、抽出部21、生成部22、遅延部23、合成部24、及び出力部25として機能する。抽出部21、生成部22、遅延部23、合成部24、及び出力部25の少なくとも1つは、DSP、ASIC、PLD、FPGA等の回路により実現されてもよい。
【0068】
抽出部21、生成部22、遅延部23、及び合成部24は、図1の抽出部21、生成部22、遅延部23、及び合成部24と同様の構成であるため、これらの説明は省略される。
【0069】
出力部25は、低周波信号c4を含む出力音信号f1を、アクチュエータ50に出力する。
【0070】
アクチュエータ50は、車両の座席60のシートクッション61に設けられる。アクチュエータ50は、例えば、ダンパーを介してケースに固定されたマグネットと、ケースに直接固定されたヨークと、ヨークに巻かれたコイルとを有している。コイルには、出力音信号f1に応じた電流が流れる。出力音信号f1に応じてコイルに流れる電流と、マグネットにより発生する磁界との作用により、コイルの軸に沿った力が生じる。従って、出力音信号f1の変化に伴って、ヨーク及びコイルは、マグネットに対して、コイルの軸に沿って振動する。上記構成により、アクチュエータ50は、出力音信号f1に基づいて、シートクッション61を振動させる。
【0071】
以上説明したように、第1変形例に係る低音強調装置20Aは、抽出部21と、生成部22と、出力部25と、を備える。抽出部21は、入力音信号a1から、打楽器信号b2を抽出する。入力音信号a1は、調波楽器音成分と打楽器音成分とを含む信号である。打楽器信号b2は、打楽器音成分を示す信号である。生成部22は、打楽器信号b2に基づいて、低周波信号c4を生成する。低周波信号c4は、打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/2の周波数を有する信号である。出力部25は、出力音信号f1を、アクチュエータ50に出力する。出力音信号f1は、低周波信号c4を含む信号である。
【0072】
この態様によれば、低音強調装置20Aは、シートクッション61を振動させることによって座席60に着座している搭乗者の身体に、出力音信号f1に応じた振動を与えることができる。従って、搭乗者は、搭乗者の耳からだけでなく、身体全体で迫力感及びビート感を感じることができる。このため、搭乗者に、迫力感及びビート感をより一層強く感じさせることができる。
【0073】
なお、アクチュエータ50は、上記構成のダンパーを有するアクチュエータに限らず、例えば、ウーファー等の低音域を再生可能なスピーカーであってもよい。
【0074】
また、アクチュエータ50は、座席60のシートバック62に設けられてもよい。
【0075】
また、第1変形例に係る音響システム1Aは、自動車等の車両に搭載され、アクチュエータ50は、座席60のシートクッション61を出力音信号f1に応じて振動させるが、音響システム1Aは、住宅等の建築物に適用されてもよい。この場合、アクチュエータ50は、ソファ、チェア、クッション等に配置されてもよい。
【0076】
B2:第2変形例
第1変形例では、出力部25には、低周波信号c4が入力されるが、出力部25には、低周波信号c4に代えて、低周波信号c4と入力音信号a1とが合成された低域強調信号e1をアクチュエータ50に出力してもよい。
【0077】
B3:第3変形例
第1実施形態では、打楽器音成分の抽出にHPSSが用いられているが、打楽器音成分の抽出方法は、HPSSを利用した方法に限定されず、種々の抽出方法が用いられてもよい。例えば、打楽器音成分の抽出には、周知の音源分離技術が用いられてもよい。音源分離技術には、ニューラルネットワークによる深層学習に基づいて、ボーカル音及び複数の楽器音が混合された音楽信号から、ボーカル音及びそれぞれの楽器音を分離する技術が知られている。
【0078】
例えば、Facebook Research社が開発したDemucsという技術によれば、U-Netアーキテクチャに基づく再帰型ニューラルネットワークを用いて、音楽信号の時間的な構造が解析される。解析結果が畳み込みニューラルネットワークに入力され、周波数領域において各音源が分離される。さらに、分離された各音源のスペクトログラムが逆フーリエ変換され、時間領域の波形に復元される(https://github.com/facebookresearch/demucs)。
【0079】
以上の音源分離技術を応用することにより、打楽器音成分を抽出することが可能である。
【0080】
B4:第4変形例
第1実施形態において、抽出部21には、打楽器音抽出部212の前段にローパスフィルタ211が設けられている。ローパスフィルタ211には、打楽器音抽出部212における演算に不要な高域成分を低減し、打楽器音抽出部212の演算処理量を低減させる目的がある。このため、ローパスフィルタ211は、省略されてもよい。
【0081】
B5:第5変形例
第1実施形態の生成部22では、低周波信号c4として打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/2の周波数を有する信号が生成されるが、低周波信号c4は、打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/N(Nは3以上の整数)の周波数を有する信号であってもよい。例えば、第5変形例の生成部は、低周波信号c4として、打楽器信号b2の基本波成分の周波数の1/4の周波数を有する信号を生成する。
【0082】
この態様によれば、より低域が強調された信号が生成されるので、迫力感及びビート感をより高めることができる。
【0083】
B6:第6変形例
また、第1実施形態に係る音響システム1は、自動車等の車両に搭載されるが、音響システム1は、ホームオーディオ及びプロユースオーディオの分野にも適用可能である。
【0084】
C:付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0085】
本開示のひとつの態様(態様1)に係る低音強調方法は、調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出することと、前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成することと、前記低周波信号と前記入力音信号とに基づいて、前記入力音信号の低域周波数成分が強調された低域強調信号を生成することと、を含む。
【0086】
調波楽器音成分の低音を強調するために、調波楽器音成分の基本波成分の周波数の1/Nの周波数を有する低域信号を生成し、元の調波楽器音成分に加えた場合、低域信号が加えられた調波楽器音成分には、低域信号の倍音が存在しないことがある。また、調波楽器音成分は持続音であるため、低域信号が加えられた調波楽器音成分は、不自然に歪んだ音と認識されることがある。一方、非調波楽器音成分は、調波楽器音成分と比べてランダムな周波数成分を有しており、且つ持続音が少ないため、非調波楽器音成分の低音を強調しても、歪として認識され難い。従って、この態様によれば、調波楽器音成分の低音は強調されないので、歪の発生が抑制される。また、非調波楽器音成分の低音は強調されるので、迫力感及びビート感を高めることができる。
【0087】
本開示のひとつの態様(態様2)に係る低音強調方法において、前記非調波楽器音成分は、打楽器音成分を含む。
【0088】
打楽器音成分は、調波楽器音成分と比べてランダムな周波数成分をより多く有しており、且つ非持続音であるため、打楽器音成分の低音を強調しても、歪として認識され難い。従って、この態様によれば、調波楽器音成分の低音は強調されず、打楽器音成分の低音が強調されるので、より迫力感及びビート感を高めることができる。
【0089】
本開示のひとつの態様(態様3)に係る低音強調方法において、前記入力音信号から、前記非調波楽器信号を抽出することは、前記入力音信号から前記非調波楽器音成分の周波数帯域よりも高域周波数成分を低減させた第1低音信号を生成し、前記第1低音信号から、前記非調波楽器信号を抽出することを含む。
【0090】
この態様によれば、高周波成分を低減させた第1低音信号から非調波楽器信号が抽出される。このため、抽出にかかる演算量は、高周波成分を低減させる前の入力音信号から非調波楽器信号を抽出する場合の演算量に比べて低減されるため、演算負荷が軽減される。
【0091】
本開示のひとつの態様(態様4)に係る低音強調方法において、前記非調波楽器信号に基づいて前記低周波信号を生成することは、前記非調波楽器信号から前記非調波楽器音成分の周波数帯域よりも高域周波数成分を低減させた第2低音信号を生成し、前記第2低音信号から、前記低周波信号を生成することを含む。
【0092】
この態様によれば、非調波楽器音成分の低周波成分だけが強調されるため、より迫力感及びビート感を高めることができる。
【0093】
本開示のひとつの態様(態様5)に係る低音強調方法において、前記低域強調信号を生成することは、前記入力音信号に基づいて前記低周波信号を生成するまでの時間だけ、前記入力音信号を遅延した遅延音信号を生成し、前記遅延音信号と前記低周波信号とを加算することにより、前記低域強調信号を生成することを含む。
【0094】
この態様によれば、低周波信号と入力音信号との位相関係を調整できるため、より歪が少なく、且つ迫力感及びビート感が高まった音を再生できる。
【0095】
本開示のひとつの態様(態様6)に係る低音強調装置は、調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出する抽出部と、前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成する第1生成部と、前記低周波信号と前記入力音信号とに基づいて、前記入力音信号の低域周波数成分が強調された低域強調信号を生成する第2生成部と、を備える。
【0096】
この態様によれば、調波楽器音成分の低音は強調されないので、歪の発生が抑制される。また、非調波楽器音成分の低音は強調されるので、迫力感及びビート感を高めることができる。
【0097】
本開示のひとつの態様(態様7)に係る低音強調装置は、調波楽器音成分と、前記調波楽器音成分以外の成分である非調波楽器音成分とを含む入力音信号から、前記非調波楽器音成分を示す非調波楽器信号を抽出する抽出部と、前記非調波楽器信号に基づいて、前記非調波楽器信号の基本波成分の周波数の1/N(Nは2以上の整数)の周波数を有する低周波信号を生成する生成部と、少なくとも前記低周波信号を含む出力音信号を、座席を振動させるアクチュエータに出力する出力部と、を備える。
【0098】
この態様によれば、非調波楽器音成分の低音が強調された信号により座席を振動させるので、迫力感及びビート感をより高めることができる。
【符号の説明】
【0099】
20…低音強調装置、21…抽出部、22…生成部、23…遅延部、24…合成部、25…出力部、50…アクチュエータ、60…座席、a1…入力音信号、b1…第1低音信号、b2…打楽器信号、c1…第2低音信号、c4…低周波信号、e1…低域強調信号、d1…遅延音信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10