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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178587
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H05B6/12 318
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096838
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉元 信夫
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃一
(72)【発明者】
【氏名】森合 史朗
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直也
(72)【発明者】
【氏名】及川 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】横井川 裕司
(72)【発明者】
【氏名】林 伸明
(72)【発明者】
【氏名】南雲 一樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 直也
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA93
3K151CA06
(57)【要約】
【課題】基板に導体を巻回することで加熱コイルが形成された誘導加熱調理器において、温度計測装置による計測結果の精度の低下を抑制する。
【解決手段】誘導加熱調理器は、被加熱物が載置されるトッププレートと、絶縁性を有する基板と、基板上に導体が巻回されて形成され、被加熱物を加熱する加熱コイルと、被加熱物の温度を計測する温度計測装置と、を備え、温度計測装置の少なくとも一部は、基板よりも下方に位置している。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が載置されるトッププレートと、
絶縁性を有する基板と、
前記基板上に導体が巻回されて形成され、前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、
前記被加熱物の温度を計測する温度計測装置と、を備え、
前記温度計測装置の少なくとも一部は、前記基板よりも下方に位置している
誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記基板には、前記温度計測装置に対向する位置に開口が形成され、
前記温度計測装置は非接触式であり、
前記温度計測装置の全体が前記基板よりも下方に位置している
請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記基板には、前記温度計測装置が挿通される開口が形成され、
前記温度計測装置は接触式であり、
前記温度計測装置は、
計測結果を通信するための信号線が接続された接続部を有し、
前記接続部は、前記基板よりも下方に位置している
請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記基板を保持する保持部材を更に有し、
前記温度計測装置は、前記保持部材に設けられている
請求項1~3の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記基板に電力を供給するインバーター基板と、
前記インバーター基板を収納する制御箱と、を更に有し、
前記温度計測装置は、前記制御箱に設けられている
請求項1~3の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記基板に電力を供給するインバーター基板と、
前記インバーター基板に送風するファンと、
前記ファンによって送られた空気が流通するダクトと、を更に有し、
前記温度計測装置は、前記ダクトに設けられている
請求項1~3の何れか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記基板に電力を供給するインバーター基板を更に有し、
前記温度計測装置は、前記インバーター基板に設けられている
請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記加熱コイルは前記開口を回避して巻回されている
請求項2または3に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、加熱調理を行う誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板となる絶縁体の表面に金属薄膜を巻回することでコイルを形成した誘導加熱調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-043697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、被加熱物の温度を計測するための温度計測装置について開示されていない。一般に、温度計測装置が赤外線センサー等の非接触式である場合、温度計測装置と被加熱物とが直接接触することは想定されておらず、内部のセンサー部は熱に強いものではない。また、温度計測装置がサーミスタ等の接触式である場合も、計測結果を通信するための信号線は熱に強いものではない。温度計測装置の取付位置によっては、このような被加熱物の熱による影響を受けるべきでない部分の温度が上昇してしまい、温度計測装置による温度の計測結果の精度が低下してしまうことが考えられる。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、基板に導体を巻回することで加熱コイルが形成された誘導加熱調理器において、温度計測装置による計測結果の精度の低下を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る誘導加熱調理器は、被加熱物が載置されるトッププレートと、絶縁性を有する基板と、基板上に導体が巻回されて形成され、被加熱物を加熱する加熱コイルと、被加熱物の温度を計測する温度計測装置と、を備え、温度計測装置の少なくとも一部は、基板よりも下方に位置している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の誘導加熱調理器では、温度計測装置の一部は、基板よりも被加熱物から離れる方向に設けられている。このため、温度計測装置の被加熱物の熱による影響を受けるべきでない部分を、被加熱物から遠ざけて配置することができる。したがって、誘導加熱調理器の温度計測装置は、計測結果の精度の低下が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す斜視図である。
図2】実施の形態1の誘導加熱調理器における本体ケース内の構成を説明するための図である。
図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図4】実施の形態1に係る誘導加熱調理器における誘導加熱ユニットの構成を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る基板を示す図である。
図6】実施の形態1に係る保持部材を裏面から見た図である。
図7】実施の形態1に係る保持部材を裏面から見た図である。
図8】実施の形態1に係る基板および保持部材を示す側面図である。
図9】実施の形態1に係る基板および保持部材を示す断面図である。
図10】実施の形態1に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図11】実施の形態1に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図12】変形例1に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図13】変形例2に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図14】変形例3に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図15】変形例4に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図16】変形例5に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
図17】変形例6に係る誘導加熱調理器における内部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態における誘導加熱調理器について、図面を参照しながら説明する。ここで、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。さらに、以下の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本開示を限定するものではない。方向を表す用語としては、例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」または「後」などが挙げられる。なお、方向は、使用可能な状態に設置された誘導加熱調理器を基準にして説明する。また、以下に説明する各種基板などの板状部材において、上側を向いている面を表面とし、表面の反対側の面を裏面と表現する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1を示す斜視図である。図1に示すように、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、電磁誘導を利用して、加熱対象である調理容器および被加熱物(調理物)を加熱する加熱調理器である。誘導加熱調理器1の本体ケース2は、加熱調理を行う機器を収納する。誘導加熱調理器1は、複数種類の加熱手段を有する複合加熱調理器を含む。
【0011】
天板となるトッププレート3は、本体ケース2の上部に設置され、被加熱物を入れた金属製の調理容器が載置される。トッププレート3は、例えば、赤外線を透過させる結晶化ガラスを素材とする。実施の形態1におけるトッププレート3は、後述する誘導加熱ユニット10に対応し、トッププレート3の表面に載置された調理容器および被加熱物(以下、これらを被加熱物とする)を誘導加熱できる領域となる2つの加熱エリア4を有する。加熱エリア4は、トッププレート3に印刷された円形模様により、加熱可能な境界が使用者に示される。
【0012】
また、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、操作表示パネル7を上面前部に有する。操作表示パネル7は、各種の調理条件を設定するための操作を受け付け、調理条件の設定値および異常を示す情報を表示する。さらに、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、正面から見て左下部にグリル調理器5を有する。グリル調理器5は、誘導加熱調理器1の前面部の左側に設置され、グリル庫5a(図3参照)の開閉を行うグリル扉6を有する。
【0013】
図2は、実施の形態1の誘導加熱調理器1における本体ケース2内の構成を説明するための図である。図2は、トッププレート3を外したものである。誘導加熱調理器1の本体ケース2は、誘導加熱ユニット10、フィルター基板14、及びインバーター基板15などを冷却するための空気を外部から取り込むための吸気口8を後部に有する。また、本体ケース2は、グリル庫内の被加熱物から発生する煙などを空気とともに排出するための排気口9を有する。
【0014】
また、実施の形態1における誘導加熱調理器1は、2つの誘導加熱ユニット10を有する。誘導加熱ユニット10は、後述する加熱コイル106を有し、トッププレート3の加熱エリア4に載置された被加熱物を誘導加熱する。ここで、誘導加熱調理器1が有する誘導加熱ユニット10の数については、2つに限定するものではない。
【0015】
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1における内部の構成を示す模式図である。図3は、誘導加熱調理器1を正面から見たときの内部構成を示す。本体ケース2内には、制御箱20が設置される。制御箱20は、フィルター基板14、インバーター基板15、および制御装置30などを収納する。これらの基板102は、半導体集積回路、抵抗器、コンデンサー、トランジスタなどの部品が固定され、部品間を銅箔で配線して形成された回路を有する。
【0016】
フィルター基板14は、フィルター回路を有する絶縁体の基板である。フィルター回路は、電源コード16を介して商用電源(図示せず)から供給された交流電力を、直流電力に変換し、整流する。
【0017】
インバーター基板15は、インバーター回路を有する絶縁体の電力制御基板である。インバーター回路は、フィルター基板14において変換された直流電力を、制御装置30の制御に基づく周波数の交流電力に変換し、リード線12を介して誘導加熱ユニット10に供給する。リード線12は、撚線を絶縁被覆した線である。
【0018】
インバーター基板15の上側には、スイッチング素子17、ヒートシンク18およびファン19が設置される。スイッチング素子17は、インバーター回路の一部となり、スイッチング動作により、直流交流変換を行う電力制御用の素子である。ここで、スイッチング素子17は、例えば、高速でスイッチング動作が可能なIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。また、ヒートシンク18は、例えば、アルミニウム製であって、スイッチング素子17のスイッチング動作によって発生した熱を放熱する。ファン19は、スイッチング素子17およびヒートシンク18に空気を送り、スイッチング素子17の冷却を促進するものである。ファン19の駆動に伴い吸気口8から本体ケース2内に取り込まれた空気は、ファン19を通過して、排気口9から排出される。吸気口8から取り込まれた空気の一部は、誘導加熱ユニット10を冷却するためにも用いられる。
【0019】
制御装置30は、操作表示パネル7を介して設定された指示に基づいて、誘導加熱調理器1における加熱制御などを行う。また、制御装置30は、操作表示パネル7への表示内容を制御する。制御装置30には、後述する非接触式センサー501及び接触式センサー502からの電気信号が入力される。制御装置30は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の処理回路で構成される。なお、制御装置30をプロセッサおよびメモリからなるCPUで構成するようにしてもよい。
【0020】
誘導加熱ユニット10は、弾性体であるバネ13に裏面から支えられ、バネ13の弾力でトッププレート3の裏面側に押しつけられ、固定される。誘導加熱ユニット10は、スペーサー11によって、トッププレート3と一定の間隔を保った位置に固定される。スペーサー11は、ゴムなどの弾性部材である。ここで、特に限定するものではないが、例えば、基板102とトッププレート3との間の距離は、約3mm~約4mmである。基板102とトッププレート3との間に隙間を設けることで、加熱された被加熱物からの熱が加熱コイル106に及ぼす影響を抑えることができる。さらに、吸気口8から流入した空気が加熱コイル106上を通過することで、加熱コイル106を冷却させることができる。また、基板102から突出したネジなどの突起物によってトッププレート3の裏面に施された印刷が損傷することを抑制することができる。そして、スペーサー11は、非接触式センサー501及び接触式センサー502とトッププレート3との距離を安定させることができ、温度の検出精度を向上させることができる。
【0021】
図4は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1における誘導加熱ユニット10の構成を説明するための図である。図4は、誘導加熱ユニット10を分解して示した図である。実施の形態1における誘導加熱ユニット10は、防磁部材101、基板102、フェライト103、保持部材104、および固定ネジ105を有する。
【0022】
防磁部材101は、加熱コイル106において発生した磁気が加熱エリア4外に漏れないようにする非磁性体金属の板状部材である。防磁部材101は、誘導加熱ユニット10の外郭を構成し、加熱コイル106を露出させた形状である。また、防磁部材101は、保持部材104と基板102を挟み、基板102の反りを抑制する。なお、防磁部材101は、必ず取り付けなければならない部材ではない。
【0023】
基板102は、印刷によって形成された加熱コイル106が設けられたプリント基板である。基板102は、絶縁体を材料としている。基板102は、被加熱物からの輻射熱を受けるため、耐熱性を有する基板102である。加熱コイル106は、銅箔などの薄膜導体であって、基板102に渦巻き状に巻回されている。加熱コイル106は、印刷によって形成されるため、製造する際に銅線を巻く治具を必要とせず、作製できるコイル形状の自由度が高い。加熱コイル106は、リード線12を介してインバーター基板15から電力が供給されることで磁界を発生させ、電磁誘導による渦電流を形成する。これにより、加熱コイル106は、被加熱物を誘導加熱する。なお、基板102にソルダーレジストを付すことにより、加熱コイル106などを保護してもよい。
【0024】
図5を用いて基板102の構成について更に説明する。図5は、実施の形態1に係る基板102を示す図である。図5は、基板102の要部を拡大した図であって、表面の構成を実線で描画し、裏面の構成を破線で描画している。図5に示すように、内端コイル接続部106a、外端コイル接続部106b、およびパターン線106cを有する。内端コイル接続部106a、および外端コイル接続部106bは、配線接続用のパッドとなる。各内端コイル接続部106a、および外端コイル接続部106bは、基板102の表面および裏面の対向する位置に形成される。各内端コイル接続部106a、および外端コイル接続部106bは、薄膜導体によって形成される。
【0025】
内端コイル接続部106aの裏面には、リード線12を接続する接続部品となる内端接続端子107a(図6および図7参照)が実装される。内端接続端子107aは、例えば内端コイル接続部106aにハンダによって固定される。また、基板102表面の加熱コイル106の内端と裏面の内端コイル接続部106aとが、ビア(図示せず)および基板102の裏面に薄膜導体によって形成されたパターン線106cを介して電気的に接続されている。
【0026】
外端コイル接続部106bの裏面には、リード線12を接続する接続部品となる外端接続端子107b(図6および図7参照)が実装される。基板102表面の加熱コイル106の外端と表面の外端コイル接続部106bとが電気的に接続されている。
【0027】
内端コイル接続部106a、および外端コイル接続部106bは、加熱コイル106の最外周よりも外側に位置し、外端コイル接続部106bと内端コイル接続部106aとが、同じ辺に沿って並んで配設される。外端コイル接続部106bと内端コイル接続部106aとを並んで配設することで、リード線12の接続作業を効率よく行うことができる。
【0028】
また、基板102には、上下方向に貫通する第1非接触式センサー開口201、および第1接触式センサー開口202が形成されている。第1非接触式センサー開口201は、基板102の中央より外側の位置に形成されており、第1接触式センサー開口202は、基板102のほぼ中央に形成されている。第1非接触式センサー開口201は、非接触式センサー501の覗き窓として機能する。第1接触式センサー開口202は、接触式センサー502が挿通する。第1非接触式センサー開口201と非接触式センサー501との関係、および第1接触式センサー開口202と接触式センサー502との関係については、後述する。加熱コイル106は、第1非接触式センサー開口201を回避するように巻回されている。図5の例では、破線で囲んだ領域Sで示すように、加熱コイル106が第1非接触式センサー開口201のある部分で外周側にずれて配置されている。
【0029】
図4に戻り、フェライト103は、加熱コイル106において発生する磁気による磁束を、トッププレート3を介して誘導加熱ユニット10の上側に位置する被加熱物に導き、加熱コイル106の下方への磁束漏れを抑制する磁性体である。フェライト103が磁束漏れを抑制することで、制御箱20内にある制御装置30が磁気によって誤動作することを防ぐ。
【0030】
保持部材104は、基板102、および基板102との間で挟まれたフェライト103を保持する部材である。また、保持部材104は、固定ネジ105で、基板102と固定され、熱による基板102の反りを抑制する。
【0031】
また、保持部材104には、上下方向に貫通する第2非接触式センサー開口401、および第2接触式センサー開口402が形成されている。第2非接触式センサー開口401は、保持部材104の中央より外側の位置に形成されており、第2接触式センサー開口402は、保持部材104のほぼ中央に形成されている。第2非接触式センサー開口401は、非接触式センサー501の覗き窓として機能する。第2接触式センサー開口402は、接触式センサー502が挿通する。第2非接触式センサー開口401と非接触式センサー501との関係、および第2接触式センサー開口402と接触式センサー502との関係については、後述する。
【0032】
また更に、保持部材104には、内端開口404aおよび外端開口404bが形成されている。内端開口404aは、内端接続端子107aが貫通する開口である。外端開口404bは、外端接続端子107bが貫通する開口である。内端開口404aおよび外端開口404bによって、誘導加熱ユニット10の下部に、内端接続端子107aおよび外端接続端子107bを露出させることができる。
【0033】
固定ネジ105は、基板102、保持部材104および防磁部材101を固定する。固定ネジ105で締結して基板102、保持部材104および防磁部材101を固定することで、誘導加熱ユニット10を製造する際に、基板102を固定する接着剤を必要としなくてよいため、分解などを容易に行うことができる。ここで、固定ネジ105は、非磁性体である。
【0034】
図6および図7は、実施の形態1に係る保持部材104を裏面から見た図である。図6は、保持部材104に非接触式センサー501および接触式センサー502が取り付けられた状態を示し、図7は、保持部材104に非接触式センサー501および接触式センサー502が取り外された状態を示している。図6および図7に示すように、内端接続端子107aおよび外端接続端子107bが保持部材104の内端開口404a及び外端開口404bを介して、保持部材104の下面側に貫通している。内端接続端子107aおよび外端接続端子107bは、ネジ端子である。内端接続端子107aおよび外端接続端子107bと、リード線12の端部に接続されたタブ端子のネジ穴(図示せず)とにネジを締めることで、タブ端子が内端接続端子107aおよび外端接続端子107bに固定される。これにより、リード線12と内端接続端子107aおよび外端接続端子107bとが電気的に接続される。
【0035】
非接触式センサー501は、被加熱物の温度を計測する温度計測装置である。非接触式センサー501は、例えば被加熱物から発せられる赤外線を検知する赤外線式のセンサーである。非接触式センサー501は、計測した温度を示す電気信号を生成し、制御装置30に送信する。非接触式センサー501は、非接触式センサー501が有するネジ穴(図示せず)と、保持部材104の裏面に設けられた非接触式センサー取付部104a(図7参照)に形成されたネジ穴(図示せず)とが取付ネジ104bによって締められることで、保持部材104に固定される。
【0036】
接触式センサー502は、トッププレート3を介して被加熱物の温度を計測する温度計測装置である。接触式センサー502は、例えばサーミスタである。接触式センサー502は、計測した温度を示す電気信号を生成し、制御装置30に送信する。接触式センサー502は、保持部材104の裏面に設けられた爪状の非接触式センサー取付部403に嵌合することで、保持部材104に固定される。
【0037】
図8は、実施の形態1に係る基板102および保持部材104を示す側面図である。図9は、実施の形態1に係る基板102および保持部材104を示す断面図である。図8は、保持部材104に非接触式センサー501および接触式センサー502が取り付けられている状態を示している。図9は、図8に示された構成を、上下方向に切断した断面を図8と同じ方向から示したものである。なお、図9では、フェライト103を含まない断面を示している。図9に示すように、基板102の第1非接触式センサー開口201と、保持部材104の第2非接触式センサー開口401とは、連通している。非接触式センサー501は、ケース501a、及びケース501aに格納された赤外線を検知するセンサー部501bを有している。ケース501aは、センサー部501bに熱およびノイズの影響が及ばないようにするためのものである。そして、第1非接触式センサー開口201、および第2非接触式センサー開口401は、非接触式センサー501のセンサー部501bに対向する位置に形成されている。これにより、非接触式センサー501は、被加熱物から発せられる赤外線を検知することが可能となっている。このようにして、第1非接触式センサー開口201、および第2非接触式センサー開口401は、非接触式センサー501の覗き窓として機能する。
【0038】
また、基板102の第1接触式センサー開口202と、保持部材104の第2接触式センサー開口402とは、連通している。そして、第1接触式センサー開口202、および第2接触式センサー開口402には、接触式センサー502が挿通されている。これにより、接触式センサー502は、トッププレート3に接触することが可能になっている。
【0039】
図10は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1における内部の構成を示す模式図である。図10は、誘導加熱調理器1を正面から見たときの内部構成を示す。また、図10では、非接触式センサー501を主に示し、接触式センサー502についての図示は省略している。図10に示すように、非接触式センサー501は、制御装置30から制御に係る信号を受信するとともに、計測結果を送信するための非接触式センサー信号線501cを有している。図示は省略するが、非接触式センサー信号線501cは、制御装置30に向かって下方に延びるように配線される。
【0040】
非接触式センサー501は、左右方向において保持部材104の中央から外れた位置に取り付けられている。このため、非接触式センサー501は、被加熱物の、トッププレート3の加熱エリア4の中央よりも外側の領域に位置する部分の温度を計測する。そして、非接触式センサー501は、全体が基板102および保持部材104よりも下方に位置している。このため、被加熱物からの熱影響を受けやすい非接触式センサー501のセンサー部501bおよび非接触式センサー信号線501cは、被加熱物から遠ざけて配置されている。
【0041】
図11は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1における内部の構成を示す模式図である。図11は、誘導加熱調理器1を正面から見たときの内部構成を示す。また、図11では、接触式センサー502を主に示し、非接触式センサー501についての図示は省略している。図11に示すように、接触式センサー502は、制御装置30から制御に係る信号を受信するとともに、計測結果を送信するための接触式センサー信号線502aを有している。図示は省略するが、接触式センサー信号線502aは、接触式センサー502の接続部502bから制御装置30に向かって下方に延びるように配線される。接続部502bは、接触式センサー502の外郭のうち、接触式センサー信号線502aが接続される部分である。
【0042】
接触式センサー502は、トッププレート3の裏面に接触している。接触式センサー502は、左右方向において保持部材104のほぼ中央に取り付けられている。このため、接触式センサー502は、被加熱物の、トッププレート3の加熱エリア4のほぼ中央に位置する部分の温度を計測する。そして、接触式センサー502は、接続部502bが基板102および保持部材104よりも下方に位置している。このため、被加熱物からの熱影響を受けやすい接触式センサー信号線502aは、被加熱物から遠ざけて配置されている。
【0043】
以上のように、実施の形態1の誘導加熱調理器1では、非接触式センサー501および接触式センサー502の少なくとも一部は、基板102より下方に設けられている。このため、非接触式センサー501および接触式センサー502の被加熱物の熱による影響を受けるべきでない部分を、被加熱物から遠ざけて配置することができる。したがって、誘導加熱調理器1は、温度計測装置による計測結果の精度の低下を抑制することができる。
【0044】
(変形例1)
図12は、変形例1に係る誘導加熱調理器1Aにおける内部の構成を示す模式図である。また、図12では、接触式センサー502を主に示し、非接触式センサー501についての図示は省略している。図12に示すように、接触式センサー502は、保持部材104ではなく、制御箱20に設けるようにしてもよい。接触式センサー502は、制御箱20の上面に形成された爪状の接触式センサー取付部20aに嵌合されて固定される。この場合も、接触式センサー502は、接続部502bが基板102および保持部材104よりも下方に位置している。このため、誘導加熱調理器1Aは、接触式センサー502による計測結果の精度の低下を抑制することができる。
【0045】
(変形例2)
図13は、変形例2に係る誘導加熱調理器1Bにおける内部の構成を示す模式図である。また、図13では、非接触式センサー501を主に示し、接触式センサー502についての図示は省略している。図13に示すように、非接触式センサー501は、保持部材104ではなく、制御箱20に設けるようにしてもよい。非接触式センサー501は、非接触式センサー501が有するネジ穴(図示せず)と、制御箱20の上面に設けられた非接触式センサー取付部20bに形成されたネジ穴(図示せず)とが取付ネジ20cによって締められることで、制御箱20に固定される。この場合も、非接触式センサー501は、全体が基板102および保持部材104よりも下方に位置している。このため、誘導加熱調理器1Bは、非接触式センサー501による計測結果の精度の低下を抑制することができる。また、保持部材104に非接触式センサー501を設けた場合、誘導加熱ユニット10をトッププレート3に押し付けるバネ13が座屈することによって、保持部材104ごと非接触式センサー501がずれ、被加熱物の計測する部位がずれてしまうことがあった。変形例2のように制御箱20に非接触式センサー501を設けることで、非接触式センサー501はずれが抑制されているため、被加熱物の同一の部位を安定して計測することができる。
【0046】
(変形例3)
図14は、変形例3に係る誘導加熱調理器1Cにおける内部の構成を示す模式図である。また、図14では、非接触式センサー501を主に示し、接触式センサー502についての図示は省略している。図14に示すように、非接触式センサー501は、インバーター基板15に搭載されるようにしてもよい。制御箱20には、基板102の第1非接触式センサー開口201および保持部材104の第2非接触式センサー開口401に対向する位置に開口20dが形成される。非接触式センサー501は、基板102の第1非接触式センサー開口201、保持部材104の第2非接触式センサー開口401、制御箱20の開口20dを介して、被加熱物の温度を計測する。この場合も、非接触式センサー501は、全体が基板102および保持部材104よりも下方に位置している。このため、誘導加熱調理器1Cは、非接触式センサー501による計測結果の精度の低下を抑制することができる。また、非接触式センサー501は、制御箱20によってセンサー部501bに対する熱及びノイズの影響を抑制することができるため、ケース501aを省略して、生産コストを低下させることができる。
【0047】
(変形例4)
図15は、変形例4に係る誘導加熱調理器1Dにおける内部の構成を示す模式図である。また、図15では、接触式センサー502を主に示し、非接触式センサー501についての図示は省略している。図15に示すように、接触式センサー502は、左右方向において保持部材104の中央から外れた位置に取り付けられるようにしてもよい。この場合、接触式センサー502は、被加熱物の、トッププレート3の加熱エリア4の中央よりも外側の領域に位置する部分の温度を計測する。接触式センサー502が挿通される基板102の第1接触式センサー開口202および保持部材104の第2接触式センサー開口402が形成される位置も、接触式センサー502が取り付けられる位置に合わせて変更される。この場合、加熱コイル106は、第1接触式センサー開口202を回避するように巻回される。なお、接触式センサー502、および非接触式センサー501とは、互いの位置が干渉しないように取り付けられる。
【0048】
(変形例5)
図16は、変形例5に係る誘導加熱調理器1Eにおける内部の構成を示す模式図である。また、図16では、接触式センサー502を主に示し、非接触式センサー501についての図示は省略している。図16に示すように、接触式センサー502を制御箱20に設ける場合も、接触式センサー502をトッププレート3の加熱エリア4の中央に対応する部分以外の場所に設けてもよい。
【0049】
(変形例6)
図17は、変形例6に係る誘導加熱調理器1Fにおける内部の構成を示す模式図である。また、図17では、非接触式センサー501を主に示し、接触式センサー502についての図示は省略している。図17に示すように、誘導加熱調理器1Fは、その型式等によっては、誘導加熱ユニット10の下方にダクト21が設けられることがある。ダクト21は、内部にファン19によって送られた空気が通る風路が形成されている。図17では、ファン19によって生じた空気の流れを破線矢印で示している。誘導加熱調理器1Fがこのような構成である場合、非接触式センサー501は、保持部材104ではなく、ダクト21に設けるようにしてもよい。非接触式センサー501は、非接触式センサー501が有するネジ穴(図示せず)と、ダクト21の上面に設けられた非接触式センサー取付部21aに形成されたネジ穴(図示せず)とが取付ネジ21bによって締められることで、ダクト21に固定される。この場合も、非接触式センサー501は、全体が基板102および保持部材104よりも下方に位置している。このため、誘導加熱調理器1Fは、非接触式センサー501による計測結果の精度の低下を抑制することができる。なお、非接触式センサー501だけではなく、接触式センサー502をダクト21に設けるようにしてもよい。
【0050】
以上が実施の形態およびその変形例の説明であるが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形又は組み合わせることが可能である。例えば、非接触式センサー501および接触式センサー502の一方のみを設けるようにしてもよい。また、非接触式センサー501または接触式センサー502の一方または両方を複数設けるようにしてもよい。さらに、変形例2、3、および6で示した非接触式センサー501の取り付け位置の変更と、変形例1、4、および5で示した接触式センサー502の取り付け位置の変更との両方を同時に行うようにしてもよい。
【0051】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0052】
(付記1)
被加熱物が載置されるトッププレートと、
絶縁性を有する基板と、
前記基板上に導体が巻回されて形成され、前記被加熱物を加熱する加熱コイルと、
前記被加熱物の温度を計測する温度計測装置と、を備え、
前記温度計測装置の少なくとも一部は、前記基板よりも下方に位置している
誘導加熱調理器。
(付記2)
前記基板には、前記温度計測装置に対向する位置に開口が形成され、
前記温度計測装置は非接触式であり、
前記温度計測装置の全体が前記基板よりも下方に位置している
付記1に記載の誘導加熱調理器。
(付記3)
前記基板には、前記温度計測装置が挿通される開口が形成され、
前記温度計測装置は接触式であり、
前記温度計測装置は、
計測結果を通信するための信号線が接続された接続部を有し、
前記接続部は、前記基板よりも下方に位置している
付記1または2に記載の誘導加熱調理器。
(付記4)
前記基板を保持する保持部材を更に有し、
前記温度計測装置は、前記保持部材に設けられている
付記1~3の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
(付記5)
前記基板に電力を供給するインバーター基板と、
前記インバーター基板を収納する制御箱と、を更に有し、
前記温度計測装置は、前記制御箱に設けられている
付記1~4の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
(付記6)
前記基板に電力を供給するインバーター基板と、
前記インバーター基板に送風するファンと、
前記ファンによって送られた空気が流通するダクトと、を更に有し、
前記温度計測装置は、前記ダクトに設けられている
付記1~5の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
(付記7)
前記基板に電力を供給するインバーター基板を更に有し、
前記温度計測装置は、前記インバーター基板に設けられている
付記2に記載の誘導加熱調理器。
(付記8)
前記加熱コイルは前記開口を回避して巻回されている
付記1~7の何れか1つに記載の誘導加熱調理器。
【符号の説明】
【0053】
1、1A~1F 誘導加熱調理器、2 本体ケース、3 トッププレート、4 加熱エリア、5 グリル調理器、5a グリル庫、6 グリル扉、7 操作表示パネル、8 吸気口、9 排気口、10 誘導加熱ユニット、11 スペーサー、12 リード線、13 バネ、14 フィルター基板、15 インバーター基板、16 電源コード、17 スイッチング素子、18 ヒートシンク、19 ファン、20 制御箱、20a 接触式センサー取付部、20b 非接触式センサー取付部、20c 取付ネジ、20d 開口、21 ダクト、21a 非接触式センサー取付部、21b 取付ネジ、30 制御装置、101 防磁部材、102 基板、103 フェライト、104 保持部材、104a 非接触式センサー取付部、104b 取付ネジ、105 固定ネジ、106 加熱コイル、106a 内端コイル接続部、106b 外端コイル接続部、106c パターン線、107a 内端接続端子、107b 外端接続端子、201 第1非接触式センサー開口、202 第1接触式センサー開口、401 第2非接触式センサー開口、402 第2接触式センサー開口、403 非接触式センサー取付部、404a 内端開口、404b 外端開口、501 非接触式センサー、501a ケース、501b センサー部、501c 非接触式センサー信号線、502 接触式センサー、502a 接触式センサー信号線、502b 接続部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17