(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178588
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241218BHJP
G06V 10/75 20220101ALI20241218BHJP
【FI】
G06T7/00 300F
G06V10/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096839
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川上 崇穂
(72)【発明者】
【氏名】則竹 真吾
(72)【発明者】
【氏名】村上 亮
(72)【発明者】
【氏名】柳川 涼
(72)【発明者】
【氏名】桑島 豊
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA12
5L096CA24
5L096EA14
5L096EA15
5L096GA06
5L096GA51
5L096HA01
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】領域同士のペアが成立しないペア漏れを低減する画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、第1図面データを第1図面データの一頁分の画像を表す第1領域から複数の第1部分領域に分割し、第2図面データを第2図面データの一頁分の画像を表す第2領域から複数の第2部分領域に分割し、第1部分領域が有する第1特徴点の第1特徴量と第2部分領域が有する第2特徴点の第2特徴量を抽出し、第1特徴点及び第2特徴点並びに機械学習を用いた特徴点マッチング手法により、第1特徴量と第2特徴量を比較し、比較結果により第1部分領域と第2部分領域のペアの成否を識別し、ペア成立の場合、第1部分領域と第2部分領域の差分を検出し、ペア不成立、かつ、ペア不成立の第1部分領域の第1特徴量と第2部分領域の第2特徴量の割合が閾値以上の場合、ペア不成立の第1部分領域への第2部分領域の移動操作を許容する、処理を実行する制御部を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1図面データを前記第1図面データの一頁分の画像を表す第1領域から複数の第1部分領域に分割し、第2図面データを前記第2図面データの一頁分の画像を表す第2領域から複数の第2部分領域に分割する処理と、
前記複数の第1部分領域それぞれが有する第1特徴点の第1特徴量と前記複数の第2部分領域それぞれが有する第2特徴点の第2特徴量を抽出する処理と、
前記第1特徴点と、前記第2特徴点と、機械学習を用いた所定の特徴点マッチング手法とに基づいて、前記第1特徴量と前記第2特徴量とをそれぞれ比較する処理と、
前記第1特徴量と前記第2特徴量との比較結果に基づいて、前記第1部分領域と前記第2部分領域のペアが成立するか否かを識別する処理と、
前記ペアが成立する場合、前記第1部分領域と前記第2部分領域との差分を検出する処理と、
前記ペアが成立せず、かつ、前記ペアが成立しない前記第1部分領域の前記第1特徴量と前記第2部分領域の前記第2特徴量との割合が閾値割合以上である場合、前記ペアが成立しない前記第1部分領域への前記第2部分領域の移動操作を許容する処理と、
を実行する制御部を有する画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
差分検出対象の2つの図面データの各頁の画像間の類似度をそれぞれ算出し、類似度に基づいて差分検出を行う頁の組を特定し、頁の組が特定された2つの図面データの差分検出を行う技術が知られている。また、1つの頁内で差分検出を行いたい領域が指定された場合に、指定された領域毎に領域同士の差分検出を行う技術も知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、領域同士の差分検出を行う場合、各領域が有する複数の成分同士の類似度を用いて差分検出を行う場合がある。複数の成分は、例えば画素値の平均や画素値のヒストグラムなどである。
【0005】
しかしながら、例えば領域同士の位置が大きく離れている場合、一方の領域に対する他方の領域が差分検出対象として検出されない可能性がある。この場合、領域同士のペアが成立しないペア漏れが発生する。ペア漏れが発生すると、領域同士の差分検出を行うことができないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明では、領域同士のペアが成立しないペア漏れを低減する画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、第1図面データを前記第1図面データの一頁分の画像を表す第1領域から複数の第1部分領域に分割し、第2図面データを前記第2図面データの一頁分の画像を表す第2領域から複数の第2部分領域に分割する処理と、前記複数の第1部分領域それぞれが有する第1特徴点の第1特徴量と前記複数の第2部分領域それぞれが有する第2特徴点の第2特徴量を抽出する処理と、前記第1特徴点と、前記第2特徴点と、機械学習を用いた所定の特徴点マッチング手法とに基づいて、前記第1特徴量と前記第2特徴量とをそれぞれ比較する処理と、前記第1特徴量と前記第2特徴量との比較結果に基づいて、前記第1部分領域と前記第2部分領域のペアが成立するか否かを識別する処理と、前記ペアが成立する場合、前記第1部分領域と前記第2部分領域との差分を検出する処理と、前記ペアが成立せず、かつ、前記ペアが成立しない前記第1部分領域の前記第1特徴量と前記第2部分領域の前記第2特徴量との割合が閾値割合以上である場合、前記ペアが成立しない前記第1部分領域への前記第2部分領域の移動操作を許容する処理と、を実行する制御部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、領域同士のペアが成立しないペア漏れを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】(a)は第1媒体データの一例である。(b)は第2媒体データの一例である。(c)は移動操作の一例である。(d)は位置ずれの一例である。(e)は位置合わせの一例である。(f)は差異画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0011】
まず、画像処理装置100の機能構成について説明する。
図1に示すように、画像処理装置100は記憶部110と制御部120と入力部130と出力部140とを備えている。なお、
図1では画像処理装置100の機能の要部が示されている。
【0012】
記憶部110は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)といったメモリと、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)といったストレージとによって実現することができる。制御部120はCPU(Central Processing Unit)といったプロセッサによって実現することができる。
【0013】
入力部130は例えばUSB(Universal Serial Bus)ポートといった入力I/F(インタフェース)によって実現することができる。入力部130には入力装置11が接続される。入力装置11としては例えばキーボードやマウス、タッチパネルなどがある。出力部140は例えばディスプレイポートといった出力I/Fによって実現することができる。出力部140には表示装置12が接続される。表示装置12としては例えば液晶ディスプレイなどがある。記憶部110、制御部120、入力部130、及び出力部140は互いに接続されている。すなわち、画像処理装置100は様々なハードウェアが接続されたコンピュータによって実現することができる。
【0014】
記憶部110には所定のプログラムが制御部120によって一時的に格納される。格納された所定のプログラムを制御部120が実行することにより、制御部120は画像処理装置100が有する各種の機能を実現し、また、後述する各種の処理を実行する。なお、所定のプログラムは後述するフローチャートに応じたものとすればよい。
【0015】
ここで、記憶部110は、第1媒体記憶部111、第2媒体記憶部112、及び表示図面記憶部113を含んでいる。第1媒体記憶部111、第2媒体記憶部112、及び表示図面記憶部113の少なくとも1つを画像処理装置100と異なる情報処理装置(不図示)に設けてもよい。この場合、画像処理装置100が情報処理装置にアクセスし、第1媒体記憶部111や第2媒体記憶部112等の記憶内容を参照してもよい。
【0016】
第1媒体記憶部111は第1媒体データを記憶する。第1媒体データは情報伝達媒体のデータファイル又は電子ファイルである。情報伝達媒体は、例えば報告書や指示書といった文書を含んでいる。本実施形態では、
図3(a)に示すように、第1媒体データ50は複数のページで作成された文書であるが、単一のページで作成された文書であってもよい。第1媒体データ50が複数のページで作成された文書である場合、各文書はそれぞれ図面データ51,52を含んでいる。図面データ51,52は例えば完成品や部品の設計図などである。図面データ51,52の形状は互いに相違する。図面データ51,52の色は互いに異なってもよいし、同じであってもよい。本実施形態では、図面データ51,52の色は互いに相違する。
【0017】
第2媒体記憶部112は第2媒体データを記憶する。第2媒体データも、第1媒体データ50と同様に、情報伝達媒体のデータファイル又は電子ファイルである。本実施形態では、
図3(b)に示すように、第2媒体データ60も複数のページで作成された文書であるが、単一のページで作成された文書であってもよい。第2媒体データ60のページ数は第1媒体データ50のページ数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2媒体データ60が複数のページで作成された文書である場合、各文書は図面データ61,62を含んでいる。図面データ61,62は例えば完成品や部品の設計図などを含んでいる。図面データ61,62の形状は互いに相違する。図面データ61,62の形状は図面データ51,52とも相違する。図面データ61,62の色は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施例では、図面データ61,62の色は互いに同じであり、かつ、図面データ51の色とも同じである。
【0018】
なお、上述した第1媒体データ50は、入力装置11に対する操作に基づいて、第1媒体記憶部111に格納される。第2媒体データ60も同様に第2媒体記憶部112に格納される。本実施形態では、第1媒体データ50は第2媒体データ60に対する比較元を表し、第2媒体データ60は第1媒体データ50に対する比較先又は比較対象を表している。したがって、以下では、図面データ51,52を比較元としてのベース図面51,52と呼び、図面データ61,62を比較先又は比較対象としての新規図面61,62と呼ぶ。
【0019】
表示図面記憶部113は表示装置12に表示する図面の画像を記憶する。詳細は後述するが、表示図面記憶部113は、上述したベース図面51に相当するベース図面画像とこのベース図面画像に対応する新規図面61,62のいずれか一方に相当する新規図面画像とを重ね合わせ、差異に相当する部分(すなわち差分)を異なる色で表現した図面の画像を記憶する。また、表示図面記憶部113は、上述したベース図面52に相当するベース図面画像とこのベース図面画像に対応する新規図面61,62のいずれか他方に相当する新規図面画像とを重ね合わせ、差異に相当する部分を異なる色で表現した図面の画像も記憶する。なお、ベース図面画像は第1図面データの一例であり、新規図面画像は第2図面データの一例である。ベース図面画像及び新規図面画像はいずれも画像データである。
【0020】
図1に戻り、制御部120は、画像生成部121、画像処理部122、及び表示部123を含んでいる。
【0021】
画像生成部121は第1媒体記憶部111から第1媒体データ50を取得し、第1媒体データ50を画像化する。すなわち、画像生成部121は取得した第1媒体データ50から第1媒体データ50を表す第1媒体画像を生成する。第1媒体データ50が複数のページで作成された文書であれば、第1媒体画像も複数のページ画像を含んでいる。第1媒体画像に含まれる複数のページ画像は上述したベース図面画像を含んでいる。
【0022】
同様に、画像生成部121は第2媒体記憶部112から第2媒体データ60を取得し、第2媒体データ60を画像化する。すなわち、画像生成部121は取得した第2媒体データ60から第2媒体データ60を表す第2媒体画像を生成する。第2媒体データ60が複数のページで作成された文書であれば、第2媒体画像も複数のページ画像を含んでいる。第2媒体画像に含まれる複数のページ画像は上述した新規図面画像を含んでいる。
【0023】
画像処理部122は第1媒体画像及び第2媒体画像、並びにベース図面画像及び新規図面画像に対し様々な画像処理を実行する。画像処理部122の詳細は後述するが、例えば、画像処理部122は第1媒体画像に含まれる複数のページ画像と第2媒体画像に含まれる複数のページ画像とを対比し、互いに類似するページ画像を特定する。また、画像処理部122は、ページ画像を表す領域を複数の単位部分領域(以下、単に部分領域という)に分割し、機械学習を用いた公知の特徴点マッチング手法に基づいて、互いに対応する部分領域を特定する。
【0024】
例えば、
図3(a)に示すように、画像処理部122は、第1媒体画像に含まれるページ画像全体を表す領域をページ単位で複数の部分領域71,72などに分割する。また、
図3(b)に示すように、画像処理部122は、第2媒体画像に含まれるページ画像全体を表す領域をページ単位で複数の部分領域81,82などに分割する。部分領域の形状は矩形であってもよいし、矩形以外の形状(例えば円形など)であってもよい。また、互いに対応する部分領域の数は同じであってもよいし、異なっていてもよい。その他、画像処理部122は、ベース図面画像及び新規図面画像のそれぞれをモノクローム化(具体的にはモノクロ2値化)して、ベース図面画像及び新規図面画像のそれぞれに対し異なる色を付与する。
【0025】
なお、公知の特徴点マッチング手法としては、例えば、以下の文献1,2などを参考にすることができる。
文献1:P. F. Alcantarilla, A. Bartoli, and A. J. Davison. “KAZE features”, ECCV, (2012), pp.214?227.
文献2:P. F, Alcantarilla, J. Nuevo, A.Bartoli, “Fast Explicit Diffusion for Accelerated Features in Nonlinear Scale Spaces”, BMVC, (2013), pp.13.1-13.11.
【0026】
表示部123は表示図面記憶部113が記憶する図面の画像を取得し、取得した図面を表示装置12に表示する。上述したように、表示図面記憶部113は、例えばベース図面画像と新規図面画像の差異に相当する部分を異なる色で表現した図面の画像を記憶する。このため、表示部123はこの図面を取得して表示する。
【0027】
次に、制御部120が実行する処理について説明する。
【0028】
まず、
図2に示すように、画像生成部121は媒体データを画像化する(ステップS1)。より詳しくは、画像生成部121は第1媒体記憶部111から第1媒体データ50を取得し、第1媒体画像を生成する。また、画像生成部121は第2媒体記憶部112から第2媒体データ60を取得し、第2媒体画像を生成する。
【0029】
媒体データを画像化すると、画像処理部122は類似ページを特定する(ステップS2)。具体的には、画像処理部122は第1媒体画像に含まれる複数のページ画像と第2媒体画像に含まれるページ画像とをページ画像ごとに対比してページ画像同士の類似度を算出する。類似度を算出すると、画像処理部122は最高の類似度が算出されるページ画像同士を類似ページとして特定する。これにより、類似ページが一意に特定される。
【0030】
本実施形態であれば、例えば、文字「
図1」を含むページ画像同士が類似ページとして特定される(
図3(a)及び(b)参照)。また、文字「
図2」を含むページ画像と文字「
図Z」を含むページ画像が類似ページとして特定される(
図3(a)及び(b)参照)。
【0031】
類似ページを特定すると、画像処理部122は一領域を部分領域に分割する(ステップS3)。すなわち、画像処理部122は類似ページとして特定された2つのページ画像のそれぞれをページ画像全体に相当する一領域から複数の部分領域に分割する。領域分割を実行すると、類似ページとして特定された2つのページ画像間において、画像処理部122はマッチング処理を実行する(ステップS4)。マッチング処理は、抽出、比較、識別といった様々な処理を含み、上述した特徴点マッチング手法を用いて、一方のページ画像に含まれる部分領域と他方のページ画像に含まれる部分領域のペアを決定する処理である。なお、マッチング処理の詳細については後述する。
【0032】
マッチング処理を実行し終えると、画像処理部122は部分領域のペアが成立したか否かを判断する(ステップS5)。ペアが成立していない場合(ステップS5:NO)、画像処理部122は操作許容制御を実行する(ステップS6)。操作許容制御は、ペアが成立しない一方の部分領域への他方の部分領域の移動操作を許容する処理である。本実施形態では、画像処理部122は、ペアが成立しない一方の部分領域の特徴量と他方の部分領域の特徴量との割合が閾値割合以上である場合、操作許容制御を実行する。
【0033】
操作許容制御を実行した場合、例えば画像処理部122は所定のメッセージを表示装置12に表示してもよい。所定のメッセージは、例えば一方の部分領域への他方の部分領域の移動操作が許容された旨を含んでいる。新旧の図面を確認する担当者がこの所定のメッセージに気付くことにより、一方の部分領域への他方の部分領域の移動操作が実施されると想定される。
【0034】
ステップS6の処理が終了すると、画像処理部122は移動操作を検出したか否かを判断する(ステップS7)。移動操作は、
図3(c)に示すように、例えば表示装置12の画面上でポインタ(具体的にはマウスポインタ)又は手指91で部分領域82を指定(例えばクリック又はタップなど)し、指定した状態で部分領域82を移動(例えばドラッグなど)する操作である。移動操作を検出しなかった場合(ステップS7:NO)、
図2に示すように、画像処理部122は処理を終了する。
【0035】
一方、移動操作を検出した場合(ステップS7:YES)、画像処理部122は移動量を算出する(ステップS8)。例えば、画像処理部122は部分領域82の移動操作に基づく部分領域82の移動前の画面内水平位置と移動後の画面内水平位置との差分を水平移動量として算出する。また、画像処理部122は部分領域82の移動操作に基づく部分領域82の画面内移動前の垂直位置と移動後の画面内垂直位置との差分を垂直移動量として算出する。
【0036】
ステップS8の処理が終了すると、画像処理部122は水平移動量と垂直移動量とに基づいて、移動後の部分領域82を表示装置12に描画し(ステップS9)、移動操作が確定したか否かを判断する(ステップS10)。例えば部分領域82の指定が解除されるまで、画像処理部122は移動操作が確定していないと判断し(ステップS10:NO)、ステップS8,S9の処理を繰り返す。部分領域82の指定が解除されると、画像処理部122は移動操作が確定したと判断する(ステップS10:YES)。
【0037】
移動操作が確定した場合、移動操作が上述した担当者の手作業であることにより、
図3(d)に示すように、ベース図面52と部分領域82に含まれる新規図面61との間には位置ずれが発生することがある。すなわち、担当者がベース図面52と新規図面61との位置合わせを試みても、手作業であることにより、位置合わせの精度が低いことがある。
【0038】
このため、移動操作が確定した場合、画像処理部122は位置合わせを実行する(ステップS11)。例えば、画像処理部122は、位置合わせとして、1ピクセル単位で部分領域82を上下左右の少なくとも1つの方向に移動させ、ベース図面52と新規図面61が最も重なる位置に部分領域82の位置を調整する。これにより、
図3(e)に示すように、ベース図面52と新規図面61の位置が整合する。
【0039】
ステップS11の処理が完了すると、画像処理部122は部分領域同士の差分を検出する(ステップS12)。例えば、画像処理部122はベース図面52をモノクローム化して、緑色を単独で付与する。緑色は光の3原色の1つであり、RGB形式の256階調で分類された明るさの色表現において、(R,G,B)=(0,255,0)で表すことができる。256階調で分類された明るさにおいて、数値データ「255」は最も明るい明るさを表している。この処理により、ベース図面52を緑色で表現することができる。
【0040】
次に、画像処理部122は新規図面61をモノクローム化して、赤色を単独で付与する。赤色も光の3原色の1つであり、RGB形式の色表現において、(R,G,B)=(255,0,0)で表すことができる。この処理により、新規図面61を赤色で表現することができる。なお、新規図面61に緑色を付与し、ベース図面52に赤色を付与してもよい。
【0041】
この処理が終了すると、画像処理部122はベース図面52と新規図面61を青色の下地に重ね合わせる。青色も光の3原色の1つであり、RGB形式の色表現において、(R,G,B)=(0,0,255)で表すことができる。ベース図面52と新規図面61を青色の下地に重ね合わせると、(R,G,B)=(255,255,255)となるため、白色を表現することができる。
【0042】
このように、白色で表現された背景の中で緑色のベース図面52だけの部分は、(R,G,B)=(255,255,255)-(0,255,0)=(255,0,255)となるため、ピンク色を含むマゼンタ色で表現することができる。また、白色で表現された背景の中で赤色の新規図面61だけの部分は、(R,G,B)=(255,255,255)-(255,0,0)=(0,255,255)となるため、水色を含むシアン色で表現することができる。さらに、白色で表現された背景の中で緑色のベース図面52と赤色の新規図面61の重畳部分は、(R,G,B)=(255,255,255)-(0,255,0)-(255,0,0)=(0,0,255)となるため、青色で表現することができる。このように、画像処理部122は部分領域同士の差分を検出することができる。
【0043】
このような処理が終了すると、画像処理部122は当該図面の画像を表示図面記憶部113に格納する。図面の画像が表示図面記憶部113に格納されると、表示部123は図面の画像を表示装置12に表示し(ステップS13)、処理を終了する。これにより、
図3(f)に示すように、ベース図面52と新規図面61が重畳し、部分的に異なる色で表現された図面の画像が表示装置12に出現する。
【0044】
例えば、
図3(f)に示すように、ベース図面52と、新規図面61との差異は、異なる色の差異画像P1,P2で表示装置12に出現する。この際、ベース図面52の一部である差異画像P1はマゼンタ色で表示され、新規図面61の一部である差異画像P2はシアン色で表示される。そして、ベース図面52と新規図面61の重畳部分である重畳画像P3は青色で表示される。
【0045】
なお、ステップS4のマッチング処理によって、ペアが成立した場合(ステップS5:YES)、画像処理部122は位置合わせを実行する(ステップS14)。ステップS14の処理は基本的にステップS11の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。ステップS14の処理が終了すると、画像処理部122はステップS12,S13の処理を実行して、処理を終了する。
【0046】
このように、本実施形態に係る画像処理装置100は、光の3原色を利用した色の差分に基づいて、ベース図面52と新規図面61の差異を検出することができる。このため、光の3原色を利用した色の差分に依存しないデータ処理を実施する場合に比べて、データ処理の処理量を抑えることができる。また、表示装置12に出現する図面の画像により、新旧の図面を確認する担当者は容易に図面の差異を判別することができる。
【0047】
また、部分領域同士の位置が大きく離れていることで、部分領域同士のペアが成立しないペア漏れが発生しても、一方の部分領域への他方の部分領域の移動が許容されている。このため、担当者は移動操作により部分領域同士の位置の位置合わせを行うことができ、位置合わせの精度が低い場合には、画像処理装置100が位置合わせを支援することができる。これにより、部分領域同士のペアが成立しないペア漏れの発生を低減することができる。
【0048】
次に、上述したマッチング処理の詳細について説明する。ステップS3の処理が完了すると、画像処理部122はマッチング処理を開始する。なお、後述する第1比較処理と第2比較処理の処理順序は変更してもよい。
【0049】
まず、画像処理部122は特徴量を抽出する。より詳しくは、画像処理部122は比較元の複数の部分領域それぞれの特徴量と比較先の複数の部分領域それぞれの特徴量とをそれぞれ第1特徴量及び第2特徴量として抽出する。例えば、比較元の部分領域のいずれかが複数の点(例えば画素や、複数の画素を要素として含む局所領域又は微小領域など)A,Xなどを有していれば、画像処理部122は点A,Xなどが有する第1特徴量を抽出する。また、比較先の部分領域のいずれかが複数の点B,C,Yなどを有している場合、画像処理部122は点B,C,Yなどが有する第2特徴量を抽出する。
【0050】
なお、点A,Xなどはいずれも複数の成分(例えば明度、彩度、輝度、画素値(又はRGB値)の平均、画素値の分散、画素値のヒストグラムなど)を第1特徴量として有している。また、点B,C,Yなども同様に複数の成分を第2特徴量として有している。したがって、点A,Xを第1特徴点と呼んでもよく、点B,C,Yを第2特徴点と呼んでもよい。例えば、点Xは成分x1として明度を有し、成分x2として彩度を有し、・・・、成分xnとして画素値のヒストグラムを有している。点A,B,C,Yについては点Xと基本的に同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
次に、画像処理部122は第1比較処理として距離同士を比較する。より詳しくは、まず、画像処理部122は第1特徴量のいずれかと第1特徴量のいずれかに最も近い第2特徴量との第1距離を算出する。次に、画像処理部122は第1特徴量のいずれかと第1特徴量のいずれかに次に近い第2特徴量との第2距離を算出する。そして、画像処理部122は第1距離と第2距離とを比較する。
【0052】
例えば、画像処理部122は第1距離として点A,B間の距離L(A,B)を算出し、第2距離として点A,C間の距離L(A,C)を算出する。ここで、画像処理部122は、以下の算出式により、例えば距離L(X,Y)を算出することができる。同様に、画像処理部122は、この算出式により、距離L(A,B)や距離L(A,C)なども算出することができる。距離L(X,Y)により、画像処理部122は点Xの特徴量と点Yの特徴量の類似度を判断することができる。同様に、画像処理部122は、距離L(A,B)や距離L(A,C)により、点Aの特徴量と点Bの特徴量の類似度や、点Aの特徴量と点Cの特徴量の類似度を判断することができる。
<算出式>
距離L(X,Y)={(x1-y1)2+(x2-y2)2+・・・+(xn-yn)2}}0.5
【0053】
距離L(A,B)と距離L(A,C)を算出すると、画像処理部122は、部分領域の要素の特異な特徴量を持つ点ペアの数を使用して、ペアを決定する部分領域の候補(以下、ペア候補という)を選定する。具体的には、画像処理部122は部分領域内の点の特徴量がマッチングした点ペアの数が最大となる部分領域同士をペア候補として選定する。画像処理部122は、2点間の距離Lが他の2点間の距離Lに比べて最小となる場合に、特徴量がマッチングしたと判断する。
【0054】
なお、特異な特徴量を持つ点ペアは、例えば点Aと点Aのペア候補となる最小距離の点Bとの距離L(A,B)と、点Aと点Aのペア候補となる点Bの次に最小距離となる点Cとの距離L(A,C)とを比較する以下の不等式を満たすことが要求される。比較元の部分領域の点Aと比較先の部分領域の点Bの距離L(A,B)が最短であれば、点Aと点Bの特徴量が酷似する。このため、画像処理部122は特徴量がマッチングしたと判断することができる。所定値には、例えば0.5や0.6など、第2距離を短くする1.0未満の正の数値を閾値として設定することができる。
<不等式>
距離L(A,B)<所定値×距離L(A,C)
【0055】
以上により、表1に示すように、画像処理部122は、ペアが成立する複数の部分領域(表1においてエリアと記載)#1~#5のペア候補を選定することができる。
【0056】
【0057】
例えば、ベース図面の部分領域#3に対応する部分領域の候補には新規図面の部分領域#2及び部分領域#3の候補が該当する。ここで、ベース図面の部分領域#3の点と新規図面の部分領域#2の点の特徴量がマッチングした点ペアの数は80個である。一方、ベース図面の部分領域#3の点と新規図面の部分領域#3の点の特徴量がマッチングした点ペアの数は40個である。このため、画像処理部122は、点ペアの数が多いベース図面の部分領域#3と新規図面の部分領域#2とを部分領域のペア候補として選定する。
【0058】
次に、画像処理部122は第2比較処理として距離総和と閾値距離を比較する。例えば、画像処理部122は距離Lが短い順に数個から十数個(例えば5個や10個、15個など少なくとも2個以上)の点ペアを選択し、選択した点ペアの距離Lの総和である距離総和と第1閾値距離を比較する。そして、画像処理部122は距離総和が第1閾値距離未満であることにより、ペア候補を選定する。第1閾値距離としては、例えば閾値距離「300」や閾値距離「500」といった数百の数値が設定される。
【0059】
一方、画像処理部122は選択した点ペアの距離Lの距離総和をその個数で割った平均距離が第2閾値距離未満であることにより、ペア候補を選定してもよい。ここで、第2閾値距離として例えば閾値距離「30」や閾値距離「50」といった数十の数値が設定された場合、表2に示すように、画像処理部122は、対応する複数の部分領域(表2においてエリアと記載)#1~#5のペア候補を選定することができる。例えば、ベース図面の部分領域#3に対応する部分領域の候補には新規図面の部分領域#2及び部分領域#3の候補が該当する。
【0060】
【0061】
ここで、ベース図面の部分領域#3の点と新規図面の部分領域#2の点の距離Lは平均値「10」である。一方、ベース図面の部分領域#3の点と新規図面の部分領域#3の点の距離Lは平均値「13」である。このため、画像処理部122は、距離Lの平均距離が短いベース図面の部分領域#3と新規図面の部分領域#2とを部分領域のペア候補として選定する。このように、第2比較処理では、画像処理部122は、部分領域の要素の特徴量の距離の短さを使用して、ペアを決定する部分領域のペア候補を選定する。
【0062】
このような処理が終了すると、画像処理部122は、選定した各ペア候補に基づき、部分領域同士のペアが成立するか否かを識別し、最終的に比較元の部分領域と比較先の部分領域のペアを決定する。したがって、表1及び表2に示すように、画像処理部122は、部分領域が成立するペアとして、例えばベース図面の部分領域#1と新規図面の部分領域#1のペアを決定する。
【0063】
なお、表1に示すように、画像処理部122は、ベース図面の部分領域#5と新規図面の部分領域#5をペア候補として選定するが、表2に示すように、ベース図面の部分領域#5と新規図面の部分領域#5をペア候補の選定から除外する。これは、ベース図面の部分領域#5と新規図面の部分領域#5は距離Lの平均距離が第2閾値距離を超えているためである。ベース図面の部分領域#5と新規図面の部分領域#5の位置が大きく離れていることにより、画像処理部122はペア候補の選定から除外してもよい。このような場合、画像処理部122は、ベース図面から削除され、新規図面に追加されたと判断してもよい。
【0064】
以上説明したように、マッチング処理により、画像処理部122は、部分領域同士のペアが成立するか否かを識別又は判別し、ペアが成立しない部分領域については、所定のメッセージにより、担当者に部分領域に対する移動操作を促す。これにより、部分領域同士のペアが成立しないペア漏れの発生を低減することができる。なお、図面の部分領域を一例として説明したが、画像処理部122は、文字についても図面と同様に部分領域を認定し、ペアが成立するか否かを判断してもよい。
【0065】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
50 第1媒体データ
51,52 ベース図面
60 第2媒体データ
61,62 新規図面
71,72,81,82 部分領域
100 画像処理装置
120 制御部