(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017859
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20240201BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120779
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 あかり
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB312
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC552
4C083AC692
4C083AC732
4C083AC792
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD152
4C083AD282
4C083BB21
4C083CC36
4C083DD06
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】染毛力を向上できる毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】本発明の毛髪化粧料組成物は、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する含窒素五員環化合物、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する飽和の含窒素六員環化合物、イミダゾール又はその誘導体、ピラゾール又はその誘導体、ピリジン又はその誘導体、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の複素環化合物(A)、並びにニトロ染料、HC染料、及び塩基性染料から選ばれる少なくとも一種の染料(B)を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する含窒素五員環化合物、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する飽和の含窒素六員環化合物、イミダゾール又はその誘導体、ピラゾール又はその誘導体、ピリジン又はその誘導体、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の複素環化合物(A)、並びにニトロ染料、HC染料、及び塩基性染料から選ばれる少なくとも一種の染料(B)を含有する毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記複素環化合物(A)は、ピロール、ピロールの誘導体、ピロリジン、ピロリジンの誘導体、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペリジンの誘導体、ヒドロキシピリジン、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の複素環化合物である請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記染料(B)は、カチオン性染料である請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
前記複素環化合物(A)の含有量に対する前記染料(B)の含有量の質量比(B/A)は、0.05以上150以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の複素環化合物を配合したことにより染毛力を向上させた毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪化粧料組成物として直接染料を含有する毛髪化粧料組成物が知られている。直接染料は、毛髪のキューティクルからコルテックスのごく浅い部分に染料をイオン結合等により発色させる。そのため、毛髪へのダメージを酸化染毛剤に比べて抑制することができる。
【0003】
従来より、特許文献1に開示される直接染料を含有する毛髪化粧料組成物が知られている。特許文献1は、塩基性染料等の染料、アルギニン等の塩基性アミノ酸、カチオン界面活性剤、増粘剤、油剤、pH調整剤、湿潤剤を含有するヘアカラー剤組成物について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、毛髪化粧料組成物に用いられる直接染料は、染毛力が弱く、色落ちが早いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、染料としてニトロ染料、HC染料、又は塩基性染料を配合する毛髪化粧料組成物において、所定の複素環化合物を配合することにより、染毛力を向上できることを見出したことに基づくものである。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤も含めた剤型中における数値である。
【0007】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の毛髪化粧料組成物では、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する含窒素五員環化合物、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する飽和の含窒素六員環化合物、イミダゾール又はその誘導体、ピラゾール又はその誘導体、ピリジン又はその誘導体、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の複素環化合物(A)、並びにニトロ染料、HC染料、及び塩基性染料から選ばれる少なくとも一種の染料(B)を含有することを要旨とする。
【0008】
態様2は、態様1に記載の毛髪化粧料組成物において、前記複素環化合物(A)は、ピロール、ピロールの誘導体、ピロリジン、ピロリジンの誘導体、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペリジンの誘導体、ヒドロキシピリジン、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の複素環化合物である。
【0009】
態様3は、態様1又は2に記載の毛髪化粧料組成物において、前記染料(B)は、カチオン性染料である。
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の毛髪化粧料組成物において、前記複素環化合物(A)の含有量に対する前記染料(B)の含有量の質量比(B/A)は、0.05以上150以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、染料としてニトロ染料、HC染料、又は塩基性染料を配合する毛髪化粧料組成物において、染毛力を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の毛髪化粧料組成物を具体化した一実施形態について説明する。本実施形態の毛髪化粧料組成物は、下記に示される複素環化合物(A)及び染料(B)を含有する。
【0012】
(複素環化合物(A))
複素環化合物(A)は、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する含窒素五員環化合物、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する飽和の含窒素六員環化合物、イミダゾール又はその誘導体、ピラゾール又はその誘導体、ピリジン又はその誘導体、及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種であり、毛髪化粧料組成物として適用可能な化合物が使用される。
【0013】
ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する含窒素五員環化合物を形成する五員環としては、飽和、不飽和、芳香族のいずれであってもよい。含窒素五員環化合物は、単環化合物であっても、多環化合物のいずれもあってもよいが、単環化合物が好ましい。
【0014】
ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する含窒素五員環化合物としては、例えばピロール、ピロリジン、ピロリン、それらの誘導体、それらの塩等が挙げられる。誘導体としては、ピロール骨格、ピロリジン骨格、又はピロリン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、ピロール、ピロリジン、ピロリン、又はそれらの化合物とベンゼン環とが一辺を共有する多環化合物において、ハロゲン基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、アミノ基、オキソ基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。
【0015】
ピロール又はその誘導体の具体例としては、例えば2H-ピロール、1H-ピロール、1-メチルピロール、インドール、トリプトファン等が挙げられる。
ピロリジン又はその誘導体の具体例としては、例えばピロリジン、プロリン、ヒドロキシプロリン、インドリン、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、ピログルタミン酸等が挙げられる。
【0016】
ピロリン又はその誘導体の具体例としては、例えば1-ピロリン、2-ピロリン、3-ピロリン、2-アセチルピロリン、ピロリンカルボン酸等が挙げられる。
ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する飽和の含窒素六員環化合物としては、単環化合物であっても、多環化合物のいずれもあってもよいが、単環化合物が好ましい。
【0017】
ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する飽和の含窒素六員環化合物としては、例えばピペリジン、その誘導体等が挙げられる。ピペリジンの誘導体としては、ピペリジン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、ピペリジン、又はピペリジンとベンゼン環とが一辺を共有する多環化合物に、ハロゲン基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、アミノ基、オキソ基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。
【0018】
ピペリジン又はその誘導体の具体例としては、例えばピペリジン、ピペリジン-2-カルボン酸、ピペリジン-3-カルボン酸、ピペリジン-4-カルボン酸等のピペリジンカルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン等が挙げられる。
【0019】
イミダゾールの誘導体としては、イミダゾール、又はイミダゾールとベンゼン環とが一辺を共有する多環化合物に、ハロゲン基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、オキソ基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。イミダゾールの誘導体の具体例としては、例えばベンゾイミダゾール、プリン等が挙げられる。
【0020】
ピラゾールの誘導体としては、ピラゾール、又はピラゾールとベンゼン環とが一辺を共有する多環化合物に、ハロゲン基、カルボキシル基、水酸基、オキソ基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。ピラゾールの誘導体の具体例としては、例えばベンズピラゾール等が挙げられる。
【0021】
ピリジンの誘導体としては、ピリジン、又はピリジンとベンゼン環とが一辺を共有する多環化合物に、ハロゲン基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、オキソ基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。ピリジン誘導体の具体例としては、例えば2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン等のヒドロキシピリジン、ピリドキシン、ピリドキサノール、ピリドキサミン、クロロピリジン、ブロモピリジン、ビピリジン、ピコリン、トリゴネリン、ナイアシン等が挙げられる。
【0022】
これらの中で、染毛力をより向上できる観点から、ピロール、ピロールの誘導体、ピロリジン、ピロリジンの誘導体、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペリジンの誘導体、ヒドロキシピリジン、それらの塩が好ましく、ピロール、プロリン、それらの塩がより好ましい。また、地肌・水回り等への汚れ防止効果に優れ、染毛力をより向上できる観点から、ピロリジン、ピロリジンの誘導体、それらの塩がより好ましく、プロリン、その塩がより好ましい。
【0023】
これらの複素環化合物(A)は一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
毛髪化粧料組成物中における複素環化合物(A)の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。複素環化合物(A)の含有量が0.005質量%以上の場合には、染毛力をより向上できる。また、特に、ピロリジン、ピロリジンの誘導体、それらの塩については、地肌・水回り等への汚れ防止効果をより向上できる。一方、複素環化合物(A)の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。複素環化合物(A)の含有量が15質量%以下の場合には、染毛力をより向上できる。また、地肌・水回り等への汚れをより少なくできる。
【0024】
さらに複素環化合物(A)がプロリン又はその塩の場合、毛髪化粧料組成物中においてプロリン又はその塩の上限は、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。プロリン又はその塩の含有量が、6質量%以下の場合、濃染効果、色持ち向上等の染毛力をより向上できる。
【0025】
(染料(B))
染料(B)として、ニトロ染料、HC染料、塩基性染料が用いられる。
ニトロ染料の具体例は、例えばN‘N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-パラフェニレンジアミン、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロー4-ニトロフェノール、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、それらの塩等が挙げられる。
【0026】
HC染料の具体例としては、例えばHC Blue No.2、HC Blue No.4、HC Blue No.5、H C Blue No.6、HC Blue No.8、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.14、HC Blue No.15、HC Blue No.16、HC Brown No.1、HC Brown No.2、HC Green No.1、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Orange No.5、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.8、HC Red No.9、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.7、HC Yellow No.8、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等が挙げられる。
【0027】
塩基性染料の具体例は、例えば赤色213号、赤色214号、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 75、Basic Blue 99、Basic Blue 124、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Brown 1、Basic Brown 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 2、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet 11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等が挙げられる。
【0028】
これらの中で、染毛力をより向上できる観点から、塩基性染料、HC Blue No.15、HC Blue No.16等のカチオン性染料が好ましい。HC Blue No.15は、pKa値よりカチオン性染料に含めている。
【0029】
これらの染料(B)は一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
毛髪化粧料組成物中における染料(B)の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。染料(B)の含有量が0.001質量%以上の場合には、染毛力をより向上できる。一方、染料(B)の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。染料(B)の含有量が5.5質量%以下の場合には、毛髪化粧料組成物中における染料の溶解性をより向上させることができる。また、地肌・水回り等への汚れをより少なくできる。
【0030】
毛髪化粧料組成物中における複素環化合物(A)の含有量に対する染料(B)の含有量の質量比(B/A)の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。かかる質量比(B/A)が0.05以上の場合、染毛力をより向上できる。かかる複素環化合物(A)の含有量に対する染料(B)の含有量の質量比(B/A)の上限は、適宜設定されるが、好ましくは150以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは10以下である。かかる質量比(B/A)が150以下の場合、染毛力を向上できる。また、地肌・水回り等への汚れ防止効果をより向上できる。
【0031】
毛髪化粧料組成物中における複素環化合物(A)の含有量に対するカチオン性染料の含有量の質量比(カチオン性染料/A)の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上である。かかる質量比(カチオン性染料/A)が0.01以上の場合、染毛力をより向上できる。かかる複素環化合物(A)の含有量に対するカチオン性染料の含有量の質量比(カチオン性染料/A)の上限は、適宜設定されるが、好ましくは20以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは1.5以下である。かかる質量比(カチオン性染料/A)が20以下の場合、染毛力を向上できる。また、地肌・水回り等への汚れ防止効果をより向上できる。
【0032】
本発明の効果を阻害しない範囲内において、他の直接染料を配合することを妨げるものではない。他の直接染料としては、酸性染料、天然染料、分散染料等が挙げられる。
酸性染料の具体例としては、例えば赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、黒色401号、アシッドブルー1、アシッドブルー3、アシッドブルー62、アシッドブラック52、アシッドブラウン13、アシッドグリーン50、アシッドオレンジ6、アシッドレッド14、アシッドレッド35、アシッドレッド73、アシッドレッド184、ブリリアントブラック1等が挙げられる。
【0033】
天然染料の具体例としては、例えばクチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素、ベニバナ色素、ヘナ等が挙げられる。
【0034】
分散染料の具体例としては、例えばDisperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等が挙げられる。
【0035】
その他、直接染料としては、1-アミノ-4-メチルアントラキノン、1,4-ジアミノアントラキノン、及びそれらの塩、並びに「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた直接染料を用いてもよい。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
(芳香族アルコール)
毛髪化粧料組成物は、染毛力を向上させる観点から必要により芳香族アルコールを配合してもよい。芳香族アルコールの具体例としては、例えばベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、フェニルジグリコール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、p-アニシルアルコール等が挙げられる。これらの芳香族アルコールは、一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で染毛力により優れる観点からベンジルアルコール、フェノキシエタノールが好ましい。
【0037】
毛髪化粧料組成物中における芳香族アルコールの含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。芳香族アルコールの含有量が0.1質量%以上の場合には、染毛力をより向上できる。一方、芳香族アルコールの含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。芳香族アルコールの含有量が30質量%以下の場合には、地肌・水回り等への汚れ防止効果を向上できる。
【0038】
(pH調整剤)
pH調整剤は、毛髪化粧料組成物のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤としては、アルカリ剤の他、無機酸、有機酸、それらの塩等が挙げられる。アルカリ剤の具体例としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
【0039】
無機酸の具体例としては、例えばリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。さらにリン酸の具体例としては、例えばオルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が含まれる。有機酸の具体例としては、例えばピロリドンカルボン酸、クエン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、レブリン酸、コハク酸、フマル酸、シュウ酸、マレイン酸、グルコン酸、マンデル酸、グルクロン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、安息香酸等が挙げられる。塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらのpH調整剤は、一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
毛髪化粧料組成物中におけるpH調整剤の含有量は、毛髪化粧料組成物のpHが2以上10以下の範囲となる量が好ましく、pH3以上8以下の範囲となる量がより好ましく、pH4以上7以下の範囲となる量がさらに好ましい。毛髪化粧料組成物のpHが2以上の場合、染毛力を向上できる。pHが10以下の場合、地肌・水回り等への汚れ防止効果を向上できる。なお、毛髪化粧料組成物のpHは、毛髪化粧料組成物を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
【0041】
(その他成分)
毛髪化粧料組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば上記以外の可溶化剤、上記以外の浸透促進剤、水溶性ポリマー、油性成分、界面活性剤、キレート化剤、糖、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
【0042】
上記以外の可溶化剤は、例えば、毛髪化粧料組成物の性状を調整するために配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。また、染料の染毛力をより向上させる観点から、有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤の具体例としては、例えば1価の低級アルコール、多価アルコールとしてのグリコール類及びグリセリン類、並びにジエチレングリコール低級アルキルエーテルが挙げられる。1価の低級アルコールの具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。グリコール類の具体例としては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリン類の具体例としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。ジエチレングリコール低級アルキルエーテルの具体例としては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、毛髪化粧料組成物中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく使用される。溶媒として水が用いられる場合、毛髪化粧料組成物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0043】
上記以外の浸透促進剤は、染料の染毛力を向上させるために配合してもよい。浸透促進剤としては、例えば炭素数4~8の一価アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、環状アルコール等が挙げられる。炭素数4~8の一価アルコールの具体例としては、例えばn-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール等が挙げられる。エチレングリコールアルキルエーテルの具体例としては、例えばエチレングリコールモノn-ブチルエーテル等が挙げられる。環状アルコールの具体例としては、例えばシクロヘキサノール等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
水溶性高分子化合物は、毛髪化粧料組成物に適度な粘度を与える。そのため、毛髪化粧料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性高分子化合物を含有してもよい。水溶性高分子化合物としては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物系高分子が挙げられる。天然の水溶性高分子化合物の具体例としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン等が挙げられる。
【0045】
半合成の水溶性高分子化合物の具体例としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。
【0046】
合成の水溶性高分子化合物の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、合成高分子の具体例としては、例えばイタコン酸とポリオキシエチレン(以下、「POE」という)アルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0047】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、毛髪化粧料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
【0048】
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、ラノリン、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油等が挙げられる。ロウの具体例としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリンロウ等が挙げられる。高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0049】
炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0050】
エステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2-エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
【0051】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0052】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として毛髪化粧料組成物を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。そのため、毛髪化粧料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0053】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、それらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、POEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。スルホコハク酸エステルの具体例として、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。
【0054】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘントリモニウムクロリド等が挙げられる。
【0055】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)等が挙げられる。
【0056】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0057】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0058】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(炭素数8~16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0059】
キレート化剤は、染毛力をより向上させる観点から配合してもよい。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
糖の具体例としては、例えばグルコース、ガラクトース等の単糖、マルトース、スクロース、フルクトース、トレハロース等の二糖、糖アルコール等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸、亜硫酸塩等が挙げられる。
【0061】
毛髪化粧料組成物の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、乳化液等が挙げられる。また、保存安定性の向上の観点から、毛髪化粧料組成物を固体状成分と液状成分とに分けて保存し、使用直前にそれらを混合するように構成してもよい。
【0062】
本実施形態の毛髪化粧料組成物の効果について説明する。
(1)本実施形態の毛髪化粧料組成物は、ヘテロ原子として1個の窒素原子を有する含窒素五員環化合物等の複素環化合物(A)、並びにニトロ染料、HC染料、及び塩基性染料から選ばれる少なくとも一種の染料(B)を配合して構成した。したがって、染料としてニトロ染料、HC染料、又は塩基性染料を配合する毛髪化粧料組成物において、染毛力、特に濃染効果、色持ち効果を向上できる。
【0063】
(2)複素環化合物(A)として、ピロリジン、ピロリジンの誘導体、又はそれらの塩が用いられる場合、地肌・水回り等への汚れ防止効果に優れるとともに、染毛力を向上できる。
【0064】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態において、毛髪化粧料組成物を構成する各成分を全て配合する1剤式として構成した。しかしながら、各成分を分離して複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するように構成してもよい。
【0065】
・上記実施形態の毛髪化粧料組成物は、直接染料として染料(B)を含有する半永久染毛料組成物として構成された。半永久染毛料組成物の製品形態は、特に限定されず、例えばヘアマニキュア、カラートリートメント、カラーシャンプー、カラーリンス等であってもよい。なお、ヘアマニキュアは、一度の染毛作業により、所望する色調に染め上げる染毛料である。一方、カラートリートメント、カラーシャンプー及びカラーリンスは、日常的なヘアケア等により毛髪に適用されることで、染毛処理が繰り返される結果、所望する色調へ徐々に染め上げる徐染性の染毛料である。
【0066】
・上記実施形態において、毛髪化粧料組成物が適用される分野は特に限定されない。白髪染めとして適用しても、ファッションカラーの分野において適用してもよい。
【実施例0067】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
表1~4に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の毛髪化粧料組成物を調製した。かかる毛髪化粧料組成物を用いて染毛力として濃染効果、色持ちの効果を評価した。また、表3,4に示される各例の毛髪化粧料組成物を用いて汚れ防止効果として皮膚汚れ低減効果及び風呂汚れ低減効果を評価した。それらの評価結果を表1~4に示す。なお、表中における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。また、表中「成分」欄における(A),(B)の表記は、それぞれ本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。尚、表中「a」,「b」の表記は、本願請求項記載の各(A)(B)成分に対応する対比化合物を示す。「B成分/A成分の質量比」は、(A)成分の含有量の合計に対する(B)成分の含有量の合計の質量比を示す。「カチオン性染料/A成分の質量比」は、(A)成分の含有量の合計に対するカチオン性染料の含有量の合計の質量比を示す。また、毛髪化粧料組成物のpHは、毛髪化粧料組成物を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定した。なお、評価欄「-」は、評価を行っていない。
【0068】
(濃染効果)
各実施例及び各比較例に係る毛髪化粧料組成物1g程度を皿に取り分け、刷毛を用いて10cmの長さの白色毛束サンプル1gに塗布した。毛髪化粧料組成物が塗布された毛束サンプルを恒温槽にて30℃で10分間放置した後、水洗いした。その後、水洗後の毛束サンプルを温風で乾燥し、評価用毛束サンプルを得た。
【0069】
また、参照用毛束サンプルとして、各実施例及び各比較例に係る毛髪化粧料組成物において(A)成分(又は(a)成分)のみを除いた組成物を用いて、上記評価用毛束サンプルと同様に毛束サンプルを作製した。
【0070】
評価用毛束サンプルと参照用毛束サンプルとを、20名の専門のパネラーが目視で観察し、色の濃さに基づき濃染が生じているか否かを評価した。具体的には、以下の5段階で各パネラーが採点をした。
【0071】
5点:極めて濃染化している場合
4点:大きく濃染化している場合
3点:少し濃染化している場合
2点:ほとんど濃染化していない場合
1点:全く濃染化していない場合
20名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、平均点が4.6以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0072】
(色持ち向上効果)
濃染効果の評価の場合と同様に、各実施例及び各比較例に係る、評価用毛束サンプル及び参照用毛束サンプルを作製した。そして、市販のシャンプー、トリートメントを用いて常法に従い14回洗浄を行い、色持ち評価用毛束サンプル及び色持ち参照用毛束サンプルを作製した。色持ち評価用毛束サンプルと色持ち参照用毛束サンプルとを、20名の専門のパネラーが目視で観察し、色の濃さに基づき色持ち向上が生じているか否かを評価した。具体的には、以下の5段階で各パネラーが採点をした。
【0073】
5点:極めて色持ちしている場合
4点:大きく色持ちしている場合
3点:少し色持ちしている場合
2点:ほとんど色持ちしていない場合
1点:全く色持ちしていない場合
20名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、平均点が4.6以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0074】
(皮膚汚れ低減効果)
各実施例及び各比較例に係る毛髪化粧料組成物5gを、実験者の右掌に塗布し、10分間放置した後、水洗いした。また、参照用として各実施例及び各比較例に係る毛髪化粧料組成物において(A)成分(又は(a)成分)のみを除いた毛髪化粧料組成物を用いて、上記と同様に左掌を処理した。そして、両掌をパネラー20名が目視で観察し、皮膚汚れがどの程度生じているかを評価した。具体的には、以下の5段階で各パネラーが採点をした。
【0075】
5点:右掌が左掌に比べて全く汚れていない場合
4点:右掌が左掌に比べてほとんど汚れていない場合
3点:右掌が左掌に比べてあまり汚れていない場合
2点:右掌と左掌が同程度汚れている場合
1点:右掌が左掌に比べて汚れている場合
20名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、平均点が4.6以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0076】
(風呂汚れ低減効果)
各実施例及び各比較例に係る毛髪化粧料組成物1gを、風呂場のタイル(ポリエステル樹脂製)に塗布し、10分間放置した後、水洗いした。また、参照用として各実施例及び各比較例に係る毛髪化粧料組成物において(A)成分(又は(a)成分)のみを除いた毛髪化粧料組成物を用いて、上記と同様に処理した。そして、風呂場のタイルをパネラー20名が目視で観察し、汚れがどの程度生じているかを評価した。具体的には、以下の5段階で各パネラーが採点をした。
【0077】
5点:風呂汚れがかなり低減されている場合
4点:風呂汚れが低減されている場合
3点:風呂汚れがやや低減されている場合
2点:風呂汚れが同程度である場合
1点:風呂汚れが悪化している場合
20名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、平均点が4.6以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【表4】
表1~4に示されるように、各実施例は、濃染効果及び色持ち向上効果の評価が可以上の結果であることが確認された。
【0082】
表1に示されるように、プロリンの代わりにアスパラギン又はアンモニアを使用する比較例1,2の毛髪化粧料組成物は、実施例1に対して濃染効果及び色持ち向上効果は得られなかった。染料として酸性染料を使用する比較例3の毛髪化粧料組成物は、実施例1に対して濃染効果及び色持ち向上効果は得られなかった。
【0083】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。(イ)毛髪化粧料組成物の10質量%水溶液のpHは、4以上7以下である前記毛髪化粧料組成物。