(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178596
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】セメント・コンクリート系材料の資源循環システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241218BHJP
B28C 7/00 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
G06Q50/10
B28C7/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096854
(22)【出願日】2023-06-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発/CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの品質管理・固定量評価手法に関する技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森 泰一郎
【テーマコード(参考)】
4G056
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056AA25
4G056CA01
4G056CB19
4G056CD47
4G056CD48
4G056DA08
4G056DA09
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非エネルギー起源CO2排出量の削減に繋げることができるセメント・コンクリート系材料の資源循環システムを提供する。
【解決手段】各々がネットワーク100を構成し、セメント・コンクリート系材料生産に関するデータを管理するノードを備えるセメント・コンクリート系材料の資源循環システム1であって、少なくとも1つのノード10が、ネットワーク100に石灰石由来カルシウム量データ12を記録し、少なくとも1つのノード20が、ネットワーク100に廃棄物等由来カルシウム量データ22を記録し、少なくとも1つのノード30が、生産されたセメント・コンクリート系材料に付与されるセメント・コンクリート系材料データ32に、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22を紐づけ、紐付けられたセメント・コンクリート系材料データ32をネットワーク100に記録する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がネットワークを構成し、セメント・コンクリート系材料生産に関するデータを管理するノードを備えるセメント・コンクリート系材料の資源循環システムであって、
少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムの量を算出し、算出した石灰石由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記石灰石由来カルシウム量データを記録し、
少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムの量を算出し、算出した廃棄物等由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記廃棄物等由来カルシウム量データを記録し、
少なくとも1つの前記ノードが、生産されたセメント・コンクリート系材料に付与されるセメント・コンクリート系材料データに、前記石灰石由来カルシウム量データ及び前記廃棄物等由来カルシウム量データを紐づけ、紐付けられた前記セメント・コンクリート系材料データを前記ネットワークに記録する、セメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項2】
少なくとも1つの前記ノードが、前記生産されたセメント・コンクリート系材料の移動を把握し、前記ネットワークに追跡データを記録する、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ノードが、生産に利用されたカルシウムのうち、前記石灰石由来カルシウムの比率が98%以下であるセメント・コンクリート系材料を識別する、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項4】
前記セメント・コンクリート系材料は、セメント、モルタル及びコンクリートの少なくとも一種である、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項5】
前記石灰石由来カルシウムと前記廃棄物等由来カルシウムとの識別方法は、SEMによる粒子形状の観察、XRFによる微量元素の定量及びICP-OESによる微量元素の定量による分析結果から総合的に判断する、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項6】
前記ネットワークは、ブロックチェーンネットワークである、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項7】
少なくとも1つの前記ノードが、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを前記石灰石由来カルシウム量データに付加し、
少なくとも1つの前記ノードが、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを前記廃棄物等由来カルシウム量データに付加する、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント・コンクリート系材料の資源循環を管理するセメント・コンクリート系材料の資源循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味する。つまり、カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減、並びに、吸収作用の保全及び強化をする必要がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
セメント・コンクリート分野においては、石灰石を原料として高温焼成で生産されたポルトランドセメントを主製品としていることから、エネルギー起源CO2排出量に加えて製造時に非エネルギー起源CO2の排出量が多く、他分野の一般的なカーボンニュートラル化の方策に加えて、CCUS(炭素回収・有効利用・貯留)技術も必要となる(例えば、非特許文献2参照)。CCUS技術としては、セメント製造時の排ガスから回収したCO2とコンクリート廃棄物及びコンクリート製造の副産物等の廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウム(Ca)としてCaO成分をセメント製造における石灰石(主成分:CaCO3)の代替原料として利用する技術が期待されている。CCUS技術として、具体的には、セメント製造時の排ガスから回収したCO2をCa及びマグネシウム(Mg)等の資源と接触させて、化学的に安定なCaCO3及び炭酸マグネシウム(MgCO3)等の炭酸塩の資源に変換する炭酸塩化技術が有効である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】カーボンニュートラルとは-脱炭素ポータル-環境省、インターネット <URL:https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/>
【非特許文献2】野口貴文/カーボンニュートラルの時代に向けて-セメントへの期待、セメント・コンクリート,No.900,PP.4-9,2022
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石灰石の代替原料として、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを利用することで、天然の石灰石の使用量削減に伴う非エネルギー起源CO2排出量の削減が可能となる。しかしながら、利用されたCaが廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを基に製造されたものであるか否かを判別することは困難であることから、実際に、非エネルギー起源CO2排出量が削減しているか把握することは困難であった。
【0006】
つまり、非エネルギー起源CO2排出量が削減しているかを把握するためには、利用された石灰石が廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを基に製造されたものであるか否かの判別を明確にする必要がある。
そこで、本発明は、セメント、モルタル及びコンクリート等のセメント・コンクリート系材料を生産するために用いる資源の石灰石由来カルシウム量データ及び廃棄物等由来カルシウム量データを管理することで、利用されたCaが廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを基に製造されたものであるか否かを明確にし、セメント・コンクリート系材料の移動(生産から廃棄まで)における非エネルギー起源CO2排出量を把握することで、非エネルギー起源CO2排出量の削減に繋げることができるセメント・コンクリート系材料の資源循環システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意検討したところ、利用された石灰石が廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを基に製造されたものであるか否かの判別を明確にするために、セメント・コンクリート系材料を生産するために用いる資源の石灰石由来カルシウム量データ及び廃棄物等由来カルシウム量データをネットワークで管理することで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、以上の知見に基づき完成したものである。本発明は下記のとおりである。
【0008】
[1]各々がネットワークを構成し、セメント・コンクリート系材料生産に関するデータを管理するノードを備えるセメント・コンクリート系材料の資源循環システムであって、少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムの量を算出し、算出した石灰石由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記石灰石由来カルシウム量データを記録し、少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムの量を算出し、算出した廃棄物等由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記廃棄物等由来カルシウム量データを記録し、少なくとも1つの前記ノードが、生産されたセメント・コンクリート系材料に付与されるセメント・コンクリート系材料データに、前記石灰石由来カルシウム量データ及び前記廃棄物等由来カルシウム量データを紐づけ、紐付けられた前記セメント・コンクリート系材料データを前記ネットワークに記録する、セメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
[2]少なくとも1つの前記ノードが、前記生産されたセメント・コンクリート系材料の移動を把握し、前記ネットワークに追跡データを記録する、[1]に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
[3]少なくとも1つの前記ノードが、生産に利用されたカルシウムのうち、前記石灰石由来カルシウムの比率が98%以下であるセメント・コンクリート系材料を識別する、[1]又は[2]に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
[4]前記セメント・コンクリート系材料は、セメント、モルタル及びコンクリートの少なくとも一種である、[1]~[3]のいずれかに記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
[5]前記石灰石由来カルシウムと前記廃棄物等由来カルシウムとの識別方法は、SEMによる粒子形状の観察、XRFによる微量元素の定量及びICP-OESによる微量元素の定量による分析結果から総合的に判断する、[1]~[4]のいずれかに記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
[6]前記ネットワークは、ブロックチェーンネットワークである、[1]~[5]のいずれかに記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
[7]少なくとも1つの前記ノードが、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを前記石灰石由来カルシウム量データに付加し、少なくとも1つの前記ノードが、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを前記廃棄物等由来カルシウム量データに付加する、[1]~[6]のいずれかに記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セメント・コンクリート系材料を生産するために用いる資源の石灰石由来カルシウム量データ及び廃棄物等由来カルシウム量データを管理することで、利用されたCaが廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを基に製造されたものであるか否かを明確にし、セメント・コンクリート系材料の移動(生産から廃棄まで)における非エネルギー起源CO2排出量を把握することで、非エネルギー起源CO2排出量の削減に繋げることができるセメント・コンクリート系材料の資源循環システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るセメント・コンクリート系材料の資源循環システムの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係るセメント・コンクリート系材料の資源循環システム1は、
図1に示すように、各々がネットワーク100を構成し、セメント・コンクリート系材料生産に関するデータを管理するノード10,20,30,40,50,60を備える。本明細書におけるセメント・コンクリート系材料は、セメント、モルタル及びコンクリートの少なくとも一種である。
【0012】
本発明のネットワーク100は、情報通信ネットワーク上にあるノード同士を接続して、石灰石由来カルシウム量データ、廃棄物等由来カルシウム量データ及びセメント・コンクリート系材料データが暗号技術を用いて分散的に処理及び記録されている。ネットワーク100は、インターネット、イントラネット、クラウドネットワーク及びブロックチェーンネットワーク等の情報通信ネットワークであり、中でも、ブロックチェーンネットワークであることが好ましい。ネットワーク100が、ブロックチェーンネットワークであることで、電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持つ上記データを分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現することができる。ブロックチェーンネットワークとしては、コンソーシアム型ブロックチェーンを採用することが好ましいが、パブリック型ブロックチェーンなど他の形式であってもよい。
【0013】
セメント・コンクリート系材料の資源循環システム1のノードの数は、
図1では6台で示したが6台に限られず、5台以下であってもよく、7台以上であってもよい。セメント・コンクリート系材料の資源循環システム1におけるそれぞれのノードは、ネットワーク100を介して互いに通信可能に接続されている。
各ノードは、上記データを記憶可能な記憶部を備える。記憶部としては、例えば、ROM、RAM及びハードディスク等の記憶媒体を採用することができる。
各ノードは、記憶部に入力して記憶させる入力部を備える。入力部としては、情報処理装置のユーザインタフェースを採用することができ、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル及び音声入力装置等を採用することができる。
【0014】
ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード10が、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、石灰石を原料とする石灰石由来のCaの量を算出する。石灰石を原料とする石灰石由来のCaの量の算出方法は、後述する。
そして、ノード10は、算出した石灰石を原料とする石灰石由来のCaの量から、石灰石由来カルシウム量データ12を生成する。石灰石由来カルシウム量データ12は、セメント・コンクリート系材料に使用するカルシウムのうち、石灰石を原料とする石灰石由来のCaの量に関するデータである。
そして、ノード10は、ノード10に備える記憶部11に石灰石由来カルシウム量データ12を記録する。ネットワーク100を構成するノード10が備える記憶部11に石灰石由来カルシウム量データ12を記録することで、ネットワーク100に石灰石由来カルシウム量データ12を記録することと同義となる。
【0015】
ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード20が、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来のCaの量を算出する。廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来のCaの量の算出方法は、後述する。
そして、ノード20は、算出した廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来カルシウムの量から、廃棄物等由来カルシウム量データ22を生成する。廃棄物等由来カルシウム量データ22は、セメント・コンクリート系材料に使用するカルシウムのうち、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来のCaの量に関するデータである。
そして、ノード20は、ノード20に備える記憶部21に廃棄物等由来カルシウム量データ22を記録する。ネットワーク100を構成するノード20が備える記憶部21に廃棄物等由来カルシウム量データ22を記録することで、ネットワーク100に廃棄物等由来カルシウム量データ22を記録することと同義となる。
【0016】
以下に、石灰石を原料とする石灰石由来のCaの量、及び廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来のCaの量の算出方法の一例を示す。
まず、セメント・コンクリート系材料の炭酸化反応による二酸化炭素固定率(質量%)を算出する式(1)を示す。
CO2=0.7848(CaO-0.5603CaCO3-0.7005SO3)+1.092MgO+1.420Na2O+0.9344K2O…(1)
式(1)における各係数の導出プロセスを示す。
0.7848≒CO2(分子量44.01g/mol)÷CaO(分子量56.0774g/mol)
0.5603≒CaO(分子量56.08g/mol)÷CaCO3(分子量100.087g/mol)
0.7005≒CaO(分子量56.08g/mol)÷SO3(分子量80.06g/mol)
1.092≒CO2(分子量44.01g/mol)÷MgO(分子量40.3044g/mol)
1.420≒2×CO2(分子量44.01g/mol)÷Na2O(分子量61.979g/mol)
0.9344≒2×CO2(分子量44.01g/mol)÷K2O(分子量94.196g/mol)
次に、式(1)より導かれるセメント・コンクリート系材料中の炭酸カルシウム量(CaCO3量)を算出する式(2)を示す。
CaCO3量=1.785CaO-1.250SO3-2.274CO2+2.483MgO+3.229Na2O+2.126K2O…(2)
対象とするセメント・コンクリート系材料中の化学組成CaO、SO3MgO、Na2O、K2Oの各含有率(質量%)、及び、CO2含有率(質量%)を求める。なお、セメント・コンクリート系材料中の化学組成の各含有率(質量%)、及び、CO2含有率(質量%)は、それぞれ分析から求めるとよく、CO2含有率(質量%)に関しては、例えば対象物を過熱して完全に酸化させて放出されたガスの全炭素分析、又はCO2の赤外分析による計測法を用いて算出するとよい。対象とするセメント・コンクリート系材料中の化学組成の各含有率(質量%)、及び、CO2含有率(質量%)を式(2)に代入することで、セメント・コンクリート系材料中の炭酸カルシウム量(CaCO3量)を算出する。算出された炭酸カルシウム量(CaCO3量)が石灰石、及び廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来炭酸カルシウムの量に該当する。
次に、式(2)で算出したセメント・コンクリート系材料中の炭酸カルシウム量(CaCO3量)より、炭酸カルシウムに含まれる酸化カルシウム量(CaO量)を算出する式(3)を示す。
CaO量 in CaCO3=CaCO3量×CaO分子量(56.08g/mol)/CaCO3分子量(100.087g/mol)=CaCO3量×0.5604…(3)
そして、セメント・コンクリート系材料中の酸化カルシウムの含有率(質量%)から、炭酸カルシウム(CaCO3)及び石膏(CaSO4)に含まれる酸化カルシウム量(CaO量)を減じることで、セメント・コンクリート系材料中の正味の酸化カルシウム量(CaO量)を算出する。算出された正味の酸化カルシウム量(CaO量)が廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaO量に該当する。
【0017】
廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来カルシウムとしては、アセチレン副生消石灰などの副生消石灰、廃コンクリート塊、廃コンクリート塊から発生する微粉末、レディーミクストコンクリート工場及びコンクリート製品工場で発生するコンクリートスラッジ(脱水ケーキ)、焼却灰(石炭灰、木質バイオマス、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥焼却灰など)、及び鉄鋼スラグ(転炉スラグ、電気炉スラグなど)等が挙げられる。中でも他の廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来カルシウムに比べて不純物量が少ない副生消石灰が好ましい。
副生消石灰としては、カルシウムカーバイド法によるアセチレンガスの製造工程で副生される副生消石灰(アセチレンガス製造方法の違いで、湿式品と乾式品がある)、カルシウムカーバイド電気炉の湿式集塵工程で捕獲されるダスト中に含まれる副生消石灰といったアセチレン副生消石灰等が挙げられる。副生消石灰は、例えば、水酸化カルシウムが65~95%(好ましくは、70~90%)で、その他に、炭酸カルシウムを1~10%、酸化鉄を0.1~6.0%(好ましくは、0.1~3.0%)含む。これらの割合は蛍光X線測定、及び示差熱重量分析(TG-DTA)で求まる質量減量分(Ca(OH)2:405℃~515℃付近、CaCO3:650℃~765℃付近)にて確認することができる。レーザー回折・散乱法で測定する体積平均粒子径は、50~100μm程度である。さらに、JIS K 0068「化学製品の水分測定方法」中、乾燥減量法で測定される水分率は、10%以下であることが好ましい。また、CaS、A12S3、及びCaC2・CaSなどイオウ化合物を含んでもよいが、2%以下であることが好ましい。
【0018】
ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード30が、生産されたセメント・コンクリート系材料に付与されるセメント・コンクリート系材料データ32に、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22を紐づける。
そして、ノード30は、ノード30に備える記憶部31に、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22と紐付けられたセメント・コンクリート系材料データ32を記録する。ネットワーク100を構成するノード30が備える記憶部31に、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22と紐付けられたセメント・コンクリート系材料データ32を記録することで、ネットワーク100に、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22と紐付けられたセメント・コンクリート系材料データ32を記録することと同義となる。
【0019】
ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード40は、セメント・コンクリート系材料データ32を参照し、生産されたセメント・コンクリート系材料の移動を把握し、ネットワーク100に追跡データ(図示せず)を作成する。
そして、ノード40は、ノード40に備える記憶部41に追跡データを記録する。ネットワーク100を構成するノード40が備える記憶部41に追跡データを記録することで、ネットワーク100に追跡データを記録することと同義となる。
ネットワーク100に追跡データを記録することで、ネットワーク100にアクセスして追跡データを参照することによって、セメント・コンクリート系材料の移動(生産から廃棄まで)を把握することができ、セメント・コンクリート系材料のセメント・コンクリート系材料データ32に紐付けられた石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22によって、セメント・コンクリート系材料に利用された石灰石由来カルシウム量と廃棄物等由来カルシウム量の移動を把握することが可能となる。
【0020】
ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード50は、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22と紐付けられたセメント・コンクリート系材料データ32を参照することで、セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムにおける石灰石由来カルシウムの比率を算出し、比率算出データ(図示せず)を作成する。そして、ノード50は、比率算出データを参照し、石灰石由来カルシウムの比率が98%以下であるセメント・コンクリート系材料を識別し、石灰石由来カルシウムの比率が98%以下であるセメント・コンクリート系材料のセメント・コンクリート系材料データ32に優良比率である旨を記録する。
そして、ノード50は、ノード50に備える記憶部51に比率算出データを記録する。ネットワーク100を構成するノード50が備える記憶部51に比率算出データを記録することで、ネットワーク100に比率算出データを記録することと同義となる。
ノード50によって識別された石灰石由来カルシウムの比率が98%以下であるセメント・コンクリート系材料を使用することで、天然の石灰石の使用量削減に伴う非エネルギー起源CO2排出量の削減が可能となり、CO2排出量の削減に繋げることができる。ノード50によって識別された石灰石由来カルシウムの比率は、98%以下とすることで顕著なCO2排出量の削減の効果が得られるが、識別する閾値は98%に限られず、例えば、十分なCO2排出量の削減の効果が得られる96%としてもよく、94%としてもよい。
【0021】
ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード60は、セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムが石灰石由来カルシウム及び廃棄物等由来カルシウムのいずれかであるかを識別した原料識別データ(図示せず)を作成する。例えば、ノード60は、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22と紐付けられたセメント・コンクリート系材料データ32を参照することで、原料識別データを作成することができる。
また、ノード60は、セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムにおいて、石灰石由来カルシウム及び廃棄物等由来カルシウムの比率についても原料識別データに含めることができる。
そして、ノード60は、ノード60に備える記憶部61に原料識別データを記録する。ネットワーク100を構成するノード60が備える記憶部61に原料識別データを記録することで、ネットワーク100に原料識別データを記録することと同義となる。
セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムが石灰石由来カルシウム及び廃棄物等由来カルシウムのいずれかであるか識別する方法としては、セメント・コンクリート系材料データ32を参照する以外では、SEMによる粒子形状の観察、XRFによる微量元素の定量及びICP-OESによる微量元素の定量による分析結果等が挙げられる。セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムの識別は、SEMによる粒子形状の観察、XRFによる微量元素の定量及びICP-OESによる微量元素の定量による分析結果から総合的に判断することが好ましい。
【0022】
本実施形態に係るセメント・コンクリート系材料の資源循環システム1によれば、生産されたセメント・コンクリート系材料に付与されるセメント・コンクリート系材料データ32に、石灰石由来カルシウム量データ12及び廃棄物等由来カルシウム量データ22が紐づけられているので、セメント・コンクリート系材料データ32を参照することで、原料として利用された石灰石が廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを基に製造されたものであるか否か、及び、原料として使用された廃棄物等由来カルシウム量を明確にすることができる。
そして、本実施形態に係るセメント・コンクリート系材料の資源循環システム1によれば、セメント・コンクリート系材料を生産するために用いる資源の石灰石由来カルシウム量データ及び廃棄物等由来カルシウム量データを管理し、原料として利用された石灰石のうち廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを基に製造された石灰石が大半を占めるようにすることで、天然の石灰石の使用量削減に伴う非エネルギー起源CO2排出量の削減が可能となり、CO2排出量の削減に繋げることができる。
【0023】
[実施形態の変形例]
本実施形態に係るセメント・コンクリート系材料の資源循環システム1は、セメント・コンクリート系材料、及び、セメント・コンクリート系材料を生産するために用いる資源の所有権に関する所有権データを取り扱うノード及び記憶部(図示せず)をさらに備えてもよい。所有権データは、セメント・コンクリート系材料及び資源等の出所及び所在を示すデータであり、セメント・コンクリート系材料及び資源等の出所及び所在を管理するためのデータである。所有権データは、セメント・コンクリート系材料及び資源等の移動に伴って移動するようにネットワーク100に記録することで、セメント・コンクリート系材料及び資源等の現在の所在、並びに、出所及び過去の所在を管理することができる。所有権データを管理することで、セメント・コンクリート系材料に利用された石灰石由来カルシウム量と廃棄物等由来カルシウム量の移動も把握することが可能となる。
所有権データとして記録される所有者は、セメント・コンクリート系材料及び資源等を所有し得る製造業者及び輸出入業者、解体業者、リサイクル業者、コンサルタント会社、設計会社、建設業社、研究機関、セメント・コンクリート躯体の所有者、輸送業者、商社、代理店、卸業者・協同組合、等が挙げられ、特に限定されるものではない。所有権データとして記録される所有者は、2以上の所有者が存在する場合には、共有者として記録することが可能である。
【0024】
[その他の実施形態]
以上の説明では、非エネルギー起源CO2排出量の削減に主眼が置かれており、エネルギー起源CO2排出量については特に触れていないが、セメント・コンクリート系材料の資源循環システム1は、エネルギー起源CO2排出量のデータを含めるシステムとすることができる。セメント・コンクリート系材料の資源循環システム1が、エネルギー起源CO2排出量のデータを含めるシステムであることで、非エネルギー起源CO2排出量とエネルギー起源CO2排出量とを合算した合算CO2排出量を把握し、合算CO2排出量の削減に繋げることに寄与することができる。
【0025】
具体的には、ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード10が、石灰石を原料とする石灰石由来のCaを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを石灰石由来カルシウム量データ12に付加する。石灰石を原料とする石灰石由来のCaを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータとしては、石灰石由来のCaを製造するまでに排出したCO2排出量(第1のエネルギー起源CO2排出量)に関するデータと、石灰石由来のCaを用いてセメント・コンクリート系材料を製造するまでに排出したCO2排出量(第2のエネルギー起源CO2排出量)に関するデータとを含む。
第1のエネルギー起源CO2排出量は、例えば、原材料調達、製造、物流、販売等の石灰石由来のCaを入手するまでに排出されるCO2排出量の合計量である。第2のエネルギー起源CO2排出量は、例えば、燃料の燃焼、電気の使用等により石灰石由来のCaがセメント・コンクリート系材料となるまでに排出されるCO2排出量の合計量である。
【0026】
また、ネットワーク100を構成する少なくとも1つのノード20が、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを廃棄物等由来カルシウム量データ22に付加する。廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータとしては、廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを製造するまでに排出したCO2排出量(第3のエネルギー起源CO2排出量)に関するデータと、廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを用いてセメント・コンクリート系材料を製造するまでに排出したCO2排出量(第4のエネルギー起源CO2排出量)に関するデータとを含む。
第3のエネルギー起源CO2排出量は、例えば、原材料調達、製造、物流、販売等の廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaを入手するまでに排出されるCO2排出量の合計量である。第4のエネルギー起源CO2排出量は、例えば、燃料の燃焼、電気の使用等により廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたCaがセメント・コンクリート系材料となるまでに排出されるCO2排出量の合計量である。
【0027】
その他の実施形態に係るセメント・コンクリート系材料の資源循環システム1によれば、石灰石由来カルシウム量データ12には、石灰石を原料とする石灰石由来のCaを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを付加し、廃棄物等由来カルシウム量データ22には、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化された廃棄物等由来のCaを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータを付加することで、エネルギー起源CO2排出量を含めた合算CO2排出量を把握可能なセメント・コンクリート系材料の資源循環システムとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、セメント分野の資源循環において、循環するセメント・コンクリート系材料の資源の石灰石由来カルシウム量データ及び廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウム量データをネットワークで管理することで、セメントの移動(生産から廃棄まで)における非エネルギー起源CO2排出量を把握することで、非エネルギー起源CO2排出量を把握することが可能となり、CO2排出量の低減に繋げることができる。
また、本発明は、セメント分野の資源循環において、非エネルギー起源CO2排出量とエネルギー起源CO2排出量とを合算した合算CO2排出量を把握し、合算CO2排出量の削減に繋げることに寄与することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 セメント・コンクリート系材料の資源循環システム
10,20,30,40,50,60 ノード
11,21,31,41,51,61 記憶部
12 石灰石由来カルシウム量データ
22 廃棄物等由来カルシウム量データ
32 セメント・コンクリート系材料データ
100 ネットワーク
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がネットワークを構成し、セメント・コンクリート系材料生産に関するデータを管理するノードを備え、循環する前記セメント・コンクリート系材料の資源の石灰石由来カルシウム量データ及び廃棄物等由来カルシウム量データを前記ネットワークで管理するセメント・コンクリート系材料の資源循環システムであって、
少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムの量を算出し、算出した石灰石由来カルシウムの量から前記石灰石由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記石灰石由来カルシウム量データを記録し、
少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムの量を算出し、算出した前記廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムの量から前記廃棄物等由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記廃棄物等由来カルシウム量データを記録し、
少なくとも1つの前記ノードが、生産されたセメント・コンクリート系材料毎に前記石灰石由来カルシウム量データ及び前記廃棄物等由来カルシウム量データを紐付けることで得られるセメント・コンクリート系材料データを付与し、前記セメント・コンクリート系材料データを前記ネットワークに記録し、
前記石灰石由来カルシウム量データは、前記セメント・コンクリート系材料に使用するカルシウムのうち、前記石灰石由来のカルシウムの量に関するデータであり、
前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記石灰石由来カルシウム量データ、前記廃棄物等由来カルシウム量データ及び前記セメント・コンクリート系材料データを記録することで、前記ネットワークに前記石灰石由来カルシウム量データ、前記廃棄物等由来カルシウム量データ及び前記セメント・コンクリート系材料データを記録することと同義となり、
前記石灰石由来カルシウムの量及び前記廃棄物等由来カルシウム量を算出する方法は、まず、前記セメント・コンクリート系材料の炭酸化反応による二酸化炭素固定率(質量%)を算出する式(1)より導かれる式(2)に前記セメント・コンクリート系材料中の化学組成の各含有率(質量%)、及び、二酸化炭素含有率(質量%)を代入することで、前記セメント・コンクリート系材料中の炭酸カルシウム量を算出する。次に、前記セメント・コンクリート系材料中の前記炭酸カルシウム量を式(3)に代入することで、炭酸カルシウムに含まれる石灰石を原料とする前記石灰石由来カルシウムの量を算出する。そして、前記セメント・コンクリート系材料中の酸化カルシウムの全量から前記石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムの量を減じることで、前記セメント・コンクリート系材料中の前記廃棄物等由来カルシウム量を算出する、セメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
CO
2
=0.7848(CaO-0.5603CaCO
3
-0.7005SO
3
)+1.092MgO+1.420Na
2
O+0.9344K
2
O…(1)
CaCO
3
量=1.785CaO-1.250SO
3
-2.274CO
2
+2.483MgO+3.229Na
2
O+2.126K
2
O…(2)
CaO量 in CaCO
3
=CaCO
3
量×CaO分子量(56.08g/mol)/CaCO
3
分子量(100.087g/mol)=CaCO
3
量×0.5604…(3)
【請求項2】
少なくとも1つの前記ノードが、前記生産されたセメント・コンクリート系材料の生産から廃棄までの移動を示す追跡データを作成し、前記生産されたセメント・コンクリート系材料の移動を把握するために前記ネットワークに前記追跡データを記録する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記追跡データを記録することで、前記ネットワークに前記追跡データを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ノードが、前記石灰石由来カルシウム量データ及び前記廃棄物等由来カルシウム量データが紐づけられた前記セメント・コンクリート系材料データを参照することで、前記セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムにおける石灰石由来カルシウムの比率を算出し、算出した石灰石由来カルシウムの比率から比率算出データを作成し、前記比率算出データを参照することで、生産に利用されたカルシウムのうち、前記石灰石由来カルシウムの比率が98%以下である前記セメント・コンクリート系材料を識別する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記比率算出データを記録することで、前記ネットワークに前記比率算出データを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項4】
前記セメント・コンクリート系材料は、セメント、モルタル及びコンクリートの少なくとも一種である、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ノードが、前記セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムについて、SEMによる粒子形状の観察、XRFによる微量元素の定量及びICP-OESによる微量元素の定量による分析結果から総合的に判断して前記石灰石由来カルシウム及び前記廃棄物等由来カルシウムのいずれかであるか識別し、該識別結果に基づいて原料識別データを作成する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記原料識別データを記録することで、前記ネットワークに前記原料識別データを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項6】
前記ネットワークは、ブロックチェーンネットワークである、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項7】
少なくとも1つの前記ノードが、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータとして、前記石灰石由来カルシウムを入手するまでに排出される第1のエネルギー起源CO
2
排出量を算出して取得し、また、前記石灰石由来カルシウムが前記セメント・コンクリート系材料となるまでに排出される第2のエネルギー起源CO
2
排出量を算出して取得し、前記取得したエネルギー起源CO
2
排出量に関するデータから前記第1のエネルギー起源CO
2
排出量の合計量及び前記第2のエネルギー起源CO
2
排出量の合計量を前記石灰石由来カルシウム量データに付加し、
少なくとも1つの前記ノードが、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータとして、前記廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムを入手するまでに排出される第3のエネルギー起源CO
2
排出量を算出して取得し、また、前記廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムが前記セメント・コンクリート系材料となるまでに排出される第4のエネルギー起源CO
2
排出量を算出して取得し、前記取得したエネルギー起源CO
2
排出量に関するデータから前記第3のエネルギー起源CO
2
排出量の合計量及び前記第4のエネルギー起源CO
2
排出量の合計量を前記廃棄物等由来カルシウム量データに付加する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記エネルギー起源CO
2
排出量に関するデータを記録することで、前記ネットワークに前記エネルギー起源CO
2
排出量に関するデータを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がネットワークを構成し、セメント・コンクリート系材料生産に関するデータを管理するノードを備え、循環する前記セメント・コンクリート系材料の資源の石灰石由来カルシウム量データ及び廃棄物等由来カルシウム量データを前記ネットワークで管理するセメント・コンクリート系材料の資源循環システムであって、
少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムの量を算出し、算出した石灰石由来カルシウムの量から前記石灰石由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記石灰石由来カルシウム量データを記録し、
少なくとも1つの前記ノードが、セメント・コンクリート系材料生産に利用するカルシウムのうち、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムの量を算出し、算出した前記廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムの量から前記廃棄物等由来カルシウム量データを生成し、前記ネットワークに前記廃棄物等由来カルシウム量データを記録し、
少なくとも1つの前記ノードが、生産されたセメント・コンクリート系材料毎に前記石灰石由来カルシウム量データ及び前記廃棄物等由来カルシウム量データを紐付けることで得られるセメント・コンクリート系材料データを付与し、前記セメント・コンクリート系材料データを前記ネットワークに記録し、
前記石灰石由来カルシウム量データは、前記セメント・コンクリート系材料に使用するカルシウムのうち、前記石灰石由来のカルシウムの量に関するデータであり、
前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記石灰石由来カルシウム量データ、前記廃棄物等由来カルシウム量データ及び前記セメント・コンクリート系材料データを記録することで、前記ネットワークに前記石灰石由来カルシウム量データ、前記廃棄物等由来カルシウム量データ及び前記セメント・コンクリート系材料データを記録することと同義となり、
前記石灰石由来カルシウムの量及び前記廃棄物等由来カルシウム量を算出する方法は、まず、前記セメント・コンクリート系材料の炭酸化反応による二酸化炭素固定率(質量%)を算出する式(1)より導かれる式(2)に前記セメント・コンクリート系材料中の化学組成の各含有率(質量%)、及び、二酸化炭素含有率(質量%)を代入することで、前記セメント・コンクリート系材料中の炭酸カルシウム量を算出する。次に、前記セメント・コンクリート系材料中の前記炭酸カルシウム量を式(3)に代入することで、炭酸カルシウムに含まれる石灰石を原料とする前記石灰石由来カルシウムの量を算出する。そして、前記セメント・コンクリート系材料中の酸化カルシウムの全量から前記石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムの量を減じることで、前記セメント・コンクリート系材料中の前記廃棄物等由来カルシウム量を算出し、
前記ネットワークは、ブロックチェーンネットワークである、セメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
CO2=0.7848(CaO-0.5603CaCO3-0.7005SO3)+1.092MgO+1.420Na2O+0.9344K2O…(1)
CaCO3量=1.785CaO-1.250SO3-2.274CO2+2.483MgO+3.229Na2O+2.126K2O…(2)
CaO量 in CaCO3=CaCO3量×CaO分子量(56.08g/mol)/CaCO3分子量(100.087g/mol)=CaCO3量×0.5604…(3)
【請求項2】
少なくとも1つの前記ノードが、前記生産されたセメント・コンクリート系材料の生産から廃棄までの移動を示す追跡データを作成し、前記生産されたセメント・コンクリート系材料の移動を把握するために前記ネットワークに前記追跡データを記録する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記追跡データを記録することで、前記ネットワークに前記追跡データを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ノードが、前記石灰石由来カルシウム量データ及び前記廃棄物等由来カルシウム量データが紐づけられた前記セメント・コンクリート系材料データを参照することで、前記セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムにおける石灰石由来カルシウムの比率を算出し、算出した石灰石由来カルシウムの比率から比率算出データを作成し、前記比率算出データを参照することで、生産に利用されたカルシウムのうち、前記石灰石由来カルシウムの比率が98%以下である前記セメント・コンクリート系材料を識別する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記比率算出データを記録することで、前記ネットワークに前記比率算出データを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項4】
前記セメント・コンクリート系材料は、セメント、モルタル及びコンクリートの少なくとも一種である、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項5】
少なくとも1つの前記ノードが、前記セメント・コンクリート系材料の生産に利用されたカルシウムについて、SEMによる粒子形状の観察、XRFによる微量元素の定量及びICP-OESによる微量元素の定量による分析結果から総合的に判断して前記石灰石由来カルシウム及び前記廃棄物等由来カルシウムのいずれかであるか識別し、該識別結果に基づいて原料識別データを作成する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記原料識別データを記録することで、前記ネットワークに前記原料識別データを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。
【請求項6】
少なくとも1つの前記ノードが、石灰石を原料とする石灰石由来カルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータとして、前記石灰石由来カルシウムを入手するまでに排出される第1のエネルギー起源CO2排出量を算出して取得し、また、前記石灰石由来カルシウムが前記セメント・コンクリート系材料となるまでに排出される第2のエネルギー起源CO2排出量を算出して取得し、前記取得したエネルギー起源CO2排出量に関するデータから前記第1のエネルギー起源CO2排出量の合計量及び前記第2のエネルギー起源CO2排出量の合計量を前記石灰石由来カルシウム量データに付加し、
少なくとも1つの前記ノードが、廃棄物・副産物を原料とする廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムを利用する際のエネルギー起源CO2排出量に関するデータとして、前記廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムを入手するまでに排出される第3のエネルギー起源CO2排出量を算出して取得し、また、前記廃棄物等由来の既に脱炭酸化されたカルシウムが前記セメント・コンクリート系材料となるまでに排出される第4のエネルギー起源CO2排出量を算出して取得し、前記取得したエネルギー起源CO2排出量に関するデータから前記第3のエネルギー起源CO2排出量の合計量及び前記第4のエネルギー起源CO2排出量の合計量を前記廃棄物等由来カルシウム量データに付加する、
なお、前記ノードは、前記ノードに備える記憶部に前記エネルギー起源CO2排出量に関するデータを記録することで、前記ネットワークに前記エネルギー起源CO2排出量に関するデータを記録することと同義となる、請求項1に記載のセメント・コンクリート系材料の資源循環システム。