(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178599
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20241218BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B62D25/20 H
B62D21/15 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096859
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真康
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮永 啓世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB07
3D203BB24
3D203BB25
3D203CA26
3D203CA37
3D203CA67
(57)【要約】
【課題】パネルによる荷重吸収効率を向上させることができ、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与する車体構造を提供する。
【解決手段】車体構造は、上部パネル21及び下部パネル22と、車両前後方向に延在する複数の補強部材23,24,25と、を備える。複数の補強部材23,24,25は剛性変化領域43,53,63を有する。複数の補強部材23,24,25のうちのいずれかを構成する第1補強部材23の剛性変化領域43は、複数の補強部材23,24,25のうちのいずれかを構成する第2補強部材24,25の剛性変化領域53,63に対して長手方向において異なる位置に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両下部に設けられるパネルと、
前記パネルに設けられ、車両前後方向に延在する複数の補強部材と、
を備え、
前記複数の補強部材は剛性変化領域を有し、
前記複数の補強部材のうちのいずれかを構成する第1補強部材の剛性変化領域は、前記複数の補強部材のうちのいずれかを構成する第2補強部材の剛性変化領域に対して長手方向において異なる位置に設けられている、
ことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
前記パネルは、車幅方向の全体に渡って形成された脆弱部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記脆弱部は、車両前後方向において複数設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記複数の補強部材は、車幅方向中央を基準にして左右対称に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項5】
前記複数の補強部材は奇数個である、
ことを特徴とする請求項4に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて車体剛性に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。例えば、車体構造として、アッパフレームの先端部側に初期座屈を誘起するビード(以下、脆弱部ということがある)と、脆弱部からアッパフレームの後端部側に間隔をあけて複数のバルクヘッドが設けられたものが知られている。バルクヘッドは、アッパフレームに挟まれるように設けられている。この車体構造によれば、車両前方から衝撃荷重が入力した際に、アッパフレームを車両後方に圧潰させることにより衝撃荷重を吸収することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車体剛性において、従来の車体構造によれば、衝撃荷重が入力した際に、アッパフレームを車両後方に圧潰させるのみで衝撃荷重を吸収する。このため、この構成をフロアパネル(以下、パネルということがある)のような面積の広い部材に適用する場合、荷重吸収効率の向上について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、パネルによる荷重吸収効率を向上させることができ、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与する車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る車体構造は、車両下部(例えば、実施形態の後部荷室の後方下部13)に設けられるパネル(例えば、実施形態の上部パネル21、下部パネル22)と、前記パネルに設けられ、車両前後方向に延在する複数の補強部材(例えば、実施形態の複数の補強部材23,23A,23B,24,25)と、を備え、前記複数の補強部材は剛性変化領域(例えば、実施形態の複数の剛性変化領域43,43A,43B,53,63)を有し、前記複数の補強部材のうちのいずれかを構成する第1補強部材(例えば、実施形態の第1補強部材23,23A,23B)の剛性変化領域(例えば、実施形態の第1剛性変化領域43,43A,43B)は、前記複数の補強部材のうちのいずれかを構成する第2補強部材(例えば、実施形態の第2補強部材24、第3補強部材25)の剛性変化領域(例えば、実施形態の第2剛性変化領域53、第3剛性変化領域63)に対して長手方向において異なる位置に設けられている。
【0007】
パネルは、車両後方側に設けられる場合と、車両前方側に設けられる場合が考えられる。例えば、パネルが車両後方側に設けられる場合において、剛性変化領域を車両後方に有する第1補強部材が車幅方向中央に配置され、剛性変化領域を車両前方に有する第2補強部材が車幅方向左右側に配置される配例が考えられる。
【0008】
この配列において、車両後方から衝撃荷重が入力した場合、第1補強部材の剛性変化領域、及び第2補強部材の剛性変化領域が変形する。ここで、車幅方向中央に配置された第1補強部材の剛性変化領域が第2補強部材の剛性変化領域に対して車両後方において異なる位置に設けられている。このため、パネルを車幅方向左右外側へ変形させる荷重がパネルに伝達される。
また、入力した衝撃荷重により、パネルを車両前後方向に変形させる荷重がパネルに伝達される。
したがって、車両後方から衝撃荷重が入力した場合に、パネルを車両前後方向と車幅方向左右外側とに変形させる荷重をパネルに伝達させることができる。すなわち、面積の広いパネルの全域に荷重を分配(伝達)できる。
【0009】
また、例えば、パネルが車両後方側に設けられる場合において、剛性変化領域を車両後方に有する第1補強部材が車幅方向左右側に配置され、剛性変化領域を車両前方に有する第2補強部材が車幅方向中央に配置される配例が考えられる。
【0010】
この配列において、車両後方から衝撃荷重が入力した場合、第1補強部材の剛性変化領域、及び第2補強部材の剛性変化領域が変形する。ここで、車幅方向左右側に配置された第1補強部材の剛性変化領域が第2補強部材の剛性変化領域に対して車両後方において異なる位置に設けられている。このため、パネルを車幅方向左右内側に変形させる荷重がパネルに伝達される。
また、入力した衝撃荷重により、パネルを車両前後方向に変形させる荷重がパネルに伝達される。
したがって、車両後方から衝撃荷重が入力した場合に、パネルを車両前後方向と車幅方向左右内側とに変形させる荷重をパネルに伝達させることができる。すなわち、面積の広いパネルの全域に荷重を分配できる。
【0011】
このように、パネルの全域に荷重を分配させることにより、分配された荷重によりパネルの変形を誘起することができる。このため、面積の広いパネルの全域を好適に変形させることができ、パネルによる荷重吸収効率を向上させることができる。延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0012】
さらに、例えば、パネルが車両前方側に設けられる場合、衝撃荷重が車両前方から入力される。この場合においても、車両前方から衝撃荷重が入力した場合に、パネルが車両後方側に設けられる場合と同様に、パネルによる荷重吸収効率を向上させることができる。
【0013】
(2)上記態様において、前記パネルは、車幅方向の全体に渡って形成された脆弱部(例えば、実施形態の第1脆弱部27、第2脆弱部31)が設けられていてもよい。
【0014】
このように構成することで、衝撃荷重が車両前後方向から入力した場合に、脆弱部によりパネルにおける車両前後方向への変形を促進できる。よって、パネルに伝達された荷重をパネルの全域に分配できる。これにより、分配された荷重によりパネルの全域を好適に変形させることができる。
【0015】
(3)上記態様において、前記脆弱部は、車両前後方向において複数設けられていてもよい。
【0016】
このように構成することで、衝撃荷重が車両前後方向から入力した場合に、複数の脆弱部によりパネルにおける車両前後方向への変形を一層促進できる。このため、パネルの変形に従って各々の剛性変化領域に荷重を好適に伝達させることができる。よって、伝達された荷重によりパネルの全域を一層好適に変形させることができる。
【0017】
(4)上記態様において、前記複数の補強部材は、車幅方向中央を基準にして左右対称に設けられていてもよい。
【0018】
このように構成することで、各々の剛性変化領域に荷重が伝達された際に、剛性変化領域の変形により、パネルを車両前後方向及び車幅方向に変形させることができる。このため、パネルの全域を好適に変形させて、パネル全体に対してパネルの荷重吸収効率を均等に向上させることができる。これにより、車両前方や車両後方から入力した衝撃荷重をパネルで十分に吸収して車室内部への影響を抑制できる。
【0019】
(5)上記態様において、前記複数の補強部材は奇数個であってもよい。
【0020】
このように構成することで、複数の補強部材のうち1つの補強部材を車幅方向中央に設けることができる。このため、車幅方向中央に設けられた補強部材に荷重が伝達された際に、車幅方向中央における剛性変化領域の変形により、車幅方向左右外側へ変形させる荷重をパネルに一層好適に分配できる。よって、分配された荷重により面積の広いパネルの全域を一層好適に変形させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、パネルによる荷重吸収効率を向上させることができ、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態における車体構造を車両後方左側方からみた斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態における車体構造の後フロア部を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態における車体構造のリアフロア構造から上部パネルを分解した平面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿って破断した断面図である。
【
図5】
図2のV-V線に沿って破断した断面図である。
【
図6】
図2のVI-VI線に沿って破断した断面図である。
【
図7】本発明の実施形態におけるパネル構造に車両後方から入力した衝撃荷重の伝達を説明する概念図である。
【
図8】本発明の実施形態における変形例のパネル構造に車両後方から入力した衝撃荷重の伝達を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る車体構造を説明する。図面において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方を示す。
【0024】
図1は、車体構造を車両後方左側方からみた斜視図である。
図2は、車体構造の後フロア部を示す平面図である。
<車体構造>
図1、
図2に示すように、車体構造Veは、車両後部において後部荷室12の下部にリアフロア構造10を備えている。リアフロア構造10は、例えば、車幅方向に延在されるリアクロスメンバ14と、車幅方向の両側に配置された第1サイドフレーム16及び第2サイドフレーム17と、車幅方向の中央に配置されたセンターフレーム18と、リアクロスメンバ14に設けられたパネル構造20と、を備えている。
【0025】
リアクロスメンバ14は、車両後部において車両の左側部から右側部に至る間に延びている。
第1サイドフレーム16は、リアクロスメンバ14の左端部14aから車両前方に向けて水平に延在されている。
第2サイドフレーム17は、リアクロスメンバ14の右端部14bから車両前方に向けて水平に延在されている。
センターフレーム18は、リアクロスメンバ14の車幅方向中央14cから車両前方に向けて水平に延在されている。リアクロスメンバ14、第1サイドフレーム16、第2サイドフレーム17、及びセンターフレーム18は、車体構造Ve(具体的には、リアフロア構造10)の骨格を構成する剛性の高い部材である。
【0026】
<パネル構造>
図3は、車体構造のリアフロア構造から上部パネルを分解した平面図である。
図2、
図3に示すように、パネル構造20は、リアクロスメンバ14から車両後方に水平に張り出されることにより後部荷室12の後方下部(車両下部)13(
図1参照)に設けられている。パネル構造20は、後部荷室12において車両後部の床部を形成する。パネル構造20は、上部パネル(パネル)21と、上部パネル21の下方に配置された下部パネル(パネル)22と、上部パネル21と下部パネル22との間に配置された複数の補強部材23,24,25と、を備える。
【0027】
<パネル>
図4は、
図2のIV-IV線に沿って破断した断面図である。
図3、
図4に示すように、上部パネル21は、リアクロスメンバ14の上面14dから車両後方に水平に張り出されている。上部パネル21は、平面視において前辺21a、後辺21b、左側片21c、及び右側辺21dにより面積の広い矩形状に形成されている。上部パネル21は、車両前後方向において交互に連続して設けられた複数の第1凹部27及び複数の第1凸部28を有する。複数の第1凹部27は、車両上方からみて車両下方に向けて凹状に形成されている。複数の第1凸部28は、車両上方からみて車両上方に向けて凸状に形成されている。
【0028】
複数の第1凹部27及び複数の第1凸部28は、波状(すなわち、凹凸状)に形成されている。複数の第1凹部27及び複数の第1凸部28は、上部パネル21において車幅方向の全体に渡って連続して形成されている。このため、上部パネル21は、複数の第1凹部27及び複数の第1凸部28により車両上下方向から入力する荷重や、車幅方向から入力する荷重に対して剛性が高く形成されている。
【0029】
第1凹部27は、上部パネル21において脆弱部を形成している。以下、第1凹部27を「第1脆弱部27」ということがある。すなわち、第1脆弱部27は、上部パネル21において車幅方向の全体に渡って連続して形成されている。第1脆弱部27は、車両前後方向において複数設けられている。複数の第1脆弱部27は、例えば、車両後方から入力する衝撃荷重F1により適正に変形(塑性変形)可能に形成されている。
なお、実施形態では第1脆弱部27を上部パネル21の全体に渡って連続して形成する例について説明するが、これに限らない。その他の例として、第1脆弱部27をミシンの縫い目状のように一部が欠けた不連続に形成してもよい。
【0030】
下部パネル22は、上部パネル21と同様に形成されている。すなわち、下部パネル22は、リアクロスメンバ14の下面14eから車両後方に水平に張り出されている。下部パネル22は、平面視において前辺22a、後辺22b、左側片22c、及び右側辺22dにより面積の広い矩形状に形成されている。下部パネル22は、車両前後方向において交互に連続して設けられた複数の第2凹部31及び複数の第2凸部32を有する。複数の第2凹部31は、車両下方からみて車両上方に向けて凹状に形成されている。複数の第2凸部32は、車両下方からみて車両下方に向けて凸状に形成されている。
【0031】
複数の第2凹部31及び複数の第2凸部32は、波状(すなわち、凹凸状)に形成されている。複数の第2凹部31及び複数の第2凸部32は、下部パネル22において車幅方向の全体に渡って連続して形成されている。よって、下部パネル22は、複数の第2凹部31及び複数の第2凸部32により車両上下方向から入力する荷重や、車幅方向から入力する荷重に対して剛性が高く形成されている。
【0032】
第2凹部31は、下部パネル22において脆弱部を形成している。以下、第2凹部31を「第2脆弱部31」ということがある。すなわち、第2脆弱部31は、下部パネル22において車幅方向の全体に渡って連続して形成されている。第2脆弱部31は、車両前後方向において複数設けられている。複数の第2脆弱部31は、例えば、車両後方から入力する衝撃荷重F1により適正に変形(塑性変形)可能に形成されている。複数の第2脆弱部31は、上下方向において複数の第1脆弱部27に対向する位置に配置されている。
なお、実施形態では第2脆弱部31を下部パネル22の全体に渡って連続して形成する例について説明するが、これに限らない。その他の例として、第2脆弱部31をミシンの縫い目状のように一部が欠けた不連続に形成してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、第1脆弱部27及び第2脆弱部31を車幅方向に沿って形成する例について説明する。しかしながらこれに限られるものではなく、第1脆弱部27及び第2脆弱部31を車幅方向に対して車両前後方向に傾斜させてもよい。
【0034】
<補強部材>
複数の補強部材23,24,25は、車両前後方向に延在されている。具体的には、複数の補強部材23,24,25は、上部パネル21及び下部パネル22の前端(すなわち、リアクロスメンバ14)から上部パネル21及び下部パネル22の後端まで車両後方に向けて延在されている。複数の補強部材23,24,25は、例えば、板材で形成されて車両上下方向に向けて配置されている。
【0035】
複数の補強部材23,24,25は、上部パネル21と下部パネル22との間の空間を仕切るバルクヘッド(隔壁)である。上部パネル21と下部パネル22との間に複数の補強部材23,24,25が介在されることにより、上部パネル21及び下部パネル22が複数の補強部材23,24,25により補強されている。これにより、パネル構造20の剛性が確保されている。複数の補強部材23,24,25は、それぞれ複数の剛性変化領域43,53,63(後述する)を有する。
【0036】
複数の補強部材23,24,25として、例えば奇数個が設けられている。具体的には、複数の補強部材23,24,25のうちのいずれかを第1補強部材とし、第1補強部材以外を第2補強部材と区別して構成する。第1補強部材と第2補強部材との違いについての詳細は後述する。本実施形態では、複数の補強部材23,24,25を第1補強部材23、第2補強部材24,25として説明する。
すなわち、複数の補強部材23,24,25は、1つの第1補強部材23と、2つの第2補強部材24,25とを備えている。本実施形態では、複数の補強部材23,24,25を奇数個とする場合を例に説明するが、複数の補強部材を偶数個としてもよい。複数の補強部材の個数は3個に限らず、任意に選択することが可能である。
【0037】
1つの第1補強部材23は、車幅方向中央に設けられている。また、2つの第2補強部材24,25は、車幅方向左右側にそれぞれ設けられている。具体的には、第2補強部材24は、車幅方向左方向に設けられている。第2補強部材25は、車幅方向右方向に設けられている。すなわち、複数の補強部材23,24,25は、車幅方向中央を基準にして左右対称に設けられている。換言すれば、2つの第2補強部材24,25は、1つの第1補強部材23を中心にして左右対称の位置に設けられている。
以下、構成の理解を容易にするために、2つの第2補強部材24,25のうち、車幅方向右方向に設けられた第2補強部材25を、便宜上、第3補強部材25と言い換えて説明する。
【0038】
第1補強部材23は、車幅方向中央においてセンターフレーム18の車両後方に設けられている。第1補強部材23は、例えば、上辺23aが車幅方向に折り曲げられ、上部パネル21の下面(車両下方面)に沿って凹凸状(波状)に形成されている。第1補強部材23の上辺23aは、例えば上部パネル21の下面に接続されることにより設けられている。
第1補強部材23は、例えば、下辺23bが車幅方向に折り曲げられ、下部パネル22の上面(車両上方面)に沿って凹凸状(波状)に形成されている。第1補強部材23の下辺23bは、例えば下部パネル22の上面に接続されることにより設けられている。
【0039】
第1補強部材23は、第1補強本体41と、第1補強本体41の車両後部に連結された第1薄肉部42と、第1補強本体41と第1薄肉部42との境界に形成された第1剛性変化領域(剛性変化領域)43と、を有する。第1薄肉部42は、第1補強本体41に比べて板厚寸法が小さく形成されている。この結果、第1補強本体41と第1薄肉部42との境界に第1剛性変化領域43が形成される。第1剛性変化領域43は、第1補強部材23に長手方向(すなわち、車両前後方向)から荷重が入力した際に応力を集中させて好適に変形可能な部位である。
【0040】
図5は、
図2のV-V線に沿って破断した断面図である。
図3、
図5に示すように、第2補強部材24は、第1補強部材23に対して車幅方向左方向において第1サイドフレーム16の概ね車両後方に設けられている。第2補強部材24は、例えば、上辺24aが車幅方向に折り曲げられ、上部パネル21の下面に沿って凹凸状(波状)に形成されている。第2補強部材24の上辺24aは、例えば上部パネル21の下面に接続されることにより設けられている。
第2補強部材24は、例えば、下辺24bが車幅方向に折り曲げられ、下部パネル22の上面に沿って凹凸状(波状)に形成されている。第2補強部材24の下辺24bは、例えば下部パネル22の上面に接続されることにより設けられている。
【0041】
第2補強部材24は、第2補強本体51と、第2補強本体51の車両前部に連結された第2薄肉部52と、第2補強本体51と第2薄肉部52との境界に形成された第2剛性変化領域(剛性変化領域)53と、を有する。第2薄肉部52は、第2補強本体51に比べて板厚寸法が小さく形成されている。このため、第2補強本体51と第2薄肉部52との境界に第2剛性変化領域53が形成される。第2剛性変化領域53は、第2補強部材24に長手方向(すなわち、車両前後方向)から荷重が入力した際に応力を集中させて好適に変形可能な部位である。
【0042】
図6は、
図2のVI-VI線に沿って破断した断面図である。
図3、
図6に示すように、第3補強部材25は、第1補強部材23に対して車幅方向右方向において第2サイドフレーム17の概ね車両後方に設けられている。第3補強部材25は、例えば、上辺25aが車幅方向に折り曲げられ、上部パネル21の下面に沿って凹凸状(波状)に形成されている。第3補強部材25の上辺25aは、例えば上部パネル21の下面に接続されることにより設けられている。
第3補強部材25は、例えば、下辺25bが車幅方向に折り曲げられ、下部パネル22の上面に沿って凹凸状(波状)に形成されている。第3補強部材25の下辺25bは、例えば下部パネル22の上面に接続されることにより設けられている。
【0043】
第3補強部材25は、第2補強部材24と概ね同様に形成されている。第3補強部材25は、第3補強本体61と、第3補強本体61の車両前部に連結された第3薄肉部62と、第3補強本体61と第3薄肉部62との境界に形成された第3剛性変化領域(剛性変化領域)63と、を有する。第3薄肉部62は、第3補強本体61に比べて板厚寸法が小さく形成されている。このため、第3補強本体61と第3薄肉部62との境界に第3剛性変化領域63が形成される。
【0044】
第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63は、車両前後方向において同じ位置に設けられている。さらに、第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63は、第1剛性変化領域43に対して車両前方向に設けられている。
このように、第1剛性変化領域43は、第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63に対して長手方向において異なる位置に設けられている。長手方向とは、第1補強部材23、第2補強部材24、及び第3補強部材25の長手方向をいう。すなわち、第1剛性変化領域43は、第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63に対して車両前後方向(実施形態では、車両後方)において異なる位置に設けられている。
【0045】
本実施形態では、第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63を車両前後方向において同じ位置に設ける例について説明するが、これに限らない。その他の例として、例えば、第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63を車両前後方向において異なる位置に設けてもよい。すなわち、第1剛性変化領域43、第2剛性変化領域53、及び第3剛性変化領域63の全ての剛性変化領域を車両前後方向において異なる位置に設けてもよい。
【0046】
本実施形態では、補強本体と薄肉部との板厚寸法を異ならせて剛性変化領域を形成する例について説明するが、これに限らない。その他の例として、例えば、補強本体と薄肉部との境界に凹部や開口部等を形成して剛性変化領域としてもよく、補強本体と薄肉部の材質を異ならせて境界に剛性変化領域を形成してもよい。
【0047】
本実施形態では、複数の補強部材23~25の上辺23a~25aを上部パネル21の下面に設け、かつ、複数の補強部材23~25の下辺23b~25bを下部パネル22の上面に設ける例について説明するが、これに限らない。その他の例として、例えば、複数の補強部材23~25の上辺23a~25aのみを上部パネル21の下面に設けてもよく、あるいは、複数の補強部材23~25の下辺23b~25bのみを下部パネル22の上面に設けてもよい。
【0048】
本実施形態では、複数の補強部材23~25の上辺23a~25aを凹凸状に形成し、複数の補強部材23~25の下辺23b~25bを凹凸状に形成する例について説明するが、これに限らない。その他の例として、例えば、複数の補強部材23~25の上辺23a~25a及び下辺23b~25bを車両前後方向に向けて直線状に延ばしてもよい。この場合、例えば、複数の上辺23a~25aを複数の第1脆弱部27に設け、複数の下辺23b~25bを複数の第2脆弱部31に設ける。
【0049】
本実施形態では、複数の補強部材23~25を板材で形成した例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、複数の補強部材23~25を中空の矩形断面に形成してもよい。
【0050】
次に、車体構造Veのパネル構造20に衝撃荷重F1が車両後方から入力した場合に、入力した衝撃荷重F1をパネル構造20で吸収する例を
図2、
図3、
図7に基づいて説明する。
図7は、パネル構造に車両後方から入力した衝撃荷重の伝達を説明する概念図である。
【0051】
図2、
図3、
図7に示し、上述したように、パネル構造20は車両後方側に設けられている。パネル構造20は、第1剛性変化領域43を車両後方に有する第1補強部材23が車幅方向中央に配置されている。第2剛性変化領域53を車両前方に有する第2補強部材24が車幅方向左方向に配置されている。加えて、第3剛性変化領域63を車両前方に有する第3補強部材25が車幅方向右方向に配置されている。
【0052】
このパネル構造20に車両後方から衝撃荷重F1が入力する。この場合、入力した衝撃荷重F1により、第1補強部材23の第1剛性変化領域43、第2補強部材24の第2剛性変化領域53、及び第3補強部材25の第3剛性変化領域63が変形する。
ここで、車幅方向中央の第1剛性変化領域43が、車幅方向左方向の第2剛性変化領域53及び車幅方向右方向の第3剛性変化領域63に対して車両後方において異なる位置に設けられている。このため、上部パネル21及び下部パネル22を車幅方向左右外側へ変形させる荷重F2が上部パネル21及び下部パネル22に伝達する。
また、入力された衝撃荷重F1により、上部パネル21及び下部パネル22を車両前後方向(具体的には、車両前方)へ変形させる荷重F3が上部パネル21及び下部パネル22に伝達される。
【0053】
このため、パネル構造20に衝撃荷重F1が入力した場合に、上部パネル21及び下部パネル22を車幅方向左右外側へ変形させる荷重F2と、車両前後方向へ変形させる荷重F3とを上部パネル21及び下部パネル22に伝達させることができる。すなわち、面積の広い上部パネル21及び下部パネル22の全域に荷重を分配(伝達)できる。これにより、分配された荷重により上部パネル21及び下部パネル22の変形を誘起させて、面積の広い上部パネル21及び下部パネル22の全域を好適に変形させることができる。
【0054】
以上説明したように車体構造Veのパネル構造20によれば、面積の広い上部パネル21及び下部パネル22の全域を好適に変形させることができる。これにより、パネル構造20に車両後方から入力した衝撃荷重F1を上部パネル21及び下部パネル22により十分に吸収でき、荷重吸収効率を向上させることができる。延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0055】
上部パネル21に第1脆弱部27を設け、下部パネル22に第2脆弱部31を設けた。このため、例えば、衝撃荷重F1が車両後方から入力した場合に、第1脆弱部27により上部パネル21における車両前後方向への変形を促進できる。同様に、第2脆弱部31により下部パネル22における車両前後方向への変形を促進できる。
これにより、上部パネル21及び下部パネル22に伝達された荷重を上部パネル21及び下部パネル22の全域に分配できる。したがって、分配された荷重により上部パネル21及び下部パネル22の全域を一層好適に変形させることができる。
【0056】
加えて、第1脆弱部27を車両前後方向において複数設け、第2脆弱部31を車両前後方向において複数設けた。このため、衝撃荷重F1が車両後方から入力した場合に、複数の第1脆弱部27により上部パネル21における車両前後方向への変形を一層促進できる。同様に、複数の第2脆弱部31により下部パネル22における車両前後方向への変形を一層促進できる。
これにより、上部パネル21及び下部パネル22における車両前後方向の変形に従って第1剛性変化領域43、第2剛性変化領域53、及び第3剛性変化領域63に荷重を好適に伝達させることができる。したがって、伝達された荷重により上部パネル21及び下部パネル22の全域を一層好適に変形させることができる。
【0057】
複数の補強部材(具体的には、第1補強部材23、第2補強部材24、及び第3補強部材25)を、車幅方向中央を基準にして左右対称に設けた。第1剛性変化領域43を第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63に対して車両後方において異なる位置に設けた。このため、第1剛性変化領域43、第2剛性変化領域53、及び第3剛性変化領域63を荷重で変形させることにより、上部パネル21及び下部パネル22を車両前後方向及び車幅方向に変形させることができる。
したがって、上部パネル21及び下部パネル22の全域を好適に変形させて、上部パネル21及び下部パネル22の全体に対して各パネル21,22の荷重吸収効率を均等に向上させることができる。よって、パネル構造20に車両後方から入力した衝撃荷重F1を十分に吸収でき、衝撃荷重F1による車室内部への影響を抑制できる。
【0058】
さらに、複数の補強部材(具体的には、第1補強部材23、第2補強部材24、及び第3補強部材25)を奇数個とした。このため、第1剛性変化領域43を幅方向中央に配置し、第1剛性変化領域43を第2剛性変化領域53及び第3剛性変化領域63に対して車両後方において異なる位置に設けることができる。これにより、幅方向中央の第1剛性変化領域43を荷重で変形させることにより、上部パネル21及び下部パネル22に車幅方向左右外側へ変形させる荷重を一層好適に分配できる。したがって、分配された荷重により面積の広い上部パネル21及び下部パネル22の全域を一層好適に変形させることができる。
【0059】
[変形例]
次に、
図8に基づいて、本実施形態の変形例に係るパネル構造100に衝撃荷重が車両後方から入力した場合の例を説明する。変形例のパネル構造100において上述の実施形態と同一、類似部材については同じ符号を付して詳しい説を省略する。
図8は、変形例のパネル構造に車両後方から入力した衝撃荷重の伝達を説明する概念図である。
【0060】
図8に示すように、変形例のパネル構造100は、上部パネル21及び下部パネル22が車両後方側に設けられている。第1補強部材23は、車幅方向左方向及び右方向に配置されている。第1補強部材23は、車両後方に配置された第1剛性変化領域43を有する。第2補強部材24は、車幅方向中央に配置されている。第2補強部材24は、車両前方に配置された第2剛性変化領域53を有する。
【0061】
以下、車幅方向左方向に配置された第1補強部材23及び第1剛性変化領域43を第1補強部材23A及び第1剛性変化領域43Aとして説明する。また、車幅方向右方向に配置された第1補強部材23及び第1剛性変化領域43を第1補強部材23B及び第1剛性変化領域43Bとして説明する。
【0062】
パネル構造100に車両後方から衝撃荷重F4が入力される。この場合、車幅方向左方向に設けられた第1補強部材23Aの第1剛性変化領域43A、車幅方向右方向に設けられた第1補強部材23Bの第1剛性変化領域43B、及び第2補強部材24の第2剛性変化領域53が変形する。
ここで、車幅方向左方向の第1剛性変化領域43A及び車幅方向右方向の第1剛性変化領域43Bは、車幅方向中央の第2剛性変化領域53に対して車両後方において異なる位置に設けられている。このため、上部パネル21及び下部パネル22を車幅方向左右内側へ変形させる荷重F5が上部パネル21及び下部パネル22に伝達される。
また、入力された衝撃荷重F4により、上部パネル21及び下部パネル22を車両前後方向(具体的には、車両前方)に変形させる荷重F6が上部パネル21及び下部パネル22に伝達される。
【0063】
このため、パネル構造100に衝撃荷重F4が入力した場合に、上部パネル21及び下部パネル22を車幅方向左右内側に変形させる荷重F5と、車両前後方向に変形させる荷重F6とを上部パネル21及び下部パネル22に伝達させることができる。すなわち、面積の広い上部パネル21及び下部パネル22の全域に荷重を分配(伝達)できる。これにより、分配された荷重により上部パネル21及び下部パネル22の変形を誘起させて、面積の広い上部パネル21及び下部パネル22の全域を好適に変形させることができる。
【0064】
以上説明したように実施形態の変形例に係るパネル構造100によれば、面積の広い上部パネル21及び下部パネル22の全域を好適に変形させることができる。これにより、パネル構造100に車両後方から入力した衝撃荷重F4を上部パネル21及び下部パネル22により十分に吸収でき、荷重吸収効率を向上させることができる。延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
さらに、変形例のパネル構造100によれば実施形態のパネル構造20と同様の作用、効果を得ることができる。
【0065】
本実施形態のパネル構造20及び変形例のパネル構造100を車両後部に設けた例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、パネル構造20及びパネル構造100を車両前部に設けてもよい。
パネル構造20及びパネル構造100を車両前部に設けた場合、例えばパネル構造20及びパネル構造100には車両前方から衝撃荷重が入力される。この場合においても、実施形態のパネル構造20及び変形例のパネル構造100と同様に、上部パネル21及び下部パネル22による荷重吸収効率を向上させることができる。延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
さらに、パネル構造20及びパネル構造100を車両前部に設けた場合においても、実施形態及び変形例と同様の作用、効果を得ることができる。
【0066】
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0067】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
Ve…車体構造
10…リアフロア構造
12…後部荷室
13…後部荷室の後方下部(車両下部)
20…パネル構造
21…上部パネル(パネル)
22…下部パネル(パネル)
23,23A,23B,24,25…複数の補強部材
23,23A,23B…第1補強部材(補強部材)
24…第2補強部材(補強部材)
25…第3補強部材(補強部材、第2補強部材)
27…第1脆弱部(脆弱部)
31…第2脆弱部(脆弱部)
43,43A,43B,53,63…複数の剛性変化領域
43,43A,43B…第1剛性変化領域(剛性変化領域)
53…第2剛性変化領域(剛性変化領域)
63…第3剛性変化領域(剛性変化領域)