IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社松岡鐵工所の特許一覧

<>
  • 特開-入子及びそれを用いた金型冷却構造 図1
  • 特開-入子及びそれを用いた金型冷却構造 図2
  • 特開-入子及びそれを用いた金型冷却構造 図3
  • 特開-入子及びそれを用いた金型冷却構造 図4
  • 特開-入子及びそれを用いた金型冷却構造 図5
  • 特開-入子及びそれを用いた金型冷却構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024178603
(43)【公開日】2024-12-25
(54)【発明の名称】入子及びそれを用いた金型冷却構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20241218BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096866
(22)【出願日】2023-06-13
(71)【出願人】
【識別番号】505077091
【氏名又は名称】株式会社松岡鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀範
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 良祐
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AK13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK41
4F202CK42
4F202CN05
4F202CN13
4F202CN14
4F202CN22
4F202CN30
(57)【要約】
【課題】再利用、メンテナンス可能な、冷却回路を有した入子及びそれを用いた金型冷却構造を提供する。
【解決手段】可動中入子180は、金型100に形成されるキャビティ101に臨む入子であって、可動中入子180内部には、冷却媒体が封入されヒートパイプ機能を有する冷却回路181が配設されている。冷却回路181には、可動中入子180の外部と連通する連通部182が複数配設されている。各連通部182には、封止部材190が配されて、冷却回路181が閉状態とされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に形成されるキャビティに臨む入子であって、
前記入子内部には、冷却媒体が封入されヒートパイプ機能を有する冷却回路が配設され、
前記冷却回路には、前記入子の外部と連通する連通部が複数配設され、
各前記連通部には、封止部材が配されて、前記冷却回路が閉状態とされていることを特徴とする入子。
【請求項2】
前記封止部材及び前記入子は、金属製とされ、
前記封止部材は、前記封止部材及び前記入子より柔らかく展性を有した金属で形成されたパッキンを介して、前記連通部を封止していることを特徴とする請求項1記載の入子。
【請求項3】
前記入子の、少なくとも、前記封止部材が配される部位及びその周辺には、冷却部材が配設されていることを特徴とする請求項1記載の入子。
【請求項4】
前記冷却回路には、前記冷却媒体の流れ方向を規制する流れ規制部が配設されていることを特徴とする請求項1記載の入子。
【請求項5】
金型に形成されるキャビティに臨む請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の入子を備える金型冷却構造であって、
前記金型には、前記入子が配置される入子配置部が形成され、前記入子配置部に前記入子が配置されていることを特徴とする金型冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂の射出成形等に用いられる入子及びそれを用いた金型冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却回路としてヒートパイプを用いた金型冷却構造としては、特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
これによれば、パーティングラインに垂直な方向に進退自在な可動側入れ子の内部にはヒートパイプが埋設され、可動側型板の外側に設けられた温調ブロックに取り付けられていた。温調ブロックには、温調管が形成されており、熱媒体が流通されていた。また、エジェクターロッドで押される突出板には、温調ブロック突出ピンが設けられ、突出板が押されたときには、温調ブロックごと可動側入れ子を押し、キャビティに形成された光学素子を押し出すように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-219445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の金型冷却構造等に用いられるヒートパイプは、一方の端部を封止した中空管の内部に冷却媒体を注入し、中空管の内部に残存する空気を排出させ、その後に中空管の他方の端部を封止することで製造されている。
【0006】
ヒートパイプを検査して不具合があり再利用したい場合や、ヒートパイプのメンテナンスをしたい場合には、ヒートパイプの端部の封止部分を破損させて開封することになるので、再利用、メンテナンスができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記にかんがみて、再利用、メンテナンス可能な、冷却回路を有した入子及びそれを用いた金型冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明では、金型に形成されるキャビティに臨む入子であって、
前記入子内部には、冷却媒体が封入されヒートパイプ機能を有する冷却回路が配設され、
前記冷却回路には、前記入子の外部と連通する連通部が複数配設され、
各前記連通部には、封止部材が配されて、前記冷却回路が閉状態とされている。
【0009】
これによれば、再利用、メンテナンス可能な、冷却回路を有した入子とすることができる。
【0010】
また、前記封止部材及び前記入子は、金属製とされ、
前記封止部材は、前記封止部材及び前記入子より柔らかく展性を有した金属で形成されたパッキンを介して、前記連通部を封止している。
【0011】
これによれば、パッキンが変形することでシールするとともに、既存のゴム製のOリングでは封止できない温度環境においても対応可能となるので、冷却回路を閉状態とすることに寄与する。
【0012】
また、前記入子の、少なくとも、前記封止部材が配される部位及びその周辺には、冷却部材が配設されている。
【0013】
これによれば、本出願人は、本願発明にかかる入子の試験において、封止部材が先に熱くなるという知見を得ている。先に熱くなる部位に冷却部材を配設することで、冷却効果を向上させることができる。
【0014】
また、前記冷却回路には、前記冷却媒体の流れ方向を規制する流れ規制部が配設されている。
【0015】
これによれば、冷却媒体が循環しなくなることを防止することができる。
【0016】
請求項5の発明では、金型に形成されるキャビティに臨む請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の入子を備える金型冷却構造であって、
前記金型には、前記入子が配置される入子配置部が形成され、前記入子配置部に前記入子が配置されている。
【0017】
これによれば、上記入子の効果を奏する金型冷却構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における金型冷却構造の概略説明図である。
図2】同実施形態の入子の斜視図である。
図3】同実施形態の入子の縦断面図である。
図4図3の連通部付近の拡大図である。
図5】ペルチェ素子が取り付けられた状態の斜視図である。
図6】入子の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明をする。合成樹脂の射出成形における金型に適用する場合について説明する。図1における、紙面における左を左、右を右、上を上、下を下、手前側を前、奥側を後とする。
【0020】
金型100は、図1に示すように、固定型110と、可動型150と、を備えている。
【0021】
固定型110は、固定主型120と、固定型入子130と、固定中入子140と、を備えている。可動型150は、可動主型160と、可動型入子170と、可動中入子180と、を備えている。
【0022】
固定主型120及び可動主型160は、機械構造用鋼製で、直方体状に形成され、互いに対向する側の面(図1紙面の、固定主型120では下面、可動主型160では上面)から、対向する側の面とは反対側の面(図1紙面の、固定主型120では上面、可動主型160では下面)に向かう断面矩形状の有底孔として形成された凹部121、凹部161をそれぞれ有している。
【0023】
凹部121の下面から、固定主型120の上面まで貫通する貫通孔122が二つ配設されている。
【0024】
凹部161の上面から、可動主型160の下面まで貫通する貫通孔162が三つ配設されている。凹部161の上面から、貫通孔162とは位置をずらせて、可動主型160の下面まで貫通するエジェクター孔163が二つ配設されている。
【0025】
固定型入子130及び可動型入子170は、焼入れ鋼で形成されている。本実施形態では、固定型入子130は、可動型入子170と対向する面が凹状に形成され、固定型入子130と、可動型入子170とが、接近したときに空間部が形成され、当該空間部が金型100のキャビティ101となる。固定型入子130と、可動型入子170のキャビティ101に臨む面が、成形品の外面部分を形成する、キャビティ面131、キャビティ面171とされる。
【0026】
固定型入子130には、下面から上面まで貫通する貫通孔132が形成されている。
【0027】
本実施形態では、貫通孔132は、焼入れ鋼で形成された固定中入子140が挿通可能に形成されている。
【0028】
可動型入子170には、下面から上面まで貫通する貫通孔172が形成され、貫通孔172とは、位置をずらして、下面から上面まで貫通するエジェクター孔173が形成されている。貫通孔172は、可動中入子180が挿通可能とされ、エジェクター孔173は、後述するエジェクターピン91が挿通可能とされている。
【0029】
本実施形態では、可動型入子170に、可動中入子180(特許請求の範囲の入子に相当する)が配設されている。
【0030】
可動中入子180は、焼入れ鋼で形成されている。
【0031】
図2~4に示すように、可動中入子180内には、水やエタノール等の冷却媒体が流通する冷却回路181が形成されている。
【0032】
冷却回路181には、可動中入子180の外部と連通する連通部182、182が二か所配設されている。また、冷却回路181には、冷却媒体の流れ方向を規制する流れ規制部183が配設されている。
【0033】
本実施形態では、流れ規制部183は、テスラバルブで構成されている。
【0034】
各連通部182、182には、封止部材190が配されて、冷却回路181が閉状態とされている。
【0035】
本実施形態では、封止部材190は、外周面全体に雄ねじが形成された、六角ボルトで構成されている。また、封止部材190は、封止部材190及び可動中入子180より柔らかく展性を有した銅で形成されたパッキン195を介して、連通部182、182を封止している。
【0036】
連通部182は、図3、4に示すように、小径部182aと小径部182aより大径に形成された大径部182bとを有する段付き孔にとして形成されている。
【0037】
冷却回路181に冷却媒体を入れ、大径部182bにパッキン195を入れ、封止部材190を六角レンチで締め込むことで、冷却媒体が封入され、冷却回路181が閉状態とされる。
【0038】
可動中入子180の製造方法の一例としては、図6に示すように、一対の半割体180a、180bの対向面に、それぞれ、対向面から反対側の面に向かう有底溝として形成された冷却回路形成溝181a、181bを設ける。
【0039】
そして、半割体180a、180bの対向面どうしを接合する。冷却回路形成溝181a、181bで囲まれる領域が、冷却回路181を構成する。
【0040】
接合された半割体180a、180bを所定の形状に切削等して成形し、図4に示すように、外周面から冷却回路181に向かって段付き孔を形成し、段付き孔の大径部分に雌ねじを形成することで連通部182が形成される。
【0041】
可動中入子180の下端部には、図1、5に示すように、冷却部材としてのペルチェ素子210が配設されている。ペルチェ素子210は、可動中入子180を冷却するとともに、熱から電気を得ることが可能となる。よって、ペルチェ素子210により、他のセンサ等の機材の電力供給可能とすることができる。
【0042】
本実施形態では、少なくとも、封止部材190が配される部位及びその周辺には、冷却部材としてのペルチェ素子210が配設されているといえる。
【0043】
金型冷却構造の全体構成としては、図1に示すように、固定主型120の上側に、固定型取付板80が取り付けられている。
【0044】
固定主型120及び固定型入子130の、連通した貫通孔122、貫通孔132を挿通して固定中入子140が、キャビティ101に臨むように配されている。
【0045】
可動主型160及び可動型入子170の、連通した貫通孔162、貫通孔172を挿通して可動中入子180が、キャビティ101に臨むように配されている。本実施形態では、貫通孔162、貫通孔172で、入子配置部102が、構成されることになる。
【0046】
可動主型160の下側に、可動型受板82が取り付けられている。可動型受板82の下側に、スペーサブロック84が二つ取り付けられている。スペーサブロック84の下側に、可動型取付板86が取り付けられている。
【0047】
可動型受板82と可動型取付板86との間のスペースに、成形品を押し出すエジェクターピン91を有するエジェクター90が配設されている。
【0048】
エジェクター90は、図示しない駆動手段と接続されている。
【0049】
本発明の入子の機能作用を説明する。
【0050】
図3に参照するように、冷却回路181の左側で下から上に流れる液化状態の冷却媒体は、上端で熱せられた合成樹脂により蒸発して気化状態となり下側に折り返されて流れる。
【0051】
気化状態となった冷却媒体は、流れ規制部183としてのテスラバルブ部分を上から下にのみ流れるように規制され、中央下端部分に送られる。
【0052】
中央下端部分で冷やされて液化状態に戻った冷却媒体は、上側に折り返される再度流れ規制部183としてのテスラバルブ部分を上から下にのみ流れるように規制される。
【0053】
上端で熱せられて気化状態となった冷却媒体は、下側に折り返されて流れ、下端まで行くと、冷やされて液化状態となり、左側に流れて最初地点に戻る。
【0054】
上記の気液サイクルにおいて、封止部材190が先に熱くなることが実験で確認されている。先に熱くなる部位にペルチェ素子210を配設することで、冷却効果を向上させている。
【0055】
上記構成の可動中入子180では、金型100に形成されるキャビティ101に臨む入子であって、
可動中入子180内部には、冷却媒体が封入されヒートパイプ機能を有する冷却回路181が配設され、
冷却回路181には、可動中入子180の外部と連通する連通部182が複数配設され、
各連通部182には、封止部材190が配されて、冷却回路181が閉状態とされている。
【0056】
これによれば、再利用、メンテナンス可能な、冷却回路181を有した入子とすることができる。
【0057】
また、封止部材190及び可動中入子180は、金属製とされ、
封止部材190は、封止部材190及び可動中入子180より柔らかく展性を有した金属で形成されたパッキン195、195を介して、連通部182、182を封止している。
【0058】
これによれば、パッキン195が変形することでシールするとともに、既存のゴム製のOリングでは封止できない温度環境においても対応可能となるので、冷却回路181を閉状態とすることに寄与する。
【0059】
また、可動中入子180の、少なくとも、封止部材190が配される部位及びその周辺には、冷却部材としてのペルチェ素子210が配設されている。
【0060】
これによれば、本出願人は、本願発明にかかる入子の試験において、封止部材190が先に熱くなるという知見を得ている。先に熱くなる部位に冷却部材を配設することで、冷却効果を向上させることができる。
【0061】
また、冷却回路181には、冷却媒体の流れ方向を規制する流れ規制部183が配設されている。
【0062】
これによれば、冷却媒体が循環しなくなることを防止することができる。
【0063】
本発明を金型冷却構造としてみれば、金型100に形成されるキャビティ101に臨む可動中入子180を備える金型冷却構造であって、
金型100には、可動中入子180が配置される入子配置部102が形成され、入子配置部102に可動中入子180が配置されている。
【0064】
これによれば、上記入子の効果を奏する金型冷却構造とすることができる。
【0065】
本発明の金型冷却構造、可動中入子180は上記構成に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない限り各種の設計変更等が可能である。
【0066】
たとえば、金型冷却構造は、可動型150に設ける構成としたが、固定型110に設ける構成とすることができるし、固定型110及び可動型150に設ける構成とすることができる。
【0067】
また、パッキン195の素材は、銅以外に真鍮、アルミ等、鋼より軟らかく展性のある素材を用いることができる。
【0068】
また、連通部182は、三つ以上設けることもできる。
【0069】
また、入子を冷却するペルチェ素子の代替手段として、水、エア等の冷却媒体が流通する通路を金型に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 金型
101 キャビティ
102 入子配置部
180 可動中入子
181 冷却回路
182 連通部
183 流れ規制部
190 封止部材
195 パッキン
210 ペルチェ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6